主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、原告に対し、連帯して300万円及びこれに対する令和元年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告が、被告静岡県に対し、静岡県警察警部の階級にあることを確認する。 3 第1項につき、仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の骨子⑴ 原告は、令和元年9月27日当時(以下、令和元年及び平成31年については「年」の表記を省略することがある。)、静岡県警察に所属し、警部の地位にあったが、下記警察官らから違法な降任勧奨を受け、真意に基づかない自主降任の申出をさせられたなどと主張している。 被告A及び被告bは原告の上司、被告C及び被告D(以下、上記4名を合わせて「被告警察官ら」といい、被告Aと被告bを合わせて「被告Aら」、被告Cと被告Dを合わせて「被告Cら」ということがある。)は、静岡県警察本部(以下「県警本部」という。)の人事担当者であった。 ⑵ 原告は、静岡県警察を設置、運営する被告静岡県に対しては国家賠償法1条1項に基づき、被告警察官らに対しては共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料300万円及びこれに対する違法な公権力の行使の日であり、不法行為の日である令和元年9月27日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合 による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、原告による自主降任の 申出に基づき被告静岡県が原告を警部から警部補に降任させる降任命令を発令したことには重大な手続的瑕疵があり無効であると主張して、原告が静岡県警察の警部の階級にあることの確認 よる自主降任の 申出に基づき被告静岡県が原告を警部から警部補に降任させる降任命令を発令したことには重大な手続的瑕疵があり無効であると主張して、原告が静岡県警察の警部の階級にあることの確認を求めている。 2 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) (1) 当事者ア原告(昭和▲年▲月生まれ)は、かつて警部の階級にあった者であるが、令和元年11月1日付けで警部から警部補に降任し、現在は県警本部地域部自動車警ら隊に所属する警察官である。 イ被告静岡県は、静岡県警察を設置、運営する普通地方公共団体である。 ウ被告警察官らは、いずれも静岡県警察所属の警察官であり、令和元年9月27日当時、①被告Aは、階級は警視で県警本部警務部教養課(以下「教養課」という。)教養企画管理官兼術科指導室管理官兼国際センター管理官、②被告bは、階級は警部で同課次席、③被告Cは、階級は警視で県警本部警務部警務課(以下「警務課」という。)人事室管理官、 ④被告Dは、階級は警部で同課人事第二補佐、であった。 (2) 原告の経歴(うつ病を理由とする2回目の休職処分まで)原告は、平成12年4月に静岡県警察巡査に任命されて警察学校に入学し、その後、平成15年4月に巡査部長、平成18年4月に警部補へ順次昇任し、平成23年4月1日には警部に昇任した(警部昇任時の年齢は▲ 歳)。警部昇任以降の経緯は以下のとおりである。 ア平成23年3月17日J警察署留置管理課長任命(4月1日付け警部昇任)・同年5月頃 Kクリニックを受診し、医師から「うつ病」と診断されて服薬治療開始 ・同時期東日本大震災被災 J警察署留置管理課長任命(4月1日付け警部昇任)・同年5月頃 Kクリニックを受診し、医師から「うつ病」と診断されて服薬治療開始 ・同時期東日本大震災被災地へ中隊長として約1か月災害出動 イ平成25年4月1日刑事部刑事企画課付け関東管区警察学校派遣(教務課)・同年7月頃 Lクリニックを受診(以降、同クリニックでの治療を継続)・同時期静岡県警察への帰任希望を申出 ウ平成25年8月9日関東管区警察学校派遣終了警務課総務補佐任命エ平成25年9月11日~平成26年3月9日特別休暇(1回目、うつ病) ・平成26年1月23日より職場復帰訓練を開始するも、体調不良を訴え、8日間で訓練終了オ平成26年3月10日~平成28年10月10日休職処分(1回目、うつ病)・平成26年11月12日~12月24日 Mセンター入院(1回目)・平成27年10月26日~平成28年8月14日Mセンター入院(2回目)・平成28年8月19日~9月16日警務課における職場復帰訓練 カ平成28年10月11日警務課へ職場復帰キ平成29年3月29日教養課国際センター企画補佐任命ク平成29年5月8日~6月7日 特別休暇(2回目、ヘルニア手術・療養) ケ平成29年6月9日教養課へ職場復帰コ平成29年10月20日~休職処分(2回目、うつ病) 特別休暇(2回目、ヘルニア手術・療養) ケ平成29年6月9日教養課へ職場復帰コ平成29年10月20日~休職処分(2回目、うつ病)・同年10月18日~11月30日 Mセンター入院(3回目)・平成30年7月24日~9月28日Mセンター入院(4回目)(3) 2回目の休職処分からの復帰と有給休暇の連続取得ア平成31年2月4日~3月29日 教養課で職場復帰訓練(以下、この間の職場復帰訓練を「第1期訓練」という事がある。)第1期訓練の終了に当たり、3月27日にはE教養課長(以下「E課長」という。)及び同課で課長に次ぐ地位にある被告Aとの三者面談が、同月29日には被告A、臨床心理士でもある県警本部警務部厚生課(以下 「厚生課」という。)健康管理対策室のF警部補(以下「F警部補」という。)及び同課所属保健師との四者面談が行われ、それぞれの席上で原告に対して警部補への自主降任が勧奨されたが、原告は降任に応じる意向を示さなかった(乙6、7)。 イ 4月1日~4月19日 教養課で職場復帰訓練(自主訓練)ウ 4月22日~5月31日教養課で職場復帰訓練(以下、この間の職場復帰訓練を「第2期訓練」という事がある。)第2期訓練の終了に当たり、5月28日には被告A及びF警部補との三 者面談が行われ、席上で警部補への自主降任が再度勧奨されたが、原告 は降任に応じる意向を示さなかった(甲1(枝番号があるもので、特にその記載がないものは枝番号を含む。以下同じ。))。 エ 6月3日~6月28日教養 勧奨されたが、原告 は降任に応じる意向を示さなかった(甲1(枝番号があるもので、特にその記載がないものは枝番号を含む。以下同じ。))。 エ 6月3日~6月28日教養課で職場復帰訓練(自主訓練)オ 7月1日 警部として復職教養課付け、国際センター通訳係任命(業務命令)カ 8月15日~体調不良を理由とする有給休暇を継続取得職場復帰直後の有給休暇の連続取得という状況を踏まえて、9月27日、人事担当である被告Cらとの三者面談が行われ、改めて自主降任が勧奨 され、10月3日までに所属課を通して回答するように指示された(甲3、乙9)。 原告は、休日である9月28日にE課長に電話をして自主降任の意向がないことを直接伝えたほか、10月2日には所属課の上司である被告Aらとの三者面談が行われ、ここでも自主降任が勧奨されたが、原告は最 終的に自らの意思で降任する意向はないと回答した。これに対し、被告Aらは、原告が自主降任をせず警部職としての業務を継続することになった旨の県警本部長宛ての教養課長名での報告書の素案を作成するよう原告に指示し、その後、その作成が難しいのであれば教養課長宛て原告名義での報告書を作成するように指示した。原告は、同月4日(金曜 日)、教養課長宛て報告書(甲7)を作成し、提出した。(甲4、乙11)(4) 自主降任の申出・降任命令の発令原告は、上記報告書の提出から週末を挟んだ10月7日(月曜日)午前8時50分、教養課内で被告Aに次ぐ地位にある被告bに警部補に自主降任す ることを申し出、翌同月8日、被告Aから示された降任願の文案を転記する 形で自主降任願(乙18)を作成、提出した。 時50分、教養課内で被告Aに次ぐ地位にある被告bに警部補に自主降任す ることを申し出、翌同月8日、被告Aから示された降任願の文案を転記する 形で自主降任願(乙18)を作成、提出した。 11月1日、原告に対する警部補への降任辞令が発出された(甲8、以下、この降任命令を「本件降任命令」という。)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 被告警察官らによる自主降任強要行為の違法性 (原告の主張)ア自主降任とは、当事者が「自主」的に降任を申し出る制度であるから、自主降任申出の強要などあってはならず、対象者の意思に反して自主降任を強要することは出所進退に関する自己決定権や人格権の侵害に他ならない。 原告は、教養課における当初の復帰訓練期間である第1期訓練の最終日であった3月27日に被告Aから自主降任の申出を打診されて以降、一貫してこれに応じる意向はない旨を明言し続けてきた。 イ被告Aらは、被告Cらの命を受けて事ある毎に原告を叱責し、原告が自主降任を申し出るよう肉体的・精神的に追い詰めた。 ウ被告Cらは、令和元年9月27日、原告と1時間超に及ぶ面談を行い、原告に対して自主降任を申し出るよう強要した。被告Dは、原告が自主降任を申し出なければ「分限」による免職や降任の対象となる可能性にまで言及した。 エ被告Aらは、10月2日、原告に対し、畳みかけるように自主降任を申 し出るよう1時間20分にわたって執拗に迫った。さらに、被告bは、10月3日にもかなり強い口調で自主降任を求めた。 オ令和元年9月27日以降に行われた以上のような被告警察官らによる自主降任申出の強要行為が原告の出所進退に関する自己決定権や人格権を侵害 10月3日にもかなり強い口調で自主降任を求めた。 オ令和元年9月27日以降に行われた以上のような被告警察官らによる自主降任申出の強要行為が原告の出所進退に関する自己決定権や人格権を侵害する行為であり、実質的に静岡県警察の幹部人事を掌る被告Cらや 上司である被告Aらが、長時間、自主降任の申出を強要する行為は、大 きな精神的苦痛を与えるものであったことは明白であり、被告警察官らの上記行為は原告に対する不法行為を構成する。 (被告らの主張)ア対象者の意思に反して自主降任を強要することが、出所進退に関する自己決定権や人格権の侵害に当たるとの主張は一般論としては争わない。 イ原告に対して自主降任の申出を勧奨したのは、3月27日の三者面談(E課長、被告A、原告)、3月29日の四者面談(被告A、F警部補、厚生課保健師、原告)、5月28日の三者面談(被告A、F警部補、原告)、9月27日の被告Cらとの面接、10月2日の三者面談(被告Aら、原告)の5回であり、いずれも、職場復帰訓練の終了間近や、職場 復帰後に原告の体調不良が顕著になり、長期の有給休暇を取得するようになった機会をとらえて行ったものである。 被告警察官らは、原告が職場復帰訓練の開始以降、警部(幹部)としての業務や判断ができず、その都度、繰り返し指導を受けていたため、降任の勧奨を行ったものである。被告Aらが被告Cらの命を受けて事ある 毎に原告を叱責し、原告が自主降任を申し出るよう肉体的・精神的に追い詰めた事実はない。 ウ被告Cらが、9月27日の面談で、原告が分限対象となる可能性があると言及したことは認めるが、自主降任を強要した事実は否認する。 原告は、不調を理由に8月中旬頃から連続して有給 ウ被告Cらが、9月27日の面談で、原告が分限対象となる可能性があると言及したことは認めるが、自主降任を強要した事実は否認する。 原告は、不調を理由に8月中旬頃から連続して有給休暇を取得していた ところ、原告の有給休暇の残日数が10月中旬には切れることが見込まれたことから、このまま不調が継続し、心身の故障により警察官としての職務を遂行することができないと認められる場合には、「分限休職」、「分限降任」、「分限免職」になる場合があるという一般論を説明したに過ぎない。 エ被告Aらが、10月2日に原告と面接したことは認めるが、自主降任を 執拗に迫ったことは否認する。原告に対して自主降任の申出を勧奨したが、原告は、最終的には自主降任の申出をしないという意思確認を行っている。また、被告bが10月3日にも自主降任を要求した事実は否認する。 オ被告警察官らが、原告の出所進退に関する自己決定権や人格権を侵害し たとの主張は争う。 (2) 作成義務がない報告書素案などの作成を命じた行為の違法性(原告の主張)ア被告Aらは、10月2日、原告に対し、自主降任をしないことについて、県警本部長宛ての教養課長名の報告書素案の作成を命じた。 イ被告bは、10月3日、原告が作成した素案について、「具体的に記載・今の病状で警部として何をするつもりか・完治はいつと計画しているか」「《追加》・万一今後休んだ場合どうさせるのか・自主降任をしない理由 ※将来刑事課長になりたいのは理由にならない」などと手書きし、修正を命じた。「完治はいつと計画しているか」とは原告 には回答できないし、「今の病状で警部として何をするつもりか」とは屈辱的で、「万一今後休んだ場 りたいのは理由にならない」などと手書きし、修正を命じた。「完治はいつと計画しているか」とは原告 には回答できないし、「今の病状で警部として何をするつもりか」とは屈辱的で、「万一今後休んだ場合どうさせるのか」と合わせ、あえて高い目標を設定させ、達成できなかった場合に自主降任申出を強いられ、場合によっては分限降任等を覚悟せねばならないことを想起させるものであり、原告に大きな精神的苦痛を与えるものであった。 ウ被告bは、原告に対し、前記イの素案の作成が難しければ、教養課長宛ての原告名義の報告書を作成するように、同報告書には原告が再度体調不良に陥った場合には、3度目の休職命令発出ではなく欠勤扱いとされてもやむを得ず、退職も覚悟している旨記載するよう命じた(以下、一連の報告書素案又は報告書の作成を命じた被告Aらの行為を「本件職務 命令」という。)。 エ精神疾患を有する者は、その職責を全うする意向があるか否かを述べることはできても、自身が職責を全うできるか否かを判断することはできないから、文書の内容が自身の出所進退などに関するものである場合、これを起案させることは相当ではなく、違法である。 また、そのような文書作成を命じることは、自ら責任を負うことのでき ない事柄につき責任を負わせるに等しい行為であって、心理的圧迫である。 オ被告Aらの本件職務命令は、原告を心理的に追い詰め、原告に何ら義務なき行為を行わせ、原告の人格権を侵害し、原告に大きな精神的苦痛を与える行為であり、違法、不当なものである。 (被告らの主張)ア被告Aらが本部長宛ての教養課長名の報告書素案や教養課長宛て原告名義の報告書の作成を命じたこと、教養課長名の報告書素案に被告bが手 、不当なものである。 (被告らの主張)ア被告Aらが本部長宛ての教養課長名の報告書素案や教養課長宛て原告名義の報告書の作成を命じたこと、教養課長名の報告書素案に被告bが手書きで修正指示をしたこと、原告名義の報告書に修正をするよう申し向けたことは認めるが、それが原告の人格権を侵害する違法、不当なもの であるとの主張は争う。 イ被告Aらは、警部職としての現状を維持し、治療を継続して体調の安定・改善を図り、完全復帰する道筋を強く希望するという原告の確固たる意思を最大限尊重した上で、教養課長名の文書として、原告の意思を警察組織の上層部に伝えることを目的として、素案の作成を命じた。 原告が当初作成した素案(甲5)では、原告が警部の職に留まりたいとの意向は理解できるものの、教養課長等の警察幹部を説得でき得る具体性に欠けていたことから、被告bは、再考を促したものである。 作成された報告書素案(甲5)や報告書(甲6、7)を被告Aらが自主降任の材料にするつもりであったとか、再び休職処分となった場合に退 職も覚悟している旨を記載するように命じた事実はない。 (3) 損害額(原告の主張)被告警察官らによる不法行為により、原告は自死を企図するほどにまで精神的に追い詰められ、筆舌に尽くしがたい精神的苦痛を味わった。これを金銭に換算するのは極めて困難であるが、敢えて金銭に換算すれば金300万 円を下ることはない。 (被告らの主張)損害についての原告の主張は争う。 (4) 本件降任命令が無効であることについて(原告の主張) 原告が自主降任を申し出たのは、被告警察官らから再三にわたり自主降任を強要され、自 いての原告の主張は争う。 (4) 本件降任命令が無効であることについて(原告の主張) 原告が自主降任を申し出たのは、被告警察官らから再三にわたり自主降任を強要され、自主降任を申し出なければ、分限による免職や降任になる可能性を示唆されたり、原告の恩師である教養課長名での文書作成を強要されたりしたからである。原告による自主降任の申出は、被告警察官らによる執拗な自主降任の強要という違法行為の下にされたもので、原告の自由意 思に基づくものとはいえず、原告の自己決定権を著しく侵害した状況でされたものであるから、本件降任命令は重大な手続的瑕疵があり無効である。 よって、原告は、被告静岡県に対し、原告が静岡県警察の警部の階級にあることの確認を求める。 (被告静岡県の主張)本件降任命令が原告による自主降任の申出に基づくものであることは認めるが、その手続に重大な手続的瑕疵はなく、被告静岡県の行為は適法であり、本件降任命令は無効ではない。 第3 当裁判所の判断 当裁判所は、被告警察官らによる違法な自主降任の強要行為があったとは 認められず、また、本件職務命令にも違法性は認められないから、被告らに対する国家賠償法又は共同不法行為に基づく損害賠償請求には理由がなく、また、本件降任命令に重大な手続的瑕疵があるとはいえず、本件降任命令が無効とは認められないから、被告静岡県に対する原告が警部の階級にあることの確認請求にも理由がないと判断する。その理由は、次のとおりである。 1 認定事実前記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。 (1) 原告は、平成23年4月1日付けで警部に昇任後、配属部であるJ警察署留置 1 認定事実前記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、以下の事実を認めることができる。 (1) 原告は、平成23年4月1日付けで警部に昇任後、配属部であるJ警察署留置管理課の業務による心理的負荷の蓄積や当直勤務などが重なって睡眠不 足を自覚するようになり、同年5月頃に医師からうつ病と診断され、服薬治療を開始した。原告は、当時、職場にはうつ病と診断されたことを特に報告していなかった。(甲4の2[8頁])原告は、平成25年4月には関東管区警察学校に派遣されたが、単身赴任であったことや新しい職場環境への適応不良のため体調が悪化し、同年7月 には職場での個別面談でうつ病であることなどを報告して、静岡県への帰任を希望し、同年8月には関東管区警察学校への派遣が終了した。その後、平成25年9月から平成28年10月までの約3年1か月間、特別休暇を経て、うつ病を理由として1回目の休職処分となった。 原告は、平成28年10月11日に職場復帰を果たしたものの、約1年後 の平成29年10月20日から再びうつ病を理由として2回目の休職処分となった(なお、原告は、職場復帰から再度の休職処分までの間にもヘルニア手術・療養を理由とした約1か月間の特別休暇を取得しており、職場復帰から2回目の休職処分までの実働は1年に満たない。)。 (2)ア原告は、上記休職処分の期間中、Mセンターへの入退院を繰り返してい たが、電気けいれん療法を受けるなどした結果、平成30年末頃には体 調に改善が見られるようになった。そこで、職場復帰を目指し、2回目の休職処分開始から約1年3か月後である平成31年2月4日から3月29日までの予定で職場復帰訓練(第1期訓練)が開始された。職場復帰に当たっては、当時 ようになった。そこで、職場復帰を目指し、2回目の休職処分開始から約1年3か月後である平成31年2月4日から3月29日までの予定で職場復帰訓練(第1期訓練)が開始された。職場復帰に当たっては、当時の上司である被告Aが復帰支援担当者に指定された(原告本人[5頁])。 第1期訓練では、原告の休職期間を考慮し(最初にうつ病を理由とした特別休暇を取得した平成25年9月から同訓練開始までの間、約1年の職場復帰期間を挟んで、原告の休職処分の期間は4年以上となっており、これに対して、平成23年4月に警部に昇任して以降の稼働期間は、最初に特別休暇を取得するまでの約2年半と上記約1年間の職場復 帰期間を合わせた約3年半であった。)、「不安感なく職場に単独で出勤でき、訓練時間中は自席で落ち着いて執務できること」が目的とされ、業務内容も「通達類の確認、書類の整理及び簡単な書類の作成」など係員でも対応可能なレベルに設定された(乙15)。 イ第1期訓練期間は、上記の設定レベルに照らして特段の問題なく実施さ れ、3月27日、原告、被告A及びE課長の三者で第1期訓練の終了に当たっての面談が実施された(乙4、6)。 席上、原告は、訓練開始以降、落ち着いて勤務できていること、警部としての復職を考えており、自主降任は考えていないことなどを話した。 他方、E課長は、訓練は順調に推移したと考えているとする一方、警部 昇任以降、2回にわたり休職処分となっている現状に鑑みると、警部で復職した場合の再発リスクもあり、教養課としては警部での復職には消極的であるとの考えを示した。その上で、本人の意向が重要であるから、家族とも話し合ってもらい、保健師等との面接の機会をとらえて改めて希望を聴取すると伝えた。 ウ 部での復職には消極的であるとの考えを示した。その上で、本人の意向が重要であるから、家族とも話し合ってもらい、保健師等との面接の機会をとらえて改めて希望を聴取すると伝えた。 ウ 3月29日、原告、被告A、F警部補及びG保健師(F警部補の前任に 当たる厚生課職員であり、この面談の時点で、別の部局に異動することが予定されていた。)の四者で面談が実施された(乙7、乙28[2頁])。 席上、原告は、訓練期間中、与えられた仕事はこなせており、質的・量的に余裕があり、もっと仕事を与えてほしいと感じている、一線署であ れば留置管理課長はできると思うとの自己評価を述べ、食欲もあり、体調も良好で疲労感は全くない、以前のような病的な不安や焦燥感は全くないとし、体調や意欲は十分に回復しており、警部としてのやりがいをなくしたくない、降任すれば精神的なダメージもあると思うなどとして警部で復職したいとの希望を述べた。これに対し、F警部補は、過員配 置で書類整理など軽めの業務をしているにもかかわらず、十分に業務をこなせていると語気強く話していることに違和感を覚えるとし、職場復帰自体がまだ早いのではないかとの印象を得た。同面談結果を踏まえ、主治医に面接して職場の様子を伝えて判断を仰ぐ、又は、警部として復職させ、警部の役割を求めることで警部として務まらないという現状を 認識させて自主降任を再度勧める、との両方向の可能性をもって復帰手続が進められることとなった。 エ F警部補及び被告Aは、4月4日、原告の主治医であるLクリニックのH医師(以下「H医師」という。)と面談を行った(乙5)。 F警部補は、H医師に対し、復帰訓練を終えたが警部としての職責を果 たしているようには感じられない、本人 あるLクリニックのH医師(以下「H医師」という。)と面談を行った(乙5)。 F警部補は、H医師に対し、復帰訓練を終えたが警部としての職責を果 たしているようには感じられない、本人が警部として必要な能力を適切に認識できていない現状があるとの考えを示し、復職についての意見を求めた。H医師は、復帰訓練を支障なく終えたことで自信を持ったのではないか、以前から調子のよいときは前のめりになる傾向があるから注意は必要であるとした上で、訓練期間を6週間程度延長し、業務の負荷 を上げ、訓練の最終目標を警部としてある程度務まるところまで求める ことで様子を見たらどうかと回答した。これを受けて、原告について更なる訓練期間が設けられることとなり、同日、被告Aからその旨が原告に伝えられたところ、原告は、復職になると考えていたが、医師の助言も理解できるとして追加訓練期間の設定に理解を示した。 (3)ア自主的な職場復帰訓練期間を挟み、4月22日から5月31日までの予 定で追加の職場復帰訓練が開始された(第2期訓練)。前記のとおり、この第2期訓練は原告が警部として復帰することを目指して設定されたものであり、業務内容も第1期訓練とは異なり、幹部の職務内容(総括・指揮等)を含んだレベルが設定された。そのため、第1期訓練とは異なり、原告の対応が警部として十分ではないと考えられる場合には、 被告Aらによる指導が行われることとなった。 この期間中の原告の業務レベルについて、所属課である教養課の見解は、幹部の職務内容について、形式的にはこなせているものの、幹部が配慮すべき方針判断や、上司からの指示内容を咀嚼して業務方針に活かしたり、部下に伝達したりするなどの業務の実質的な部分を行うことは できない、というも て、形式的にはこなせているものの、幹部が配慮すべき方針判断や、上司からの指示内容を咀嚼して業務方針に活かしたり、部下に伝達したりするなどの業務の実質的な部分を行うことは できない、というものであった。また、そのような状況であるにもかかわらず、原告が、業務処理内容の自己評価として「訓練内容、指示された業務を的確に処理した。」としていることにつき、自己評価と所属評価が大きく乖離しているとし、業務レベルが幹部としての実質的内容に至るよう指導を継続していくとされていた。 (乙4、15)イ 5月28日、第2期訓練期間の終了に当たり、原告、被告A及びF警部補の三者での面談が実施された(甲1、乙8)。 席上、原告は、この訓練中も落ち着いて勤務できており、帰宅後も含め、不安感・焦燥感はない、休んでいる期間が長く、知識的にも足りな いところがあり、上司からも至らない点を指摘されることがあるとしつ つ、そのことについて、辛いというよりも指導してもらっていると前向きに考えているとし、辛いと思うことは特にないなどと話していた(甲1の2[4頁])。 他方、被告Aは、訓練状況をみると、書類チェックなどの形式的業務はこなせるものの、係の統括や係員の業務管理には考えが及んでいないな ど幹部としての実質的な業務遂行には至っていないとの認識を示し、客観的に見て、今のままでは警部として勤務するのは厳しいとの考えを伝え、職場復帰に当たって自主的に降任する考えはないかと確認したところ、原告は、その考えはないと回答した(甲1の2[9、10頁])。また、F警部補からも、復職後、警部としての執務が辛いと感じた時に は、降任も一つの選択肢になり得ること はないかと確認したところ、原告は、その考えはないと回答した(甲1の2[9、10頁])。また、F警部補からも、復職後、警部としての執務が辛いと感じた時に は、降任も一つの選択肢になり得ることを念頭に置くとよいのではないかとの示唆があった(同[20頁])。 ウ 6月4日、Lクリニックにおいて、原告、原告配偶者、被告A、F警部補及びH医師での面談が実施された(甲17、乙13)。 席上、被告AからH医師に対して、訓練期間中の原告の様子として、不 安・焦燥感を感じることなく落ち着いて過ごすことができ、形式的な業務はこなすことができた一方で、幹部業務(職員管理等)については、上司の指導、同僚の助言等が必要不可欠であり、今後も継続的な指導を要するとの説明がされ、原告配偶者からは、訓練期間中、自ら決まった時間に起床できており、帰宅後も落ち着いた生活ができているとの説明 がされた。 これを受け、H医師から職場復帰して差し支えないとの判断が示され、勤務に際しては、「本人の頑張りすぎる性格」を考慮し、復職当初は、夜勤・宿日直・時間外勤務は禁止(=健康管理区分B1)とされ、復職後の診察において、本人に回復度、負担等を判断しながら、徐々に通常 勤務に近づけていくこととなった。 エ 6月21日、原告の職場復帰に関し、静岡県警察の相談医師、厚生課健康管理室職員4名(うち1名はF警部補)及び被告Aでの会議が行われた(乙14)。 席上、F警部補及び被告Aからこれまでの経緯や職場復帰訓練の状況についての説明がされ、同説明を受けて、相談医師は、原告の受けていた 治療(電気けいれん療法)や、それによる原告の症状の振幅を踏まえると再発リスクが高いとの見方を示し、職場における留意事項 状況についての説明がされ、同説明を受けて、相談医師は、原告の受けていた 治療(電気けいれん療法)や、それによる原告の症状の振幅を踏まえると再発リスクが高いとの見方を示し、職場における留意事項として指示は簡単にすることや、誇大評価に対応するため仕事の限界を設定することなどが挙げられた。 (4)ア原告は、職場復帰訓練とその後の自主出勤期間を経て、7月1日から教 養課付課長補佐(警部、過員配置)として職場復帰した。 しかしながら、ほどなくして体調不調を訴え、原告は、8月15日から9月末までの間、連続的に有給休暇を取得するなどした(ただし、9月9日から同月12日までは午前中出勤で午後休暇(12日は午前中1時間の休暇))。復職直後に長期の有給休暇が取得される状況になったこ とから、教養課でも対応が検討され、県警本部の人事担当者との面談の機会が設けられることとなった。 イ被告bは、9月27日、原告が県警本部近くのN病院に通院する機会をとらえ、県警本部での人事担当者である被告Cらと原告の面談機会を設けた。その面談に先立ち、被告bは、原告に対して、体調の状況を確認 するとともに、無理をして出てくるようには言えないが、ずっと休める状況にはないなどと話をした(甲3の2[2頁])。 その後、人事担当者である被告Cらとの面談が行われた(甲3、乙9)。席上、被告Cは、原告に対し、現在は有給休暇を取得して体調不良に対応しているところ、10月には有給休暇の残日数がなくなること が見込まれるが、原告としてはどのように考えているのか質問するなど した(甲3の2[4頁])。 また、被告Cは、警察組織における階級定員について説明し、いったん自ら階級を下げたが再度昇任試験に受かって てはどのように考えているのか質問するなど した(甲3の2[4頁])。 また、被告Cは、警察組織における階級定員について説明し、いったん自ら階級を下げたが再度昇任試験に受かっている者もいると話しつつ、自主降任も選択肢の一つとして考えられるのではないかと示唆した(同[6頁])。また、原告が、種々の検査の結果、身体面での問題はなかっ たことから今後は出勤をするなどして負荷をかけていきたいと話したのに対して、被告Dは、原告の特別休暇や休職処分によるこれまでの療養状況を記したグラフ絵(乙10)も示すなどしながら、負荷をかけて調子が悪くなったとしても無理に出勤させることはできないが、年休が取れない場合には特別休暇や分限休職などの方法を考えなくてはいけない などと話をした(甲3の2[8~12頁])。 その後、被告Cらは、健康を第一にと話をしつつ、心身の故障により警察官としての職務を遂行できない場合、分限免職や分限降任の検討対象になり得ることなどを示唆し、最終的には、10月3日までに所属を通じて自主降任をするかどうかの回答をするよう告げた(同[15、16 頁]、乙9)。 (5) 原告は、被告Cらとの面談翌日の9月28日(土曜日)、所属課の上司であるE課長に直接電話をかけ、降任はしたくないとの考えを伝えた。 他方、被告bは、被告Cらから10月3日までに所属課として自主降任をするか回答するよう伝えられていたものの、週が明けてからも原告から被告 Cらとの面談の結果などについて何らの話がなかったことから、回答日の前日である10月2日(水曜日)、被告Aと相談した上で原告との面談機会を設けた(甲4、乙11)。 席上、原告は、家族とも協議した結果、改めて自主降任はせず、警部として続け とから、回答日の前日である10月2日(水曜日)、被告Aと相談した上で原告との面談機会を設けた(甲4、乙11)。 席上、原告は、家族とも協議した結果、改めて自主降任はせず、警部として続けていきたいとの判断をしたと回答した(甲4の2[1頁])。 その後、原告は、自己評価として警部として十分だと思えるレベルには達 していないし、いつになったら達せられるかもやってみなければわからないと述べるなどし(同[2、3、5、6頁])、被告bが、自主降任してから改めて昇任試験を受けて警部になることは可能であること、実際に、自主降任してから昇任試験に合格した者も存在すると説明した(同[3頁])が、原告は自主降任する意向を示さなかった。 そこで、被告bは、原告が自主降任をしないということを所属の回答として人事に伝える以上、教養課長が本部長あての報告書を書く必要があるとし、そういった場合、課長補佐である原告のポストで課長名で報告書を作るのではないかなどとして、原告に対し本部長宛ての教養課長名の報告書の素案を作成するよう命じた(同[13頁])。それを受け、原告は報告書素案(甲5) を作成したが、被告bは、原告に対し、「具体的に記載・今の病状で警部として何をするつもりか・完治はいつと計画しているか」「《追加》・万一今後休んだ場合どうさせるのか・自主降任をしない理由 ※将来刑事課長になりたいのは理由にならない」などと手書きし、修正を施すよう原告に命じた(甲6)。 その後、被告bは、原告に対し、教養課長名での報告書素案の作成が難しいのであれば、教養課長宛ての原告名での報告書を作成するよう命じ、それに応じて作成された報告書(甲6)に対し、原告が再度体調不良に陥った場合には、3度目の休職命 教養課長名での報告書素案の作成が難しいのであれば、教養課長宛ての原告名での報告書を作成するよう命じ、それに応じて作成された報告書(甲6)に対し、原告が再度体調不良に陥った場合には、3度目の休職命令発出ではなく欠勤扱いとされてもやむを得ず、退職も覚悟していることを記載するよう申し向けた。原告は、教養課の相補佐 であるIの助言も踏まえて報告書を完成させ、同月4日、E課長に提出し、了解を得た(甲6、7、証人I[10頁])。 (6) 原告は、週末を挟んだ月曜日である10月7日に出勤すると、午前8時50分頃、出勤してきた被告bに警部補に自主降任することを申し出た。その後、E課長からも自主降任の意思が確認され、翌同月8日、原告は、被告A から示された降任願の文案を転記する形で自主降任願(乙18)を作成、提 出した。 11月1日、原告に対する警部補への降任辞令が発出された(本件降任命令)。なお、自主降任の場合の降任発令は原則として定期人事異動時に行うものとされているが(乙3・職員の願い出による降任実施要綱の制定について(以下「降任実施要綱」という。)第5の2)、早く異動したいとの原告 の希望が容れられて早期の異動となった。また、異動先についても原告から希望聴取がされ、実際の異動先となった地域部自動車警ら隊も原告が挙げた希望先の一つであった(証人E課長[11頁]、原告本人[50頁])。 (7) その後、原告は、本件降任命令から1年以上が経過した令和3年3月頃、自主降任申出の強要及び降任までにパワーハラスメントを受けたと主張する 文書を警察庁長官官房人事課宛てに送付し、これを受けて監察課では原告本人、被告警察官ら、当時の教養課員からの客観的聴取などの調査が実施されたが、調査の結果、「事実なし」とされ けたと主張する 文書を警察庁長官官房人事課宛てに送付し、これを受けて監察課では原告本人、被告警察官ら、当時の教養課員からの客観的聴取などの調査が実施されたが、調査の結果、「事実なし」とされた(証人I[22頁]、被告A本人[15頁]、原告本人[51頁]、弁論の全趣旨)。 原告は、令和4年7月13日、本件訴訟を提起した。 2 自主降任強要行為について(1) 原告は、9月27日以降に行われた被告警察官らによる執拗な自主降任の強要行為が違法であるとして、国家賠償法又は共同不法行為による損害賠償を求めている。 退職勧奨あるいは降任勧奨は、対象とされた者の自発的な退職あるいは降 任申請を求める説得活動であるところ、これに応じるか否かは、対象とされた者の自由意思に委ねられるべきものであるから、退職勧奨あるいは降任勧奨に際して、対象とされた者の自発的な退職あるいは降任意思の決定を促すために相当と認められる限度を超えて、対象とされた者に対して不当な心理的圧迫を加えたり、その名誉感情を害するような言動を用いたりすることに よって、その自由な意思決定を困難にすることは許されない。 したがって、相当と認められる限度を超えた退職勧奨や降任勧奨及びそれらの手段として用いられた私生活への介入は、違法な権利利益の侵害として不法行為を構成するものというべきであり、このことは、警察官に対してなされた場合にも同様であるといえる。 (2)アこれを本件についてみると、前記認定事実のとおり、原告は、第1期訓 練の終了に当たって実施された3月27日のE課長及び被告Aとの三者面談以降、被告警察官らから複数回にわたって警部から警部補への自主降任を勧奨されているものの、それに応じる意向を示しておらず 訓 練の終了に当たって実施された3月27日のE課長及び被告Aとの三者面談以降、被告警察官らから複数回にわたって警部から警部補への自主降任を勧奨されているものの、それに応じる意向を示しておらず、警部補への自主降任をすることは、原告の明示の意思には合致していなかったことが認められる。 イしかしながら、原告において、当時の客観的な状況として、平成23年4月の警部昇任後ほどなくしてうつ病と診断され、途中約1年の職場復帰を挟んではいるものの、平成25年9月からうつ病を理由とする特別休暇及び2度にわたる休職処分を経て、その療養期間が相当程度長期間となっていたこと、本人の認識はともかく、原告の職場復帰訓練中の執 務状況が警察組織の求める警部職としての役割を十分に果たせているとは評価できない状態であり、そうであるにもかかわらず、原告はその自覚が乏しかったこと、被告警察官らやF警部補は、そのような状況下で警部として職場復帰することについて、再度の体調不良に陥る可能性を懸念していたこと、現実に、原告は、原因は必ずしも明らかではないも のの、職場復帰から約1か月で体調不良が顕著となり、1か月を超える長期間の有給休暇を取得する状況になっていたことなどといった事情が存在していたことに照らせば、原告の心身の安全に配慮すべき立場である被告警察官らやE課長、F警部補においては、警部職としての復職、業務継続を通じて原告が再び体調を崩すことを現実的な懸念事項として 考え、そのような事態を避けるための方策を講じる必要があったといえ るから、原告自身が警部職からの降任を積極的に望んでいないとしても、現実的な選択肢として自主降任を検討するように働きかけることには十分な合理性があったということができる。 ウそ るから、原告自身が警部職からの降任を積極的に望んでいないとしても、現実的な選択肢として自主降任を検討するように働きかけることには十分な合理性があったということができる。 ウそして、前記認定事実のとおり、証拠から認められる面談機会を設けた上での被告警察官らからの自主降任の勧奨は、①3月27日の原告、被 告A及びE課長とで行われた三者面談以降、②3月29日、③5月28日、④9月27日、⑤10月2日の5回であって、約半年間という期間に照らして、その回数も特に多いとはいえないし、実施された時期も職場復帰訓練の終了に合わせたもの(第1期:①・②、第2期:③)や、職場復帰した直後に原告の体調不良が顕著になり、長期の有給休暇を取 得するようになったタイミングで行ったもの(④、⑤)であり、長期間にわたり継続的な自主降任の勧奨が執拗に行われていたということもできない。特に、2回目の休職処分からの復帰前の降任勧奨(上記①ないし③)と異なり、上記④、⑤の降任勧奨は、警部として職場復帰した場合には再度の体調不良に陥る可能性が懸念されていた中で、複数回にわ たる自主降任勧奨があったにも拘らず、最終的には原告の意向に沿った形で警部職での職場復帰が果たされた直後、体調不良を来して連続で有給休暇を取得するようになったという、ある意味で想定していた懸念が現実化したという状況下において、実際に原告が執務に耐えられていないという現状を踏まえて行われている自主降任の勧奨であり、原告が自 主降任を考えていないという事情を踏まえても、改めて自主降任を勧奨する合理的理由や必要性があったというべきである。 なお、原告は、被告bが10月3日にも自主降任を要求していたことは証拠(甲10の2[2頁])から明らかであると主張する。し 自主降任を勧奨する合理的理由や必要性があったというべきである。 なお、原告は、被告bが10月3日にも自主降任を要求していたことは証拠(甲10の2[2頁])から明らかであると主張する。しかしながら、原告の指摘に係る被告bの発言は、その前後も合わせてみれば、原告に 作成を指示した原告名義の報告書(甲6)の内容に関してされたもので あることがうかがわれ、原告が警部職で復職したことを前提として、症状が悪化した場合は自主降任も再検討したいとの趣旨の記載に言及しているものといえるから、これをもって被告bによる降任勧奨が行われたものということはできない。また、原告は、E課長が「何度か」自主降任を勧奨したことを認めていると(証人E課長[15、16頁])も指 摘するが、E課長の供述によっても、個別に話す機会に重荷を下ろしたらどうかといったことがある程度であり、特段の面談機会を設定するなどして正式な形で勧奨が行われていたものではないし、原告がE課長から違法な自主降任勧奨を受けていたと具体的に主張しているものではないなどといった事情も合わせてみれば、前記判断を左右する事情である ということはできない。 エそして、上記のような降任勧奨の機会における被告警察官らの言動も、特に声を荒げたりすることなく、概ね平穏かつ理性的に行われており、原告の感じ方はともかく、客観的にみて、それ自体が直ちに原告の意思を抑圧するような形で行われていたということもできない。この点、原 告は、10月2日の被告Aらとの面談の際、被告bが机を叩きながら発言するなど威圧的な態度であったことを指摘するところ、証拠(甲4の1)によっても被告bが机を叩きながら発言していたことを直ちに認めることはできないし、原告が指摘する音が被告bが机を叩 を叩きながら発言するなど威圧的な態度であったことを指摘するところ、証拠(甲4の1)によっても被告bが机を叩きながら発言していたことを直ちに認めることはできないし、原告が指摘する音が被告bが机を叩く音だとしても、面談中における一場面のことであるし、原告は同面談を通じて自主 降任に応じる意向はないとの考えを維持し、最終的にその判断を前提として本件職務命令がされるに至っているのであるから被告bの同行為によって原告の意思が殊更に抑圧されていたということもできず、原告の上記指摘は判断を左右するものではない。 加えて、これらの面談の機会のうち、特に、9月27日の被告Cらとの 面談、及び10月2日の被告Aらとの面談の機会は1時間を超えるもの とはなっているが、前記説示のとおり、これらの面談は、かねての懸念が現実化して原告が職場復帰の直後に長期の有給休暇を取得するような状況になったことを踏まえて行われたものであり、自主降任を勧奨すべき合理的理由や必要性があったことに照らせば、ある程度面談時間が長くなることもやむを得ないし、これらの面談の最中、被告警察官らが一 方的に自主降任を求め続けていたという事情もうかがわれないから、面談時間が長時間に及んでいることを踏まえても、前記判断は左右されるものではない。 オ以上に照らせば、被告警察官らが行った原告への自主降任の勧奨は、自主降任はしたくないという原告の明示の意向に合致していないものであ ったとはいえるものの、その時点における原告の客観的な状況を踏まえれば降任を勧奨する合理的理由があったことや、勧奨の頻度や方法などに照らすと、社会通念上相当と認められる限度を超えたものであるということはできないから、被告警察官らの行為が国家賠償法又は不法行為法上の違 任を勧奨する合理的理由があったことや、勧奨の頻度や方法などに照らすと、社会通念上相当と認められる限度を超えたものであるということはできないから、被告警察官らの行為が国家賠償法又は不法行為法上の違法な行為であるとはいえない。これらを理由とする原告の損害 賠償請求は理由がない。 (3) 以上に対し、原告は、被告警察官らの行為が違法であるとして種々主張するが、以下のとおり、いずれも理由がない。 ア原告は、被告警察官らは3月29日の時点から原告に復職自体をさせない、あるいは自主降任を迫るといういずれかの方針で原告と対峙するこ とを決定し、当初から原告に警部としての職務を全うさせようという考えがなかったと主張する。 しかしながら、前記認定のとおり、H医師の意見を踏まえ、第2期訓練が実施された上での原告の復職が実現しており、復職自体をさせないという方針が定められた事実は認められない。原告は、うつ病を理由とし て2度の休職処分になっているなど、長期間にわたり、警部としての職 責を果たしているとはいい難い状態が継続していたところ、被告警察官らやF警部補が、原告の自己評価と他からの評価に相当な乖離がある点も含め、第1期訓練期間中の様子を踏まえてもなお、原告には警部としての職責を果たすことが困難であると考えることが不合理であったとはいえない。そして、そのような状況にある原告に対する方針として、警 部の職を務められないことを認識した場合には自主降任を勧めるという方針を採用することもまた、その判断自体は何ら不合理なものではない。原告の主張は判断を左右しない。 イ原告は、自主降任の勧奨に応じない原告に対して、事ある毎に叱責するなど被告Aらからのパワーハラスメントが行われており、原告が8月 ら不合理なものではない。原告の主張は判断を左右しない。 イ原告は、自主降任の勧奨に応じない原告に対して、事ある毎に叱責するなど被告Aらからのパワーハラスメントが行われており、原告が8月1 5日以降に連続有給休暇の取得に至ったのは被告Aらによるパワーハラスメント行為による心因反応が原因であって、既往症たるうつ病の再燃が理由ではないと主張する。 まず、前提として、被告Aらが違法なパワーハラスメントを行ったかどうかを検討するに、たしかに、第2期訓練以降、警部としての職場復帰 を強く望む原告に対して被告Aらが一定の指導をし、ときには大きな声を出すなどしていたことがあった様子はうかがわれる(被告A本人[11頁]、被告b本人[4、12頁])。しかしながら、業務上必要な限度を超えて、被告Aらが繰り返し違法な圧力をかけていたことを認めるに足りる的確な証拠はないし、特に、原告が、5月末頃から録音機器を 持つようになり(原告本人[14頁])、現に、被告警察官ら(甲1~4、10、16、17)や、F警部補(甲22)との面談の様子を録音したデータを多数証拠として提出していながら、被告Aらから平素叱責されていた状況については録音データが証拠として提出されていないのも不自然である(原告は、情報セキュリティ上、録音機器の利用が禁止 されていたことを理由として説明しているが(原告本人[13頁])、 実際には、前記のとおり、現に被告警察官らなどとの面談の様子などを多数録音しているのであるから、自らの行為とも整合せず、理由がない。)。また、原告が、その時点で、被告Aらの上司に当たるE課長や、厚生課のF警部補、人事担当者である被告Cらその他の関係機関に対して被告Aらから不当な扱いを受けていることを申し出るなどした 由がない。)。また、原告が、その時点で、被告Aらの上司に当たるE課長や、厚生課のF警部補、人事担当者である被告Cらその他の関係機関に対して被告Aらから不当な扱いを受けていることを申し出るなどした様 子もうかがわれないことなども合わせてみれば、被告Aらによる不当なパワーハラスメント行為が行われていたと認めることはできない。 この点、H医師は、5月25日の面談の際に、原告が上司から不当な言動を受けていたと述べていたとの記載がある令和7年3月22日付けの診断書(甲27)を作成しているが、同記載も原告の供述を前提として それを記載したものにすぎず、具体的な内容について示すものでも、客観的な裏付けがあるものでもないし、その作成時期に加え、H医師は、5月25日以降、少なくとも6月4日には被告A及びF警部補を交えた面談の機会を持っているが、同席において、被告Aらの対応が不相当であることを前提とする何らかの発言をしている様子もうかがわれない (甲17、乙13)ことに照らすと、少なくとも第2期訓練の時点における被告Aらの言動について原告が切実なものとしてH医師に相談していたといった事実は認められないから、同診断書の記載をもって、被告Aらによる不当なパワーハラスメント行為が行われていたと認めることはできない。 また、原告は、被告bは、原告が手足のしびれを訴えたことについて、7月中の原告に対する被告Aらの指導が厳しかったことが原因である可能性があるなどと述べた(被告b本人[25頁])ことをもって、被告Aらによるパワーハラスメントが日常的に行われていたことが裏付けられるなどとも主張する。 しかしながら、厳しい指導が直ちにパワーハラスメントに当たるも のとはいえない。被告bの原告 ワーハラスメントが日常的に行われていたことが裏付けられるなどとも主張する。 しかしながら、厳しい指導が直ちにパワーハラスメントに当たるも のとはいえない。被告bの原告に対する発言も、自身がパワーハラスメントを行っていたことを自認したものとは解されない。 以上に照らすと、被告Aらからの違法なパワーハラスメント行為が行われていたことを前提とする原告の主張は、その前提を欠くものであり、前記判断を左右しない。 ウ原告は、H医師は職場との面談の機会があれば被告Aらからパワーハラスメントを受けていることを伝達する意向であったが、E課長が職場復帰要領が定める主治医との面談を怠ったためその機会を逸し、事後策を講じることができずに原告が有給休暇を連続取得することにつながったと主張する。 この点、令和元年8月当時の静岡県警察職場復帰受入れ取扱要領(甲13、以下「旧要領」という。)では、所属長は職場復帰から概ね1か月を経過したときは主治医との面接を行うものとされているところ(同要領第4の5)、E課長がH医師と面談をしていないことについては争いがない。 被告らは、旧要領の改正手続が平成27年中から行われており、改正案がすでに固まっていたから改正中要領(乙24)に従った運用がされていたところ、改正中要領では所属長と主治医との面接は求められていなかったと主張するが、実際に新要領が制定されて旧要領が廃止されたのは令和5年11月であるから(乙25)、令和元年8月当時に則るべき であった旧要領に即した対応をしていないことの理由とはならない。 しかしながら、被告Aらによる違法なパワーハラスメント行為が行われていたと認められないことは前記説示のとおりである。 であった旧要領に即した対応をしていないことの理由とはならない。 しかしながら、被告Aらによる違法なパワーハラスメント行為が行われていたと認められないことは前記説示のとおりである。また、H医師は、原告が上司からのパワーハラスメントにより身体の痛みや手足のしびれといった不調が生じたと認識していたのであれば、原告の体調悪化 を防ぐためにもこれを職場に伝え、原告が休養できるように働きかける ものと考えられるが、原告が職場復帰をするに当たり、少なくとも4月4日及び6月4日の2回にわたってF警部補や被告Aを交えた面談を行っているにもかかわらず、そのような対応をしていない。E課長の面談の有無は、前記判断を左右しない。 エ原告は、原告に対して3回目の休職命令発令が可能であり、本来は休職 命令が発令されるべきであったと主張する。 この点、原告に対する3回目の休職処分の発令が客観的には不可能ではなかったことについては当事者間に争いがないところ、被告Dは、9月27日の面談の際、警部としての休職は難しいのではないか、警部のままで休職ということになると厳しくならざるを得ないなどと発言してい る(甲3の2[12頁])。 しかしながら、被告Dの上記発言は3度目の休職処分にすることができないと断定しているものでもないし、同面談の時点では原告自身も体調不良が精神面からきているものなのかも含めて具体的原因を把握しておらず(同[8頁])、休職処分に必要な医師2名による診断書を取得す る具体的な目途も立っていなかったというのであり(同[1頁])、原告が平成23年4月の警部昇任後ほどなくしてうつ病となり、一時的な復帰期間はあるものの、平成25年9月から長期間にわたって休暇・休職をしている状 途も立っていなかったというのであり(同[1頁])、原告が平成23年4月の警部昇任後ほどなくしてうつ病となり、一時的な復帰期間はあるものの、平成25年9月から長期間にわたって休暇・休職をしている状況に照らせば、根本的な解決方策がとられないまま再度の休職処分とすることが相当でないと判断され、休職処分とはならない 可能性も十分にあったといえるから、客観的には不可能ではないとしても、それが必ずしも容易ではないことを指摘した被告Dの上記発言が必ずしも適切性を欠くものであったということはできない。 また、原告は、早急に休職処分のための手続に入れば原告が有給休暇を消費する前に休職処分にすることが間に合ったと供述する一方で、被告 Dが警部のままでは休職命令発令が困難であると発言をしたことが不適 切であると主張する。 この点、被告Dは、原告が有給休暇を取得し始めた頃である8月20日の時点で休職処分の発令手続を検討していれば有給休暇を消費する前に発令できた旨を供述している(被告D[29頁])。しかしながら、そもそも原告を休職処分にする具体的要件を充足していることが明らかと いえる状況ではなかったことは前記説示のとおりであって、被告Dの供述内容を全体としてみれば、同人も休職処分の要件を充足していると考えていたわけではないことがうかがわれるから、時間的に発令が可能であったか否かに関する原告の上記主張は判断を左右しない。 さらに、原告は、被告Dが分限免職や分限降任に言及していることを指 摘し、人事権を背景としつつ、それらの処分を示唆して自主降任申出を要求したと主張する。 たしかに、被告Dは、9月27日の面談の際に分限免職や分限降任に言及しているが(甲3の2[15頁]、被告D本人[6 背景としつつ、それらの処分を示唆して自主降任申出を要求したと主張する。 たしかに、被告Dは、9月27日の面談の際に分限免職や分限降任に言及しているが(甲3の2[15頁]、被告D本人[6頁])、被告Dの説明も、警部職に留まったものの負荷に対応できずに出勤が困難となっ た場合、有休をすべて消化した段階で休職命令が発令されないときには欠勤扱いになり、結果として分限処分になる可能性があるというもの、あるいは、警部職にとどまったものの心身の故障により警部としての職務を遂行できない場合には分限処分になる可能性があることを指摘するものにすぎず、その説明内容自体に誤りはなく、一般的に見ても何ら不 当な点はないし、その説明ぶりを見ても、自主降任しないと分限免職、分限降任とするなどと両者を直接結び付けて話をしているわけではないことは明らかであって、分限処分を示唆して自主降任を求めたと評価されるべきものではないから、原告の上記主張は採用できない。 オ原告は、被告警察官らは、いったん警部から警部補に自主降任したとし ても、改めて警部に再昇任することができるかのような不適切な説明を 行ったと主張する。 たしかに、現実として、警部から自主降任をして警部補になった者が、再度、警部に昇任した事例はないとされているが(被告C本人[19頁]、被告D本人[30頁])、警部補から巡査部長への自主降任後に警部補に再度昇任した事例はあるというのであるし(同[31頁])、 降任実施要綱(乙3)でも、自主降任をした職員が再度昇任を希望する場合には任用訓令の規定により取り扱うものとされており(同要綱第7の1)、再昇任するにあたって制度としては特段の客観的障害はなく、静岡県警察における警部職の定員が約380人(全職員 度昇任を希望する場合には任用訓令の規定により取り扱うものとされており(同要綱第7の1)、再昇任するにあたって制度としては特段の客観的障害はなく、静岡県警察における警部職の定員が約380人(全職員約7000人のうちの約5パーセント)と限られたもので、もともと警部への昇任が安 易なものではないことなども踏まえれば、結果として自主降任後に警部に再昇任した事例がないとしても、被告Dや被告bの説明が客観的にみて誤りであり、不適切なものであったとまでは言うことはできず、この点に関する原告の主張は採用することができない。 なお、原告は、健康管理区分に指定されている者は昇任試験を受けるこ とができないところ、当時、健康管理区分に指定されていた原告には昇任試験の受験資格がなかったにもかかわらず、そのことを説明していないことが不当であるとも指摘する。しかしながら、被告警察官らは、原告がまずは治療に専念することを勧めており、原告の状態が改善した場合には再度昇任試験を受験することができるということを説明している のであって、原告の健康管理区分指定が解除されたことを前提とした話をしていることは明らかであり、被告警察官らの説明の内容からすれば、原告もその趣旨を十分に理解できたはずであって、説明が不合理、不相当なものであったということはできないから、原告の上記主張は結論を左右しない。 カ原告は、被告bが自主降任した方が評価が上がると説明したことが不適 切であると主張する。 この被告bの説明の趣旨は不明確であり、必ずしも適切な発言ではなかった可能性は否定できないが、原告が被告bの同発言を受けて自主降任を決断したとも認められず、同発言をもって直ちに自主降任の勧奨が違法性を帯びることになるともい 明確であり、必ずしも適切な発言ではなかった可能性は否定できないが、原告が被告bの同発言を受けて自主降任を決断したとも認められず、同発言をもって直ちに自主降任の勧奨が違法性を帯びることになるともいえない。 キその他、原告は、被告警察官らの行為が違法であるとして種々主張するが、いずれも前記判断を左右するものではなく、採用できない。 3 本件職務命令の違法性について(1)ア原告は、原告が自主降任に応じない理由を明らかにする必要はなく、自主降任をしないことについて、本部長宛ての教養課長名の報告書素案 や、教養課長宛ての原告名義の報告書を作成させたこと(本件職務命令)は、それ自体が独立の不法行為になると主張する。 イしかしながら、うつ病を理由とする長期間の休職処分からの復帰に際し、客観的に警部としての業務を行うことが難しいと評価され、警部として職場復帰した場合には再度の体調不良に陥る可能性が懸念されてい た中で、複数回にわたる自主降任勧奨があったにも拘らず、最終的には原告の意向に沿った形で警部職での職場復帰が果たされた直後、再び体調不良を来して連続で有給休暇を取得するようになったという当時の状況に照らすと、警察組織として、原告が警部としての職責を全うできるか疑義を持つことに十分な合理性を認めることができるし、その上で、 自主降任を勧めた人事担当に対して自主降任をしないで警部としての職務を果たす考えであることを説明するために所属課として一定の見解を示す必要があったという被告Aら及びE課長の考えにも一定の合理性を認めることができる。 そして、原告の強い希望に基づいて警部としての地位での職務を継続す るという結論に至った以上、原告が今後どのような対応をするかについ も一定の合理性を認めることができる。 そして、原告の強い希望に基づいて警部としての地位での職務を継続す るという結論に至った以上、原告が今後どのような対応をするかについ て、原告自身に考えを明らかにさせること自体、直ちに不合理なものであるということはできない。なお、被告Aらは、警部として課長補佐の地位にある以上、その立場上、課長が作成すべき書類の素案を作ることがあることを前提としているようにもうかがわれ、原告に対し、その立場の者として作成することを求めているようにもうかがわれるが、いず れにしても、報告書素案や報告書の作成を原告に指示することが違法であるとまでいうことはできない。 この点、たしかに、警部職を継続する中で欠勤が続いた場合には分限免職になってもかまわない旨の表明をさせた点については、やや過剰であり、不適切であったとの誹りを免れないとの見方もできなくはな い。しかしながら、欠勤が続いた場合に分限免職の処分を受ける可能性は否定できないのであって、前記のとおり、原告も、被告Dから同趣旨の説明を受けた上で警部としての業務を継続するという判断をしているのであるから、そのことを覚悟している旨を明記するよう求めたとしても、違法性を帯びるほどの不合理なものであったとまではい うことができない。 (2)ア原告は、自主降任をしない理由を原告が明らかにする必要はないと主張しているところ、被告Aらも、所属課の長であるE課長が同名義で人事に報告する必要があるとして、そのためのものとして報告書素案や課長宛ての報告書の作成を指示しているところであり、あくまで人事へ理由 を説明するのは所属課であって、原告自身がその理由を明らかにすることを求めているものではないから、その点において原 素案や課長宛ての報告書の作成を指示しているところであり、あくまで人事へ理由 を説明するのは所属課であって、原告自身がその理由を明らかにすることを求めているものではないから、その点において原告の主張は前提を欠く。 イ原告は、被告Aらが原告に作成を命じた報告書はそもそも人事担当者から提出を求められていたものでもなく、実際にE課長もその必要 性を認識しておらず、作成の必要性がないものであったと主張する。 たしかに、被告Cらから被告Aらに対して報告書等を作成するようにとの明示の指示がされてはいなかった様子がうかがわれるものの、被告Cらも書面があったほうがよいし、自主降任しないことの理由については何らかの形で説明する必要はあるなどと供述している(被告C本人[7、25頁]、被告D本人[38頁])ほか、E課長もそれまでの休 職過程などを踏まえると、本部長に降任しないことについて納得してもらう必要はあると考えられるなどと供述している(証人E課長[31頁])とおり、これまで説示してきたように、警部として職場復帰した場合に再度の体調不良になることが懸念され、現に職場復帰直後に体調不良に陥っている原告が引き続き警部として業務を続けるという方針を 定めたのであるから、今後の対応をするにあたって、所属課と人事担当を始めとする警察組織との間で、むしろ一定の文書作成などを踏まえた認識共有が図られるべき状況であったといえるから、報告書等の作成の必要性がなかったという原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、自主降任をしない理由を示さなくても人事としてはその意向を 受け入れるものであると主張するが、自主降任を望まないという原告の意向を受け入れることと、そのことを前提として教養課、ひ ウ原告は、自主降任をしない理由を示さなくても人事としてはその意向を 受け入れるものであると主張するが、自主降任を望まないという原告の意向を受け入れることと、そのことを前提として教養課、ひいては警察組織としてどのような対応をするかというのは別の問題であり、その後の原告への対応方針を定めるにあたって一定の情報共有をする必要があるといえるから、原告の上記主張を踏まえても結論は左右されない。 なお、原告は、E課長が人事に原告が自主降任を申し出ないこととした理由を報告していないとも主張するが、10月4日に人事担当に自主降任をしない旨を伝えた後、原告は、週末を挟んだ10月7日朝には自主降任を申し出ないとの意向を翻し、その後は自主降任の手続が進められていたという経緯にも照らせば、結果として自主降任を申し出ないこと とした理由の報告がされていなかったとしても、その前の状況におい て、報告書の作成が必要なかったということにはならないから、その点に関する原告の主張は理由がない。 エその他、原告は、被告bが加筆を指示した内容について、原告としての感じ方を種々主張しているが、いずれも原告の主観であるところ、原告がどのように受け取ったかそれ自体によって本件職務命令の違法性の判 断が左右されるものではない。これまで説示してきたところに照らせば、被告bが加筆した内容についても直ちに違法なものであるということはできず、原告の主張は理由がない。 4 小括(損害賠償請求について)以上のとおりであって、被告警察官らがした降任勧奨行為及び本件職務 命令について国家賠償法上又は不法行為上の違法性は認められず、被告らに対する原告の損害賠償請求はいずれも理由がない。 5 警部の階級にあることの確認 警察官らがした降任勧奨行為及び本件職務 命令について国家賠償法上又は不法行為上の違法性は認められず、被告らに対する原告の損害賠償請求はいずれも理由がない。 5 警部の階級にあることの確認請求について(1)ア原告は、原告がした自主降任の申出は、被告警察官らによる執拗な自主降任の強要という違法行為の下にされたもので、原告の自由意思 に基づくものとはいえず、原告の自己決定権を著しく侵害した状況でされたものであるから、原告を警部から警部補に降任させる本件降任命令には重大な手続的瑕疵があり、無効であると主張する。 イしかしながら、被告警察官らによる自主降任の勧奨や、それに関連する本件職務命令が違法であるということができないのは前記説示の とおりである。 また、そのことを措いても、10月2日の被告Aらとの面談で原告が自主降任をしない意向を伝えてからは、自主降任しないことを前提とした本部長宛ての教養課長名の報告書の素案又は教養課長宛て原告名の報告書を作成するように被告Aらから指示されていたもので、原 告が降任しない前提での話が進められており、10月4日(金曜日) にE課長宛ての報告書を作成、提出したことでいったんは原告が引き続き警部としての業務を継続する方向で話が進むことにまとまった状況であったといえる。そして、原告は、その週末に出勤しておらず、被告警察官らの連絡もなかったと述べているから(原告本人[48頁])、原告が自主降任を申し出た10月7日の直前2日間に、被告警 察官らが原告に働きかけたといったことはなかったものである。そうであるにもかかわらず、原告は、週末を挟んだ10月7日(月曜日)の朝一番に自主降任の申出をしたものである。そして、原告は、自主降任の決意を固めたの に働きかけたといったことはなかったものである。そうであるにもかかわらず、原告は、週末を挟んだ10月7日(月曜日)の朝一番に自主降任の申出をしたものである。そして、原告は、自主降任の決意を固めたのは前日である10月6日(日曜日)にテレビ番組を見たことが契機であったと認めている(同[53頁])。加えて、原告 は、自主降任を申し出た後、本件降任命令の発令までの間に撤回を申し出ることもなく、原告の申出を踏まえて降任に伴う異動の発令まで1月以内の短期間で行われたことなども合わせてみれば、自主降任の申出は、原告の自発的な意思に基づいてされたものであると認めることができ、それに反する原告の主張は理由がない。 (2)ア原告は、自主降任の願い出に際して添付されたE課長作成名義の意見書(乙19)には「妻も降任について同意している。」旨の記載があるが、実際に原告が自主降任について妻に話したのは降任に基づく異動が行われた11月1日であるから意見書の記載は虚偽である、また、被告bが作成した書面(乙17の1)には原告が警部になってか らの年数について客観的事実と異なる記載があり、訴訟係属後に作成された可能性があるなどとして、原告が自主降任を申し出た後の意思確認はほとんど行われていないと主張する。 イしかしながら、原告がいつ妻に降任について話をしたのかについては原告の供述以外に何ら客観的な裏付け証拠もなく、同事実を前提と するには足りないし、原告から妻の同意を得ていると説明されたとす れば、被告警察官らにおいて妻に直接確認する義務があったとまではいえないから、いずれにしても原告が指摘する妻の同意に関する記載内容は結論を左右する事情とはいえない。また、被告b作成の報告書に原告の警部就任からの年数についての誤 直接確認する義務があったとまではいえないから、いずれにしても原告が指摘する妻の同意に関する記載内容は結論を左右する事情とはいえない。また、被告b作成の報告書に原告の警部就任からの年数についての誤りがあったとしても、そのことをもって直ちに意思確認が十分に行われなかったことを推認する ものでもない。 原告においても、自主降任の意思を示してから、E課長や被告Aらから何らの意思確認をされていないと主張、供述するものではないし(原告本人[25頁])、当時の心情について、降任の意思が固く、早く異動したかったと供述しているのであって(原告本人[49 頁])、仮に、原告の意思確認を行ったとしても、その時点において降任意思があることが確認できていたことは明らかであって、この点について、降任手続を無効とするような手続的瑕疵があったということはできない。原告の上記主張は理由がない。 (3) その他、本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても、本件降任命令を無 効とするような手続的瑕疵があったというに足りる事実を認めることはできない。警部の階級にあることの確認を求める原告の請求には理由がない。 第4 結論よって、原告の被告らに対する損害賠償請求、及び被告静岡県に対する 警部の階級にあることの確認請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 静岡地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官日野直子 裁判官鈴木綱平 裁判官大西立 裁判官鈴木綱平 裁判官大西立
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