令和2(ワ)7409 損害賠償請求事件 ほか

裁判年月日・裁判所
令和6年2月21日 東京地方裁判所
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判決文本文35,699 文字)

- 1 - 令和6年2月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第7409号損害賠償請求事件令和2年(ワ)第29307号地位確認等請求反訴事件令和3年(ワ)第11395号地位確認等請求反訴事件口頭弁論終結日令和5年11月22日 判決 主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して1億5814万1298円及びこれに対する令和4年7月13日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、被告らの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 本訴請求主文1項と同旨 2 反訴請求⑴ 被告Aの請求ア被告Aが、原告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認 する。 イ原告は、被告Aに対し、120万8690円並びにうち60万4345円に対する令和2年2月24日から支払済みまで及びうち60万4345円に対する同年3月24日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 ウ原告は、被告Aに対し、令和2年4月以降本判決確定の日まで、毎月23 - 2 - 日限り、60万4345円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告Bの請求ア被告Bが、原告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 イ原告は、被告Bに対し、426万7154円並びにうち52万8314円に対する令和2年3月26日から支払済みまで年5%の割合による金員、うち53万4120円 る地位にあることを確認する。 イ原告は、被告Bに対し、426万7154円並びにうち52万8314円に対する令和2年3月26日から支払済みまで年5%の割合による金員、うち53万4120円に対する令和2年4月25日から支払済みまで年3%の割合による金員、うち53万4120円に対する令和2年5月26日から支払済みまで年3%の割合による金員、うち53万4120円に対する令和 2年6月26日から支払済みまで年3%の割合による金員、うち53万4120円に対する令和2年7月23日から支払済みまで年3%の割合による金員、うち53万4120円に対する令和2年8月26日から支払済みまで年3%の割合による金員、うち53万4120円に対する令和2年9月26日から支払済みまで年3%の割合による金員及びうち53万4120円に 対する令和2年10月24日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 ウ原告は、被告Bに対し、98万6240円及びこれに対する令和2年6月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 エ原告は、被告Bに対し、令和2年11月以降本判決確定の日まで、毎月2 5日限り53万4120円並びに毎年6月20日及び12月10日限り各98万6240円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 ⑴ 本訴 - 3 - 原告が、原告の事務局長であった被告A及び事務局次長であった被告Bにおいて、平成22年4月から令和元年12月までの間(以下「本件期間」という。)、正規の給与及び賞与(以下「給与等」という。)の額を上回る金員を不正に受給していたとして、被告らに対し、共同不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、 12月までの間(以下「本件期間」という。)、正規の給与及び賞与(以下「給与等」という。)の額を上回る金員を不正に受給していたとして、被告らに対し、共同不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、連帯して、1億5814万1298円及びこれに対する令和4年7月 13日(不法行為の後の日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下「改正前民法」という。)所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 ⑵ 反訴ア被告Aの請求 被告Aが、原告による懲戒解雇が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるほか、雇用契約に基づく賃金請求の一部請求として、令和2年2月から本判決確定の日に至るまで、毎月23日限り、60万4345円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで改正前民法所定の年5%の割合による遅延損害金又は民法所定の年3%の 割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 イ被告Bの請求被告Bが、原告による懲戒解雇が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるほか、雇用契約に基づく賃金請求として、52万8314円(令和2年3月分の賃金の一部請求)及びこれに対す る令和2年3月26日から支払済みまで改正前民法所定の年5%の割合による遅延損害金、同年4月から本判決確定の日に至るまで、毎月23日限り、53万4120円(令和2年4月分以降の賃金)及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金、同年6月から本判決確定の日に至るまで、毎年6月20日及び12月10日限り、 98万6240円(令和2年6月分以降の賞与)及びこれに対する各支払期 - 4 - 日の翌日から 延損害金、同年6月から本判決確定の日に至るまで、毎年6月20日及び12月10日限り、 98万6240円(令和2年6月分以降の賞与)及びこれに対する各支払期 - 4 - 日の翌日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下、特に明示しない限り、書証の掲記は枝番号を含む。) ⑴ 当事者等ア原告は、吹奏楽及び管・打楽器による音楽の普及・向上を図り、わが国の芸術文化の発展に寄与することを目的として、全日本吹奏楽コンクール等の開催、楽譜の刊行、録音・録画の原盤の制作等の事業を行う一般社団法人である。 イ原告の代表理事は、平成18年10月から平成25年5月まではC(以下「C前理事長」という。)が、同月から令和3年5月まではD(以下「D理事長」という。)が務めていた。C前理事長は同年▲月▲日に、D理事長は同年▲月▲日に死亡した。(弁論の全趣旨)ウ被告Aは、平成7年2月15日、事務局の正職員として原告に就職し、平 成18年4月に事務局次長に就任し、平成22年4月1日に、E事務局長(以下「E事務局長」という。)の後任として、事務局長に就任した。 エ被告Bは、平成8年4月1日、事務局の正職員として原告に就職し、平成22年4月1日に事務局次長に就任した。 オ原告の定款上、監事は2名以内とされており、監事候補者は、理事会の推 薦する者が1名、理事長が委嘱する会計に関する専門家が1名とされていた。 本件当時、監事は2名選任されていた。(甲72、丁12)カ元相被告F(以下「元相被告F」又は「F監事」という。)は、会計に関する専門家として、平成7年 する会計に関する専門家が1名とされていた。 本件当時、監事は2名選任されていた。(甲72、丁12)カ元相被告F(以下「元相被告F」又は「F監事」という。)は、会計に関する専門家として、平成7年5月に原告の監事に就任し、令和2年1月27日に辞任した。また、F監事は、平成11年7月に原告の顧問税理士となり、 令和2年3月25日付け通知書(丁17)により、原告から令和元年度限り - 5 - で顧問契約を解約する旨通知された。(弁論の全趣旨)⑵ 事務局長及び事務局次長の職務事務局長の職務は、事務局を代表し原告の事務を総括するとともに職員を指揮監督することであり、事務局次長の職務は、事務局長を補佐し事務局長に事故あるときはその職務を代行し日常の事務に従事することである。(甲3) ⑶ 給与等の決定方法、支払日等ア決定方法事務局長及び事務局次長を含む原告事務局職員(以下、単に「職員」という。)の給与等については、事務局職員就業規則(以下、単に「就業規則」という。)において給与細則によるとされているところ、平成22年4月付 け給与細則2項は、事務局長及び事務局次長の給与については別途定めることとしており、C前理事長及びD理事長の在任中は、当時の事務局長(E事務局長又は被告A)が毎年4月、事務局長及び事務局次長を含む職員の当該年度の給与額及び賞与の基準を定めた給与表について理事長の決裁を得ることにより、給与等の額が決定されていた(ただし、被告Aが当時の理事長 の決裁を得た被告らの給与等の額については争いがある。)。 なお、上記給与細則において、事務局長及び事務局次長以外の職員の給料は、教育職給料表(三)(公立小中学校教諭)によることとされていた。給与細則添付の同表(以下「給与細則添付給料表」という。) )。 なお、上記給与細則において、事務局長及び事務局次長以外の職員の給料は、教育職給料表(三)(公立小中学校教諭)によることとされていた。給与細則添付の同表(以下「給与細則添付給料表」という。)における職員は中学校及び小学校に勤務する校長、教頭、教諭、養護教諭、助教諭等が含まれ、 給料月額の最高額は、2級が44万7100円(36号給)、3級が47万8300円(26号給)、4級が50万5500円(15号給)であった。 (甲3、4、95(資料3)、105)イ支払日等給与については、毎月20日締め、当月23日払いであり、賞与(期末手 当)については、毎年6月20日及び12月10日払いである。 - 6 - ⑷ 被告らに支給された給与等の額本件期間(平成22年4月~令和元年12月)中に、原告から被告らに対し給与等の名目で支給された額(以下「実支給額」という。)は、別紙1①~⑩(給与等対照表1~10)の各「実支給額」欄記載のとおりである。(甲10~17、107、108) ⑸ 懲戒に関する定め就業規則25条は、以下のとおり定めている。 「職員が次の各号の一に該当する場合理事長はけん責、減給、出勤停止、降格等、諭旨解雇または懲戒解雇等の処分を行なう。 ①及び② 略 ③ 自己の重大な過失により全日吹連に迷惑をかけたとき④ その他前各号に準ずる行為をしたとき」⑹ 被告らの懲戒解雇原告は、被告らに対し、各解雇通知書(甲2)を送付して、次のア及びイの理由により、令和2年1月27日付けで懲戒解雇することを通知した。 ア被告Aの懲戒解雇の理由本件期間中、自ら及び被告Bに対し、理事長決裁を受けた正規の給与等の額を大きく上回る給与等を振込送金し、上乗せ支給分を正当な理由なく受給し又は とを通知した。 ア被告Aの懲戒解雇の理由本件期間中、自ら及び被告Bに対し、理事長決裁を受けた正規の給与等の額を大きく上回る給与等を振込送金し、上乗せ支給分を正当な理由なく受給し又は受給させたこと、虚偽の領収証を用いて原告から経費名目の金員を不正受給したことが、就業規則25条3号及び4号に該当する。 イ被告Bの懲戒解雇の理由本件期間中、実支給額が理事長決裁を受けた正規の給与等の額を大きく上回ることを知りながら、理事長又は他の理事に確認することなく、上乗せ支給分を正当な理由なく受給したこと、被告Aが被告A及び被告Bの上乗せ支給分を事業費に付け替えることを手伝ったことが、就業規則25条3号及び 4号に該当する。 - 7 - ⑺ 本件訴訟の経過ア原告は、令和2年3月19日、被告らに対し、共同不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、連帯して、1億5814万1298円(訴え変更後の額)及びこれに対する令和2年1月1日(不法行為の後の日)から支払済みまで改正前民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める とともに、元相被告Fに対しても、平成23年度以降の被告らの給与等の不正受給行為を防止できなかったとして、被告らとの共同不法行為及び委任契約に基づく善管注意義務の債務不履行による損害賠償請求権に基づき、被告らと連帯して、上記と同額の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める訴えを提起した。(顕著事実) イ原告と元相被告Fは、令和5年9月19日、元相被告Fが、原告に対し、本件損害賠償債務として、1億5814万1298円及びこれに対する令和2年1月1日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払義務があることを認め、うち2000万円を支払うことなどを内容とする和解をした。 務として、1億5814万1298円及びこれに対する令和2年1月1日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払義務があることを認め、うち2000万円を支払うことなどを内容とする和解をした。(顕著事実) ウ元相被告Fは、令和5年9月27日、原告に対し、上記イの和解に基づき2000万円を弁済し、原告は、これを既に発生していた確定遅延損害金の一部(1億5814万1298円に対する令和2年1月1日から令和4年7月12日までの確定遅延損害金)に充当した。(弁論の全趣旨)エ原告は、上記ウの一部弁済を受けて、令和5年11月22日、被告らに対 する請求を主文1項のとおりに減縮した。(弁論の全趣旨) 3 争点(本訴請求について)⑴ 被告らの共同不法行為の有無⑵ 損害 (被告Aの反訴請求について) - 8 - ⑶ 被告Aの懲戒解雇の有効性⑷ 被告Aの賃金請求権の有無及び金額(被告Bの反訴請求について)⑸ 被告Bの懲戒解雇の有効性⑹ 被告Bの賃金請求権の有無及び金額 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴(被告らの共同不法行為の有無)について【原告の主張】ア原告が被告らに支払うべき正規の給与等は、給与細則に準拠して年度初めに理事長が決裁する給与表により決定されており、本件期間中の正規の給与 等は、別紙1①~⑩(給与等対照表1~10)の「正規の給与等」欄記載のとおりであった。 イ被告Aは、事務局長として、原告の銀行預金口座の入出金を含む原告の全ての金員出納の決裁と管理を行い、各年度の決算報告書原案を作成し、他の職員を指揮監督する権限を有していたが、本件期間中、事務局長の地位を利 用し、被告Bの協力を得て、正規の給与等を上回る給与等(実支給額)につ と管理を行い、各年度の決算報告書原案を作成し、他の職員を指揮監督する権限を有していたが、本件期間中、事務局長の地位を利 用し、被告Bの協力を得て、正規の給与等を上回る給与等(実支給額)について理事長の決裁がないにもかかわらず、原告の預金口座から被告らの各預金口座に、実支給額を前提とする給与等を振込送金した。これにより、被告らにおいて、実支給額と正規の給与等との差額を不法に領得した。これは、故意による不法行為である。 ウ被告Bは、平成22年4月、被告Aから、同月の月額給与(63万円)が前年度(44万2941円)から42.2%も急上昇したことに関し、被告らの実支給額が給与細則の定めより高額となっていること、これはC前理事長が認めたものであること、C前理事長から予算との整合性がとれるよう人件費(実支給額と正規の給与等との差額)を事業費に振り分けた決算報告書 の作成を指示されたことを説明された。 - 9 - 上記給与の急上昇が、被告Bが事務局次長に昇進したことを考慮しても異常であること、実支給額と正規の給与等との差額(不正受給額)を事業費に割り振った決算報告書の作成が、被告らの実支給額ひいては不正受給額の隠蔽を意味すること、被告Bが、平成23年3月に被告Aから相談を受け、上記の決算報告書の作成を手伝っていることからすれば、被告Bは、C前理事 長の承認がない又はないかもしれないとの認識の下、被告Aが被告らに対し上記イの実支給額を不正に支給することを黙認し続けたと認められる。仮に故意がなかったとしても、事務局次長として事務局長を補佐すべき地位にある被告Bは、C前理事長あるいは理事会に対し被告Aの説明内容の真偽を確認すべき注意義務を負い、これを尽くせば不正受給を未然に防止し得たのに、 これを怠ったと として事務局長を補佐すべき地位にある被告Bは、C前理事長あるいは理事会に対し被告Aの説明内容の真偽を確認すべき注意義務を負い、これを尽くせば不正受給を未然に防止し得たのに、 これを怠ったというべきである。あるいは、被告Aの説明を了承して実支給額を受給し、被告Aから相談を受けて前記の決算報告書の作成に協力した被告Bによる一連の行為は、被告Aの不法行為を幇助したものといえる。 エ上記ウの被告Bの故意及び過失による不法行為並びに幇助行為は、いずれも被告Aの不法行為と共同不法行為となる。 【被告Aの主張】就業規則及び給与細則上、事務局長及び事務局次長の給与等は理事長と事務局長との合意により決定できることとされている。 平成22年4月に被告Aが事務局長に就任する際、C前理事長は、被告Aに対し、その生活面を心配し、人件費の事業費への割り振り処理により予算等と の整合が取れる形で、給与細則水準よりも増額した給与案及びこれに合わせた決算報告書等の作成を指示した。被告Aが被告らの実支給額の記載のある給与表を作成してC前理事長に提出したところ、C前理事長はこれを承認した。そして、平成22年度の決算書類の作成の際、被告Aは、被告Bと相談しながら、実支給額と給与細則水準給与との差額を事業費に割り振った内容の決算報告 書を作成し、C前理事長の確認を得た。 - 10 - 翌年度以降も、平成25年6月にD理事長が理事長に就任して以降も、平成22年度と同様に、被告Aは、年度初めに、実支給額の記載された給与表と理事会報告用の給与表の2種類を作成し、当時の理事長(C前理事長又はD理事長)の承認を得ていた。なお、実支給額の記載された給与表については、理事会に報告するものではないため、C前理事長もD理事長も決裁印を捺印してい の2種類を作成し、当時の理事長(C前理事長又はD理事長)の承認を得ていた。なお、実支給額の記載された給与表については、理事会に報告するものではないため、C前理事長もD理事長も決裁印を捺印してい なかった。 このように、被告Aは、本件期間中、C前理事長又はD理事長との合意に基づき給与等を受給していたのであるから、不正受給ではなく、何ら違法行為はない。 【被告Bの主張】 ア前記【被告Aの主張】のとおり、C前理事長又はD理事長と被告Aとの協議により、本件期間中の被告Bの給与等の昇給が決定されていたのであるから、不正受給ではなく、何ら違法行為はない。 イ被告Bは、平成25年度決算報告書の原案や平成28年度総勘定元帳にメモを書き込んだが、これは、被告Aからの業務上の指示により、自己の担当 業務内の範囲で回答したにすぎず、その回答が反映されているか、その書類がその後どうなったかについては把握していない。加えて、被告Bは、上記以外に会計帳簿の作成に関与したことはないから、これらの書き込み行為について、共同不法行為は成立しない。 ウまた、被告Bは、被告Aから給与等の昇給についてC前理事長の承認があ る旨聞かされており、昇給に合理的な理由があったと認められたことから、不正受給の認識はなく、理事長等に対し給与等の昇給等を報告すべき注意義務やその違反も認められない。 すなわち、E事務局長が退職したことに伴い、被告らの業務量が増加し夜間までの残業が常態化していたが、原告から時間外手当が明確な形で支払わ れていなかったこと、被告Bがその上司である被告AからC前理事長の決定 - 11 - により昇給した旨聞かされており、部下の立場から疑義を抱かないことは不自然ではないこと、顧問税理士であるF監事が決算報告 こと、被告Bがその上司である被告AからC前理事長の決定 - 11 - により昇給した旨聞かされており、部下の立場から疑義を抱かないことは不自然ではないこと、顧問税理士であるF監事が決算報告書に目を通して不正のないことを確認し、監査会においても監事や担当理事から不正の指摘がなかったこと、決算書類における事業費の付け替え行為自体はE事務局長の時代から行われていたことなどからすると、被告Bに不正受給の認識はなく、 理事長等に対し給与等の昇給等を報告する注意義務やその違反はない。 ⑵ 争点⑵(損害)について【原告の主張】ア別紙1①~⑩(給与等対照表1~10)の「不正受給額」欄記載のとおり、被告Aの正規の給与等と実支給額との差額1億0020万1781円と、被 告Bの正規の給与等と実支給額との差額5793万9517円との合計1億5814万1298円の損害が生じた。 イ被告Bは損害額から時間外手当相当額を控除すべきである旨主張する。 しかし、被告Bは、原告の中核的業務を担う管理職であって、労働基準法41条2号の管理監督者に当たるから、時間外手当は発生しない。すなわち、 被告Bが、原告の中核的業務である全日本吹奏楽コンクール等の全国コンクール関連の事務局業務(以下「コンクール関係事業」という。)に関し、対外的にも対内的にも事務局側の責任者として中心的役割を果たしていたこと、職員の採用面接に参加して採否の意見を述べたり、被告Aとともに理事長や理事に断りなく解雇を言い渡したりするなど、人事に関与していたこと、 被告Aと同様に就業時間の定めがなく、自由に出勤・欠勤を決定していたこと、職務手当の額が被告Aとはほぼ変わらない一方、職員G(以下「G」という。)が職務手当を支給されていた年度における同人の額と比べると2倍 同様に就業時間の定めがなく、自由に出勤・欠勤を決定していたこと、職務手当の額が被告Aとはほぼ変わらない一方、職員G(以下「G」という。)が職務手当を支給されていた年度における同人の額と比べると2倍以上であり、職務手当を支給されない職員もいたことなどからすれば、被告Bは管理監督者に当たる。 【被告Aの主張】 - 12 - ア争う。 イ原告には、本件期間中の9年度にわたって、監査会において給与等の上乗せを見逃してきたという重大な過失があるから、一定の過失相殺をすべきである。 【被告Bの主張】 ア争う。 不正受給額を算定するためには、被告Bの時間外手当相当額を控除しなければならないが、原告は被告Bの時間外労働時間を明らかにせず、主張立証責任を果たしていない。 また、被告Bの会計帳簿作成への関与が不法行為に該当し、又は被告Bに 注意義務違反が認められたとしても、これらと被告らに対する給与等の支払とは因果関係がない。 イ原告は、被告Bが管理監督者である旨主張する。 しかし、被告Bの職務内容は、他の職員と変わらず原告の事務作業一般であり、人事や労務等の事業経営に関する重要事項は一切含まれず、コンクー ル関係事業への関与についても、被告Bは現場担当者の立場にすぎない。労働時間については、他の職員と同様の勤務時間であり、出勤簿による出退勤管理がされ、有休申請書の提出が義務付けられるなど、自由な裁量はなかった。給与等については、給料表に従い定められるもので、勤務年数に比例しており、役職手当もない。D理事長は、被告Bに対し時間外手当を支払うよ うな発言をしていた。 以上によれば、被告Bは管理監督者に当たらない。なお、仮に管理監督者にあたるとしても深夜労働の割増賃金は発生する。 ウ原告は 長は、被告Bに対し時間外手当を支払うよ うな発言をしていた。 以上によれば、被告Bは管理監督者に当たらない。なお、仮に管理監督者にあたるとしても深夜労働の割増賃金は発生する。 ウ原告は、本件期間中、被告Bが不正受給をしたと主張するところ、理事長が毎年度の税務申告用の決算報告書等を確認していないとは考えにくいこ と、F監事や職員もその内容を把握していたことからすれば、原告にも、被 - 13 - 告らの給与等が増額していた事態について速やかに調査を行い、その是非を検討した上で損害の拡大を防止すべき義務がある。原告には上記期間中、この義務を怠った過失があるため、過失相殺すべきである。 ⑶ 争点⑶(被告Aの懲戒解雇の有効性)について【原告の主張】 前記⑴【原告の主張】のとおり、被告Aは、被告Bと共謀して、約10年にわたり、給与等の実支給額を偽り、理事会が承認していた額よりも高額の給与等を受領していた。 これは、原告に対する重大な背信行為であり、就業規則25条3号及び4号所定の懲戒事由に該当することは明らかである上、被告Aが横領した額が1億 円近くであり、被害弁済が一切されていないことなどを考慮すると、懲戒解雇の社会的相当性は満たしている。 したがって、被告Aの懲戒解雇は有効である。 【被告Aの主張】ア前記⑴【被告Aの主張】のとおり、被告Aは、当時の理事長との合意に基 づき給与等を受給したものであって、不正受給ではないから、これに関する懲戒事由は存在しない。 イ被告Aは、原告の職務に関係のない飲食費を経費として請求したことはあるが、謝罪文を差し入れ、全額を返金していることからすれば、このことを懲戒事由とする懲戒解雇は相当性に欠ける。 ウ原告は、被告A及び被告BがKユニオン( 飲食費を経費として請求したことはあるが、謝罪文を差し入れ、全額を返金していることからすれば、このことを懲戒事由とする懲戒解雇は相当性に欠ける。 ウ原告は、被告A及び被告BがKユニオン(以下「ユニオン」という。)に加盟し原告理事会に報告してから間もなく、被告A及び被告Bに対して職務停止と自宅待機を命じ、その後懲戒解雇したものであり、この経緯からすれば、被告Aの懲戒解雇は労働組合法(以下「労組法」という。)7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入に当たり、無効である。 - 14 - ⑷ 争点⑷(被告Aの賃金請求権の有無及び金額)について【被告Aの主張】懲戒解雇は無効であり、被告Aは、原告の責めに帰すべき事由によって就労不能になったといえるから、本件解雇日以降の賃金請求権を失わない。 被告Aの給与月額は、一部請求として、60万4345円とし、令和2年2 月分以降の賃金の支払を求める。 【原告の主張】争う。 ⑸ 争点⑸(被告Bの懲戒解雇の有効性)について【原告の主張】 前記⑴【原告の主張】のとおり、被告Bは、被告Aと共謀して、約10年にわたり、理事長が承認していた額よりも多額の給与等を不正に受給し、被告らの不正受給額を事業費に割り振った決算報告書の作成に協力した。 これは、原告に対する重大な背信行為であり、就業規則25条3号及び4号所定の懲戒事由に該当することは明らかである上、被告Bが横領した額が50 00万円を超えており、被害弁済が一切されていないこと、被告Bが帳簿の付け替えにおいて積極的な役割を果たしたことなどを考慮すると、懲戒解雇の社会的相当性は満たしている。 したがって、被告Bの懲戒解雇は有効である。 【被告Bの主張】 ア前記⑴【被告Bの主張】のとお おいて積極的な役割を果たしたことなどを考慮すると、懲戒解雇の社会的相当性は満たしている。 したがって、被告Bの懲戒解雇は有効である。 【被告Bの主張】 ア前記⑴【被告Bの主張】のとおり、被告Bに不法行為は成立しないから、懲戒事由は存在しないし、仮に被告Bが実支給額を漫然と受給したことや会計帳簿における事業費への付け替え行為に協力したことに過失があったとしても、前記⑴【被告Bの主張】で述べた事情からすれば、「重大な過失」やこれに準ずる行為とはいえない。 イ懲戒解雇の相当性においては、関係者との取扱いの公平性が求められるが、 - 15 - 会計帳簿を容易に精査できる立場にあった原告理事ら役員や、被告らの給与等の額を知り又は知り得べき立場にあったGに対しては、原告から何ら処分がされておらず、公平性を欠く。 懲戒解雇の手続面では、調査委員会から事情聴取が行われたが、その内容は、給与表を上回る給与等を受給したこと、理事長や他の理事に確認・報告 しなかったこと及び平成28年度総勘定元帳への書込みについてのみであり、被告Bのいかなる行為を違法行為として問疑しているのか明らかではなかった。違法と評価するためには、いつの時点で被告Aとどのような情報を共有し、どのようなやり取りをし、どのような関与をしたのかを明らかにすることが不可欠であるのに、これらを何ら確認しておらず、手続的相当性を 欠く。 以上のほか、被告Bが主導していたものではないこと、被告Bがこれまで問題行動を起こしていないこと、事務局次長として原告事務局において中心的役割を担ってきたことなども踏まえると、懲戒解雇は不相当である。 ⑹ 争点⑹(被告Bの賃金請求権の有無及び金額)について 【被告Bの主張】懲戒解雇は無効であるから、被告Bは おいて中心的役割を担ってきたことなども踏まえると、懲戒解雇は不相当である。 ⑹ 争点⑹(被告Bの賃金請求権の有無及び金額)について 【被告Bの主張】懲戒解雇は無効であるから、被告Bは、本件解雇日以降の賃金請求権を失わない。 被告Bの給与月額は53万4120円、賞与は1回当たり98万6240円である。 被告Bは、令和2年2月分及び同年3月分の給与の合計106万8240円の賃金請求権と、原告が被告Bに対して解雇予告手当名目で支払った53万9926円に係る不当利得返還請求権とを対当額において相殺し、その残額及び令和2年4月分以降の給与等の支払を求める。 【原告の主張】 争う。 - 16 - 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 ⑴ 平成22年4月以前の事実関係ア給与等の決定 昭和59年7月1日付け事務局職員給与細則(甲54)において、職員の給与等は、事務局長及び事務局次長を含めて、公立学校教育職に準じて給与表を定めることとされ(2条)、東京都を除く全国の市町村立小学校及び中学校に勤務する教員の給料表が準用されていた。 昭和59年度及び昭和60年度は、当時の事務局長が当該年度の給与額 (月額)及び賞与を定めた給与表を作成し、当時の理事長の決裁を得ていた。 昭和61年度から平成21年度までの間は、昭和61年1月1日に事務局長に就任したE事務局長が、毎年4月に、当該年度の給与額(月額又は日額)及び賞与の基準を定めた給与表を作成し、当時の理事長に給与表の決裁欄に決裁印を捺印してもらうことにより決裁を得ていた。 平成7年度から平成21年度までの給与表におけるE事務局長、被告A(平成18年度以降は事務 た給与表を作成し、当時の理事長に給与表の決裁欄に決裁印を捺印してもらうことにより決裁を得ていた。 平成7年度から平成21年度までの給与表におけるE事務局長、被告A(平成18年度以降は事務局次長)及び被告Bの月額給与は、別紙2(正規給与一覧)記載のとおりであり、毎年度、前年度から3万円程度以内の範囲で昇給していた。平成21年度のE事務局長の給与は月額67万2875円(号俸4級15号の月額給料50万5500円及び諸手当)、被告Aの給与 は月額52万4430円(号俸2級25号の月額給料39万7000円及び諸手当)、被告Bの給与は月額44万2941円(号俸2級20号の月額給料35万5700円及び諸手当)であった。 (甲5の1~3、54、95、99)イ給与等の振込 E事務局長は会計担当職員(事務局次長在任中は事務局次長。平成7年4 - 17 - 月以降は被告A。)に職員の給与等の振込を指示し、同職員が原告の預金口座から職員の預金口座への振込手続を行っていた。(甲95、99)ウ帳票の作成E事務局長は、職員に指示して、入出金を総勘定元帳に記入していた。(甲95、99) エ決算報告書の作成等E事務局長は、毎年、前年度終了後、総勘定元帳に基づき決算報告書の原案を作成し、顧問税理士であるF監事に提出して点検を受けるとともに、監事による監査を受けていた。監査を受けた決算報告書については、毎年5月終わり頃の理事会及び定時総会に提出され、承認されていた(以下、原告の 総会に提出された決算報告書を「総会用決算報告書」という。)。 E事務局長在任中、理事会及び総会に提出され承認された決算報告書と法人税の確定申告書(以下「税務申告書」という。)に添付された決算報告書(以下「税務申告用決算報告書」とい 決算報告書」という。)。 E事務局長在任中、理事会及び総会に提出され承認された決算報告書と法人税の確定申告書(以下「税務申告書」という。)に添付された決算報告書(以下「税務申告用決算報告書」という。)とでは、支出の部の事業費及び職員給与等の各科目の記載内容の相違はなかった。 なお、平成22年度収支予算書については、平成22年2月10日、C前理事長、担当理事、副理事長、E事務局長及び被告Aが出席する財務部会において審議決定された予算書案が、同年3月の理事会での審議決定を経て、同年5月の定時総会で審議承認された。職員給与等の予算額は、平成21年度が3780万円であったのに対し、平成22年度は3200万円であった。 (甲18の1及び2、19、38、99、111、114、丁1、2、24、元相被告F本人1頁)⑵ 本件期間(平成22年4月~令和元年12月)中の事実関係ア給与細則の改定平成22年4月、被告Aは、C前理事長に対し、事務局長及び事務局次長 の給与については別途定める旨の規定を含む給与細則の改定案を提案し、C - 18 - 前理事長は、これを了承して同改定案に決裁印を捺印した。(甲4、被告A本人2頁)イ給与表本件期間中、毎年4月、当時事務局長であった被告Aは、年度ごとの月額給与及び賞与の基準を定めた給与表(甲5の4~6、6、106。以下「総 会用給与表」という。)を作成し、決裁欄に当時の理事長の決裁印を得ていた(なお、平成22年度については、理事長決裁印のある総会用給与表が提出されていないが、少なくとも別紙1①(給与等対照表1)の各「正規の給与等」欄記載の給与等の額の限度で理事長の決裁があったことには争いがない。)。職員の実支給額は、事務局長(被告A)及び事務局次長(被告B)に が、少なくとも別紙1①(給与等対照表1)の各「正規の給与等」欄記載の給与等の額の限度で理事長の決裁があったことには争いがない。)。職員の実支給額は、事務局長(被告A)及び事務局次長(被告B)に ついては総会用給与表記載の額(別紙1①(給与等対照表1)の各「正規の給与等」欄記載の給与等の額)よりも高く(ただし、平成29年7月~9月の被告Bの実支給額については、総会用給与表と一致していた。)、その余の職員については総会用給与表記載の額と変わらないものであった。 なお、総会用給与表記載の被告らの給料額は、多くの年度において、給与 細則添付給料表における当時の被告らの級・号給に対応する給料月額と同一額であったが、平成30年度及び令和元年度の総会用給与表記載の被告Aの給料額は給与細則添付給料表とは一致せず、また、平成26年度から平成29年度までの総会用給与表には、被告らの「給料」欄の欄外に、鉛筆書きで、「448,300の5%減」というように、給与細則添付給料表における当 時の被告らの級・号給に対応する給料月額から数%減額する旨の記載がされている。 (甲4、乙4、被告A本人17頁、弁論の全趣旨)ウ給与等の支払表被告Aは、職員の給与等の支払日ごとに2種類の支払表、すなわち、職員 の実支給額と合致する平成25年4月から令和元年12月までの支払表(甲 - 19 - 10~16。以下「実支給額支払表」という。)及び総会用給与表の給与等の額と合致する平成28年4月から平成31年3月までの支払表(甲48~50。以下「総会用支払表」という。)を作成していた。なお、これらの各支払表に、決裁欄はなく、理事長決裁印は押されていない。(乙4、被告A本人25、40頁) エ給与等の振込等被告Aは、自ら、毎月の職員全 支払表」という。)を作成していた。なお、これらの各支払表に、決裁欄はなく、理事長決裁印は押されていない。(乙4、被告A本人25、40頁) エ給与等の振込等被告Aは、自ら、毎月の職員全員の給与支払額及び公租公課の控除額を計算した上で、給与明細書を作成するとともに、「給与振込依頼書」を銀行にファクシミリ送信する方法により、職員の給与等の差引支払額の振込手続を行っていた。被告Aは、上記送信の数分後に銀行からファクシミリで返信さ れる「〔給与振込〕受付通知書」及び「〔給与振込〕確認書」(以下、これらを「真正な給与振込確認書等」という。)を受け取り、上記「給与振込依頼書」とともに、自らの机の鍵のかかった引き出しの中に保管していた。 「〔給与振込〕確認書」には、職員ごとにその預金口座番号や振込金額等が記載されていた。 他方で、原告事務局内には、真正な給与振込確認書等と比べると、「振込金額」及び「振込金額合計」以外の内容は同じであるが、「振込金額」及び「振込金額合計」が総会用支払表と一致している、平成30年11月から平成31年3月までの「〔給与振込〕受付通知書」及び「〔給与振込〕確認書」(以下、これらを「偽造給与振込確認書等」という。)があった。 (甲50の9、10、12~14、甲91(資料1~5を含む。)、128~132、被告A本人19、21頁)オ帳票の作成Gは、被告Aの指示により、請求書の作成、入金手続、振替伝票の作成、会計用パソコンへのデータ入力等の会計事務を担当していた。給与等につ いては、平成25年頃まで、Gが、毎月の給与支給日後、被告Aから、毎 - 20 - 月の給与総額が記載された振替伝票を受け取り、総勘定元帳の事務費・職員給与等・給料の科目にデータ入力していた。(甲91 成25年頃まで、Gが、毎月の給与支給日後、被告Aから、毎 - 20 - 月の給与総額が記載された振替伝票を受け取り、総勘定元帳の事務費・職員給与等・給料の科目にデータ入力していた。(甲91、109、111、112、乙5、証人G6頁)被告Aは、平成28年度以降、後記カの割り振りを行った振替伝票及び総勘定元帳(以下「割り振り後の振替伝票」及び「割り振り後の総勘定元 帳」という。)を作成していた。(甲57、59、66、75、113、乙4、被告A本人4頁)カ決算報告書の作成等平成22年度から平成30年度までの間、収支予算書における職員給与等の額は、総会用決算報告書における職員給与等の額と近似するものであ る一方、税務申告用決算報告書における職員給与等の額はこれらの額を大幅に超えるものであった。(甲20~37、114~123)被告Aは、平成23年3月、理事会に提出する決算書類として、被告らの給与等の実支給額と総会用給与表記載の額との差額を事業費の各科目に割り振った平成22年度総会用決算報告書(甲29)を作成し、総勘定 元帳等とともにF監事に提出したが、総勘定元帳においては上記割り振りがされていなかった(以下「割り振り前の総勘定元帳」という。)。 そこで、F監事は、被告Aに対し、総会用決算報告書と割り振り前の総勘定元帳との間で人件費の合計額が一致しないことについて質問すると、被告Aは、総会用決算報告書においては人件費の一部を事業費に割り振っ ており、このことについてはC前理事長の承認を受けている旨を説明した。 被告Aの説明を受け、F監事は、人件費の一部を事業費に割り振る仕訳が一般論としては間違っているわけではなく、理事長と合意しているのであれば問題ないと考え、割り振りの意図等について更に質問し した。 被告Aの説明を受け、F監事は、人件費の一部を事業費に割り振る仕訳が一般論としては間違っているわけではなく、理事長と合意しているのであれば問題ないと考え、割り振りの意図等について更に質問したり、割り振りについて理事長に確認したり他の理事や監事に報告したりすること はしなかったが、原告が税務署に毎月提出していた「給与所得・退職所得 - 21 - 等の所得税徴収高計算書」の数字と一致しない平成22年度総会用決算報告書を税務申告(原告の法人税の確定申告)に用いることはできないため、被告Aに対し、割り振りのない決算報告書の作成を求めた。 被告Aは、F監事の求めに応じて、割り振りのない税務申告用決算報告書(甲20の2、丁3の4)を作成し、F監事は、これを用いて同年5月 の税務申告をした。 他方で、理事長、副理事長及び監事が出席した監査会には、総会用決算報告書が総勘定元帳や請求書、領収書等とともに提出されたが、総勘定元帳等の量が膨大であること、理事長や副理事長、F監事の相幹事が会計の専門家ではなく、F監事に会計監査が一任されていたこともあり、監査会 において総勘定元帳等の記載との一致についての確認は行われず、平成22年度においても給与等の額や割り振りに関する指摘等はなく、監事による適正意見が表明された監査報告書が作成された。その後、理事会及び定時総会では、平成22年度総会用決算報告書とともに、平成23年度収支予算書が決定及び承認された。 (甲20、29、39、93、98、115、乙4、6、丁3、24、25、被告A本人3、4頁、元相被告F本人1、2、4~8、14、15頁)平成23年度以降も、被告Aは、毎年3月、被告らの実支給額と総会用給与表との差額が事業費の各科目に割り振りされていない税務申告用決 告A本人3、4頁、元相被告F本人1、2、4~8、14、15頁)平成23年度以降も、被告Aは、毎年3月、被告らの実支給額と総会用給与表との差額が事業費の各科目に割り振りされていない税務申告用決 算報告書(甲21~28の各2)及び割り振りのされた総会用決算報告書(甲30~37、116~123)の2種類の決算報告書を作成した上、上記と同様、総会用決算報告書を割り振り前の総勘定元帳、請求書や領収書等の根拠資料、原告の預金通帳等とともに監査会に提出し、監査を受けていたが、決算報告書が総勘定元帳等の記載と一致しているかについて の確認は行われず、給与等の額や割り振りに関する指摘等はなく、監事に - 22 - よる適正意見が表明された監査報告書が作成されていた。その後、理事会及び定時総会では、前年度の総会用決算報告書とともに、当年度の収支予算書が決定及び承認されていた。 他方で、F監事は、税務申告用決算報告書を割り振り前の総勘定元帳と照合し、税務申告を行っていた。なお、平成23年度以降も、F監事が割 り振りについて理事長に確認したり他の理事や監事に報告したりすることはなかった。 (甲21~28、30~37、40~47、93、98、116~123、乙4、丙9、丁4~11、24、25、被告A本人3、4頁、元相被告F本人4~8、11頁) キ被告Aと被告Bとのやり取り等被告Aは、平成22年4月の給与支払日よりも前に(被告B本人10、22頁によれば、被告Bは給与支払日より前に自身の給与が増額されるという事実自体は知っていたと認められる。)、被告Bに対し、C前理事長が被告らの生活に配慮し、被告らの給与等の増額を承認した旨説明した (以下「本件説明」という。)。(丙9、被告A本人6、41頁、被告B本人 知っていたと認められる。)、被告Bに対し、C前理事長が被告らの生活に配慮し、被告らの給与等の増額を承認した旨説明した (以下「本件説明」という。)。(丙9、被告A本人6、41頁、被告B本人1、9頁、弁論の全趣旨)被告Bは、被告Aから平成25年度総会用決算報告書における割り振りを相談され、「小学校バンドフェスティバルマーチングコンテスト会場費」の「23,723,536」との記載に「200」と、「事務費(管理費)」 の「4,525,091」に「130(通信)」などというように、被告A作成の原案中複数の費目の決算額について鉛筆で数字を書き込み、修正を提案した。被告Aは、被告Bの書き込みのとおり、同年度の総会用決算報告書の記載を修正した。 また、被告Bは、平成28年度勘定元帳における複数の科目の金額につ いて、「発送料へ」「これはやめた方が」「細かく振るか」「細かく」などと - 23 - 記載した付箋を貼り、修正を提案した。 (甲32、56、57、乙4、丙9、被告B本人14~19頁)被告Aは、平成28年度又は平成29年度以降、G又は被告Bに指示して会計用パソコンで決算データをコピーさせ、このコピーデータを「仮決算」と名付け、被告Bに対し、仮決算のデータ入力を行わせた。(甲91、 乙5、証人G4頁、被告A本人10頁)なお、被告Bは、上記仮決算のデータ入力をしていない旨主張し、これに沿う陳述及び供述をする(丙9、被告B本人5頁)。そして、G及び被告Aの上記内容の陳述に関し、被告Bが日常の会計業務に関与していないにもかかわらず、法人の帳簿作成をできるとは考え難いことや、Gが被告B からパワーハラスメントを受けていたと陳述していることから、Gは、記憶違いをしているか、敵対感情に基づく虚偽を述べてお いにもかかわらず、法人の帳簿作成をできるとは考え難いことや、Gが被告B からパワーハラスメントを受けていたと陳述していることから、Gは、記憶違いをしているか、敵対感情に基づく虚偽を述べており、被告Aは、被告Bと協力していた体裁を作りたいことから虚偽を述べているなどとして、G及び被告Aの陳述の信用性を否定する。しかし、Gと被告Aの上記の点に関する陳述内容が合致していること、Gに虚偽の陳述をする動機が あったとはうかがわれず、仮にGが被告Bからパワーハラスメントを受けていたとしても、虚偽の陳述をする動機としては抽象的なものにとどまることからすれば、G及び被告Aの上記陳述は信用でき、被告Bの上記主張は採用できない。 被告Aは、平成29年7月28日、被告Bとともに、税務調査に必要な 年度を除き、過去の伝票や領収書等の会計書類を廃棄した。(甲91、乙5)⑶ 被告らの懲戒解雇の経緯ア令和元年7月、Gが、原告のH理事(以下「H理事」という。)に対し、原告の会計処理や被告らの給与等について疑問を訴えたことを端緒として、 被告らが出張のため原告事務局を不在にする同年12月3日に、I監事(以 - 24 - 下「I監事」という。)が、H理事を補助者として、副理事長2名及びJ弁護士(以下「J弁護士」という。)の立会いの下、原告事務局内の調査を実施した。その結果、決算報告書が同一年度に2種類(総会用決算報告書及び税務申告用決算報告書)作成されており、これらの間で職員給与額及び事業費の金額に大きな差があることが明らかとなったことから、同月4日、H理事は、 これをD理事長に報告し、I監事は、翌日の常任理事会に提出する調査報告書(甲68)を作成した。(甲68、74、91、93、100)イ令和元年12月5日、D たことから、同月4日、H理事は、 これをD理事長に報告し、I監事は、翌日の常任理事会に提出する調査報告書(甲68)を作成した。(甲68、74、91、93、100)イ令和元年12月5日、D理事長は、被告らに対し、自席の机の中をそのままにして自宅で待機することを命じ、また、原告の常任理事会は、会計処理等に関する調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設立した。調査委員 となったI監事、H理事及びJ弁護士は、同月9日から令和2年1月7日まで、原告事務局内の書類収集、C前理事長、D理事長、副理事長2名、G、F監事、被告らに対する事情聴取等の調査を実施し、調査報告書(甲69の1)を作成した。 被告らに対する事情聴取では、被告Aは、被告らが総会用給与表を上回る 実支給額を受領し、この上乗せ分を事業費に割り振って計上したことについては、理事長の承認があった旨供述し、被告Bは、総会用給与表記載の給与等を上回る実支給額を受領したことについて、被告Aから理事長の承認がある旨説明を受けた、上乗せ分の事業費の割り振りについて理事長や理事に相談したことはない旨供述した。 (甲69、93、100)ウ上記ア及びイの原告事務局内の調査の結果、被告Aの机の鍵のかかった引き出しから、平成24年度から平成30年度までの税務申告用決算報告書、被告A作成に係る平成28年度及び平成29年度の割り振り後の総勘定元帳、平成25年4月から令和元年11月までの実支給額支払表が発見された。 他方で、平成20年度から平成30年度までの総会用決算報告書、G作成 - 25 - に係る平成20年度から平成30年度までの割り振り前の総勘定元帳、平成29年4月から平成30年3月までの割り振り前の振替伝票は、原告事務局内の鍵のかかっていない共有 、G作成 - 25 - に係る平成20年度から平成30年度までの割り振り前の総勘定元帳、平成29年4月から平成30年3月までの割り振り前の振替伝票は、原告事務局内の鍵のかかっていない共有ロッカーから発見された。また、被告A作成に係る平成30年度の総会用総勘定元帳、平成19年度から平成30年度まで(ただし、平成22年度を除く。)の理事長決裁印のある総会用給与表、平成 28年4月から平成31年3月までの総会用支払表及び平成29年4月から平成30年3月までの割り振り後の振替伝票は、被告Aの机の鍵のかかっていない引き出しから発見された。 (甲68、69の1、76、82、91、93、100)エ原告の理事会は、被告らの懲戒解雇に先立ち、令和2年1月9日付けで、 被告らに対し、理事長決裁を受けた正規の給与等を上回る給与等を受領したことに関して釈明を求め、被告らは、それぞれ書面により回答した。(甲102、103)オ原告は、被告らに対し、令和2年1月27日付けで懲戒解雇する旨通知した。(前提事実⑹) 2 争点⑴(被告らの共同不法行為の有無)について⑴ C前理事長及びD理事長による承認の有無についてア被告らは、C前理事長及びD理事長が、被告らの給与等を給与細則水準よりも増額し、実支給額を支給することを承認し、人件費の一部を事業費に割り振った決算報告書等の作成を指示した旨主張し、被告Aは同旨の陳述をす る。他方で、C前理事長及びD理事長は、被告らの実支給額について承認しておらず、上記割り振りを指示したことはない旨陳述している(甲92~94)。 イそこで検討すると、認定事実⑴ア、⑵イ、ウのとおり、職員の給与等については、平成21年度以前、理事長が事務局長作成の給与表に決裁印を捺印 することによ 旨陳述している(甲92~94)。 イそこで検討すると、認定事実⑴ア、⑵イ、ウのとおり、職員の給与等については、平成21年度以前、理事長が事務局長作成の給与表に決裁印を捺印 することにより決裁されていたが、本件期間については、総会用給与表の決 - 26 - 裁欄に決裁印が押されているものの、被告らの実支給額が記載された給与表又は支払表としては、その一部の期間(平成25年4月~令和元年12月)の実支給額支払表しか本件訴訟に提出されていない上、これらには理事長決裁印が押されていないのであって、C前理事長及びD理事長が被告らの実支給額を承認していたことを裏付ける客観的な証拠はない。 そして、上記のとおり、職員の給与等については、平成21年度以前は、給与表に理事長の決裁印を押してもらうことで決裁されていたこと、被告AはC前理事長らに総会用給与表の決裁欄に決裁印を押してもらっているのであるから、実支給額の記載された給与表等を作成してC前理事長らから決裁印等を得ることも容易であったと認められることも踏まえると、実支給額 が記載された理事長決裁印のある給与表等が存在しないことは、実支給額についてC前理事長らの承認を得ていないことを認める有力な根拠になるというべきである。 この点、被告Aは、給与表等への理事長決裁印は、決算報告書に決裁印が押されていないように、その有無により承認の有無が決されるものではない ため、必要的ではなく、C前理事長もD理事長も実支給額給与表に決裁印を押さなかったのは、総会用給与表と取り違えないようにする意図だったと考えられる旨主張するが、上記の点に照らし、原告において、給与等の決定には、理事長が給与表に決裁印を押すことが必要とされており、C前理事長らや被告Aもその旨認識していたというべき にする意図だったと考えられる旨主張するが、上記の点に照らし、原告において、給与等の決定には、理事長が給与表に決裁印を押すことが必要とされており、C前理事長らや被告Aもその旨認識していたというべきであることからすれば、上記主張 は採用できない。 ウ認定事実⑴アによれば、平成21年度以前は、給与細則において、職員の給与等が、事務局長及び事務局次長を含めて、公立学校教育職に準じて定められていたところ、平成7年度から平成21年度までのE事務局長及び被告らの月額給与は、別紙2(正規給与一覧)記載のとおりであって、被告Aが 事務局次長に就任した年度も含め、毎年度、前年度から3万円程度以内の範 - 27 - 囲で昇給し、平成21年度のE事務局長の給与は月額67万2875円(うち給料50万5500円(4級15号給))、被告Aの給与は月額52万4430円(うち給料39万7000円(2級25号給))、被告Bの給与は月額44万2941円(うち給料35万5700円(2級20号給))であった。また、給与細則添付給料表における2級の最高額は44万7100円 (36号給)、3級の最高額は47万8300円(26号給)、4級の最高額は50万5500円(15号給)であり(前提事実⑶ア)、平成22年地方公務員給与の実態における地方公共団体の職員の平均給料月額は、小・中学校教育職が37万2202円(平均年齢43.9歳)(甲81)、平成22年1月1日適用の東京都職員給料表における東京都教育職員の主任教諭の最高 給料額は43万5900円(3級149号給)、主幹教諭の最高給料額は45万8800円(4級133号給)、副校長の最高給料額は48万7100円、校長の最高給料額は51万6100円であった(甲110)。 ところが、前提事実⑷、別紙1①~⑩ 給)、主幹教諭の最高給料額は45万8800円(4級133号給)、副校長の最高給料額は48万7100円、校長の最高給料額は51万6100円であった(甲110)。 ところが、前提事実⑷、別紙1①~⑩(給与等対照表1~10)のとおり、被告Aの実支給額は、平成22年度には月額91万円~109万円と、前年 度から約38万円~約56万円も増加して前年度の2倍前後となり、事務局長就任年度からE事務局長の退任時の給与を大幅に超え、本件期間中の最高額は月額122万円に達しており、被告Bの実支給額も、平成22年度には月額63万円~81万円と、前年度から約18万円~約36万円も増加して前年度の約1.4倍~約1.8倍となり、被告Aの事務局次長の最終年度の 給与を大幅に超え、本件期間中の最高額は月額87万円に達していた。また、被告らの実支給額は、公立学校教育職の給与と比較しても、著しく高額であった。 そうすると、平成22年4月の給与細則の改定により、事務局長及び事務局次長の給与については、その他の職員のように公立学校教育職に準じず、 別途定めることとされていたことや、被告らが事務局長及び事務局次長に昇 - 28 - 格したことを考慮しても、一般社団法人である原告において、被告らの実支給額は、その金額の高さや平成21年度からの増加額及び増加割合の大きさの点で異常であったというべきである。 また、実支給額については、総会用給与表記載の給与等との差額を事業費に割り振った総会用決算報告書が作成されているが(認定事実⑵カ)、これ は被告らの実支給額を秘匿する目的によるものと解さざるを得ない。 以上を踏まえると、平成18年10月から理事長を務めていたC前理事長において、独断で、上記のような異常な実支給額を承認し、これを秘匿するために実 支給額を秘匿する目的によるものと解さざるを得ない。 以上を踏まえると、平成18年10月から理事長を務めていたC前理事長において、独断で、上記のような異常な実支給額を承認し、これを秘匿するために実支給額に基づく税務申告用決算報告書のほかに実支給額の一部を事業費に割り振った総会用決算報告書の作成を指示するメリットや理由が あるとは、一般的にみて、にわかに考えられないし、本件の事情に即してみても、そのようなメリットや理由は見当たらない。同様に、D理事長においても、実支給額を認め、総会用決算報告書の作成を指示するとは考えられない。 加えて、被告らの給与等についてのみ大幅に昇給させ、被告ら以外の職員 の給与等を全く昇給させないことにも、合理的な理由が想定できない。この点、被告Aは、子が二人とも幼いことや将来の教育の心配等を述べたところ、C前理事長がその生活に配慮して給与等の上乗せを承認した旨主張するが、被告Aの給与等の額(総会用給与表記載の額)は、職員の中で最も高く、子が二人いたとしても通常の生活が困難な状態にあるとは考え難いし、被告A よりも給与等が相当低く、子のいるG(甲5)について、給与等を上乗せしないことと整合せず、子のいない被告B(甲5)の給与等を上乗せする根拠も不明である。 エ認定事実⑵イのとおり、平成26年度から平成29年度までの総会用給与表には、給与細則添付給料表における当時の被告らの級・号給に対応する給 料月額から数%減額する旨の鉛筆書きの記載があることから、被告Aは、D - 29 - 理事長に対し、被告らの給与等を給与細則の基準から減額することを提案したものと認められる。 仮にC前理事長が実支給額を承認し、D理事長がこれを引き続き承認していたのであれば、被告Aが、D理事長に対し、総会 対し、被告らの給与等を給与細則の基準から減額することを提案したものと認められる。 仮にC前理事長が実支給額を承認し、D理事長がこれを引き続き承認していたのであれば、被告Aが、D理事長に対し、総会用給与表記載の給料月額の減額について、同表に鉛筆で記入して説明する必要は認め難いのであり、 このことは被告Aが被告らの給与等の実支給額についてD理事長の承認を得ていなかったのではないかと強く疑わせるものである。 オ被告Aは、平成28年度以降、割り振り後の振替伝票及び割り振り後の総勘定元帳を作成し(認定事実⑵オ)、平成24年度から平成30年度までの税務申告用決算報告書及び平成25年4月から令和元年11月までの実支 給額支払表を被告Aの机の鍵のかかった引出しに保管していた(同⑶ウ)ところ、これらの行動は、総会用決算報告書の作成と同様、被告らの実支給額を秘匿する目的によるものと考えられる(前記ウ)。 加えて、認定事実⑵エのとおり、偽造給与振込確認書等は、真正な給与振込確認書等と振込金額及び振込金額合計以外の内容は全く同じであって、真 正な給与振込確認書等を見ることなく作成することは困難であるところ、被告Aが職員全員の給与支払額を計算し給与等の振込手続を行っていたこと、真正な給与振込確認書等は被告Aが受け取って自らの机の鍵のかかった引き出しの中に保管していたことからすれば、偽造給与振込確認書等を作成したのは被告Aと認めるのが相当であり、これも実支給額を秘匿する目的によ るものと考えられる。 カ前記イからオまでによれば、C前理事長及びD理事長が被告らの実支給額を承認したことを認めることは困難である。 キこれに対し、被告Aは、①C前理事長は、H理事に対し、被告らの給与等の上乗せについて了解した旨供述していた、②平成22 及びD理事長が被告らの実支給額を承認したことを認めることは困難である。 キこれに対し、被告Aは、①C前理事長は、H理事に対し、被告らの給与等の上乗せについて了解した旨供述していた、②平成22年4月に給与細 則2項が事務局長及び事務局次長の給与について別途定めると改定され - 30 - たのは、C前理事長が被告らの給与等の上乗せを承認していたからである、③平成29年4月以降、被告らの月額給与が減額されているが、被告らが理事長の承認なく給与等の上乗せをしていたのであれば、このような減額が生じるとは考え難い、④割り振り前の総勘定元帳や割り振り前の振替伝票が原告事務局内の鍵のかかっていない場所に保管されているのは、被告 Aに給与上乗せを隠蔽する意図がなかったからである、⑤被告Aは、Gに対し、職員の給与総額を記載した振替伝票を渡し、原告名義の口座から被告らの各預金口座に振込送金していたが、不正受給をしていたのであれば、このような明白な証拠を残すことはない、⑥原告の監査会では、総会用決算報告書と割り振り前の総勘定元帳や振替伝票等が提出されており、人件 費の合計額が一致しないことはすぐに分かったはずであるのに、9年度もの間、全く指摘されなかったが、被告Aが理事長の承認なしに給与の上乗せをしていたのであればこのような状況はあり得ないなどと主張する。 前記①の主張についてH理事の陳述書(甲100)によれば、C前理事長は、J弁護士から、 職員の給与体系は東京都又は新潟県の教員の体系を参考にしたのかと質問されたのに対し、「彼らの仕事ぶりとか生活、世帯を持って子供を育てていく中で、ある程度上乗せすることがあっても良いんじゃないかと思い、一応了解しました」と供述している。 しかし、上記供述内容は、必ずしも、被告らの 「彼らの仕事ぶりとか生活、世帯を持って子供を育てていく中で、ある程度上乗せすることがあっても良いんじゃないかと思い、一応了解しました」と供述している。 しかし、上記供述内容は、必ずしも、被告らの給与等を総会用給与表の 額から大幅に上乗せし、実支給額給与表に基づき支給することを了解する趣旨であるとはいえず、被告ら又は職員全員の給与等を公立学校教育職の給与水準から上乗せし、総会用給与表に基づき支給することを了解する趣旨と解することもできる(甲110参照)。 前記ウで説示したとおり、C前理事長が実支給額を承認し、実支給額の 一部を事業費に割り振った総会用決算報告書の作成を指示するメリット - 31 - や理由はなく、現に、上記供述に続き、C前理事長は、J弁護士から総会用給与表及び実支給額給与表を示されると、総会用給与表については承認したが、実支給額給与表については承認していないと述べたというのであり(甲100)、C前理事長の陳述書(甲92)においても、C前理事長は実支給額給与表に対する承認の事実を否定していることからすれば、C前 理事長の上記供述により、被告らの実支給額に対する承認があったと認めることはできない。 したがって、前記①の主張には理由がない。 なお、被告らは、原告が、C前理事長に対する事情聴取の録音データについて、捜査機関に提出しており複製もしていないとして、本件訴訟に提 出しないのは不自然・不合理であり、このような原告の対応からC前理事長の承認が推認される旨主張するが、そのような推認には論理の飛躍があり採用できない。 前記②の主張について平成22年4月に給与細則2項が事務局長及び事務局次長の給与につ いて別途定めると改定されたことは、前記②の主張のとおりであるが、このとき、給 あり採用できない。 前記②の主張について平成22年4月に給与細則2項が事務局長及び事務局次長の給与につ いて別途定めると改定されたことは、前記②の主張のとおりであるが、このとき、給与細則には理事長決裁欄が設けられ、C前理事長の決裁印が押されている(認定事実⑵ア)一方、理事長決裁印のある給与表等は総会用給与表のみであり、理事長決裁印のある実支給額を記載した給与表等は存在しないこと(前記イ)を踏まえると、上記改定の事実により被告らの実 支給額について理事長の承認があった旨推認することは困難である。 したがって、前記②の主張には理由がない。 前記③の主張について別紙1①~⑩(給与等対照表1~10)記載のとおり、平成29年4月から同年9月までの間、被告らの月額給与が減額され、うち同年7月から 同年9月までの間、被告Aの月額給与は総会用給与表の額から約3万円上 - 32 - 回るにとどまり、被告Bの月額給与は総会用給与表の額と一致していた。 しかし、実支給額の支給について理事長の承認がなかったとしても、被告Aが、実支給額を秘匿する目的などから、あえて減額することも十分考えられる。むしろ、前記ウのとおり、上記6か月間以外の本件期間の大半においては、被告らの実支給額が異常に高額となっており、このような実 支給額に対してC前理事長らが承認したとは考え難い。 したがって、前記③の主張には理由がない。 前記④の主張について認定事実⑶ウのとおり、割り振り前の総勘定元帳及び振替伝票は、原告事務局内の鍵のかかっていないロッカーに保管されていたため、被告ら以 外の職員が容易に手に取ることができたが、これは、被告Aが積極的に被告らの実支給額を明かしたことを意味するものではなく、被告Aが、総会用決算報告書 ないロッカーに保管されていたため、被告ら以 外の職員が容易に手に取ることができたが、これは、被告Aが積極的に被告らの実支給額を明かしたことを意味するものではなく、被告Aが、総会用決算報告書等の作成等、実支給額を秘匿するための行為をしていたことや、総勘定元帳等の量が膨大であり、被告ら以外の職員が割り振り前の総勘定元帳及び振替伝票と総会用決算報告書の内容との間に齟齬があるこ とに気付くのは容易ではないこと、実際に、被告らの実支給額は、I監事らによる調査が実施されるまで、原告の理事会や総会で判明しなかったことも踏まえると、上記の保管状況により被告Aに実支給額を隠蔽する意図がなかったということは困難である。 したがって、前記④の主張には理由がない。 前記⑤の主張について被告Aが職員の給与総額を記載した割り振り前の振替伝票を渡したこと(認定事実⑵オ)により、Gは、平成21年度と比べて職員の給与総額が増加したことを認識し、被告らの給与等が高すぎるのではないかとの疑問を抱くこととなった(甲91)。 しかし、上記振替伝票には職員の給与総額が記載されているにすぎず、 - 33 - 被告らによる不正受給の確たる証拠となるわけではないし、被告Aが、割り振り前の振替伝票により被告らの不正受給が発覚することを明確に認識した上で、あえてこれをGに渡したとも限らない。 さらに、Gにおいて上司である被告らの不正を告発することは、Gが被告らの高圧的態度におびえていたと陳述していること(甲91)や、それ が誤りであった場合のリスクに照らしても、容易なことではない。 これらによれば、被告AがGに対し上記振替伝票を渡していたからといって、被告Aが不正受給をしていなかったことが推認されるとはいえない。 また、理事長の承認の スクに照らしても、容易なことではない。 これらによれば、被告AがGに対し上記振替伝票を渡していたからといって、被告Aが不正受給をしていなかったことが推認されるとはいえない。 また、理事長の承認の有無にかかわらず、被告らを含む職員に対する給与等の支給方法として、振込送金以外の方法を取ることは現実的には考え 難く、振込送金をした事実によって被告Aが不正受給をしていなかったことが推認されるとはいえない。 したがって、前記⑤の主張には理由がない。 前記⑥の主張について総会用決算報告書と割り振り前の総勘定元帳や振替伝票等を照合すれ ば、人件費の合計額が一致しないことを発見することは可能であった(認定事実⑵カ)。 しかし、認定事実⑵カ、のとおり、原告の監査会では、総勘定元帳等の量が膨大であること、理事長や副理事長、F監事の相監事が会計の専門家ではなく、F監事に会計監査が一任されていたこともあり、F監事が 総会用決算報告書と総勘定元帳等の記載との不一致を指摘しなければ、このことが問題となることはなかったと考えられるところ、F監事は、被告AからC前理事長の指示があったと聞かされたため、理事長と合意しているのであれば問題ないと考え、被告Aに対して割り振りの意図等について更に質問したり、理事長に確認したり他の理事や監事に報告したりするこ とはなかった。 - 34 - そうすると、原告の監査会で9年度もの間、上記不一致に対する指摘がなかったとしても、不自然とはいえないから、前記⑥の主張には理由がない。 ク以上によれば、C前理事長及びD理事長の前記アの陳述は信用でき、C前理事長及びD理事長が被告らの実支給額を承認した事実はないと認められ る。 ⑵ 被告Aについて前記⑴のとおり、本件期間中、被 上によれば、C前理事長及びD理事長の前記アの陳述は信用でき、C前理事長及びD理事長が被告らの実支給額を承認した事実はないと認められ る。 ⑵ 被告Aについて前記⑴のとおり、本件期間中、被告Aは、被告らの実支給額についてC前理事長及びD理事長の決裁を得ていなかったにもかかわらず、事務局長として、原告の金員出納の決裁と管理を行う権限を有する地位を利用して、原告の預金 口座から被告らの各預金口座に、実支給額から控除額を控除した後の差引支払額を振込送金し(認定事実⑵エ)、被告らにおいて実支給額と総会用給与表の給与等との差額を不法に領得し原告に同額の損害を与えたものと認められるから、被告Aについて不法行為が成立する。 ⑶ 被告Bについて ア認定事実⑵キのとおり、被告Aは、平成22年4月の給与支払日よりも前に、被告Bに対し、C前理事長が被告らの生活に配慮し、被告らの給与等の増額を承認した旨説明したと認められる(本件説明)。 前記⑴で認定したとおり、被告Bの月額給与は、従前は毎年度3万円程度以内の範囲で昇給していたのに、平成22年度には前年度から約18万円~ 約36万円も増加して約1.4倍~約1.8倍(63万円~81万円)となり、本件期間中の最高額が87万円に達したことは、異常な事態というべきであるところ、平成22年4月当初から理事長決裁印のある給与表等は存在せず、被告Bが被告AからC前理事長らの承認を裏付ける客観的な資料を提示されたことはなかったことからすると、仮に被告Aが本件説明時に昇給額 や実支給額について大まかな金額等を伝えていなかったとしても、被告Bは、 - 35 - 遅くとも平成22年4月の給与明細書を受け取った時点又は給与の振込を確認し異常というべき大幅な給与増額があったことを認識し 大まかな金額等を伝えていなかったとしても、被告Bは、 - 35 - 遅くとも平成22年4月の給与明細書を受け取った時点又は給与の振込を確認し異常というべき大幅な給与増額があったことを認識した時点で、本件説明に疑問を持ち、被告らの実支給額についてC前理事長らの承認がないかもしれないとの認識を有していたと推認される。 さらに、被告Bは、被告Aから、平成25年度総会用決算報告書における 割り振りを相談されて、複数の費目の決算額について数字を書き込んで修正を提案し、平成28年度勘定元帳における複数の科目の金額について「発送料へ」「これはやめた方が」「細かく振るか」などと記載し修正を提案している(認定事実⑵キ)。これらの割り振りは被告らの実支給額と総会用給与表との差額を事業費の各科目に割り振るというものであり、被告Bがこのこ とを認識せずに上記提案をしていたとは考えられない以上、被告Bは被告Aが被告らの実支給額を理事会や総会等に対して秘匿していることを認識していたものと認められる。被告Bが、平成28年度又は平成29年度以降に被告Aから依頼されて「仮決算」という決算データのコピーの入力作業をしていたこと(同⑵キ)や、平成29年7月に被告Aとともに過去の伝票や 領収書等の会計書類を廃棄したこと(同⑵キ)も、被告Bが上記同様の認識を有していたことを裏付ける事情といえる。そして、これらの出来事に際して、被告Bが被告Aの相談や依頼を断る態度を示していたことが一切うかがわれないことからすると、被告Aが被告らの実支給額を理事会や総会等に対して秘匿していることについて、被告Bはそれ以前から認識していたと解 するのが相当であり、平成22年4月当初から本件説明に疑問を持っていたことと整合する。 以上によれば、被告Bは、遅く に対して秘匿していることについて、被告Bはそれ以前から認識していたと解 するのが相当であり、平成22年4月当初から本件説明に疑問を持っていたことと整合する。 以上によれば、被告Bは、遅くとも平成22年4月の給与明細書を受け取った時点又は給与の振込を確認した時点で、本件説明に疑問を持ち、被告らの実支給額についてC前理事長らの承認がないかもしれないとの認識を有 していたにもかかわらず、被告Aによる被告らの実支給額の支給行為を黙認 - 36 - していたものと認められる。 イこれに対し、被告Bは、①平成22年4月、被告Aから、C前理事長が被告らの生活に配慮し、被告らの給与等の増額を承認した旨説明されたところ、E事務局長が退職したことに伴い、被告A及び被告Bの業務量が増加し夜間までの残業が常態化していたのに、時間外手当が明確な形で支払われていな かったことからすれば、給与等の増額には合理的な理由がある、②上司である被告AからC前理事長の決定により昇給した旨聞かされたことからすると、部下の立場から疑義を抱かないことは不自然ではない、③平成25年度決算報告書や平成28年度総勘定元帳へのメモの書き込みについては、被告Aからの業務上の指示により、自己の担当業務内の範囲で回答したにすぎな いし、事業費の付け替え行為自体はE事務局長の時代から行われていた、④顧問税理士であるF監事が決算報告書に目を通して不正のないことを確認し、監査会においても監事や担当理事から不正の指摘がなかったなどとして、不法行為は成立しない旨主張する。 しかし、仮に被告Bにつき割増賃金が発生するとしても、前記アで説示し たとおり、平成22年以降の被告Bの月額給与額は平成21年度以前と比較して異常に高額であって、時間外手当相当額としてはあり しかし、仮に被告Bにつき割増賃金が発生するとしても、前記アで説示し たとおり、平成22年以降の被告Bの月額給与額は平成21年度以前と比較して異常に高額であって、時間外手当相当額としてはあり得ない昇給というべきである(時間外手当相当額の昇給である旨の説明があったわけでもない。)し、このような実支給額に関して理事長決裁印のある給与表等は存在せず、被告Bが被告AからC前理事長らの承認を裏付ける客観的な資料を提 示されたことはなかったことからすると、被告Aの口頭での本件説明を信じるのは不合理であるから、上記①及び②の主張には理由がない。 そして、被告Bによる平成25年度決算報告書や平成28年度総勘定元帳に対する修正の提案は、被告らの実支給額と総会用給与表との差額を事業費の各科目に割り振る作業として行っていたものであり、それが実支給額を秘 匿する意味を持つことを認識していなかったとは考えられないから、上記③ - 37 - の主張には理由がない。 また、F監事が決算報告書を確認したからといって、被告AがC前理事長らによる承認を得ていないのではないかという疑問が解消されることにはならないし、原告の監査会において指摘がなかったとしても不自然とはいえないことは、前記⑴キで説示したとおりであるから、上記④の主張には理 由がない。 ウ以上によれば、本件期間中、被告Bは、被告Aが実支給額につきC前理事長らの承認を得ていないかもしれないとの認識を有していたにもかかわらず、被告Aが被告らの実支給額の支給を行うのを黙認し、更には実支給額の秘匿に協力するなどし、被告らにおいて実支給額と総会用給与表記載の給与 等の額との差額を不法に領得し原告に同額の損害を与えたものと認められ、不法行為が成立するというべきである。 ⑷ 給額の秘匿に協力するなどし、被告らにおいて実支給額と総会用給与表記載の給与 等の額との差額を不法に領得し原告に同額の損害を与えたものと認められ、不法行為が成立するというべきである。 ⑷ 前記⑵及び⑶によれば、被告Aの不法行為と被告Bの不法行為とが客観的に関連することは明らかであるから、共同不法行為に当たると認められる。 3 争点⑵(損害)について ⑴ 前記2のとおり、原告には、別紙1①~⑩(給与等対照表1~10)記載のとおり、被告らの実支給額と総会用給与表記載の給与等の額との差額合計1億5814万1298円の損害が発生したと認められる。 ⑵ これに対し、被告Bは、自らの時間外手当相当額を損害額から控除しなければならない旨主張する。 しかし、被告らの実支給額の振込は、時間外手当として支給されたものではないから、仮に時間外手当が発生していたとしても、これは割増賃金請求権の有無として解決すべき問題であり、これを上記損害額から控除することはできないというべきである。この点をおいても、弁論の全趣旨によれば、原告では、職員の実労働時間についてタイムカード等による勤怠管理がされておらず、具 体的な時間外手当の発生を認めるに足りる証拠はない。 - 38 - したがって、被告Bの上記主張には理由がない。 ⑶ また、被告らは、原告には、被告らの給与等が増額していた事態について速やかに調査を行い、その是非を検討した上で損害の拡大を防止すべき義務があるのに、この義務を怠った過失があるなどとして、過失相殺すべきである旨主張する。 しかし、被告Aは、事務局長の地位を利用して給与等を不正に受給した上、理事会や総会等に実支給額が知られないように、総会用決算報告書を作成するなどしていたこと、被告Bは、事務局次長とい する。 しかし、被告Aは、事務局長の地位を利用して給与等を不正に受給した上、理事会や総会等に実支給額が知られないように、総会用決算報告書を作成するなどしていたこと、被告Bは、事務局次長という立場にありながら、被告Aが不正を働いているかもしれない旨認識していたのに、これを黙認して自ら不正の利益を得た上、実支給額の秘匿行為にも加担したこと、被告Aの不法行為を 告発することを期待できる者は被告B以外にはいなかったことなどを踏まえると、原告が本件期間中に被告らの不正受給を発見できなかったことをもって過失相殺すべきとはいえない。 ⑷ 以上によれば、原告の損害は1億5814万1298円と認められる。 4 争点⑶(被告Aの懲戒解雇の有効性)及び同⑷(被告Aの賃金請求権の有無及 び金額)について⑴ 前記2及び3のとおり、被告Aは、事務局長の地位を利用して、9年以上にもわたって理事長の承認のない実支給額について支給手続を行い、これにより、実支給額と総会用給与表記載の給与等の額との差額として、自らは1億0020万1781円を不法に領得し、被告Bをして5793万9517円を不法に 領得させたものと認められるところ、これは、原告に対する重大な背信行為であり、就業規則25条3号及び4号所定の懲戒事由に該当することは明らかである上、行為の悪質性、損害額の大きさ、被害弁済が一切されていないことなどを考慮すると、懲戒解雇の社会的相当性は認められる。 ⑵ これに対し、被告Aは、原告に対してユニオンに加盟した旨を報告してから 間もなく、原告から職務停止と自宅待機を命じられ、懲戒解雇されたところ、 - 39 - この経緯からすれば、懲戒解雇は労組法7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入に当たる旨主張する。 しかし、被告 から職務停止と自宅待機を命じられ、懲戒解雇されたところ、 - 39 - この経緯からすれば、懲戒解雇は労組法7条1号の不利益取扱い及び同条3号の支配介入に当たる旨主張する。 しかし、被告Aの解雇通知書には、懲戒解雇の理由として、被告Aの前記不法行為と虚偽の領収証を用いて原告から経費名目の金員を不正受給したことが記載されているところ(前提事実⑹)、前者については前記2⑵のとおり不 法行為が成立すると認められ、後者については被告Aが事実を認めていること、懲戒解雇の社会的相当性が認められること(前記⑴)に照らせば、被告Aの懲戒解雇がユニオンに加入したことを理由として行われたものとは認められず、労働組合に対する支配介入として行われたものとも認められない。 したがって、被告Aの上記主張には理由がない。 ⑶ 以上によれば、被告Aの懲戒解雇は有効であり、懲戒解雇が無効であることを前提とする被告Aの請求はいずれも理由がない。 5 争点⑸(被告Bの懲戒解雇の有効性)及び同⑹(被告Bの賃金請求権の有無及び金額)について⑴ 前記2及び3のとおり、被告Bは、9年以上にもわたって、被告Aが被告ら の実支給額の支給を行うのを黙認し、自らの実支給額と総会用給与表記載の給与等の額との差額5793万9517円を不法に領得し、被告らの実支給額と総会用給与表記載の給与等の額との差額を事業費に割り振った総会用決算報告書等の作成に協力したものであるところ、これは、原告に対する重大な背信行為であり、就業規則25条3号及び4号所定の懲戒事由に該当することは明 らかである上、行為の悪質性、損害額の大きさ、被害弁済が一切されていないことなどを考慮すると、懲戒解雇の社会的相当性は認められる。 ⑵ 被告Bは、①会計帳簿を容易に精査できる立場にあった 明 らかである上、行為の悪質性、損害額の大きさ、被害弁済が一切されていないことなどを考慮すると、懲戒解雇の社会的相当性は認められる。 ⑵ 被告Bは、①会計帳簿を容易に精査できる立場にあった原告理事ら役員や、被告らの給与等の額を知り又は知り得べき立場にあったGに対しては、何ら処分がされておらず、公平性を欠く、②調査委員会による事情聴取においては、 給与表を上回る給与等を受給したこと、理事長や他の理事に確認・報告しなか - 40 - ったこと及び平成28年度総勘定元帳への書込みについて聴取されたにすぎず、被告Bのいかなる行為を違法行為として問疑しているのか明らかではなく、手続的相当性を欠く、③被告Bが実支給額の受給に主導的役割を果たしたものではないこと、被告Bがこれまで問題行動を起こしていないこと、事務局次長として原告の事務局において中心的役割を担ってきたことなどからすると、懲 戒解雇は重過ぎるなどと主張する。 しかし、前記2⑴キ、で説示したとおり、原告の監査会では、総勘定元帳等の量が膨大であること、理事長や副理事長、F監事の相監事が会計の専門家ではなく、F監事に会計監査が一任されていたこともあり、F監事が総会用決算報告書と総勘定元帳等の記載との不一致を指摘しなければ、このことが問 題となることはない状況であった。また、Gは、被告Aから職員の給与総額の記載のある割り振り前の振替伝票を渡され、職員の給与総額が増加したことを認識し、被告らの給与等が高すぎるのではないかとの疑問を抱くことになったものの、上記振替伝票が被告らによる不正受給の確たる証拠となるわけではなく、それが誤りであった場合のリスクに照らしても、上司である被告らの不正 を告発することは容易でなかった。他方で、被告Bは、被告Aが理事長の承 が被告らによる不正受給の確たる証拠となるわけではなく、それが誤りであった場合のリスクに照らしても、上司である被告らの不正 を告発することは容易でなかった。他方で、被告Bは、被告Aが理事長の承認なく被告らの実支給額を支給するのを黙認し、更には実支給額の秘匿に協力するなどし、被告らにおいて、実支給額と総会用給与表記載の給与等の額との差額合計1億5814万1298円を不法に領得したことを踏まえると、被告Bに対する懲戒解雇が公平性を欠くものとはいえないし、上記③の主張を考慮し ても、懲戒解雇が重過ぎる処分であるともいえない。 また、認定事実⑶イ、エによれば、被告Bは、事情聴取の際、総会用給与表記載の給与等を上回る実支給額を受領したことについて、被告Aから理事長の承認がある旨説明を受けた旨、上乗せ分の事業費の割り振りについて理事長や理事に相談したことはない旨、懲戒解雇の理由に対する言い分を述べている上、 理事長決裁を受けた正規の給与等を上回る給与等を受領したことについて釈 - 41 - 明を求められ、書面により回答しているのであって、弁明の機会は十分に与えられていたのであるから、懲戒解雇の手続には相当性が認められる。 したがって、被告Bの前記主張には理由がない。 ⑶ 以上によれば、被告Bの懲戒解雇は有効であり、懲戒解雇が無効であることを前提とする被告Bの請求はいずれも理由がない。 第4 結論以上によれば、原告の請求は理由があるから認容し、被告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言については、相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第11部 裁判長裁判官須賀康太郎 なお、仮執行免脱宣言については、相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第11部 裁判長裁判官須賀康太郎 裁判官伊藤渉 裁判官鬼頭忠広

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