- 1 -主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 処分行政庁が原告に対して平成21年1月19日付けでした介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者の指定及び指定介護予防サービス事業者の指定を取り消す処分並びに生活保護法に基づく指定介護機関の指定を取り消す処分をいずれも取り消す。 2 被告は,原告に対し,7000万円及びこれに対する平成21年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,介護保険法に基づく①指定居宅サービス事業者の指定及び②指定介護予防サービス事業者の指定並びに生活保護法に基づく③指定介護機関の指定(以下これらの各指定を併せて「本件各指定」という。)を受けていた原告が,処分行政庁から,運営基準違反及び介護報酬の不正請求を理由として,本件各指定を取り消す旨の処分(以下「本件各処分」という。)を受けたが,本件各処分には法令適用を誤るなどの違法があると主張して,本件各処分の取消しを求めるとともに,原告が違法な本件各処分を受けたことにより事実上の倒産に追い込まれたと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,被告に対し,損害の一部の賠償請求として,損害賠償金7000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年7月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 1 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 指定居宅サービス事業者の指定等 - 2 -ア原告は,介護保険法及び健康保険法・老人保健法等による訪問看護・介護予防訪問看護に関する事業等を目的とする株式会社で る事実)(1) 指定居宅サービス事業者の指定等 - 2 -ア原告は,介護保険法及び健康保険法・老人保健法等による訪問看護・介護予防訪問看護に関する事業等を目的とする株式会社である。 イ処分行政庁は,次のとおり,原告経営のP1(以下「本件事業所」という。)につき,原告を指定居宅サービス事業者,指定介護予防サービス事業者及び指定介護機関にそれぞれ指定した。 (ア) 平成12年8月1日,介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者の指定(イ) 平成15年11月1日,生活保護法に基づく指定介護機関の指定(ウ) 平成18年4月1日,平成20年法律第42号による改正前の介護保険法(以下単に「介護保険法」という。)に基づく指定介護予防サービス事業者の指定(2) 原告に対する実地指導検査の実施ア平成15年11月26日,処分行政庁の担当者は,本件事業所に対して実地指導を実施した(以下「平成15年の実地指導」という。)。 イ平成16年3月12日,処分行政庁は,本件事業所について,主治医の交付する指示書に関して指示のない期間が一部あったこと等を指摘する旨の実地指導結果通知書(乙3)を送付した(なお,上記の「主治医」とは,介護保険法74条2項に基づき厚生労働大臣が定めた「指定居宅サービス等の事業の人員,設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「指定居宅サービス運営基準」という。)」69条2項の「主治の医師」をいうが,以下では,同法115条の3に基づき厚生労働大臣が定めた「指定介護予防サービス等の事業の人員,設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準(平成18年厚生労働省令第35号。以下「指定介護予防サービス 定めた「指定介護予防サービス等の事業の人員,設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準(平成18年厚生労働省令第35号。以下「指定介護予防サービス運営基準」という。)」77条2項所定の「主治の医師」を含め,「主治医」という。また,上記の「主治医の交付する指示書」とは,指定居宅サービ - 3 -ス運営基準69条2項の主治の医師による指示を文書で受けたものを指すが,以下では,指定介護予防サービス運営基準77条2項の主治の医師による指示を文書で受けたものを含め,「主治医の指示書」という。)(乙3)ウ平成16年11月8日,原告は,処分行政庁に対し,上記イの実地指導結果通知書での指摘につき,「数名の主治医について,再三指示書を送り電話で催促等をしていたが,それでも返送されないため,直接主治医の勤務先に伺い事情を説明し,その場で記入してもらうことで改善。また,指示書の管理をするための表を作成し,管理するようになりました。主治医の側に,指示書についての理解が不充分であることが多く,訪問看護開始時に理解を求める説明を徹底しています。」などと記載した改善報告書(乙4)を提出した。 (乙4)(3) 本件各処分に至る経緯ア平成20年7月29日,処分行政庁の担当者は,本件事業所に対し,介護保険法24条に基づく実地指導検査を実施したところ,訪問看護計画書が作成されていないなどの疑義が認められた。 イ平成20年7月30日から同年8月26日までの間,処分行政庁の担当者は,本件事業所の関係者(医師4名,利用者3名)の聴取調査を実施し,その結果,一部の主治医の指示書が訪問看護の実施後に作成されていたことが判明した。 ウ平成20年8月27日,処分行政庁は,本件事 件事業所の関係者(医師4名,利用者3名)の聴取調査を実施し,その結果,一部の主治医の指示書が訪問看護の実施後に作成されていたことが判明した。 ウ平成20年8月27日,処分行政庁は,本件事業所に対し,介護保険法及び生活保護法に基づく監査を実施するとともに,同日から同年12月2日までの間,処分行政庁の担当者が本件事業所から提出された書類の内容精査や医師,管理者,常勤職員,原告経営の居宅介護支援事業所との兼務職員から事情聴取をした。 - 4 -(4) 告知聴聞ア平成20年12月9日,処分行政庁は,原告に対し,本件事業所に係る監査の結果を通知するとともに,本件事業所に係る指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者の指定取消処分を予定していることを理由に,聴聞を実施することを通知した。 イ平成20年12月17日及び平成21年1月13日,処分行政庁は,原告に対する聴聞を実施した。 その際,原告代表者及び原告代理人弁護士は,原告がサービス提供の開始に当たって,主治医による指示を文書で受けず,訪問看護計画書についても適正な処理が行われないなど,運営基準を満たしてないことや形式的,手続的ミスがあったことは認め,原告が数年にわたり適正な訪問看護を提供することができなかったこと及び請求できない介護報酬を数年にわたり請求し受領したことは否認するなどした。 (乙7,8)(5) 本件各処分ア平成21年1月19日,処分行政庁は,原告に対し,次の事実を理由として,同年3月31日の満了をもって,本件事業所に係る指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者の指定を取り消す旨の処分(以下「本件処分①」という。)をすることを決定し,原告にその旨を通知した。 (ア) サービ ,本件事業所に係る指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者の指定を取り消す旨の処分(以下「本件処分①」という。)をすることを決定し,原告にその旨を通知した。 (ア) サービス提供の開始に当たって,主治医の指示書を文書で受けず,訪問看護計画書及び介護予防訪問看護計画書についても適正な処理が行われないなど,運営基準(指定居宅サービス運営基準及び指定介護予防サービス運営基準を指す。以下同じ)を満たさず,数年にわたり,適正な訪問看護及び介護予防訪問看護を提供することができなかったこと(介護保険法77条1項3号及び115条の8第1項3号) - 5 -(イ) 報酬算定の要件である,主治医の指示書等に基づく訪問看護又は介護予防訪問介護が行われておらず,請求できない介護報酬を数年にわたり請求し受領したこと(介護保険法77条1項5号及び115条の8第1項5号)(甲1)イ同年1月19日,処分行政庁は,原告に対し,運営基準違反(介護保険法77条1項3号)及び不正請求(同項5号)により生活保護法50条に違反したことを理由として,同年3月31日の満了をもって,本件事業所に係る指定介護機関の指定を取り消す旨の処分(以下「本件処分②」という。)をすることを決定し,原告にその旨を通知した。 (甲2)(6) 本件訴訟の提起原告は,平成21年7月10日,本件各処分の取消し及び本件各処分により被ったとする損害の賠償(国家賠償)を求める本件訴訟を提起した。 (顕著な事実) 2 争点(1) 本件各処分の適法性(2) 本件各処分における国家賠償法上の違法性の有無及びその損害額 3 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(本件各処分の適法性)について(被告の主張 分の適法性(2) 本件各処分における国家賠償法上の違法性の有無及びその損害額 3 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(本件各処分の適法性)について(被告の主張の要旨)ア原告の違反事実原告は,平成20年7月29日に行われた実地指導検査及び同年8月27日に本件事業所に対して実施した監査において,次のような違反行為が認められた。 (ア) 調査対象となった利用者167名中76名に関して,指定訪問看護及び - 6 -指定介護予防訪問看護(以下,両者を合わせて「指定訪問看護等」という。)の提供の開始に当たり主治医の指示書を得ず,又は主治医の指示書の指示期間がその交付日より遡及して記載されていた(指定居宅サービス運営基準73条の2,69条違反,指定介護予防サービス運営基準77条,73条違反)。 (イ) 調査対象となった利用者167名全員に関して,訪問看護計画書及び介護予防訪問看護計画書(以下「訪問看護計画書等」という。)の医師提出用のもの及び利用者交付用のものが事前に作成されず,そのうち78名に関して訪問看護計画書等が事後にまとめて交付されるなど,計画策定が適正にされていなかったと推認された(指定居宅サービス運営基準70条違反,指定介護予防サービス運営基準76条違反)。 (ウ) 調査対象となった利用者167名中,①37名に関して重要事項説明書(指定居宅サービス運営基準74条において準用する8条1項(指定介護予防サービス運営基準8条)の「利用申込書のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書」をいう。以下同じ。)が存在せず,重要事項説明がされていなかったと推認され,また,②60名に関して,重要事項説明書の交付年月日の記載がないなど,適切な重要事項説明がさ 認められる重要事項を記した文書」をいう。以下同じ。)が存在せず,重要事項説明がされていなかったと推認され,また,②60名に関して,重要事項説明書の交付年月日の記載がないなど,適切な重要事項説明がされなかったものと推認された(指定居宅サービス運営基準8条違反,指定介護予防サービス運営基準8条違反)。 イ本件処分①の適法性(ア) 原告は,① 上記アのとおり,主治医の指示,主治医及び利用者の関与した看護計画の策定,指示書・計画書・報告書を通じた主治医との密接な連携を欠いたサービス提供を恒常的に行っており,その量・質・態様において重大かつ明白な基準違反を行っていること,② 平成15年の実地指導後,改善の報告をしたにもかかわらず,今回の実地指導前にも指示期間を遡及した主治医の指示書の作成依頼等がされていること等から,もはや - 7 -運営基準に従った適正な事業の運営を期待することができないと認められ,介護保険法74条2項,115条の3に定められた運営基準違反として同法77条1項3号及び115条の8第1項3号に該当する。 (イ) 原告は,上記(ア)のとおり,運営基準にのっとった適切な主治医の指示及び指示書,訪問看護計画書,介護予防訪問看護計画書を欠くにもかかわらず,介護報酬を請求し受領したから,指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日厚生省告示第19号。以下「指定居宅サービス費用算定基準」という。)及び指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年3月14日厚生労働省告示第127号。以下「指定介護予防サービス費用算定基準」という。),ひいては介護保険法41条4項1号及び53条2項1号に違反するものとして,同法77条1項5号及び115条の8第1項5号に該当する。 127号。以下「指定介護予防サービス費用算定基準」という。),ひいては介護保険法41条4項1号及び53条2項1号に違反するものとして,同法77条1項5号及び115条の8第1項5号に該当する。 (ウ) したがって,原告の上記行為は,介護保険法77条1項3号及び5号,115条の8第1項3号及び5号に該当し,もはや法令を遵守して訪問看護の事業及び指定介護訪問看護の事業を行うことを期待することができない程度の重大かつ明白な違反に当たることから,指導並びに勧告及び命令を経るまでもなく,原告の本件事業所に係る指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者の指定を取り消すことが相当であり,本件処分①は,裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をしておらず,適法である。 ウ本件処分②の適法性(ア) 前記イのとおり,原告には,介護保険法74条2項の指定居宅サービス運営基準の違反及び費用算定基準違反の介護報酬の不正請求が認められた。 (イ) したがって,原告は生活保護法50条に違反し,その基準違反の程度は重大かつ明白なものであるから,同法の規定による原告の指定介護機関の指定を取り消すことが相当であり,本件処分②は,裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をしておらず,適法である。 - 8 -(原告の主張の要旨)ア被告主張に係る原告の違反事実について(ア) 原告は,指定訪問看護等の提供に当たり,実情としては,主治医による指示を口頭で受けていたが,主治医にはその旨の指示書を発行する意識が希薄であったため,主治医の指示書の受領が後日になるなどしたにすぎない(指定訪問看護等の提供開始から終了まで指示書がなかったケースは,主治医から直接の依頼により実施した1例のみであり,平成15年の実地指導の際にも,主治医の指 示書の受領が後日になるなどしたにすぎない(指定訪問看護等の提供開始から終了まで指示書がなかったケースは,主治医から直接の依頼により実施した1例のみであり,平成15年の実地指導の際にも,主治医の指示書の指示期間が指定訪問看護等の提供開始日より後になった場合,主治医による指示が全体として全期間なかったことになるとの指摘はなかった。)。 (イ) また,原告は,訪問看護計画書についても,特別な事由がない限り,実際に事前作成し,主治医に提出していたが,原告の勘違いにより,その提出日を毎月10日目処とする社内の事務作業ルールを策定し,その提出日を作成日として記載したにすぎない(この作成日の取扱いは,平成15年の実地指導の際にも,処分行政庁から問題として指摘されなかった。)。 イ法令適用の誤り原告は,上記アのとおり,指定訪問看護等の提供に当たり,実質的には主治医の指揮監督の下に行ったが,形式的に主治医の指示書がなかったという手続ミスをしたにすぎず,事業の運営に必要な設備・人員を有し,管理者の交代により適正な運営を期待することができたこと等から,介護保険法77条1項3号及び5号,115条の8第3号及び5号に該当しない。 ウ裁量権の逸脱・濫用(ア) 被告は,前記アのような実情に照らすと,良好な指定訪問看護等を提供している原告に対しては,手続ミスがないように繰り返し指導すべきであったにもかかわらず,何らの指導もせず,手続ミスを理由として本件各処分をした。 - 9 -(イ) 被告は,本件について,その事案の内容に照らし,介護保険法76条の2所定の業務改善勧告又は業務改善命令を発し,原告がその命令に違反した場合に初めて本件各処分をすべきであったにもかかわらず(平成11年9月17日付け厚生省老人保健福祉 容に照らし,介護保険法76条の2所定の業務改善勧告又は業務改善命令を発し,原告がその命令に違反した場合に初めて本件各処分をすべきであったにもかかわらず(平成11年9月17日付け厚生省老人保健福祉局企画課長通知「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(乙13))第1の1及び2参照),業務改善勧告又は業務改善命令を発することなく,本件各処分をした。 (ウ) 以上によれば,本件各処分には,処分行政庁が裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をした違法がある。 (2) 争点(2)(本件各処分による国家賠償法上の違法性の有無及びその損害額)について(原告の主張の要旨)ア国家賠償法上の違法原告は,処分行政庁から,前記(1)(原告の主張の要旨)のとおり違法な本件各処分を受け,その結果,廃業となって事実上倒産したから,被告は,原告に対し,国家賠償法1条1項の損害賠償責任を負う。 イ損害額原告は,本件各指定を受け,訪問介護を中心として訪問介護,居宅介護支援事業を行い,総売上として,平成17年8月期に1億5215万9000円,平成18年8月期に1億3684万2000円,平成19年8月期に1億3155万2000円,平成20年8月期に1億2384万5000円を計上していたから,違法な本件各処分により原告が被った損害額は1億円を下らない。 したがって,原告は,一部請求として,その損害額のうち7000万円を請求する。 (被告の主張の要旨) - 10 -原告の主張を否認し,又は争う。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件各処分に至る経緯等として,次の事実を認めることができ 原告の主張を否認し,又は争う。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件各処分に至る経緯等として,次の事実を認めることができる。 (1) 平成15年の実地指導等原告は,本件事業所について,平成12年8月1日,介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者の指定を受け,以後指定居宅サービス事業を実施していたところ(なお,平成15年11月1日には,生活保護法に基づく指定介護機関の指定も受けた。),同月26日,処分行政庁の担当者による実地指導を受け,実地指導結果通知書(乙3)により,主治医の指示書について,指示のない期間が一部あったなどと指摘され,上記の点について改善し,報告するよう求められた。 これに対し,原告は,平成16年11月8日,処分行政庁に対し,改善報告書(乙4)により,上記指摘事項のうち,主治医の指示書については,「数名の主治医について,再三指示書を送り電話で催促等をしていたが,それでも返送されないため,直接主治医の勤務先に伺い事情を説明し,その場で記入してもらうことで改善。また,指示書の管理をするための表を作成し,管理するようになりました。主治医の側に,指示書についての理解が不充分であることが多く,訪問看護開始時に理解を求める説明を徹底しています。」などと報告した。 (乙3,4)(2) 平成15年の実地指導後における原告の指定訪問看護等の提供状況しかしながら,原告は,平成15年の実地指導後も,次の態様による指定訪問看護等の提供(なお,指定介護予防訪問看護の提供は,平成18年4月1日付けで指定介護予防サービス事業者の指定を受けた後である。)をする - 11 -などし,当該指定訪問看護等に応じた介護報酬を請求し受領し 供(なお,指定介護予防訪問看護の提供は,平成18年4月1日付けで指定介護予防サービス事業者の指定を受けた後である。)をする - 11 -などし,当該指定訪問看護等に応じた介護報酬を請求し受領した。 ア主治医の指示書(ア) 次の6名につき,指定訪問看護の提供開始日(以下「初回」という。)において,主治医の指示書がないまま(あるいは指示書による指示期間前に),次のとおり指定訪問看護を提供した(詳細は別紙1(乙14の添付資料5)(1)参照)。 a 利用者番号12-14につき,平成15年12月1日から同月29日までの全9回b 利用者番号9-19につき,平成20年5月2日の1回c 利用者番号10-15につき,平成18年2月25日の1回(主治医の指示書で指定された指示期間前の指定訪問看護の提供)d 利用者番号43につき,平成18年9月13日から同月29日までの全7回e 利用者番号44につき,平成18年4月28日から同年5月31日までの全29回f 利用者番号42につき,平成15年12月4日から平成17年3月31日までの全170回(イ) 次の64名につき,実際の交付日以前の日を指示期間として記載した主治医の指示書の交付を受けた(詳細は別紙1参照)。 a その指示書が初回についてのもの別紙1(2)記載の利用者中16名(このうち13名については,主治医の指示書の指示期間前に,現に指定訪問看護等の提供がされ,更に1名(利用者番号7)については,平成16年6月18日から平成17年10月21日までの全53回にわたり,主治医の指示書がないまま指定訪問看護の提供がされた。)b その指示書が初回及び継続した訪問看護 号7)については,平成16年6月18日から平成17年10月21日までの全53回にわたり,主治医の指示書がないまま指定訪問看護の提供がされた。)b その指示書が初回及び継続した訪問看護サービスの提供時(以下「初 - 12 -回以外」という。)の双方についてのもの別紙1(3)記載の利用者中10名(この全員について,主治医の指示書の指示期間前に,現に指定訪問看護等の提供がされ,更に2名について,平成16年5月6日から平成17年3月1日までの全180回(利用者番号18-8)及び平成15年12月1日から平成16年2月23日までの全13回(利用者番号4)にわたり,主治医の指示書がないまま指定訪問看護等の提供がされた。)c その指示書が初回以外についてのもの別紙1(4)記載の利用者中38名(このうち36名について,主治医の指示書の指示期間前に,現に指定訪問看護等の提供がされた。また,次の8名について,次の期間・回数にわたり主治医の指示書がないまま指定訪問看護等の提供がされた。)① 利用者番号9-15につき,平成19年2月1日から同年10月25日までの全38回② 利用者番号10-22につき,平成16年1月6日から同年12月28日までの全106回(なお,主治医の指示書がなかったことについては,後記エ(ウ)参照。)③ 利用者番号11-1につき,平成20年2月29日の1回④ 利用者番号12-8につき,平成19年1月29日の1回⑤ 利用者番号12-14につき,平成20年2月4日から同年6月30日までの全40回(上記期間に対応する主治医の指示書が実際に交付された日が平成20年5月24日であることは,後記エ(イ)参照。) ⑤ 利用者番号12-14につき,平成20年2月4日から同年6月30日までの全40回(上記期間に対応する主治医の指示書が実際に交付された日が平成20年5月24日であることは,後記エ(イ)参照。)⑥ 利用者番号12-22につき,平成17年10月31日の1回⑦ 利用者番号46につき,平成19年5月10日から同年6月31日までの全5回 - 13 -⑧ 利用者番号51につき,平成18年4月8日から平成19年7月13日までの全59回イ訪問看護計画書等について(ア) 利用者50名について,指定訪問看護等の提供後に,主治医に対し,訪問看護計画書等(医師提出用)を3か月分から12か月分をまとめて交付した(詳細は,別紙2(乙14の添付資料4の写し)参照)。 (イ) 平成12年8月から平成19年12月までの利用者全員について,訪問看護計画書等(利用者交付用)を作成しておらず,また,平成20年1月以降の利用者のうち,17名についてはそもそも作成しておらず,また,28名(詳細は,別紙3(乙14の添付資料3の写し)参照。)については指定訪問看護等の提供後に利用者に対する訪問看護計画書等(利用者交付用)の交付をした。 ウ重要事項説明書について少なくとも利用者10名について,指定訪問介護等の提供の開始に際し,あらかじめ利用者又はその家族に対して説明するに当たり,重要事項説明書を交付せず,その他少なくとも24名について,上記説明時の当該書面の交付を怠った疑いがある。 エその他(ア) なお,P2作成の陳述書(乙14)記載の東京都目黒区内にクリニックを開設するC医師(以下「C医師」という。)は,本件事業所の管理者P3(以下「P3管理者」という。)が エその他(ア) なお,P2作成の陳述書(乙14)記載の東京都目黒区内にクリニックを開設するC医師(以下「C医師」という。)は,本件事業所の管理者P3(以下「P3管理者」という。)が同クリニックの元職員(訪問看護専従看護師)であったことから,以前より,本件事業所における指定訪問看護等の提供に関して,主治医による指示(ただし,その指示の具体的内容は本件全証拠によっても認定することができない。)を口頭で行い,本件事業所あての主治医の指示書は後からまとめて作成・交付すること(しかも,その交付日は,実際に指示書を書いた日ではなく, - 14 -指示書の必要な日を記載していた。)を繰り返していたところ,平成20年6月30日には,原告から求められるままに,実際に利用者の診察をすることなく,主治医の指示書(指示期間同年7月1日から同年12月31日まで)を発行した。 (イ) 原告は,利用者番号12-14につき,平成20年1月12日,P2作成の陳述書(乙14)記載のA医師(以下「A医師」という。)から主治医の指示書(指示期間同月1日から同月31日まで)の交付を受け,これに基づき訪問看護の提供をしたが,同日の経過後同年5月までの間,主治医の指示書のないまま訪問看護の提供をし,同月24日,当該利用者をして,A医師から同年2月から同年5月までの間の主治医の指示書を入手させた。 (ウ) そして,P3管理者らは,後記(3)の実地指導検査の数日前である平成20年7月下旬ころ,本件事業所の利用者2名(利用者番号10-22,51)に係る主治医の指示書(前者は平成16年1月1日から同年6月30日分及び同年7月1日から同年12月31日分,後者は平成17年9月1日から同月30日分(平成17年8月31日交付))を入手するため,これらを 主治医の指示書(前者は平成16年1月1日から同年6月30日分及び同年7月1日から同年12月31日分,後者は平成17年9月1日から同月30日分(平成17年8月31日交付))を入手するため,これらをC医師の面前で代筆するなどして作成した。 (以上の(2)につき,甲3,乙11,14,20~29,30の1・2)(3) 介護保険法に基づく監査等ア処分行政庁は,平成20年7月29日,本件事業所に対する介護保険法24条に基づく実地指導検査を実施し,引き続き本件事業所の関係者(医師4名,利用者3名)の聴取調査を実施したところ,運営基準違反の疑いがあったことから,同年8月27日,本件事業所に対する介護保険法及び生活保護法に基づく監査を実施し,同日から同年12月2日までの間,提出された書類の精査や関係者の事情聴取等をした。 イその結果,処分行政庁は,本件事業所における訪問看護サービスに関し - 15 -て,平成18年4月から平成20年3月末までに終了した利用者54名及び現在の利用者113名(合計167名。以下「本件調査対象者」という。)につき,次の事実(なお,これは上記(2)の事実を含むものである。)を確認し,P3管理者からその内容に相違ない旨の回答を得た。 (ア) 主治医の指示書につき,a 初回において主治医の指示書がないものが12名b 指示書の交付日がその指示期間より後になっているもののうち① その指示書が初回についてのものが16名② その指示書が初回及び初回以外の双方についてのものが10名③ その指示書が初回以外についてのものが38名(イ) 訪問看護計画書につき,a 医師提出用のものは,167名全員について事前作成がさ 双方についてのものが10名③ その指示書が初回以外についてのものが38名(イ) 訪問看護計画書につき,a 医師提出用のものは,167名全員について事前作成がされていない。 b 利用者交付用のものは,① 平成12年8月から19年12月までの分は全員について作成されていない。 ② 平成20年以降の分は17名について作成されていない。 (ウ) 重要事項説明書につき,a 交付していないものが3名,交付したか否かが不明のものが34名b サービス提供開始後に交付したものが23名(うち,交付年月日の記載が利用者の字でないものが3名)c 交付年月日の記載がないものが18名d 交付年月日の記載が利用者の字でないものが19名(乙11,14)(4) 監査の実施結果処分行政庁は,平成20年12月9日,原告に対し,上記(3)の事実を踏ま - 16 -え,監査の実施結果として,原告には,①サービス提供の開始に当たって,主治医による指示を文書で受けず,訪問看護計画書等についても適正な処理が行われないなど,運営基準を満たさず,数年にわたり,適正な訪問看護等を提供することができなかった(介護保険法77条1項3号,115条の8第1項3号),②報酬算定の要件である,主治医の指示書及び訪問看護計画書等に基づく訪問看護等が行われておらず,目黒区を含む特別区4区及び横浜市に対して,請求できない介護報酬を数年にわたり請求し,これを受領した(同法77条1項5号及び115条の8第1項5号)との事実が確認され,これらの行為に対する行政処分が行われた場合の返還予定金額は,被告が確認した167名分(平成15年10月から平成20年 を受領した(同法77条1項5号及び115条の8第1項5号)との事実が確認され,これらの行為に対する行政処分が行われた場合の返還予定金額は,被告が確認した167名分(平成15年10月から平成20年7月までのサービス提供分として,平成20年9月までの東京都国民健康保険団体連合会の決定分)については1億7411万9294円(利用者負担額(1割)を含む。)であるなどと通知した。 (乙5)(5) 処分行政庁による集団指導の実施なお,処分行政庁は,平成13年度以来,毎年訪問看護の事業者を集めて集団での指導を実施しており(その出席率は東京都で訪問看護を行う事業所の9割以上である。),特に主治医の指示書及び訪問看護計画書等の主治医との関係,訪問看護計画書の利用者への説明,同意,交付などについて資料を配付して説明している。 (乙14,31) 2 争点(1)(本件各処分の適法性)について(1) 本件処分①についてア指定取消事由の該当性(ア) 運営基準違反(介護保険法77条1項3号,115条の8第1項3号)について - 17 -a 介護保険法の定め及び解釈介護保険法77条1項3号及び115条の8第1項3号は,都道府県知事は,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者が運営基準に従って適正な指定居宅サービスの事業及び介護予防サービスの事業の運営をすることができなくなったときに該当する場合においては,当該指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者の指定を取り消し,又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる旨を定めているところ,上記各号に該当するのは,上記各号の文言から明らかなとおり,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防 消し,又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる旨を定めているところ,上記各号に該当するのは,上記各号の文言から明らかなとおり,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者が,単に運営基準の定めに違反した場合ではなく,当該指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者について,運営基準の定めに従った適正な指定居宅サービスの事業及び介護予防サービスの事業の運営をすることを期待することができないような事情を生じた場合であると解される。 そこで,上記の解釈を踏まえ,本件において原告が上記各号所定の事由に該当するか否かを検討するため,以下では,まず本件に関係する運営基準の定めを明らかにした上,本件における運営基準違反に係る事実の有無及び上記各号の適用の可否を順次検討する。 b 本件に関係する運営基準の定めまず,本件に関係する運営基準の定めは,次のとおりである。 (a) 指定居宅サービス運営基準は,指定訪問看護事業者(60条1項参照)は,指定訪問看護の提供の開始に際し,① あらかじめ,利用申込者又はその家族に対し,重要事項説明書を交付して説明を行い,当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない(74条において準用する8条1項)ほか,② 主治医による指示を文書で受けなければならず(69条2項),また,③ その看 - 18 -護師等において,利用者の希望,主治医の指示及び心身の状況等を踏まえて,療養上の目標,当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した訪問看護計画書を作成し,当該訪問看護計画書を利用者に交付する(70条1項)だけでなく,主治医にも提出し,指定訪問看護の提供に当たって主治医との密接な連携を図らなければ サービスの内容等を記載した訪問看護計画書を作成し,当該訪問看護計画書を利用者に交付する(70条1項)だけでなく,主治医にも提出し,指定訪問看護の提供に当たって主治医との密接な連携を図らなければならない(69条3項)旨定めている。 (b) 指定介護予防サービス運営基準は,指定介護予防訪問看護事業者(63条1項参照)は,指定介護予防訪問看護の提供に際し,④ あらかじめ,利用申込者又はその家族に対し,重要事項説明書を交付して説明を行い,当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない(8条1項)ほか,⑤ 主治医による指示を文書で受けなければならず(77条1項),また,⑥ 看護師等において,利用者の日常生活の状況及び希望を踏まえて,指定介護予防訪問看護の目標,当該目標を達成するための具体的なサービスの内容,サービスの提供を行う期間等を記載した介護予防訪問看護計画書を作成し(76条1項2号),当該介護予防訪問看護計画書を利用者に交付する(同項5号)だけでなく,主治医にも提出しなければならず(同項2号),指定介護予防訪問看護の提供に当たって主治医との密接な連携を図らなければならない(77条3項)旨定めている。 c 本件の事実関係(a) 次に,前記1の認定事実によれば,原告は,指定居宅サービス事業者及び指定介護予防サービス事業者であるところ,次のとおり,指定居宅サービス運営基準69条2項及び70条並びに指定介護予防サービス運営基準74条において準用する8条1項,76条,77条に違反して指定訪問看護等の提供を行ったこと(以下「本件運営基準違反行為」という。)が認められる。 - 19 -① 上記b①及び④の定めに関して,本件調査対象者167名中,少なくとも26名(前記1(3) 提供を行ったこと(以下「本件運営基準違反行為」という。)が認められる。 - 19 -① 上記b①及び④の定めに関して,本件調査対象者167名中,少なくとも26名(前記1(3)イ(ウ)aのうち交付していないもの3名と同bの23名)については,指定訪問看護等の提供の開始に際し,あらかじめ利用者又はその家族に対して説明するに当たり,重要事項説明書を交付せず,その他71名についても,上記説明時の当該書面の交付を怠った疑いがある(前記1(2)ウ,(3)イ(ウ)参照)。 ② 上記b②及び⑤の定めに関して,本件調査対象者167名中,少なくとも62名について,指定訪問看護等の提供の開始(主治医による指示書の指示期間経過後にその提供の継続をする場合を含む。)に際し,主治医による指示を文書で受けないまま,現に指定訪問看護等の提供をした(前記1(2)ア,(3)イ(ア)参照)。 ③ 上記b③及び⑥の定めに関して,訪問看護計画書等(医師提出用)については,本件調査対象者167名全員に関して指定訪問看護等の提供の開始前にその作成・交付をせず,訪問看護計画書等(利用者交付用)については,平成12年8月から平成19年12月までの間の利用者全員に関してその作成・交付をせず,平成20年1月以降の利用者のうち17名に関してはその作成・交付をせず,28名に関してはその提供の開始前の交付をしなかった(前記1(2)イ,(3)イ(イ)参照)。 (b) そして,本件運営基準違反行為は,上記(a)のとおり長期間にわたり多数の利用者に対して恒常的に反復継続してされたものといわざるを得ない上,前記1の認定事実によれば,④ 特に主治医による指示に関しては,原告は,処分行政庁が実施する集団指導のみならず,平成15年の実地 の利用者に対して恒常的に反復継続してされたものといわざるを得ない上,前記1の認定事実によれば,④ 特に主治医による指示に関しては,原告は,処分行政庁が実施する集団指導のみならず,平成15年の実地指導において,処分行政庁の指摘を受けたことにより,主治医から適時適切にその指示書を受けなければならな - 20 -いことを十分認識し得たにもかかわらず,その後も上記(a)②のとおり主治医による指示を文書で受けずに指定訪問看護等の提供を反復継続していること,⑤ 本件実地指導検査の数日前には,原告は,P3管理者らをして,利用者2名に係る主治医の指示書を入手するため,当該主治医の面前で代筆させるなどの方法により作成させるなどしたことが認められ,これらの事情をも併せ考慮すれば,原告には,本件処分①の当時において,もはや上記(a)で掲げた運営基準の定め(指定居宅サービス運営基準69条2項及び70条並びに指定介護予防サービス運営基準74条において準用する8条1項,76条,77条)に従った適正な指定居宅サービスの事業(指定介護予防サービスの事業)の運営をすることを期待することができないような事情が生じていたものといわざるを得ない。 (c) 原告の主張について① これに対し,原告は,指定訪問看護等の提供の開始に際し,<ア> 主治医から口頭により指示を受けており,また,<イ> 特段の事情がない限り,訪問看護計画書も作成していた旨主張し,これに沿う証拠(甲3,13,22,乙22)もある。 <ア>の点については,確かに,前記1のとおり,C医師がP3管理者に対して主治医による指示を口頭でしたことは認められるものの,その指示内容は,本件全証拠によっても明らかではなく,指定居宅サービス運営基準69条2項の文書によ に,前記1のとおり,C医師がP3管理者に対して主治医による指示を口頭でしたことは認められるものの,その指示内容は,本件全証拠によっても明らかではなく,指定居宅サービス運営基準69条2項の文書による指示と同程度の指示があったとまでは認めることができないから,上記事実のみをもって実質的にみて同項の趣旨に反しないものとはいえない。 また,<イ>の点については,証拠(乙24,25の1,25の2及び25の4)によれば,本件事業所に勤務して指定訪問看護等の提供に関与した看護師らは,訪問看護計画書等を訪問看護の - 21 -提供後に作成すべき報告書と同時期に作成したり,後から数か月分まとめて作成したりしたこともうかがわれるところであり,これに反する原告の陳述書(甲13,22)の信用性は低いといわざるを得ず,他に原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は,理由がなく採用することができない。 ② また,原告は,平成15年の実地指導の際には,処分行政庁が,<ア> 主治医の指示書の交付日が指定訪問看護等の提供の開始後であるケースを確認していたはずであるが,この点についての指導をせず,<イ> 訪問看護計画書を事前に作成しても,その作成日を主治医への提出日とした場合には,処分行政庁として訪問看護計画書とは認めないとの指摘もしなかった上,<ウ> 平成16年11月8日付け改善報告書(乙4)では,主治医による指示を口頭で受けて訪問看護等の提供を開始した場合でも,必ず主治医の指示書を受けるよう努力する旨報告したにすぎないから,原告においてこれらの点を遵守することができなかったとしてもやむを得ない旨主張し,これに沿う証拠(甲13,22)もある。 しかしながら 受けるよう努力する旨報告したにすぎないから,原告においてこれらの点を遵守することができなかったとしてもやむを得ない旨主張し,これに沿う証拠(甲13,22)もある。 しかしながら,訪問看護等の提供の開始に際し,主治医による指示を書面で受けるべきこと及びその提供の開始前に訪問看護計画書等を作成して利用者に交付するとともに主治医に提出すべきことは,運営基準で明示的に定められており,前記1の認定事実によれば,この点は処分行政庁が毎年実施する集団指導でも説明されていることから,東京都において法令に従って適正に訪問看護等を行う事業者であれば当然認識し得たものといえ,平成15年の実地指導の際に処分行政庁が原告に対して個別具体的に指導等をしなければ遵守を期待することができない事項であるとは到 - 22 -底いえない。また,平成16年11月8日付け改善報告書(乙4)は,その文言上,主治医による指示を口頭で受けて訪問看護等の提供を開始したことを前提とするものであるとは記載されておらず,また,処分行政庁も,上記bで掲げた運営基準の定めを前提として,原告に対し,実地指導結果通知書(乙3)において,主治医の指示書に指示のない期間が一部あったことに関する改善・報告を求めたのであるから,上記改善報告書をもって,原告が主治医による指示を口頭で受けて訪問看護等の提供を開始することを許容したものと解することもできないのであって,単に原告が訪問看護等の提供の開始に際して主治医による指示を書面で受ける具体的改善方法を明らかにしたものというべきである。 したがって,原告の上記主張は,理由がなく採用することができない。 ③ なお,原告は,処分行政庁が,本件各処分に当たり,本件運営基準違反行為のうち平成15年の実地 したがって,原告の上記主張は,理由がなく採用することができない。 ③ なお,原告は,処分行政庁が,本件各処分に当たり,本件運営基準違反行為のうち平成15年の実地指導前のものを考慮することは相当でない旨主張するが,処分行政庁は,平成15年の実地指導時には,その時点で存在した運営基準に違反する行為を基に,原告に対して何らかの行政処分をしていたわけではないから,本件各処分に当たり,本件運営基準違反行為のうち平成15年の実地指導前のものを考慮したとしても,何ら不当ではないし,このうち平成15年の実地指導後のもの(前記1(2)アからウまで)だけをみても,その件数は相当数に及ぶことが明らかであるから,原告の上記主張は,前記(c)の判断を左右するものではなく採用することができない。 d 介護保険法77条1項3号及び115条の8第1項3号の適用の可否 - 23 -(a) 上記cのように,原告は,本件処分①の当時において,もはや指定居宅サービス運営基準69条2項及び70条並びに指定介護予防サービス運営基準74条において準用する8条1項,76条,77条に従った適正な指定居宅サービスの事業(指定介護予防サービスの事業)の運営をすることを期待することができないような事情が生じていた。 しかるに,上記の運営基準の定めは,① 介護保険法上の「介護保険」が,被保険者の要介護状態又は要支援状態に関し,必要な保険給付を,「医療との連携」に十分配慮し,「被保険者の選択に基づき」,適切な保険医療サービス及び福祉サービスを多様な事業者又は施設から総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行わなければならないとされていること(同法2条1項から3項まで)のほか,② 同法上の「訪問看護」は, 医療サービス及び福祉サービスを多様な事業者又は施設から総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行わなければならないとされていること(同法2条1項から3項まで)のほか,② 同法上の「訪問看護」は,居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき「病状が安定期にあり,居宅において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を要すること」に適合していると認めたものに限る。)について,その者の居宅において看護師等により行われる「療養上の世話及び必要な診療上の補助」とされ(同法8条4項,介護保険法施行規則6条,7条),また,③ 同法上の「介護予防訪問看護」は,居宅要支援者(主治の医師がその治療の必要の程度につき「病状が安定期にあり,居宅において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を要すること」に適合していると認めたものに限る。)について,その者の居宅において,その介護予防を目的として看護師等により所定の期間にわたり行われる「療養上の世話又は必要な診療の補助」とされ(同法8条の2第4項,介護保険法施行規則22条の5,22条の6),いずれも医療を行う権限を有する主治医の判断の下に実施さ - 24 -れる必要があること(医師法17条,保健師助産師看護師法5条,37条参照)に照らし,指定居宅サービスの事業又は指定介護予防サービスの事業の運営に当たり,最も基本的かつ重要な取扱いを定めたものというべきである。 したがって,指定居宅サービス事業者(指定介護予防サービス事業者)である原告が,上記の指定居宅サービス運営基準(指定介護予防サービス運営基準)の定めに従って指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)の提供を行わないだけでなく,これらの定めに従った適正な指定居宅サービスの事業(指定介護予防サービスの事業)の運営を 定介護予防サービス運営基準)の定めに従って指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)の提供を行わないだけでなく,これらの定めに従った適正な指定居宅サービスの事業(指定介護予防サービスの事業)の運営をすることを期待することができないような事情が生じている以上,原告が指定居宅サービス運営基準(指定介護予防サービス運営基準)に従って適正な指定居宅サービスの事業(指定介護予防サービスの事業)の運営をすることができなくなったものとして,介護保険法77条1項3号(115条の8第1項3号)に該当するものといわざるを得ない。 (b) これに対し,原告は,指定訪問看護等の提供に当たり主治医による指示を口頭で受け(主治医による指示に係る指示期間を経過した後に,新たに主治医による指示を受けないままその提供を継続する場合も含む。),その提供の開始後にその指示書を受領した場合には,実質的に当該医師の指導監督下で指定訪問看護等を提供したといえるから,その提供の開始に当たり主治医による指示を文書で受けていないという手続ミスがあったことのみをもって,介護保険法77条1項3号(115条の8第1項3号)には該当しない旨主張する。 しかしながら,介護保険法の委任を受けて厚生労働大臣が定めた指定居宅サービス運営基準(及び指定介護予防サービス運営基準) - 25 -は,指定居宅サービス事業者(指定介護予防サービス事業者)と主治医との連携について,指定訪問看護事業所(指定介護予防訪問看護事業所)が指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)を担当する医療機関である場合を除き,指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)の「提供の開始に際し」,主治医による指示を「文書」で受けなければならないと明文で定めているところ(指定居宅サービス運営基準69条2項,指定 関である場合を除き,指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)の「提供の開始に際し」,主治医による指示を「文書」で受けなければならないと明文で定めているところ(指定居宅サービス運営基準69条2項,指定介護予防サービス運営基準77条2項),その趣旨は,指定訪問看護事業所(指定介護予防訪問看護事業所)が指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)を担当する医療機関である場合には,看護師等が医療機関との間で雇用関係上の指揮監督下にあることから,当該医療機関における主治医の指示に基づき適切な指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)が行われることが客観的に担保される(この場合においても,主治医の指示は,診療録その他の診療に関する記録への記載を要することとされている。指定居宅サービス運営基準69条4項,指定介護予防サービス運営基準77条4項,76条15号参照。)が,上記の場合以外の場合は,指定居宅サービス事業者(指定介護予防サービス事業者)の下で指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)を行う看護師等が主治医の指示に基づき適切な指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)を行うことが客観的に担保されていないため,主治医の指示を事前にかつ文書により受けることとして,確実に密接な連携が図られるようにしたものと解することができる。また,訪問看護(介護予防訪問看護)の要否及び内容は,主治医による治療の必要の程度等の判断により変わり得るところ,主治医による指示において訪問看護(介護予防訪問看護)の期間が定められた場合には,当該医師が,当該期間の経過時点において,改めて治療の必要の程度等を判断することとしたも - 26 -のと解されるから,指定居宅サービス事業者(指定介護予防サービス事業者)は,当該経過後に指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)の提供を開始するには,それに際して 判断することとしたも - 26 -のと解されるから,指定居宅サービス事業者(指定介護予防サービス事業者)は,当該経過後に指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)の提供を開始するには,それに際して改めて主治医による指示を受けなければならないことは,上記のような主治医の指示書の解釈や指定居宅サービス運営基準69条2項(指定介護予防サービス運営基準77条2項)の趣旨に照らして明らかである。 そうすると,原告が,指定訪問看護等の提供に当たり主治医による指示を口頭で受け(主治医による指示に係る指示期間を経過した後に,新たに主治医による指示を受けないままその提供を継続する場合も含む。),その提供の開始後に当該指定訪問看護等の内容に沿う主治医の指示書を受領したとしても,そのような事態は介護保険法の委任を受けて厚生労働大臣が定めた指定居宅サービス運営基準(指定介護予防サービス運営基準)の趣旨及び解釈に反することが明らかであるから,これをもって実質的に当該医師の指導監督下でされたものとみることはできず,原告の上記主張は採用することができない。 なお,原告は,指定訪問看護のほとんどは,入浴,清拭,利用者の安楽につながる援助等の「療養上の世話」であり,主治医による指示がなくても行い得る旨主張するが,上記のとおり訪問看護(介護予防訪問看護)の要否及び内容は主治医による治療の必要の程度等の判断により変わり得るものである上(介護保険法8条4項,介護保険法施行規則6条,7条参照),弁論の全趣旨によれば,訪問看護は,医療依存の高い気管切開者,膀胱カテーテル留置者,経管栄養患者,中心静脈栄養患者,人工透析(腹膜灌流)者,家庭酸素治療者,人工呼吸器使用者,病状安定期にあるが外来通院困難な在宅療養患者等を対象とするものであること 管切開者,膀胱カテーテル留置者,経管栄養患者,中心静脈栄養患者,人工透析(腹膜灌流)者,家庭酸素治療者,人工呼吸器使用者,病状安定期にあるが外来通院困難な在宅療養患者等を対象とするものであることが認められるから,指定 - 27 -訪問看護(指定介護予防訪問看護)の提供の開始に際して主治医による指示を受けることは必要不可欠というべきであり,これに反する原告の上記主張を採用することはできない。 e 小括以上によれば,原告は,指定居宅サービス運営基準(指定介護予防サービス運営基準)に従って適正な指定居宅サービスの事業(指定介護予防サービスの事業)の運営をすることができなくなったものといわざるを得ず,介護保険法77条1項3号及び115条の8第1項第5号に該当する。 (イ) 不正請求(介護保険法77条1項5号,115条の8第1項5号)についてa 介護保険法77条1項5号及び115条の8第1項5号は,都道府県知事は,居宅介護サービス費及び介護予防サービス費の請求に関し不正があったときに該当する場合においては,当該指定居宅サービス事業者及び当該指定介護予防サービス事業者の指定を取り消し,又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる旨定めている。そして,居宅介護サービス費は,同法41条1項所定の居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けたときに当該指定居宅サービスに要した費用について支給するものとされ(同法41条1項。さらに,介護保険法施行規則62条1項は,訪問看護に係る居宅介護サービス費は,同規則6条に規定する基準に適合している居宅要介護被保険者に係るものと認められるものに限り支給するものとしている。),介護予防サービス費は,同法53 2条1項は,訪問看護に係る居宅介護サービス費は,同規則6条に規定する基準に適合している居宅要介護被保険者に係るものと認められるものに限り支給するものとしている。),介護予防サービス費は,同法53条1項所定の居宅要支援被保険者が指定介護予防サービス事業者から指定介護予防サービスを受けたとき(ただし,介護保険法施行規則83条の9所定の場合に限る。)に当該指定介護予防サービス - 28 -に要した費用について支給するものとされている(同法53条1項)ところ,居宅介護サービス費(介護予防サービス費)の請求に当たっての訪問介護費(介護予防訪問看護費)の算定は,主治医の指示書及び指定訪問看護計画書(指定介護予防訪問看護計画書)に基づいて行われる指定訪問介護(指定介護予防訪問看護)を前提として単位数が定められていること(同法41条4項1号,53条2項1号,指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準の別表「3 訪問看護費」注1,指定介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の別表「3 介護予防訪問看護費」注1参照)に照らすと,主治医の指示書又は指定訪問看護計画書(指定介護予防訪問看護計画書)に基づかずに行った指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)について居宅介護サービス費(介護予防サービス費)の請求をすることは,上記各号にいう「不正」に該当すると解すべきである。 これに対し,原告は,介護保険法77条1項5号及び115条の8第1項5号が,架空請求など刑事事件の詐欺行為にも該当する程度の行為を想定したものである旨主張するが,同法上,原告主張のように解すべき根拠となる規定は存在しない上,刑事処分と行政処分とではその目的・効果が全く異なり,上記各号の「請求に関し不正があったとき」との文言を原告主張のように限定して解すべ 同法上,原告主張のように解すべき根拠となる規定は存在しない上,刑事処分と行政処分とではその目的・効果が全く異なり,上記各号の「請求に関し不正があったとき」との文言を原告主張のように限定して解すべき理由はないから,原告の上記主張は採用することができない。 b 前記1の認定事実によれば,原告は,上記(ア)cのとおり本件運営基準違反行為に当たる指定訪問看護(指定介護予防訪問看護)について,居宅介護サービス費(介護予防サービス費)の請求をし,現に当該請求に係る報酬を受領したこと(その報酬総額は,利用者負担額(1割)を含め,1億7411万9294円である。)が認められるから,介護保険法77条1項5号及び115条の8第1項5号に該当する。 - 29 -イ裁量権の逸脱又は濫用の有無(ア) 介護保険法77条1項及び115条の8第1項は,同項所定の事由に該当する場合には,指定居宅サービス事業者又は指定介護予防サービス事業者の指定を取り消し,又は期間を定めてその指定の全部又は一部の効力を停止することができる旨定めているところ,この規定の文言及び介護保険法の趣旨(同法1条)に照らすと,処分行政庁が同法77条1項及び115条の8第1項の指定取消し又はその指定の全部若しくは一部の効力停止の処分をするか否か,いかなる処分を選択するかについては,処分行政庁に裁量権が与えられているものと解される。 そうすると,処分行政庁の同法77条1項及び115条の8第1項の指定取消し又はその指定の全部若しくは一部の効力停止の処分は,処分行政庁がこれらの処分をする際にその裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をした場合に限り,違法になるものと解すべきである。 (イ) そこで,本件処分①に処分行政庁の裁量の逸脱,濫用があるか否 行政庁がこれらの処分をする際にその裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をした場合に限り,違法になるものと解すべきである。 (イ) そこで,本件処分①に処分行政庁の裁量の逸脱,濫用があるか否かを検討する。 この点,原告は,前記アのとおり,介護保険法77条1項3号及び5号並びに115条の8第1項3号及び5号所定の事由に該当するところ,① 運営基準違反の点については,本件運営基準違反行為が,基本的かつ重要な運営基準の定めに違反するもので,長期間に及び多数回にわたって反復継続してされていることに照らすと,原告には法令の趣旨を遵守しようとする意識が低く,その行為態様としても相当悪質であり,②不正請求の点についても,長期間に及び多数回にわたって反復継続してされたもので行為態様として悪質であり,不正請求に係る報酬総額も相当多額に及んでいるから,その結果も重大である。そして,原告は,前記アのとおり,本件処分①の時点において,もはや法令を遵守して適正な指定居宅サービスの事業及び指定介護予防サービスの事業の運営を - 30 -することができない状態にあったから,その指定を受けた状態を早急に解消する必要性があるといえる。 これらの事情に照らすと,原告の訪問看護サービス事業等に関係した医師らから本件事業所の存続を強く要望する旨の要望書(甲14~20)が提出されていること等を考慮しても,処分行政庁が裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をして本件処分①をしたと認めることはできない。 (ウ) 原告の主張についてa これに対し,原告は,① 良好な指定居宅サービス及び指定介護予防サービスを提供していたから,処分行政庁として手続ミスがないように繰り返し指導をすべきであり,② その事案の内容に照らして,本件 a これに対し,原告は,① 良好な指定居宅サービス及び指定介護予防サービスを提供していたから,処分行政庁として手続ミスがないように繰り返し指導をすべきであり,② その事案の内容に照らして,本件処分①をする前に,業務改善勧告又は業務改善命令を発すべきであった旨主張する。 b しかしながら,①の点については,原告が該当する介護保険法77条1項3号及び5号並びに115条の8第1項3号及び5号所定の事由は,手続ミスという程度にとどまるものでないことは,前記(イ)のとおりであり,処分行政庁が本件処分①をする前にその是正に向けた指導を行わなかったことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を基礎付けるものではない。 c また,②の点については,(a) 確かに,「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(平成11年9月17日付け老企第25号厚生省老人保健福祉局企画課長通知。以下「本件通知」という。乙13)第一の2は,運営開始後,基準(指定居宅サービス運営基準を指す。 以下この項において同じ。)に違反することが明らかになった場合には,指定取消処分等をする前に,相当の期間を定めて基準を遵守するよう勧告を行うなどするのが原則であり,次の場合には,基準 - 31 -に従った適正な運営ができなくなったものとして,直ちに指定を取り消すことができるとしている。 ① 次に掲げるときその他の事業者が自己の利益を図るために基準に反したときイ指定居宅サービスの提供に際して利用者が負担すべき額の支払を適正に受けなかったときロ居宅介護支援事業者又はその従業者に対し,利用者に対して特定の事業者によるサービスを利用させることの代償として,金品その他の 用者が負担すべき額の支払を適正に受けなかったときロ居宅介護支援事業者又はその従業者に対し,利用者に対して特定の事業者によるサービスを利用させることの代償として,金品その他の財産上の利益を供与したとき② 利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあるとき③ その他①及び②に準ずる重大かつ明白な基準違反があったとき(b) しかし,そもそも本件通知における上記(a)の定めは,処分行政庁が介護保険法77条1項3号及び115条の8第1項3号の処分を行うに当たっての裁量権行使の指針を示したものにすぎず(この点は,同法が都道府県知事の勧告・命令等(同法76条の2,115条の7)を指定居宅サービス事業者の指定又は指定介護予防サービス事業者の指定の各取消し等の前提としていないこと(同法77条,115条の8参照)からも明らかである。),同法77条1項5号及び115条の8第1項5号の処分を行う場合には適用されないと解されるから,本件各処分のうち少なくとも後者を理由とする部分については,上記定めの存在から裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を認めることはできないし,この点をおくとしても,原告の同法77条1項3号及び115条の8第1項3号違反行為は,前記(イ)で指摘した諸点に加え,指定訪問看護等において主治医による指示や訪問看護計画書等・重要事項説明書を必要とする運営基準の趣旨(前記ア(ア)d(a)参照)等にかんがみれば,上記(a)の定め中の「③ そ - 32 -の他①及び②に準ずる重大かつ明白な基準違反があったとき」に該当することが明らかであるから,処分行政庁が本件処分①に先立ち業務改善勧告又は業務改善命令を発しなかったことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を基礎付けるもので 明白な基準違反があったとき」に該当することが明らかであるから,処分行政庁が本件処分①に先立ち業務改善勧告又は業務改善命令を発しなかったことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を基礎付けるものではない。 d したがって,原告の上記主張は,理由がなく採用することができない。 ウよって,本件処分①は,適法である。 (2) 本件処分②についてア指定取消事由の該当性生活保護法54条の2第4項において準用する51条2項(同法施行令6条による読替え後のもの)は,指定介護機関が同法54条の2第4項において準用する50条の規定に違反したときは,都道府県知事の指定した指定介護機関については都道府県知事が,その指定を取り消すことができる旨定めており,指定介護機関は,厚生労働大臣の定めるところにより,懇切丁寧に被保護者の介護を担当しなければならず(同法54条の2第4項において準用する50条1項),指定介護機関の介護の方針及び介護の報酬は,介護保険の介護の方針及び介護報酬の例による(同法54条の2第4項において準用する52条1項)ところ,前記(1)のとおり,原告には,指定居宅サービス運営基準違反である本件運営基準違反行為や介護報酬の不正請求が認められるから,指定介護機関が同法54条の2第4項において準用する50条の規定に違反したものとして,同法54条の2第4項において準用する51条2項に該当する。 イ裁量権の逸脱又は濫用の有無処分行政庁が生活保護法54条の2第4項において準用する51条2項の指定取消しの処分をするか否かについても,同項の文言等に照らして,処分行政庁に裁量権が与えられているものと解されるから,処分行政庁が - 33 -生活保護法54条の2第4項において準用する51条 指定取消しの処分をするか否かについても,同項の文言等に照らして,処分行政庁に裁量権が与えられているものと解されるから,処分行政庁が - 33 -生活保護法54条の2第4項において準用する51条2項の指定取消しの処分は,処分行政庁がこの処分をする際にその裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をした場合に限り,違法になるものと解すべきである。 しかし,前記(1)イで指摘した介護サービスの内容及び報酬の請求の不正又は不当の程度等にかんがみると,処分行政庁が裁量権の範囲を逸脱し,又はその濫用をして本件処分②をしたとは認められず,これに反する原告の主張を採用することはできない。 ウしたがって,本件処分②は,適法である。 3 争点(2)(本件各処分における国家賠償法上の違法性の有無及びその損害額)について原告の被告に対する国家賠償法に基づく損害賠償請求は,処分行政庁が本件各処分をしたことに国家賠償法上の違法があると主張するものであるところ,本件各処分が適法であることは,前記2のとおりであるから,その余の点を判断するまでもなく,原告の上記主張は,理由がなく採用することができない。 第4 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神 裕 裁判官林 史高 - 34 -裁判官新宮智之
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