平成25(レ)40 不当利得返還請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成25年10月21日 大分地方裁判所 破棄自判 臼杵簡易裁判所 平成25(ハ)8
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判決文本文9,624 文字)

平成25年10月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(レ)第40号不当利得返還請求控訴事件(原審・臼杵簡易裁判所平成25年(ハ)第8号)口頭弁論終結日平成25年8月5日判決 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 控訴人は,被控訴人に対し,6万9079円及びうち6万7000円に対する平成16年2月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを4分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。 3 この判決は,1(1)項につき,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の大要本件は,控訴人との間で継続的な金銭消費貸借取引を行っていた者である被控訴人が,当該取引に係る各弁済金のうち利息制限法所定の制限利率を超えて支払った部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生しており,かつ,控訴人は当該過払金の取得が法律上の原因を欠くものであることにつき悪意である旨主張して,控訴人に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金元金26万0247円及び最終の取引日である平成16年2月16日までの民法704条前段による過払金利息2万1696円の合計28万 1943円並びに上記過払金元金に対する同月17日から支払済みまで同条前段による民法所定の年5分の割合による過払金利息の支払を求める事案である。 原判決が被控訴人の請求を全部認容したので,控訴人がこれを不服として控訴した。 2 前提 17日から支払済みまで同条前段による民法所定の年5分の割合による過払金利息の支払を求める事案である。 原判決が被控訴人の請求を全部認容したので,控訴人がこれを不服として控訴した。 2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1) 控訴人は,貸金業法(平成18年法律第115号による改正前の法律の題名は,貸金業の規制等に関する法律。以下,同改正の前後を通じて「貸金業法」という。)所定の登録を受けて貸金業を営む貸金業者である。 (2) 被控訴人は,控訴人との間で,平成9年10月31日,金銭消費貸借に係る基本契約を締結し,この基本契約(以下「本件基本契約」という。)に基づき,控訴人との間で,平成9年10月31日から平成16年2月16日までの間,原判決別紙計算書1記載の「年」「月」「日」欄記載の各年月日に,「借入金」欄記載の各金員を借入れ(ただし,同計算書1記載の平成14年9月18日の-1322円を除く),「返済金」欄記載の各金員を支払った(ただし,同計算書1記載の平成14年9月18日の1034円を除く)。控訴人は,制限超過部分を約定利息の債務の弁済として受領した。(甲2の1・2,乙1,2,弁論の全趣旨)(3) 控訴人は,臼杵簡易裁判所の書記官に対し,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引につき,約定利率により計算した貸金残元金及び遅延損害金の支払を請求して,被控訴人を債務者とする支払督促(同裁判所平成14年(ロ)第147号事件)の申立てを行ったところ,同書記官は,平成14年9月18日,控訴人の請求額につき,支払督促を発した。(乙3,弁論の全趣旨)被控訴人が上記支払督促に対して督促異議を申し立てなかったため,同書記官は,平成14年10月8日,支払督促につき仮執行宣言を付した。被控訴人は,仮執行宣 支払督促を発した。(乙3,弁論の全趣旨)被控訴人が上記支払督促に対して督促異議を申し立てなかったため,同書記官は,平成14年10月8日,支払督促につき仮執行宣言を付した。被控訴人は,仮執行宣言付支払督促について督促異議の申立てをしなかったため,仮執行宣言付支払督促が確定した。(乙3,弁論の全趣旨) (4) 被控訴人は,平成25年2月5日,本訴を提起し,訴状は,同月7日に控訴人に送達された。(当裁判所に顕著な事実)(5) 控訴人は,本訴の答弁書において,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引により生じた過払金の不当利得返還請求権について消滅時効を援用する旨の意思表示をし,上記答弁書は,平成25年2月20日,被控訴人に到達した。 (当裁判所に顕著な事実) 3 争点及び争点に対する当事者の主張(1) 控訴人は悪意の受益者であるか(被控訴人の主張)控訴人は,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引において,被控訴人に対し,利息制限法所定の制限利率を超える利率で貸付けを行い,制限超過部分を約定による利息債務の弁済として受領することを認識していた。 そのため,控訴人は,民法704条前段の悪意の受益者に当たる。 (控訴人の主張)被控訴人の主張は,否認ないし争う。 (2) 控訴人が,被控訴人から,借入金債務の弁済として受けた金員は,支払督促,仮執行宣言付支払督促が存することから,控訴人の不当利得にならないといえるか。また,支払督促,仮執行宣言付支払督促によって,控訴人が被控訴人から貸金債権を回収した後に,被控訴人が控訴人に支払った金員につき被控訴人が控訴人に対し,不当利得により返還請求することは,信義則に反し,権利の濫用になるか(控訴人の主張)控訴人と被控訴人との間では, に,被控訴人が控訴人に支払った金員につき被控訴人が控訴人に対し,不当利得により返還請求することは,信義則に反し,権利の濫用になるか(控訴人の主張)控訴人と被控訴人との間では,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引について,控訴人を債権者,被控訴人を債務者とする仮執行宣言付支払督促が確定している。そして,控訴人は,支払督促,仮執行宣言付支払督促による履行請求に基づき,被控訴人から,借入金債務の弁済を受けたのであるから,控訴人 には不当利得はない。 また,被控訴人は,支払督促に対し,督促異議の申立てを行わず,仮執行宣言付支払督促に対しても,督促異議の申立てをせず,仮執行宣言付支払督促を確定させたのであり,この支払督促,仮執行宣言付支払督促により,控訴人が貸金債権を回収した後に,被控訴人が控訴人に支払った金員につき不当利得による返還請求をするのは,信義則に反し,権利濫用に当たり,許されない。 (被控訴人の主張)控訴人の主張は,争う。 支払督促は,裁判所書記官が債権者の主張について実体的判断をしないで発する処分であり,既判力を有しないから,支払督促,仮執行宣言付支払督促の存在によって被控訴人による過払金返還請求権の行使が妨げられるものではない。 (3) 本訴が提起された平成25年2月5日までに,被控訴人が借入金債務の弁済として支払った後10年が経過した金員の不当利得に基づく返還請求権は,時効により消滅したか(控訴人の主張)ア(ア) 借入金債務につき制限超過部分の元金への充当により過払金が発生した場合にはこの過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含む金銭消費貸借取引に係る基本契約に基づく,継続的な金銭消費貸借取引において,同取引に した場合にはこの過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含む金銭消費貸借取引に係る基本契約に基づく,継続的な金銭消費貸借取引において,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなどの特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行する(最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決・民集63巻1号247頁(以下「平成21年最高裁判決」という。))。 このように解されるのは,取引終了時までは過払金充当合意が過払金返還請求権の行使を妨げる法律上の障害となるからであり,そうである以 上,過払金充当合意がもはやその機能を有しないと評価することができる場合には,当該合意は法律上の障害とならず,過払金返還請求権も,取引の終了を待たず,権利発生時から10年でその消滅時効が完成すると解される。 (イ) 控訴人は,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引につき,約定利率により計算した貸金残元金及び遅延損害金の支払を請求して,被控訴人を債務者とする支払督促を申し立てた。支払督促の申立ては,貸金業者である控訴人が被控訴人に対して本件基本契約に基づき今後新たな貸付けを行う意思がないことを示している。被控訴人は,平成14年4月から,控訴人による支払督促の申立てまで,約定利率により計算した貸金元金に充当するだけの返済をすることができない状態が続いており,支払督促の申立ての時点において,被控訴人の信用はなくなっていた。 したがって,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引による過払金返還請求権の消滅時効については,平成21年最高裁判決がいう過払金充当合意が法律上の障害にならない特段の事情があるというべきである。 (ウ) そして 約に基づく金銭消費貸借取引による過払金返還請求権の消滅時効については,平成21年最高裁判決がいう過払金充当合意が法律上の障害にならない特段の事情があるというべきである。 (ウ) そして,控訴人は,本訴の答弁書において,過払金返還請求権の消滅時効を援用する旨の意思表示をし,上記答弁書は,平成25年2月20日,被控訴人に到達した。 (エ) したがって,被控訴人の控訴人に対する過払金返還請求権のうち,本訴が提起された平成25年2月5日までに,被控訴人が借入金債務の弁済として支払った後10年が経過した金員の不当利得による返還請求権は,既に時効期間が経過し,消滅している。 イ被控訴人の時効中断の主張(後記被控訴人の主張のイ項)に対する認否,反論被控訴人が控訴人に送付したとする平成24年12月17日付け「任意整理受任のお知らせ」と題する書面(甲1)の送付が,本件基本契約に基づく 金銭消費貸借取引による過払金の返還を請求するものであることは認めるが,控訴人が同月19日に同書面を受領したかについては不知。 (被控訴人の主張)ア控訴人の消滅時効の主張は,否認ないし争う。 平成21年最高裁判決のいう特段の事情とは,当事者間の過払金返還請求権の行使についての合意又はこれと同視し得る程度の事情をいうのであって,本件基本契約の当事者である被控訴人の意思と関わりなく,控訴人が一方的に申し立てた支払督促をもって上記特段の事情ということはできない。 また,控訴人が一方的に申し立てた支払督促により過払金充当合意が消滅するのは不当である。 したがって,控訴人が被控訴人に対して本件支払督促を申し立てたことは,平成21年最高裁判決のいう特段の事情に当たらない。 イ被控訴人は,遅くとも平成24年1 が消滅するのは不当である。 したがって,控訴人が被控訴人に対して本件支払督促を申し立てたことは,平成21年最高裁判決のいう特段の事情に当たらない。 イ被控訴人は,遅くとも平成24年12月19日までに,控訴人に対し,同月17日付けの「任意整理受任のお知らせ」と題する書面(甲1)を送付し,同書面によって,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引による過払金の返還を請求している。そして,被控訴人は,上記書面による催告後,6か月以内である平成25年2月5日に本訴を提起している。 したがって,上記の甲1による催告により,消滅時効の中断の効力が生じている。 第3 当裁判所の判断 1 控訴人は悪意の受益者であるか(争点(1))について貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき平成18年法律第115号による改正前の貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,民法704条前段所定の悪意の受益者であると推 定される(最高裁平成19年7月13日第二小法廷判決・民集61巻5号1980頁)。 控訴人が,被控訴人に対し,貸付け又は弁済の都度,貸金業法17条,18条所定の書面を交付したことをうかがわせる証拠は全くない。 したがって,控訴人につき,平成18年法律第115号による改正前の貸金業法43条1項の適用があるとは認められず,同項の適用があると認識するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情を認めることもできないから,控訴人は,過払金の受領について,民法704条前段所定の悪意の受益者と推定され,かかる推定を覆すに足る事情も認め ると認識するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情を認めることもできないから,控訴人は,過払金の受領について,民法704条前段所定の悪意の受益者と推定され,かかる推定を覆すに足る事情も認められないため,悪意の受益者であると認められる。 2 控訴人が,被控訴人から,借入金債務の弁済として受けた金員は,支払督促,仮執行宣言付支払督促が存することから,控訴人の不当利得にならないといえるか,また,支払督促,仮執行宣言付支払督促によって,控訴人が被控訴人から貸金債権を回収した後に,被控訴人が控訴人に支払った金員につき被控訴人が控訴人に対し,不当利得により返還請求することは,信義則に反し,権利の濫用になるか(争点(2))について制限超過部分を約定利息の債務の弁済として受領したが,制限超過部分を貸付金元本に充当した結果,過払金が発生する場合で,その受領者に平成18年法律第115号による改正前の貸金業法43条1項の適用がない場合,当該受領者に,過払金相当部分の給付を保持する権利はない。支払督促,仮執行宣言付支払督促には既判力がないから,上記の法理は,支払督促,仮執行宣言付支払督促を取得した債権者による履行請求により,約定利息の債務の弁済として支払われたものであっても,変わらない。したがって,支払督促,仮執行宣言付支払督促が存することから,控訴人が,被控訴人から借入金債務の弁済として受けた金員が不当利得にならないとはいえない。 また,上記の法理からすると,借入金債務の債務者が,支払督促に対し,督 促異議の申立てを行わず,仮執行宣言付支払督促に対しても,督促異議の申立てをせず,仮執行宣言付支払督促が確定していたとしても,特段の事情のない限り,この支払督促,仮執行宣言付支払督促による履行請求により,債権者が貸金債権を回収した後に 払督促に対しても,督促異議の申立てをせず,仮執行宣言付支払督促が確定していたとしても,特段の事情のない限り,この支払督促,仮執行宣言付支払督促による履行請求により,債権者が貸金債権を回収した後に,債権者が債務者に支払った金員につき過払金が発生しているとして,不当利得による返還請求したとしても,これが信義則に反し,権利濫用になるとは認められず,被控訴人が,控訴人に対し,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引により生じた過払金につき不当利得により返還請求することが,信義則に反し,権利濫用になるとする特段の事情を認めるに足りる証拠もない。 したがって,争点(2)に関する控訴人の主張は認められない。 3 本訴が提起された平成25年2月5日までに,被控訴人が借入金債務の弁済として支払った後10年が経過した金員の不当利得に基づく返還請求権は,時効により消滅したか(争点(3))について(1) 証拠(甲2の2,乙1,2)及び弁論の全趣旨によれば,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引は,継続的に借入れとその弁済が繰り返されることを予定した金銭消費貸借取引基本契約に基づく1個の連続した取引であることが認められる。 そうすると,控訴人と被控訴人との本件基本契約は,過払金充当合意を含んでいると解するのが相当である。 (2) そして,過払金充当合意を含む金銭消費貸借取引基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について過払金充当合意と内容の異なる合意が存在するなどの特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行すると解される(平成21年最高裁判決)。 そこで,控訴人が被控訴人に対して支払督促を申し立てたこと等が,上記特段の事情に該当するかを検討する。 事情がない限り,同取引が終了した時点から進行すると解される(平成21年最高裁判決)。 そこで,控訴人が被控訴人に対して支払督促を申し立てたこと等が,上記特段の事情に該当するかを検討する。 (3)ア証拠(甲2の2)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,平成13年7 月以降,控訴人に対する約定の弁済を延滞していたものと認められるところ,証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,平成14年9月ころに至り,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引につき,約定利率により計算した貸金残元金及び遅延損害金の支払を請求して,被控訴人を債務者とする支払督促を申し立てていることが認められる。控訴人による上記申立ては,控訴人の被控訴人に対する与信を停止し,残債務の回収に着手したものと評価するのが相当であり,現に控訴人は,これ以降,被控訴人から弁済を受けるのみで,同人に対する新たな貸付けを全く行っていないことが認められる(甲2の2,弁論の全趣旨)。そのため,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引については,支払督促が申し立てられた時点で,新たな借入金債務の発生する可能性が失われ,借主である被控訴人は,今後借入金債務に過払金を充当することを期待することができない状態になったと認めるのが相当である。 そして,被控訴人は,遅くとも支払督促の送達を受けたことにより,上記の状態に至ったことを認識したものと認められる。 イそうすると,被控訴人は,これにより,過払金を新たな借入金債務に充当することを想定し得なくなり,取引を継続させるために本件過払金返還請求権の行使を控える理由もなくなったのであるから,遅くとも支払督促が発せられたことを認識した時点において,既発生の過払金の返還請求権を行使することにつき法律上の障害がなくなったと認めるのが相 返還請求権の行使を控える理由もなくなったのであるから,遅くとも支払督促が発せられたことを認識した時点において,既発生の過払金の返還請求権を行使することにつき法律上の障害がなくなったと認めるのが相当であり,過払金返還請求権の消滅時効については,上記の特段の事情があるといえる。 したがって,被控訴人の過払金返還請求権のうち,被控訴人が支払督促の送達を受けた日以前に発生したものについては当該送達日から,その後に発生したものについては過払金が発生する都度,それぞれ消滅時効が進行すると解するのが相当である。証拠(乙3)によれば,支払督促は平成14年9月18日に発せられ,支払督促の被控訴人への送達から2週間より後に発 せられる仮執行宣言は,平成14年10月8日に発せられているから,平成14年9月中に,支払督促が被控訴人に送達されたものと認められる。 (4) これに対し,被控訴人は,平成21年最高裁判決のいう特段の事情について,当事者間の過払金返還請求権の行使についての合意又はこれと同視し得る程度の事情をいうのであって,本件基本契約の当事者である被控訴人の意思と関わりなく,控訴人が一方的に申し立てた支払督促をもって上記特段の事情ということはできず,また,控訴人が一方的に申し立てた支払督促により,過払金充当合意が消滅するのは不当であると主張する。 しかしながら,消滅時効の起算点については,権利の行使を妨げる法律上の障害の有無により判断すべきである。前記のとおり,被控訴人は,支払督促の送達を受けたことにより,新たな借入金債務の発生の可能性が失われ,同債務に過払金を充当することを期待することができない状態になったことを認識したのであり,これにより,既発生の過払金返還請求権の行使につき法律上の障害はなくなったというべきであるから,被控 失われ,同債務に過払金を充当することを期待することができない状態になったことを認識したのであり,これにより,既発生の過払金返還請求権の行使につき法律上の障害はなくなったというべきであるから,被控訴人の上記主張を採用することはできない。 (5) 証拠(甲1,2の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,平成24年12月17日付けの「任意整理受任のお知らせ」と題する書面(甲1)を控訴人に送付し,同書面によって,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引に係る過払金の返還を請求したこと,これを受けて,控訴人が,平成25年1月4日付けで,被控訴人に対し,上記取引の取引履歴(甲2の2)を送付したことが認められる。そして,これらの事実からすれば,同書面は,平成24年12月17日ころから平成25年1月4日ころまでの間に,控訴人へ到達したものと認められ,前提事実(4)項のとおり,被控訴人は,同書面の控訴人への到達の日から,6か月以内の日である同年2月5日に,本件訴訟を提起している。 (6) 以上によれば,原判決別紙計算書1記載の平成14年12月5日までに,被控訴人が借入金債務の弁済として支払ったことにより発生した過払金の返 還請求権は,支払督促の被控訴人への送達,あるいは,弁済金の支払による過払金の発生から10年が経過したことにより,時効により消滅し,原判決別紙計算書1記載の平成15年2月4日以降に,被控訴人が借入金債務の弁済として支払ったことにより発生した過払金の返還請求権の消滅時効は,甲1が,平成24年12月17日ころから平成25年1月4日ころまでに控訴人へ到達したことにより,中断したことが認められる。 4 証拠(甲2の1・2,乙1~3)及び弁論の全趣旨によれば,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引につき,制限超過部分につき,利息制限 でに控訴人へ到達したことにより,中断したことが認められる。 4 証拠(甲2の1・2,乙1~3)及び弁論の全趣旨によれば,本件基本契約に基づく金銭消費貸借取引につき,制限超過部分につき,利息制限法の制限利率に引き直して元本へ充当計算すると,平成14年12月5日時点で,過払金が発生していたことは明らかである。そうすると,平成15年2月4日から平成16年2月16日の間に被控訴人が控訴人へ支払った金員は,いずれも,その全額が過払金となることが認められ,その金額は,別紙計算書2のとおり,平成16年2月16日の時点で,過払金元金6万7000円,過払金利息2079円となる。 5 結論したがって,被控訴人は,控訴人に対し,過払金元金6万7000円及び過払金利息2079円の合計6万9079円並びに上記過払金元金6万7000円に対する平成16年2月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による過払金利息の支払を求めることができる。 よって,これと一部結論を異にする原判決につき,本件控訴に基づき,上記の限度で,原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官宮武康 裁判官大島広規 裁判官大下良仁 (別紙省略)

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