【DRY-RUN】主 文 被告人に関する原判代を破棄する。 本件を札幌地方裁判所岩見沢支部へ差し戻す。 理 由 札幌地方検察庁岩見沢支部検事鵜沼武輝の控訴趣意は別紙記
主文 被告人に関する原判代を破棄する。 本件を札幌地方裁判所岩見沢支部へ差し戻す。 理由 札幌地方検察庁岩見沢支部検事鵜沼武輝の控訴趣意は別紙記載のとおりである。 よつて先づ控訴趣意第一点について調査するに、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項には、「団体若は多衆の威力を示し、団体若は多衆を仮装して威力を示し又は兇器を示し若は数人共同して刑法第二百八条第一項……の罪を犯したる者は云々。」と規定してある。これを文理の上から解釈分類すれば第一の形態は「団体若は多衆の威力を示し」て暴行をした場合であり、第二の形態は「団体若は多衆を仮装して威力をふし」て<要旨第一>暴行をした場合であり、第三の形態は「兇器を示し若は数人共同し」て暴行をした場合である。従つて第一及</要旨第一>び第二の形態は団体若は多数者を背景とし又はこれ等のものを仮装的に背景とした犯罪であるが、第三の形態はそうではなくて暴行の態様が兇器を示すとか、数人共同で為すとかということによつて成立する犯罪である。従つて兇器を示して暴行をする場合又は数人共同で暴行をすろ場合には、団体又は多衆の背景というものは実際的にも又は仮装的にも存在することなくして本条の違反罪を構成するものと解すべきものである。又これを本法制定の趣旨に徴するも大正末期から種々の社会的原因より暴行、脅迫、器物毀棄、面会強要強談、威迫等の行為をなす者が横行し社会の治安を乱す例多く、しかもこれ等の犯行の多くが前に述べたような色々の形態で行われる場合において甚しく社会的害悪を流すものと認めて、これ等の形態で行われる前記のような犯罪につき刑法の定めた刑より加重し、又は刑法上の親告罪を非親告罪と為し、以て社会の治安を図つたものであつて、特に団体犯罪又は仮装的な団体犯罪をのみ ものと認めて、これ等の形態で行われる前記のような犯罪につき刑法の定めた刑より加重し、又は刑法上の親告罪を非親告罪と為し、以て社会の治安を図つたものであつて、特に団体犯罪又は仮装的な団体犯罪をのみ対象としたものとは認められない。又更に観点を変えて考察して見るに、若し控訴趣意所論のように、数人共同して暴行をした場合に、団体又は多衆というようなものが背景となつている場合には暴力行為等処罰に関する法律違反罪となり、然らざる場合には刑法上の単純暴行罪の共犯となる、とすると、それは果して暴力行為等処罪に関する法律違反罪としての構成要件として単純暴行共犯の構成要件の外に如何なるものを要求することにたるのであろうか。法律には「数人共同して」という要件を規定しているのみであるが、その外に「団体の背景」とか「団体の構成分子として」というような要件は何等要求していないし、又そのような要件を具えた場合は前に述べた第一又は第二の形態に包含せられることとなるから殊更第三形態を設ける必要がほいともいえるのである。或は控訴趣意の云はんとするところは、構成要件としては「数人共同して暴行」をしたのみで充分であるが、かくれたる要件としてそれが団体を背景した場合には暴力行為等処罰に関する法律違反罪となり、然らざる場合には刑法犯罪となるというのであろうか。しかしそうだとすればそれは結局同一の犯罪事実が認定されながら、判決に表現せられ者いかくれた事実のために、或る場合は暴力行為等処罰に関する法律を適用し、或る場合には刑法を適用するという不都合な結果、認めることになつて、かかる理論の採用できないことは明瞭である。所論は刑法の単独単純暴行と、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項該当の暴行との中間に、共謀暴行という形態が存在するというが、いわゆる共謀による暴行の共犯が成立すること できないことは明瞭である。所論は刑法の単独単純暴行と、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項該当の暴行との中間に、共謀暴行という形態が存在するというが、いわゆる共謀による暴行の共犯が成立することは認めて差支ないけれども、それが一度共同の暴行実行正犯となつた場合には、もはや刑法の領域から離れて特別法たる暴力行為等処罰に関する法律の適用を見ると解しなければならないのである。 而して暴力行為等処罰に関する法律は刑法の特別法であるから、本法に該当する場合には刑法の適用はないと解するのは当然のことである。 ところで原判決は証拠によつて、「被告人Aは手拳でBの顔を殴ると、傍にいた原審相被告人CはAと意思相通じ逸早く逃出したBの後を追つて捉えいきなり手拳でBの顔を殴つて暴行を加えた」旨を認めているのであつて、この事実は正に「数人共同して暴行」したという暴行行為等処罰に関する法律第一条第一項に該当するものであつて、以上に述べた理由よりして、この事実に対しては刑法第二百八条第六十条を適用すべき限りではない。 しかるに最後に控訴趣意においては、本件の場合検察官は特別法である暴力行為等処罰に関する法律による処断を求めず刑法第二百八条の罰条によろ法定刑の範囲内で処断を求めているにすぎないのであり、それは被告人にとつて不利益でないから、刑法犯として処罰して差支たいと論ずるけれども、既に暴力行為等処罰に関する法律違反に該当する事実が起訴せられ且その事実が証拠によつて認定された以上、法律の規定するところに従つて当該法律を適用するのは裁判所の職責であり、検察官の意見乃至要求によつて他の法律を適用するわけにはいかないのであつて、要は、何れの法律を適用しても差支えないか否かの問題ではなくて、何れの法律を適用し左ければならないかの問題である。 以上の通りであるから、 要求によつて他の法律を適用するわけにはいかないのであつて、要は、何れの法律を適用しても差支えないか否かの問題ではなくて、何れの法律を適用し左ければならないかの問題である。 以上の通りであるから、この法律問題に関する原判決の態度は正当であつて、控訴趣意の議論には賛成できないのである。 次で第二点について調査するに、原裁判所は前記のように暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項該当の事実を認定し、起訴状に罰条として刑法第二百八条を掲げてあるので審理中において検察官に対し右罰条を暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項と変更すべきことを命じたが、検察官がこれに従わなかつたので、無罪の言渡をしたのである。しかも本件においては訴因については何等変更を要する事案ではなかつた。つまり起訴状の訴因自体において既に暴力行為等処罰に関する法律違反の事実を記載しながら、罰条は刑法第二百八条を掲げていたのであるから、本件起訴状には罰条の記載の誤があつたものといわなければならない。 而して原裁判所はこの場合には罰条の変更を要するとしたのであるが、罰条の記載の誤は被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる慮がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない、とは刑事訴訟法第二百五十六条第四項但書に規定するところであつて、起訴状における罰条の記載は訴因の記載に比して従属的な意味を有するものと見られ、又法律の適用は裁判所の職責であつて、当事者の見解や要求に従う義務はないということからも右の解釈は裏付けられるのである。従つて又公訴提起の効力に影響を及ぼさない程度の罰条の記載の誤りは、殊更訂正変更されなくても裁判所が正当な法律を適用して有罪の判決をなすに防げとなるものではないと解する。 ところで本件の場合に果して刑法第二百八条として起訴状に記載せられてあるものを、暴力行為等処罰に 正変更されなくても裁判所が正当な法律を適用して有罪の判決をなすに防げとなるものではないと解する。 ところで本件の場合に果して刑法第二百八条として起訴状に記載せられてあるものを、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項を適用して処罰することが、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる慮があるか否かの問題であるが、被告人の防禦が訴因を中心として行われることは自明のことであつて、訴因の解釈を誤らせるような罰条の誤があれば、それは防禦に不利益を生ずるけれども、本件においては訴因自体疑うことほき暴行の実行共同正犯の事実が記載せられてあり、それに対して一般法である刑法第二百八条が挙示されているのであるから、訴因の解釈を誤らせる虞はないといわなければならたい。従つて被告人の防禦の方法は事実問題については何等それによつて異るところはないわけである。なるほど暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の罪の法定刑は刑法第二百八条の罪の法定刑よりも重いけれども、単に重い法定刑を盛られた罰条が正当に記載されていたならば、被告人は更に慎重に防禦方法を講じたかも知れないというようたことは実質的な不利益とは解すべきではない。 <要旨第二>以上のとおり、本件においては被告事件について犯罪の証明がない場合でもなく、又被告事件が罪とならな</要旨第二>い場合でもないから起訴状記載の罰条の変更を要せずして原判決認定の事実に対して暴力行為等処罰に関する法律を適用して有罪の判決をすべきものといわなければならない。従つてこれと異つた見解の下に無罪の言渡をしたのは刑事訴訟法第三百三十六条の解釈を誤つたものであつて、しかもその法律違反は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、この点について本件控訴の理由がある。よつて刑事訴訟法第三百七十九条第三百九十七条によつて被告人に関する原判決を破 を誤つたものであつて、しかもその法律違反は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、この点について本件控訴の理由がある。よつて刑事訴訟法第三百七十九条第三百九十七条によつて被告人に関する原判決を破棄すべきであるから、控訴趣意第三点については既に判断の必要がなくなつた。よつて、これに対する判断を省略する。 而して本件においては原審において弁護人から情状に関する立証として証人の取調の請求があつたものを却下して無罪の言渡をしていることでもあり、未だ当裁判所で直ちに判決をすることができないものと認め、刑事訴訟法第四百条本文により主文のとおり判決する。 (裁判長判事藤田和夫判事西田賢次郎判事河野力)
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