判決平成14年11月22日神戸地方裁判所平成14年(わ)第558号詐欺被告事件 主文 被告人5名をそれぞれ懲役2年に処する。 被告人5名に対し,この裁判が確定した日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人Aは,Y食品株式会社(以下,「Y食品」という。)のデリカハム・ミート事業本部長付部長として,同社の食肉事業の収支改善責任者であったもの,被告人Bは,同事業本部ミート営業調達部長として,Y食品が取り扱う販売用食肉の購買及び供給の責任者であったもの,被告人Cは,同事業本部ミート営業調達部営業グループ課長として,同部部長を補佐していたもの,被告人Dは,Y食品関西統括支店関西ミートセンター長として,担当エリア内の食肉の購買及び供給等の責任者であったもの,被告人Eは,同関東統括支店関東ミートセンター長として,担当エリア内の食肉の購買及び供給等の責任者であったものであるが,牛海綿状脳症(BSE,いわゆる狂牛病)の影響等により,Y食品が保管・管理する輸入牛肉等の在庫が増大してその処分に困窮していたところ,政府が農畜産業振興事業団法に基づく牛肉在庫緊急保管対策事業(以下,「牛肉緊急対策事業」という。)を実施することを聞き知るや,同事業の実施主体であるV協同組合に対し,Y食品が保管・管理する輸入牛肉を牛肉緊急対策事業の対象となっている国産牛肉であると偽って売却し,V協同組合から売買代金名目で金員を詐取しようと企て,Y食品の専務取締役デリカハム・ミート事業本部長F及び同社の常務取締役関東統括支店長Gらと共謀の上,平成13年11月6日ころ,東京都中央区日本橋茅場町a丁目b番c号 代金名目で金員を詐取しようと企て,Y食品の専務取締役デリカハム・ミート事業本部長F及び同社の常務取締役関東統括支店長Gらと共謀の上,平成13年11月6日ころ,東京都中央区日本橋茅場町a丁目b番c号所在のY食品から東京都渋谷区恵比寿d丁目e番f号所在のV協同組合に対し,真実は,牛肉緊急対策事業の対象でない輸入牛肉を含んでいたにもかかわらず,申込みにかかる牛肉が全て同事業の対象である国産牛肉であるかのように装って,輸入牛肉2万9993.6キログラムを含む合計27万9467.7キログラムの牛肉につき,代金3億1132万7017円での買入れ方を申し込み,V協同組合専務理事Hらをして,上記申込みにかかる牛肉の全量が牛肉緊急対策事業の対象である国産牛肉である旨誤信させ,よって,平成14年1月7日,V協同組合から,上記申込みにかかる牛肉の売買代金の一部として,東京都千代田区大手町g丁目h番i号所在の株式会社I銀行J支店のY食品名義の普通預金口座に,1億9562万7390円の振込入金を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人5名の判示所為はいずれも刑法60条,246条1項に該当するところ,その所定刑期の範囲内で被告人5名をそれぞれ懲役2年に処し,被告人5名について,いずれも情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由) 1 本件事案の概要本件は,平成13年9月10日,千葉県内で牛海綿状脳症(BSE,いわゆる狂牛病)を発症した牛が発見されたことを発端に,Y食品が管理・保管する国産牛肉及び輸入牛肉の売上げが激減し,それらの在庫が増加した状況下,牛肉価格の下落,低迷に対処して市場における牛肉の滞留の解消,牛肉の価格安定化を図 が発見されたことを発端に,Y食品が管理・保管する国産牛肉及び輸入牛肉の売上げが激減し,それらの在庫が増加した状況下,牛肉価格の下落,低迷に対処して市場における牛肉の滞留の解消,牛肉の価格安定化を図るために策定された国の牛肉緊急対策事業に参加する際,Y食品が抱える輸入牛肉の在庫を減少させるとともに,Y食品のミート事業の損失を補てんするため,被告人らが,共謀の上,輸入牛肉を国産牛肉に偽装し,これを牛肉緊急対策事業の事業主体であるV協同組合に買上げの対象となる国産牛肉と偽って買い上げさせ,その売買代金の一部1億9562万7390円を詐取したという詐欺の事案である。 2 本件事案に関する諸事情(1) 犯行に至る経緯Y食品には,ハム及びソーセージ等を販売する肉製品事業部門,総菜等を販売するデリカ事業部門及び食肉を販売するミート事業部門などがあり,ミート事業部門の業績は,平成4年度以降赤字基調で推移していたが,平成12年には,親会社であるY乳業株式会社の食中毒事件の影響からY食品の業績は大きく落ち込み,Y食品全体として赤字決算となった。 そこで,Y食品では,平成13年8月ころから,同社デリカハム・ミート事業本部長である同社専務取締役Fの主導で,「死守ライン」と呼ばれる業績の達成目標を設定し,ミート事業部門の業績改善に向けて必死の努力が続けられていた。 しかし,同年9月10日,千葉県内で,我が国で初めて牛海綿状脳症(BSE,いわゆる狂牛病)に罹患したと思われる国産牛が発見され,テレビ等で連日大きく報道されたため,食肉の需要は国産牛肉であるか輸入牛肉であるかを問わず大幅に減少し,一旦出荷されていた牛肉に関しても,その多くが返品されるなどした。 中でも,輸入牛肉の在庫の増加は国産牛肉にも増して一層深刻で 需要は国産牛肉であるか輸入牛肉であるかを問わず大幅に減少し,一旦出荷されていた牛肉に関しても,その多くが返品されるなどした。 中でも,輸入牛肉の在庫の増加は国産牛肉にも増して一層深刻で,輸入牛肉の在庫量は同年9月,10月と増加の一途をたどっていたが,これは,被告人らが責任者であった関西ミートセンター,関東ミートセンター,本社ミート営業調達部の各部署においても例外ではなく,販売見込みすら立たない状況の下,被告人5名をはじめ担当者は一様にその処分に難渋していた。 一方,BSEに対する消費者の不安感に由来する牛肉の消費低迷による市場価格の下落,低迷等を憂慮した政府は,同年10月18日から,同日以降にと畜処理される牛についてBSE検査(いわゆる全頭検査)を実施することとした。そうすると,同月17日以前にと畜処理された全頭検査を経ていない牛については全く売却のめどが立たなくなることから,農林水産省において滞留している国産牛肉を市場から隔離する事業を検討した結果,農畜産業振興事業団法に基づく指定助成対象事業として,全国農業協同組合連合会やV協同組合など6団体が事業実施主体となり,各団体の構成員である食肉業者から全頭検査開始前にと畜処理された牛肉の在庫を買い上げて冷凍保管し,事業団が事業実施主体に補助金を交付するという内容の牛肉緊急対策事業を策定・実施する旨決定し,同月26日,農林水産省はその実施要領として「牛肉在庫緊急保管対策事業実施要領」を制定し,同月29日には事業団も同様の実施要綱等を制定した。 これをうけて,牛肉緊急対策事業の事業実施主体となったV協同組合においても,合計約340万キログラムの対象牛肉を組合員である食肉業者から買い上げることとなり,Y食品もV協同組合の組合員として牛肉緊急対策事業に参加するこ 急対策事業の事業実施主体となったV協同組合においても,合計約340万キログラムの対象牛肉を組合員である食肉業者から買い上げることとなり,Y食品もV協同組合の組合員として牛肉緊急対策事業に参加することとなった。 このころ,食肉業界関係者内部では,国が牛肉の買上げ制度を検討中であるとの情報が流れていたが,同時に,安価な経産牛(お産を経験した牛)を買い上げさせるために買いあさっている業者がいるとか,輸入牛肉を国産牛肉として買い上げさせようとしている業者がいるといった噂が広まっていた。 食肉業界においては,以前から産地表示を偽ったり,輸入牛肉を国産牛肉として販売する不正行為が商慣習として存在しており,Y食品も食肉業界の動きに呼応して,牛肉,豚肉を問わず,産地を偽装したり,品質期限を改ざんしたり,輸入牛肉を国産牛肉と偽装するなどの不正行為を日常的に行っていたため,被告人5名は,上記のような食肉業界の不正行為の噂を聞いても,格別驚くことはなかった。 (2) 本件共謀状況及び被告人5名の関与状況等ア本社ミート営業調達部関係被告人B及び被告人Cは,同年10月25日,V協同組合で実施された牛肉緊急対策事業の説明会に出席して同事業の概要について説明を受け,V協同組合が買い上げた牛肉の全量についての検査は事実上不可能であると考え,前記のような食肉業界の他業者の動向について噂を聞いていたことから,Y食品においても輸入牛肉をV協同組合に買い上げさせればよいと考えるに至った。 一方,被告人Aも,被告人B及び被告人Cと同様,前記の噂を聞いて,他業者が偽装工作をするのであれば,Y食品だけが食肉業界で取り残されないよう,Y食品においても輸入牛肉を国産牛肉に偽装しようなどと考えていた。 被 び被告人Cと同様,前記の噂を聞いて,他業者が偽装工作をするのであれば,Y食品だけが食肉業界で取り残されないよう,Y食品においても輸入牛肉を国産牛肉に偽装しようなどと考えていた。 被告人Bは,同月26日午前中に開かれたY食品の常勤取締役会に出席し,K社長以下,副社長,Fらに対して,ミート営業調達部の営業概況や原料概況等を報告した際,牛肉緊急対策事業の概要や前記のような食肉業界の噂を報告したが,その際,社長以下,出席役員の誰からもY食品としてそのような不正行為を行わないようにとの指示,意見は出なかった。 同日午後,被告人Cは,被告人A及び被告人Bに対し,被告人Cが課長を務める本社営業グループとして牛肉緊急対策事業への参加に際して輸入牛肉を買上対象に回したい旨相談を持ちかけ,被告人A及び被告人Bも,これを了承した。 そこで,被告人Cは,輸入牛肉を国産牛肉に偽装する場所として,以前から知っていた兵庫県西宮市にある株式会社Lを利用しようと考え,被告人Dと連絡を取るなどしたが,関西ミートセンターの詰替作業の関係から断られ,被告人A及び被告人Bらと協議した上で,最終的に北海道茅部郡森町にあるY乳業の子会社であるM食肉株式会社(以下,「M」という。)を偽装場所として利用することとし,被告人AがMに直接連絡をとり,詰替作業への協力約束を取り付けた。 一方,被告人Bは,Fに対し,他業者と同様にY食品として輸入牛肉等を買い上げさせようと考えている旨報告したところ,Fから,とにかく損をしないように考えて行動するようにとの内容の指示を受け,輸入牛肉の国産牛肉への偽装について了解を得た。 その後,本社ミート営業調達部では,国産牛肉に偽装する輸入牛肉を,東京都内の保管倉庫からMに搬入し,同年 るようにとの内容の指示を受け,輸入牛肉の国産牛肉への偽装について了解を得た。 その後,本社ミート営業調達部では,国産牛肉に偽装する輸入牛肉を,東京都内の保管倉庫からMに搬入し,同年11月3日,Mで輸入牛肉を国産牛肉の牛正肉に偽装するために加工するなどして詰替作業を行った。 なお,最終的にV協同組合に買上げ申請した対象牛肉のうち本社ミート営業調達部分約2万9400キログラム中,約1万2600キログラムが国産牛肉に偽装した輸入牛肉であった。 イ関西ミートセンター関係関西ミートセンター長であった被告人Dは,関西ミートセンターの輸入牛肉の滞留在庫(不良在庫)の増加及びその処分に苦慮していたところ,食肉業界内で牛肉緊急対策事業において輸入牛肉を国産牛肉に偽装しようとしている業者がいるなどの噂を聞くに及んで,関西ミートセンターでも同様の偽装工作をしようと考えていたが,同年10月26日,被告人Cから本社ミート営業調達部の偽装工作にLを使いたいと相談されたことから,本社ミート営業調達部においても偽装の計画があることを察知した。 そこで,被告人Dは,関西ミートセンターにおいても輸入牛肉を国産牛肉に偽装して買上げ申請しようと決意し,関西ミートセンターの部下を集めて牛肉緊急対策事業について説明した際,輸入牛肉を国産牛肉に偽装して,買上げ対象として申請する旨指示した。 同月29日,被告人Dは,買上げ対象とする輸入牛肉の選定を具体的に指示した上,詰替作業のためにLを使用する承諾を取り付け,部下に具体的な輸入牛肉偽装のための詰替作業の段取りを指示した。 そして,同月31日,被告人Dは,自ら部下とともに,輸入牛肉を国産牛肉用の箱に詰め替える偽装工作を実行し,その後 付け,部下に具体的な輸入牛肉偽装のための詰替作業の段取りを指示した。 そして,同月31日,被告人Dは,自ら部下とともに,輸入牛肉を国産牛肉用の箱に詰め替える偽装工作を実行し,その後,本社に報告した買上げ対象牛肉の在庫数量とのつじつまを合わせるため,Lに内容虚偽の在庫証明書を発行させてV協同組合に送付させたり,不足した重量分の輸入牛肉をLに追加搬入するなどした。 なお,最終的にV協同組合に買上げ申請した牛肉のうち関西ミートセンター分約13万9668キログラム中,約1万3873キログラムが国産牛肉に偽装した輸入牛肉であった。 ウ関東ミートセンター関係関東ミートセンター長であった被告人Eは,関東ミートセンターの牛肉の不良在庫の増加,処分に苦慮していたところ,輸入牛肉を対象牛肉に混ぜて国に買い上げさせようとしている業者がいるとの噂を聞き,輸入牛肉を国産牛肉に偽装してV協同組合に買い上げさせるなどの儲けを出す努力をしない者は無能であるなどと考え,安価な国産牛を購入したり,関東ミートセンターに在庫していた輸入牛肉を国産牛肉に偽装するなどして,輸入牛肉等を買い上げさせることを思い立った。 そして,被告人Eは,相談した本社ミート営業調達部の被告人Cから,牛肉緊急対策事業においては検査がないことを聞くに及んで,本社ミート営業調達部においても輸入牛肉をV協同組合に買い上げさせようとしていることを察知した。 そこで,被告人Eは,同月31日,部下に対し,千葉県松戸市にある有限会社N(以下,「N」という。)で輸入牛肉を国産牛肉に偽装する工作を行う旨指示し,同年11月2日から同月4日にかけて,Nにおいて輸入牛肉を国産牛肉の牛正肉に見せかける加工を施す偽装工作を行った。 以下,「N」という。)で輸入牛肉を国産牛肉に偽装する工作を行う旨指示し,同年11月2日から同月4日にかけて,Nにおいて輸入牛肉を国産牛肉の牛正肉に見せかける加工を施す偽装工作を行った。 また,被告人Eは,以前から,直属の上司である関東統括支店長の常務取締役Gに対して営業,在庫状況等について仔細に報告していたが,その例に従って,同月5日,Gに対し,牛肉緊急対策事業における関東ミートセンターが買上げ申請する牛肉の重量等を,輸入牛肉を混入したことを含めて報告し,Gから最終的な了承を得た。 なお,最終的にV協同組合に買上げ申請した牛肉のうち関東ミートセンター分約4万4454キログラム中,約3520キログラムが国産牛肉に偽装した輸入牛肉であった。 エ共謀成立状況上記アないしウで認定したとおりであって,同年10月25日ころから同年11月5日ころにかけて,被告人5名ら並びにF及びGの間に,順次本件共謀が成立したものと認められる。 (3) 詐取金の返還Y食品は,本件犯行によりV協同組合から振込入金を受けた金員,保管料及び利息相当額合計1億9914万5321円を,本件発覚後の平成14年2月14日までにV協同組合に返還し,金銭的な被害は回復された。 3 量刑上特に考慮した事情(1) 各被告人に共通の事情について本件犯行に至る経緯,本件共謀状況,被告人5名の関与状況等は,前記2に認定したとおりである。 本件犯行は,BSE施策の一環として,牛肉価格の下落,低迷に対処して市場における牛肉の滞留の解消,牛肉の価格安定化を図るとともに,国民の不安感払拭を期して,国が策定,実施した牛肉緊急対策事業という公的制度を悪用し,組織ぐるみで2億円近い金員をだまし取ったもので て市場における牛肉の滞留の解消,牛肉の価格安定化を図るとともに,国民の不安感払拭を期して,国が策定,実施した牛肉緊急対策事業という公的制度を悪用し,組織ぐるみで2億円近い金員をだまし取ったものであって,その犯行態様は,国民の期待を裏切った背信的なもので,悪質である上,被害額も膨大である。 被告人5名は,長年産地偽装や品質表示の改ざん等の不正行為がまかり通っていた食肉業界の悪弊にほとんど疑問を持つことなく,さほど抵抗もなく本件犯行を立案・実行したもので,被告人5名の規範意識のみならず食肉関係者として消費者に対して負う道義的責任感までも鈍麻していたものといわざるを得ない。 被告人5名が,不振にあえいでいた食肉業界の担当者として,BSEの影響によりふくれあがった輸入牛肉の不良在庫の処分に苦慮し,自分の担当部署やY食品全体の業績改善のために努力していたことは認められるとしても,そのようなことは,本件犯行に至る経緯として,特に酌むべき情状とはいえず,むしろ被告人5名は,会社の利益しか考えていなかったといわざるを得ないのであって,その犯行動機に酌量の余地は乏しい。 その上,本件犯行後,被告人5名は,部下に本件に関する書類等を自宅に隠匿又は破棄するよう指示したり,被告人5名の間及び偽装工作関係者との間で口裏合わせを試みるなどしており,証拠隠滅工作を組織的に行っていたことも認められ,被告人5名の事後的な犯情もはなはだ芳しくない。 加えて,上場企業であったY食品は,本件犯行の発覚により,業績が急激に悪化し,再建の努力もむなしく清算,解散に至り,同社の正社員,嘱託社員,パート等約2000名の従業員は全員職を失い,現在の冷え切った雇用情勢下,再就職もままならず,不安な日々を送ることを余儀なくされており,本件犯行が もむなしく清算,解散に至り,同社の正社員,嘱託社員,パート等約2000名の従業員は全員職を失い,現在の冷え切った雇用情勢下,再就職もままならず,不安な日々を送ることを余儀なくされており,本件犯行がもたらした派生的な結果もかなり重大であり,また,本件犯行が,食肉のみならず食生活全般に関して,計り知れない不信感,不安感を国民に与えたことからも,本件が社会に及ぼした影響には極めて大きなものがある。 (2) 各被告人の個別的事情についてア被告人Aについて被告人Aは,Y食品デリカハム・ミート事業本部長付部長として,食肉部門の収支改善の責任を負い,被告人Cから偽装工作について相談を持ちかけられた際,容易に賛同し,本社分の偽装工作に関して,自らMに対して電話をかけて詰替作業の手配をするなどしており,その関与は積極的かつ具体的であること,本件犯行,ことに本社ミート営業調達部における偽装工作に関して,その遂行上必要不可欠であったことに加え,他の被告人4名と比してY食品の会社組織上地位が高く,会社全体の意思決定過程において被告人Aが果たした役割は相当大きい。 イ被告人Bについて被告人Bは,Y食品デリカハム・ミート事業本部ミート営業調達部長として,被告人A及び被告人Cと本社ミート営業調達部における偽装工作を具体的に共謀したばかりか,Fに対して本件偽装工作に関連する情報を提供し同人の承諾を受けるなど,会社として買上げ申請を行うに際しての最終的な意思決定のためのとりまとめをしたものであり,その役割は重要である。 ウ被告人Cについて被告人Cは,本社ミート営業調達部営業グループ課長として本社ミート営業調達部における偽装工作において,場所,対象等について具体的な指示を与え中心的な役割 ウ被告人Cについて被告人Cは,本社ミート営業調達部営業グループ課長として本社ミート営業調達部における偽装工作において,場所,対象等について具体的な指示を与え中心的な役割を果たしたばかりか,被告人Dや被告人Eと連絡を取り合い,関西ミートセンターや関東ミートセンターにおける偽装工作に関する情報を被告人Aや被告人Bに伝え,いわば「現場」と「本社幹部」との窓口としての役割を担っていたもので,会社ぐるみの組織的犯行である本件において被告人Cが果たした役割は重要で不可欠なものであった。 エ被告人Dについて被告人Dは,関西ミートセンター長として,関西ミートセンターにおける偽装工作を具体的かつ中心的に発案,指示した上,自らも偽装のための詰替作業に参加するなど,被告人Dの関与態様は積極的かつ行動的なものであり,国産牛肉に偽装した輸入牛肉の量は本社分や関東ミートセンター分と比して,関西ミートセンター分が最も多量であっただけでなく,関西ミートセンターにおける偽装工作に際し,詰替えにかかる牛肉の原産地について国産である旨のラベルを調製し,全箱に貼付するなど入念な詰替え,偽装工作をした。 オ被告人Eについて被告人Eは,関東ミートセンター長として,関東ミートセンターにおける偽装工作を具体的に指示,遂行しただけでなく,上司であるGに逐一報告してその了解を得るなど,本件犯行の実施を最終的に決定させる上で,重要な役割を担った。 (3) 各被告人の刑の軽重について以上3・(1),3・(2)の諸事情にかんがみると,各被告人が本件一連の組織的犯行の中で果たした役割の重要性,実行行為における関与の程度等に照らし,各被告人の刑事責任は,皆同等に重いというべきである。 (4) 有利 (2)の諸事情にかんがみると,各被告人が本件一連の組織的犯行の中で果たした役割の重要性,実行行為における関与の程度等に照らし,各被告人の刑事責任は,皆同等に重いというべきである。 (4) 有利な事情についてしかしながら,他方,2・(3)で触れたとおり,本件発覚後,Y食品は,V協同組合に対し,詐取した金員に保管料及び利息相当額を付加した額の金員を返還し,本件によってV協同組合が被った金銭的な被害はすでに現実に回復されている。 そして,被告人5名は,それぞれ本件発覚直後から行われた捜査機関による任意の事情聴取においては,会社の利益を考えて会社ぐるみの犯行であることや役員であるFらの関与を否定していたものの,その後逮捕・勾留されてからは,F及びGの両役員の本件犯行に対する関与を含めて事実を全て素直に認め,一貫して本件捜査に協力的であったもので,当公判廷においても各被告人は事実を全て認めて,Y食品の従業員,家族のみならず全国民に対して心から謝罪し,今後は自己の犯した罪の重さを感じながら生きていきたいなどと述べていることからも,各被告人の誠実な反省の情が顕著に認められる。 また,被告人5名は,本件発覚後まもなく無給の休職処分を受け,その後,平成14年3月7日付で懲戒解雇の処分を受けることとなり,本来各被告人が退職すれば受けることができたであろう相当額の退職金を受けられなくなり,各被告人の生活設計は大きく狂い,本件発覚後,本件がマスコミ等で大々的に報道され,それまでに築き上げてきた社会的地位等を全て失い,さらには各被告人の家族は,妻がパート等で働いて生計を立てるなど生活環境の大きな変化にさらされることとなったものであって,被告人5名はいずれも相当の社会的な制裁を受けたものと認められる。 加えて, 告人の家族は,妻がパート等で働いて生計を立てるなど生活環境の大きな変化にさらされることとなったものであって,被告人5名はいずれも相当の社会的な制裁を受けたものと認められる。 加えて,被告人A及び被告人Dの両名には禁錮刑以上に処せられた前科はなく,他の被告人3名にあっては全く前科前歴が見当たらないこと,被告人5名とも,大学又は高校を卒業後本件犯行に至るまで,Y食品の従業員として「Y」ブランドに誇りを持ち,家庭生活の犠牲もかえりみず懸命にY食品に奉職し,一流企業の幹部職員として相応の社会生活を送ってきたことなど,各被告人にとって有利な事情も多く認められる。 4 そこで,以上2及び3で認定した諸事情を総合して考慮し,被告人5名に対し,それぞれ主文の懲役刑に処し,その刑事責任を明確にした上で,それぞれ3年間その刑の執行を猶予することとする。 (求刑・被告人5名について懲役2年)平成14年11月22日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸
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