平成26年5月29日判決名古屋高等裁判所平成24年(ネ)第512号保険料の過払い及び保険料相当額請求控訴事件(原審・岐阜地方裁判所平成22年(ワ)第2号)主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人Aに対し,1225万5965円,控訴人B,同C及び同Dに対し各19万7650円並びにこれに対する平成16年6月21日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 被控訴人は,控訴人Aに対し,443万3757円並びに別紙1の「控訴人A相続額」欄記載の昭和49年9月分以降の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで年6%の割合による金員及び上記443万3757円に対する同月21日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。 4 被控訴人は,控訴人B,同C及び同Dに対し,それぞれ,147万7919円並びに別紙1の「控訴人B外2名相続額」欄記載の昭和49年9月分以降の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで年6%の割合による金員及び上記147万7919円に対する同月21日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。 5 控訴人らのその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その1を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 7 この判決は,第2項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。(2) (主位的請求・不法行為に基づく損害賠償請求権又は債務不履行に基づく損害賠償請求権) 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。(2) (主位的請求・不法行為に基づく損害賠償請求権又は債務不履行に基づく損害賠償請求権)ア被控訴人は,控訴人Aに対し,1924万4294円及びこれに対する平成16年6月21日(不法行為の場合)又は平成21年12月30日(債務不履行の場合)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。イ被控訴人は,控訴人B,同C及び同Dに対し,それぞれ,189万0294円及びこれに対する平成16年6月21日(不法行為の場合)又は平成21年12月30日(債務不履行の場合)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。(3) (予備的請求)ア((ア)と(イ)は選択的関係)(ア) 被控訴人は,控訴人Aに対し,455万2500円及び別紙1の「控訴人A相続額」欄記載の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで年6%の割合による金員,同月21日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え(当審における追加請求)。(イ) 被控訴人は,控訴人Aに対し,455万2500円及びこれに対する平成21年12月30日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 イ((ア)と(イ)は選択的関係)(ア) 被控訴人は,控訴人B,同C及び同D に対し,それぞれ,151万7500円及び別紙1の「控訴人B外2名相続額」欄記載の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで年6%の割合による金員,同月21日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え(当審における追加請求)。 (イ) 被 当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで年6%の割合による金員,同月21日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え(当審における追加請求)。 (イ) 被控訴人は,控訴人B,同C及び同Dに対し,それぞれ,151万7500円及びこれに対する平成21年12月30日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 (5) 仮執行宣言 2 被控訴人(1) 本件控訴(当審における追加請求を含む。)を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,亡Eが株式会社Fと同社から営業譲渡を受けた被控訴人の労働者であったにもかかわらず,株式会社F及び被控訴人が社会保険料の事業主負担分をEの賃金から控除し,Eの報酬の一部を標準報酬月額に加えていなかったと主張して,Eの妻である控訴人A,子である控訴人B,同C及び同Dが,被控訴人に対し,営業譲渡により株式会社Fの債務を承継したとして,(1)主位的に,労働契約上の債務不履行又は不法行為の損害賠償請求権に基づき,控訴人Aに対する1924万4294円,控訴人B,同C及び同Dに対する各189万0294円並びにこれらに対する平成16年6月21日(不法行為の場合)又は平成21年12月30日(債務不履行の場合)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)予備的に,不当利得返還請求権に基づき,控訴人Aに対する455万2500円,控訴人B,同C及び同Dに対する各151万7500円並びにこれらに対する平成21年12月30日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,控訴人らの 円,控訴人B,同C及び同Dに対する各151万7500円並びにこれらに対する平成21年12月30日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却したため,控訴人らが控訴した。 なお,控訴人らは,当審において,労働契約に基づく賃金請求権に基づき,控訴人Aに対する455万2500円及び別紙1の「控訴人A相続額」欄記載の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金と,同月21日から支払済みまで賃金の支払い確保等に関する法律6条1項所定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を,控訴人B,同C及び同Dに対する各151万7500円及び別紙1の「控訴人B外2名相続額」欄記載の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金,同月21日から支払済みまで賃金の支払い確保等に関する法律6条1項所定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求める部分を追加した。 2 前提事実(1) Eは,昭和16年10月O日生まれで,平成18年5月P日に死亡した。同人の相続人は,妻である控訴人A,子である控訴人B,同C及び同Dである。 (2) 被控訴人は,G県内で木材卸売業,製材業等を営む会社であり,昭和49年8月に設立された。 (3) Eは,被控訴人において,被控訴人の設立当初から平成16年6月20日まで,次の約定で稼働していた(甲30,102,乙1,33ないし36)。 ア Eは,自己の所有するトラックを被控訴人の営業所等に持ち込み,被控訴人配車係の配送先,積載量,配送時間についての指示に従 の約定で稼働していた(甲30,102,乙1,33ないし36)。 ア Eは,自己の所有するトラックを被控訴人の営業所等に持ち込み,被控訴人配車係の配送先,積載量,配送時間についての指示に従い,建設資材等の配送業務に従事する。 イ Eは,トラックの燃料費,修理代金,自動車保険の保険料を負担する。 ウ報酬は,運賃表(配送先と4t車での報酬額の記載があるもの。甲102,乙1)に基づき,出来高によって定める。 (4) 平成2年6月11日付けの被控訴人の「運賃表」(甲102)には次の記載があった。 助手は原則として無しにする(許可なしに助手を連れて行った場合は運賃を支払わない)。特別の場合(現場かつぎ込み等)の運賃は係員の承認を受ける。その場合運賃+αとする。工場以外(本社工場を中心として1000m以内は除く)より積んで逆方向に行く時は2ケ所の運賃を(プラス)して1車の場合0.85掛け(0.8t以下の時は1車の8掛け)。積合せの場合最遠運賃1件に付き800円(プラス)とする。0.8車以下の場合は1車運賃の0.8掛けとする。運転手の責任において品物を破損した時は実費にて運賃より差引きとする。お客様からの苦情も同じとする。上記以外で特例がある場合は所属長の承認を受ける。 仕事のない場合,倉庫の手伝い1日1万円,時給1200円。 (5) 被控訴人は,Eに対し,上記の(4)の運賃表に基づき算定された報酬を月に2回に分けて支給した。 毎月1回目の支払は,給与明細書を交付した上,同明細書の支給額から,同支給額を前提とした所得税等を源泉徴収し,同支給額を前提とする社会保険料(健康保険,厚生年金及び雇用保険の保険料。以下「社会保険料」という。)の本人負担分を控除して,当月27日に現金で支払われた(以下 額を前提とした所得税等を源泉徴収し,同支給額を前提とする社会保険料(健康保険,厚生年金及び雇用保険の保険料。以下「社会保険料」という。)の本人負担分を控除して,当月27日に現金で支払われた(以下「1回目の支払」という。)。 毎月2回目の支払は,給与明細書の交付はなく,翌月15日に,前記の報酬から1回目の明細書の支給額と社会保険料の事業主負担分(1回目の支給額を前提としたもの)を控除して,E名義のH信用組合等の口座へ振り込まれた(以下「2回目の支払」という。)。 (6) 被控訴人は,社会保険庁に1回目の支給額のみを報酬月額として届け出た上,社会保険料の事業主負担分を2回目の支払から控除して,Eに負担させた。 (7) Eの昭和45年8月分から平成16年6月分までの報酬額は,別紙2の「給与合計(推計)」欄又は「給与合計(明細分)」欄に記載のとおりであり,被控訴人が毎月2回目の支払分から控除した社会保険料の事業主負担分(1回目の支給額を前提としたもの)の金額は,別紙2の「事業主負担分保険料(過払い額)」欄のとおりである。 第3 当事者の主張 1 控訴人ら主張の請求原因(1) 債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求(主位的請求)についてア Eは,次の事情から労働基準法9条(平成10年法律第11号による改正の前後を問わない。以下,同じ。)所定の労働者であった。 (ア) Eは,昭和39年9月にI株式会社に木材配送のトラック運転手として雇用され,同社G支店に勤務していた。同社は,Eを被雇用者として社会保険に加入し,Eに賃金を支払っていた。 昭和45年2月に,同社は株式会社Fに社名変更した。 同年6月頃,Eはトラックを自己所有する運転手となったが,引き続き株式会社Fの従業員であり,同社も 入し,Eに賃金を支払っていた。 昭和45年2月に,同社は株式会社Fに社名変更した。 同年6月頃,Eはトラックを自己所有する運転手となったが,引き続き株式会社Fの従業員であり,同社もEについて,「雇用保険被保険者資格喪失届」並びに「健康保険・厚生年金保険資格喪失届」を提出しなかった。これ以降,毎月の給与の支払は,1か月に2回と変更された。 Eの同年7月の給与額は,5万3432円であり,株式会社Fが2回目の支払分から控除した社会保険料の事業主負担分(1回目の支給額を前提としたもの)の金額は,3432円であった。 昭和49年8月,被控訴人が設立され,株式会社Fは,このころ,同株式会社G支店の営業を被控訴人に営業譲渡した。 これに伴い,Eの雇用関係は被控訴人へ引き継がれ,Eと被控訴人の間で労働契約が成立した。 したがって,Eは,昭和39年9月21日のI株式会社の入社時から平成16年6月20日の被控訴人退職時まで,厚生年金及び健康保険の加入資格を有する労働者であった。 (イ) 株式会社Fにおける労務提供状況aEの株式会社Fにおける労務提供状況は,会社所有トラックの運転手であったときと自己所有トラックの運転手となったときと基本的に変わるところがなく,業務遂行に対する指揮命令や拘束性の程度は,現在,被控訴人における会社所有トラックの運転手と同程度である。 すなわち,①株式会社F(I株式会社の時も含む。)では,自己所有トラックを運転する運転手は,株式会社Fから配送先,積載量,配送時間の指示を受け,業務に従事していた。配送時間が指示されることで,毎日の始業時間と終業時間が事実上決定されていることになる。株式会社Fでは,どの配送の仕事をどの運転手に割り振るかを一方的に決定しており,運転手 ,業務に従事していた。配送時間が指示されることで,毎日の始業時間と終業時間が事実上決定されていることになる。株式会社Fでは,どの配送の仕事をどの運転手に割り振るかを一方的に決定しており,運転手に仕事を選択する裁量はなかった。Eは毎朝午前7時半頃に家を出て,午後6時頃に帰宅し,早く帰宅することはなかった。②Eは,配送以外に工場の掃除,材木並べ,倉庫の手伝い,新人に対する業務指導,材木の展示会の手伝い等の仕事も行っていたが,出先で注文を受けて,株式会社Fへ報告する等営業にも貢献していた。③Eは株式会社F専属の運転手であり,株式会社Fの名前で仕事をしていた。自己所有トラックの運転手となってからも,運送業の許可を取らず,白ナンバーで配送していた。 事務所等も存在せず,会計帳簿等も存在しない。④Eは,労働者しか加入できない厚生年金保険,健康保険,雇用保険,労災保険に一貫して加入していた。株式会社Fから給与明細書が交付され,給与明細書上は労働者負担分の社会保険料のみが控除されていた。また,給与から所得税及び住民税の源泉徴収を受けており,給与所得者であるEは確定申告をしたことがなかった。⑤Eは,株式会社Fの健康 診断を受けていた。⑥Eは,株式会社Fの施設内に自由に出入りができ,施設利用も他の従業員と同様に可能であり,社員旅行や新年会,忘年会等にも他の社員と同様に参加していた。 bEは,労働基準法9条所定の労働者であることを前提とする厚生年金保険,健康保険,雇用保険,労災保険に加入しており,株式会社Fとの間で,Eが社会保険料を全額負担するとの合意はなかった。 株式会社Fは,Eの事業負担分の社会保険料を,他の社員のそれと一括して納付しており,法定福利費として計上していた。 (ウ) 被控訴人における労務提 負担するとの合意はなかった。 株式会社Fは,Eの事業負担分の社会保険料を,他の社員のそれと一括して納付しており,法定福利費として計上していた。 (ウ) 被控訴人における労務提供状況a 被控訴人では,自己所有トラックを運転する運転手は,被控訴人から配送先,積載量,配送時間の指示を受け,輸送経路や休憩時間の取得は運転手に任されていた。これらの業務遂行に対する指揮命令や拘束性の程度は,被控訴人所有のトラックを運転する運転手も全く同じである。 また,被控訴人では,自己所有のトラックを運転する運転手に対し,上記のほか,「標準積載量」の指示,「助手は原則として無しにする」,「特別の場合(現場かつぎ込み等)の運賃は係員の承認を受ける」等の業務遂行に対する個別具体的な指揮命令が行われていたほか,「上記以外で特例がある場合は所属長の承認を受ける」等と業務全般について包括的な指揮命令及び監督がなされていた。 すなわち,①被控訴人は,社員連絡票に名前を載せている。②被控訴人は,どの配送の仕事をどの運転手に割り振るかを一方的に決定しており,運転手に仕事を選択する裁量はなかった。短距離のかつぎ込みの仕事等労力に対して割に合わない仕事も命じられていた。そのため,運転手は,毎日の始業時間及び終業時刻を事実上決定されていた。配送終了後の被控訴人への連絡,自動車保険の加入,トラックの車種等被控訴人による運転手に対する指揮命令は細部に及んだ。③Eは,被控訴人専属の運転手であり,運送業の許可を取らず,白ナンバーで配送していた。④被控訴人は,Eに被控訴人の制服を着用させ,被控訴人名で仕事をさせていた。⑤被控訴人は,配送の仕事がない場合,運転手に対し,倉庫の仕事をするように命じていた。Eは,配送以外に,工 配送していた。④被控訴人は,Eに被控訴人の制服を着用させ,被控訴人名で仕事をさせていた。⑤被控訴人は,配送の仕事がない場合,運転手に対し,倉庫の仕事をするように命じていた。Eは,配送以外に,工場の掃除,材木並べ,倉庫の手伝い,新人に対する業務指導,材木の展示会の手伝い等の仕事も行った。 ⑥被控訴人は,他の社員と同様に,Eに定期健康診断を受診させ,健康診断結果の原本も管理・記録していた。⑦被控訴人は,Eを他の社員と同様に,出勤簿によって出勤を管理していた。Eは,毎朝7時半頃家を出て,夕方6時頃に帰宅し,早く帰宅することはなかった。⑧被控訴人は,Eに給与を支払い,支払に際して社会保険料の他に所得税,市県民税を源泉徴収し,給与明細書を交付している。給与明細書の体裁も他の社員と全く同じで,社員コードも付いている。Eは,被控訴人から2回目の支払も給料であり,税金の申告も被控訴人の方でやるので何もやらなくていいと言われていたため,確定申告をしていない。⑨Eは,被控訴人の社員旅行や新年会,忘年会にも出席し,トイレや社員食堂の会社事務所の施設利用も他の社員と同様に自由であった。 bEは,労働基準法9条所定の労働者であることを前提とする厚生年金保険,健康保険,雇用保険,労災保険に加入しており,被控訴人との間で,Eが社会保険料を全額負担するとの合意はなかった。 被控訴人は,労災保険金の受給手続をするにあたり,Eを配送運転係としている。被控訴人は,Eに出勤簿,賃金台帳を交付して高年齢雇用継続給付金を受給させている。 また,被控訴人は,Eの事業負担分の社会保険料を,他の社員のそれと一括して納付しており,法定福利費として計上している。 イ株式会社F及び被控訴人による不法行為又は債務不履行株式会 いる。 また,被控訴人は,Eの事業負担分の社会保険料を,他の社員のそれと一括して納付しており,法定福利費として計上している。 イ株式会社F及び被控訴人による不法行為又は債務不履行株式会社F及び被控訴人は,Eとの間にEが社会保険料を全額負担する旨の合意が成立していないにもかかわらず,事業主負担分保険料相当額を控除している。かかる行為は違法であり,株式会社F及び被控訴人には労働契約上の債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任がある。 (ア) 厚生年金保険法27条は,適用事業所の事業主は,被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない旨定め,同法82条1項は「被保険者及び被保険者を使用する事業主は,それぞれ保険料の半額を負担する。」と,同2項は「事業主は,その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。」と定める。 また,健康保険法161条1項は「被保険者及び被保険者を使用する事業主は,それぞれ保険料額の2分の1を負担する。」と,同2項は「事業主は,その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。」と定める。 (イ) 上記(ア)の義務が公法上の義務であることはいうまでもないが,厚生年金保険法及び健康保険法がいずれも労働者に保険の利益を得させるという点をも目的としていると解されることに鑑みれば,かかる義務が,単なる公法上の義務にとどまるということはできない。 使用者は,労働契約の付随義務として,信義則上,厚生年金保険法及び健康保険法を遵守し,労働者の保険給付を受ける権利を侵害しないように配慮すべき義務を負っているから,使用者が,この義務に違反して労働者に損害を与えた場合は,その行為は,違法性 ,厚生年金保険法及び健康保険法を遵守し,労働者の保険給付を受ける権利を侵害しないように配慮すべき義務を負っているから,使用者が,この義務に違反して労働者に損害を与えた場合は,その行為は,違法性を有し,債務不履行ないし不法行為を構成する。 (ウ) 株式会社F及び被控訴人は,労働者であるEの給与から控除した金員を,事業主負担分の社会保険料として国に対して納付しているが,かかる株式会社F及び被控訴人の行為は,厚生年金保険法82条及び健康保険法161条に違反し,違法である。 また,株式会社F及び被控訴人は,2回目の支払の事実を社会保険庁等に届けることもなく,偽りの標準報酬月額を申告しているが,かかる株式会社F及び被控訴人の行為は,厚生年金保険法27条に違反し,違法である。 (エ) したがって,株式会社F及び被控訴人には,Eに対する債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任がある。 なお,株式会社F及び被控訴人は,Eを厚生年金保険及び健康保険へ加入させることに同意している以上,Eが厚生年金保険法及び健康保険法の適用を受けることは当然であり,厚生年金保険法27条,同82条及び健康保険法161条に反する株式会社F及び被控訴人の行為は,違法無効であるから,債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任がある。 ウ損害上記債務不履行又は不法行為により,E及び控訴人らは次の損害を被った。 (ア) 社会保険料過払相当損害金Eが,昭和45年7月から退職時までに支払わされていた社会保険料過払金(事業主負担分保険料)は,別紙1のうち910万5000円である。 控訴人らは,各自,法定相続分に従って次の損害賠償請求権を相続した。 a 控訴人A た社会保険料過払金(事業主負担分保険料)は,別紙1のうち910万5000円である。 控訴人らは,各自,法定相続分に従って次の損害賠償請求権を相続した。 a 控訴人A 455万2500円b 控訴人B,控訴人C,控訴人D 各151万7500円(イ) 公的年金差額相当損害金a 老齢厚生年金差額相当損害金(E分)昭和46年11月分以降の2回目の支払に係る給与受給額と社会保険料過払金(事業主負担相当額)を実際の標準報酬月額に加算し,本来の標準報酬月額を算出すると,Eは,死亡時までに公的年金差額相当損害金として別紙3の「老齢厚生年金見込額と老齢厚生年金実際額との比較」欄の「実際額との差額」欄(昭和46年11月からの分)のとおり,121万6763円の損害を受けた。 控訴人らは,各自,法定相続分に従って次の金額の損害賠償請求権を相続した。 ① 控訴人A 60万8381円② 控訴人B,控訴人C,控訴人D 各20万2794円b 遺族厚生年金差額相当損害金(控訴人A分)① 平成24年3月分まで上記aと同様の計算方法により,平成24年3月分までの控訴人Aの遺族厚生年金受給額の差額を計算すると,別紙4の「遺族厚生年金見込額と実際の遺族厚生年金額との比較」欄の「差額」欄(昭和46年11月からの分)のとおり372万3750円である。 ② 将来分上記aと同様の計算方法により,本来の遺族厚生年金受給額(年間165万6800円)と実際の受給額(年間102万3000円)の差額は63万3800円であり,平成24年3月末日経過時点において,控訴人A(昭和16年11月生まれ)は70歳であり,その平均余命は19.61年 00円)と実際の受給額(年間102万3000円)の差額は63万3800円であり,平成24年3月末日経過時点において,控訴人A(昭和16年11月生まれ)は70歳であり,その平均余命は19.61年である。 したがって,控訴人Aは,将来分の公的年金差額相当損害金として,下記計算式のとおり,765万9663円の損害を受けた。 (計算式) 63 万3800 円×12.0853=765 万9663 円(ウ) 控訴人Aの慰謝料被控訴人の違法行為により,控訴人Aが受給できた遺族厚生年金額は生活保護費よりも少ない金額となり,この間,子供らの仕送りを受けなければ最低限の生活が維持できない程逼迫した暮らしを送らざるを得なかった。 その損害は,上記損害賠償によって填補されるものでなく,別途慰謝料の支払が認められるべきである。控訴人Aが受けた精神的苦痛は,100万円を下回らない。 (エ) 弁護士費用a 控訴人A 170万円b 控訴人B,控訴人C,控訴人D 各17万円(オ) 損害合計a 控訴人A 1924万4294円b 控訴人B,控訴人C,控訴人D 各189万0294円エ被控訴人による株式会社Fの債務の承継(ア) 被控訴人は,昭和49年8月に設立され,そのころ,株式会社Fから,同社G支店の営業譲渡を受けて,Eとの間の雇用関係及び株式会社Fの債務(上記債務不履行又は不法行為による損害賠償債務を含む。)も引き継いだ。 (イ) 仮に,被控訴人が設立された際,Eに対する株式会社Fの債務が被控訴人に承継されていないとしても,Eは,①昭和49年9月以降の社会保険料過払相当損害金886万7514円(控訴人Aの (イ) 仮に,被控訴人が設立された際,Eに対する株式会社Fの債務が被控訴人に承継されていないとしても,Eは,①昭和49年9月以降の社会保険料過払相当損害金886万7514円(控訴人Aの相続分443万3757円で,控訴人B,控訴人C,控訴人Dの相続分は各147万7919円である。),②昭和49年9月分以降を本来の標準報酬月額で計算した場合の老齢厚生年金差額相当損害金106万5901円(別紙3のとおり。控訴人Aの相続分は53万2951円で,控訴人B,控訴人C,控訴人Dの相続分は各17万7650円である。)の損害を被り,控訴人Aは,③遺族厚生年金差額相当損害金(別紙4のとおり。平成24年3月分まで346万6100円,将来分715万6914円),④慰謝料100万円の損害を被り,控訴人らは,⑤弁護士費用(控訴人Aについて160万円,控訴人B,控訴人C,控訴人Dについて各16万円)の損害を被っている。 (2) 社会保険料過払金に係る賃金請求又は不当利得返還請求(予備的請求)についてア未払賃金請求(イと選択的請求である。)Eは労働基準法9条所定の労働者であり,株式会社F及び被控訴人が社会保険料の事業者負担分をEの賃金から控除したのは無効であるから,Eが昭和45年7月から退職時までに賃金から控除された社会保険料事業主負担分合計910万5000円(上記ウ(ア))は未払賃金である。 イ不当利得返還請求(アと選択的請求である。)株式会社F及び被控訴人は,Eが社会保険料を全額負担する合意がないにもかかわらず,法律上の原因なく,Eに支払うべき金員(事業主負担分社会保険料相当額)を支払わず,社会保険料過払相当額910万5000円(上記ウ(ア))の利益を受け,そのためEは同額の損失を被った。 かかわらず,法律上の原因なく,Eに支払うべき金員(事業主負担分社会保険料相当額)を支払わず,社会保険料過払相当額910万5000円(上記ウ(ア))の利益を受け,そのためEは同額の損失を被った。 ウ(ア) 被控訴人は,昭和49年8月に設立され,そのころ,株式会社Fから同株式会社G支店の営業譲渡を受け,Eとの間の雇用関係及び株式会社Fの債務(上記社会保険料過払金に係る賃金債務及び不当利得返還債務を含む。)も引き継いだ。 (イ) 控訴人らは,各自,法定相続分に従って上記社会保険料過払金に係る賃金請求権及び不当利得返還請求権を承継した。 (ウ) 仮に,被控訴人が設立された際,Eに対する株式会社Fの債務が被控訴人に承継されていないとしても,Eは,昭和49年9月以降の社会保険料過払金に係る賃金請求権あるいは不当利得返還請求権を有している。控訴人Aの相続分は443万3757円で,控訴人B,控訴人C,控訴人Dの相続分は各147万7919円となる。 (3) よって,控訴人Aは,被控訴人に対し,主位的に,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,1924万4294円及びこれに対するE退職の日の翌日である平成16年6月21日(債務不履行に基づく損害賠償請求権のときは,支払督促正本送達の日の翌日である平成21年12月30日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,社会保険料過払金に係る賃金請求権に基づき55万2500円及び別紙1の「控訴人A相続額」欄記載の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金と,同月21日から支払済みまで賃金の支払い確保等に関する法律6条1項所定の年14.6%の割合による遅 」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金と,同月21日から支払済みまで賃金の支払い確保等に関する法律6条1項所定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求め,これと選択的に,不当利得返還請求権に基づき,455万2500円及びこれに対する平成21年12月30日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。 控訴人B,同C及び同Dは,被控訴人に対し,主位的に,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,それぞれ,189万0294円及びこれに対する上記平成16年6月21日(債務不履行に基づく損害賠償請求権のときは,支払督促正本送達の日の翌日である平成21年12月30日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,社会保険料過払金に係る賃金請求権に基づき,それぞれ, 151万7500円及び別紙1の「控訴人A相続額」欄記載の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商事法定利率年6%の割合による遅延損害金と,同月21日から支払済みまで賃金の支払い確保等に関する法律6条1項所定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求め,これと選択的に,不当利得返還請求権に基づき,それぞれ,151万7500円及びこれに対する平成21年12月30日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する被控訴人の認否・反論(1) 請求原因(1)についてア同ア(ア)は争い,(イ)は知らず,(ウ)は争う。 Eは,次の事情から,株式会社F当時より労働基準法9条所定の労働者でなかった。 (ア) Eは,株式 因(1)についてア同ア(ア)は争い,(イ)は知らず,(ウ)は争う。 Eは,次の事情から,株式会社F当時より労働基準法9条所定の労働者でなかった。 (ア) Eは,株式会社Fに勤務していたときに,自らトラックを購入して傭車となり,雇用関係を終了させたから,被控訴人が,その雇用関係を引き継ぐことはあり得ない。 少なくとも,被控訴人においては,その設立当時から,Eと傭車契約をしていたものであり,同人を社員として雇用したことは一切ない。 (イ) Eが被控訴人の指揮監督下に労務を提供していた事実はない。 a 傭車には,被控訴人の就業規則の適用はなく,従業員とは全く別個の取扱いがなされている。すなわち傭車には従業員に認められている有給制度,就業時間の定め(残業制度,割増賃金),賞与の支給,昇給,各諸手当,昇格,退職金,慶弔金等の支払の制度はなく,朝礼,方針説明会に出席することもない。傭車には,無事故表彰,皆勤賞,勤務態度に応じたニコニコ賞等の表彰規定はなく,誕生日,結婚記念日の休日化,記念品の贈呈等の措置もない。傭車は,従業員全員をもって構成する社員互助会にも入っていない。 b 傭車は,自らトラックを購入し,その維持管理費用は自ら負担し,ガソリン代等の燃料費,車両の任意保険の保険料も自ら負担していたが,従業員は,被控訴人の車両を使用し,その維持管理費用,燃料費及び保険料も被控訴人が負担している。 c 傭車は,運賃表に基づく完全出来高制で報酬が支払われているが,従業員については給与の支払があるのみであり,運賃表の適用はない。 d 被控訴人は,傭車という配送業務の性質上,当然に必要とされる配送量,配送先及び納入時刻の指示をする以外は,E るが,従業員については給与の支払があるのみであり,運賃表の適用はない。 d 被控訴人は,傭車という配送業務の性質上,当然に必要とされる配送量,配送先及び納入時刻の指示をする以外は,Eの業務の遂行に関し特別の指示はしておらず,業務が終われば拘束はないが,従業員は,会社業務の一環として配送業務を行っており,その業務が終わっても,勤務時間内は拘束され,配送業務以外の業務も行わなければならない。 e 傭車は,業務中の事故につき,商品を傷つければその賠償を行うほか,事故の相手方との示談について自らの責任で行うこととなるが,従業員は,賠償,事故の相手方との交渉の義務はなく,被控訴人が当事者としてその責任を負うこととなる。 (ウ) 傭車は,被控訴人の従業員でなく,被控訴人がその社会保険料を負担する義務はないが,傭車の利益のため,その報酬の一部を給与名目として支払うことにより,社会保険の利益を得られる措置を講じてきた。被控訴人負担分の社会保険料については,その利益を受ける傭車が負担することは,その措置の前提となっており,傭車も当然に認識していたものである。 イ同イは争う。 Eは,労働基準法9条所定の労働者でなかったから,厚生年金保険法27条,82条,健康保険法161条1項の適用はなく,株式会社F及び被控訴人に債務不履行又は不法行為はない。 ウ同ウは争う。仮に,被控訴人に債務不履行又は不法行為があったとしても,Eは,昭和45年7月から退職時まで事業主負担分社会保険料に相当する賃金の支払を受けていないというものにすぎず,賃金債権がそのことで消滅するものではないから,株式会社F及び被控訴人の上記債務不履行又は不法行為により社会保険料過払金相当額の損害が生じたということはできない。 エ ていないというものにすぎず,賃金債権がそのことで消滅するものではないから,株式会社F及び被控訴人の上記債務不履行又は不法行為により社会保険料過払金相当額の損害が生じたということはできない。 エ同エは争う。 (2) 請求原因(2)についてア同アのうち,Eが,昭和45年7月から退職時までに,その報酬から社会保険料の事業主負担分として控除された金額の合計が910万5000円であることは認め,その余は否認する。 イ同イは否認する。 仮に,被控訴人が誤った計算処理により賃金支払義務を怠ったとしても,賃金支払義務の不履行の他に債務不履行が生ずることはない。 ウ同ウは争う。 エ同エは,相続関係を認め,その余は争う。 3 被控訴人主張の抗弁(1) 債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効ア債務不履行による損害賠償請求権のうち平成11年11月24日までに履行期が到来したものは,10年の経過により消滅した。 イ被控訴人は,平成25年5月16日の弁論準備手続期日において,控訴人らに対し,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 (2) 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効等ア Eは,平成15年7月には,被控訴人からの支払金額を知ることにより,その売上を下回る金額しか支払われていないことを認識していたから,不法行為に基づく損害賠償請求権は,最後に発生した平成16年6月30日から3年の経過により消滅した。 被控訴人は,平成25年5月16日の弁論準備手続期日において,控訴人らに対し,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 イ不法行為に基づく損害賠償請求権のうち平成元年11月24日までに発生したものは,20年の経過により消滅した。 (3) 賃金請 いて,控訴人らに対し,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 イ不法行為に基づく損害賠償請求権のうち平成元年11月24日までに発生したものは,20年の経過により消滅した。 (3) 賃金請求権の消滅時効ア Eの賃金請求権の最終支払日である平成16年6月30日から2年を経過した。 イ被控訴人は,平成25年5月16日の弁論準備手続期日において,控訴人らに対し,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 (4) 不当利得返還請求権の消滅時効ア不当利得返還請求権のうち平成11年11月24日までに発生したものは,10年の経過により消滅した。 イ被控訴人は,平成25年5月16日の弁論準備手続期日において,控訴人らに対し,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 (5) 消滅時効期間の起算日に関する補足主張ア Eが被控訴人に作成,提出した「傭車,請求明細」(乙6の1)によれば,平成15年1月分のEの売上は44万1364円であるが,支払済が26万5104円であり,同月の売上から同金額が控除され,その残額がEに振り込まれているとの記載がある。Eは,この支払済の記載が名目給与として支払われたもの及び社会保険料事業主負担分との清算を意味することを承知していた。それ故に,Eは,平成15年1月分の給与明細書(乙4の1)によれば,給与名目の合計が20万2000円であるにもかかわらず,支払済がこれを上回る24万5104円とされていても,何等の苦情を申し出なかったのである。 仮に,Eが名目給与の合計額以上を控除されていることの意味を正確に承知していなかったとしても,名目給与以上の控除があったことは,その際に認識可能であり認識していた。 したがって,Eは,その頃には,被控 給与の合計額以上を控除されていることの意味を正確に承知していなかったとしても,名目給与以上の控除があったことは,その際に認識可能であり認識していた。 したがって,Eは,その頃には,被控訴人への請求が可能であり,消滅時効の進行を妨げる事情はない。 イ Eは,平成15年7月頃,被控訴人に対し,平成14年7月からの1年間に現に支払われた傭車代金の証明を求めているから,当時,Eが被控訴人から支払われた傭車代金を調査しその事実を認識しており,その実際の売上と被控訴人から現実に支払われた金額に差異があったことを承知していた。 したがって,Eは,そのころ,その不足額を請求すること,すなわち権利行使は可能であった。 ウなお,Eは,平成16年6月20日に被控訴人を退職しているので,それ以降は,被控訴人との関係はなくなり,被控訴人への請求により,被控訴人からの仕事の停止などの不利益措置を採られるおそれはなくなっている。 4 抗弁に対する控訴人らの認否・反論時効援用の意思表示の点を除き,全て争う。 なお,控訴人らが主張する賃金請求権の消滅時効の起算点は,控訴人らが社会保険料を全額負担させられていたことを知った平成21年2月と解するべきである。なぜならば,E及び控訴人らが権利を行使することができるようになったのは,同時期であるからである。 5 控訴人ら主張の再抗弁次の事情から,被控訴人による消滅時効の援用は権利の濫用にあたる。 (1) 株式会社F及び被控訴人は,個人事業主であるEとの間に,「請負報酬(Eの事業所得)の中から所得税,住民税並びに事業主負担分を含めた社会保険料全額を控除し,国に対しては名目上労働者として社会保険料の納付義務,所得税等の納税義務を部分的に代行する請負契約」 負報酬(Eの事業所得)の中から所得税,住民税並びに事業主負担分を含めた社会保険料全額を控除し,国に対しては名目上労働者として社会保険料の納付義務,所得税等の納税義務を部分的に代行する請負契約」が口頭で成立していた旨主張するが,株式会社F及び被控訴人の主張する契約内容は,厚生年金保険法27条,82条1項,健康保険法161条1項に違反し,公序良俗に反するものである。 すなわち,給与所得として所得税等を申告しながら,事業所得であると主張することは,税務署が納得せず,労災保険給付を受給している者を労働者ではないと主張することは,支給決定をした労働基準監督署が許さず,高年齢雇用継続給付金を受給している者との間に労働契約が成立していないと主張することは,これを審査した公共職業安定所が了解せず,厚生年金及び健康保険に加入しながら個人事業主であると主張することは,社会保険事務所が容認しないところである。 また,株式会社F及び被控訴人には,Eら運転手から徴収していた社会保険料を,事業主負担分社会保険料と称して国に納付し,社会保険料の負担を免れていたのであり,国に対する詐欺罪であると同時に,Eに対する横領罪を構成する。 株式会社F及び被控訴人は,以上のように法令に違反し,公序良俗に反する制度を長期間にわたって放置してきたものであって,極めて重大な違法性,不当性が存する。 (2) 他方,Eや控訴人らが,長期間,その権利の行使をしなかったことには何らの責められるべき点はなく,権利の上に眠る者とは評価できない。Eは,定期健康診断の実施や公租公課の源泉徴収等がなされていたため,自身を社員として認識し,事業主負担分社会保険料は当然被控訴人負担であると誤信していた。Eは,社員であることを前提として,株式会社F は,定期健康診断の実施や公租公課の源泉徴収等がなされていたため,自身を社員として認識し,事業主負担分社会保険料は当然被控訴人負担であると誤信していた。Eは,社員であることを前提として,株式会社F及び被控訴人に納税や社会保険事務手続の一切を委ねていたものであって,公租公課や社会保険料の控除等は全て法の定めに従った適正な会計処理がなされていると信頼していた。ところが,株式会社F及び被控訴人は,Eのこの信頼に反し,長期間にわたって違法行為を継続した。 控訴人Aは,Eから「2回目の支払も給料だ。健康保険も厚生年金も引かれている。」,「税金の申告も会社の方でやってくれているので,何もやらなくていいと会社に言われた。」と説明を受けており,2回目の支払も株式会社F及び被控訴人において適正に処理されるものと考え,社会保険料を全額負担する認識はなかった。 6 再抗弁に対する被控訴人の認否・反論被控訴人による消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 被控訴人は,従業員であれば受けられる社会保障を,従業員ではない傭車にも受けられるようにとの配慮から,被控訴人に何らのメリットもない,報酬の一部を給与名目として支払う,被控訴人負担分の社会保険料についてはその利益を受ける傭車が負担するという措置を採ったものにすぎない。被控訴人は,Eら傭車が個人で年金や労災の特別制度に加入する等の手続の煩雑さを回避するため,傭車の要望に応えていたものである。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1)ア Eは,昭和39年9月に,G県内で木材卸売業,製材業等を営むI株式会社との間で雇用契約を締結し,同社所有のトラックを利用して,木材の配送業務に従事し よれば,次の事実が認められる。 (1)ア Eは,昭和39年9月に,G県内で木材卸売業,製材業等を営むI株式会社との間で雇用契約を締結し,同社所有のトラックを利用して,木材の配送業務に従事していた(争いない)。 イ I株式会社は,昭和45年2月に,商号を株式会社Fに変更した(甲5の2,乙72)。 ウ Eは,昭和43年10月に控訴人Aと結婚したが,結婚前,株式会社Fの寮で暮らしていた(甲40,46ないし48,控訴人A)。 Eは,昭和45年6月頃,株式会社Fから,収入が良くなるから,トラックを自分で購入して仕事を続けていかないかと言われ,控訴人Aに相談した。控訴人Aが,厚生年金に継続して加入できるかをEに確認したところ,Eは,会社から,今までどおり社員として厚生年金をかけてやるから安心しろと言われた旨答えたため,控訴人Aも,Eがトラックを自分で購入することに賛成した(甲40,控訴人A)。 Eは,トラックを購入し,その自己所有のトラックで株式会社Fの木材の配送業務に従事するようになったが,そのときから,トラックにかかる経費が自己負担になり,株式会社Fから2回に分けて金員が支給されるようになったが,毎月27日に支払われる1回目の支払金額から同支払金額を報酬額とする社会保険料のうちE負担分が控除されている点では,従前と変わらなかった(甲120,控訴人A,争いのない事実)。 エ被控訴人は,昭和49年8月に設立され,このころ,株式会社FG支店の設備,業務一切の営業の譲渡を受けて事業を開始した。Eは,被控訴人において,株式会社Fにおけるのと同様,自己所有のトラックを使って木材の配送業務に従事するようになった(甲5の2,30,40,乙72)。 (2)ア被控訴人において平成7年4月1 Eは,被控訴人において,株式会社Fにおけるのと同様,自己所有のトラックを使って木材の配送業務に従事するようになった(甲5の2,30,40,乙72)。 (2)ア被控訴人において平成7年4月1日から実施されていた就業規則には,要旨,次のような規定があった(乙62)。 (ア) 従業員が満60歳に達したときは停年とする。但し,部課長等の責任者及び,会社が特に必要とする者は役員会の決議によりこれを延長することができる。(10条)(イ) 1日の勤務時間は,始業8時20分より終業17時20分までとする。(11条)(ウ) 1年間継続勤務し,全労働日の8割以上出勤した従業員には年次有給休暇を与える。(19条)(エ) 従業員の給与に関しては,別に定める給与規定による。 (28条)(オ) 従業員が,故意または過失によって会社に損害を与えたときは,その全部,または一部を賠償させる。(35条)(カ) 従業員は,年1回定期健康診断を受けること。(44条)イ上記就業規則は,平成15年に改定され,同年2月1日から施行された改訂後の就業規則は次のとおりとなっていた(乙53,73,74)。 (ア) 損害賠償(7条)従業員が故意又は重大な過失によって当事業場に損害を与えた場合は,賠償させることがある。 (イ) 労働時間及び休憩時間(26条)始業,終業の時刻及び休憩時間は次のとおりとする。 始業午前8時20分終業午後5時20分休憩時間正午より50分午後3時より15分(ウ) 年次有給休暇(30条)6か月継続勤務し,全労働日の8割以上出勤した従業員には年次有給休暇を与える。 午後5時20分休憩時間正午より50分午後3時より15分(ウ) 年次有給休暇(30条)6か月継続勤務し,全労働日の8割以上出勤した従業員には年次有給休暇を与える。 (エ) 定年(40条)従業員の定年は,満60歳とし,満年齢到達月の月末を退職日とする。ただし,部課長等の責任者,及び会社が特に必要と認めた従業員については,取締役会の決議により再雇用 することがある。 現業職兼取締役の定年は,満65歳とし,満年齢到達月の月末を退職日とする。 (オ) 賃金・退職金(46条)従業員の賃金及び退職金・出張に関する規定は,別に定める賃金規定及び退職金支給規定・出張旅費規定による。 (カ) 健康診断(54条1項)従業員に対しては,雇い入れの際及び毎年1回,定期に健康診断を行う。 ウ被控訴人において平成7年4月1日から施行された給与規定には,要旨,次のような規定があった(乙62)。 (ア) 賃金(2条)a 基本給(日給月給)b 諸手当(役付手当,精皆勤手当,勤勉手当,通勤手当,家族手当等)(イ) 賃金(賞与を除く。)の計算期間は,前月21日より当月20日までとし,毎月27日に支払う。ただし,支払日が休日に当たる場合は前日に支払う。(4条)(ウ) 基本給は,各人の能力,経験,技能,学歴,年令,勤怠を勘案して決定する。(11条)(エ) 昇給,昇格は,毎年3月及び9月に所属長の申請により役員会で決定する。ただし,勤務成績その他により臨時昇給を行うことがある。(13条)(オ) 退職金は,中小企業退職金共済制度を併用して支給する。 この制度への掛金は,勤続3ケ年以上の男子従業員に限り1人1ケ月当たり4000円以上の金額を掛け込む 給を行うことがある。(13条)(オ) 退職金は,中小企業退職金共済制度を併用して支給する。 この制度への掛金は,勤続3ケ年以上の男子従業員に限り1人1ケ月当たり4000円以上の金額を掛け込むものとする。(22条)エ被控訴人においては,平成15年に就業規則とともに給与規定も改正され,同年2月1日から施行された給与規定には,要旨,次のような規定があった(乙49)。 (ア) 賃金の構造(2条)賃金構造は,次のとおりとする。 a 基本給(日給月給制)b 諸手当(役職手当,勤勉手当,通勤手当,時間外手当,休日出勤手当,調整給,報奨金)(イ) 賃金締切日及び支払日(3条)賃金(賞与を除く。)の計算期間は,前月21日より当月20日までとし,毎月27日に支払う。ただし,支払日が休日に当たる場合は前日に支払う。 (ウ) 基本給(9条)基本給は,各人の能力,経験,技能,学歴,年令,勤怠,個人成果等を勘案して,毎年10月に見直し決定する。 (エ) 昇給・昇格・降格(11条)昇給,昇格,降格は,毎年10月に所属長の申請により役員会で決定する。 オ Eは,被控訴人の設立当初から平成16年6月20日までの間,被控訴人において,次の約定で稼働していた(甲30,102,乙1,33ないし36,J)。 (ア) Eは,自己の所有するトラックを被控訴人の営業所等に持ち込み,被控訴人配車係の配送先,積載量,配送時間についての指示に従い,建設資材等の配送業務に従事する。なお,被控訴人には,本店のほかK店などの営業所もあったが,Eが配送業務に従事していたのは被控訴人の本店であった。 (イ) Eは,トラックの燃料費,修理代金,自動車保険 る。なお,被控訴人には,本店のほかK店などの営業所もあったが,Eが配送業務に従事していたのは被控訴人の本店であった。 (イ) Eは,トラックの燃料費,修理代金,自動車保険の保険料を負担する。 (ウ) 報酬は,運賃表に基づき,出来高によって定める。 (3)ア被控訴人は,会社所有の2トントラックにより配送業務に従事する配送係(以下「配送係」という。)と,自己所有のトラックにより配送業務に従事する者(以下「車持込み運転手」という。)を分けて募集していた。配送係が用いるトラックには,車体に被控訴人の名が記されており,配送業務に要する燃料代,高速代などは被控訴人が負担していたが,車持込み運転手が用いるトラックについては,燃料代,高速代,自動車の任意保険料などの経費は,車持込み運転手が自ら負担しており,トラックの車体には被控訴人の名は記されていなかった(乙34,54,J,L,被控訴人代表者)。 Jは,昭和61年頃に被控訴人の車持込み運転手となり,当初は被控訴人の本店でEと一緒に働いていたが,1,2年ほどしてK店で働くようになった(乙34,J)。 Lは,平成2年頃,被控訴人の配送係と傭車を募集する広告をみて,傭車として被控訴人の配送業務に従事しようと面接を受けたところ,当時の被控訴人代表者であったMと知り合いであったことから,同人から社員扱いしてやると言われ,以後,被控訴人の車持込み運転手として,自己所有トラックにより,被控訴人の本店で,配送業務に従事していた(甲23,L,J)。 イ被控訴人においては,E,J,Lらが車持込み運転手であった(J,L)。 車持込み運転手の報酬は,運賃表に定められた完全出来高制で,この運賃表には,被控訴人の従業員を助手として使うこと 控訴人においては,E,J,Lらが車持込み運転手であった(J,L)。 車持込み運転手の報酬は,運賃表に定められた完全出来高制で,この運賃表には,被控訴人の従業員を助手として使うことは禁止すること,被控訴人の従業員を助手として使ったときには,運賃を支払わないこと,車持込み運転手の責任において品物を破損した時は実費にて運賃より差引きとすること,仕事のない場合,倉庫の手伝いをすると,1日1万円,時給1200円を支払うことも記載されていた(甲102,乙1,J,L,被控訴人代表者)。 車持込み運転手の上記運賃表は,平成10年頃,被控訴人の都合で単価が下げられたことがあったが,Eを含めた車持込み運転手らは,一団となって,被控訴人に対し,運賃を下げないよう交渉した(甲23,J,L)。 車持込み運転手については,被控訴人の就業規則に定められていたような昇進や昇給はなく,家族手当,賞与,時間外手当等の支給もなく,報酬の最低保障もなかったが,それぞれの業務遂行の態度等に応じて査定を受け,ボーナスを受け取ることはあった(J,L)。 Lは,免許停止処分を受けて被控訴人の配送業務に従事できなかった間,被控訴人から金員の支払を受けられなくなることから,上記運賃表に記載されていた被控訴人の配送以外の仕事をし,報酬の支払を受けたことがあった(L)。 ウ車持込み運転手は,配送実績に基づき,上記運賃表に基づいて算出された金額の輸送依頼伝票(乙2ないし20及び43ないし46の各枝番号2以下)をもとに,「傭車,請求明細」(乙2ないし20及び43ないし46の各枝番号1)を作成して被控訴人に提出し,被控訴人は,各車持込み運転手に対し,毎月27日,1回目の支払として,月々固定した金額から,その金 細」(乙2ないし20及び43ないし46の各枝番号1)を作成して被控訴人に提出し,被控訴人は,各車持込み運転手に対し,毎月27日,1回目の支払として,月々固定した金額から,その金額に対応した所得税等を源泉徴収し,社会保険料の本人負担分を控除し,給与明細(甲42,乙4の1ないし18)を交付して,1回目の支払をしていた。2回目の支払は,翌月15日,前月の運賃総額から1回目の支払の金額及び社会保険料の事業主負担分(1回目の支払から控除された社会保険料と同額)を控除した金額が交付されていた。2回目の支払については,給与明細は交付されていなかった。また,車持込み運転手に対して交付される年ごとの「給与所得の源泉徴収票」には,給与明細が交付される1回目の支払に対応した金額が1年分の給与・賞与の支払金額として記載され,その金額に対応した社会保険料等の金額や源泉徴収額が記載されており,Eが受け取る源泉徴収票も同様の記載であった(甲20,49,L)。 車持込み運転手については支給金額の最低保障はなく,その月の運転実績が少ないため,1回目の支払の金額が,運賃表に従って計算された当該月の報酬額を超過しているときには,2回目の支払の際,過払金の返還が求められることもあり,Eも,2回目の支払の際,被控訴人への返金を求められたことがあった(乙20の1,J,L,被控訴人代表者)。 被控訴人においては,総勘定元帳では,従業員に対して支払う給与は「給料手当」として計上していたが,EやLなどの車持込み運転手に支払う報酬は,「発送運賃」として計上していた。 もっとも,2回目の支払から控除し,車持込み運転手の社会保険料のうち事業主負担分として納付する分については,ほかの従業員と同様に,法定福利費で計上していた(乙21ないし3 」として計上していた。 もっとも,2回目の支払から控除し,車持込み運転手の社会保険料のうち事業主負担分として納付する分については,ほかの従業員と同様に,法定福利費で計上していた(乙21ないし31,37ないし41,57,58)。 エ車持込み運転手にとっては,近い場所への配送で,かつ,配送した建材等を雨に濡れないように配送先の建物内部まで運び込む「かつぎ込み」という仕事があるときは,労力とトラック等の経費がかかる割には報酬が少なく,誰もが敬遠する仕事であり,遠距離でかつぎ込みのない仕事は誰もがやりたがる仕事であったが,被控訴人は,一部の車持込み運転手に割のよい仕事が偏らないよう,車持込み運転手に平等になるよう,車持込み運転手に対し,配送先及び配送時間を指定しており,車持込み運転手は,その指定を断ることはできなかった(甲23,J,L)。 また,車持込み運転手は,仕事が早く終わったときも,被控訴人からは待機を求められ,自宅が被控訴人の事務所から近いところにあったLは,自宅待機をしていたが,Eは被控訴人の事務所で待機していた。さらに,被控訴人は,車持込み運転手に対して,ほかの会社の仕事をしないよう指導していた(甲23,J,L)。 オ被控訴人では,車持込み運転手にも,配送係と同様に被控訴人の制服が支給され,配送先に対しては,被控訴人の名を名乗って挨拶をし,配送が終わったら被控訴人に連絡を入れることを求められていた(J,L)。 車持込み運転手については,配送先及び配送時間が指定されることにより,出勤時間及び退社時間が自ら決まるところもあったが,配送係のように午前8時20分から午後5時20分までといった始業時間及び終業時間の定めがあるわけではなく,有給休暇もなかった。車持込み運転手が配送業務に従事できな 間が自ら決まるところもあったが,配送係のように午前8時20分から午後5時20分までといった始業時間及び終業時間の定めがあるわけではなく,有給休暇もなかった。車持込み運転手が配送業務に従事できないときは,あらかじめ,被控訴人に対し,その日は配送業務ができないと伝えることで,配送業務が割り当てられないことになっていた(J,L)。 もっとも,被控訴人会社の従業員の出勤簿には,EやLなど車持込み運転手の欄もあり,EやLなど車持込み運転手については,他の従業員のように残業時間の管理はされていなかったが,他の従業員と同様,月々の出勤日が合計何日になるかの集計もされていた(甲41の1ないし8)。 カ車持込み運転手は,被控訴人の実施する健康保険を受診し,トイレその他の会社設備を利用し,被控訴人の旅行や新年会,忘年会にも出席しており,Eも同様であった(甲23,32ないし34,43,116,120,L,控訴人A)。 しかし,車持込み運転手は,配送係を含めた他の従業員が出席していた朝礼には出席することはなく,従業員全員が参加する年2回の「方針発表会」へ参加することもなかった。また,無事故表彰,皆勤賞,勤務態度に応じたニコニコ賞等の表彰規定による表彰はなく,誕生日,結婚記念日の休日化,記念品の贈呈等の措置もなく,従業員全員をもって構成する社員互助会にも入っていなかった(J,L,被控訴人代表者)。 また,車持込み運転手には,被控訴人の事務所内に専用の机,いす及びロッカーはなく,車持込み運転手は,配送係と異なり,休憩室などで待機していた(J,L,被控訴人代表者)。 キ被控訴人においては, 従業員の定年は60歳となっていたが,車持込み運転手についてはこの定年は適用されなかった。Eは,62歳であった平成16年6月に していた(J,L,被控訴人代表者)。 キ被控訴人においては, 従業員の定年は60歳となっていたが,車持込み運転手についてはこの定年は適用されなかった。Eは,62歳であった平成16年6月に,Lは64歳であった平成18年に,それぞれ被控訴人の仕事を辞めたが,いずれもそれ以前に被控訴人から定年等を言われたことはなかった(L,控訴人A)。 また,被控訴人の従業員には就業規則及び給与規定に基づき退職金が支給されていたが,車持込み運転手には退職金は支給されなかったし,EもLも,退職金を被控訴人に請求することはなかった(乙65ないし71,L,控訴人A)。 (4)ア Eは,昭和45年6月に車持込み運転手となってから,平成16年6月20日に仕事を辞めるまでの間,自動車運送業の登録をすることはなかったし,株式会社F及び被控訴人から支払われる報酬について,自営業者として確定申告をすることもなかった(弁論の全趣旨)。 イ Eは,毎日朝7時30分頃に自宅を出て被控訴人の事務所に行き,帰宅は毎晩午後6時頃となっていた。Eは,配送業務がない時間には,工場の掃除をしたり,材木を並べたり,倉庫の手伝いをしたり,被控訴人が定期的に行っていた木材の展示会にも出席して,手伝いをしていた。また,新人の車持込み運転手が採用された場合,Eが業務指導を担当していた(甲40,L,控訴人A)。 ウ Eは,I株式会社に勤務するようになった昭和39年9月以降継続して各種の社会保険(厚生年金保険,健康保険,雇用保険,労働者災害保険)の被保険者となっており,昭和49年8月に被控訴人が設立され,Eがその車持込み運転手になった後は,被控訴人の従業員として上記の社会保険の被保険者となり,一度も脱退したことはなかった。 そして,Eは,昭和56年頃,被控 和49年8月に被控訴人が設立され,Eがその車持込み運転手になった後は,被控訴人の従業員として上記の社会保険の被保険者となり,一度も脱退したことはなかった。 そして,Eは,昭和56年頃,被控訴人の配送業務を行っていた際に右膝骨骨折の傷害を受け,平成8年頃にも傷害を受けたことがあったが,いずれのときも,労災保険の障害補償給付金等の支給を受けた。また,Eは,平成14年10月から平成16年5月までの間,雇用保険の高年齢雇用継続給付も受けた。 Eは62歳であった平成16年6月20日に,病気のため,被控訴人の仕事を辞めたが,その際,被控訴人から,健康保険,厚生年金の資格喪失証明書の交付を受け,脱退の手続をした。 (以上につき,甲8ないし12,30,40,42,44,控訴人A)。 エ Eは,借り入れに当たり銀行に提出するために,株式会社Fに依頼して,昭和49年8月27日付けで,昭和49年1月分から同年8月分までの給与証明書を作成してもらった。この給与証明書に記載されている金額は,1回目の支払(給与明細が交付されているもの)に相応する金額となっており,Eの全収入を反映させたものではなかったが,Eは,株式会社Fに対して異議を述べるなどしなかった(甲28,49,52,控訴人A)。 他方で,被控訴人は,Eの求めに応じて,平成15年7月に,「よう車代支払証明」として,平成14年7月から平成15年6月までの間に,Eに対して,1回目の支払と2回目の支払の合計金額を記載した書面を交付したこともあった(甲49,乙32)。 (5) 控訴人Aは,Eの死後に受給した遺族厚生年金の額が2か月で17万円程度と少ない金額であったことを不審に思っていたが,その後,年金問題が社会的に取り上げられるようになったため,平成20年11月 5) 控訴人Aは,Eの死後に受給した遺族厚生年金の額が2か月で17万円程度と少ない金額であったことを不審に思っていたが,その後,年金問題が社会的に取り上げられるようになったため,平成20年11月に年金記録に係る確認申立てを行った。その結果,控訴人Aは,Eについて,1回目の支払に相当する報酬額のみが社会保険事務所に標準報酬月額として申告されていたことを知った(甲40)。 また,平成21年12月には,社会保険事務所から,社会保険料について個人負担金を事業主が二重に徴収し,それを事業主負担分として社会保険庁に納付したとしても,国(社会保険庁)からそれを返還することはできないので,事業主に対して返還請求を行うよう記載した書面を受け取った(甲1)。 (6)ア控訴人らは,平成21年12月25日に,G簡易裁判所に,被控訴人を債務者として,株式会社F及び被控訴人が社会保険料の事業主負担分をEの報酬から控除していたことについて,不当利得返還請求権に基づき,総額910万5000円及びこれに対する支払督促の送達の日の翌日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める支払督促を申し立て,G簡易裁判所書記官は,同日,支払督促を発令した。 これに対し,被控訴人が異議申し立てを行ったため,控訴人らは,平成22年3月1日,G地方裁判所に,主位的に,債務不履行又は不法行為の損害賠償請求権に基づき,予備的に,不当利得返還請求権に基づき,総額910万5000円を請求する旨の訴状に代わる準備書面を提出した。 イ控訴人らは,原審において,平成23年9月6日,公的年金差額相当損害金,控訴人Aの慰謝料及び控訴人らの弁護士費用につき,債務不履行又は不法行為の損害賠償請求権の請求を拡張した。 ウ控訴人らは,当審において,平成24 て,平成23年9月6日,公的年金差額相当損害金,控訴人Aの慰謝料及び控訴人らの弁護士費用につき,債務不履行又は不法行為の損害賠償請求権の請求を拡張した。 ウ控訴人らは,当審において,平成24年11月2日,未払い賃金請求権総額910万5000円につき,請求の拡張を行った。 エ被控訴人は,控訴人らに対し,平成25年5月16日の弁論準備手続期日において,平成11年11月24日までに履行期 が到来した債務不履行に基づく損害賠償請求権,不法行為に基づく損害賠償請求権,賃金請求権及び平成11年11月24日までに履行期が到来した不当利得返還請求権について,消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 2 Eは労働基準法所定の労働者であるか否かについて(1) 上記1の認定事実によると,Eは,I株式会社(昭和45年2月の商号変更後は株式会社F)との間で雇用契約を締結していたが,昭和45年6月頃,自己所有トラックを用いて同社の配送業務に従事するようになり,以後,同社及び被控訴人において,Eを含めた車持込み運転手は,他の従業員と異なって,被控訴人の就業規則及び給与規定が適用されなかったため,①出勤時間の定めがなかったこと,②同社及び被控訴人から支払われる金員の計算方法及び支払方法が,完全出来高制であり,支給金額の最低保障もなかったこと,③昇給,昇進もなかったこと,④有給休暇もなく,定年も退職金もなかったことが認められるから,Eは,昭和45年6月頃以降,株式会社F及び被控訴人との間で,Eが株式会社F及び被控訴人のために,継続的かつ専属的に,木材等の配送業務を請け負う旨の契約(いわゆる傭車契約。以下「本件傭車契約」ともいう。)を締結し,同契約に従って,同業務に従事していたものと認めるのが相当である。 (2) そこで,ま 属的に,木材等の配送業務を請け負う旨の契約(いわゆる傭車契約。以下「本件傭車契約」ともいう。)を締結し,同契約に従って,同業務に従事していたものと認めるのが相当である。 (2) そこで,まず,このような傭車契約を締結していたEが,被控訴人を使用者とする労働基準法所定の労働者であるといえるか否かについて検討する。 労働基準法9条において,労働者とは,「事業又は事務所に使用される者で,賃金を支払われる者をいう。」と定められているところ,この法律が,使用従属の関係にある労働者の保護を目的とするものであることを考慮すると,「労働者性」の判断に当たっては,雇用契約,請負契約といった契約形式のいかんにかかわらず,実質的な使用従属性の有無を,労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素をも勘案して総合的に判断すべきであり,その判断に当たっては,同法10条の「使用者」の定義規定(この法律で使用者とは,事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について,事業主のために行為をするすべての者をいう。)及び同法11条の「賃金」の定義規定(この法律で賃金とは,賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。)に鑑み,①使用者の指揮監督下において労務の提供を行う者といえること(使用従属性)と,②労務に対する対償を支払われる者であるこという二つの要件を満たすことが必要であり,上記①の「指揮監督下の労働」の要件については,a具体的仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無,b業務遂行上の指揮監督の有無,c勤務時場所及び勤務時間が指定され,管理されているかどうか(拘束性)の有無,さらに,d本人に代わってほかの者が労務を提供することが認め 示等に対する諾否の自由の有無,b業務遂行上の指揮監督の有無,c勤務時場所及び勤務時間が指定され,管理されているかどうか(拘束性)の有無,さらに,d本人に代わってほかの者が労務を提供することが認められているかどうか(代替性)を考慮して,判断されるべきものであり,さらに,必要に応じて,上記①,②のほか,事業者性の有無や,専従性の有無なども考慮すべきであると解される。以下,上記1の認定事実に基づき,これらの点について順次,検討する。 (3) 使用従属性の有無についてア具体的な仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無等について上記1(3)の認定事実によれば,車持込み運転手の配送業務には,配送先までの距離やかつぎ込みの有無などにより,経費ばかりのかかる割の合わない仕事と割のよい仕事があったため,被控訴人が,車持込み運転手らに平等になるように配送先,積載量及び配送時間の指示をし,車持込み運転手は,その指示を断ることができなかったことが認められる。 このような事実は,車持込み運転手の使用従属性を認める方向に働くものとなるイ業務遂行上の指揮監督の有無について(ア) 前提事実及び上記1(3)の認定事実によれば,車持込み運転手が被控訴人の配送業務に従事するに当たり,①被控訴人の制服を支給し,②配送先に被控訴人の名を名乗らせ,③配送が終わったときには被控訴人に連絡を入れるよう指示し,④車持込み運転手に対し,「助手は原則として無しとする」,「特別の場合(現場かつぎ込み等)の運賃は係員の承認を受ける」,「上記以外で特例がある場合は所属長の承認を受ける」こととして車持込み運転手を指揮監督していたことが認められる。また,Eは,新人の車持込み運転手に対して業務指導していたのであるから,被控訴人に ,「上記以外で特例がある場合は所属長の承認を受ける」こととして車持込み運転手を指揮監督していたことが認められる。また,Eは,新人の車持込み運転手に対して業務指導していたのであるから,被控訴人における配送業務についても,一定の業務遂行上の指示事項があったことが推認できる。 なお,上記③について,Jは,配送が終わった後,被控訴人に連絡を入れることは求められていなかった旨の証言をするが(尋問調書16頁),車持込み運転手に業務を依頼した被控訴人としては,車持込み運転手がその業務を予定どおり終えたのか否かの確認を求めるのは自然であることからすれば,Lが証言するとおり(尋問調書8頁),車持込み運転手は,配送が終わったときには被控訴人に連絡を入れるよう求められていたと認めるのが相当である。 (イ) もっとも,上記④については,証拠(J,被控訴人代表者)によれば,車持込み運転手が被控訴人の従業員を助手として荷物の積下ろしを手伝わせることがあり,そのようなときは,被控訴人の経費もかかることから,被控訴人において,被控訴人の従業員を助手として連れて行くことを禁止したものであることが認められ,この制約は,車持込み運転手に支払う報酬額の算定方法に関するものであることが認められるが,車持込み運転手が自己の費用において,助手に荷物の積下ろしをさせることまで禁じたものであるかについては明確ではない。 また,被控訴人は,被控訴人の車持込み運転手に対し,具体的な配送ルートの指示などもしていなかった旨主張し,確かに,証拠(J,L)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,車持込み運転手に対し,製品に傷つけないこと,客に迷惑をかけないこと,配送を依頼した荷物は,客から指定された時間までに運ぶよう指示されていたが,荷物を何回かに分 び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,車持込み運転手に対し,製品に傷つけないこと,客に迷惑をかけないこと,配送を依頼した荷物は,客から指定された時間までに運ぶよう指示されていたが,荷物を何回かに分けて運んでもよいし,どの道を通って配達するとか,どこで休憩するとか有料道路を使うかどうかもすべて車持込み運転手の判断であったことが認められる。 (ウ) 以上によると,被控訴人は車持込み運転手に対し,業務遂行上の指揮監督をしていたことが認められるものの,上記(ア),(イ)のような指揮監督は,継続的に配送業務を請け負わせる請負人に対する指揮監督の範囲に含まれるともいえるから,このような指揮監督の存在をもって,車持込み運転手の配送業務従事について,使用従属性がただちに肯定されるものとはいえない。 ウ勤務場所及び勤務時間の拘束性について(ア) 勤務場所について上記1(3)の認定事実によれば,被控訴人においては,車持込み運転手は,それぞれ配送業務の指示等を受ける被控訴人の営業所あるいは事務所が固定されていたことが認められる。 (イ) 稼働時間の決定について上記1(3)の認定事実によれば,車持込み運転手は,被控訴人から配送先,積載量,配送時間の指示を受けることに伴い毎日の始業時間と終業時間が事実上決定されていたこと,そして,その出勤についても,出勤簿によって管理されていたことが認められる。 (ウ) 稼働日における業務の状況について上記1(3)の認定事実によれば,車持込み運転手は,被控訴人から指示を受けた配送業務が終了したときには被控訴人にその旨の連絡を取るよう被控訴人から指示を受け,当初の配送業務が終わった後も自宅又は事務所での待機を求められてい ば,車持込み運転手は,被控訴人から指示を受けた配送業務が終了したときには被控訴人にその旨の連絡を取るよう被控訴人から指示を受け,当初の配送業務が終わった後も自宅又は事務所での待機を求められていたことが認められる。 なお,控訴人らは,被控訴人がEを配送業務以外の仕事にも従事させていたなどと主張し,確かに,上記1(4)の認定事実によれば,Eは,倉庫の掃除や,新人の車持込み運転手に対する業務指導に従事していたことは認められる。 しかし,Eが配送業務以外の仕事に従事していたことについては,これが被控訴人の業務命令によるものであるのか否かは明確ではないから,Eが配送業務以外の仕事に従事していたことを,被控訴人による拘束性の根拠とすることはできない。 (エ) 以上(ア)から(ウ)によると,被控訴人の車持込み運転手に対する拘束性を認めることができる。 エ代替性について車持込み運転手が,その業務を再委託するなどが可能であったか否かについては,上記1(3)の認定事実のとおり,車持込み運転手は,被控訴人の制服を貸与され,それを着用の上,配送業務に従事していたこと,被控訴人の社員連絡簿にEら車持込み運転手の名前が記載されていたこと,Eが被控訴人の社員旅行,新年会や忘年会に参加していたことからすると,車持込み運転手と被控訴人の間では,当該車持込み運転手に対して被控訴人が配送業務を依頼するのであって,その業務を再委託することは当然に禁止されていたと認めるのが相当である。 オ以上によると,被控訴人において,Eら車持込み運転手については,就業規則の適用がないなどの点では,他の従業員とは異なっていることが認められるが,具体的な仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由がなく,時間的場所的 において,Eら車持込み運転手については,就業規則の適用がないなどの点では,他の従業員とは異なっていることが認められるが,具体的な仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由がなく,時間的場所的拘束性もあり,代替性もなかったことは認められるため,その使用従属性は,相当に強いものであったということができる。 (4) 報酬の労働対価性について上記1(3)の認定事実のとおり,被控訴人とEら車持込み運転手の間の報酬は完全出来高制であり,最低賃金の保障はなかったことが認められる。 もっとも,Eにも適用されていた運賃表には,配送業務がないときの定めがあり,免許停止処分中のLに対する被控訴人の対応からもうかがわれるように,被控訴人は,車持込み運転手に対し,配送業務がない,あるいは同業務ができないために収入がなくなるようなときには,車持込み運転手に対し,配送業務以外の仕事を与え,車持込み運転手が一定の報酬を得られるような配慮をしていたことが認められる。 (5) 事業者性について上記1(1)ないし(3)の認定事実のとおり,Eは,車持込み運転手として,トラックを所有し,同トラックを使用して行う配送業務の報酬は完全出来高制で,最低賃金の保障はなく,経費は自己負担であるというのであるから,Eの本件傭車契約に基づく配送業務は,E自身の計算の下に行われているものとして,一定の事業者性を肯定できるが,Eは,自動車運送業の登録をすることはなかったし,被控訴人から支払われる報酬について確定申告することもなかったのである(なお,Eについても,2回目の支払に対応する収入について確定申告をしていないという点は認められ,Jは,同人が被控訴人で車持込み運転手として働くようになった後,Eや他の車持込み運転手から,2回目の支払 お,Eについても,2回目の支払に対応する収入について確定申告をしていないという点は認められ,Jは,同人が被控訴人で車持込み運転手として働くようになった後,Eや他の車持込み運転手から,2回目の支払について確定申告していないと聞いたため,Jもしなかった旨証言するが(尋問調書2頁),証拠(甲104の1の5頁)によれば,平成21年10月1日の控訴人Cとの電話での会話の際,Jが控訴人Cに対し,被控訴人に入社した際,Mから,2回目の支払については,被控訴人の経理の先生にちゃんとやってもらうと言われた旨を述べていたことが認められることからすると,Eは,2回目の支払について自ら確定申告をする必要性を認識していなかった可能性があるのであり,Eが,2回目の支払について,確定申告が必要であることを認識した上で,Jに対して確定申告していないと述べたとまでは認められない。)。 そして,Eの上記配送業務が専属的,継続的なものであったことも考慮すると,Eの上記配送業務をもって,独立した事業者のそれとは言い難い面があり,少なくともその事業者性を大きく評価することはできない。 (6) その他ア兼業禁止について上記1(3)の認定事実によれば,被控訴人は,車持込み運転手に対し,ほかの会社の仕事をすることを禁止していたことが認められる。 これについて,被控訴人は,Eの預金通帳に,「N」からの入金が定期的にあることから,Eは同社のアルバイトをしていた旨主張し,確かに証拠(甲85ないし95)によれば,Eの預金通帳には,毎月ではないものの,平成10年3月以降,「N」から定期的に入金があることが認められる。 しかし,証拠(甲107,108)によれば,被控訴人の関連会社として平成9年10月に「N株式会社」が設立されていることが認 の,平成10年3月以降,「N」から定期的に入金があることが認められる。 しかし,証拠(甲107,108)によれば,被控訴人の関連会社として平成9年10月に「N株式会社」が設立されていることが認められるから,Eが「N」において稼働していたとしても,それが被控訴人のいう「ほかの会社での仕事の禁止」に該当するものであると認めることはできない。 また,Jは,車持込み運転手たちの中には被控訴人の上記指示に違反して,ほかの会社の配送業務を行っていた者もおり,Eもほかの会社の配送業務を行っていた旨証言するが(尋問調書4頁),仮に,このような事実が認められるとしても,それは,車持込み運転手やEが被控訴人の指示に違反して兼業していたというにすぎず,車持込み運転手の被控訴人に対する従属性を否定するものとはいえない。 イ専従性について上記1(1)及び(4)の認定事実によれば,Eについては,被控訴人が設立された昭和46年8月から退職する平成16年6月20日までの間,被控訴人との間の本件傭車契約に従って被控訴人に専属する車持込み運転手として,ほぼ毎日被控訴人に出勤して,被控訴人の配送業務に従事していたことが認められるから,強い専従性を肯定できる。 ウ被控訴人によるEについての源泉徴収と社会保険加入について上記1(1),(3)及び(4)の認定事実によれば,被控訴人は,その設立の当初から,Eについて,被控訴人の従業員であるとして厚生年金保険,健康保険,雇用保険及び労働者災害保険の被保険者とする措置を継続し,給与名目で支払われる1回目の支払から,その支払金額を前提として所得税等を源泉徴収して納税し,また,社会保険料のうち本人負担分を控除し,2回目の支払から控除した社会保険料の事業主負担分とともに,これを納付 支払われる1回目の支払から,その支払金額を前提として所得税等を源泉徴収して納税し,また,社会保険料のうち本人負担分を控除し,2回目の支払から控除した社会保険料の事業主負担分とともに,これを納付していたことが認められる。 これについて,被控訴人は,Eを含めた車持込み運転手を社会保険に加入させていたのは被控訴人が恩恵として社会保険に加入させたものであり,社会保険料の事業主負担分を車持込み運転手が負担することは,Eら車持込み運転手の了解を得ている旨主張する。 確かに,証拠(甲20,28,100,104の1の5頁,控訴人A)及び弁論の全趣旨によれば,Eの源泉徴収票には1回目の支払の総額分しか記載されておらず,また,社会保険料の額も明記されていたものであること,Jは,控訴人Cに対し,被控訴人のMから,社会保険料を全額負担するのはJである旨の説明を受けていた趣旨のことを述べていたことは認められる。 しかし,株式会社F及び被控訴人が,Eに対し,本来であれば,Eは従業員ではないため社会保険には加入できないが,恩恵として社会保険に加入させること,それに当たり,社会保険料の事業主負担分もEが負担することを説明し,その承諾を得たことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,上記1(1)の認定事実のとおり,Eが車持込み運転手となるに当たり,控訴人Aは,Eから,会社(株式会社Fのこと)から,今までどおり社員として厚生年金をかけてやると言われている旨の説明を受けたというのである。 また,証拠(甲100)及び弁論の全趣旨によれば,Eは,平成14年11月から死亡する平成18年5月までの間,老齢厚生年金を受給していたが,被控訴人に対し,その額が少ないなどと問い合わせるなどしていないことが認められる。しかし,受給する年金額が本 は,平成14年11月から死亡する平成18年5月までの間,老齢厚生年金を受給していたが,被控訴人に対し,その額が少ないなどと問い合わせるなどしていないことが認められる。しかし,受給する年金額が本来であれば受け取れるであろう年金額よりも少ないことを認識するのは容易ではないことを考慮すると,このような事実をとらえて,Eが,社会保険料の事業主負担分も自ら負担することを認識していたと認めることもできない。 そうすると,被控訴人の上記主張は採用できない。 エ他の従業員との違い等について(ア) 上記1(2),(3)の認定事実によれば,車持込み運転手には,被控訴人の一般従業員である配送係とは異なり,就業規則の適用がないため,有給休暇や定年はなく,無事故表彰,皆勤賞,勤務態度に応じたニコニコ賞等の表彰規定による表彰は なく,誕生日,結婚記念日の休日化,記念品の贈呈等の措置もなかったし,朝礼や方針説明会に出席することもなかったこと,従業員全員をもって構成する社員互助会にも入っていなかったことが認められるが,他方で,1回目の支払については,被控訴人において,同金額に対応した額の所得税等の源泉徴収が行われ,社会保険料も徴収され,2回目の支払から徴収されていた社会保険料とともに,それぞれ社会保険料の本人負担分及び事業主負担分として納付されていたことが認められる。 (イ) なお,被控訴人は,車持込み運転手は,従業員と異なり,業務中の事故につき,商品を傷つければその賠償を行うほか,事故の相手方との示談について自らの責任で行うこととなる旨主張し,確かに,証拠(J,L)及び弁論の全趣旨によれば,車持込み運転手が,荷物を破損したり,柱やシャッターなどを傷つけたときには,被控訴人から,その損害を賠償するよう求められていたことは認 る旨主張し,確かに,証拠(J,L)及び弁論の全趣旨によれば,車持込み運転手が,荷物を破損したり,柱やシャッターなどを傷つけたときには,被控訴人から,その損害を賠償するよう求められていたことは認められる。 しかし,Lは,客のシャッターを傷つけたようなときには,被控訴人に依頼して処理してもらった旨証言しており,車持込み運転手が,他の従業員とは異なり,客との交渉まで自ら行っていたとまでは認めることはできない。 また,上記1(2)の認定事実のとおり,被控訴人において平成7年4月1日から実施されていた就業規則には,「従業員が,故意または過失によって会社に損害を与えたときは,その全部,または一部を賠償させる。(35条)」との規定があり,平成15年2月1日から施行された改訂後の就業規則には,「従業員が故意又は重大な過失によって当事業場に損害を与えた場合は,賠償させることがある(7条)。」との規定があるのだから,被控訴人が,他の従業員に対しては,車持込み運転手と異なり,被害弁償を求めなかったと認めることもできない。 したがって,被控訴人が指摘する点において,車持込み運転手と他の従業員との違いを認めることはできない。 (7) 以上の(3)ないし(6)によると,Eら車持込み運転手は,被控訴人の配送業務について具体的な仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由がなく,勤務場所及び勤務時間の拘束を受け,その業務を再委託するなどの代替性も認められていないなどの点で,被控訴人の指揮監督下における労働に従事していたといえることに加え,兼業が禁止され,ほぼ毎日被控訴人の配送業務に従事するなど専従性が認められること,株式会社F及び被控訴人がEを従業員として社会保険に加入させていたこと等からすると,Eについては,配送業務に用いる ,兼業が禁止され,ほぼ毎日被控訴人の配送業務に従事するなど専従性が認められること,株式会社F及び被控訴人がEを従業員として社会保険に加入させていたこと等からすると,Eについては,配送業務に用いるトラックを所有し,自己の危険と計算の下に配送業務に従事し,株式会社F及び被控訴人の就業規則が適用されていなかったことを考慮しても,被控訴人の指揮監督下において労務の提供を行い,被控訴人から,その労務の提供に対する対償として本件傭車契約に基づく報酬の支払を受けていた者であるというべきであり,労働基準法にいう「労働者」に該当するものと認められる。 (8) 被控訴人が株式会社FのEに対する控訴人ら主張の債務を承継したのか否かについて控訴人らは,Eは,株式会社Fにおいても,同社を使用者とする労働基準法9条所定の労働者であったが,同社は,昭和45年6月頃にEが同社の車持込み運転手となって以降,被控訴人におけると同様,社会保険料の事業者負担分をEの賃金から控除し,Eの報酬の一部を標準報酬月額に加えないという労働契約上の債務不履行及び不法行為をしたため,Eに対し,社会保険料過払相当損害金,公的年金差額相当損害金等の損害賠償債務又は賃金から控除された社会保険料の事業者負担分相当額の未払賃金支払債務を負担したいたところ,被控訴人が同社から同社G支店の営業譲渡を受けて,同社とEとの間の雇用関係及び同社のEに対する上記債務も引き継いだ旨主張する。 そこで検討するに,上記1(2)エのとおり,被控訴人は,昭和49年8月に設立され,そのころ,株式会社FG支店の設備,業務の一切の営業の譲渡を受けて事業を開始したものであるところ,証拠(甲5の2,30,44)によれば,Eの厚生年金保険においては,被控訴人を事業主,資格取得日を昭和3 ころ,株式会社FG支店の設備,業務の一切の営業の譲渡を受けて事業を開始したものであるところ,証拠(甲5の2,30,44)によれば,Eの厚生年金保険においては,被控訴人を事業主,資格取得日を昭和39年9月21日,資格喪失日を平成16年6月21日とされていることが認められるから,被控訴人は,株式会社FG支店の設備,業務一切の営業譲渡を受けるに当たり,Eとの間の傭車契約も承継したものと認めることができる。 しかし,営業譲渡において,譲渡される対象にどのような財産,資産等が含まれるかは,営業譲渡に関する当事者間の合意の内容に係ることであるから,営業譲渡に伴って,当該営業に従事していた労働者の労働契約が承継されることになったとしても,当然に,当該労働者との関係で既に発生し,譲渡人が負担していた労働契約上の賃金支払債務や労働契約に関連して生じた損害賠償債務を当該営業の譲受人が承継するものではなく,このことは,商法17条1項(昭和45年1月当時有効な商法の規定としては平成17年7月26日法律第87号による改正前の商法26条1項)の規定に照らして明らかである。 そして,被控訴人が株式会社FからそのG支店の営業譲渡を受けた際,既発生の労働関係に基づく未払賃金債務又はこれに関する損害賠償債務についてどのような合意がなされたものかにつき,これを認めるに足りる証拠はないから,仮に,株式会社Fが控訴人ら主張の債務を負担していたとしても,被控訴人が,株式会社Fから,そのG支店の営業全部を譲り受け,それに伴ってEとの間の傭車契約も承継したことにより,被控訴人が株式会社Fから控訴人ら主張の債務を承継したものと認めることはできないというほかない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用できない。 3 被控訴人の債務不履 継したことにより,被控訴人が株式会社Fから控訴人ら主張の債務を承継したものと認めることはできないというほかない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用できない。 3 被控訴人の債務不履行又は不法行為の成否について(1) 厚生年金保険法9条は,「適用事業所に使用される70歳未満の者は,厚生年金保険の被保険者とする。」と定めているところ,ここで「使用される者」とは,同法1条が定める厚生年金保険制度の目的に照らし,事業主との間に締結されている契約の形式に関わらず,労務の提供とそれに対する報酬の支払という関係がある場合をいうものと解されるから,労働基準法9条所定の労働者がこれに含まれることは明らかである。また,健康保険法3条1項は,同法の被保険者について,同項各号に該当する者を除き,適用事業所に雇用される者及び任意継続被保険者である旨定め,同法35条は,「任意継続被保険者を除く被保険者は,適用事業所に雇用されるに至ったときから被保険者の資格を取得する。」と定めるところ,同法1条が定める健康保険制度の目的に照らし,同法3条1項にいう「使用される者」とは,厚生年金保険法9条の「使用される者」と同様に解すべきであるから,労働基準法9条所定の労働者がこれに含まれることは明らかである。 (2)ア厚生年金保険法27条は,適用事業所の事業主は,被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない旨定め,同法82条1項は「被保険者及び被保険者を使用する事業主は,それぞれ保険料の半額を負担する。」と,同2項は「事業主は,その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。」と定めていることからすると,これらの義務は,もちろん,公法上の義務ではあるが 保険料の半額を負担する。」と,同2項は「事業主は,その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。」と定めていることからすると,これらの義務は,もちろん,公法上の義務ではあるが,もともと,厚生年金が,労働者の老齢,障害又は死亡について保険給付を行い,労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とするものであること(同法1条)に鑑みれば,使用者は,労働契約の付随義務として,信義則上,同法を遵守し,労働者が同法に基づく保険給付を受ける権利を侵害しないように配慮すべき義務を負っていると認めるのが相当である。 また,健康保険法161条1項は,「被保険者及び被保険者を使用する事業主は,それぞれ保険料額の2分の1を負担する。」と定め,同条2項は,「事業主は,その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。」と定めているから,同法1条の定める同法の目的に鑑み,使用者は,健康保険についても,労働契約の付随義務として,信義則上,同法を遵守し,労働者が同法に基づく保険給付を受ける権利を侵害しないように配慮すべき義務を負っていると認めるのが相当である。 ところが,上記1及び2で認定説示したところによれば,Eと被控訴人との間の本件傭車契約は,その実質において労働契約であり,Eは,被控訴人を使用者とする労働基準法9条所定の労働者であったのであるから,被控訴人はEについて,厚生年金保険及び健康保険の被保険者として,各その保険料の2分の1を事業主として自ら負担すべき義務があったのに,これをEに対する2回目の支払から控除し,実質的にEに負担させる扱いとしたことは,上記の厚生年金保険法及び健康保険法の各規定に違反するとともに,被控訴人がEに対して支払うべき報酬のうち ったのに,これをEに対する2回目の支払から控除し,実質的にEに負担させる扱いとしたことは,上記の厚生年金保険法及び健康保険法の各規定に違反するとともに,被控訴人がEに対して支払うべき報酬のうち上記控除額に相当する報酬分をEに支払っていないことになるものである。 また,厚生年金保険法に基づき被保険者に支払われる老齢厚生年金の額は,被保険者の受ける報酬の額によって定まる平均標準報酬額と被保険者期間の日数に応じて定まり(同法43条),また,同法に基づき,被保険者の遺族に支払われる遺族厚生年金は,上記のようにして定まる老齢厚生年金の額を基準として定まる(同法60条)ため,被控訴人が,Eから被控訴人から支払を受けた報酬について,1回目の支払に係る金額のみを同法27条に基づく報酬月額として届け出,2回目の支払に係る金額を届け出なかったため,2回目の支払に係る金額も届け出た場合と比べて,後記のとおり,E,その死亡後は遺族である控訴人Aが受給できた老齢厚生年金及び遺族厚生年金の額が少なくなったというのであるから,被控訴人には,Eについて,その報酬に見合った厚生年金保険給付を受ける権利を侵害しないよう配慮すべき義務に違反する行為があったものと認められ,労働契約上の債務不履行があったものである。 イ被控訴人は,車持込み運転手のために,社会保険の利益を受けられるような措置を講じてきたが,被控訴人負担分の社会保険料については,その利益を受ける車持込み運転手が負担することは,車持込み運転手も当然に認識していたものである旨主張する。 しかし,上記2(6)ウのとおり,被控訴人がEに対し,Eが従業員ではないが,恩恵的に社会保険に加入させること,それに当たって事業主負担部分もEが負担することを説明し,その承諾を得た事実が認 る。 しかし,上記2(6)ウのとおり,被控訴人がEに対し,Eが従業員ではないが,恩恵的に社会保険に加入させること,それに当たって事業主負担部分もEが負担することを説明し,その承諾を得た事実が認められないから,被控訴人の主張は,採用できない。 (3) 控訴人らは,労働者であるEの給与から控除した金員を,事業主負担分の社会保険料として国に対して納付した被控訴人の行為が厚生年金保険法82条及び健康保険法161条に違反すること,社会保険庁等に対して偽りの標準報酬月額を申告したことが厚生年金保険法27条に違反することなどを指摘して,被控訴人には不法行為が成立する旨も主張する。 被控訴人がEに対し,被控訴人負担分の社会保険料もEが負担することになる旨を説明し,その承諾を得た事実は認められないから,被控訴人が自ら負担する社会保険料の負担を免れるため,Eに支払われるべき報酬からその分を密かに控除していたことになるのであって,このような被控訴人の行為が,上記の各法令に違反するものとなっていることも併せ考慮すると,被控訴人の行為は,労働契約上の債務不履行となるにとどまらず,厚生年金保険法及び健康保険法を遵守し,労働者の保険給付を受ける権利を侵害しないように配慮すべき注意義務に違反するものとして,不法行為も構成すると認めるのが相当である。 4 控訴人らの損害について(1) 控訴人らは,本来であれば,被控訴人が事業主として負担すべき社会保険料を,Eに対する2回目の支払から控除していたことについて,その控除額の総額910万5000円が上記2(2)の被控訴人の債務不履行あるいは不法行為による損害である旨主張する。 しかし,これは,単に,Eに対し,支払うべき報酬を支払っていないというにすぎず,上記2(2)で認めた債務不 円が上記2(2)の被控訴人の債務不履行あるいは不法行為による損害である旨主張する。 しかし,これは,単に,Eに対し,支払うべき報酬を支払っていないというにすぎず,上記2(2)で認めた債務不履行あるいは不法行為(厚生年金保険法又は健康保険法を遵守し,労働者の保険給付を受ける権利を侵害しないように配慮すべき注意義務の違反)に基づく損害であるとは認められない。 したがって,控訴人らの主張は採用できない。 (2) 公的年金差額相当金ア老齢厚生年金差額相当損害金(ア) 証拠(甲100の1枚目,2枚目)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人が昭和49年9月以降,Eの報酬に見合った金額の社会保険料を納付しなかったことにより,Eの老齢厚生年金については,その受給額について,106万5901円が減額となり,Eは同額の損害を受けたことが認められる。 (イ) 控訴人らは,Eの権利を相続により承継したから,控訴人らの被控訴人に対する損害賠償請求権は,それぞれ次の金額になる。 ① 控訴人A 53万2951円② 控訴人B,控訴人C,控訴人D 各17万7650円イ遺族厚生年金差額相当損害金証拠(甲100の3枚目)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人が昭和49年9月以降,Eの報酬に見合った金額の社会保険料を納付しなかったことにより,Eの妻である控訴人Aが受給できることになる遺族厚生年金が,次のとおり,総額1062万3014円減額となり,控訴人Aは,同額の損害を受けたことが認められる。 (ア) 平成24年3月までの分について346万6100円の減額となっていることが認められる。 (イ) 平成24年4月以降の分について控訴人Aが受給する遺 ことが認められる。 (ア) 平成24年3月までの分について346万6100円の減額となっていることが認められる。 (イ) 平成24年4月以降の分について控訴人Aが受給する遺族厚生年金は,年額59万2200円(161万5200円-102万3000円)の減額となっていることが認められる。 控訴人Aが昭和16年11月生まれであり,平成24年4月から平均余命である19.61年(対応するライプニッツ係数は19年で12.0853)で計算すると,不足額は,715万6914円となる。 (計算式) 59 万2200 円×12.0853=715 万6914 円(3) 控訴人Aの慰謝料について控訴人らは,被控訴人のEに対する厚生年金保険法を遵守し,労働者の保険給付を受ける権利を侵害しないように配慮すべき注意義務違反に係る不法行為によって,控訴人Aが精神的苦痛を被った旨主張するが,控訴人らの主張によっても,控訴人Aは,年額102万3000円の遺族厚生年金を受給した上,子らからの仕送りで相応の生活をすることができたというのであるから,控訴人ら主張の控訴人Aの精神的苦痛が本件で損害賠償が認容されることによってもまかなえなくなる程のものとは認めることはできない。 したがって,控訴人らの上記主張は採用できない。 (4) 弁護士費用について本件の事案や,審理経過等からすると,控訴人らの弁護士費用としては,次の金額を認めるのが相当である。 ア控訴人A 110万円イ控訴人B,控訴人C,控訴人D 各2万円(5) 以上によると,控訴人らの被控訴人に対する主位的請求(債務不履行又は不法行為の損害賠償請求)については,総額及び遅延損害金の起算日において控訴人らに有利な 控訴人C,控訴人D 各2万円(5) 以上によると,控訴人らの被控訴人に対する主位的請求(債務不履行又は不法行為の損害賠償請求)については,総額及び遅延損害金の起算日において控訴人らに有利な不法行為に基づく損害賠償請求権を認めるのが相当であり,その金額につき,次のとおり認められる。 ア控訴人A 1225万5965円イ控訴人B,控訴人C,控訴人D 各19万7650円 5 賃金請求権及び不当利得返還請求権(予備的請求)について(1) 上記1の認定事実によれば,被控訴人は,昭和49年9月以降,本来であれば,Eに支払うべき報酬について,2回目の支払においてその一部を支払っていなかったことが認められ,その額は,総額886万7514円(別紙1の910万6458円から,昭和45年7月分から昭和49年8月までの分の総額23万8944円を差し引いた金額)であることが認められる。 なお,予備的請求の中の選択的請求である不当利得返還請求権については,このように賃金請求権が成立するのであるから,不当利得返還請求権の成立を認めることはできない(昭和46年8月以前の株式会社Fに対する未払賃金請求権あるいは不当利得返還請求権を被控訴人が承継しないことは,上記2(8)のとおりである。)。 (2) 上記賃金請求権については,控訴人らがEの権利を相続により承継したから,控訴人らの被控訴人に対する賃金請求権は,それ ぞれ次の金額になる。 ア控訴人A 443万3757円イ控訴人B,控訴人C,控訴人D 各147万7919円 6 消滅時効の抗弁の成否について(1) 不法行為による損害賠償請求についてア被控訴人は,Eは平成15年7月には,被控訴人からの支払金額を ,控訴人C,控訴人D 各147万7919円 6 消滅時効の抗弁の成否について(1) 不法行為による損害賠償請求についてア被控訴人は,Eは平成15年7月には,被控訴人からの支払金額を知ることにより,その売上げを下回る金額しか支払われていないことを認識していたから,不法行為に基づく損害賠償請求権は,最後に発生した平成16年6月30日から3年の経過により消滅した旨主張する。 しかし,仮にEが平成15年7月に,被控訴人から支払われている金額が本件傭車契約に基づいて支払われるべき報酬額を下回ることを知ったとしても,そのことで,Eが,本来は被控訴人が負担すべき社会保険料が上記報酬額から控除されていることを知ったこととなるものではないし,Eがそのようなことを知っていたものと認めることができないことは,上記2(6)ウで説示したとおりである。 そして,上記1(5)の認定事実のとおり,控訴人Aは,平成20年11月頃に,年金記録に係る確認申立てを行った際,実際に受給した厚生年金の額がEの実際の報酬を標準報酬月額とした場合よりも低額であることを認識したことが認められ,控訴人らは,平成23年9月には,原審における請求の拡張により,不法行為の損害賠償請求権を請求したのであるから,被控訴人の上記主張を採用することはできない。 イまた,不法行為に基づく損害賠償請求権のうち平成元年11月24日までに発生したものは存在しないから,20年の経過により消滅するものもない。 (2) 賃金請求権の消滅時効についてア賃金請求権については,消滅時効期間は2年であるところ,被控訴人のEに対する報酬は,遅くとも平成16年6月30日までに支払われるものであるから,平成18年6月30日の経過をもって,消滅時効が完成しているものであ いては,消滅時効期間は2年であるところ,被控訴人のEに対する報酬は,遅くとも平成16年6月30日までに支払われるものであるから,平成18年6月30日の経過をもって,消滅時効が完成しているものである。 そして,被控訴人が平成25年5月16日の弁論準備手続期日に消滅時効を援用したことは記録上,明らかである。 イ控訴人らは,賃金請求権についての消滅時効の起算日は,控訴人らが社会保険料を全額負担させられていたことを知った平成21年2月と解すべきであると主張するが,上記消滅時効は,Eの賃金請求権についてこれを行使する上で法律上の障害がなくなったときから進行すべきものであり,平成16年6月30日以降において,これを行使できないとする法律上の障害があったことは認められないから,控訴人らの上記主張は採用できない。 ウ控訴人らは,被控訴人による消滅時効の援用が権利濫用である旨主張するので,検討する。 上記2(6)ウで説示したとおり,Eが,2回目の支払として支払われる金額から控除を受けていた部分について,それが被控訴人の社会保険の事業主負担分をEが負担するために控除されていたことを認識していたと認めるに足りる証拠がないことからすると,Eは,本来支払われるべき報酬が,本来控除されるべきものでない社会保険料の事業主負担分が控除されていることによって未払となっていることを認識しえなかったといえる。 そして,被控訴人は,Eの承諾を得ずに密かに社会保険料の事業主負担分を労働者に負担させていたというほかないから,その行為は厚生年金保険法82条及び健康保険法161条に違反し,社会保険庁等に対して偽りの標準報酬月額を申告したことが厚生年金保険法27条にそれぞれ違反するものであることも考慮すると,被控訴人の消滅時効の主張は,権利濫用 82条及び健康保険法161条に違反し,社会保険庁等に対して偽りの標準報酬月額を申告したことが厚生年金保険法27条にそれぞれ違反するものであることも考慮すると,被控訴人の消滅時効の主張は,権利濫用に当たると認めるのが相当である(なお,Eについても,2回目の支払に対応する収入について確定申告をしていないという点は認められるが,上記2(5)のとおり,Eは,2回目の支払について自ら確定申告をする必要性を認識していなかった可能性があるのだから,この点をとらえて,権利濫用の評価障害事実とするのは相当でない。)。 7 まとめ以上によると,控訴人らの被控訴人に対する請求は,主位的請求については,不法行為に基づく損害賠償請求権として,控訴人Aについて1225万5965円,控訴人B,控訴人C,控訴人Dについて,それぞれ,19万7650円及びこれらに対する平成16年6月21日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,予備的請求については,賃金請求権として,控訴人Aについて443万3757円並びに別紙1の「控訴人A相続額」欄記載の昭和49年9月分以降の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商事法定利率の年6%の割合による金員及び上記443万3757円に対する同月21日から支払済みまで賃金の支払い確保等に関する法律6条1項所定の年14.6%の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,控訴人B,同C及び同Dについて,それぞれ,147万7919円並びに別紙1の「控訴人B外2名相続額」欄記載の昭和49年9月分以降の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商 同Dについて,それぞれ,147万7919円並びに別紙1の「控訴人B外2名相続額」欄記載の昭和49年9月分以降の各月の金額に対する「該当年月」欄記載の各月の翌月16日から平成16年6月20日まで商事法定利率の年6%の割合による金員及び上記147万7919円に対する同月21日から支払済みまで賃金の支払い確保等に関する法律6条1項所定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないことになる。 第5 結論以上によると,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当でないから,原判決を上記第4の7の趣旨に変更することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官長門栄吉裁判官眞鍋美穂子裁判官片山博仁(別紙1「未払賃金請求目録」,別紙2「故Eの給与総債権額一覧表」,別紙3「E氏老齢厚生年金関係資料」及び別紙4「A氏遺族厚生年金関係資料」は省略)
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