令和7(ネ)10003 商標権移転登録手続請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月19日 知的財産高等裁判所 2部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和4(ワ)2110
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令和7年6月19日判決言渡令和7年(ネ)第10003号商標権移転登録手続請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和4年(ワ)第2110号)口頭弁論終結日令和7年5月13日判決 控訴人 X同訴訟代理人弁護士高橋淳 A遺産管理人 被控訴人 Y同訴訟代理人弁護士中川康生同村井隼 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 3 この判決に対する控訴人による上告及び上告受理のための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由(注)本判決で用いる主な略語の定義は、次のとおりである(原判決で定義され たものも含む。)。 原告 :控訴人(1審原告)被告 :被控訴人(1審被告)A :A(平成29〔2017〕年9月7日死亡)B :Aの夫であったB(平成11〔1999〕年1月16日死亡) ガボラトリー社:Bと原告が平成6〔1994〕年に設立したとされるシル バーアクセサリー商品の製造販売等を行う会社本件商標権1:原判決別紙商標権目録1記載の商標権本件商標権2:原判決別紙商標権目録2記載の商標権本件商標権3:原判決別紙商標権目録3記載の商標権本件各商標権:本件商標権1、本件商標権2及び本件商標権3の総称 本件各商標権に係る商 紙商標権目録2記載の商標権本件商標権3:原判決別紙商標権目録3記載の商標権本件各商標権:本件商標権1、本件商標権2及び本件商標権3の総称 本件各商標権に係る商標は「本件各商標」という。 本件合意 :原告とBとの間でされた本件各商標に関する権利を原告が保持する旨の合意本件株主間契約:原告とAとの間で平成13(2001)年に締結された株主間契約(甲3の1・2) 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被告は、原告に対し、本件各商標権について、移転登録手続をせよ。 3 被告は、原告に対し、5000万円及びこれに対する令和5年6月24日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要⑴ 本件は、原告が、本件各商標権の商標権者として登録されているAの遺産管理人である被告に対し、次の①から③までの請求をする事案である。原審が、原告の請求をすべて棄却したところ、原告がこれを不服として控訴した。 ① 本件各商標権の移転登録手続請求原告が、Aの夫であったBとの間で本件合意をしたことにより本件各商標に関する権利を取得し、Bの相続人であるAとの間で締結した本件株主間契約においてもこれを確認したにもかかわらず、Aにおいて本件各商標につき商標権者として移転登録又は設定登録を受けたことは、公 序良俗(商標法4条1項7号、民法90条)に反して無効であり、原告 が本件各商標の真の所有者である旨主張して、真正な登録名義の回復を原因とする本件各商標権の移転登録手続を請求するもの。 ② 不法行為に基づく損害賠償請求原告が、前記①のAによる本件各商標権の移転登録又は設定登録の取得により本件各商標に関する原 録名義の回復を原因とする本件各商標権の移転登録手続を請求するもの。 ② 不法行為に基づく損害賠償請求原告が、前記①のAによる本件各商標権の移転登録又は設定登録の取得により本件各商標に関する原告の権利が侵害された旨主張して、不法 行為に基づき、27万6533円の損害賠償及びこれに対する令和5年6月24日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。 ③ 不当利得返還請求原告が、Aにおいて本件各商標を含む商標に関する権利が原告に帰属す ることを知りながら、原告に無断でこれを付した商品を販売し、5億3337万3606円の利得を得た旨主張して、不当利得に基づき、その一部である4972万3467円の返還及びこれに対する令和5年6月24日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延利息の支払を請求するもの。 ⑵ 国際裁判管轄及び準拠法ア国際裁判管轄前記⑴①から③までの各請求のうち、①の移転登録手続請求は、登記又は登録に関する訴えであって、登録すべき地が日本国内にあるから、その管轄権は、日本の裁判所に専属する(民事訴訟法3条の5第2項)。 また、その余の請求については、少なくとも応訴による管轄権が成立していることは明らかである(同法3条の8)。 イ準拠法(ア) Aは米国人であり、死亡時オレゴン州に居住し、同州で夫と同居していたこと等に照らし、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。) 38条3項の規定により、その本国法は、オレゴン州法と認める。そして、 被告は、Aの相続の準拠法(通則法36条)であるオレゴン州法に基づき選任された遺産管理人として、Aの遺産の管理権限を有することが認められる り、その本国法は、オレゴン州法と認める。そして、 被告は、Aの相続の準拠法(通則法36条)であるオレゴン州法に基づき選任された遺産管理人として、Aの遺産の管理権限を有することが認められる。 (イ) 我が国で登録された商標権の得喪の問題及びその手続に関する準拠法は、条理に従い、日本法となると解される。譲渡の原因行為となる債権行 為の準拠法については、後記(ウ)のとおりである。 (ウ) 原告の主張する本件合意は、平成11年1月16日に死亡したBとの間でなされたものであり、通則法の施行日である平成19年1月1日の前にされた法律行為であるから、その成立及び効力についての準拠法は、通則法附則3条3項の規定により従前の例によることになる。本件合意は、 Bと原告がカルフォルニア州会社法に基づき設立した会社であるガボラトリー社の使用する商標に関する権利等を対象とする両者の合意であることに照らし、本件合意の成立及び効力についてはカリフォルニア州法によることが当事者の意思であったと推認される(通則法による全部改正前の法例(以下「旧法例」という。)7条1項)。平成13年に原告とAとの間 で締結されたとされる本件株主間契約の成立及び効力の準拠法も、同様にカルフォルニア州法と認める。 (エ) 原告の主張する不法行為又は不当利得は、通則法施行日の前後にまたがっているが、いずれも原因となる事実及び加害行為の結果が発生した地となるのは日本であるから、通則法施行日前のものについては通則法附則 3条4項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における旧法例11条の規定により、通則法施行日後のものについては通則法14条及び17条の規定により、いずれも日本法が準拠法となる。 2 前提事実等前提事実、争点及び争点に関する当事 る場合における旧法例11条の規定により、通則法施行日後のものについては通則法14条及び17条の規定により、いずれも日本法が準拠法となる。 2 前提事実等前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、後記3のとおり当審にお ける原告の補足的主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中、第2の 2から4まで(原判決3頁17行目から8頁2行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における原告の補足的主張⑴ 原告とAとの間で締結された本件株主間契約の6条にいう「すべての商標、特許、著作権、ロゴ及びサービスマーク」は、当時、ガボラトリー社の事業 において使用されていたすべての商標、すなわち本件各商標を指している。 この点、Aも、米国訴訟において提出した平成19(2007)年12月13日付け陳述書において、本件各商標は、Bが平成4(1992)年から平成6(1994)年まで事業において継続的に使用し、その商標と著作権は、同年のガボラトリー社設立から現在まで、継続的に同社にライセンス供 与されてきたと述べており、被告も、米国訴訟の尋問においてこの事実を認めている。 ⑵ Aは、ガボラトリー社の事業に関し不正行為を行い、矛盾した言動を常習的に行う人物であり、同人に有利な内容の主張や供述は信用することはできない。このようなAの意に沿う供述をする被告の主張や供述も信用すること ができない。 ⑶ したがって、本件株主間契約6条にいう「すべての商標、特許、著作権、ロゴ及びサービスマーク」が具体的に指す商標等が明らかでないとの原判決の認定は誤っており、この認定を理由に本件合意の成立を認めなかった判断は誤っている。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原告とBとの間で本件 体的に指す商標等が明らかでないとの原判決の認定は誤っており、この認定を理由に本件合意の成立を認めなかった判断は誤っている。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原告とBとの間で本件合意が成立したとは認めるに足りないから、本件合意があったことを前提とする原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないと判断する。 その理由は、後記2のとおり原判決を補正し、後記3のとおり当審における 原告の主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」第3 (原判決8頁3行目から10頁1行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正原判決の「事実及び理由」の第3の「2 まとめ」(原判決9頁20行目から10頁1行目まで)を次のとおり改める。 「2 まとめ本件における原告の請求は、いずれも本件合意があったことを前提とするものであるところ、まず、本件各商標権の移転登録手続請求については、我が国の商標権は設定の登録により発生する権利であり(商標法18条1項)、特許法と異なり、商標法中には、商標登録を受ける権利に 関する規定や、冒認出願者に対する権利移転請求権を定めた規定は存在しない(特許法74条1項、123条1項6号参照)。したがって、仮に本件合意があったとしても、原告が本件合意に基づき我が国の商標権を取得することはなく、原告がAに対し冒認出願を理由に本件各商標権の移転登録手続請求権を取得することもない(その他、原告とAとの間 で、本件各商標権の移転に関する個別の合意がされた旨の主張立証もない。)。そして、原告が本件各商標権を一度も取得したことがない以上、真正な登録名義の回復を原因とする移転登録手続請求権が認められる余 で、本件各商標権の移転に関する個別の合意がされた旨の主張立証もない。)。そして、原告が本件各商標権を一度も取得したことがない以上、真正な登録名義の回復を原因とする移転登録手続請求権が認められる余地もないというべきである。したがって、本件各商標権の移転登録手続請求は、そもそも理由がない。その余の各請求についても、本件合意の 存在が認められない以上、その余の点について判断するまでもなく、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権及び不法行為に基づく損害賠償請求権のいずれも有しない。」 3 当審における原告の主張について⑴ 原告は、本件株主間契約6条の「すべての商標、特許、著作権、ロゴ及び サービスマーク」は本件各商標を指していると主張する。 しかし、同条は、「原告が所有し、ガボラトリー社の事業に使用されているすべての商標…」(Alltrademarks…ownedby X andusedinthecorporatebusiness)と記載しているだけで、「ガボラトリー社の事業に使用されているすべての商標、特許、著作権、ロゴ及びサービスマーク」が原告の所有に係るものである旨記載されているわけではない。そして、具体的 に本件各商標が同条にいう「原告の所有するすべての商標」(Alltrademarks…ownedby X)に含まれるのか否かについては、本件株主間契約に係る契約書(甲3)の他の条項をみても、何ら明らかにされていない。 したがって、本件株主間契約が準拠法上有効に成立していたとしても、本件株主間契約を根拠に、本件各商標について原告が権利を有することを推認す ることができないことは、前記引用に係る原判決判示のとおりである。 ⑵ 原告は、本件各商標はBが平成4年以降使用し、ガボラト 契約を根拠に、本件各商標について原告が権利を有することを推認す ることができないことは、前記引用に係る原判決判示のとおりである。 ⑵ 原告は、本件各商標はBが平成4年以降使用し、ガボラトリー社が設立された平成6年以降は同社がライセンス供与を受けて使用してきたとする米国の訴訟におけるAの供述等は、前記⑴の原告の主張を裏付ける旨主張する。 しかし、原告指摘のAの供述等の内容が事実であるとしても、ガボラトリ ー社がBからライセンスを受けて本件各商標やデザインを事業に使用していたことが認められるにとどまり、本件株主間契約が締結された平成13年の時点において、本件各商標を「原告が所有していたこと」が裏付けられる訳ではない。 結局、本件株主間契約6条は、当時ガボラトリー社が事業に使用していた 「すべての商標、特許、著作権、ロゴ及びサービスマーク」の中に、原告が何らかの権利を有するものが含まれていることを一応推認させるにとどまり、原告が何らかの権利を有していた商標の中に本件各商標が含まれることを裏付けるに足りるものではない。 ⑶ 原告は、Aの供述や被告の主張・供述の信用性がない旨主張するが、そも そも、本件合意に関する原告の供述内容自体、対象となる商標、合意に至る 経緯があいまいで、供述を裏付けるに足りる客観的な証拠もないことは前記引用に係る原判決判示のとおりである。したがって、Aや被告の供述等の信用性に関する原告の主張は、仮にそのとおりだとしても、これにより本件合意の成立を認めるに足りるものではない。 ⑷ なお、原告は、本件口頭弁論終結後、弁論再開の申立書(令和7年5月1 9日付け)とともに書証の提出を申し出ているが、これらの内容を検討しても、以上の認定判断を左右するに足りるも ない。 ⑷ なお、原告は、本件口頭弁論終結後、弁論再開の申立書(令和7年5月1 9日付け)とともに書証の提出を申し出ているが、これらの内容を検討しても、以上の認定判断を左右するに足りるものはないから、弁論再開の必要性は認められない。 4 本件合意の成否について以上によれば、結局、原告が本件各商標に係る権利を取得する根拠となるよ うな契約が準拠法上成立したことを認めるに足りる立証はないというべきであるから、本件合意の成立は認められない。 5 結論よって、原告が本件各商標に係る権利を有することを前提とする本件各請求は、いずれも理由がなく、原告の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、 本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水響 裁判官 菊池絵理 裁判官頼晋一

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