平成26年11月28日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成21年(ワ)第47799号育成者権侵害差止等請求事件(以下「第1事件」という。)平成25年(ワ)第21905号育成者権侵害差止等請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日平成26年10月1日判決仙台市<以下略>第1事件原告兼第2事件原告株式会社キノックス(以下,単に「原告」という。)同訴訟代理人弁護士矢花公平宮城県栗原市<以下略>第 事件被告築館なめこ生産組合(以下「被告組合」という。)宮城県栗原市<以下略>第 事件被告有限会社つきだて茸センター(以下「被告会社」という。)上記2名訴訟代理人弁護士佐々木 敏 雄同補佐人弁理士小 田 富士雄 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 第1事件(1) 被告組合は,別紙1の「重要な形質」欄記載の形質について同別紙の「重要な形質に係る特性」欄記載の特性を有するなめこ種の種苗(菌床の形態のものを含む。)を生産し,調整し,譲渡の申出をし,譲渡し,又は これらの行為をする目的をもって保管してはならない。 (2) 被告組合は,別紙1の「重要な形質」欄記載の形質について同別紙の「重要な形質に係る特性」欄記載の特性を有するなめこ種の種苗( は これらの行為をする目的をもって保管してはならない。 (2) 被告組合は,別紙1の「重要な形質」欄記載の形質について同別紙の「重要な形質に係る特性」欄記載の特性を有するなめこ種の種苗(菌床の形態のものを含む。)を廃棄せよ。 (3) 被告組合は,原告に対し,別紙2-1記載の謝罪広告を別紙3-1に記載の条件で各1回掲載せよ。 (4) 被告組合は,原告に対し,2037万0848円及びこれに対する平成22年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件(1) 被告会社は,別紙1の「重要な形質」欄記載の形質について同別紙の「重要な形質に係る特性」欄記載の特性を有するなめこ種の種苗(菌床の形態のものを含む。)を生産し,調整し,譲渡の申出をし,譲渡し,又はこれらの行為をする目的をもって保管してはならない。 (2) 被告会社は,別紙1の「重要な形質」欄記載の形質について同別紙の「重要な形質に係る特性」欄記載の特性を有するなめこ種の種苗(菌床の形態のものを含む。)を廃棄せよ。 (3) 被告会社は,原告に対し,別紙2-2記載の謝罪広告を別紙3-2記載の条件で各1回掲載せよ。 (4) 被告会社は,原告に対し,301万6000円及びこれに対する平成25年8月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,「なめこ」の品種について後記2(2)の品種登録(以下「本件品種登録」といい,同登録を受けた品種を「本件登録品種」と,同品種に係る育成者権を「本件育成者権」という。)を受けている原告が,被告組合及び被告会社(以下,両者を併せて,単に「被告ら」という。)は,原告の許諾の範囲を超えて(被告組合)又は原告の許諾なく(被告会社),本件登録品種又はこれ と重要な形質に係る特 告が,被告組合及び被告会社(以下,両者を併せて,単に「被告ら」という。)は,原告の許諾の範囲を超えて(被告組合)又は原告の許諾なく(被告会社),本件登録品種又はこれ と重要な形質に係る特性(以下,単に「特性」ということがある。)により明確に区別されないなめこの種苗(菌床の形態のものを含む。以下,同じ。)の生産等をすることにより本件育成者権を侵害してきたものであり,今後もそのおそれがある旨主張して,(1)被告組合に対し,①種苗法33条1項に基づく種苗の生産等の差止め,②同条2項に基づく種苗の廃棄,③同法44条に基づく信用回復の措置としての謝罪広告,並びに④不法行為(育成者権の侵害)に基づく損害賠償金2037万0848円(被告組合の平成13年8月から平成21年8月までの間の種苗の違法な生産等による損害1823万2704円,調査費用63万8144円,弁護士費用150万円の合計)及びこれに対する平成22年3月25日(第1事件に係る訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた第1事件と,(2)被告会社に対し,①種苗法33条1項に基づく種苗の生産等の差止め,②同条2項に基づく種苗の廃棄,③同法44条に基づく信用回復の措置としての謝罪広告,並びに④不法行為(育成者権の侵害)に基づく損害賠償金301万6000円(被告会社の平成19年8月から平成21年8月までの間の種苗の違法な生産等による損害201万6000円,弁護士費用100万円の合計)及びこれに対する平成25年8月24日(第2事件に係る訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた第2事件とが,併合して審理された事案である(なお,原告は,被告らが共同して種苗の違法な生産等をしたとして,共同不法行為を主 日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた第2事件とが,併合して審理された事案である(なお,原告は,被告らが共同して種苗の違法な生産等をしたとして,共同不法行為を主張しているものの,損害額の算定に際しては,被告らの生産数を合計した上,これらを被告組合の生産数と被告会社の生産数に分けて,別個に損害を主張し,弁護士費用も別個に主張しており〔調査費用については専ら被告組合との関係で主張している。〕,損害賠償金及び遅延損害金について,被告らの連帯支払を求めるものではない。)。 被告らは,①被告らが違法に生産等しているとされる種苗は,本件登録品種 又はこれと特性により明確に区別されない品種に係る種苗ではない,②本件品種登録に取消事由が存在することが明らかであること,その他の事情に照らし,原告の本件各請求は,信義則違反又は権利濫用として許されないなどと主張して,争った(なお,被告らは,平成26年9月24日の第27回弁論準備手続期日において同月10日付け準備書面(13)を陳述することにより,第1事件と第2事件の併合前に各事件でされた相被告の主張を必要な範囲で相互に援用したものと解される。)。 2 前提事実等(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。なお,書証〔枝番のあるものを含む。〕のうち,甲1,2,3〔写し〕,4ないし18,乙1ないし39は,第2事件の併合前に第1事件で取り調べられたものであり,甲3〔原本〕,19ないし29,乙40ないし46は,第1事件に第2事件が併合された後に取り調べられたものであって,第1事件に併合される前に第2事件で取り調べられた書証はない。)(1) 当事者等ア原告は,昭和33年8月18日に設立された株式会社であって(平成10年7月6日変更前の商号は,「東北椎茸株 ,第1事件に併合される前に第2事件で取り調べられた書証はない。)(1) 当事者等ア原告は,昭和33年8月18日に設立された株式会社であって(平成10年7月6日変更前の商号は,「東北椎茸株式会社」である。),「食用きのこ類の種菌製造販売並びに栽培指導」,「食用きのこ類の生産資材並びに関連機器の売買」等を目的としている(甲1)。 イ被告組合は,なめこの栽培協定,共同作業,機械施設の共同利用等を行うことにより,生産技術及び経営の改善を図り,組合員相互の利益を増進させることを目的とし,組合長をその代表として,平成3年10月1日に設立された組合であって,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しており(弁論の全趣旨),民事訴訟法29条にいう「法人でない社団」に該当する。 ウ被告会社は,昭和58年5月17日,会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号。以下「整備法」という。)1条3号の規定による廃止前の有限会社法(昭和13年法律第74号。)の規定による有限会社として設立され,整備法2条1項の規定により,会社法(平成17年法律第86号)の規定による株式会社(特例有限会社)として存続するものとされた会社であって,「茸類の栽培及び販売」等を目的としている(甲29,乙1)。 (2) 本件品種登録原告は,次のとおり,本件登録品種につき品種登録(本件品種登録)を受けており,同品種に係る育成者権(本件育成者権)を有している(甲2,乙21,31の1・2)。 品種登録の番号第9637号登録年月日平成13年11月22日公示年月日平 り,同品種に係る育成者権(本件育成者権)を有している(甲2,乙21,31の1・2)。 品種登録の番号第9637号登録年月日平成13年11月22日公示年月日平成13年11月22日農林水産省告示第1577号出願番号第10416号出願年月日平成9年12月24日出願公表年月日平成11年3月18日農林水産植物の種類なめこ登録品種の名称 KX-N006号(なお,出願時の名称は,「東北N006号(とうほくえぬれいれいろくごう)」である。)(3) 本件登録品種の重要な形質に係る特性本件登録品種に係る品種登録原簿の「登録品種の植物体の特性記録部」(以下「本件特性表」という。)は,別紙1のとおりである(甲2,乙31の2)。 (4) きのこの特性等について以下に引用する文献等の記載には,「椎茸」を念頭に置いたものがあるが,特に断らない限り,本件登録品種の属する農林水産物の種類である「なめこ」にも当てはまるものと考えられる。 アきのこのライフサイクルきのこのライフサイクルは,原告のウェブサイトに掲載された次の図に示されるように,「生殖生長世代」と「栄養生長世代」とからなるところ,「生殖生長世代」は,「担子菌」から「核融合」,「減数分裂1回目」,「減数分裂2回目」,「胞子形成」,「成熟子実体」に至るサイクルであり,「栄養生長世代」は,「胞子」から「胞子発芽」,「1次菌糸」,「接合:交配」,「クランプ形成」,「2次菌糸」,「菌糸集合体」,「原基形成」,「子実体」に至るサイクルである(乙27の1)。 ここで,「菌糸」とは,「菌類のからだをつくっている糸状の細胞」をいう(乙27の3)。 「クランプ結合」とは,「一部の担子菌類の 」,「原基形成」,「子実体」に至るサイクルである(乙27の1)。 ここで,「菌糸」とは,「菌類のからだをつくっている糸状の細胞」をいう(乙27の3)。 「クランプ結合」とは,「一部の担子菌類の二次菌糸(二核性)で見られる特種な核分裂とそれに伴う細胞分裂」をいう(乙27の9)ことから,上述した「栄養生長世代」における「クランプ形成」とは,クランプ結合が形成されることを意味するものと解される。 「子実体」とは,「胞子をつくるための器官,菌糸の集合体」をいう(乙27の3)。 イきのこの栽培等に関する用語の説明「菌株」とは,「微生物の単一種が一定量まとまって生育している状態」をいい(乙27の2),「菌叢」の「叢」は,「群がること。また,そのもの。むれ。」をいう(乙27の4)ことから,「菌叢」とは,菌が群がっている状況を意味するものと解される。「菌さん(菌傘)」とは,「菌(きのこ)の上部の拡がって,傘状になった所」を指すところ(乙27の4),きのこには,菌さんの表面に「りん皮(鱗皮)」という鱗状をした皮を持つものもある(乙17の1・2,弁論の全趣旨)。 「対峙培養」とは,「2種類の菌を対峙して接種し培養すること」を いう(乙27の3)。 「対峙培養試験」(「菌糸性状試験」ともいう。)とは,菌株の培養片をシャーレ内の寒天培地上で行い,寒天培地表面の2種類の菌糸が拡大する状態を観察することにより,品種の異同を識別する試験であり,簡易な系統識別法(品種識別法)である。一般に,2種類の菌糸の品種が異なる場合には,両菌糸の間に明確に帯線が形成されたり,反発し合う状態が観察されたりする(対峙培養試験の結果は,「帯線形成+」,「嫌触反応+」などと表示される。)ことから,帯線等が明確に形成されない状態が観察された 菌糸の間に明確に帯線が形成されたり,反発し合う状態が観察されたりする(対峙培養試験の結果は,「帯線形成+」,「嫌触反応+」などと表示される。)ことから,帯線等が明確に形成されない状態が観察されたときは,同一品種か,類似した品種と考えられる(「反応なし-」などと表示される。)(乙30,弁論の全趣旨)。 もっとも,なめこは,明確な帯線を形成し難い生理特性を有しており,特に遺伝的に近い関係にある品種においては,その傾向が顕著であることから,本件では,当事者双方とも,品種の異同判定を対峙培養試験のみで行うことは,困難であるとしている(原告の平成23年1月21日付け準備書面(4)2頁,被告組合の平成25年2月5日付け被告準備書面(6)17頁)。 なお,「寒天培地」とは,「培養液に1ないし3パ-セントの寒天を加え固化させた培養基」であり,「寒天は微生物によりほとんど分解されないので,細胞やカビの培養,花粉の発芽,細胞や組織培養に広く用いられる」。「寒天培養基」ともいう(乙27の8)。 (5) なめこ栽培の問題点以下に引用する論文(竹原太賀司「試験場だよりナメコ栽培特性の安定化をめざした新品種の育成」〔次の図を含む。〕,乙27の6)に示されるように,なめこは,一核菌糸(前記(4)アの「栄養生長世代」における「1次菌糸」に相当すると解される。)の接合(交配)により二核菌糸(前記(4)アの「栄養生長世代」における「2次菌糸」に相当すると解される。)を形 成した後,正常な子実体を形成するのであるが,「脱二核化」と呼ばれる「二核菌糸が一核菌糸に戻る」現象が発生することがあり,この現象は,なめこ栽培の問題点として指摘されている。 「ナメコ空調施設栽培に用いられる極早生系統は,子実体収量等栽培特性が不安定であるという欠点があり,従来から菌株 る」現象が発生することがあり,この現象は,なめこ栽培の問題点として指摘されている。 「ナメコ空調施設栽培に用いられる極早生系統は,子実体収量等栽培特性が不安定であるという欠点があり,従来から菌株の劣化,退化現象との関連が知られていました。この現象は,二核菌糸(きのこ栽培に用いる倍数体菌糸)が一核菌糸(胞子から発芽した直後の半数体に相当するきのこを作らない菌糸)に戻ってしまう脱二核化現象・・・と,ナメコでは脱二核化して生じた一核菌糸の菌糸伸長速度が二核菌糸よりも速いので,一核菌糸が培地に蔓延しやすいことに起因することが明らかとなっています。」「ナメコ菌糸に特徴的な脱二核化は,栽培特性に悪影響を与えると同時に,菌株の特性の維持をも極めて困難にしています。このため,せっかく選抜した優良系統も,シイタケなどに比べるとその寿命は極めて短くなっているのが実状です。」 なお,「空調栽培」とは,「空気,特に温度湿度を調節して栽培する方法」をいい(乙27の3),なめこの栽培方法としても用いられている(弁論の全趣旨)。 (6) 原告と被告組合との間の本件許諾契約原告と被告組合は,平成10年6月10日,本件登録品種について,要旨,次の内容で増殖許諾契約(以下「本件許諾契約」といい,同契約に関して原告と被告組合との間で取り交わされた同日付け契約書を「本件許諾契約書」という。なお,次の①ないし⑥では,本判決で定義した略語で一部を置換したほかは,本件許諾契約書の表現を用いた。)を締結した(甲3)。 記① 本件登録品種の種菌を被告組合は母菌として増殖使用するが,その増殖は1回限りとする(本件許諾契約書2項)。 ② 種菌の供給は原則として,注文生産とし,使用の60日前に被告組合は原告に発注する。この販売の条件は,月毎に1ケー 合は母菌として増殖使用するが,その増殖は1回限りとする(本件許諾契約書2項)。 ② 種菌の供給は原則として,注文生産とし,使用の60日前に被告組合は原告に発注する。この販売の条件は,月毎に1ケース(1500cc10本)以上をロットとし契約売買とする(月毎予め発送日を決め自動的に定期納品する。)(同3項)。 ③ 被告組合が増殖する場合,原則として850ccの種菌瓶を使用するが,培養は16~18℃で60日経過したものを使用する。増殖倍率は1種菌につき100倍とみなす(同4項)。 ④ 原告の認めない本件登録品種の種菌の転売・転用は行わないものとする(同5項)。 ⑤ 本件許諾契約に違反する行為が認められたときは,契約を解除し,原告は被告組合に対する種菌供給を停止する(同8項)。 ⑥ 本件許諾契約の有効期間は契約後1ヶ年とし,契約満了日1ヶ月前までに双方から何ら意思表示のなき場合は,更に1ヶ年有効とする(同10 項)。 (7) 本件鑑定嘱託ア裁判所は,平成23年10月31日,同年8月3日付け鑑定申立書(以下「本件鑑定申立書」という。)に基づく同月4日申出に係る鑑定の嘱託を採用し,同年11月1日,別紙4「鑑定嘱託事項」について,財団法人福島県きのこ振興センター(以下「きのこ振興センター」という。)に鑑定の嘱託(以下「本件鑑定嘱託」という。)をした。 なお,きのこ振興センターは,平成24年3月30日付けの社団法人福島県緑化推進委員会及び社団法人福島県林業協会との合併により解散し,存続した法人の名称が「社団法人福島県森林・林業・緑化協会」(以下「森林・林業・緑化協会」という。)に変更された。森林・林業・緑化協会は,同年8月4日,「鑑定書」を,同年10月23日,「訂正書」及び「鑑定書データ」(以下,これらと上記「鑑定書」を併 協会」(以下「森林・林業・緑化協会」という。)に変更された。森林・林業・緑化協会は,同年8月4日,「鑑定書」を,同年10月23日,「訂正書」及び「鑑定書データ」(以下,これらと上記「鑑定書」を併せて,「本件鑑定書」といい,本件鑑定嘱託に基づいて嘱託先が行った各種試験を「本件試験」という。)を裁判所に提出した。 また,本件鑑定嘱託は,別紙4「鑑定嘱託事項」添付の別紙「特性審査基準」及び同基準の「なめこ『特性表』記載上の注意」(これらは,本件鑑定申立書添付の別紙1,2と同じものであるが,被告組合は,本件鑑定嘱託が採用される際,この点を含め,特段の意見を述べなかった。)記載の方法に基づいて判定することとされているが,同審査基準は,本件登録品種の登録時の審査基準(以下「登録時審査基準」という。甲21)ではなく,全国食用きのこ種菌協会が平成14年3月に取りまとめた「平成13年度種苗特性分類調査報告書」に添付された審査基準(以下「新審査基準」という。甲17)である。 イ本件鑑定嘱託は,上記アのとおり,平成23年11月1日にされたものであるが,本件鑑定書では,本件試験の実施期間を同年7月6日から平成 24年7月24日としている。また,本件試験に供された供試菌株は,次の3種(K1,K2,G)の栽培株(以下,それぞれ「K1株」,「K2株」「G株」という。)であり,このうち,K1株については,子実体が発生しなかったとされている(鑑定嘱託の結果)。なお,G株は,原告代表者が,平成23年7月4日,独立行政法人種苗管理センター(以下「種苗管理センター」という。)の職員の立会いの下で,ジョイスーパーセンター愛子店(仙台市青葉区栗生7-13-1)において購入し(なお,そのビニール製包装袋の上部には,赤色の文字で「宮城県産」,「めんこい」,緑色 ー」という。)の職員の立会いの下で,ジョイスーパーセンター愛子店(仙台市青葉区栗生7-13-1)において購入し(なお,そのビニール製包装袋の上部には,赤色の文字で「宮城県産」,「めんこい」,緑色の文字で「なめこ」と,下部には,白色の文字で「(有)つきだて茸センター」と印刷されていた。),種苗管理センターの職員が封印ラベルで封印した後,原告代表者がきのこ振興センターに送付したなめこの子実体から抽出された培養菌である(甲13)。 「① K1:原告が原告種菌(KX-N006号)の品種登録時に独立行政法人種苗管理センターに寄託した種菌(平成23年11月28日分譲受領)」「② K2:原告が原告の保有する原告種菌(平成23年11月9日入手Lot.00--07-26234---0133)」「③ G:原告が独立行政法人種苗管理センター(23種管第399号〔記録書整理番号第28号〕に寄託した被告製品(商品名・めんこいなめこ))から抽出した種菌(平成23年7月6日入手)」(8) 品種類似性試験ア適正な品種登録の実施及び優良な種苗の流通の確保を図るための種苗の管理に関する総合的機関である種苗管理センター作成の業務方法書(認可平成13年4月2日,最終変更認可平成23年12月7日。以下「業務方法書」という。)において,品種の類似性に関する試験(以下「品種類似性試験」という。)については,次のとおり定められている(乙46)。 「第69条の4 センター(種苗管理センター)は,育成者権者等からの依頼に基づき,育成者権を侵害した種苗等を判定するための品種の類似性に関する試験(以下「品種類似性試験」という。)を行うものとする。 2 品種類似性試験を依頼しようとする者(以下「試験依頼者」という。)は,センターに試験依頼書を提出して依頼を行 めの品種の類似性に関する試験(以下「品種類似性試験」という。)を行うものとする。 2 品種類似性試験を依頼しようとする者(以下「試験依頼者」という。)は,センターに試験依頼書を提出して依頼を行うものとする。 3 品種類似性試験は,次に掲げる事項のうち試験依頼者の依頼する事項について行うものとする。 (1)登録品種及び出願品種(以下「登録品種等」という。)と当該登録品種等に係る育成者権の侵害が疑われる品種との特性比較(2)登録品種等と当該登録品種等に係る育成者権の侵害が疑われる品種との比較栽培(3)登録品種等と当該登録品種等に係る育成者権の侵害が疑われる品種とのDNA分析」イ業務方法書69条の4の品種類似性試験等については,種苗管理センター作成の「独立行政法人種苗管理センター育成者権侵害対策実施細則」(18種管第51号平成18年4月3日,最終改正平成25年9月18日付け25種管第683号。以下「育成者権侵害対策細則」という。乙40)において,次のとおり定められている。 「第2 業務方法書第69条の4第3項(1)の特性比較とは,品種類似性試験を依頼しようとする者(以下「試験依頼者」という。)から独立行政法人種苗管理センターに提出された植物体同士を目視及び計測により比較し,必要な項目について種類別審査基準を用いて特性を調査する試験をいう。なお,植物体の形質は 栽培環境により変動するため,特性比較の結果区別性が認められたことをもって,比較した植物体同士が同一の品種でないとするものではなく,このことを確認するためには次項の比較栽培の実施が必要であることを,センターはあらかじめ試験依頼者に説明するものとする。 2 業務方法書第69条の4第3項(2)の比較栽培とは,試験依頼者から提出された種苗又は提出された植 次項の比較栽培の実施が必要であることを,センターはあらかじめ試験依頼者に説明するものとする。 2 業務方法書第69条の4第3項(2)の比較栽培とは,試験依頼者から提出された種苗又は提出された植物体から生産された種苗を業務方法書第4条の品種登録に係る栽培試験と同一の方法で栽培し,必要な項目について種類別審査基準を用いて特性を調査する試験をいう。なお,提出された植物体から種苗を生産する場合においては,成功しないことがあることをセンターはあらかじめ試験依頼者に説明するものとする。 3 業務方法書第69条の4第3項(3)のDNA分析とは,試験依頼者から提出された植物体又は一部組織からDNAを抽出し,妥当性が確認されたDNA品種識別技術を用いて塩基配列を比較する試験をいう。」 3 争点(1) 本件育成者権侵害の有無(争点1)(2) 本件各請求は信義則違反又は権利濫用として許されないか(争点2)(3) 侵害行為の差止等請求及び謝罪広告の可否(争点3)(4) 損害賠償請求の可否及びその額(争点4)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(本件育成者権侵害の有無)について(原告の主張)(1) 被告組合の行為原告は,被告組合に対し,平成19年9月1日以降,本件登録品種の種菌 を供給しなくなったが,被告組合は,その後も,本件登録品種の種菌を使用して栽培した収穫物であるなめこ(「宮城県産めんこいなめこ」との表示を付して市販されていたもの)の生産や販売を継続していた。 原告の営業部長が,平成20年9月16日,被告組合を訪問したところ,被告組合は,同被告の生産・販売に係るなめこの種菌として,きのこ振興センターの種菌から選抜したものを使用している旨弁明した。 ところが,原告において,被告組合が被告会社と共に生 合を訪問したところ,被告組合は,同被告の生産・販売に係るなめこの種菌として,きのこ振興センターの種菌から選抜したものを使用している旨弁明した。 ところが,原告において,被告組合が被告会社と共に生産・販売していると思われた「宮城県産めんこいなめこ」との表示を付して市販されていたなめこ(以下,被告らのいずれが販売元として表示されているかにかかわらず,「被告製品」という。)を購入して,原告の食用菌研究所において,DNA分析を実施したところ,被告製品は,本件登録品種と同一の品種であり,きのこ振興センターが有していた登録品種(N1号,N2号)とは異なる品種であることが明らかとなった(甲4)。 被告組合による本件登録品種の無断増殖が判明したことから,原告代表者は,平成21年3月11日,被告組合を訪問し,上記DNA分析の結果を示した上,被告組合が本件登録品種の使用を継続したいのであれば,使用許諾料を支払ってほしい旨申し入れた。 その後,被告組合の要請により,原告の営業部長が,同年4月4日,被告組合を訪問すると,被告組合は,原告代表者の提案を受諾する旨回答するとともに,原告の新たな登録品種(「KX-N008号」との名称のなめこ)について栽培指導の依頼もしてきた。 そこで,原告は,被告組合との覚書を取り交わすこととし,原告の営業部長が,同月23日,「なめこ品種(KX-N0006号)増殖使用に関する覚書」(甲5の1)を作成し,被告組合に交付したが,被告組合は,翻意し,「販売していない種菌の使用許諾料を支払うことと金額が高いと感じたことについて,農林水産省生産局知的財産課に見解を求めたところ,同課から支 払義務は生じないとの回答を得た」として,上記覚書の締結には至らなかった。 (2) 被告会社の行為被告会社は,平成19年7月以降,被 生産局知的財産課に見解を求めたところ,同課から支 払義務は生じないとの回答を得た」として,上記覚書の締結には至らなかった。 (2) 被告会社の行為被告会社は,平成19年7月以降,被告製品の栽培及び販売を被告組合と共同して行っている。 (3) 本件育成者権の侵害についてア以下に引用する,農林水産省生産局種苗課編著「逐条解説種苗法」(平成15年5月1日発行)(以下「農水省解説」という。甲16。)に記載されているとおり,育成者権侵害の判断については,原則として,登録品種と侵害が疑われる品種が同一品種であるか否かを判断するには,常に植物自体を比較する必要があるという立場(以下「現物主義」という。)が採用されているところであり,本件試験に係るK2株とG株に関する比較栽培試験の結果,両者の同一性が認められれば,被告らが本件育成者権を侵害していることが証明されたことになる。 「(1) 種苗法の保護対象は,「品種」という現実に存在する植物体の集団であることから,権利の範囲は,当該植物体の集団に含まれるか否かにより定まる。」「(2) 「品種」が登録されると,権利が発生し,登録品種の特性が品種登録簿に記載されるが,品種登録簿の特性表は,植物体の主要な特徴を直接的に権利の範囲を定めるものではない。例えば,バラの登録品種Aの特性表の記載と,侵害が疑われるバラの品種Bの特性が一致したとしても,直ちにAとBが同一品種ということにはならず,特性表の記載事項以外の特性が違っていれば,AとBとは別品種である。したがって,AとBが同一品種であるか否かを判断するには,常に植物自体を比較する必要がある(現物主義)。」「(3) 上記のとおり,種苗法の保護対象は,品種登録簿の特性表の記 載ではなく,「品種」=現実の植物体の集団であり, かを判断するには,常に植物自体を比較する必要がある(現物主義)。」「(3) 上記のとおり,種苗法の保護対象は,品種登録簿の特性表の記 載ではなく,「品種」=現実の植物体の集団であり,他の知的財産権と保護の範囲の確定については,別異の解釈がとられている。これは植物体そのものを対象とする種苗法の特殊性により説明することができる。」イ本件鑑定書について本件鑑定書では,「本試験結果の菌糸性状試験及び栽培試験の調査項目の一部に有意差は認められるが,3菌株は遺伝的に別の特性を有するということは言えない。」と結論付けられている。これは,被告らが,原告の本件登録品種の種菌と同じ種菌を使用して栽培した収穫物であるなめこを生産・販売していることを裏付けている。 菌糸性状試験の結果本件鑑定書は,「菌糸性状試験では,異菌株判別法の一つである対峙培養から3菌株間に帯線及び嫌触反応が全く観察されなかった。また,各項目においても3菌株に明瞭な相違は確認されなかった。」と述べており,これは,「3菌株は遺伝的に別の特性を有するということは言えない」との結論の1つの根拠になっている。ただし,「菌糸成長最適温度及び菌糸体成長温度では温度帯によって有意差が認められるものが確認された」とあった。 栽培試験について本件鑑定書は,「栽培試験では,・・・K2株とG株との比較では外観上の明瞭な相違は認められなかった。収量,菌柄の太さ及び長さには有意差が認められるものの,菌さんの大きさ,菌さんの厚さ,有効茎数には有意差は認められなかった。」としており,これも,「3菌株は遺伝的に別の特性を有するということは言えない」との結論の根拠になっている。 K1株とK2株の栽培特性が異なる結果となった原因について 本件鑑定書は,「K1株とK2 れも,「3菌株は遺伝的に別の特性を有するということは言えない」との結論の根拠になっている。 K1株とK2株の栽培特性が異なる結果となった原因について 本件鑑定書は,「K1株とK2株は同一菌株であるはずだが,本試験結果では大きく栽培特性が異なる結果となった。」とし,「その原因として,2菌株の保管管理状況の相違が考えられる。ナメコは自然に脱二核化が起こり,二核菌糸の植え継ぎ回数が多くなるにつれてクランプ結合数がかなり急激に減少する傾向が報告されている。また,菌株の植え継ぎによって栽培特性と菌叢の変化が生じ,子実体収穫時期や収量に明確な影響を与え,菌株の保管管理状態によっては脱二核化による子実体の発生不良現象を引き起こすことが報告されている。また,脱二核化した菌糸はオガ粉培地においても菌廻りが薄く,培地全体が軟弱化するとする報告がある。そのような発生不良株は発生操作後に害菌の侵害を受け,栽培を継続できない培地が多発する。本試験結果においても子実体発生不良であったK1株は菌廻りが薄く(写真.13)培地全体が軟弱化し,発生操作後に著しい害菌の侵害を受けた(写真.14)。K1株の寒天培地上菌糸を検鏡したところ,二核菌糸の特徴であるクランプ結合は確認できなかった(写真.25)。」としている。 本件試験の結果は,科学的,かつ,合理的なものであり,信用に値するが,栽培試験の一部について若干の疑義があり,その疑義を解明するために現在利用可能な方法は,DNA分析である。 ウ A報告及びA追加報告について鳥取大学農学部A作成の平成25年10月4日付け報告書(以下「A報告」という。甲19)に示されるように,本件試験で使用された本件登録品種の菌株(K1株)が子実体不発生のため,同菌株と原告の保有するN006号の菌株(K2株)に関し,原 月4日付け報告書(以下「A報告」という。甲19)に示されるように,本件試験で使用された本件登録品種の菌株(K1株)が子実体不発生のため,同菌株と原告の保有するN006号の菌株(K2株)に関し,原告が考案したDNA分析を行ったところ,両菌株が同一であることが明らかとなった。 ただし,A報告では,この点が,完全に解明されたとは言い難かったため,鳥取大学農学部A作成の平成26年5月20日付け報告書(以下「A 追加報告」という。甲22)が作成された。 A追加報告は,A報告では,「プライマー1295AG8T-3においては,種苗管理センターより送付された菌株において,バンドの消失と思われる現象が見られ,パターンが一致しなかった。」ことを踏まえ,追加のDNA分析を行ったものである。その結果,「KX-N006号(種)の子実体形成不良及びプライマーセット1295AG8T-3で増幅される約900bpのバンドの消失は,共に,原菌株であるKX-N006号(キ)の一核化(脱二核化)が原因であることで説明可能である。」とされ,さらに,K1株とK2株の同一性に関し,「種苗管理センター菌株(判決注:K1株)とキノックス社保存菌株(判決注:K2株)が同一であること(厳密には種苗管理センター残存B核とキノックス社菌株B核の同一性)の証明が必須である。・・・両B核DNAの相同性について,さらに多くの変異座について調べ,これらのマルチローカス遺伝子型が偶然一致することの確率を算出することで,同一性を示すことが近道のように思われる。そこで,今後は,次世代シーケンサーによるSNP探索(Rad-seqまたは別手法)を検討する必要があると考える。」とされた。 エ原告の食用菌研究所の解説について原告の食用菌研究所では,同研究所の研究者が考案したDNA分析につい よるSNP探索(Rad-seqまたは別手法)を検討する必要があると考える。」とされた。 エ原告の食用菌研究所の解説について原告の食用菌研究所では,同研究所の研究者が考案したDNA分析について,「STS(SequenceTaggedSites)化した10塩基前後のプライマーでPCR(判決注:DNA断片増幅技術)を行って,出現する特定のバンドによって品種を識別するというイネなどの植物の品種識別で広く採用されているRAPD(RandomAmplifiedPolymorphicDNA)-STS法を採用することで,再現性が劣るといわれているRAPD法の欠点を補い,再現性良く品種間の識別を行うことが可能な解析方法となっている。」と解説し(甲20の1),この方法が2007年に日本きのこ学会誌(Vol.15,No.4)(甲20の2)に掲載されている。 オ B報告について東北大学大学院農学研究科B作成の平成26年7月18日付け「第9637号なめこ種(KX-N006号)から人為的に作出された単核株と,当該品種の種苗管理センター保管株との間の遺伝的同一性に関するDNA塩基配列分析結果報告」(以下「B報告」という。甲23)では,その「背景」の項で,「本研究室では,次世代シーケンサーを用いて簡便かつ効率的にゲノムDNA内の数多くの領域のDNA塩基配列を読み取って比較する新手法を開発し,動物や植物の種内変異の検出に有用であることを確認している(B,2014年日本森林学会発表〔判決注:甲24〕)。 そこで本分析実験では,この手法を用いてゲノムDNA内の複数領域の塩基配列を比較し,KX-N006号のプロトプラスト再生一核菌糸株と種苗管理センター保有株との遺伝的同一性について鑑定を行った。」とした上,「結果と考察」の項で,「鳥取大学で ムDNA内の複数領域の塩基配列を比較し,KX-N006号のプロトプラスト再生一核菌糸株と種苗管理センター保有株との遺伝的同一性について鑑定を行った。」とした上,「結果と考察」の項で,「鳥取大学でB核と判定された4-24,4-48,5-10の3つのDNA塩基配列を比較すると,これらは全て共通の配列(遺伝子型)を示しており,同じ核から由来する遺伝的に同一の株であることが明瞭に示された。」「種苗管理センター株(判決注:K1株)は2核菌糸(N+N)の株ではなく,(N)すなわち脱二核化した単核株であるとする推定を強く示唆する結果であると解釈できる。また,各座の遺伝子型について比較を行ったところ,種苗管理センター株は,すべての遺伝子座でB核の遺伝子型と完全に一致した。」「以上の鑑定嘱託の結果,種苗管理センター保管の第9637号なめこ種KX-N006号株(判決注:K1株)は,(株)キノックス社保管のKX-N006株(判決注:K2株)が脱二核化(A核が欠落)した単核株(B核のみ)であると結論する。」としている。 カ比較栽培試験の結果に対する疑念の解消について比較栽培試験で同一性について立証すべきであることは当然であるが, 本件試験の結果,品種登録時に種苗管理センターに提出した種菌の保存状況に若干問題があり,比較栽培試験の結果に若干の疑念が生じたので,その点を補完すべく上記の各種DNA分析を利用して,比較栽培試験の結果生じた若干の疑念の解消を図ったものである。この方法が認められなければ,正規の手続を行って本件品種登録をした育成者権者の正当な権利確保が不可能となってしまう重大な事態を招来する。 キ小括以上より,被告らが販売している被告製品は,違法に育成された本件登録品種の種苗を使用して栽培された収穫物であり,被告らの行為は,本 権利確保が不可能となってしまう重大な事態を招来する。 キ小括以上より,被告らが販売している被告製品は,違法に育成された本件登録品種の種苗を使用して栽培された収穫物であり,被告らの行為は,本件育成者権を侵害する。 (被告らの主張)(1) DNA分析について原告は,DNA分析の結果から,被告組合の生産・販売していたなめこが侵害品であると主張するが,DNA分析は,なめこの品種識別方法として確立されていないから,被告組合が本件育成者権を侵害しているとはいえない。 すなわち,DNA分析は,単に遺伝的特性の判定ができるだけであって,比較栽培試験を実施しなければ得られない栽培特性,すなわち,品種登録簿の特性表に掲載された重要な形質などを創出して,対比判定など行うことは不可能である。栽培特性は,実際に現物同士を同一条件で栽培してみなければ得られないものである。 したがって,DNA分析によっては,品種が類似するかどうかの判定はできない。 (2) 被告組合と被告会社とは異なること被告会社は,被告組合とは別の法人格を有する法人であり,被告会社と原告との間で本件許諾契約が締結されたものではない。 被告会社は,その設立当時から,なめこ種菌を第三者から正規に入手し, これを自家増殖することによりなめこの生産等を実施して,現在に至っているところ,なめこは,種苗法施行規則16条の植物ではなく,種苗法21条3項の場合には当たらないことから,同条2項の規定により,被告会社のなめこの生産等の実施には,本件育成権者の効力は及ばない(判決注:上記主張は,被告会社が第三者から入手した種菌の中に,本件登録品種に係るものが含まれていたとすれば,それは最初に原告によって譲渡されたものと考えられるという趣旨を含むものと善解される。)。 本件試験に供さ は,被告会社が第三者から入手した種菌の中に,本件登録品種に係るものが含まれていたとすれば,それは最初に原告によって譲渡されたものと考えられるという趣旨を含むものと善解される。)。 本件試験に供されたG株は,被告組合ではなく,被告会社が生産・販売したなめこから採取されたものであるところ,上述したところによれば,被告会社が原告との関係で無断増殖を行ったとか,本件育成者権を侵害したなどの誹りを受ける理由はない。 したがって,仮に,本件試験の結果が原告の主張に沿うものであったとしても,被告会社との関係では無意味なものであり,被告組合との間においては何ら関係ないものである。 (3) 現物主義について原告は,現物主義によって判断すべきである旨主張するが,現物主義は,AとBが同一品種であるか否かを判断するには,常に植物体を比較する必要があるというものであるから,原告は,本件鑑定嘱託に基づく試験に供されたK1株とG株との比較栽培試験結果を示すべきであるが,同試験の結果において,それは示されていない。 仮に,比較栽培試験にK2株を介在させて行う場合は,まず,K2株とK1株との同一性を試験し,同一の場合にG株との同一性の有無の判別が可能になるが,既にこの試験は実施できない状態になっている。 (4) 専門委員によって示された見解について平成25年5月7日の第17回弁論準備手続期日に立ち会った専門委員からは,本件鑑定書ではK1株とK2株との関係が不明であることが指摘され た。原告は,この指摘事項を明らかにするため,A報告において,K1株とK2株のDNA分析を行い,バンドパターンを比較したが,K1株にバンド消失と思われるパターンが一致しないものが見つかった。「このバンド消失の原因は,・・・種苗管理センター保有の菌株の子実体形成能が,失わ 株のDNA分析を行い,バンドパターンを比較したが,K1株にバンド消失と思われるパターンが一致しないものが見つかった。「このバンド消失の原因は,・・・種苗管理センター保有の菌株の子実体形成能が,失われている事実から類推すると,異なる菌株であると考えるよりは,むしろ,一核化等の菌株の劣化によるものである可能性が高いと考えられる。」とされた。 しかし,その後,平成26年1月24日の第22回弁論準備手続期日に立ち会った専門委員からは,この考えを否定する見解,つまり,K1株とK2株とはDNA分析でも同一とはいえないという見解が示された。 A追加報告では,バンドパターンが一致しなかったことを踏まえ,追加のDNA分析を行ったものであるが,①なぜバンドは消失したのか,②KX-N006号は一核化しているのかを調査したところ,①については,プライマーセット1295AG8T-3で増幅される約900bpのバンド消失は,当該領域がKX-0006号の二核株に存在する対立遺伝子に由来するものであって,片方の核が脱落し,一核化する際に,2つの遺伝子のうち,対立遺伝子間のわずかな配列の違いにより,プライマ―セット1295AG8T-3では増幅できない方の遺伝子を有する核が残ったと考えられる旨,②については,一核化した他の株と同様のバンドパターンを示すことから,種苗管理センターで保管されていたKX-N0006号も一核化したと考えられる旨が報告されている。 しかし,この結論は,新手法の解析及び設計によるものであって,未だ普及して広く採用されている方法でなく,研究段階のものであるから,将来性に期待できる方法であるとしても,本件に適用することは時期尚早である。この手法が未だ研究段階にあることは,A追加報告の「今後の展開」において,「種苗管理センター菌株とキノックス社保存菌 から,将来性に期待できる方法であるとしても,本件に適用することは時期尚早である。この手法が未だ研究段階にあることは,A追加報告の「今後の展開」において,「種苗管理センター菌株とキノックス社保存菌株が同一であること・・・の証明が必須である。そのためには各種方法があると考え られるが,両B核DNAの相性について,さらに多くの変異座について調べ,これらのマルチローカス遺伝子型が偶然一致することの確率を算出することで同一性を示すことが近道のように思われる。そこで,今後は,次世代シーケンサーによるSNP探索(RAd-seqまたは別手法)を検討する必要があると考える」とあることからもうかがえる。 また,原告から提出されたB報告の結論も新手法によって導出されたもので,これを本件に適用することは時期尚早である。研究段階にあることは,第125回日本森林学会講演要旨集(甲24)の「15-04 次世代DNAシーケンシングによる森林分子生態学研究」において,「次世代シーケンサー」は,「この新手法によってこれまで得られた成果を紹介し,その利用可能性や問題点等について議論し,森林分子生態学的研究分野における次世代シーケンシング技術に貢献したいと考えている」とされていることからも明らかである。 以上から,A報告,A追加報告,B報告によっても,K1株とK2株とは同一とはいえないという先の専門委員の見解が変更されるとは考えられない。 2 争点2(本件各請求は信義則違反又は権利濫用として許されないか)(被告らの主張)(1) なめこ種菌は,長期間栽培特性を安定的に維持することが難しく,原告から供給された種菌に不良品が生じたことは,きのこ業界において周知の事実である。 本件鑑定書及びA報告からみると,原告が本件登録品種の種菌として種苗管理センターに 定的に維持することが難しく,原告から供給された種菌に不良品が生じたことは,きのこ業界において周知の事実である。 本件鑑定書及びA報告からみると,原告が本件登録品種の種菌として種苗管理センターに寄託した種菌の栽培株(K1株)では栽培試験ができず,したがって,その特性も不明なものとなっている。このため,本件登録品種は,品種登録の要件のうち,均一性(同一の繁殖の段階に属する植物体のすべてが特性の全部において十分に類似していること)及び安定性(繰り返し繁殖させた後においても特性の全部が変化しないこと)を喪失しており,これは 品種登録の取消事由(種苗法49条1項2号,3条1項2号及び3号)に該当するものとなっている。 このような状態で,原告が種菌を供給しなくなった後も,被告組合が本件登録品種の種苗から収穫物であるなめこの生産・販売を継続し,侵害行為をしているとなどとする原告の主張は,信義則違反ないし権利濫用というべきであり,認められない。 (2) 原告が被告組合に納品した種菌に多数の不良品が混入していたこと本件登録品種の種菌は,原告から被告組合に対し,本件許諾契約に基づき,毎月10本納品されていたが,取引開始からほぼ1年半後の平成15年4月には,納品された種菌からなめこが発生せず,あるいは,発生したものの栽培したなめこに品種登録時の特性が出ない不良が見つかったので,被告組合は,同月15日,10本を原告に返品した。その後,平成15年5月から平成16年2月の間は納品がなく,同年3月から納品が再開されたが,これらにも不良品が混入していたため,被告組合は,平成16年6月1日,平成17年12月21日,平成18年10月1日及び平成19年2月1日,それぞれ1本ずつ返品し,同月7日には12本返品した。また,被告組合は,同年9月1日,通常よ め,被告組合は,平成16年6月1日,平成17年12月21日,平成18年10月1日及び平成19年2月1日,それぞれ1本ずつ返品し,同月7日には12本返品した。また,被告組合は,同年9月1日,通常より多い20本を購入したが,これにも大量の不良品が含まれており,同年10月以降,原告は,一方的に納品を中止し,現在に至っている。 ところで,被告組合の空調栽培施設は,設立当初から使用していた種菌,いわゆる自家菌と,その後,原告から購入した本件登録品種(KX-N006号)の両方に使用でき,被告組合代表者が発明し,特許を取得したキノコの培地及びキノコ栽培法により栽培できる施設となっている。この空調栽培施設は,種菌との相性が重要であり,相性が合わないとなめこが発生せず,発生しても商品にならないなめこが育ってしまう危険性がある。そのため,種菌の選定は最も重要なこととなっている。 上記のとおり,原告から被告組合に納品された本件登録品種の種苗に不良品が見つかった後,原告は,被告組合に対し,本件登録品種の供給が難しくなると告げ,新たな登録品種(KX-N008号)への切替えを勧めた。そこで,被告組合は,自らの空調栽培施設に適合するかを試験するため,平成17年8月にこれを購入してみたが,KX-N008号については,本件登録品種(KX-N006号)に比較すると,栽培環境が違い,栽培期間が長くなるなどの課題が見つかり,栽培施設の改造が必須となって,被告組合の空調栽培施設には適合しないことが判明した。被告組合は,平成18年9月以降も,数回に分けて,KX-N008号を試験してみたが,やはり適合しなかった。そこで,被告組合は,原告に対し,本件登録品種(KX-N006号)の種菌の納品を要請したが,原告は,平成19年10月以降,一方的に本件登録品種の納品を中 8号を試験してみたが,やはり適合しなかった。そこで,被告組合は,原告に対し,本件登録品種(KX-N006号)の種菌の納品を要請したが,原告は,平成19年10月以降,一方的に本件登録品種の納品を中止したのである。 なお,本件許諾契約は解除されておらず,現在も有効に存在しているから,原告は,被告組合に対し,本件登録品種(KX-N006号)の種菌を供給する義務を負っている。 (3) 原告は,平成19年10月以降,被告組合に一方的に納品を中止したことについて合理的な説明をしていない。 原告は,株式会社きのこ本舗に対し,平成23年2月まで,本件登録品種(KX-N006号)の種菌とするものの販売をしてきたとも主張するが,これが本件登録品種と同一の特性を備えた種菌であるかは不明であるし,原告が,本件登録品種の種菌をそれ以降も保有し,販売できる状態にあるのかも不明である。 かえって,原告のウェブサイトでは,平成20年3月現在の情報及び平成23年3月現在の情報として,本件登録品種の種菌の販売をしていないことが明らかにされており(乙20,29),現在も同様であると考えられる。 (4) 空調栽培用なめこ種菌は栽培特性が不安定で寿命が短いこと 空調栽培用なめこ種菌は,栽培特性が不安定で,しかも寿命が短い欠点がある。 このことは,竹原太賀司「試験場だよりナメコ栽培特性の安定化をめざした新品種の育成」(乙27の6)のほか,熊田洋子ほか「ナメコ種菌の安定性向上技術の開発」(乙33)において,「ナメコ・・・発生不良株は,脱二核化した受容核になれない扁平な菌叢を構成する菌糸が植継ぎより増加し,最終的に全体が扁平な菌叢に変化して,子実体が形成されなくなる現象が観察されている。・・・ナメコ菌株の寒天培地による継代培養は,保存期間の長期化により脱二核 な菌叢を構成する菌糸が植継ぎより増加し,最終的に全体が扁平な菌叢に変化して,子実体が形成されなくなる現象が観察されている。・・・ナメコ菌株の寒天培地による継代培養は,保存期間の長期化により脱二核化の危険性が高くなるが,扁平な菌叢の占有率が30%以下の菌株では,気中菌糸が密な菌叢部から連続的に植継ぎを行えば,栽培特性の変化と脱二核化の危険性が低い。しかし,多くの菌株を植えて保存することは作業面から難しいため,ナメコにおいては,比較的長期間栽培特性を安定的に保つ保存法の開発が必要である。」と記載されていることから,明らかである。 本件登録品種(KX-N006号)も空調施設栽培用種菌であるため,同様の欠点を抱えており,品種登録時の特性を維持できなくなっているものと思われる。 また,本件登録品種(KX-N006号)は,そもそもその誕生の履歴からみても,品種登録時の特性を維持することが難しい種菌であると考えられる。すなわち,本件登録品種に係る品種登録願の「1.出願品種の植物体の特性」には,「この品種は出願者の極早生品種「東北N104号」の子実体から組織分離を繰り返すことにより選抜して育成されたものである。」と記載され,「3.出願品種の育成の経過」には,「母親東北N104号,父親空白(無)」と記載されており(乙31の1),本件登録品種は,母親のみで育成されたものであって,品種登録時の特性を維持することが難しい種菌,換言すると,変化しやすい種菌であることが裏付けられる。 なお,「組織分離」とは,キノコ組織の一部を培地上で培養することをいう(乙27の3)。 (原告の主張)争う。 3 争点3(侵害行為の差止等請求及び謝罪広告の可否)(原告の主張)(1) 差止等請求被告らは,過去から現在に至るまでに原告の育成者権を う(乙27の3)。 (原告の主張)争う。 3 争点3(侵害行為の差止等請求及び謝罪広告の可否)(原告の主張)(1) 差止等請求被告らは,過去から現在に至るまでに原告の育成者権を侵害し,今後も同様の侵害行為をするおそれがあるということができる。被告組合及び被告会社の代表者を務める菅原進は,平成22年12月21日に「宮城県産めんこいなめこ」の商標の登録出願をし,平成23年6月17日に商標権の設定登録を得ている(甲27)事実からしても,今後も同様の侵害行為をするおそれを推認できる。 (2) 謝罪広告請求被告らが本件登録品種の種菌の違法な増殖により生産した収穫物を本件登録品種の正規の収穫物(原告の収穫物)より廉価で販売したことにより,本件登録品種の種菌及び菌床の価格相場や商品イメージが低下し,原告の業務上の信用が害された。そこで,原告は,被告らに対し,信用回復措置として,別紙2-1及び2-2記載の謝罪広告をそれぞれ別紙3-1及び3-2の条件で掲載することを求める。 (被告らの主張)すべて争う。 4 争点4(損害賠償請求の可否及びその額)(原告の主張)(1) 原告の業務上の信用を害したこと被告らが本件登録品種の種菌の違法な増殖により生産した収穫物を本件登 録品種の正規の収穫物(原告の収穫物)より廉価で販売したことにより,本件登録品種の種菌及び菌床の価格相場や商品イメージが低下し,原告の業務上の信用が害された。 (2) 被告組合による損害ア菌床の生産及び販売に係る損害原告は,本件登録品種の種菌を生産,販売し,被告組合は,本件登録品種の種菌を毎月50本必要としていたところ,別紙5記載のとおり,被告組合が,原告から購入した本数はそれよりも些少であり,被告組合は,必要本数から購入した本 種菌を生産,販売し,被告組合は,本件登録品種の種菌を毎月50本必要としていたところ,別紙5記載のとおり,被告組合が,原告から購入した本数はそれよりも些少であり,被告組合は,必要本数から購入した本数を差し引いた差引本数欄記載の本数を違法増殖していることになる。 また,被告組合は,平成19年7月ころ,宮城県大崎市松山18番地所在のなめこ工場を買収し,増産態勢を敷いたことにより,少なくとも4割の増産を実施した。なお,被告組合は,原告から高圧殺菌装置千代田式本体TFK40(w)(以下「高圧殺菌装置」という。)を購入しているが,この高圧殺菌装置の一日当たりの殺菌本数は4608本である(甲6の2)。 そこで,被告らは,遅くとも同年8月以降平成21年8月末日までの間は毎月70本必要としていたと考えられ(そのうち20本は被告会社の必要本数と考える。),被告らが原告から購入した本数はそれよりも些少であるから,被告らは,必要本数から購入した本数を差し引いた別紙5記載の差引本数欄記載の本数を違法増殖していることになる。 そして,原告は,被告組合に対し,本件登録品種の種菌を1本当たり4320円にて販売していた。すなわち,原告は,拡大培養する生産者に対しては,基本価格(1440円)にロイヤリティを付加した価格で販売していた。ロイヤリティは,基本価格1440円を100倍にした金額(144万4000円)の2パーセントに当たる額(2880円)とし, 原告は,被告組合に対し,4320円(=1440円+2880円)で販売していた。 原告の製造原価は,1本当たり,基本価格(1440円)の20パーセントである288円であり,別紙5によれば被告らの違反本数の合計は5022本であり,被告組合の違反本数は,被告会社の違反本数500本(=20本×平成19年8月 り,基本価格(1440円)の20パーセントである288円であり,別紙5によれば被告らの違反本数の合計は5022本であり,被告組合の違反本数は,被告会社の違反本数500本(=20本×平成19年8月から平成21年8月までの25か月分)を引いた4522本(=5022本-500本)となるから,必要経費は,130万2336円(=288円×4522本)である。 したがって,原告が被告組合の行為によって被った損害は,販売利益の合計1953万5040円(=4320円×4522本)から130万2336円を引いた1823万2704円である。 イ本件調査費用 63万8144円原告は,本件の調査費用[交通費+品種識別経費]として,次のとおり,合計63万8144円を費やした。 交通費合計11万4144円①仙台,築館,大崎の各法務局への交通費1万5600円②平成20年9月16日の原告の営業部長の築館への交通費4350円(甲7の1)③平成21年3月11日の原告代表者の築館への交通費1万0250円(甲7の2)④平成21年4月4日の原告の営業部長の築館への交通費8994円(甲7の3)⑤平成21年4月23日の原告の営業部長の築館への交通費4350円(甲7の4)⑥平成21年5月8日の原告代表者,原告の研究所の所長,原告の営 業部長の農林水産省・知的財産課への交通費7万0600円(甲7の5)品種識別経費 52万4000円 (甲8)ウ弁護士費用本件の弁護士費用としては,150万円が相当である。 エ以上のアないしウを合計すると,原告の被った損害額は2037万0848円となる。 (3) 被告会社による損害ア菌 ウ弁護士費用本件の弁護士費用としては,150万円が相当である。 エ以上のアないしウを合計すると,原告の被った損害額は2037万0848円となる。 (3) 被告会社による損害ア菌床の生産及び販売に係る損害被告会社は,月に20本の必要本数があり,別紙5に記載のとおり,平成19年8月から平成21年8月までの25か月間,合計216万円(=4320円×20本×25か月)の利益を得たものと考えられる。 そして,必要経費は,原告の製造原価は,1本当たり基本価格(1440円)の20パーセントである288円であり,被告会社の違反本数は,平成19年以降500本であるから,14万4000円(=288円×500本)となる。 したがって,原告が被告会社の行為によって被った損害は,合計216万円から14万4000円を引いた201万6000円である。 イ弁護士費用本件の弁護士費用としては,100万円が相当である。 ウ以上,ア及びイを合計すると,原告の被った損害額は301万6000円となる。 (被告らの主張)(1) 被告らは,既に主張したとおり,いずれも侵害行為をしていないため,原告の業務上の信用を害したという指摘は当たらない。 また,本件許諾契約に基づき,平成13年6月以降,原告から被告組合に, 本件登録品種(KX-N006号)の種菌が納品されていたが,不良品返品によるトラブルの以外には,納品本数を巡るトラブルはなく,良好な信頼関係で取引が継続されてきたのであり,必要本数が月に50本あったということはない。 (2) 仮に,必要本数が月に50本であったとしても,商行為によって生じた債権であり,事実があった時から5年を経過しているため,既に消滅時効が完成している。 (3) 被告組合と被告会社は別人格であり,原告が主 ,必要本数が月に50本であったとしても,商行為によって生じた債権であり,事実があった時から5年を経過しているため,既に消滅時効が完成している。 (3) 被告組合と被告会社は別人格であり,原告が主張する売上減の数量は,原告と本件許諾契約を締結していない被告会社には,妥当しない。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件育成者権侵害の有無)について(1) 育成者権侵害の有無に関する判断基準についてア種苗法は,「新品種の保護のための品種登録に関する制度,指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより,品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り,もって農林水産業の発展に寄与すること」(同法1条)を目的とし,同法3条1項に掲げる要件を備えた品種の育成(人為的変異又は自然的変異に係る特性を固定し又は検定すること)をした者(又はその承継人)は,出願審査登録制度(同法第二章品種登録制度参照)に基づく品種登録を受けることにより発生した育成者権を取得し(同法19条1項),一定期間,当該登録品種の利用について排他的独占ができることを規定する(同条2項,同法20条)。植物体の新品種の育成には,専門的知識,技術,経験のほか,長期の年月,多大な労力,資金等を要する場合が多い一方,植物の性質上,いったん新品種が育成されると,これを第三者が増殖することは容易であることから,新品種の育成者の権利を法律上保護する必要があるとして,平成10年法律第83号により全面改正されたものである。 種苗法の上記規定は,新たな発明を公開し,産業の発達に貢献したことの代償(報償)として,特許登録要件を備えた発明をした者に対しては,特許権という当該特許発明の実施を占有する権利を与えるのと同様,新しい農林水産植物の品種を育成した者に対しては,新しい品種を社会に の代償(報償)として,特許登録要件を備えた発明をした者に対しては,特許権という当該特許発明の実施を占有する権利を与えるのと同様,新しい農林水産植物の品種を育成した者に対しては,新しい品種を社会に提供することにより農林水産業の発展に寄与したことの代償(報償)として,育成者権という排他的独占力を有する強力な権利を与えたものと解せられる。 イところで,種苗法においては,育成者権の及ぶ範囲について,「品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種」を「業として利用する権利を専有する。」と定める(同法20条1項本文)のみで,育成者権の権利範囲の解釈について特許法70条のような規定は置かれていない。 しかし,種苗法において「品種」とは,「重要な形質に係る特性」(特性)の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ,かつ,その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合」(同法2条2項)とされ,「農林水産大臣は,農業資材審議会の意見を聴いて,農林水産植物について農林水産省令で定める区分ごとに,第二項の重要な形質を定め,これを公示する」(同条7項)と定められていること,また,品種登録の要件として,「品種登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた他の品種と特性の全部又は一部によって明確に区別されること」(同法3条1項1号,明確区別性),「同一の繁殖の段階に属する植物体のすべてが特性の全部において十分に類似していること」(同項2号,均一性),「繰り返し繁殖させた後においても特性の全部が変化しないこと」(同項3号,安定性)の要件を全て満たして初めて新品種としての登録が認められ,農林水産大臣は,品種登録出願につき前条(品種登録出願の拒絶)第1項の規定により拒 においても特性の全部が変化しないこと」(同項3号,安定性)の要件を全て満たして初めて新品種としての登録が認められ,農林水産大臣は,品種登録出願につき前条(品種登録出願の拒絶)第1項の規定により拒絶する場合を除いて品種 登録をしなければならない」(同法18条1項)とされている。そして,品種登録の際には,「品種登録は品種登録簿に次に掲げる事項を記載してするものとする。・・・四品種の特性)」(同条2項),「農林水産大臣は,第1項の規定による品種登録をしたときは・・・農林水産省令で定める事項を公示しなければならない。」(同条3項)とされており,これらの種苗法に掲げられた諸規定を総合して解釈すれば,新たな品種として登録を認められた植物体とは,特性(重要な形質に係る特性)において,他の品種と明確に区別され,特性(重要な形質に係る特性)において均一であり,特性(重要な形質に係る特性)において変化しないことという要件を満たした植物体であって,その特性(重要な形質に係る特性)は品種登録簿により公示されることになっているのであるから,品種登録簿の特性表に掲げられた重要な形質に係る特性は,当該植物体において他の品種との異同を識別するための指標であり,これらの点において他の品種と明確に区別され,安定性を有するものでなければならないものというべきである。 そして,上記の点は,農水省解説において採用されているところの,登録品種と侵害が疑われる品種が「同一品種であるか否かを判断するには,常に植物自体を比較する必要がある」という現物主義(原告は,この立場によるべきであると主張している。)の下でも,妥当するといわなければならない。すなわち,育成者権の侵害を認めるためには,少なくとも,登録品種と侵害が疑われる品種の現物を比較した結果に基づいて,後者が によるべきであると主張している。)の下でも,妥当するといわなければならない。すなわち,育成者権の侵害を認めるためには,少なくとも,登録品種と侵害が疑われる品種の現物を比較した結果に基づいて,後者が,前者と,前者の特性(特性表記載の重要な形質に係る特性)により明確に区別されない品種と認められることが必要であるというべきである(なお,「明確に区別される」かどうかについては,特性表に記載された数値又は区分において,その一部でも異なれば直ちに肯定されるものではなく,相違している項目,相違の程度,植物体の種類,性質等をも勘案し,総合し て判断すべきである。仮に,品種登録簿の特性表に記載された特性をもって,特許権における特許請求の範囲のごとく考える立場〔以下「特性表主義」という。〕によるとすれば,侵害が疑われる品種について,(登録品種の現物ではなく)登録品種の品種登録簿の特性表記載の特性と比較して,登録品種と明確に区別されない品種と認められるか否かを検討すれば足りることになるが,その場合においても,「明確に区別される」かどうかを総合的に判断すべきことは同様である。)。 (2) 鑑定嘱託の結果についてア本件鑑定書の「5.考察」には,次のとおり記載されている(鑑定嘱託の結果)。 「菌糸性状試験では,異菌株判別法の一つである対峙培養から3菌株間に帯線及び嫌触反応が全く観察されなかった。また各項目においても3菌株間に明瞭な相違は確認されなかった。一方,菌糸成長最適温度及び菌糸体成長温度では温度帯によって有意差が認められるものが確認された。 栽培試験では,K1株において子実体発生を確認できなかった。菌廻りも遅延する傾向があり,発生操作後トリコデルマ等の害菌の被害を容易に受け,子実体発生までに至らなかった。K2株とG株との比較では外観 栽培試験では,K1株において子実体発生を確認できなかった。菌廻りも遅延する傾向があり,発生操作後トリコデルマ等の害菌の被害を容易に受け,子実体発生までに至らなかった。K2株とG株との比較では外観上の明瞭な相違は認められなかった。収量,菌柄の太さ及び菌柄の長さには有意差が認められるものの,菌さんの大きさ,菌さんの厚さ,有効茎数には有意差は認められなかった。 ナメコ空調栽培では,種菌が原因と考えられる子実体の発生不良がしばしば起こる。その原因として種菌の微生物学的純粋性と熟度の問題及び母菌の継代過程で劣化・退化と称される菌株の性質の変化が指摘されている。 本鑑定に供試した種苗登録されたK1株とK2株は同一菌株であるはずだが,本試験結果では大きく栽培特性が異なる結果となった。その原因として,2菌株の保管管理状況の相違が考えられる。ナメコは自然に脱二核化 が起こり,二核菌糸の植え継ぎ回数が多くなるにつれてクランプ結合数がかなり急激に減少する傾向が報告されている。また,菌株の植え継ぎによって栽培特性と菌叢の変化が生じ,子実体収穫時期や収量に明確な影響を与え,菌株の保管管理状態によっては脱二核化による子実体の発生不良現象を引き起こすことが報告されている。また,脱二核化した菌糸はオガ粉培地においても菌廻りが薄く,培地全体が軟弱化すると報告がある。そのような発生不良株は発生操作後に害菌の侵害を受け,栽培を継続できない培地が多発する。本試験結果においても子実体発生不良であったK1株は菌廻りが薄く(写真.13),培地全体が軟弱化し,発生操作後に著しい害菌の侵害を受けた(写真.14)。K1株の寒天培地上菌糸を検鏡したところ,二核菌糸の特徴であるクランプ結合は確認できなかった(写真. 25)。 これらの母菌や種菌の変異については,林野庁森林総 い害菌の侵害を受けた(写真.14)。K1株の寒天培地上菌糸を検鏡したところ,二核菌糸の特徴であるクランプ結合は確認できなかった(写真. 25)。 これらの母菌や種菌の変異については,林野庁森林総合研究所を中心として研究が行われ「きのこ変異判別と変異発生予防」(農林水産省相林水産技術会議事務局・林野庁森林総合研究所,1999)としてまとめられている。種菌メーカーはこれらを基に独自の基準をもって品質管理を行っていると考えられ,K2株は比較的良好な条件で管理されていたものと推察される。 以上のことから,本試験結果の菌糸性状試験及び栽培試験の調査項目の一部に有意差は認められるが,3菌株は遺伝的に別の特性を有するということは言えない。」イ本件鑑定書の「5.考察」では,3菌株(K1株,K2株,G株)を用いて行った菌糸性状試験の調査項目の一部に有意差が認められるとしているにもかかわらず,その有意差が本件登録品種の特性と異なるのか,異なるとすればそれはどの程度かについて,何らの見解も示しておらず,有意差が認められるにもかかわらず,「3菌株は遺伝的に別の特性を有すると は言えない」との結論が導かれた理由は,不明であるといわざるを得ない。 また,本件鑑定書の「5.考察」では,栽培試験の結果について,K1株においては子実体発生を確認できなかったとして,K2株とG株の比較について言及するものの,本件鑑定嘱託における鑑定嘱託事項である「品種登録原簿に記載された重要な形質に係る特性と異なるか否か,異なる場合にはその異なる程度(明確に区別できる程度か否か)について判定する」ことは,行われていない。 したがって,鑑定嘱託の結果に基づいて,G株(被告会社の販売に係る被告製品から抽出した種菌の栽培株)に係る品種がK1株(本件登録品種の種菌として 否か)について判定する」ことは,行われていない。 したがって,鑑定嘱託の結果に基づいて,G株(被告会社の販売に係る被告製品から抽出した種菌の栽培株)に係る品種がK1株(本件登録品種の種菌として種苗センターに寄託されたものの栽培株)に係る品種と「特性により明確に区別されない」と認めることはできないし,G株に係る品種がK2株(原告が本件登録品種の種菌として保有していたと主張するものの栽培株)に係る品種と「特性により明確に区別されない」と認めることもできない。 なお,鑑定嘱託の結果に基づいて,K2株に係る品種が本件登録品種であると認めることができないことは,いうまでもない。 ウ本件鑑定嘱託における鑑定嘱託事項は,登録時審査基準に基づく特性項目ではなく,その後に制定された新審査基準に基づいた特性項目に係るものであって,本件特性表における特性項目と一致していないところがあり,すべての項目にわたって比較することはできないが,仮に,本件鑑定書に示されたデータを用いて,本件特性表に記載された本件登録品種の特性と本件試験に供されたG株に係る品種の特性との対比を試みるとすれば,別紙6「品種登録時における「重要な形質に関する特性」と鑑定に供されたG株の特性の対比」に記載のとおりとなる(品種登録時の項目の括弧内に記載された特性は,新審査基準に照らした場合の記載である。)。 このように,本件鑑定書に記載されたG株の特性と,本件登録品種の特 性表記載の特性には,異なっているように見受けられる項目が複数存在していることから,仮に特性表主義の立場に立った場合であっても,G株の特性が本件登録品種の特性表記載の特性と「特性により明確に区別されない」ことが立証されているとはいえない。 (3) 原告の主張についてこの点,原告は,本件試験の結果 立った場合であっても,G株の特性が本件登録品種の特性表記載の特性と「特性により明確に区別されない」ことが立証されているとはいえない。 (3) 原告の主張についてこの点,原告は,本件試験の結果は信頼できるものとし,現物主義に基づき,本来は,K1株とG株の比較栽培試験により侵害の有無を判断すべきであるとしつつも,K1株の子実体不発生から,K1株と同品種であるはずの原告保有株K2株とG株を比較した本件試験の結果を根拠に両株に明確な区別は認められないとした上,K1株の子実体不発生の原因と,K1株とK2株の同一性立証のために,A報告,A追加報告,B報告を提出し,なめこにおけるDNA分析技術について甲9号証ないし甲11号証を提出し,その有用性を主張する。 確かに,DNA分析による品種識別の方法も存する(前記前提事実等に摘示した育成権侵害対策細則2条3項参照)が,一般に,DNA分析は,全ゲノムを解析するものではなく,特定のプライマーを用いることにより,品種に特徴的であると考えられる一部のDNA配列を分析するにすぎないから,品種識別に利用する際は,「妥当性が確認されたDNA品種識別技術を用いて」行うことが要求されている。乙41号証によれば,いちご,リンゴなどの一部の植物体においては品種識別技術が確立していることが認められるものの,なめこにおけるDNA分析による品種識別技術が妥当性が確認されたものとして確立されているとは認められず,A報告,A追加報告,B報告で採用されているDNA分析技術は,なめこが同一品種であるかどうかを判定するために妥当性が確認されたDNA品種識別技術であるということはできない(甲9ないし11は,いずれも原告の関与した研究成果に係るものであり,A報告,A追加報告,B報告で採用されているDNA分析技術において 用 れたDNA品種識別技術であるということはできない(甲9ないし11は,いずれも原告の関与した研究成果に係るものであり,A報告,A追加報告,B報告で採用されているDNA分析技術において 用いられたプライマーの選択の妥当性を判断するために適切な資料とはいえない。)。 したがって,A報告,A追加報告,B報告に基づく原告の主張は,採用することができない。 (4) 小括以上によれば,被告らが本件登録品種又はこれと重要な形質に係る特性により明確に区別されないなめこの種苗の生産等を行ったとか,その収穫物を販売したと認めることは,困難であるというべきであり,ほかに被告らが本件育成者権を侵害する行為をした,あるいは,していると認めるに足りる証拠はない。 2 争点2(本件各請求は信義則違反又は権利濫用として許されないか)について(1) 上記1のとおり,被告らが本件育成者権を侵害した,あるいは,していると認めることができない以上,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件各請求は,いずれも理由がないことに帰するが,事案にかんがみ,品種登録がされた後において,登録品種が種苗法3条1項2号又は3号の要件を備えなくなったことを抗弁として主張することの可否等について,検討する。 (2) 種苗法に基づく品種登録(同法18条1項)は,農林水産大臣が行う行政処分であり,農林水産大臣は,出願品種が①同法3条1項(区別性,均一性及び安定性の具備),②同法4条2項(未譲渡性の存在),③同法5条3項(育成者複数の場合の共同出願),④同法9条1項(先願優先)又は⑤同法10条(外国人の権利享有の範囲)の規定により,品種登録をすることができないものであるときは,品種登録出願を文書で拒絶しなければならない旨定める(同法17条1項1号)とともに,品種登録が 又は⑤同法10条(外国人の権利享有の範囲)の規定により,品種登録をすることができないものであるときは,品種登録出願を文書で拒絶しなければならない旨定める(同法17条1項1号)とともに,品種登録が上記①ないし⑤の規定に違反してされたことが判明したときは,これを取り消さなければならず (同法49条1項1号),品種登録が取り消されたときは,育成者権は品種登録の時にさかのぼって消滅したものとみなされる(同条4項1号)。 そして,種苗法において特許法104条の3が準用されていないのは,特許法のように独自の無効審判制度を設けていないことによるものと考えられ,種苗法においても,品種登録が上記①ないし⑤の規定に違反してされたものであり,農林水産大臣により取り消されるべきものであることが明らかな場合(農林水産大臣は,品種登録が上記①ないし⑤の規定に違反してされたことが判明したときはこれを取り消さなければならないのであって,その点に裁量の余地はないものと解される。)にまで,そのような品種登録による育成者権に基づく差止め又は損害賠償等の請求が許されるとすることが相当でないことは,特許法等の場合と実質的に異なるところはないというべきである。なぜなら,上記①ないし⑤の規定に違反し,取り消されるべきものであることが明らかな品種登録について,その育成者権に基づいて,当該品種の利用行為を差し止め,又は損害賠償等を請求することを容認することは,実質的に見て,育成者権者に不当な利益を与え,当該品種を利用する者に不当な不利益を与えるものであって,衡平の理念に反する結果となるし,また,農林水産大臣が品種登録の取消しの職権発動をしない場合に,育成者権に基づく侵害訴訟において,まず行政不服審査法に基づく異議申立て又は行政訴訟を経由しなければ,当該品種登録がその要 果となるし,また,農林水産大臣が品種登録の取消しの職権発動をしない場合に,育成者権に基づく侵害訴訟において,まず行政不服審査法に基づく異議申立て又は行政訴訟を経由しなければ,当該品種登録がその要件を欠くことをもって育成者権の行使に対する防御方法とすることが許されないとすることは,訴訟経済に反するといわざるを得ないからである。したがって,品種登録が取り消される前であっても,当該品種登録が上記①ないし⑤の規定に違反してされたものであって,取り消されるべきものであることが明らかな場合には,その育成者権に基づく差止め又は損害賠償等の権利行使は,権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である(最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決・民集54巻4号1368頁,知財高裁平成18年12月21日判決・ 判例タイムズ1237号322頁参照)。 ところで,品種登録がされた後において,登録品種が種苗法3条1項2号又は3号に掲げる要件を備えなくなったことが判明したときも,品種登録の取消しの効果自体は遡及しない(同法49条4項柱書本文)ものの,農林水産大臣が品種登録を取り消さなければならず(同条1項2号),その点に裁量の余地はないことは,同様であると解される。そうすると,このような後発的取消事由が発生したことが明らかな品種登録について,その事由の発生後,未だ農林水産大臣によって品種登録が取り消されていないという一事をもって,その育成者権に基づいて,当該品種の利用行為を差し止め,又は損害賠償等を請求することを容認することは,実質的に見て,育成者権者に不当な利益を与え,当該品種を利用する者に不当な不利益を与えるものであって,衡平の理念に反するとともに,訴訟経済にも反するというべきである。 したがって,品種登録が取り消される前であっても,当該登録 当な利益を与え,当該品種を利用する者に不当な不利益を与えるものであって,衡平の理念に反するとともに,訴訟経済にも反するというべきである。 したがって,品種登録が取り消される前であっても,当該登録品種が同法3条1項2号又は3号に掲げる要件を備えなくなったことが明らかな場合には,そのことが明らかとなった後は,その育成者権に基づく差止め又は損害賠償請求等の権利行使は,権利の濫用に当たり許されないと解するのが相当である。 (3) 本件品種登録が取り消されるべきことが明らかといえる事由があるかについて,以下検討する。 後掲各証拠によれば,次の各事実が認められる。 ア原告と被告組合は,平成10年6月10日,本件登録品種について,本件許諾契約を締結し,平成13年8月頃から,被告組合は,原告から,毎月10本程度の本件登録品種の種菌を購入し,これを本件許諾契約に基づいて増殖使用して,なめこの栽培を繰り返していた(甲3)。 イ平成15年4月には,原告から被告組合に対して納入された種菌に,なめこが発生せず,あるいは,発生したものの栽培したなめこに品種登録時 の特性が出ない不良が見つかったため,10本返品したことがあり,それ以降,1年に1度程度,不良品が見つかった際には返品した(乙45,弁論の全趣旨)。 ウ平成19年1月,同年2月にも,原告から被告組合に納入された種菌に不良品が見つかったことから,被告組合は,同年19年9月には通常より多い20本を原告から購入したが,不良品が含まれていた(弁論の全趣旨)。 エ平成19年10月以降,原告は,被告組合に対し,本件登録品種の種菌の供給を中止し,その理由については明確にせず,また,本件許諾契約も解除していない(当事者間に争いがない。)。 オ原告のウェブサイトでは,「会社案内・主要商品」 被告組合に対し,本件登録品種の種菌の供給を中止し,その理由については明確にせず,また,本件許諾契約も解除していない(当事者間に争いがない。)。 オ原告のウェブサイトでは,「会社案内・主要商品」として,「登録品種一覧(2008年3月現在)」の「なめこ」欄には,「KX-N006号※」の記載があり,「※の品種は,現在販売いたしておりません。」と紹介されており(乙20),「登録品種一覧(2011年3月現在)」の「なめこ」欄にも,同様に,「KX-N006号※」の記載があり,「※印の品種は,現在販売いたしておりません。」と紹介されていた(乙29)。 なお,この点に関し,原告は,平成23年9月2日までは本件登録品種の種菌を,長崎県南島原市所在の株式会社雲仙きのこ本舗に販売していた旨主張するが,原告は,同主張を裏付ける証拠を容易に提出することができる立場にあるにもかかわらず,あえてこれを提出しないのであって,上記事実を認めることはできない。 カ空調施設栽培用なめこ種菌については,本件登録品種の品種登録前から,栽培特性が不安定で寿命が短いことが知られていた。すなわち,なめこ空調栽培に用いられる極早生系統は,子実体収量等栽培特性が不安定であるという欠点があり,従来から菌株の劣化,退化減少との関連が知られてお り,この現象は,二核菌糸(きのこ栽培に用いる倍数体菌糸)が一核菌糸(胞子から発芽するきのこを作らない菌糸)に戻ってしまう脱二核化現象と,脱二核化して生じた一核菌糸は,二核菌糸よりも成長が速いため,一核菌糸が培地に蔓延しやすいこと,せっかく選抜した優良系統も,シイタケなどと比べるとその寿命は極めて短くなっているのが実情であり,また,脱二核化した菌糸は,オガ粉培地においても菌廻りが薄く,培地全体が軟弱化し,害菌の侵害を受けや せっかく選抜した優良系統も,シイタケなどと比べるとその寿命は極めて短くなっているのが実情であり,また,脱二核化した菌糸は,オガ粉培地においても菌廻りが薄く,培地全体が軟弱化し,害菌の侵害を受けやすく,栽培を継続できない培地が多発することも知られていた(乙27の6,鑑定嘱託の結果)。 キ原告が本件品種登録時に種苗管理センターに寄託していた種菌の栽培株(K1株)について,本件鑑定書では,栽培試験において,「菌廻りも遅延する傾向があり,発生操作後トリコデルマ(判決注:不完全菌類の代表的な土壌菌の一つ)等の害菌の被害を容易に受けて,子実体発生までに至らなかった。」とされた上,その原因として,「ナメコは自然に脱二核化が起こり,二核菌糸の植え継ぎ回数が多くなるにつれてクランプ結合数がかなり急激に減少する傾向が報告されている。」「K1株は菌廻りが薄く(写真.13)培地全体が軟弱化し,発生操作後に著しい害菌の侵害を受け(写真.14)。K1株の寒天培地上菌糸を検鏡したところ,二核菌糸の特徴であるクランプ結合は確認できなかった」ことなどが示されており,脱二核化が起きたために,子実体が発生しなかったと推察されている(鑑定嘱託の結果,乙27の5,27の9)。 ク以上アないしキの事実を総合すると,本件登録品種は,遅くとも平成20年3月時点においては,原告自らが種菌として広く販売するに足りる程度に特性を維持することができないと判断していたものと認められるから,遅くとも,同時点において,種苗法3条1項2号(均一性)及び3号(安定性)に関する登録要件を欠くことが明らかとなったと認めるのが相当であり,同法49条1項2号所定の取消事由が存在することが明らかである と認められる。 (4) したがって,原告が,取消事由が存在することが 欠くことが明らかとなったと認めるのが相当であり,同法49条1項2号所定の取消事由が存在することが明らかである と認められる。 (4) したがって,原告が,取消事由が存在することが明らかな本件品種登録に係る本件育成者権に基づき,被告らに対し,差止請求及び廃棄請求をすることは,権利濫用に当たり,許されないというべきである。 また,原告の被告らに対する損害賠償請求のうち,取消事由が発生したことが明らかとなった時点以降の被告らの行為を理由とする部分についても,権利濫用に当たり,許されないというべきである。 なお,本件品種登録に取消事由が発生したことが明らかとなった平成20年3月時点より前に,被告らが本件育成者権を侵害したことにより,原告に損害が発生したと認めるに足りる的確な証拠がないことは,既に説示したとおりである。 第5 結論以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,原告の本件請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官嶋末和秀 裁判官鈴木千帆 裁判官西村康夫
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