判決平成15年2月21日神戸地方裁判所平成14年(わ)第923号業務上過失致死被告事件 主文 被告人を禁錮10月に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成13年11月18日午前零時43分ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,神戸市a区b町c丁目d番e号先道路の信号機により交通整理の行われている交差点内で,渋滞のため右折の合図をしながら一時停止後,青色信号に従い南から東に向かい右折進行するに当たり,対向車線には右折待ちの渋滞車両が連続停止していたため,対向車線上の見通しが悪かったから,同停止車両の前面の見通しのきく位置で一時停止するか,又は最徐行しながら小刻み発進するなどして,対向直進車両の有無及び進路の安全を確認しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,右折進行方向出口道路の前方を同交差点に向け西進してくる車両の動向に気を取られ,対向直進車両の見通しがきく地点で一時停止も最徐行もせず,対向直進車両の有無及び進路の安全確認不十分のまま,漫然時速約15キロメートルで右折進行した過失により,折から対向直進してきたA(当時25歳)運転の普通自動二輪車を左方約17.8メートルの地点に初めて発見し,急制動の措置を講じたが及ばず,同車前部に自車左前タイヤ付近を衝突させて同人を転倒させ,よって,同人に頭部外傷の傷害を負わせ,同月19日午後8時1分ころ,同市a区f町g丁目h番地所在のB病院において,同人を前記傷害に基づく頭蓋内出血より死亡するに至らしめたものである。 (証拠の標目)ー括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号省略(補足説明) 1 弁護人の主張の要旨等弁護人は,被告人の供述(弁護人請求証拠番号 至らしめたものである。 (証拠の標目)ー括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号省略(補足説明) 1 弁護人の主張の要旨等弁護人は,被告人の供述(弁護人請求証拠番号1)に基づき,被告人は,判示普通乗用自動車(以下「被告人車両」という。)を運転し本件交差点内で右折を開始したが,右折進行方向出口道路の前方を同交差点に向け西進してくる車両(以下「西進車両」という。)を認め,同車との離合が難しいのではないかなどと考え,実況見分調書(検察官請求証拠番号2)添付の交通事故現場見取図の④地点(以下の地点の表示はいずれも同見取図記載の地点である。)で4秒ほど停車して同車の動向を窺っていたところ,被害者運転の普通自動二輪車(以下「被害車両」という。)を左方約12.3メートルの地点に発見したが,同車はそのまま被告人車両の左前輪ホイルカバー付近に衝突したものであるから,被告人に判示の過失はなく無罪である旨主張するところ,前掲関係各証拠によれば,被告人に判示の過失は優に認められるのであるが,以下その理由につき補足して説明を加える。 2 前掲関係各証拠によれば,被告人は,平成13年11月18日午前零時43分ころ,営業用タクシーである被告人車両を運転し,青色信号に従い南から東に向かい右折するべく,十字路交差点である本件交差点内①地点で,右折の合図をしながらA地点に停車中の車両(以下「先行車両」という。)に続いて一時停止後,対向車線には右折待ちの渋滞車両が連続停止していたため,対向車線上の見通しが悪かったにもかかわらず,先行車両が直進進行したため,②地点から右折を開始したが,右折進行中,その右折進行方向出口道路の前方を同交差点に向け西進してくる西進車両に気を取られ,対向直進車両の見通しがきく地点で一時停止も最徐行もしないまま,漫 したため,②地点から右折を開始したが,右折進行中,その右折進行方向出口道路の前方を同交差点に向け西進してくる西進車両に気を取られ,対向直進車両の見通しがきく地点で一時停止も最徐行もしないまま,漫然時速約15キロメートルで右折進行し,③地点で,対向直進してきた被害車両を左方約17.8メートルの!地点に初めて発見し,急制動の措置を講じたが,約4.3メートル進行して④地点で同車前部に自車左前タイヤ付近を衝突させ,本件事故を惹起したこと,④地点から約0.9メートル進行した⑤地点で被告人車両は停止したこと,本件現場付近道路は片側3車線(幅員各約3メートル)の交通量の多い幹線道路(県道i線)であり,④地点は,南行き車線の第2車線上に位置すること,被告人車両の左前輪のホイルカバーは破損し,左側ボディーは凹損していたこと,衝突地点付近の路面上には被害車両による「エグレ痕」が,本件交差点北側横断歩道上から衝突地点手前付近にかけて被害車両による約8.4メートルのスリップ痕が残されていたこと,本件現場付近道路は時速50キロメートルの速度制限がなされていること,被害車両の速度は時速40ないし50キロメートルであったと推定されること,以上の事実が認められる。 3 被告人は,本件事故直後から,現場において,事故状況について前記2のとおり指示説明し,その後も,事故状況について,捜査段階においては,前記2のとおりである旨供述しているところ,その供述は,交通工学的知見や現場に残された痕跡その他の客観的状況に矛盾するところがない一貫した自然な供述であって,その供述の信用性は十分である。 ところで,被告人は,公判段階に至って,事故直後から,事故状況は前記1のとおりであった旨の弁解をしていたのに捜査官から取り上げてもらえず,やむなく前記2のとおりの事実を承認したに 十分である。 ところで,被告人は,公判段階に至って,事故直後から,事故状況は前記1のとおりであった旨の弁解をしていたのに捜査官から取り上げてもらえず,やむなく前記2のとおりの事実を承認したに過ぎないと主張するが,関係証拠を精査しても,事故直後を含め,被告人が,捜査段階においてそのような弁解をした形跡は全く窺われない。さらに,被告人の公判供述によると,被告人は,片側3車線の交通量の多い幹線道路の交差点において,格別の理由もなく,被告人車両が,対向車線の第2車線をほぼ塞ぎ第3車線(最も東側の車線)に一部かかるような位置で,4秒間も停止していたというのであって,被告人も自認するとおり,不自然に過ぎる右折方法というべきであり,加えて,被告人車両の左前輪のホイルカバーに認められる破損痕跡の解析結果からも衝突当時被告人車両の左前輪が回転していたことが推認できるなど,被告人の公判供述は信用しがたいものであることは明らかというべきである。 4 以上のとおり,前掲関係各証拠によれば,判示事実を認めるに十分である。 弁護人の主張は理由がない。 (法令の適用)罰条平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段刑種の選択禁錮刑宣告刑禁錮10月訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない。)(量刑の理由)本件は,被告人が,普通乗用自動車を運転して,交通整理の行われている交差点を信号に従って右折するに際し,判示のとおり,対向直進車両の有無及び進路の安全確認を怠ったため,青色信号に従って直進してきた被害者運転の普通自動二輪車に気付くのが遅れ,自車を被害車両に衝突させて被害者を死亡させたという,業務上過失致死の事案である。 被告人は,右折時の対向直進車両の有無及びその安全の確認という自動車運転者としての基本 動二輪車に気付くのが遅れ,自車を被害車両に衝突させて被害者を死亡させたという,業務上過失致死の事案である。 被告人は,右折時の対向直進車両の有無及びその安全の確認という自動車運転者としての基本的な注意義務を怠り,対向車線には右折待ちの渋滞車両が連続停止していたため,対向車線上の見通しが悪かったにもかかわらず,そのまま右折進行したものであって,その運転態様は危険性が高く,過失の程度は大きいこと,いまだ25歳の将来のある被害者は,さほどの落ち度もないのに,突然その生命を失うに至ったものであって,事故の結果は取り返しのつかない重大なものであり,被害者自身の無念さはもとより,一人娘を失った被害者の両親の悲しみや嘆きは深く,被告人の厳重処罰を求めていること,示談が成立していないこと,加えて,被告人が,安全運転に努めるべき職業運転手(営業用タクシーの運転手)であったことや,被告人が,公判において不合理な弁解に終始したことのほか,被害者遺族に対する謝罪等被告人の事故後の態度には必ずしも十分な誠意が認められないこと,業務上過失致死罪等の交通事犯に対する近時の我が国における国民の厳しい刑罰感情などを考え併せると,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 そうすると,被告人は自己の不注意な運転が重大な結果を招いたこと自体は認め反省の情を示していること,現時点では示談未成立であるものの,いずれ相当額の賠償がなされるであろうこと,被告人には昭和57年に業務上過失傷害により罰金刑に処せられた以外には前科がないこと,被告人は本件により勤務していたタクシー会社を退職することを余儀なくされ,今後自動車の運転はしない旨述べていることなど被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の実刑はやむを得ないところである。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年 することを余儀なくされ,今後自動車の運転はしない旨述べていることなど被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の実刑はやむを得ないところである。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年2月21日神戸地方裁判所第11刑事係甲裁判官杉森研二
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