平成13(わ)491 出入国管理及び難民認定法違反

裁判年月日・裁判所
平成14年1月28日 和歌山地方裁判所
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判決文本文2,122 文字)

主文 被告人を懲役3年6月及び罰金500万円に処する。 未決勾留日数中80日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,漁船「甲」の船長であるが,Aらと共謀の上,営利の目的で,平成13年6月16日ころ,和歌山県西牟婁郡a町c番地所在のd灯台から真方位220度約110キロメートル(北緯e度,東経f度)付近の公海上において,中華人民共和国国籍を有する外国人で,入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸する目的を有するBほか数十名の集団密航者を同船に乗船させて自己の管理下に置いた上,同海域から本邦に向けて輸送し,同月17日午前1時ころ,同灯台から真方位272度約69キロメートル(北緯g度,東経h度)付近の海域において,本邦領海内に入らせ,さらに上陸の場所である同県有田市i所在のj漁港岸壁に向けて輸送し,同日午前4時過ぎころ,同船を前記j漁港給油所付近の岸壁に接岸させて,前記Bほか数十名の集団密航者を上陸させたものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為のうち営利の目的で集団密航者を本邦に向けて輸送した点及びこれを本邦内において上陸の場所に向けて輸送した点はいずれも包括して刑法60条,出入国管理及び難民認定法74条の2第2項,1項に,営利の目的で集団密航者を本邦領海内に入らせた点及びこれを上陸させた点はいずれも包括して刑法60条,出入国管理及び難民認定法74条2項,1項にそれぞれ該当するところ,これらは包括して一罪として評価すべきものであるから,刑法10条により一罪として重い出入国管理及び難民認定法74条2項違反の罪の刑で処断することとし,その所定刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役3年6月及び罰金500万 罪として評価すべきものであるから,刑法10条により一罪として重い出入国管理及び難民認定法74条2項違反の罪の刑で処断することとし,その所定刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役3年6月及び罰金500万円に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中80日をその懲役刑に算入し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。 (量刑の事情) 1 本件の概要本件は,漁船「甲」の船長である被告人が,蛇頭関係者及び暴力団関係者らと共謀の上,本邦領海外において,中国上海港付近から航行してきた蛇頭の密航船と落ち合い,同船から数十名の密航者を受け取って「甲」の船倉に乗せた上,これらを和歌山県有田市内のj漁港に上陸させたという出入国管理及び難民認定法違反の事案である。 2(1) 不利な事情被告人は,暴力団関係者Aが多額の報酬を約束したことに加え,元妻と駆け落ちした男の行方を捜して欲しいという被告人の依頼をも引き受けたことから,本件犯行に加担することを決意したものであり,その動機は利欲的かつ安易であって,酌量の余地はない。 その態様についてみるに,本件は,蛇頭関係者及び暴力団関係者らが緊密に連絡を取り合った末,各密航船が落ち合う日時や海域を定め,あるいは,上陸予定場所にトラック2台を待機させて迅速に上陸できる手筈を整えるなどした後,敢行されたものであり,組織的かつ計画的犯行であって悪質である。このうち,被告人は,指定された海域に赴くためGPSを用いながら「甲」を操船し,j漁港から約160キロメートル離れた本邦領海外の海上において,蛇頭の密航船から集団密航者を「甲」の船倉に収容した上,深夜「甲」をj漁港に接岸させたものであって,本件犯行に不可欠な役割を果たしたといえる。被告人は,犯 キロメートル離れた本邦領海外の海上において,蛇頭の密航船から集団密航者を「甲」の船倉に収容した上,深夜「甲」をj漁港に接岸させたものであって,本件犯行に不可欠な役割を果たしたといえる。被告人は,犯行への協力を持ちかけてきたAに対し,元妻と駆け落ちした男の行方を捜すよう依頼したり,報酬の一部を前金で支払うよう要求するなど,自己の利益獲得に向けて主体的かつ積極的に行動し,その結果,合計430万円という多額の報酬を手にしているのであって,犯情として軽視し得ない。 本件犯行により,結果として約98名もの密航者が本邦に不法に上陸したのであり,わが国の出入国管理秩序が著しく侵害された。また,多額の利益が蛇頭や暴力団といった不法組織に流入するなど,社会に対する悪影響も懸念される。 以上からすれば,被告人の刑事責任は重い。 (2) 有利な事情他方,被告人は,本件を被告人なりに反省し,今後は本件のような犯罪に加担しないと約束していること,被告人には2,30年前の罰金前科2犯があるのみであること,これまで漁師として真面目に稼働してきたことなど被告人のために酌むべき事情がある。 3 以上の事情を総合考慮すれば,主文の刑が相当である。 平成14年1月28日和歌山地方裁判所刑事部裁判長裁判官小川育央裁判官山下英久裁判官安田大二郎

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