平成19(行ウ)47 保有個人情報一部不開示決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年1月31日 名古屋地方裁判所 情報公開
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判決文本文15,887 文字)

平成19年(行ウ)第47号保有個人情報一部不開示決定処分取消等請求事件主文 処分行政庁が平成19年5月17日付けで原告に対してした自己情報一部開示決定(春刑発第308号)のうち,別紙の不開示部分C及びEを不開示とした部分を取り消す。 処分行政庁は,原告に対し,別紙の不開示部分C及びEの開示決定をせよ。 本件訴えのうち,別紙の不開示部分Bの開示決定の義務付けを求める部分を却下する。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 処分行政庁が平成19年5月17日付けで原告に対してした自己情報一部開示決定(春刑発第308号)のうち,別紙の不開示部分B,C及びEを不開示とした部分を取り消す。 処分行政庁は,原告に対し,別紙の不開示部分B,C及びEの開示決定をせよ。 第2事案の概要本件は,原告が,愛知県個人情報保護条例(平成16年愛知県条例第66号。平成19年愛知県条例第47号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)16条1項に基づき,愛知県警察本部長(処分行政庁)に対し,地上10階建ての独身寮から落下して死亡した長男の死亡現場を見分した調書等の開示を請求したところ,同本部長から,平成17年6月20日付け写真撮影報告書及び同年8月19日付け死体見分調書のうち別紙の不開示部分A~Eを除く部分を開示する旨の一部開示決定(春刑発第308号。以下「本件決定」という。)を受けたことから,本件決定のうち別紙の不開示部分B,C及びE(以下「本件不開示部分」という。)を不開示とした部分の取消しと本件不開示部分の開示決定の義務付けを求める抗告訴訟である。 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)(1) 原告の長男甲 E(以下「本件不開示部分」という。)を不開示とした部分の取消しと本件不開示部分の開示決定の義務付けを求める抗告訴訟である。 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)(1) 原告の長男甲(昭和49年▲▲月▲▲日生)は,愛知県警察本部に勤務し,愛知県a市bc丁目d番地e所在の10階建て独身寮(f)に住んでいたが,平成17年▲月▲日午前2時ころ,同独身寮の地上約30mの屋上から落下し,脳挫傷により死亡した(享年30)。 (2) 愛知県春日井警察署所属の警部補は,「死者の状況を明確にするため」という目的で,甲の死亡に係る平成17年6月20日付け写真撮影報告書(以下「本件写真撮影報告書」という。)を作成し,また,同警察署所属の巡査部長は,死体取扱規則(昭和33年国家公安委員会規則第4号)4条の規定により,甲の遺体について,同年8月19日付け死体見分調書(以下「本件死体見分調書」といい,本件写真撮影報告書と併せて「本件各文書」ともいう。)を作成した。本件死体見分調書に添付された「死体発見(認知)及び見分結果報告」(以下「本件報告書」という。)には,「見分官の判断」として,「事件性はなく,飛び降り自殺と判断された。」との記載がある。 なお,死体取扱規則4条1項は「前条の規定による報告を受けた警察署長は,すみやかに,警察本部長(警視総監又は道府県警察本部長をいう。)にその旨を報告したのち,その死体が犯罪に起因するものでないことが明らかである場合においては,その死体を見分するとともに死因,身元その他の調査を行い,死体見分調書(別記様式第1号)を作成し,又は所属警察官にこれを行わせなければならない。」と定めている。 (3) 原告は,平成18年4月4日,愛知県警察本部長に対し,本件条例16条1項に基づいて,①甲が死亡した現場を見分した調書,②甲の ,又は所属警察官にこれを行わせなければならない。」と定めている。 (3) 原告は,平成18年4月4日,愛知県警察本部長に対し,本件条例16条1項に基づいて,①甲が死亡した現場を見分した調書,②甲の遺体及び着衣を見分した記録,③甲の死因を自殺と認定した報告書等の開示(写しの交付)を請求した(以下,これを「本件開示請求」という。)。愛知県警察本部長は,本件開示請求に係る情報の記録された行政文書として本件各文書を特定した(以下,本件各文書に記録された情報を「本件保有個人情報」という。)。 (4) 愛知県警察本部長は,同月18日,本件保有個人情報は,本件条例15条1項に規定する「自己を本人とする保有個人情報」に該当しないとして,本件条例21条2項により,本件保有個人情報を開示しない旨の決定(春刑発第213-1号)をした。 (5) 原告は,同年5月12日,愛知県公安委員会に対し,上記不開示決定について審査請求をした。 愛知県個人情報保護審議会は,愛知県公安委員会から諮問を受けて,平成19年2月19日,本件保有個人情報は,甲の死亡原因を確認する根拠となるものであり,社会通念上,甲の親である原告自身の個人情報とみなし得るほど密接な関係にある情報ということができるから,原告を本件条例15条1項による開示請求権者と認めるのが相当であるとして,上記不開示決定を取り消して改めて開示決定等をすべきである旨の答申をした。 愛知県公安委員会は,同年4月27日,原告が本件条例15条1項に規定する開示請求権者であると認めることについて理由があるとして,上記不開示決定を取り消す旨の裁決をした。 (6) 愛知県警察本部長は,同年5月17日,上記裁決に従い,改めて本件開示請求に対して,本件各文書のうち別紙の不開示部分A~Eを除く部分を開示する旨の一部開示決定(本件決定)をし 旨の裁決をした。 (6) 愛知県警察本部長は,同年5月17日,上記裁決に従い,改めて本件開示請求に対して,本件各文書のうち別紙の不開示部分A~Eを除く部分を開示する旨の一部開示決定(本件決定)をした。 (7) 原告は,同年6月9日,本件決定のうち本件不開示部分を不開示とした部分の取消しと本件不開示部分の開示決定の義務付けを求める本件訴えを提起した。 (8) 原告及びその夫である乙は,甲が締結していた保険契約及び共済契約に基づき死亡保険金等の支払を求めたものの,いずれも甲の死亡が自殺によるものであるとして支給を拒否されたため,名古屋地方裁判所豊橋支部に保険金等の支払を求める訴えを提起したが(同支部平成17年(ワ)第311号),同請求を棄却する旨の判決の言渡しを受け,名古屋高等裁判所に控訴をしたが(同裁判所平成19年(ネ)第284号),控訴を棄却する旨の判決の言渡しを受け,現在,最高裁判所に上告中である(以下,これを「別件訴訟」という。)。 愛知県個人情報保護条例(本件条例)の定め(目的)1条この条例は,個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定め,実施機関の保有する個人情報の開示,訂正及び利用停止を請求する個人の権利を明らかにし,もって県政の適正な運営を図りつつ,個人の権利利益を保護することを目的とする。 (定義)2条この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 1号実施機関知事,教育委員会,選挙管理委員会,人事委員会,監査委員,公安委員会,労働委員会,収用委員会,海区漁業調整委員会,内水面漁場管理委員会,公営企業管理者,病院事業管理者及び警察本部長並びに県が設立した地方独立行政法人(地方独立行政法人法第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。 以下同じ。)をいう。 2号個人情報個人に関 会,公営企業管理者,病院事業管理者及び警察本部長並びに県が設立した地方独立行政法人(地方独立行政法人法第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。 以下同じ。)をいう。 2号個人情報個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。ただし,次のいずれかに該当するものを除く。 イ法人その他の団体に関する情報に含まれる当該法人その他の団体の役員に関する情報(当該法人その他の団体の機関としての情報に限る。)ロ事業を営む個人の当該事業に関する情報3号保有個人情報実施機関の職員(県が設立した地方独立行政法人の役員を含む。以下同じ。)が職務上作成し,又は取得した個人情報であって,当該実施機関の職員が組織的に利用するものとして,当該実施機関が保有しているものをいう。ただし,行政文書(愛知県情報公開条例第2条第2項に規定する行政文書をいう。以下同じ。)に記録されているものに限る。 4号事業者法人(国,独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。),地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)及び事業を営む個人をいう。 5号本人個人情報によって識別される特定の個人をいう。 (開示請求権)15条1項何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる。 (開示請求の手続)16条1項開示請求は,次に掲げる事項を記載した書面(以下「開示請求書」という。)を実施機関に提出してしなければならない。ただし,実施機関があらかじめ定めた保 ることができる。 (開示請求の手続)16条1項開示請求は,次に掲げる事項を記載した書面(以下「開示請求書」という。)を実施機関に提出してしなければならない。ただし,実施機関があらかじめ定めた保有個人情報の開示請求については,口頭により行うことができる。 1号~3号(省略)(開示義務)17条実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る保有個人情報に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが含まれている場合を除き,開示請求者に対し,当該保有個人情報を開示しなければならない。 1号(省略)2号開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ,それにより,開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが,開示することにより,なお開示請求者以外の個人の権利利益を侵害するおそれがあるもの。ただし,次のいずれかに該当する情報を除く。 イ法令若しくは条例の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報ロ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,開示することが必要であると認められる情報ハ当該個人が公務員等(国家公務員法第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法第2条第2項に規定する特定独立行政法人及び日本郵政公社の役員及び職員を除く。),独立行政法人等の役員及び職員,地方公務員法第2条に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人の役員及び職員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であ 役員及び職員を除く。),独立行政法人等の役員及び職員,地方公務員法第2条に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人の役員及び職員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分(当該公務員等の氏名に係る部分を開示することにより当該個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合及び当該公務員等が規則で定める職にある警察職員である場合にあっては,当該公務員等の氏名に係る部分を除く。)3~5号(省略)6号開示することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報7,8号(省略)(なお,知事の保有する個人情報の保護等に関する規則《平成17年愛知県規則第10号。以下「本件規則」という。》8条は,本件条例17条2号ハの規則で定める職について,「警部補以下の階級にある警察官をもって充てる職及びこれに相当する職」と定めている。) 争点 (1) 本件各文書のうち本件決定が不開示とした範囲。 (2) 本件決定が本件不開示部分を不開示としたことは適法か否か。 第3争点に関する当事者の主張 争点(1)について(原告の主張)(1) 本件死体見分調書に添付された本件報告書のうち,4項5行目以下(2/10頁),5項10行目以下(3/10頁),6項のうち5/10頁3行目以下の部分は,不自然な空欄となっているから,本件決定が不開示とした可能性がある。 4項5行目以下の部分については,家族構成として,甲の両親及び姉らに関して何らの記載がないのは不自然であり,かつ,仮に何も記載していないのが事実とすれば,3/10頁冒頭から記載されている「5 る。 4項5行目以下の部分については,家族構成として,甲の両親及び姉らに関して何らの記載がないのは不自然であり,かつ,仮に何も記載していないのが事実とすれば,3/10頁冒頭から記載されている「5発見時の状況」の項目が,当然に繰り上がって2/10頁12行目以下に続くはずである。 5項10行目以下(3/10頁)についても,仮に何も記載していないのであれば,4/10頁冒頭から記載されている「6生前の状況」の項目が,当然に繰り上がって3/10頁10行目以下に続くはずである。 (2) 本件決定が別紙の不開示部分Bとして不開示とした部分には,本件死体見分調書に添付された本件報告書中の「5発見時の状況」(3/10頁,10行目以下),「6生前の状況」(5/10頁,3行目以下)及び「9見分官の判断」(8/10頁,10行目以下20行目まで)中に,甲死亡に関する第三者証言が,証人名とともに記載されているものと推認される。なお,原告は,第三者証言の内容が明示されるのであれば,第三者の立場(たとえば寮生)など,証言適格性の判断に必要な事由はともかくとして,特定の個人としての識別情報までは求めない。 (被告の主張)(1) 原告は,本件死体見分調書に添付された本件報告書のうち,4項5行目以下(2/10頁),5項10行目以下(3/10頁),6項のうち5/10頁3行目以下の部分は,不自然な空欄となっていて,不開示部分の可能性がある旨主張するが,当該部分は何ら記載のない部分であり,愛知県警察本部長が不開示とした事実はない。 (2) 本件決定が別紙の不開示部分Bとして不開示とした部分は,本件死体見分調書に添付された本件報告書の「発見者」欄の巡査部長の職にある警察官の生年月日及び年齢のみである。原告は,別紙の不開示部分Bとして不開示とした部分には,第三者証言及び証人名 した部分は,本件死体見分調書に添付された本件報告書の「発見者」欄の巡査部長の職にある警察官の生年月日及び年齢のみである。原告は,別紙の不開示部分Bとして不開示とした部分には,第三者証言及び証人名が含まれる旨主張するが,別紙の不開示部分Bは「開示請求者以外の第三者の生年月日及び年齢」を不開示とするものであるから,原告の主張は理由がない。 争点(2)について(被告の主張)(1) 別紙の不開示部分C及びEについてア本件条例17条6号は,不開示情報の一つとして「開示することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を規定し,いわゆる犯罪捜査等情報を不開示とする旨規定している。 同号の趣旨は,公共の安全と秩序を維持することは,国民全体の基本的な利益であり,開示することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるにつき相当の理由がある情報を不開示とするものである。 そして,「実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」とは,犯罪の予防,鎮圧,捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのある情報に係る開示・不開示の判断において,それを開示することにより将来的に予想される犯罪等の発生に関する専門的,技術的判断を要するなどの特殊性が認められることから,その性質上,上記情報の開示・不開示の判断において,実施機関の第1次的な判断を尊重することを示しているものであり,このことは,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号及び4号が,国の安全等に関する情報及び公共の安全等に関する情報の不開示を定めるについて「……おそれがあると行政機関の しているものであり,このことは,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号及び4号が,国の安全等に関する情報及び公共の安全等に関する情報の不開示を定めるについて「……おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」と記載して,行政機関の長の第1次的な判断を尊重することを示しているのと同様に考えることができる。 したがって,本件条例17条6号に当たるとして不開示にした決定が違法となるかどうかを審理,判断するにおいては,同決定が事実上の基礎を全く欠くか,又は事実に対する評価が全く合理性を欠くこと等により,社会通念に照らして全く妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し,それらが認められる場合に限り,実施機関の判断に裁量権の逸脱又は濫用があったものとして,これを違法と判断することができると解すべきである。 イ本件各文書の記載内容は,次のとおりである。 (ア) 本件死体見分調書は,死体取扱規則を根拠として,非犯罪死体であることが明らかな場合に作成するものであり,行政文書として存在する文書である。 本件死体見分調書が死体取扱規則に則った非犯罪死体であることが明らかな場合に作成される行政上の文書であっても,その内容は医学的見地に立った死因の特定に至るものだけではない。行政検視であると司法検視であると問わず,その実施要領は何ら変わるものではなく,その記載内容はまさしく,捜査手法等について記載されているのであるから,本件死体見分調書は,警察の捜査手法等が記載された捜査書類としての性質を有するものであることは明らかである。 本件死体見分調書に添付されている飛降現場断面図や現場見取図は,死体の状況,現場の状況及び遺留物等の詳細な位置関係が記載されているものであり,これらの図面に記載されている死体の状況,現場の状況及び遺留物等 体見分調書に添付されている飛降現場断面図や現場見取図は,死体の状況,現場の状況及び遺留物等の詳細な位置関係が記載されているものであり,これらの図面に記載されている死体の状況,現場の状況及び遺留物等の詳細な位置関係は,犯罪捜査を行う上で重要な捜査の秘密事項となるものである。 (イ) 本件写真撮影報告書は,甲の死体の状況や行政検視の状況等を疎明するため写真撮影されたものであり,本件死体見分調書を補完するものとして作成された書類である。そのため,本件写真撮影報告書についても,不開示部分は,警察が甲の死体につき,犯罪死体であるか否かを判別するために着眼する部位等が撮影されているものであり,まさしく,死体の状況につき,警察の捜査手法等が記録された捜査書類である。 ウ以上のとおり,本件各文書は,刑事訴訟に関する重要な書類としての性質を有する文書であり,別紙の不開示部分C及びEには「犯罪捜査に係る着眼点,捜査手法及び関心事項に関する情報」が記載されているものである。 そして,別紙の不開示部分C及びEの捜査手法等にわたる部分が開示されることとなれば,見分官においてこの種事案の自殺と他殺との判断に際し着眼する死体の状況や現場の状況等が白日の下となり,犯罪行為を敢行又は企図する者が対抗措置や防衛措置を講じ,証拠隠滅を図ることなどが十分に予測され,さらに,本件事案が犯罪捜査に至った場合,将来の捜査及び公訴維持に多大な支障の生ずるおそれがあることは明らかである。 愛知県警察本部長は,捜査に携わる者の立場から,捜査手法等にわたる部分は,将来の犯行を容易にするおそれ,すなわち,公共の安全と秩序の維持に支障を来すおそれがあると認め,別紙の不開示部分C及びEにつき,これを不開示としたものであって,適法な処分である。 (2) 別紙の不開示部分Bについて本件条例17条2 わち,公共の安全と秩序の維持に支障を来すおそれがあると認め,別紙の不開示部分C及びEにつき,これを不開示としたものであって,適法な処分である。 (2) 別紙の不開示部分Bについて本件条例17条2号は,開示請求者以外の個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの等については第三者個人情報として不開示とすることができることを定めている。本件条例17条2号のただし書イ~ハにおいては,第三者の個人情報に該当するものであっても,例外的に開示することのできる情報について定め,そのうち,ただし書ハは一定の警察職員氏名を不開示とすることを定めており,本件規則8条は,氏名を不開示とする警察職員の範囲を,警部補以下の階級にある警察官をもって充てる職及びこれに相当する職にある警察職員と定めている。 これは,警察職員のうち一定の職にあるものについては,その職務の特殊性から,氏名を開示することにより,当該警察職員の私生活等に影響を及ぼす可能性が高いことから,その氏名を開示の対象としないこととしたものである。 以上の理由から,本件決定では,本件死体見分調書に添付された本件報告書の「発見者」欄の巡査部長の職にある警察官の生年月日及び年齢(別紙の不開示部分B)を不開示にしたものであって,適法な処分である。 (原告の主張)(1) 別紙の不開示部分C及びEについて本件決定は,別紙の不開示部分C及びEが,本件条例17条6号に該当し,「犯罪捜査に係る着眼点,捜査手法及び関心事項に関する情報であって,開示することにより犯罪行為を敢行または企図する者が対抗措置や予防措置を講じ,証拠隠滅を図る等,将来の捜査に支障が生じるおそれがあると認められる」ことを不開示の理由とする。 しかし,本件条例17条 開示することにより犯罪行為を敢行または企図する者が対抗措置や予防措置を講じ,証拠隠滅を図る等,将来の捜査に支障が生じるおそれがあると認められる」ことを不開示の理由とする。 しかし,本件条例17条は,保有個人情報開示を原則としており,開示することにより第三者の権利利益を侵害し,あるいは事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合を例外的に除外しているにすぎない。同条6号も「開示することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」と限定している。 そもそも,本件各文書は,甲の死亡を自殺と認定して,その事件性を否定したものであるから,本件条例17条6号が本来対象としている事件性を有する文書類とは性格を異にする。 仮に,本件各文書が,一応,同号の対象に含まれるとしても,本件開示請求は甲の死亡原因を解明するため,親として当然の心情によるもので,他の不正・不法な意図に基づくものでないことが明らかである。 いずれにしても,実施機関が,将来の捜査などに支障を及ぼすおそれがあると認めるだけでは不十分であり,当該事由は相当な理由であることを必要とし,相当な理由とは,開示を原則とし不開示事由を極力限定している条文の趣旨からすれば,客観的かつ具体性を具備した理由と解すべきである。本件決定の不開示理由は,理由を主観的かつ抽象的に述べるのみで,相当な理由とはいえない。 (2) 別紙の不開示部分Bについて本件決定は,別紙の不開示部分Bが,本件条例17条2号に該当し,「開示請求者以外の個人に関する情報であって,開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが,開示することにより,なお開示請求者以外の個人の権利利益を侵害するおそれがある」ことを不開 該当し,「開示請求者以外の個人に関する情報であって,開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが,開示することにより,なお開示請求者以外の個人の権利利益を侵害するおそれがある」ことを不開示の理由とする。 この「第三者」の趣旨に関し,春日井警察署警務課の丙に電話で確認したところ,「第三者の氏名及び証言内容」との説明を受けた。したがって,本件決定が事件性を否定する際に根拠とした第三者証言を意味することは明らかであり,本件開示請求が保険金等の請求権(財産権)確保を目的としていることからして,その帰趨に影響を及ぼす第三者証言は,本件条例17条2号の不開示の除外事由ロに当たる。 第4当裁判所の判断 争点(1)について(1) 本件死体見分調書について本件決定は,本件死体見分調書においては,①1枚目の上から4行目の巡査部長の氏名(別紙の不開示部分A),②添付の本件報告書の1頁(1/10頁)の最上行の係長の印影部分(別紙の不開示部分A),③同頁「発見者」欄の巡査部長の職にある警察官の氏名(別紙の不開示部分A),④同頁「発見者」欄の同警察官の生年月日,年齢(別紙の不開示部分B),⑤同頁「見分官」欄の警察官の氏名(別紙の不開示部分A),⑥同6頁(6/10頁)の「死体の状況」欄の4行目「靴下等は履いておらず,」の後から同7頁(7/10頁)11行目までの部分(別紙の不開示部分C),⑦同8頁(8/10頁)の「見分官の判断」欄の5行目「係の係員(事務吏員)であり,」の後から16行目「事件性はなく,」の前までの部分(別紙の不開示部分C),⑧同9頁(9/10頁)の「飛降現場断面図」の全部(別紙の不開示部分C),⑨同10頁(10/10頁)の「現場見取図」の全部(別紙の不開示部分C)を不開示にしたものと認められる(乙1,調査嘱託回答書)。 原告は,本件死体 )の「飛降現場断面図」の全部(別紙の不開示部分C),⑨同10頁(10/10頁)の「現場見取図」の全部(別紙の不開示部分C)を不開示にしたものと認められる(乙1,調査嘱託回答書)。 原告は,本件死体見分調書に添付された本件報告書のうち,4項5行目以下(2/10頁),5項10行目以下(3/10頁),6項のうち5/10頁3行目以下の部分は,不自然な空欄となっていて,不開示部分の可能性がある旨主張するが,愛知県個人情報保護審議会からの調査嘱託回答書によれば当該部分は当初から何も記載されていなかったものと認められ,原告の主張や関係各証拠をしんしゃくしても,当該部分に何らかの記載があったものと認めることはできない。 (2) 本件写真撮影報告書について本件写真撮影報告書においては,本件不開示部分のうち,別紙の不開示部分Eに当たるのは写真番号7~18の写真であり,この点は当事者間に争いがない。 争点(2)について(1) 別紙の不開示部分C及びEについてア本件条例17条6号該当性の判断の在り方について本件条例は,個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定め,実施機関の保有する個人情報の開示等を請求する個人の権利を明らかにし,もって県政の適正な運営を図りつつ,個人の権利利益を保護することを目的として制定され(1条),その観点から,実施機関の保有する自己を本人とする保有個人情報について,17条各号に掲げる不開示情報が記載されている場合を除いて,原則として開示することを義務付けている(同条柱書)。 そして,17条6号は「開示することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報と規定しているところ,その趣旨は,公共の安全と秩序の 査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報と規定しているところ,その趣旨は,公共の安全と秩序の維持の確保は県民全体の基本的な利益であり,これらの利益を守ることは地方公共団体である愛知県にとって重要な責務であることから,これらの利益を保護するため,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある情報を不開示とするものと解される。そして,同号が「おそれがある情報」と規定せず,「おそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」と規定したのは,犯罪の予防,鎮圧又は捜査等に支障を及ぼすか否かの判断は,専門的,技術的判断を要するなどの特殊性があることから,実施機関の第1次的な判断を尊重したものと解される。 したがって,17条6号に該当するとしてされた不開示処分が違法となるのは,実施機関の第1次的な判断が合理性のある判断として許容される限度を超える場合,すなわち,当該処分が裁量権を逸脱又は濫用したと認められる場合に限られるというべきであるが,17条6号が実施機関の判断について「相当の理由がある」ことを要件としていることや,本件条例が保有個人情報について開示することを原則としつつ,17条各号に掲げる不開示情報について例外的に不開示としていることにかんがみると,実施機関が不開示とした根拠,理由等に照らしてその判断がそもそも合理性のある判断として許容される限度内のものであると認められないときは,当該不開示処分は,裁量権の逸脱又は濫用があったものとして違法であるというべきである。 イ被告は,本件死体見分調書に添付された本件報告書中の「死体の状況」欄,「見分 のであると認められないときは,当該不開示処分は,裁量権の逸脱又は濫用があったものとして違法であるというべきである。 イ被告は,本件死体見分調書に添付された本件報告書中の「死体の状況」欄,「見分官の判断」欄には,警察の捜査手法等について記載されており,飛降現場断面図や現場見取図は,死体の状況,現場の状況及び遺留物等の詳細な位置関係が記載されているから,不開示部分の記載内容は犯罪捜査を行う上で重要な捜査の秘密事項となるなどと主張する。また,本件写真撮影報告書は,甲の死体の状況や行政検視の状況等を疎明するため写真撮影されたものであり,不開示部分には,警察が甲の死体につき,犯罪死体であるか否かを判別するために着眼する部位等が撮影されており,まさしく,死体の状況につき,警察の捜査手法等が記録された捜査書類であると主張する。 そこで,検討するに,まず,本件死体見分調書に添付された本件報告書には,「見分の結果」として「脳挫傷(自殺)」と記載され(1/10頁),「見分官の判断」として「事件性はなく,飛び降り自殺と判断された。」と記載されており(8/10頁),甲が10階建て独身寮から落下した原因を飛び降り自殺であると判断している。また,当時春日井警察署の刑事課長代理であった丁の別件訴訟における証言(甲9)によれば,独身寮の屋上は,4方を高さ約1.2mのフェンスで囲まれているところ,フェンスの上端に甲のスリッパの紋様と一致する足跡が付いていたこと,その場所から約20m移動したところの屋上のへりに腰掛けたような跡があったこと,その腰掛けたような跡がある場所は,正に落下した場所の真上に当たること,死体の状況においても防御による手足の損傷が認められないことなどの事情から,警察署として甲の落下は自殺によるものと判断したことが認められる。 したがって,甲の死亡の に落下した場所の真上に当たること,死体の状況においても防御による手足の損傷が認められないことなどの事情から,警察署として甲の落下は自殺によるものと判断したことが認められる。 したがって,甲の死亡の調査に関わった見分官を含む警察官は,いずれも甲の落下の原因を自殺と判断しており,現時点で,甲の死亡について将来犯罪捜査が開始される具体的な可能性は認められないから(仮に,本件各文書に犯罪性をうかがわせる情報が記載されているのであれば,警察署としては捜査を尽くすべきであって,自殺と判断すべきものではないことは明らかである。),別紙の不開示部分C及びEを開示することにより,甲の死亡に関する将来の捜査等に具体的な支障が生ずるおそれがあるものとはいえず,愛知県警察本部長がこのような支障が生ずるおそれがあると認めたとしても,その判断が合理性のあるものとして許容される限度内のものであるとは直ちに認められず,愛知県警察本部長の当該判断について相当の理由があるものということはできない。 次に,犯罪死体であるか否か(自殺か他殺か)を判別するために着眼する部位等の警察の捜査手法等が記録されているという主張は,結局,捜査機関が死体を見分する際の一般的な着眼点が開示されることをもって,将来,一般的に,自殺を装った殺人の敢行や罪証隠滅を容易にし,将来の捜査等に一般的な支障が生ずるおそれがある旨をいうにすぎないものである。本件死体見分調書の記載項目が死体を司法検視した場合に作成される検視調書(様式第1号。乙3の2)のそれと同様であるとしても,そもそも,検視調書自体は,捜査機関が内部文書として用いるものではなく,刑事事件になれば証拠として提出することを予定しているものであるし,上記の着眼点も刑事裁判において主張立証の対象とされるものであって,そうした捜査上の一般的な着眼点 部文書として用いるものではなく,刑事事件になれば証拠として提出することを予定しているものであるし,上記の着眼点も刑事裁判において主張立証の対象とされるものであって,そうした捜査上の一般的な着眼点自体を開示することにより,将来の捜査等に具体的な支障が生ずるおそれがあるものとは容易に認めることができない。また,本件各文書に一般的な着眼点以外の捜査機関のみが保有する特別な着眼点が記載されているとの事情も認められない。したがって,別紙の不開示部分C及びEを開示することにより,将来の捜査等に支障が生ずるおそれがあると愛知県警察本部長が認めたとしても,その判断が合理性のあるものとして許容される限度内のものであるとは直ちに認められず,愛知県警察本部長の当該判断について相当の理由があるものということはできない。 ウそうすると,本件決定のうち別紙の不開示部分C及びEを不開示とした愛知県警察本部長の判断は,合理性のある判断として許容される限度を超え,裁量権を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法な処分というべきであるから,同部分の取消請求は理由がある。 そして,本件条例17条柱書によれば,上記部分について開示の決定をすべきことが明らかであるから,同部分の開示決定の義務付けを求める請求は,行政事件訴訟法3条6項2号,37条の3第5項に照らして理由がある。 (2) 別紙の不開示部分Bについてア別紙の不開示部分Bに該当するとして不開示とした部分は,前記1のとおり,本件死体見分調書のうち「発見者」欄の巡査部長の職にある警察官の生年月日,年齢であるところ(原告は,同不開示部分には第三者証言及び証人名が含まれる旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく,採用することができない。),同不開示部分が,本件条例17条2号の「開示請求者以外の個人に関する情報であって 開示部分には第三者証言及び証人名が含まれる旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく,採用することができない。),同不開示部分が,本件条例17条2号の「開示請求者以外の個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ,それにより,開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」に該当することは明らかである。 そして,同号ハは,開示請求者以外の個人が,地方公務員であり,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分を不開示事由から除外しているが,本件規則8条が定める「警部補以下の階級にある警察官をもって充てる職及びこれに相当する職」にある警察職員の氏名に係る部分を同号ハの対象から除外し不開示とすることを認めており,上記「発見者」欄の巡査部長の職にある警察官の生年月日,年齢は,警部補以下の階級にある警察官を識別することができることとなる情報であるから,同号ハの除外事由に該当しないことが明らかである。同号イ,ロの除外事由に該当するものとも認められない。 したがって,本件決定のうち,本件死体見分調書に添付された本件報告書のうち「発見者」欄の巡査部長の職にある警察官の生年月日,年齢(別紙の不開示部分B)を不開示とした部分は適法である。 イそうすると,本件決定のうち別紙の不開示部分Bを不開示とした部分の取消請求は理由がない。 そして,別紙の不開示部分Bの開示決定の義務付けを求める訴えは,同部分を不開示とした決定が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在であるときに限って提起することができるものであるから(行政事件訴訟法37条 開示部分Bの開示決定の義務付けを求める訴えは,同部分を不開示とした決定が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在であるときに限って提起することができるものであるから(行政事件訴訟法37条の3第1項),その要件を欠いて不適法である。 結論 以上によれば,本件決定のうち別紙の不開示部分C及びEを不開示とした部分の取消し及びその開示決定の義務付けを求める請求は理由があるから認容し,別紙の不開示部分Bの開示決定の義務付けを求める訴えは不適法であるから却下し,原告のその余の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部松並重雄裁判長裁判官前田郁勝裁判官片山博仁裁判官

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