- 1 - 令和3年10月7日判決言渡 令和2年(ワ)第5020号 損害賠償請求事件 主 文 1 被告は,原告に対し,10万円を支払え。 5 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負 担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 10 被告は,原告に対し,100万円を支払え。 第2 事案の概要 本件は,原告(昭和▲年生まれの男性)が,①大阪府警察本部に対して暴力団 からの離脱届を提出していたにもかかわらず,大阪府警察の警察官が,原告につ いて暴力団構成員である旨記載した捜査報告書を作成し,これを訂正しなかった 15 こと,②大阪府警察本部に対して3回にわたり書面を郵送して個人情報の開示請 求をしたにもかかわらず,大阪府警察本部長又は上記書面を受け付けた大阪府警 察本部の職員(以下「大阪府警察本部長等」という。)が何ら回答等をしなかっ たことにより,原告の権利が侵害され精神的苦痛を被ったなどと主張して,被告 に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料100万円の支払を求める事案で 20 ある。 1 本件条例等の定め等 ⑴ 大阪府個人情報保護条例(平成8年大阪府条例第2号。以下「本件条例」 という。乙2)等の定め ア 定義(2条) 25 (ア) 個人情報 - 2 - 本件条例2条1号柱書きは,個人情報とは,個人に関する情報であっ て,同号ア又はイのいずれかに該当するものをいう旨定め,同号アは, 要旨,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等(文書,図画若 しくは電磁的記録に記載され,若しくは記録され,又は音声,動作その 他の方法を用いて表された一切の事項〔行政 をいう旨定め,同号アは, 要旨,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等(文書,図画若 しくは電磁的記録に記載され,若しくは記録され,又は音声,動作その 他の方法を用いて表された一切の事項〔行政機関の保有する個人情報の 5 保護に関する法律2条3項に規定する個人識別符号を除く。〕をいう。) により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合するこ とができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるも のを含む。)を,同号イは,個人識別符号が含まれるものを,それぞれ掲 げる。 10 (イ) 実施機関 本件条例2条5号は,実施機関とは,知事,公安委員会及び警察本部 長等をいう旨定める。 イ 開示請求(12条) 本件条例12条1項は,何人も,実施機関に対し,当該実施機関が現に 15 保有している自己に関する個人情報であって,検索し得るものの開示を請 求することができる旨定める。 ウ 開示しないことができる個人情報(14条) 本件条例14条2項2号は,公安委員会又は警察本部長は,開示請求に 係る個人情報が,開示することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴 20 の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ があると公安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある 個人情報に該当するものであるときは,当該個人情報を開示しないことが できる旨定める。 エ 個人情報の存否に関する情報(16条) 25 本件条例16条は,開示請求に対し,当該開示請求に係る個人情報が存 - 3 - 在しているか否かを答えるだけで,本件条例15条1項各号又は2項各号 に掲げる個人情報を開示することとなるときは,実施機関は,当該個人情 報の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる 在しているか否かを答えるだけで,本件条例15条1項各号又は2項各号 に掲げる個人情報を開示することとなるときは,実施機関は,当該個人情 報の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる旨定 める。 オ 開示請求の方法(17条) 5 (ア) 開示請求書 本件条例17条1項は,その柱書きにおいて,開示請求をしようとす る者は,同項1号ないし3号に掲げる事項を記載した開示請求書を実施 機関に提出しなければならない旨定め,同項1号は,開示請求をしよう とする者の氏名及び住所又は居所を,同項2号は,開示請求に係る個人 10 情報を特定するために必要な事項を,同項3号は,同項1号及び2号に 掲げるもののほか,実施機関の規則で定める事項を,それぞれ掲げる。 その上で,大阪府公安委員会及び大阪府警察本部長を実施機関とする ものについて,大阪府個人情報保護条例の施行に関する規則(平成18 年公安委員会規則第6号。以下「本件規則」という。乙3)4条1項は, 15 本件条例17条1項に規定する開示請求書は,個人情報開示請求書(本 件規則の別記様式第2号。以下「本件書式」という。)とする旨定める。 (イ) 本人証明資料 本件条例17条2項は,開示請求をしようとする者は,自己が当該開 示請求に係る個人情報の本人又はその代理人であることを証明するため 20 に必要な資料で実施機関の定めるものを実施機関に提出し,又は提示し なければならない旨定める。 その上で,大阪府公安委員会及び大阪府警察本部長を実施機関とする ものについて,本件規則5条1項1号は,本件条例17条2項に規定す る本人であることを証明するために必要な資料で実施機関の定めるもの 25 は,運転免許証,旅券その他これらに類するものとして警察本部長が定 - 4 - める書類とする旨 は,本件条例17条2項に規定す る本人であることを証明するために必要な資料で実施機関の定めるもの 25 は,運転免許証,旅券その他これらに類するものとして警察本部長が定 - 4 - める書類とする旨定める。 (ウ) 個人情報特定に必要な情報提供 本件条例17条3項は,実施機関は,開示請求をしようとする者に対 し,当該開示請求に係る個人情報の特定に必要な情報を提供するよう努 めなければならない旨定める。 5 (エ) 補正 本件条例17条4項は,実施機関は,開示請求書に形式上の不備があ ると認めるときは,開示請求者に対し,相当の期間を定めて,その補正 を求めることができ,この場合において,実施機関は,開示請求者に対 し,当該補正に必要な情報を提供するよう努めなければならない旨定め 10 る。 カ 開示の決定及び通知(18条) 本件条例18条1項は,実施機関は,開示請求に係る個人情報の全部又 は一部を開示するときは,その旨の決定をし,速やかに,開示請求者に対 し,その旨及び開示の実施に関し必要な事項を書面により通知しなければ 15 ならない旨定める。 本件条例18条2項は,実施機関は,開示請求に係る個人情報の全部を 開示しないとき(本件条例16条の規定により開示請求を拒否するとき及 び開示請求に係る個人情報を保有していないときを含む。)は,その旨の 決定をし,速やかに,開示請求者に対し,その旨を書面により通知しなけ 20 ればならない旨定める。 キ 開示決定等の期限(19条) 本件条例19条1項本文は,本件条例18条1項及び2項の決定(以下 「開示決定等」という。)は,開示請求があった日から起算して15日以 内に行わなければならない旨定める。 25 ⑵ 本件条例解釈運用基準(乙10,11) - 条例18条1項及び2項の決定(以下 「開示決定等」という。)は,開示請求があった日から起算して15日以 内に行わなければならない旨定める。 25 ⑵ 本件条例解釈運用基準(乙10,11) - 5 - 被告が作成した大阪府個人情報保護条例の解釈運用基準(以下「本件条例 解釈運用基準」という。)には,本件条例17条(上記⑴オ)に関し,要旨, 次のとおりの記載がある。 ア 本件条例17条1項(開示請求書)について 開示請求は,請求者の権利行使として開示の決定という行政行為を求め 5 る申請手続であって,文書により事実関係及び本人の意思に基づく申請で あることを明確にしておくことが適当であることから,本件規則に定める 個人情報開示請求書による様式行為としたものである。したがって,本件 条例22条により口頭による開示請求ができる場合を除いて,口頭又は電 話等による開示請求は認めないものとする。 10 イ 本件条例17条2項(本人証明資料)について 個人情報の開示は,当該個人情報の本人又はその代理人に対してのみ行 われるものであるから,本人等の確認は厳格に行うことが必要である。こ のため,開示請求は,府政情報センター又は担当室・課(所)等への来庁又 は郵送によることとし,ファクシミリや電子メール等による請求は認めな 15 いこととしている。 特に,郵送による開示請求においては,請求者について対面による本人 確認ができないことから,個人情報が誤って他人に開示されるおそれがあ るため,請求者の本人確認について,通常の本人確認書類のほか,住民票 の写しの提出を求めるなど,来庁による開示請求の取扱いよりも厳格に対 20 応することとしている。なお,郵送による開示請求については,多様な就 業環境や生活環境により来庁が困難な府民等 のほか,住民票 の写しの提出を求めるなど,来庁による開示請求の取扱いよりも厳格に対 20 応することとしている。なお,郵送による開示請求については,多様な就 業環境や生活環境により来庁が困難な府民等に対しても開示請求権を確保 する必要があることから認めることとしたものである。 ウ 本件条例17条3項(個人情報特定に必要な情報提供)について 本件条例17条3項の「個人情報の特定に必要な情報」とは,請求に係 25 る個人情報に関係する行政文書の目録等個人情報を特定するに足りる情報 - 6 - を意味し,実施機関は,請求者が的確に開示請求できるよう,これらの情 報を提供する努力義務を負うものである。 エ 本件条例17条4項(補正)について 実施機関は,受領した個人情報開示請求書に「個人情報を特定するに足 りる事項」が書かれていないなど,形式上の不備があれば,本件規則で定 5 める「開示請求に係る補正通知書」により,その補正をするのに必要な一 定の期間を定めて,請求者に補正を求めることができる。また,補正を求 める場合において,実施機関は,本件条例17条3項の情報等当該補正に 必要な情報を請求者に提供するよう努めなければならない。なお,通常の 補正に要する相当の期間を定めて補正を求めたにもかかわらず,当該期間 10 を経過しても不備が補正されない場合には,原則として補正の意思がない ものとして取り扱う。 ⑶ 個人情報の開示請求等に係る事務処理要領(平成18年例規(府民)第1 7号。以下「本件事務処理要領」という。)の制定について(乙4) 大阪府警察は,平成18年例規(府民)第17号において,個人情報の開 15 示請求等につき,本件事務処理要領を定めた。 ア 趣旨 本件事務処理要領の第1(趣 いて(乙4) 大阪府警察は,平成18年例規(府民)第17号において,個人情報の開 15 示請求等につき,本件事務処理要領を定めた。 ア 趣旨 本件事務処理要領の第1(趣旨)は,本件事務処理要領は,本件条例に 基づく大阪府公安委員会及び大阪府警察本部長に対する個人情報の開示請 求,訂正請求及び利用停止請求(以下「開示請求等」という。)並びに個人 20 情報の取扱いの是正の申出(以下「是正の申出」という。)に係る事務の処 理その他個人情報についての苦情の申出の取扱いに関し,必要な事項を定 めるものとする旨定める。 イ 受付 本件事務処理要領の第7(受付)の2項は,電話,口頭(本件条例22条 25 1項の規定によるものを除く。),郵送,ファクシミリ,電子メール等によ - 7 - る府民等からの開示請求等及び是正の申出は,受け付けないものとする旨 定める。 ウ 本人等の確認方法 本件事務処理要領の第8(本人等の確認方法)の1項は,情報公開室の 職員は,開示請求等の受付を行うときに,開示請求等をしようとする者が 5 本人であることの確認として,①運転免許証,旅券及び個人番号カード等 の本件事務処理要領の別表記載の資料のいずれかの提示又は提出を求める こととし,②上記の資料を保有していない場合には,開示請求等をしよう とする者がする説明,開示を求める個人情報の内容等を考慮して,一般に 本人以外の者が保有することがないと認められる複数の資料(公共料金領 10 収証,預金通帳等)の提示又は提出を求める方法により行うことができる 旨定める。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認めることができる事実) ⑴ 原告 15 原告(昭和▲年生まれの男性)は,平成30年9月15日に 2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認めることができる事実) ⑴ 原告 15 原告(昭和▲年生まれの男性)は,平成30年9月15日に下記⑵アの職 務質問を受け,その後,大阪拘置所に収容され,下記⑶~⑸の各書面が郵送 された当時においても,大阪拘置所に収容されていた。なお,原告は,その 後,大阪刑務所に収容されたが,令和2年2月26日,松江刑務所に移送さ れ,令和3年6月23日,松江刑務所を出所した(弁論の全趣旨)。 20 ⑵ 本件報告書の記載等 ア 本件報告書 大阪府警察本部地域部第一方面機動警ら隊のA警察官(以下「A警察官」 という。)ほか2名の警察官は,平成30年9月15日,原告に対し,覚せ い剤取締法違反(使用)被疑事件について職務質問を実施し,A警察官は, 25 同日付けで,原告に対する職務質問状況についての捜査報告書(以下「本 - 8 - 件報告書」という。乙5)を作成した。 本件報告書には,上記職務質問の際に,A警察官が大阪府警察本部総務 部情報管理課情報センター(以下「本件情報センター」という。)に対して 原告の犯歴照会を実施し,本件情報センターから原告が暴力団構成員であ るとの回答を得た旨が記載されている。 5 なお,原告は,平成21年頃,大阪府警察本部に対し,暴力団離脱届を 提出していた。(以上につき乙1の1・2,5) イ 本件加入状況報告書 他方,上記被疑事件について大阪府平野警察署(以下「平野警察署」と いう。)の警察官が作成した平成30年9月15日付けの「捜査復命書(被 10 疑者Bの暴力団加入状況)」と題する捜査報告書(以下「本件加入状況報 告書」という。)には,大阪府警察本部刑事部捜査第四課に対して原告の 暴力団加入状況について照会した結果,元暴 捜査復命書(被 10 疑者Bの暴力団加入状況)」と題する捜査報告書(以下「本件加入状況報 告書」という。)には,大阪府警察本部刑事部捜査第四課に対して原告の 暴力団加入状況について照会した結果,元暴力団構成員であることが判明 した旨記載されていた。そして,本件加入状況報告書は,本件報告書と同 時に,捜査資料として大阪地方検察庁に送致された(乙6,弁論の全趣旨)。 15 ⑶ 平成31年1月18日付け書面(本件書面①)について ア 本件書面①の郵送 平成31年1月18日頃,本件情報センター宛てに,差出人として原告 の氏名が記載された書面(平成31年1月18日付け。以下「本件書面①」 という。乙7)が郵送された。 20 イ 本件書面①の記載内容 本件書面①には,「教示願います。」,「私は平成20年7月頃までC組 内D組の構成員として活動してましたが,その後(中略)大阪府警本部に 離脱届を提出しているのですが,受理されてないのでしょうか?」,「こ の度,昨年9月に職務質問を受けた時に大阪府警本部情報管理課情報セン 25 ターの解答を調書(公文書)に記載されてるのですが,上記の組織を抜け - 9 - てからは何処にも出入りしてないのです。」,「暴力団構成員で登録され ている理由の開示請求をお願いします。」などと記載されていた(乙7)。 ウ 大阪府警察本部長等の対応 大阪府警察本部長等は,本件書面①の差出人として記載されている原告 に対し,本件書面①について,何ら回答等をしなかった。 5 ⑷ 令和元年10月30日付け書面(本件書面②)について ア 本件書面②の郵送 令和元年10月30日頃,大阪府警察本部警務部監察室(以下「本件監 察室」という。)宛てに,差出人として原告の氏名が記載された書面(令和 元年10月30日付け。以下「 ア 本件書面②の郵送 令和元年10月30日頃,大阪府警察本部警務部監察室(以下「本件監 察室」という。)宛てに,差出人として原告の氏名が記載された書面(令和 元年10月30日付け。以下「本件書面②」という。乙8)が郵送された。 10 イ 本件書面②の記載内容 本件書面②の1枚目及び2枚目には,原告が受けた運転免許取消しの行 政処分について審査請求をする旨が記載され,上記行政処分の通知書(甲 3)に記載された受付番号(8-043141-C門)が記載されていた。 また,本件書面②の3枚目には,上記審査を求める旨が記載された2枚 15 目から頁が改められた上で,「それと現在の私は平成30年9月15日に 大阪府警本部の警ら課のAとE警部補から平野区内で職務質問を受けてお ります。その際にA氏が情報管理センターへ犯歴照会をしてるのですが, 捜査復命書(公文書)に私の事を暴力団構成員であるとの照会が有ったと 記載されておる訳ですが,私は平成20年7月にC組内D組から破門され 20 ており,翌平成21年春頃には京都刑務所から離脱届を提出して本部で受 理されてる筈なのです。その後はどこの組織にも所属してないのですが, 本件の職務質問で誤認の職務が執行されており,不利益な人権の侵害を受 けております。ですので誠に恐縮ですが,情報の開示請求願います。この 様な誤認が有って捜査する事は司法の信頼を大きく失墜させるものである 25 と勘案する所存です。つきましては上記の事柄を精査して頂ければ幸甚で - 10 - す。」と記載されていた。(以上につき乙8) ウ 大阪府警察本部長等の対応 本件書面②は,原告が大阪府公安委員会から受けた運転免許取消しの行 政処分(甲3)に関する審査請求として受理され,大阪府公安委員会は, 令和元年11月27日に同審査請求を却 大阪府警察本部長等の対応 本件書面②は,原告が大阪府公安委員会から受けた運転免許取消しの行 政処分(甲3)に関する審査請求として受理され,大阪府公安委員会は, 令和元年11月27日に同審査請求を却下する旨の裁決をし,同月28日 5 に同裁決に係る裁決書を原告に対して送付した。ただし,本件書面②の3 枚目に記載された内容については,審査請求の対象外として扱われた。 そして,大阪府警察本部長等は,本件書面②の差出人として記載されて いる原告に対し,本件書面②の3枚目について,何ら回答等をしなかった。 ⑸ 令和元年12月10日付け書面(本件書面③)について 10 ア 本件書面③の郵送 令和元年12月10日頃,本件監察室宛てに,差出人として原告の氏名 が記載された書面(令和元年12月10日付け。以下「本件書面③」とい い,本件書面①及び本件書面②と併せて「本件各書面」という。乙9)が郵 送された。 15 イ 本件書面③の記載内容 本件書面③には,「警察官の取った行動に衣る信用の失墜行為について 何点かおたずね致します。」,「私を恰も暴力団構成員で有ると人権を侵 害する照会がなされております。」,「確かに私は平成20年7月に破門 されるまでは,C組内D組々員として活動をしていた事実は否めないです 20 が,平成21年春頃に京都刑務所から組事ム所及び西成署及びそちらの本 部にも離脱届を提出して受理されているとの話を刑ム所で確認を取って貰 っています。」,「尚,本年1月と10月頃に事柄を明確にする為に開示請 求をしたのですが返答が全く有りません。改めて情報開示を願います。こ のままでは離脱の意志を表明した意味が有りません。以上の様な理不尽な 25 対応についての回答を願います」などと記載されていた(乙9)。 - 11 - ウ 大阪府警察本部長 情報開示を願います。こ のままでは離脱の意志を表明した意味が有りません。以上の様な理不尽な 25 対応についての回答を願います」などと記載されていた(乙9)。 - 11 - ウ 大阪府警察本部長等の対応 大阪府警察本部長等は,本件書面③の差出人として記載されている原告 に対し,本件書面③について,何ら回答等をしなかった。 ⑹ その他の事情 本件各書面が封入されていた封筒には,差出人の住所として,いずれも大 5 阪拘置所の住所が記載されていた。また,本件各書面の下部には,いずれも, 桜の花の形を模した,中央に「大」と記載された印が押されており,これは 大阪拘置所の検閲印である(乙7~9,弁論の全趣旨)。 3 争点 ⑴ A警察官が本件報告書に原告が暴力団構成員である旨記載した行為等が国 10 家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か(争点⑴) ⑵ 大阪府警察本部長等が本件各書面に対して回答等をしなかったことが国家 賠償法1条1項の適用上違法であるか否か(争点⑵) ⑶ 損害の発生及び数額(争点⑶) 4 争点に関する当事者の主張 15 ⑴ 争点⑴(A警察官が本件報告書に原告が暴力団構成員である旨記載した行 為等が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について (原告の主張) ア 原告が暴力団構成員である旨の記載がされたことの違法性 原告は,A警察官らから職務質問を受けた平成30年9月15日時点に 20 おいて,既に暴力団構成員ではなかったが,A警察官がした本件情報セン ターへの犯歴照会に対する回答において暴力団構成員であるとされた。こ れを受けて,A警察官は,原告を暴力団構成員として扱い,本件報告書に 原告が暴力団構成員である旨記載し,その記載を訂正又は修正しなかった。 本件報告書は,これを大阪地方検察庁に送致した あるとされた。こ れを受けて,A警察官は,原告を暴力団構成員として扱い,本件報告書に 原告が暴力団構成員である旨記載し,その記載を訂正又は修正しなかった。 本件報告書は,これを大阪地方検察庁に送致した時点でその後の刑事裁判 25 において公になるものであった。 - 12 - その結果,原告は,原告が現在も暴力団構成員であるとの誤認に基づく 捜査をさせるような情報を流布され,また,原告を被告人とする刑事裁判 において検察官から本件報告書が証拠として提出されるなどして,名誉を 毀損され,憲法で保障されている基本的人権の侵害を受けたものである。 したがって,A警察官が本件報告書に原告が暴力団構成員である旨記載 5 した行為等は,国家賠償法1条1項の適用上違法である。 イ 被告の主張について これに対し,被告は,原告が暴力団構成員である旨の本件報告書の記載 は単なる誤記である旨主張する。しかし,本件報告書は,大阪地方検察庁 に送致されるまでに複数の警察官が確認した上で送致されたものであるか 10 ら,単なる誤記であるとみることはできない。また,仮に,被告が主張す るように,原告が暴力団構成員である旨の記載が誤記であったとしても, 公文書に誤った記載をすることは絶対に許されるものではないから,誤記 があれば訂正又は是正すべきであるにもかかわらず,本件で訂正等はされ ていない(原告に対しても訂正した旨の通知等はされていない。)。そう 15 すると,仮に単なる誤記であるとしても,裁判所に提出された本件報告書 に暴力団構成員である旨記載されている以上,原告は,本件報告書の記載 により,名誉を毀損され,憲法で保障されている基本的人権の侵害を受け たというべきである。 (被告の主張) 20 本件報告書には,原告が暴力団構成員である旨記載されているが, 記載 により,名誉を毀損され,憲法で保障されている基本的人権の侵害を受け たというべきである。 (被告の主張) 20 本件報告書には,原告が暴力団構成員である旨記載されているが,これは A警察官による単なる誤記であって,大阪府警察の警察官が原告を暴力団構 成員として取り扱ったことはない。 また,平野警察署の警察官は,原告の暴力団加入状況を捜査し,原告が「元」 暴力団構成員である旨を記載した本件加入状況報告書を作成し,本件報告書 25 の「暴力団構成員」との記載が誤記であることを明らかにしており,その上 - 13 - で本件加入状況報告書を本件報告書と同時に大阪地方検察庁に送致している のであるから,これらの捜査資料の送致を受けた大阪地方検察庁においても, 原告が暴力団構成員ではなく,元暴力団構成員であるということが直ちに理 解できる状態であった。 このように,A警察官,平野警察署の警察官,大阪府警察本部の警察官等, 5 大阪府警察の職員は,本件報告書の誤記に対する適切な是正措置を行ってい るから,本件報告書によって原告の基本的人権を侵害したり,名誉を毀損し たりしたということはできない。 したがって,A警察官が本件報告書に原告が暴力団構成員である旨記載し た行為等は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 10 ⑵ 争点⑵(大阪府警察本部長等が本件各書面に対して回答等をしなかったこ とが国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について (原告の主張) ア 個人情報の開示請求について何ら回答等がされなかったことの違法性 原告は,次のとおり,大阪府警察本部に対し,書面を3回にわたり送付 15 し,個人情報の開示請求をしたにもかかわらず,大阪府警察本部長等から 何らの回答等もされず,開示請求を無視され,人権を侵害さ 原告は,次のとおり,大阪府警察本部に対し,書面を3回にわたり送付 15 し,個人情報の開示請求をしたにもかかわらず,大阪府警察本部長等から 何らの回答等もされず,開示請求を無視され,人権を侵害されたものであ る。 まず,原告は,平成31年1月頃,本件情報センターに対し,本件書面 ①を送付し,過去に離脱届を提出したにもかかわらず原告が現在も暴力団 20 構成員であると誤認されている理由について回答を求めたが,これに対す る回答等はされなかった。 また,原告は,令和元年10月頃,本件監察室に対し,本件書面②を送 付し,原告がどの暴力団の構成員として登録されているのかなどについて 回答を求めたが,原告が受けた運転免許取消処分についてした審査請求に 25 対する裁決書が送付されるのみで,本件書面②の3枚目で回答を求めた上 - 14 - 記の事項に関する回答等はされなかった。 さらに,原告は,令和元年12月頃,本件監察室に対し,本件書面③を 送付し,本件書面①及び本件書面②と同様に,個人情報の開示を求めると ともに,職務質問の際の警察官の行為や個人情報の開示請求が無視されて いることについて苦情を述べ,是正を求めたが,本件書面③に対する回答 5 等はされなかった。 したがって,大阪府警察本部長等は原告の個人情報の開示請求を無視す るという人権侵害をしたのであって,大阪府警察本部長等が本件各書面に 対して回答等をしなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であ る。 10 イ 被告の主張について これに対し,被告は,郵送による開示請求や,本件書式を用いないでさ れた開示請求については受け付けていない旨主張する。しかし,本件条例 は何人にも個人情報の開示請求権を認め,多様な就業環境や生活環境によ り来庁が困難な者にも開示請求権を認めているところ を用いないでさ れた開示請求については受け付けていない旨主張する。しかし,本件条例 は何人にも個人情報の開示請求権を認め,多様な就業環境や生活環境によ り来庁が困難な者にも開示請求権を認めているところ,被告の上記のよう 15 な取扱いは,刑事施設に収容されている者や疾病により身体が不自由で入 院している者等,本件書式を入手したり来庁して開示請求をしたりするこ とが困難な者の開示請求権を侵害するものであるから,合理性を欠くもの である。また,仮に,本件各書面を正式な個人情報の開示請求として直ち に取り扱うことができないとしても,原告は,本件各書面において個人情 20 報の開示請求をする意思を明らかにしているのであるから,大阪府警察本 部長等は,原告に対して本件書式を送付したり,開示請求をする文書に不 備があるものとして,補正を求めたりするなどの対応をすべき義務を負っ ていたというべきである。 次に,被告は,本件各書面については必要な本人確認ができなかった旨 25 主張する。しかし,本件各書面の差出人の氏名,住所の記載や,本文の記 - 15 - 載内容が具体的であること,本件各書面に大阪拘置所職員が検閲した旨の 検印があること,一般に,拘置所において他人の名義を用いて書面を発信 することは事実上不可能であること等からすれば,大阪府警察本部長等に おいて,本件各書面を差し出したのが原告であることは容易に判明したと いえる。実際に,本件書面②の1枚目及び2枚目が,原告が受けた運転免 5 許取消処分の審査請求として受理されていることも,本人確認が容易であ ったことを裏付けるものである。また,仮に,大阪府警察本部長等におい て本件各書面の本人確認ができないと判断していたとしても,本件におい ては本人確認を試みることすらせずに本件各書面を無視したのであるか ら,大阪府警察本部 のである。また,仮に,大阪府警察本部長等におい て本件各書面の本人確認ができないと判断していたとしても,本件におい ては本人確認を試みることすらせずに本件各書面を無視したのであるか ら,大阪府警察本部長等の対応は違法であるというべきである。 10 さらに,被告は,原告が開示を求めた個人情報については開示義務がな いものであった旨主張する。しかし,仮に,被告が主張するとおり開示義 務がない情報であったとしても,大阪府警察本部長等は,原告に対し,原 告が開示を求めた個人情報について開示義務がない旨を回答すべき義務を 負っていたというべきであるから,大阪府警察本部長等が本件各書面に対 15 して回答等をしなかったことは,違法である。 (被告の主張) 本件各書面は,次のア~エのとおり,本件条例に基づく個人情報の開示請 求として取り扱うことができないものであって,大阪府警察本部長等は本件 各書面に対して回答すべき義務を負っていなかったというべきであるから, 20 大阪府警察本部長等が,本件各書面を大阪府警察本部に対する意見や要望を 記載したものとして把握するにとどめ,本件各書面に対して回答等をしなか ったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ア 本件書式を用いていないこと そもそも,本件規則に定められた個人情報開示請求書(本件書式)を用 25 いたものでなければ,本件条例12条所定の個人情報の開示請求をするも - 16 - のということはできない。そして,本件条例及び本件規則により本件書式 を用いて開示請求をすることが定められている以上,大阪府警察において は,条例の恣意的解釈等を抑止し紛争を防止することや,公平性を担保す ること等の観点を踏まえ,本件条例及び本件規則を厳格に運用することと し,本件書式を用いない場合には,これを 以上,大阪府警察において は,条例の恣意的解釈等を抑止し紛争を防止することや,公平性を担保す ること等の観点を踏まえ,本件条例及び本件規則を厳格に運用することと し,本件書式を用いない場合には,これを本件条例に基づく個人情報の開 5 示請求として扱うという例外的対応はしないこととしているのであり,こ のような取扱いは合理的である(なお,開示請求に使用する様式を本件規 則で定めることは,個人情報の開示請求権を侵害するものではない。)。 これに対し,原告は,本件書式を用いることなく開示請求がされた場合 には,本件書式を送付したり補正を求めたりするなどすべきであった旨主 10 張する。しかし,本件条例17条4項は,飽くまで本件書式を用いてされ た開示請求において,個人情報を特定するに足りる事項の記載がない場合 等に補正を求めることができる旨定めたものにすぎず,本件書式を用いて 開示請求がされたことを前提とするものである。したがって,原告の上記 主張は理由がない。 15 イ 本件条例に基づく個人情報の開示請求である旨の記載がないこと 仮に,本件書式を用いないで開示請求をしようとする場合であっても, 提出された文書に「大阪府個人情報保護条例」や「個人情報開示請求」と の記載がなければ,本件条例に基づく個人情報の開示請求の意図があると 読み取ることも困難である。本件各書面には上記の各文言の記載もないの 20 であるから,「開示請求」や「情報開示」といった文言が記載されているこ とを踏まえてもなお,原告が本件各書面によって本件条例に基づく個人情 報の開示請求をしたものということはできないし,これをしようとする意 図があると読み取ることもできない。 ウ 郵送による個人情報の開示請求は受け付けていないこと,本人確認がで 25 きないこと - 17 - また,大阪 うことはできないし,これをしようとする意 図があると読み取ることもできない。 ウ 郵送による個人情報の開示請求は受け付けていないこと,本人確認がで 25 きないこと - 17 - また,大阪府警察本部長に対する個人情報の開示請求については,大阪 府警察が取り扱う情報が,個人の前科前歴に関する情報等,特に慎重な取 扱いを要するものであることや,郵送により開示請求がされた場合には厳 格な本人確認をすることが困難であることを踏まえ,個人情報が誤って第 三者へ開示されることを防止するため,郵送による個人情報の開示請求を 5 認めないこととしている(本件事務処理要領の第7の2項)。本件各書面 は,いずれも郵送により送付されたものであったから,そもそも開示請求 として受け付けることができないものであったし,実際に,対面での本人 確認(身分証等による本人確認)が不可能な状態であったから,書面の名 義人として記載された原告が実際に本件各書面を送ったものであるか否か 10 の確認をすることができず,原告に成りすました何者かによる開示請求の 可能性を否定することができなかった。したがって,本件各書面を個人情 報の開示請求として扱わなかったことが違法であるということはできな い。 これに対し,原告は,本件各書面が大阪拘置所から発送されたものであ 15 り,同拘置所への確認等により本人確認が容易であった旨主張する。しか し,拘置所内から発送されたものであったとしても,拘置所職員による書 面の検閲等の状況は不明であり,原告本人が本件各書面を送付したもので あると確認することは困難であったから,これをもって本件各書面を個人 情報の開示請求として扱うべきであったということはできない。また,原 20 告は,本件書面②が運転免許取消処分の審査請求として受理された旨主張 する。しかし,審 ったから,これをもって本件各書面を個人 情報の開示請求として扱うべきであったということはできない。また,原 20 告は,本件書面②が運転免許取消処分の審査請求として受理された旨主張 する。しかし,審査請求の受理については特に審査請求人の本人確認等に 関する規定は定められておらず,本件条例に基づく個人情報の開示請求と は本人確認等に関する定めが異なるのであるから,原告の主張は理由がな い。 25 エ 不開示情報に当たること - 18 - なお,仮に,本件各書面について,本件条例に基づく個人情報の開示請 求として取り扱うべきであったとしても,暴力団構成員に関する事項につ いては,開示することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑 の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると公 安委員会又は警察本部長が認めることにつき相当の理由がある個人情報 5 (本件条例14条2項2号)に該当するため,存否を含めて開示すること ができない。 ⑶ 争点⑶(損害の発生及び数額)について (原告の主張) 原告は,上記⑴(原告の主張)及び上記⑵(原告の主張)記載のとおり,A 10 警察官や大阪府警察本部長等の違法行為により精神的苦痛を被ったところ, これに対する慰謝料は100万円が相当である。 (被告の主張) 原告の主張は否認し,又は争う。 第3 当裁判所の判断 15 1 争点⑴(A警察官が本件報告書に原告が暴力団構成員である旨記載した行為 等が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について ⑴ 判断枠組み ア 国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員 が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損 20 害を加えたときに,国又は公共団体 ⑴ 判断枠組み ア 国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員 が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損 20 害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規 定するものであるから,公務員による公権力の行使に同項にいう違法があ るというためには,当該公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすこと なく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である (最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷 25 判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成元年(オ)第930号,第1 - 19 - 093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参 照)。 イ そして,司法警察活動を行う警察官は,犯罪捜査に関する捜査書類を作 成する場合には,誤りのない正確な情報を記載すべき職務上の基本的な注 意義務を負うものと解される。もっとも,警察官が作成した捜査書類に誤 5 った記載があるとしても,そのことのみをもって直ちに国家賠償法1条1 項の適用上違法であると評価されるということはできず,当該捜査書類の 作成目的や記載内容,誤りのある記載部分の内容や当該捜査書類における 位置付け,当該記載が捜査や公判に及ぼす影響の有無等に照らし,警察官 が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と誤った記載をしたと 10 認められるか否かを判断するのが相当である。 ⑵ 検討 ア 原告は,本件報告書の記載や,本件報告書が大阪地方検察庁に捜査資料 として送致され,刑事裁判においても提出されたこと等により,原告の名 誉が毀損され,基本的人権が侵害された旨主張する。 15 イ しかし,本件報告書は原告に対して職務質問を実施した際の状況を報告 する目的で作成されたも いても提出されたこと等により,原告の名 誉が毀損され,基本的人権が侵害された旨主張する。 15 イ しかし,本件報告書は原告に対して職務質問を実施した際の状況を報告 する目的で作成されたものであり,本件報告書における原告が暴力団構成 員である旨の記載は,A警察官が原告の犯歴を照会し,回答を得た経緯と して記載されているものにすぎない。また,本件においては,原告の暴力 団加入状況に関する捜査資料として,本件報告書と同日付けで本件加入状 20 況報告書が別途作成され,本件加入状況報告書には,原告が「元」暴力団 構成員である旨の記載がされていることからすれば,本件報告書における 誤った記載は実質的に訂正されているといえる。さらに,本件加入状況報 告書も本件報告書と同時に大阪地方検察庁に送致されていること等に照ら すと,原告の覚せい剤取締法違反(使用)被疑事件に関する一連の捜査資 25 料を閲読すれば,原告が暴力団構成員である旨の本件報告書の記載が単な - 20 - る誤記であることは明らかであり,この誤記が上記被疑事件の捜査や公判 に与える影響も大きくないといえる。 これらの事情に照らせば,A警察官が本件報告書に誤った記載をした行 為等が,職務上尽くすべき注意義務に違反したものであるとまでいうこと はできないし,また,本件報告書の記載等が原告の名誉や基本的人権を違 5 法に侵害するものであるということもできない。 ウ したがって,A警察官が本件報告書に原告が暴力団構成員である旨記載 した行為等は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ⑶ 原告の主張について これに対し,原告は,①公文書において誤記があることは絶対に許されな 10 い,②原告が被告人となっている刑事裁判において本件報告書が証拠提出さ れた,③警察官が作成した文書に誤 原告の主張について これに対し,原告は,①公文書において誤記があることは絶対に許されな 10 い,②原告が被告人となっている刑事裁判において本件報告書が証拠提出さ れた,③警察官が作成した文書に誤記がある場合には必ず訂正すべきである 旨主張する。 しかし,上記①については,上記⑴で説示したとおり,公文書に誤記があ ることをもって直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法であるということは 15 できない。また,上記②については,本件報告書が刑事裁判において証拠提 出されていたとしても,上記⑵で指摘した事情の下では,これをもってA警 察官が本件報告書に誤った記載をしたこと等が国家賠償法1条1項の適用上 違法であるということはできない。さらに,上記③については,上記⑵で説 示したとおり,本件報告書における誤った記載は本件加入状況報告書によっ 20 て実質的に訂正されているといえるから,A警察官らが本件報告書の記載を 訂正するなどしなかったことをもって,国家賠償法1条1項の適用上違法で あるということもできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 争点⑴についてのまとめ 25 以上のとおり,A警察官が本件報告書に原告が暴力団構成員である旨記載 - 21 - した行為等は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 2 争点⑵(大阪府警察本部長等が本件各書面に対して回答等をしなかったこと が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について ⑴ 本件書面①について 本件書面①には,「暴力団構成員で登録されている理由の開示請求をお願 5 いします」との記載がある(前記前提事実⑶イ)。 しかし,本件書面①には開示請求の根拠や開示を求める文書について明確 な記載がないことのみならず,冒頭に「教示願います の開示請求をお願 5 いします」との記載がある(前記前提事実⑶イ)。 しかし,本件書面①には開示請求の根拠や開示を求める文書について明確 な記載がないことのみならず,冒頭に「教示願います。」との記載もあるこ と,「開示請求」の対象が「情報」でなく「理由」とされていることや,本件 書面①が郵送されるよりも前に本件書面①に関係すると解される書面が原告 10 から送付されたこともなかったこと等からすれば,原告がどのような手続に おいてどのようなことを求める趣旨であるかを本件書面①の記載内容から読 み取ることは容易ではなかったというべきである。そうすると,本件書面① は,飽くまで,原告が提出した暴力団からの離脱届が受理されているか否か や,原告が暴力団構成員として登録されている理由について,事実上問い合 15 わせる趣旨である,と大阪府警察本部長等において理解したとしてもやむを 得ないものであるから,本件書面①を直ちに本件条例に基づく個人情報の開 示請求をする文書又は個人情報の開示請求をする意思を明らかにする文書と して取り扱うべきであるということは困難である。 以上によれば,大阪府警察本部長等は,本件書面①について,個人情報の 20 開示請求をする文書又は個人情報の開示請求をする意思を明らかにする文書 として取り扱い,何らかの回答等をすべき義務を負っていたとはいえない。 したがって,大阪府警察本部長等が本件書面①に対して何ら回答等をしなか ったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ⑵ 本件書面②について 25 ア 検討 - 22 - 本件書面②の3枚目には,原告が既に暴力団離脱届を提出していたにも かかわらず,本件報告書に原告が暴力団構成員であるとの誤認に基づく記 載がある旨記載され,当該記載に続いて「情報の開示請求願 22 - 本件書面②の3枚目には,原告が既に暴力団離脱届を提出していたにも かかわらず,本件報告書に原告が暴力団構成員であるとの誤認に基づく記 載がある旨記載され,当該記載に続いて「情報の開示請求願います。」と の記載がある(前記前提事実⑷イ)。 このように,本件書面②の3枚目においては,本件報告書において原告 5 が現に暴力団構成員である旨の記載がされたことなど,本件書面①よりも 詳細に「情報」の「開示請求」をすることとした経緯が記載された上で, 「情報の開示請求願います。」と「情報」の「開示請求」をする意思が明示 されているから,本件書面②の3枚目は,原告が暴力団離脱届を提出して いたにもかかわらず暴力団構成員として登録されているか否かや,登録さ 10 れている場合にはその理由に係る個人情報を開示することを求める文書で あると解される。すなわち,以上のような本件書面②の3枚目の記載内容 等に照らせば,本件書面②の3枚目は,本件条例に基づく個人情報の開示 請求をする文書又は個人情報の開示請求をする意思を明らかにする文書で あると解される。 15 そうすると,大阪府警察本部長等は,本件書面②の3枚目を,本件条例 に基づく個人情報の開示請求として扱い,開示決定等をしたり(本件条例 18条1項,2項,19条1項)必要な補正を求めたりする(本件条例1 7条4項)など適正に処理すべき職務上の注意義務を負っていたか,又は, 少なくとも,本件書面②の3枚目を,本件条例に基づく個人情報の開示請 20 求をする意思を明らかにする文書として扱い,原告が大阪拘置所に収容さ れている者であること(本件各書面の記載や本件各書面が封入されていた 封筒の差出人の住所の記載等からすればこのことは明らかである。)を踏 まえて,原告が個人情報の開示請求権を行使する機会を保障すべく,原 れている者であること(本件各書面の記載や本件各書面が封入されていた 封筒の差出人の住所の記載等からすればこのことは明らかである。)を踏 まえて,原告が個人情報の開示請求権を行使する機会を保障すべく,原告 に対して本件書式を送付するなど必要な範囲で合理的な対応をすべき職務 25 上の注意義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず,大阪 - 23 - 府警察本部長等は,本件書面②の3枚目に対して何ら回答等をしなかった というのである(前記前提事実⑷ウ)。したがって,大阪府警察本部長等 が本件書面②の3枚目に対して何ら回答等をしなかったことは,職務上尽 くすべき注意義務を怠るものであり,国家賠償法1条1項の適用上違法で あるというべきである。 5 イ 被告の主張について これに対し,被告は,本件書面②の3枚目について,①本件規則に定め られた個人情報開示請求書(本件書式)を用いたものではない,②本件条 例に基づく個人情報の開示請求である旨の記載がない,③大阪府警察本部 長に対する郵送による個人情報の開示請求は受け付けていない,④原告本 10 人による請求であることの確認(本人確認)をすることができないなどと して,本件書面②の3枚目を本件条例に基づく個人情報の開示請求をする 文書又は個人情報の開示請求をする意思を明らかにする文書であると扱う ことはできない旨主張し,また,⑤仮に,本件各書面について,本件条例 に基づく個人情報の開示請求として取り扱うべきであったとしても,暴力 15 団構成員に関する事項については,不開示情報に該当するため,存否を含 めて開示することができない旨主張する。 そこで,以下検討する。 (ア) 上記①(本件書式を用いたものではないとの点)について a 本件条例17条1項及び本件規則4条1項は,本件条例に基づく個 20 することができない旨主張する。 そこで,以下検討する。 (ア) 上記①(本件書式を用いたものではないとの点)について a 本件条例17条1項及び本件規則4条1項は,本件条例に基づく個 20 人情報の開示請求をする場合には,本件条例17条1項各号に掲げる 必要な事項を記入した本件書式を実施機関に提出しなければならない 旨定める。 しかし,上記各規定が個人情報の開示請求をしようとする者に本件 書式を用いることを求めた趣旨は,①文書により本人の意思に基づく 25 申請であることを明確にし(前記第2の1⑵ア参照),②画一的な書式 - 24 - を用いて,請求者において開示を求める情報を明確に特定させるとと もに,請求者の氏名,住所等の基本的な情報や開示の実施方法の希望等 を明らかにさせ,③開示請求を受理した担当部署において本人等確認 に用いた書類を明らかにし,これら①~③により,個人情報の開示請求 及び開示に関する事務を適正かつ迅速に遂行することにあると解され 5 る。このような上記各規定の趣旨からすれば,本件書式を入手すること が不可能又は著しく困難な状況にある者については,上記各規定を形 式的に適用するのではなく,本件書式を用いずに開示請求をすること を限定的に認めたとしても,直ちに上記趣旨に反するものではない。そ して,本件書式を用いることを求める趣旨が適正かつ迅速な事務処理 10 を中心とするものにとどまるものである一方で,本件条例が,実施機関 が保有する個人情報の開示等を請求する権利を明らかにすることによ り個人の権利利益の保護を図ることを目的としたものであることや (本件条例1条),「何人も」実施機関に対し当該個人に関する個人情 報の開示を請求することができる旨定めていること(本件条例12条 15 1項)を踏まえれば,個人情報の開示請求の担当部署の あることや (本件条例1条),「何人も」実施機関に対し当該個人に関する個人情 報の開示を請求することができる旨定めていること(本件条例12条 15 1項)を踏まえれば,個人情報の開示請求の担当部署の窓口で本件書式 の交付を受けたり,被告のウェブサイト上から本件書式をダウンロー ドしたりするなどの方法によっては本件書式を入手することが不可能 又は著しく困難な状況にある者にまで,本件書式を用いることを義務 付け,これを用いない場合には一切個人情報の開示請求として扱わな 20 いとすることは,上記のような状況にある者の本件条例に基づく個人 情報の開示請求権を違法に侵害するものであり,本件条例の趣旨に反 するというべきである。 以上を踏まえると,大阪府警察本部長等は,客観的にみて本件書式を 入手することが不可能又は著しく困難な状況にある者から,本件条例 25 に基づく個人情報の開示請求をするものと解される文書が提出された - 25 - 場合には,仮に本件書式を用いたものではないとしても,個人情報の開 示請求として扱うか,少なくとも個人情報の開示請求をしようとする 意思が明らかであるとして,当該請求者に対して本件書式を送付する など,本件書式による個人情報の開示請求をすることができるように 必要な範囲で合理的な対応をすべき義務を負うというべきである(な 5 お,被告は,本件書式を用いてされた開示請求ではない場合には,補正 の求め〔本件条例17条4項〕をすべき義務もないと主張するが,本件 条例の上記目的や本件条例が何人にも開示請求権を認めていることに 加え,可能な限り個人情報の開示請求権を十分に行使することができ るように実施機関が配慮すべきものとしたものと解される本件条例1 10 7条3項及び4項の趣旨等に照らせば,仮に本件条例17条4項の補 正の求めに当たらない場合で 開示請求権を十分に行使することができ るように実施機関が配慮すべきものとしたものと解される本件条例1 10 7条3項及び4項の趣旨等に照らせば,仮に本件条例17条4項の補 正の求めに当たらない場合であっても,個人情報の開示請求を取り扱 う公務員として,一定の場合には本件書式を送付するなどの合理的対 応をすべき法的義務が生ずる場合があるというべきである。)。 b 本件において,原告は,本件書面②を大阪拘置所から差し出したとこ 15 ろ,本件書面②が封入された封筒の差出人住所として大阪拘置所の住 所が記載されていたこと(前記前提事実⑹)や,本件書面②の1~3枚 目の右下部分に,いずれも桜の花の形を模した,中央に「大」と記載さ れた印があり,これが大阪拘置所の検閲印であること(前記前提事実 ⑹)等に照らせば,大阪府警察本部長等において本件書面②が大阪拘置 20 所から差し出されたものであることは明らかであったといえる。そう すると,原告が大阪拘置所に収容されており,本件書式を入手すること が不可能な者であることは明らかであったのであるから,本件書面② の3枚目を受領した大阪府警察本部長等は,本件書面②の3枚目を本 件条例に基づく個人情報の開示請求をする文書として扱うか,少なく 25 とも,原告に対して本件書式を同封した上で本件書式による開示請求 - 26 - をするよう促す旨の事務連絡を送付するなど,原告が本件条例に基づ く個人情報の開示請求をすることができるように必要な範囲で合理的 な対応をすべき義務を負っていたというべきである。 したがって,本件において,本件書式を用いた開示請求でないことを もって,大阪府警察本部長等が回答等をしなかったことが違法でない 5 ということはできず,この点に関する被告の主張は理由がない。 (イ) 上記②(本件条例に基づく個 書式を用いた開示請求でないことを もって,大阪府警察本部長等が回答等をしなかったことが違法でない 5 ということはできず,この点に関する被告の主張は理由がない。 (イ) 上記②(本件条例に基づく個人情報の開示請求である旨の記載がな いとの点)について 被告は,本件書面②の3枚目には,「大阪府個人情報保護条例」との 記載や「個人情報開示請求」との記載等がないから,本件条例に基づく 10 個人情報の開示請求をする意図があると読み取ることはできない旨主張 する。 しかし,本件条例に基づく個人情報の開示請求をする意図があると読 み取ることができるか否かは,文書の標題,体裁及び記載内容等を踏ま えて総合的に判断すべきものであり,被告が指摘する「大阪府個人情報 15 保護条例」や「個人情報開示請求」の文言の有無によって直ちに決せら れるものではないから,被告の上記主張は理由がない(本件書面②の3 枚目について,記載内容等を総合的に考慮すれば本件条例に基づく個人 情報の開示請求をする意図があると読み取ることができることは,上記 アで説示したとおりである。)。 20 (ウ) 上記③(郵送による開示請求を受け付けていないとの点)について a 被告は,大阪府警察においては,大阪府警察が保有する情報が,個 人の前科前歴に関する情報等,特に取扱いに注意が必要な情報である ことや,いわゆるなりすましによる開示請求を防ぐ必要があることを 踏まえて,郵送による個人情報の開示請求を受け付けないものとする 25 旨定め(本件事務処理要領の第7の2項),実際にそのような取扱い - 27 - をしているところ,そのような取扱いは合理的なものである旨主張す る。 b しかし,上記(ア)aで説示した本件条例の目的や,本件条例が「何人 も」個人情報の開示請求をすることができる旨定めている - をしているところ,そのような取扱いは合理的なものである旨主張す る。 b しかし,上記(ア)aで説示した本件条例の目的や,本件条例が「何人 も」個人情報の開示請求をすることができる旨定めていること,本件 条例及び本件規則においては,開示請求を郵送により行うことを制限 5 する旨の規定はなく,かえって,被告が作成した本件条例解釈運用基 準には,多様な就業環境や生活環境により来庁が困難な府民等に対し ても開示請求権を確保する必要を考慮して郵送による開示請求を認め ることとした旨の記載があること(前記第2の1⑵イ)等を踏まえれ ば,刑事施設に収容されている者や,疾病,障害その他の事由により, 10 個人情報の開示請求の担当部署の窓口を訪れることが不可能又は著し く困難であるような事情がある者についてまで,郵送による開示請求 を一律に認めない取扱いをすることは,本件条例の趣旨に明らかに反 するものであり,本件条例に基づく個人情報の開示請求権を違法に侵 害するものというべきである。したがって,大阪府警察本部長等は, 15 個人情報の開示請求をする旨の文書が郵送され,当該請求者が客観的 にみて個人情報の開示請求の担当部署の窓口を訪れることが不可能又 は著しく困難な状況にあることが明らかな場合には,郵送により送付 された文書を個人情報の開示請求として扱い,開示決定等をしたり補 正を求めたりするなど適正に処理すべき義務を負っていたというべき 20 であって,そのような場合にまで本件事務処理要領に従って郵送によ る開示請求を受け付けない取扱いをすることは,違法であるというべ きである。 なお,郵送による開示請求においても,複数の資料の提出又は提示 を求めるなどの合理的な方法により,本人確認を慎重に行うことも可 25 能であるから(本件条例解釈運用基準においても,郵送による ある。 なお,郵送による開示請求においても,複数の資料の提出又は提示 を求めるなどの合理的な方法により,本人確認を慎重に行うことも可 25 能であるから(本件条例解釈運用基準においても,郵送による開示請 - 28 - 求について本人確認を行うことが可能であるとしているものと解され る〔前記第2の1⑵イ〕。),大阪府警察が取り扱う情報が,機密性が 特に高く,特に慎重な配慮を要するものであることを考慮したとして も,本件条例が何人に対しても個人情報の開示請求権を認めているこ と等に照らして,そのような情報の性質をもって,直ちに郵送による 5 開示請求を一切認めないとの取扱いが正当化されるものということは できず,この点に関する被告の主張は理由がない。 c これを本件についてみると,上記(ア)bのとおり,原告は大阪拘置所 に収容されており,大阪府警察本部長等においても,原告が大阪拘置 所に収容されており,個人情報の開示請求の担当部署の窓口を訪れて 10 開示請求に係る文書を直接提出することが不可能であることは客観的 にみて明らかであったのであるから,大阪府警察本部長等は,本件書 面②の3枚目について,これが郵送されたものであるとしても,本件 条例に基づく個人情報の開示請求をする文書として扱い,開示決定等 をしたり補正を求めたりするなど適正に処理すべき義務を負っていた 15 というべきである。 したがって,被告の上記主張は採用できない。 (エ) 上記④(本人確認をすることができないとの点)について a 被告は,本件書面②の差出人が間違いなく原告であるか否かの確認 (本人確認)をすることができなかった旨主張する。 20 b しかし,本件書面②の1枚目及び2枚目には,原告が受けた運転免 許取消処分について審査請求をする旨の記載のほか,同処分の通知書 に記載 認 (本人確認)をすることができなかった旨主張する。 20 b しかし,本件書面②の1枚目及び2枚目には,原告が受けた運転免 許取消処分について審査請求をする旨の記載のほか,同処分の通知書 に記載された処理番号や原告に対する道路交通法違反被疑事件が不起 訴処分となった旨やその年月日等が記載され,本件書面②の3枚目に は,原告が受けた職務質問の状況や本件報告書の内容が記載されてお 25 り,これらの情報は原告本人でなければ知り得ないものであるから, - 29 - 本件書面②の記載内容からすると,原告本人がこれを送付したもので あると認められる。そして,大阪府警察本部長等において本件書面② に記載された上記処理番号等の情報が事実と合致するものであるか否 かを確認することは容易であると認められることや,本件書面②の1 枚目及び2枚目については,運転免許取消処分に対する原告からの有 5 効な審査請求として受理されていることを踏まえれば,大阪府警察本 部長等においても,原告が本件書面②を差し出したものであると合理 的に認定できるものであったというべきである(なお,本件条例17 条2項,本件規則5条1号,本件事務処理要領の第8の1項⑴及び本 件事務処理要領の別表において,本人確認のために提出すべき資料が 10 定められているが,拘置所に収容されている者においてこれらの資料 を提出することは困難な場合もあると解されるところ,そのような場 合には本件事務処理要領の第8の1項⑵に照らして,合理的な方法に より本人確認を行うこともまた許されると解されるから,上記のよう な方法等により本人確認をすることは,本件条例,本件規則及び本件 15 事務処理要領に何ら反するものではない。)。 したがって,本件書面②について本人確認が困難であったなどとい うことはできず,この点に関する被告の 確認をすることは,本件条例,本件規則及び本件 15 事務処理要領に何ら反するものではない。)。 したがって,本件書面②について本人確認が困難であったなどとい うことはできず,この点に関する被告の主張は理由がない。 c また,仮に,上記bの点を措くとしても(すなわち,大阪府警察本 部長等において,大阪府警察が取り扱う情報が特に取扱いに注意を要 20 する性質のものであることから慎重な本人確認を要するとの考え方を 踏まえ,本件書面②の記載内容等のみでは,本件書面②を差し出した のが原告本人であるか否かの確認をすることが困難であると判断した ものであったとしても),本件条例及び本件規則に照らして,本人確 認のための十分な資料が添付されていない場合に(開示請求を受け付 25 けた上で補正を求めるなどするのではなく)直ちに開示請求を受け付 - 30 - けないとすることが求められているということはできない。そして, 大阪府警察本部長等は,本件書面②の記載等から少なくとも原告が大 阪拘置所に収容されている可能性があるという状況を認識し得たこと (上記ア)を踏まえれば,本件書面②が封入されていた封筒に記載さ れた差出人住所に宛てて本人確認に必要な資料の送付を求める旨の事 5 務連絡を送付したり,大阪拘置所に対して原告が収容されているか否 かの確認をしたりするなど,一定の合理的な対応をすべき義務を負っ ていたというべきであって,そのような本人確認のために必要な範囲 で合理的な対応をしたにもかかわらず,なお原告本人が差し出したも のであることの確認が取れない場合に初めて,開示請求として受理し 10 ないという対応が許されるというべきである。 それにもかかわらず,大阪府警察本部長等は,上記のような合理的 な対応を全くすることなく,本人確認ができないなどと安易に判断し たもの して受理し 10 ないという対応が許されるというべきである。 それにもかかわらず,大阪府警察本部長等は,上記のような合理的 な対応を全くすることなく,本人確認ができないなどと安易に判断し たものであるから,職務上尽くすべき注意義務を怠った違法があると いうべきである。 15 d 以上のとおり,本件においては,客観的にみて本件書面②について 本人確認をすることができなかったとは認められず,また,仮に,原 告が送付した本件書面②のみでは本人確認をすることができなかった としても,原告に対して本人確認のための資料の送付を求めるなど, 本人確認をするための合理的な対応を全くすることなく,開示請求と 20 して扱う必要がないものと安易に判断したといえるから,大阪府警察 本部長等の対応は,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべ きである。したがって,被告の上記主張は採用することはできない。 (オ) 上記⑤(不開示情報に当たるとの点)について 被告は,仮に本件書面②の3枚目を本件条例に基づく個人情報の開示 25 請求をする文書として扱うべきであったとしても,暴力団構成員に関す - 31 - る事項については,本件条例14条2項2号に定める不開示情報に当た るから,当該情報の存否も含めて開示することができないものである旨 主張する。しかし,仮に,本件条例16条により開示請求を拒否するこ とができる場合であっても,実施機関は,開示請求に係る個人情報の全 部を開示しない旨の決定をし,開示請求者に対してその旨を書面により 5 通知しなければならない(本件条例18条2項)のであるから,個人情 報の開示請求に対して,何ら回答等をしないことが許されるものではな い。したがって,被告の上記主張は理由がない。 (カ) 以上のとおりであるから,被告の上記主張はいずれも採用する のであるから,個人情 報の開示請求に対して,何ら回答等をしないことが許されるものではな い。したがって,被告の上記主張は理由がない。 (カ) 以上のとおりであるから,被告の上記主張はいずれも採用すること ができない。 10 ウ 小括 以上によれば,大阪府警察本部長等が,本件書面②の3枚目について, 本件条例に基づく個人情報の開示請求をする文書として扱ったり,個人情 報の開示請求をする意思を明らかにする文書として扱ったりすることなく 何ら回答等をしなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法である 15 というべきである。 また,本件において,令和元年10月頃当時,原告が大阪拘置所に収容 されている状況にあったことは明らかであったところ,大阪府警察本部長 等がそのような原告の状況を認識し得たことに加えて,上述した①本件条 例の目的や,②本件条例が何人にも個人情報の開示請求権を認めているこ 20 と,③本件条例解釈運用基準にも,多様な就業環境や生活環境により来庁 が困難な府民等に対しても開示請求権を確保するために郵送による開示請 求を認めたものである旨明記されているところ,原告のような刑事施設に 収容されている者は,上記の来庁が困難な者として容易に想起されること, ④個人情報の開示請求権が,自己の情報をコントロールする権利の前提と 25 なる重要な権利であること等の各事情を踏まえれば,上記のような状況に - 32 - ある原告について,郵送による個人情報の開示請求を受け付けないとする ことが違法であることは明らかであったというべきであるし,また,本件 書式を用いていないことをもって個人情報の開示請求として扱わず,本件 書式を送付するなどの合理的対応もしないことが違法であることもまた明 らかであったというべきであるから,本件事務処理要領が定められていた 5 ていないことをもって個人情報の開示請求として扱わず,本件 書式を送付するなどの合理的対応もしないことが違法であることもまた明 らかであったというべきであるから,本件事務処理要領が定められていた 5 こと等を踏まえてもなお,大阪府警察本部長等が本件書面②の3枚目に対 して何ら回答等をしなかったことについて大阪府警察本部長等には職務に 関する過失があるというべきである。 ⑶ 本件書面③について ア 検討 10 本件書面③には,原告が暴力団離脱届を提出しているにもかかわらず, なお暴力団構成員であるとして扱われているため,その事実関係について 明らかにするように求める旨の記載や,「情報開示」を求める旨の記載が あることに加え,平成31年1月と令和元年10月にも上記の事実関係を 明確にするために開示請求をしたにもかかわらず回答がされなかった旨の 15 記載があるところ,これらの記載に照らせば,本件書面③は,本件書面② の3枚目と同様に,原告が現在も暴力団構成員として登録されている理由 や経緯等に関し,本件条例に基づき個人情報の開示請求をする文書と解さ れる。 そうすると,大阪府警察本部長等は,本件書面②の3枚目と同様に,本 20 件書面③を,本件条例に基づく個人情報の開示請求をする文書として扱い, 開示決定等をしたり必要な補正を求めたりするなど適正に処理すべき職務 上の注意義務を負っていたか,又は,少なくとも,本件書面③を,本件条 例に基づく個人情報の開示請求をする意思を明らかにする文書として扱 い,原告が大阪拘置所に収容されている者であることを踏まえて,原告に 25 対して本件書式を送付するなど必要な範囲で合理的な対応をすべき職務上 - 33 - の注意義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず,大阪府 警察本部長等は,本件書面③に対して何ら に 25 対して本件書式を送付するなど必要な範囲で合理的な対応をすべき職務上 - 33 - の注意義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず,大阪府 警察本部長等は,本件書面③に対して何ら回答等をしなかったというので ある(前記前提事実⑸ウ)。したがって,大阪府警察本部長等が本件書面 ③に対して何ら回答等をしなかったことは,職務上尽くすべき注意義務を 怠るものであり,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきであ 5 る。 イ 被告の主張について これに対し,被告は,本件書面③についても,本件書面②の3枚目と同 様の理由をもって,大阪府警察本部長等は本件書面③に対して回答等をす べき義務を負っていなかった旨主張するが,いずれも上記ア及び上記⑵イ 10 で説示したところに照らして理由がない。 ウ 小括 したがって,大阪府警察本部長等が本件書面③について何ら回答等をし なかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるというべきであ り,また,上記⑵ウと同様に,大阪府警察本部長等が本件書面③に対して 15 何ら回答等をしなかったことについて大阪府警察本部長等には職務に関す る過失があるというべきである。 ⑷ 争点⑵についてのまとめ 以上のとおり,大阪府警察本部長等が本件書面①に対して回答等をしなか ったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえないが,大阪 20 府警察本部長等が本件書面②の3枚目及び本件書面③に対して何ら回答等を しなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,また,大阪府 警察本部長等が本件書面②の3枚目及び本件書面③に対して何ら回答等をし なかったことについて大阪府警察本部長等には職務に関する過失があるとい うべきである。 25 3 争点⑶(損害の発生及び数額)について - 件書面②の3枚目及び本件書面③に対して何ら回答等をし なかったことについて大阪府警察本部長等には職務に関する過失があるとい うべきである。 25 3 争点⑶(損害の発生及び数額)について - 34 - 上記2で説示したとおり,原告は,本件書面②の3枚目及び本件書面③によ り本件条例に基づく個人情報の開示請求をしたにもかかわらず,これを開示請 求として扱われなかったことにより,開示決定等を受けることができなかった のであるから,自己に関する情報をコントロールする権利や本件条例により認 められた個人情報の開示請求権に係る権利を侵害されたというべきである。 5 なお,仮に,本件書面②の3枚目及び本件書面③による開示請求について適 正に処理がされた場合に,開示請求に係る個人情報については全部不開示決定 がされるべきものであったとしても,このことは,自己に関する情報をコント ロールする前提となる個人情報の開示請求権が侵害されたものである以上,上 記判断を左右するものではない。 10 したがって,原告は,大阪府警察本部長等が本件書面②の3枚目及び本件書 面③に対して何ら回答等をしなかったことにより,上記権利を侵害され,精神 的損害を被ったものと認められる。 そして,①原告が書面を3回にわたって送付しており,上記のとおりそのう ち2通は個人情報の開示請求がされたものと解すべきであること,②本件書面 15 ③については本件条例に基づく個人情報の開示請求をするものであることがそ の記載内容等に照らして特に明らかであること,③本件書面②が大阪府警察本 部に送付されてから,原告が本件訴えの提起をするまでに4か月程度が経過し, 本件訴えの口頭弁論終結に至るまでには更に1年4か月程度が経過したとこ ろ,この間も,被告が本件書面②の3枚目及び本件書面③について何ら回答等 2 ,原告が本件訴えの提起をするまでに4か月程度が経過し, 本件訴えの口頭弁論終結に至るまでには更に1年4か月程度が経過したとこ ろ,この間も,被告が本件書面②の3枚目及び本件書面③について何ら回答等 20 をしていないこと,④誤記であることが客観的にみて明らかであるとはいえ, 原告について暴力団構成員である旨記載された本件報告書が作成されており, これを知った原告においては,原告が暴力団構成員として登録されているか否 かや,登録されている場合のその理由等について知ることを強く望んでいたと 解されること等,本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,大阪府警察本部 25 長等が本件書面②の3枚目及び本件書面③に対して回答等をしなかったことに - 35 - より原告が被った精神的損害に対する慰謝料としては,10万円が相当である。 4 文書提出命令の申立て事件について ⑴ 大阪地方裁判所令和2年(モ)第1026号事件 原告は,文書の表示を「刑務所(法務省の所有する)原告の(身分帳簿)」 とする文書提出命令を申し立てているが,原告の主張に鑑みれば,これは, 5 原告が暴力団離脱届を大阪府警察に提出していることを立証するために,広 島矯正管区又は松江刑務所に対し,原告の身分帳簿の文書提出命令を求める ものと解される。そうすると,原告が平成21年頃に大阪府警察に対し暴力 団離脱届を提出し,これが受理されたことは,被告も認めるところである上, 本件で問題とされている平成30年9月15日当時,大阪府警察が原告につ 10 いて指定暴力団員として登録していた事実が存在しないこと(乙1の1・2) からすれば,証拠調べの必要性があるとは認められない。 したがって,原告の上記文書提出命令の申立てを却下する。 ⑵ 大阪地方裁判所令和3年(モ)第80号事件 原告 と(乙1の1・2) からすれば,証拠調べの必要性があるとは認められない。 したがって,原告の上記文書提出命令の申立てを却下する。 ⑵ 大阪地方裁判所令和3年(モ)第80号事件 原告は,文書の表示を「原告が提出した大阪府警への封筒3枚(3通分)」 15 及び「被告の提出した乙第5号証同6号証の黒ぬり部分の開示」とする文書 提出命令を申し立てている。 これらの文書のうち,前者については,被告が本件各書面が封入されてい た封筒3枚にそれぞれ大阪拘置所の住所が差出人の住所として記載されてい る旨認めていることからすれば,証拠調べの必要性があるとは認められない。 20 また,後者については,原告の主張する立証趣旨を踏まえても,本件におけ る争点と関係があるものとは認められないから,証拠調べの必要性があると は認められない。 したがって,原告の上記文書提出命令の申立てを却下する。 第4 結論 25 以上によれば,原告の請求は,被告に対し10万円の支払を求める限度で理由 - 36 - があるからこれを認容し,その余の部分は理由がないからこれを棄却することと して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官 山 地 修 5 裁判官 太 田 章 子 10 裁判官 関 尭 熙 15
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