令和4 年8 月4 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2 年(ワ)第17626 号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4 年6 月6 日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は、原告に対し、1358 万3708 円及びこれに対する令和元年8 月29 日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを7 分し、その3 を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 4 本判決は、第1 項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、3146 万4427 円及びこれに対する令和元年8 月29 日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、原告が、被告が原告の商品等表示として周知の携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器の形態と類似する携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器を販売する行為は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2 条1 項1 号の不正競争に当たると主張して、被告 に対し、不競法4 条(損害額については同法5 条1 項及び同条2 項の選択的主張)に基づき、3146 万4427 円の損害賠償及びこれに対する当該不正競争行為が最後にされた日である令和元年8 月29 日から支払済みまで平成29 年法律第44 条に基づく改正前の民法(以下「平成29 年改正前の民法」という。)所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(証拠等の掲示のない事実は当事者間に争いがない。なお、枝番号の記載を 省略したものは枝番号を含む。)(1) 当事者ア原告は、各種合 を求める事案である。 2 前提事実(証拠等の掲示のない事実は当事者間に争いがない。なお、枝番号の記載を 省略したものは枝番号を含む。)(1) 当事者ア原告は、各種合成樹脂、同製品の製造販売等を業として行う株式会社である。原告は、昭和59 年から現在まで、別紙原告商品目録記載の携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器(以下「原告商品」という。)を製造販売している。 イ被告は、医薬品、医療機器等の製造販売及び輸出入等を業として行う株式会社である。被告は、平成30 年1 月頃、別紙被告商品目録記載の携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器(以下「被告商品」という。)の販売を開始したが、令和元年8 月29 日、これを中止した。 (2) 別件訴訟の経過等 ア原告は、平成30 年4 月26 日、被告に対し、被告による被告商品の販売が不競法2条1 項1 号の不正競争に当たることを理由に、被告商品の譲渡等の差止め及び廃棄を求める訴えを当庁に提起した(当庁平成30 年(ワ)第13381 号不正競争行為差止請求事件)。 その控訴審である知的財産高等裁判所は、令和元年8 月29 日、被告による被告商品の販売は不競法2 条1 項1 号の不正競争に当たり、原告は被告の当該不正競争行為(以下「本件 不正競争行為」という。)によって原告商品の販売に係る営業上の利益を侵害されているとして、原告の請求につき、不競法3 条に基づき、被告に対し、被告商品の譲渡、引渡し、譲渡若しくは引渡しのための展示、及び輸入の差止め並びに被告商品の廃棄を求める限度で認める判決を言い渡した(知的財産高等裁判所平成31 年(ネ)第10002 号不正競争行為差止請求控訴事件。甲2。以下「別件判決」という。)。被告は、最高裁判所に対し、上告受 を求める限度で認める判決を言い渡した(知的財産高等裁判所平成31 年(ネ)第10002 号不正競争行為差止請求控訴事件。甲2。以下「別件判決」という。)。被告は、最高裁判所に対し、上告受 理申立てを行ったが(最高裁判所令和元年(受)第1983 号)、同裁判所は、令和2 年3 月 24 日、これを上告審として受理しない旨決定し(甲4)、別件判決は確定した。 イ別件判決の要旨は次のとおりである。 (ア) 原告商品の形態が周知な商品等表示に当たること原告商品の形態は、原告が原告商品の販売を開始した当時から、他の同種の商品と識別 し得る独自の特徴を有していたものであり、その後被告商品の販売が開始された平成30 年 1 月頃までの約34 年間にわたり、他の同種の商品には見られない形態として、原告によって継続的・独占的に使用されてきたことなどから、少なくとも被告商品の販売が開始された平成30 年1 月頃の時点には、需要者である医療従事者の間において、特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得すると共に、原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていた。すなわち、原告商品の形態は、原告の商品等表示として 周知であり、口頭弁論終結時である令和元年7 月16 日においてもなお、原告の周知の商品等表示としての出所識別機能を有している。 (イ) 原告商品の形態と被告商品の形態が類似すること原告商品と被告商品は、同一の形態に近いといえるほど形態が極めて酷似し、両商品の形態に基づく印象が共通し、両商品の形態に係る相違点は、両商品の形態上の共通点から 受ける印象を凌駕するものとはいえないから、需要者である医療従事者は、原告商品の形態と被告商品の形態を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあり、被告商品 違点は、両商品の形態上の共通点から 受ける印象を凌駕するものとはいえないから、需要者である医療従事者は、原告商品の形態と被告商品の形態を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあり、被告商品の形態は、原告の周知の商品等表示である原告商品の形態と類似のものと認められる。 (ウ) 被告商品の販売が原告商品と「混同を生じさせる行為」に当たること原告商品の形態が、原告によって約34 年間の長期間にわたり継続的・独占的に使用され てきたことにより、需要者である医療従事者の間において、特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得すると共に、原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていた状況下において、被告によって原告商品の形態と極めて酷似する形態を有する被告商品の販売が開始されたものであり、しかも、両商品は、消耗品に属する医療機器であり、販売形態が共通していることに鑑みると、医療従事者が、医療機器カタロ グやオンラインショップに掲載された商品画像等を通じて原告商品の形態と極めて酷似する被告商品の形態に接した場合には、商品の出所が同一であると誤認するおそれがあるから、被告による被告商品の販売は、原告商品と混同を生じさせる行為に該当する。 3 争点(1) 故意又は過失の有無(争点1) (2) 本件不正競争行為と因果関係のある損害の発生の有無及び原告の損害額(争点2) 4 争点に関する当事者の主張(1) 故意又は過失の有無(争点1)【原告の主張】被告商品は原告商品の形態のほぼデッドコピーといえるものであるため、被告は、被告製品の製造販売を企図した時点で、不正競争行為に該当することを認識していたといえる。 したがって、被告には、本件不正競争行為について故意又は過失がある。 ーといえるものであるため、被告は、被告製品の製造販売を企図した時点で、不正競争行為に該当することを認識していたといえる。 したがって、被告には、本件不正競争行為について故意又は過失がある。 【被告の主張】被告に故意があったことは否認する。 (2) 本件不正競争行為と因果関係のある損害の発生の有無及び原告の損害額(争点2)【原告の主張】 ア本件不正競争行為と因果関係のある損害の発生原告は、被告商品の販売期間に、被告商品の販売により損害を受けた。本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害が存することは、後記エのとおりである。 イ原告の損害額①(不競法5 条1 項に基づく推定)(ア) 被告が被告商品の販売期間に譲渡した被告製品の数量は、少なくとも2 万0073 個 を下らない。 他方、被告商品販売期間に原告が販売した原告商品は1 万1422 個であり、その売上高は 2535 万1921 円である。同売上に係る変動経費(原料費、変動加工費(燃料費、消耗用品費、電力料)、営業直接費(容器荷造費、販売運送費))の合計は908 万5333 円であるため、同売上に係る限界利益の合計は1626 万6588 円(=2535 万1921 円-908 万5333 円)であ り、原告商品の単位数量当たりの限界利益は1424 円(=1626 万6588 円/1 万1422 個)となる。そのため、本件不正競争行為による原告の損害額は、2858 万3952 円(=1424 円/個*2万0073 個)と推定される。 加えて、原告は、本件不正競争行為により、本件訴訟の提起等を弁護士に委任した。これによる弁護士費用相当額の損害は285 万8395 円(=2858 万3952 円*0.1)を下らない。 したがって、本件不正競争 不正競争行為により、本件訴訟の提起等を弁護士に委任した。これによる弁護士費用相当額の損害は285 万8395 円(=2858 万3952 円*0.1)を下らない。 したがって、本件不正競争行為による原告の損害額は、3144 万2347 円である。 (イ) 原告提出に係る原告商品の売上額に関する資料は、原告商品を単体で販売したデータのみで、カテーテルとのセット販売分のデータは含まれておらず、また、販売先ごとの販売実績を合算せずに記載した一次資料である。限界利益に関しては、その算出に必要な原告商品に係る変動費について証拠を提出済みである。 ウ原告の損害額②(不競法5 条2 項に基づく推定) (ア) 被告は、被告商品の販売期間中に、被告商品を単価1900 円で少なくとも2 万0073個販売し、合計3813 万8700 円の売上を得た。また、被告商品の限界利益率は65%と考えられる。そのため、被告が被告商品の販売により得た利益の額は2479 万0155 円(=3813 万 8700 円*0.65)であり、これが本件不正競争行為によって受けた原告の損害額と推定される。 加えて、原告は、本件不正競争行為により、本件訴訟の提起等を弁護士に委任した。こ れによる弁護士費用相当額の損害は247 万9015 円(=2479 万0155 円*0.1)を下らない。 したがって、本件不正競争行為による原告の損害額は、2726 万9170 円である。 (イ) 被告は自ら主体的にフォルテグロウメディカル株式会社(以下「フォルテグロウ社」という。)に対してOEM 製造として被告商品の製造を委託し、販売したのであるから、被告とフォルテグロウ社(及びその再委託先)は一体となって被告商品を製造販売したもの であり、被告商品の販売による不 。)に対してOEM 製造として被告商品の製造を委託し、販売したのであるから、被告とフォルテグロウ社(及びその再委託先)は一体となって被告商品を製造販売したもの であり、被告商品の販売による不正競争行為につき共同不法行為が成立する関係にある。 そうである以上、被告は、原告の損害額全額につき、フォルテグロウ社等と連帯して賠償責任を負う。 エ本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害の存在、原告が譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を販売することができないとする事情及び推定覆滅事由の不存在 (ア) 被告商品の全ての新規販売が被告主張に係るプロセスを経ていることの客観的な証拠はない。仮にそのようなプロセスを経ていたとしても、原告商品は医療従事者の間で広く周知性を有する一方で、被告商品を含む整形外科に係る商品は被告の比較的弱い分野だったのであり、原告商品と被告商品とはその形態が酷似するため、医療従事者が被告商品を原告商品と誤認するおそれがあることに変わりはない。そもそも、被告商品の形態が 周知な原告商品の形態に酷似していたからこそ医療従事者は被告との取引プロセスに入っ たのであり、原告商品と形態が酷似する被告商品を被告が販売したことと原告が損害を受けたことの間には因果関係がある。 また、被告商品の購入に際し医療従事者が原告商品と誤認混同していたか否かという事情は、不競法5 条に基づく損害額の推定等の場面では関係のない事情である。 (イ) 被告商品が原告商品と異なる機構及び機能を有し、需要者がこの点に着目して被告 商品を購入したとする根拠は不明である。仮に需要者が被告商品の機構及び機能に着目して被告商品を選択しているのであれば、被告商品が原告商品と同一の形態を採用する必要はなく、また、採算を考慮せずに被告商品を を購入したとする根拠は不明である。仮に需要者が被告商品の機構及び機能に着目して被告商品を選択しているのであれば、被告商品が原告商品と同一の形態を採用する必要はなく、また、採算を考慮せずに被告商品を販売する必要もなかったはずである。 さらに、被告商品用のコネクタを介することにより、被告商品と原告商品用のカテーテルとを接続することは可能である。仮にうまく接続することができないことがあったとし ても、これは商品購入後の事情であり、必ず返品のクレームにつながるとも限らない。 (ウ) 被告にとって整形外科に係る商品は比較的弱い分野である。他方、原告商品の形態は医療従事者の間で周知性を獲得していたこと、被告商品が原告商品とほぼ同一の形態であることに鑑みれば、被告の商標及び商品名の記載が被告商品に与える印象は極めて小さく、医療従事者が被告商品を原告商品と誤認する高度の危険性があることに変わりはない。 また、被告が医療機器メーカーとしての信用力・ブランド力を有するのであれば、医療従事者に周知な原告商品の形態と酷似した形態を被告商品の形態として選択する必要はない。 (エ) 被告の新型商品の販売数量については、被告商品とは別商品であり、本件とは直接関係がない。 【被告の主張】 ア損害の不発生後記エのとおり、本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害はない。 イ原告の損害額①(不競法5 条1 項に基づく推定)について被告商品の販売数量に関する原告の主張は否認する。被告商品の販売数量は、合計1 万 4377 個である。 原告商品の売上額及び限界利益は不知。もっとも、原告商品の売上額については、原告 商品はそれ単独の販売のみでなく、多くはカテーテルとのセット販売であり、かつ、販売先によって販売価格が異なるとい 品の売上額及び限界利益は不知。もっとも、原告商品の売上額については、原告 商品はそれ単独の販売のみでなく、多くはカテーテルとのセット販売であり、かつ、販売先によって販売価格が異なるという取引の実情があるところ、原告は、セット販売に係る割付計算や販売先ごとの販売実績の合算を経た二次資料しか提出していない。また、原告商品の限界利益について、原告商品に係る変動費には、原告の主張するもののほかに販売促進費、倉庫保管費、外注加工費、原告商品の製造販売に直接関わる者の労務費、原告商 品を専属的に製造する機械設備の減価償却費等の経費が存在するはずであり、これらの経費も控除する必要がある。さらに、原告の主張する燃料費や電力料等は、原告商品の製造に費消した分について割付計算も必要である。 ウ原告の損害額②(不競法5 条2 項に基づく推定)について被告は、フォルテグロウ社から被告商品を3 万個までは単価1881 円で、3 万1 個以上は 単価1575 円で購入し、平成29 年7 月1 日以降、1 万4377 個販売して2307 万3210 円の売上を得た。このため、被告商品の平均販売単価は1604.9 円となる。 被告は、商品ラインナップのうち整形外科に係る商品は比較的弱い分野であったため、このように、まずは採算を考慮せずにシェアを伸ばすべく被告商品を販売しており、結果的に被告商品の販売による利益は発生しなかった。 エ本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害の不存在、原告が譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を販売することができないとする事情又は推定覆滅事由の存在本件では、次のとおり、本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害はなく、又は原告が譲渡数量の全部もしくは一部に相当する数量の原告商品を販売することができない きないとする事情又は推定覆滅事由の存在本件では、次のとおり、本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害はなく、又は原告が譲渡数量の全部もしくは一部に相当する数量の原告商品を販売することができないとする事情(不競法5 条1 項ただし書)又は推定覆滅事由(同条2 項)がある。 (ア) 不競法に基づく損害賠償請求権の発生には被告の個別の具体的行為が不正競争に当たることが要件となるところ、被告による被告商品の具体的な販売態様は、原告の商品又は営業と混同を生じさせるおそれのないものであるから、不正競争に該当しない。すなわち、被告及び被告商品を販売する代理店は、患者の身体に強度の侵襲を伴う医療機器である被告商品の使用の安全性確保等の観点から、被告商品を初めて購入する病院等に対し ては、被告商品の事前説明を行い、サンプルを提供している。また、病院等の側も、法令 上医療の安全性確保・医療機器の適正使用の観点から医療機器に関する情報収集義務を課されており、かつ、医療事故を未然に防止する観点から、医療機器を採用する場合は積極的に製造販売者等からの情報提供を受け付けている実情がある。このため、病院等が被告商品を購入するに当たり、何らの情報提供を受けずにカタログを見て購入したり、EC サイトから購入したりすることは考えられない。実際に、被告は被告商品を84 施設に販売した が、うち78 施設については、予め営業担当者が訪問して被告商品の説明を実施した。また、うち1 施設では、従前から被告商品を使用していた医師の希望に応えて被告商品を販売した。しかも、これらの施設は、従前は原告商品を使用していたが、被告商品の採用に切り替えたものである。これらの販売態様では、被告商品を原告商品と誤認混同させるおそれはおよそ存在しない。残る5 施設に た。しかも、これらの施設は、従前は原告商品を使用していたが、被告商品の採用に切り替えたものである。これらの販売態様では、被告商品を原告商品と誤認混同させるおそれはおよそ存在しない。残る5 施設についても、医療機器カタログやオンラインショップを 通じて被告商品を販売したものではないため、誤認混同のおそれはない。 (イ) 被告商品は、医療従事者等から原告商品に対する不満等を聞き取った上で被告において改良を重ねた結果、原告商品と異なる機構及び機能を備えるに至ったものである。すなわち、被告商品は、その性能上の優位性ゆえに医療従事者に需要されたものであるから、被告が得た利益が侵害行為により生じたものであると評価し得る余地は極めて小さい。 加えて、被告商品はカテーテルと接続して使用されるものであるところ、被告が製造販売するカテーテルとしか接続できない構造となっている。また、被告商品は被告のカテーテルとセット販売されていない。他方、原告商品も同様にカテーテルと接続して使用される商品であるところ、原告の製造販売するカテーテルと組み合わせて使用しなければならない専用設計品とされている。さらに、原告商品も原告のカテーテルと必ずセット販売さ れているわけではない。しかるに、被告商品を原告のカテーテルに接続できなかったことによるクレームは一切存在しないことに鑑みると、医療従事者が被告商品を原告商品と誤認して購入したことはないと見られる。 (ウ) 被告商品の吸引ボトル部分には被告の商標と商品名が明瞭に記載されていることから、原告商品と被告商品との形状が類似していたとしても、被告が得た利益が侵害行為 により生じたものと評価し得る余地は極めて小さい。 しかも、被告は、売上規模が世界トップ10 以内の世界的大企業の日本子会社で 状が類似していたとしても、被告が得た利益が侵害行為 により生じたものと評価し得る余地は極めて小さい。 しかも、被告は、売上規模が世界トップ10 以内の世界的大企業の日本子会社であり、医療機器業界において著名な存在である。このため、被告商品は、原告商品との誤認混同によってではなく、被告の医療機器メーカーとしての信用力・ブランド力も大きく寄与して需要されたものであり、被告が得た利益が侵害行為により生じたものと評価し得る余地は極めて小さい。 (エ) 被告商品は、被告の営業努力によって、47 の国立大学病院が加盟するGPO(複数の医療機関が医薬品や医療機器を共同購入する窓口となる組織)等に推奨商品として採用されたのに対し、原告商品は採用されなかった。被告商品を購入した84 施設のうち24 施設がいずれかのGPO に加盟しており、これらの施設によって購入された被告商品は5667 個である。これらの施設は、GPO 推奨商品だから被告商品を購入したものといえる。 (オ) 被告は、被告商品の後継商品として、形状を大きく変更した新型商品を販売しているところ、その販売数量は被告商品の販売数量を大きく凌駕している。これは、被告商品が、原告商品と酷似しているという形状によってではなく、機能等によって需要されたことを示す。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実(前記第2 の2(2))及び弁論の全趣旨によれば、被告による被告商品の販売は、不競法2 条1 項1 号の不正競争に該当するものと認められる。 2 争点1(故意又は過失の有無)について前提事実(前記第2 の2(2))及び弁論の全趣旨によれば、原告商品の形態は、少なくとも被告商品の販売が開始された平成30 年1 月頃の時点には、原告の商品等表示として周 知で 無)について前提事実(前記第2 の2(2))及び弁論の全趣旨によれば、原告商品の形態は、少なくとも被告商品の販売が開始された平成30 年1 月頃の時点には、原告の商品等表示として周 知であり、出所識別機能を有していたこと、そのような状況下において、被告は、原告商品の形態と同一の形態に近いといえるほど極めて酷似した形態を有する被告商品の販売を開始したことが認められる。そうである以上、被告には、本件不正競争行為によって原告の営業上の利益を侵害したことにつき、少なくとも過失があったと認められる。 3 争点2(本件不正競争行為と因果関係のある損害の発生の有無及び原告の損害額)に ついて (1) 本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害の発生前提事実(前記第2 の2(2))及び弁論の全趣旨によれば、原告商品の形態は、原告が原告商品の販売を開始した当時から、他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を有していたものであり、その後被告商品の販売が開始された平成30 年1 月頃までの約34 年間にわたり、他の同種の商品には見られない形態として、原告によって継続的・独占的に使用され てきたことなどから、少なくとも被告商品の販売が開始された平成30 年1 月頃の時点には、需要者である医療従事者の間において、特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得すると共に、原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていたこと、このような状況下において、被告によって原告商品の形態と極めて酷似する形態を有する被告商品の販売が開始されたこと、両商品は、消耗品に属する医療機器であり、 販売形態が共通していることが認められる。 このような事情を踏まえると、医療従事者が原告商品の形態と極めて酷似する被告商品の形態に接し 始されたこと、両商品は、消耗品に属する医療機器であり、 販売形態が共通していることが認められる。 このような事情を踏まえると、医療従事者が原告商品の形態と極めて酷似する被告商品の形態に接したことにより、商品の出所が同一であると誤認して被告商品の購入に至り、これにより原告に損害が発生する例が一定程度存在することは強く推認される。したがって、本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害の発生は認められる。この点に関する 被告の主張は、後記(2)エのとおり、採用できない。 (2) 原告の損害額①(不競法5 条1 項に基づく推定)についてア被告商品の販売数量証拠(乙11)によれば、被告は、被告の販売代理店に対し、被告商品を、平成30 年3 月~令和元年8 月の間に合計1 万5260 個販売し、また、令和元年10 月に10 個販売したが、 同月に1 個、同年12 月~令和2 年6 月の間に合計893 個が返品されたため、上記期間における被告商品の販売個数は差し引き1 万4377 個であることが認められる。 これに対し、原告は、被告商品の販売数量は少なくとも2 万0073 個である旨主張する。 しかし、これは、平成30 年1 月~令和元年8 月29 日の間の原告商品と被告商品の市場シェア及び当該期間における原告商品の販売数量等に基づく推計であるにとどまり、これを 客観的に裏付ける的確な証拠はない。他方、被告商品の販売数データ(乙11)は被告の基 幹システムから抽出されたものに基づくものとされるところ(乙24)、その信用性に疑義を抱くべき具体的な事情は見当たらない。そうである以上、この点に関する原告の主張は採用できない。 なお、本件において、被告商品の販売が令和元年8 月29 日に中止されたことは、当事者間 用性に疑義を抱くべき具体的な事情は見当たらない。そうである以上、この点に関する原告の主張は採用できない。 なお、本件において、被告商品の販売が令和元年8 月29 日に中止されたことは、当事者間に争いがない。他方、上記のとおり、被告商品の販売数データ(乙11)によれば、被告 において、令和元年10月に被告商品10個の販売実績が計上されていることが認められる。 この点については、令和元年8 月29 日をもって本件不正競争行為である被告商品の販売が行われた最終の日であり、ただ、それまでに販売された被告商品の一部について、何らかの事情により同年10 月に販売実績が計上されたものと理解される。 イ原告商品の単位数量当たりの利益の額 (ア) 証拠(甲12~17)によれば、原告が平成30 年1 月~令和元年8 月29 日の間に販売した原告商品の数量は1 万1422 個であり、その売上高は2535 万1921 円であること、これに対応する原料費、変動加工費(燃料費、電力料、消耗用品費、摩耗部品費)及び営業直接費(容器荷造費、販売運送費等)の合計額が908 万5333 円であること、原料費は製品の製造に関して直接消費される原料品の費用を意味すること、燃料費及び電力料は主として 製品の製造に消費される燃料及び電力の費用を、消耗用品費は製品の製造に関して補助的に消費される薬品等使い切り品の費用を、摩耗部品費は製品の製造に関して補助的に消費される物品の費用を意味すること、容器荷造費は製品出荷用の容器代及び荷造材料費を、販売運送費は製品販売のための運賃及び保険料を意味することが認められる。なお、原告従業員の陳述書(甲13)添付の別紙1 は、原告の社内システム上のデータに基づき出力し たものであるところ、その信用性に疑義を抱くべき具体的な 賃及び保険料を意味することが認められる。なお、原告従業員の陳述書(甲13)添付の別紙1 は、原告の社内システム上のデータに基づき出力し たものであるところ、その信用性に疑義を抱くべき具体的な事情は見当たらないことから、その記載内容をもって信用するに足りるものといってよい。 これらによれば、原告商品1 個当たりの限界利益は1424 円(=(¥25,351,921-¥9,085,333)/11,422 個)となる。 (イ) これに対し、被告は、原告商品の売上額に関する資料はセット販売に係る割付計算 や販売先ごとの販売実績の合算を経た二次資料でしかないこと、原告商品の限界利益につ いては他に控除すべき経費が存在するはずであることなどを主張する。 しかし、上記のとおり、売上額等に関する甲13 添付の別紙1 は原告の社内システム上のデータに基づくものであり信用するに足りるものといえるところ、その「コード」欄記載の商品コードは「90253300」及び「90253600」である。他方、原告商品の製品番号は、別紙原告商品目録のとおり、「SB バックチューブなしセット(廃液ボトル及び吸引ボトル)」 が「MD-53300」、「SB バックチューブなしセット(低圧品)(廃液ボトル及び吸引ボトル)」が「MD-53600」であり、それぞれ上記別紙記載の商品コードと対応関係にあるものと見られる。すなわち、上記別紙はセット販売に係る原告商品を含むものではないと理解される。 また、他の変動費については、被告指摘に係る費用は変動費として存在し得る費用であるものの、本件において、これらの費用が不可避的に生じること又は当該商品の製造販売に 直接的追加的に必要となる費用として支出されたことをうかがわせるに足りる具体的な事情は見当たらない。 あるものの、本件において、これらの費用が不可避的に生じること又は当該商品の製造販売に 直接的追加的に必要となる費用として支出されたことをうかがわせるに足りる具体的な事情は見当たらない。 したがって、この点に関する被告の主張はいずれも採用できない。 ウ推定される損害額以上によれば、平成30 年1 月~令和元年8 月の間の被告商品の販売数量は1 万4377 個 であり、これに原告商品の単位数量当たりの利益(原告商品1 個当たりの限界利益)1424円を乗ずると、2047 万2848 円(=14,377 個*¥1,424/個)となる。 エ原告が譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を販売することができないとする事情の存否について(及び本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害がないとする被告の主張について) (ア) 被告は、以下の点を指摘して、本件不正競争行為と因果関係のある原告の損害はなく、また、被告が得た利益が侵害行為である本件不正競争行為により生じたものと評価し得る余地は極めて小さい旨を主張する。 ① 被告及び被告商品を販売する代理店は、被告商品の使用の安全性確保等の観点から、被告商品を初めて購入する病院等に対しては被告商品の事前説明を行い、サンプルを提供 しており、病院等の側も積極的に製造販売者等からの情報提供を受け付けている実情があ る。実際に、被告は被告商品を84 施設に販売したが、うち78 施設については予め営業担当者が訪問して被告商品の説明を実施するなどしており、その販売態様では、被告商品を原告商品と誤認混同させるおそれはおよそ存在しない。 ② 被告商品は、その性能上の優位性ゆえに医療従事者に需要されたものである。また、原告商品も被告商品も、それぞれ対応するカテーテルとしか接続で を原告商品と誤認混同させるおそれはおよそ存在しない。 ② 被告商品は、その性能上の優位性ゆえに医療従事者に需要されたものである。また、原告商品も被告商品も、それぞれ対応するカテーテルとしか接続できないものであるとこ ろ、被告商品を原告のカテーテルに接続できなかったことによるクレームは一切存在しないことに鑑みると、医療従事者が被告商品を原告商品と誤認して購入したことはないと見られる。 ③ 被告商品の吸引ボトル部分には被告の商標と商品名が明瞭に記載されていること、被告は、売上規模が世界トップ10 以内の世界的大企業の日本子会社であり、医療機器業界 において著名な存在であることから、被告商品は、原告商品との誤認混同によってではなく、被告の医療機器メーカーとしての信用力・ブランド力も大きく寄与して需要されたものである。 ④ 被告商品は、被告の営業努力によって複数のGPO に推奨商品として採用されたのに対し、原告商品は採用されず、被告商品を購入した84 施設のうち24 施設はGPO 推奨商 品であるがゆえに被告商品を購入したものといえる。 ⑤ 被告商品から形状を大きく変更した被告商品の後継の新型商品の販売数量は被告商品を大きく凌駕している。このことは、被告商品が形状によってではなく機能等によって需要されたことを示す。 (イ) ①について a 証拠(甲2、乙25~27、32)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (a) 医療機関が医療機器を新規に購入する場合、医師、看護師等の医療従事者が、医療機器メーカー又は販売代理店の販売担当者から、商品説明会等で当該医療機器の特色、機能、使用方法等に関する説明を受けた後、臨床現場で当該医療機器を1 週間~1 か月程度試行的に使用し、使い勝手、機能性等の評価を経た上で新 代理店の販売担当者から、商品説明会等で当該医療機器の特色、機能、使用方法等に関する説明を受けた後、臨床現場で当該医療機器を1 週間~1 か月程度試行的に使用し、使い勝手、機能性等の評価を経た上で新規採用を決定し、医療機器メー カー又は販売代理店に対して当該医療機器を発注することが一般的である。一定の病床数 を有する医療機関にあっては、医師、看護師その他の医療スタッフから構成される「材料委員会」等の名称の会議体が設置・開催され、その構成メンバーによる協議を経て、当該医療機器の新規採用が決定されているが、一方で、個人病院や病床数が少ない医療機関にあっては、そのような会議体が開催されることもなく、医師の意向により新規採用が決定される場合も少なくない。 また、医療機関が従前から使用している医療機器を継続的に購入する場合、各種医療機器の画像、品番、仕様、価格等が記載された医療カタログに基づいて、医療機器メーカー又は販売代理店の販売担当者に対して品番等を伝えて発注し、また、インターネット上のオンラインショップで購入する場合がある。 このほか、消耗品等の比較的安価な医療機器については、医療機関が新規に購入する場 合においても、医療カタログに基づいて医療機器メーカー又は販売代理店の販売担当者に対して品番等を伝えて購入したり、オンラインショップで購入したりすることもある。このような場合には、医療機関が医療カタログ又はオンラインショップに掲載された情報を基に商品を選択するため、医療機器メーカーや販売代理店の販売担当者から商品について説明を受けることはない。 (b) 医療機関においては、費用削減や使用方法の相違等による医療事故防止等の観点から、用途が同じであり、容量等が同様の医療機器については、一種類のみを採用し、新 説明を受けることはない。 (b) 医療機関においては、費用削減や使用方法の相違等による医療事故防止等の観点から、用途が同じであり、容量等が同様の医療機器については、一種類のみを採用し、新たな医療機器を一つ導入する際には同種同効の医療機器を一つ減らすという「一増一減ルール」が存在する。しかし、小規模の医療機関においては、各医師がそれぞれ使いやすい医療機器を使用する傾向が強く同ルールが採用されていない場合があり、また、同ルールを 採用している医療機関においても、これが徹底されずに、特定の医師が別の医療機器を指定して使用したり、新規の医療機器が採用された後も旧医療機器が併存する期間があるなど、同種同効の医療機器が複数同時に並行して使用される場合があり得る。 (c) バーコードで医療機器を特定して発注や在庫管理を行い、また、医療機関で使用される医薬品、医療消耗器具備品等の物品の発注、在庫管理、病棟への搬送等のサービスを 事業者に委託している医療機関もあるが、全ての医療機関においてこのような委託を行っ ているわけではなく、その委託率も決して高いものではない。 (d) 原告商品及び被告商品は、消耗品に属する医療機器であり、それぞれ、カタログ販売のほか、商品画像と共に品番、型番、価格等が記載されたオンラインショップ「アスクル」のウェブサイトに掲載されて販売されている。 もっとも、被告商品については、アスクル株式会社、村中医療機器株式会社及びアズワ ン株式会社の各カタログ及びEC サイトにおける販売実績はない。 b 上記a 認定に係る各事実、とりわけ、原告商品及び被告商品がいずれも医療機器であり、その需要者は医師等の医療従事者であって、医療機器に関する専門的知識を有する者であること、医療機関が医療機器を新規に購 記a 認定に係る各事実、とりわけ、原告商品及び被告商品がいずれも医療機器であり、その需要者は医師等の医療従事者であって、医療機器に関する専門的知識を有する者であること、医療機関が医療機器を新規に購入する場合、医療従事者が医療機器メーカー等の販売担当者から商品説明会等で当該医療機器の特色等に関する説明を受けた後、臨床 現場で当該医療機器を一定期間試行的に使用し、使い勝手、機能性等の評価を経た上で発注することが一般的であることを踏まえると、医療機関による被告商品の購入の全てが被告商品を原告商品と誤認混同したことによるものとはおよそ考え難い。すなわち、上記認定に係る事情は、それぞれ、原告商品と被告商品との誤認混同を妨げる側面を含むものといえる。その限度では、これらの事情は、原告が譲渡数量の全部又は一部に相当する数量 を販売することができないとする事情に当たるというべきである。 もっとも、上記商品説明会等において被告の営業担当者が行う被告商品に関する具体的な説明内容等は証拠上明らかでなく、質疑応答なども行われ得ることも考慮すると、担当者によりある程度異なり得るものと推察される。また、上記商品説明会等の後の各医療機関における検討から採用に至る過程の実態は証拠上必ずしも判然としない。その点を措く としても、前記(1)認定のとおり、原告商品の形態は、原告による長期間の継続的・独占的使用を通じて、需要者である医療従事者の間において、特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得すると共に、原告商品の出所を表示するものとして広く認識されており、このような状況下において、被告商品は、原告商品の形態と極めて酷似する形態を有する商品として販売されたものである。このことを踏まえると、被告の営業 担当者が商品説明会等で十分な説 識されており、このような状況下において、被告商品は、原告商品の形態と極めて酷似する形態を有する商品として販売されたものである。このことを踏まえると、被告の営業 担当者が商品説明会等で十分な説明をしていたとしても、その後の臨床現場での試行的使 用を含む検討等の過程で被告商品と原告商品との誤認混同が生じ、これが発注に至る判断に影響を及ぼすといったことも十分に考えられる。さらに、会議体の開催による採用決定という過程を経ることなく医師の意向により決定される場合や、「一増一減ルール」が採用されておらず、又はこれが徹底されていないような場合には、こうした誤認混同がより生じがちであることも合理的に推察される。 上記の点を踏まえると、上記事情は、原告が譲渡数量の全部に相当する数量を販売することができないとする事情とまではいえない。 これに対し、被告は、被告商品の販売先である84 施設のうち78 の施設では予め営業担当者が訪問して被告商品の説明を実施したことなどから、原告商品と誤認混同されるおそれはなかったなどと主張する。しかし、仮に被告商品の販売実績が被告主張のとおりであ るとしても、上記の点に鑑みれば、なお原告商品と被告商品との誤認混同がなかったとまで認めることはできない。その他縷々指摘する点を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。 (ウ) ②について証拠(甲2、乙14、15)及び弁論の全趣旨によれば、カテーテルの接続方法(セイフテ ィーロック機構の有無)、逆流防止弁の有無、カテーテルの接続数及び自然排液可能な連結チューブか否かといった点で、原告商品と被告所品とが機能的に異なることが認められる。 このような性能上の相違点に着目して被告商品が選択される例は、当然あり得るものと推察される。もっとも、 液可能な連結チューブか否かといった点で、原告商品と被告所品とが機能的に異なることが認められる。 このような性能上の相違点に着目して被告商品が選択される例は、当然あり得るものと推察される。もっとも、原告商品の形態が原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていたことをも踏まえると、そのような場合でもなお原告商品と被告商品との誤認混同 が介在していることはあり得ると思われる。 また、原告商品と被告商品が、いずれも対応するカテーテルと接続させることを前提とした商品であるとしても、証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば、被告商品用のコネクタを使用すれば被告商品を原告商品用のカテーテルと接続することは可能であることが認められる。また、被告商品を原告商品用のカテーテルと接続できなかったことによるクレ ームが存在しないことは、医療従事者が被告商品を原告商品と誤認して購入したことがな いことを直ちに意味するものとはいえない。 (エ) ③について証拠(甲2、乙14)及び弁論の全趣旨によれば、原告商品及び被告商品のいずれも、吸引ボトルに商品名、登録商標及び社名等が記載され、これを明瞭に視認し得ることが認められる。したがって、これに基づいて原告商品と被告商品とを誤認混同することなく識別 した上で購入に至る例も当然あり得る。もっとも、原告商品の形態が原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていたこと、こうした記載の相違は医療従事者が両商品の形態上の共通点から受ける印象を凌駕するものとはいえないことをも踏まえると、需要者である医療従事者がこれらの記載のみに基づき、誤認混同することなく両者を識別するとは限らないというべきである。 被告の医療機器メーカーとしての信用力・ブランド力についても、仮に医療機器全般に関し 医療従事者がこれらの記載のみに基づき、誤認混同することなく両者を識別するとは限らないというべきである。 被告の医療機器メーカーとしての信用力・ブランド力についても、仮に医療機器全般に関しては被告主張のとおりであったとしても、原告商品の形態が原告商品の出所を表示するものとして広く認識されていたことを踏まえると、原告商品及び被告商品の属する商品分野においては、原告商品と被告商品との誤認混同のおそれを大きく低減させるものとは必ずしもいえない。 (オ) ④について仮に、被告主張のとおり被告商品が複数のGPO に推奨商品として採用され、被告商品を購入した施設の一部がそのGPO に加盟していたとしても、これらの施設が被告商品を採用するに至った個別の具体的な経緯は証拠上明らかではない。そうである以上、その全てがGPO 推奨商品であることを理由に被告商品を購入したものとみることは必ずしもでき ない。 (カ) ⑤について被告商品の後継となる新型商品の販売実績については、新型商品は被告商品(ひいては原告商品)と形態を異にすることなどに鑑みると、新型商品の販売実績が被告商品のそれを上回るとしても、被告商品が形状によってではなく機能等によって需要されたことを必 ずしも意味しないと思われる。 (キ) 小括以上の事情を総合的に考慮すると、本件においては、原告が譲渡数量の一部に相当する数量を販売することができないとする事情が存在し、その割合として40%の限度でこれを控除するのが相当である。これに反する原告及び被告の主張はいずれも採用できない。 そうすると、本件不正競争行為による原告の損害額(円未満切捨て)は、1228 万3708 円 (=¥20,472,848*(1-0.4))となる。 (3) 原告の損 張はいずれも採用できない。 そうすると、本件不正競争行為による原告の損害額(円未満切捨て)は、1228 万3708 円 (=¥20,472,848*(1-0.4))となる。 (3) 原告の損害額②(不競法5 条2 項に基づく推定)について前記(2)アのとおり、平成30 年3 月~令和元年10 月の間の被告商品の販売個数は1 万 4377 個である。 そうすると、仮に原告の主張のとおり被告商品の単価を1900 円、被告商品の限界利益率 を65%としても、不競法5 条2 項に基づいて推定される損害額は1775 万5595 円(=¥1,900/個*14,377 個*0.65)となり、同法5 条1 項に基づく推定額2047 万2848 円に達しない。 また、この場合の推定覆滅の程度に関しては、同法5 条1 項に基づく推定における原告が譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を販売することができないとする事情と同様に考えるのが相当である。 そうすると、不競法5 条2 項に基づき推定される原告の損害額が同条1 項に基づき推定される原告の損害額を超えることはない。 (4) 弁護士費用相当の損害額本件訴訟に表れた全ての事情を勘案すると、本件訴訟の弁護士費用相当の損害額は、上記原告の損害額の約1 割である130 万円をもって相当とすべきである。 4 小括以上より、原告は、被告に対し、不競法4 条に基づき、1358 万3708 円の損害賠償請求権及びこれに対する令和元年8 月29 日から支払済みまで平成29 年改正前の民法所定の年5%の割合による遅延損害金請求権を有することが認められる。 第4 結論 よって、原告の請求は、1358 万3708 円の損害賠償及びこれに対する令和元年8 月29 日 から支 %の割合による遅延損害金請求権を有することが認められる。 第4 結論 よって、原告の請求は、1358万3708円の損害賠償及びこれに対する令和元年8月29日から支払済みまで年5%の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官杉浦正樹 裁判官鈴木美智子 裁判官稲垣雄大 別紙当事者目録 原告住友ベークライト株式会社 同訴訟代理人弁護士塩月秀平 同柴野相雄 同井上貴宏 同安西みなみ 同訴訟復代理人弁護士栗林知広 同訴訟代理人弁理士鶴崎宗雄 同補佐人弁理士阿部豊隆 旧商号日本コヴィディエン株式会社 被告カーディナルヘルス株式会社 同訴訟代理人弁護士緒方延泰 同飯野毅一 同落合祐一 別紙原告商品目録 「SBバック」との名称の携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器のうち、・SBバックチューブなしセット(排液ボトル及び吸引ボトル)(製品番号MD-53300)・SBバックチューブなしセット(低圧品)(排液ボトル及び吸引ボトル)(製品番号MD-53600) 別紙被告商品目録 ル及び吸引ボトル)(製品番号MD-53300)・SB バックチューブなしセット(低圧品)(排液ボトル及び吸引ボトル)(製品番号MD-53600) 別紙被告商品目録商品名マルチチャネルドレナージポンプ(プレシジョン)商品番号5220-370
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