平成29(ワ)43575 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年6月4日 東京地方裁判所
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判決文本文35,860 文字)

令和2年6月4日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第43575号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年1月20日判決 主文 1 被告Dは,原告Aに対し,3019万0065円及びこれに対する平成27年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Dは,原告Bに対し,3019万0065円及びこれに対する平成27年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告らに生じた費用の9分の1と被告Dに生じた費用の3分の1を同被告の負担とし,その余は全て原告らの負担とする。 5 この判決は,1項及び2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して,8916万3108円及びこれに対する平成27年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告Bに対し,連帯して,8916万3108円及びこれに対する平成27年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告Dの開設する本件病院において,くも膜下出血のために入院していた訴訟承継前原告亡Cが,SICUからSHCUに転床後,低酸素脳症をきたしていわゆる植物状態になり(以下,この経過を「本件事故」という。),その後に死亡したことにつき,亡Cの近親者であり亡Cの権利義務を承継した妻である原告A及び子である原告Bが,亡Cが植物状態となり死亡するに至ったのは,本 件病院の医師又は看護師(以下,併せて「医療従事者」という。)に,生体情報モ ニタのアラーム設定を誤り,これ 原告A及び子である原告Bが,亡Cが植物状態となり死亡するに至ったのは,本 件病院の医師又は看護師(以下,併せて「医療従事者」という。)に,生体情報モ ニタのアラーム設定を誤り,これを見落した過失,鎮静剤を不適切かつ過剰に投与した過失,亡Cの監視・観察を怠った過失があったほか,上記モニタ及びその管理システムを製造・販売した被告E及び被告F(以下,両者を併せて「被告Eら」ということがある。)に,製造物責任法における仕様設計上の欠陥ないし不法行為における過失,同法における指示・警告・説明上の欠陥ないし不法行為にお ける過失があったためであると主張し,被告Dに対しては債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求として,被告Eらに対しては製造物責任法又は不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求として,原告ら各自について8916万3108円及びこれらに対する本件事故の日(不法行為日)である平成27年3月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損 害金の連帯支払を求める事案である。 2 前提事実(争いがないか,後掲の証拠により容易に認定できる。)当事者ア亡Cは昭和23年7月21日生まれ(本件事故当時66歳,死亡当時71歳)の男性であり,原告Aはその妻,原告Bはその子である。 亡C及び原告らは,平成29年12月26日,本件訴訟を提起したが,亡Cは,令和元年10月1日に死亡し,原告らは亡Cの財産を法定相続分2分の1ずつの割合により相続するとともに,その訴訟上の地位を承継した(甲C21の1~3)。 イ被告Dは,本件病院を開設する学校法人である。 ウ被告Eは,医療用機械器具の製造及び販売,医療用システムの設計及び販売等を目的とする株式会社であり,被告Fは,医療用機械 の1~3)。 イ被告Dは,本件病院を開設する学校法人である。 ウ被告Eは,医療用機械器具の製造及び販売,医療用システムの設計及び販売等を目的とする株式会社であり,被告Fは,医療用機械器具・システムの販売及び賃貸借等を目的とする株式会社であり,被告Eの100%子会社である(甲C15)。 本件病院における生体情報モニタ及び管理システムの概要 ア生体情報モニタには,患者のベッドサイドに設置して心拍数,呼吸数,体 温等を同時連続的に測定するベッドサイドモニタと,ナースステーションに設置して複数の患者の状態を集中的に監視し,必要に応じて記録するセントラルモニタがある(丙A11の1・1頁)。 管理システムを導入することで,生体情報モニタによって計測・表示された情報を含めた患者に関する様々な情報を入力,集約し,病院全体で共有す ること等が容易にできる(丙A14・2頁)。 イ本件病院では,遅くとも平成26年から,SICU(外科系の集中治療室。 なお,病棟全体を指すこともある。)及びSHCU(外科系の高度治療室。なお,病棟全体を指すこともある。)において,被告E製の生体情報モニタを使用し,これらを管理するシステム(被告E製に限らない。)を導入している(争 いがない。)。 具体的には,亡Cに対するベッドサイドモニタにつき,SICUではDS-8500型を,SHCUではDS-8200型をそれぞれ使用し,セントラルモニタについては,SICU及びSHCUのいずれでもDS-7780W型を使用していた(丙A8の3)。 また,管理システムについては,SICU及びSHCUのいずれでも被告E製の急性期患者情報システム(Mirrel)及び他社製の電子カルテシステムを導入していたものの,SHCUでは医療従事者が病院内 また,管理システムについては,SICU及びSHCUのいずれでも被告E製の急性期患者情報システム(Mirrel)及び他社製の電子カルテシステムを導入していたものの,SHCUでは医療従事者が病院内情報システムに情報や指示等を入力する際に用いる情報システムとしてはMirrelを用いず,上記電子カルテシステムを利用していた(丙A2・2頁。ただし, SHCUにおけるMirrelの利用状況については,当事者間で争いがある。)。 診療経過(以下の月日は,特に断りのない限り,平成27年のものである。)ア 3月23日亡Cは,自宅で後頚部痛,嘔吐等をきたしたため,本件病院を受診し, 各種検査の結果,くも膜下出血との診断を受け,SICUに入院した(乙 A1・357,369頁)。 本件病院の医療従事者は,亡Cに対し,フェンタニル,デクスメデトミジン(いずれも鎮静剤)を静脈注射により投与した(乙A1・387,391,1919,1920頁)。 亡CのSPO2,呼吸数,血圧,脈拍等は,SICUのベッドサイドモニ タ及び同病棟のナースステーションにあるセントラルモニタに表示される状態であったところ,本件病院の医療従事者は,ベッドサイドモニタのアラーム設定に関し,SPO2,APNEA(無呼吸),心拍数,血圧のアラームをOFFにした(丙A4,丙A5)。なお,ベッドサイドモニタのアラームのうち,呼吸数,脈拍については,初めからOFFであった(甲A 10)。 イ 3月24日本件病院の医療従事者は,亡Cに対し,フェンタニル,デクスメデトミジンの持続投与に加え,ミダゾラム(鎮静剤)も静脈注射により投与していたものの,午後3時30分頃,デクスメデトミジン以外の静脈注射によ る管理を中止し(乙A1・429,431, デクスメデトミジンの持続投与に加え,ミダゾラム(鎮静剤)も静脈注射により投与していたものの,午後3時30分頃,デクスメデトミジン以外の静脈注射によ る管理を中止し(乙A1・429,431,448,450,451,453,472,1919,1920頁),その夜から,ベンゾジアゼピン系鎮静剤であるフルニトラゼパム1回2mg及びニトラゼパム1回5mgの経口投与を開始した(乙A1・451,1924頁)。 亡Cのベッドサイドモニタのアラームのうち,心拍数は午前1時22分 頃から,血圧は午後9時頃から,それぞれONに設定された(丙A4,丙A5)。 ウ 3月25日本件病院の医療従事者は,午前6時頃,デクスメデトミジンの投与を中止した(乙A1・474頁)。なお,午後9時頃,フルニトラゼパム1回2 mg及びニトラゼパム1回5mgの経口投与は実施されている(乙A1・ 1925,2038頁)。 亡Cは,同日の昼から食事を開始し(乙A1・478,1909頁),午後4時21分頃,SICUからSHCUに転床した(乙A1・489頁)。 エ 3月26日から29日まで本件病院の医療従事者は,3月26日から同月29日まで,毎日午後8時 30分頃から午後9時10分頃,亡Cに対し,フルニトラゼパム1回2mg及びニトラゼパム1回5mgの経口投与を実施した(乙A1・1922~1926,2055,2072,2089,2105頁)。 オ 3月30日亡Cは,遅くとも午前零時頃には入眠していたところ,同時刻以降,無 呼吸ないし頻呼吸の状態が複数回現れ,午前3時頃には一度目覚めて看護師と会話したものの,再び入眠し,午前4時30分頃からSPO2が95%を下回るようになり,午前4時49分頃にはSPO2が89%となった(甲A4, 吸の状態が複数回現れ,午前3時頃には一度目覚めて看護師と会話したものの,再び入眠し,午前4時30分頃からSPO2が95%を下回るようになり,午前4時49分頃にはSPO2が89%となった(甲A4,甲A8。ただし,亡Cの当時の状況については,当事者間で争いがある。)。 本件病院の医療従事者は,午前4時54分頃,点滴交換のために亡Cの病室を訪れ,午前5時頃までに,同人が呼吸停止し,顔面蒼白であること等を確認した後,午前5時2分頃,心肺蘇生措置を開始した(乙A1・598,1913頁)。 亡Cは,午前5時16分頃に心拍が再開し,午前5時36分頃に自発呼 吸が再開したものの(乙A1・598,615,619頁),低酸素脳症による重度意識障害(遷延性意識障害),四肢固縮が後遺し,同日に症状が固定したとの診断を受けた(甲A5・1頁,甲A6,甲A7)。 なお,亡Cのベッドサイドモニタのアラームの数値は,SPO2が下限値90%,APNEA(無呼吸)が上限値15秒以上,呼吸数が下限値5 回/分・上限値30回/分の設定であった(甲A10,丙A8の5)。 カ亡Cの死亡亡Cは,令和元年10月1日,多臓器不全により死亡した(甲A18)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件病院の医療従事者に,生体情報モニタのアラーム設定を誤り,これを見落した過失(過失1)があるか (原告らの主張)患者の命綱ともいうべき生体情報モニタのアラームについては,医療機関において確実な設定を行うべきといえ,本件病院においても,亡CをSICUからSHCUに転床させるに際し,転床先のベッドサイドモニタのアラーム設定に関し,SPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数のアラームをONに設定する 予定であったのであるから, ,亡CをSICUからSHCUに転床させるに際し,転床先のベッドサイドモニタのアラーム設定に関し,SPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数のアラームをONに設定する 予定であったのであるから,本件病院の医療従事者は,亡Cの転床先のベッドサイドモニタのSPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数のアラームがきちんとONに設定されているかについて確認すべきであったにもかかわらず,3月25日,一度はSHCUのベッドサイドモニタのアラームをONに設定したものの,その後に電子カルテシステム上で「転室・転床」操作を行った際,Mir relの「ベッド移動」機能を通じてセントラルモニタの「床移動」機能が働き,転床元のSICUのベッドサイドモニタでOFFとされていたアラームの設定が,転床先のSHCUのベッドサイドモニタの設定に上書きされて,上記のとおりONに設定したアラーム設定がOFFに変更されたことに気付かず,また,本件事故が発生する同月30日までの間,転床後のベッドサイドモニタ のアラームがOFFに設定されている旨の表示がされていたのに,これも見落とした。 (被告Dの主張)否認する。 通常,SICUとSHCUはそれぞれ別個のサーバを有し,セントラルモニ タはそれぞれのサーバで独立して管理するものであるところ,本件病院では, SICUとSHCUのサーバが1つであり,各病棟のセントラルモニタが同期する状態であった。SHCUのベッドサイドモニタのアラーム設定が上書きされたのは,このような本件病院が把握していなかった事情によるものであり,また,本件病院の医療従事者が,3月25日,転床先のSHCUのベッドサイドモニタのアラーム設定を一度ONにしたことからしても,生体情報モニタの アラーム設定を誤ったわけではない。また,生 あり,また,本件病院の医療従事者が,3月25日,転床先のSHCUのベッドサイドモニタのアラーム設定を一度ONにしたことからしても,生体情報モニタの アラーム設定を誤ったわけではない。また,生体情報モニタのアラーム設定はONとなっているのが基本であること,亡Cについては血圧管理のため,アラームの設定値の上下限値が重要で,こちらに意識が向きがちであったこと,ベッドサイドモニタは目線より上に位置しており,その表示も小さいこと等からすれば,本件病院の医療従事者は,アラーム設定がOFFであることを認識で きず,これを容易に気付くことができる状況になかった。 本件病院の医師に,鎮静剤を不適切かつ過剰に投与した過失(過失2)があるか(原告らの主張)ベンゾジアゼピン系鎮静剤(フルニトラゼパム,ニトラゼパム等)は,集中 治療患者に対しては,せん妄の危険因子となるため,不穏,不眠に対して使用しないこととされ,とりわけ,フルニトラゼパムについては,特に強力な鎮静効果を有していて,添付文書上,高齢者に対する用量は1日1mgまでとされていたから,本件病院の医師は,上記の場合にはこれを投与してはならず,投与するにしても過剰な投与とならないようにすべき注意義務があったにもか かわらず,3月24日以降,SICUないしSHCUにおいて保存的治療を受けていた66歳の亡Cに対し,同じベンゾジアゼピン系の鎮静剤であるフルニトラゼパム及びニトラゼパムをそれぞれ1回2mg,1回5mgの用量で連日投与したのであり,不適切かつ過剰な投与をした。 (被告Dの主張) 否認する。 フルニトラゼパム及びニトラゼパムを併用すること自体は添付文書上禁忌とされておらず,亡Cは精神科外来通院時から継続して併用していたこと,亡Cがくも膜下 Dの主張) 否認する。 フルニトラゼパム及びニトラゼパムを併用すること自体は添付文書上禁忌とされておらず,亡Cは精神科外来通院時から継続して併用していたこと,亡Cがくも膜下出血の急性期の管理下にあり,再出血予防のため十分な鎮静が必要な状態であったこと,同人が統合失調症患者で,かつ,腎機能が低下していたこと,食事ができる状態である一方,不穏や不眠症状,易怒性が出現してい たこと,SHCU転床後は,主たる鎮静を,フルニトラゼパム等の経口投与によって実施していたこと等の事情からすれば,本件病院の医師は,亡Cに対し,フルニトラゼパム及びニトラゼパムを,成人投与量の上限の範囲内で適宜増量したものであり,不適切な投与でも過剰な投与でもない。 本件病院の医療従事者に,亡Cの監視・観察を怠った過失(過失3)がある か(原告らの主張)モニタのアラーム音は患者の監視・観察における補助的手段にすぎず,モニタと測定値の目視確認や,巡視及び病室カメラを通じた目での状態観察が患者観察の基本であることは論を待たないのであるから,本件病院の医療従事者は, ベッドサイドモニタのアラーム音以外にも,モニタ測定値を目視で確認したり,巡視及び病室カメラを通じて観察したりすることで,患者の異常を早期に発見すべきであったにもかかわらず,3月30日午前5時に至るまで,亡Cにつき,午前零時以降に無呼吸になったり呼吸数が低下したりしていたこと,午前4時41分頃にはSPO2が95%以下になり,午前4時46分頃には90%以下 まで達していたこと,この頃にシーソー呼吸や下顎呼吸がみられたことのいずれも見落とした。 (被告Dの主張)否認する。 本件病院の医療従事者は,病室に30分ごとにラウンドを行って亡Cのベッ ドサイ たこと,この頃にシーソー呼吸や下顎呼吸がみられたことのいずれも見落とした。 (被告Dの主張)否認する。 本件病院の医療従事者は,病室に30分ごとにラウンドを行って亡Cのベッ ドサイドモニタの数値を確認するとともに,ナースステーションにおいて,セ ントラルモニタに常に表示された状態の同人の上記数値を確認し,病室カメラで同人の様子を観察するなどしていた。 Mirrelが「製造物」(法2条1項)に該当するか(原告らの主張)Mirrelは,生体情報モニタとは別個の情報システムであるものの,C D,DVD,HDDないしサーバ等の動産に組み込まれて納品されている以上,「製造された……動産」(法2条1項)に該当する。 (被告Eらの主張)否認する。 プログラム(情報システム)は,そもそも無体物であるところ,Mirre lは,CD-ROMに記憶させたプログラムを,購入した医療機関が保有するサーバやPC等の端末にインストールする(導入する)ことで利用できるものであって,プログラムを組み込んだ製品ではないから,「製造された……動産」(法2条1項)には該当しない。 被告Fが「製造業者等」(法2条3項2号,3号)に該当するか (原告らの主張)セントラルモニタには,被告Fのロゴマークが表示されているから,被告Fは,「製造業者と誤認させるような氏名等を表示した者」(製造物責任法2条3項2号)に該当する。また,被告Fは,被告Eの100%子会社であり,都内一部地域の販売を一手に担っていたこと,販売以外にも修理や保守点検,医療 機関へのトレーニング等を担当していたこと等からすれば,「実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」(同条項3号)にも該当する。 (被告Fの主張) 理や保守点検,医療 機関へのトレーニング等を担当していたこと等からすれば,「実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」(同条項3号)にも該当する。 (被告Fの主張)否認する。 被告Fは,被告Eの販売子会社であり,製造に全く関与していないことは商 号等からも明らかである上,Mirrel及びセントラルモニタの添付文書上, 製造業者・製造販売業者が被告Eであることが明示されていることからすれば,「製造業者と誤認させ」(製造物責任法2条3項2号),あるいは「実質的な製造業者と認めることができる」(同条項3号)氏名等の表示をした者に該当しない。なお,原告らが指摘するロゴマークは,被告EあるいはEグループ全体のものであり,被告Fを単独で表示したものではない。したがって,被告Fは 「製造業者等」に該当しない。 Mirrel及びセントラルモニタに仕様設計上の欠陥があるか,被告Eに仕様設計に関する不法行為上の過失(過失4)があるか(原告らの主張)生体情報モニタのアラームの誤設定は,患者に重大な健康被害を引き起こす 危険があるところ,被告Eは,医療従事者が,Mirrel及びセントラルモニタを用いて患者を転床する場合には,転床先の生体情報モニタのアラーム設定等が転床元のものに自動的に上書きされない仕様・設計にすべきであり,あるいは,事前のアラート機能や選択機能を有する仕様・設計にすべきであった。 そうであるにもかかわらず,セントラルモニタの「床移動」機能は,転床先の ベッドサイドモニタで直接設定していたものを,転床元の設定に自動的に上書きする仕様・設計であり,Mirrelの「ベッド移動」機能は,事前に上書きされることを知らせたり,上書きを認めるか否かの選択を表示したりすることなく, 設定していたものを,転床元の設定に自動的に上書きする仕様・設計であり,Mirrelの「ベッド移動」機能は,事前に上書きされることを知らせたり,上書きを認めるか否かの選択を表示したりすることなく,セントラルモニタの「床移動」機能を働かせる仕様・設計(以下,これらを併せて「本件各仕様」という。)であった。このような本件各仕様は,生 体情報モニタ及び管理システムが通常有すべき安全性を欠くものであるから,「欠陥」(製造物責任法2条2項)に該当する。なお,アラート機能や選択機能は,日常的な電化製品等にも採用されている一般的な仕様・設計であり,安全性が重視される医療機器において採用できない理由はなく,医療従事者の作業の手間を理由に採用しない合理性もない。 また,被告Eは,かかる欠陥を解消していなかった点につき,亡Cに重大な 健康被害を引き起こさないようすべき注意義務を怠ったといえる以上,過失がある。 (被告Eの主張)否認する。 Mirrelは,電子カルテシステム上の操作を正確にセントラルモニタに 反映させており,その仕様・設計に問題はない。また,セントラルモニタが集約する個々のベッドサイドモニタの設定につき,転床時に上書きする仕様・設計であれば,医療従事者は,転床先のベッドサイドモニタの設定を確認する作業のみで足りるのに対し,アラート機能や選択機能を採用することは,医療従事者の作業を増やすことになって,かえって混乱を招き,ミスを生じさせかね ないことからすれば,上記仕様・設計にも問題はない。 Mirrel及びセントラルモニタに指示・警告・説明上の欠陥があるか,被告Eらに指示・警告・説明に関する不法行為上の過失(過失5)があるか(原告らの主張)ア被告Eは,Mirrel及びセントラルモニタの取 びセントラルモニタに指示・警告・説明上の欠陥があるか,被告Eらに指示・警告・説明に関する不法行為上の過失(過失5)があるか(原告らの主張)ア被告Eは,Mirrel及びセントラルモニタの取扱説明書において本件 各仕様を明記すべきであったにもかかわらず,これを怠った。このことは,指示・警告上の「欠陥」(法2条2項)に該当する。 また,被告Eが,取扱説明書に上記指示・警告を明示しなかった点は,亡Cに重大な健康被害を引き起こさないようすべき注意義務を怠ったといえる以上,過失がある。 なお,Mirrel及びセントラルモニタの取扱説明書には,本件各仕様について,各個に部分的な説明があるだけで全体的な説明がなく,もともと非常に分かりにくい上,両取扱説明書の文言・内容からも,かかる機能を読み取ることはできない。 イ被告Fは,本件病院に対し,Mirrel及びセントラルモニタを販売す る際,本件各仕様について説明すべきであったにもかかわらず,これを怠っ た。このことは,亡Cに重大な健康被害を引き起こさないようすべき注意義務を怠ったといえる以上,過失がある。 (被告Eらの主張)次のア及びイのとおり主張するほか,(原告らの主張)ア及びイのいずれも否認する。 ア被告Eは,電子カルテシステムやMirrelとセントラルモニタが連携していて,電子カルテシステムやMirrelで行った操作がセントラルモニタに反映されることをMirrelの取扱説明書に明記しており,セントラルモニタで「床移動」機能が働くと,転床元のベッドサイドモニタの設定内容が,転床先のベッドサイドモニタに上書きされることを,セントラルモ ニタの取扱説明書に明記している以上,指示・警告上の欠陥はなく,過失もない。 イ被告Fは,本件病 ドサイドモニタの設定内容が,転床先のベッドサイドモニタに上書きされることを,セントラルモ ニタの取扱説明書に明記している以上,指示・警告上の欠陥はなく,過失もない。 イ被告Fは,本件病院に対し,Mirrel及びセントラルモニタの各取扱説明書の内容を説明している上,本件病院の医療従事者が,電子カルテシステムを用いてベッドサイドモニタの設定を含めた転床の操作を行っている ことからも,過失はない。 過失1ないし過失5と結果との因果関係(原告らの主張)ア本件病院の医療従事者が,フルニトラゼパム及びニトラゼパムを過剰投与しなければ(過失2),亡Cは過鎮静の状態に陥ることなく,舌根沈下,呼吸 抑制の副作用による呼吸停止を避けることができた。また,亡Cは,3月30日午前零時以降,無呼吸を頻発しており,午前4時46分頃にはSPO2が90%以下になっていたところ,本件病院の医療従事者が,生体情報モニタのアラーム設定を誤り,これを見落とすこと(過失1)がなく,生体情報モニタのアラーム音に頼らなくとも,亡Cの状態を目視で適切に監視・観察 していれば(過失3),同人の呼吸停止,低酸素脳症を回避できた。 イ被告Eが,セントラルモニタの「床移動」機能を,アラーム設定を自動的に上書きしない仕様・設計とする,あるいは,Mirrelの「ベッド移動」機能を実行した場合にアラーム設定の上書きについてアラート機能や選択機能を設ける(過失4)か,被告Eらが本件各仕様について指示・警告・説明を行っていれば(過失5),本件病院の医療従事者が生体情報モニタのア ラーム設定を誤ることもなく,亡Cの呼吸停止,低酸素脳症を回避できた。 ウそして,亡Cは,呼吸停止,低酸素脳症により,いわゆる植物状態に陥り,これに起因する敗血 療従事者が生体情報モニタのア ラーム設定を誤ることもなく,亡Cの呼吸停止,低酸素脳症を回避できた。 ウそして,亡Cは,呼吸停止,低酸素脳症により,いわゆる植物状態に陥り,これに起因する敗血症,多臓器不全によって死亡するに至ったといえ,被告らの過失1ないし5がなければ,亡Cが死亡時点においてなお生存したであろう高度の蓋然性があり,被告らは,過失1,過失4及び過失5の範囲にお いて共同して,亡Cに対して損害を加えたものである。 (被告Dの主張)次のアないしウのとおり主張するほか,(原告らの主張)ア及びウについていずれも否認し,争う。 アそもそも,心肺蘇生措置から自己心拍再開まで14分かかっていることか らすれば,心肺停止の原因は無呼吸ではない。心肺停止に陥った原因は,頭部CT,MRI,採血,心エコーなどから明らかな原因は不明であり,呼吸停止に至った原因も不明である。また,亡Cが3月30日午前3時に自発的な会話をしていること,本件病院の医療従事者は,亡CのSPO2が89%となった午前4時49分から11分後の午前5時には対応を開始している ことからすれば,アラームの設定(過失1)や監視・観察(過失3)にかかわらず,呼吸停止,低酸素脳症を防止することはできなかった。 イ急変前最後の3月29日午後9時頃に投与したフルニトラゼパム及びニトラゼパム(過失2)の血中濃度は,呼吸状態の変化があった同月30日午前4時頃の時点では既にピークを過ぎており,かつ,定常状態の最高血中濃 度よりも低い数値であったと考えられること,午前3時に自発的な会話が可 能であったことからすれば,急変時は過鎮静に至っていなかった。 ウ亡Cが死亡したのは,令和元年8月以降,血尿で尿閉を来して腎機能障害が増悪した結果,心不全, 午前3時に自発的な会話が可 能であったことからすれば,急変時は過鎮静に至っていなかった。 ウ亡Cが死亡したのは,令和元年8月以降,血尿で尿閉を来して腎機能障害が増悪した結果,心不全,肺水腫,肺炎に陥るなど,感染症を原因として敗血症に至ったことによるところ,同時点の感染と,既に改善を見ていた低酸素脳症との間に直接の関わりはない。死亡診断書においても,低酸素脳症は, 直接には死因に関係しない傷病名として挙げられているにすぎない。 (被告Eらの主張)(原告らの主張)イ及びウについて否認する。 亡Cの転床時にベッドサイドモニタのアラーム設定が上書きされてから,本件事故が発生するまでに4日以上あるところ,ベッドサイドモニタの画面上, アラーム設定がONとOFFのいずれであるかの表示が明確であること,本件病院の医療従事者が,勤務ごとにアラームを確認していたこと,医療機関においては,医療機器のアラーム設定のみで患者の状態を判断すべきではないことからすれば,本件各仕様(過失4)や,その指示・警告・説明の在り方(過失5)と亡Cに生じた結果との間に因果関係はない。 原告らの損害額(原告らの主張)ア亡Cの損害(ないしの合計) 1億5011万4743円入院雑費 247万0500円日額1500円を基準に,本件事故日から亡Cの死亡日までの日数(合 計1647日)を乗ずる。 入院付添費・付添人交通費 667万1148円a 入院付添費 616万1100円いわゆる植物状態に陥っていた亡Cの身の回りの世話,拘縮予防のためのマッサージ,状態確認・励まし,病状説明・質問等のため,家族の 付添費 616万1100円いわゆる植物状態に陥っていた亡Cの身の回りの世話,拘縮予防のためのマッサージ,状態確認・励まし,病状説明・質問等のため,家族の 付添いの必要があった。 日額3300円を基準に,本件事故日から亡Cの死亡日までの間,原告Aが付き添った日数(1631日)及び原告Bが付き添った日数(236日)の合計(1867日)を乗ずる。 b 付添人交通費 51万0048円原告らは,亡Cへの付添いのため,本件事故日から平成29年10月 31日までの間,29万3270円を支出した。これに,上記支出額の一日平均額を基準とし,平成29年11月1日から亡Cの死亡日までの日数(700日)を乗じた21万6778円(=29万3270円÷947日×700日)を加える。 入院慰謝料 574万円 これは,本件事故日から亡Cの死亡日までの入院期間(54か月)をもとにした金額である。 休業損害 1678万7667円亡Cは,本件事故以前は,家事労働全般及びマンション管理に従事していたところ,本件事故によりこれに従事できなくなった。 賃金センサス(平成27年男性学歴計65~69歳)の基礎収入額372万0400円を基準に,労働能力喪失率100パーセントとした上で,本件事故日から亡Cの死亡日までの日数(合計1647日)を乗ずる。 逸失利益 1780万7523円a 家事労働分 1463万2359円 賃金センサス(平成29年男性学歴計70歳以上)の基礎収入額361万2500円を基準に,亡Cの同 1780万7523円a 家事労働分 1463万2359円 賃金センサス(平成29年男性学歴計70歳以上)の基礎収入額361万2500円を基準に,亡Cの同居家族の収入や保有資産等を踏まえて生活費控除率を30%とした上で,中間利息の控除につき,亡Cの死亡時の平均余命の2分の1相当である7年間のライプニッツ係数(5. 7864)を乗ずる。 b 年金分 317万5164円 亡Cは,年額43万7002円の年金を受給していたところ,これを基準に,生活費控除率を30%とした上で,中間利息の控除につき,亡Cの死亡時の平均余命15年間のライプニッツ係数(10.3797)を乗ずる。 死亡慰謝料 4000万円 葬儀関連費用 247万0525円カルテ開示費用 3万4711円後見関係費用 6620円死亡診断書費用 3300円実母の介護費用 847万4119円 亡Cは,本件事故以前,実母の介護を担っていたところ,本件事故により,これを行うことができなくなり職業介護人による介護が必要となった。 これに要した費用も,被告らの過失との間に相当因果関係がある。 本件係争の不当な長期化により,事件解決を見ることなく無念のうちに死亡するに至ったことの慰謝料 4964万8630円 イ原告A8916万3108円亡Cから相続した損害賠償請求権 7505万7371円1億50 するに至ったことの慰謝料 4964万8630円 イ原告A8916万3108円亡Cから相続した損害賠償請求権 7505万7371円1億5011万4743円(前記ア)×1/2=7505万7371円固有の慰謝料 600万円弁護士費用 810万5737円 ウ原告Bの損害 8916万3108円原告Aの損害(前記イ)と同じ。 (被告Dの主張)次のアないしエのとおり主張するほか,(原告らの主張)のアないしウのいずれも否認し,争う。 ア 原告らの主張する慰謝料額はあまりに過大である。 また,本件係争の不当な長期化により,事件解決を見ることなく無念のうちに死亡するに至ったことの慰謝料なるものは,その根拠も全く示されておらず,これを計上する理由はない。 イ入院)及び入院付添費・付添人交通費(原告らの 亡Cの入院治療費は,本件病院が,本件事故後亡Cが死亡するに至るまで負担してきたものであるところ,そうであるにもかかわらず,入院雑費や入院付添費・付添人交通費を請求するというのは明らかに不当である。 ウ実母の介護費用(原告らの主張ア)について 亡Cが,本件事故の前年に統合失調症の悪化により本件病院に入院していた際,実母は,一人で外出して面会に訪れていたのであるから,亡Cが,本件事故以前に実母の介護を日常的に担っていたとの事実はない。 エ逸失利益(原告 て 原告らは,本件事故がなければ,亡Cが速やかにこれまでどおりの家事労働に復帰できたという前提で主張するが,亡Cは,本件事故前から,幻覚や妄想を訴え,医療保護入 逸失利益(原告 て 原告らは,本件事故がなければ,亡Cが速やかにこれまでどおりの家事労働に復帰できたという前提で主張するが,亡Cは,本件事故前から,幻覚や妄想を訴え,医療保護入院を要するほどの統合失調症であり,労働能力を大幅に喪失していた。さらに,くも膜下出血を発症したことも踏まえると,家事労働に従事することができたとは到底考えられない。 また,原告らは,逸失利益の算定における労働能力喪失期間につき,平均余命を基準とするものの,亡Cは,糖尿病及び統合失調症の基礎疾患を有しており,平均余命を大きく下回ることは明らかである。 (被告Eらの主張)アないしウのいずれも否認し,争う。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められ,これに反する証拠は採用できない。 診療経過ア亡Cの既往症及び入院歴等 亡Cは,糖尿病の既往があったほか,大学生の頃(昭和46年)に統合失調症と診断され,以降,本件病院精神神経科や他院に定期的に通院し,症状の再燃が認められた際には入院治療を受けるなどしていた(乙A1・11,45頁)。 亡Cは,平成26年5月頃,叔父の他界,他院にて懇意にしていた看護 スタッフの退職といった負荷因子が重なり,幻覚妄想状態の再燃,易怒性の高まりや攻撃的な言動が見られたため,同年7月29日に本件病院精神神経科に入院した。同入院中,本件病院腎臓内科の医師から糖尿病性腎症による腎機能障害の悪化が指摘されたほか,入院当初,妄想に伴う興奮が強く見られたことから,入院形態が医療保護入院に変更となり,また,鎮 静のためにフルニトラゼパム(商品名・サイレース)2mgが静脈注射されるなどし,その されたほか,入院当初,妄想に伴う興奮が強く見られたことから,入院形態が医療保護入院に変更となり,また,鎮 静のためにフルニトラゼパム(商品名・サイレース)2mgが静脈注射されるなどし,その後,退院後の生活において十分な睡眠確保ができるようにと,入院当初から処方されていたニトラゼパム1日1回5mgに加え,フルニトラゼパムを1日1回1mg服用することとされ,同年8月30日に退院した後も同年10月23日の外来まで同様の処方が続けられた。同 日の外来以降,フルニトラゼパムについては,不眠時に1回1mgを頓服するように変更となったが,平成27年3月13日,亡Cが,最近眠れない,余っているフルニトラゼパムを服用している旨述べたことから,本件病院精神神経科の医師は,眠れるようになれば中止するよう指摘した上で,フルニトラゼパムを1日1回2mgの容量で処方した。(乙A1・11,4 3,68,70,84,88,90,114,116,134,135, 210,229,230,244,251,269,311,312,318,319,322,330,335,356頁)イくも膜下出血の発症とSICUへの入院(3月23日)亡Cは,3月23日,自宅で後頚部痛,頭痛,嘔吐をきたしたため,本件病院を受診したところ,脳血管障害が疑われ,各種検査等の結果,くも 膜下出血との診断を受け,同日午後6時頃,SICUに入院した(以下「本件入院」という。 391頁)。 本件病院脳神経外科のG医師は,頭部CT検査の結果,中脳前面に血腫が限局していたこと,また,頭部3D-CTA検査の結果,明らかな動脈瘤を示す所見がなかったことから,中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血の可 能性があるとしたものの,確定診断はできないとして,まずは動脈瘤性の たこと,また,頭部3D-CTA検査の結果,明らかな動脈瘤を示す所見がなかったことから,中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血の可 能性があるとしたものの,確定診断はできないとして,まずは動脈瘤性のくも膜下出血を前提に,再出血予防のため慎重な入院管理を行うこととし,原告らにもその旨説明した(乙A1・387,388,392,426頁,乙A2・1,2頁,乙A4・52頁,乙A9・6頁,証人G医師4頁)。 亡Cは,同日,刺激を与えないようにと暗室管理とされ,また,降圧剤 のほか,鎮静剤であるフェンタニル,デクスメデトミジン(商品名・プレセデックス)が静脈注射により投与された(乙A1・368,372,379,391,392頁,証人G医師5頁)。 亡Cは,上記鎮静剤の投与後,鎮静傾向にあったが,同日午後9時30分頃,精神科の薬は必要ではないのか,暗室管理のため目にあてられてい たガーゼを取ることはできないのかなどとやや興奮気味に述べることがあった(乙A1・393頁)。 本件病院の医療従事者は,亡Cのベッドサイドモニタにつき,アラームが鳴り続けることによる刺激を避けるため,同日,SPO2,APNEA(無呼吸),心拍数,血圧のアラームをOFFにした。 これにより,亡Cのベッドサイドモニタのアラームの設定は,初めから OFFとなっていた呼吸数及び脈拍を含め,SPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数,心拍数,血圧,脈拍のいずれもOFFの状態となった。 (丙A4,証人G医師5頁)ウ SICUにおける経過とアラームの設定等(3月24日)亡Cは,静脈注射による鎮静剤の持続的投与の影響もあり,基本的には 鎮静状態にあったが,時折覚醒し,3月24日午前5時30分過ぎ頃や午前8時50分頃,目にあてたガーゼをとること 3月24日)亡Cは,静脈注射による鎮静剤の持続的投与の影響もあり,基本的には 鎮静状態にあったが,時折覚醒し,3月24日午前5時30分過ぎ頃や午前8時50分頃,目にあてたガーゼをとることができないのかなどと興奮気味に述べることがあった(乙A1・431,441,442頁)。 G医師は,亡Cにつき,同日の頭部MRI検査及び頭部CT検査の結果,出血拡大は認められず,明らかな動脈瘤を示す所見も認められなかったこ とから,同時点での手術の必要はないと判断し,暗室管理を解除し,SICUから同一フロアにあるSHCUへと転床の上,安静と血圧管理は継続して約1週間後に再検査を行う予定とした。また,亡Cの年齢,腎機能,統合失調症の既往を踏まえ,静脈注射の方法による長期間の鎮静は,退院をできなくする可能性もあることから,鎮静の方法を,本件病院精神神経 科で処方されていた,フルニトラゼパム,ニトラゼパムの経口投与の方法に変更することとして,同日午後3時30分頃,デクスメデトミジン以外の静脈注射による管理を中止し,同日夜から,フルニトラゼパム1日1回2mg及びニトラゼパム1日1回5mgの経口投与を開始した。(前提事甲C2,乙A1・449~451,481頁,乙A2・3,4 頁,乙A9・4頁,証人G医師7,24頁)本件病院の看護師は,亡Cのベッドサイドモニタにつき,同日午前1時22分頃に心拍数,同日午後9時頃に血圧の上下限値に変更操作を加えたところ,上下限値に変更操作を加えると,アラームは自動的にONとなる仕様になっていたことから,これに伴い,上記各時刻頃,これらのアラー ムの設定はOFFからONに変更となった。 これにより,亡Cのベッドサイドモニタのアラームの設定は,SPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数 れに伴い,上記各時刻頃,これらのアラー ムの設定はOFFからONに変更となった。 これにより,亡Cのベッドサイドモニタのアラームの設定は,SPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数,脈拍がOFF,心拍数,血圧がONの状態となった。 (丙A4,丙A5)本件病院のH医師は,当時,本件病院の医師の間で,SHCUでは医療 従事者が病院内情報システムに情報や指示等を入力する際に用いる情報システムとしてMirrelが用いられていなかったことを理由に,SICUからSHCUに転床する際には,バイタルに関して改めて指示を出し直す必要があると認識されていたことから,翌日の亡Cの転床に備え,同日午後9時頃,SPO2につき,92%未満の時は酸素マスクを容量3リ ットルで開始,90%未満の時はドクターコール,心拍数につき,40未満の時にドクターコール,血圧につき,収縮期血圧200超又は80未満の時にドクターコールなどといった指示をした(乙A1・461,462,464頁,証人G医師6頁,証人I看護師18,19頁)。 エ SHCUへの転床とアラームの設定等(3月25日) 本件病院の医師は,3月25日午前6時頃,亡Cにつき,日中の覚醒を促すため,デクスメデトミジンの投与を中止し,同日昼からは食事も開始となった乙A1・474頁)。 その後,亡Cには,血圧の上昇が見られ,降圧剤の増量投与がされるなどした(乙A1・477,478頁)。 本件病院の看護師は,H医師からの指示を踏まえ,亡Cの転床の直前,亡Cの転床先となる予定のSHCUの病室のベッドサイドモニタにおいて,SPO2,APNEA(無呼吸),血圧,脈拍のアラームの設定を行い,これに伴い,これらのアラームの設定はONとなった(乙A10・2頁,丙A1,証 る予定のSHCUの病室のベッドサイドモニタにおいて,SPO2,APNEA(無呼吸),血圧,脈拍のアラームの設定を行い,これに伴い,これらのアラームの設定はONとなった(乙A10・2頁,丙A1,証人I看護師4頁)。 本件病院の医療従事者は,同日午後4時21分頃,電子カルテ上で,S ICUからSHCUへの「転室・転床」の操作を行ったところ,これがMirrelに反映され,Mirrelの「ベッド移動」機能が働き,そこからMirrelと接続されたセントラルモニタにおいて「床移動」機能が働き,転床元であるSICUのベッドサイドモニタのアラームの設定が転床先であるSHCUのベッドサイドモニタに自動的に反映され,これに 伴い,上記時刻頃,SPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数,脈拍がOFF,心拍数,血圧がONの状態となった。 (甲A2,乙A1・489頁,丙A1,丙A10,証人I看護師5頁)その後,本件病院の看護師は,亡Cのベッドサイドモニタにつき,同日,脈拍の値の下限値に変更操作を加えたところ,これに伴い,脈拍のアラー ムの設定はOFFからONに変更となった。 これにより,亡Cのベッドサイドモニタのアラームの設定は,SPO2,APNEA(無呼吸),呼吸数がOFF,心拍数,血圧,脈拍がONの状態となった。 (争いがない。) オ 3月26日の経過亡Cは,3月26日,頭部CT検査を受け,同検査の結果,血腫は吸収傾向で新たな病変も認められなかったが,収縮期血圧が140mmHgより高い値で推移していることから,依然として降圧剤の持続的投与が必要な状態にあるとされた(乙A1・516,521頁)。 カ 3月27日の経過亡Cは,3月27日,午前0時頃から1時頃にかけて覚醒し,不眠や薬剤の追加希 ,依然として降圧剤の持続的投与が必要な状態にあるとされた(乙A1・516,521頁)。 カ 3月27日の経過亡Cは,3月27日,午前0時頃から1時頃にかけて覚醒し,不眠や薬剤の追加希望を訴え,ベッド上での起き上がりが頻回になるなど不穏な言動が見られ,同日午前中にも,膀胱留置カテーテルを抜去するなどの行動が見られたことから,同日,両手にミトンが装着され,ナースコールを押すことが できない状況となった(乙A1・532,551頁)。 キ 3月28日,29日の経過亡Cは,3月28日,午前中,午後とも傾眠強く,食事中も傾眠するようになり,同月29日も,傾眠強く呂律が回らず,動作緩慢で,自力での食事摂取が困難な状態であった。同日午後3時頃,原告Aは看護師に対し,亡Cが朦朧とした状態であることを伝えるとともに,精神薬,鎮静剤の投 薬状態を確認した。 本件病院の看護師は,H医師に対し,同月29日午後9時頃,傾眠強いがフルニトラゼパム等を服用させてよいか問い合わせたところ,同医師は,翌日に本件病院精神神経科の医師に意見を聞くことにするので,同日は服用させるよう指示し,これに伴い,同日についてもフルニトラゼパム1日 1回2mg及びニトラゼパム1日1回5mgの経口投与がされた。 (甲A16・4頁,乙A1・566,567,588,591,593頁)本件病院においては,1日2回の看護師の各勤務交代の際,患者のベッドサイドモニタのアラーム設定確認画面(この画面を開くと,測定中の全てのパラメータが表示され,かつ,各項目につき,ONであればピンク色 の表示,OFFであれば灰色の表示がされる。甲B1・6-5頁,甲C3の2,丙A3の3~6)を開いた上で,アラームの設定の確認行うこととなっていたが,SPO₂ 項目につき,ONであればピンク色 の表示,OFFであれば灰色の表示がされる。甲B1・6-5頁,甲C3の2,丙A3の3~6)を開いた上で,アラームの設定の確認行うこととなっていたが,SPO₂,APNEA(無呼吸),呼吸数のアラーム設定は,本件事故に至るまでOFFのまま経過した(乙A10・8頁,証人I看護師21,28,29,31,38,40頁)。 なお,ベッドサイドモニタの基本画面では,アラームがONであれば,測定値の右側に棒状で上下限値の表示が,OFFであれば,このような表示はされずにマークは小さいものの,ピンク色のアラームOFFマークが表示される(甲B1・3-6,3-12,6-7頁,甲C3の2,丙A3の1,2)。 ク本件事故当日(3月30日)の経過 亡Cは,遅くとも3月30日午前零時頃には入眠していたところ,同時刻以降,無呼吸ないし頻呼吸の状態が複数回現れた。午前3時頃には一度目覚め,本件病院の看護師に対し,暑いのでミトンを取り外してほしい旨述べたが,相変わらず動作は緩慢で,呂律は回っていない状態であり,本件病院の看護師は,これを踏まえ,舌根沈下,呼吸抑制に注意し,モニタ 監視を継続することとした。(乙A1・613頁)亡Cは再び入眠したが,その後も15秒よりも長い無呼吸,5回/分未満の徐呼吸,30回/分超の頻呼吸が複数回現れ,午前4時30分頃からはSPO2が95%を下回り,さらに,上気道閉塞を示唆するシーソー呼吸や下顎呼吸が見られるようになり,午前4時49分頃にはSPO2が8 9%となり,以降,午前4時50分,4時52分にそれぞれ91%,90%を示したほかは,いずれもSPO2が89%以下で推移し,4時54分に84%,4時55分に71%,4時56分に13%,4時57分には感知 なり,以降,午前4時50分,4時52分にそれぞれ91%,90%を示したほかは,いずれもSPO2が89%以下で推移し,4時54分に84%,4時55分に71%,4時56分に13%,4時57分には感知しない状態にまで至り,呼吸停止の状態となった。 この間,本件病院の看護師は,30分毎のラウンドに加え,ナースステ ーションにおいてセントラルモニタの監視を行っていたものの,亡Cの呼吸状態に関する異常に気が付かなかった。 (甲A3・9~12頁,甲A4,甲A5,甲C5・6,7頁,乙A1・620,980頁)本件病院の看護師は,4時57分頃,点滴の残量アラームが鳴ったこと から,点滴交換のため亡Cのベッドサイドへ行ったものの,すぐには亡Cの異常に気付かず,点滴交換中の4時59分,以降ONの状態であった血圧に関するアラームが,亡Cの状態悪化に伴う血圧低下により鳴り始めたことから,この時点で亡Cの異常を察知し,瞳孔確認や意識レベルの確認をしたところ,瞳孔不同なし,対光反射なし,意識レベルの反応 もなかった。ナースステーションにいた別の看護師もセントラルモニタで の脈拍低下を見つけて訪室し,午前5時頃までに,亡Cの呼吸停止及び顔面蒼白状態を確認した。SICUの看護師や当直医も駆けつけ,午前5時2分頃から心肺蘇生措置を開始し,午前5時16分,自己心拍が再開した。 その後,亡Cは,午前5時36分頃に自発呼吸が再開したものの,低酸素脳症による重度意識障害(遷延性意識障害),四肢拘縮が後遺し,同日に 症状が固定したとの診断を受けた。 なお,同日におけるSHCUの患者は,亡Cを含めて3名であった。 (前提事実,甲A3・12,13頁,乙A1・613,615頁,乙A10・9頁,証人I看護師40頁)ケ亡Cの死亡 た。 なお,同日におけるSHCUの患者は,亡Cを含めて3名であった。 (前提事実,甲A3・12,13頁,乙A1・613,615頁,乙A10・9頁,証人I看護師40頁)ケ亡Cの死亡 亡Cは,その後も本件病院において入院治療を受けていたが,令和元年10月1日,死亡した。亡Cの死亡診断書には,直接死因として多臓器不全,多臓器不全の原因として敗血症が挙げられ,直接には死因に関係しないが傷病経過に影響を及ぼした傷病名としてくも膜下出血,低酸素脳症との記載がある。(甲A18) コ本件病院における事故調査委員会本件事故の1週間後である4月6日,本件病院脳神外科部長であったJ医師のほか,G医師,I看護師らが参加して,本件事故に関する本件病院内における事故調査委員会が開催され,本件事故により亡Cが心肺停止状態となり蘇生措置により心肺機能は再開したが,低酸素脳症による重度意識障害が 後遺しているとの説明の後,本件事故が発生した原因について検討が行われ,同委員会開催時点においては,鎮静剤の投与量,急変時の看護師の対応,医師による蘇生措置に治療上大きな問題は認められず,現在の転帰との関連性は低いと判断するが,引き続き検討していくこと,亡Cの急変に気が付いた10分程度前から,モニタ上はSPO₂の低下があり,シーソー呼吸をして いたことが確認されているが,モニタのアラームが鳴った痕跡が認められず, SPO₂の低下に気付くことなく低酸素状態が継続してしまい,心肺停止及び現在の低酸素脳症に関与している可能性が高いと判断したが,詳細なデータを集め再度検討すること,モニタのアラームがOFFになっていた原因については,メーカーに再調査を依頼することとされた(甲A5)。 転床元のベッドサイドモ 能性が高いと判断したが,詳細なデータを集め再度検討すること,モニタのアラームがOFFになっていた原因については,メーカーに再調査を依頼することとされた(甲A5)。 転床元のベッドサイドモニタのアラーム設定が転床先のベッドサイドモニ タに反映される際のMirrel及びセントラルモニタの機能についてア Mirrelの「ベッド移動」機能Mirrelは,生体情報モニタによって計測・表示された情報を含めた患者に関する様々な情報を入力,集約し,病院全体で共有すること等を容易にする管理システムの一つであり,電子カルテシステムとセントラルモニタ を連携,統合させる役割を担っている。 Mirrelの「ベッド移動」機能とは,電子カルテシステムで行った病室の移動操作につき,これがMirrelに反映され,Mirrelと接続されたセントラルモニタに反映させるという一連の機能をいう。 この点について,被告D向けに作成された取扱説明書には,HIS(他社 製の電子カルテシステム)で操作した移動操作が部門システム(Mirrel)側に反映される旨,部門システム(Mirrel)とセントラルモニタは連携されており,部門システム(Mirrel)で入室をしたタイミングでセントラルモニタに自動入床する旨,その後のベッド移動や退室も反映される旨がそれぞれ記載されている。 (甲B3・4頁,乙A8・32,43頁,丙A10・4,15頁)イセントラルモニタの「床移動」機能セントラルモニタの「床移動」機能とは,患者が病室を移動した際,移動元におけるベッドサイドモニタの設定内容が,移動先に上書きされる機能をいい,セントラルモニタ通信の設定が行われている場合,セントラルモニタ をまたいで同様の上書きが行われる。 元におけるベッドサイドモニタの設定内容が,移動先に上書きされる機能をいい,セントラルモニタ通信の設定が行われている場合,セントラルモニタ をまたいで同様の上書きが行われる。 この点について,本件病院のSICU及びSHCUで使用されていたDS-7780W型も含まれるDS-7700シリーズのセントラルモニタの取扱説明書には,移動元の設定内容が,移動先に上書きされる旨,また,セントラルモニタ通信の設定を行うと,TCP/IPネットワークを通じて複数のDS-7700システムセントラルモニタ間で通信を行い,セントラル モニタをまたいでの床移動又は床交換(患者情報や計測値データの移動又は交換)を行うことができる旨,患者の入退床に当たっての注意として,床移動を行うと,移動先の全ての設定内容が書き替えられる旨がそれぞれ記載されている。 なお,本件当時,生体情報モニタの全国シェアは,日本光電工業株式会社 (以下「日本光電社」という。)が約40%(平成26年40.9%,平成27年41.7%),被告Eが約25%(平成26年25.1%,平成27年25.3%)であったところ,日本光電社においても,セントラルモニタ間のベッド移動につき,転床によって転床元のベッドサイドモニタのアラーム設定が引き継がれるという仕様が採用されていた。 (甲B2・5-19,20頁,丙A11の1,2,丙A12の1,2,丙A13) 医学的知見アくも膜下出血くも膜下出血とは,その多くが脳動脈瘤破裂を原因とするくも膜下腔への 脳出血であり,予後不良な疾患である。くも膜下出血と診断された場合,発症直後は再出血を予防するため,安静を保ち,侵襲的な検査や処置は避けるべきとされ,また,再出血予防のためには,十分な鎮痛,鎮 脳出血であり,予後不良な疾患である。くも膜下出血と診断された場合,発症直後は再出血を予防するため,安静を保ち,侵襲的な検査や処置は避けるべきとされ,また,再出血予防のためには,十分な鎮痛,鎮静,降圧が望ましいとされる。 そのうち,出血源としての脳動脈瘤が同定されないものを中脳周囲非動脈 瘤性くも膜下出血といい,この場合,特別な治療は必要とされず,予後も比 較的良好であるとされる。 (甲B14,甲B15・332頁,乙B1・28頁,乙B2・187頁)イベンゾジアゼピン系薬ベンゾジアゼピン系薬は,ベンゾジアゼピン受容体に結合して,そのことにより生じた刺激がGABA受容体を亢進させGABA系の抑制機能 を増強する催眠作用,抗不安作用,抗けいれん作用,筋弛緩作用を起こすものである。一般的な使用上の注意として,投与を中止するときは徐々に減量する必要がある。(甲B6) フルニトラゼパムフルニトラゼパムとは,不眠症,麻酔前投薬に効果を有するとされるベ ンゾジアゼピン系の睡眠導入剤であり,その添付文書の用法・用量の欄には,通常成人1回,0.5~2mgを就寝前又は手術前に経口投与するとされ,年齢・症状により適宜増減するが,高齢者には1回1mgまでとするとの記載がある。また,重大な副作用の欄には,依存性,刺激興奮,錯乱のほか,呼吸抑制,意識障害があらわれることがあるとの記載がある。 (甲B5, 乙B4)ニトラゼパムニトラゼパムとは,不眠症,麻酔前投薬等に効果を有するとされるベンゾジアゼピン系の睡眠誘導剤であり,その添付文書の用法・用量の欄には,不眠症に用いる場合には,通常成人1回5~10mgを就寝前に経口投与 するとされ,年齢・症状によ に効果を有するとされるベンゾジアゼピン系の睡眠誘導剤であり,その添付文書の用法・用量の欄には,不眠症に用いる場合には,通常成人1回5~10mgを就寝前に経口投与 するとされ,年齢・症状により適宜増減するとの記載がある。また,重大な副作用の欄には,依存性,刺激興奮のほか,呼吸抑制があらわれることがあるとの記載がある。(甲B9)なお,フルニトラゼパムとニトラゼパムの添付文書上,これらの併用投与を禁止する旨の記載はない。(甲B5,甲B9) ウ SPO2と呼吸不全 赤血球中のヘモグロビンの酸素結合部位が実際に酸素で占められている割合を酸素飽和度というが,パルスオキシメーターで経皮的に測定される酸素飽和度のことをSPO2という。SPO₂の低下は,呼吸器合併症の判断基準となり,基準値は96%以上で,95%以下で低酸素血症,90%未満で呼吸不全が疑われる。(甲B13,甲B16) 2 原告らの訴えの変更申立てに関する被告Dの主張について被告Dは,原告らが令和元年12月4日付けでした訴えの変更の申立ては,訴えの交換的変更の趣旨であるから,従前の請求原因については取下げの効果が生じて訴訟係属が消滅した旨主張する。 しかし,上記申立ては,訴訟係属中に亡Cが死亡したため,同人の損害賠償請 求権を原告らが相続したことなどから,従前の主張を前提に,請求の趣旨及び損害の内容についての請求原因を変更して,原告らの訴えを追加的に変更する趣旨であることは明らかであるから,被告Dの上記主張は失当である。 3 本件病院の医師に,鎮静剤を不適切かつ過剰に投与した過失(過失2)があるかについて 原告らは,本件病院の医師には,集中治療患者の不穏,不眠に対して使用してはならないとされるベンゾジアゼピン系鎮静剤を重複 鎮静剤を不適切かつ過剰に投与した過失(過失2)があるかについて 原告らは,本件病院の医師には,集中治療患者の不穏,不眠に対して使用してはならないとされるベンゾジアゼピン系鎮静剤を重複投与し,フルニトラゼパムにつき添付文書の上限量を超過する過剰投与をした過失があると主張する。 の認定のとおり,本件病院の医師は,亡Cに対し,本件 入院中の3月24日夜からフルニトラゼパム1日1回2mg及びニトラゼパム1日1回5mgの経口投与を開始し,本件事故前日の同月29日午後9時頃も同様の用量での投与をしているところ,フルニトラゼパムとニトラゼパムはいずれも呼吸抑制が副作用の一つとして挙げられるベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤であること,フルニトラゼパムの用量につき,添付文書記載の高齢者 への上限量(1回1mg)(前記)を上回るものであること自体は原告 ら指摘のとおりである。 しかしながら,本件入院中の亡Cにつき,頭部CT検査や3D-CTA検査の結果,比較的予後が良好であるとされる中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血の可能性があるとはされたものの,その確定診断はできなかったことから,動脈瘤性のくも膜下出血を前提に,再出血予防のため慎重な入院管理を行うとした こと,亡Cには静脈注射による鎮静剤投与中にも時折不穏な言動が見られるなどしていたこと,上記量の経口投与を開始した後の3月27日にも不穏な言動がみられ膀胱留置カテーテルを抜去するなどの行動が見られたことは前記1,カの各認定のとおりであるところ,くも膜下出血につき,その多くが予後不良で,再出血予防のためには,十分な鎮静,降圧が望ましい とされていること(前記)や,それにもかかわらず亡Cには上記のとおり不穏な言動が見られ,その原因として亡Cが長ら き,その多くが予後不良で,再出血予防のためには,十分な鎮静,降圧が望ましい とされていること(前記)や,それにもかかわらず亡Cには上記のとおり不穏な言動が見られ,その原因として亡Cが長らく患っていた統合失調症が少なからず影響していたと推認されることも踏まえれば,亡Cにつき,通常の不眠患者への処方の場合とは異なる考慮がされてしかるべき状況にあったものというべきである(くも膜下出血の急性期における鎮静の際には,添付文書 における成人投与量の上限を上回るフルニトラゼパム10mgを静脈投与の方法により投与すべきとする医学文献も存する(乙B3・554頁)。)。 そして,フルニトラゼパムとニトラゼパムの添付文書上,これらの併用投与を禁止する旨の記載はなく,フルニトラゼパムの成人投与量の上限は1回2mg(ただし高齢者は1回1mg),ニトラゼパムの成人投与量の上限は1回1 0mgとされていたところ,,亡Cに対する投与量は,上記の成人投与量の上限を上回るものではなく,かつ,ニトラゼパムについては成人投与量の上限の半分であったこと,亡Cに対しては,統合失調症による入院が終了した平成26年8月30日から同年10月23日までの間,フルニトラゼパム1回1mg,ニトラゼパム1回5mgを併用投与したことがあるほか, 平成27年3月13日にはニトラゼパム1回5mgに加え,フルニトラゼパム 1回2mgを処方したことがああって,これらによって何らかの副作用が生じていたことは見受けられない。 また,認定のとおり,3月28日以降,亡Cは,傾眠が強く,呂律も回らない状態となり,自力での食事摂取が困難な状態となっていたものの,同月29日の経口投与の時点では,依然として動脈瘤性くも膜下出血の可 能性を完全に否定できておらず,再出 ,傾眠が強く,呂律も回らない状態となり,自力での食事摂取が困難な状態となっていたものの,同月29日の経口投与の時点では,依然として動脈瘤性くも膜下出血の可 能性を完全に否定できておらず,再出血予防のための鎮静,降圧による管理を継続していたのであるから,本件病院の医師が,翌日に精神神経科の医師に意見を聞くこととし,同日,上記用量にてフルニトラゼパム及びニトラゼパムを亡Cに投与したことについて,不適切であったとは認めるに足りない。 以上によれば,本件病院の医師に,鎮静剤を不適切かつ過剰に投与した過失 があったとは認められない。 4 本件病院の医療従事者に,生体情報モニタのアラーム設定を誤り,これを見落とした過失(過失1)があるかについて カ,の認定によれば,亡Cは,くも膜下出血を発症して本件病院のSICU,SHCUに入院していたのであ るから,その病態自体からして再出血を来すなどして容体が急変する危険性があったばかりか,再出血を防止するために十分な鎮静が必要とされていたのにもかかわらず,既往症である統合失調症の影響と思われる不穏な言動が見られたことなどから,鎮静剤として成人投与量の上限であるフルニトラゼパム1回2mgのほか,ニトラゼパム1回5mgが併用投与されていたところ,これら の薬剤には呼吸抑制の副作用があるとされていたから,本件病院の医療従事者には,亡Cの血圧動向に注視するのみならず,その呼吸状態にも気を配り,それらの急激な悪化があったときには,すぐにそれらを察知することができるように監視すべき注意義務があったというべきである。そして,前記13月24日午後9時頃には,H医師から,SPO₂ につき90%未満の場合はドクターコールすることなどを含めたバイタルサ インの上下限 意義務があったというべきである。そして,前記13月24日午後9時頃には,H医師から,SPO₂ につき90%未満の場合はドクターコールすることなどを含めたバイタルサ インの上下限値に関する指示が出されていたところ,バイタルサインの把握については,看護師による見回りや目視による確認には限界があるから,医療機器に頼らざるを得ないし,医療機器の方が経時的かつ正確にこれを把握することができるという利点があるところ,前記1本件病院においては,1日2回,ベッドサイドモニタのアラーム設定画面を開いて,その設定 内容を確認するよう求められていたのであるから,本件病院の医療従事者には,亡Cの急変に備え,そのベッドサイドモニタのアラームを医師の指示どおりに設定するとともに,その設定が維持されているかについて継続的に確認すべき注意義務があったというべきである。 の認 定によれば,本件病院の看護師は,亡CのSHCUへの転床に伴って,一度はH医師の指示どおりにSPO2やAPNEA(無呼吸)等のアラーム設定をONにしたものの,その後に行われた電子カルテの転床操作によって再度SPO₂,APNEA(無呼吸),呼吸数等のアラームがOFFとなったことを看過し,かつ,上記のとおり1日2回にわたってアラームの設定内容を確認するこ とが求められていたのに,3月25日午後4時頃に上記アラームがOFFに設定されてから同月30日午後5時頃に亡Cが急変するまでの約5日間にわたって,誰も上記アラームがOFFに設定されていたことに気付かなかったのであるから,本件病院の医療従事者には上記注意義務を怠ったことについて過失があったと認められる。 これに対し,被告Dは,亡Cのベッドサイドモニタのアラーム設定がOFFに上書きされたのは,被 ,本件病院の医療従事者には上記注意義務を怠ったことについて過失があったと認められる。 これに対し,被告Dは,亡Cのベッドサイドモニタのアラーム設定がOFFに上書きされたのは,被告Eらが製造した医療機器に仕様設計上又は指示・警告上の欠陥等があったからであり,被告Dに責任はないとか,ベッドサイドモニタは目線より上に位置しており,設定がOFFになっていることを示すマークも小さいことからすれば,本件病院の医療従事者が,アラーム設定に つきOFFであったとの認識を持つのは困難であったなどと主張する。 しかしながら,後記5で認定するように,被告Eらが製造した医療機器に仕様設計上又は指示・警告上の欠陥等があると認めることはできないし,仮に上記のとおり上書きされたことについて本件病院の医療従事者には認識がなく,その責任がなかったとしても,アラームの設定内容が維持されていることを継続的に確認すべき注意義務を免れるものではない。また, によれば,アラームがOFFになっていることを示すベッドサイドモニタの基本画面上のマークは,小さいとはいえ,ピンク色で表示されていると認められるから,認識しにくいとはいえず,かつアラーム設定の確認にあたっては,基本画面を確認するだけではなく,アラーム設定確認画面を開いて設定内容を確認することが求められていたのであり,継続的なアラーム設定確認を履行して いれば,それがOFFになっていることは容易に気付くことができたはずであるから,被告Dの上記主張は理由がない。 以上によれば,本件病院の医療従事者には,に,亡Cの監視・観察を怠った過失(過失3)があるか)について判断するまでもなく,亡Cの呼吸状態の監視・観察に関し,アラーム設定の確認が不十分 であった過失があったと認めら の医療従事者には,に,亡Cの監視・観察を怠った過失(過失3)があるか)について判断するまでもなく,亡Cの呼吸状態の監視・観察に関し,アラーム設定の確認が不十分 であった過失があったと認められる。 5 被告Eらに対する製造物責任法又は不法行為に基づく損害賠償請求について 原告らは,Mirrel及びセントラルモニタに用いられた本件各仕様が製造物責任法における仕様設計上の「欠陥」に当たる,又は本件各仕様を用いたこと が不法行為における「過失」に当たる旨主張する(以下,上記「欠陥」及び「過失」を併せて「欠陥等」という。)。 しかしながら,本件各仕様は,転床前後でアラーム等の設定値に変更がない場合が多いことを想定し,従前の設定をそのまま引き継ぐことを基本として,変更が必要であれば転床操作後に行えば足りるという考え方に基づいて採用されて いると推認されるところ,その考え方が不合理であるとか,通常有すべき安全性 を欠くと認めるべき根拠はないし,転床のたびに上書きの有無について確認又は選択することは,かえって混乱を招きかねず,効率性を妨げる可能性もあるから,本件各仕様が仕様設計上の欠陥等に当たるとは認められない。 また,原告らは,被告Eらが,本件各仕様について取扱説明書に明記せず,販売に当たっても説明しなかったことが指示・警告上の欠陥等に当たる旨主張す る。 しかしながら,被告D向けのMirrelの取扱説明書において,Mirrelとセントラルモニタは連携されており,電子カルテ上で行った転床操作がセントラルモニタに反映されること,セントラルモニタの取扱説明書において,床移動機能によって移動元の設定内容が移動先に上書きされること,その場合の 注意点として,移動先の全ての設定内容が書き替えられることが記載さ 映されること,セントラルモニタの取扱説明書において,床移動機能によって移動元の設定内容が移動先に上書きされること,その場合の 注意点として,移動先の全ての設定内容が書き替えられることが記載されていた,これらの各取扱説明書を併せれば,本件各仕様について説明されていたと認められる。 これに対し,原告らは,Mirrelとセントラルモニタの各取扱説明書に部分的に説明があるだけでは,本件各仕様の一連の機能を読み取ることはできな い旨主張するが,上記の各記載によれば,その説明内容は平易なものであって,さして難解なところはなく,本件各仕様の機能を容易に読み取ることができるから,原告らの上記主張は理由がない。 よって,その余(争点,)について判断するまでもなく,被告Eらに対する製造物責任法又は不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。 6 過失1ないし過失5と結果との因果関係について前記4のとおり,本件病院の医療従事者には,生体情報モニタのアラーム設定を誤り,これを見落とした過失(過失1)が認められるところ,H医師の指示に基づくアラーム設定が維持されていれば,SPO2が90%を下回った午前4時49分にはアラームが鳴って亡Cの呼 吸状態の異常を察知することができ,本件病院の医療従事者により呼吸状態の改 善が図られ,低酸素脳症に陥ることを回避することができたと考えられるから,過失1と亡Cが低酸素脳症による遷延性意識障害になったこととの間には相当因果関係が認められる。 この点,被告Dは,亡Cが心肺停止に陥った原因は無呼吸ではなくその原因が不明であること,午前3時に亡Cが自発的な会話をしていること,本件病院の医 療従事者が午前4時49分から11分後の午後5時には対応を開始していることから,アラームの 因は無呼吸ではなくその原因が不明であること,午前3時に亡Cが自発的な会話をしていること,本件病院の医 療従事者が午前4時49分から11分後の午後5時には対応を開始していることから,アラームの設定や監視・監督にかかわらず,呼吸停止や低酸素脳症を防止することはできなかったと主張する。しかし,前記1ク,,コによれば,3月30日午前零時以降亡Cに無呼吸ないし頻呼吸の状態が数回現れ,午前3時頃に亡Cが看護師にミトンを外してほしい旨を述べたものの,その動作は緩慢で 呂律が回っておらず看護師が舌根沈下,呼吸抑制に注意すべきと考えるような状態であったこと,午前4時30分頃からは上気道閉塞を示唆するシーソー呼吸や下顎呼吸が見られるようになったこと,本件事故後の本件病院の事故調査委員会でもSPO₂の低下に気付くことなく低酸素状態が継続したことにより心肺停止及び現在の低酸素脳症が生じた可能性が高いと判断したことが認められ,これら によれば,亡Cが心肺停止になった原因としては,鎮静状態下にあった状態で舌根沈下により上気道が閉塞して,低酸素状態が継続したため呼吸停止が生じた可能性が高いこと,午前3時以降も鎮静状態下であったこと,呼吸不全が疑われるSPO₂が90%未満になった状態から11分も経過した後に看護師や医師が対応を開始したため救命できなかったが,これがSPO₂が90%未満となった状 態から早い段階で対処していれば低酸素状態の継続はなかったと認められることからして,前記被告Dの主張は採用できない。 そして,亡Cは,本件事故から約4年半後の令和元年10月1日,敗血症を原因とした多臓器不全により死亡したことはのとおりであるところ,証拠(甲A12の1・290,473,966頁,甲A12の2・105,28 4,376,493, の令和元年10月1日,敗血症を原因とした多臓器不全により死亡したことはのとおりであるところ,証拠(甲A12の1・290,473,966頁,甲A12の2・105,28 4,376,493,677,731,816,821,962,969頁,甲 A15)に照らせば,亡Cは遷延性意識障害を長期間患ったことによって感染しやすくなり,その結果,敗血症を発症したと推認することができ,これを覆すに足りる的確な証拠もないことからすれば,過失1と亡Cの死亡との間は相当因果関係が認められる。 7 原告ら損害額について 亡Cの損害についてア入院雑費 247万0500円亡Cは,本件事故によって低酸素脳症による遷延性意識障害,四肢拘縮といった症状が後遺し,その後も死亡するに至るまでの間,本件病院に入院して治療を受けていたところ,亡Cの症状の内容及び程度からすれば,入院治 療が必要であったことは明らかであるから,これに伴う入院雑費も本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 入院雑費は1日当たり1500円をもって相当と認め,これに本件事故日から亡Cが死亡する日までの1647日間を乗じた247万0500円を本件事故と相当因果関係のある損害として認める。 なお,入院雑費は治療費以外に必要となる諸雑費を指すから,上記期間の入院治療費を全て被告Dが負担したとしても,上記認定は左右されない。 イ入院付添費・付添人交通費 36万0815円 入院付添費 33万円証拠(原告A本人10頁)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら(特に原 告A)は本件事故から 36万0815円 入院付添費 33万円証拠(原告A本人10頁)及び弁論の全趣旨によれば,原告ら(特に原 告A)は本件事故から亡Cが死亡するまで高頻度で本件病院を訪れ,亡Cの身の回りの世話をしていたことが認められるところ,亡Cの症状の内容及び程度に照らせば,一定期間近親者が声掛けを行うなどして入院中の亡Cに付き添う必要があったことは否定できない。もっとも,本件病院は,市中の病院とは異なる大学の附属病院であって,完全看護体制がとられて いるはずであるし,近親者の付添いを要する旨の医師の指示があったとも 認めるに足りないから,本件事故と相当因果関係がある入院付添費としては,原告らが現に亡Cに付き添ったうちの100日分に限り,日額3300円の限度において算定した合計33万円(=3300円/日×100日)を認めるのが相当である。 付添人交通費 3万0815円 証拠(甲C7の1ないし4)によれば,原告らは,本件事故日から平成29年10月31日までの間,亡Cに付き添うための交通費として29万1820円を支出したことが認められるところ,付添いの必要性を認める期間は100日分を限度とすべきであるから,付添人交通費としては,上記支出額の一日平均額に100日分を乗じた3万 0815円(=29万1820円÷947日×100日)をもって本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 ウ入院慰謝料 500万円亡Cは,本件事後によって低酸素脳症による遷延性意識障害,四肢拘縮といった症状が後遺したところ,本件事故当日から死亡に至るまで約4年半に わた 500万円亡Cは,本件事後によって低酸素脳症による遷延性意識障害,四肢拘縮といった症状が後遺したところ,本件事故当日から死亡に至るまで約4年半に わたり,自力で手足を動かすこともできず,意識もない状態で過ごすことを余儀なくされたことに加え,亡Cの既往歴その他本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,同人の入院慰謝料としては500万円をもって相当と認める。 エ休業損害 1177万2530円 証拠(甲A16・2頁,甲A17・2頁,乙A1・11頁,原告A本人・ 3,5,12頁)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故当時,亡Cを含む原告ら家族においては,原告A及び原告Bがほぼ毎日長時間にわたる就労をし,その一方で,亡Cが家事を一定程度担っていたものと認められる。 本件事故前年の平成26年には本件病院精神神経科に一月程度の入院(途 中から医療保護入院)を要するほどの統合失調症の再燃が見られるなどし, 本件事故の直前にはくも膜下出血によって入院を余儀なくされていた亡Cにつき,本件事故以降,どの程度の家事労働が可能であったかにつき,必ずしも明らかでない部分も存することから,亡Cの休業損害を算定するに当たっての基礎収入としては,本件事故が発生した平成27年の賃金センサス女性学歴計・全年齢平均372万7100円の7割相当額である2 60万8970円をもって相当と認める。 そして,亡Cは,本件事故によって低酸素脳症による遷延性意識障害,四肢拘縮に至っていることからすれば,本件事故日から死亡に至るまでの間(1647日),家事労働が全くできなかったと認められ,これによれば,亡Cの休業損害として,1177万2530円(260万8970 四肢拘縮に至っていることからすれば,本件事故日から死亡に至るまでの間(1647日),家事労働が全くできなかったと認められ,これによれば,亡Cの休業損害として,1177万2530円(260万8970円 ÷365日×100%×1647日)をもって本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 オ逸失利益 874万2552円家事労働分 705万5353円a 前記エのとおり,亡Cは家事を一定程度担っていたと認められるもの の,どの程度の家事労働が可能であったかについては,明らかでない部分も存することから,亡Cの逸失利益を算定するに当たっての基礎収入としては,令和元年の賃金センサス女性学歴計・全年齢平均388万円の7割相当額である271万6000円をもって相当と認める。そして,Cには,統合失調症のほか,糖尿 病の既往があり,統合失調症につき本件事故前年の平成26年には一月程度の入院(途中から医療保護入院)を要するほどの再燃が見られ,糖尿病についても,これによる腎機能障害の悪化が指摘される状況であったと認められるから,就労可能年数については5年をもって相当と認め,生活費控除率については,40%をもって相当と認める。 b そうすると,亡Cの死亡による家事労働分の逸失利益は,705万5 353円(=271万6000円×4.3295×(1-0.4))をもって本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 年金分 168万7199円a 証拠(甲C22)によれば,亡Cは,年額43万7002円の年金を受給していたものと認められるところ,上記既往等を踏まえても 金分 168万7199円a 証拠(甲C22)によれば,亡Cは,年額43万7002円の年金を受給していたものと認められるところ,上記既往等を踏まえても,少な くとも10年間は,上記金額の年金を受給できていたものと認めるのが相当である。そして,生活費控除率については,これが年金であること及びその金額に照らし,50%をもって相当と認める。 b そうすると,亡Cの死亡による年金分の逸失利益は,168万7199円(=43万7002円×7.7217×(1-0.5))をもって本 件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 カ死亡慰謝料 2200万円亡Cにつき,本件事故によって低酸素脳症による遷延性意識障害及び四肢拘縮といった症状が後遺し,その後死亡するに至ったことに加え,同人の家庭環境並びに年齢,既往歴及びそれらから推認される余命その他本件に顕れ た一切の事情を考慮すれば,同人の死亡慰謝料としては2200万円をもって相当と認める。 キ葬儀関連費用 150万円本件事故と相当因果関係のある葬儀関連費用は150万円をもって相当と認める。 クカルテ開示費用 3万4711円証拠(甲C8)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,本件病院に対し,平成27年6月4日,亡Cのカルテ等の開示費用として3万4711円を支払ったことが認められ,その全額を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 ケ後見関係費用 6620円 証拠(甲C1) ったことが認められ,その全額を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 ケ後見関係費用 6620円 証拠(甲C1)及び弁論の全趣旨によれば,亡Cに対しては,遷延性意識障害になったことを理由として,原告らの申立てにより成年後見開始の審判がされ,同審判は平成27年6月5日に確定したところ,原告らは,その手続に要する費用として6620円を支出したことが認められるから,その全額を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 コ死亡診断書費用 3300円亡Cは,令和元年10月1日に死亡したところ,証拠(甲C24)によれば,原告らは,同日,死亡診断書を被告Dから取得し,このため3300円を支出したことが認められるから,その全額を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 サ実母の介護費用零円本件事故当時,亡Cが日常的に実母の介護全般を行っていたことを裏付けるに足りる的確な証拠はなく,かえって証拠(乙A1・2175頁,原告A本人16頁)によれば,亡Cが平成26年に統合失調症を再燃させて入院した際には実母が毎日面会に訪れていたことがうかがわれるのであって,これ によれば,亡Cの実母が介護を要するほどの状態であったかについても定かではない。 したがって,実母の介護費用を本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。 シ本件係争の不当な長期化により,事件解決を見ることなく無念のうちに死 亡するに至ったことの慰謝料零円上記慰謝料は,上記ウ,カの入院慰謝料ないし死亡慰 係争の不当な長期化により,事件解決を見ることなく無念のうちに死 亡するに至ったことの慰謝料零円上記慰謝料は,上記ウ,カの入院慰謝料ないし死亡慰謝料において既に評価されているといえるから,これを認めることはできない。 ス亡Cの損害額合計 5189万1028円以上のとおり,亡Cに生じた損害額は上記アないしシの合計額である51 89万1028円と認められる。 原告Aの損害ア亡Cから相続した損害賠償請求権 2594万5514円亡Cの妻である原告Aは,亡Cのスの損害賠償請求権を法定相続分である2分の1の割合で相続しているから,その相続分額は2594万5514円となる。 イ固有の慰謝料 150万円本件事故によって夫である亡Cが遷延性意識障害となり,全く意思疎通をすることができないまま亡Cを失ったことに加え,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,原告Aの固有の慰謝料として150万円を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 ウ弁護士費用 274万4551円上記ア及びイの合計額である2744万5514円の約1割である274万4551円をもって,本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 エ原告Aの損害額合計 3019万0065円以上のとおり,原告Aの損害額は,上記アないしウの合計額である301 9万0065円と認められる。 原告Bの損害ア亡Cから相続した損害賠償請求権 2594万5514円 告Aの損害額は,上記アないしウの合計額である301 9万0065円と認められる。 原告Bの損害ア亡Cから相続した損害賠償請求権 2594万5514円亡Cの子である原告Bは,亡Cのスの損害賠償請求権を法定相続分である2分の1の割合で相続しているから,その相続分額は2594万55 14円となる。 イ固有の慰謝料 150万円本件事故によって父である亡Cが遷延性意識障害となり,全く意思疎通をすることができないまま亡Cを失ったことに加え,本件に顕れた一切の事情を考慮すれば,原告Bの固有の慰謝料として150万円を本件事故と相当因 果関係のある損害と認める。 ウ弁護士費用 274万4551円上記ア及びイの合計額である2744万5514円の約1割である274万4551円をもって,本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 エ原告Bの損害額合計 3019万0065円以上のとおり,原告Bの損害額は,上記アないしウの合計額である301 9万0065円と認められる。 第4 結論よって,原告らの請求は,被告Dに対し,原告ら各3019万0065円及びこれらに対する不法行為日(本件事故の日)である平成27年3月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるか ら認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして(仮執行免脱宣言は,相当ではないので付さない。),主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第35部 裁判長裁判官佐藤哲治 主文 らいずれも棄却することとして(仮執行免脱宣言は,相当ではないので付さない。),主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第35部 裁判長裁判官佐藤哲治 裁判官能登謙太郎 裁判官工藤優希

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