平成22(ワ)12227 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年12月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文49,976 文字)

平成23年12月22日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第12227号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成23年9月26日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 原告のために,この判決に対する控訴の付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告沢井製薬株式会社は,別紙被告製品目録記載1及び5の各製品を製造し,販売し並びに販売のために展示してはならない。 (2) 被告メディサ新薬株式会社は,同目録記載2及び6の各製品を製造し,販売し並びに販売のために展示してはならない。 (3) 被告ニプロファーマ株式会社は,同目録記載3の製品を製造し,販売し及び販売のために展示してはならない。 (4) 被告全星薬品工業株式会社は,同目録記載4の製品を製造し,販売し及び販売のために展示してはならない。 (5) 被告沢井製薬株式会社は,同目録記載1及び5の各製品を廃棄せよ。 (6) 被告メディサ新薬株式会社は,同目録記載2及び6の各製品を廃棄せよ。 (7) 被告ニプロファーマ株式会社は,同目録記載3の製品を廃棄せよ。 (8) 被告全星薬品工業株式会社は,同目録記載4の製品を廃棄せよ。 (9) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (10) 仮執行宣言 2 被告ら主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(当事者間に争いがない又は弁論の全趣旨により認定できる。)(1) 当事者原告は,医薬品の研究開発及び製造販売を業とするスペイン法人である。 被告らは,いずれも医薬品の製造販売等を目的とする会社である。 (2) 本件特許権原 認定できる。)(1) 当事者原告は,医薬品の研究開発及び製造販売を業とするスペイン法人である。 被告らは,いずれも医薬品の製造販売等を目的とする会社である。 (2) 本件特許権原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許の請求の範囲【請求項1】に係る発明を「本件特許発明1」,同【請求項4】に係る発明を「本件特許発明2」といい,併せて「本件各特許発明」という。また,本件特許に係る出願明細書を「本件明細書」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。 特許番号 3518601号発明の名称エバスタイムまたはその類似体に基づく医薬組成物出願年月日平成4年12月1日登録年月日平成16年2月6日特許請求の範囲【請求項1】「式 式中, -R1 はチエニル基,場合によりハロゲンで置換されてもよいフェニル基,1~6個の炭素元素を含有するアルキコシ基,または1~6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,-R2 はハロゲン原子,水素原子,1~6個の炭素原子を含有するアルコキシ基,または1~6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,-R3 はハロゲン原子,水素原子,1~6個の炭素原子を含有するアルコキシ基,1~6個の炭素原子を含有するアルキル基,1~6個の炭素原子を含有するアルキルチオ基,5または6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基,または式: の基,式中R4 およびR5 は互いに独立して水素原子または1から6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,R6 は3~6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基,またはヒドロキシメチルもしくはカルボキシル基,または2~7個の は互いに独立して水素原子または1から6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,R6 は3~6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基,またはヒドロキシメチルもしくはカルボキシル基,または2~7個の炭素原子を含有するアルコキシカルボニル基を表し,-Wはカルボニルもしくはヒドロキシメチレン基,およびそれらの塩を表すに対応する化合物を含有し;式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする,改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物。」【請求項4】「式(Ⅱ)の有効成分が以下の特徴;-200µm より小さい最大サイズ-0.5 から15µm の間の数平均粒子サイズ -25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい粒子サイズを有する好ましくは数基準で90%の粒子を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載の組成物。」(3) 構成要件の分説ア本件特許発明1は,以下のとおり分説することができる。 1-A 式 式中,-R1はチエニル基,場合によりハロゲンで置換されてもよいフェニル基,1~6個の炭素元素を含有するアルキコシ基,または1~6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,-R2 はハロゲン原子,水素原子,1~6個の炭素原子を含有するアルコキシ基,または1~6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,-R3 はハロゲン原子,水素原子,1~6個の炭素原子を含有するアルコキシ基,1~6個の炭素原子を含有するアルキル基,1~6個の炭素原子を含有するアルキルチオ基,5または6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基,または式: の基,式中R4 およびR5 は互いに独立して水素原子または1から6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,R6 の炭素原子を含有するシクロアルキル基,または式: の基,式中R4 およびR5 は互いに独立して水素原子または1から6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し,R6 は3~6個の 炭素原子を含有するシクロアルキル基,またはヒドロキシメチルもしくはカルボキシル基,または2~7個の炭素原子を含有するアルコキシカルボニル基を表し,-Wはカルボニルもしくはヒドロキシメチレン基,およびそれらの塩を表すに対応する化合物を含有し1-B ;式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする,1-C 改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物。 イ本件特許発明2は,以下のとおり分説することができる。 2-A 式(Ⅱ)の有効成分が以下の特徴;2-B -200µm より小さい最大サイズ2-C -0.5 から15µm の間の数平均粒子サイズ2-D -25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい粒子サイズを有する好ましくは数基準で90%の粒子を有することを特徴とする2-E 請求の範囲第1項記載の組成物。 (4) エバスチンエバスチンは,化学名「4-ジフェニルメトキシ-1-[3-(4-tert-ブチルベンゾイル)プロピル]ピペリジン」の一般名であり,本件明細書の【発明の名称】では「エバスタイム」と表記されている。 本件特許発明1の構成要件1-Aのうち「式(Ⅱ)」において,R1 はフェニル基,R2 は水素,R3 は4個の炭素原子を含有するアルキル基,W はカルボニル基をそれぞれ選択すると,エバスチンを得ることができる。 抗ヒスタミンH₁活性を有し,呼吸又はアレルギー疾患を治療するために有効な公知の物質であり,以下の式(Ⅰ)で示される。 ニル基をそれぞれ選択すると,エバスチンを得ることができる。 抗ヒスタミンH₁活性を有し,呼吸又はアレルギー疾患を治療するために有効な公知の物質であり,以下の式(Ⅰ)で示される。 (5) 被告らの行為被告沢井製薬株式会社は,別紙被告製品目録1及び5の各製品を,被告メディサ新薬株式会社は,同目録2及び6の各製品を,被告ニプロファーマ株式会社は,同目録記載3の製品を,被告全星薬品工業株式会社は,同目録記載4の製品を,それぞれ平成20年7月から販売した(以下,同目録記載の各番号に対応させて,順次「被告製品1」ないし「被告製品6」といい,併せて「被告ら各製品」という。)。 (6)被告ら各製品の関係被告ら各製品は,いずれも有効成分としてエバスチンを含有するものであるから,本件特許発明1の構成要件1-A「式(Ⅱ)‥‥に対応する化合物を含有し」を充足し,本件特許発明2の構成要件2-Aのうち「式(Ⅱ)の有効成分」も充足する。 また,被告製品1と被告製品2ないし4は同様の構造のものであるから,被告製品1が本件各特許発明の技術的範囲に属するのであれば,被告製品2ないし4も同様に属する関係にある。さらに,被告製品5は被告製品6と同様の構造のものであるから,被告製品5が本件各特許発明の技術的範囲に属するのであれば,被告製品6も同様に属する関係にある。 2 原告の請求原告は,被告らの行為が本件特許権を侵害するものであるとして,本件特許権に基づき,被告らに対し,被告ら各製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めている。 3 争点 (1)被告ら各製品が本件特許発明1の技術的範囲に属するか〔構成要件1-B及び1-Cの属否〕(争点1)(2)被告ら各製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するか(争 。 3 争点 (1)被告ら各製品が本件特許発明1の技術的範囲に属するか〔構成要件1-B及び1-Cの属否〕(争点1)(2)被告ら各製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するか(争点2)(3)本件特許権には,以下の無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものであるかア本件特許発明1は,本件特許出願前に頒布された特開昭60-94962号公報(以下「乙1公報」という。)に記載された発明(以下「乙1発明」という。)と同一のものであるか(争点3-1)イ本件特許発明1は,乙1発明及び本件特許出願前に頒布された特開昭59-95300号公報(以下「乙9公報」という。)に記載された発明(以下「乙9発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか(争点3-2)ウ本件特許発明1は,乙1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか(争点3-3)エ本件特許発明2は,乙1発明及び乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか(争点3-4)オ本件特許発明2は,乙1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか(争点3-5)カ本件各特許発明は,平成6年12月14日法律第116号による改正前の特許法36条4項(以下「実施可能要件」という。)に違反するものであるか(争点3-6)キ本件各特許発明は,同条5項1号(以下「サポート要件」という。)に違反するものであるか(争点3-7)ク本件各特許発明は,同項2号(以下「構成要件不可欠要件」という。)に違反するものであるか(争点3-8)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告ら各製品が本件特許発明1の技術的範囲に属するか〔構成要件1-B及び1 「構成要件不可欠要件」という。)に違反するものであるか(争点3-8)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告ら各製品が本件特許発明1の技術的範囲に属するか〔構成要件1-B及び1-Cの属否〕)について【原告の主張】前提事実(6)のとおり,被告ら各製品は,いずれも本件特許発明1の構成要件1-Aを充足している。また,以下のとおり,構成要件1-B及び1-Cも充足するから,本件特許発明1の技術的範囲に属する。 (1)構成要件1-B「式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする」についてア 「微細粉粒」とは,一般には,極めて細かい粉又は「つぶ」をいい,本件各特許発明では,通常のエバスチン粉粒(例えば,本件明細書に記載された平均サイズ=140µm のエバスチン粉粒)と比べて,小さな粉又は「つぶ」をいう。 したがって,構成要件1-Bの「微細粉粒化されていること」とは,微細粉粒の状態にあることをいう。 イ被告ら各製品は,製造工程のうち溶解工程で有機溶媒に溶解されたエバスチンが,乾燥工程で徐々に結晶化して析出することにより,微細粉粒化された状態となっている。 被告ら各製品に含有されるエバスチンの具体的な状態は,以下のとおりである。 (ア) 被告製品1ないし4についてエバスチンを微細粉粒化する前の粗生成物は,(数)平均粒子サイズが140µm であるのに対し,被告製品1ないし4に含有されるエバスチンの数平均粒子サイズは「6.77±4.73µm」である。 (イ) 被告製品5及び6について被告製品5及び6に含有されるエバスチンの数平均粒子サイズは「7.87±4.73µm」である。 (2)構成要件1-C「改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物」について「改良された溶解 被告製品5及び6に含有されるエバスチンの数平均粒子サイズは「7.87±4.73µm」である。 (2)構成要件1-C「改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物」について「改良された溶解特性を持つ」とは,本件明細書の実施例に記載された溶解試験に従って溶解度を測定したとき,微細粉粒化されていない式(Ⅱ)の化合物(エバスチン)を含む固形医薬組成物と比較して溶解度が向上していることを指す。 表(Ⅰ)試験式(Ⅰ)の化合物錠剤の生産溶解度C1微細粉粒化せず直接圧縮26.4%C2微細粉粒化せず湿式造粒36.7% 微細粉粒化直接圧縮52.6% 微細粉粒化湿式造粒94.0% 上記表(Ⅰ)は,上記溶解試験の結果を示したものであり,エバスチンを含む錠剤について,微細粉粒化も親水性化も行わなかった場合の溶解度は26.4%であり,微細粉粒化を行い,親水性化を行わなかった場合の溶解度は52.6%であり,微細粉粒化も親水性化も行った場合の溶解度は94.0%であった。 被告ら各製品は,本件各特許発明の実施品である標準製剤の平均溶出率と比較して同等の溶出挙動を示すから,改良された溶解特性を持つものである。 【被告らの主張】(1)構成要件1-B「式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする」について被告ら各製品は,いずれも微細粉粒化したものではなく,構成要件1-Bを充足しない。 ア本件明細書には,「微細粉粒化」の意義について,以下の(ア)ないし(ウ)の各記載があるのみである。 (ア) 「式(Ⅰ)の粗結晶化化合物を濾過ふるいと供給ホッパーを備えた微細 しない。 ア本件明細書には,「微細粉粒化」の意義について,以下の(ア)ないし(ウ)の各記載があるのみである。 (ア) 「式(Ⅰ)の粗結晶化化合物を濾過ふるいと供給ホッパーを備えた微細粉粒機に導入する。冷却圧縮空気は粒子を分画するために注入する。」(6欄17~20行目)(イ) 「微細粉粒化これはポリエステル製の濾過ふるいを装備した直径200 ㎜のステンレス鋼製微細粉粒機中で行われる。供給ホッパーもステンレス鋼である。 使用する圧縮空気は冷却により脱水されている。 圧縮空気の注入により微細粉粒プレート中の粒子が加速され,互いに衝突する粒子はより微細粒化された粒子中に分画されるようになる。 粗生成物微細粉粒化生成物97.7%<500μm 100% <80μm94.4%<400μm 99.4%<50μm97.6%<25μm 76 %<225μm 96.6%<20μm43.4%<125μm 93.1%<15μm23.7%< 83μm 90.3%<10μm8.1%< 46μm 61.1%< 5μm2.5%< 20μm 31.1%< 2μm 18 %< 1μm平均サイズ=140μm 平均サイズ=3.4μm 」(7欄1~19行目)(ウ) 「式(Ⅱ)の有効成分は微細粉粒化されていることを特徴とする。この剤形は,微細粉粒化されていない式(Ⅱ)の化合物から得られた医薬品よりも約40%高い溶解初速度を示す」(5欄42~46行目)上記各記載からすれば,本件各特許発明の「微細粉粒化」とは,「 る。この剤形は,微細粉粒化されていない式(Ⅱ)の化合物から得られた医薬品よりも約40%高い溶解初速度を示す」(5欄42~46行目)上記各記載からすれば,本件各特許発明の「微細粉粒化」とは,「圧縮空気を用いて粒子同士を衝突させる方法による微細粉粒機」を用いて,「エ バスチンの粗結晶化化合物を物理的に粉砕して微細な粒子にする」ことをいうものと解釈するほかない。 そうすると,本件各特許発明は,公知物質である「エバスチン」の溶解性を高める手法として,微細粉粒機を用いて粗粒子をより細かく砕き,微細粉粒化して溶解度を高め,身体吸収を良くするということに尽きるものである。 イ被告ら各製品の製法これに対し,被告ら各製品は,以下の図に記載したとおり,エバスチンの粗結晶化化合物(エバスチン粗結晶原薬)を有機溶媒に溶解させ,溶解状態にある薬物溶液のまま賦形剤等を加えて,製剤化したものである。 上記製法は,本件特許出願(平成4年12月1日)前に公知・周知の技術であったsolventdepositionmethod という方法である。これは,フェニトインやジフェニルヒダントイン(DPH)などの難水溶性薬物を有機溶媒に溶解させて,薬物溶液のまま賦形剤等の医薬品添加物中に取り込むことにより,原薬に比べて溶解度(溶解速度)を増大させ,バイオアベイラビリティを高めるというものであり,難水溶性薬物を物理的に粉砕して微 細な粒子にするという本件各特許発明とは全く異なるものである。 このように,本件各特許発明と被告ら各製品の製法は,溶解性の悪い化合物の溶解特性を改善するという技術的課題が共通するものの,その解決手段において全く系統・系譜を異にする(技術的思想を異にする)別個の技 ように,本件各特許発明と被告ら各製品の製法は,溶解性の悪い化合物の溶解特性を改善するという技術的課題が共通するものの,その解決手段において全く系統・系譜を異にする(技術的思想を異にする)別個の技術手段である。 したがって,被告ら各製品は,エバスチンの粗結晶化化合物を物理的に粉砕して微細な粒子にしたもの,すなわち微細粉粒化されたものではない。 ウ被告ら各製品に含有されるエバスチンの具体的な状態について上記【原告の主張】(1)イは否認する。 そもそも,被告ら各製品に含有されるエバスチンは,上記イの製法を採用することにより,賦形剤等と絡まって渾然一体となっており,エバスチンの粒子径や粒子数を観念することはできないし,その実測寸法等を云々できるようなものではない。 (2)構成要件1-C「改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物」について上記【原告の主張】(2)のうち,被告ら各製品について,原告が本件各特許発明の実施品であると主張する製品と同等の溶出挙動を有するという試験結果が得られたことは認め,その余は否認する。 2 争点2(被告ら各製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】以下のとおり,被告ら各製品は,いずれも本件特許発明2の各構成要件を充足するから,本件特許発明2の技術的範囲に属する。 (1)構成要件2-A「式(Ⅱ)の有効成分が以下の特徴;」についてここでいう「有効成分」とは,医薬組成物を構成する成分の中で,薬効を示す成分をいい,エバスチンは薬効を示す化合物であるから「有効成分」に当たる。本件特許発明1の「化合物」と本件特許発明2の「有効成分」とを区別する理由はない。 (2)構成要件2-B「-200µm より小さい最大サイズ」について「サ ら「有効成分」に当たる。本件特許発明1の「化合物」と本件特許発明2の「有効成分」とを区別する理由はない。 (2)構成要件2-B「-200µm より小さい最大サイズ」について「サイズ」とは大きさ又は寸法を指し,特に本件特許においては有効成分粒子の大きさ又は寸法を指す。また,「最大」とは最も大きいことを指す。 ア被告製品1ないし4についてこれらの製品に含有されるエバスチンの最大サイズは,「46.78±4.73µm」である。 イ被告製品5及び6についてこれらの製品に含有されるエバスチンの最大サイズは,「56.35±4.73µm」である。 (3)構成要件2-C「-0.5 から15µm の間の数平均粒子サイズ」について「数平均粒子サイズ」とは,個数平均粒子径をいうものであり,ある粒子群に属する粒子1個のサイズ(粒子径)を求め,それらをその群に属する粒子数に対して平均した粒子サイズである。 ア被告製品1ないし4についてこれらの製品が含有するエバスチンの数平均粒子サイズは「6.77±4.73µm」である。 イ被告製品5及び6についてこれらの製品が含有するエバスチンの数平均粒子サイズは「7.87±4.73µm」である。 (4)構成要件2-D「-25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい粒子サイズを有する好ましくは数基準で90%の粒子を有することを特徴とする」について「-25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい粒子サイズを有する好ましくは数基準で90%の粒子を有すること」とは,「好ましくは数基準で90%の粒子」の有する粒子サイズが,「25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい」ことをいう。 「数基準で 90%の粒子を有すること」とは,「好ましくは数基準で90%の粒子」の有する粒子サイズが,「25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい」ことをいう。 「数基準で90%の粒子」とは,数基準の粒度分布において,小さい粒子から順に粒子数を累積的にカウントし,全粒子数に対してちょうど90%の累積数に位置する粒子をいう。換言すれば,ある粒子サイズを境として粒子を2つに分けた場合に,小さい側と大きい側とが粒子の個数として9:1の比となるサイズを有する粒子のことをいう。例えば,全部で100個の粒子が存在する場合には,小さい粒子から順に並べて90番目の粒子のことをいう。 そして,構成要件2-Dは,次の図のd90 に示すとおり,数基準で90%の粒子の粒子サイズを評価することによって,大多数の粒子が十分に小さい粒子サイズを有することを要求している。 90%の粒子の粒子サイズを評価する以外にも,当業者に広く知られている他のパーセンテージとして10%及び50%が存在する。これらの関係は,上の図のとおりである。一般に,10%の粒子の粒子サイズはd10 と,50%の粒子の粒子サイズはd50 と,そして90%の粒子の粒子サイズはd90 とそれぞれ呼び慣わされている。本件明細書では,約20%,約30%,約60%,約90%,約93%,約97%,約98%及び約99%の粒子の粒子サイズについて評価した結果も,記載されている。 したがって,「好ましくは数基準で90%の粒子」とは,数基準で粒子サイ ズを測定したとき,種々のパーセンテージの中でも,とりわけ粒子サイズを評価すべき粒子として90%の粒子が好ましいことを意味している。 ア被告製品1ないし4についてこれらの サイ ズを測定したとき,種々のパーセンテージの中でも,とりわけ粒子サイズを評価すべき粒子として90%の粒子が好ましいことを意味している。 ア被告製品1ないし4についてこれらの製品に含有されるエバスチンの数基準90%の粒子サイズ(d90)は,「12.30±4.73µm」である。 イ被告製品5及び6についてこれらの製品に含有されるエバスチンの数基準90%の粒子サイズ(d90)は,「16.21±4.73µm」である。 (5)構成要件2-E「請求の範囲第1項記載の組成物。」について本件特許発明2の構成要件2-Bないし2-Dは,本件特許発明1の構成要件1-B「微細粉粒化されていること」について,より具体的に定義したものである。 したがって,本件特許発明2の構成要件2-Bないし2-Dは,本件特許発明1の構成要件1-Bの下位概念であり,構成要件2-E「請求の範囲第1項記載の組成物。」は,本件特許発明1の構成要件1-C「改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物。」をいうものである。 前記1【原告の主張】(2)のとおり,被告ら各製品は,いずれも改良された溶解特性を有するものであり,本件特許発明1の構成要件1-C「改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物。」を充足するから,構成要件2-E「請求の範囲第1項記載の組成物。」も充足する。 【被告らの主張】以下のとおり,被告ら各製品は,いずれも本件特許発明2の各構成要件を充足せず,本件特許発明2の技術的範囲には属しない。 (1)構成要件2-Bないし2-Dについて前記1【被告らの主張】(1)のとおり,被告ら各製品に含有されるエバスチンは,粒子径や粒子数を観念することができないものであるから,これら の構成要件をいずれも充足しない。 ( 前記1【被告らの主張】(1)のとおり,被告ら各製品に含有されるエバスチンは,粒子径や粒子数を観念することができないものであるから,これら の構成要件をいずれも充足しない。 (2)構成要件2-E「請求の範囲第1項記載の組成物。」について前記1【被告らの主張】のとおり,被告ら各製品は,「請求の範囲第1項記載の組成物。」には当たらない。 3 争点3-1(本件特許発明1は,乙1発明と同一のものであるか)について【被告らの主張】本件特許発明1は,乙1発明と同一のものであり,新規性がないから,本件特許発明1に係る特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)乙1公報に記載された発明乙1公報には,以下の発明(乙1発明)が記載されている。 ア 「 において,R1はチエニル基,あるいは随意にハロゲン(望ましくはフッ素あるいは塩素)原子,または低級アルコキシ基あるいは低級アルキル基で置換したフェニル基であり,R2は水素あるいはハロゲン(望ましくはフッ素)原子,低級アルコキシまたは低級アルキル基であり,R3は水素あるいはハロゲン(望ましくはフッ素)原子,低級アルキルチオ基,低級アルコキシ基,あるいは低級アルキル基,あるいは5,6個の炭素原子を有するシクロアルキル基,あるいは で表される基で,ここでR4およびR5は,それぞれ水素原子あるいは低級 アルキル基を示し,R6はシクロアルキル,ヒドロキシメチル,アルボキシ,あるいは低級アルコキシカルボニル基であり,W はカルボニル(すなわち)あるいはヒドロキシメチレン〔すなわち,〕基であることを特徴とする,一般式Ⅰの化合物および薬学的にかなったそれらの塩」(特許請求の範囲 級アルコキシカルボニル基であり,W はカルボニル(すなわち)あるいはヒドロキシメチレン〔すなわち,〕基であることを特徴とする,一般式Ⅰの化合物および薬学的にかなったそれらの塩」(特許請求の範囲第1項)イ 「4-ジフェニルメトキシ-1-〔3-(4-tert-ブチルベンゾイル)プロピル〕-ピペリジンおよびその酸添加塩であることを特徴とする,特許請求の範囲第1項に記載の化合物」(特許請求の範囲第8項)ウ 「本発明は治療学上有効な新しいピペリジン誘導体,およびそれらの調製プロセスおよびそれらを含む薬学組成物に関するものである。」(4頁右上欄6~8行目)エ 「この発明の組成物は,それ自体投与に適しているのが望ましい。この場合,経口投与用の組成物はタブレット,カプセル,錠剤,あるいは沸騰性の微粒体あるいはイリックサー,シロップ,懸濁液のような液状調合剤の形にすることが考えられ,本発明の化合物を1以上含んだこうした調合は当業界で公知の方法で作られるものである。」(11頁左上欄6~12行目)(2)本件特許発明1と乙1発明との対比ア乙1発明の前記(1)ア及びイは,本件特許発明1の構成要件1-Aと同一である。 イ前記1【原告の主張】(1)によれば,通常のエバスチン粉粒と比べて小さな粉又は「つぶ」の状態であれば「微細粉粒化されていること」になる。 そうすると,乙1発明の前記(1)エの「この発明の組成物は,それ自体投与に適しているのが望ましい。この場合,‥‥微粒体‥‥にすることが考えられ,‥‥こうした調合は当業界で公知の方法で作られるものである。」という記載は,「微細粉粒化されていること」そのものを意味し,本 件特許発明1の構成要件1-B「;式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする, 公知の方法で作られるものである。」という記載は,「微細粉粒化されていること」そのものを意味し,本 件特許発明1の構成要件1-B「;式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする,」と同一である。 ウ小さな粉又は「つぶ」の状態にして,その粒子径を小さくしたり,比表面積を増大させたりすることによって溶解度が向上することは,本件特許出願当時における技術常識であり,医薬品製造の技術分野では周知・常套手段であった。 したがって,乙1発明の前記(1)エの「微粒体にする」ことにより溶解度が向上することは,当業者であれば極めて容易に把握することができる事項であるから,「微粒体にすることによって,溶解度が向上する。」ことも乙1公報に記載されているに等しい事項である。これは,本件特許発明1の構成要件1-Cのうち「改良された溶解特性を持つ」と同一である。 また,乙1発明の前記(1)ウの「治療学上有効な」「薬学組成物」は,本件特許発明1の構成要件1-Cのうち「固体医薬組成物」と同一である。 【原告の主張】本件特許発明1は,乙1発明と以下の点で相違しており,同一ではない。 (1)上記【被告らの主張】(2)イについて乙1公報に係る記載のうち,上記【被告らの主張】(1)エの「沸騰性の微粒体」は,「発泡顆粒剤」と呼ばれる剤形を指すものであり,水に加えると急速に発泡しながら溶解又は分散する顆粒剤である。したがって,有効成分が「微細粉粒化されていること」という状態を有するか否かについて,記載されたものではない。また,乙1公報の他の記載によれば,「沸騰性の微粒体」とは,せいぜい約1400µm から約355µm までのサイズを有する発泡顆粒剤ないし通常の顆粒剤を意味するにすぎず,本件特許発明1の「微細粉粒化されて 1公報の他の記載によれば,「沸騰性の微粒体」とは,せいぜい約1400µm から約355µm までのサイズを有する発泡顆粒剤ないし通常の顆粒剤を意味するにすぎず,本件特許発明1の「微細粉粒化されていること」とは異なっている。 したがって,乙1公報の「沸騰性の微粒体」という記載が,本件特許発明1の構成要件1-Bと同一のものであるとする被告らの主張は誤りであり, 他に乙1公報において「微細粉粒化されていること」,「粒子サイズ」等に関する記載はない。 (2)上記【被告らの主張】(2)ウについて上記(1)のとおり,乙1公報には「微細粉粒化されていること」は開示されておらず,顆粒剤とすることによって薬物の溶解特性の改良につながるということも知られていない。 また,乙1公報には「微細粉粒化されていること」により「溶解度が向上すること」を把握することができる記載や示唆もない。 4 争点3-2(本件特許発明1は,乙1発明及び乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について【被告らの主張】本件特許発明1は,乙1発明及び乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,進歩性がないから,本件特許発明1に係る特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)乙1発明前記3【被告らの主張】(1)と同じ。 (2)本件特許発明1と乙1発明との対比ア一致点前記3【被告らの主張】(2)アと同じ。 イ相違点前記3【原告の主張】において,原告が主張する相違点は以下の2つである。 (ア) 相違点①本件特許発明1は,構成要件1-Bで組成物が「微細粉粒化されている」のに対し,乙1発明は組成物が「微細粉粒化されている」のか否か て,原告が主張する相違点は以下の2つである。 (ア) 相違点①本件特許発明1は,構成要件1-Bで組成物が「微細粉粒化されている」のに対し,乙1発明は組成物が「微細粉粒化されている」のか否かが明らかではない。 (イ) 相違点②本件特許発明1は,構成要件1-Cで「改良された溶解特性を持つ」とされているのに対し,乙1発明は,「改良された溶解特性を持つ」のか否かが明らかではない。 (3)乙9発明乙9公報には,以下の発明(乙9発明)が記載されている。 ア 「基本構造式 を有し,粒状形であり,かつ約5µm~約20µm の平均等価球体積直径を有し,その95%が約50µm より小さい粒度を有する,2α-シアノ-4α,5α-エポキシ-3-オキソステロイド。」イ 「これらのステロイド類の臨床的使用において直面する問題は,変動性の,予測不可能な吸収特性,血液レベルおよび生物有効性(bioavailability)であった。」ウ 「好ましくは,本発明の粒状化合物は,約12µm 以下,好ましい下限が約5±標準偏差µm,通常約4~約µm の平均等価球体積直径(meanequivalentspherevolumediameter)を有する粒子からなる。最も好ましくは,粒子の平均等価球体積直径は約10µm であり,下限は約5µm であり,こうして約5~約10 であり,さらに条件として,粒子の少なくとも95%は50µm より小さい粒度をもつ。 粒子の95%以上の大きさについての限定は,本発明の粒状化合物を,微粉砕または粒度の減少法,たとえば,現在入手可能な種々の微粉砕装置,たとえば,ハンマー,ピンまたは流体エネルギーミルを利用することによ 以上の大きさについての限定は,本発明の粒状化合物を,微粉砕または粒度の減少法,たとえば,現在入手可能な種々の微粉砕装置,たとえば,ハンマー,ピンまたは流体エネルギーミルを利用することによ り,大きさを減少されたすべての粉末において見られる大きさな広い変動のために,広い大きさの分布を示す粒子と区別するために,追加的に必要な補助的限定である,ことを微粉砕法の知識をもつ人はもちろん理解するであろう。」エ 「本発明の粒状化合物を製造するとき,原料状態の式ⅠまたはⅡの化合物を,まず等価球体積直径を測定することができる器具,たとえば,クールターカウンター(CoulterCounter)として知られた器具を用いて,大きさについて特徴づける。例えば,トリロスタンは,原料状態において,広い大きさの分布をもつ,約40µm の等価球体積直径を有する粒子からなる。 原料状態において,大きさについて特徴づけた後,化合物を次いで,たとえば,流体エネルギー(空気)ミルを用いて,粒度の値を本発明による限定の範囲内にするために十分な時間,微粉砕する。微粉砕の進行は,視的観察により検査することができ,そして最終の粒度はクールターカウンターにより検査することができる。」オ 「生物学的有効性の試験 60 ㎎のカプセル剤を,実施例1におけるように,湿式造粒技術により,(1) 約10µm の平均等価球体積直径を有する粒子(粒子の少なくとも約95%は約50µm よりも小さい粒度を有する),(2) 約45µm の平均等価球体積直径を有する粒子,および(3) 100µm より大き平均等価球体積直径を有する粒子からなるトリロスタンのバッチを用いて調製した。 8人の志願者についての3つの部分の二重盲検交差研究(dubleblindcros よび(3) 100µm より大き平均等価球体積直径を有する粒子からなるトリロスタンのバッチを用いて調製した。 8人の志願者についての3つの部分の二重盲検交差研究(dubleblindcrossoverstudy)において,各志願者は120 ㎎のトリロスタン(6×60㎎のカプセル)の投与を50ml の水道水と一緒に空の胃に受けた。血液試料(8ml)を,薬物投与前および薬物投与後0.5,1.0,2.0,3.0,4.0,5.0,6.0,8.0,10.0 および24.0 時間において採取し,トリロスタンおよびトリ ロスタン代謝物について評価した。血漿濃度は,血漿中の最大濃度(Cmax)を与えるコンピュータープログラムにより処理し,この最大濃度を与える時間(Tmax)を検査により取った。次いで,時間間隔0~tにわたる時間に対する濃度曲線の下の面積についての値(AUCt 0 ここでtは時間である)を台形法則を用いて計算し,そして統計学的分析をスチューデント式ペア-ド(pired)t-テストを用いて実施した。大抵の場合において,血漿レベルは24時間において検出することができず,結局AUC24 0 を使用して吸収の程度を評価することができた。トリロスタンおよびその既知の17-ケト代謝物,2α-シアノ-4α,5α-エポキシアンドロスタン-3,17-ジオンについてのAUC24 0 値を,表Ⅰに記載する。 表Ⅰ粒度 10 ㎛ 45 ㎛ 100 ㎛トリロスタンAUC24 0 1.6 0.6 0.2代謝物AUC24 0 5.0 2.7 1.3これらの結果が示す AUC24 0 1.6 0.6 0.2代謝物AUC24 0 5.0 2.7 1.3これらの結果が示すように,血漿のトリロスタンおよび代謝物の濃度は,使用するトリロスタンの濃度に依存し,最小の粒度の材料,すなわち,本発明による材料は最高の血漿濃度を生ずる。」カ 「したがって,配合物中に使用するトリロスタンの粒度は,血漿中のトリロスタンおよびトリロスタン代謝物の有効性に顕著な影響を有した。 10µm の材料を含有するカプセルは,高い血漿トリロスタンおよび代謝物濃度ならびに好都合なトリロスタン対代謝物の比の両者を生じた。しかしながら,トリロスタンの粒度のほぼ45µm への増加,次いで100µm より大きい増加は,トリロスタンおよび代謝物の両者の低い血漿濃度ならびに代謝物対トリロスタンの高い比を生じた。」 (4)容易想到性ア前記(2)の各相違点に係る乙9発明の技術的構成前記(3)ア及びエは,通常の粒子に比べて小さな粉又は「つぶ」の状態にすること,すなわち相違点①に係る本件特許発明1の構成要件1-Bの「微細粉粒化されている」という技術的構成を開示するものである。 また,前記(3)オ及びカは,粒子の大きさを小さくする(微細粉粒化する)ことにより,血漿中のトリロスタン(薬物)の濃度が高まる,すなわち,より溶解度が向上して体内における吸収が高まることが記載されており,これは相違点②に係る本件特許発明1の構成要件1-Cの「改良された溶解特性を持つ」という技術的構成を開示するものである。 イ動機付けと容易想到性(ア) 乙1発明は,「治療学上有効な新しいピペリジン誘導体,およびそれらの調製プロセスおよびそれらを 改良された溶解特性を持つ」という技術的構成を開示するものである。 イ動機付けと容易想到性(ア) 乙1発明は,「治療学上有効な新しいピペリジン誘導体,およびそれらの調製プロセスおよびそれらを含む薬学組成物に関するもの」である。 これに対し,乙9発明は,「副腎皮質の阻害剤,アルドステロン生産の遮断剤およびカリウムの回避剤(sparer)であり,コーン(Conn)の病気およびクッシング(Cushing)の症候群,それらの両者は高いアルドステロンおよび低いカリウムのレベルのより特徴づけられる高血圧の疾患である,の処置において有用である」トリロスタンを含有する2-シアノ-3-オキソステロイド類及びそれらの組成物に関するものである。 したがって,上記各発明は,いずれも医薬学,医薬剤という同一の技術分野に属するものである。 (イ) 前記3【被告らの主張】(1)エのとおり,乙1発明の組成物は,それ自体として投与に適した形にすることが求められている。また,当業者(医薬品メーカー)であれば,バイオアベイラビリティを高めるために医薬品の溶解度を改善することは,当然のごとく試みる初歩的手段である。 前記(3)イのとおり,乙9発明は,バイオアベイラビリティを高めるために医薬品の溶解度を改善することを課題とするものであるから,これを乙1発明に適用することは,当業者であれば誰もが容易に想到し得る課題解決方法であり,阻害要因も全くない。 そもそも医薬品原料を粉末状にすること,すなわち,「通常の条件で入手できる物は何らかのサイズを有するが,そのような通常サイズよりも小さいサイズの粉または『つぶ』の状態」にすることは,溶解度を改善するための最初に,第一次的に選択する極めて初歩的な手段に過ぎないのであって,この第一次的な選択手段では達成できな な通常サイズよりも小さいサイズの粉または『つぶ』の状態」にすることは,溶解度を改善するための最初に,第一次的に選択する極めて初歩的な手段に過ぎないのであって,この第一次的な選択手段では達成できない問題を解決するためのその他の手段と全く同列に取り扱うべきものではない。微細粉粒化することは,何ら,特殊,特別な課題解決手段ではないのである。 【原告の主張】以下のとおり,本件特許発明1は,乙1発明及び乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 (1)本件特許発明1と乙1発明との対比について前記3【原告の主張】と同じ。 (2)動機付けと容易想到性についてア動機付けについて以下のとおり,乙1発明の本件特許発明1との各相違点に係る構成に,乙9発明の構成を適用する動機付けはない。 (ア) 本件特許発明1の解決しようとする課題は,エバスタイム(エバスチン)の粗出発材料は低い水溶性しか有さず,塩形にしなければその溶解性が極めて低く,酸性媒質中であってもその溶解が極めて遅いため,経口投与中に「胃の水性媒質中で極めて長時間の溶解が必要でありこれは有効成分の損失を生じるかもしれないし,胃器官系内容物の排出中に溶解せずに残り,それゆえに吸収できないので過剰投与量を使用するよう になるかもしれない。」ということにある。 そして,本件特許出願当時,エバスチンの溶解度が低く,生物活性を改善する必要があることも認識されてはいなかった。そもそも,エバスチンのように小さな分子構造内に複数の極性基(>N-やC=O)を有する分子については,一般的に当該分子の水溶性が低いという認識を持ち難いものである。とりわけ,エバスチンのように「>N-」という第三級窒素が存在するときには,酸性媒質での溶解性が低いと C=O)を有する分子については,一般的に当該分子の水溶性が低いという認識を持ち難いものである。とりわけ,エバスチンのように「>N-」という第三級窒素が存在するときには,酸性媒質での溶解性が低いという認識を持たない。 したがって,エバスチンの溶解度を高めるため,乙1発明の構成に乙9発明の構成を適用する動機付けがないし,乙1公報には,そうした記載や示唆もない。 (イ) 乙9発明は,ステロイド類の臨床的使用に伴う課題を解決しようとするものであって,およそステロイド類の類似構造物質ではないエバスチンの臨床的使用に伴う課題について,記載ないし示唆するものでもない。 イ容易想到性について以下のとおり,本件特許発明1は顕著な効果を奏するものであったし,乙1発明の本件特許発明1との各相違点に係る構成について,乙9発明を適用することは容易でなく,むしろ阻害要因がある。 (ア) エバスチンの溶解性を解決する手段としては,微細粉粒化すること以外にも,以下のような種々の解決手段が存在する。 ① 塩を形成させる。 最も広く利用されている方法の一つであり,エバスチンも塩の形で,より具体的には乳酸塩の形で,pH2 において至適な溶解性を有する。 ② 界面活性剤等の可溶化剤を医薬組成物に加える。 ③ 複合体を形成する。 ④ 結晶多形を選択する。 本件特許発明1は,これら数ある解決手段の中でも,微細粉粒化されたエバスチンを含む固体医薬組成物が,「微細粉粒化されていない式(Ⅱ)の化合物から得られた医薬品よりも約40%高い溶解初速度を示す」という利点を見出し,さらに「式(Ⅱ)の化合物(エバスチンを含む)の溶解に関して,さらに改良された剤形によれば,生成物の微細粉粒化に加えて親水性化も行われ,これは微細粉粒化工程も親水性化工程 示す」という利点を見出し,さらに「式(Ⅱ)の化合物(エバスチンを含む)の溶解に関して,さらに改良された剤形によれば,生成物の微細粉粒化に加えて親水性化も行われ,これは微細粉粒化工程も親水性化工程もなされなかった式(Ⅱ)の化合物を含有する固体剤形と比較して,およそ300%向上した溶解度を達成することができる。」という顕著な効果をもたらすことを見出したものである。 (イ) 有効成分粒子の粒子径を小さくして粒子の比表面積を増大させることと,溶解度の向上とは,必ずしも対応しない。有効成分粒子の粒子径を小さくしたとしても,有効成分物質の性質によって,どのように溶解度が変化し,その結果,製剤上どのように有利に作用するかは全く異なるものである。 一般に,有効成分がエバスチンのように疎水性である場合には特に顕著なことであるが,有効成分粒子を微細粉粒化しても,小さな粒子の凝集体が形成され,その結果,表面積が増大せず,溶解度が向上しないか,むしろ悪化することすらある。しかも,微細粉粒化すると,有効成分の反応性や安定性にも大きな影響を与えるから,医薬品の製造工程や保存等に格別の注意を払う必要もある。 これらのことからすれば,相違点①の「微細粉粒化されている」という点に係る乙1発明の構成に乙9発明の構成を適用することは容易でない。 (ウ) 乙9発明の有効成分であるトリロスタンの融点が257.8 度ないし270度であるのに対し,エバスチンの融点は80 度ないし82 度である。 このようにエバスチンの融点は,トリロスタンの融点よりもはるかに 低いため,エバスチンを,乙9公報に記載されている流体エネルギーミルを用いて微細粉粒状態にすると,流体エネルギーにより,トリロスタンよりも深刻に変性を受け得ることが予想できる。具体的には,エバスチン いため,エバスチンを,乙9公報に記載されている流体エネルギーミルを用いて微細粉粒状態にすると,流体エネルギーにより,トリロスタンよりも深刻に変性を受け得ることが予想できる。具体的には,エバスチンが粉砕エネルギーによって加熱され,その性質に物理的・化学的両面から深刻な被害を受ける危険があるから,当業者はこれを回避するはずである。 したがって,乙1発明の構成に乙9発明の構成を適用することには阻害要因がある。 5 争点3-3(本件特許発明1は,乙1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件特許発明1は,乙1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,進歩性がないから,本件特許発明1に係る特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)乙1発明について前記3【被告らの主張】(1)と同じ(2)本件特許発明1と乙1発明との対比について前記4【被告らの主張】(2)と同じ。 (3)周知技術について固体を小さな粉又は「つぶ」の状態にして粒子径を小さくしたり,比表面積を増大させたりすることによって溶解度が向上することは,本件特許出願当時,医薬品製造技術の分野では周知の技術であった。 そして,相違点①に係る本件特許発明1の構成要件1-B「微細粉粒化されていること」及び同1-C「改良された溶解特性を持つ」は,上記周知技術と同一のものである。 (4)動機付けと容易想到性について 乙1発明は,「治療学上有効な新しいピペリジン誘導体,およびそれらの調製プロセスおよびそれらを含む薬学組成物に関するもの」であり,上記(3)の周知技術と同じ分野のものである。 そして,前記4【被告 乙1発明は,「治療学上有効な新しいピペリジン誘導体,およびそれらの調製プロセスおよびそれらを含む薬学組成物に関するもの」であり,上記(3)の周知技術と同じ分野のものである。 そして,前記4【被告らの主張】(4)イのとおり,バイオアベイラビリティを高めるために乙1発明の溶解度を改善することは,当業者であれば当然のごとく試みる初歩的手段である。 【原告の主張】(1)本件特許発明1と乙1発明との対比について前記3【原告の主張】と同じ。 (2)周知技術について上記【被告らの主張】(3)は否認する。 (3)容易想到性について前記4【原告の主張】(2)イのとおり,有効成分を微細粉粒化したとしても,その溶解特性は必ずしも改良されず,製剤工程や保存等においても問題が生じ得るのであって,これは技術常識である。 逆に,被告らが主張する,「固体を小さな粉または『つぶ』の状態にして,その粒子径を小さくしたり比表面積を増大させたりすることによって,溶解度が向上する」という技術常識は存在しない。仮に,このような技術常識が存在するとしても,そのことから,エバスチンが微細粉粒化され得るかどうか,微細粉粒化されたエバスチンが改良された溶解特性を示し,製剤工程に耐えうるものであるかどうかは明らかではない。 6 争点3-4(本件特許発明2は,乙1発明及び乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件特許発明2は,乙1発明及び乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,進歩性がないから,本件特許発明 2に係る特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)乙1発明について前記3【被告らの主張】(1)と同じ。 (2 きたものであり,進歩性がないから,本件特許発明 2に係る特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)乙1発明について前記3【被告らの主張】(1)と同じ。 (2)本件特許発明2と乙1発明との対比についてア一致点について前記3【被告らの主張】(1)ア及びイにおける乙1公報の記載は,本件特許発明2の構成要件2-A「式(Ⅱ)の有効成分」と同一である。 イ相違点について原告が主張する相違点は,以下のとおりである。 (ア) 相違点①本件特許発明2の構成要件2-Eの組成物は,「微細粉粒化されている」「改良された溶解特性を持つ」のに対し,乙1発明がこれらの要件を備えているかは明らかでない。 (イ) 相違点②本件特許発明2の構成要件2-Bないし2-Dについて,乙1発明がこれらの要件を備えているかは明らかでない。 (3)乙9発明について前記4【被告らの主張】(3)と同じ。 (4)容易想到性などについてア前記(2)の各相違点に係る乙9発明の構成について(ア) 相違点①について前記4【被告らの主張】(4)アのとおり,乙9発明では,本件特許発明2の構成要件2-E「微細粉粒化されている」という技術的構成及び構成要件2-Eの組成物が「改良された溶解特性を持つ」という技術的構成が,いずれも開示されている。 (イ) 相違点②について a 構成要件2-B「-200µm より小さい最大サイズ」について前記4【被告らの主張】(3)エの記載によれば,トリロスタンは「微細粉粒化される」前の原料状態でも約40µm の等価球体積直径を有しているから,「微細粉粒化された」後のサイズはこれより小さくなることが明らかである。 したがって,乙9発明には,本件特許発 は「微細粉粒化される」前の原料状態でも約40µm の等価球体積直径を有しているから,「微細粉粒化された」後のサイズはこれより小さくなることが明らかである。 したがって,乙9発明には,本件特許発明2の構成要件2-Bに含まれる事項の一部が開示されている。 b 構成要件2-C「-0.5 から15µm の間の数平均粒子サイズ」について前記4【被告らの主張】(3)ウの記載によれば,構成要件2-Cに含まれる事項の一部が開示されている。 c 構成要件2-D「-25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい粒子サイズを有する好ましくは数基準で90%の粒子を有することを特徴とする」について前記4【被告らの主張】(3)ウの記載によれば,構成要件2-Dに含まれる事項の一部が開示されている。 イ容易想到性について(ア) 相違点①に係る構成が容易想到であることは,前記4【被告らの主張】(4)イと同様である。 (イ) 化合物の最大サイズ(構成要件2-B),数平均粒子サイズ(同2-C),及び数基準で90%の粒子サイズ(同2-D)をそれぞれどのような値にするかは,有効成分の種類の如何を問わず,当業者が使用する篩(ふるい)の目の大きさや破砕機,粉砕機,微細粉砕機,超微粉砕機などの使用機器によって適宜選択できる設計的事項に過ぎない。 本件明細書では,これらの数値を限定することについて,いかなる論理・根拠に基づいて導き出されたのかや,そのように限定することに よってのみ発現する具体的な効果などは一切開示されていないから,これらの数値限定に臨界的(閾値的)な意義はない。この限定された数値の範囲内に限って,かつ,その数値範囲内のすべての部分において,当時の技術水準から当業者が 的な効果などは一切開示されていないから,これらの数値限定に臨界的(閾値的)な意義はない。この限定された数値の範囲内に限って,かつ,その数値範囲内のすべての部分において,当時の技術水準から当業者が到底予測できない顕著な効果もない。 乙9発明においても,数値限定の内外で量的,質的に顕著な差異があるということはないから,乙9発明に基づき本件特許発明2の数値限定をすることは,当業者において何ら特別の創意工夫を要するものではない。 【原告の主張】本件特許発明2は,乙1発明及び乙9発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 本件特許発明1は,微細粉粒化されたエバスチンを固体医薬組成物に含めるという技術思想自体に特徴を有するものであり,このような発明の下位概念として,本件特許発明2において,その粒子サイズを様々な観点から定義しているのである。 上記【被告らの主張】(4)イは,このような技術思想自体に特徴を有するという前提を無視している点で誤りである。 7 争点3-5(本件特許発明2は,乙1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件特許発明2は,乙1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,進歩性がないから,本件特許発明2に係る特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)乙1発明について前記3【被告らの主張】(1)と同じ。 (2)本件特許発明2と乙1発明との対比について 前記6【被告らの主張】(2)と同じ。 (3)周知技術について前記5【被告らの主張】(3)と同じ。 (4)容易想到性についてア前記(2)の相違点①に係る構成要件2-E「微細 前記6【被告らの主張】(2)と同じ。 (3)周知技術について前記5【被告らの主張】(3)と同じ。 (4)容易想到性についてア前記(2)の相違点①に係る構成要件2-E「微細粉粒化されていること」及び「改良された溶解特性を持つ」は,前記(3)の周知技術と同一である。 そして,上記相違点①に係る構成について容易想到であることは,前記5【被告らの主張】(4)と同様である。 イ前記6【被告らの主張】(4)イ(イ)のとおり,化合物の最大サイズ(構成要件2-B),数平均粒子サイズ(同2-C),及び数基準で90%の粒子サイズ(同2-D)をそれぞれどのような値にするかは,設計的事項に過ぎないし,これらの数値限定に臨界的(閾値的)な意義はないから,これらの事項をもって進歩性があるとはいえない。 【原告の主張】本件特許発明2は,乙1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 理由は,前記6【原告の主張】と同じである。 8 争点3-6(本件各特許発明は,実施可能要件に違反するものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件特許発明1の「微細粉粒化」及び「改良された溶解特性を持つ」並びに本件特許発明2の「粒子サイズ」,「数平均」,「好ましくは」,「数基準」及び「請求の範囲第1項記載の組成物」は,いずれも本件明細書において,その技術内容を明確にする記載が全くなく,当業者がその実施をすることができるだけの記載はない。 よって,本件各特許発明は,実施可能要件に違反するものであり,本件特許 は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)「微細粉粒化」について前記1【原告の主張】(1)のとおり,原告は,「微細粉粒」とは,通常のエバスチン粉粒と比べて小 許 は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)「微細粉粒化」について前記1【原告の主張】(1)のとおり,原告は,「微細粉粒」とは,通常のエバスチン粉粒と比べて小さな粉又は「つぶ」をいうものであり,「微細粉粒化されていること」とは,微細粉粒の状態であることをいうものであると主張する。 粉体工学では,粒子を細かくするという意味で「微粉砕」という用語があり,粉体工学用語辞典によると,「粒度が147 ㎛(100 メッシュ)以下44 ㎛(325 メッシュ)程度の比較的細かい粒度を目的として粉砕操作を一般にさす。」「さらに実用上の最小目ふるい(篩)を通過するもの,すなわち44 ㎛から以下0.5 ㎛くらいまでの砕製物を得る粉砕操作いわゆるサブシーブないしサブミクロンを対象とした粉砕操作を超微粉砕ということもあるが,微粉砕と超微粉砕との区別は粉砕目的,粉砕原料の種類によって異なり明確ではない。」とされている。 このことからすれば,「微細粉粒化」という用語は,それ自体として,かなり寸法幅のある曖昧な用語である。 そもそも「通常のエバスチン粉粒」であるとか,それと「比べて小さな粒」といっても極めて曖昧模糊としており,何が「通常」であり,何をどう比べると「小さい」ということになるのかが全く不明瞭である。本件明細書の実施例においても,「粗生成物」の粒子のサイズは区々であり,500 ㎛通過のものから,20 ㎛通過のものまでいろいろあるとされており,実際には1000 ㎛程度の粒子もあれば数㎛程度の粒子もある。このように,「通常」という曖昧な基準をもとに粒子サイズを論じると,それと異なる粒子サイズのものである「微細粉粒化生成物」と,どこで区別するのかが全く分からない。 (2)「改良された溶解特性を持つ」について 常」という曖昧な基準をもとに粒子サイズを論じると,それと異なる粒子サイズのものである「微細粉粒化生成物」と,どこで区別するのかが全く分からない。 (2)「改良された溶解特性を持つ」について原告は,「改良された溶解特性」について,微細粉粒化されていない式(Ⅱ) の化合物を含む固形医薬組成物と比較して溶解度が向上していることを指すと主張する。 上記(1)のとおり,「微細粉粒化」の概念がそもそも不明瞭であるから,微細粉粒化されているものとされていないものの比較が不明瞭である。 また,「溶解度が向上していること」についても,本件明細書の実施例に記載されている粗生成物中ですら,大きな粒子から小さい粒子になるに従って溶解度が向上しているのは自明のことであり,何を基準としてどの程度溶解度が向上したら,「溶解度が向上した」のかが全く不明である。 仮に,少しでも向上したら「向上した」といえるというのであれば,公知技術(エバスチンの粗生成物)との峻別ができず,自ら発明性を否定するものであるし,本件明細書に記載されている前記1【原告の主張】(2)の表(Ⅰ)を参酌しても,これのみではクレームに記載された発明の技術的広がりの外延を画することはできない。 そもそも「改良された溶解特性」という文言は,本件特許発明1の構成要件を規定する事項であるのか,単なる作用効果の記載として考慮する必要がない事項であるのかも判然としない。「微細粉粒化」されたことによって当然に導かれる効果(粒子が細かい程,溶解度が上がる)であれば,何ら発明の構成を規定するものではない。そして,「微細粉粒化」された物の中に「改良された溶解特性」を持つものと持たないものとがあり,持つことを要件とするとした場合には,前述のとおり,どのような場合に「改良された溶解特性」を のではない。そして,「微細粉粒化」された物の中に「改良された溶解特性」を持つものと持たないものとがあり,持つことを要件とするとした場合には,前述のとおり,どのような場合に「改良された溶解特性」を持つのかが不明である。 (3)「粒子サイズ」,「数平均」,「好ましくは」及び「数基準」についてア 「粒子サイズ」について本件特許発明2では,㎛単位で数値が限定されているところ,各粒子のどの箇所を計るかで,寸法は大きく異なるのが自明である。 それにもかかわらず,不定形のエバスチン粒子を,どのような手法で寸 法を採るのかについて本件明細書のどこにも記載がなく,「粒子サイズ」とは一体何であるのかが不明確である。 イ 「数平均」について「数平均」とは,いかなる概念であるかが不明確である。 ウ 「好ましくは」及び「数基準」について「好ましくは」という表現は,特許庁の審査基準でも,好ましくない表現として例示されているほど,発明の外延がつかめない用語である。「好ましくは数基準で90%の粒子」というのは,全くもって不明確である。 「数基準」について,原告は,一個一個の粒子を全て寸法測定することをいうと主張するものの,本件明細書にそのような記載はない。本件明細書に記載されている前記1【被告らの主張】(1)ア(イ)の表も,個数又は重量など何を基準とし,どのようにして算出したのかも,開示も示唆もされていない。 【原告の主張】以下のとおり,本件各特許発明に含まれる用語の意義は明確であり,本件各特許発明は,実施可能要件に違反するものではない。 (1)「微細粉粒化」について微粉砕という用語は,被告らが主張するとおり,粉砕目的,粉砕原料によって意義が異なるものの,相対的な用語として通常用いられるものである。このことから はない。 (1)「微細粉粒化」について微粉砕という用語は,被告らが主張するとおり,粉砕目的,粉砕原料によって意義が異なるものの,相対的な用語として通常用いられるものである。このことからすれば,当業者は,「微細粉粒化されていること」についても,通常のサイズより小さいサイズの粉又は「つぶ」の状態をいうことを,極めて自然に理解できる。 製剤学的に単一のサイズを有する粒子群というものは現実には存在せず,ある粒子群に属する粒子サイズがある程度の分布を有することは自明のことであり,本件明細書の実施例における「粗生成物」の粒子サイズについても区々であることは,当業者において当然に理解することである。そして,そ のような区々の粒子サイズを有する集合体が「粗生成物」であって,その集合体の粒子サイズが全体として小さくなっている状態こそが「微細粉粒化されていること」である。この全体としての粒子のサイズを典型的に示す指標の一つが,平均粒子サイズであることも,当業者において一般に理解することができることである。 上記のような「微細粉粒化されていること」の意義は,本件明細書の記載から容易に理解できることであるのみならず,粉体工学における一般的な理解とも矛盾しない定義であって,それ自体,当業者が明確に理解することができる事項である。 なお,上記のとおり,「通常のエバスチン粉粒」とは微細粉粒化されていないエバスチン粒子(例えば,本件明細書の実施例における粗生成物)を意味するところ,比較の基準は,微細粉粒化されていないエバスチン粒子と微細粉粒化されたエバスチン粒子とに含まれる個々の粒子サイズではなく,分布を有する粒子群として把握されるエバスチン粒子の粒子サイズ(例えば平均粒子サイズ)である。 (2)「改良された溶解特性を持つ」につ されたエバスチン粒子とに含まれる個々の粒子サイズではなく,分布を有する粒子群として把握されるエバスチン粒子の粒子サイズ(例えば平均粒子サイズ)である。 (2)「改良された溶解特性を持つ」について「改良された溶解特性を持つ」とは,「微細粉粒化されていること」によって導かれる効果であり,かつ,独立した構成要件としての意義を有するものである。 そして,「改良された溶解特性を持つ」とは,微細粉粒化も親水性化も行わなかった錠剤における式(Ⅰ)の化合物の溶解度と比較して,溶解度が向上していることを意味し,向上の程度は当業者が通常「改良された」と認識する程度で十分である。 前記1【原告の主張】(2)のとおり,本件特許明細書の表(Ⅰ)では「改良された溶解特性を持つこと」の代表的な例が記載されており,これを参考とすれば,当業者は基準及び程度をなお一層明確に理解できる。 (3)「粒子サイズ」,「数平均」,「好ましくは」及び「数基準」についてこれらの事項の意義は,以下のとおりであり,当業者においても実施可能な程度に理解することができるものである。 ア 「粒子サイズ」について本件特許出願時における技術水準によれば,最大でも200µm 程度,平均サイズは0.5~15µm 程度の粒子サイズを有する粒子は,顕微鏡を用いて目視で観察すれば,個数基準による粒子サイズを得ることができる。 そして,多数の粒子を測定する場合,その差は平均化されて大した意味を持たない。すなわち,多数の粒子がランダムに配置された平面上で,個々の粒子がどの程度のサイズを有するかを測定するから,どの箇所を測っても,測定箇所による差は配置のランダム性に吸収され,微差に過ぎないものとなる。さらに,多数の粒子を測定することにより,いわゆる「大数の法則」(確率論 サイズを有するかを測定するから,どの箇所を測っても,測定箇所による差は配置のランダム性に吸収され,微差に過ぎないものとなる。さらに,多数の粒子を測定することにより,いわゆる「大数の法則」(確率論の基本法則の一つであり,ある事柄を何回も繰り返すと,一定事象の起こる割合は回数を増すに従って一定値に近づくという経験法則)が働くから,箇所にとらわれることなく,適宜正しい最大サイズ,数平均粒子サイズ及び数基準で90%の粒子サイズを求めることができるのである。 イ 「数平均」について「数平均粒子サイズ」とは,個数平均粒子径,すなわち,ある粒子群に属する粒子の1個1個のサイズ(粒子径)を求め,それらをその群に属する粒子数に対して平均した粒子サイズである。 このように,本件各特許発明においては,粒子群の分布を統計学的に反映する個数について寸法測定することで足りることは,当業者にとって明らかなことである。 ウ 「好ましくは」及び「数基準」についてこれらの用語の意義については,前記2【原告の主張】(4)のとおりで ある。 そして,粒子サイズにおける基準は,あるサイズを有する粒子がどのような量で存在しているかを示す基準であり,数基準が,あるサイズを有する粒子が何個存在するかによって粒子サイズを考えることを意味することは,技術常識である。 9 争点3-7(本件各特許発明は,サポート要件に違反するものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件各特許発明は,サポート要件に違反するものであり,本件特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)「微細粉粒化」について本件明細書では,本件各特許発明について,いずれも,ジェットミルという周知・慣用の手段を用いて実施例 件特許は,特許無効審判により無効とされるべきものである。 (1)「微細粉粒化」について本件明細書では,本件各特許発明について,いずれも,ジェットミルという周知・慣用の手段を用いて実施例記載のサイズのエバスチン粗生成物を実施例記載のサイズの微細粉粒にするということが開示されているにとどまり,それ以上の開示は一切ない。 この物理的にエバスチン粗生成物を粉砕するという手法によって生成されたものと,被告ら各製品のようにエバスチンを溶媒に溶解させて賦形剤に練り込む態様(練り込まれた混練状態)のものとは異質なものであり,後者は本件明細書において全く開示も示唆もされていない。 (2)「式(Ⅱ)」について本件特許発明1の式(Ⅱ)の化合物は,形式的な選択肢により多岐にわたる化合物が含まれるから,本件特許発明1は,エバスチンだけでなく,式(Ⅱ)に示される化合物全てについて,微細粉粒化によりバイオアベイラビリティを高めることができるという内容の発明である。 しかし,本件明細書では,エバスチンの微細粉粒化生成物による実施例しか開示されておらず,エバスチン以外の式(Ⅱ)に示される化合物において も,微細粉粒化によりバイオアベイラビリティを高めることができるということは全く明らかにされていない。 したがって,本件特許発明1は,発明の詳細な説明によって支持されたものとは到底いえない。本件特許発明2も,本件特許発明1に従属するから,同様である。 (3)「粒子サイズ」,「数平均」及び「数基準」について本件明細書では,これらの概念の意義や計測・算出方法について全く記載されていないから,本件特許発明2は,発明の詳細な説明によって支持されたものではない。 【原告の主張】以下のとおり,本件各特許発明は,サポート 念の意義や計測・算出方法について全く記載されていないから,本件特許発明2は,発明の詳細な説明によって支持されたものではない。 【原告の主張】以下のとおり,本件各特許発明は,サポート要件に違反するものではない。 (1)「微細粉粒化」について微細粉粒の状態にするための手段は,本件特許発明1の構成要件ではなく,手段による限定を加える必然性も存在しない。したがって,微細粉粒の状態にするための種々の手段は,当業者に周知のいかなる手段であってもよいのであって,これらの手段に対応する技術的事項の全てが明細書に記載されていなかったとしても,サポート要件には違反しない。 (2)「式(Ⅱ)」についてエバスチンと式(Ⅱ)で示されるその他の化合物は,ピペリジン環とフェニル環構造を有する点で同一の骨格を有し,その官能基の種類及び配置が酷似している。 したがって,エバスチンにおいて確認された溶解特性の改良は,その他の式(Ⅱ)で示される化合物においても,推認することができるものである。 (3)「粒子サイズ」,「数平均」及び「数基準」について前記のとおり,「粒子サイズ」,「数平均」及び「数基準」の概念並びにそれらの計算・測定方法は当業者に明らかな事項であるから,これらの当業者に 自明な事項についてまで明細書において逐一説明する必要はない。 争点3-8(本件各特許発明は,構成要件不可欠要件に違反するものであるか)について【被告らの主張】以下のとおり,本件各特許発明に係る特許請求の範囲には,特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項が(明確に)記載されているとはいえず,いずれも構成要件不可欠要件に違反するものである。 (1)前記8【被告らの主張】のとおり,本件特許発明1の「微細粉粒 とする発明の構成に欠くことができない事項が(明確に)記載されているとはいえず,いずれも構成要件不可欠要件に違反するものである。 (1)前記8【被告らの主張】のとおり,本件特許発明1の「微細粉粒化」及び「改良された溶解特性を持つ」並びに本件特許発明2の「粒子サイズ」,「数平均」,「好ましくは」,「数基準」及び「請求の範囲第1項記載の組成物」の各記載は,いずれも記載自体が不明瞭であり,本件明細書においてもその意味するところが明確ではない。 (2)引用された内容の不明確性特許発明に係る請求項の記載において,引用形式が許されるのは,引用されている技術的事項が明確である場合に限られ,何が引用されているのか不明確な場合には,明確性の原則により許されない。 そして,本件特許発明2の構成要件2-E「請求の範囲第1項記載の組成物」は,引用形式のものであるところ,上記(1)のとおり,請求の範囲第1項記載の組成物,すなわち本件特許発明1の技術的範囲は不明確であるから,本件特許発明2の構成要件2-Eは明確性の原則に違反するものである。 (3)本件特許発明2全体の不明確性また,一錠剤中に使用されているエバスチン粒子が100 個であった場合に,そのうち10 個は140µm の粒子(この粒子サイズは本件明細書の実施例において「粗生成物」の「平均サイズ」と記載されているものである。)であり,残りの90 個は0.5µm の粒子サイズであったとき,本件特許発明2の数値限定の範囲に入るのか,「微細粉粒化」されたものといえるのか,「改良された 溶解特性を持つ」といえるのか,すなわち本件特許発明2の技術的範囲に属し,作用効果を奏するといえるのかは明確でない。 【原告の主張】以下のとおり,本件各特許発明は,いずれも構成要件不可欠 解特性を持つ」といえるのか,すなわち本件特許発明2の技術的範囲に属し,作用効果を奏するといえるのかは明確でない。 【原告の主張】以下のとおり,本件各特許発明は,いずれも構成要件不可欠要件に違反するものではない。 (1)前記8【原告の主張】のとおり,本件各特許発明の記載の意義は,いずれも明確なものであり,上記【被告らの主張】(1)及び(2)は理由がない。 (2)上記【被告らの主張】(3)の例は,本件特許発明2の構成要件をいずれも満たすものであり,本件各特許発明の技術的範囲は明確である。 第4 当裁判所の判断本件事案の内容に鑑み,争点1(被告ら各製品が本件特許発明1の技術的範囲に属するか)及び2(被告ら各製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するか)について併せ検討すると,被告ら各製品が本件各特許発明の各技術的範囲に属するとは認めることができない。 以下,詳述する。 1 前提となる知見前提事実に加え,弁論の全趣旨及び後掲各証拠によれば,本件に関連する以下の知見を認めることができる。 (1)結晶と無晶形(非晶質固体)(乙15,16,28)結晶とは空間的に周期的な原子・分子配列を示す固体物質で,無晶形は非晶質固体とも呼ばれ,原子,分子が不規則な配列を示す固体物質をいう。 一般に無晶形は結晶形に比較して高エネルギー状態にあり,大きな溶解度が期待される(すなわち溶解しやすい。)。 (2)粉末エックス線回折測定法(乙28,53,54)結晶性物質のエックス線回折パターンは,各化合物の各結晶形に固有かつ特徴的である。 このことから,上記測定法は,結晶,結晶多形及び溶媒和結晶の同定,判定又は定量並びに結晶性の定性的評価,結晶化度の測定などに用いることができる。 非晶質は明確 かつ特徴的である。 このことから,上記測定法は,結晶,結晶多形及び溶媒和結晶の同定,判定又は定量並びに結晶性の定性的評価,結晶化度の測定などに用いることができる。 非晶質は明確な構造の規則性を持たず,ランダムな分子配列のため,干渉性エックス線散乱強度が小さく,そのエックス線回折パターンは散漫性の極大を持つハローパターンを示す。そのため,非晶質もしくは結晶性の著しく低下した試料に対する上記測定法の適用は限られる。 なお,世界最高性能の放射光(エックス線)を生み出すことができる施設として,独立行政法人理化学研究所が設置する「Spring-8」がある。 (3)2値化処理(甲13)2値化処理とは,ある条件下で「1(有)」「0(無)」の2階調に変換することをいう。画像処理における2値化処理は,画像の各ピクセルの特定の情報について基準値を設定し,基準値を上回る場合は白(有),基準値を下回る場合は黒(無)の2色に変換することで,画像から検出対象を抽出するものである。 この基準値を「閾値」,2値化して得られた画像を「2値化イメージ」という。 2 本件各特許発明の技術的範囲の解釈について(1)本件明細書(甲2)の【特許請求の範囲】の記載についてア本件特許発明1の構成要件1-Bのうち「微細粉粒化」の意義について「微細粉粒化」の語の意義を明らかにした刊行物等の証拠はなく,他に,これが技術用語として慣用されるものであるとか,当業者は何らかの特定の意義を有するものと解釈するなどと認めるに足りる主張立証はない。 そこで,「微細粉粒化」の語を構成する個々の字句について,その日常的意義を検討してみると,「微細」とは「極めて細かいこと。甚だしくわずかなこと。」を,「粉(こな)」とは「砕けて細かくなったもの。粉末 そこで,「微細粉粒化」の語を構成する個々の字句について,その日常的意義を検討してみると,「微細」とは「極めて細かいこと。甚だしくわずかなこと。」を,「粉(こな)」とは「砕けて細かくなったもの。粉末。」 を,「粒(つぶ)」とは「まるくてちいさいもの。人または物の集合体を構成する個々の人または物。」をいうと解される。また,「化(か)」の意義としては「形状・性質などがかわる。」ことをいうと解される。 このような「微細粉粒化」を構成する個々の字句の日常的意義を合わせて考えれば,「微細粉粒化」とは,「(ある状態よりも)大きさが極めて細かい状態の『粉(こな)』又は『粒(つぶ)』に変化させること」をいうものと,一応,解釈することができる。 イ本件特許発明2の構成要件2-Eの「請求の範囲第1項記載の組成物」の意義について本件特許発明2の構成要件2-Eの「請求の範囲第1項記載の組成物」とは,本件特許発明1の構成要件1-Cの「改良された溶解特性を持つ固体医薬組成物」を指しているとしか解しようがない。また,構成要件2-Bないし2-Dの「‥‥の粒子を有することを特徴とする」の部分は,本件特許発明1の構成要件1-Bの「微細粉粒化されていること」を,より具体的に限定したものと解するのが自然である。 ウ本件特許発明2の構成要件2-Dの「粒子」の意義について構成要件2-Dの「粒子」の意義については,「式(Ⅱ)の有効成分」すなわち,本件ではエバスチンの「粒子」をいうものと解するほかない。このように解さなければ,他の添加物を含む(又は含まない)固体医薬組成物において粒子の外延を画することができず,その大きさを規定する意味がないことからしても,このことは明らかである。 (2)本件明細書(甲2)の【発明の詳細な説明】の記載についてア 体医薬組成物において粒子の外延を画することができず,その大きさを規定する意味がないことからしても,このことは明らかである。 (2)本件明細書(甲2)の【発明の詳細な説明】の記載についてア本件明細書(甲2)の【発明の詳細な説明】欄には以下の記載がある。 (ア) エバスチンは,「固体剤形中に配合された時にはきわめて平凡なバイオアベイラビリティーを表す。この不十分なバイオアベイラビリティーは一部水溶性の悪さに関連している。従って上記の特許に記載されている 粗出発材料からは人が使用でき,かつ正しいバイオアベイラビリティーを表し,そして最終的には正しい生物活性を表す固体剤形中への配合は困難である。」(3欄41~47行目)「これらの化合物は非経口経路および経口経路を通して活性である。それらの経路での投与中に,式(Ⅰ)の有効成分はその水に対する低い溶解性のために胃の水性媒質中で極めて長時間の溶解が必要であり,これは有効成分の損失を生じるかもしれないし,胃器官系内容物の排出中に溶解せずに残り,それゆえに吸収できないので過剰投与量を使用するようになるかもしれない。このことは医療分野では常に危険である。」(4欄47行目~5欄4行目)(イ) 「本発明は以下の式(Ⅱ)の化合物に関する新規固体投与剤形を開発するために思案され,これは有効成分が向上した溶解性と,すなわち向上したバイオアベイラビリティーを表す。」(6欄2~5行目)「この剤形は,微細粉粒化されていない式(Ⅱ)の化合物から得られた医薬品よりも約40%高い溶解初速度を示すことが利点である。 式(Ⅱ)の化合物の溶解に関して,さらに改良された剤形によれば,生成物の微細粉粒化に加えて親水性化も行われ,これは微細粉粒化工程も親水性化工程もなされなかった式(Ⅱ)の化合物を含有す 点である。 式(Ⅱ)の化合物の溶解に関して,さらに改良された剤形によれば,生成物の微細粉粒化に加えて親水性化も行われ,これは微細粉粒化工程も親水性化工程もなされなかった式(Ⅱ)の化合物を含有する固体剤形と比較して,およそ300%向上した溶解度を達成することができる。 本発明のひとつの実施例によれば,式(Ⅰ)の粗結晶化化合物を濾過ふるいと供給ホッパーを備えた微細粉粒機に導入する。冷却圧縮空気は分子を分画するために注入する。得られた微細粉粒化生成物は,好ましくは以下の特徴を表す:-200µm より小さい最大サイズ-0.5 から15µm の間の数平均粒子サイズ-25µm より小さい,および好ましくは20µm よりも小さい粒子サイ ズを有する,好ましくは数基準で90%の粒子」(5欄44行目~6欄26行目)(ウ) 「微細粉粒化粉末は引き続き最終的な医薬剤形にすることができ,例えばそれは直接的な圧縮または湿式造粒により,あるいは経口凍結乾燥物またはゼラチンカプセルの形態である。」(6欄27~30行目)「圧縮剤形に関しては,微細粉粒化され,かつ親水性化されていない粉末を直接圧縮するか,あるいは親水性化され,かつ造粒された粉末を圧縮するかのいずれかが可能である。」(6欄37~40行目)(エ) 「本発明は以下の実施例により,より完全に記載されるが,これは本発明を限定することを意味するものではない。 微細粉粒化これはポリエステル製の濾過ふるいを装備した直径20mm のステンレス鋼製微細粉粒機中で行われる。」(6欄48行目~7欄3行目)「圧縮空気の注入により微細粉粒プレート中の粒子が加速され,互いに衝突する粒子はより細粒化された粒子中に分画されるようになる。 粗生成物微細粉粒化生成物 8行目~7欄3行目)「圧縮空気の注入により微細粉粒プレート中の粒子が加速され,互いに衝突する粒子はより細粒化された粒子中に分画されるようになる。 粗生成物微細粉粒化生成物97.7%<500μm 100% <80μm94.4%<400μm 99.4%<50μm97.6%<25μm 76 %<225μm 96.6%<20μm43.4%<125μm 93.1%<15μm23.7%< 83μm 90.3%<10μm8.1%< 46μm 61.1%< 5μm2.5%< 20μm 31.1%< 2μm 18 %< 1μm平均サイズ=140μm 平均サイズ=3.4μm 」(7欄6~1 9行目)イ上記ア(ア)では,エバスチンを固体剤形に配合した場合,バイオアベイラビリティが低いこと,その原因の一部は水溶性の悪さに関連していること,同(イ)では,本件各特許発明がエバスチンの溶解度を向上させることによりバイオアベイラビリティを向上させるものであることが,それぞれ記載されている。 また,同(ウ)では,微細粉粒化粉末を用いて最終的な医薬剤形にする方法が記載され,同(エ)では,微細粉粒化の実施例として,圧縮空気を用いて粒子を衝突させることにより細粒化させる方法と,それにより得られた微細粉粒化生成物と粗生成物の平均サイズを比較する表が記載されている。なお,同(イ)及び(エ)では,微細粉粒化により得られたエバスチンの好ましい粒子サイズも記載されている。 これらの記載によれば,本件明細書(甲2)の【発明 平均サイズを比較する表が記載されている。なお,同(イ)及び(エ)では,微細粉粒化により得られたエバスチンの好ましい粒子サイズも記載されている。 これらの記載によれば,本件明細書(甲2)の【発明の詳細な説明】においては,【特許請求の範囲】の記載と同様に,「微細粉粒化」とは,エバスチンの溶解度を向上させるため,エバスチンの粒子の大きさを小さくする意味で用いられていること,微細粉粒化された生成物の好ましい特徴として本件特許発明2に対応する粒子サイズが規定されていることが認められる。 (3)本件各特許発明の技術的範囲の解釈について上記(1)及び(2)で検討したところによれば,本件特許発明1の構成要件1-B「式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする,」とは,式(Ⅱ)の化合物,すなわち「エバスチンを(ある状態よりも)大きさが極めて細かい状態の『粉(こな)』又は『粒(つぶ)』に変化させていることを特徴とする,」ものと解することができる。 また,本件特許発明2は,本件特許発明1の構成要件1-Bの「微細粉粒化されていること」を,「構成要件2-Bないし2-Dで特定した大きさのエ バスチンの粒子を有すること」に,具体的に限定したものと解することができる。 原告も,前記第3の1【原告の主張】(1)及び同2【原告の主張】(2)などにおいて,同旨の主張をしているところである。 なお,構成要件1-Bの「微細粉粒化されていること」については,どの程度微細なものであれば,これを充足するのか又何を基準として粒子の大きさを特定するのかなどの問題があり,構成要件1-Cの「改良された溶解特性を持つ」についても,どの程度の溶解特性を有するものが,これを充足するのかなどの問題もあるが,本件では,これらの点についての判断は留保し,以 かなどの問題があり,構成要件1-Cの「改良された溶解特性を持つ」についても,どの程度の溶解特性を有するものが,これを充足するのかなどの問題もあるが,本件では,これらの点についての判断は留保し,以下,被告ら各製品においてエバスチンが具体的にどのような状態で存在するのかという点について検討することとする。 3 Aptuit 社作成の各分析試験報告書について(1) 原告は,被告ら各製品に含有されるエバスチンについて,本件特許発明1の「微細粉粒化されていること」及び本件特許発明2の構成要件2-Bないし2-Dの大きさの「‥‥粒子を有することを特徴とする」をいずれも充足する旨主張し,これを証明するものとして,Aptuit 社作成の分析試験報告書2通(甲8,10。以下,併せて「本件各報告書」という。)を提出する。 本件各報告書は,被告製品1及び5の各錠剤断面におけるエバスチンのドメインサイズを分析したというものであるが(被告製品1についての報告書が甲8で,被告製品5についての報告書が甲10),その分析結果が,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるかについて当事者間に争いがあるので,以下検討する。 (2) 本件各報告書の概要は,以下のとおりである。 ア本件各報告書の作成経緯本件各報告書が採用した分析方法は,Aptuit 社が,原告から依頼を受け,錠剤に含有されるエバスチンのドメインサイズを分析するために,新たに 開発したものである。 イ分析対象となる錠剤断面の作成まず,被告製品1及び5の各錠剤を,走査型電子顕微鏡(SEM)測定用プレートに樹脂で固定し,ミクロトームを用いて切断して,測定対象となる錠剤断面を作成した。 作成・分析した錠剤断面の数は,被告製品1及び5について,そ の各錠剤を,走査型電子顕微鏡(SEM)測定用プレートに樹脂で固定し,ミクロトームを用いて切断して,測定対象となる錠剤断面を作成した。 作成・分析した錠剤断面の数は,被告製品1及び5について,それぞれ9面ずつ(1錠につき異なる平面で各3面,各3錠ずつ)である。 ウ顕微近赤外分光測定被告製品1及び5は,エバスチン以外の添加物を含有しているところ,エバスチンは,顕微近赤外分光測定(NIR)において,これらの添加物と異なり,1650nm で特異的なピークを示す。 そこで,Sapphire ケミカルイメージングスペクトロメーター(SpectralDimensions 社製)を用いて,各錠剤断面の顕微近赤外分光測定を行ったところ,各錠剤断面の多くの領域において,単一のピクセル(40µm×40µmの2次元領域に相当する)が,エバスチンの存在を示す赤色で示された。 これは,これらのピクセルに含まれるエバスチンのドメインサイズが40µm 以上か,それ以下のものが凝集したものであることを示しているが,そのいずれかを判断することはできない。 このように,顕微近赤外分光測定では,40µm 以下のエバスチンの大きさを測定することができないため,次に,より高分解能である顕微ラマン分光法を用いた検査を行った。 エ顕微ラマン分光法(以下「本件分析方法」という。)エバスチンは,顕微ラマン分光法において,錠剤中の添加物と異なり, 1607 ㎝-1 で特徴的なシグナルを示すことから,顕微ラマン分光装置(Renishaw 社製)を用いて,各錠剤断面の顕微ラマン分光法測定を行った。この方法による空間分解能,すなわち画像上の各ピクセルの大きさは, 2.29µm/ピクセルである。 これにより得られた画像(以下「ラマンマッピング」という。)につい ン分光法測定を行った。この方法による空間分解能,すなわち画像上の各ピクセルの大きさは, 2.29µm/ピクセルである。 これにより得られた画像(以下「ラマンマッピング」という。)について,一般に使用されている粒子解析ソフトであるISysVer. 4.0.0.45 を用い2値化処理を行った。閾値は,被告製品1のエバスチン含有量が5.00%であり,被告製品5のエバスチン含有量が7.14%であることから,それぞれ5.00%,7.14%とした。具体的には,被告製品1に係るラマンマッピングにおいて,最も高い測定強度を示した全体の5.0%に相当する数のピクセルの値を定数に設定し,残りの95.0%に相当する数のピクセルの値を0 と設定した。被告製品5においても,同様に全体の7.14%に相当する数のピクセルの値を定数に設定し,残りを0 と設定した。 この2値化イメージについて,さらに一部を切り取ったものを作成し,その画像(以下「打切り処理後画像」という。)内におけるエバスチンの存在するドメインを観察した。 オバリデーション(Validation)本件分析方法の妥当性を検証するため,3種類の大きさのポリスチレン球(5µm,10µm 及び15µm)をそれぞれ圧縮状に加えた錠剤を作成し,これに含有されるポリスチレン球の大きさについて,本件分析方法を用いて分析した。 その分析結果は,平均回収率が94%であり,薬学的に許容される範囲内のものであったし,集積した標準偏差も4.73µm にとどまった。 これにより本件分析方法の妥当性は証明された。 カ分析結果本件分析方法により,被告製品1に係る9つの打切り処理後画像領域内において,合計521 個のエバスチンのドメインを観察することができ,その観察結果に加え,上記バリデーション た。 カ分析結果本件分析方法により,被告製品1に係る9つの打切り処理後画像領域内において,合計521 個のエバスチンのドメインを観察することができ,その観察結果に加え,上記バリデーションによる標準偏差も考慮すると,数平均ドメインサイズは6.77±4.73µm,最大ドメインサイズは46.78± 4.73µm であり,90%数基準は12.30±4.73µm であった。 前同様に,被告製品5に係る9つの打切り処理後画像領域内において,合計498 個のドメインを観察することができ,数平均ドメインサイズは7.87±4.73µm,最大ドメインサイズは56.35±4.73µm であり,90%数基準は16.21±4.73µm であった。 (3) 本件各報告書の上記(2)カの分析結果,すなわちドメインサイズの分析結果が,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるかについて,以下のとおり,肯定する意見がある。 ア P1は,本件分析方法の開発及び本件各報告書の作成に関わっており,大要,以下の意見を述べている(甲9,11,27,36~38,50。 以下「P1意見」という。)。 粒子サイズを測定する常套手段としては,レーザー光回析及び光遮蔽法があり,これらはいずれも粒子の2次元の大きさのみを測定するものである。 したがって,本件分析方法が,2次元の大きさを測定することにより粒子の大きさを測定したのは,標準的な方法によったものである。 また,本件分析方法は,無作為に被告製品の錠剤断面が選択されており,統計的に適切な数の粒子のランダムな向きが入手されており,目的成分のドメインサイズの正確な決定もされている。 また,複数の錠剤における複数の領域がサンプリングされていることにより,エバスチンのド 統計的に適切な数の粒子のランダムな向きが入手されており,目的成分のドメインサイズの正確な決定もされている。 また,複数の錠剤における複数の領域がサンプリングされていることにより,エバスチンのドメインサイズを測定するために有効な代表が得られている。 閾値処理も被告製品1及び5に含有されるエバスチンの定量的濃度に基づいてされたものであるから,正確である。 ポリスチレン球は,粒子サイズ測定法バリデーションについて,既知の標準として世界的に認知されており,これを用いたバリデーションにより, 本件分析方法の妥当性は証明された。 イ P2は,関西学院大学理工学部教授であり,以下のとおりP1意見に賛成する意見を述べている(甲13,14,16,26,35,55。以下「P2意見」という。)。 閾値を設ける意義としては,第1に,特定の2次元領域である錠剤断面に存在する粒子と,錠剤断面の深さ方向において異なる2次元領域に存在する別の粒子とを,区別することができるということがある。すなわち,顕微鏡観察を正確に行うためには焦点を合わせる必要があるところ,他の2次元領域に含まれるエバスチンが微弱なラマン散乱光強度を伴った存在領域として表示されることがあるから,このような領域を排除する必要がある。 第2に,1ピクセル内に含まれるエバスチンの量が不十分である場合があり,このようなピクセルを除外する必要がある。本件各報告書の顕微ラマン分光法では,1個のピクセルがエバスチンを含有している割合がラマン散乱光強度として反映される。具体的には,一つのピクセルの面積が全てエバスチンで占められていれば,そのピクセルは初期ラマンマップにおいて青色で表示され,全くエバスチンが含まれていなければ赤色として表示されている。そして,中間の緑色のピクセルは,異 セルの面積が全てエバスチンで占められていれば,そのピクセルは初期ラマンマップにおいて青色で表示され,全くエバスチンが含まれていなければ赤色として表示されている。そして,中間の緑色のピクセルは,異なる2次元領域にあるか,粒子サイズが機材の分析限界である2.29µm 未満の極めて微細なエバスチン存在領域を示すものである。 したがって,閾値処理を用いてこれらを捨象することは,画像処理の基本技術である。 ウ P3は,大要,以下のとおり,意見を述べている(甲28,39~41)。 顕微ラマン分光法における特徴的な光学的スペクトル強度及びその感度は,照射するレーザーのパワー及び周波数と直接関係する。 したがって,レーザーの使用が長くなると強度及び感度が低下するから, 特定の絶対的強度の値を元に閾値を設定すると,悪影響を受ける可能性がある。 本件分析方法のように有効成分量に基づいた閾値を設定することにより,こうした影響を受けることはなくなるから,検査方法として明確な利点がある。 エ P4は,大日本住友製薬株式会社の従業員であり,大要,以下の意見を述べている(甲33,56)。 Spring-8 を利用した粉末エックス線回折測定法により,被告製品1及び5のエックス線回折パターンを分析したところ,本件特許の実施品である同社製品と同様の結晶性が示された。 製剤中のエバスチンの結晶状態は,製剤中におけるエバスチンを取り巻く環境に依存するところ,被告ら各製品と同社製品のいずれも賦形剤であるマンニトールを相対的に多く含んでおり,エバスチンを取り巻く製剤中の環境は類似していることなどからすれば,いずれの錠剤中に含有されるエバスチンについても,そのうち90%以上は同じ結晶粒子の状態で存在するものと考えられる。 (4) 他方,本件 ンを取り巻く製剤中の環境は類似していることなどからすれば,いずれの錠剤中に含有されるエバスチンについても,そのうち90%以上は同じ結晶粒子の状態で存在するものと考えられる。 (4) 他方,本件各報告書の上記分析結果,すなわちドメインサイズの分析結果が,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるかについて,以下のとおり,否定する意見がある。 ア P5は,東邦大学薬学部薬剤学教室教授であり,大要,以下の意見を述べている(乙43,44,49,57。以下「P5意見」という。)。 本件各報告書は,特定の2次元領域(被告製品1及び5の特定の位置における断面)に限定された範囲を分析,考察したものであり,これだけでは錠剤に含有されるエバスチンなどの各化合物(単一のものに限定されない)が,どのような状態及び形状(形,大きさ,寸法,数量等)等で存在しているのか,正確に観察,測定できない。特に,被告ら各製品に含まれ る化合物が他の複数の化合物と絡み合って塊状(結晶物質か非晶質物質かは限定しない。)を形成していることからすると,その特定の断面(2次元領域)を表しただけでは不十分である。 また,本件各報告書は,実際には混合物である部分についても,閾値を基準として0(無)か1(有)として,特定の成分の有無を判断し,それをピクセルに存在する物質としている。すなわち,本件各報告書の顕微ラマン分光法の観察結果によると,被告製品1及び5に係るラマンスペクトルマップ上に表示された緑色のピクセルにもエバスチンの反応が存在しているにもかかわらず,存在しないものとしており,これは妥当ではない。 エバスチンの反応がピクセルにあるという事実によって判断できるのは,当該ピクセル内にエバスチンが存在するということに過ぎず,レスポ ているにもかかわらず,存在しないものとしており,これは妥当ではない。 エバスチンの反応がピクセルにあるという事実によって判断できるのは,当該ピクセル内にエバスチンが存在するということに過ぎず,レスポンスの強弱から粒子サイズを判断することはできない。したがって,前記(3)イの意見が主張するような,「緑色のピクセルは粒子サイズ2.29µm 未満の極めて微細なエバスチンの存在を示している」などということはできないのである。 要するに,本件各報告書により分析された各ドメインの数値は,分布している原薬の大きさなどに対する真の数値を表すものではなく,ある条件で評価した時にこのような数値になったという,調整可能な選択された前提条件下での仮定の数値にすぎない。 そもそも,実際の製剤中の原薬は,ポリスチレン球形粒子と異なり,その形態や形状などが不定形かつ不規則なものであり,圧縮によって変形しうるものである。とりわけ,被告ら各製品では原薬が溶解して賦形剤と混在,一体化している。このように被告ら各製品とは状態の異なるポリスチレン球形粒子を用いたバリデーションをもって,本件分析方法の有効性が証明されたということはできない。現に,電子顕微鏡(SEM)写真でも,被告ら各製品に含有されるエバスチンは,他の化合物との境界が全く不明 であり,3次元のみならず2次元的にも,粒子径など観念することすらできない状態のものである。 前記(3)エでP4が引用するSpring-8により測定したエックス線回折パターンによれば,原告が本件特許の実施品と主張する製剤に含有されたエバスチンと,被告ら各製品に含有されたエバスチンとは,同じ状態で存在していない。本件特許の実施品に含有されたエバスチンは結晶性が高く,優れているのに対し,被告製品1は,構造そのものに乱れが発 れたエバスチンと,被告ら各製品に含有されたエバスチンとは,同じ状態で存在していない。本件特許の実施品に含有されたエバスチンは結晶性が高く,優れているのに対し,被告製品1は,構造そのものに乱れが発生して状態が変化しているから,前記(3)エの意見も誤りである。 イ P6は,千葉大学大学院薬学研究院教授であり,大要,以下の意見を述べている(乙46,50,59,60。以下「P6意見」という。)。 一般的に用いられている原薬の粒子径の測定原理(篩分け法,顕微鏡法,光散乱法など)と,顕微ラマン分光法(本件分析方法)や顕微近赤外分光測定により構成成分の粒子径を評価しようとするコンセプトは,明らかに異なるものである。 後者の方法(本件分析方法を含む。)では,光を照射した面内に薬物が存在した場合,薬物が存在する量に対応して吸収ピーク(シグナル)の強度が検出される。逆に言えば,添加剤中のある深さに埋もれて存在する薬物に関しては検出されないし,薄片状に存在していれば粒子でなくても強くシグナルが検出されてしまう。 また,後者の方法は,あらかじめ標準品を用いて作成した検量線に基づいて評価した薬物の濃度を色の違いで表現するものであり,色の濃淡が示しているのは単位面積当たりの薬物の存在割合にすぎず,薬物がどのような形状で存在しているか,どのくらいの大きさの粒子が存在しているかを具体的に示す証拠とはならない。 さらに,閾値を設定することで,薬物が理論含量以上存在する箇所を示すことができるとはいえ,これはあくまで単位面積当たりの薬物の存在割 合を示したものにすぎず,含量が閾値以下の値でマッピングできていないとしても,それは薬物が存在しないことと同義ではない。例えば,薬物が理論含量以上存在する箇所と,理論含量以下存在する箇所とが連続的に分布 したものにすぎず,含量が閾値以下の値でマッピングできていないとしても,それは薬物が存在しないことと同義ではない。例えば,薬物が理論含量以上存在する箇所と,理論含量以下存在する箇所とが連続的に分布していたとしても,マッピングでは理論含量以下で存在する箇所が無視されるため,結果として,不連続な分布の画像が得られてしまうことになる。 被告ら各製品は,原薬であるエバスチンを有機溶媒に溶解させ,その溶液を添加剤に加えて練合した後に乾燥させ,さらに他の添加物を加えるなど複雑な工程により製造されているため,単に各成分を混合したものとは異なり,エバスチンが,結晶化しているのか,添加剤と混ざった状態で非晶質状態として存在しているのか,その存在状態の把握も困難であり,状態も大きさも均一でないと考えられる。 本件各報告書の分析結果は,被告ら各製品に含有されるエバスチンのおよその存在の程度と定性的な分布を示しているにすぎないものであり,エバスチン粒子の存在状態や大きさを示すものではない。 (5) 本件各報告書の分析結果に対する検討上記(3)及び(4)の各意見を踏まえ,同(2)の本件各報告書の分析結果,すなわちドメインサイズの分析結果が,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるかについて検討すると,以下の理由から,これを認めることはできない。 ア顕微ラマン分光法測定の妥当性前記(2)のとおり,本件分析方法は,被告製品1及び5の各錠剤の2次元断面上において,顕微ラマン分光法測定を行い,これにより得られたラマンマッピングについて,各錠剤に含有されるエバスチンの量を閾値として2値化処理をし,その2値化イメージの一部を切り取って作成した打切り処理後画像内におけるエバスチンの存在するドメインサイズ(2.2 マンマッピングについて,各錠剤に含有されるエバスチンの量を閾値として2値化処理をし,その2値化イメージの一部を切り取って作成した打切り処理後画像内におけるエバスチンの存在するドメインサイズ(2.29µm/ ピクセル)及び個数等を観察したというものである。 そこで,本件各報告書のうち被告製品1についての報告書(甲8)において,被告製品1について顕微ラマン分光法測定により得られたラマンマッピングの1枚(図5),これを2値化処理した後の2値化イメージ(図6),その打切り処理後の画像(図7)を順に示すと,以下のとおりである。 図5 図6 図7これらの画像によれば,本件分析方法において,2値化処理がされた結果,上記ラマンマッピングのうち,青色で表示された部分にエバスチン以外の成分が含まれているにもかかわらず,この部分にはエバスチンしか存在しないものとして処理され,逆に,緑や黄色で表示された部分にはエバスチンが含まれているにもかかわらず,これらの部分にはエバスチンが存在しないものとして処理されたことが認められる。 このような2値化処理をした理由については,本件各報告書にも前記(3)アないしウの各意見にも,それが画像処理の基本であるということ以外に,何ら合理的な説明がされていない。 かえって,P5意見及びP6意見(前記(4))によれば,顕微ラマン分光法測定により得られたラマンマッピングは,あらかじめ標準品を用いて作成した検量線に基づいて評価した薬物の濃度を色の違いで表現するものであり,色の濃 及びP6意見(前記(4))によれば,顕微ラマン分光法測定により得られたラマンマッピングは,あらかじめ標準品を用いて作成した検量線に基づいて評価した薬物の濃度を色の違いで表現するものであり,色の濃淡が示しているのは単位面積当たりの薬物の存在割合にすぎないことが認められる。 そうすると,P5意見及びP6意見(前記(4))が指摘するとおり,顕 微ラマン分光法測定(本件分析方法)により得られたラマンマッピングは,被告ら各製品に含有されるエバスチンのおよその存在の程度と定性的な分布を示しているにすぎないものというほかない。 そうであるにもかかわらず,上記のような2値化処理をして得られた2値化イメージに係る打切り処理後画像からエバスチンドメインを観察し,そのサイズを測定したとする本件各報告書の分析は,P5意見(前記(4)ア)が述べるとおり,分布しているエバスチンの大きさなどに対する真の数値を表すものではなく,ある条件で評価した時にこのような数値を得られることができたという,調整可能な選択された前提条件下での仮定の数値にすぎないというべきである。 これらのことからすると,本件各報告書における分析結果,すなわちドメインサイズの分析結果が,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるとは認めることができない。 イ顕微ラマン分光法測定のバリデーションについて本件各報告書は,ポリスチレン球形粒子を用いたバリデーションにより,本件分析方法では,固定錠剤中のポリスチレン球形粒子の大きさを適切に分析することが証明できたとし,P1意見及びP2意見(前記(3)のア,イ)の内容はこれに沿うものである。 そこで,本件各報告書のうち被告製品1についての報告書(甲8)において,バリデーションに用いられた5 とが証明できたとし,P1意見及びP2意見(前記(3)のア,イ)の内容はこれに沿うものである。 そこで,本件各報告書のうち被告製品1についての報告書(甲8)において,バリデーションに用いられた5µm のポリスチレン球を含有する錠剤について顕微ラマン分光法測定により得られたラマンマッピングの1枚(図7の3),これを2値化処理した後の2値化イメージ(図10),その打切り処理後画像(図13)を,順に示すと以下のとおりである。 図7の3 図10 図13 これらの画像によれば,2値化イメージにおいて,ポリスチレン球形粒子が存在しないものとして扱われた領域については,当初のラマンマッピングにおいても,ポリスチレン球形粒子の存在が観察されていなかったことが認められる。 このように粒子が存在する領域と存在しない領域とが明確に区別できるのであれば,閾値を基準とした2値化処理をすることには十分に合理性があるということができるし,現に本件各報告書においても,ポリスチレン球形粒子については適切な分析結果が得られたものと認めることができる。 要するに,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを分析するに当たり,本件分析方法の2値化処理をすることが合理的であるのは,被告製品1及び5に含有されるエバスチンが,ポリスチレン球形粒子と同様の状態,すなわち2次元平面上において,その存在する領域と存在しない領域を明確に分けられる結晶粒子の状態で存在するという前提となる事実が認められる場合に限られるというべきである。 球形粒子と同様の状態,すなわち2次元平面上において,その存在する領域と存在しない領域を明確に分けられる結晶粒子の状態で存在するという前提となる事実が認められる場合に限られるというべきである。 また,このような前提となる事実が認められれば,被告製品1及び5に含有されるエバスチンに関する本件分析方法についても,ポリスチレン球形粒子に係る分析結果と同様の正確性をもって,分析がされたものと評価することができるといえる。 しかし,被告製品1及び5に含有されるエバスチンが,ポリスチレン球形粒子と同様の状態で存在することを認めるに足りる証拠はない。 かえって,被告製品1及び5に含有されるエバスチンに係る錠剤断面のラマンマッピング(上記ア参照)からすれば,エバスチンの存在する領域が錠剤断面の全体に及んでおり,上記ポリスチレン球形粒子に関するラマンマッピングとは全く異なるものであって(甲8,10,乙57),2次元平面上において,その存在する領域と存在しない領域を明確に分けられ る結晶粒子の状態で存在してはいないことが認められる。 このことは,本件各報告書のうち被告製品1についての報告書(甲8)においてバリデーションに用いられた,5µm のポリスチレン球粒子を含有する錠剤の断面を撮影した電子顕微鏡(SEM)写真(左上に「図3」とあるもの。以下「写真図3」という。)と,被告製品1,5の写真撮影報告書(乙39)中,被告製品1の錠剤断面を撮影した電子顕微鏡(SEM)写真(左上に「No.2」と記載があるもの。以下「写真No.2」という。)とを比較することによっても明らかである。 これらの写真を順に示すと以下のとおりである。 写真図3 ることによっても明らかである。 これらの写真を順に示すと以下のとおりである。 写真図3 写真No.2バリデーションの写真(写真図3)によれば,ポリスチレン球形粒子を含有する錠剤では,ポリスチレン球形粒子が,錠剤に含有される他の成分と明確に独立した状態で存在しており,その粒子の状態,数,大きさなどを観察できることが認められる。 これに対し,被告製品1の錠剤断面の写真(写真No.2)をみると,エバスチンは,ポリスチレン球形粒子と異なり,錠剤に含有される他の添加物と渾然一体となっており,区別することはできないし,その粒子の存在や,数,大きさなどを観察することはできないものであることが認められる。 また,これらの電子顕微鏡写真の相違点は,上記アのラマンマッピングの画像における相違点とも,よく符合する内容のものである。 以上のとおり,本件分析方法,とりわけ,ラマンマッピングの画像について2値化処理をすることは,被告製品1及び5に含有されるエバスチンが,バリデーションに用いられたポリスチレン球形粒子と同様に,錠剤に含有される他の成分と明確に独立した状態,すなわち2次元平面上において,その存在する領域と存在しない領域を明確に分けられる結晶粒子の状 態で存在するという前提となる事実が認められる場合にのみ,合理的なものであり,かつ,そのような前提となる事実が認められる場合に限って,ポリスチレン球形粒子を用いたバリデーションにより妥当性が証明されているということができる。 そして,上記アの各ラマンマッピング画像,上記電子顕微鏡(SEM) となる事実が認められる場合に限って,ポリスチレン球形粒子を用いたバリデーションにより妥当性が証明されているということができる。 そして,上記アの各ラマンマッピング画像,上記電子顕微鏡(SEM)写真に加え,後記ウ及びエの各事実によれば,上記の前提となる事実を認めることはできず,かえって,被告製品1及び5に含有されるエバスチンが,バリデーションに用いられたポリスチレン球形粒子と異なり,錠剤に含有される他の添加物と渾然一体となっており,2次元平面上において,その存在する領域と存在しない領域を明確に分けられる結晶粒子の状態では存在しないことが認められる。 したがって,本件分析方法の妥当性がポリスチレン球形粒子を用いたバリデーションにより証明されているということもできない。 ウ Spring-8 の解析結果について前記(3)エのとおり,P4は,Spring-8 を利用した粉末エックス線回折測定法により,被告製品1及び5のエックス線回折パターンを分析したところ,① 本件特許の実施品である同社製品と同様の結晶性が示された,② 製剤中のエバスチンの結晶状態は,製剤中におけるエバスチンを取り巻く環境に依存しており,被告ら各製品と同社製品のいずれも賦形剤であるマンニトールを相対的に多く含んでおり,製剤中の環境が類似していることなどからすれば,いずれの錠剤中でも90%以上のエバスチンは,同じ結晶粒子の状態で存在する旨の意見を述べている。 これに対し,P5意見(前記(4)ア)によれば,P4が上記意見で引用するSpring-8により測定したエックス線回折パターンによれば,本件特許の実施品に含有されるエバスチンは結晶性が高く,優れているのに対し,被告製品1及び5に含有されるエバスチンは,構造そのものに乱れが発生 して状態が変化してお 線回折パターンによれば,本件特許の実施品に含有されるエバスチンは結晶性が高く,優れているのに対し,被告製品1及び5に含有されるエバスチンは,構造そのものに乱れが発生 して状態が変化しており,すなわち非晶質で存在していることなどから,同じ状態にはないというのである。 そこで検討すると,Spring-8による上記エックス線回折パターンをみると,賦形剤であるマンニトールに係るピークは鮮明に確認できるのに対し,有効成分であるエバスチンのピークは不明確であり,被告製品1及び5の一部にエバスチン結晶が混じっている可能性は否定できないものの,その90%以上が結晶状態で存在するなどと判断する根拠は見当たらない。 そもそも,P4の上記意見のうち,製剤中のエバスチンの結晶状態は,製剤中におけるエバスチンを取り巻く環境に依存すると主張する点については裏付けがない。また,前記1のとおり,粉末エックス線回折測定法は,結晶,結晶多形及び溶媒和結晶の同定,判定又は定量並びに結晶性の定性的評価,結晶化度の測定をすることができるというものであり,これにより混合物に含有される結晶が粒子の状態で存在するかどうか,ましてや,その粒子径について明らかにすることができるものであるとする証拠は全くない。 P4の上記意見は,採用することができない。 エ被告ら各製品の製法文献(乙47)によると,被告ら各製品の製法であるSolventDeposition法は,薬物溶液とそれに溶解しない担体とを混和し,ついで溶媒を蒸発させ,これにより担体の表面を微細な薬物結晶で被覆された状態にするものであることが認められる。 そして,この記述は,被告製品1にかかる,上記アのラマンマッピング画像(図5)及び上記イの電子顕微鏡写真(写真No.2)と十分に整合的なものであ 覆された状態にするものであることが認められる。 そして,この記述は,被告製品1にかかる,上記アのラマンマッピング画像(図5)及び上記イの電子顕微鏡写真(写真No.2)と十分に整合的なものである。 そうすると,被告ら各製品に含有されるエバスチンの状態については,被告らが主張するように,賦形剤の粒子を被膜するような形で存在するこ とを否定することはできないし,そうであるとすると粒子の状態で存在するとか,その数,大きさなどを観察することができるものであると認めることはできない。 (6) 以上によれば,上記(1)の本件各報告書の分析結果,すなわちドメインサイズの分析結果が,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるとは認めることができない。 4 被告ら各製品の本件各特許発明の技術的範囲への属否上記2のとおり,本件特許発明1の構成要件1-B「式(Ⅱ)の化合物は微細粉粒化されていることを特徴とする,」とは,式(Ⅱ)の化合物,すなわち「エバスチンを(ある状態よりも)大きさが極めて細かい状態の『粉(こな)』又は『粒(つぶ)』に変化させていることを特徴とする,」ものと解される。 また,本件特許発明2は,本件特許発明1を前提としながら,「微細粉粒化されていること」を,「構成要件2-Bないし2-Dで特定した大きさのエバスチンの粒子を有すること」に,具体的に限定したものと解することができる。 しかし,上記3のとおり,本件各報告書の分析結果,すなわちドメインサイズの分析結果が,被告製品1及び5に含有されるエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるとは認めることができない。 他に,被告ら各製品に含有されるエバスチンの状態を示す証拠はなく,その結果,上記エバスチンが上記構成要件1-B及 るエバスチン粒子の状態,数,大きさなどを示すものであるとは認めることができない。 他に,被告ら各製品に含有されるエバスチンの状態を示す証拠はなく,その結果,上記エバスチンが上記構成要件1-B及び同2-Bないし2-Dを充足することを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告ら各製品が本件各特許発明の各技術的範囲に属するということはできない。 第5 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求にはいずれも理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官達野ゆき 裁判官西田昌吾 当事者目録原告アルミラル・ソシエダッド・アノニマ同訴訟代理人弁護士吉利靖雄同阿部隆徳同補佐人弁理士岩崎光隆同植村昭三同中川将之同呉 英燦被告沢井製薬株式会社被告メディサ新薬株式会社被告ニプロファーマ株式会社被告全星薬品工業株式会社上記 被告メディサ新薬株式会社被告ニプロファーマ株式会社被告全星薬品工業株式会社上記4名訴訟代理人弁護士伊原友己同加古尊温 被告製品目録 1 有効成分としてエバスチンを含有する口腔内崩壊錠たる固体医薬組成物(製品名持続性選択H1 受容体拮抗剤「エバスチンOD 錠5㎎「サワイ」」,「エバスチンOD 錠10㎎「サワイ」」) 2 有効成分としてエバスチンを含有する口腔内崩壊錠たる固体医薬組成物(製品名持続性選択H1 受容体拮抗剤「エバスチンOD 錠5㎎「MED」」,「エバスチンOD 錠10㎎「MED」」) 3 有効成分としてエバスチンを含有する口腔内崩壊錠たる固体医薬組成物(製品名持続性選択H1 受容体拮抗剤「エバスチンOD 錠5㎎「NP」」,「エバスチンOD 錠10㎎「NP」」) 4 有効成分としてエバスチンを含有する口腔内崩壊錠たる固体医薬組成物(製品名持続性選択H1 受容体拮抗剤「エバスチンOD 錠5㎎「ZE」」,「エバスチンOD 錠10㎎「ZE」」) 5 有効成分としてエバスチンを含有する固体医薬組成物(製品名持続性選択H1 受容体拮抗剤「エバスチン錠5㎎「サワイ」」,「エバスチン錠10㎎「サワイ」」) 6 有効成分としてエバスチンを含有する固体医薬組成物(製品名持続性選択H1 受容体拮抗剤「エバスチン錠5㎎「MED」」,「エバスチン錠10㎎「MED」」) 申し訳ありませんが、提供されたテキストが不完全であるため、整形を行うことができません。正確なテキストを提供していただければ、整形を行います。

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