平成18(行ウ)7 不指定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年12月24日 福井地方裁判所 その他
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判決文本文15,480 文字)

主文 大野市長が,(1)平成18年6月16日付けで特定非営利法人aに対してなした小規模多機能型居宅介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者への指定対象にするとの各処分の取消請求に係る訴え,(2)平成18年12月14日付けで特定非営利法人aに対してなした小規模多機能型居宅介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者への各指定処分の取消請求に係る訴え,をいずれも却下する。 大野市長が平成18年6月16日付けで原告に対してなした小規模多機能型居宅介護事業者,認知症対応型共同生活介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者への各不指定処分をいずれも取り消す。 訴訟費用は,これを7分し,その4を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求 主文2項と同旨 大野市長が平成18年6月16日付けで特定非営利法人aに対してなした小規模多機能型居宅介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者への指定対象にするとの各処分をいずれも取り消す。 大野市長が平成18年12月14日付けで特定非営利法人aに対してなした小規模多機能型居宅介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者への各指定処分をいずれも取り消す。 第2事案の概要 本件は,原告が被告に対し,(1)原告の大野市長に対する,小規模多機能型居宅介護事業者,認知症対応型 共同生活介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者への指定申請につき,大野市長が平成18年6月16日付けでなした「指定の対象外」にするとの措置が不指定処分にあたると主張して,その取消しを求め,(2)特定非営利活動法人a(以下「NPOa」という。)の大野市長に対する,小規模多機能型居宅介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者 置が不指定処分にあたると主張して,その取消しを求め,(2)特定非営利活動法人a(以下「NPOa」という。)の大野市長に対する,小規模多機能型居宅介護事業者及び介護予防小規模多機能型居宅介護事業者への指定申請につき,ア大野市長が平成18年6月16日付けでなした「事業所の対象とする」との通知(以下「本件通知」という。)が,行政処分にあたると主張して,その取消しを求め,イ大野市長が平成18年12月14日付けでなした上記各事業者への指定処分(以下「本件各指定処分」という。)の取消しを求めた事案である。 前提事実(証拠によって認定した事実はその証拠を掲記する。)(1)当事者等原告は,社会福祉事業を行うことを目的として設立された社会福祉法人である。 NPOaは,介護保険事業を行い地域福祉の向上に寄与することを目的とする特定非営利活動法人である(甲2)。 (2)介護保険制度の概要ア地域密着型サービス・地域密着型介護予防サービス(ア)介護保険法においては,原則として当該市町村の住民のみが利用できる介護サービスであって,市町村が,介護サービスを行う事業者の指定・監督の権限を持つものとして,地域密着型サービス(対象:要介護者)及び地域密着型介護予防サービス(対象:要支援者)が設定されている。各サービスの事業者の指定は,申請に基づき,市町村長がサービスの種類と事業所ごとに行うものとされている(介護保険法〔以下,単に「法」という。〕78条の2第1項,115条の11第1項)。 (イ)地域密着型サービスの内容は次のとおりである。(法8条14項)①夜間対応型訪問介護(法8条15項)夜間の定期巡回や通報による訪問介護②認知症対応型通所介護(法8条16項)認知症高齢者の特性に配慮したデイサービス③小規模多機能型居宅介護(法8条1 )①夜間対応型訪問介護(法8条15項)夜間の定期巡回や通報による訪問介護②認知症対応型通所介護(法8条16項)認知症高齢者の特性に配慮したデイサービス③小規模多機能型居宅介護(法8条17項)サービス拠点でのデイサービス,短期間宿泊及び居宅への訪問介護④認知症対応型共同生活介護(法8条18項)認知症高齢者グループホームへの入居⑤地域密着型特定施設入居者生活介護(法8条19項)小規模の介護専用型特定施設への入居⑥地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(法8条20項)小規模の特別養護老人ホームへの入居(ウ)地域密着型介護予防サービスの内容は次のとおりである(法8条の2第14項)。 ①介護予防認知症対応型通所介護(法8条の2第15項)認知症高齢者の特性に配慮したデイサービス②介護予防小規模多機能型居宅介護(法8条の2第16項)サービス拠点でのデイサービス,短期間宿泊及び居宅への訪問介護③介護予防認知症対応型共同生活介護(法8条の2第17項)認知症高齢者グループホームへの入居(エ)指定地域密着型サービス事業者及び指定地域密着型介護予防サービス事業者の指定を受けるには,平成10年厚生労働省令第34号(以下「省令」という。)及び厚生労働省老健局計画課「指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について」(以下「サービスに関する基準」という。)の定める基準を満たす必要があ る(法78条の4第1項,2項,115条の13第1項,2項)。 イ介護保険事業計画(ア)介護保険法上,厚生労働大臣は,介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本指針を定めるものとされており(法116条1項),同項に基づき定められたのが「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的 介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本指針を定めるものとされており(法116条1項),同項に基づき定められたのが「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(平成11年厚生省告示第129号・平成18年厚生労働省告示第314号により変更。以下変更後のものを「基本指針」という。)である。 (イ)市町村は,基本指針に即して,3年を一期とする当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に関する計画(以下「市町村介護保険事業計画」という。)を定めるものとされている(法117条1項)。 具体的には,市町村は,当該市町村をいくつかの区域に分け(この区域を,以下「日常生活圏域」という。),当該区域における各年度の認知症対応型共同生活介護,地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護に係る必要利用定員総数その他の介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込み並びにその見込量の確保のための方策等を定めることとされている(法117条2項1号)。 ウ市町村長による不指定(ア)市町村長は,地域密着型サービスのうち認知症対応型共同生活介護,地域密着型特定施設入居者生活介護又は地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護につき法78条の2第1項の申請があった場合,当該市町村又は当該申請に係る事業所の所在地を含む日常生活圏域における当該地域密着型サービスの利用定員の総数が,市町村介護保険事業計画において定める当該市町村又は当該日常生活圏域の当該地域密着型サービスの必要利用定員総数に既に達しているか,又は当該申請に係る事業者の 指定によって当該地域密着型サービスの利用定員の総数を超えることとなると認めるとき,その他の当該市町村介護保険事業計画の達成に支障を生ずるおそれがある に達しているか,又は当該申請に係る事業者の 指定によって当該地域密着型サービスの利用定員の総数を超えることとなると認めるとき,その他の当該市町村介護保険事業計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは,事業者への指定をしないことができる(法78条の2第5項4号)。 市町村は,同号の定めにより,事業者の指定をしないこととするときは,あらかじめ,当該市町村が行う介護保険の被保険者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない(法78条の2第6項)。 (イ)これに対し,小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護については,介護保険法上,上記(ア)のような市町村介護保険事業計画の達成に支障を生じるおそれのあることを理由に指定をしないことができるとの定めはない(法78条の2,115条の2参照)。 (3)本件訴訟に至る経緯ア被告における市町村介護事業計画(乙2)平成18年度の大野市老人保健福祉計画(これは被告における市町村介護保険事業計画に当たる。)においては,日常生活圏域をα中学校区,β中学校区,γ中学校区及びδ中学校区の4区域に区分していた。 同計画においては,平成18年度における小規模多機能型居宅介護の目標量を要支援者につき4人・48回,要介護者につき21人・252回,認知症対応型共同生活介護の目標量を9人と定めていた。 さらに,γ中学区における地域密着型サービス事業者の指定目標量については,小規模多機能型居宅介護を行う事業所(定員25人規模)を1つと定めていたが,同学区における認知症対応型共同生活介護については必要利用定員総数等の定めはなかった。 イ原告及びNPOaの申請被告は,平成18年5月頃,γ中学校区内において小規模多機能型居宅 介護の事業所設置を希望する法人を募集した(甲6 活介護については必要利用定員総数等の定めはなかった。 イ原告及びNPOaの申請被告は,平成18年5月頃,γ中学校区内において小規模多機能型居宅 介護の事業所設置を希望する法人を募集した(甲6,7)。 NPOaは,平成18年5月15日,大野市長に対し,γ中学校区に事業所(登録定員:25人,事業所の名称:「小規模多機能型居宅介護事業所a」〔以下,事業所名については,単に「a」という。〕)を置き,小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護のサービスを行う事業者として指定するよう申請した(甲19,乙3)。 原告は,平成18年5月17日,大野市長に対し,γ中学校区に事業所(登録定員:25人,事業所の名称:「小規模多機能型居宅介護b」〔以下,事業所名については,単に「b」という。〕)を置き,小規模多機能型居宅介護,認知症対応型共同生活介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護のサービスを行う事業者として指定するよう申請した(甲8)。 ウ大野市長の対応大野市長は,平成18年度の大野市老人保健福祉計画に照らすと,NPOa及び原告の各申請をいずれも認めると同計画の定める指定目標量を超えることになると判断し,大野市介護保険運営協議会から意見を聴取したうえで,平成18年6月16日,(ア)原告に対しては,その申請について「選考の結果,指定の対象外となった」旨通知し(甲1),(イ)他方,NPOaに対しては,その申請について「指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービス事業所の対象とする」,「法第78条の4第1項及び第2項に基づく基準を満たすことが現地確認された時点で,第78条の2第1項及び第115条の11第1項の規定による指定を行う」旨の通知(以下「本件通知」という。)をした(甲9)。 なお,原告に対する上記通知につい 基準を満たすことが現地確認された時点で,第78条の2第1項及び第115条の11第1項の規定による指定を行う」旨の通知(以下「本件通知」という。)をした(甲9)。 なお,原告に対する上記通知については,原告の小規模多機能型居宅介護,認知症対応型共同生活介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の各 事業者としての指定申請に対して,これをいずれも認めない旨の大野市長による不指定処分(以下においては,小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の各事業者として指定しないとした処分を「本件不指定処分1」と,認知症対応型共同生活介護の事業者として指定しないとした処分を「本件不指定処分2」といい,これらを併せて「本件各不指定処分」という。)に当たるものと解される。 エ本件各指定処分大野市長は,平成18年12月14日,NPOaに対し,γ地域に事業所を置く小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の事業者として指定する処分(本件各指定処分)をした(乙3)。 オ原告の本訴提起等原告は,平成18年7月5日,本件各不指定処分及び本件通知の取消しを求めて本訴を提起し,平成19年10月24日の第7回弁論準備手続期日において,本件各指定処分の取消請求を追加した。 争点 (1)原告に対する本件各不指定処分についてア本件不指定処分1について認知症対応型共同生活介護の事業者への指定申請に対して,市町村長は,市町村介護保険事業計画の達成に支障を生じるおそれがあると認めるときは事業者への指定をしないことができるが(法78条の2第5項4号),このような規定のない小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の各事業者の指定申請について,同様に指定しない処分をすることができるか(法78条の2第5項4号類推適用の可否)。(争点 このような規定のない小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の各事業者の指定申請について,同様に指定しない処分をすることができるか(法78条の2第5項4号類推適用の可否)。(争点1)イ本件各不指定処分について(ア)原告の指定申請に対して,いずれも法78条の2第5項4号所定の要件(市町村介護保険事業計画の達成に支障を生じるおそれ)があると 認められるか。(争点2)(イ)法78条の2第5項4号により不指定処分をするためには,介護保険の被保険者その他の関係者の意見を反映させるための措置を講じる必要があるが(法78条の2第6項),この措置が講じられたと認められるか。(争点3)(2)NPOaに対する本件通知及び本件各指定処分についてア原告は本件通知(NPOaに対する本件通知は,その申請に対応する処分である本件各指定処分に先立つ時期に,今後所定の基準を満たすことが確認された時点で指定処分を行うことを連絡する内容のものである。)の取消しを求めるところ,本件通知はそもそも行政処分と認められるか。 (争点4)イNPOaに対する本件各指定処分について(ア)原告は本件各指定処分の取消しを求めるが,本件各指定処分はNPOaに対してなされたものであるから,そもそも原告においてその取消しを求めることができるのか(原告適格の有無)。(争点5)(イ)原告において本件各指定処分の取消請求をすることが許されるとして,本件各指定処分は法78条の4所定の要件を満たし適法であると認められるか。(争点6) 争点に関する当事者の主張(1)争点1:本件不指定処分1につき,法78条の2第5項4号の類推適用は認められるか。 (被告の主張)ア介護保険法上,市町村は,市町村介護保険事業計画に基づき日常生活圏域ごとに均衡のとれた介護サー 争点1:本件不指定処分1につき,法78条の2第5項4号の類推適用は認められるか。 (被告の主張)ア介護保険法上,市町村は,市町村介護保険事業計画に基づき日常生活圏域ごとに均衡のとれた介護サービスを提供する責務を負っている。したがって,市町村長は,同計画の定める目標量と乖離する結果を発生させるような事業者の指定をすべきではなく,法78条の2第5項4号はその趣旨 で設けられたものである。 小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護についても,この制度趣旨は同様に当てはまるから,これらの介護サービスにつき事業者の指定申請があった場合にも,市町村長は,同号を類推適用して指定しないことができる。 イまた,市町村介護保険事業計画は,介護保険財政の根幹に関わるものであって,介護保険法により市町村にその策定権限が授権されたものであるから,市町村介護保険事業計画により定められた保険給付の総量は法的拘束力を有するものといえる。 したがって,市町村において,その総量以上の給付を生ぜしめるような指定をすることは介護保険法上許されないから,市町村介護保険事業計画の定める保険給付の総量を超えるような事業者の指定の申請があった場合には,市町村は,当然に,法78条の2第5項4号を類推適用して事業者の指定をしないことができる。 ウ原告の主張するように,介護保険法所定の要件を満たす申請をすべて認めて事業者として指定すると,介護給付総量が上昇し,当初予定した介護保険料では給付をまかなうことができなくなり,介護保険財政を圧迫するといった弊害が生じることになる。 エしたがって,原告の小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の各事業者の指定の申請に対して,法78条の2第5項4号を類推適用して指定しないこととした大野市長の本件不指定処分 る。 エしたがって,原告の小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の各事業者の指定の申請に対して,法78条の2第5項4号を類推適用して指定しないこととした大野市長の本件不指定処分1は適法である。 (原告の主張)ア介護保険法は,地域密着型サービスの事業者の指定において,認知症対応型共同生活介護,地域密着型特定施設入居者生活介護及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護についてのみ指定をしないことができると 定める一方,小規模多機能型居宅介護についてはそのような定めを置いておらず,また,地域密着型介護予防サービスの事業者の指定の申請においては,そもそも指定しないことができるとの定めを置いていない。このことは,介護保険法が法78条の2第5項4号の類推適用を許容しない趣旨であることを明らかに示している。 イ被告は,市町村介護保険実施計画における目標量の定めは,法的拘束力を有すると主張するが,これはあくまで目標量であって上限を画するものではないから法的拘束力などない。かえって,地域密着型サービスや地域密着型介護予防サービスの事業者の指定に際しては,市町村において介護保険法所定の要件を満たすものはすべて事業者と指定し,あとは事業所間の自由競争に委ねるのが介護保険法の制度趣旨である。 ウしたがって,市町村長において法78条の2第5項4号を類推適用することはできず,本件不指定処分1は適法ではない。 (2)争点2:本件各不指定処分について,法78条の2第5項4号所定の要件(市町村介護保険事業計画の達成に支障を生じるおそれ)は充足していると認められるか。 (被告の主張)NPOa及び原告の各事業者への指定申請をいずれも認めると,大野市老人保健福祉計画の定める目標量を超えることになり,ひいては大野市老人福祉保険計画の達成に していると認められるか。 (被告の主張)NPOa及び原告の各事業者への指定申請をいずれも認めると,大野市老人保健福祉計画の定める目標量を超えることになり,ひいては大野市老人福祉保険計画の達成に支障が生じるのは明らかであるから,本件各不指定処分は法78条の2第5項4号の要件を満たし適法である。 (原告の主張)否認ないし争う。 (3)争点3:本件各不指定処分において,法78条の2第6項所定の措置は講じられたと認められるか。 (被告の主張) 本件各不指定処分に際しては,法78条の2第6項の必要な措置として,大野市介護保険運営協議会の意見が聴取されている。 原告の主張のうち,大野市介護保険運営協議会に被告市民福祉部社会福祉課課長補佐c(以下「c補佐」という。)が出席したことは認めるが,被告において不当な働きかけをしたとの主張は否認する。 (原告の主張)ア本件各不指定処分をするに際して大野市介護保険運営協議会が開催されているが,これは全く形式的になされたものであるから,必要な措置がとられたということはできない。 イ即ち,大野市介護保険運営協議会においては,その構成員らが予断を持つことなく,充分な意見交換をしたうえで意見がまとめられるべきであったにもかかわらず,以下のとおり,予断のもと充分な意見交換のないまま意見がまとめられた。 (ア)被告にはbを指定するつもりなどなく,専らaを指定する算段であったところ,被告職員dほか約6名は,大野市介護保険運営協議会開催に先立ち,同会委員の自宅に粗品を持参して赴き,aに有利な意見を述べるよう依頼した。 (イ)大野市介護保険運営協議会では,c補佐が,aを指定したいとの被告の意向を暗に示したり,aの申請状況の説明については充分行ったものの,bについては満足に行わなかったなど,aに有利な判断がなさ (イ)大野市介護保険運営協議会では,c補佐が,aを指定したいとの被告の意向を暗に示したり,aの申請状況の説明については充分行ったものの,bについては満足に行わなかったなど,aに有利な判断がなされるよう取りはからった。 ウしたがって,大野市介護保険運営協議会は,全く形式的に行われたものであって,本件各不指定処分に際しての必要な措置が講じられたとはいえないから,本件各不指定処分には手続的な違法がある。 (4)争点4:本件通知は行政処分と認められるか。 (原告の主張) 本件通知は,公権力の行使に当たり,行政処分といえるので,取消訴訟の対象となる。 (被告の主張)本件通知は,aを指定するか判断するための準備段階における被告の内部的行為であり,公権力の行使には当たらないから,取消訴訟の対象とならない。 (5)争点5:原告は,本件各指定処分の取消しを求めることができるか(原告適格の有無)。 (原告の主張)原告及びNPOaは,いずれも同時期に申請を行っており,競願関係にあるということができるので,原告は,本件各指定処分の取消しにつき原告適格がある。 (被告の主張)争う。 (6)争点6:本件各指定処分は,法78条の4所定の基準を満たしていると認められるか。 (被告の主張)本件各指定処分は,法78条の4所定の基準を満たしており,以下のとおり,原告の主張は理由がない。 ア従業員数サービスに関する基準63条によれば,夜間及び深夜の時間帯を通じて,夜勤1名,宿直1名の計2名が必要とされているから,原告の主張はその前提自体誤りである。そして,NPOaにおいては,宿直は1名置かれていたから従業員数に不足はない。 イ宿泊室数アコーディオンカーテンで仕切ることによっても,プライバシーは確保 できるから,居間を宿泊室として兼用することは POaにおいては,宿直は1名置かれていたから従業員数に不足はない。 イ宿泊室数アコーディオンカーテンで仕切ることによっても,プライバシーは確保 できるから,居間を宿泊室として兼用することはできる。aの宿泊室は宿泊定員分ある。 ウ立地条件aは,大野市中心部であるε駅から南に約2.5㎞の位置にあり,近隣には住宅街もあるから,地域住民との交流は確保されている。 エ居宅サービス事業者等との連携aは,γ中学校区内にある特別養護老人ホームである恩賜財団eと連携している。 (原告の主張)以下のとおり,法78条の4所定の基準を満たしてはいない。 ア従業員数サービスに関する基準63条によれば,宿直2名が必要であるが,NPOaは,宿直を1名しか置いておらず,従業員数が不足する。 イ宿泊室数省令67条2項2号イによれば,小規模多機能型居宅介護事業所においては,1つの宿泊室の定員は1名とされているところ,aの宿泊定員は9名であるが,宿泊室は7室しかなく2名分足りない。 省令67条2項2号ニによれば,プライバシーが確保された居間であれば,宿泊室と兼用することができるとされており,aにおいては居間を宿泊室と兼用すべく,居間をアコーディオンカーテンで仕切っているが,これではプライバシーを確保することはできない。したがって,居間を宿泊室として兼用することはできず,aは,宿泊室数が不足する。 ウ立地条件省令67条4項によれば,小規模多機能型居宅介護事業所は,住宅地又は住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあるようにしなければならない。しかし,aは,県道や国道から3 00m以上離れており,付近には店舗もないし住宅街から相当離れており,省令所定の立地条件を欠く。 エ居宅サービス事業者等との連携省令69条1項によ ばならない。しかし,aは,県道や国道から3 00m以上離れており,付近には店舗もないし住宅街から相当離れており,省令所定の立地条件を欠く。 エ居宅サービス事業者等との連携省令69条1項によれば,小規模多機能型居宅介護事業者は,居宅サービス事業者等との密接な連携に努めなければならないとされているが,NPOaはそのような連携に努めているとは認められない。 第3当裁判所の判断 争点1:本件不指定処分1につき,法78条の2第5項4号の類推適用は認められるか。 (1)前提事実(2)ウのとおり,介護保険法は,地域密着型サービスのうち認知症対応型共同生活介護,地域密着型特定施設入居者生活介護又は地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護につき,事業者への指定申請があった場合,市町村介護保険事業計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは事業者への指定をしないことができると規定するが(法78条の2第5項4号),地域密着型サービスのうち小規模多機能型居宅介護について,介護予防小規模多機能型居宅介護を含む介護予防地域密着型サービス一般について,その事業者への指定申請に関しては,上記のように市町村介護保険事業計画の達成という観点から事業者への指定を制限できる旨の規定は設けられていない(法78条の2第5項,115条の11第3項参照)。 (2)そして,介護保険法においては,その他にア介護専用型特定施設入居者生活介護(介護専用型特定施設に入居している要介護者について行われる特定施設入居者生活介護をいう。法70条3項)及び混合型特定施設入居者生活介護(介護専用型特定施設以外の特定施設に入居している要介護者について行われる特定施設入居者生活介護をいう。法70条4項)については,上記と同様に都道府県介護保険事業支援計画の達成という観点から事業者 (介護専用型特定施設以外の特定施設に入居している要介護者について行われる特定施設入居者生活介護をいう。法70条4項)については,上記と同様に都道府県介護保険事業支援計画の達成という観点から事業者の指定権者である都道府県知事に不指 定処分の権限が,イまた,介護老人保健施設(法94条5項)の開設については,上記と同様に都道府県介護保険事業支援計画の達成という観点から施設開設の許可権者である都道府県知事に不許可処分の権限が,ウ指定介護療養型医療施設(法107条4項)の指定については,上記と同様に都道府県介護保険事業支援計画の達成という観点から施設指定の指定権者である都道府県知事に不指定処分の権限が,付与されているに止まる。 (3)地域密着型サービス及び介護予防地域密着型サービスは,平成17年6月法律第77号による改正により新設されたものであるが,この改正前における介護保険法においては,指定居宅サービス事業者,指定居宅介護支援事業者,介護保険施設(指定介護老人福祉施設,介護老人保健施設,指定介護療養型医療施設)による介護サービスが予定されていたが,上記(1)及び(2)と同様に介護保険の事業計画の達成という観点から事業者・施設の指定権者あるいは開設許可権者に不指定・不許可の権限を付与していたのは,介護老人保険施設の開設及び指定介護療養型医療施設の指定に関するものに限られていた(改正前の介護保険法94条5項,107条4項)。 (4)以上のとおり,介護保険法は,市町村及び都道府県には介護保険の事業計画として,市町村介護保険事業計画・都道府県介護保険事業支援計画を定めることを求めながら(法117条,118条),その達成という観点から事業者・施設の指定権者あるいは開設許可権者に不指定・不許可の権限を付与しているのは,いわゆる施設におけ 介護保険事業支援計画を定めることを求めながら(法117条,118条),その達成という観点から事業者・施設の指定権者あるいは開設許可権者に不指定・不許可の権限を付与しているのは,いわゆる施設における介護サービスに関するものに限られている。 (5)介護保険法においては,各サービスを提供する事業者や施設については,そのサービスの質の確保と適切な運営の観点から,事業者や施設の指定あるいは開設許可を受けるための基準が様々設けられている(例えば,法78条 の2第4項,第5項1号ないし3号,78条の4及び5等参照。)。本来であれば,そのような基準を満たしたものについては,全て事業者として指定するなどして後は自由競争に委ねるという考え方もありうるところである。 他方,介護保険の事業計画の達成に重きを置くのであれば,全ての事業者や施設の指定あるいは開設許可について,この計画達成の観点から不指定・不許可の権限を市町村長あるいは都道府県知事に付与することも考えられるところである。 (6)このようななかでいわゆる施設における介護サービスを提供する事業者の指定等にのみ介護保険の事業計画達成の観点から不指定・不許可の権限を付与したのは,次のような理由によるものと理解されるところである。 すなわち,介護保険についても保険制度として成り立つためには,保険料と保険給付のバランスが保たれる必要があるところ,ア施設における介護サービスは,サービス提供に要する費用が高額であるため,地域の実情を離れて介護施設の増加を認め,後は自由競争に委ねることにすると,実際には介護施設の不足している地域から施設所在地域への要介護者の転入を招き,その結果,保険給付の増加,保険料の上昇という当初の事業計画では想定していなかった事態に至るおそれがあるのに対し,イ居宅における介護サ 不足している地域から施設所在地域への要介護者の転入を招き,その結果,保険給付の増加,保険料の上昇という当初の事業計画では想定していなかった事態に至るおそれがあるのに対し,イ居宅における介護サービスについては,サービス提供に要する費用が比較的低額であるうえ,わざわざサービスを受けるために転居等をするといった事態も想定し難く,介護サービス等の提供事業者の自由競争に委ねても介護保険の事業計画の達成という観点からは問題が少ないと判断されたことによると解されるところである。 (7)上記のとおり,介護保険法は,施設における介護サービスを提供する事業者等に限って,介護保険の事業計画達成の観点から不指定・不許可の権限を付与したものと解されるところ,小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規 模居宅介護の各事業者の指定の申請について,市町村長において不指定処分をするということを法は予定していないし,上記(6)の理解からすれば,これを類推適用すべき理由も見出せない。 したがって,小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の各事業者の指定の申請に対し,法78条の2第5項4号を類推適用して,市町村長において指定しないこととすることはできず,本件不指定処分1は,介護保険法の解釈適用を誤った違法があるから,取り消されるべきである。 (8)被告の主張についてア被告は,市町村介護保険事業計画の定める目標量との乖離を避けるために法78条の2第5項4号は規定されたと主張するが,上記で認定判断のとおり,介護保険法は,施設における介護サービスを提供する事業者等に限って,市町村介護保険事業計画の達成の観点から不指定の権限を付与したものと解されるのであるから,被告の上記主張は採用できない。 イ被告は,市町村介護保険事業計画により定められた保険給付の総量 等に限って,市町村介護保険事業計画の達成の観点から不指定の権限を付与したものと解されるのであるから,被告の上記主張は採用できない。 イ被告は,市町村介護保険事業計画により定められた保険給付の総量は法的拘束力を有することを前提にるる主張する。 しかしながら,被告の解釈を前提にするならば,当該指定をすれば市町村介護保険事業計画の総量以上の給付を生ぜしめるような申請があった場合,市町村長としては,市町村介護保険事業計画の定めに法的に拘束されて常に指定が許されないことになるはずであるが,法文上は「指定しないことができる」と規定されているうえ,上記で認定判断のとおり,その計画達成のためにどのような制度とするかについて,介護保険法は,施設における介護サービスを提供する事業者等の指定等に限って,市町村長に不指定等の権限を与えたものと解されるのであるから,被告の上記主張は採用できない。 争点2:本件各不指定処分について,法78条の2第5項4号所定の要件(市町村介護保険事業計画の達成に支障を生じるおそれ)は充足していると認 められるか。 (1)上記1で認定判断のとおり,本件不指定処分1については,取り消されるべきものと認められるので,以下においては,本件不指定処分2について,法78条の2第5項4号所定の要件が充足されているかについて,検討する。 (2)前提事実によれば,平成18年度の大野市老人保健福祉計画上,大野市における認知症対応型共同生活介護(法8条18項:要介護者であって認知症であるものについて,その共同生活を営むべき住居において,入浴,排せつ,食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことをいう。)の目標量は9人とされていた。 (3)他方,原告の認知症対応型共同生活介護の事業者の指定の申請にあっては,登録定員は25人 つ,食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことをいう。)の目標量は9人とされていた。 (3)他方,原告の認知症対応型共同生活介護の事業者の指定の申請にあっては,登録定員は25人であるものの,宿泊サービスの利用定員は9人とされており(甲8),この申請自体から大野市老人保健福祉計画の定める認知症対応型共同生活介護の目標量を超えるとは認め難く,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (4)したがって,本件不指定処分2は,処分の要件である介護保険法78条の2第5項4号所定の要件を満たすとは認められず,他にこの要件の充足を認めるに足りる証拠はないのであるから,その余の点を判断するまでもなく,本件不指定処分2については取り消されるべきである。 争点4:本件通知は行政処分と認められるか。 (1)本件通知が行政処分であると認められるには,それが個人の権利ないし法律上の地位に直接の影響を及ぼす法律効果を有するもの,すなわち「公権力の行使」に当たるものであると認められなければならない(行政事件訴訟法3条)。 (2)しかしながら,本件通知は,法78条の2,115条の11による事業者の指定に先立って大野市長がNPOaに対して事実上行ったものであり,本件通知によってNPOaの権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼす法律 効果が生じるものと認めることはできないから,「公権力の行使」には当たらず,行政処分と認めることはできない。 (3)したがって,本件通知の取消しに係る原告の訴えは不適法である。 争点5:原告は,本件各指定処分の取消しを求めることができるか(原告適格の有無)。 (1)原告は,本件各指定処分の取消しを求めるが,本件各指定処分はNPOaに対してなされたものであるから,原則として,原告には本件各指定処分の取消につき原告 ることができるか(原告適格の有無)。 (1)原告は,本件各指定処分の取消しを求めるが,本件各指定処分はNPOaに対してなされたものであるから,原則として,原告には本件各指定処分の取消につき原告適格を有するとは認められない。 (2)ただ,原告とNPOaは,小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の事業者の指定申請をする点において競願関係にある。このような場合,片方の指定処分が取り消されることで,他方の申請が認められて指定処分を受けることができる,というような各処分に表裏一体の関係が認められる場合に限っては,自己と競願関係にある者に対する行政処分の取消しにつき原告適格が認められるものと解するのが相当である。 (3)上記1で認定判断のとおり,本件において,大野市長は,小規模多機能型居宅介護及び介護予防小規模多機能型居宅介護の事業者の申請に対しては,法78条の2第5項4号を類推適用して不指定処分をすることは許されないのだから,原告及びNPOaの上記各申請が法78条の4所定の要件を満たすのであれば,いずれも事業者として指定しなければならず,上記(2)のような表裏一体の関係は認められないことになる。 (4)したがって,原告にはNPOaに対する本件各指定処分の取消しを求める訴えにつき原告適格を認めることはできず,本件各指定処分の取消しに係る原告の訴えはいずれも不適法である。 結論 以上のとおり,原告の本件通知及び本件各指定処分の取消しに係る訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下し,本件各不指定処分の取消請求はいず れも理由があるからこれらを認容することとし,主文のとおり判決する。 福井地方裁判所民事第2部裁判長裁判官坪井宣幸裁判官池上尚子裁判官中嶋万紀子 があるからこれらを認容することとし,主文のとおり判決する。 福井地方裁判所民事第2部裁判長裁判官坪井宣幸裁判官池上尚子裁判官中嶋万紀子

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