- 1 -平成23年12月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第13219号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成23年9月16日判決アメリカ合衆国マサチューセッツ州<以下略>原告ユーロプロオペレーティングエルエルシー愛知県名古屋市<以下略>原告株式会社オークローンマーケティング原告ら訴訟代理人弁護士松尾眞同兼松由理子同岩波修同山田洋平同訴訟代理人弁理士山本文夫同訴訟復代理人弁護士石川由佳子大阪市<以下略>被告フュージョンマーケティング株式会社同訴訟代理人弁護士石井義人同石田大輔同林健太郎同岡田健一同訴訟復代理人弁護士杉村元章 主文 1 被告は,別紙被告製品目録記載1及び2の製品を譲渡し,譲渡のために展示し若しくはインターネット上に掲載し,又は輸入してはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録記載1及び2の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告ユーロプロオペレーティングエルエルシーに対し,- 2 -314万6655円及びこれに対する平成21年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告株式会社オークローンマーケティングに対し,358万2698円及びこれに対する平成 万6655円及びこれに対する平成21年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告株式会社オークローンマーケティングに対し,358万2698円及びこれに対する平成21年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 7 この判決は,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載1及び2の製品(以下「被告製品1」などといい,両製品を総称して「被告製品」という。)を製造し,譲渡し,譲渡のために展示し若しくはインターネット上に掲載し,又は輸入してはならない。 2 被告は,被告製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告ユーロプロオペレーティングエルエルシー(以下「原告ユーロプロ社」という。)に対し,438万2652円及びこれに対する平成21年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告株式会社オークローンマーケティング(以下「原告オークローン社」という。)に対し,2138万6319円及びこれに対する平成21年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,蒸気モップについての意匠権を有する原告ユーロプロ社及び同意匠権についての独占的通常実施権を有する原告オークローン社が,被告による被告製品の販売等の行為は上記意匠権等を侵害するものであると主張して,被告に対し,①意匠法37条1項に基づく被告製品の販売等の差止め,②同条2項- 3 -に基づく被告製品の廃棄,③上記意匠権侵害の不法行為に基づく の行為は上記意匠権等を侵害するものであると主張して,被告に対し,①意匠法37条1項に基づく被告製品の販売等の差止め,②同条2項- 3 -に基づく被告製品の廃棄,③上記意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,原告ユーロプロ社に対する438万2652円(意匠法39条3項に基づく損害として338万2652円,及び弁護士費用として100万円の合計額)及びこれに対する不法行為の後である平成21年6月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,④上記独占的通常実施権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,原告オークローン社に対する2138万6319円(意匠法39条2項に基づく損害として1944万2109円,及び弁護士費用として194万4210円の合計額)及びこれに対する不法行為の後である平成21年6月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 争いのない事実等(末尾に証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告ユーロプロ社は,「シャークスチームモップ」,「SHARK」の商標を用いて,別紙原告製品目録記載の蒸気(スチーム)モップ(以下「原告製品」という。)を製造し,同商品を販売している(甲1の1)。 イ原告ユーロプロ社は,平成19年11月16日付けで,グローバルインフォマーシャルサービス(以下「GIS社」という。)との間で独占製品販売権契約(甲1の1)を締結し,GIS社に対し,原告製品を日本に輸入して日本国内においてこれを販売する,サブライセンス可能な独占的権利,及び,後記(2)の本件意匠権を含む,原告製品を販売するための知的財産権の独占的通常実施権(サブライセンス可能なもの)を与え 輸入して日本国内においてこれを販売する,サブライセンス可能な独占的権利,及び,後記(2)の本件意匠権を含む,原告製品を販売するための知的財産権の独占的通常実施権(サブライセンス可能なもの)を与えた。 原告オークローン社は,平成19年11月22日付けで,GIS社との間でサブライセンス契約(甲1の2)を締結し,GIS社から,原告製品を日本に輸入して日本国内においてこれを販売する独占的権利及び原告製品を販売するための知的財産権の独占的通常実施権を与えられた。 - 4 -ウ被告は,インターネット上のショッピングサイトの運営,通信販売業務等を業とする株式会社である。 (2) 原告ユーロプロ社の有する意匠権原告ユーロプロ社は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件意匠」という。)を有している。 意匠登録番号第1334735号出願日平成20年1月4日登録日平成20年5月30日意匠に係る物品蒸気モップ登録意匠別紙意匠図面のとおり(3) 被告製品の販売被告は,インターネット上のショッピングサイトに被告製品を掲載し,被告製品を輸入して,通信販売の方法で被告製品を販売した。 2 争点(1) 本件意匠と被告製品の意匠の類否(争点1)(2) 原告らの損害(争点2) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件意匠と被告製品の意匠の類否)について[原告らの主張]被告製品は,蒸気モップであり,本件意匠に係る物品と同一である。また,本件意匠と被告製品の意匠とは,次のとおり類似する。 ア本件意匠及び被告製品の意匠の構成態様本件意匠及び被告製品の意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様は,別紙「本件意匠及び被 る。また,本件意匠と被告製品の意匠とは,次のとおり類似する。 ア本件意匠及び被告製品の意匠の構成態様本件意匠及び被告製品の意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様は,別紙「本件意匠及び被告製品の意匠の構成」(以下「別紙意匠構成表」という。)の「原告らの主張」欄に記載のとおりである。 イ本件意匠の要部- 5 -(ア) 意匠の類似範囲意匠の類否の判断は,当該意匠の看者となる取引者,需要者において視覚を通じて最も注意を惹かれる部分である要部を当該意匠から抽出した上で,登録意匠と被告意匠とを対比し,要部における共通点及び差異点をそれぞれ検討して,全体として美感を共通にするか否かを基本として行うべきものである。この判断に当たっては,登録意匠の出願時点における公知又は周知の意匠等を参酌するなどして,これを検討するのが相当である。 (イ) 公知意匠等本件意匠の基本的構成態様のうち,ポールが棒状であり,ポールの下端部が本体部に連結され,その本体部は,下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだ略楕円形状であり,本体部の下端部がモップヘッドに連結されているとの点は,公知である(甲9~11)。 (ウ) 本件意匠の要部a 本件意匠は,その意匠に係る物品が「蒸気モップ」であり,使用者は,片手でハンドルを握ってモップの操作を行い,下端部のモップヘッドに拭きとり部材を装着して使用する。 b 本件意匠は,上記(イ)のモップの公知意匠のハンドルの形状とは異なり,ハンドルの握り部の形状を略半円状部にすることにより,ハンドルがより自然に手の中に収まるように工夫されており,このようなハンドル握り部のフィット感を高めることにより,片手でのモップの操作性を一段と向上させている点に特徴がある。 このように,本件意匠中のハンドル部の具体的構 中に収まるように工夫されており,このようなハンドル握り部のフィット感を高めることにより,片手でのモップの操作性を一段と向上させている点に特徴がある。 このように,本件意匠中のハンドル部の具体的構成態様は,モップの操作性に関わる重要な箇所として,看者である利用者の注意を強く惹く箇所である。 c また,上記(イ)のモップの公知意匠のように,従来,拭き取り部材- 6 -を装着して使用するタイプの床拭き掃除用具の意匠において,モップヘッド部の形状は,単純な横長の長方形状であった。これに対し,本件意匠は,モップヘッド部の外周形状が,前部及び両側部が緩やかな円弧状で,後部が前部よりも小さい曲率半径の円弧状となっており,上面中央部の隆起部から放射状の隆起が端部にまで延びた,特徴的な意匠を採用している。 モップヘッド部は,床面に接着させて,これを前後左右に移動させることにより床面を清掃するモップの主要部として,モップ操作の際に利用者が絶えず注視する箇所であることから,本件意匠中のモップヘッド部の上記の特徴的な具体的構成態様は,看者である利用者の注意を最も強く惹き付けるものである。 d したがって,本件意匠の構成態様中,少なくとも以下の構成態様は,本件意匠の要部であると認められる。 (a) ハンドルの具体的構成態様ハンドル本体は,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部と,この直線状部の上方に形成された略半円状の握り部とから成る(別紙意匠構成表の【本件意匠】[原告らの主張]・「具体的構成態様」[ハンドル]2項)。 (b) モップヘッドの具体的構成態様モップヘッドの外周形状は,前部及び両側部が,緩やかな円弧状であり,後部が,前部よりも小さい曲率半径の円弧状である。また,上面中央部の隆起部から,放射状の隆起が端部にま プヘッドの具体的構成態様モップヘッドの外周形状は,前部及び両側部が,緩やかな円弧状であり,後部が,前部よりも小さい曲率半径の円弧状である。また,上面中央部の隆起部から,放射状の隆起が端部にまで延びている(別紙意匠構成表の【本件意匠】[原告らの主張]・「具体的構成態様」[モップヘッド]1項,3項)。 ウ本件意匠と被告製品の意匠の対比(ア) 本件意匠と被告製品の意匠の共通点及び差異点は,別紙「本件意匠と- 7 -被告製品の意匠の対比表」(以下「別紙意匠対比表」という。)の「原告らの主張」欄に記載のとおりである。 (イ) 本件意匠と被告製品1の意匠との類否a 本件意匠と被告製品1の意匠は,上記(ア)のとおり,基本的構成態様を共通にする。 また,被告製品1の意匠は,本件意匠の要部であるハンドル及びモップヘッドの具体的構成態様(上記イ(ウ)d)についても,本件意匠と共通する。 したがって,本件意匠と被告製品1の意匠は,全体として,看者に対して共通の美感を与える。 b(a) 他方,本件意匠と被告製品1の意匠の主要な差異点は,上記(ア)のとおり,本件意匠では本体の最大径部は本体の下から3分の2付近にあるのに対し,被告製品1の意匠では本体の上から3分の2付近にある点(別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品1の意匠の差異点」[本体部])である。 しかしながら,そもそも,本体部の具体的構成態様は,上記イのとおり,本件意匠の要部を構成するものではない。また,本件意匠と被告製品1の意匠における本体部の具体的構成態様は,下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだラッキョウ形であり,その横断面は略楕円形であるという点で共通しており(別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品1の意匠の共通点」[本体部]2項), と上端部が小径で,中央部が膨らんだラッキョウ形であり,その横断面は略楕円形であるという点で共通しており(別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品1の意匠の共通点」[本体部]2項),この共通点が,本体部の具体的構成態様の中の基本的な特徴として看者である利用者の注意を惹き付けることは,想像に難くない。 これらの事実等にかんがみれば,本件意匠と被告製品1の意匠における本体の最大径部の位置のわずかな違いは,看者である利用者の注意を惹き付けるものとは考えにくい。 - 8 -(b) モップヘッドの差異点(別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品1の意匠の差異点」[モップヘッド])は,隆起の本数のわずかな相違に止まっている。したがって,モップヘッドの具体的構成態様が本件意匠の要部であることを考慮に入れたとしても,上記差異点は,看者である利用者の注意を惹き付けるものではない。 (c) ポールと本体部のその他の具体的構成態様の差異点(別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品1の意匠の差異点」[ポール]等を参照。)は,本件意匠の要部に関わらない具体的構成態様の中の,極めて細部の相違に止まっている。したがって,看者である利用者の注意を惹き付けるものとは言い難い。 c 以上のとおり,本件意匠と被告製品1の意匠の差異点は,いずれも,前記aの共通点に係る構成態様が生じさせる共通感を凌駕するものとは認められない。よって,被告製品1の意匠は,本件意匠に類似する。 (ウ) 本件意匠と被告製品2の意匠との類否a 本件意匠と被告製品2の意匠は,上記(ア)のとおり,基本的構成態様を共通にする。また,被告製品2の意匠は,本件意匠の要部であるハンドル及びモップヘッドの具体的構成態様(上記イ(ウ)d)についても,本件意匠と 被告製品2の意匠は,上記(ア)のとおり,基本的構成態様を共通にする。また,被告製品2の意匠は,本件意匠の要部であるハンドル及びモップヘッドの具体的構成態様(上記イ(ウ)d)についても,本件意匠と共通する。 したがって,本件意匠と被告製品2の意匠は,全体として,看者に対して共通の美感を与える。 b(a) 他方,本件意匠と被告製品2の意匠は,①被告製品2の意匠は,本件意匠と異なり,本体の上部は段差を付けて円錐台状に絞られている点(別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品2の意匠の差異点」[本体部]1項),②本体の最大径部は,本件意匠では本体の下から3分の2付近にあるのに対し,被告製品2の意匠では本体の下から2分の1付近にある点(同2項),において相違する。 - 9 -しかしながら,そもそも,本体部の具体的構成態様は,本件意匠の要部を構成するものではない。また,本件意匠と被告製品2の意匠の本体部の具体的構成態様は,下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだラッキョウ形であり,その横断面は略楕円形であるという点で共通しており(別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品2の意匠の共通点」[本体部]2項),この共通点が,本体部の具体的構成態様の中の基本的な特徴として,看者である利用者の注意を惹き付けることは想像に難くない。 これらの事実等に鑑みれば,上記差異点が看者である利用者の注意を惹き付けるものとは考えにくい。 (b) 本件意匠と被告製品2の意匠は,別紙意匠対比表の[原告らの主張]・「本件意匠と被告製品2の意匠の差異点」[モップヘッド]1項及び2項に記載のとおり,モップヘッドに関する差異点がある。 しかしながら,上記差異点は,隆起の本数についてのわずかな相違や,利用者の目に付かない,床面に接着するモップヘ 異点」[モップヘッド]1項及び2項に記載のとおり,モップヘッドに関する差異点がある。 しかしながら,上記差異点は,隆起の本数についてのわずかな相違や,利用者の目に付かない,床面に接着するモップヘッド部の背面部の意匠の相違にすぎない。したがって,上記差異点は,モップヘッドの具体的構成態様が本件意匠の要部であることを考慮に入れたとしても,看者である利用者の注意を惹き付けるものではない。 (c) 本件意匠と被告製品2の意匠のその他の具体的構成態様の差異点は,本件意匠の要部に関わらない具体的構成態様の中の,極めて細部の相違に止まっている。したがって,看者である利用者の注意を惹き付けるものとは言い難い。 c 以上のとおり,本件意匠と被告製品2の意匠の差異点は,いずれも,前記aの共通点に係る構成態様が生じさせる共通感を凌駕するものとは認められない。したがって,被告製品2の意匠は,本件意匠に類似する。 - 10 -[被告の主張]ア本件意匠及び被告製品の意匠の構成態様本件意匠及び被告製品の意匠の構成態様について,原告らの主張に対する被告の認否及び被告の主張は,別紙意匠構成表の「被告の認否及び主張」欄に記載のとおりである。 イ本件意匠の要部(ア) 公知意匠等本件意匠の出願時において,上端に円状(半円状,楕円状のものを含む。)の持ち手を,下端に蒸気を床に噴出するモップヘッドを,モップヘッドの上部に蒸気を生成する本体部分を,それぞれ備えるスチームクリーナーは,公知意匠として存在していたものであり(乙1),それらの配置自体は,独自の美感を起こさせるものではない。 原告らは,蒸気モップの本体部の下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだ略楕円状の形状が公知である旨主張するが,原告らが引用する甲第9 ,それらの配置自体は,独自の美感を起こさせるものではない。 原告らは,蒸気モップの本体部の下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだ略楕円状の形状が公知である旨主張するが,原告らが引用する甲第9号証ないし甲第11号証の製品の本体部分は,楕円形ではなく,ほぼ円柱形であり,本件意匠及び被告製品の意匠とは大きく異なる。また,甲第9号証及び甲第10号証の製品の本体部分と,本件意匠及び被告製品の意匠の本体部分とでは,①全長に対する本体部分の割合,②最大膨らみ部分の本体部分上部からの位置,③最大膨らみ部分とポール部分の幅の差が,全く異なっている。 したがって,本件意匠及び被告製品の意匠の本体部分の形状が公知であるとの原告らの主張は,理由がない。 (イ) 本件意匠の要部a 本件意匠に係る蒸気モップ及び被告製品(本件意匠に係る蒸気モップと併せて,以下「被告製品等」という。)の使用態様は,立ち上がった状態で持ち手部分を所持し,蒸気が噴射されるモップヘッド部分- 11 -を床面等の汚れに当て,前後にこすることなどで汚れを拭い取る,というものである。このように,被告製品等は,持ち手を所持した状態で,製品を見下ろして使用するものであり,このような使用態様において取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分は,本体部分の態様である。原告らが販売する原告製品の箱には,取引者・需要者の注意を惹き,購入に結びつけるために,原告製品の写真が多数掲載されているが,その写真の大半は,原告製品の本体部分をアップにしたものである(乙3)。 また,被告製品等は,本体部分のタンクに水を入れて使用するものであり,横にした状態で保管すると漏水の危険があるため,短時間の使用時間を除き,立てられた状態で保管される。そして,保管の便宜のために,保管時に持ち手部分及びポール部分を クに水を入れて使用するものであり,横にした状態で保管すると漏水の危険があるため,短時間の使用時間を除き,立てられた状態で保管される。そして,保管の便宜のために,保管時に持ち手部分及びポール部分を取り外すと,取引者・需要者の注意を惹く部分は,本体部分となる。 したがって,本件意匠の要部は,本体部分の態様である。 b これに対し,原告らは,本件意匠の要部は持ち手部分(ハンドル)及びモップヘッド部分であると主張する。 しかしながら,持ち手部分が半円形,楕円形をしている掃除用具は,上記(ア)のとおり公知ないし周知である上,掃除中に掃除用具の持ち手部分に注目する取引者・需要者はまれであるから,持ち手部分は,強く注意を惹く箇所ではない。 また,被告製品等の使用時を想定する平面図では,モップヘッド部分の大半は本体部分に隠れているから,取引者・需要者がモップヘッド部分に強く注意を惹かれることはない。 さらに,被告製品等のようなモップ状の掃除器具の場合,その機能上,モップをつかんで操作する持ち手部分,床と接するモップヘッド部分及び両者をつなぐポール部分は,必要不可欠な部分である。これ- 12 -らの機能上必要不可欠な部分の形状は,製品の機能を向上させるために工夫,改良されるものであり,そこに創作的工夫や視覚を通じて美感を起こさせるものが入る余地はない。すなわち,取引者・需要者がモップ状の掃除器具の持ち手部分及びモップヘッド部分を観察するときは,持ち手部分については操作性,持ちやすさ等の機能面を重視し,モップヘッド部分については床との接地面積,小回りがきく形状か,隅や角部分の掃除はしやすい形状か等の機能面を重視するのであり,そこに,形状の美感は入らないものである。本件意匠の持ち手部分の形状については,原告らも,その機能を向上させるためのもの がきく形状か,隅や角部分の掃除はしやすい形状か等の機能面を重視するのであり,そこに,形状の美感は入らないものである。本件意匠の持ち手部分の形状については,原告らも,その機能を向上させるためのものであることを認めている。また,本件意匠のモップヘッド部分の形状についても,この形状は,機能的側面を重視して,長方形に近く丸みを帯びたものとしているものであって,美感を起こさせるものではない。 ウ本件意匠と被告製品の意匠の対比(ア) 本件意匠と被告製品の意匠の共通点及び差異点は,別紙意匠対比表の「被告の主張」欄に記載のとおりである。 (イ) 本件意匠権の範囲スチームモップや縦型の電気掃除機のような掃除器具は,その機能上,持ち手部分,ポール部分,本体部分及びモップヘッド部分が必要不可欠であり,そのような構成の意匠ないし製品が一般的である(甲9,10,14,15)。このように,機能的観点等から一般的な形態に近似する意匠ないし製品が多数存在する場合は,登録意匠の類似の範囲を広く解するべきではなく,意匠権の範囲は,異なる美感を起こさせるものとして意匠公報に登録された形態に局限されると解すべきである。 (ウ) 本件意匠と被告製品1の意匠は類似しないことa 本体部分の差異点(a) 本体部分の形状は,上記(ア)のとおり,本件意匠は逆水滴型であ- 13 -るのに対し,被告製品1の意匠は水滴型である(別紙意匠対比表の[被告の主張]・「本件意匠と被告製品1の意匠の差異点」(以下「上記差異点」という。)6項)。そして,本件意匠は,その形状から,取引者・需要者に,細く,洗練された都会的な美感を与えるのに対し,被告製品1の意匠は,取引者・需要者に対し,太く,どっしりとした安定感のある美感を与えるものであって,両意匠が取引者・ の形状から,取引者・需要者に,細く,洗練された都会的な美感を与えるのに対し,被告製品1の意匠は,取引者・需要者に対し,太く,どっしりとした安定感のある美感を与えるものであって,両意匠が取引者・需要者に与える美感は全く異なる。 また,両意匠の最大膨らみ部分の径は,被告製品1の意匠の方がポール1本分大きく(上記差異点7項),本件意匠より安定感のある美感を与える。 (b) 本体部分の背面について,本件意匠は,円弧状のタンクを外部に露出させることによって,デザインに変化を持たせており,これにより,取引者・需要者に対し,変化に富む洗練された美感を与える(上記差異点8項)。 他方,被告製品1の意匠は,タンクの露出はなく,デザインに変化はないものであって,取引者・需要者に対し,均質的で洗練されていない美感を与える。 (c) 本件意匠は,本体部分に円形及び楕円形の造形が施されており,この楕円形の造形は,正面部分のアクセントとして,特徴的な美感を与える。これに対し,被告製品1の意匠は,本体部分に小さな逆三角形のランプが設置されているだけであり(上記差異点9項),均質的で特徴のない美感を与える。 b 本体部分以外の差異点(a) 持ち手部分について,本件意匠は,上部外周部分の貼付状の造形が持ち手部分にアクセントを与え,特徴的な美感を与えるのに対し,被告製品1の意匠には,このような造形はなく(上記差異点2- 14 -項),持ち手部分は,均質的で特徴のない美感を与える。 (b) 本件意匠は,ポール部分と本体部分との間に連結部分が存在し,それぞれが独立した存在であるとの美感を与える。これに対し,被告製品1の意匠は,連結部分がなく,本体部分の上部で直接ポール部分と連結されており(上記差異点5項),ポール部分と本体部分が一体化している美感を与え 立した存在であるとの美感を与える。これに対し,被告製品1の意匠は,連結部分がなく,本体部分の上部で直接ポール部分と連結されており(上記差異点5項),ポール部分と本体部分が一体化している美感を与える。 (c) 本件意匠は,モップヘッド部分の上面の隆条が13本であるのに対し,被告製品1の意匠は,20本である(上記差異点11項)。 モップヘッド部分の中で比較的注目されるものである上面の隆条の7本もの差は,両意匠に異なる美感を与える。 (d) 本件意匠は,モップヘッド部分の底面中央部分にある長方形の突起の前面側及び背面側に突起は存在せず,四隅の長方形の造形の間に板状の造形も存在しない。これに対し,被告製品1の意匠は,モップヘッド部分の底面中央部分にある長方形の突起の前面側及び背面側に突起が存在し,四隅の長方形の造形の間に板状の造形が存在するものであり(上記差異点12項,13項),本件意匠と異なる美感を与える。 c 本件意匠と被告製品1の意匠は,以上のとおり,要部である本体部分の形状が決定的に異なり,本体部分の正面部分及び背面部分が与える美感も大きく異なる。また,要部以外の全体の構成,持ち手部分及びモップヘッド部分についても,取引者・需要者に異なる美感を与える相違が存在し,両意匠は,全体的にも美感が異なる。なお,本件意匠と被告製品1の意匠には,前記(ア)のような共通点もあるが,これらは,意匠の要部ではない持ち手部分及びモップヘッド部分のわずかな共通点であり,両意匠の要部及びその他の部分の差異点を上回る程の美感の共通性をもたらすものではない。 - 15 -したがって,本件意匠と被告製品1の意匠は,類似しない。 (エ) 本件意匠と被告製品2の意匠は類似しないことa 本体部分の差異点(a) 本体部分の形状は,上記(ア)のとおり, - 15 -したがって,本件意匠と被告製品1の意匠は,類似しない。 (エ) 本件意匠と被告製品2の意匠は類似しないことa 本体部分の差異点(a) 本体部分の形状は,上記(ア)のとおり,本件意匠は逆水滴型であるのに対し,被告製品2の意匠は瓜型である。また,被告製品2の意匠は,上部から長手方向に5分の1程度までは円柱形であり,5分の1程度から瓜型となる形状であって(別紙意匠対比表の[被告の主張]・「本件意匠と被告製品2の意匠の差異点」(以下「前記差異点」という。)3項),特に,円柱形部分が存在することで,取引者・需要者に与える美感は本件意匠と全く異なる。 (b) 本件意匠は,蒸気を発生させる電源のスイッチが本体部分に存在しないのに対し,被告製品2の意匠は,円柱部分の正面に電源のスイッチが存在する(前記差異点4項)。本体正面という取引者・需要者が最も注目する部分に,起動時に必要なスイッチが存在することは,取引者・需要者に美感の相違を与える。 (c) 本体部分の背面のタンクの形状は,本件意匠がU字型であるのに対し,被告製品2の意匠は,O字型の楕円形である。また,本件意匠は,本体部の背面の上部が開けたデザインであり,開放的な美感を与えるのに対し,被告製品2の意匠は,本体部の背面の上部が閉じたデザインであって(前記差異点5項),閉鎖的な美感を与える。 b 本体部分以外の差異点(a) 本件意匠及び被告製品2の意匠の構成は,上記(ア)のとおりであり,両意匠は,連結部分及び本体部分の構成比が大きく異なる(前記差異点1項)。本件意匠は,本体部分が短く連結部分が長いため,小型で軽量な美感を与えるのに対し,被告製品2の意匠は,本体部- 16 -分が長く連結部分が短いため,大型で安定している美感を与える。 (b) 本件意匠 意匠は,本体部分が短く連結部分が長いため,小型で軽量な美感を与えるのに対し,被告製品2の意匠は,本体部- 16 -分が長く連結部分が短いため,大型で安定している美感を与える。 (b) 本件意匠は,モップヘッド部分の上面の隆条が13本であるのに対し,被告製品2の意匠は,20本である(前記差異点6項)。 上面の隆条の7本もの差は,両意匠に異なる美感を与える。 (c) 本件意匠は,モップヘッド部分の底面中央部分にある長方形の突起の前面側及び背面側に突起は存在せず,四隅の長方形の造形の間に板状の造形も存在しない。これに対し,被告製品2の意匠は,底面中央部分にある長方形の突起の前面側及び背面側に突起が存在し,四隅の長方形の造形の間に板状の造形が存在するものであり,本件意匠と異なる美感を与える(前記差異点7項)。 c 本件意匠と被告製品2の意匠は,上記のとおり,要部である本体部分の形状が決定的に異なり,本体部分の正面部分及び背面部分が与える美感も大きく異なる。また,要部以外の全体の構成,特に,要部である本体部分と連結部分の構成比,モップヘッド部分についても,取引者・需要者に異なる美感を与える相違が存在し,両意匠は,全体的にも美感が異なる。なお,本件意匠と被告製品2の意匠には,前記(ア)のような共通点もあるが,これらは,意匠の要部ではない持ち手部分及びモップヘッド部分のわずかな共通点であり,両意匠の要部及びその他の部分の差異点を上回る程の美感の共通性をもたらすものではない。 したがって,本件意匠と被告製品2の意匠は,類似しない。 [被告の主張に対する原告らの反論]ア本件意匠の要部について(ア) ハンドルの具体的構成態様について被告は,乙第1号証に係る意匠(以下「乙1意匠」という。)の存在により,持ち手部分が半 に対する原告らの反論]ア本件意匠の要部について(ア) ハンドルの具体的構成態様について被告は,乙第1号証に係る意匠(以下「乙1意匠」という。)の存在により,持ち手部分が半円形ないし楕円形をしている掃除用具は本件意- 17 -匠の出願時において公知又は周知であった旨を主張する。 しかしながら,乙1意匠におけるハンドルの握り部は,半円形又は楕円形というよりも,むしろ台形状であり,略半円状である本件意匠のハンドルの握り部の形状とは,全く異なる。また,乙1意匠のハンドルは,看者である利用者が台形状の長辺部(直線部分)を握るのに対し,本件意匠の利用者は,略半円状の曲線部分を握ることになる。本件意匠は,ハンドルがより自然に手の中に収まり,フィット感を高めるように工夫されているものであり,乙1意匠とは決定的に異なる。 このように,乙1意匠は,本件意匠におけるハンドルの具体的構成態様が本件意匠の要部であることを否定するものではない。 (イ) モップヘッドの具体的構成態様について被告は,本件意匠に係る蒸気モップの使用時を想定する平面図では,モップヘッド部分の大半は本体部分に隠れているから,取引者・需要者がモップヘッド部分に強く注意を惹かれることはない旨主張する。 しかしながら,本件意匠に係る蒸気モップは,垂直に立てた状態で使用するものではなく,利用者は,ハンドルを手にしてポールを手前下に傾け,床面に接着したモップヘッドを前方に押し出して使用するものであって,上記平面図は,使用時における利用者の視界を示すものではない。このような使用態様においては,モップヘッドは,本体部に隠されることはない。むしろ,床面に接着し,床面の汚れや塵を除去する部分であるモップヘッドは,看者である利用者の注意を強く惹き付けるものといえ このような使用態様においては,モップヘッドは,本体部に隠されることはない。むしろ,床面に接着し,床面の汚れや塵を除去する部分であるモップヘッドは,看者である利用者の注意を強く惹き付けるものといえる。 イ本件意匠と被告製品1の意匠の差異点について(ア) 本体部分の差異点についてa 被告は,本件意匠の本体部の構成態様は細く,洗練された都会的な美感を与えるのに対し,被告製品1の意匠は太く,どっしりとした安- 18 -定感のある美感を与える旨主張する。 しかしながら,本件意匠の本体部と被告製品1の意匠の本体部は,下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだラッキョウ形であるという点で共通しており,どちらかが細く,もう一方は太いというものではない。利用者である看者にとって,本体における最大径部の位置のわずかな違いは重要でなく,両意匠の本体部からは,共通して,丸みを帯びたラッキョウ様のものという美感が生じる。被告が主張するような,太さについて異なる美感を生じさせるものではない。 b 被告は,本件意匠は円弧状のタンクを外部に露出させることによりデザインに変化を持たせているのに対し,被告製品1の意匠はタンクの露出はなく,デザインに変化はないことから,両意匠の本体部から生じる美感は異なると主張する。 しかしながら,円弧状のタンクが本体部に占める割合は,極めて小さく,この点の違いが本件意匠と被告製品1の意匠の本体部から生じさせる美感に与える影響は,極めて軽微である。また,そもそも,背面部は,看者である利用者が原告製品を使用する際に全く見えない部分であって,この部分の差異が両意匠の本体部から生じる美感に影響を与えることはない。 c 被告は,本件意匠の本体部には円形及び楕円形の造形が施されているのに対し,被告製品1の意 際に全く見えない部分であって,この部分の差異が両意匠の本体部から生じる美感に影響を与えることはない。 c 被告は,本件意匠の本体部には円形及び楕円形の造形が施されているのに対し,被告製品1の意匠の本体部には小さな逆三角形のランプが設置されているだけであり,両意匠の本体部から生じる美感が異なる旨主張する。 しかしながら,上記「造形」及び「ランプ」は,本体部全体に比して極めて小さく,かつ,利用者の目を惹くような特徴的な構成態様を備えていないことから,看者である利用者にとって,両者の形状のささいな違いは,重要な意味を持つものではない。 - 19 -(イ) 本体部分以外の差異点についてa 被告は,本件意匠のハンドルの上部外周部分には,被告製品1の意匠と異なり「貼付状の造形」があり,両意匠のハンドルから生じる美感は異なる旨主張する。 しかしながら,本件意匠のハンドルにおいて看者である利用者の注意を惹くのは,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部とこの直線状部の上方に形成された略半円状握り部という具体的構成態様であって,何の特徴もなく付けられた「貼付状の造形」の有無は,看者である利用者にとってささいな差異点にすぎない。また,「貼付状の造形」は,ハンドルを握った場合,すなわち製品の使用中には,看者である利用者から隠れることになるから,この点からしても,看者である利用者の注意を惹き付けるものではない。 b 被告は,本件意匠にはポール部分と本体部分の間に連結部分が存在し,この点をもって本件意匠と被告製品1の意匠から生じる美感は異なる旨主張する。 しかしながら,上記「連結部分」とは,本体部におけるポール接続用の円筒部を意味するところ,この点の差異は,本体部の具体的構成態様の差異にすぎない。そして,本 匠から生じる美感は異なる旨主張する。 しかしながら,上記「連結部分」とは,本体部におけるポール接続用の円筒部を意味するところ,この点の差異は,本体部の具体的構成態様の差異にすぎない。そして,本体部の具体的構成態様が本件意匠の要部とならないことは前記[原告らの主張]イのとおりである上,ポール接続用の円筒部が本体部に占める割合は,著しく小さく,ポールと本体を接続する役割を担うのみである。したがって,このような具体的構成態様は,本体部における具体的構成態様の中でも看者である利用者の注意を惹かない部分である。 c 被告は,モップヘッドの上面中央部の隆起部から端部にまで延びる放射状の隆起の本数の違いを主張する。 しかしながら,利用者である看者にとっては,このような隆起の本- 20 -数の違いよりも,隆起がモップヘッドの上面に存在していることの方が重要であるし,そもそも,両者の本数の差異は,わずかな相違(約16本と20本)にすぎない。 したがって,このような相違が本件意匠及び被告製品1の意匠から生じる美感に与える影響は,極めて小さい。なお,被告は,本件意匠の隆起の本数が13本であると主張するが,本件意匠のモップヘッドには,目に見える13本の隆起の他に,少なくとも2本ないし3本の隆起が手前に位置するモップヘッドの部品の陰に隠れていることは,本件意匠の図面を見れば明らかである。 d 被告は,モップヘッド部について,「底面中央部分の長方形の突起の前面側及び背面側」の「突起」,並びに「四隅の長方形の造形の間」の「板状の造形」の有無を差異点として指摘する。 しかしながら,上記差異点は,極めて小さい部位に関するものであり,ささいなものである上,看者である利用者がモップヘッドの底面部を観察することは極めてまれであることからすると,上記差異点が, する。 しかしながら,上記差異点は,極めて小さい部位に関するものであり,ささいなものである上,看者である利用者がモップヘッドの底面部を観察することは極めてまれであることからすると,上記差異点が,本件意匠及び被告製品1の意匠から生じる美感の共通性に影響を与えることはない。 ウ本件意匠と被告製品2の意匠の差異点について(ア) 本体部分の差異点についてa 被告は,被告製品2の意匠の本体部は瓜型であり,また,上部から長手方向に5分の1程度まで円柱形部分が存在することにより,看者である利用者へ与える美感は本件意匠と全く異なる旨主張する。 しかしながら,本件意匠の本体部と被告製品2の意匠の本体部は,下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだラッキョウ形であるという点で共通しており,この共通点が,本体部の具体的構成態様の中の基本的な特徴として,看者である利用者の注意を惹き付けるものであ- 21 -る。 被告は,被告製品2の意匠の「円柱形部分」の存在を強調するが,この「円柱形部分」が本体部に占める割合は極めて小さく,このような部分が看者である利用者の注意を惹き付けるとは考えにくい。 また,本件意匠及び被告製品2の意匠のポールが円柱形である以上,ラッキョウ型の本体と接続する上で,必ず円柱形ないし円錐台の形状をした部分が必要となるものであり,それが,本件意匠のように本体部上部のポール接続用の円筒部(被告のいう「連結部分」)の形状をとるのか,被告製品2の意匠のように本体部に含まれるのか,という違いがあるにすぎない。したがって,このような部分に看者である利用者が注意を惹かれることは考えにくい。 b 被告は,本件意匠と被告製品2の意匠の本体部におけるスイッチの有無という相違により,両意匠の本体部から生じる美感は異なる旨主張す うな部分に看者である利用者が注意を惹かれることは考えにくい。 b 被告は,本件意匠と被告製品2の意匠の本体部におけるスイッチの有無という相違により,両意匠の本体部から生じる美感は異なる旨主張する。 しかしながら,被告の主張するスイッチ部分が本体部に占める割合は,極めて小さい上,このスイッチは,特徴的な形状を有しない,シンプルな円状のものである。したがって,このようなスイッチの有無が,本件意匠と被告製品2の意匠の本体部から生じさせる美感に与える影響は,極めて軽微である。 c 被告は,本件意匠と被告製品2の意匠の本体部の背面にあるタンクのデザインの相違により,本件意匠及び被告製品2の意匠の本体部から生じる美感が異なるとも主張する。しかしながら,タンク部分の存在が本件意匠と被告製品2の意匠の本体部から生じさせる美感を左右するものでないことについては,前記イ(ア)bと同じである。 (イ) 本体部分以外の差異点についてa 被告は,本件意匠と被告製品2の意匠は,連結部分及び本体部分の- 22 -構成比が大きく異なり,両意匠から生じる美感が異なる旨主張する。 しかしながら,上記差異点は,本件意匠の要部以外の部分における構成態様の相違であるにすぎない上,両意匠の構成比には,わずかな相違しか認められない。また,被告製品2の意匠の本体部から,前記(ア)のとおり看者である利用者の注意を惹かない部分である「円柱形部分」を除けば,両意匠の本体部の意匠全体に対する構成比は,極めて近似する。 b 被告は,モップヘッドについて,上面中央部の隆起の本数の相違や,「底面中央部分の長方形の突起の前面側及び背面側」の「突起」の有無等の相違を主張する。 しかしながら,このようなささいな構成態様の相違が本件意匠及び被告製品2の意匠から生じる美感の共通 の相違や,「底面中央部分の長方形の突起の前面側及び背面側」の「突起」の有無等の相違を主張する。 しかしながら,このようなささいな構成態様の相違が本件意匠及び被告製品2の意匠から生じる美感の共通性に影響を与えるものではないことについては,上記イ(イ)c,dのとおりである。 (2) 争点2(原告らの損害)についてア原告ユーロプロ社の損害[原告らの主張]原告ユーロプロ社は,被告に対し,以下のとおり,意匠法39条3項の損害推定規定に基づく損害賠償請求を行う。 (ア) 実施料率被告製品は,日本標準産業分類によると,玩具・運動競技用具製造技術にかかる製品に該当すると考えられる。社団法人発明協会発行の「実施料率[第5版]」によれば,平成4年度から平成10年度までの玩具・運動競技用具製造技術の頭金(イニシャル)なしの場合の実施料率の平均は,売上高の5.9%である(甲19)。したがって,本件では,実施料の算定に売上高の5.9%という基準を用いるのが相当である。 (イ) 被告製品の売上高- 23 -被告による被告製品の売上高は,5733万3100円である。したがって,上記売上額の5.9%である338万2652円(1円未満切捨て。以下同じ。)が,意匠法39条3項により推定される実施料相当額となる。 (ウ) 弁護士費用・弁理士費用原告ユーロプロ社は,被告による本件意匠権侵害行為への対応として,被告への通告及び本訴訟の提起を行ったことに伴う弁護士費用及び弁理士費用の支払いを余儀なくされた。その損害額は,100万円を下らない。 (エ) よって,原告ユーロプロ社は,被告に対し,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,438万2652円及びこれに対する不法行為の後である平成21年6月23日から支払済みまで い。 (エ) よって,原告ユーロプロ社は,被告に対し,本件意匠権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,438万2652円及びこれに対する不法行為の後である平成21年6月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 [被告の主張](ア) 実施料率についてa 被告製品は,スチームモップであり,掃除用具に分類されるものである。したがって,被告製品は,玩具・運動競技用具製造技術に係る製品に該当するものではなく,前記「実施料率[第5版]」によれば,電気掃除機が該当するとされている「民生用電気機械器具製造技術にかかる製品」が,最も近似する分類である。同書によれば,これらの製品のイニシャルなしの場合の実施料率の平均は,売上高の4.6%である(乙33)。 b また,上記「実施料率」に記載されている料率は,技術を導入する場合の対価の割合であるため,特許権や実用新案権の評価になじむものである。非技術的部分である意匠が類似する場合に上記「実施料率」記載の料率をそのまま当てはめることは,不当であり,意匠の特徴・- 24 -内容,侵害の程度等の事情を総合的に考慮して,実施料を算出すべきである。 本件意匠は,スチームモップの美感であり,特別に独創的で個性的な意匠ではなく,同意匠による誘引力も,世界的に著名なキャラクターなどと比べると,著しく劣る。これらの事情を総合考慮すると,本件意匠の実施料率は,1%程度とするのが相当である。 (イ) 被告製品の売上高について被告による被告製品の売上高が5733万3100円であることは,認める。 (ウ) 弁護士費用・弁理士費用について原告らの主張を争う。 イ原告オークローン社の損害[原告らの主張]原告オークローン社は,被告に対し,以下の 00円であることは,認める。 (ウ) 弁護士費用・弁理士費用について原告らの主張を争う。 イ原告オークローン社の損害[原告らの主張]原告オークローン社は,被告に対し,以下のとおり,意匠法39条2項の損害推定規定に基づく損害賠償請求を行う。 (ア) 逸失利益被告による被告製品の売上高は,5733万3100円である。 被告は,後記[被告の主張]のとおり,意匠法39条2項所定の「利益」の算定に当たって,上記売上高から別紙計算書の「第2.原価」記載の費用を控除すべきであると主張する。 しかしながら,後記[被告の主張に対する原告らの反論]のとおり,これらの費用は,上記売上高から控除すべき費用に当たるものではなく,少なくとも,別紙計算書記載の「業務委託料」,「新聞広告料」及び「不良返金」については,控除すべき費用として認められない。 したがって,原告オークローン社は,意匠法39条2項により推定される原告オークローン社の損害の一部請求として,被告製品の売上高か- 25 -ら,別紙計算書記載の「仕入金額」,「輸入費用」,「クリック課金」,「倉庫料」及び「ロイヤリティ等」を控除した金額(57,333,100-33,749,600-1,243,100 -2,020,480 -958,000 -306,318 -584,000 -571,493 =19,442,109 円)の支払を求める。 (イ) 弁護士費用・弁理士費用原告オークローン社は,被告による本件意匠権侵害行為への対応として,被告への通告及び本訴訟の提起を行ったことに伴う弁護士費用及び弁理士費用の支払いを余儀なくされた。その損害額は,上記(ア)の損害額の1割(194万4210円)を下らない。 (ウ) よって,原告オークローン社は,被告に対し,本件意匠権 う弁護士費用及び弁理士費用の支払いを余儀なくされた。その損害額は,上記(ア)の損害額の1割(194万4210円)を下らない。 (ウ) よって,原告オークローン社は,被告に対し,本件意匠権の独占的通常実施権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,2138万6319円及びこれに対する不法行為の後である平成21年6月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 [被告の主張](ア) 逸失利益についてa 被告は,別紙計算書記載のとおり,平成20年から平成21年までの間に,被告製品1を195台販売し,被告製品2を6100台販売した。被告製品の売上高は,合計5733万3100円である。 b 被告製品の販売原価は,次のとおり,別紙計算書の「第2.原価」記載の「仕入金額」,「輸入費用」,「業務委託料」,「クリック課金」,「新聞広告料」,「倉庫料」,「不良返金」及び「ロイヤリティ等」の合計額(5663万2921円)である。 (a) 仕入金額被告は,天和国際貿易有限公司(以下「天和社」という)から,別紙計算書の「第2.原価」記載のとおり,被告製品を購入した。 天和社は,被告製品1については,中国法人である「YIWUFO- 26 -REIGNECONOMICRELATIONS & TRADECO.LTD.」(以下「YIWU社」という。)から購入し,被告製品2については,「SHENZHEN UNIVERSALINDUSTRIESCO.LTD.」(以下「シンセン社」という。)から購入した。両製品は,YIWU社ないしシンセン社から被告へ直送された(乙5の1~7)。 被告による被告製品の仕入金額は,合計3374万9600円である(乙11の1~4)。なお,被告製品は,スチームが発生しな 製品は,YIWU社ないしシンセン社から被告へ直送された(乙5の1~7)。 被告による被告製品の仕入金額は,合計3374万9600円である(乙11の1~4)。なお,被告製品は,スチームが発生しない,スチームは出るが量が少ない,何回か使用するとスチームが発生しなくなる,というスチームに関する初期不良が多く,被告が販売した被告製品のうち,初期不良として顧客から交換を求められた総数は,1034台に上る。被告は,これらの初期不良分について,天和社を通じて,シンセン社に対して正常な商品との交換を求めたが,シンセン社が交換に応じたのは625台のみであり(別紙計算書の「第2.原価」の「商品」欄に「被告製品2(不良交換用)」と記載されているもの。以下「不良交換用の被告製品2(シンセン社負担分625台)」という。),残る409台については,被告が販売用として天和社から仕入れた被告製品(以下「不良交換用の被告製品2(被告負担分409台)」という。)を交換品として利用するしかなかった(なお,被告は,上記交換時に顧客から返還を受けた不良品については,その都度廃棄しており,現在,被告の手元に不良品(被告製品)を所持していない。)。したがって,これら409台の仕入価格(合計212万6800円)についても,被告製品の販売による被告の「利益」(意匠法39条2項)を算定するに当たって,上記売上高から控除するのが相当である(別紙計算表記載の「仕入金額」は,上記409台の仕入金額を含む金額であ- 27 -る。)(b) 輸入費用被告は,YIWU社及びシンセン社から被告製品の直送を受ける際,通関費用等として,別紙計算書の「第2.原価」記載の「輸入費用」(合計124万3100円)を支払った(乙6の1~7)。 なお,不良交換用の被告製品2(シンセン社負担分625 被告製品の直送を受ける際,通関費用等として,別紙計算書の「第2.原価」記載の「輸入費用」(合計124万3100円)を支払った(乙6の1~7)。 なお,不良交換用の被告製品2(シンセン社負担分625台)についても,その輸入費用は被告が負担したため,輸入費用が発生している。 (c) 業務委託料被告は,天和社に対し,平成20年4月23日,①インターネットショップホームページのSEO対策等の運営全般及び宣伝等に係る業務,②顧客管理,入金確認,発送手配業務,③カスタマーサービス業務,及び④貿易コンサルタント業務を委託し,天和社は,これを受託した(乙7。以下「本件業務委託契約」といい,同契約に係る契約書を「本件業務委託契約書」という。)。 上記①は,ホームページ上の店舗における被告製品の情報の更新,レイアウト変更,リニューアル等の管理をすること,ホームページに電子メールで寄せられた被告製品に対する質問等に対応すること等の業務を指す。また,SEO対策とは,検索エンジン最適化対策のことであり,被告サイトのハイパーリンクがグーグルやヤフー等の検索サイトにおいてキーワード検索結果ページの上位に掲載されるよう,工夫することをいう。 上記②は,被告製品の注文を受けた顧客の情報をデータベース化すること(顧客管理),被告から受領する銀行口座の入金一覧表を元に入金状況を確認すること(入金確認),入金確認できた顧客の住所等の情報を専用ソフトを利用して入力し,商品発送を担当する- 28 -被告宛にデータを送信すること(発送手配),などの業務である。 被告は,これらの作業を天和社に委託することにより,被告での作業は天和社から送信された送付先データをプリントアウトして商品を発送するだけでよいこととなり,大幅なコスト削減が図られている。 上記③は,顧 ,これらの作業を天和社に委託することにより,被告での作業は天和社から送信された送付先データをプリントアウトして商品を発送するだけでよいこととなり,大幅なコスト削減が図られている。 上記③は,顧客からの電話質問の対応,故障及び性能等のクレームに対する対応,一般的な問合せへの対応等の業務である。 上記④は,被告が希望する商品の製造先を探して製造を依頼し,日本に輸出する業務をいう。 本件業務委託契約の委託料は,売上額の30%であり,被告は,天和社に対し,被告製品の販売に対する業務委託料として,合計1719万9930円(57,333,100 円×0.3)を支払った(乙14の1~9,乙22の1~15)。 (d) クリック課金被告は,平成20年11月12日から平成21年5月末日までの間,ヤフージャパンで「スチームモップ」と検索した場合に,検索結果が表示されるページの上部に被告店舗へのリンクが現れる,リスティング広告を設置した。被告の主たる販売経路はネット販売であるため,リスティング広告を展開することは,被告製品の売上げ増加に必要不可欠なものである。また,上記広告の料金は,上記リンクのクリック数に応じて発生し(以下「クリック課金」という,),被告は,上記クリック課金の代金として,合計202万0480円を支払った(乙8,15)。 (e) 新聞広告料被告は,インターネットを通じた販売以外に,新聞等の情報誌に広告を掲載し,電話で受注するという通信販売を行った。 - 29 -被告は,神戸新聞,ウーマンライフ,日経インテレッセ,チャオ産経,読売ファミリー及び朝日新聞に,被告製品の広告を掲載した。 これらの広告は,すべて被告製品単独の広告であり,他の製品とともに掲載はしていない。これらの広告費の合計は,95万8000円である(乙9の1 読売ファミリー及び朝日新聞に,被告製品の広告を掲載した。 これらの広告は,すべて被告製品単独の広告であり,他の製品とともに掲載はしていない。これらの広告費の合計は,95万8000円である(乙9の1~5,乙16の1~5)。 (f) 倉庫料被告は,輸入した被告製品を顧客に発送するまでの間,被告が賃借する倉庫に一時保管した。この賃料の合計額は,30万6318円である(乙10の1~7)。 (g) 不良返金被告が販売した被告製品には,上記(a)のとおり,初期不良が多かった。これに対し,大多数の顧客は,不良のない被告製品との交換を求めたが,被告製品を被告に返品した上で代金の返還を求める顧客も存在し,被告は,別紙返金一覧表記載のとおり,合計64台の返金に応じた。被告が上記返金に要した費用は,少なくとも被告製品の販売額と同額であり,合計58万4000円である。 (h) ロイヤリティ等被告製品の売上高のうち,テレビショップ・フュージョンヤフー店(以下「ヤフー店」という。)における売上げは,別紙計算書の「第1.売上」記載のとおり,合計1348万3800円(137,200円+13,346,600 円)である。 販売者は,ヤフー店で商品を販売した場合,ヤフー店に対し,少なくとも売上高の2.1%相当額のロイヤリティを支払う必要があるため(乙12の1~9),上記売上高に対するロイヤリティの額は,少なくとも28万3160円(13,483,800 円×0.021)である。 また,販売者は,ヤフー店における商品の販売の際にカード決済- 30 -をした場合,ヤフー店に対し,カード決済金額(送料を含む総額)に対して3.6%の手数料を支払う必要がある(乙13)ところ,上記売上高のうちカード決済した金額は800万9260円であるか 30 -をした場合,ヤフー店に対し,カード決済金額(送料を含む総額)に対して3.6%の手数料を支払う必要がある(乙13)ところ,上記売上高のうちカード決済した金額は800万9260円であるから,カード手数料は28万8333円(8,009,260 円×0.036)である。 したがって,ヤフー店における被告製品の販売により発生するロイヤリティ及びカード手数料(以下「ロイヤリティ等」という。)は,合計57万1493円(283,160 円+288,333 円)である。 (イ) 弁護士費用・弁理士費用について原告らの主張を争う。 [被告の主張に対する原告らの反論](ア) 仕入金額についてa 被告製品の仕入先は天和社ではないこと被告が天和社から被告製品を購入したことについては,否認する。 被告製品は,被告がYIWU社又はシンセン社から直接購入したものであって,天和社から購入したものではない。その理由は,次のとおりである。 (a) インボイスの記載被告は,被告が被告製品を輸入した際のインボイスは乙第5号証の1ないし7(以下「本件インボイス」という。)であると主張する。しかしながら,本件インボイスの作成名義人は,YIWU社又はシンセン社であり,天和社の記載は見当たらない。また,本件インボイスには,製品の名称及び数量のほか,請求単価及び請求金額が記載されており,その仕様,記載からみて,YIWU社又はシンセン社からの被告に対する請求書であることが明らかである。 (b) 天和社から被告に対する請求金額と被告の天和社に対する支払- 31 -額の不一致被告は,被告製品を含む,同社が天和社から購入した商品の代金として,天和社から,乙第11号証の1ないし4(以下「本件商品代金請求書」という。)のとおり請求を受け,天 支払- 31 -額の不一致被告は,被告製品を含む,同社が天和社から購入した商品の代金として,天和社から,乙第11号証の1ないし4(以下「本件商品代金請求書」という。)のとおり請求を受け,天和社に対し,乙第21号証の1ないし16(以下「本件商品代金送金記録」という。)のとおり代金を支払ったと主張する。 しかしながら,本件商品代金請求書の金額と本件商品代金送金記録の金額は,別紙商品代金請求額・送金額対比表記載のとおり,全く符号していない。 例えば,「受取人への通信文」欄に,「12GATU 1KAIMESYOUHINDAIKIN」(「12月1回目商品代金」と読むことができる。)との記載がある乙第21号証の3及び「12GATU 2KAIMESYOUHINDAIKIN」(「12月2回目商品代金」と読むことができる。)との記載がある乙第21号証の4に記載された天和社への送金額の合計額(16,061,600 円)は,乙第11号証の2記載の天和社からの12月分の請求金額である「19,737,600 円」と符号しない。 また,乙第21号証の1の「受取人への通信文」欄には,「SUTIMUMOP 2000 DAISHOUHINDAIKIN」(「スチームモップ 2000 台商品代金」と読むことができる。)と記載され,平成20年10月24日に800万円を送金したことが記載されているが,これは,被告製品の初回の仕入れは平成20年10月25日の200台であるとする被告の主張と符号しない。さらに,乙第21号証の1によると,「SUTIMUMOP」1台当たり4000円が天和社に送金されていた計算となるが,これは,被告製品を1台当たり4900円で購入したとする被告の主張と整合しない。 b 不良交換用の被告製品2の仕入金額を売上高から控除すること り4000円が天和社に送金されていた計算となるが,これは,被告製品を1台当たり4900円で購入したとする被告の主張と整合しない。 b 不良交換用の被告製品2の仕入金額を売上高から控除することは許- 32 -されないこと被告製品の販売による「利益の額」(意匠法39条2項)を算定するに当たって「不良交換」分の仕入金額を差し引くことは,許されない。被告製品6295台の販売による「利益の額」を算定するに当たって,被告製品の売上高から控除すべき仕入金額は,この売上高に対応する仕入金額,すなわち被告製品6295台の仕入金額に限られるべきである。 「不良交換」に要する費用は,不良品が発生しなければ必要のなかったものであり,不良品が発生した場合でも,本来,不良品を販売した仕入先が負担する費用であって,被告製品の売上げに直接連動するものとはいえない。 (イ) 輸入費用について被告は,乙第6号証の輸入費用の請求書(以下「本件輸入費用請求書」という。)が,被告において被告製品を輸入した際に生じた費用であると主張する。 しかしながら,本件輸入費用請求書が本件インボイスに記載された被告製品のいずれに関するものなのかについては,本件インボイスの記載内容からは明らかでない。 また,被告は,被告製品と併せて他の製品(モップパッド,化粧箱等)も輸入しているので,本件輸入費用請求書記載の金額は,被告製品以外の製品の輸入費用も含むものである。 さらに,被告は,前記[被告の主張](ア)(a)記載の「不良交換」分の輸入費用についても売上額から控除しており,相当でない。 (ウ) 業務委託料について本件業務委託契約については,次のとおり,その形式及び内容に不自然な点があり,天和社と被告の間で本件業務委託契約が締結されたこと,- 33 -並びに本 当でない。 (ウ) 業務委託料について本件業務委託契約については,次のとおり,その形式及び内容に不自然な点があり,天和社と被告の間で本件業務委託契約が締結されたこと,- 33 -並びに本件業務委託契約と被告製品の輸入及び販売との間に関連性があることについては,重大な疑義がある。 a 本件業務委託契約書記載の契約締結日が天和社の会社設立日より前になっていること天和社の法人設立認可証(乙20の1)には,天和社の設立時期は平成20年6月2日であると記載されている。これに対し,本件業務委託契約書には,本件業務委託契約の締結日は同年4月23日であると記載されており,この日付は,天和社の設立日よりも前である。設立前の法人が業務委託契約を締結することができないことは論理的に明らかであり,本件業務委託契約書の文書の真正には,重大な疑義がある。また,受託先の会社の設立許可がされるかどうかが決まっていない段階で,委託先の会社が,同社の業務の大部分を上記設立前の会社に委託する旨の契約を締結することは,通常考えられない。 b 本件業務委託契約書の天和社の署名が,外国会社の通常の署名方式に則っていないこと本件業務委託契約書の被告の署名欄には被告の代表者名が記載されているのに対し,天和社の署名欄には,天和社の代表者名の記載はなく,天和社の印が押印されているにすぎない。しかしながら,天和社は,香港の会社であり,香港を含む外国の会社が契約書に署名を行う場合,署名欄には,会社の名称のみならず代表者名も明記した上で,代表者自身がサイン(自署)する方法が通常である。会社印の押印のみで署名を行っている上記天和社の署名は,極めて不自然である。 c 本件業務委託契約の内容の不自然性本業務委託契約は,業務委託料を「売上金額」の30%と定めているが である。会社印の押印のみで署名を行っている上記天和社の署名は,極めて不自然である。 c 本件業務委託契約の内容の不自然性本業務委託契約は,業務委託料を「売上金額」の30%と定めているが,この「売上金額」が被告のどのような売上げの金額に係るものかは明らかでない。仮に,被告製品の売上げ又はこれを含むものであ- 34 -るとすると,被告の主張に従えば,被告が天和社に対して支払ったとする被告製品6704台分の「仕入金額」及び「業務委託料」の合計額から不良交換用の被告製品2(被告負担分)409台の仕入額(212万6800円)を控除した,被告製品6295台分の仕入金額は,同台数分の被告製品の売上高の約85%にも及ぶ。被告は,被告製品の販売に当たり,さらに輸入費用,宣伝広告費等を支出することを考えると,このような採算性のない取引を承知で被告が被告製品を輸入したとは考えられない。 d 天和社は本件業務委託契約に基づく委託業務を行っていないこと被告は,天和社は本件業務委託契約に基づく業務を行っていると主張するが,これを裏付ける客観的な証拠は被告から提出されていない。 e 天和社の請求書(乙14)記載の業務委託料の金額が,本件業務委託契約書記載の業務委託料の金額と合致しないこと本件業務委託契約は,被告が天和社に支払う業務委託料(以下「本件業務委託料」という。)について,被告が,毎月末締めの上,翌月10日に天和社の銀行口座へ支払う旨を規定する(本件業務委託契約書3条1項)。 そして,被告は,天和社から本件業務委託料の請求を受けたことの証拠として,天和社からの請求書(乙14の1~9。以下「本件業務委託料請求書」という。)を提出する。 しかしながら,本件業務委託料請求書記載の金額は,別紙業務委託料請求額・委託料算定額対比表記載 の証拠として,天和社からの請求書(乙14の1~9。以下「本件業務委託料請求書」という。)を提出する。 しかしながら,本件業務委託料請求書記載の金額は,別紙業務委託料請求額・委託料算定額対比表記載のとおり,被告が主張する被告の売上金額(乙30)を基に算定した本件業務委託料の金額(被告の売上金額の30%)と一致しない。 なお,被告は,後記[原告らの反論に対する被告の反論]のとお- 35 -り,本件業務委託料の算定の基礎となる被告の売上高は卸販売分(乙32)を含まないものであるから,原告らの主張は理由がないと主張する。しかしながら,別紙被告売上高・卸販売分対比表記載のとおり,被告の主張する被告の毎月の売上高(乙30)から天和社の把握する被告の売上高(同)を控除した金額は,被告の主張する卸販売分の金額と全く一致しない。 f 被告から天和社に対する業務委託料の支払額及び支払日が,本件業務委託契約で定められた業務委託料の金額及び支払日と一致しないこと本件業務委託契約は,被告は天和社に対して毎月末日締めの上,翌月10日に本件委託料を送金する旨規定している。 しかしながら,被告から天和社に対する送金の記録は,別紙送金記録のとおりである。被告は,被告製品の売上げがあるにもかかわらず,平成21年5月から7月にかけては全く送金をせず,送金のある月についても,同年4月は5回,同年9月ないし11月は各々2回に分けて送金している。月1回の送金が行われている同年1月ないし3月及び8月も,10日又はそれに近接する日に送金は行われていない。 (エ) クリック課金について被告は,クリック課金の支払を示す証拠として,被告及び被告代表者の預金通帳並びに被告及び被告代表者のクレジットカード利用明細書を提出する(乙23~26)。 しかしながら,こ ク課金について被告は,クリック課金の支払を示す証拠として,被告及び被告代表者の預金通帳並びに被告及び被告代表者のクレジットカード利用明細書を提出する(乙23~26)。 しかしながら,これらの明細書に記載された金額が上記クリック課金に係るものであるか否かは,明らかでない。 また,被告は,被告製品の他に,被告製品の商品名と「スチームモップ」の点で共通する原告製品(商品名「シャークスチームモップ」)に- 36 -ついても,被告店舗のウェブサイトを通じて販売していた(甲3,4)。 したがって,仮に,被告が上記クリック課金の料金を支払っていたとしても,支払った金額のすべてが被告製品の売上げに直接必要になった費用とはいえない。 (オ) 新聞広告料について被告の提出する広告費に係る請求書(乙9,16)の記載内容からは,当該広告が実際に被告製品の広告に係るものであるのか否か定かではない。仮に,上記広告が被告製品の広告を含むものであったとしても,その広告に被告が販売する他の製品の広告も含まれる場合は,その広告分の請求金額まで被告製品の売上げに直接連動する費用として控除することは認められない。 (カ) 倉庫料について被告は,被告製品の倉庫料として30万6318円(乙10の1~7)を要したと主張するが,この金額は,乙第10号証に「出番料」と記載されている金額を含むものである。この「出番料」は,乙第10号証の記載上,被告製品の入庫により生じたものか否かが明らかでない。 また,被告の主張する「倉庫料」には,「不良交換」分の被告製品に係る料金も含まれている。「不良交換」分の費用を売上高から控除すべきでないことについては,前記(イ)のとおりである。 (キ) 不良返金について被告製品の販売による「利益の額」(意 製品に係る料金も含まれている。「不良交換」分の費用を売上高から控除すべきでないことについては,前記(イ)のとおりである。 (キ) 不良返金について被告製品の販売による「利益の額」(意匠法39条2項)を算定するに当たって,「不良返金」分の仕入金額を差し引くことは許されない。 その理由については,前記(ア)bと同様である。 (ク) ロイヤリティ等について被告は,被告製品の販売の際に被告がロイヤリティ等を支払ったこと- 37 -を示す証拠として,被告の預金通帳(乙23)を提出するが,この通帳に記載された金額が上記ロイヤリティ等の支払に当てられたものであるのか否かは,明らかでない。 [原告らの反論に対する被告の反論](ア) 仕入金額についてa 被告製品の仕入先は天和社であること(a) 本件インボイスについて本件インボイスは,被告製品の送り状である。本件のように,天和社がYIWU社及びシンセン社から商品を購入し,その商品を被告が天和社から購入して,YIWU社及びシンセン社から被告に対して商品が直送されるという売買契約の場合,インボイス(送り状)には,荷送人であるYIWU社ないしシンセン社及び荷受人である被告の名義のみが表示され,商品の授受に直接関与しない天和社の名義は表示されないものである。したがって,本件インボイスに天和社の記載がないことは,不自然ではない。 (b) 天和社から被告に対する請求金額と被告の天和社に対する支払額との関係について被告は,天和社に対して,毎月の請求に応じて仕入代金を支払うことを基本としているが,資金調達の都合等で天和社に送金できない月や,支払が一部払いとなる月も存在した。被告は,送金が滞る場合は,天和社に対して支払の猶予を申し入れ,天和社の了解を得て後日 支払うことを基本としているが,資金調達の都合等で天和社に送金できない月や,支払が一部払いとなる月も存在した。被告は,送金が滞る場合は,天和社に対して支払の猶予を申し入れ,天和社の了解を得て後日の送金額を増額することによって,対応していた。 また,被告が平成20年10月24日に天和社に送金した800万円(乙21の1)は,被告製品2の前払代金であり,同金額は,同年12月分の天和社の請求額(乙11の2)から控除されている。 b 不良交換用の被告製品の仕入金額について- 38 -商品を販売するに当たり,仕入商品の中には,不可避的に不良品が存在する。不良品の割合は,仕入代金や製造者によって様々であるが,安価で大量に仕入れるときは,不良の割合が高くなることが一般である。この場合,不良品の仕入代金は,商品を販売して利益を得るために必要な費用と考えることが通常であり,販売者は,不良品の割合や損失額等を考慮して,販売価格や利益を設定している。したがって,不良品の仕入価格も,売上げに直接連動する変動費用に該当する。 (イ) 輸入費用について被告は,被告製品と併せて他の製品も輸入しているが,輸入費用は商品ごとに積算されるものではないため,輸入した商品ごとに輸入費用を算定することはできない。 もっとも,輸入費用は,申請単位又はコンテナ等単位当たりで設定されているため,原則として,被告製品にモップパッド又は化粧箱が加わったことで増加する費用はない。ただし,同じく200個の被告製品を輸入した際の輸入通関料(乙6の1,6の7)について見ると,乙第6号証の7は輸入通関料が「少」であるのに対し,乙第6号証の1は「大」になっている。これは,後者がモップパッドもともに輸入したからであると考えられるので,その差額(3200円)は,モップパッドの輸入 号証の7は輸入通関料が「少」であるのに対し,乙第6号証の1は「大」になっている。これは,後者がモップパッドもともに輸入したからであると考えられるので,その差額(3200円)は,モップパッドの輸入によって増加した費用であるといえる。 (ウ) 業務委託料についてa 本件業務委託契約の締結日について本件業務委託契約書の日付は,天和社の設立が認可される以前の日付であるが,天和社は,その頃から設立手続を行っていた。設立中の会社と設立後の会社は実質的には同一であるから,設立前の天和社の行為は設立認可後の天和社にそのまま承継される。 b 本件業務委託契約の内容について- 39 -原告らは,本件業務委託料が高額で不自然であると主張するが,前記[被告の主張](ア)b(c)のとおり,被告が天和社に委託した業務内容は,膨大であり,本件業務委託料の金額に見合うものである。被告は,天和社に業務を委託することによって,被告自身で行う業務が著しく効率化されており,通常であれば十分利益が見込めることから,本件業務委託料の金額は,何ら不自然なものではない。 c 本件業務委託料請求書記載の金額について天和社は,被告から商品発送先住所の入力業務や顧客からの入金確認業務を委託されているため,それらの情報から,被告の毎月の売上高を認識することができる。天和社は,この売上高をもとに,毎月30%の業務委託料を請求している(本件業務委託料請求書)。なお,天和社と被告は,業務委託料算出のために天和社が被告の月額売上高を算定する場合,被告が顧客に商品を発送した時点で売上計上することで合意している。被告は,商品を発送すると,発送伝票の番号を記載したデータを天和社に送信するため,天和社は同データ受領後,発送済分を売上げとして計上する。 他方,被告は,販 で売上計上することで合意している。被告は,商品を発送すると,発送伝票の番号を記載したデータを天和社に送信するため,天和社は同データ受領後,発送済分を売上げとして計上する。 他方,被告は,販売した商品の売上計上時期を原則として商品代金入金時としているため,両者が把握する毎月の売上高は,異なるものとなっている。 また,被告の売上げには,被告が直接小売店ないし小売店へ転売する業者に販売する売上げ(以下「卸販売分」という。)もあるところ,卸販売分については,天和社は売上げを把握しておらず,被告から天和社に対して業務委託料を支払うこともない(なお,卸販売分の中に,被告製品は含まれていない。)。平成20年10月から平成21年6月までの被告の売上高が天和社の把握する売上高より多くなっているのは,上記理由によるものである。 - 40 -(エ) クリック課金について被告が被告ウェブサイトで原告製品を販売したことは認める。ただし,原告製品は,被告製品と異なり仕入価格が高額なため,販売価格も高額とせざるを得ず,売れ行きも悪かった。そのため,原告製品の販売台数は50台程度である。このように,両者の販売台数の差は膨大である上,クリック課金は被告製品の販売のために導入した広告であって,原告製品のための広告ではないことからすると,クリック課金の費用に原告製品の販売用の広告費を考慮する必要はない。仮に,クリック課金の費用に原告製品の販売用の広告費が含まれるとしても,その額は,両製品の販売台数の割合で算出すべきである。 (オ) 倉庫料について「出番料」とは,コンテナを利用した入庫時に必要な荷下ろし作業の特別料金であり,この費用を売上高から控除するべきであることは,明らかである。 ウ原告ユーロプロ社の損害賠償請求権と原告オ 「出番料」とは,コンテナを利用した入庫時に必要な荷下ろし作業の特別料金であり,この費用を売上高から控除するべきであることは,明らかである。 ウ原告ユーロプロ社の損害賠償請求権と原告オークローン社の損害賠償請求権との関係[原告らの主張]独占的通常実施権者である原告オークローン社については,被告による被告製品の販売がなければ,その分原告製品の売上げによる利益が生じたはずであるという点で,意匠法39条2項で推定される被告の利益相当分の損害が観念し得る。他方,意匠権者である原告ユーロプロ社については,原告オークローン社から,GIS社を介して,原告オークローン社の実施に応じた金額が支払われていることから,独占的通常実施権者である原告オークローン社の実施が害された分に相当する収入が減少するという損害を,原告オークローン社の損害とは別に観念することができる。 したがって,原告ユーロプロ社の意匠法39条3項に基づく実施料相当- 41 -額の損害賠償請求と,原告オークローン社の同条2項に基づく被告の利益相当額の損害賠償請求とは,両立する。 [被告の主張]原告らの主張を争う。 意匠法39条2項は,「その者(侵害者)がその侵害の行為により利益を受けているとき」と規定しており,侵害者が実施行為,すなわち,許諾を得た意匠権の実施を行わなかった場合を前提とする損害額算定方法である。これに対し,同条3項は,「意匠の実施に対し受けるべき金銭の額」と規定しており,仮に侵害者が実施行為を行った場合を前提とする損害額算定方法である。このように,両規定は,互いに両立しない状況を前提とするものであるから,両請求権が単純に並立することはない。 また,仮に,独占的通常実施権ではなく,専用実施権が設定されている場合,設定者は,自ら意匠権を実施す 両規定は,互いに両立しない状況を前提とするものであるから,両請求権が単純に並立することはない。 また,仮に,独占的通常実施権ではなく,専用実施権が設定されている場合,設定者は,自ら意匠権を実施する権利も,他者に更に実施許諾をする権利も有しておらず,意匠法39条3項に基づく損害賠償を請求することはできない。それにもかかわらず,独占的通常実施権者に同条2項の類推適用による損害賠償請求を認め,同時に,意匠権者にも同条3項による損害賠償請求を認め,両者が並立するとすれば,専用実施権が設定された場合以上の逸失利益を権利者側に認めることになってしまい,専用実施権設定時と比較して均衡を失する。なお,本件では,原告ユーロプロ社が設定した権利は専用実施権ではなく独占的通常実施権であるため,法律上,同社は損害賠償請求権を有さないものではないが,意匠権者の損害は,侵害者の侵害行為によって独占的通常実施権者が蒙った損害分について,独占的通常実施権者から実施料を取得できなかったことであり,独占的通常実施権者が意匠権者に対し,得た利益から実施料相当額を支払わなければならないことは,侵害が存在する場合と存在しない場合とで異なることはない。したがって,仮に,本件において,原告ユーロプロ社及び原告オー- 42 -クローン社の損害賠償請求が認められるとすれば,原告ユーロプロ社の意匠法39条3項に基づく請求権と原告オークローン社の同条2項に基づく請求権は,重複する限度で連帯債権の関係に立つ。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件意匠と被告製品の意匠の類否)について(1) 意匠の類否の判断登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされており(意匠法24条2項),この類否の判断は,両意匠を全体 (1) 意匠の類否の判断登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされており(意匠法24条2項),この類否の判断は,両意匠を全体的観察により対比し,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,公知意匠にない新規な創作部分の存否等を考慮して,当該意匠に係る物品の看者となる需要者の注意を惹きやすい部分を把握し,この部分を中心に対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当である。 (2) 意匠に係る物品の同一性被告製品は,蒸気モップであり,本件意匠に係る物品と同一である。 (3) 本件意匠及び被告製品の意匠の構成態様ア本件意匠の構成態様証拠(甲2の2)によれば,本件意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様は,次のとおりであると認められる。 (ア) 基本的構成態様a 本件意匠は,持ち手部,ポール部,連結部,本体部,モップヘッド部とから成る。 b 持ち手部は,ポール部の上端と結合された,半円形のものである。 c ポール部は,上端で持ち手部と結合し,下端で連結部と結合する。 d 連結部は,ポール部と本体部とを接続する部材である。 e 本体部は,略楕円状であり,その下端部はモップヘッド部に結合さ- 43 -れている。 f モップヘッド部は,上面中央部に本体部との接続部である隆起部を備えた,横長の板状体である。 (イ) 具体的構成態様a 持ち手部(a) 持ち手部は,下方の直線状の基部と,その上方の持ち手部本体とから成る。 (b) 持ち手部本体は,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部と,この直線状部の上方に形成された,略半円状の握り部とから成る。 (c) 直線状基部の背面に,先端を上方に屈曲させたL (b) 持ち手部本体は,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部と,この直線状部の上方に形成された,略半円状の握り部とから成る。 (c) 直線状基部の背面に,先端を上方に屈曲させたL型のコードフックが突設されている。 (d) 握り部の上部外周部分に,貼付状の造形が施されている。 (e) 持ち手部の長さ(高さ)は,全高の約20%である。 b ポール部(a) ポール部は,1本の円筒状の棒状体である。 (b) ポール部の長さは,全高の約40%である。 c 連結部(a) 連結部は,上端の背面に,先端を下方に屈曲させたL型のコードフックが突設されている。 (b) 連結部の下端は,本体部上部の前面部分と結合する。 (c) 連結部の長さ(高さ)は,全高の約15%である。 d 本体部(a) 本体部は,逆水滴型の形状であり,最大径部は,本体部の長手方向の下から4分の3付近にある。最大径部の横幅は,ポール部の横幅の約7倍である。 - 44 -(b) 本体部の横断面は,略楕円形である。 (c) 正面中央付近の上部に,円形の造形が施され,そのすぐ下部に,横長の楕円形の造形が施されている。 (d) 背面の上部から本体部の長手方向の4分の1付近の部分には,下方が円弧状の模様があり,上端に栓状の突起物が存在する。 (e) 本体部の長さ(高さ)は,全高の約20%である。 e モップヘッド部(a) モップヘッド部の外周形状は,前部及び両側部が,緩やかな円弧状であり,後部が,前部よりも小さい曲率半径の円弧状である。 (b) その縦:横の比率は,約1:2である。 (c) 上面中央部の隆起部から,放射状の隆起が端部にまで延びている。 (d) 隆起の総数は,約16本である。 (e) 裏面の中央部には,3×3の井桁状突起が形成 :横の比率は,約1:2である。 (c) 上面中央部の隆起部から,放射状の隆起が端部にまで延びている。 (d) 隆起の総数は,約16本である。 (e) 裏面の中央部には,3×3の井桁状突起が形成され,その両側の前後に,モップ接着用の長方形部が形成されている。 (f) モップヘッド部の長さ(高さ)は,全高の約5%である。 イ被告製品1の意匠の構成態様被告製品1の構成は,別紙被告製品目録記載1の「構成」のとおりであり,その基本的構成態様及び具体的構成態様は,次のとおりであると認められる。 (ア) 基本的構成態様a 被告製品1の意匠は,持ち手部,ポール部,本体部,モップヘッド部とから成る。 b 持ち手部は,ポール部の上端と結合された,半円形のものである。 c ポール部は,上端で持ち手部と結合し,下端で本体部と結合する。 d 本体部は,略楕円状であり,その下端部はモップヘッド部に結合さ- 45 -れている。 e モップヘッド部は,上面中央部に本体部との接続部である隆起部を備えた,横長の板状体である。 (イ) 具体的構成態様a 持ち手部(a) 本件意匠における持ち手部の具体的構成態様(前記ア(イ)a)の(a)ないし(c)と同じ。 (b) 持ち手部の長さ(高さ)は,全高の約18%である。 b ポール部(a) ポール部は,2本の棒が中央部で接続されている,横断面が略楕円状の棒状体である。 (b) ポール部の長さは,全高の約45%である。 (c) ポール部の下端は,本体部上部の中央部分と結合する。 c 本体部(a) 本体部は,上部のポール部接続用の円筒部と,本体とから成る。 (b) 本体は,水滴型の形状であり,最大径部は,本体の長手方向の下から3分の1付近にある。最大径部の横幅は,ポール部の横幅の約8倍であ 本体部は,上部のポール部接続用の円筒部と,本体とから成る。 (b) 本体は,水滴型の形状であり,最大径部は,本体の長手方向の下から3分の1付近にある。最大径部の横幅は,ポール部の横幅の約8倍である。 (c) 本体の横断面は,略楕円形である。 (d) 正面中央の上部から長手方向に2分の1付近に,逆三角形のランプが設けられている。 (e) 背面中央の上部から長手方向に7分の3付近に,栓が存在する。 (f) 本体の上端部に,先端を下方に屈曲させたL型のコードフックが突設されている。 (g) 本体部の長さ(高さ)は,全高の約33%である。 d モップヘッド部- 46 -(a) 本件意匠におけるモップヘッド部の具体的構成態様(前記ア(イ)e)の(a)ないし(c),(e)及び(f)と同じ。 (b) 隆起の総数は,20本である。 (c) 裏面中央部の井桁状突起の前面側に4つ及び背面側に1つの板状の突起があり,井桁状突起の両側に,外側が広がったハの字状の突起がある。 ウ被告製品2の意匠の構成態様被告製品2の構成は,別紙被告製品目録記載2の「構成」のとおりであり,その基本的構成態様及び具体的構成態様は,次のとおりであると認められる。 (ア) 基本的構成態様本件意匠の具体的構成態様(前記ア(ア))と同じ。 (イ) 具体的構成態様a 持ち手部(a) 本件意匠における持ち手部の具体的構成態様(前記ア(イ)a)の(a)ないし(d)と同じ。 (b) 持ち手部の長さ(高さ)は,全高の約18%である。 b ポール部(a) ポール部は,2本の棒が中央部で接続されている,横断面が略楕円状の棒状体である。 (b) ポール部の長さは,全高の約40%である。 c 連結部(a) 連結部は,上端の背面に,先端を下方に屈曲させ ル部は,2本の棒が中央部で接続されている,横断面が略楕円状の棒状体である。 (b) ポール部の長さは,全高の約40%である。 c 連結部(a) 連結部は,上端の背面に,先端を下方に屈曲させたL型のコードフックが突設されている。 (b) 連結部の下端は,本体部上部の中央部分と結合する。 (c) 連結部の長さ(高さ)は,全高の約13%である。 - 47 -d 本体部(a) 本体部は,瓜型の形状であり,最大径部は,本体部の長手方向の下から2分の1付近にある。最大径部の横幅は,ポール部の横幅の約7倍である。 (b) 本体部の横断面は,略楕円形である。 (c) 正面中央付近の上部に,逆三角形のランプが設置され,その直ぐ下部に,横長の楕円形の造形が施されている。 (d) 本体部の上部は,段差を付けて円錐台状に絞られ,円錐台状部の表面に円形の電源スイッチ部が設けられている。 (e) 本体部の背面上部は,楕円形の線があり,その上端に栓状の突起物が突設されている。 (f) 本体部の長さ(高さ)は,全高の約24%である。 e モップヘッド部被告製品1の意匠におけるモップヘッド部の具体的構成態様(前記イ(イ)d)と同じ。 (4) 本件意匠と被告製品の意匠の共通点及び差異点ア本件意匠と被告製品1の意匠の共通点及び差異点は,次のとおりである。 (ア) 共通点a 基本的構成態様(a) 持ち手部,ポール部,本体部,モップヘッド部を備える。 (b) 持ち手部は,ポール部の上端に結合された,半円形のものである。 (c) ポール部は,上端で持ち手部と結合する。 (d) 本体部は,略楕円状であり,その下端部はモップヘッド部に結合されている。 (e) モップヘッド部は,上面中央部に本体部との接続部である隆起- ポール部は,上端で持ち手部と結合する。 (d) 本体部は,略楕円状であり,その下端部はモップヘッド部に結合されている。 (e) モップヘッド部は,上面中央部に本体部との接続部である隆起- 48 -部を備えた,横長の板状体である。 b 具体的構成態様(持ち手部)(a) 持ち手部は,下方の直線状の基部とその上方の持ち手部本体とから成る。 (b) 持ち手部本体は,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部と,この直線状部の上方に形成された,略半円状の握り部とから成る。 (c) 直線状基部の背面に,先端を上方に屈曲させたL型のコードフックが突設されている。 (ポール部)ポール部は,円筒状ないし横断面が略楕円状の棒状体である。 (本体部)本体部の横断面は,略楕円形である。 (モップヘッド部)(a) モップヘッド部の外周形状は,前部及び両側部が,緩やかな円弧状であり,後部が,前部よりも小さい曲率半径の円弧状である。 (b) その縦:横の比率は,約1:2である。 (c) 上面中央部の隆起部から,放射状の隆起が端部にまで延びている。 (d) 裏面の中央部には,3×3の井桁状突起が形成され,その両側の前後に,モップ接着用の長方形部が形成されている。 (e) モップヘッド部の長さ(高さ)は,全高の約5%である。 (イ) 差異点a 基本的構成態様(a) 本件意匠は,持ち手部,ポール部,連結部,本体部及びモップヘ- 49 -ッド部とから成るのに対し,被告製品1の意匠は,持ち手部,ポール部,本体部及びモップヘッド部とから成る。 (b) 本件意匠は,ポール部が下端で連結部と結合し,連結部によってポール部と本体部を接続するのに対し,被告製品1の意匠は,ポール部が下端で本体部と結合する 及びモップヘッド部とから成る。 (b) 本件意匠は,ポール部が下端で連結部と結合し,連結部によってポール部と本体部を接続するのに対し,被告製品1の意匠は,ポール部が下端で本体部と結合する。 b 具体的構成態様(持ち手部)(a) 本件意匠は,握り部の上部外周部分に貼付状の造形が施されているのに対し,被告製品1の意匠は,このような造形は施されていない。 (b) 持ち手部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約20%であるのに対し,被告製品1の意匠は全高の約18%である。 (ポール部)(a) 本件意匠は,1本の棒状であるのに対し,被告製品1の意匠は,2本の棒が中央部で接続されている。 (b) ポール部の長さは,本件意匠が全高の約40%であるのに対し,被告製品1の意匠は全高の約45%である。 (連結部)本件意匠は,連結部を備え,連結部の上端の背面に,先端を下方に屈曲させたL型のコードフックが突設されているのに対し,被告製品1の意匠は,連結部を備えておらず,先端を下方に屈曲させたL型のコードフックは本体部の本体の上端部に設けられている。 (本体部)(a) 被告製品1の意匠は,上部のポール部接続用の円筒部と本体とから成るのに対し,本件意匠は,このような円筒部を備えていない。 (b) 本件意匠は,本体部の形状が逆水滴型であり,最大径部は本体- 50 -部の長手方向の下から4分の3付近であるのに対し,被告製品1の意匠は,本体の形状が水滴型であり,最大径部は本体の長手方向の下から3分の1付近にある。また,最大径部の横幅のポール部の横幅に対する比は,本件意匠が約7倍であるのに対し,被告製品1の意匠は約8倍である。 (c) 本件意匠は,正面中央付近の上部に円形及び横長の楕円形の造形が施されているのに対し,被 横幅のポール部の横幅に対する比は,本件意匠が約7倍であるのに対し,被告製品1の意匠は約8倍である。 (c) 本件意匠は,正面中央付近の上部に円形及び横長の楕円形の造形が施されているのに対し,被告製品1の意匠は,このような造形は施されておらず,正面中央の上部から長手方向に2分の1付近に逆三角形のランプが設けられている。 (d) 本件意匠は,本体部の背面上部から長手方向の4分の1付近の部分に,下方が円弧状の線があり,上端に栓状の突起物が存在するのに対し,被告製品1の意匠は,本体部の背面上部に円弧状の線はなく,背面中央の上部から長手方向に7分の3付近に栓が存在する。 (e) 本体部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約20%であるのに対し,被告製品1の意匠は全高の約33%である。 (モップヘッド部)(a) 本件意匠は,隆起の総数が約16本であるのに対し,被告製品1の意匠は,隆起の総数が20本である。 (b) 被告製品1の意匠は,モップヘッド部の裏面中央部の井桁状突起の前面側に4つ及び背面側に1つの板状の突起が存在し,井桁状突起の両側にハの字状の突起が存在するのに対し,本件意匠には,このような突起は存在しない。 イ本件意匠と被告製品2の意匠の共通点及び差異点は,次のとおりである。 (ア) 共通点a 基本的構成態様(a) 持ち手部,ポール部,連結部,本体部,モップヘッド部とから- 51 -成る。 (b) 持ち手部は,ポール部の上端と結合された,半円形のものである。 (c) ポール部は,上端で持ち手部と結合し,下端で連結部と結合する。 (d) 連結部は,ポール部と本体部を接続する部材である。 (e) 本体部は,略楕円状であり,その下端部はモップヘッド部に結合されている。 (f) モップヘッド部は,上面中央部に本 結合する。 (d) 連結部は,ポール部と本体部を接続する部材である。 (e) 本体部は,略楕円状であり,その下端部はモップヘッド部に結合されている。 (f) モップヘッド部は,上面中央部に本体部との接続部である隆起部を備えた,横長の板状体である。 b 具体的構成態様(持ち手部)(a) 本件意匠と被告製品1の意匠における持ち手部の共通点(前記ア(ア)b(持ち手部))と同じ。 (b) 握り部の上部外周部分に,貼付状の造形が施されている。 (ポール部)(a) ポール部は,円筒状ないし横断面が略楕円状の棒状体である。 (b) ポール部の長さは,全高の約40%である。 (連結部)連結部は,上端の背面に,先端を下方に屈曲させたL型のコードフックが突設されている。 (本体部)(a) 本体部の横断面は,略楕円形である。 (b) 本体部の最大径部の横幅は,ポール部の横幅の約7倍である。 (c) 正面中央付近の上部の造形ないしランプの直ぐ下部に,横長の楕円形の造形が施されている。 - 52 -(モップヘッド部)本件意匠と被告製品1の意匠におけるモップヘッド部の共通点(前記ア(ア)b(モップヘッド部))と同じ。 (イ) 差異点本件意匠の具体的構成態様と被告製品2の意匠の具体的構成態様の差異点は,次のとおりである(なお,本件意匠と被告製品2の意匠の基本的構成態様については,両者の間に差異点は存在しない。)。 (持ち手部)持ち手部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約20%であるのに対し,被告製品2の意匠は約18%である。 (ポール部)本件意匠は,1本の棒状であるのに対し,被告製品2の意匠は,2本の棒が中央部分で接続されている。 (連結部)a 連結部の下端は,本件意匠では本体部上 2の意匠は約18%である。 (ポール部)本件意匠は,1本の棒状であるのに対し,被告製品2の意匠は,2本の棒が中央部分で接続されている。 (連結部)a 連結部の下端は,本件意匠では本体部上部の前面部分と結合するのに対し,被告製品2の意匠は本体部上部の中央部分と結合する。 b 連結部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約15%であるのに対し,被告製品2の意匠は全高の約13%である。 (本体部)a 本件意匠は,本体部の上部に段差を付けていないのに対し,被告製品2の意匠は,本体部の上部が段差を付けて円錐台状に絞られ,円錐台状部の表面に円形の電源スイッチ部が設けられている。 b 本件意匠は,本体部の形状が逆水滴型であり,最大径部は本体部の長手方向の下から4分の3付近であるのに対し,被告製品2の意匠は,本体部の形状が瓜型であり,最大径部は本体部の長手方向の下から2分の1付近にある。 - 53 -c 本件意匠は,正面中央付近の上部に円形の造形が施されているのに対し,被告製品2の意匠は,正面中央付近の上部に逆三角形のランプが設置されている。 d 本件意匠は,背面の上部から本体部の長手方向の4分の1付近の部分の下方に円弧状の線があり,上端に栓状の突起物が存在するのに対し,被告製品2の意匠は,本体部の背面上部に楕円形の線があり,その上端に栓状の突起が突設されている。 e 本体部の長さ(高さ)は,本件意匠が全体の約20%であるのに対し,被告製品2の意匠は全高の約24%である。 (モップヘッド部)本件意匠と被告製品1の意匠におけるモップヘッド部の差異点(前記ア(イ)b(モップヘッド部))と同じ。 (5) 本件意匠と被告製品の意匠の類否上記(4)の共通点及び差異点が存在することを前提に,以下,本件意匠と被告製品の意匠の類否に ド部の差異点(前記ア(イ)b(モップヘッド部))と同じ。 (5) 本件意匠と被告製品の意匠の類否上記(4)の共通点及び差異点が存在することを前提に,以下,本件意匠と被告製品の意匠の類否について検討する。 ア本件意匠と被告製品1の意匠の類否について(ア) 本件意匠と被告製品1の意匠の共通点a 持ち手部について(a) 本件意匠に係る物品及び被告製品1は,いずれも蒸気モップである。証拠(甲3の1,2,甲4の1~3,甲13)及び弁論の全趣旨によれば,本件意匠に係る蒸気モップ及び被告製品の使用者は,片手で持ち手部を握り,下端のモップヘッド部に拭き取り部材を装着してモップの操作を行うものであり,持ち手部を手にしてポール部を手前下に傾け,床面に接着したモップヘッドを前後左右に移動させることにより,床面を清掃するものであることが認められる。 したがって,蒸気モップの需要者である使用者は,蒸気モップを使- 54 -用する際,蒸気モップの持ち手部を必ず目にするものである。 また,持ち手部の長さは,本件意匠及び被告製品1の意匠の全高のおおむね2割程度を占めている。 さらに,本件意匠のように,蒸気モップの持ち手部の本体が,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部と,この直線状部の上方に形成された略半円状の握り部とから成るものは,本件意匠の出願時には知られていなかったものと認められる。 これらの事実を考慮すると,本件意匠及び被告製品1の意匠における持ち手部の本体に係る上記の具体的構成態様は,看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分であり,美感に与える影響が大きいものであると認められる。 (b) これに対し,被告は,乙1意匠の存在により,持ち手部が半円形ないし楕円形をしている掃除用具は本件意匠の出願時において公知又は周 分であり,美感に与える影響が大きいものであると認められる。 (b) これに対し,被告は,乙1意匠の存在により,持ち手部が半円形ないし楕円形をしている掃除用具は本件意匠の出願時において公知又は周知であったから,本件意匠及び被告製品1の意匠における持ち手部の具体的構成態様は需要者の注意を強く惹く箇所ではない,と主張する。 しかしながら,証拠(乙1)によれば,乙1意匠における持ち手部の握り部は,半円形というよりも略台形であり,使用者が握る部分も,半円状の曲線部分ではなく台形状の長辺部(直線部分)である点において,本件意匠と相違する。 したがって,乙1意匠の存在によって,本件意匠における持ち手部の本体の具体的構成態様が公知又は周知であったと認めることはできない。 (c) また,被告は,モップ状の掃除器具の場合,その機能上,持ち手部,モップヘッド部及びポール部は必要不可欠な部分であり,これらの部分の形状は,製品の機能を向上させるために工夫,改良され- 55 -るものであって,そこに創作的工夫や視覚を通じて美感を起こさせるものが入る余地はなく,需要者がモップ状の掃除器具の持ち手部を観察するときも,操作性,持ちやすさ等の機能面を重視し,そこに形状の美感は入らない,とも主張する。 しかしながら,仮に,被告の主張するとおり,モップ状の掃除器具において,持ち手部やモップヘッド部等の存在が必要不可欠であり,これらの部材では機能性が重視されるものであるとしても,そのことから直ちに,持ち手部やモップヘッド部等について美感を起こさせるものが入る余地はなく,意匠創作の余地がないということはできず,他に被告の上記主張を裏付けるに足りる証拠はない。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 b モップヘッド部について(a) 蒸気モップの ,意匠創作の余地がないということはできず,他に被告の上記主張を裏付けるに足りる証拠はない。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 b モップヘッド部について(a) 蒸気モップの使用方法は,上記a(a)のとおりであり,使用者は,モップヘッド部に装着した拭き取り部材を床面に接着させて前後左右に移動させることにより,床面を清掃するものである。 したがって,蒸気モップの需要者は,蒸気モップを使用する際,モップヘッド部の形状及びその上面を注視するものといえる。 また,本件意匠のように,蒸気モップのモップヘッド部の外周形状が,前部及び両側部が緩やかな円弧状で,後部が前部よりも小さい曲率半径の円弧状となっており,上面中央部の隆起部から放射状の隆起が端部にまで延びたものは,本件意匠の出願時には知られていなかったものと認められる。 これらの事実を考慮すると,本件意匠及び被告製品1の意匠におけるモップヘッド部の形状及びその上面に係る上記の具体的構成態様は,看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分であり,美感に与える影響が大きいものであると認められる。 - 56 -(b) これに対し,被告は,本件意匠に係る蒸気モップの使用時を想定する平面図(別紙意匠図面の【平面図】)では,モップヘッド部の大半は本体部分に隠れているから,需要者がモップヘッド部に強く注意を惹かれることはないと主張する。 しかしながら,上記平面図において,本体部に隠されていない部分だけでも,モップヘッド部全体の外周形状や上面の放射状の隆起の形状を知ることができるのであって,その大半が本体部に隠れているとの被告の主張はその前提を欠くものであり,上記平面図を含む別紙意匠図面の全体から把握することのできるモップヘッド部の形状及びその上面に係る上記の具体的構成態様は,需要 その大半が本体部に隠れているとの被告の主張はその前提を欠くものであり,上記平面図を含む別紙意匠図面の全体から把握することのできるモップヘッド部の形状及びその上面に係る上記の具体的構成態様は,需要者の注意を惹く部分であるというべきである。また,上記平面図は,本件意匠に係る意匠公報に記載された図面であるところ(甲2の2),同公報には,上記平面図が本件意匠に係る蒸気モップの使用時を想定するものである旨の説明は,何ら記載されていない。かえって,前掲a(a)の各証拠によれば,本件意匠に係る蒸気モップ及び被告製品は,垂直に立てた状態で使用するものではなく,利用者は,持ち手部を手にしてポール部を手前下に傾け,床面に接着したモップヘッドを前方に押し出して使用するものであることが認められる。 したがって,上記平面図は,蒸気モップの使用時を想定するものであるとは認められず,被告の主張は理由がない。 (c) また,被告は,モップ状の掃除器具の場合,その機能上,モップヘッド部は必要不可欠な部分であり,この部分の形状は,製品の機能を向上させるために工夫,改良されるものであって,そこに創作的工夫や視覚を通じて美感を起こさせるものが入る余地はないとも主張する。 しかしながら,被告の上記主張に理由がないことについては,上- 57 -記a(c)で説示したところと同じである。 c 本体部について(a) 蒸気モップの使用方法については,上記a(a)のとおりである。 したがって,蒸気モップの需要者は,蒸気モップを使用する際,モップヘッド部が結合された本体部の正面についても,必ず目にするものである。 これに加えて,①本体部の長さ(高さ)は,本件意匠及び被告製品1の意匠の全体の2割ないし3割程度を占めていること,②本件意匠のように蒸気モップの本体部の形 ついても,必ず目にするものである。 これに加えて,①本体部の長さ(高さ)は,本件意匠及び被告製品1の意匠の全体の2割ないし3割程度を占めていること,②本件意匠のように蒸気モップの本体部の形状が逆水滴型のものは,本件意匠の出願時には知られていなかったものと認められること,などを考慮すると,本件意匠及び被告製品1の意匠における本体部の具体的構成態様は,看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分であり,美感に与える影響が大きいものであると認められる。 (b) これに対し,原告は,蒸気モップにおいて,本体部の形状が,下端部と上端部が小径で,中央部が膨らんだ略楕円形状であるものは,本件意匠の出願時において公知であったものであるから(甲9~11),本件意匠における本体部の形状は,看者である利用者の注意を強く惹く箇所ではないと主張する。 しかしながら,証拠(甲9~11)によれば,甲第9号証ないし甲第11号証に係る意匠(以下「甲9ないし11意匠」という。)の本体部の形状は,いずれも,本件意匠のような逆水滴型ではなく,全高に対する本体部の割合(甲9ないし11意匠では,おおむね30%程度である。)や,本体部の最大径部の横幅とポール部の横幅の比(甲9ないし11意匠は,おおむね4倍程度である。)も,本件意匠とは大きく相違していることが認められる。 したがって,甲9ないし11意匠の存在によって,本件意匠にお- 58 -ける本体部の具体的構成態様が公知であったと認めることはできない。 d 以上のとおり,本件意匠において看者となる需要者の注意を惹きやすい部分は,持ち手部の本体,モップヘッド部の上面及び本体部の具体的な形状であると認められる。 そして,本件意匠と被告製品1の意匠は,前記のとおり,持ち手部の本体の形状(持ち手部の本体が,基 きやすい部分は,持ち手部の本体,モップヘッド部の上面及び本体部の具体的な形状であると認められる。 そして,本件意匠と被告製品1の意匠は,前記のとおり,持ち手部の本体の形状(持ち手部の本体が,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部と,この直線状部の上方に形成された略半円状の握り部とから成る。),及びモップヘッド部の上面の形状(モップヘッド部の外周形状が,前部及び両側部が緩やかな円弧状で,後部が前部よりも小さい曲率半径の円弧状となっており,上面中央部の隆起部から放射状の隆起が端部にまで延びている。)において,共通点を有する。 また,本件意匠と被告製品1の意匠における本体部の形状は,前者が逆水滴型であるのに対し,後者が水滴型であるという差異点はあるものの,いずれも略楕円形であり,その横断面が略楕円であるという点において共通しており,最大径部の横幅とポール部の横幅の比についても,ほぼ同様である。 このように,本件意匠と被告製品1の意匠は,需要者の視覚を通じて注意を惹きやすい部分において多くの共通点を有するものであるから,両意匠を全体的に観察した場合,その他の共通点(前記(4)ア(ア)参照)によってもたらされる共通感とあいまって,看者に共通の美感を与えるものであるといえ,被告製品1の意匠は本件意匠に類似するものと認められる。 なお,本件意匠の構成態様と被告製品1の意匠の構成態様との間には,前記(4)ア(イ)のとおり差異点も存在するものの,後記のとおり,- 59 -その差異点から受ける印象は上記共通点から受ける印象を凌駕するものではない。したがって,このような差異点の存在をもって両意匠を非類似とすることはできない。 (イ) 本件意匠と被告製品1の意匠の差異点a 基本的構成態様(連結部の有無)について のではない。したがって,このような差異点の存在をもって両意匠を非類似とすることはできない。 (イ) 本件意匠と被告製品1の意匠の差異点a 基本的構成態様(連結部の有無)について本件意匠は,持ち手部,ポール部,連結部,本体部及びモップヘッド部とから成るのに対し,被告製品1の意匠は,持ち手部,ポール部,本体部及びモップヘッド部とから成るものであり,ポール部と本体部とを接続する部材である連結部は存在しない。 しかしながら,蒸気モップの使用方法は前記a(a)のとおりであることからすると,蒸気モップの需要者は,蒸気モップを使用する際,ポール部と本体部とを接続する部材である連結部については,さほど注視することはないものといえる。また,本件意匠における連結部の形状は,格別特徴のあるものとは認められない。 これに加えて,被告製品1の意匠においても,本件意匠における連結部に相当するものとして,ポール部と本体部とを接続する部分(本体部における円筒部)が存在することを考えると,連結部の有無という差異が看者の美感に与える影響は,比較的軽微なものにとどまるというべきである。 b 持ち手部について(a) 本件意匠における持ち手部の握り部の上部外周部分には,貼付状の造形が施されているのに対し,被告製品1の意匠は,このような造形は施されていない。 しかしながら,上記造形は,本件意匠全体からみれば,ごくわずかといえる小さな部分にすぎない上,造形自体の形状も,特徴があるものとはいえないことからすると,上記差異が看者の美感に与え- 60 -る影響はごく軽微なものといえる。 (b) また,持ち手部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約20%であるのに対し,被告製品1の意匠は全高の約18%である。 しかしながら, 与え- 60 -る影響はごく軽微なものといえる。 (b) また,持ち手部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約20%であるのに対し,被告製品1の意匠は全高の約18%である。 しかしながら,上記持ち手部の長さの差は,本件意匠に係る蒸気モップ全体からみると,約2%程度のごく小さいものにすぎない上,持ち手部自体の長さを比較した場合でも,せいぜい1割程度の違いにとどまるものであるから,やはり,看者の美感に与える影響は軽微なものにとどまる。 c モップヘッド部について(a) 本件意匠は,隆起の総数が約16本であるのに対し,被告製品1の意匠は,隆起の総数が20本である。 しかしながら,上記本数の差異はわずかであるから,このような差異が看者の美感に与える影響は,ごく軽微であるというべきである。 (b) また,被告製品1の意匠は,モップヘッド部の裏面中央部の井桁状突起の前面側に4つ及び背面側に1つの板状の突起が存在し,井桁状突起の両側にハの字状の突起が存在するのに対し,本件意匠には,このような突起は存在しない。 しかしながら,上記差異点も,本件意匠の全体からみると,ごく小さい部位に関するものである上,蒸気モップの使用方法が前記(ア)a(a)のとおりであることからすると,蒸気モップの通常の使用態様において,看者である需要者がモップヘッド部の裏面を観察することは,極めてまれであるといえる。 したがって,上記差異点が看者に与える影響も,ごく軽微なものにとどまるというべきである。 d 本体部分について- 61 -(a) 本件意匠は,本体部の形状が逆水滴型であり,最大径部は本体部の長手方向の下から4分の3付近であるのに対し,被告製品1の意匠は,本体の形状が水滴型であり,最大径部は本体の長手方向の下から3分の1付近に 件意匠は,本体部の形状が逆水滴型であり,最大径部は本体部の長手方向の下から4分の3付近であるのに対し,被告製品1の意匠は,本体の形状が水滴型であり,最大径部は本体の長手方向の下から3分の1付近にある。また,最大径部の横幅のポール部の横幅に対する比は,本件意匠が約7倍であるのに対し,被告製品1の意匠は約8倍である。 そして,被告は,このような差異が存在することにより,本件意匠は,需要者に細く,洗練された都会的な美感を与えるのに対し,被告製品1の意匠は,需要者に太く,どっしりとした安定感のある美感を与えるものであり,両意匠が需要者に与える美感は全く異なると主張する。 そこで検討するに,本体部の具体的構成態様が看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分のひとつであることについては,前記(ア)cのとおりであり,このような本体部の形状について上記のような差異点が存在することは,看者の美感に与える影響が少なくないものといえる。 他方,本件意匠では,持ち手部の本体及びモップヘッド部の上面の具体的構成態様もまた,看者の注意を惹きやすい部分であり,この点について,被告製品1の意匠は,前記のとおり本件意匠と共通点を有するものである。 また,本体部の具体的構成態様についても,本件意匠と被告製品1の意匠は,上記のような差異点が存在する一方で,本体部が略楕円状である点や横断面が略楕円である点は共通しており,最大径部の横幅とポール部の横幅の比についても,ほぼ同様であることが認められる。 その結果,本件意匠と被告製品1の意匠は,これを全体的に観察- 62 -した場合,看者に共通の美感を与えるものといえる。本体部の構成に関する上記差異点から受ける印象は,上記共通点から受ける印象を凌駕するものではない。 (b) 本件 ,これを全体的に観察- 62 -した場合,看者に共通の美感を与えるものといえる。本体部の構成に関する上記差異点から受ける印象は,上記共通点から受ける印象を凌駕するものではない。 (b) 本件意匠は,正面中央付近の上部に円形及び横長の楕円形の造形が施されているのに対し,被告製品1の意匠は,このような造形は施されておらず,正面中央の上部から長手方向に2分の1付近に逆三角形のランプが設けられている。 しかしながら,上記「造形」及び「ランプ」は,本体部全体に比して極めて小さいものであり,利用者の目を惹くような特徴的な構成態様を備えているものでもない。したがって,上記差異が看者の美感に与える影響は,ごく軽微なものにとどまる。 (c) 本件意匠は,本体部の背面上部から長手方向の4分の1付近の部分に下方が円弧状の線があり,上端に栓状の突起物が存在するのに対し,被告製品1の意匠は,本体部の背面上部に円弧状の線はなく,背面中央の上部から長手方向に7分の3付近に栓が存在する。 しかしながら,蒸気モップの使用方法は前記(ア)a(a)のとおりであるから,蒸気モップの通常の使用態様において,看者である需要者は,本体部背面部を注視することはほとんどないといえる。また,上記のタンクや栓が本体部に占める割合も,ごく小さいものである。 したがって,上記差異が美感に与える影響は,ごくわずかなものであるというべきである。 e ポール部について本件意匠は,1本の棒状であるのに対し,被告製品1の意匠は,2本の棒が中央部で接続されている。また,ポール部の長さは,本件意匠が全高の約40%であるのに対し,被告製品1の意匠は全高の約45%である。 - 63 -しかしながら,これらの差異は,本件意匠の全体からみれば,ごくわずかな部位に関する差異にとどまるも 件意匠が全高の約40%であるのに対し,被告製品1の意匠は全高の約45%である。 - 63 -しかしながら,これらの差異は,本件意匠の全体からみれば,ごくわずかな部位に関する差異にとどまるものであり,差異の程度も,ごくわずかなものにすぎない。また,蒸気モップの通常の使用態様において,看者の注意を惹く部分に関するものともいえない。 したがって,上記差異が看者の美感に与える影響は,ごく軽微なものにとどまる。 f 以上のとおり,上記aないしeの差異点は,いずれも,本件意匠と被告製品1の意匠の類否判断に及ぼす影響は強いものではなく,これらがまとまって相乗的な効果を発揮する可能性を考慮したとしても,上記(ア)の共通点によって形成された全体的な共通感を凌ぐものではない。よって,両意匠は,看者に異なった美感を与えるものということはできない。 イ本件意匠と被告製品2の意匠の類否について(ア) 本件意匠と被告製品2の意匠の共通点についてa 持ち手部について本件意匠における持ち手部の本体に係る具体的構成態様(蒸気モップの持ち手部の本体が,基部に対して約45度の角度で斜め上方に延びる直線状部と,この直線状部の上方に形成された略半円状の握り部とから成る。)が,看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分であり,美感に与える影響が大きいものであることは,前記ア(ア)aのとおりであり,被告製品2も,本件意匠と同じ構成を有するものである。 b モップヘッド部について本件意匠におけるモップヘッド部の形状及びその上面に係る具体的構成態様(モップヘッド部の外周形状が,前部及び両側部が緩やかな円弧状で,後部が前部よりも小さい曲率半径の円弧状となっており,上面中央部の隆起部から放射状の隆起が端部にまで延びている。)が,- 64 -看 モップヘッド部の外周形状が,前部及び両側部が緩やかな円弧状で,後部が前部よりも小さい曲率半径の円弧状となっており,上面中央部の隆起部から放射状の隆起が端部にまで延びている。)が,- 64 -看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分であり,美感に与える影響が大きいものであることは,前記ア(ア)aのとおりであり,被告製品2も,本件意匠と同じ構成を有するものである。 c 本体部について本件意匠における本体部の具体的構成態様(略楕円状の逆水滴型の形状であり,その横断面は略楕円形である。また,本体部の最大径部の横幅は,ポール部の横幅の約7倍であり,本体部の長さ(高さ)は,全高の約20%である。)が,看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分であることは,前記ア(ア)cのとおりである。 本件意匠と被告製品2の意匠における本体部の形状は,前者が逆水滴型であるのに対し,後者は瓜型であるという差異点を有するものの,両者は,いずれも,略楕円状であり,その横断面は略楕円形であって,本体部の最大径部の横幅はポール部の横幅の約7倍である点において共通し,本体部の長さの全高に対する比についても,ほぼ同様である。 d このように,本件意匠と被告製品2の意匠は,需要者の視覚を通じて注意を惹きやすい部分において多くの共通点を有するものであるから,両意匠を全体的に観察した場合,両意匠が基本的構成態様を共通にするなどのその他の共通点(前記(4)イ(ア)参照)によってもたらされる共通感とあいまって,看者に共通の美感を与えるものであるといえ,被告製品2の意匠は本件意匠に類似するものと認められる。なお,本件意匠の構成態様と被告製品1の意匠の構成態様との間には,前記(4)イ(イ)のとおり差異点も存在するが,これらの差異点が美感に与える影響については,後記のとおり,その差異 ものと認められる。なお,本件意匠の構成態様と被告製品1の意匠の構成態様との間には,前記(4)イ(イ)のとおり差異点も存在するが,これらの差異点が美感に与える影響については,後記のとおり,その差異から受ける印象が上記共通点から受ける印象を凌駕するものではない。 (イ) 本件意匠と被告製品2の意匠の差異点a 持ち手部について- 65 -持ち手部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約20%であるのに対し,被告製品2の意匠は全高の約18%である。 しかしながら,上記持ち手部の長さの差が看者の美感に与える影響は軽微なものにとどまることについては,前記ア(イ)b(b)に説示したとおりである。 b モップヘッド部について本件意匠は,隆起の総数が約16本であるのに対し,被告製品2の意匠は,隆起の総数が20本である。また,被告製品2の意匠は,モップヘッド部の裏面中央部の井桁状突起の前面側に4つ及び背面側に1つの板状の突起が存在し,井桁状突起の両側にハの字状の突起が存在するのに対し,本件意匠には,このような突起は存在しない。 しかしながら,このような差異が看者の美感に与える影響はごく軽微なものというべきであることについては,前記ア(イ)cのとおりである。 c 本体部について(a) 本件意匠は,本体部の形状が逆水滴型であり,最大径部は本体部の長手方向の下から4分の3付近であるのに対し,被告製品2の意匠は,本体の形状が瓜型であり,最大径部は本体の長手方向の下から2分の1付近にある。また,本件意匠は,本体部の上部に段差を付けていないのに対し,被告製品2の意匠は,本体部の上部が段差を付けて円錐台状に絞られ,円錐台状部の表面に円形の電源スイッチ部が設けられている。 そして,被告は,このような差異が存在 を付けていないのに対し,被告製品2の意匠は,本体部の上部が段差を付けて円錐台状に絞られ,円錐台状部の表面に円形の電源スイッチ部が設けられている。 そして,被告は,このような差異が存在することにより,被告製品2の意匠が与える美感は本件意匠と全く異なると主張する。 確かに,本体部の具体的構成態様が看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分のひとつであることについては,前記(ア)cのとおり- 66 -であり,このような本体部の形状について上記のような差異点が存在することは,看者の美感に与える影響が少なくないものといえる。 他方,本件意匠では,持ち手部の本体及びモップヘッド部の上面の具体的構成態様もまた,看者の注意を惹きやすい部分であり,この点について,被告製品2の意匠は,本件意匠と共通点を有する。 また,本体部の具体的構成態様についても,本件意匠と被告製品2の意匠は,上記のような差異点が存在する一方で,本体部が略楕円状である点,横断面が略楕円である点,最大径部の横幅とポール部の横幅の比について共通し,本体部の長さ(高さ)の全高に対する比も,ほぼ同様であることが認められる。 これに加えて,①被告製品2の意匠において,本体部の円錐台状部が本体部に占める割合は限定的なものであること,②円錐台上部の表面に設けられた円形の電源スイッチ部が本体部に占める割合は,極めて小さいものである上,同スイッチの形状は,ありきたりなものであり,特徴的な形状を有するものではないこと,などを考慮すると,本件意匠と被告製品2の意匠は,これを全体的に観察した場合,看者に共通の美感を与えるものといえる。本体部の構成に関する上記差異点から受ける印象は,上記共通点から受ける印象を凌駕するものではないというべきである。 (b) 本件 を全体的に観察した場合,看者に共通の美感を与えるものといえる。本体部の構成に関する上記差異点から受ける印象は,上記共通点から受ける印象を凌駕するものではないというべきである。 (b) 本件意匠は,正面中央付近の上部に円形の造形が施されているのに対し,被告製品2の意匠は,正面中央付近の上部に逆三角形のランプが設置されている。 しかしながら,上記造形ないしランプは,本件意匠全体又は本体部全体からみれば,ごくわずかといえる小さな部分にすぎない上,造形ないしランプ自体の形状も,特段の特徴はないものであることからすると,上記差異が看者の美感に与える影響はごく軽微なもの- 67 -といえる。 (c) 本件意匠は,背面の上部から本体部の長手方向の4分の1付近の部分に下方が円弧状の線があり,上端に栓状の突起物が存在するのに対し,被告製品2の意匠は,本体部の背面上部に楕円形の線があり,その上端に栓状の突起物が突設されている。 しかしながら,蒸気モップの通常の使用態様において,看者である需要者は,本体部背面部を注視することはほとんどないものであり,上記の線や突起物等が本体部に占める割合も,ごく小さいものであることからすると,上記差異が美感に与える影響は,ごく軽微なものにとどまるといえる。 (d) 本体部の長さ(高さ)は,本件意匠が全体の約20%であるのに対し,被告製品2の意匠は全高の約24%である。 しかしながら,上記本体部の長さの差は,本件意匠に係る蒸気モップ全体からみると,約4%程度のごく小さいものにすぎない上,本体部自体の長さを比較した場合でも,せいぜい2割程度の違いにとどまるものであるから,やはり,看者の美感に与える影響は軽微なものにとどまるというべきである。 d ポール部について本件意匠は, 本体部自体の長さを比較した場合でも,せいぜい2割程度の違いにとどまるものであるから,やはり,看者の美感に与える影響は軽微なものにとどまるというべきである。 d ポール部について本件意匠は,1本の棒状であるのに対し,被告製品2の意匠は,2本の棒が中央部分で接続されている。 しかしながら,これらの差異が看者の美感に与える影響がごく軽微なものにとどまることについては,前記ア(イ)eに説示したとおりである。 e 連結部について連結部の下端は,本件意匠では本体部上部の前面部分と結合するのに対し,被告製品2の意匠は本体部上部の中央部分と結合する。また,- 68 -連結部の長さ(高さ)は,本件意匠が全高の約15%であるのに対し,被告製品2の意匠は全高の約13%である。 しかしながら,上記結合部位の差異については,蒸気モップの通常の使用態様に照らすと,看者の注意を特段惹くことのない部位に関するものであるといえる。また,連結部の長さ(高さ)の差異も,本件意匠に係る蒸気モップ全体からみると,約2%程度のごく小さいものにすぎない上,連結部部自体の長さを比較した場合でも,せいぜい1割程度の違いにとどまるものであるから,やはり,看者の美感に与える影響は軽微なものにとどまる。 f 以上のとおり,上記aないしeの差異点が本件意匠と被告製品2の意匠の類否判断に及ぼす影響は,上記(ア)の共通点によって形成された全体的な共通感を凌ぐものではなく,両意匠は,看者に異なった美感を与えるものということはできない。 (6) 差止請求等の可否以上を前提に,被告に対する差止請求及び廃棄請求の可否について検討する。 ア差止請求について前記第2の1(争いのない事実等)(3)のとおり,被告は,インターネット上のショッピングサイトに被告製品を掲載し,被 告に対する差止請求及び廃棄請求の可否について検討する。 ア差止請求について前記第2の1(争いのない事実等)(3)のとおり,被告は,インターネット上のショッピングサイトに被告製品を掲載し,被告製品を輸入して,通信販売の方法で販売していたものであり,これらの行為は,本件意匠権を侵害するものであると認められる。 また,被告は,原告から平成21年4月に本件訴えが提起された後も,少なくとも,同年7月ころまでは,インターネット上のショッピングサイトに被告製品2を掲載して,同製品の販売の申出をし(甲13),同年8月にも被告製品2を輸入していたことが認められる(乙5の7,乙6の7)。 さらに,被告は,本件訴訟においても,本件意匠と被告製品の意匠は類似- 69 -しないなどと主張して,意匠権侵害の有無を争っている。 そうすると,本件訴訟において,被告は,平成21年6月22日以後は被告製品の販売をしていないと主張していることなどの事情を考慮したとしても,被告において,今後も,被告製品を輸入し,譲渡し,譲渡のための展示をし,又はインターネット上に掲載をするおそれがあると認められる。 したがって,原告ユーロプロ社は,被告に対し,意匠法37条1項に基づき,被告製品の輸入,譲渡,譲渡のための展示又はインターネット上への掲載の差止めを求めることができる。 一方,被告は,被告製品を製造したものではなく,被告において今後被告製品を製造するおそれについても,これを認めるに足りる証拠はない。 よって,原告らの請求のうち,被告に対して被告製品の製造の差止めを求める部分は,理由がない。 イ廃棄請求について被告は,被告が輸入した被告製品はすべて販売済みであり,販売後に顧客から不良品であるとして返品を受けた被告製品についても,すべて廃棄済みであるから,被告 分は,理由がない。 イ廃棄請求について被告は,被告が輸入した被告製品はすべて販売済みであり,販売後に顧客から不良品であるとして返品を受けた被告製品についても,すべて廃棄済みであるから,被告において現在被告製品を所持していないと主張する。 しかしながら,被告の上記主張については,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はなく,同主張を採用することはできない。 したがって,原告ユーロプロ社は,被告に対し,意匠法37条2項に基づき,被告製品の廃棄を求めることができる。 2 争点2(原告らの損害)について(1) 原告ユーロプロ社の損害についてア意匠法39条3項の損害(ア) 被告による被告製品の売上高が5733万3100円であることについては,当事者間に争いがない。 - 70 -(イ) 証拠(乙33)によれば,社団法人発明協会の発行する「実施料率[第5版]」には,「民生用電気機械器具製造技術に係る製品」(電気掃除機などが該当するものとされている。)の平均実施料率について,平成4年度ないし平成10年度はイニシャルありが2.8%,イニシャルなしが4.6%であると記載されていることが認められる。 (ウ) 被告製品は,蒸気モップであり,上記「民生用電気機械器具」に属するものであるといえる。これに加えて,①一般に,蒸気モップ等の民生用電気機械器具の需要者は,その意匠に対してもある程度の関心を有していることがうかがえるものであり,意匠による誘引力も一定程度存在すること,②本件意匠は,同意匠に係る物品(蒸気モップ)の構成全体に関するものであること,②本件意匠は,前記1のとおり,看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分について,公知意匠にはない特徴的な構成態様を有するものであること,などの事情を総合的に考慮すると,本件意匠の実施料率は,被 と,②本件意匠は,前記1のとおり,看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分について,公知意匠にはない特徴的な構成態様を有するものであること,などの事情を総合的に考慮すると,本件意匠の実施料率は,被告製品の売上高の5%とするのが相当である。 (エ) したがって,上記(ア)の売上高の5%である286万6655円が,意匠法39条3項の損害推定規定により推定される実施料相当額となる。 イ弁護士費用原告ユーロプロ社は,弁護士を選任して本件訴訟を追行しているものであり,本件事案の内容,認容額及び本件訴訟の経過等を総合すると,上記意匠権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は,28万円と認められる。 ウ以上のとおり,原告ユーロプロ社は,被告に対し,合計314万6655円の損害賠償請求権を有するものと認められる。 (2) 原告オークローン社の損害についてア独占的通常実施権者に対する意匠法39条2項の適用の可否- 71 -(ア) 原告オークローン社が,本件意匠権の独占的通常実施権の設定を受けていることは,前記第2の1(争いのない事実等)(1)のとおりである。 また,証拠(甲1の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,原告オークローン社は,遅くとも平成20年以後,被告製品と市場において競合する商品(蒸気モップ)である原告製品を販売していることが認められる。 (イ) 意匠法39条2項は,意匠権者又は専用実施権者が故意又は過失により意匠権等を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において,その者がその侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額は意匠権者等が受けた損害の額と推定する旨定めるものであり,これによって意匠権者又は専用実施権者による損害額の立証を容易にし,これらの者を保護する趣旨に出た より利益を受けているときは,その利益の額は意匠権者等が受けた損害の額と推定する旨定めるものであり,これによって意匠権者又は専用実施権者による損害額の立証を容易にし,これらの者を保護する趣旨に出たものである。 独占的通常実施権者は,当該意匠権を独占的に実施して市場から利益を上げることができる点において専用実施権者と実質的に異なるところはなく,意匠法39条2項の上記趣旨は,独占的通常実施権者にも妥当するというべきであるから,独占的通常実施権者が侵害者の実施行為によって受けた損害についても,同条項を類推適用するのが相当である。 イ意匠法39条2項の損害について(ア) 被告製品の売上高被告が被告製品6295台を販売したこと,及びその売上高が5733万3100円であることについては,当事者間に争いがない。 また,証拠(乙17,31)及び弁論の全趣旨によれば,上記6295台の内訳は,被告製品1につき195台及び被告製品2につき6100台であり,被告製品1については平成20年10月25日から,被告製品2については同年12月3日から,それぞれ,被告から顧客に対する発送を開始し,上記6295台に関する最終の被告の受注(顧客からの受注)は平成21年6月22日であることが認められる。 - 72 -(イ) 仕入金額a 証拠(乙5の1~7,乙11の1~4,乙21の1~16,乙27,35)及び弁論の全趣旨によれば,① 被告は,天和社から,別紙計算書の「第2.原価」記載のとおり,被告製品1を単価4900円で200個購入し,平成20年10月25日に同製品の送付を受けたこと,② 被告は,天和社から,別紙計算書の「第2.原価」記載のとおり,被告製品2を単価4900円で3504個及び単価5200円で3000個購入し,これらの製品について,平成20年1 の送付を受けたこと,② 被告は,天和社から,別紙計算書の「第2.原価」記載のとおり,被告製品2を単価4900円で3504個及び単価5200円で3000個購入し,これらの製品について,平成20年12月3日に2004個,同月26日に1500個,平成21年3月6日に1500個及び同年5月12日に1500個の送付を受けたこと,③ 天和社は,被告製品1についてはYIWU社から購入し,被告製品2についてはシンセン社から購入したものであり,両製品は,YIWU社ないしシンセン社から被告へ直送されたこと,④ 被告による上記①及び②の被告製品の仕入金額は,別紙計算書の「第2.原価」記載のとおり,合計3374万9600円であること,⑤ 天和社は,被告に対し,上記①及び②の被告製品の代金を請求し(乙11の1~4),被告は,天和社に対し,天和社の銀行預金口座に送金する方法によって上記代金を支払ったこと(乙21の1~16),が認められる。 b これに対し,原告らは,被告はYIWU社又はシンセン社から被告製品を直接購入したものであり,天和社から購入したものではないと主張し,その根拠として,① 被告が被告製品を輸入した際のインボイス(本件インボイス)に,天和社の記載は見当たらないこと,② 天和社が被告に送付した被告製品の代金に係る請求書(本件商品代金請求書)記載の金額と,被告が天和社に送金した金額(本件商品代金送金記録記載の金額)とが符号していないこと,などを挙げる。 しかしながら,被告製品は,上記認定のとおり,天和社がYIWU- 73 -社ないしシンセン社から購入し,YIWU社ないしシンセン社から被告に対して直送されたものであるから,商品の送り状であるインボイスに天和社の名義が記載されていないことは,特段不自然であるとはいえない。また,上記②の点につ 購入し,YIWU社ないしシンセン社から被告に対して直送されたものであるから,商品の送り状であるインボイスに天和社の名義が記載されていないことは,特段不自然であるとはいえない。また,上記②の点について,被告は,同社は天和社に対して毎月の請求に応じて仕入代金を支払うことを基本としているが,資金調達の都合等で天和社に送金できない月や,支払が一部払いとなる月も存在したものであると主張しているところ,前掲aの各証拠に照らし,被告の上記主張に格別不自然,不合理な点があるとは認められない。 したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 c 上記aの仕入金額は,被告製品合計6704台の仕入金額であり,この中には,被告の主張する前記「不良交換用の被告製品2(被告負担分409台)」の仕入金額(212万6800円)も含まれている。 この点について,被告は,被告製品はスチームに関する初期不良が多く,被告はこれらの初期不良分について天和社を通じてシンセン社に対して正常な商品との交換を求めたが,シンセン社が交換に応じたのは625台のみであり(前記「不良交換用の被告製品2(シンセン社負担分625台)」),残る409台については,被告が販売用として仕入れた被告製品(前記「不良交換用の被告製品2(被告負担分409台)」)を交換品として利用するしかなかったものであるとして,これら409台の仕入価格(合計212万6800円)についても,その売上高はゼロであるものの,被告製品の販売による被告の「利益」(意匠法39条2項)を算定するに当たっては,売上げに貢献したものであるとして上記売上高から控除するのが相当である旨主張する。また,証拠(乙5の3~7,乙11の2~4,乙27)によれば,被告製品2について,被告がシンセン社から平成20年12月3日に- 74 のであるとして上記売上高から控除するのが相当である旨主張する。また,証拠(乙5の3~7,乙11の2~4,乙27)によれば,被告製品2について,被告がシンセン社から平成20年12月3日に- 74 -送付を受けた80台,同月26日に送付を受けた1620台のうち120台,平成21年3月6日に送付を受けた1600台のうち100台,同年5月12日に送付を受けた1625台のうち125台,及び同年8月26日に送付を受けた200台(合計625台)については,本件商品代金請求書に「スチームモップDX003交換用」ないし「スチームモップDX003交換品」と記載され,同請求書の「単価」の欄に「0円」と記載されていることが認められる。 しかしながら,被告製品に初期不良があったことや,初期不良を理由に被告が顧客から交換を求められたことについては,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はない。また,仮に,上記625台(被告の主張する「不良交換用の被告製品2(シンセン社負担分625台)」)について,被告が天和社から交換用として無償で送付を受けた事実が認められるとしても,そのことをもって,被告が主張する「不良交換用の被告製品2(被告負担分409台)」について,被告が初期不良の被告製品との交換に充てた事実まで認めることはできないというべきである。 したがって,被告製品の販売による被告の利益(意匠法39条2項)を算定するに当たって,上記409台の仕入金額を控除することは認められず,被告製品の売上高から控除すべき仕入金額は,3162万2800円(33,749,600-2,126,800=31,622,800 円)とするのが相当である。 (ウ) 輸入費用証拠(乙6の1~7)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,YIWU社及びシンセン社から被告製品の直送を受け -2,126,800=31,622,800 円)とするのが相当である。 (ウ) 輸入費用証拠(乙6の1~7)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,YIWU社及びシンセン社から被告製品の直送を受ける際,通関費用等として,別紙計算書の「第2.原価」記載の「輸入費用」(合計124万3100円)を支払ったことが認められる。ただし,上記輸入費用には,被告- 75 -が主張する「不良交換用の被告製品2(シンセン社負担分625台)」及び「不良交換用の被告製品2(被告負担分409台)」の輸入費用も含まれるところ,これらの費用を売上高から控除するべきでないことについては,上記(イ)で述べたところと同じである。 また,被告が被告製品と併せて他の製品(モップパッド,化粧箱)を輸入したことにより,少なくとも輸入費用が3200円増加したことについては,当事者間に争いがない。 したがって,上記輸入費用のうち,別紙計算書の「第2.原価」の「仕入日」が「H20.12.20」及び「H21.8.26」の輸入費用(52,770+102,734=155,504 円)については,被告製品の売上高から控除すべき輸入費用に当たらないことが明らかである。 また,その他の仕入日の輸入費用から上記3200円を控除したもの(1,243,100-155,504-3,200=1,084,396 円)については,被告の主張する不良交換用の被告製品とその他の被告製品が同時に輸入されているため,上記輸入費用を,不良交換分の被告製品の台数(409+120+100+125=754 台)と原告製品の販売台数(6295 台)とで按分した金額(1,084,396×6,295÷(6,295+754)=968,403 円)とするのが相当である。 (エ) 業務委託料a 証拠(乙7,乙14の1~9,乙2 台数(6295 台)とで按分した金額(1,084,396×6,295÷(6,295+754)=968,403 円)とするのが相当である。 (エ) 業務委託料a 証拠(乙7,乙14の1~9,乙20の1~3,乙22の1~15,乙30~32,35)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) 被告は,天和社に対し,平成20年4月23日,①インターネットショップホームページのSEO対策等の運営全般及び宣伝等に係る業務,②顧客管理,入金確認,発送手配業務,③カスタマーサービス業務,④貿易コンサルタント業務を委託し,天和社は,これを受託した(本件業務委託契約)。 - 76 -上記①は,ホームページ上の店舗における被告製品の情報の更新,レイアウト変更,リニューアル等の管理をすること,ホームページに電子メールで寄せられた被告製品に対する質問等に対応すること等の業務を指す。また,SEO対策とは,検索エンジン最適化対策のことであり,被告サイトのハイパーリンクがグーグルやヤフー等の検索サイトにおいてキーワード検索結果ページの上位に掲載されるよう工夫することをいう。 上記②は,被告製品の注文を受けた顧客の情報をデータベース化すること(顧客管理),被告から受領する銀行口座の入金一覧表を元に入金状況を確認すること(入金確認),入金確認できた顧客の住所等の情報を専用ソフトを利用して入力し,商品発送を担当する被告宛にデータを送信すること(発送手配)などの業務である。 上記③は,顧客からの電話質問の対応,故障及び性能等のクレームに対する対応,一般的な問合せへの対応等の業務である。 上記④は,被告が希望する商品の製造先を探して製造を依頼し,日本に輸出する業務をいう。 (b) 本件業務委託契約の期間は,平成20年5月1日から同年11月 的な問合せへの対応等の業務である。 上記④は,被告が希望する商品の製造先を探して製造を依頼し,日本に輸出する業務をいう。 (b) 本件業務委託契約の期間は,平成20年5月1日から同年11月30日までと定められていたが(本件業務委託契約書・第2条),同契約は,上記期間の満了後も,更新を繰り返した。 (c) 本件業務委託契約の委託料は,売上額の30%と定められている(本件業務委託契約書・第3条)。 天和社は,被告に対し,上記被告製品の販売に係る業務委託料を請求し(乙14の1~9),被告は,天和社に対し,天和社の銀行預金口座に送金する方法によって,被告製品の販売に対する業務委託料として合計1719万9930円(57,333,100 円×0.3)を支払った(乙22の1~15)。 - 77 -b これに対し,原告らは,天和社と被告との間で本件業務委託契約が締結された事実を否認し,その根拠として,①本件業務委託契約書記載の契約締結日が天和社の会社設立日より前になっていること,②本件業務委託契約書の天和社の署名が,外国会社の通常の署名方式に則っていないこと,③本件業務委託契約の内容の不自然性,④天和社は本件業務委託契約に基づく業務を行っていないこと,⑤天和社の請求書(本件業務委託料請求書)記載の業務委託料の金額が本件業務委託契約書記載の業務委託料の金額と合致しないことこと,⑥被告から天和社に対する業務委託料の支払額及び支払日が,本件業務委託契約で定められた業務委託料の金額及び支払日と一致しないこと,などの事実を挙げる。 しかしながら,本件では,前掲aの各証拠に照らし,被告と天和社との間に本件業務委託契約が締結されたことが認められるものであり,この事実は,被告から天和社に対する送金記録(乙22の1~15)や,被告の決算報告書(乙35)の 前掲aの各証拠に照らし,被告と天和社との間に本件業務委託契約が締結されたことが認められるものであり,この事実は,被告から天和社に対する送金記録(乙22の1~15)や,被告の決算報告書(乙35)の記載(「外注費」の「未払金」として,天和社に対する買掛金が記載されている。)からも裏付けられている。 原告らの主張する上記事実は,上記各証拠の存在のほか,① 設立中の会社であっても,契約を締結することは可能であり,その効果は設立後の会社に承継されること,② 外国会社の署名方式について,代表者自身のサインが義務づけられているものではないこと,③ 被告は,被告の売上げには被告が直接小売店等に販売するもの(卸販売分)も含まれているところ,卸販売分については,天和社に対して業務委託料を支払うことはないと主張しており,同主張に格別不合理な点は認められないこと,などの事情を考慮すると,いずれも上記認定を左右するものではない。 c したがって,被告製品の販売による被告の利益を算定するに当たって,被告製品の上記売上高から上記業務委託料を控除するのが相当で- 78 -ある。 (オ) クリック課金証拠(乙8,15,乙23の3,5,6,8,9,11,13,乙24の1~7,乙25の1~4,乙26,)及び弁論の全趣旨によれば,① 被告は,平成20年11月12日から平成21年5月末日までの間,ヤフージャパンで「スチームモップ」と検索した場合に,検索結果が表示されるページの上部に被告店舗へのリンクが現れる,リスティング広告を設置したこと,② この広告の料金は,上記リンクのクリック数に応じて発生し(クリック課金),被告は,上記クリック課金の代金として,合計202万0480円を支払ったこと,が認められる。 他方,被告は,上記期間中に,インターネット上のショッ リンクのクリック数に応じて発生し(クリック課金),被告は,上記クリック課金の代金として,合計202万0480円を支払ったこと,が認められる。 他方,被告は,上記期間中に,インターネット上のショッピングサイトにおいて原告製品(「シャーク・スチームモップ」)も販売していたものであり(争いのない事実),被告による上記期間中の原告製品の販売台数は,少なくとも50台程度であったことが認められる(弁論の全趣旨)。 したがって,上記クリック課金の費用には,原告製品の販売用の費用も含まれているというべきであるから,被告製品の売上高から控除すべきクリック課金は,上記金員を被告製品の販売台数(6295台)と原告製品の販売台数(50台)とで按分した金額(2,020,480×6,295÷(6,295+50)=2,004,558 円)とするのが相当である。 (カ) 新聞広告料証拠(乙9の1~5,乙16の1~5,乙17)及び弁論の全趣旨によれば,① 被告は,平成20年11月から平成21年3月までの間に,神戸新聞,ウーマンライフ,日経インテレッセ,チャオ産経,読売ファミリー及び朝日新聞等の新聞ないし雑誌に,被告製品の広告を掲載したこと,② 被告は,インターネットを通じた販売以外に,新聞等の情報- 79 -誌に広告を掲載し,電話で受注するという方法での通信販売も行っていたものであり,平成20年11月から平成21年3月までの間に,上記①の広告が掲載された新聞等が配布された地域に在住する複数の者から,上記広告等に基づく被告製品の注文を受けていること,③ 上記①の広告費の合計額は,少なくとも,被告の主張する金額(95万8000円)を下らないことが認められ,同認定を左右するに足りる証拠はない。 したがって,上記広告費は,被告製品の売上げのために必要な費用と 告費の合計額は,少なくとも,被告の主張する金額(95万8000円)を下らないことが認められ,同認定を左右するに足りる証拠はない。 したがって,上記広告費は,被告製品の売上げのために必要な費用として,上記売上高から控除するのが相当である。 (キ) 倉庫料証拠(乙10の1~7,乙17)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,輸入した被告製品の一部について,これを顧客に発送するまでの間,被告が賃借する倉庫に一時保管していたものであり,そのための費用(入庫料,保管料,出庫料,コンテナ搬出料,出番料)として合計30万6318円(消費税込み)を支払ったことが認められ,同認定を左右するに足りる証拠はない。 これに対し,原告は,上記倉庫料には,被告の主張する不良交換分の被告製品に係る料金も含まれており,これら不良交換分の被告製品に係る費用を売上高から控除すべきではないと主張する。 しかしながら,被告が輸入した被告製品は,そのすべてが一時的に倉庫に保管されていたものではなく,倉庫に保管される被告製品は輸入された被告製品の一部であったことについては,上記認定のとおりである。 したがって,倉庫に保管されていた被告製品の中に被告の主張する不良交換分の被告製品が含まれていたか否かについては,本件証拠上明らかでないといわざるを得ない。 よって,上記倉庫料は,被告製品の売上げのために必要な費用として,- 80 -上記売上高から控除するのが相当である。 (ク) 不良返金被告は,被告製品には初期不良が多かったため,被告製品を被告に返品した上で代金の返還を求める顧客に対しては返金に応じていたものであり,別紙返金一覧表記載のとおり,その台数は合計64台であって,被告が上記返金に要した費用は少なくとも58万4000円であると主張する。 そこで検討するに, 顧客に対しては返金に応じていたものであり,別紙返金一覧表記載のとおり,その台数は合計64台であって,被告が上記返金に要した費用は少なくとも58万4000円であると主張する。 そこで検討するに,証拠(乙36,乙37の1~9,乙38,乙39の1~7)及び弁論の全趣旨によれば,別紙返金一覧表記載の番号1ないし3,同6ないし21,同23ないし26,同28ないし42,同45,同50,同53及び同57ないし63の返金(合計48口)については,これを裏付けるに足りる客観的な証拠(金融機関の取引履歴等)が存在するので,被告の主張する返金の事実を認めることができる。一方,同表記載のその余の番号の返金(合計16口。合計14万5100円)については,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はなく,被告の主張を採用することはできない。 したがって,被告が上記返金に要した費用として,売上高から43万8900円を差し引くのが相当である。 (ケ) ロイヤリティ等証拠(乙12の1~9,乙13,乙23の1,2,4,6,7,9,10,12,14,乙28の1~9)及び弁論の全趣旨によれば,① 被告製品の売上高のうち,ヤフー店における売上げは,合計1348万3800円であること,② 販売者は,ヤフー店で商品を販売した場合,ヤフー店に対し,少なくとも売上高の2.1%相当額のロイヤリティを支払う必要があるため,上記売上高に対するロイヤリティの額は,少なくとも28万3160円であること,③ 販売者は,ヤフー店における- 81 -商品の販売の際にカード決済をした場合,ヤフー店に対し,カード決済金額(送料を含む総額)に対して3.6%の手数料を支払う必要があるところ,上記売上高のうちカード決済した金額は800万9260円であるから,カード手数料は28万8333円であること,が ,カード決済金額(送料を含む総額)に対して3.6%の手数料を支払う必要があるところ,上記売上高のうちカード決済した金額は800万9260円であるから,カード手数料は28万8333円であること,が認められる。 したがって,ヤフー店における被告製品の販売により発生するロイヤリティ及びカード手数料(ロイヤリティ等)は,合計57万1493円であると認められる。 (コ) 小括意匠権を侵害した者が「その侵害の行為により」受けた「利益」(意匠法39条2項)とは,いわゆる限界利益であると解される。 被告は,被告製品の販売により,別紙損害額算定表のとおり,上記(ア)の売上高から上記(イ)ないし(ケ)の「仕入金額」等を差し引いた,合計326万2698円の利益を受けたと認められる。 ウ弁護士費用原告オークローン社は,弁護士を選任して本件訴訟を追行しているものであり,本件事案の内容,認容額及び本件訴訟の経過等を総合すると,上記独占的通常実施権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は,32万円と認められる。 エしたがって,被告は,原告オークローン社に対し,上記イ及びウの合計額である358万2698円及びこれに対する不法行為の後である平成21年6月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。 (3) 原告らの損害賠償請求権相互の関係ア原告らは,それぞれの権利に基づいて被告に対して損害賠償を請求しているが,その内容は,いずれも,被告による意匠権侵害行為によって受けた損害についてのものである。 - 82 -そして,被告が,上記損害に相当する額について二重に支払を行う理由はないから,原告らの損害賠償請求権は,重複する限度において,不真正連帯債権となる。 イ原告ユーロプロ社の請 る。 - 82 -そして,被告が,上記損害に相当する額について二重に支払を行う理由はないから,原告らの損害賠償請求権は,重複する限度において,不真正連帯債権となる。 イ原告ユーロプロ社の請求は,上記3(1)のとおり,314万6655円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。そして,原告ユーロプロ社の損害賠償請求権は,上記のとおり,原告オークローン社の損害賠償請求権のうち314万6655円及びこれに対する遅延損害金と不真正連帯債権の関係に立つ。 ウ原告オークローン社の請求は,上記3(2)のとおり,358万2698円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。もっとも,原告オークローン社の損害賠償請求権のうち,314万6655円及びこれに対する遅延損害金については,原告ユーロプロ社の損害賠償請求権と不真正連帯債権の関係に立つ。 3 よって,原告らの請求は主文第1項ないし第4項の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求はいずれもないからこれを棄却し,仮執行宣言については,主文第1 項及び第2項については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官山門優 - 83 - 裁判官志賀勝 - 84 -
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