平成17(あ)2621 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成21年1月14日 最高裁判所第二小法廷 決定 棄却 仙台高等裁判所 秋田支部
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判決文本文1,154 文字)

- 1 -主文本件上告を棄却する。 理由 検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 所論にかんがみ,被告人の量刑につき,職権により判断する。 本件は,自己の借金返済のため,妻(当時59歳)及び養母(妻の実母,当時84歳)に係る死亡保険金を取得する目的で,殺意をもって,妻及び養母が同乗していた乗用車を運転して海中に転落させ,妻及び養母をでき死させたという殺人の事案である。 本件は,利欲性の高い犯行であり,借金が多額に上った理由も被告人の身勝手な行動の結果であって,被告人の借金返済のため被害者らに物心両面で多大な負担をかけた上,更にその生命を代償として借金返済の資金を入手しようとしたものであり,その動機は極めて悪質である。また,犯行態様も,人目につかない夕刻の時間帯に,妻及び養母を同乗させた乗用車を自動車事故を装って海中に転落させて同人らを殺害し,保険金を取得しようとしたもので,確定的な殺意に基づく計画的な犯行であって,被告人のみが海中に沈みつつある車内から脱出し,意識ある被害者らを生きながらにして車内に残し,車両の沈むに任せてでき死させるという残酷,非情なものである。2名の尊い命を奪った結果は重大で,また,親族であっても,遺族が厳しい処罰感情を抱くのも誠にもっともである。 そうすると,被告人の罪責は誠に重大であるから,本件は被告人に対して死刑を選択することも考慮に値する事案というべきである。 - 2 -しかしながら,他方において,被告人は,犯行予定場所の下見もせず,同所到着後に具体的な犯行場所を探し回るなどしており,それほど緻密,周到な犯行計画を立てて実行したとまではいい難いこと,被告人は,64歳に至るまで前科がなく,少なくとも殺人等の凶悪犯罪を起こす傾向も認め 着後に具体的な犯行場所を探し回るなどしており,それほど緻密,周到な犯行計画を立てて実行したとまではいい難いこと,被告人は,64歳に至るまで前科がなく,少なくとも殺人等の凶悪犯罪を起こす傾向も認められず,上記借金に関することを除けば,社会人として一応普通の生活を送っていたこと,第1審途中で自白から否認に転じ,過失による事故を主張するようになったものの,原審においては保険金目的での殺害を認め,最終的には反省,悔悟の態度を示すに至ったことなど諸般の事情を考慮すると,被告人を無期懲役に処した原判決について,その量刑がこれを破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認めることができない。 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官古田佑紀裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官竹内行夫)

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