- 1 -主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 令和6年10月27日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の宮崎県第1区から第3区及び鹿児島県第1区から第4区における各選挙をいずれも無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」 という。)において、宮崎県第1区から第3区及び鹿児島県第1区から第4区の選挙人である原告らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定(同法13条1項、別表第1の定める選挙区割り)は、①衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下、後記の改正の前後を通じて「区画審設置法」ともいう。)3条1項及び4条2 項に違反する、②これまで積み重ねられた最高裁判所大法廷判決の判断基準に照らし違憲状態であり、かつ較差是正のための合理的期間を徒過しているので憲法違反である、③憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項が要請する「できる限りの人口比例選挙」に違反し無効であるから、これに基づき行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起し た選挙無効訴訟である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告ら本件選挙における小選挙区選挙の選挙区のうち、原告Aは宮崎県第1区の、 原告Bは同第2区の、原告Cは同第3区の、原告Dは鹿児島県第1区の、原 - 2 -告Eは同第2区の、原告Fは同第3区の、原告Gは同第4区の各選挙人である。 (2) 本件選挙ア令和6年 同第2区の、原告Cは同第3区の、原告Dは鹿児島県第1区の、原 - 2 -告Eは同第2区の、原告Fは同第3区の、原告Gは同第4区の各選挙人である。 (2) 本件選挙ア令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日に本件選挙が行われた。本件選挙当時の衆議院議員の選挙制度では、議員定数は465人で、 そのうち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員であり(公職選挙法4条1項)、小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、同法の改正前後を問わずこれらの規定を併せて「区割規定」と、本件選挙当時の区割規定を「本件区割規定」と、本件 区割規定に基づく選挙区割りを「本件選挙区割り」ともそれぞれいう。)、比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については、全国に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされており(同法13条2項、別表第2)、総選挙においては、小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い、投票は小選挙区選挙及び比例代 表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条、36条)。 イ本件選挙当日における選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の較差は、最小の鳥取県第1区(22万3713人)を1とすると、北海道第3区(46万0689人)が最大の2.059(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)であり、宮崎県第1区(34万9621人)は1.5 63、同第2区(26万1788人)は1.170、同第3区(26万6041人)は1.189、鹿児島県第1区(35万3174人)は1.579、同第2区(32万6604人)は1.460、同第3区(30万9147人)は1.3 1788人)は1.170、同第3区(26万6041人)は1.189、鹿児島県第1区(35万3174人)は1.579、同第2区(32万6604人)は1.460、同第3区(30万9147人)は1.382、同第4区(31万4233人)は1.405であった。選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となってい る選挙区は10選挙区であった。(乙3) - 3 -(3) 本件訴訟の提起原告らは、令和6年10月28日に本件訴訟を提起した。 (4) 衆議院議員の選挙制度の変遷等ア昭和25年に制定された公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、中選挙区単記投票制を採用していたが、平成6年に公職選挙法の一部を改 正する法律(平成6年法律第2号。その後、平成6年法律第10号、同第104号により一部改正。)により、従来の中選挙区単記投票制に代わって小選挙区比例代表並立制が採用された。 平成6年の公職選挙法の一部を改正する法律と同時に成立した区画審設置法によれば、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。) は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされている(同法2条)。 平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法(以下「旧区画審設置法」という。)3条は、1項 において、上記の改定案を作成するにあたっては、各選挙区の人口(国勢調査の総人口から外国人人口を除いた人口。以下、単に「人口」という。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総 た人口。以下、単に「人口」という。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならな いものと定めるとともに、2項において、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」という。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以下、このときの区割基準を「旧 区割基準」という。)。 - 4 -イ平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)の小選挙区選挙は、平成24年改正法による改正前の区割規定(以下「旧区割規定」という。)の定める選挙区割りの下で行われたものであり、選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となって いる選挙区は45選挙区であった(乙4の1)。 平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、旧区画審設置法3条1項の定めは、投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、同 選挙時において、選挙区間の投票価値の較差が拡大していたのは、各都道府県にあらかじめ1の選挙区数を割り当てる同条2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたことが明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式 にあらかじめ1の選挙区数を割り当てる同条2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたことが明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割 基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧区割規定の定める選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったと判示した。そして、平成23年大法廷判決は、この状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準を定めた規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違 反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必要とされる較差是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 ウ平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、衆議院小選 - 5 -挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための緊急是正措置法として、旧区画審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の選挙区数を1ずつ減ずる措置をいう。)を内容とする平成24年改正法が成立したが、成立した日に衆議院が解散されたため、同年12 月16日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。)は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月2 下「平成24年選挙」という。)は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は、同選挙時において旧区 割規定の定める選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては今後も平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条(旧区画審設 置法3条1項と同内容の規定)の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 エ平成24年改正法の附則の規定に基づく区画審の勧告を受けて、平成25年6月24日、0増5減の措置を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改定することを 内容とする同年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)が成立した。平成25年改正法による改正後の平成24年改正法によって区割規定が改正され、平成22年に行われた大規模国勢調査の結果によれば、選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされたが、同26年12月14日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」とい う。)の当日においては、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.12 - 6 -9であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった(乙4の3)。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ) 差は1対2.12 - 6 -9であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった(乙4の3)。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、0増5減の措置における定数削減の対象とされた 県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあり、このような投票価値の較差が生じた ことは、全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、平成27年 大法廷判決は、同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙まで の国会における是正の実現に向けた取組は、立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 の国会における是正の実現に向けた取組は、立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 オ平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないよう にするための制度の見直し等について検討が続けられ、平成26年9月以 - 7 -降、有識者により構成される衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」において調査、検討等が行われた。 上記調査会は、平成28年1月14日、衆議院議長に対し、答申を提出した。同答申は、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき 4削減して176人)とする案が考えられるとした上、投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選挙区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さ いこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを挙げ、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分をいわゆるアダムズ方式(各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式)により行うものとした。そして、 同答申は、各都道府県への議席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づ 定数と一致するようにする方式)により行うものとした。そして、 同答申は、各都道府県への議席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、区画審において、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選 挙区の区画の見直しを行うものとした。(乙5の1・2、同6、10の1ないし17、同13)カ選挙制度調査会の前記答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とす るとともに、各都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用す - 8 -ること等を内容とする同年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)が成立した(乙6、11の1、同14の1ないし8)。 平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、①1項において、平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果 による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、統計法5条2項ただし書の規定により大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果による各選挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2 以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを 果による各選挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2 以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定する。また、新区画審設置法3条は、区割基準について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行 政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、同法4条1項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるも のとする。)の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、③3項において、同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更し ないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区 - 9 -の改定の仕組みを「新区割制度」という。)。さらに、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、新区画審設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下 「平成27年国勢調査」 して、附則2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、新区画審設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下 「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上記改定案の作成について、新区画審設置法3条の規定にかかわらず、各都道府県の選挙区数につき、選挙区数の変更の影響を受ける都道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置 (平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置をいう。)を講じた上で、平成27年国勢調査の結果に基づく 選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とするとともに、各選挙区の平成27年国勢調査の結果による人口及び平成32年(令和2年)の見込人口の均衡を図り、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理 的に行うこととした。(乙15の1ないし4)区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、0増6減の措置を講ずることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。これを受けて、平成29年6月9日、同年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成 立し、同法による改正後の平成28年改正法によって区割規 めることを内容とする改定案の勧告を行った。これを受けて、平成29年6月9日、同年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成 立し、同法による改正後の平成28年改正法によって区割規定が改正され - 10 -た(以下、同改正後(後記の令和4年法律第89号による改正前)の区割規定を「平成29年区割規定」といい、平成29年区割規定の定める選挙区割りを「平成29年選挙区割り」という。)。(乙16の1・2、同17、19の1ないし4)キ平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、平成2 9年選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。 (乙4の4)最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は、平成28年改正法及び平成29年改正法による改正に基づく平成29年選挙当時の平成29年選挙区割りについて、各都道府県への定数配分を人口 に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ、その状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置として0増6減の措置を採るとともに選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票 価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保す て0増6減の措置を採るとともに選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票 価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした。そして、平成30年大法廷判決は、平成29年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況を考慮すると、平成29年選挙において、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更がなくこ れとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されるこ - 11 -ととなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって平成29年選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使とし て合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとし、平成29年選挙当時において平成29年選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあ ったということはできないと判示した。 ク令和3年10月14日に衆議院が解散され、同月31日、平成29年選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙区割りの下では、令和2年大規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となっており、令和 3年選挙 議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙区割りの下では、令和2年大規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となっており、令和 3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対2.079であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は29選挙区であった(乙4の5)。 最高裁令和4年(行ツ)第130号同5年1月25日大法廷判決・民集 77巻1号1頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)は、令和3年選挙は、平成29年選挙と同じく平成29年選挙区割りの下で行われたものであるところ、その後、更なる較差是正の措置は講じられず、令和3年選挙当時には、選挙区間の較差は平成29年選挙当時よりも拡大し、選挙人数の最大較差が1対2.079になるなどしていたが、新区割制度は、選 挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が - 12 -拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、新区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができ、このような制 度に合理性が認められることは平成30年大法廷判決が判示するとおりであり、上記のような平成29年選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいもので 成29年選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要 求に反する状態に至ったものということはできない、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいものとはいえないから、上記の較差の拡大をもって、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に あったということはできないと判示した。 ケ区画審は、令和3年6月25日に令和2年実施の大規模国勢調査の結果が官報で公示されたことを受け、令和3年7月2日以降、区割り改定案に係る審議を開始し、令和4年2月21日に区画改定案の作成方針を取りまとめた。この作成方針には、各都道府県知事から分割市区町の解消を望む 意見が多数寄せられたことなどを踏まえ、市(指定都市では行政区)区町村の区域は、当該選挙区の人口が、基準選挙区の人口の2倍以上である場合など一定の基準に当てはまらない限り分割せず、令和3年選挙における当日有権者数において較差2倍以上となっている選挙区が生じていた状況をも考慮するなどといった内容も含まれていた。区画審は、かかる作成方 針を踏まえ、令和4年6月16日、内閣総理大臣に対し、アダムズ方式を - 13 -適用して10増10減の措置を講ずることを前提に、25都道府県の140選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。 これを受けて、同年11月18日、同年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)が 置を講ずることを前提に、25都道府県の140選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。 これを受けて、同年11月18日、同年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)が成立し、同法による改正後の平成29年改正法によって区割規定が改正され(本件区割規定)、これに基づき、本件選挙区割り が定められた。 令和4年改正法により、令和2年実施の大規模国勢調査による日本国民の人口を基準とすれば、本件区割規定の下、各都道府県間の議員1人当たりの人口の最大較差は1.697倍となり、また、選挙区間の最大較差(人口)は、令和4年改正による区割りの改定の前後で、鳥取県第2区と 東京都22区との2.096倍から、鳥取県第2区と福岡県第2区との1. 999倍に縮小されたほか、較差(人口)が2倍以上の選挙区が23区から0区に縮小された。さらに、平成29年選挙区割りでは、分割市区町が105あったところ、令和4年改正により、32市区に減少した。(乙2、26の1・2、同27の1から5、同29の1・2、同30の1から4) コ令和6年10月9日、衆議院が解散され、同月27日、本件選挙区割りの下、本件選挙が実施された。 3 原告らの主張(1) 平成28年改正の結果、区画審は、新区画審設置法3条1項、4条2項に基づき、①令和2年国勢調査の結果による人口における各選挙区間の最大較 差が2倍未満となるよう、かつ、②令和2年国勢調査以降令和7年の国勢調査までの5年間、令和7年の見込人口における各選挙区間の最大人口較差が2倍未満になるように、改正案を作成し勧告する義務を負う(平成28年改正法附則2条3項1号ロ参照)。 ところが、区画審は、令和4年6月16日、同年1月時点の住民基本台帳 上の人口において、最大人口小選 なるように、改正案を作成し勧告する義務を負う(平成28年改正法附則2条3項1号ロ参照)。 ところが、区画審は、令和4年6月16日、同年1月時点の住民基本台帳 上の人口において、最大人口小選挙区(福岡5区 551,838人)、最 - 14 -少人口小選挙区(鳥取1区、271,371人)の最大人口較差が、2倍以上(2.034倍)であることを認識した上で、又は上記人口較差があることを認識することを怠って、平成29年4月19日に作成し、内閣総理大臣に勧告した改定案(平成27年の日本国民の人口における各選挙区間の最大人口較差は1.956倍で、平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人 数の最大較差は、1対1.979であったもの)よりも劣後する改定案(令和2年の日本国民の人口における各選挙区間の最大人口較差は2倍ぎりぎりの1.999倍で、令和6年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.06になったもの)を作成し、内閣総理大臣に勧告し、同改定案に従った内容の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りが定められ、 本件選挙区割りの下、本件選挙が実施された。 令和2年国勢調査以降、令和7年簡易国勢調査までの5年間を通じて、46道府県の全てで一貫して人口が減少する状況であり、本件選挙時点において、各選挙区間の最大較差が2.06倍となったことからすると、区画審が令和4年6月16日に作成し、勧告した改定案は、当初の期間を除いて、各 選挙区間の最大人口較差が一貫して2倍以上になると統計上予想されるものであり、「各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすること」との規範に違反するから、新区画審設置法3条1項、4条2項に違反する瑕疵を帯びるものであり、同改定案の勧告 口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすること」との規範に違反するから、新区画審設置法3条1項、4条2項に違反する瑕疵を帯びるものであり、同改定案の勧告を受けて改正された本件区割規定及び本件選挙区割りは同様に 違法の瑕疵を帯びるから、本件選挙区割りの下で実施された本件選挙も違法の瑕疵を帯びることになる。 (2) 平成23年大法廷判決以降、令和5年大法廷判決までの累次の大法廷判決で示された判断基準に照らし、本件選挙は各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上であるので違憲状態であり、かつ較差是正のための合理的期間を徒 過しているから違憲である。 - 15 -令和5年大法廷判決は、平成30年大法廷判決につき、平成29年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況(1対1.979)を考慮すると、平成29年選挙において、一人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更がなく、アダムズ方式により各道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在してい ることをもって選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるとして、当該選挙は違法状態ではなく、令和3年選挙につき、新区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是 正されることが予定されているとして令和3年選挙を違憲状態でないと判示した。また、平成30年大法廷判決は、平成29年選挙当時、各選挙区間の最大選挙人数較差が1.98倍であったこと及び平成29年4月19日の改定案による勧告が令和2年に実施される国 違憲状態でないと判示した。また、平成30年大法廷判決は、平成29年選挙当時、各選挙区間の最大選挙人数較差が1.98倍であったこと及び平成29年4月19日の改定案による勧告が令和2年に実施される国勢調査の各選挙区の見込み人口を考慮した上、最大人口較差が1.956倍であったことを前提とするもので ある。 一方、区画審による令和4年6月16日の改定案の勧告は、令和2年国勢調査の日本国民の人口のみを適用したもので、平成27年国勢調査の日本国民人口と令和2年の見込人口の双方を適用した平成29年4月19日の改定案の勧告より基準が緩くなっており、そのため、本件選挙区割りでは、令和 2年国勢調査の結果による人口における選挙区間の最大人口較差が1.999倍と2倍にならないぎりぎりの値になっていたもので、令和2年国勢調査以降令和7年簡易国勢調査までの5年間を通じて(ただし、日本はその間、一貫して人口減少すると予測される。)、当初の期間を除いて、各選挙区間の最大人口較差は、一貫して2倍以上になると統計上予想され、現に本件選挙 区割り又は本件選挙は、各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上(2.0 - 16 -6倍)になっていた。平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決の判断基準に照らすと、本件選挙は、新区画審設置法3条1項、4条2項の趣旨に沿った選挙制度に基づく選挙といえず、違憲状態にある。 また、平成30年大法廷判決は、国勢調査人口の各選挙区間の最大人口較差が2倍未満(1.956倍)であり、かつ、選挙日の各選挙区間の最大有 権者数較差が2倍未満(1.979倍)であった平成29年選挙について違憲状態は解消された旨の判断をしたが、平成27年大法廷判決、平成25年大法廷判決は、いずれも国勢調査人口の各選挙区間の最大人口較差は2 数較差が2倍未満(1.979倍)であった平成29年選挙について違憲状態は解消された旨の判断をしたが、平成27年大法廷判決、平成25年大法廷判決は、いずれも国勢調査人口の各選挙区間の最大人口較差は2倍未満(いずれも1.998倍)であったが、選挙日の各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上(それぞれ2.129倍、2.425倍)であったため、 違憲状態と判断したものであり、区画審及び国会は、そのことを容易に知り得た。それにもかかわらず、区画審は、平成30年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成25年大法廷判決の各判示内容を認識することを怠り、又は認識してもこれを無視して、令和2年国勢調査人口における各選挙区間の最大人口較差を2倍ぎりぎりの1.999倍に設定して、本件区割規定の改 定案を作成、勧告し、国会がそれに基づいて本件区割規定を立法化したため、国勢調査から数か月以降令和7年国勢調査時までの間、46道府県の一貫しての人口減少のために、本件区割規定において、各選挙区画の最大人口較差が常に2倍以上になると統計上合理的に推察される中、現に本件選挙日では各選挙区画の最大人口較差は2倍以上となった。 そうすると、本件選挙までに較差是正の実現という将来的な立法対応がされるという令和5年大法廷判決の前提が崩れ、較差拡大が放置されたまま選挙を迎える事態となった場合に該当するので、国会は、較差是正のために自ら定めた期間(本件選挙日までの期間)、必要な努力を怠っており、合理的期間を徒過したともいえるから、本件選挙は違憲である。 (3) 憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項は、できる限りの人口比 - 17 -例選挙を要求しており、人口比例となっていない選挙で選ばれた議員で構成された国会で、出席議員の過半数の賛成を得て 憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項は、できる限りの人口比 - 17 -例選挙を要求しており、人口比例となっていない選挙で選ばれた議員で構成された国会で、出席議員の過半数の賛成を得て主権を行使している現状は、国民主権とはいえず、憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項に違反する。 そもそも、小選挙区選出衆議院議員自らが選挙の当落に関係する場合、当 該議員は投票価値較差を伴う区割規定の内容について直接利害関係を有する者であるから、当該利害関係を有する国会議員を含む国会は、投票価値の平等からの乖離の程度について合理的な立法裁量権を有することはあり得ない。 また、憲法前文第1段第2文は「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者によって これを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」と、信託法8条は「受託者は(略)信託の利益を享受することができない。」と定めており、受託者(国会における代表者)は、信託の利益(国政の利益、すなわち選挙区割規定の立法の利益)を享受することができないから、令和5年大法廷判決の「選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会 に与えられた裁量権の行使として合理性を有するか否かによって判断される」との判示は、上記憲法前文の信託の定め及び信託法8条の規定に矛盾し、違反する。 (4) 本件選挙が違憲無効判決によって違憲無効とされても、289区の小選挙区の各選挙が違憲無効となるだけで、比例代表議員が存在するため、社会的 混乱は生じない。憲法54条に基づき、衆議院が解散され衆議院議員が任期途中で身分を喪失することは憲法の予期するところであるし、違憲無効判決の言い渡し時に、内閣総理大臣がその地位を喪失し、内 混乱は生じない。憲法54条に基づき、衆議院が解散され衆議院議員が任期途中で身分を喪失することは憲法の予期するところであるし、違憲無効判決の言い渡し時に、内閣総理大臣がその地位を喪失し、内閣が総辞職しても、新たに内閣総理大臣が任命されるまで、引き続きその職務を行うので(憲法71条)社会的混乱や不都合は生じない。 4 被告らの主張 - 18 -(1) 新区画審設置法3条1項は、均衡を図るべき各選挙区の人口を、直前の大規模国勢調査の結果による日本国民の人口であると明記する一方、その後の人口動態の変動そのものについては何ら規定しておらず、また、同法4条2項は、同条1項にいう大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に実施された簡易国勢調査の結果を踏まえて審議会が行うべき勧告について規 定したもので、同項の大規模国勢調査から同条2項の将来の簡易国勢調査までの期間の人口動態について何ら規定していないから、原告ら主張にかかる各規定は、いずれも、大規模国勢調査から簡易国勢調査の人口動態について考慮しなければならないことを規定したものではない。 原告らが指摘する平成28年改正法附則2条3項1号ロは、同項柱書が 「(前略)平成27年の国勢調査の結果に基づく改定案の作成は、区画審設置法3条の規定にかかわらず、次に掲げる基準によって行わなければならない。」と規定するとおり、新区割制度による選挙区割りの改定案の作成が平成32年(令和2年)の大規模国勢調査の結果に基づくものとされ、平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成が、選挙区間 の較差拡大の要因とされた1人別枠方式が完全に解消されることとなる新区割制度導入前の緊急是正措置として行われることも考慮して、選挙区間の較差について づく選挙区割りの改定案の作成が、選挙区間 の較差拡大の要因とされた1人別枠方式が完全に解消されることとなる新区割制度導入前の緊急是正措置として行われることも考慮して、選挙区間の較差について特に考慮し、これを補完する趣旨で規定されたものであるから、原告らの主張の根拠となるものではない。 (2) 憲法は投票価値の平等を要請していると解されるが、他方で、両議院の議 員の選挙について、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は、法律で定めるものと規定し(憲法43条2項、47条)、国民の利害や意見を公正かつ効率的に国政に反映させるためにどのような選挙制度を採用するかの決定を国会の広範な裁量に委ねているのであり、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国 会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連におい - 19 -て調和的に実現されるべきものであり、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するものではない。国会は、選挙制度の是正の方法についても幅広い裁量権を有していることからすれば、国会が投票価値の較差の背後にある選挙制度の仕組 みや、当該較差を生じさせる要因、当該選挙制度の是正に伴う問題点及びその解決策等の諸要素を踏まえて区割規定を含む具体的な選挙制度を決定したところが、憲法の投票価値の平等の要求に反するため、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に初めて憲法に違反するものと解すべきである。 新区割制度において、アダムズ方式が採用されていること、区画審による 量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に初めて憲法に違反するものと解すべきである。 新区割制度において、アダムズ方式が採用されていること、区画審による選挙区割りの改定案の作成が10年又は5年の間隔で行われるものとされていること、選挙区割りの改定に当たって、選挙区間の最大較差(人口)を2倍未満となるようにするものとされていることにはいずれも十分な合理性があり、新区割制度は、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ない し理由との関連において、投票価値の平等の要請を調和的に実現するとともに、これを安定的に継続することのできるものであって合理的なものである。 また、新区割制度の整備は、違憲状態を指摘してきた平成23年から平成27年までの各大法廷判決が国会に求めてきた立法的措置の内容に適合するものであり、新区割制度の合理性は平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷 判決も肯定している。そして、令和3年選挙時から本件選挙時に至るまで新区割制度に変更はなく、令和4年改正時における選挙区間の人口較差が本件選挙時に拡大していることについては、人口異動のほかには要因が見当たらないこと、本件選挙当日における選挙区間の最大較差(選挙人)は、鳥取県第1区と北海道第3区との間の1対2.059であり、鳥取県第1区と比べ て較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区にとどまり、令和5年大 - 20 -法廷判決において投票価値の較差の拡大が著しいものとはいえないと判示された令和3年選挙当日の選挙区間の最大較差(選挙人)である1対2.079、較差が2倍以上となっている選挙区数29という数値をいずれも下回るものであって、較差の拡大の程度が新区割制度の合理性を失わせるほど著しいものとはいえない。選挙 大較差(選挙人)である1対2.079、較差が2倍以上となっている選挙区数29という数値をいずれも下回るものであって、較差の拡大の程度が新区割制度の合理性を失わせるほど著しいものとはいえない。選挙区割りの改定後の人口異動によって選挙区間の最 大較差が2倍以上となることは新区割制度においても想定されていることであり、上記較差は令和7年に実施される予定の簡易国勢調査の結果を踏まえて2倍未満となるように是正されるとされていることからすれば、本件区割規定及び本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえず、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えて おり、これを是認することができない状態にあったとはいえない。 また、仮に本件区割規定の定める本件選挙区割りが違憲状態にあったとしても、本件選挙は、令和5年大法廷判決後に初めて行われた衆議院議員総選挙であり、前回の衆議院議員総選挙である令和3年選挙後には、令和5年大法廷判決において合理性が認められた新区割制度に基づき作成された区割改 定案に沿って令和4年改正が行われているのであるから、国会において、本件区割規定の定める本件選挙区割りが違憲状態にあったことを認識すべき契機は一切存在せず、その状態を認識し得ない状況であったことは明らかであるから、本件選挙区割りについて憲法上合理的期間内における是正がされなかったとはいえない。 (3) 上記(2)のとおり、新区割制度は、投票価値の平等の要請を、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現させるとともに、これを安定的に継続させることのできるものであるから、合理的なものであるということができ、このように合理性が認められる新区割制度により改定された選挙区 由との関連において調和的に実現させるとともに、これを安定的に継続させることのできるものであるから、合理的なものであるということができ、このように合理性が認められる新区割制度により改定された選挙区割りは、原則として憲法の投票価値の平 等の要求に反するものとはいえず、選挙区画の較差が憲法の投票価値の平等 - 21 -の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに初めて憲法の投票価値の平等等の要求に反する状態に至ったものというべきである。本件選挙においては、そのような事情があるとはいえないので、憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項に違反するものでは ない。 第3 当裁判所の判断 1 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由 との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(憲法43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用さ れる場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮す 憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当た っては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。 したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考 - 22 -慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきであり (最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最 高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、 7巻1号67頁、最 高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成30年大法廷判決及び令 和5年大法廷判決参照)、本件選挙についても、この枠組みに沿って判断するのが相当である。 2 よって検討するに、平成30年大法廷判決は、平成28年改正法及び平成29年改正法による改正によって、選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ、その状態が安定的に持続するよう新区割制度が設けられ、同方式による定 数配分がされるまでの暫定措置として、各都道府県の選挙区数の0増6減の措置を採るとともに選挙区割りの改定を行うことにより、平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差が縮小したことをもって、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものとし、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1 項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されているということができるから、 - 23 -国会の裁量権の行使として合理性を有し、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は解消されたものと評価することができるとし(前提事実(4)キ)、令和5年大法廷判決も、新区割制度が合理的なものであることを肯定した上、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差につき、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したというべき事情はうかがわれないし、その程度も 著しいものとはいえないとして、平成29年選挙区割りが令和 選挙当時における選挙区間の投票価値の較差につき、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したというべき事情はうかがわれないし、その程度も 著しいものとはいえないとして、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないとしている(前提事実(4)ク)。 そして、本件選挙についてみるに、新区割制度の下、区画審が令和2年実施の大規模国政調査の結果を踏まえて、アダムズ方式を適用した改定案の勧告を 行い、これを受けて令和4年改正法が成立し、同法に基づき区割規定が改正され、本件区割規定が定められていること、令和4年改正法が成立した時点における選挙区間の最大較差(人口)は2倍以内(1対1.999)になっており(前提事実(4)ケ)、その後、本件選挙当日における選挙区間の最大較差は2倍以上(1対2.059)に拡大している(前提事実(2)イ)ものの、自然的 な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、令和3年選挙当日の選挙区間最大較差が1対2.079、較差が2倍以上となっている選挙区数が29であった(前提事実(4)ク)のに対し、本件区割規定の定める本件選挙区割りにおいては、本件選挙当日における選挙区間の最大較差が1対2.059であり、較差が2倍以上となっている選挙区は10選 挙区であったから(前提事実(2)イ)、本件選挙当日の較差は、令和3年選挙当日における較差を下回っている。しかも、この較差も、新区割制度の下、令和7年に実施される予定の簡易国勢調査の結果を踏まえて2倍未満となるように是正されることが見込まれることからすれば、較差の程度が新区割制度やこれに従って定められた本件区割規定及び本件選挙区割りの合理性を失わせるほ ど著しいもの の結果を踏まえて2倍未満となるように是正されることが見込まれることからすれば、較差の程度が新区割制度やこれに従って定められた本件区割規定及び本件選挙区割りの合理性を失わせるほ ど著しいものであるということはできない。 - 24 -以上によれば、本件選挙当時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件選挙区割りが憲法14条1項等に違反するものということはできない。 3(1) これに対して、原告らは、本件選挙につき、①平成28年改正の結果、区画審は、新区画審設置法3条1項、4条2項に基づき、令和2年国勢調査の 結果による人口における各選挙区間の最大較差が2倍未満となるよう、かつ、平成28年改正法附則2条3項1号ロに照らし、令和2年国勢調査以降令和7年の国勢調査までの5年間、令和7年の見込人口における各選挙区間の最大人口較差が2倍未満になるように改正案を作成して勧告する義務を負っていたが、令和2年国勢調査以降、令和7年簡易国勢調査までの5年間を通じ て、46道府県の全てで一貫して人口が減少する状況下において、令和2年の日本国民の人口における各選挙区間の最大人口較差が2倍ぎりぎりの1. 999倍で、当初の期間を除いて、各選挙区間の最大人口較差は、一貫して2倍以上になると統計上予想され、現に本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差が1対2.06になった改定案を令和4年6月16日に作 成し、内閣総理大臣に勧告し、同改定案に従った内容の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りが定められ、本件選挙区割りの下、本件選挙が実施されたから、区画審が作成して勧告した改定案は新区画審設置法3条1項、4条2項に違反する瑕疵を帯びるものであり、同改定 定及びこれに基づく本件選挙区割りが定められ、本件選挙区割りの下、本件選挙が実施されたから、区画審が作成して勧告した改定案は新区画審設置法3条1項、4条2項に違反する瑕疵を帯びるものであり、同改定案の勧告を受けて改正された本件区割規定及び本件選挙区割り並びに本件選挙区割りの下で実施さ れた本件選挙も違法の瑕疵を帯びることになる、②平成23年大法廷判決以降、令和5年大法廷判決までの累次の大法廷判決で示された判断基準に照らし、本件選挙は各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上であるので違憲状態であり、かつ較差拡大が放置されたまま選挙を迎える事態となった場合に該当するので、国会は、較差是正のために自ら定めた期間(本件選挙日まで の期間)、必要な努力を怠っており、較差是正のための合理的期間を徒過し - 25 -たといえるから、本件選挙は違憲である、③憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項は、できる限りの人口比例選挙を要求しており、人口比例となっていない選挙で選ばれた議員で構成された国会で、出席議員の過半数の賛成を得て主権を行使している現状は、国民主権とはいえず、憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項に違反する、小選挙区選出衆議院議員 は、投票価値較差を伴う区割規定の内容について直接利害関係を有するから、当該利害関係を有する国会議員を含む国会は、投票価値の平等からの乖離の程度について合理的な立法裁量権を有することはあり得ないし、憲法前文第1段第2文及び信託法8条に照らすと、受託者である国会における代表者は、信託の利益(国政の利益、すなわち選挙区割規定の立法の利益)を享受する ことができないから、投票価値の平等からの乖離の程度について合理的な立法裁量権を有することはない旨を主張する。 (2) しかしなが 国政の利益、すなわち選挙区割規定の立法の利益)を享受する ことができないから、投票価値の平等からの乖離の程度について合理的な立法裁量権を有することはない旨を主張する。 (2) しかしながら、①原告らが指摘する平成28年改正法附則2条3項1号ロは、同項柱書の「(前略)平成27年の国勢調査の結果に基づく改定案の作成は、区画審設置法3条の規定にかかわらず、次に掲げる基準によって行わ なければならない。」との文言からすると、本件選挙区割りに適用されるものではないし、平成28年改正法の制定経過(前提事実(4)オ及びカ)に照らし、上記改正法附則は、新区割制度による選挙区割りの改定案の作成が平成32年(令和2年)の大規模国勢調査の結果に基づくものとされ、平成27年の簡易国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成が、選挙区間 の較差拡大の要因とされた1人別枠方式が完全に解消されることとなる新区割制度導入前の暫定措置として行われることも考慮して、選挙区間の較差について特に考慮し、これを補完する趣旨で規定されたと考えられることに照らせば、平成28年改正法附則2条3項1号ロから、区画審は、令和2年国勢調査以降令和7年の国勢調査までの5年間、令和7年の見込人口における 各選挙区間の最大人口較差が2倍未満になるように、改正案を作成し勧告す - 26 -る義務を負っていたというのは困難である。 一方、区画審は、令和2年に実施された大規模国勢調査の結果に基づき、令和4年6月16日、改定案を勧告しているところ、これによれば、本件選挙区割りでは、令和2年国勢調査の結果による人口における選挙区間の最大人口較差が1.999倍と2倍にならないぎりぎりの値になっており(前提 事実(4)ケ)、人口異動の要因によって各選挙区間の最大人口 割りでは、令和2年国勢調査の結果による人口における選挙区間の最大人口較差が1.999倍と2倍にならないぎりぎりの値になっており(前提 事実(4)ケ)、人口異動の要因によって各選挙区間の最大人口較差が2倍以上に拡大することも想定し得るもので、現に本件選挙の時点では、各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上(2.059倍)になっていたこと(前提事実(2)イ)がそれぞれ認められるが、改定案を勧告した時点において、衆議院議員総選挙が実施される時期は明らかとなっていないし、同日以降の人口 異動の推移を確実に予測できたともいえない。また、選挙区割りの改定後、人口異動の要因によって選挙区間の最大較差が2倍以上となることは、新区割制度においても当然に想定され得ることで、それゆえ、同日以降の人口異動の要因によって選挙区間の最大較差が2倍以上となった場合、令和7年に実施される予定の簡易国勢調査の結果を踏まえて2倍未満となるように是正 されることが想定されていたこと、選挙制度の安定性を考慮する必要も否定されないことからすれば、本件選挙区割りでは、令和2年国勢調査の結果による人口における選挙区間の最大人口較差が1.999倍であり、本件選挙の時点では、各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上(2.059倍)になっていたことをもって、区画審が作成して勧告した改定案は新区画審設置 法3条1項、4条2項に違反する瑕疵を帯びるものであり、同改定案の勧告を受けて改正された本件区割規定及び本件選挙区割り並びに本件選挙区割りの下で実施された本件選挙も違法の瑕疵を帯びることになるとはいえない。 したがって、原告らの上記①の主張は採用することができない。 (3) また、②平成30年大法廷判決が、平成28年改正法及び平成29年改正 法によって、選挙区 帯びることになるとはいえない。 したがって、原告らの上記①の主張は採用することができない。 (3) また、②平成30年大法廷判決が、平成28年改正法及び平成29年改正 法によって、選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ、その状態が安 - 27 -定的に持続するよう新区割制度が設けられ、同方式による定数配分がされるまでの暫定措置として、各都道府県の選挙区数の0増6減の措置を採るとともに選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区割りが定められ、これにより平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差が縮小したことをもって、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の 安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものとし、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されているということができるから、国会の裁量権の行使として合理性を有し、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は解消されたものと評価することができるとし、令和5年大法廷判決も、新区割制度が合理的なものであるこ とを肯定した上、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差につき、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいものとはいえないとして、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないとしたことは前記2のとおりで、平成30年 大法廷判決及び令和5年大法廷判決が、平成23年大法廷判決以降の一連の最高裁判決の判断を踏まえたものであることは、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決が、平成23年大法廷判決以降の一連の大法廷判決を引用して、国会の裁量権につき説示していること(前 以降の一連の最高裁判決の判断を踏まえたものであることは、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決が、平成23年大法廷判決以降の一連の大法廷判決を引用して、国会の裁量権につき説示していること(前記2)から明らかで、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決によれば、本件選挙当時におい て、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件選挙区割りが憲法14条1項等に違反するものということはできないことは前記2のとおりであって、本件選挙当日において、各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上であるから、本件選挙が、平成23年大法廷判決以降、令和5年大法廷判決までの累 次の大法廷判決で示された判断基準に照らし、違憲状態であるということは - 28 -できない。 したがって、較差是正のための合理的期間を徒過したといえるかどうかを論ずるまでもなく、原告らの上記②の主張は採用することができない。 (4) さらに、③憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解されるが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定 する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(憲法43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認め られており、衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙 られており、衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会 において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を 図ることが求められているから、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、 これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することに - 29 -なるものと解すべきであることは前記1のとおりである。 原告らは、国会を構成する衆議院議員の中には、投票価値較差を伴う区割規定の内容について直接利害関係を有する小選挙区選出の議員が存すること、憲法前文第1段第2文及び信託法8条に照らすと、投票価値の平等からの乖離の程度について合理的な立法裁量権を有することはあり得ない旨を主張す るが、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定める 法8条に照らすと、投票価値の平等からの乖離の程度について合理的な立法裁量権を有することはあり得ない旨を主張す るが、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(憲法43条2項、47条)、国会議員が自らの選出に関わる選挙制度の決定に関与することは当然に予定されているところ、小選挙区選出衆議院議員も国会の構成員であることは明らかで、小選挙区選出衆議院議員の存在をもって、国会の裁量権が制限されるともいえず、 憲法前文第1段第2文の「信託」の文言や財産の管理又は処分及びその他の当該目的のためにされる「信託」につき定めた信託法8条から、上記国会の裁量権を制限するのは無理がある。 そのような見地に立って検討すると、本件選挙が憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえないことは前記2のとおりであるから、本件選挙 が憲法56条2項、1条、前文第1段、43条1項に違反するとはいえない。 したがって、原告らの上記③の主張も採用することができない。 4 以上によれば、本件選挙当時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないから、本件選挙区割りが憲法に違反するものということはできない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所宮崎支部 裁判長裁判官西森政一 - 30 - 裁判官俣木泰治 裁判官鈴木麻奈美 裁判官俣木泰治 裁判官鈴木麻奈美
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