平成22(行ウ)741 行政処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年6月6日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-84291.txt

判決文本文19,291 文字)

- 1 -平成25年6月6日判決言渡平成22年(行ウ)第741号行政処分取消等請求事件主文 1 被告が平成22年7月9日付けで原告に対してした懲戒処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,386万1239円及びこれに対する平成23年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを5分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる事実及び理由第1 請求 1 主文1項同旨 2 被告は,原告に対し,557万0198円及びこれに対する平成23年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告がその職員である原告に対し平成22年7月9日付けで停職3月の懲戒処分(以下「本件停職処分」という。)を行ったところ,原告が,被告に対し,本件停職処分の取消しを求めるとともに,本件停職処分等に伴う減収分や慰謝料等として557万0198円の損害賠償の支払を求めている事案である。 2 前提事実(争いのない事実に加え,該当箇所掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)(1) 当事者- 2 -原告は,平成2年4月1日,被告の職員として採用され,平成18年4月1日,水道局A営業所に所長として配属され,平成21年2月23日,同営業所が廃止されるとともにB営業所が新設された際,B営業所長に任命され,同年7月15日まで,同営業所に勤務した。 (2) 本件停職処分被告は,平成22年7月9日,原告に対し,原 同営業所が廃止されるとともにB営業所が新設された際,B営業所長に任命され,同年7月15日まで,同営業所に勤務した。 (2) 本件停職処分被告は,平成22年7月9日,原告に対し,原告が「平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間に,少なくとも72回にわたり,電車の遅延等を理由として出勤時限に遅れた上,72回のうち71回について,部下の職員に指示して,出勤記録を出勤の表示に修正させた」ことが地方公務員法32条及び35条の規定に違反し,同法29条1項1号から3号までの規定に該当するとして,停職3月の懲戒処分(本件停職処分)を行った。(甲1)(3) 勤務時間及びその管理等ア東京都水道局(以下,単に「水道局」という。)の職員は,局長を除き,「東京都水道局職員の勤務時間,休日,休暇等に関する規程」(乙2。以下「勤務時間等規程」という。)が適用され,勤務時間等規程に定められている勤務時間に従って勤務するものとされている。 そして,平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間においては,勤務時間等規程4条1項及び別表第一の定めにより,営業所に勤務する職員の勤務時間は午前8時30分から午後5時15分まで,休憩時間45分とされていた。 イ 「東京都水道局処務規程」(乙1。以下「処務規程」という。)52条は,「職員は,出勤したときは,あらかじめ出勤時限までに出勤しない理由を東京都水道局職員の勤務時間,休日,休暇等に関する規程(平成7年東京都水道局管理規程第4号。以下「勤務時間等規程」という。)別記第2号様式に定める休暇・職免等処理簿等により届け出た場合を除き,職員- 3 -カード等により,自ら出勤の記録に必要な所定の操作を行わなければならない。」と規定している。 そして, 記第2号様式に定める休暇・職免等処理簿等により届け出た場合を除き,職員- 3 -カード等により,自ら出勤の記録に必要な所定の操作を行わなければならない。」と規定している。 そして,「東京都水道局人事情報管理システムによる出勤記録事務処理要領」(甲6,91。以下「事務処理要領」という。)5条により,営業所においては,あらかじめ出勤時限までに出勤しない理由を所定の手続により届け出た場合を除き,職員は自己の勤怠を自分で営業所に設置されているカードリーダに自ら職員カードを挿入するか,自分の職員番号をカードリーダのテンキーから入力して記録するものとされ,この職員カードの挿入又は職員番号の入力により,東京都水道局人事情報管理システム(以下「局システム」という。)の出勤データベースにこれが記録される。 ウ処務規程55条は,「職員は,交通機関の事故等の不可抗力の原因により勤務できないときは,その旨を速やかに連絡し,出勤後直ちに別記第12号様式の2による事故簿により届け出なければならない。」と規定している。 エ 「東京都水道局職員の出勤記録の整理に関する規程」(甲4。以下「記録整理規程」という。)3条は,局システムにおける出勤記録の整理保管は,営業所(支所と同一位置に設置されるものを除く。)においては事業所長である営業所長(以下,このような意味における営業所長を「整理者」という。)が行うが,整理者はその指定する職にある者にこれを行わせることができるとしている。 また,記録整理規程4条,事務処理要領6条は,整理者に指定された出勤記録の整理保管者は,原則として毎朝午前9時過ぎに,局システムにおいて,職員の出勤の表示の有無を確認し,出勤の表示又は勤務状況の表示がない職員については,未入力の事由を確認の上,局システ された出勤記録の整理保管者は,原則として毎朝午前9時過ぎに,局システムにおいて,職員の出勤の表示の有無を確認し,出勤の表示又は勤務状況の表示がない職員については,未入力の事由を確認の上,局システムに勤務状況を入力するものとしている。なお,被告水道局が平成14年2月に作成した「勤務状況管理システム操作マニュアル」(甲21)は,カードリーダ- 4 -を通し忘れた職員がいた場合には,当該職員が出勤時限までに出勤していたことを確認し(方法は各所属で定める。),「出勤」を新規で登録するものとしている。 (4) 局システムの記録の状況等ア平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間の局システムにおける原告の出勤記録の状況は,別紙一覧表(被告準備書面(1)添付の原告の遅参等一覧表に同じ。ただし,平成19年4月13日の「出勤記録の修正内容等」欄を「『*』(記録なし)」と訂正し,平成18年4月3日ないし同月28日の備考欄を削除したもの。)のとおりであり,出勤記録が記録なしを意味する「*」から出勤を意味する「○」に修正入力された日が88日,そのうち修正入力を行った者が原告の部下職員(C,D,E,F,G)であった日が60日,修正入力を行った者が不明である日が28日あった(乙11ないし13)。また,事故欠勤の手続が行われた日が16日あった(乙14)。 被告が本件停職処分の理由として認定した72回の遅参は,別紙一覧表の「遅参等」欄に「遅参」と記載されている72日であるが,これは,上記修正入力された88日に平成19年4月13日を加えた89日のうち,平成18年4月中の16日(職員カードによる操作ができなかった可能性がある。)と平成20年12月17日(前夜が夜勤であり,出勤時限に在席していた可能性がある。)の合計17日を除い えた89日のうち,平成18年4月中の16日(職員カードによる操作ができなかった可能性がある。)と平成20年12月17日(前夜が夜勤であり,出勤時限に在席していた可能性がある。)の合計17日を除いた72日である。また,被告が本件停職処分の理由として認定した71回の出勤記録の修正指示は,上記72日のうち,平成19年4月13日を除いた71日である。 イ A営業所では,遅くとも平成19年4月13日以降,営業所職員の勤怠(在席の有無及び出張,年休等の不在の理由)を一覧表にした「A営業所出勤状況総括表」を日毎に作成し,営業所長である原告の決裁を得ることになっており,B営業所では,同様に営業所職員の勤怠(在席の有無及び- 5 -出張,年休等の不在の理由)を一覧表にした「出勤簿整理表」を日毎に作成し,営業所長である原告の決裁を得ることになっていたが,平成19年4月13日から平成21年6月25日までの間において,被告が原告の遅参を認定した50日のうち,9日分の「A営業所出勤状況総括表」又はB営業所の「出勤簿整理表」(乙6の5,7,27,31,55,57,乙7の4,8,9)には原告の押印がなく,その余の41日分には原告の押印がある。 3 争点及びこれに対する当事者の主張の要旨(1) 処分事由の存否(争点1)(被告の主張)ア 72回の遅参について平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間において,原告本人によるカードリーダへの出勤記録の入力がなされていない日のうち,休暇,出張,職務専念義務免除等の事由がない日は合計105日ある。このうち,原告本人が自分で入力した事故欠勤が16回,人事情報管理システムのデータベースに記録された出勤記録の修正がなされたものが88回,出勤記録がないままとなってい 由がない日は合計105日ある。このうち,原告本人が自分で入力した事故欠勤が16回,人事情報管理システムのデータベースに記録された出勤記録の修正がなされたものが88回,出勤記録がないままとなっていたものが1回ある。記録修正がなされた88回のうち,平成18年4月3日から同月28日までの16回については,同月1日付けで再び水道局に勤務することとなった原告が,A営業所長に就任した直後で,職員カードの所属データ書換えのため,職員カードの挿入ができなかった可能性があり,また,平成20年12月17日については,原告が前夜の夜間勤務から引き続き勤務した可能性があることから,本件停職処分の対象から外した。 これらを除く記録修正に係る71回及び出勤記録がないままとなっていたもの1回の計72回が本件停職処分の対象であり,これらの72回について,原告が出勤時限に遅れてきていたことは,F証人,D証人の証言- 6 -からも明らかである。 また,原告は,交通機関の事故により出勤時限に遅れたなどと主張するが,原告は,16回の事故欠勤を自ら入力しているし,他の職員の事故欠勤や事故簿を決裁しているのであるから(乙23,24の1ないし8),電車が遅延し,出勤時限に遅れた場合には事故欠勤の処理が必要であることを認識していたことは明らかであるところ,本件停職処分の対象日については,事故欠勤の届出をしておらず,代行入力もされていないのであるから,交通機関の事故により遅れたものであったとしても,遅参と評価されるのは当然である。原告主張の出勤時限前からの出張についても,そのような出張命令は出ていないのであるから,遅参と評価されるのは当然であり,その余の原告の弁解についても,原告主張の事実は確認できないし,原告が職員カードの挿入又は職員番号による入力をす いても,そのような出張命令は出ていないのであるから,遅参と評価されるのは当然であり,その余の原告の弁解についても,原告主張の事実は確認できないし,原告が職員カードの挿入又は職員番号による入力をすることができなかったことを示すものはなく,出勤時限に遅れた正当な理由になるものではない。 イ 71回の出勤記録の修正指示について原告は,部下職員に対し出勤記録の修正を指示したことを否認しているが,原告の部下職員であるF証人及びD証人の証言によれば,原告が出勤記録の修正を指示していたことは明らかである。また,原告は,16回の事故欠勤を自ら入力しているし,他の職員の事故欠勤や事故簿を決裁しているのであるから(乙23,24の1ないし8),電車が遅延し,出勤時限に遅れた場合には事故欠勤の処理が必要であることを認識していたことは明らかであるところ,同じく電車の遅延であるにもかかわらず,事故欠勤ではなく,出勤記録の修正がされているのは,原告が出勤記録の修正を指示したことによるものである。さらに,原告は,原告を含む全職員の毎朝の出勤状況を記録した「出勤状況総括表」又は「出勤簿整理表」に確認印を押印していたから,本件停職処分の対象日の自分の勤怠処理が事故- 7 -欠勤となっていないことを認識していたはずであるが,自分の勤怠処理を事故欠勤とすべきときには事故欠勤として処理されるようになるまで,担当者に対し注意をするという行為に出ておらず,このことも,担当者による原告の出勤記録の修正が原告の指示を受けたものであることを推認させるものである。部下職員が原告の不適切な修正指示に従っていたのは,普段から威圧的な態度で部下職員と接する原告の指示を拒否することができなかったためであり,部下職員からの反発がないことは,原告の不適切な修正指示がなさ 職員が原告の不適切な修正指示に従っていたのは,普段から威圧的な態度で部下職員と接する原告の指示を拒否することができなかったためであり,部下職員からの反発がないことは,原告の不適切な修正指示がなされたことと矛盾しない。 (原告の主張)被告の主張は,否認する。 本件停職処分の対象である72日の中には,原告が出勤時限に遅れたこともあるが,人身事故等の不可抗力による電車遅延等の正当な理由があり,遅参と評価すべきものではない。また,部下職員に対し出勤記録の修正を指示した事実は一切ない。 (2) 裁量権の逸脱・濫用の有無(争点2)(原告の主張)本件停職処分は,「懲戒処分の指針」や過去の懲戒処分例,監察結果報告書に指摘されている出勤記録の不適切事例等に比し,著しく重い処分であって,比例原則に違反している上,段階的な処分によって原告に悔悛の機会を与えることなく,4年3か月分をまとめて処分した点においても,裁量権を逸脱,濫用したものである。 (被告の主張)本件停職処分は,平素から局内の事情に通暁した水道局が,人事情報管理システム等のデータの確認や関係者への事情聴取等により事実を認定し,事情聴取等の弁明の機会の付与や,「懲戒処分の指針」(乙8)及び「欠勤等を繰り返す職員の取扱基準」(乙9),「欠勤等を行った職員の懲戒処分等- 8 -について」(乙10)等の所定の手続や適用基準を踏まえて行ったものである。 本件停職処分の理由となった原告の行為は,本人が正当な理由なく出勤時限に遅れたにもかかわらず,その事実を隠蔽するために出勤整理担当者に自らの出勤記録を出勤に修正するよう指示したという悪質な態様のものである。自己の勤怠記録を不適正に修正することは,出勤時限までに出勤し,出 たにもかかわらず,その事実を隠蔽するために出勤整理担当者に自らの出勤記録を出勤に修正するよう指示したという悪質な態様のものである。自己の勤怠記録を不適正に修正することは,出勤時限までに出勤し,出勤の操作をするという人事上の基本的なルールに反するものであり,ましてや原告は,本来管理職として部下職員の勤怠を管理し,厳正に監督すべき立場にある者であるから,その規律違反は重大なものである。そこで,原告のこれまでの勤務状況,処分直前の勤務状況に特段問題がなかったことも加味した上で,「懲戒処分の指針」,「欠勤等を繰り返す職員の取扱基準」などに基づき停職3月という処分を行ったものであるから,社会観念上著しく妥当を欠くというような事情は認められない。 また,本件停職処分の量定(停職3月)は,他の処分事例と比較しても妥当な結論であるし,原告指摘の監察結果報告書等に記載の出勤記録の不備は,制度の理解不足や不注意等の意図的な不正行為はなかったものや,出勤時限に出勤していたが出勤時に所定の操作をしていなかったもの,事故欠勤の届出はなされているが遅延証明書が保管されていなかったものなどであり,本件停職処分の理由となった原告の行為とは根本的に異なるものである。 (3) 損害賠償請求の可否(争点3)(原告の主張)被告は,原告に対し,前記のとおり,違法な本件停職処分を行った上,本件停職処分を報道機関に公表し,報道機関に対し「最大15分遅れた。すべて通勤電車が遅れたために遅刻した。遅延を証明するのが面倒で部下に修正するのを指示した。」と事実と異なる内容を公表した。 - 9 -このような被告の違法行為により,原告は,次のアないしカのとおり,557万0198円を下らない損害を被ったものであるから,原告は,被告に対し,55 事実と異なる内容を公表した。 - 9 -このような被告の違法行為により,原告は,次のアないしカのとおり,557万0198円を下らない損害を被ったものであるから,原告は,被告に対し,557万0198円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年1月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 ア期末勤勉手当等の返納分 86万3449円被告は,平成22年10月8日,違法な本件停職処分に基づき,原告の過去の期末勤勉手当等の返納を決定し,原告はこれに基づき86万3449円を返納した(甲58)。 イ本件停職処分中の給与(3か月分) 183万4086円本件停職処分当時の原告の例月給与は61万1362円であり,その3か月分は183万4086円である。 ウ本件停職処分による期末勤勉手当の減額 76万3704円本件停職処分により,平成22年12月1日を基準とする同月10日支給の期末勤勉手当の支給率が0.5となり,勤勉手当の期間率(本来は1)の削減割合が0.75となった。そこで,次の金額が減額となった。 (ア) 期末手当減額分期末手当=(給料月額+扶養手当+地域手当+職務段階別加算額(給料の月額×(1+地域手当支給割合)×加算割合)+管理職加算額)×支給率×支給割合(429,300+91,962+(429,300×(1+0.18)×0.15)+81,600)×0.5×1.5月=50万9136円(イ) 勤勉手当減額分勤勉手当=(給料月額+地域手当+職務段階別加算額+管理職加算額)×期間率×成績率- 10 -(429,300+91,962+(429,3 (イ) 勤勉手当減額分勤勉手当=(給料月額+地域手当+職務段階別加算額+管理職加算額)×期間率×成績率- 10 -(429,300+91,962+(429,300×(1+0.18)×0.15)+81,600)×0.75×0.5月=25万4568円エ本件停職処分による逸失利益 68万6435円原告は,平成23年4月1日,5級66号から昇給する際に,通常であれば4号昇給して5級70号となるところ,本件停職処分により3号分を削減され,1号昇給として5級67号となった(甲106)。これにより,原告の給料月額は2300円過少なものとなり(甲108),原告は,例月給与及び期末勤勉手当並びに退職手当の支給額において,本件停職処分がなければ得られたはずの金額から減額支給を受けることになる。原告が定年退職まで勤務した場合の残存年数(15年)の例月給与及び期末勤勉手当並びに退職手当の支給額(59.2月)における逸失利益は,次のとおり,68万6435円である。 (ア) 例月給与分2300円×12月×15年=41万4000円(イ) 期末勤勉手当分2300円×3.95月×15年=13万6275円(ウ) 退職手当分2300円×59.2月=13万6160円オ慰謝料 100万円カ弁護士費用 50万円(被告の主張)原告の主張は,否認する。 本件停職処分が適法かつ有効であることは,前記のとおりであるから,本件停職処分が違法であることを前提とする損害賠償請求は理由がない。 また,被告においては,水道局長が地方公務員法に基づき職員に対して懲- 11 -戒処分等を行った場合には りであるから,本件停職処分が違法であることを前提とする損害賠償請求は理由がない。 また,被告においては,水道局長が地方公務員法に基づき職員に対して懲- 11 -戒処分等を行った場合には,これを公表することが「懲戒処分の指針」(乙8)第7によって定められており,本件もこの指針に従って公表されたものであり,何ら違法なものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(処分事由の存否)について(1) 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲18,19,90,乙3ないし5,16,25,26,証人D,同F,原告本人,該当箇所掲記の各書証。ただし,後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認定することができる。 ア Dは,平成18年4月1日から平成19年12月12日までの間,A営業所で,原告の部下として勤務した。 また,Fは,平成19年4月1日から平成21年7月15日までの間,A営業所及びB営業所で,原告の部下として勤務した。 イ原告は,平成18年4月1日付けで,中央卸売市場の管理職から水道局のA営業所長に転任したが,職員カードの所属データの書換えが未了であったこと等により,同月上旬から約1か月間は職員カードの挿入等の所定の操作を行っても出勤の記録が登録されない状態となっていた。 そこで,同営業所の勤怠事務担当者であったDは,同月上旬ないし中旬頃,同営業所のH庶務係長と相談の上,原告に対し,職員カードの挿入等の所定の操作を行っても出勤の記録が登録されない状態になっている旨を告げた。 その後,Dは,同年5月初め頃,原告の人事情報が登録された旨の連絡が人事部からあったことから,原告に対し,職員カードの挿入等の所定の操作を行えば出勤の記録が登録され ている旨を告げた。 その後,Dは,同年5月初め頃,原告の人事情報が登録された旨の連絡が人事部からあったことから,原告に対し,職員カードの挿入等の所定の操作を行えば出勤の記録が登録される状態になった旨を告げた。 ウ平成18年4月ないし5月の原告の出勤記録は,同年5月8日までの全- 12 -ての出勤日について出勤記録の修正がされ,同月9日以降,原告自身が職員カードの挿入等の所定の操作を行ったことによる出勤の記録が登録されている。(乙11)エ原告についての休暇・職免等処理簿データ(乙18)には,同年4月13日午前の年次有給休暇について,「申請年月日」欄に同日,「申請者処理年月日」欄及び「所属長処理年月日」欄の双方に同年5月1日と入力され,同月2日の年次有給休暇について,「申請年月日」欄に同日,「申請者処理年月日」欄及び「所属長処理年月日」欄の双方に同月1日と入力されている。 オ原告についての平成18年用休暇・職免等処理簿(甲47)には,同年4月13日午前の年休の申請月日として「4・13」,同年5月2日の年休の申請月日として「5・2」,同年6月2日の年休の申請月日は「5・29」,同年6月21日の年休の申請月日は「6・19」と記載されている。 カ原告は,平成18年5月12日は午前9時10分ころ,同月19日は午前9時ころからA営業所から100メートルないし250メートル程度離れた近隣の小学校における水道教室に参加した。(甲83)キ平成18年7月10日,A営業所に対し,業務監察が実施された。(甲84)ク本件停職処分において,原告が出勤時限に遅れたと認定された平成19年4月13日,原告は,午前は出張により不在であった。(乙6の1)ケ平成19年5月ころ,原 された。(甲84)ク本件停職処分において,原告が出勤時限に遅れたと認定された平成19年4月13日,原告は,午前は出張により不在であった。(乙6の1)ケ平成19年5月ころ,原告に対し,同月10日の午前8時から午前12時40分を所要時間とするI小学校における水道キャラバン同行の旅行命令が発令されたことがあった。(甲30の1)コ本件停職処分において,原告が出勤時限に遅れ,部下職員に指示して出勤記録を出勤の表示に修正させたと認定された平成20年3月19日,J- 13 -労働組合は,始業時から1時間のストライキを実施した。 水道局長は,同月17日,同月19日の始業時から2時間として予定されていたストライキが実施された場合に,お客さま対応等の業務に万全を期すため,全管理職員の出勤時間を午前8時とすること,A営業所においては,事業所長である原告のほか,研修・開発センター研修課長を応援者として営業所窓口応援体制をとることを通知した。(甲8,9)サ平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間において,原告の出勤記録が事故欠勤として登録されている日は16日間あるが,平成18年度は1日もなく,上記期間中において最初に事故欠勤が登録された日は平成19年6月22日である。また,出勤時限に遅れた時間は5分ないし75分であり,8日間は15分以内である。(乙14)シ A営業所においては,職員の執務スペースが1階と2階に分かれていたことから,所長が職員の勤怠を把握することを目的として,出勤状況総括表が作成されており,原告が所長として在任していた間も,出勤状況総括表が作成されていた。また,A営業所とK営業所を統合したB営業所においても,職員の執務スペースがαとβの庁舎に分かれていたことから,所長 成されており,原告が所長として在任していた間も,出勤状況総括表が作成されていた。また,A営業所とK営業所を統合したB営業所においても,職員の執務スペースがαとβの庁舎に分かれていたことから,所長が職員の勤怠を把握することを目的として,出勤簿整理表が作成されており,原告が所長として在任していた間も,出勤簿整理表が作成されていた。 出勤状況総括表においても,出勤簿整理表においても,事故欠勤をした職員については事故欠勤である旨の記載がされている。 もっとも,平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間において,原告の出勤記録が事故欠勤として登録されている16日間のうち,平成19年6月22日,同年7月9日,同年12月14日の3日間については,出勤状況総括表の原告の欄に事故欠勤である旨の記載はされていない。(乙6の1ないし乙7の9,乙14)- 14 -(2) 判断ア被告は,原告が本件停職処分の対象となった72日において出勤時限に遅れてきたことは,F証人及びD証人の証言から明らかであると主張するところ,Dは,原告が出勤時限に遅れてきたことをたびたび見たことがあり,具体的な日付までは覚えていないものの,出勤記録を「*」から「○」に修正していれば,原告が遅れてきた以外の理由で出勤記録を修正したことは特にないので,その日が原告が出勤時限に遅れてきた日である旨述べ(証人D),Fも,原告が出勤時限に遅れてきたことをたびたび見たことがあり,具体的な日付までは覚えていないものの,出勤記録を「*」から「○」に修正していれば,原告が遅れてきた以外の理由で出勤記録を修正した記憶はないので,その日が原告が出勤時限に遅れてきた日である旨述べている(証人F)。 しかしながら,前記前提事実及び認定事実(以下「前 れば,原告が遅れてきた以外の理由で出勤記録を修正した記憶はないので,その日が原告が出勤時限に遅れてきた日である旨述べている(証人F)。 しかしながら,前記前提事実及び認定事実(以下「前記認定事実等」という。)によれば,原告が平成18年4月にA営業所長に着任した当初は,原告の人事情報が局システムに登録されていなかったため,原告が職員カードの挿入等の所定の操作を行っても出勤の記録が登録されない状態となっており,原告はDからその旨を告げられていたのであるから,その間は出勤時限に遅れていないときであっても職員カードの挿入等の所定の操作を行っていなかったものと認められる。そして,Dが,原告に対し,職員カードの挿入等の所定の操作を行えば出勤の記録が登録される状態になった旨を告げたのは,同年5月初め頃である(Dがわざわざ出勤前の原告に対し上記の事実を告げたとは考えられない。)というのであるから,少なくとも同月1日については原告が出勤時限に遅れていないときであっても職員カードの挿入等の所定の操作を行っていなかったものと認められ,Dの供述によっても,同日の出勤記録が「*」から「○」に修正されていたからといって,原告が同日の出勤時限に遅れてきたことを認める- 15 -ことはできない。また,前記認定事実等のとおり,同年4月以降で原告自身が職員カードの挿入等の所定の操作を行ったことによる出勤の記録が初めて登録されたのが同年5月9日であることからすれば,同月8日についても原告が出勤時限に遅れていないときであっても職員カードの挿入等の所定の操作を行っていなかった可能性があるというべきであり,Dの供述によっても,同日の出勤記録が「*」から「○」に修正されていたからといって,原告が同日の出勤時限に遅れてきたことを認めることはできない。前記認定事実 いなかった可能性があるというべきであり,Dの供述によっても,同日の出勤記録が「*」から「○」に修正されていたからといって,原告が同日の出勤時限に遅れてきたことを認めることはできない。前記認定事実等のとおり,原告についての休暇・職免等処理簿データ(乙18)には,同年4月13日午前及び同年5月2日の年次有給休暇の「申請者処理年月日」欄及び「所属長処理年月日」欄にいずれも同月1日と入力されていることが認められるものの,このような入力が同日原告自身が年次有給休暇の申請を行ったものであることを意味することを認めるに足りる証拠はないばかりか,かえって,原告についての平成18年用休暇・職免等処理簿(甲47)では,同年6月2日や同月21日の年休が事前申請を意味すると考えられる記載となっているのに対して,同月2日の年休は同月1日ではなく同月2日に申請したことを意味すると考えられる記載となっていることからすれば,原告についての休暇・職免等処理簿データ(乙18)の上記入力の事実から原告が同月1日の時点で職員カードの挿入等の所定の操作を行うことができるようになった事実を知っていたことを推認することはできないというべきであり,上記入力の事実は,同月8日の出勤記録が「*」から「○」に修正されていた事実のみから原告が同日の出勤時限に遅れてきたことを推認させる根拠となるものではないというべきである。 また,前記認定事実等によれば,原告は,平成20年3月19日,A営業所長として,ストライキの対応のために,遅くとも出勤時限までには出勤していたものと推認することができるから,Fの供述によっても,同日- 16 -の出勤記録が「*」から「○」に修正されていたからといって,原告が同日の出勤時限に遅れてきたことを認めることはできない。 そもそも, とができるから,Fの供述によっても,同日- 16 -の出勤記録が「*」から「○」に修正されていたからといって,原告が同日の出勤時限に遅れてきたことを認めることはできない。 そもそも,Dも,Fも,原告が出勤時限に遅れてきたことをたびたび見たことがあるとの記憶はあるものの,その具体的な日付については明確な記憶がないというのであって,DやFが休暇取得や出勤時限前後の離席等により原告が出勤時限に遅れてきたことを現認できなかったときもあると考えられることや,D及びF以外の者が修正入力者となっている日も相当数あるところ,その場合の修正の経過は必ずしも明らかとはいい難いことからすれば,原告の遅参以外の理由で出勤記録を修正したことはない旨のDやFの供述によっても,原告の出勤記録の修正の事実のみから原告が出勤時限に遅れてきたことを直ちに根拠付けることができないというべきである。 また,F自身,出勤時限までに出勤したものの,職員カードの挿入等の所定の操作を忘れていた場合には,勤怠整理担当者による事実確認と同人の判断のみによって出勤記録を「*」から「○」に修正することになるため,原告についてそのような意味での出勤記録の修正がなされたか否かを知り得ないことを認めている(証人F。なお,同人は,出勤時限前後に離席していたことは少ないから,原告についてそのような意味での出勤記録の修正がなされた可能性は少ない旨を述べているが,他方で,事故欠勤の際には遅延証明書を持参することが必要であると述べながら,Fの在任中に原告につき16回の事故欠勤の登録があるにもかかわらず,原告がF又は勤怠整理担当者に遅延証明書を渡したという記憶は1回しかないとも述べているところである。そうすると,Fの供述については,事故欠勤の際には遅延証明書を持参することが必要であるとの わらず,原告がF又は勤怠整理担当者に遅延証明書を渡したという記憶は1回しかないとも述べているところである。そうすると,Fの供述については,事故欠勤の際には遅延証明書を持参することが必要であるとの供述が信用できないか,原告と勤怠整理担当者とのやりとりについての記憶が欠落しているかのいずれかの問題があるものといわざるを得ず,いずれにしても,原告に- 17 -ついて出勤時限までに所定の操作を忘れたことによって出勤記録の修正がなされた可能性が少ない旨の供述を直ちに信用することはできない。)。 以上によれば,被告が本件停職処分の対象とした72回の出勤時限に遅れたとの事実は,本件全証拠によっても,その全てが客観的事実であると認めるに足りないものといわざるを得ない。確かにそのうちの一定の部分については客観的事実に沿うものであることがうかがわれ,この点は原告自身も自認するところではある。しかしながら,原告が出勤時限に遅れたことがいつ,いかなる回数あったのかについて,具体的に特定することは困難といわざるを得ない。 イ被告は,原告が本件停職処分の対象となった71日において出勤記録の修正を指示したことは,F証人及びD証人の証言から明らかであると主張するところ,Dは,原告から出勤記録を出勤の表示に修正するように明確に指示された記憶はないものの,原告が出勤時限に遅れてきた際に,Dら勤怠整理担当者に対し「事故」とか「電車の遅れ」とか「遅延」というような言葉を述べており,原告から遅延証明書も交付されず,インターネットで運行情報を確認しても遅延に当たる情報もなく,「*」のままにしておくこともできなかったので,やむを得ず出勤を意味する「○」に修正をした旨述べ(証人D),Fは,原告から出勤記録を出勤の表示に修正するように具体的に指示された記憶 たる情報もなく,「*」のままにしておくこともできなかったので,やむを得ず出勤を意味する「○」に修正をした旨述べ(証人D),Fは,原告から出勤記録を出勤の表示に修正するように具体的に指示された記憶はないものの,原告が出勤時限に遅れてきた際に,「ちょっと電車が遅れたので修正しておいて下さい」とか,「電車が遅れました」とか,「ちょっと直しておいて下さい」というような言葉を述べており,事故欠勤は自ら届出をするものであって修正には当たらないことから,出勤記録を修正することを指示されたものと理解した旨を述べている(証人F)。 しかしながら,原告は,出勤時限に遅れてきた際に,DやFに対し,電車の遅延の事実を伝えたことはあるが,修正しておいて下さいと述べたこ- 18 -とはない旨,平成19年以降に勤怠整理担当者であるEから事故欠勤の登録を原告自身の端末からできることを説明されるまでは事故欠勤の登録は勤怠整理担当者がまとめて入力するものと認識していた旨を述べているところ(原告本人),前記認定事実等によれば,平成18年度は原告の事故欠勤の登録は1日もなく,平成19年6月22日に至ってA営業所における原告の事故欠勤の登録が初めてなされたことが認められるのであるから,平成19年までは原告自身の端末で事故欠勤の登録ができることを知らなかった旨の原告の供述には相応の裏付けがあるというべきであり,これを直ちに排斥することはできない。そして,原告が部下に対して出勤記録を出勤の表示に修正するように具体的に指示したことを認めるに足りないことを併せ考慮すると,少なくとも平成19年6月22日に至るまでの間においては,電車が遅延した旨の原告の発言をもって出勤記録を出勤の表示に修正するように指示したものとまでは認めることはできないというべきである。同日までの なくとも平成19年6月22日に至るまでの間においては,電車が遅延した旨の原告の発言をもって出勤記録を出勤の表示に修正するように指示したものとまでは認めることはできないというべきである。同日までの間においては,電車が遅延した場合に出勤記録の修正と事故欠勤の登録という2つの処理が混在していた事実はないし,前記認定事実等によれば,出勤状況総括表の目的は,営業所長である原告が部下職員の勤怠状況を把握することにあり,原告が出勤状況総括表において注目すべき点は,部下職員のうち,出勤記録上出勤の表示になっていない為に,同表に「事故」,「年休」,「出張」等と記載される者であると認められるから,原告が出勤状況総括表を決裁していることから,直ちに原告が自身の出勤記録が事故欠勤として登録されているか,出勤の表示に修正されているかを具体的に認識していたものとみることは困難である。前記認定事実等のとおり,出勤記録上,事故欠勤の登録がされているのに,出勤状況総括表では,事故欠勤である旨の記載がされていない日が複数存在することを考慮すれば,なおさらである。 また,平成19年6月22日以降においては,電車が遅延した場合に出- 19 -勤記録の修正と事故欠勤の登録と2つの処理が混在するに至っているものの,原告が自身の端末から事故欠勤の登録ができることを知ったとしても,そのことは直ちに勤怠整理担当者に対する事故欠勤の登録の指示が許されないことを知ったことを意味するものではないから,DとFのいずれもが原告から出勤記録を出勤の表示(「○」)に修正するように具体的に指示されたことはないと述べていること,Fは原告が出勤時限に遅れた際に「修正しておいて下さい」と述べた旨供述するものの,原告はこれを否定しており,Fの供述のみによって原告が出勤記録を修正することを求 指示されたことはないと述べていること,Fは原告が出勤時限に遅れた際に「修正しておいて下さい」と述べた旨供述するものの,原告はこれを否定しており,Fの供述のみによって原告が出勤記録を修正することを求めたとの事実を認めることは困難であること,DもFも原告に対し事故欠勤の入力を自ら行うように求めたことはないと述べていること(証人D,同F)を併せ考慮すると,平成19年6月22日以降においても,電車が遅延した旨の原告の発言をもって出勤記録を出勤の表示に修正するように指示したものと認めるには足りないというべきである。原告が出勤状況総括表及び出勤簿整理表を決裁していることに対する評価は既に述べたとおりであり,この事実を併せ考慮しても,原告が出勤記録を出勤の表示に修正するように指示したことを認めるには足りない。 以上によれば,原告が出勤記録の修正を指示すべき出勤時限に遅れてきた日がいつ,いかなる回数あったのかについて具体的に特定することが困難であるということをさておくとしても,被告が本件停職処分の対象とした71回にわたって出勤記録につき出勤の表示への修正を指示したという事実は,本件全証拠によっても,客観的事実に合致したものと認めることはできないものといわざるを得ない。 ウ前記ア及びイによれば,被告が本件停職処分の対象とした72回にわたり出勤時限に遅れたとの事実及び71回にわたる出勤記録の出勤の表示への修正指示の事実は,原告が出勤時限に遅れたことが一定の回数あったことが認められるに止まり,その回数や日付を具体的に特定することは困- 20 -難であると認められる。また,具体的な修正指示があったことを認めることは困難であるから,結局,本件停職処分は,その根拠となる主要な事実の存在を認めるに足りないものというほかなく,違法な処分とし -難であると認められる。また,具体的な修正指示があったことを認めることは困難であるから,結局,本件停職処分は,その根拠となる主要な事実の存在を認めるに足りないものというほかなく,違法な処分として取り消されるべきものである。 2 争点3(損害賠償請求の可否)について(1) 証拠(後掲のもののほか,乙3ないし5,25,26,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成22年5月20日頃,匿名の被告職員を名乗る者から原告が遅参・早退,勤務態度不良を繰り返しているので内部告発する旨の文書(乙20の1ないし3)を受領したこと,これを受け,被告水道局職員部監察指導課は,局システムに登録された原告の出勤記録,事故欠勤記録,出勤状況総括表,出勤簿整理表等を調査し,同年6月10日に原告,同月16日にD,同月17日に原告から事情聴取し,同月24日頃原告から上申書を受領したほか,Fからも事情聴取したことがうかがわれること,上記事情聴取において,原告は,電車の遅延のため月2,3回程度は遅れることがあったが,出勤時限前にカードリーダの設置されていない正面入口から登庁したことや時限前出張もあった旨,出勤記録の修正指示をしたことはない旨を述べていたこと,そうであるにもかかわらず,上記監察指導課は,同月16日にDから80分間の事情聴取をしたものの,同人に原告がいつ出勤時限に遅れたのかを具体的に確認した形跡が見当たらず,被告が原告からの指示を受けて出勤記録の修正操作をしたと認定した職員のうち,D,F以外の者(C,E,G)から事情聴取をした形跡も見当たらず,D以外の原告の当時の部下職員に原告がいつ出勤時限に遅れたのかを具体的に確認したり,時限前出張の事実の有無を確認した形跡が見当たらないことが認められる。 このように,被告が本件停職処分に至 以外の原告の当時の部下職員に原告がいつ出勤時限に遅れたのかを具体的に確認したり,時限前出張の事実の有無を確認した形跡が見当たらないことが認められる。 このように,被告が本件停職処分に至ったのは,被告の担当職員が原告の弁明にもかかわらず,職務上通常尽くすべき調査義務に違反して,漫然と本- 21 -件停職処分の根拠となる72回の出勤時限の遅参と71回の出勤記録の修正指示を認定したことにあるといわざるを得ないから,被告による本件停職処分は国家賠償法上も違法であり,被告はこれにより原告が被った損害を賠償する責任があるというべきである。 また,証拠(甲2,53の1ないし3,90,104,乙15の1ないし5,原告本人)によれば,被告は,水道局の45歳の男性副参事に対し本件停職処分を行ったことを報道機関及び被告ホームページ等に公表し,本件停職処分の対象者として,原告の実名こそ報道されなかったものの,所属局名,職層,年齢,性別が報道されたことが認められるが,被告による本件停職処分の公表も,被告が通常尽くすべき調査義務に違反して,漫然と本件停職処分が行われたことによるものと認められるから,被告はこれにより原告が被った損害についても賠償する責任があるというべきである。 (2) そして,このような被告の違法行為によって,原告は,次のとおりの損害を被ったことが認められる。 ア期末勤勉手当等の返納分 86万3449円証拠(甲58)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成22年10月8日,本件停職処分に基づき,原告の過去の期末勤勉手当等の返納を決定して,原告に86万3449円の返納を請求し,原告はこれに応じて86万3449円を返納したことが認められ,これは被告の上記違法行為と相当因果関係ある損害と認められる。 期末勤勉手当等の返納を決定して,原告に86万3449円の返納を請求し,原告はこれに応じて86万3449円を返納したことが認められ,これは被告の上記違法行為と相当因果関係ある損害と認められる。 イ本件停職処分中の給与(3か月分) 183万4086円停職3月という本件停職処分中の原告の給与は,被告の上記違法行為と相当因果関係ある損害であるところ,弁論の全趣旨によれば,本件停職処分当時の原告の例月給与は61万1362円であり,その3か月分は183万4086円である。 ウ本件停職処分による期末勤勉手当の減額 76万3704円- 22 -停職3月という本件停職処分による期末勤勉手当の減額分は,被告の上記違法行為と相当因果関係ある損害であるところ,証拠(甲106ないし108)及び弁論の全趣旨によれば,原告請求のとおり,期末勤勉手当が76万3704円減額されたものと認められる。 エ本件停職処分による逸失利益 0円証拠(甲106)によれば,原告が平成23年4月1日,5級66号俸から昇給する際に,1号昇給により5級67号俸に昇給した事実を認めることができる。しかしながら,原告は,通常4号昇給するので本件停職処分がなければ5級70号俸に昇給できていた旨供述するが(原告本人),これを裏付ける証拠はなく,本件全証拠を精査検討しても,本件停職処分がなければ5級70号俸に昇給できていたことを認めるには足りないから,これを前提とする逸失利益を認めることはできない。 オ慰謝料 20万円前記のとおり,原告の実名こそ公表されなかったものの,本件停職処分の対象者として原告の所属局名,職層,年齢,性別が報道あるいは被告ホームページに掲載されたことにより,原告が多数回にわたり出勤時限に 前記のとおり,原告の実名こそ公表されなかったものの,本件停職処分の対象者として原告の所属局名,職層,年齢,性別が報道あるいは被告ホームページに掲載されたことにより,原告が多数回にわたり出勤時限に遅れた上,部下職員に対し出勤記録の修正を指示したことによって本件停職処分を受けたことは,被告職員を中心に不特定多数の者が知るところとなったこと,他方,特定することは困難であるものの,原告が出勤時限に遅れたものの,事故欠勤の届出等出勤記録上の所定の手続がなされていない日が一定の日数あること自体は認められること,本件停職処分の取消しにより,原告の被った精神的苦痛は相当程度回復されると認められること等本件に顕れた一切の事情を考慮すると,被告の上記違法行為により被った原告の精神的苦痛を慰謝するには,20万円をもって相当と認める。 カ弁護士費用 20万円本件事案の内容,本件訴訟の審理経過,認容額等を考慮すると,被告の- 23 -違法行為と相当因果関係ある弁護士費用は20万円であると認められる。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,主文の限度で理由があり,その余は理由がないから,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第36部 裁判長裁判官竹田光広 裁判官松山昇平 裁判官古庄 研

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る