主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役8年に処する。 原審における未決勾留日数中80日をその刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は,解任前の弁護人高橋賢一作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書(主任弁護人大熊裕起及び弁護人真木幸夫共同作成の弁論要旨を含む。)に記載されたとおりであり,これに対する答弁は,検察官宮成正典作成の答弁書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。 第1 訴訟手続の法令違反の主張について(控訴趣意書第1の1) 1 論旨は,要するに,原審は,Bの検察官に対する供述調書(原審乙30ないし34号証,なお,乙34号証については不同意部分に限る。以下「本件検面調書」という。)を刑訴法321条1項2号により採用して取り調べたが,(1)Bの本件検面調書における供述には特信性がなく,同供述調書には証拠能力がない,また,(2)刑訴法321条1項2号により証拠として採用できるのは,公判供述との相反部分に限られるところ,検察官は本件検面調書の一部について,公判供述と相反していると主張しているに過ぎないにもかかわらず,それらの供述調書全体について証拠能力を認め,証拠として採用した原審の措置は,刑訴法321条1項2号の解釈適用を誤ったもので,その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。 2 先ず,(1)の点についての所論は,(ア)Bを取り調べた警察官は当初から,被告人がBにXの殺害を指示し,Bがこれに従ってCと共にXを殺害したとの予断と筋書きを持って,Bに対する取調べを行い,警察官のみならず検察官も,Bの弁明を全く聞き入れず,Bは無力感にとらわれて,調書の内容に異議を唱えなかったこと,(イ)警察官はBに対し,警察官の筋書きどおりに事実を認めなければ,X 取調べを行い,警察官のみならず検察官も,Bの弁明を全く聞き入れず,Bは無力感にとらわれて,調書の内容に異議を唱えなかったこと,(イ)警察官はBに対し,警察官の筋書きどおりに事実を認めなければ,Xの焼死体の写真を取調室に貼る,道場でBを痛めつける,Bの実妹のDを証拠隠滅等で追及するなどと不当違法な圧力を加えたこと,(ウ)Bは,頭痛,胃痛,吐気,不眠,下痢等の症状が続き,体調が悪く,幻聴も生じた状態で長時間の取調べを受けたこと,(エ)Bは平成12年7月1日(なお,平成12年の出来事については,年数の記載を省略することがある。)に再逮捕されたころ,警察官からDが6月下旬に自殺を図ったことを知らされて精神的に動揺していたこと,そしてこれらの事情により,Bは警察官の筋書きどおりに供述し,その旨の警察官調書が作成され,それに基づいて本件検面調書が作成されたものであって,同調書には特信性がないと主張する。 (1) そこで検討すると,原審記録及び関係証拠によれば,Bは,6月9日にXに対する殺人容疑により逮捕され,同月11日に勾留され,同月30日に同趣旨の公訴事実により起訴されたこと,さらに,7月1日にYに対する殺人未遂容疑により再逮捕され,同月3日に勾留され,同月22日に同趣旨の公訴事実により起訴されたこと,Bは被告人と5月21日午後11時29分ころ及び翌22日午前3時11分ころ,電話によって話をしていること(以下前者の通話を「①の通話」と,後者の通話を「②の通話」という。なお,各通話時間は①の通話が26.5秒,②の通話が5分25秒である。),Bは,Xに対する殺人容疑により逮捕勾留されていた間,①の通話では,被告人から「Xがこっちに来て社長の娘にちょっかいを出している。」という話を聞いたが,被告人からの具体的な指示はなかった,②の通話では,被告 対する殺人容疑により逮捕勾留されていた間,①の通話では,被告人から「Xがこっちに来て社長の娘にちょっかいを出している。」という話を聞いたが,被告人からの具体的な指示はなかった,②の通話では,被告人がその時していた競馬ゲームに関する話をしたのであって,自分がXを連れ出したという話をしなかったなどと供述していたこと(原審乙28,29号証),これに対し,Yに対する殺人未遂容疑により再逮捕された後,Bは,①の通話では,被告人は,社長か社長の奥さんから電話がかかってきたと述べ,「Xがまた社長の娘にちょっかいを出しているんだ。Xをしめろ。」と指示し,その言葉をXに対し殴る蹴るなどの暴力を振るえという意味に理解し,「分かりました。」と言って,被告人の言うことを承諾したこと,②の通話では,Bが被告人に「Xを捕まえて,今一緒にいます。Xをしめてます。」などと言ったら,被告人から「どういうことになるか分からせろ。」又は「きっちり分からせろ。」と言われ,社長の娘にちょっかいを出すなという言い付けを守らなかったXに,言うことを聞かないとどんな目に遭うかということを殴る蹴るなどの暴力を振るってしっかり分からせるとともに,社長の娘に二度と近付かないことを分からせろと言っていると理解し,更にXをしめようと思い,「分かりました。」と言って,被告人の言うことを承諾して電話を切った旨供述している(原審乙30ないし32,34号証)こと,さらに,Bは同乙32号証においても,BがCに指示して灯油を用意させた理由につき,Xを脅す道具とするためである旨供述していて,当初から灯油を用いてXを焼死させる意図があったことを否定していることが認められる。このような,本件検面調書の内容をみても,Bは,Xに対する殺人容疑による逮捕勾留中には,被告人から指示を受けたこと自体を否定していた てXを焼死させる意図があったことを否定していることが認められる。このような,本件検面調書の内容をみても,Bは,Xに対する殺人容疑による逮捕勾留中には,被告人から指示を受けたこと自体を否定していたものであり,さらに,Yに対する殺人未遂容疑による再逮捕後も,被告人からはXをしめろ及び分からせろと言われた,すなわち,Xに殴る蹴る等の暴力による制裁を加えるように指示された旨供述しているのであって,被告人からXを殺害するように指示されたとは供述しておらず,また,灯油を用意させた理由についても前記のように供述しているに過ぎず,Bは自分なりの判断によって検察官に対して供述していたことが窺われるのであって,Bが原審公判(分離されたB自身の公判における供述を含む。以下同様である。)で供述するように,捜査官の言うとおりに事実を認め,その趣旨の供述調書が作成されたものとは到底認められず,本件検面調書の作成状況に関するBの原審公判供述の信用性は乏しいといわざるを得ない。 (2) 次に,個別的な所論について検討する。先ず所論(ア)については,捜査官が他の証拠等に基づき,一定の合理的な心証ないし疑いを有し,それに基づいて被疑者を取り調べることが不当であるとはいえないところ,関係証拠によれば,本件は,BがCと共にXに灯油をかけた上,火をつけて焼死させた事案であるところ,その前日に被告人から電話がかかってきた(①の通話)直後,BはXを捜すためにD方を出発したこと,BやCにはXに制裁を加えたり,殺害する個人的な動機が見当たらないのに,被告人には少なくともXに制裁を加える動機があること,被告人は暴力団組員で,Bはその舎弟であることなどの事情が認められ,これらの事情を考慮すると,捜査官は,被告人がBにX殺害を指示し,Bがこれに従ってCと共にXを殺害したとの疑いを持っ 機があること,被告人は暴力団組員で,Bはその舎弟であることなどの事情が認められ,これらの事情を考慮すると,捜査官は,被告人がBにX殺害を指示し,Bがこれに従ってCと共にXを殺害したとの疑いを持っていたことが窺われるところ,そのような心証に基づいてBの取調べを行うことが不当であるとはいえない。さらに,Bの検察官及び警察官に対する各供述調書の内容からしても,Bが弁解している点については,その趣旨に沿った供述調書が作成されていることが認められるから,所論(ア)は失当である。 (3) 所論(イ)については,Bは原審公判において,所論(イ)に沿う供述をしているが,B及びDの原審公判供述によると,捜査官は,Xの焼死体の写真を取調室に貼ったり,Bに見せたりはしていないこと,Bを道場に連れて行ってはいないこと,捜査官がDに対し不当違法な圧力を加えた事実がないことが認められることからして,所論(イ)で主張するような事実の存在は疑わしい上,その所論に沿うBの原審公判供述は,前記のようなBの供述調書の内容等に照らすと,不自然かつ曖昧であって信用できず,所論(イ)主張の事実があったとは認められない。 (4) 所論(ウ)については,原審記録及び留置人出入簿写し(原審弁護人請求証拠10号証)によれば,Bは,代用監獄小出警察署附属留置場に勾留されていたところ,最初に逮捕された6月9日から追起訴された7月22日までの間,取調べのため留置場を出場した時刻は最も早いときで午前9時であり,取調べを終了して留置場に入場した時刻は最も遅いときで午後10時であること,午後9時30分以降午後10時までの間に留置場に入場したのは合計8回あるが,そのうち5回は新潟地方検察庁長岡支部における検察官の取調べがあったためであり,同支部から小出警察署までの押送時間もかかること,さらに, 以降午後10時までの間に留置場に入場したのは合計8回あるが,そのうち5回は新潟地方検察庁長岡支部における検察官の取調べがあったためであり,同支部から小出警察署までの押送時間もかかること,さらに,少なくとも小出警察署においては,適切な食事時間等の休憩時間をとった上での取調べがなされていることが認められ,これらの事情を考慮すると,特に長時間の取調べがなされたとはいえない。また,「特異動静,処遇等に関する申出」と題する書面(動静簿)写し(原審弁護人請求証拠11号証)によれば,Bは,Xに対する殺人容疑で逮捕された6月9日以降同月中旬ころまでの間に,胃痛,頭痛,不眠,食欲不振及び下痢等を訴え,医師の診察を受け,薬を処方されるなどしたことがあったが,幻聴を訴えたというようなことはなかったこと,Yに対する殺人未遂容疑で再逮捕された翌日である7月2日には,取調べが1日中行われたが落ち込んだ様子もなかったこと,それ以降,Bから体調が不調であるとの申し出はなされておらず,この時期においてBの体調には問題がなかったものと認められるから,所論(ウ)も失当である。 (5) 所論(エ)については,B及びDの原審公判供述等によれば,Dは6月下旬ころ自殺未遂を図ったこと,Bは7月1日に再逮捕されたころ,警察官からその話を聞いたことが認められる。Bは原審公判において,警察官からDの自殺未遂の話を聞き,自分の意思を全部放棄して,警察官の言うとおりに供述した旨述べるが,他方,Bの原審公判供述によれば,Bは警察官から,「被告人からX殺害の指示があったのか。」と追及されていたことが認められるところ,Bはそれを否定して,Xを殺害するようにとの指示はなく,Xをしめろという指示があったにとどまるという趣旨の供述をしていたものであって,Bが原審公判で供述するように,警察官の言うと が認められるところ,Bはそれを否定して,Xを殺害するようにとの指示はなく,Xをしめろという指示があったにとどまるという趣旨の供述をしていたものであって,Bが原審公判で供述するように,警察官の言うとおりの調書が作成されたとはいえない。むしろBは,警察官からDが自殺未遂を図ったとの話を聞き,Dがそうしたのは自分やCのことが心配でならないからだと思い,自分がこのまま嘘をついているとDにもっと心配をかけることになると思って,被告人から「Xをしめろ。」と言われた旨捜査官に対して供述したことが認められるのであって(原審乙31号証),Bがそのように供述するに至った理由も合理的であるといえる。したがって所論(エ)も失当である。 (6) 他方,関係証拠によれば,被告人は昭和59年秋ころから,新潟県南魚沼郡a町所在の暴力団組員として活動を始めたこと,Bは暴走族に加入して活動していたところ,その後ろ盾をしていた被告人にあこがれ,昭和63年ころ被告人と同じ暴力団に加入して被告人の舎弟となったこと,Bは平成4年ころ,被告人は平成7年ころ,いずれも前記暴力団を脱退したこと,被告人はEに誘われ,平成7年9月ころから平成10年12月ころまで同人が経営する運転代行会社で稼働し,Bも被告人の口添えにより平成7年9月ころから翌8年1月ころまで同会社で働いていたこと,被告人は同会社に地元の暴力団関係者から妨害が入ったことと,Bが他の暴力団ともめ事を起こして追われていたことから,Bを守るためもあって,平成10年12月ころ以前熱心に誘ってくれた群馬県内の暴力団H組に加入し,その若い衆として活動するようになったこと,Bも被告人の舎弟として,被告人がH組に加入したことに伴い同組に加入し,以後両名とも暴力団組員として活動していること,Bは自分の胸に被告人の別名「A」の入れ墨を彫り 衆として活動するようになったこと,Bも被告人の舎弟として,被告人がH組に加入したことに伴い同組に加入し,以後両名とも暴力団組員として活動していること,Bは自分の胸に被告人の別名「A」の入れ墨を彫り込んでいることが認められ,このような被告人とBとの特別な関係を考慮すれば,Bが原審公判において,被告人の面前で被告人に不利な供述をすることが困難である情況が存在するものと認められる上,本件検面調書の供述内容をも考慮すると,本件検面調書におけるBの供述には,刑訴法321条1項2号所定の特信性もこれを肯定することができる。したがって,所論(1)は理由がない。 3 次に,所論(2)について検討すると,Bの原審公判供述と本件検面調書における供述とは,①の通話における被告人とBとの会話の内容,Bがその直後にXを捜しに行った理由,D方を出発する際のBの言動,BがCに灯油を用意させた理由,②の通話における被告人とBとの会話の内容など多岐にわたる事項について相反部分が存在する上,それら以外の部分については,前記相反部分と密接不可分に関連していて,それらに付随しあるいは従属する部分であって,その部分のみを切り離すことができないものであることが認められるから,原審が本件検面調書全体を証拠採用したことが違法とはいえない。所論(2)も理由がない。 第2 訴訟手続の法令違反の主張について(控訴趣意書第1の2) 1 論旨は,要するに,原審は,弁護人がしたBの精神状態に関する鑑定請求を却下したが,①及び②の各通話がなされた時点におけるBの精神状態,並びに,Bが相当飲酒した後に覚せいした場合の記憶保持の程度を正確に把握しなければ,Bの検面調書の信用性を判断することやBの行動を正しく理解できないにもかかわらず,Bの精神鑑定請求を却下した原審の措置は,刑訴法308条,憲法3 せいした場合の記憶保持の程度を正確に把握しなければ,Bの検面調書の信用性を判断することやBの行動を正しく理解できないにもかかわらず,Bの精神鑑定請求を却下した原審の措置は,刑訴法308条,憲法31条,37条1項に違反するもので,それが判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。 2 そこで検討すると,関係証拠によれば,Bが5月21日午後11時30分過ぎころD方を出発するまでに,相当程度ビールを飲酒していたことは窺えるところ,Bは原審公判において,「5月21日は昼過ぎから午後11時30分ころまでに500ミリリットル入り缶ビールを12,3本飲み,①の通話の後,D方を出発する時点ではろれつが回らず,足取りもちょっとふらつく感じであった。 玄関先でDと話したが余り覚えていない。」と供述している。しかしながら,被告人は①の通話では,Bが酔っているとの印象を全く受けなかった旨原審公判(Bの公判において証人としてした供述を含む。以下同様である。)において供述していること,BがD方を出発した後,Bと行動を共にしていたIは,その後新潟県長岡市内に至った時点において,Bはそんなに酔っていない様子であった旨供述していること(原審甲76号証),さらに,D方を出発する前のBの言動等に関するDの供述や,Bと同日午後11時42分ころ,電話で話をしたCの供述を検討しても,その時点において,Bがろれつが回らない程酔っていた様子を窺うことはできず,Bの酔いの程度に関する同人の前記原審公判供述は信用できず,①の通話の時点ではBはそれ程酔っていなかったことが認められる。加えて,Iの検面調書(原審甲76号証)等の関係証拠によれば,Bは,同日午後11時30分過ぎころD方を出発して以降,翌22日午前3時11分ころ②の通話をした時点までに,500ミリリットル入りの缶ビー えて,Iの検面調書(原審甲76号証)等の関係証拠によれば,Bは,同日午後11時30分過ぎころD方を出発して以降,翌22日午前3時11分ころ②の通話をした時点までに,500ミリリットル入りの缶ビール3本のうち相当量を飲酒したことが認められるが,その飲酒量や飲酒にかけた時間を考慮すると,Bの酔いの程度はそれ程高くなかったことが窺われる。さらに,Bの捜査段階及び原審公判における供述等の関係証拠によれば,Bは,①の通話において被告人と話した後,出掛ける準備をして,Iにかけた電話をDに渡してIの居場所を確認させた上,その直後,a町所在の当時のD方に来たI運転の車に乗り込み,Iには長岡に戻ったXやYらを誘って飲みに行こうと虚偽の事実を申し向けて,IをしてXらと連絡を取らせようとしたこと,Bは,長岡市に着くまでの間にCに電話をかけて灯油を用意するよう指示したこと,長岡市内に入ってからIに長岡市の地図を買わせ,さらに夜間に若者が集まりそうな場所に赴き,Xを捜したが見つからなかったこと,BはIにYを誘うように指示し,IはYと電話で連絡をとって同人と待ち合わせをし,同人を自車に乗せたこと,その後,BはYにX方を案内させ,XをIの車まで連れてくるように指示し,その際にもYに対し「へたなことをすんなよ。ちゃんと呼んでこいよ。」などと注意したこと,Yが連れてきたXをYと共にIの車に乗せ,Iに対しa町に戻るように指示し,a町内のコインスナックで下車して被告人に電話連絡をしたこと(②の通話),その後,Cに電話をかけ,同町大字b内の工業団地まで来るよう指示し,同所においてCを待っている間,XとYを下車させて路上に正座させたが,そのときに乗用車が通過したため,同車の運転者らに不審を抱かせないようにXとYを立ち上がらせたこと,同所から出発してしばらくはBが車を運転し Cを待っている間,XとYを下車させて路上に正座させたが,そのときに乗用車が通過したため,同車の運転者らに不審を抱かせないようにXとYを立ち上がらせたこと,同所から出発してしばらくはBが車を運転していたことなどの各事実が認められ,これらの事実を総合すると,本件犯行の前後を通じ,Bには事態を正しく認識し,それに従った行動をとる能力が十分備わっていたことが認められる。さらに,原審で取り調べたBの警察官及び検察官に対する各供述調書の内容をみると,Bは,記憶が明確な事項については断定的な供述をしているのに対し,記憶にない事項については,「覚えていない」「分からない」などと供述し,記憶が確実とまではいえない事項については,「何々と思う」などと供述していて,記憶のある事項とそれが確実とはいえない事項や記憶にない事項とを明確に区別して供述していることが認められる上,Bの原審公判供述によっても,Bは相当詳細に記憶していて,供述していることが窺われるから,Bの精神鑑定をしなければ,Bの捜査段階における供述の信用性が判断できないとはいえない上,Bの行動を理解するために精神鑑定を行う必要があるともいえない。したがって,Bの精神状態に関する鑑定請求を却下した原審の措置が,刑訴法308条,憲法31条,37条1項に違反するとはいえない。論旨は理由がない。 第3 事実誤認及び法令適用の誤りの主張について 1 論旨は,要するに,原判決は,被告人にはXを殺害する動機があったことを肯定した上で,被告人が,5月21日及び翌22日に電話でBに対し,Xを「しめろ。」などと指示し,成り行きによっては死んでもやむを得ない旨示唆するや,これを承諾したBが,Cに灯油を用意させ,同人と共に,原判示のJトンネル内出入口付近道路上で,正座させたX(当時16歳)の身体に大量の灯油を浴びせか 行きによっては死んでもやむを得ない旨示唆するや,これを承諾したBが,Cに灯油を用意させ,同人と共に,原判示のJトンネル内出入口付近道路上で,正座させたX(当時16歳)の身体に大量の灯油を浴びせかけ,Cに「火をつけろ。」と指示し,ここに被告人は,B,Cと順次共謀の上,同月22日午前4時30分ころ,同所で,Cにおいて,Xが死亡するに至るかも知れないことを認識しながら,あえて,ライターでXの着衣に点火し,その身体ともども燃え上がらせ,よって,そのころ,同所において,Xを焼死させて殺害したとの事実を認定しているが,①被告人はBに対し,Xを殺害するあるいは同人に暴行を加える旨の指示をしておらず,Bらとの間で本件犯行を共謀した事実はない,②仮にBらとの共謀が認められるとしても,被告人には,Xを殺害する動機はなく,同人殺害の未必的故意さえもなかったから,X殺害を共謀したことはない,③原判決は本件が暴力団組員による暴力団特有の犯罪であることを強調してとらえるあまり,被告人がB及びCと共謀の上,Xを殺害したとの誤った事実を認定したもので,原判決には事実の誤認ないしは法令適用の誤りがあって,これらは判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。 2 先ず,被告人とBらとの間の共謀について検討する。 (1) 関係証拠によれば,原判示のとおり,BはCと共謀の上,5月22日午前4時30分ころ,Jトンネル内において,Xが死亡するかも知れないことを認識しながら,あえて,Cにおいて,ライターでX(当時16歳)の着衣に点火し,その身体ともども燃え上がらせ,そのころ,同所において,Xを焼死させて殺害した事実(以下「本件犯行」という。)は,これを優に認めることができる。 (2) Bは捜査段階において検察官に対し,自分が本件犯行に及んだ原因は,①の通話において被告 所において,Xを焼死させて殺害した事実(以下「本件犯行」という。)は,これを優に認めることができる。 (2) Bは捜査段階において検察官に対し,自分が本件犯行に及んだ原因は,①の通話において被告人から「Xをしめろ。」と指示され,②の通話において被告人から「(Xを)分からせろ。」と指示されたからである旨供述している(原審乙30ないし32,34号証)。すなわち,Bは検察官に対し,被告人から指示された状況について,「被告人は①の通話において私に対し,社長か社長の奥さんから電話がかかってきたと言い,『Xがまたこっちに来て,社長の娘にちょっかいを出している。』というようなことを言った。 そして,被告人は私に,命令口調で『Xをしめろ。』と言った。私は,その言葉をXに対し殴る蹴るなどの暴力を振るえという意味に理解した。私は,Xが以前社長の娘にちょっかいを出して,そのために被告人が社長に謝って収めたのに,またXが社長の娘にちょっかいを出したので,被告人がそれに腹を立てて,私にXをしめろと言ったのだと思った。私は,Xが私の兄貴分の被告人に面倒を見てもらいながら,その面目を潰したと思って腹が立ち,被告人の言うとおりにしようと思った。そこで私は『分かりました。』と言って,被告人の言うことを承諾した。私は,その電話を切るとすぐに,Xを見つけ出してしめるための行動を開始した。その後,私は②の通話において被告人に対し,『ご苦労様です。』などと挨拶をした後,被告人にそれまでの大雑把な経過を報告し,その中で『Xを捕まえて,今一緒にいます。Xをしめています。』というようなことを言った。そうすると,被告人は,『どういうことになるか分からせろ。』だったか『きっちり分からせろ。』だったか,とにかく『分からせろ。』という言葉を私に言った。私は被告人が,社長の娘にちょっかい とを言った。そうすると,被告人は,『どういうことになるか分からせろ。』だったか『きっちり分からせろ。』だったか,とにかく『分からせろ。』という言葉を私に言った。私は被告人が,社長の娘にちょっかいを出すなという言い付けを守らなかったXに,言うことを聞かないとどんな目に遭うかということを殴る蹴るなどの暴力を振るってしっかり分からせるとともに,社長の娘に二度と近付かないことを分からせろと言っていると理解した。そこで,私は,更にXをしめようと思い,『分かりました。』と言って,被告人の言うことを承諾して電話を切った。」旨供述している。なお,関係証拠によれば,被告人は,5月22日午前1時19分ころIの携帯電話に連絡し,Iからその電話を渡されたBと約2分39秒間,話をしたことが認められるが,Bはそのような電話があったかどうか覚えていないと供述し(原審乙32号証),被告人も原審公判において,そのような電話をかけた覚えがない旨供述するにとどまっていて,その通話の内容を明らかにする証拠は存在しない。 (3) Bの前記供述の信用性について検討する。 ① Bの前記供述は,具体的であって,格別不自然,不合理な点は見当たらない上,関係証拠によれば,Bが供述するように,Xは暴力団組員である被告人の若い衆見習いをしており,被告人に面倒を見てもらっていたこと,被告人が世話になったE社長の娘G(昭和56年5月生)とXが交際している事実が5月2日Gの両親等に発覚し,Gの両親,特に母親のFがその交際に強く反対していたことから,被告人が同日E社長に対し,XがGと交際していることを謝罪し,Xに対してはGとの交際を断念するように厳重に注意したこと,しかるにXはその注意に背き,再びGと交際するようになり,それがGの両親に発覚したことが認められ,これらの事実は,Bの前記供述の信用 罪し,Xに対してはGとの交際を断念するように厳重に注意したこと,しかるにXはその注意に背き,再びGと交際するようになり,それがGの両親に発覚したことが認められ,これらの事実は,Bの前記供述の信用性を裏付けている。さらに,Bは,被告人が前記の事情からXに立腹し,自分に対し,Xをしめろと指示したものと理解した旨供述しているところ,被告人にはXをしめる動機がある上,自己の舎弟であるBにXをしめろと指示することも,被告人,B及びXの関係を考慮すると十分了解可能である。 ② さらに,Dの検面調書(原審甲68,69号証)及び同人の原審公判供述を含む関係証拠によれば,Bは,①の通話が終了するや,急いで外出の準備をし警棒を携帯したこと,この通話が被告人からの電話であることが分かったDが,行き先等を尋ねると,Bは「やれというからやってくる(又は,行ってくる)。」「帰ってこなきゃ長くなるかもしれない。」などと答え,玄関先で「ごめんな,行ってくるよ。」と言って,Dを抱きしめたこと,BはDを通じて連絡をとり,同女方まで来たI運転の車に乗り,Xを捜すために長岡市に向けて出発したことが認められ,これらの事実は,Bが被告人からXをしめろという指示を受けて,同人を捜しに出掛けたというBの前記供述を裏付けていて,その信用性を高めている。 ③ また,前記認定のとおり,Bは本件時,被告人と同じ暴力団の構成員で,被告人の舎弟であったばかりでなく,昭和63年ころ被告人が当時所属していた暴力団に加入し,被告人の舎弟となったもので,被告人とBとは長年にわたり特に親密な関係にあることが認められ,そのような関係を考慮すると,Bが被告人に不利な虚偽の供述をあえてするとは考え難い。 ④ これに対し所論は,被告人は①の通話においてBに対し,Xを自分のもとへ連れてくるよう指示しただけであ められ,そのような関係を考慮すると,Bが被告人に不利な虚偽の供述をあえてするとは考え難い。 ④ これに対し所論は,被告人は①の通話においてBに対し,Xを自分のもとへ連れてくるよう指示しただけであると主張し,被告人も捜査段階及び原審公判において,所論に沿う供述をしている。しかしながら,Bは捜査公判を通じて,①の通話の内容が所論主張のような指示であったとは全く述べていないところ(Bは検面調書〔原審乙34号証〕において,被告人からそのような指示があったことを否定する供述をしている。),実際に,そのような指示内容であったのであれば,前記のような被告人とBとの関係を考慮すると,Bが殊更その事実を供述しない理由は考え難いから,Bの供述に照らし,所論に沿う被告人の供述は信用できず,他に所論主張の事実に沿う証拠はないから,所論は失当である。 (4) 以上検討のとおり,Bの前記(2)の供述は十分信用することができ,Bの供述等の関係証拠によれば,Bは被告人から,①の通話において「Xをしめろ。」と指示され,②の通話において「(Xを)分からせろ。」と指示されたことから,Jトンネル内において,被告人,B,Cと順次共謀の上,Xを殺害したこと(なお,被告人が殺意を有していたか否かについては後に検討する。)が優に認められる。 3 次に,共謀の内容,すなわち被告人が未必的にせよ,Xを殺害する故意を有していたか否かについて検討する。 (1) 本件に関する被告人の動機について関係証拠によると,被告人は,知人のIとa町においてラーメン店「K」を共同経営していたところ,かつて被告人が勤務していた運転代行会社の経営者であり,K開店の際には保証人になってもらうなど世話になったE社長の依頼により,平成11年5月ころからその娘のG(当時高校3年生)をKでアルバイトとして雇用し 告人が勤務していた運転代行会社の経営者であり,K開店の際には保証人になってもらうなど世話になったE社長の依頼により,平成11年5月ころからその娘のG(当時高校3年生)をKでアルバイトとして雇用したこと,その際Gの両親から,Gに男女関係で問題が生じないように注意することを依頼されたこと,Gは同年9月中旬ころから同年11月初旬ころまで自動車学校に通っていたが,被告人は自車を運転して,自動車学校から帰宅するGを頻繁に迎えに行ったこと,被告人は,Gに被告人の別名「A」の「a」(Aの頭文字)と「G」の「g」(Gの頭文字)から「ag」と名付けた子犬を贈ったことがあり,その後の同年11月終わりころGに,「相性占いの結果が妙に気になっている。好きになってしまったが,自分が暴力団組員だから,どうしたらよいか分からない。」という内容の携帯電話の電子メールを送ったが,Gは被告人に,「被告人は兄のような存在であって,恋愛感情を持てない。」旨の手紙を送ったこと,その後,被告人はGに「嫌われなくて良かった。でも好きなままでいる。」旨の手紙を送ったり,それ以降も,被告人はGに贈り物をするなどしたこと,XはYと共に同年11月ころ,Iの募集したアルバイトに応募してKの寮に居住し,平成12年2月ころ以降被告人との親交を深め,暴力団組員である被告人の若い衆見習いとなり,被告人は4月に群馬県内にあるH組の事務所にXを連れて行くなどしたこと,Xは2月ころからKの手伝いをしていたが,3月終わりころから同所でアルバイトをしていたGと交際を始め,被告人は4月末か5月初旬ころ,FからGがXと交際している事実を聞かされ,5月2日の夕方から夜にかけて,Gの携帯電話に,「周りの人間にGちゃんには近付かないように言ってある。それなのに下っ端のXがそんなことをしているのがBにばれたら殺ら Xと交際している事実を聞かされ,5月2日の夕方から夜にかけて,Gの携帯電話に,「周りの人間にGちゃんには近付かないように言ってある。それなのに下っ端のXがそんなことをしているのがBにばれたら殺られるぞ。」などと,Xとの交際を辞めるよう強く迫る内容の電子メールを送信したこと,その後,被告人は同日夜,E社長に続いてG方を訪れた際,GとXがいる場で,E社長に対し,XがGと交際していることについて土下座して謝罪するとともに,Xに対しては,「俺は直接XにGちゃんに手を出すなと言っていないから,今回は見逃すが,次は絶対ないぞ。やくざの世界では上の人が言うことは絶対だ。これがBの耳に入ったら,お前が殺されるぞ。」などと,Gとの交際を辞めるよう厳重に注意し,さらに,XをKに連れて行き,そこでも同様にGと交際を辞めるように厳しく注意したこと,XとGはそれぞれ別れる旨被告人に告げたが,同月4日夕方には互いに電話で話すなど,再び交際を始めたこと,XはIに申し出て同月14日ころ,長岡市近郊の自宅に帰ったが,同月21日午前2時過ぎころ,a町内のGが1人暮らしをしている部屋にいたところをFに発見され,Fは同日午後11時17分ころ,a町のゲームセンターにいた被告人と電話で話をした際,XがG方にいたことを伝え,XとGが交際を続けていることについて愚痴をこぼしたこと,その電話が終了した直後の同日午後11時29分ころ,被告人はBに電話をかけ,①の通話をしたことがそれぞれ認められる。 所論は,前記のうち,被告人がGに「好きになってしまった。」などというメールを送ったことや,Gに送った子犬を「ag」と名付けた理由についての認定を争うが,これらの点に関するGの供述は,具体的である上,Gが殊更これらの点について虚偽の供述をする理由は認められないこと,さらに,被告人がGに Gに送った子犬を「ag」と名付けた理由についての認定を争うが,これらの点に関するGの供述は,具体的である上,Gが殊更これらの点について虚偽の供述をする理由は認められないこと,さらに,被告人がGに「好きになってしまった。」等のメールを送った点については,「Gから,被告人に好きだと言われたが,断ったと聞いた。」旨のFの原審公判供述やそれに沿うLの検面調書(原審甲99号証,不同意部分を除く。)によって裏付けられていて,Gの前記供述は十分信用できる。 これらの事情に照らすと,「被告人は平成11年11月の終わりころ,Gに対し強い親愛ないし恋慕の感情を告白したが,同女から拒絶され,一時気まずく応対された」という原判決の認定に誤りがあるとはいえない。しかしながら,被告人の原審及び当審公判供述を含む関係証拠によれば,Gは被告人のことを兄のような存在であり,恋愛の対象となる男性とは考えておらず,このようなGの感情を被告人は同女からのメールで知っていたこと,被告人がGに恋慕の情を告白した平成11年11月以降,被告人とGとの間において,恋愛関係にあることを前提とした交際はなされておらず,被告人はGに対しつきまとうなどの行為にも及んでいないし,被告人がGに対し再び恋慕の情を告白して交際を求めたこともなかったこと,被告人はGばかりでなくFや他の女性に対してもブランド品等の贈り物をしていること,4月3日ころ被告人はGと映画を見に行っているが,その際にもIとその知り合いの女性も一緒だったもので,被告人がGと親しく交際していたことを示す事情とはいえないことなどが認められ,これらの事情を考慮すると,本件犯行がなされた5月ころには,被告人のGに対する恋慕の情はそれ程強いものとは認められず,原判決が,「犯行に至る経緯」欄において,「(被告人は)いずれは同女(G)の歓心 これらの事情を考慮すると,本件犯行がなされた5月ころには,被告人のGに対する恋慕の情はそれ程強いものとは認められず,原判決が,「犯行に至る経緯」欄において,「(被告人は)いずれは同女(G)の歓心を買って自分の思いを遂げるべく」「被告人は,同年(平成12年)4月下旬ころ,社長の妻Fから右交際の事実を聞かされ,配下で年端も行かないXに意中の女性を奪われ感情が傷付くとともに」と認定するとともに,「補足説明」欄で,「被告人のGへの執着心」を,被告人がXに対する未必的殺意を抱いた1つの根拠として認定している点は首肯することができない。 前記認定事実を基に検討すると,Xは,暴力団組員である被告人の若い衆見習いであり,被告人から,5月2日に「今日は見逃すが,次はない。」などとGとの交際を辞めるように厳重に注意され,それを承諾して長岡市近郊にある実家に戻ったにもかかわらず,被告人の注意に背き,Gとの交際を続けていたものであって,これらの事実に照らすと,「(被告人は,5月21日午後11時過ぎころ,FからXとGが交際しているので,)何とかならないかと苦情を言われ,ひどく自尊心を害され,Xが被告人の警告を無視している,恩人である社長に顔向けできず,暴力団員としての面子も傷付いたので許せないと考え」という原判決の認定に誤りがあるとはいえない。しかし,原判決は,「被告人の厳しい『懲らしめ』の指示は,暴力団特有の,裏切りや重大な失敗に際してのけじめ,肉体を傷付け,死の結果をも招来することを覚悟させるべき暴力団の非情さを理解させるものであることから,事の成り行きによっては死んでもやむを得ない旨の示唆を意味することは明らかである。」などとして,被告人が未必的殺意を抱いたと認定した理由として,暴力団特有の思考方法を強調する説示をしている。 しかしながら,この っては死んでもやむを得ない旨の示唆を意味することは明らかである。」などとして,被告人が未必的殺意を抱いたと認定した理由として,暴力団特有の思考方法を強調する説示をしている。 しかしながら,この点について検討するに,自己の若い衆見習いのXが暴力団組員である被告人の注意に背いて,Gとの交際を継続していたとはいえ,Xは,未だ16歳と年齢が若いことから被告人の若い衆にはなれず,その見習いにとどまるものであり,若い衆見習いになってから本件まで3か月程度しか経っておらず,暴力団組員である被告人と親交を深めてはいたものの,暴力団との関わりが強いとまではいえない上,XとGとの交際は,暴力団同士の組織上の争いなど暴力団組員にとって非常に重要な事柄とは異なり,個人的な事柄に過ぎず,しかも,被告人が5月2日にXに対し,Gとの交際を辞めるように厳重に注意しているものの,口頭による注意にとどまるものであって,暴行を加えたわけではなく,その注意に背いたからといって,Xに対し暴力による制裁を加える動機とはなりうるものの,被告人が,Kの経営など今後の人生の大半を失うおそれがあるにもかかわらず,Xを殺害しても構わないという未必的殺意を抱いてまで,暴力団の非情さを見せつけなければならないような出来事と解することまではできず,被告人に未必的であっても,X殺害の動機まで認めることは困難であって,原判決が前記のように暴力団特有の思考方法を,被告人が未必的殺意を抱いたと認定した理由として強調している点は首肯することができない。 (2) 被告人がBに対して指示した内容について前記のとおり,Bは検察官に対し,自分が本件犯行に及んだ原因は,①の通話において被告人から「Xをしめろ。」と指示され,その言葉をXに対し殴る蹴るなどの暴力を振るえという意味に理解した,②の通話において 記のとおり,Bは検察官に対し,自分が本件犯行に及んだ原因は,①の通話において被告人から「Xをしめろ。」と指示され,その言葉をXに対し殴る蹴るなどの暴力を振るえという意味に理解した,②の通話において被告人から「(Xを)分からせろ。」と指示され,言うことを聞かないとどんな目に遭うかということを殴る蹴るなどの暴力を振るってしっかりと分からせるとともに,社長の娘に二度と近付かないことを分からせろと言っていると理解したと供述し,被告人から,Xを殺害するようにとの指示又は示唆があったとまでは供述していない。 原判決は,Bの前記供述に沿った事実を認定していながら,「罪となるべき事実」欄において,「被告人が,Xを『しめろ』などと指示し,成り行きによっては死んでもやむを得ない旨示唆するや,Bはこれを承諾した」旨認定し,さらに,「補足説明」欄においては,前記のとおり,「被告人の厳しい『懲らしめ』の指示は,(中略)事の成り行きによっては死んでもやむを得ない旨の示唆を意味することは明らかである。」として,被告人がXに対する未必的殺意を有していたことが認定できるとする。しかしながら,「しめろ」という言葉自体から,X殺害を意味するものと直ちに認めることはできないし,「分からせろ」という言葉は,相手を死亡させては意味をもたないことは,その言葉自体から明らかである。Cの検面調書(原審乙7号証)等の関係証拠によれば,CがBに呼ばれて,5月22日午前3時30分ころa町内の工業団地外れでBと合流した際,CはBから,「こいつら3人をしめろ。」と指示され,X,Y及びIの3人に対し,殴る蹴るなどの暴力を加えろと言っていると理解して,近くにいたXとYに対し,その腹などを蹴った事実が認められ,BとCとの間においても「しめろ」という言葉の意味は,殴る蹴る等の暴力を加えるという意 ,殴る蹴るなどの暴力を加えろと言っていると理解して,近くにいたXとYに対し,その腹などを蹴った事実が認められ,BとCとの間においても「しめろ」という言葉の意味は,殴る蹴る等の暴力を加えるという意味であったことが明らかであって,「しめろ」という被告人からの指示を暴力を振るえという意味に理解したという,前記Bの供述が不自然,不合理であるとはいえない。さらに,①の通話は約26.5秒という短い時間になされたことを考慮すると,被告人から,Xをしめる理由やその方法等について詳細な説明があったとも認め難く,被告人から殺害までの指示又は示唆をされてはいないとするBの供述は信用できるのであり,したがって,原判示のように,被告人がBに「しめろ」等とした指示が,成り行きによっては死んでもやむを得ない旨の示唆であると認めることはできないし,Bがそのような示唆であると理解して承諾したとも認めることはできないというべきである。 (3) Bの言動について前記のとおり,Bは,①の通話が終了するや,急いで外出の準備をし警棒を携帯したこと,この通話が被告人からの電話であることが分かったDが,行き先等を尋ねると,Bは「やれというからやってくる(又は,行ってくる)。」「帰ってこなきゃ長くなるかもしれない。」などと答え,玄関先で「ごめんな,行ってくるよ。」と言って,Dを抱きしめたこと,BはDを通じて連絡をとり,同女方まで来たI運転の車に乗り,Xを捜すために長岡市に向けて出発したことが認められる上,D(原審甲68,69号証)及びC(原審乙7,9,10〔不同意部分を除く〕号証)の各検面調書,Dの原審公判供述及びCの裁判官に対する供述調書(原審甲223,236号証)を含む関係証拠によれば,BがD方を出発した直後,同女は同女方にいたCに対し,「Bちゃんは被告人から電話が来て, 検面調書,Dの原審公判供述及びCの裁判官に対する供述調書(原審甲223,236号証)を含む関係証拠によれば,BがD方を出発した直後,同女は同女方にいたCに対し,「Bちゃんは被告人から電話が来て,出て行った。」「やれと言うから行った。」と告げたこと,そうしている間の同日午後11時42分ころ,BはCに電話をかけ,同人に対し「灯油を用意してくれる。」と指示し,Cはそれを承諾したこと,同人はDに「Bさんから灯油を頼まれた。」と告げると,同女は「ばかだな,お前は。何でいつもそうなんだ。」とCを叱ったこと,同人はすぐに車を運転してD方を出発し,翌22日午前零時14分ころ,ガソリンスタンドで灯油20リットルを購入し,Bに電話をかけたところ,同人の指示によりa町内のゲームセンターで待機し,その後,車に灯油を乗せたまま,a町文化会館の駐車場で待機していたこと,Bは,被告人と②の通話をした直後の同日午後3時19分ころ,Cに電話をかけて待ち合わせ場所を指示し,車を運転してきたCとa町内の工業団地外れにおいて合流したこと,その場でIが逃走したため,Bは,同日午前3時30分ころ,Cが運転してきた車にXとYを乗せ,Bの運転で出発し,途中でCと運転を交代したこと,CはBの指示により同車を運転してJトンネルまで至り,同日午前4時30分ころ,Jトンネル内において,CとBとで正座していたXの身体にCが購入した灯油をかけ,Xが死亡するかも知れないことを認識しながら,あえて,Cにおいて,ライターでXの着衣に点火し,その身体ともども燃え上がらせ,同人を焼死させて殺害したという本件犯行に及んだことが認められる。 前記認定事実からすると,Bは,相当長期間の服役を覚悟してD方を出発したことが窺われる上,被告人から①の通話を受け,D方を出発してから約10分後に,Cに対し灯油を用 犯行に及んだことが認められる。 前記認定事実からすると,Bは,相当長期間の服役を覚悟してD方を出発したことが窺われる上,被告人から①の通話を受け,D方を出発してから約10分後に,Cに対し灯油を用意するようにとの指示をし,Jトンネル内においては,Cが用意した灯油を同人と共にXにかけた上,同人を焼死させて殺害していることからして,灯油の購入は被告人の指示によるものではないかとの疑いが生ずる。しかしながら,Bの警察官調書(原審乙20号証)等によれば,Bはいずれも傷害罪により,平成2年には罰金刑に,平成3年と平成7年にはいずれも執行猶予付きの懲役刑に処せられた上,平成8年には懲役1年の実刑判決を受け,前記平成7年に宣告された執行猶予も取り消されて併せて服役し,出所後の平成11年にも傷害罪により罰金刑に処せられ,同年には業務上過失傷害罪により懲役6月に処せられ,平成12年4月17日に刑務所を出所したものであって,Bには累犯前科もあることから,今回何らかの刑事事件を起こせば,服役しなければならない可能性も高く,その期間も相当長期になることも予想されたのであり,そのような事情から前記のような発言になったとも考えられるのであって,BがD方を出発する前の言動から,Bがその時点において,Xを殺害することも考えていたとまでは認められない。 また,灯油を用意した点については,関係証拠によれば,BとCは共にD方にいたのであるから,仮に,①の通話において,被告人から灯油を用いてXを殺害するようにとの指示ないし示唆があったのであれば,Bがその場でCに灯油を用意するように指示することも十分考えられるのに,BはD方をI運転の車で出発してから約10分後に,Cに対し灯油を用意するよう電話で指示していること,さらに,Bは少年時代の昭和62年ころに,被告人らと共謀の上 うに指示することも十分考えられるのに,BはD方をI運転の車で出発してから約10分後に,Cに対し灯油を用意するよう電話で指示していること,さらに,Bは少年時代の昭和62年ころに,被告人らと共謀の上,根も葉もないうわさ話を流していた相手を木に縛り付けて,灯油をかけて火をつける旨脅して詫びを入れさせた事件を起こしたことがあることをも考慮すると,Bが捜査段階で供述するように,「私は,a町インターから高速道路に入る直前か,入った直後ころに,灯油を用意することを思いつき,Cに灯油を用意するよう依頼した。灯油を用意すれば,灯油をかけて火をつけるぞなどとXを脅すために使えると思った。高速道路に入ったこともあり,Iではなく,Cに灯油を用意するように依頼した。」旨の弁解(原審乙28,32号証)が虚偽であるとまではいえず,BがCに灯油を用意させたことが,被告人の指示又は示唆に基づくものであるとまでは認めることはできない。 (4) 被告人の言動について① 前記のとおり,被告人は,自己の若い衆見習いであるXがGと交際していたことが発覚したことから,5月2日夜,Gに,「(GとXの交際が)Bにばれたら殺られるぞ。」という電子メールを送り,Xに対しても同日夜,「今回は見逃すが,次は絶対ないぞ。これがBの耳に入ったら,お前が殺されるぞ。」などと厳重に注意したことが認められる。被告人は,Gに対して前記メールを送ったことについて,「Bは怖い存在であり,そのことはGも分かっていたことから,GとXを別れさせるために,Bの名前を利用したに過ぎず,実際にBがGとXとの交際を知っても,Xを殺すということはあり得ない。」,Xに対し,「『次は絶対ない』と言ったのは,二度とするなということを強調したもので,次にそういうことがあれば暴力による制裁を加えるとか,殺害するという意味ではな Xを殺すということはあり得ない。」,Xに対し,「『次は絶対ない』と言ったのは,二度とするなということを強調したもので,次にそういうことがあれば暴力による制裁を加えるとか,殺害するという意味ではない。『Bの耳に入ったら殺される。』旨言ったのも,同様に交際をするなということを強調するためにBの名前を出したもので,Bが知ったらXを殺害するという意味ではない。」などと弁解しているところ,その弁解のうち,XがGと交際を続けた場合,Xに対する暴力による制裁を加えることを否定している部分は信用できないものの,GとXとの交際を辞めさせるためにBの名前を引き合いに出した点については,十分あり得ることであって,そのような被告人の弁解を排斥することはできないから,前記認定の5月2日における被告人の言動が,XとGがその後も交際を続けた場合,被告人にXを殺害する意図があったことを裏付ける事実であるとまではいえない。 ② また,被告人は検面調書において,「私は直接Xさんに手を下してXさんを焼き殺した訳ではありませんが,事件の原因は,私がBとCに指示を出したことにあることは間違いありません。指示の内容は,今は言いたくありませんが,私がBらに指示を出したことによって,BらがXさんを焼き殺すといった行為に及んだことは間違いなく,当然私も責任を負う覚悟はできております。」(原審乙49号証),「通話②で,私はBからXさんにけじめをつけさせることについて,全て任せてくれと言われ,これを受け入れたのです。そのことは間違いなく,それから間もなく,B達がXさんを焼き殺した訳ですから,私が全てをBに任せたことがだめ押しのようになって,今回の事件に至ったことは間違いありません。」(原審乙50号証)旨供述している。これに対し,当審における事実取調べの結果も併せ考慮すると,被告人 ,私が全てをBに任せたことがだめ押しのようになって,今回の事件に至ったことは間違いありません。」(原審乙50号証)旨供述している。これに対し,当審における事実取調べの結果も併せ考慮すると,被告人は捜査及び公判段階において,自分は,①の通話ではBにXを自分のもとへ連れてくるように指示し,②の通話では,BがXと一緒であることを知り,Xを自分のもとへ連れてくるようにBに指示したが,Bが自分でXを説得するなどと言って譲らなかったので,「変なことをするな。」と釘を刺したなどと弁解しているところ,被告人供述の全体の趣旨に照らすと,被告人の前記検面調書における各供述は,前記のような弁解を前提として,立場上,上位にいる被告人が舎弟のBに前記のような指示を出すなどしなければ,本件事件は起きなかったという,暴力団内部における上下の立場上責任は負うという趣旨のことを述べたにとどまるものと理解できるのであって,被告人がBにX殺害を指示ないし示唆したことを自認した趣旨の供述とはいえない。 ③ さらに,証人Eの原審公判供述等の関係証拠によれば,被告人は本件犯行当日である5月22日午後5時ころ,E方に電話をかけ,同人に対し,「御迷惑かけてどうも済みませんでした。」と最初に謝罪し,「俺たち流のけじめのつけ方をしました。」などと発言したことが認められる。 所論は,後者の発言についてはEの聞き間違いである旨主張し,被告人は原審公判において,自分はその電話で「Bたち流のやり方だ」というように言った旨供述しているが「俺たち」と「Bたち」とは,相当発音が異なる上,Eは「俺たち」と言われた旨明確に供述しており,他方,被告人も,証人として尋問された際に「E社長がはっきりと間違いないと言われれば,自分の方も自信がない。」と供述している(原審乙56号証)ことをも考慮すると,E と言われた旨明確に供述しており,他方,被告人も,証人として尋問された際に「E社長がはっきりと間違いないと言われれば,自分の方も自信がない。」と供述している(原審乙56号証)ことをも考慮すると,Eの原審公判供述は十分信用することができ,前記のとおり被告人が発言したことが認定できる。しかるに,原判決も説示しているとおり,「俺たち流のけじめ」という発言については,被告人がXを殺害する指示をしたことを自認したものと解釈する余地があるものの,恩義あるE社長に対し謝罪するとともに,けじめという言葉に重点を置いて述べたもの,もしくは,子分のやったことについては上位の者が責任を負うという暴力団の考えからの言葉に過ぎず,X殺害について自己の関与を自認した趣旨ではないと考える余地も十分ありうるから,被告人のこの発言から,直ちに被告人がX殺害を指示又は示唆したことを自認したとまでは認めることができない。 (5) なお,関係証拠によれば,Bは5月21日午後11時30分過ぎころ,I運転の車に乗車して長岡市に向かい,翌22日午前1時30分ころ,Iが連絡をとってYを同車に乗せたこと,同日午前2時ころ,Yに呼びに行かせたXを同車に乗せて発進したこと,その直後から,BはXの身体を殴打するなどの暴行を開始したこと,同日午前2時42分ころ,コンビニエンスストアに立ち寄って出発した後,BはXから同人とGとの交際の事実をYが知っていることを聞くと,Yに同人の座っていた助手席のシートを倒させて,同人の顔面等を殴打するなどの暴行を加えたこと,同日午前3時30分ころa町内の工業団地外れで合流したCに対し,「しめろ」と指示し,同人はXとYの身体を蹴るなどの暴行を加えたこと,さらに,XとYを乗せて同所を出発し,Cの運転によりJトンネルに至り,BとCが共謀の上,同トンネル内で,正座 で合流したCに対し,「しめろ」と指示し,同人はXとYの身体を蹴るなどの暴行を加えたこと,さらに,XとYを乗せて同所を出発し,Cの運転によりJトンネルに至り,BとCが共謀の上,同トンネル内で,正座させたXとYの2人に灯油をかけた上,同日午前4時30分ころ,Xの着衣にライターで点火して同人を焼死させたばかりか,Yに対してもライターで同人の着衣等に点火して殺害しようとし,同人に対する殺人未遂の犯行に及んだことが認められる。ところで,被告人にはYに暴力を加えたり同人を殺害するような動機は全くなく,被告人がBに対し,Yに暴力による制裁を加えることや同人殺害を指示又は示唆した事実は全くないにもかかわらず,Bは,Yに暴行を加えた上,さらにCと共謀の上,Yに灯油をかけ,ライターで点火して殺害しようとしたものであって,Bは明らかに被告人が指示していない行為に及んでいることが認められる。Bは,被告人と同じ暴力団に所属し,被告人の舎弟であって,被告人の指示に従うべき立場にあるが,前記のように,被告人の指示していない行為にまで及んでいる点を考慮すると,BがCと共謀の上,Xを殺害までした点が,被告人の指示の範囲を超えているとしても不自然であるとはいえない。 (6) 以上検討のとおり,被告人が未必的にであれ,X殺害の故意を有していたと認定することには合理的な疑いが残るというべきであって,被告人は暴行ないしは傷害の故意により,Bに対し「しめろ」等と指示したにとどまるものと認められ,被告人には傷害致死罪が成立するに過ぎないから,被告人に殺人罪の成立を認めた原判決は事実を誤認し,ひいては法令の適用を誤ったものであり,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,論旨はその限度において理由があり,原判決は破棄を免れない。 第4 破棄自判そこで,刑訴法397 認し,ひいては法令の適用を誤ったものであり,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,論旨はその限度において理由があり,原判決は破棄を免れない。 第4 破棄自判そこで,刑訴法397条1項,380条,382条により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して更に次のとおり判決する。 (罪となるべき事実)被告人は,平成12年5月21日及び同月22日,携帯電話でBに対しXを「しめろ」などと指示するや,Bはこれを承諾し,Bとの間においてXに暴行ないし傷害を加える旨共謀し,さらにBにおいて,Cに灯油を用意させ,Cと共に,新潟県南魚沼郡a町大字c字d甲番地乙Jトンネル内上流側出入口付近道路上で,正座させたXの身体に頭上からポリ容器に入った大量の灯油を浴びせかけ,Cに「火をつけろ」と指示するや,Cは実際にXの身体に火をつけることを了解し,ここに被告人は,B及びCと順次共謀の上,被告人においてBらがXに暴行ないし傷害を加えることを認識し,BとCにおいてXが死亡するに至るかも知れないことを認識しながら,同月22日午前4時30分ころ,同所で,Cにおいて,あえて,ライターでX(当時16歳)の着衣に点火し,その身体ともども燃え上がらせ,よって,そのころ同所において,Xを焼死させて死亡するに至らせたものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為は刑法60条,205条に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役8年に処し,同法21条を適用して原審における未決勾留日数中80日をその刑に算入し,原審における訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,暴力団組員の被告人が,自己の舎弟であるBらと配下の若い衆見習いの被害者に対し暴力による制裁を加えることを共謀 81条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,暴力団組員の被告人が,自己の舎弟であるBらと配下の若い衆見習いの被害者に対し暴力による制裁を加えることを共謀し,Bとその元義弟のCが被害者を山中のトンネル内まで連れて行き,同所において,BとCが被害者に灯油をかけ,未必の殺意により同人の着衣に点火して焼死させたという事案であるが,被告人には暴行ないし傷害の故意しか認められず,被告人には傷害致死罪が成立するにとどまるものである。 被告人は,自己が恩義を感じる人物の娘(当時18歳)と被害者が交際を始め,その娘の両親がその交際に反対であったことから,被害者に対して厳しくその交際を禁止する旨言い渡し,被害者もそれを承諾したにもかかわらず,被害者がその娘と依然として交際を続け,自己の指示に背いた行動を取ったことから,自尊心を害され暴力団組員としての面子も傷付き,上位者としてのけじめをつけるべく,被害者に対し暴力による制裁を加えることをBに指示したものであり,その動機は自己中心的かつ暴力団組員としての発想に基づくものであって,本件犯行の経緯や動機に酌量の余地はない。被告人がBに前記の指示をしたことから,同人とCが被害者を殺害したものであるが,その犯行態様は,BとCにおいて,被害者の頭上から大量の灯油を浴びせかけた上,同人の着衣に点火して同人を焼死させたものであり,凶悪かつ非情な犯行であって,その結果,被害者は生きながらにして焼かれるという苛烈な苦しみを味わった末,わずか16歳という短い生涯を終えたものであって,被害者の悲痛及び無念さは察するに余りある上,被害者の実母ら遺族の悲しみも大きく,被告人に対する厳重処罰を求めている。さらに,被害者を焼死させたという本件の内容が,周辺地域に与えた衝撃は大きい。被告人は の悲痛及び無念さは察するに余りある上,被害者の実母ら遺族の悲しみも大きく,被告人に対する厳重処罰を求めている。さらに,被害者を焼死させたという本件の内容が,周辺地域に与えた衝撃は大きい。被告人は,本件犯行への関与を全面的に否定し,本件について反省の態度を示しておらず,遺族への慰謝の措置を何ら講じていない。以上によれば,被告人の刑事責任は重いというべきである。 他方,Bらがやり過ぎたため,被害者の死亡という最悪の結果が生じたことは否定できないこと,被告人にはこれまで禁錮以上の刑に処せられた前科はないこと,暴力団を脱退したことなど被告人のために酌むべき事情も総合考慮して,主文のとおり量刑した次第である。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年4月24日東京高等裁判所第1刑事部裁判長裁判官村上光鵄裁判官土屋哲夫裁判官中里智美は長期出張のため署名押印することができない。 裁判長裁判官村上光鵄
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