平成28年2月26日判決言渡平成26年(行ウ)第502号遺族厚生年金不支給決定取消等請求事件 主文 1 処分行政庁が原告に対し平成25年3月6日付けでした遺族厚生年金を支給しない旨の決定を取り消す。 2 処分行政庁は,原告に対し,平成24年8月14日受付に係る遺族厚生年金の支給裁定をせよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文1項及び2項と同旨第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は,原告が,法律上の婚姻関係にあったaが平成24年▲月▲日に死亡した後,同人の配偶者(妻)として遺族厚生年金の裁定を請求した(同年8月14日受付)ところ,処分行政庁(厚生労働大臣)から,aの死亡当時,原告がaによって生計を維持していたとは認められないとの理由により,平成25年3月6日付けで遺族厚生年金を支給しない旨の決定(以下「本件不支給処分」という。)を受けたことから,被告に対し,同処分の取消しを求める(以下「本件取消請求」という。)とともに,処分行政庁が原告に対して同年金の支給裁定をすることの義務付けを求めた(以下「本件義務付け請求」という。)事案である。 2 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは,別紙「関係法令等の定め」記載のとおりである(以下,厚生年金保険法を「厚年法」,同法施行令を「厚年法施行令」,「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」を「本件認定基準」という。)。 3 前提事実(当事者間に争いがない事実か,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 当事者等ア原告(昭和14年▲月▲日生)は,昭和37年▲月 ▲ 日,a(昭和9年▲月 ▲ 日生)と婚姻し,長男b(昭和38年▲月▲日生。以下「長男」という。)及び二男c(昭和4 実)(1) 当事者等ア原告(昭和14年▲月▲日生)は,昭和37年▲月 ▲ 日,a(昭和9年▲月 ▲ 日生)と婚姻し,長男b(昭和38年▲月▲日生。以下「長男」という。)及び二男c(昭和42年▲月▲日生。以下「二男」という。)をもうけた(乙1)。 イ aは,平成24年▲月▲日に死亡し,このとき厚年法上の被保険者であった者(老齢厚生年金の受給権者)であった。 ウ d(昭和25年 ▲ 月 ▲ 日生。)は,aと不貞関係にあった者であり,aの死亡日の翌日である平成24年▲月▲日,その同居者としてaの死亡届を提出した(甲13,乙1,7,弁論の全趣旨)。 (2) 原告,a及びdとの関係等ア aと原告は,昭和62年4月,福島県A市α×番地の○から,B市β×番○号に住民票を移動した。同住所地には,aが所有者として登記されている土地及び自宅建物(以下「B市の自宅」という。)がある。(甲4,乙1,6,弁論の全趣旨)イ aは,平成22年7月21日,原告と同居していたB市の自宅を出て,石川県C市γ×番地○○(以下「C市のアパート」という。)○号に移り住むとともに,間もなく自身の住民票も移動し,原告と別居状態となった(以下「本件別居」という。)。他方,dは,C市のアパートの1階に居住していたところ,その後,aと同居するに至った。(乙1,6~8,弁論の全趣旨)ウ原告は,同年9月,横浜地方裁判所 E 支部に対して,a及びdを被告として,不法行為(不貞行為及び悪意の遺棄)に基づく損害賠償請求訴訟(同庁平成22年(ワ)第1022号事件。以下「別件損害賠償請求訴訟」という。)を提起した(甲13,弁論の全趣旨)。 エ aは,同年11月25日,一切の財産をdに遺贈する旨の遺言公正証書(乙11)を作成した。なお,当該公正証書遺言については,原告 損害賠償請求訴訟」という。)を提起した(甲13,弁論の全趣旨)。 エ aは,同年11月25日,一切の財産をdに遺贈する旨の遺言公正証書(乙11)を作成した。なお,当該公正証書遺言については,原告並びに長男及び二男がd等に対して当該遺言の無効確認等を求めて東京地方裁判所に提起した訴訟(同庁平成24年(ワ)第25009号事件。以下「別件遺言無効確認請求訴訟」という。)において,平成27年2月25日,当該遺言の無効をdとの間において確認すること等を内容とする和解が成立した。(甲18,乙11,弁論の全趣旨)オ原告は,平成24年6月,横浜家庭裁判所 E 支部に対して,aを相手方として,夫婦関係(離婚等)調停の申立て(以下「本件調停申立て」という。)をした(乙20,21,弁論の全趣旨)。 カ aは,同年▲月▲日に死亡した。この当時,aの住民票上の住所は C市のアパート○号室にあり,原告の住民票上の住所とは異なっていた。 (乙1,6,8,弁論の全趣旨)キ原告は,aの死亡後,別件損害賠償請求訴訟において,aに対する請求を取り下げた。同訴訟において,横浜地方裁判所 E 支部は,平成25年7月29日,原告のdに対する請求につき,損害賠償金550万円(慰謝料500万円,弁護士費用50万円の合計額)及びこれに対する遅延損害金の支払を認容(一部認容)する判決を言い渡した。(甲13,弁論の全趣旨)(3) 本件不支給処分等ア原告は,平成24年8月14日(受付日),処分行政庁に対し,aの死亡当時,aによって生計を維持していた配偶者であるとして,遺族厚生年金の裁定請求をした(以下「本件裁定請求」という。乙2)。 処分行政庁は,平成25年3月6日付けで,原告に対し,原告がaの死亡当時においてaによって生計を維持されていたとは認められないとし 年金の裁定請求をした(以下「本件裁定請求」という。乙2)。 処分行政庁は,平成25年3月6日付けで,原告に対し,原告がaの死亡当時においてaによって生計を維持されていたとは認められないとして,本件不支給処分をした(甲1)。 イ原告は,平成25年3月29日(受付日),審査官に対し,本件不支給処分を不服として審査請求をした(乙3)。 審査官は,同年9月30日付けで,同審査請求を棄却する旨の決定をした(甲2)。 ウ原告は,同年11月21日(受付日),審査会に対し,上記イの審査官の決定を不服として再審査請求をした(乙4)。 審査会は,平成26年4月28日付けで,同再審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲3)。 エ原告は,同年10月10日,本件訴訟を提起した。 4 争点及び争点についての当事者の主張本件における争点は,aの死亡当時,原告がaによって生計を維持していたといえるか否か(厚年法59条1項。以下「生計維持要件」という。)であり,具体的には,(ⅰ)本件につき本件認定基準3「生計同一に関する認定要件」の(1)「認定の要件」①(以下「生計同一要件」という。)を適用すべきか否か,(ⅱ)本件は生計同一要件を充足するか否か,(ⅲ)本件は本件認定基準1(1)ただし書(以下「例外条項」という。)に該当するか否かである。 (原告の主張の要旨)(1) 生計維持要件の解釈等ア厚生年金制度は,厚年法1条の目的に従い,法人事業者に対して加入を義務付けている制度であり,労働者の老後の拠り所となる制度である。したがって,厚年法に基づく遺族厚生年金の支給要件は,「遺族の生活の安定と福祉の向上」という同法の目的に照らして実質的な解釈がされるべきであり,形式的かつ狭義の解釈は認められない。 厚年法は,具体的な支給要件を同法施行令に委任して 年金の支給要件は,「遺族の生活の安定と福祉の向上」という同法の目的に照らして実質的な解釈がされるべきであり,形式的かつ狭義の解釈は認められない。 厚年法は,具体的な支給要件を同法施行令に委任しており(同法59条4項),同法の「その者によって生計を維持したもの」(同条1項)という要件を「その者と生計を同じくしていた者」(同法施行令3条の10)としているが,政令は,法の趣旨に反してはならないから,厚年法施行令の「その者と生計を同じくしていた者」も,同法に従って同義に解釈・運用されなければならない。 イ本件認定基準の生計同一要件について本件認定基準の生計同一要件は,厚年法の定める生活維持関係に比し,極めて限定的であり,そのごく一部を切り取っているにすぎない。この要件は,事実婚,重婚的内縁関係に適用されるべきものであり,法律婚の配偶者に関する規定ではない。 すなわち,法律婚である夫婦においては,民法上,扶養義務があり(民法752条),通常は,相互に生計を維持しており,生計維持関係が存在することとなり,実質的に離婚状態にない限りは,法的義務からも社会通念上も生計維持関係が認められる。他方,事実婚の配偶者とは,「婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者」(厚年法3条2項)であり,厚年法上も,単なる内縁関係や事実婚を超えて,法律婚と同様の事情にある者のみ遺族としての「配偶者」と認められる。しかるに,生計同一要件は,事実婚や重婚的内縁関係における認定の判断基準として策定されてきたものである。事実婚関係においては,法律婚のように扶養義務に基づく生計維持関係がないからこそ,どのような基準で生計を維持しているものと認めるかという問題を解決するため,本件認定基準を含む通達により,「生計維持関係」の要件を具体化させるために うに扶養義務に基づく生計維持関係がないからこそ,どのような基準で生計を維持しているものと認めるかという問題を解決するため,本件認定基準を含む通達により,「生計維持関係」の要件を具体化させるために「生計同一」の基準を設けることとなったのである。 そして,法律婚の場合につき,「生計同一」のみを判断基準として厚年法の趣旨及び社会実態に反する運用を行わないよう,本件認定基準1(1)に「ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。」(例外条項)と付け加えられたのである。 例えば,離婚を前提としない別居のケースは,例外条項が適用されるのであり,生計同一がないと機械的に判断されてはならず,実態が生計維持関係にあるかが判断される。後記のとおり,本件は,離婚を前提とした別居ではなく,まさに例外条項が適用されるべき実態にある。 したがって,法律婚の配偶者に対して,本件認定基準において縮減された生計同一要件のみに基づき,生計維持関係がないとして不支給処分を行うことは厚年法の趣旨を逸脱した違法がある。 (2) 例外条項により生計維持関係が認められるべきことア原告がaにより生計を維持していたこと原告は,昭和37年▲月にa(被保険者)と婚姻し,その後,aが平成22年7月に家出(本件別居)をするまでの48年余りの間,専業主婦として家計をとりしきり,aの収入のみによって生計を維持してきた。また,原告は,本件別居後,平成24年▲月にaが死亡するまでの約2年間は,aによって年金等の定期的な収入は取り上げられていたとはいえ,次のとおり,専らaによって生計を維持していた。 (ア) a所有のB市の自宅について原告は,本件別居後も従来どおり,aが 2年間は,aによって年金等の定期的な収入は取り上げられていたとはいえ,次のとおり,専らaによって生計を維持していた。 (ア) a所有のB市の自宅について原告は,本件別居後も従来どおり,aが所有するB市の自宅にて生活し,aの所有する土地上の駐車場を使用している。この住居を賃貸した場合には,約12万5000円程度の賃料が見込まれ,駐車場代としても約1万円程度の使用料が見込まれる(甲4)。さらにaは, B 市の自宅の土地の一部を電柱用地としてe株式会社に賃貸し,その使用料の振込先を原告名義の口座とし(甲5),これを原告に取得させていた。 このように原告の生活の土台として,a所有の住居が提供され,これに付随する副収入も得られているという事情は,原告がaによって生計を維持していたことの重要な事情というべきである。 この点に関して被告は, B 市の自宅が本件別居前に形成された共有財産であり,aが積極的に原告に譲渡したものではないと主張する。たしかに,同自宅は,本件別居前に形成された夫婦共有財産であるが,本件別居により,その全てを原告が使用することとなったものであり,また,同自宅は,登記簿上も全てaが所有するものであり,aが自由に処分できるのであるが,実際に売却されることはなかった。自宅は生活の基礎であり,自宅がなければ別に家を借りざるを得ない重要なものであり,経済的援助の最たるものであって,このように,aが所有するB市の自宅を原告の自由に使わせていたことからも,生計維持関係の存在は明らかである。 (イ) 原告の生活資金について原告は,専業主婦であり,その生活資金を含めた婚姻費用は,aの収入を原資としてaから不定期に支給されており,本件別居までに原告には多少の蓄えがあった。 また,f病院に支払ったaの治療費につき,平成2 は,専業主婦であり,その生活資金を含めた婚姻費用は,aの収入を原資としてaから不定期に支給されており,本件別居までに原告には多少の蓄えがあった。 また,f病院に支払ったaの治療費につき,平成22年3月15日,g生命保険会社から,医療保険金として合計296万1385円が原告名義の口座に振り込まれた(甲6の1・2)。これは,aが既に支払った医療費に対する保険金であるが,原告は,これまでと同様,不定期に支払われる婚姻費用としてこれを受け取っている。保険金受取人は原告と指定されており,これはaも承知の上のことである。この保険金は,aが支払ってきた保険料を原資とし,その対価として支払われたものであるので,aからの援助であり,原告は,これを原資として生計を営んでおり,aによって生計を維持していたといえる事情である。 この点に関して被告は,上記の保険会社からの振込みについて,実際に原告の生活費に当てられたのか疑義があり,aが生活費の援助として渡す意思を有していたと思われないことから,生計維持要件は認められないと主張する。しかしながら,原告は,専業主婦であり,その生計に関わる費用は全てaが支出したものであり,aから原告に対しては,必要に応じて支払われるものであり,もともとの費目を問わず,生活費を支出していた。被保険者であるaからの経済的援助によって原告が暮らしていたという関係が認められる本件において生計維持関係があることは明らかである。 (ウ) 本件別居時の財産について本件別居後,aは,企業年金の振込口座を変更し,原告にはaからの定期的な生活費の入金がなくなった。 他方,原告は,平成22年7月21日の本件別居の時点で,現金約300万円ないし500万円程度,原告名義の預貯金合計約340万円程度(h銀行の預金(甲23)及びi銀行の貯 生活費の入金がなくなった。 他方,原告は,平成22年7月21日の本件別居の時点で,現金約300万円ないし500万円程度,原告名義の預貯金合計約340万円程度(h銀行の預金(甲23)及びi銀行の貯金(甲24))及びj証券株式会社取扱いの証券合計約438万円(甲25の1・2)の財産を有していた。これらの現金及び預貯金は,全てaが原告に対して,原告が生活費等に使用することを容認して支給したものであり,株式は,aが本件別居の際にB市の自宅から持ち出さなかったものである。 (エ) 原告が受給している国民年金について原告は,専業主婦であるが,a死亡時を含め,現在も老齢基礎年金を受け取っており(甲24),その保険料は全てaが支払っていたものであり,aの支出によって原告はその生活を維持してきたのである。 (オ) 社会的諸関係の維持について生計維持は,経済行為に限られるものではない。これは,本件認定基準が,住民票が同一か同居であれば経済的援助を不要としていることからも明らかである。また,社会生活を営む人間にとっては,交流関係もその社会的人格を維持するために必要なものであり,援助である。 本件別居後も,原告は,aの元勤務先の関係,友人関係及び親戚等との関係において,aに代わり又は夫婦の代表として,交誼の維持に努めてきた。原告が居住する B 市の自宅には,a宛ての年賀状及び手紙,贈答品等が届いているほか,原告とaの連名を宛名とした郵便物も多く届いたり(甲7),同自宅のあるβ町会から御仏前が支払われたりする(甲17)など,aの社会的交誼関係においては,世間的にも,原告とaが夫婦として取り扱われ,原告が居住している B 市の自宅が拠点となってきた。 また,原告は,本件別居後も,aの妻として,f病院のaの主治医に対して度々その病状についての問 ,世間的にも,原告とaが夫婦として取り扱われ,原告が居住している B 市の自宅が拠点となってきた。 また,原告は,本件別居後も,aの妻として,f病院のaの主治医に対して度々その病状についての問合せをし,同病院に通って説明を受けており(甲15参照),aの妻であるからこそ,このような説明がされたのである。 加えて,aの死亡後,a名義の口座に支払われていた医療保険(g生命保険会社,k生命保険株式会社)が,何らの手続を行わなくても原告名義の口座に振り込まれるようになった(甲16の1~16の4)。これは,各保険会社が原告をaの配偶者として取り扱っており,aも原告に対して保険金の支払という金銭給付を行う意思を有しており,実際に給付がされる状態であったことを示すものである。 このように原告とaは,本件別居後も,社会生活においては,相互に生活維持関係にあったといえる。 なお,aがdに対して一切の財産を遺贈するとしたaの遺言公正証書(乙11)が存在するが,別件遺言無効確認請求訴訟においてdとの間で和解が成立し,同遺言は無効であることが確認されているほか,aの遺骨を原告に引き渡すことも和解の内容とされており(甲18),和解成立後,速やかにaの遺骨は原告に引き渡され,原告が供養を行った。 dは,aの財産を目的としてaと暮らしていたにすぎず,a自身には興味はなかった。 (カ) 婚姻費用分担の請求について原告は,a及びdを被告として,横浜地方裁判所 E 支部に別件損害賠償請求訴訟を提起した。これは,本件別居後,aから原告に対して生活費の入金がなくなり,婚姻費用分担を請求する場合には,相手方の住所地である石川県 C 市を管轄する家庭裁判所に申立てをしなければならず,その費用がなかったために,損害賠償請求訴訟としたのである。 当該訴訟において,原告 婚姻費用分担を請求する場合には,相手方の住所地である石川県 C 市を管轄する家庭裁判所に申立てをしなければならず,その費用がなかったために,損害賠償請求訴訟としたのである。 当該訴訟において,原告は,適正な婚姻費用の分担について,代理人弁護士を通じて,しばしば相手方と交渉もしており,提案もしたが,この時点では合意には至らなかった(甲8)。 このように原告は,一貫して,aが正当に生計維持の責任を果たすよう求め続けていた。 この点に関して被告は,原告がaに対して婚姻費用の分担について交渉をしたが合意に至らなかったのであるから,生計維持要件を基礎付ける事情とはいえないと主張する。しかしながら,aの認識としては,原告には十分な蓄えを渡してあるというものであり,婚姻費用の分担を行わないというものではなく,このようなaの認識によっても,経済的な援助をしているということができ,婚姻費用分担の調停あるいは審判を提起していたとすれば,法律に基づき婚姻費用の分担は行われたはずである。この婚姻費用の分担に関する交渉は,生計維持関係を基礎付ける事情となる。 (キ) 原告がaの入院先に会いに行ったことについて原告は,一貫して,aは行ったきりにはならず,最後はきっと B 市の自宅に戻ってくると信じており,aの病状を気にかけていた。また,aに何かあった際には,全てを水に流してaの最後を見届け,親族はもとよりaの友人,会社の関係者にも知らせるなどし,恥ずかしくない弔いをしようとも考えていた。 そのような中で原告は,平成23年8月末頃,aが B 市の自宅で療養していたときの担当医であるf病院の医師から,aにl病院への紹介状を書いた旨を聞き,また,平成24年6月上旬,aの郷里の友人から,aが入院している旨を知らされた。そこで,原告は,同月15日,aがl していたときの担当医であるf病院の医師から,aにl病院への紹介状を書いた旨を聞き,また,平成24年6月上旬,aの郷里の友人から,aが入院している旨を知らされた。そこで,原告は,同月15日,aがl病院に入院していることを確認の上,同病院においてaとの面会を申し入れ,また,病状を知りたいと伝えた。しかしながら,同病院の副院長及び看護婦長からは,今は面会はできないと言われ,さらに主治医がいないと断った上で,病状については個人情報保護法によって話すことはできないと言われたのである。 イ例外条項の適用があること本件は,離婚を前提とした別居ではない。原告においても離婚の意思はなく,実質上の婚姻費用分担を求める別件損害賠償請求訴訟の提起中であった。他方,aにも離婚の意思はなく,「離婚すると年金半分とられて損だからこのままそっちへいっちゃう」というものであり,当面年金を独り占めするための方便として家出をしたにすぎない。別件損害賠償請求訴訟の判決(甲13)において,aによる本件別居は,特に倫理的見地から悪意の遺棄であると判示されたが,aにしてみれば,年金を独り占めしていても原告の生計維持に関しての役目だけは十分に果たしており,原告には十分な蓄えを渡してあるという認識であった。 aの資力によって専業主婦である原告の生計が全面的に維持されてきたことは紛れもない事実であり,それは本件別居後も基本的には変わりはなく,上記アのとおり,原告は,専らaによって生計を維持していたのである。 また,本件における原告とaの関係は,法律婚の状態が存在しないという状況(離婚の合意がある場合や,長年の間夫婦関係の実態がない場合など)ではない。被保険者である一方の配偶者(a)が,不貞のために一方的に出奔する(悪意の遺棄の不法行為に該当する)ことにより,一時的に 状況(離婚の合意がある場合や,長年の間夫婦関係の実態がない場合など)ではない。被保険者である一方の配偶者(a)が,不貞のために一方的に出奔する(悪意の遺棄の不法行為に該当する)ことにより,一時的に生計維持関係が希薄となったにすぎない。 原告は,aとdの不法行為がなければ何の問題もなく遺族厚生年金が受給できたはずであり,その不法行為によって一方的に同年金の受給権が奪われたのである。本件不支給処分を適法なものと認めるということは,被保険者による不貞という不法行為によって,不法行為がなければ問題なく遺族と認定されていたはずの配偶者において,何の帰責性もないにもかかわらず,遺族と認定されなくなることを認めることに他ならない。遺族は,いつ,一方的に遺族厚生年金の受給権を奪われるか分からない地位に置かれることになり,厚年法1条の目的を没却しかねず,まさに社会通念上妥当ではない。 加えて,本件は,約48年という長期にわたる婚姻期間後に2年弱の期間において被保険者(a)が出奔し,原告は,婚姻費用の分担を求めたにもかかわらず,法律に反して扶養義務が果たされなかった事案であり,原告は,aが死亡するまでの間,数少ないaの資産によって生活をしていたのである。 このような場合に,生計同一要件を形式的に適用して生計維持関係にないとすることは,実態と著しく懸け離れたものとなり,社会通念上妥当性を欠くものといわなけばならない。 なお,別件損害賠償請求訴訟において,原告とaは,婚姻費用の支払方法等についての話合いを行っており,裁判所も様々な婚姻費用分担の和解案を提案したが,その中には離婚した上で財産分与を行うという提案もあった。原告は,離婚の意思がないことを裁判所に述べたが,裁判所から検討だけはしてほしいとの強い要請があり,また,離婚自体を損害賠償請求 を提案したが,その中には離婚した上で財産分与を行うという提案もあった。原告は,離婚の意思がないことを裁判所に述べたが,裁判所から検討だけはしてほしいとの強い要請があり,また,離婚自体を損害賠償請求での和解に含むことはできないため,裁判所から検討の前提として離婚調停の申立てを行うよう強く求められた。そこで,原告としては,離婚の意思は全くなかったが,裁判所において和解の話合いを進めるための手続として,やむを得ず本件調停申立てをしたのであり,そのため,原告の記憶にも残っていなかった。 また,原告は,別件損害賠償請求訴訟を提起する前及び同訴訟の中において,代理人弁護士を通じてaと交渉を行い,様々な和解案を提示しており,合意書案(甲8)は,その過程で作成されたもののうちの一つである。 同合意書案の具体的な作成時期は特定できないが,原告の認識によれば,本件別居後に作成されたものであり,原告がaから企業年金を最後に受け取ったのが平成22年6月1日であることから,それ以後の年金支給額の受領者を明確にするため,「平成22年6月」と記載されているものと思われる。 (3) 生計同一要件にも該当すること被告は,原告は生計同一要件を充足しないと主張するが,次のアないしウとおり,上記要件に基づいて検討したとしても,原告は「遺族」と認定されるべきである。 ア被告は,平成22年7月21日の本件別居後,aにおいては原告と同居する意思が失われており,aは,今後,原告と「起居を共にし,消費生活上の家計を一つにする」ことは考えておらず,やむを得ない事情により一時的に住所を異にしていたのではないなどと主張する。 この点,生計同一要件における「単身赴任,就学又は病気療養等」は,別居が一時的であることの例示であると考えられるところ,そもそも,aとdの同居は,平 住所を異にしていたのではないなどと主張する。 この点,生計同一要件における「単身赴任,就学又は病気療養等」は,別居が一時的であることの例示であると考えられるところ,そもそも,aとdの同居は,平成22年7月21日からのものが初めてではなく,平成18年3月に関係を解消するまでは D において同居して不貞行為を継続していたが(甲14参照),同月以降,aは,dとの関係を解消した上で,原告と同居していた。そして,本件別居は,aが年金を独り占めにするという目的によるものであり,原告にとっては悪意の遺棄というやむを得ない事情のために一時的に住所を異にしていたにすぎない。この関係は,確定的なものではなく,平成18年以前においてaとdが同居していたときと同様,悪意の遺棄という事象が解消されれば,再び原告とaは同居したと考えられる。 イ被告は,aから原告に対して,生活費,療養費等の経済的な援助が行われていないと主張する(本件認定基準3(1)①ウ(イ)の(ア)参照)。 しかしながら,この要件は,生計を維持しているかどうかが問題なのであり,被保険者の援助がなければその配偶者が生計に支障を来すという条件さえあれば,生計を維持しているといえる。援助の形態は様々であり,定期的な金銭の給付は生計維持のための一態様にすぎない。 aの原告に対する具体的な援助については,上記(2)アのとおりであり,金銭での援助のみならず,住居や社会関係に至るまで広く存在していた。 ウ被告は,原告とaとの音信につき,双方の代理人弁護士を通じた事務的な連絡にとどまると主張する(本件認定基準3(1)①ウ(イ)の(イ)参照)。 しかしながら,原告は,実質的には婚姻費用の分担を求めるための訴訟(別件損害賠償請求訴訟)を提起し,その中で具体的に婚姻費用の分担についての交渉を行って 定基準3(1)①ウ(イ)の(イ)参照)。 しかしながら,原告は,実質的には婚姻費用の分担を求めるための訴訟(別件損害賠償請求訴訟)を提起し,その中で具体的に婚姻費用の分担についての交渉を行っており,このような形態をとっているのは,原告が度々石川県まで行き,直接aと交渉する費用を捻出することが困難であったためにすぎない。婚姻費用の分担の請求について代理人弁護士を通じて行うことは通常のことであり,代理人弁護士が原告を代理してaと行っていた交渉は,事務的な連絡にとどまるものではなく,まさに音信であった。 加えて,代理人弁護士が交渉する事項以外は,親戚(aの姪)を通じて連絡をしており,原告とaとの間には定期的な音信があった。 (4) 本件各請求について上記のとおり,原告は,aによって生計を維持していた者といえるので,遺族厚生年金の支給要件である厚年法59条1項の生計維持関係があり,原告に対して遺族厚生年金を支給する義務がある。 しかしながら,処分行政庁が厚年法の趣旨を狭めた運用を行った結果,その要件を満たさないとしてした本件不支給処分は,同法の趣旨を超えて,裁量権の範囲を逸脱又は濫用してなされたものであるため,同処分は違法であり,取り消されるべきである。 したがって,原告は,行政事件訴訟法30条,37条の3に基づき,処分行政庁に対し,原告に遺族厚生年金の支給裁定をすることの義務付けを求める。 (被告の主張の要旨)(1) 生計維持要件の解釈等についてア遺族厚生年金の制度趣旨等厚年法上,配偶者が遺族厚生年金の支給を受けるためには,被保険者又は被保険者であった者(以下単に「被保険者」という。)の配偶者等であること(以下「配偶者要件」という。)のみならず,生計維持要件も満たす必要があるとされているのは,遺族厚生年金は, には,被保険者又は被保険者であった者(以下単に「被保険者」という。)の配偶者等であること(以下「配偶者要件」という。)のみならず,生計維持要件も満たす必要があるとされているのは,遺族厚生年金は,死亡した者の年金を相続するという性格の給付ではなく,被保険者の死亡によって遺族の生活の安定が損なわれること防止し,被保険者によって生計を維持されていた遺族の生活保障を目的とする公的給付であり,被保険者の死亡によって生計の途を失う者,すなわち生活保障の必要性がある者に限って,遺族厚生年金を支給してその生計を保護しようとするものであるからである(乙5参照)。 イ本件認定基準の内容及びその合理性等(ア) 遺族厚生年金は,被保険者の死亡に際して,それまで被保険者に生計維持されていた者が生活基盤を失うことがないよう遺族の生活保障を目的とするものであって,公的年金制度の枠組みの中で,その給付を迅速かつ適正に,滞りなく行う必要があるところ,生計維持関係の認定は,被保険者とその配偶者の家計収支に関する事実関係に基づいてされるべきものであるが,保険者である厚生労働省において,個々の配偶者等の様々な消費支出について,それが死亡した被保険者の収入によって賄われたか否かを逐一審査することを要するとすれば,遺族厚生年金の給付を滞らせる事態に陥り,ひいては被保険者の死亡に際しての遺族の生活保障を目的とした遺族厚生年金の制度趣旨を没却することになるのであって,現実的ではない。 そこで,厚年法59条4項は,同条1項の規定の適用上,被保険者によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は政令で定めるとし(同条4項),これを受けた同法施行令3条の10は,生計維持要件を満たす者について,被保険者の死亡の当時,その者と生計を同じくしていた者であって,厚生労働 との認定に関し必要な事項は政令で定めるとし(同条4項),これを受けた同法施行令3条の10は,生計維持要件を満たす者について,被保険者の死亡の当時,その者と生計を同じくしていた者であって,厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者と定めている(なお,上記の遺族厚生年金の制度趣旨に照らせば,生計維持要件につき,同施行令において,生計同一要件及び収入要件をもって解釈することは委任の趣旨に沿うものと解され,何ら委任の範囲を逸脱するものではない。)。そして,この政令を受けて本件認定基準が定められているのである。 (イ) 厚生労働大臣は,本件認定基準により生計維持関係の認定基準を定めており,本件認定基準は,認定日(被保険者の死亡日)において,生計同一及び収入に関する認定要件を満たす場合に生計維持関係があるものと認定するものとされている(なお,生計維持要件の内容については,上記(ア)のとおり,厚年法59条4項の定めを受けた同法施行令3条の10において,生計同一を要するものと定めているのであり,本件認定基準において新たな要件を設けるものではない。)。 そして,本件認定基準の定める生計同一性の認定基準は,住民票上同一世帯ではなく,かつ,住所も異にする場合には,当該死亡者と配偶者は,原則として生計を同一にしているとはいえないものの,被保険者においてもともと同居の意思があるにもかかわらず,単身赴任,病気療養等の事情によって一時的に住所や世帯,起居等を異にするに至った場合には,その状態が,一定期間経過後に解消されることが前提とされていると認められることによるものである。また,本件認定基準は,上記(ア)の厚年法施行令を受けて定められたものであり,住民票上の世帯及び には,その状態が,一定期間経過後に解消されることが前提とされていると認められることによるものである。また,本件認定基準は,上記(ア)の厚年法施行令を受けて定められたものであり,住民票上の世帯及び住所を基本としつつ,これを異にする場合でも実際の消費生活上の家計の状況や就業,就学,病気療養の必要といった事情を考慮して事案に応じて生計の同一性を判断することとしており,被保険者やその配偶者の生活の実態に即して,現実的な観点から社会通念上妥当な結論を導き得る基準となっているものということができ,遺族厚生年金の制度趣旨にも合致する合理的な基準であるといえる。さらに,本件認定基準は,例外条項を設けており,生計同一要件により生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,上記要件によらない余地を残している。 ウ生計維持要件の解釈に関する原告の主張について原告は,法律婚である配偶者であれば,扶養義務(民法752条)があることから,通常相互に生計を維持しており,実質的に離婚状態にない限りは,規定を設けるまでもなく,生計維持関係は問題にならないとの解釈を前提に,法律婚の配偶者に対して,本件認定基準の縮減された生計同一の基準のみに基づいて不支給処分を行うことは厚年法の趣旨を逸脱した違法があると主張する。 しかしながら,上記の遺族厚生年金の制度趣旨に鑑みれば,その受給資格は,被保険者や配偶者の生活の実態に即して認定されるべきものであり,また,法律上の配偶者について,民法上の扶養義務を負うことをもって生計維持関係を認める原告の主張は,結局のところ,配偶者要件の充足のみによって遺族厚生年金を受けることができる「遺族」に該当することを認めるに等しく,そのような解釈は,厚年法59条1項が, をもって生計維持関係を認める原告の主張は,結局のところ,配偶者要件の充足のみによって遺族厚生年金を受けることができる「遺族」に該当することを認めるに等しく,そのような解釈は,厚年法59条1項が,配偶者が遺族厚生年金の支給を受けるためには,配偶者要件のみならず生計維持要件をも満たす必要があることを明文で定めていることに反している。 したがって,原告の上記主張は失当である。 (2) 原告が生計同一要件に該当しないことア原告は,aの死亡当時,aと「住民票上同一世帯に属しているとき」(本件認定基準3(1)①ア)及び「住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき」(同イ),「住所が住民票上異なっているが,現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき」(同ウ(ア))のいずれにも該当しない。 イまた,次のとおり,原告は,aの死亡時点において,本件認定基準3(1)①ウ(イ)にも該当しないので,生計同一要件に該当するものとは認められない。 (ア) 原告自身,aがdと「共謀の上,平成22年7月21日(中略)自宅を出奔し,dと不倫の同居生活に入り」,原告を悪意により遺棄したと主張しているとおり,aが C 市のアパートに転居したのは,dとの同居生活を開始することを目的としていたものと認められる。また,aとdは,本件別居後,生活面においても経済的にも,互いに夫婦同様に尽くし,事実上の夫婦と同様の生活を営んでいたものと認められ,aとdの連名を宛名とする年賀状を受信していたことからも,対外的にも夫婦同様に振る舞い,事実上の夫婦として認識していたものと認められる。 加えて,原告は,当初より,a名義の財産の処理に係る合意を条件にaとの別居を容認し(甲8参照),その後,原告とaは,別件損害賠償請求訴訟において,離 事実上の夫婦として認識していたものと認められる。 加えて,原告は,当初より,a名義の財産の処理に係る合意を条件にaとの別居を容認し(甲8参照),その後,原告とaは,別件損害賠償請求訴訟において,離婚を前提とする和解協議を経て,aの死亡当時においては,離婚を前提に別居を継続している状況にあり,その婚姻関係の形骸化が進行していたと評価すべき実態にあったことが認められる。 このように,aにおいて,原告と同居する意思は失われており,今後,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすることは考えていなかったものと解される。したがって,aと原告との本件別居は,単身赴任等のやむを得ない事情により,一時的に住所を異にしていたものとは認められない。 この点,原告は,悪意の遺棄というやむを得ない事情のために一時的に別居していたと主張するが,「悪意の遺棄」といった事情が,同居の意思の存在を前提に,本件認定基準が予定する単身赴任等の事情に当たらないことは明らかである。実際にも,上記のとおりaが原告との同居の意思を有していなかったことは明らかであり,本件別居が一時的なものであり,原告とaが同居を再開するに至る状況にあったとはおよそ認められない。 (イ) 原告は,本件裁定請求に係る審査において,日本年金機構石川事務センターからの照会に対し,aから「年一回程度以上送金,仕送り等」は「なかった」と回答し(乙13),本件訴訟においても,aの本件別居後死亡までの2年未満の間はaによって年金等の定期的な収入はとりあげられていた旨主張しており,aの死亡当時,aから原告に対する「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていた」ものとは認められない。 原告がaからの援助があったと主張するのは,a名義の不動産で生活していたことや本件別居前から管理していた預貯金,本件別居前に 「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていた」ものとは認められない。 原告がaからの援助があったと主張するのは,a名義の不動産で生活していたことや本件別居前から管理していた預貯金,本件別居前に保険会社から振り込まれた保険金等をいうものと思料されるところ,これらは,本件別居前に形成された夫婦の共有財産の利用や,本件別居前に振り込まれた医療保険金にすぎない。また,aは,これらを受忍していたわけではなく,むしろ,原告に対して,これら夫婦共有財産の分与を求めるなどし,aの意に反しているものであり,原告による夫婦共有財産の利用は,いわば事実上かつ一方的な離婚給付,財産分与の先取りと評価すべきである。したがって,aの死亡当時における生計維持関係を根拠付ける事情とはいえない。 また,原告は,被保険者の援助がなければ配偶者が生計に支障を来すという条件さえあれば,生計を維持しているといえるとも主張するが,そもそも原告においてそのような条件を満たしていたと評価することもできない。aからの生活費等の援助がされない状況は,本件別居時からaの死亡時まで変わりがなく,その間,原告は,本件別居前に形成された夫婦共有財産や別居前に振り込まれた保険金等により生活してきたというのであり,aからの援助がないことにより原告の生計に支障を来すというのであれば,それはaによる悪意の遺棄を原因とするものであって,aの死亡を原因とするものとはいえない。 (ウ) 原告は,本件別居後間もなく,別件損害賠償請求訴訟を提起しており,本件別居後のaとの音信や訪問は,双方の代理人弁護士を通じた事務的な連絡がされたというにとどまる。むしろ,aは,本件別居後,dに対して「原告が来ても,絶対に会わない。」などと述べていたことが認められ,また,原告は,平成24年6月15日,aが入院していた た事務的な連絡がされたというにとどまる。むしろ,aは,本件別居後,dに対して「原告が来ても,絶対に会わない。」などと述べていたことが認められ,また,原告は,平成24年6月15日,aが入院していた石川県C 市内のl病院を訪問した際,面会等を断られ,また,その後,aの死亡や葬儀も知らされなかった(乙9,10)。 したがって,本件別居からaの死亡までの間において,原告とaとの間で「定期的に音信,訪問が行われている」とは認められない。 (3) 例外条項にも該当しないこと原告は,①本件別居後もa名義の B 市の自宅で生活するなどしていること,②aの死亡当時,本件別居までにaから不定期に支給されていた婚姻費用の蓄えにより生計を営んでいたこと,③aが保険料を支払ったことによる老齢基礎年金を受給していること,④本件別居後も,社会生活上,aと夫婦として存在し続けていること,⑤別件損害賠償請求訴訟を提起し,同訴訟において適正な婚姻費用の分担について交渉していたこと,⑥aの入院先を訪問したことなどを挙げ,例外条項が適用されるべきであると主張している。 ア上記①の点につき, B 市の自宅は,原告とaが婚姻後に家族で生活するために取得した不動産であると解され,いわば別居前に形成された夫婦の共有財産ともいうべきものである。aも,別件損害賠償請求訴訟において, B 市の自宅を含む所有不動産を「全部売って,妻と半分ずつに(中略)した方が良い」と陳述していた(乙14)。 この点をおくとしても,原告は,aが B 市の自宅を離れ,石川県 C市に転居したことから,事実上,同自宅において生活を継続しているにすぎず,aにおいて,積極的に同不動産を原告に譲渡したものでもなく,これをもって本件別居後におけるaからの生活費等の経済的な援助と認めることはできな から,事実上,同自宅において生活を継続しているにすぎず,aにおいて,積極的に同不動産を原告に譲渡したものでもなく,これをもって本件別居後におけるaからの生活費等の経済的な援助と認めることはできない。 イ上記②及び③の点につき,原告は,平成22年3月15日に保険会社から296万1385円が振り込まれ,これがaからの不定期の婚姻費用の支給であったと主張する。 しかしながら,別件損害賠償請求訴訟において,原告は,aの入院費用につき,aから「俺は金が無いから保険金が出るまで立て替えておいて」と言われて原告が初期の入院費用を出費したことや,受け取った保険金によりaの百数十万円の借入れを返済したことを陳述しており(乙15),上記の保険金が実際に原告の生活費に当てられたものか疑義がある。また,aは,同訴訟において,「私が入院したとき保険金が3社で550万位妻の方に入ったと思います。それがどうなったか」(乙14)と陳述し,aが D 市内に借りていた公団住宅から原告が「勝手に実印や預貯金の通帳類,パスポートなどを持ち出し,退院後,aから,その返却を求められて応じなかった」(乙10)ことから,aが自ら請求手続を行って保険金を取得することができなかったにすぎず,aにおいて,保険金を原告に対する生活費の援助として渡す意思を有していたとは認められない。 この点をおくとしても,厚年法59条1項が,被保険者の「死亡の当時」を基準時として生計維持関係の認定をするものとしているのは,上記の遺族厚生年金の制度趣旨に鑑みれば,被保険者の死亡当時において配偶者が被保険者の死亡によって生計の途を失うか否かを判断することが必要であり,かつ,それで十分だからである。本件において原告は,本件別居以降aの死亡時に至るまで,aから生活費等の援助を受けていなかったもの 保険者の死亡によって生計の途を失うか否かを判断することが必要であり,かつ,それで十分だからである。本件において原告は,本件別居以降aの死亡時に至るまで,aから生活費等の援助を受けていなかったものであり,本件別居以前にaから婚姻費用の支給や国民年金の保険料の支払がされたことがあったとしても,これにより生計維持関係を認めることはできない。 ウ上記④の点につき,原告が,aとの連名を宛名として平成23年の年賀状を受信した事実が認められるが(甲7),そのほかに社会生活上,原告とaが夫婦として存在し続けていたと評価するに足りる証拠はない。 本件においては,原告とaの関係につき,別件損害賠償請求訴訟の判決(甲13)が「aは,自宅を出て,被告(d)と生活を始め,原告との同居協力義務を拒絶するに至ったものであるから,原告に対する悪意の遺棄と認められる」と判示しているとおり,aによる悪意の遺棄により夫婦生活が全く営まれていない状況に至っていたということができる。 この点,原告が,原告とaの社会生活関係が維持され,夫婦であると認識されていたと主張している事情は,いずれも夫婦関係の形骸化を否定する事情として主張しているものと解され,配偶者要件の判断要素となり得ることはあっても,これらをもって生計維持関係あるいは生計同一関係を認めることはできない。 エ上記⑤の点につき,原告は,代理人弁護士を通じて,aと婚姻費用の分担について交渉をしたが,結局,合意には至らなかったというのであるから,生計維持関係を基礎付ける事情とはいえない。 また,aは,平成22年7月の本件別居後,原告に対する生活費等の援助を行わず,同年11月には,一切の財産をdに遺贈する旨の遺言公正証書(乙11)を作成したことに照らせば,aにおいて原告に対する経済的な援助を行う意思があった の本件別居後,原告に対する生活費等の援助を行わず,同年11月には,一切の財産をdに遺贈する旨の遺言公正証書(乙11)を作成したことに照らせば,aにおいて原告に対する経済的な援助を行う意思があったとは認められない。 オ上記⑥の点につき,原告は,平成24年6月15日にaの入院先を訪問したが,面会を断られたというのであり,生計維持要件を基礎付ける事情とはいえない。むしろ,原告とaとの間では,双方の代理人弁護士を介した事務的な連絡があったにとどまり,aの入院についても,原告は友人から聞いて知ったものであり,aからは知らされておらず,また,aの死亡や葬儀についても知らされていなかったのであるから,aは,原告との音信,訪問を避けていたことがうかがわれる。 カ以上のとおり,本件においては,原告とaの本件別居は,平成22年7月,aの悪意の遺棄によって開始され,その後,平成24年▲月のaの死亡に至るまで継続し,その間,aは,全財産をdに遺贈する旨の公正証書を作成し,また,dと事実上の夫婦と同様に生活を営んでいたこと,他方,原告とaは,別件損害賠償請求訴訟において,離婚して財産分与をする内容の和解を協議し,平成24年6月には,原告がaに対して離婚調停を申し立てるに至っていたこと,aから原告に対する送金,仕送り等の経済的援助はされず,原告は,夫婦共有財産というべき B 市の自宅に居住し,夫婦共有財産として形成された預貯金等を生計に当てていたが,aはこれを受忍していたものではなく,むしろ,原告に対してこれらの夫婦共有財産の分与を求めており,原告による夫婦共有財産の利用は,いわば事実上かつ一方的な離婚給付,財産分与の先取りと評価すべきこと,本件別居後の原告とaとの音信や訪問は,双方の代理人弁護士を通じた事務的な連絡がされたにとどまり,むしろ,aは, 有財産の利用は,いわば事実上かつ一方的な離婚給付,財産分与の先取りと評価すべきこと,本件別居後の原告とaとの音信や訪問は,双方の代理人弁護士を通じた事務的な連絡がされたにとどまり,むしろ,aは,原告との面会等を頑なに拒絶していたこと等の事実関係が認められることに照らせば,原告に生計維持関係を認めないことが実態と懸け離れたものになり,あるいは社会通念上妥当性を欠くとする理由が見出せない。 実際,原告は,aとの別居中,aの意に反して B 市の自宅を使用し,夫婦共有財産である預貯金等の明細をaに開示することなく,これを利用して事実上かつ一方的な離婚給付,財産分与の先取りを得ていたと評価できる上,aの死亡により,年金分割の合意を得ることはできなかったが,B 市の自宅を長男及び二男とともに相続してその使用を継続し,本来,財産分与の対象となるべき夫婦共有財産である預貯金等についても,事実上,そのまま確保することになったのであるから,離婚給付,財産分与の先取りとして相応の利益を得たものと評価することができ,要するに,本件別居後,aからの経済的援助がされなくとも,その生計の維持に特段の支障はなかったものと解される。そして,夫婦共有財産としての預貯金等は,原告が挙げるだけでも2000万円を超えており,また,相応の経済的余裕が存することがうかがわれることからすれば,原告が述べる以上の預貯金等の保有がされている可能性もうかがわれる。 そもそもaの原告に対する経済的援助が行われなくなったのは,平成22年7月以降,aが悪意の遺棄により本件別居を開始したことによるものであり,平成24年▲月にaが死亡したことによって生活の安定が損なわれたという関係は認められない。aとdによる不貞行為及び悪意の遺棄による損害は,別途,不法行為に基づく損害賠償請求等により回 るものであり,平成24年▲月にaが死亡したことによって生活の安定が損なわれたという関係は認められない。aとdによる不貞行為及び悪意の遺棄による損害は,別途,不法行為に基づく損害賠償請求等により回復されるべきものであり,このような有責性を,死亡した労働者によって生計を維持されていた遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという目的の下にされる遺族厚生年金の受給資格に関わる生計維持要件の認定に当たり考慮することは,その目的に合致しない不相当な結果を招くことにもなりかねず,相当ではないというべきである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (4) 本件各請求についてア上記のとおり,原告は,厚年法59条1項所定の生計維持要件に該当せず,同条所定の「遺族」に該当するものと認めることはできないから,本件不支給処分に違法はなく,適法である。 したがって,本件不支給処分の取消しを求める原告の本件取消請求は理由がない。 イ厚年法は,遺族厚生年金を含む保険給付について受給権者に申請権を認めている(同法33条)ことから,本件義務付け請求に係る訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号に定めるいわゆる申請型義務付けの訴えに該当するものと解される。 申請型義務付けの訴えについては,行政事件訴訟法上,「当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合」について,当該処分又は裁決が「取り消されるべきもの」又は「無効若しくは不存在である」ときに限り,提起することができるとされているところ(同法37条の3第1項2号),当該要件は本案審理をする前提としての訴訟要件であると解される。したがって,併合提起された取消訴訟等が不適法却下ないし棄却されるべきものである場合は,申請型義務付けの訴えは,訴訟要件を欠くものとして却下さ は本案審理をする前提としての訴訟要件であると解される。したがって,併合提起された取消訴訟等が不適法却下ないし棄却されるべきものである場合は,申請型義務付けの訴えは,訴訟要件を欠くものとして却下されるべきである。 本件においては,上記アのとおり,本件取消請求は理由がなく,棄却されるべきものであるから,本件義務付け請求に係る訴え部分は,訴訟要件を欠くものとして却下されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点について(1) 生計維持要件に関する本件認定基準の内容及び合理性等ア厚年法59条1項は,遺族厚生年金を受けることができる遺族について,被保険者の死亡当時,「その者によつて生計を維持したもの」であることを要件としている。そして,同条4項の委任規定を受けて,厚年法施行令3条の10は,生計維持要件を満たす配偶者について,被保険者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のもの(以下「施行令3条の10前段」という。)その他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者(以下「施行令3条の10後段」という。)と規定している。 他方,厚生労働省年金局長は,日本年金機構理事長宛に,本件認定基準により生計維持要件の認定の取扱うべき旨の通知を発出している。本件認定基準の内容をみると,同認定基準3は,「ア住民票上同一世帯に属しているとき」,「イ住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき」,「ウ住所が住民票上異なっているが,(ア)現に起居を共にし,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき,又は(イ)単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により,住所が住民票上異なっているものの,生活費,療養費等の経済的な援助が行わ を共にし,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき,又は(イ)単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により,住所が住民票上異なっているものの,生活費,療養費等の経済的な援助が行われていることや,定期的に音信,訪問が行われていることといった事実が認められ,上記の事情が消滅したときには,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」,という3類型を挙げ,これらのいずれかに該当するときは,施行令3条の10前段にいう「生計を同じくしていた者」に該当するものとする旨定めている(生計同一要件)。また,同認定基準1(1)ただし書は,このような定めにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,社会通念上妥当性を欠くことになる場合は,例外的な取扱いをする旨定めている(例外条項)。 以上のような本件認定基準の定めは,被保険者によって生計を維持していた遺族の生活を保障するという遺族給付の目的並びに厚年法59条及び厚年法施行令3条の10の規定の内容に沿うものであり,合理的なものということができる。そして,上記の例外条項は,本件認定基準の定める生計同一要件に該当するとはいえない場合であっても,被保険者の死亡当時,被保険者に経済的に依存しなければ生計維持に支障を来していたであろうという関係が認められるような事案において,適用されることが予定されているものと解される。 イ原告は,本件認定基準の生計同一要件は,事実婚の関係にある場合に限り適用されるべきであり,扶養義務(民法752条)のある法律婚の配偶者に対して,本件認定基準の生計同一要件に基づいて不支給処分を行うことは厚年法の趣旨を逸脱した違法がある旨主張する。 しかし,遺族厚生年金の制度は,被保険者が死亡した場合における遺族の生活の安定と福祉 て,本件認定基準の生計同一要件に基づいて不支給処分を行うことは厚年法の趣旨を逸脱した違法がある旨主張する。 しかし,遺族厚生年金の制度は,被保険者が死亡した場合における遺族の生活の安定と福祉の向上を図るという社会保障的性格を有する公的給付であること(厚年法1条参照),また,その受給資格が認められる遺族の範囲は,配偶者等のうち,被保険者の死亡の当時においてその者によって生計を維持していたものに限定される旨の定めが置かれていること(厚年法59条1項)を勘案すると,上記の遺族に該当するか否かは,被保険者や配偶者の生活の実態に即して認定されるべきものであり,扶養義務のある法律婚の配偶者であるからといって原則として生計維持要件が認められるといった解釈を採ることはできない。 また,厚年法59条1項及び4項の規定を受けて設けられた施行令3条の10前段の規定は,被保険者の死亡当時,同居等により被保険者と生計を同じくしていた配偶者であれば,原則として被保険者により生計を維持していたものと推認されるから,当該配偶者が例外的な高収入を自ら得ていると認められる場合を除き,それだけで生計維持要件を満たすことを定めたものと解され,施行令3条の10後段の規定は,前段の規定に該当しない場合であっても,配偶者において,被保険者に経済的に依存しなければその生計の維持に支障を来していたであろうという関係にあるときには,生計維持要件を満たし得ることを念頭において定められたものと解される。 以上のような解釈に照らすと,本件認定基準が,法律上の婚姻と事実婚とを区別することなく,上記のような生計同一要件とその例外条項を置いたことには,合理性があるということができる。 よって,これと異なる原告の主張は採用することができない。 ウ以上を前提に,原告の生計維 ることなく,上記のような生計同一要件とその例外条項を置いたことには,合理性があるということができる。 よって,これと異なる原告の主張は採用することができない。 ウ以上を前提に,原告の生計維持要件該当性について以下検討する。 (2) 認定事実上記第2の3の前提事実,当事者間に争いのない事実,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件別居に至るまでの原告とaとの婚姻生活等について(ア) aは,昭和32年,m株式会社(以下「m」という。)に就職し,昭和37年▲月 ▲ 日,原告と婚姻し,両名の間には,昭和38年▲月▲日に長男が,昭和42年▲月▲日に二男が各出生した。原告は,aと婚姻した後,同人の死亡時に至るまで,専業主婦であった。(前提事実(1)ア,甲3,13,19,乙1,14,15,原告本人,弁論の全趣旨)(イ) aは,昭和47年頃から福島県のnで勤務となり,家族4人で同県内に転居し,その後,同県 A 市内に自宅を新築し(以下「 A 市の不動産」という。),家族4人で転居し,同居していた。aは,上記勤務地で稼働していた昭和55年頃,dと知り合い,親しく交際するようになった。(甲3,13,乙14,15,弁論の全趣旨)(ウ) aは,昭和62年,東京に転勤となり,原告及びaは,福島県 A市からB市の自宅に転居し,家族と同居するようになり,住民票も移動した。なお, B 市の自宅は,昭和44年にa名義でその敷地を取得し,昭和58年に建物を新築し,aを所有者として保存登記をしたものである。(前提事実(2)ア,甲4,13,19,乙6,14,弁論の全趣旨)(エ) aは,平成元年から,転勤に伴い石川県 C 市に単身赴任し,この頃には,dと不貞行為に及んでいた。同年9月頃,原告は,aとdが不貞行為に ア,甲4,13,19,乙6,14,弁論の全趣旨)(エ) aは,平成元年から,転勤に伴い石川県 C 市に単身赴任し,この頃には,dと不貞行為に及んでいた。同年9月頃,原告は,aとdが不貞行為に及んでいることを知り,その後,aとの話合いの結果,aがdとの関係を解消するとの結論に至った。しかしながら,原告は,その後もaとdとの不貞関係が続いているものと認識していた。(甲13,19,乙15,弁論の全趣旨)(オ) aは,平成5年に東京に転勤となり, B 市の自宅に戻り,家族と同居するようになり,その後,平成9年にはmを退職し,平成10年からは D 市内の会社(o株式会社)に勤め始めた。aは,同社に勤め始めた当初は, B 市の自宅から通勤していたが,その後しばらくして,通勤が不便であったため, D 市内の公団住宅を借りて居住するようになったが,週末を含め1週間に数日程度, B 市の自宅に帰っていた。この当時においてもaは,dとの不貞関係を続けていた。(甲3,13,19,乙14,15,原告本人,弁論の全趣旨)(カ) aは,平成17年に D 市の別の会社(株式会社p)に転籍となった(なお,aは,平成24年3月頃に同社を退職した。)。転籍となった後,aに胆管癌が見つかり,aは,平成21年9月17日から平成22年2月9日までf病院に入院した。原告は,aの入院中,上記(オ)のD市内の公団住宅を訪れ,aの実印,パスポート,不動産の権利証,年金証書,同人名義の通帳及び保険証券(g生命保険会社,k生命保険株式会社のものを含む。)等を持ち帰った。その際,原告は,aがdと不貞関係を続けていることを認識した。(甲19,乙9,10,14,15,原告本人,弁論の全趣旨)(キ) aは,f病院を退院した後, B 市の自宅に戻り,同自宅において療養や入通院を は,aがdと不貞関係を続けていることを認識した。(甲19,乙9,10,14,15,原告本人,弁論の全趣旨)(キ) aは,f病院を退院した後, B 市の自宅に戻り,同自宅において療養や入通院をし,体調が良くなった頃からは D 市の会社に出勤をするようになった。この頃,原告は,aとdの不貞関係を疑い,その証拠とするために,原告の子らの協力により,aの D 市の公団住宅にICレコーダーを設置してaの会話を録音するなどしていたところ,aがdに対して「離婚をせずにそっちに行ってしまえば,俺の年金はほぼ全額俺のもの。」,「体力がもう少し回復したらやろうと思っている。」などの発言が録音された。(甲3,19,乙15,原告本人,弁論の全趣旨)(ク) aは,平成22年7月21日,原告に対して「出て行くから」などと述べ,衣類等も持たずに B 市の自宅を出て(本件別居), C 市のアパート○号室に移り住み,住民票も移動した。同アパートの1階にはdが居住しており,aは,当初はdの居室と異なる同アパート○号室で生活していたが,やがてdと同居するようになった。(前提事実(2)イ,甲3,13,19,乙1,6~10,14,15,原告本人,弁論の全趣旨)イ別居前後における家計の状況等(ア) 原告は,本件別居の直前頃の時期においては,aの企業年金(2か月で41万円程度),原告自身の老齢基礎年金,aから不定期に渡される金員等により生活をしていた。しかるに,aは,本件別居の際,自身の企業年金の振込口座を変更したほか,自己名義の口座を全て解約するなどした。そして,aは,本件別居時から死亡時に至るまで,原告に対して送金や仕送り等を一切しなかった。(甲19,21,22,乙13,原告本人,弁論の全趣旨)(イ) 原告は,本件別居当時,現金300万円ないし500万 は,本件別居時から死亡時に至るまで,原告に対して送金や仕送り等を一切しなかった。(甲19,21,22,乙13,原告本人,弁論の全趣旨)(イ) 原告は,本件別居当時,現金300万円ないし500万円程度,原告名義の預貯金として合計約340万円(この時点において保険会社から振り込まれていた保険金の残額を含む。)及びj証券株式会社取扱いの証券(平成24年11月5日時点の評価額の合計約438万円)を保管していた。そして,原告は,本件別居後も, B 市の自宅において居住を継続し(なお, B 市の自宅を賃貸した場合の賃料は月額12万5000円と査定されている。),生活費として,自身の老齢基礎年金(2か月で13万円程度)のほか,上記の現金や預貯金を使用していた。(甲3~6の2,19,23~25の2,原告本人,弁論の全趣旨)ウ本件別居後の原告とaの関係等(ア) 原告は,平成22年9月,a及びdを被告として,横浜地方裁判所E支部において,不貞行為等に基づく損害賠償請求訴訟(別件損害賠償請求訴訟)を提起した(前提事実(2)ウ,甲3,13,19)。 (イ) aは,同年11月25日,一切の財産をdに遺贈する旨の遺言公正証書を作成した(前提事実(2)エ,甲13,乙11)。 (ウ) 原告とaは,代理人弁護士を通じて,婚姻関係の調整等に関して協議を行い,原告の提案に係る合意書案(「平成22年6月」とされているもの。甲8)が作成された。同合意書案には,原告において,aがB市の自宅以外の場所に移住することを容認する条項が定められているほか,別居する場合の年金の処理権限についての条項(企業年金はaが取得し,国民年金は原告が取得する旨のもの)や,aがA市の不動産を売却した場合の売却代金の分配についての条項(売却代金から経費を差し引いた金額の2分の1を原 の処理権限についての条項(企業年金はaが取得し,国民年金は原告が取得する旨のもの)や,aがA市の不動産を売却した場合の売却代金の分配についての条項(売却代金から経費を差し引いた金額の2分の1を原告に交付する旨のもの),B市の自宅等を原告,長男及び二男に相続させることについての条項が定められていた。 しかし,aはこれに合意しなかった。また,上記の協議において,aが原告に対して,a名義となっている財産の使途について説明を求めたり,あるいは原告がaのD市の公団住宅から持ち出した物品等の返還を求めたりしたが,原告は,この返還要求に応じなかった。 他方,別件損害賠償請求訴訟において,裁判所から,原告及びaに対し,離婚を前提として, B 市の自宅を原告に取得させることを内容とする和解案が提示された。(甲2,3,8,19,乙9,10,19,20,22,23,原告本人,弁論の全趣旨)(エ) aは,平成24年1月,原告に知らせることなく, A 市の不動産を売却した。また,aは,さらに B 市の自宅の売却をしようとしていたところ,これを察知した原告は,同年5月,aに対して同不動産の処分禁止の仮処分の申立てをした。(乙15,20,原告本人,弁論の全趣旨)(オ) 原告は,aが石川県 C 市所在のl病院に入院していることを知り,平成24年6月15日,同病院を訪れ,aとの面会を申し入れたが,面会をすることができず,また,aの病状を尋ねたが,説明を受けることはできなかった。同病院の同日に関する診療録(甲9)には,「10時離婚調停中の妻が病院に来て「夫の病状について聞きたい(中略)」と戸籍抄本持参で外来に来られる。(中略)副院長より「本人の意思を尊重するので誰にも病状の説明はして欲しくないとの強い意志なので申し訳ないが説明はできない」こと(中略)などを いて聞きたい(中略)」と戸籍抄本持参で外来に来られる。(中略)副院長より「本人の意思を尊重するので誰にも病状の説明はして欲しくないとの強い意志なので申し訳ないが説明はできない」こと(中略)などを話しする。」,「11時頃東京より家族の面会有り,和やかに過ごされている。」等の記載がある。(甲9,19,原告本人,弁論の全趣旨)(カ) 原告は,平成24年6月,aを相手方として,横浜家庭裁判所 E 支部に対し,夫婦関係(離婚等)調停の申立て(本件調停申立て)をした。 その申立書には,原告は,aに対し,離婚,財産分与,慰謝料の支払及び年金分割を求めており,また,別件損害賠償請求訴訟において「裁判所の勧試もあって,離婚の決意をしたところである」等の記載がある。 (前提事実(2)オ,甲2,乙19~21,弁論の全趣旨)(キ) aは,平成24年▲月▲日,死亡した。dは,同居者としてaの死亡届を提出し,また,その喪主としてaの葬儀を行った。原告は,aの葬儀が終了した後,aの遺言執行者から,aが死亡したこと等を知らされた。(前提事実(1)ウ及び(2)カ,甲19,乙1,9,10,原告本人,弁論の全趣旨)(ク) 原告は,aの死亡後,別件損害賠償請求訴訟において,aに対する請求を取り下げた。同訴訟につき,横浜地方裁判所 E 支部は,平成25年7月29日,原告のdに対する請求につき,損害賠償金550万円(慰謝料500万円,弁護士費用50万円の合計額)及びこれに対する遅延損害金の支払を認容(一部認容)する判決を言い渡した。同判決においては,aとdが不貞行為に及び,aが本件別居によりdと生活を始め,原告との同居協力義務を拒絶するに至ったものであり,原告に対する悪意の遺棄が認められ,dはこれに協力,加功したことが認められるなどの認定判断がされていた。なお,この が本件別居によりdと生活を始め,原告との同居協力義務を拒絶するに至ったものであり,原告に対する悪意の遺棄が認められ,dはこれに協力,加功したことが認められるなどの認定判断がされていた。なお,この判決に対して控訴されたが,東京高等裁判所は,控訴棄却の判決を言い渡した。(前提事実(2)キ,甲3,13,弁論の全趣旨)(ケ) 原告及びその長男,二男は,aの死亡後の平成24年8月,東京地方裁判所において,d等を被告として,上記(イ)の平成22年11月25日付け公正証書遺言の無効確認等を求める別件遺言無効確認請求訴訟を提起した。そして,平成27年2月25日,同訴訟の原被告ら間において,上記遺言が無効であることをdとの間で確認すること,dが原告らに対してaの遺骨を引き渡すこと,別件損害賠償請求訴訟に係る解決金の支払方法の定め等を内容とする訴訟上の和解が成立した。(前提事実(2)エ,甲18,弁論の全趣旨)(コ) 原告は,本件別居後,弁護士や親族を通じないでaと直接の話合いをしたことはなかった。また,aは,本件別居後, B 市の自宅に荷物を取りに戻ることはなかった。(原告本人,弁論の全趣旨)(3) 検討ア生計同一要件(本件認定基準3(1)①)該当性について上記認定事実によれば,原告は,aの死亡当時において,その住民票上,aと同一世帯に属しておらず,住所も同一でなく,また,現に起居を共にしていたものとは認められず,生計同一要件のア,イ及びウ(ア)のいずれにも該当しない。 次に,生計同一要件のウ(イ)は,単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが,(ア)生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること,(イ)定期的に音信,訪問が行われていることといった事実が認められ,その事情が消滅したときは を得ない事情により住所が住民票上異なっているが,(ア)生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること,(イ)定期的に音信,訪問が行われていることといった事実が認められ,その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるときには,生計同一に該当するものとしているところ,以下,この要件該当性について検討する。 (ア) 「単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっている」といえるか否かについて生計同一要件ウ(イ)において,上記の要件が設けられた趣旨は,住所が住民票上異なっているとしても,別居がその原因に照らして一時的なものであり,当該原因が解消すれば同居が再開されることが予定されているのであれば,社会通念上,生計が同一であると評価する基礎があるといえることを考慮したものということができる。そうすると,上記の「止むを得ない事情により」とは,別居が一時的なものであっていずれ解消されることが予定されているような原因によるものであることをいうものと解すべきである。 これを本件についてみると,上記認定事実のとおり,aは,平成22年7月21日, B 市の自宅を出て C 市のアパート ○ 号室に移り住み,住民票も移動して,本件別居を開始したところ,① aは,ほどなく,同アパートにおいて,従前から不貞関係にあったdと同居するに至ったこと(認定事実ア(ク)),② 他方,原告は,本件別居後間もなく,a及びdに対して別件損害賠償請求訴訟を提起し,a死亡時においても同訴訟は係属していたこと(認定事実ウ(ア)及び(ク)),③ そして,原告は,aとの間で,代理人弁護士を通じて婚姻関係の調整等について協議を行い,aに対し,別居を前提とした合意書案を提示したこと(認定事実ウ(ウ)),④ さらに,原 ウ(ア)及び(ク)),③ そして,原告は,aとの間で,代理人弁護士を通じて婚姻関係の調整等について協議を行い,aに対し,別居を前提とした合意書案を提示したこと(認定事実ウ(ウ)),④ さらに,原告は,平成24年6月,本件調停申立てをし,離婚のほか,財産分与,慰謝料の支払及び年金分割を求めるに至ったこと(認定事実ウ(カ)),⑤ aは,本件別居後,l病院に入院したことを原告に知らせておらず,平成24年6月15日に原告が同病院を訪れて,aとの面会を申し入れた際には,自らの意思で面会を拒絶したほか,自身の病状の説明についても拒絶したこと(認定事実ウ(オ),甲9,弁論の全趣旨)が認められ,これらの各事情に照らすと,本件別居は,平成18年頃までの原告とaとの関係において見られなかった状態であり,aがdと生活をするために,原告との同居協力義務を拒絶し,悪意の遺棄により開始されたものと認められる。そうすると,本件別居は,平成24年▲月▲日のaの死亡当時において,一時的なものであっていずれ解消されることが予定されている原因によるものとみることは困難であるというほかなく,「単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっている」場合に当たらないというべきである。 これと異なる原告の主張は,採用することができない。 (イ) 小括以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告に関しては,生計同一要件ウ(イ)所定の要件に該当するものとは認められず,本件認定基準の定める生計同一要件が充足されているものとは認められない。 イ例外条項(本件認定基準1(1)ただし書)の適用について(ア) 本件認定基準において,例外条項は,生計同一要件により生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社 イ例外条項(本件認定基準1(1)ただし書)の適用について(ア) 本件認定基準において,例外条項は,生計同一要件により生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くことになる場合に適用されるものであるところ,この例外条項は,上記(1)アで判示したとおり,生計同一要件に該当するとはいえないものの,被保険者に経済的に依存しなければ生計維持に支障を来していたであろうという関係が認められる事案において適用されることが想定されているものと解される。そして,上記関係が認められるか否かについては,被保険者との関係性や経済的な依存の状況などをみる必要があるから,以下,これらの観点から検討する。 (イ) 被保険者との関係性についてaの死亡当時において,原告とaの別居が一時的なものであるとみることができないことは上記アで判示したとおりであるが,他方において,① 原告は,まずは平成22年9月に別件損害賠償請求訴訟を提起し,裁判所から離婚を前提とする和解案を提示されても,直ちにこれに応じることはなく,また,その後,本件調停申立てをしたものの, B 市の自宅の取扱いなど離婚給付の問題が残されており,原告としては,扶養的財産分与を含む離婚給付の問題が包括的に解決される場合でない限り,直ちに離婚する意思を確定的に有していたと認めることはできないこと,② 逆に,仮にaが原告に対して離婚訴訟を提起したとしても,原告とaの別居は,aの一方的な悪意の遺棄によりもたらされたものであり,aは明らかに有責配偶者であって(認定事実ア(キ)及び(ク),ウ(ク)),別居期間は短く,また,一切の財産をdに遺贈する旨の公正証書遺言をしており(前提事実(2)エ),直ちに原告に対して相応の離婚給付をする意思を有していなかったも 定事実ア(キ)及び(ク),ウ(ク)),別居期間は短く,また,一切の財産をdに遺贈する旨の公正証書遺言をしており(前提事実(2)エ),直ちに原告に対して相応の離婚給付をする意思を有していなかったものとうかがわれることなどの事情からして,その離婚請求が認められるとは考え難いことを勘案すると,原告とaの婚姻関係は,aの死亡当時において,両名が離婚しているのと同視すべき段階に至っていたと評価することは社会通念上適切ではないというべきである。 (ウ) 経済的依存の状況についてaは,本件別居後,その収入である企業年金等を原告に渡さなくなったものの,① aは,本件別居に際し,それまでの婚姻生活で形成された夫婦共有財産のうち,自己名義の口座を解約したほかは,現金,原告名義の預貯金,証券等を持ち出さず,残置していったこと(認定事実イ(ア)及び(イ)),② 他方,原告は,aと婚姻後,同人の死亡当時までの間,専業主婦であり,その生計はaの収入に全面的に依存しており,本件別居後も,原告が独立して生計を立てることができるような独自の収入はなかったこと(認定事実ア(ア),イ(ア)及び(イ))がそれぞれ認められ,③ 以上の状況のもとで,原告が,本件別居後,aに対し,婚姻費用の分担を求める法的手続に着手しなかったのは,本件別居当時,原告が当面の生活を維持するのに十分な夫婦共有財産を事実上管理していたことにあることがうかがわれる。これらの事情からすると,aは,本件別居に際し,夫婦共有財産である現金,原告名義の預貯金,証券等を残置し,本件別居後,原告は,その一部を費消し,生活費に当て,また,B 市の自宅を居住のために使用していたのであり,この状況を客観的にみれば,原告がこれらの夫婦共有財産に依存してその生計を維持しており,かつ,これらの夫婦共有財産に依 費消し,生活費に当て,また,B 市の自宅を居住のために使用していたのであり,この状況を客観的にみれば,原告がこれらの夫婦共有財産に依存してその生計を維持しており,かつ,これらの夫婦共有財産に依存することなく,その生計を維持することは不可能であったということができる。 (エ) 小括以上のとおり,aの死亡当時,原告とaは別居しており,生計同一要件を満たす状態にはなかったが,両名の婚姻関係は,両名が離婚しているのと同視すべき段階に至っていたとはいえないこと,そして,その状況の下において,専業主婦であった原告は,aが残置していった夫婦共有財産に依存して生計を維持しており,aに経済的に依存しなければ生計の維持に支障を来していたであろうという関係にあったということができることを総合勘案すると,本件については,生計同一要件により生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くことになる場合に当たるというべきである。 ウ被告の主張について(ア) 被告は,本件別居後,aが原告に対して,送金や仕送り等を一切しておらず,また,原告が夫婦共有財産を生計に当てていたことについては,aがこれを受忍していたものではなく,事実上かつ一方的な離婚給付,財産分与の先取りと評価すべきであり,aからの経済的な援助があったものと認められないと主張する。 しかしながら,夫婦関係において,被保険者(配偶者)の積極的な経済的援助行為がなくとも,当該被保険者の財産ないし夫婦共有財産に経済的に依存しなければ生計を維持することに支障を来していたであろう場合において,本件認定基準の例外条項の適用がないと解することは,死亡した労働者(被保険者)によって生計を維持されていた遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという遺族厚生 支障を来していたであろう場合において,本件認定基準の例外条項の適用がないと解することは,死亡した労働者(被保険者)によって生計を維持されていた遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという遺族厚生年金の目的に照らして相当とはいえない。 そして,aの意思にかかわらず,専業主婦であった原告は,その生計を全面的にaの収入に依存しており,本件別居後においても,aが残置した夫婦共有財産に依存して生計を維持し,かつ,これに依存しなければ生計を維持することはできなかったものと認められることは,上記イで判示したとおりであるから,被告の上記主張は採用することができない。 なお,仮に,被告が主張するように,原告が夫婦共有財産を生計に当てていたことをもって,離婚給付又は財産分与の先取りであると評価する余地があるとしても,一般に,離婚給付又は財産分与には,婚姻を解消せずに継続した場合における将来の婚姻費用の分担に代わる扶養の趣旨を含み得るものと解されていることからすると,原告は,婚姻費用の支払を受ける代わりに夫婦共有財産を費消するなどして生計に当てていたとみることもできるのであり,本件別居中においてaに経済的に依存していたものと認めることを直ちに妨げるものではない。 (イ) また,被告は,原告がaの死亡により, B 市の自宅や預貯金等を,事実上,そのまま確保することになり,離婚給付,財産分与の先取りとして相応の利益を得たものと評価することができ,夫婦共有財産としての預貯金等は,原告が挙げるだけでも2000万円を超えていること及び原告が述べる以上の預貯金等の保有がされている可能性がうかがわれることから,本件別居後,aからの経済的援助がされなくとも,その生計の維持に特段の支障はなかったものと解されると主張する。 しかしながら,法令上,遺族厚生年金 の保有がされている可能性がうかがわれることから,本件別居後,aからの経済的援助がされなくとも,その生計の維持に特段の支障はなかったものと解されると主張する。 しかしながら,法令上,遺族厚生年金の受給権に関し,被保険者の死亡に伴い遺族が相続した財産の多寡は問われておらず,遺族が当該相続財産により生計が維持できる場合について,被保険者の死亡当時において「その者によつて生計を維持したもの」との要件を欠くことになると解すべき根拠はない。そして,本件の事実関係の下においては,原告がaに経済的に依存していたものとみるべきことは上記イで判示したとおりである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) さらに,被告は,遺族厚生年金が被保険者の死亡を保険事故とするものであると解されるところ,aの原告に対する経済的な援助が行われなくなったのはaの悪意の遺棄によるものであり,aが死亡したことにより原告の生活の安定が損なわれたという関係にはなく,このような有責性を,遺族厚生年金の受給資格に関わる生計維持要件の認定に当たり考慮することは許されないなどとし,本件については,生計同一要件により生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くことになる場合ということはできないと主張する。 しかしながら,同居又は別居にかかわらず,被保険者(配偶者)が他方配偶者に対する経済的援助を止めて当該被保険者自身のためだけに同人自身の収入等を費消し,そのまま当該被保険者が死亡した場合において,当該被保険者が経済的援助を止めたという事実だけに着目して生計維持関係がないとされるべきではなく,被保険者(配偶者)が別居している場合における例外条項の適用に当たっては,同人の婚姻費用分担の義務の存否等の当該夫婦 済的援助を止めたという事実だけに着目して生計維持関係がないとされるべきではなく,被保険者(配偶者)が別居している場合における例外条項の適用に当たっては,同人の婚姻費用分担の義務の存否等の当該夫婦の関係性や,夫婦共有財産等への経済的な依存状況などを踏まえ,生計維持関係を判定すべきであることは上記イ(ア)で判示したとおりである。 また,別居している遺族につき「生計を維持したもの」の該当性を判断するに当たり,その別居が離婚によるものと同視すべきものか否かを吟味するという観点から有責配偶者性を勘案することは,必ずしも不当なものではなく,むしろ,死亡した労働者によって生計を維持されていた遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという遺族厚生年金の目的に合致するというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ以上のとおりであるから,本件別居は,生計同一要件により生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くことになる場合に当たるから,原告については,被保険者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者に準ずるものとして,aによって生計を維持したものと認めるのが相当である。 (4) 本件不支給処分の適法性について以上によれば,原告は,a(被保険者)の死亡の当時において,厚年法59条1項の生計維持要件を充足していたものと認められる。したがって,この点についての判断を誤り,生計維持要件を充足しないとして,原告を同項の「遺族」に該当しないものと認定してされた本件不支給処分は,違法であり,取り消されるべきものである。 2 本件義務付け請求について平成24年8月14日受付の本件裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定の義務付けを求める請求(本件義務付け請求)は,申請 ,違法であり,取り消されるべきものである。 2 本件義務付け請求について平成24年8月14日受付の本件裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定の義務付けを求める請求(本件義務付け請求)は,申請型義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項2号,37条の3)であるところ,上記のとおり,本件不支給処分は取り消されるべきものであるから,同条1項2号の要件を満たし,適法であると認められる。 そして,上記のとおり説示したところに照らせば,aに係る遺族厚生年金の支給を求めた本件裁定請求については,原告は,aの死亡の当時において,同人により生計を維持していた配偶者であると認められ,「遺族厚生年金を受けることができる遺族」(厚年法59条1項)に該当し,遺族厚生年金が支給されるべきものといえるから,行政事件訴訟法37条の3第5項の要件を満たし,厚生労働大臣(処分行政庁)に対し,本件裁定請求に係る遺族厚生年金の支給裁定をすべき旨を命ずるのが相当である。 3 結論以上によれば,原告の本件各請求はいずれも理由があり,これらを認容することとし,訴訟費用の負担については行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官平山馨 裁判官馬場潤 (別紙) 関係法令等の定め 第1 厚生年金保険法○ 58条(受給権者) 1 遺族厚生年金は,被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に,その者の遺族に支給する。(ただし書略)(一号から三号まで 厚生年金保険法○ 58条(受給権者) 1 遺族厚生年金は,被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に,その者の遺族に支給する。(ただし書略)(一号から三号まで略)四老齢厚生年金の受給権者(中略)が,死亡したとき。 (2項略)○ 59条(遺族) 1 遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者又は被保険者であつた者の配偶者,子,父母,孫又は祖父母(以下単に「配偶者」,「子」,「父母」,「孫」又は「祖父母」という。)であつて,被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(中略)その者によつて生計を維持したものとする。 (以下略)(2項及び3項略) 4 第一項の規定の適用上,被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は,政令で定める。 第2 厚生年金保険法施行令○ 3条の10(遺族厚生年金の生計維持の認定)法第五十九条第一項に規定する被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた配偶者,子,父母,孫又は祖父母は,当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であつて厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたつて有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする。 第3 「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」(平成23年年発0323第1号日本年金機構理事長宛て厚生労働省年金局長通知)(甲10) 1 総論(1) 生計維持認定対象者次に掲げる者(以下「生計維持認定対象者」という。)に係る生計維持関係の認定については,2の生計維持関係等の認定日において,3の生計同一要件及び4の収入要件を満たす場合(中略)に受給権者又 象者次に掲げる者(以下「生計維持認定対象者」という。)に係る生計維持関係の認定については,2の生計維持関係等の認定日において,3の生計同一要件及び4の収入要件を満たす場合(中略)に受給権者又は死亡した被保険者若しくは被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。 ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。 (①から⑦まで略)⑧ 遺族厚生年金(昭和60年改正法による改正後の厚生年金保険法による特例遺族年金を含む。)の受給権者(⑨ 略)((2) 略) 2 生計維持関係等の認定日(1) 認定日の確認生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計維持関係等の認定を行うに当たっては,次に掲げる生計維持関係等の認定を行う時点(以下「認定日」という。)を確認した上で、認定日において生計維持関係等の認定を行うものとする。 ① 受給権発生日(②ないし④ 略)((2) 略) 3 生計同一に関する認定要件(1) 認定の要件生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者に係る生計同一関係の認定に当たっては,次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。 ① 生計維持認定対象者及び生計同一認定対象者が配偶者又は子である場合ア住民票上同一世帯に属しているときイ住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるときウ住所が住民票上異なっているが,次のいずれかに該当するとき(ア) 現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき(イ) 単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なって 次のいずれかに該当するとき(ア) 現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき(イ) 単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが,次のような事実が認められ,その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき(ア) 生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること(イ) 定期的に音信,訪問が行われていること(② 略)((2) 略)(4~6 略)以上
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