- 1 – 主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中400日をその刑に算入する。 理由 [罪となるべき事実]被告人は、第1 令和3年9月(以下、日付については断りのない限り令和3年9月のことである。)8日午後9時2分頃から同日午後9時5分頃までの間に、岡山市a区所在のA方において、Aの実子であるB(当時5歳又は6歳)に対し、包丁を手に持って「切るよ」、「切れるんよ、知っとる」などと申し向けるとともに、同人の間近で、その包丁を上下に振るなどし、同人の身体等にいかなる危害をも加えかねない態度を示し、もって凶器を示して脅迫した。 第2 10日午後8時8分頃、A方において、Bに対し、その胸ぐらを右手でつかんで持ち上げて同人を椅子の上に立たせ、その右側頭部を左手で叩いて付近の長椅子上に転倒させる暴行を加えた。 第3 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、10日午後10時45分頃、A方において、Bに対し、その頭髪をつかんで引っ張り、その胸ぐらをつかんで同人を持ち上げて椅子の上に立たせる暴行を加え、よって、その頃から同日午後11時44分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせ、さらに、同日午後11時44分頃から同日午後11時48分頃までの間に、A方において、Bに対し、そのパンツをつかむなどして同人を持ち上げて椅子の上に置いた両手鍋の中に入れて立たせるなどの暴行を加え、よって、同日午後11時46分頃から11日午前2時21分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるな- 2 – どして同所に留まらせるなどし、もって同人に義務のないことを行わせた。 第4 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行 同人を同所に立ち続けさせるな- 2 – どして同所に留まらせるなどし、もって同人に義務のないことを行わせた。 第4 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、11日午後8時57分頃から同日午後11時9分頃までの間に、A方において、Bに対し、その頭髪をつかんで引っ張り、その頸部等をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に置いた両手鍋の中に入れて立たせた上、その鼻孔に手指を挿入するなどの暴行を加え、よって、同日午後8時57分頃から12日午前0時24分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせ、さらに、同日午前2時46分頃から同日午前2時52分頃までの間に、A方において、床上にいたBに対し、その頭髪をつかんで立ち上がらせ、その身体をつかんで同人を持ち上げて前記両手鍋の中に入れて立たせるなどの暴行を加え、よって、その間、同人を同所に立ち続けさせて同所に留まらせ、さらに、同日午前3時36分頃から同日午前3時42分頃までの間に、A方において、床上にいたBに対し、その頭髪をつかんで同人を持ち上げて前記両手鍋の中に入れて立たせた上、濡れた上衣を着せるなどの暴行を加え、よって、同日午前3時36分頃から同日午前4時3分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせ、もって同人に義務のないことを行わせた。 第5 15日午後7時36分頃、A方において、Bに対し、その側頭部を右手で叩く暴行を加えた。 第6 17日午後7時48分頃、A方において、Bに対し、その頭頂部付近の頭髪を右手でつかんで引っ張り、そのまま同人の頭部を後方に振る暴行を加えた。 第7 17日午後8時27分頃、A方において、Bに対し、その頭部を右- 3 – 手で叩いて転倒させる暴行を加えた。 第8 つかんで引っ張り、そのまま同人の頭部を後方に振る暴行を加えた。 第7 17日午後8時27分頃、A方において、Bに対し、その頭部を右- 3 – 手で叩いて転倒させる暴行を加えた。 第8 17日午後8時57分頃、A方において、Bに対し、その後頭部付近の頭髪を右手でつかんで後方に引き倒す暴行を加えた。 第9 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、17日午後9時57分頃から同日午後10時頃までの間に、A方において、Bに対し、その頭髪をつかんで同人を引き上げて椅子の上に置いた両手鍋の中に入れて立たせた上、その頭髪をつかんで同人を上下に揺さぶるなどの暴行を加え、よって、同日午後9時57分頃から18日午前3時47分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせるなどし、もって同人に義務のないことを行わせた。 第10 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、18日午後9時47分頃から同日午後10時頃までの間に、A方において、Bに対し、その口腔内に手指を差し入れて下顎部をつかんで同人を持ち上げて立たせ、その身体をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に置いた両手鍋の中に入れて立たせる暴行を加え、よって、同日午後10時頃から19日午前1時29分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせ、もって同人に義務のないことを行わせた。 第11 20日午後7時28分頃、A方において、Bに対し、その口腔内に右手指を差し入れ、その下顎部をつかんで同人を引きずる暴行を加えた。 第12 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、21日午前2時25分頃、A方において、Bに対し、両手鍋の中に立た んで同人を引きずる暴行を加えた。 第12 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、21日午前2時25分頃、A方において、Bに対し、両手鍋の中に立たせた同人を両手鍋ごと持ち上げて、これをそのまま椅子の上に置く暴行を加え、よって、その頃から同日- 4 – 午前3時31分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせ、もって同人に義務のないことを行わせた。 第13 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、21日午後6時54分頃から同日午後8時3分頃までの間に、A方において、Bに対し、その口腔内に手指を差し入れて下顎部と頭部をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に置いた両手鍋の中に入れて立たせた上、同人にどんぶりを持たせて胃内容物をその中に嘔吐するよう要求し、同人の手指をつかんでその口腔内に押し込むなどの暴行を加え、よって、同日午後6時54分頃から同日午後9時42分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせて同所に留まらせるとともに、前記どんぶりの中に胃内容物を嘔吐させるため同人の手指をその口腔内に差し入れさせるなどし、さらに、同日午後10時35分頃、A方において、床上にいたBに対し、同人の身体を持ち上げて前記両手鍋の中に入れて立たせる暴行を加え、よって、その頃から同日午後10時37分頃までの間、同所に立ち続けさせて同所に留まらせ、さらに、同日午後11時8分頃、A方において、床上にいたBに対し、その身体をつかんで同人を持ち上げて前記両手鍋の中に入れて立たせる暴行を加え、よって、その頃から22日午前0時15分頃までの間、同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせ、もって同人に義務のないことを行わせた。 第14 Aと共謀の上、Bが被告 中に入れて立たせる暴行を加え、よって、その頃から22日午前0時15分頃までの間、同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせ、もって同人に義務のないことを行わせた。 第14 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、22日午後9時3分頃から同日午後9時52分頃までの間に、A方において、Bに対し、その着衣をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に置いた両手鍋の中に入れて立たせるなどの暴行を加えた上、同人にどんぶりを持たせて胃内容物をその中に嘔吐するよう要求し、よって、同日午後9時5分頃から同日午後10- 5 – 時3分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせて同所に留まらせるとともに、前記どんぶりの中に胃内容物を嘔吐させるため同人の手指をその口腔内に差し入れさせるなどし、さらに、同日午後11時27分頃から23日午前2時29分頃までの間に、その頭髪をつかんで引っ張り、その身体をつかんで持ち上げて椅子の上に載せた板の上に置いた両手鍋の中に同人を入れて立たせるなどの暴行を加えた上、同人にどんぶりを持たせて胃内容物をその中に嘔吐するよう要求し、よって、22日午後11時27分頃から23日午前3時33分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせるとともに、前記どんぶりの中に胃内容物を嘔吐させるため同人の手指をその口腔内に差し入れさせるなどし、もって同人に義務のないことを行わせた。 第15 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、23日午前7時15分頃から同日午前10時40分頃までの間に、A方において、Bに対し、同人の着衣をはぎ取って全裸にし、その顔面を右手で殴り、その頭髪をつかんで引っ張り、その身体をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に載せ 頃から同日午前10時40分頃までの間に、A方において、Bに対し、同人の着衣をはぎ取って全裸にし、その顔面を右手で殴り、その頭髪をつかんで引っ張り、その身体をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に載せた板の上に置いた両手鍋の中に同人を入れて立たせるなどの暴行を加え、同人にどんぶりを持たせて胃内容物をその中に嘔吐するよう要求し、よって、同日午前7時20分頃から同日午後0時33分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせて同所に留まらせるとともに、前記どんぶりの中に胃内容物を嘔吐させるため同人の手指をその口腔内に差し入れさせるなどし、もって同人に義務のないことを行わせた。 第16 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、24日午前2時24分頃から同日午前2時34分頃までの間に、A方において、Bに対し、その身体をつか- 6 – んで同人を持ち上げて椅子の上に載せた板の上に置かれたポリタンクの上に同人を立たせるなどの暴行を加え、よって、同日午前2時34分頃から同日午前3時17分頃までの間、同所に立ち続けさせるなどして同所に留まらせるなどし、もって同人に義務のないことを行わせた。 第17 24日午後1時7分頃から同日午後1時17分頃までの間に、A方において、寝ているBの頭髪を右手でつかんで引っ張り、その左腕を右手でつかんで同人を引き上げて立ち上がらせ、その頭頂部を右手のげんこつで叩き、その鼻を右手指でつまんで手前に引っ張る暴行を加えた。 第18 Aと共謀の上、Bが被告人を畏怖していることに乗じ、Bに義務なきことを行わせようと考え、25日午後0時55分頃、A方において、Bに対し、その身体をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に重ねて置いたポリタンクの上に立たせる暴行を加え、よって、その頃から同日午 なきことを行わせようと考え、25日午後0時55分頃、A方において、Bに対し、その身体をつかんで同人を持ち上げて椅子の上に重ねて置いたポリタンクの上に立たせる暴行を加え、よって、その頃から同日午後1時2分頃までの間、同人を同所に立ち続けさせて同所に留まらせ、もって同人に義務のないことを行わせた。 第19 Aと共謀の上、25日午後1時3分頃から同日午後2時25分頃までの間、A方において、Bに対し、その全身を掛け布団及び敷き布団で巻き付け、その状態の同人を押し入れの中に入れて放置し、同人を同所から脱出することを著しく困難な状態にし、もって同人を不法に逮捕監禁し、よって、令和4年1月12日午前11時41分頃、岡山市a区C病院において、同人を低酸素脳症により死亡させた。 [法令の適用] 1 罰条第1 暴力行為等処罰に関する法律1条、刑法222条1項第2、5~8、11、17- 7 – いずれも刑法208条第3、4、9、10、12~16、18いずれも刑法60条、223条1項第19 刑法60条、221条、220条 2 刑種の選択第1、第2、第5ないし第8、第11、第17の罪についていずれも懲役刑を選択、第19の罪について刑法10条により同法220条所定の刑と同法205条所定の刑とを比較し重い傷害致死罪について定めた刑により処断 3 併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い第19の罪の刑に法定の加重) 4 未決勾留日数の算入刑法21条 5 訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)[量刑の理由]処断刑の中心となる最も重い罪は逮捕監禁致死(判示第19)であるが、被告人の量刑を判断するにあたっては、被 1条 5 訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)[量刑の理由]処断刑の中心となる最も重い罪は逮捕監禁致死(判示第19)であるが、被告人の量刑を判断するにあたっては、被告人が、無抵抗の幼い被害者を日常的に虐待した果てに、被害者の死亡という結果を生じさせたものであることが重視されるべきである。すなわち、逮捕監禁致死に先立つ強要、示凶器脅迫、暴行の各事案は判示第1ないし18のとおりであるが、殊に、被告人は、判示のとおり判明している令和3年9月の期間に限っても、16日間にわたり、連日ないし連夜、まだ五、六歳の幼い被害者を椅子や板の上に置いた両手鍋の中に入れて、数時間、長いものでは6時間もの長時間にわたり立たせたり、どんぶりを持たせて胃内容物をその中に嘔吐するよう要求するなどの過酷な強要行為等に及び、中には被害者を不安定なポリタンクの上に立たせたり、被害者を裸にして霧吹きで液体を吹き付け、冷房や扇風機の風を当てて寒がらせるなど、より過酷な態様にエス- 8 – カレートさせる等、虐待そのものを楽しんでいるかのようにも見えるのであって、非常に陰湿でもある。被害者は、被告人に対する強い恐怖の余り、本来の子どもらしい無邪気さを失い、被告人や共犯者が寝静まったりする中でも、真っ暗な中ひとり立ち続け、椅子の上に置かれた鍋の中で寝てしまい頭から落下した後も、自ら鍋を置き直し、再び鍋の中に戻るなど、その姿は哀れである。被害者が受けたこのような仕打ちは、大人でも決して耐えられるようなものではなく、いわんや幼い被害者にとってはなおさらである。母親である共犯者を含め誰からの助けも得られない状況で、終わりの見えない虐待にさらされ続けた被害者の絶望は察するに余りあり、被害者が受けた身体的、精神的苦痛は計り知れない。 そして、こ らである。母親である共犯者を含め誰からの助けも得られない状況で、終わりの見えない虐待にさらされ続けた被害者の絶望は察するに余りあり、被害者が受けた身体的、精神的苦痛は計り知れない。 そして、このような日常的虐待を続ける果てに、被告人は、泣き叫び抵抗する被害者を無理やり和室に連行し、布団を二重にして身体に巻き付ける形で顔面まで覆った上、さらにその状態の被害者を頭部が下になるようにして押入れに入れて放置し、被害者を低酸素脳症により死亡させた。被告人の行為は、幼い被害者が、身体を動かすことはおろか呼吸することさえ困難となるような危険性の高いもので、そのことを十分に予見できるはずなのに、あえてこのような危険な行為を行ったことは厳しく非難されるべきである。被害者は、被告人によって和室に連れ去られる際、共犯者である母親にも聞こえるほどの大声で泣き叫んだり被告人を蹴ったり、精一杯の抵抗を試みていた。しかし、被告人は、そのような被害者を押さえ込み、身動きが取れない状態にして放置した。意識を失い、二度と目覚めることがないままに死亡した被害者の苦しみは想像を絶する。わずか6歳の被害者の未来が奪われた被害結果は極めて重大であると言わざるを得ない。 被告人は、共犯者が自身の子どもたちを大切なものと言っておきながら、本来自分ですべき子どもたちに対するしつけを被告人に任せきってい- 9 – ることに対して不満や苛立ちを抱いており、殊に令和3年夏ごろから、共犯者に対する当てつけとして、虐待行為がエスカレートしていき、本件一連の犯行に及んだと述べる。その語る動機は必ずしも了解し得るものではないが、自身の抱える不満等を弱い被害者にぶつけることは何ら正当化されるものではない。共犯者が被告人を止めることなく、被害者を助けることもしなかった動機は明らかでは 動機は必ずしも了解し得るものではないが、自身の抱える不満等を弱い被害者にぶつけることは何ら正当化されるものではない。共犯者が被告人を止めることなく、被害者を助けることもしなかった動機は明らかではないが、共犯者の動機がどうであれ、主体的に本件各犯行を実行した被告人の責任に影響はなく、犯行に至った経緯や動機に酌量の余地は一切ない。 以上の犯情によれば、本件は、児童虐待を動機として、殺意なく被害者を死亡させたという逮捕監禁致死、保護責任者遺棄致死、傷害致死のような事案(その他の条件としては、共犯、被害者の落ち度なし、示談又は宥恕なし、前科等なし。)に照らしても、相当に重い部類の事案と評価できる。 そうすると、被告人が犯行の全てを認め、犯行状況が映っている見守りカメラの映像を任意提出し、自己に不利な事実も含めて明らかにするなどして、反省の態度を示していること、被告人の妻が出廷し、子らとともに被告人の帰りを待つ旨証言したこと等を考慮しても、主文の刑を下回るものではないものと判断した。 (求刑:懲役18年)令和5年10月19日岡山地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官本村曉宏 - 10 – 裁判官横井裕美 裁判官杉浦一輝
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