- 1 -主文本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中180日を原判決の刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意は,弁護人が提出した控訴趣意書及び控訴趣意書補充書に,これに対する答弁は,検察官が提出した答弁書に,それぞれ記載されたとおりであるから,これらを引用する。 第1事実誤認の論旨について論旨は,要するに,被告人は,A及びBとの間で,強盗の共謀しかしておらず,強盗殺人の共謀はしていないから,強盗又は強盗致死の限度で責任を負うにすぎないのに信用性のないBの原審公判廷における供述以下Bの供述というな,(「」。)どの証拠に依拠し,信用できる被告人の原審公判廷における供述を排斥して,被告人が,A及びBとの間で,強盗殺人の共謀をしたとして,被告人に強盗殺人の事実を認定した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある,というのである。 しかし,記録を調査し,当審における事実取調べの結果を加えて検討しても,Bの供述の信用性を肯認し,被告人の原審公判廷における供述のうち,強盗殺人の共謀をしたことはないとの供述部分を信用できないものとして排斥した原判決の判断に誤りがあるとは考えられず,Bの供述を含む原判決挙示の証拠によれば,被告人が,A及びBと強盗殺人の共謀をして,強盗殺人の犯行に及んだ事実を優に認定することができ,原判決が「被告人の弁護人の主張に対する判断並びに補足説明」で認定,説示するところも,概ね正当として是認できるのであって,原判決に所論のような事実の誤認はない。 すなわち(1)Bの供述によると平成15年12月28日以下年について記,,(,載のない場合は,平成15年を指し,年月について記載のない場合は,平成15年12月を指す夜パチンコC店の駐車場付近に駐車したAの車シビック 15年12月28日以下年について記,,(,載のない場合は,平成15年を指し,年月について記載のない場合は,平成15年12月を指す夜パチンコC店の駐車場付近に駐車したAの車シビックの中。),()- 2 -で,被告人,A及びBの3人で具体的な犯行計画を謀議し,Bが,来客を装ってD方玄関から入ってD夫婦を撲殺し,Eが,ワゴン車に乗り換えてD方勝手口付近に乗りつけ,Bが,D夫婦の死体をワゴン車に積み込むなどし,その死体は,ワゴン車で搬出して遺棄するという内容を含む犯行計画を立てたが,同日夜は,D方付近をパトカーが通るなどしていたため犯行を実行できず,翌29日午後4時30分ころまでに,パチンコF会館の駐車場に駐車したワゴン車の中などで,被告人,A及びBの3人で再度謀議して,犯行計画を一部変更し,D夫婦の死体をワゴン車に積み込んで外に搬出するのは止めて,死体をD方の2階に隠すことにした,というのである。他方,Eの原審公判廷における供述,G(原審検甲48号)及びH(原審検甲49号の各検察官調書並びに写し作成報告書と題する書面原審検甲),,「」(157号)を含む関係証拠によれば,28日夜,被告人が,食堂Iにあるワゴン車を借り出す手配をしていること,被告人が,同日夜,Eに対して,AとBがワゴン車から降りてD方に押し入った後,Eがワゴン車に乗り換えてD方前付近に乗りつけるように指示をしていること,Aが,同日夜,Bとともに,食堂Iまで行って,Aが使用していた車(シビック)から,わざわざワゴン車に乗り換えて,D方近くの団地付近まで乗って行ったこと,Aは,29日夜は,前日と異なり,D方近くの団地付近にワゴン車を停めたまま,同車をD方のそばまで乗りつけようとはしてい,,,,,()ないこと被告人は の団地付近まで乗って行ったこと,Aは,29日夜は,前日と異なり,D方近くの団地付近にワゴン車を停めたまま,同車をD方のそばまで乗りつけようとはしてい,,,,,()ないこと被告人は29日夜Eに対しワゴン車ではなくEの車キャロルを,D方の勝手口につけるように指示したこと,以上の事実が認められるのであって,Bの前記供述は,A,B及び被告人が,28日には,D方からワゴン車を必要とするようなものを搬出することを前提としていると考えられる行動をとり,29日にはそのような行動をとっていないという被告人らの犯行前の行動と整合している(2)Bの供述によると犯行計画ではBがD方に押し入る際にD夫婦と面識。 ,,,のあるAが,D方を訪問して玄関の鍵を開けさせることになっており,Aは,28日夜は実行できなかったものの,翌29日夜にはその計画どおり実行したというのであり,また,犯行計画では,BがD夫婦を撲殺した直後に,Aが,覆面等をする- 3 -こともなく,D方の金庫をこじ開けるためのバールを持ってD方に入ることになっ,,,,,ておりAはその計画どおりD方に入ったというのであってBのこの供述はAの原審公判廷における供述とも一致している上,B及びAが,覆面等を準備した形跡がないことからみて十分信用できるものであるところ,AはD夫婦と面識があ,,,るのであるから上記の犯行態様ではD方に在宅していた住人を殺害しない限りその住人の供述からAが犯人の一味であることが発覚するのは確実であり,上記の犯行計画及びそれに基づいたAの行動は,いずれもD方に在宅していた住人を殺害することを前提としたものと考えられる。そして,被告人についても,Aが逮捕されれば,Aの供述から,被告人が犯人の一味であることが発覚するのはほぼ づいたAの行動は,いずれもD方に在宅していた住人を殺害することを前提としたものと考えられる。そして,被告人についても,Aが逮捕されれば,Aの供述から,被告人が犯人の一味であることが発覚するのはほぼ確実であるところ,被告人は,AがD方に侵入することを知りながら,27日から,Aと電話で話したり会ったりして頻繁に連絡をとり合い,28日には,Jの殺害に使用された凶器の木の棒をAとともに切り出しに行ったり,Aらがワゴン車に乗り換えるため食堂Iに行った際に一緒に行ったり,バールを準備したり,Eに運転手役や見張り役の指示をしたりし,29日には,ワゴン車内などで,A及びBと3人だけで話をする機会があったのに,Aとの間で,Aらが覆面等をするなどして,AがD夫婦に犯人の一味であることが分からないようにするための方策について相談をしていないのであって,被告人のこのような行動は,D夫婦を殺害するという犯行計。 ,,画を被告人も認識していたことをうかがわせるものであるさらに被告人自身もAとBが金品の強取に失敗してD方から一旦逃走した後,遺留品を回収しに戻るBを自分が運転する車(ミラ)に乗せて,D方の近くまで戻り,D方から遺留品を回収するなどして戻ってきたBを車に乗せて逃走しているが,その際,被告人が,D方の住人がどうなっているかということを特に気にしていた様子はなく,D方の住人が既に殺害されていることを前提としたものとうかがわれる行動をとっている。 これらの事実はいずれもBの供述によく合致していてこれを裏付けている(3),,。 Kは,原審公判廷において,平成12年に拘置所でA及びBと同房だった際に,Aが,D夫婦を殺害して金品を強取する計画を話し,それを聞いていたBが,自分が- 4 -行くというようなことを言っていた旨供述しているところ,Kの同供述 成12年に拘置所でA及びBと同房だった際に,Aが,D夫婦を殺害して金品を強取する計画を話し,それを聞いていたBが,自分が- 4 -行くというようなことを言っていた旨供述しているところ,Kの同供述は,Aからそのような話があったという点では,Bの供述と合致している上,AとBが互いに連絡先を教え合ったり,Bがその後服役中のAに手紙を送ったりしていることとも,,,整合していて27日に福岡市内のホテルのレストランにおいてAとBの2人でD夫婦を殺害することを謀議した際の会話内容に関するBの供述を裏付けている。 (4)L及びEの原審公判廷における各供述を含む関係証拠によれば被告人は8月,,ころから暴力団幹部のLと連絡をとり合って,D方を狙った強盗を計画し,11月下旬にはLが手配して送ってくる中国人などの実行役を受け入れる準備などをしたり,12月20日ころにも,Lが手配する別の実行役を受け入れる準備などをしていること,被告人は,Eに対して,被告人のEに対する約100万円の債権を帳消,,しにするなどと言って上記の中国人を含む実行役の運転手をするよう誘うなどし本件においては,27日には電話で,28日夜にはEの車(キャロル)の中で,Eに対して,ワゴン車に乗り換えてD方前に乗りつけて待機し,Bを乗せて逃走することを指示し,29日には,D方の勝手口にEの車(キャロル)をつけてBを乗せて逃走することなどを指示していることが認められる。また,被告人の原審公判廷における供述を含む関係証拠によれば,被告人は,28日に犯行計画を実行することが失敗した後,29日夕方ころまでの間に,A及びBと3人でスナック等で飲食するなどして同人らと行動を共にする時間がかなりあったことが認められる。これらの事実は,いずれも,被告人が本件犯行に深く関与していたことを示すもの 夕方ころまでの間に,A及びBと3人でスナック等で飲食するなどして同人らと行動を共にする時間がかなりあったことが認められる。これらの事実は,いずれも,被告人が本件犯行に深く関与していたことを示すものとしてBの供述を裏付けている(5)加えて28日夜被告人とAが死体を処分す,。 ,,,る方法で揉めたというBの供述(原審第6回公判期日におけるBの供述447項以下)は,被告人及びAが,D夫婦を殺害する謀議に加わっていたことを示す具体的な事実を供述するものである(なお,Aも,原審公判廷において,Bの供述とは時点が若干異なるものの,被告人とA及びBの3人がCの駐車場で話をした際,死体を海に捨てるとか山に捨てるという話が出たことはある旨供述していて〔原審第9〕,。)。 回公判期日におけるAの供述148項以下Bの上記供述を一部裏付けている- 5 -以上の諸点からすると,被告人が,A及びBとの間で,D夫婦を殺害して金品を強取することを謀議したというBの供述の中核部分は十分に信用できる。 これに対し,被告人は,原審公判廷において,Aから,犯行に使用するワゴン車を手配することや,Eに運転手役を依頼すること,A及びBがD方に強盗に入る際に見張りをすることなどを頼まれて承諾し,また,D方の犬を叩き殺すために使うと聞いて,金属バットの代わりに木の棒を切り出しに行ったが,A及びBとの間でD夫婦を殺害する謀議はしていない旨供述する。 しかし,Eは,原審公判廷において,28日夜,M駐車場に駐車したEの車(キャロル)の中で,被告人から,D方前にワゴン車をつけることなどを指示され,29日にも,被告人から,電話などで,D方炊事場(勝手口)にEの車をつけることなどを指示されたなどと供述しており,Eが,被告人とAをとり違えて供述するとは考えられず,Eの上記供 ことなどを指示され,29日にも,被告人から,電話などで,D方炊事場(勝手口)にEの車をつけることなどを指示されたなどと供述しており,Eが,被告人とAをとり違えて供述するとは考えられず,Eの上記供述は信用できるものと考えられるのに,被告人は,Eに対して上記の指示をしておらず,その指示をしたのはAであることを示唆するような内容の供述や,Aに言われた内容を機械的に伝えただけであるかのような供述をしていて,被告人の供述は,Eの供述に反し不自然である。また,被告人は,28日夜,AやBが死体を搬出するのに使用することを予定していたワゴン車を手配した上,AとBが,わざわざAの車(シビック)からワゴン車に乗り換えるために,食堂Iまで行った際に,被告人も食堂Iに行っていることなどの事実が認められ,被告人は,ワゴン車の調達について深く関与しているのに,被告人は,被告人がワゴン車を調達してAらがワゴン車に乗り換えた理由について納得できる説明をして。 ,,,いないさらに前記(2)のとおりAらの犯行計画及びそれに基づいたAの行動はいずれもD方に在宅していた住人を殺害することを前提としたものと考えられるところ,Aが逮捕されれば,Aの供述から,被告人も犯人の一味であることが発覚するのはほぼ確実であるのに,被告人は,AがD方に侵入することを知りながら,Aとの間で,Aが犯人の一味であることがD夫婦に分からないようにするための方策について相談をしていないが,この点について,被告人は納得できる説明をしてい- 6 -ない。被告人自身も,AとBが金品の強取に失敗してD方から一旦逃走した後,遺(),,留品を回収しに戻るBを自分が運転する車ミラに乗せてD方の近くまで戻りD方から遺留品を回収するなどして戻ってきたBを車に乗せて逃走していて,D方の住人が既に殺 旦逃走した後,遺(),,留品を回収しに戻るBを自分が運転する車ミラに乗せてD方の近くまで戻りD方から遺留品を回収するなどして戻ってきたBを車に乗せて逃走していて,D方の住人が既に殺害されていることを前提としたものとうかがわれる行動をとっているところ,被告人は,その点についても納得できる説明をしていない。そして,被告人の供述では,被告人は,Bが犯行に使用する金属バットを要求していることを聞き,その調達を頼まれたというのであるから,強盗をするためD方に侵入するBとAが,D夫婦に対してどのような行為に及ぶのかを聞くことができ,また,聞く,,,のが当然であろうと考えられるのにそのことを聞かずに金属バットの使い道がD方の犬を撲殺することだけであると聞き,自宅の金属バットを使うのを嫌って,金属バットに代えるために,Aとともに木の棒を切り出しに行ったというのは,いかにも不自然である。以上の諸点からすると,被告人の供述のうち,A及びBとの間で強盗殺人の共謀をしたことがない旨の供述部分は信用することができない。以下,所論にかんがみ,補足して説明する。 所論は,被告人らは,28日に強盗をする予定であったのであるから,強盗,,殺人の共謀をするのならば28日にその共謀がされていなければならないところ携帯電話の通話履歴などから,28日夜の被告人,A及びBの3人のそれぞれの行動を検討すると,同日夜,Cの駐車場付近に駐車したAの車(シビック)の中で,被告人,A及びBの3人が集まって強盗殺人の共謀をする時間がなかったと考えられるから,被告人が,A及びBとの間で,強盗殺人の共謀をしたとは考えられない旨主張する。 (1)BとA及び被告人の3人による28日の謀議に関するBの供述は,AとBが,Aの運転する車(シビック)でCの駐車場付近に到着し, 及びBとの間で,強盗殺人の共謀をしたとは考えられない旨主張する。 (1)BとA及び被告人の3人による28日の謀議に関するBの供述は,AとBが,Aの運転する車(シビック)でCの駐車場付近に到着し,同所に駐車した同車の中で,Bが三,四〇分くらい待っていると,被告人の運転する車(ミラージュ)でAと被告人がやってきて,その2人がシビックに乗り込んできた,その際,その2人のどちらかが木の棒を持っていた,そのシビックの中で,A,B及び被告人の- 7 -3人が,三,四〇分くらい謀議をした,というものである。 (2)被告人,B,A及びEの原審公判廷における各供述を含む関係証拠によれば,28日の午後8時ころから午後9時過ぎころにかけてのA,B及び被告人らの行動。 ,,,の経過は次のとおりであったと認められるすなわち①午後8時ころAとBはAの車(シビック)で,また,被告人は,自己の車(ミラージュ)で,それぞれCの駐車場付近に到着した。②Aが,自己の車(シビック)から被告人の車(ミラージュ)に乗り移った後,その2人は,被告人の車(ミラージュ)で,木の棒を切り出しに行った。③被告人とAの2人は,木の棒を切り出した後,Cの駐車場付近に戻ってきた。④被告人とAは,Eから被告人に電話のあった午後8時47分ころ,被告人の車(ミラージュ)で,Cの駐車場のすぐそばにあるM駐車場で待っていたEのところに行った。⑤そこで,被告人とA及びEはしばらく話をした。⑥その話が終わると,午後9時前後ころ,Eは,自己の運転する車で帰っていき,被告人とAは,被告人の車(ミラージュ)で,Cの駐車場付近に停めたAの車(シビック)のそばまで行った。⑦その場所から,被告人は,自己の運転する車(ミラージュ)で,また,AとBは,Aの車(シビック)で,それぞれ食堂Iに向かった。 (3) )で,Cの駐車場付近に停めたAの車(シビック)のそばまで行った。⑦その場所から,被告人は,自己の運転する車(ミラージュ)で,また,AとBは,Aの車(シビック)で,それぞれ食堂Iに向かった。 (3)Bの上記(1)の供述を上記(2)の認定事実と照らし合わせるとBが3人で謀,議をしたとしているのは,被告人とAがCの駐車場付近に戻ってきた(上記(2)の③)時ころから,被告人,A及びBの3人がCの駐車場付近から食堂Iに向かった(上記(2)の⑦時ころまでの間のことであると認められるこれに対して所論は被)。 ,,,()告人の供述に依拠して被告人とAがCの駐車場付近に戻ってきた上記(2)の③のは,28日の午後8時45分ころであり,被告人とAは,戻ってくるとすぐに,Cの駐車場のすぐそばにあるM駐車場に行ったので,その間に,A,B及び被告人の3人で謀議をする時間はなく,その後も,3人で謀議をする時間はなかった旨主張するものである。 ,(),しかし被告人とAがCの駐車場付近に戻ってきた上記(2)の③時刻について被告人は,原審公判廷では,28日の午後8時45分ころであった旨供述している- 8 -が①被告人の捜査段階での供述警察官調書原審乙6号検察官調書原審検,(〔〕,〔乙16号によると被告人はAと2人で木の棒を切り出しに行きそれを切り〕),,,出した後Cの駐車場付近に向かっている時に携帯電話にEから電話がありも,,,「うすぐ着く」と答えたとされており「写し作成報告書」と題する書面(原審検甲。 ,157号)等によれば,その電話があった時刻は午後8時21分であったと認められること②被告人の捜査段階での供述警察官調書原審乙7号によると被,(〔〕),告人は,木の棒 甲。 ,157号)等によれば,その電話があった時刻は午後8時21分であったと認められること②被告人の捜査段階での供述警察官調書原審乙7号によると被,(〔〕),告人は,木の棒を切り出して,Cの駐車場付近に戻った後,ワゴン車を貸してほしいという電話を食堂Iにしたとされており写し作成報告書と題する書面原審,「」(検甲157号)等によれば,その電話をした時刻は午後8時40分であったと認められること,③木の棒を切り出すためにCの駐車場付近を出発してからそこに戻ってくるまで,実際にどれだけの時間がかかったか明らかではないが,関係証拠に照らすと,午後8時ころ出発して30分程度で戻ってきたとしても,不自然ではないことこれらの事情を併せ考えると被告人とAがCの駐車場付近に戻ってきた上,,(記(2)の③時刻について28日の午後8時45分ころであったとする被告人の原),審公判供述は必ずしも信用できず,午後8時30分ころであった可能性が十分あるといえる。 また,Aと被告人は,午後9時前後ころ,Eと別れた後,被告人の車(ミラージュ)で,Cの駐車場付近に停めたAの車(シビック)のそばまで戻っており(上記(2)の⑥,その場所から,被告人,A及びBの3人が食堂Iに向かって出発するま)での間にも,3人で謀議をすることが可能な若干の時間があったと考えられる。 以上の点について,所論が指摘する被告人らの通話履歴に関する証拠等を検討しても,上記の判断を左右するものは見当たらない。 そうすると,Bの供述のうち,3人で三,四〇分も謀議をしたという点については疑問があるものの,被告人とAがCの駐車場付近に午後8時30分ころに戻ってきたとすれば,被告人,A及びBの3人がCの駐車場付近から食堂Iに向かって出発するまでの間に,20分程度の という点については疑問があるものの,被告人とAがCの駐車場付近に午後8時30分ころに戻ってきたとすれば,被告人,A及びBの3人がCの駐車場付近から食堂Iに向かって出発するまでの間に,20分程度の時間謀議をすることはできたものと考えられる。 - 9 -なお,一般に,時間に関する記憶には,かなりの誤差があるのが通例であるから,謀議の時間の長さの点でBの供述に疑問があるからといって,謀議をしたこと自体について同人の供述の信用性が揺らぐものとはいえない。 もっとも,Bの供述では,被告人とAが,被告人の車(ミラージュ)で,Cの駐車場のすぐそばにあるM駐車場で待っていたEのところに行った上記(2)の④と()はされていないが,Bの供述でも,A,B及び被告人の3人が,Cの駐車場付近に駐車したAの車(シビック)の中で,強盗殺人の謀議をしている際,近くにEの乗った車が来ている旨の会話などがされていたというのであり,Bの供述する謀議の際に,近くのM駐車場にEが車に乗ってきていたとみられることからすると,被告人とAがEのところに行ったということについては,Bが失念していると考えられるのであって,この点が,Bの供述の中核部分の信用性を揺るがすものとはいえない。 (4)以上によれば28日夜AB及び被告人の3人がCの駐車場付近に駐,,,,車したAの車(シビック)の中で,強盗殺人の共謀をする時間がなかったとはいえず,所論は採用できない。 所論は,Bの供述は,突き詰めて証言を求められると次第に曖昧になっていく特徴があり,信用できない旨主張する。 しかし,Bは,28日にA,B及び被告人の3人で強盗殺人の謀議をする前に,Aとの間で,27日に福岡市内のホテルのレストランにおいて,また,28日にD方の下見に行った際などにAの車(シビック)の中で,そ かし,Bは,28日にA,B及び被告人の3人で強盗殺人の謀議をする前に,Aとの間で,27日に福岡市内のホテルのレストランにおいて,また,28日にD方の下見に行った際などにAの車(シビック)の中で,それぞれ強盗殺人の謀議をしており,事件から1年近く経った原審第6回及び第7回公判期日において,28日に被告人も加わって3人で強盗殺人の謀議をした際の会話内容等を確認されて,Aとの間でした会話の内容と,被告人も加わって3人でした会話の内容について,,,,記憶がやや曖昧になっていたとしても不自然とはいえずむしろその供述内容は供述時点での自己の記憶に忠実に供述しているとみられるものである。そして,Bの供述の信用性の判断に当たっては,本件当時のことについてのBの記憶がやや曖- 10 -昧になっているところもあり得ることを十分考慮に入れて検討する必要があるが,そのことを十分考慮に入れて検討しても,前記のとおり,Bの供述の中核部分は,関係証拠によって認められる諸事実とよく整合していて,十分信用できると判断さ,,。 れるのであって所論指摘の点がBの供述の信用性を揺るがすものとはいえない 所論は,被告人がAと一緒に調達したコナラの木の棒は,金属バットに比べると細身で,犬の撲殺用に使うのはともかく,D夫婦2人を短時間で撲殺するのに使うのには向かないこと,2人の人間を殺すのに使うのであれば,木の棒よりも,被告人らが用意した金属製バールを2人の人間がそれぞれ持って使うのが合理的であることなどからすると,木の棒でD方の犬を撲殺するものと思っており,木の棒が,D夫婦を撲殺するために使われるとは考えていなかったとの被告人の原審公判廷における供述が信用できる旨主張する。 ,,. ,しかし本件犯行に使われたコナラの木の棒は長さ約822センチメートル直 婦を撲殺するために使われるとは考えていなかったとの被告人の原審公判廷における供述が信用できる旨主張する。 ,,. ,しかし本件犯行に使われたコナラの木の棒は長さ約822センチメートル直径約32.5ないし約48.7ミリメートル,重さ約860.4グラムの切り出したばかりの生木の棒であり,殴打すれば十分な殺傷能力があり,D夫婦が老齢であったことも併せ考慮すると,B1人が,その木の棒で,短時間のうちにD夫婦2人を撲殺することは十分可能であると考えられる。また,所論指摘の金属製バールは,D方の金庫を開ける道具として準備されたものであったから,被告人らが,これをD夫婦の撲殺のために用いようと考えることなく,そのための道具として,金属製バールとは別に木の棒を準備したとみることが十分可能である。したがって,所論指摘の点が,被告人の供述の信用性を裏付けるものとはいえず,所論は採用できない。 その他,所論の主張する諸点を検討しても,A,B及び被告人の3人で強盗殺人の共謀をしたとするBの供述の中核部分の信用性を揺るがすものはなく,Bの供述を含む関係証拠によれば,上記の3人による強盗殺人の共謀の事実が十分認められるから,原判決に所論のような事実の誤認はない。 論旨は理由がない。 - 11 -第2量刑不当の論旨について論旨は,要するに,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑は重すぎて不当である,というのである。 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも加えて検討する。 本件は,被告人が,A及びBと共謀の上,金融業を営むD方で同人らを殺害して,,,(),金品を強取しようと企て同人方でBにおいてDの妻J当時79歳に対し殺意をもって,その頭部を木の棒で殴打するなどの暴行を加えて金品を強取しよう,,,,としたが金 ,,(),金品を強取しようと企て同人方でBにおいてDの妻J当時79歳に対し殺意をもって,その頭部を木の棒で殴打するなどの暴行を加えて金品を強取しよう,,,,としたが金品の発見に至らずその目的を遂げなかったものの上記暴行により同女を死亡させて殺害した強盗殺人の事案である。記録によって認められる本件犯行の経緯動機態様結果及び被告人の前科関係等は原判決が犯行に至る経,,,,,「緯等「罪となるべき事実」及び「量刑の理由」において詳細に認定,説示すると」,おりである。 被告人らは,金融業を営んでいたD方に多額の現金があると考え,これを強取するとともに,犯行の発覚を免れるために同人らを殺害することを企てて,本件犯行に及んだものであって,被告人らの当初の計画では,被害者の夫も殺害する予定だったのであり,金のためには人の命を奪うことも厭わない極めて身勝手で利欲的な犯行の動機に酌量の余地は皆無である。また,犯行態様は,客を装って被害者方玄関に入ったBが,玄関に現れた被害者の頭部を,金属バットの代わりに調達した木の棒で突然殴打し,さらに,倒れ込んだ被害者の頭部を木の棒で殴打してとどめを刺すというもので,残忍かつ凶悪なものである。犯行の発覚を遅らせるために,瀕死の被害者の体を2階に隠すなど,その後の犯情も悪質である。被害者は,夫と結,,婚して長年にわたり平穏な毎日を送ってきた主婦で何らの落ち度もなかったのに理不尽極まりない本件犯行により,突然命を奪われたのであり,その無念さは察するに余りある。病気のために体が不自由な被害者の夫が,介護施設への入所を余儀なくされるなど,被害者の夫に与えた悪影響も大きいが,原判決後,被害者の夫に対し,被告人の謝罪の手紙が送付されたほかは,被告人らから特に慰謝の措置はと 体が不自由な被害者の夫が,介護施設への入所を余儀なくされるなど,被害者の夫に与えた悪影響も大きいが,原判決後,被害者の夫に対し,被告人の謝罪の手紙が送付されたほかは,被告人らから特に慰謝の措置はと- 12 -られておらず,被害者の夫の処罰感情が峻烈であるのも当然である。 被告人は,多額の借金の返済に窮し,拘置所に勾留されているときに知り合ったLと連絡をとり合って,平成15年夏ころから,被害者方への強盗を企て,AやEを誘って,Lが送り込む実行役を受け入れる準備をしていて,本件犯行は,被告人とLがした一連の企ての延長線上で,AがBを実行役とすることを発案したことから実行されたものであるし,被告人は,Eを,同人の借金を帳消しにするなどと言って本件犯行の見張り役や運転手役に誘ったりしている。そして,関係証拠によれば,被告人は,遅くとも,28日夜,被告人がAとともに被害者を撲殺するのに使用された木の棒を切り出しに行った段階では,Aらが被害者夫婦の殺害を計画して,,,いることを知っていたと認められるのであって被告人はそのような認識の下で同計画に深く関与し,以下のとおり重要な行為をしている。すなわち,被害者を殺害する凶器として金属バットの代わりに使用された木の棒を,Aとともに切り出しに行くなどの準備をしたり,A及びBとともに本件犯行の謀議をしたり,死体の搬出などのために使うワゴン車の手配をしたり,Eに見張り役などの指示をした上,自らも見張り役をし,28日に犯行計画を実行することが中止された後は,A及びBをスナックで飲食させるなどして,本件犯行に向けた共犯関係を維持し,29日には,再度,A及びBと本件犯行の謀議をし,Eにも見張り役などの指示をして,自らも見張り役をし,AとBが金品の強取に失敗して,被害者方から一旦逃走した後,遺留品を回収しに戻 共犯関係を維持し,29日には,再度,A及びBと本件犯行の謀議をし,Eにも見張り役などの指示をして,自らも見張り役をし,AとBが金品の強取に失敗して,被害者方から一旦逃走した後,遺留品を回収しに戻るBを自分が運転する車(ミラ)に乗せて,被害者方の近くまで戻り,被害者方から遺留品を回収するなどして戻ってきたBを車に乗せて逃走し,Bがフェリーで島外に逃走するためなどの資金1万円をAに渡し,上記スナックの従業員に,被告人らが飲食した時の伝票を廃棄するよう依頼して罪証隠滅工作をしている。 さらに,被告人は,平成11年12月,Aらと共謀の上でした出入国管理及び難民認定法違反の罪で,懲役3年及び罰金100万円に処せられながら,平成14年10月に懲役刑の執行を受け終わって約1年2か月(仮出獄からみても約1年10- 13 -か月)で本件犯行に及んでいて,規範意識が鈍麻しているといわざるを得ない。 以上からすると,被告人の刑事責任は重大である。 所論は,本件犯行は,もともとAの主導により行われたものであり,また,Bの粗暴な性格によって,被害者の殺害という結果が引き起こされたものであって,被告人の役割を重いものとみることはできない旨主張する。 確かに,Aは,多額の借金の返済に窮し,被告人らが企てたものの実行役が断るなどして失敗した被害者方への強盗の企てに加担するなどした後,Bが仮出獄したことを知り,多額の金が得られるなどと言って,Bを被害者夫婦を殺害する実行役として誘い入れ,Bとともに具体的な犯行計画を練り,各共犯者の役割分担を決める際にも,被害者の夫から借金などをする際に得た被害者方の間取りや被害者夫婦の生活状況等の情報をBに提供するなどして,Bと2人での謀議,あるいは,被告人も加わった3人での謀議を中心的に主導し,自らは,28日には,Bとともに被害者方 する際に得た被害者方の間取りや被害者夫婦の生活状況等の情報をBに提供するなどして,Bと2人での謀議,あるいは,被告人も加わった3人での謀議を中心的に主導し,自らは,28日には,Bとともに被害者方を下見し,金属バットの調達を被告人に依頼し,金属バットに代わる凶器の木の棒を被告人とともに切り出しに行くなどの準備をした上,Bとともに,被告人の手配したワゴン車に乗り換えて,被害者方付近で,被害者方に押し入る機会をうかがうなどし,29日の本件犯行の際には,被害者夫婦と面識のあるAが被害者方を訪問して,被害者に玄関を開けさせるとともに,被害者方を偵察して,外で待機していたBに様子を伝え,Bが被害者を撲殺した後には,金品の強取役として,被害者方の金庫を開けるためのバールを持って被害者方に入るなどしている。また,Bも,Aから,本件犯行に誘われると,一度は大金を手にしてみたいなどという金目当ての動機から,被害者夫婦の殺害役をすることをそれほど強い躊躇も見せずにかなり簡単に承諾している上,被害者夫婦を金属バットで撲殺して殺害するという殺害の具体的な方法を提案し,Aに誘われてから2日後には,実際にさして躊躇も,,,見せずに被害者を殺害しているのであってその粗暴な性向は著しく本件犯行はBなしには実行され得なかったものといえる。 そうすると,本件犯行において,Aは,本件犯行の主導者として,最も重要な役- 14 -割を果たしており,Bがそれに次ぐ重要な役割を果たしているものといえるのであって,被告人の果たした役割を,AやBのそれと同等とみることはできないが,被告人は,Aとの間に特段の上下関係はなかった上,前記のとおり,Bが被害者夫婦を殺害することを知って,少なくとも2日間にわたり,前記のような重要な行為をしていることからすると,被告人が,被害者の殺害行為 人は,Aとの間に特段の上下関係はなかった上,前記のとおり,Bが被害者夫婦を殺害することを知って,少なくとも2日間にわたり,前記のような重要な行為をしていることからすると,被告人が,被害者の殺害行為や,強取行為を直接していないことを考慮しても,本件犯行に深く関与していたものといわざるを得ず,被告人の果たした役割が従属的であるとか,A及びBと格段の差異があるとまではみることができず,被告人の果たした役割は,相当に大きいというべきである。 以上によれば,被告人の前妻が,被告人の帰りを待っているなどと述べていること,被告人が,被害者の殺害行為や,強取行為を直接していないこと,被告人の果たした役割を,AやBのそれと同等とみることはできないことなど,記録及び当審における事実取調べの結果から認められる被告人に有利な事情を十分考慮しても,強盗殺人罪の法定刑(死刑又は無期懲役)のうち無期懲役を選択した上で,酌量減軽をすることなく,被告人を無期懲役に処した原判決の量刑は,やむを得ないものであって,これが重すぎて不当であるとはいえない。 所論は,原判決が,被告人に対し,原審において検察官のした懲役15年の求刑を上回る無期懲役の刑を言い渡したのは,著しく不当であり,情状により酌量減軽をすべきである旨主張する。 しかし,検察官による求刑は,検察官の意見であって,これに裁判所が拘束されるものではないところ,本件に関する被告人の情状は前記のとおりであって,被告人のために酌むべき事情を十分考慮に入れて検討しても,酌量減軽をするのが相当であると判断されるほどの情状があるとまでは認められないから,所論は採用できない。 論旨は理由がない。 よって,刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却することとし,当審における未決勾留日数の算入につき刑法21条を,当審における訴訟費用を被告人 められないから,所論は採用できない。 論旨は理由がない。 よって,刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却することとし,当審における未決勾留日数の算入につき刑法21条を,当審における訴訟費用を被告人に負担さ- 15 -せないことにつき刑事訴訟法181条1項ただし書をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官濱﨑裕裁判官長倉哲夫裁判官杉山正明)
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