神戸地方裁判所平成14年8月21日宣告平成14年(わ)第388号,第651号,第686号不正作出支払用カード電磁的記録供用(変更後の訴因不正電磁的記録カード所持,不正作出支払用カード電磁的記録供用),不正作出電磁的記録カード所持,出入国管理及び難民認定法違反被告事件 主文 被告人を懲役2年10か月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 押収してある変造テレホンカード46枚(平成14年押第78号の1ないし46)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 A株式会社及びB株式会社の財産上の事務処理を誤らせる目的で,平成14年3月24日午後2時15分ころ,神戸市C区Da丁目b番c号Ed階西側に設置されている公衆電話コーナー付近において,テレホンカードの断片2片を透明粘着テープで貼り合わせ使用可能度数を105度数とした電磁的記録が新たに印磁されるなどして不正に作られた料金支払用のカードを構成する電磁的記録をその構成部分とするカードであるテレホンカード様のもの33枚(平成14年押第78号の1ないし33)を所持し,そのうち1枚(同押号の1)を同所に設置された公衆電話のテレホンカード挿入口に挿入して同カードの電磁的記録を読み取らせ,もって,同カードの電磁的記録を人の財産上の事務処理の用に供し,第2 第1同様の目的で,同月29日午後2時30分ころ,肩書住居地の被告人方において,第1同様不正に作られた料金支払用のカードを構成する電磁的記録をその構成部分とするカードであるテレホンカード様のもの13枚(同押号の34ないし46)を所持し, ころ,肩書住居地の被告人方において,第1同様不正に作られた料金支払用のカードを構成する電磁的記録をその構成部分とするカードであるテレホンカード様のもの13枚(同押号の34ないし46)を所持し,第3 中華人民共和国に国籍を有する外国人であり,平成8年5月22日,同国政府発行の旅券を所持して本邦に入国したものであるが,その在留期間が6か月間である旨決定され,上記旅券にその旨記載されていたのに,上記在留期間の更新又は変更を受けないで,その末日である同年11月22日を超えて同13年7月8日まで神戸市F区Ge丁目f番g号のHビルh階等に居住し,もって,在留期間を経過して本邦に残留したものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―省略(法令の適用)被告人の判示第1の所為のうち,不正電磁的記録カード所持の点は刑法163条の3に,同供用の点は同法163条の2第2項に,判示第2の所為は同法163条の3に,判示第3の所為は出入国管理及び難民認定法70条1項5号にそれぞれ該当するが,判示第1の不正電磁的記録カード所持とその供用との間には手段結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により1罪として犯情の重い不正作出支払用カード電磁的記録供用罪の刑で処断することとし,判示各罪について各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条,10条により刑及び犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年10か月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとし,押収してある変造テレホンカード33枚(平成14押78号の1ないし33)は判示第1の,同様の変造テレホンカード13枚(同押号の34な してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとし,押収してある変造テレホンカード33枚(平成14押78号の1ないし33)は判示第1の,同様の変造テレホンカード13枚(同押号の34ないし46)は判示第2の,各不正電磁的記録カード所持罪をそれぞれ組成した物で,いずれも何人の所有をも許さないものであるから,いずれも同法19条1項1号,2項本文を適用してこれらを没収し,訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 なお,弁護人は,被告人が平成14年3月24日に変造テレホンカード33枚を所持していた事実(判示第1)と同月29日に変造テレホンカードを13枚所持していた事実(判示第2)につき,後者は前者と同時期の所持が継続していたものにすぎないからこれらは包括一罪を構成すると解するべき旨主張する。しかし,33枚の変造テレホンカードについては被告人が外出中判示第1の公衆電話コーナー付近で上着のポケット及び携帯していた手提げ鞄の中に所持していたのに対し,13枚の変造テレホンカードについては被告人が自宅で当時使用していなかった手帳に挟んで所持していたものであって,その所持の態様が相当程度異なっており,それぞれ別個にテレホンカードに対する社会的信頼を阻害する危険が生じているから,それぞれについて各別に不正電磁的記録カード所持罪が成立し両罪は併合罪の関係にあると解するべきである。 (量刑の理由)本件は,被告人が在留期間を経過して不法に本邦に在留し,この間変造テレホンカードを多数所持し,そのうち1枚を公衆電話に挿入使用して電話会社の財産上の事務処理を誤らせた事案である。 被告人は,変造テレホンカードを2回にわたり購入の上合計46枚も所持していたものであるが,テレホンカードは携帯電話が普及した今日 電話に挿入使用して電話会社の財産上の事務処理を誤らせた事案である。 被告人は,変造テレホンカードを2回にわたり購入の上合計46枚も所持していたものであるが,テレホンカードは携帯電話が普及した今日においてもなお公衆電話を利用する多数の者にとって極めて有用性の高い決算手段として活用されており,本件のごとき変造テレホンカードの所持や供用は,同カードの円滑な活用を阻害し同カードに対する社会的信頼を阻害する悪質なものである。また,被告人の不法残留の期間は4年7か月と長期に及んでいる。これらのことからすると,被告人の刑事責任は軽くない。 しかし,被告人には前科前歴がなく,また被告人は本件で初めて身柄を約5か月にわたり拘束されて現在反省していると認められること,被告人の夫が被告人を監督する旨誓い,電話会社に対する損害を弁償すると約してもいることなど,被告人のために酌むべき事情もあるので,これらの諸事情を考慮し,今回に限り,その懲役刑の執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年8月21日神戸地方裁判所第11刑事係乙 裁判官橋本一
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