令和5(行ケ)10001 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年5月31日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
ファイル
hanrei-pdf-92129.txt

キーワード

判決文本文29,542 文字)

令和5年5月31日判決言渡 令和5年(行ケ)第10001号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和5年4月17日判決 原告 株式会社大創産業 同訴訟代理人弁理士 藤本昇 同 野村慎一 同 石井隆明 同訴訟代理人弁護士 白木裕一 被告 八幡化成株式会社 同訴訟代理人弁護士 佐藤力哉 同訴訟代理人弁理士 茜ヶ久保 同訴訟代理人弁護士 細沼萌葉 同訴訟代理人弁理士 三宅晃史 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 特許庁が無効2022-880005号事件について令和4年11月29日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 被告は、意匠に係る物品を「収納容器」とする意匠(登録第1472070号、平成24年6月5日登録出願、平成25年5月10日設定登録。以下「本件意匠」という。)の意匠権者である。 原告は、令和4年3月30日、本件意匠について、意匠登録無効審判を請求した(無効2022-880005号)。 特許庁は、令和4年11月29日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決をし、その謄本は、同年12月8日に原告に送達された。 原告は、令和5年1月4日、審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 2 無効理由の要旨 (1) 無効理由1本件意匠は る審決をし、その謄本は、同年12月8日に原告に送達された。 原告は、令和5年1月4日、審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した。 2 無効理由の要旨 (1) 無効理由1本件意匠は、その出願日前に中国の意匠公報(甲1号証の1・2)に記載された意匠(以下「甲1意匠」という。)と類似するから、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 (2) 無効理由2本件意匠は、その出願日前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、甲1意匠、甲6ないし11号証、15号証、17号証、18号証、20号証、21号証に記載された各意匠(以下、それぞれ「甲6意匠」ないし「甲21意匠」等といい、甲6ないし11 号証、15号証、17号証、18号証、20号証、21号証にそれぞれ記載された各意匠を総称して「甲各意匠」という。)に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、意匠法3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 3 審決の理由の要旨 審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりであり、要するに、本件意匠は、甲1意匠に類似するものとはいえず、また、当業者が、本件意匠の意匠登録出願前に公知であった甲1意匠及び甲各意匠に基づいて容易に創作をすることができたものとは認められないから、本件意匠は、意匠法3条1項3号及び同条2項の規定に該当しないとするものである。 4 原告主張の取消事由(1) 取消事由1本件意匠の認定の誤り(2) 取消事由2甲20意匠の認定の誤り (3) 取消事由3本件意匠の創 当しないとするものである。 4 原告主張の取消事由(1) 取消事由1本件意匠の認定の誤り(2) 取消事由2甲20意匠の認定の誤り (3) 取消事由3本件意匠の創作非容易性についての判断の誤り第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件意匠の認定の誤り)について〔原告の主張〕 (1) 本件意匠の本体部開口端部の外周形状及び本体部底面の外周形状について審決は、本体部開口端部の外周形状及び本体部底面の外周形状につき、平面視略横長トラック形状であると認定したが、誤りである。 審決が認定した「トラック形状」は一般的な用語ではないところ、「トラック」とは徒競走、リレー競走、ハードル競走及び障害物競走などが行われる周 回走路であるトラックのことを指し、このトラックを平面視した形状のことを「トラック形状」としたものと考えられる。しかるに、上記トラックの形状とは、「半円どうしを直線でつなぐ形状」、「長方形の4隅を丸めた形状」、「半円と半円の間に直線が入る形状」(甲71)を意味する。さらに、辞書によれば「トラックとは陸上競技場などの競走路」とされ(甲72)、日本陸上競技連盟 のハンドブック(甲73)によると、トラックの型について、単心円が日本の 公認陸上競技場であると記載されている。そうすると、トラック形状とは、「半円どうしを直線でつなぐ横長形状」であり、必ず明確で比較的長い対向する直線が存在する形状をいうものである。 本件意匠の本体部開口端部の外周形状及び本体部底面の外周形状は、意匠公報の平面図及び底面図から明らかなように、明確で比較的長い直線がなく、む しろ全体視すれば「略長円形状」あるいは「略楕円形状」であって、「横長トラック形状」ではない。よって、審決の認定は事実に反し、 平面図及び底面図から明らかなように、明確で比較的長い直線がなく、む しろ全体視すれば「略長円形状」あるいは「略楕円形状」であって、「横長トラック形状」ではない。よって、審決の認定は事実に反し、取り消されるべきである。 (2) 本件意匠の中央部の形状について審決は、本件意匠の中央部につき、略平坦状であると認定したが、誤りであ る。本件意匠の正面図からは、中央部は「平坦状」ではなく「円弧状」であることが明らかである。このことは、審決の認定において「本体部の上端は倒弓状に形成され」ているとの認定とも矛盾するものである。けだし、弓状とは「弓のように弧を描いた形」を意味するからである(甲74)。 このように、容器本体部は正面視その中央部は「略平坦状」ではなく「円弧 状」であるため、審決の認定は誤りであり、取り消されるべきである。 (3) 本件意匠の本体部の左右両端の上端付近との間の形状について審決は、「本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状」であると認定したが、「尖る」とは国語辞典によれば「鋭く細くなる」ことを意味するところ、本件意匠の斜視図を参酌すれば明らかなように、左右両端の上端付近は「先尖 り状」ではなく、「湾曲状」である。審決の認定は誤りであり、取り消されるべきである。 (4) 本件意匠の把手部の配置について審決は、「把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2:2に内分した中央の位置にある。また、把持部(注:把手部の誤り)は、本体部の最大横幅を 左から約4:5:4に内分した中央の位置にある。」と認定した。 一般的に把手部とは、「器物の持つところ、とって、柄、ハンドル等」を意味するところ、本件の場合、意匠に係る物品は「収納容器」であって、該収納容器は家庭において衣料、雑誌、新聞等の生 た。 一般的に把手部とは、「器物の持つところ、とって、柄、ハンドル等」を意味するところ、本件の場合、意匠に係る物品は「収納容器」であって、該収納容器は家庭において衣料、雑誌、新聞等の生活雑貨や野菜、乾物等の食品等の家庭用品を収納するもので、通常家庭内で載置して使用され、必要な時に家庭内で持ち運ぶための持ち手として把手部が機能するものである。 この種の把手部は容器本体との関係で、正・背面側又は両側面側に一対取り付けられてなり、容器本体の大きさ、重量との関係で、材質、大きさ、取付位置等が任意に選択されるものであることは当業者にとって日常的に行われている周知の事実である。 本件意匠は、容器本体の両側面上部に一対のロープを把手部として設けてな るもので、両側面の中央位置に、略U字状に垂下してなるものである。したがって、容器本体の両側面の中央位置に一対の把手用ロープを略U字状に垂下してなることが本件意匠の把手部の構成態様として重要であって、審決のように把手部の配置をことさら数値化して認定すること自体には意義がない。しかも、審判において請求人である原告はむろん、被請求人である被告も把手部の配置 を数値化して主張していない。 しかしながら、本件意匠の構成態様の認定として「オ把手部の配置」を設けて「把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2:2に内分した中央の位置に、最大横幅を左から約4:5:4に内分した中央の位置にある。」と認定したこと自体に、本件意匠の意義があるものではないため、失当である。 本件意匠において、把手部の構成としては、本体の両側面の中央部に一対の略U字状のロープとしての把手部を設けたとの構成認定で十分である。 この点、意匠法における保護対象は「物品の形状、模様、色彩又はこれらの結合」であ 把手部の構成としては、本体の両側面の中央部に一対の略U字状のロープとしての把手部を設けたとの構成認定で十分である。 この点、意匠法における保護対象は「物品の形状、模様、色彩又はこれらの結合」であって、意匠の構成そのものは意匠法上の意匠でなく、審査基準(甲75)においても、構成比率の変更については、ありふれた手法と軽微な改変 とし、「当該分野におけるありふれた手法などにより創作されたにすぎないも のである場合は、創作容易な意匠であると判断する。」としている。本件意匠の容器の分野においては、容器本体の構成比率を変更することに「当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性が認められる」ものではないから、構成比率を数値で示し、創作性があるとするのは判断手法としても不当である。 〔被告の主張〕 (1) 本件意匠の本体部開口端部の外周形状及び本体部底面の外周形状について審決は、本件意匠の本体部開口端部の外周形状及び本体部底面の外周形状を「平面視略横長トラック形状」と認定しているが、該形状が必ずしも原告が主張する「明確で比較的長い直線」を有する必要がないことは明らかであるから、原告の主張は失当である。そもそも原告の主張において、どの程度 明確で、どの程度長い直線を、「明確で比較的長い直線」とするのかも不明である。 むしろ、審決の創作非容易性の判断の記載にも鑑みれば、「平面視略横長トラック形状」とは、原告が提出した甲1意匠及び甲各意匠との対比において、本体部開口端部又は本体部底面の外周形状が略楕円形状であるものと比較し て、曲率が小さく、直線状に近い部分を有する態様を表す用語として特定したものであると理解できる。すなわち、本件意匠と甲1意匠との対比において、楕円形状をなす甲1意匠と比較すると、本件意匠 し て、曲率が小さく、直線状に近い部分を有する態様を表す用語として特定したものであると理解できる。すなわち、本件意匠と甲1意匠との対比において、楕円形状をなす甲1意匠と比較すると、本件意匠の本体部開口端部の外周形状の曲率は小さく、直線状に近いことは明らかであり、このような本件意匠の本体部開口端部の外周形状及び本体部底面の外周形状を「平面視略横 長トラック形状」とすることに誤りはない。 (2) 本件意匠の中央部の形状について審決の創作非容易性の判断や請求人の主張に対する認定判断において、「中央部は略平坦状に表されており、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって」とされていることを踏まえると、中央部を「略平坦状」とする審 決の認定は、本件意匠の正面視本体部上端形状の中央部において、甲各意匠、 特に甲15意匠、甲17意匠、甲18意匠、甲20意匠、又は甲21意匠と比較して、曲率が小さく、平坦に近い領域の割合が多いことを特定したものであると理解できる。 したがって、原告の主張は失当である。 (3) 本件意匠の本体部の左右両端の上端付近との間の形状について 審決は、飽くまでも「正面から見た本体部の態様」において視点を正面視に限定したうえで、「本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状に表されている」と認定するものであり、原告が本件意匠の斜視図を根拠にこれを「湾曲状」とするのは、審決を曲解してなされた主張である。本件意匠の正面図に基づけば、本件意匠の正面から見た本体部の態様において、「本体部の左右 両端の上端付近との間が先尖り状に表されている」ことは明らかであり、審決の認定に誤りはない。 (4) 本件意匠の把手部の配置について把手部の配置を数値によって特定することに格別意匠的意 両端の上端付近との間が先尖り状に表されている」ことは明らかであり、審決の認定に誤りはない。 (4) 本件意匠の把手部の配置について把手部の配置を数値によって特定することに格別意匠的意義があるかどうかについては、創作非容易性の判断における評価にかかわる事項であるので 取消事由3において主張するが、当該数値が審判において当事者双方とも主張していない数値であるか否かについては、意匠登録無効審判事件においていわゆる職権主義が採用されていることを踏まえれば、審決において把手部の配置が審判において当事者双方とも主張していない数値により特定されるとしても、それ自体が誤りであるということはない。 なお、審決は、被告が「収納容器本体の長手方向の両端上部に対向して設けられたU字状に垂下してなる把手用ロープ」(乙1)と主張した把手部の配置のうち、「長手方向の両端上部」や「U字状に垂下」という点を定量的に表現したものにすぎず、原告が主張するように、当事者双方とも主張していないものではない。 2 取消事由2(甲20意匠の認定の誤り)について 〔原告の主張〕審決は、甲20意匠の本体部開口端部の外周形状は、平面視略横長トラック形状であると認定したが、甲20意匠の平面を示す図からも明らかなように、本体部開口端部の外周形状は、平面視略横長トラック形状ではなく、略楕円形状である。このことは、本件意匠のトラック形状について述べたとこ ろからも明らかである。 よって、審決の認定は誤りであり、取り消されるべきである。 〔被告の主張〕審決における「平面視略横長トラック形状」とは、甲各意匠との対比において、本体部開口端部又は本体部底面の外周形状が略楕円形状であるものと比 較して、曲率が小さく、直線状に近い部分を の主張〕審決における「平面視略横長トラック形状」とは、甲各意匠との対比において、本体部開口端部又は本体部底面の外周形状が略楕円形状であるものと比 較して、曲率が小さく、直線状に近い部分を有する態様を表す用語として特定したものであると理解できるところ、このような理解に立てば、甲20意匠の本体部開口端部の外周形状を「略横長トラック形状」とすることに誤りはなく、原告の主張は失当である。 仮に原告が主張するように甲20意匠の本体部開口端部の外周形状が「略 横長トラック形状」でなく「略楕円形状」であるとしても、甲20意匠が本件意匠のような本体部開口端部と本体部底面の外周形状を備えるものではなく、他の甲各意匠に本件意匠のような本体部開口端部と本体部底面の外周形状を有するものが見られないことは変わりなく、無効理由2に対する審決の判断に影響はないから、原告の主張はいずれにしろ失当である。 3 取消事由3(本件意匠の創作非容易性についての判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 審決は、創作非容易性の判断の項において、「本件登録意匠のように、本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形状であるものは、請求人が提出した無効理由2の甲意匠には見られ」ないと判断した。 しかし、取消事由1で主張したように、本件意匠の本体部開口端部と本体部 底面の外周形状は、審決が認定した「略横長トラック形状」ではなく、「略長円形状若しくは略楕円形状」である。 そうすると、該本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に「略長円形状若しくは略楕円形状」であって、当該形状は甲15意匠、甲17意匠、甲20意匠、甲21意匠及び甲76に示された意匠に見られるように、本件意匠の出 願前に公然知られた意匠であって、審決が甲各意 形状若しくは略楕円形状」であって、当該形状は甲15意匠、甲17意匠、甲20意匠、甲21意匠及び甲76に示された意匠に見られるように、本件意匠の出 願前に公然知られた意匠であって、審決が甲各意匠には見られないと判断したことは誤りである。 仮に、本件意匠の本体部開口端部と本体部底面の外周形状を審決認定のように「略横長トラック形状である」としたとしても、略横長トラック形状自体、この種物品分野の容器の本体部開口端部や本体部底面の外周形状としては周 知な形状であって、それ自体に創作性があるものではない(その例として甲77)。 しかも前記のとおり「略横長円形状や略楕円形状」が周知ないし少なくとも公知である以上、当該形状と近似又は意匠的に実質同一形状の「横長トラック形状」自体に創作性があるとは考えられない。 よって、審決の判断は誤りである。 (2) 把手部の配置について審決は、「把手部が配されている面から見て、略U字状の紐状の把手部を、上から約1:2:2に内分した中央の位置であり、かつ左から約4:5:4に内分した中央の位置を占めるように配置したものは、無効理由2の甲意匠には 見られない。」と判断した。 しかるに、把手部の機能は容器を持ち運ぶための持ち手であって、容器、バケツ、買い物袋等の一般の収納容器に広く使用されているもので、しかも当該把手部の選定は収納容器の重量、大きさ、形状、長さ等によって紐状やロープ状等任意に選択されるもので通常一対のものである。 しかもその設置場所も使用状態を考慮して、容器の正・背面側あるいは両側 面等任意に選定されるものである。 本件の場合、把手部は容器本体の両側面の上部に紐状の把手部が略U字状に設置されているが、「略U字状の紐状の把手部」としては、甲1意匠、甲6意 るいは両側 面等任意に選定されるものである。 本件の場合、把手部は容器本体の両側面の上部に紐状の把手部が略U字状に設置されているが、「略U字状の紐状の把手部」としては、甲1意匠、甲6意匠、甲7意匠、甲8意匠、甲9意匠、甲10意匠、甲11意匠及び甲78に示された意匠から明らかなように、本件意匠の出願前から周知ないし少なくとも 公知である。 次に、審決は、「把手部が配されている面において、該略U字状の紐状の把手部を、上から約1:2:2に内分した中央の位置で、かつ左から約4:5:4に内分した中央の位置を占めるように配置したものは甲意匠には見られない」と判断したが、把手部の機能、すなわち持ち運び時に容器を安定して持ち 運ぶことを考慮するならば、必然的に容器本体の正・背面あるいは両側面の中央部に配置することは理の当然である。 この点は、前記把手部を有する容器(甲1、6ないし11の各意匠)においても略中央部に把手部を設けて持ち運び易くしていることはこの種収納容器においては古来より行われているありふれた手法であって、当業者の立場から みた意匠の着想の新しさや独創性が認められず、何ら創作性もなく、新規でもない。 さらに審決は、把手部の配置を前記のように「上から」及び「左から」数値で特定しているが、該特定された値に意匠的意義がないことは前記のとおりであるが、把手部の上端部を容器本体の両側面の縦方向の最大縦幅のどの位置に 配置するか、並びに本体部の最大横幅からどの位置に配置するかは各種容器本体の形状や大きさ等によって異なるが、いずれも横幅の略中央部に配置することは共通するものである。 例えば、左からの内分した比率は、本件意匠は約4:5:4であるのに対し、甲8意匠及び甲9意匠では約1:2:1、甲78に示された意匠で が、いずれも横幅の略中央部に配置することは共通するものである。 例えば、左からの内分した比率は、本件意匠は約4:5:4であるのに対し、甲8意匠及び甲9意匠では約1:2:1、甲78に示された意匠では4.6: 5:4.6と略同比率の位置に配置されており、何ら格別新規で創作性のある 配置態様ではない。 同様に最大縦幅に対する比率も、例えば本件意匠は約1:2:2に対し、甲8意匠では1:2:3、甲17意匠では0.4:1:1.5と略同比率に把手部の上下に隙間を残して縦方向の略中央部に把手部を配置している。 このように、構成比率及び配置の変更はありふれた手法と軽微な改変である ことから、何ら特別新規な配置態様ではなく創作性がない。容器本体の側面に対し横幅の略中央部に、縦幅の上下略中央部に把手部を配置することはありふれた態様であると同時に、その数値に意匠的に格別な意義があるものではなく、創作性もない。 (3) 創作非容易性の判断結果について 本件のような収納容器の物品分野において、当業者とは、この種物品の製造業者や流通業者がこれに該当するところ、これらの容器メーカーや取り扱い業者にとっては市場における各種容器の形態や持ち運ぶための把手部を有する容器についても十分な知識と商品について古くから熟知している。 そうすると、収納容器本体の本体部開口端部と本体底面の外周形状を「略横 長トラック形状」とするか「略長円形状又は略楕円形状」とするかは当業者にとって容易に創作することができることである。しかも収納容器本体の両側面に略U字状の紐状の把手部を設けること自体周知であり、かつ該把手部の配置を数値化しても、両側面の略中央部に設けること自体も周知であり、かつその数値に格別意匠的意義がない以上、当業者が収納容器の両側面に略U 字状の紐状の把手部を設けること自体周知であり、かつ該把手部の配置を数値化しても、両側面の略中央部に設けること自体も周知であり、かつその数値に格別意匠的意義がない以上、当業者が収納容器の両側面に略U字状の把 手部をその中央位置に設けること自体格別困難ではない。したがって、本件意匠のように創作すること自体当業者にとって創作容易である。 特に、物品の一部について構成比率や配置を数値特定して創作性があるとの点は、不当であるとともに意匠的な意義がない。 また、審決は、本件意匠の正面から見た本体部の上端は、倒弓状に形成され、 中央部が略平坦状に現わされて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きく なって本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になっており、このような上端形状は、本件意匠に独特なものであって、甲各意匠には見られず、甲各意匠に基づいて容易に創作ができたものとはいえないと判断したが、本件意匠の正面から見た本体部の上端形状は、甲15意匠、甲17意匠、甲18意匠、甲20意匠、甲21意匠にも見られる本件意匠の出願前に公然知られた形状で あり、審決の判断は誤りである。 この点に関連し、審決は、甲15意匠の正面上端形状は緩やかな凹弧状であり、甲17意匠では略凹弧状、甲18意匠では左右非対称の凹弧状、甲20意匠では緩やかな凹弧状(凹レンズ状の凹弧状)、甲21意匠では略凹弧状に上端形状が表されているところ、これら意匠の上端形状がなぜ「凹曲線形状」と して括ることが適切でなく、この湾曲した凹弧状と本件意匠の「凹曲線形状」とは何が異なるのかの具体的な理由もない。審決の創作非容易性の判断は誤りである。 (4) なお、被告は、本件訴訟における甲76ないし78の提出は、新たな無効理由を主張するものとして排斥されるべきであ は何が異なるのかの具体的な理由もない。審決の創作非容易性の判断は誤りである。 (4) なお、被告は、本件訴訟における甲76ないし78の提出は、新たな無効理由を主張するものとして排斥されるべきであると主張するが、同証拠は公知意 匠を立証するものであり、提出が許されないとする理由がない。 〔被告の主張〕(1) 原告は、本件訴訟において、甲76ないし78を新たに提出して、これらとの対比において本件意匠は無効である旨主張するが、審決取消訴訟においては、審判手続において審理判断されなかった公知事実との対比における無効理由 は、審決を違法とする理由として主張することができない(最高裁昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁参照)から、審判事件において審理判断されなかった甲76ないし78に基づく原告の主張は直ちに排斥されるべきである。仮にこの点を措いても、原告の主張は以下のとおり失当である。 (2) 仮に、「トラック形状」という表現を使用せずに原告の主張するように「略 長円形状若しくは略楕円形状」という表現を使用するとしても、要は、曲率が小さく、直線状に近い部分を有する態様であることは事実であり、かかる態様が、甲15意匠、甲17意匠、甲20意匠及び甲21意匠に見られないことは明らかである。 また、甲76には斜視及び正面視しか表されておらず、本体部開口端部と本 体部底面の外周形状は見て取れないから、甲76は根拠にもならない。 甲77については、審決は、甲各意匠に「平面視略横長トラック形状」が見られないとする判断の前提として、本件意匠が「家庭用品を入れる容器の物品分野において、全体の形状を、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状として、径を下方にいくにつれてしだいに ック形状」が見られないとする判断の前提として、本件意匠が「家庭用品を入れる容器の物品分野において、全体の形状を、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状として、径を下方にいくにつれてしだいに小さくし、長手方向の両側面上部 に一対の把手部を設け、・・・紐状の把手部を軸方向に注連縄状に表す」形状であるとしたうえで、このような形状を有し、かつ「本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形状であるものは、無効理由2の甲意匠には見られない」とする。しかしながら、甲77に表される意匠は、「径を下方にいくにつれてしだいに小さくし、長手方向の両側面上部に一対の把手部を 設け、・・・紐状の把手部を軸方向に注連縄状に表す」形状ではないし、他方で側面に多数の孔を有するものであるから、単に「本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形状」であったとしても、甲77が審決の判断が前提とする構成を備えないことは明らかである。 (3) 把手部の配置について 審決は、把手部の配置について、単に縦横の比を特定して、およその位置を特定したに過ぎない。現に、甲1意匠、甲6意匠、甲7意匠、甲8意匠、甲9意匠、甲10意匠、甲11意匠及び甲78に示された意匠のいずれにおいても、そのおよその位置が本件意匠に近似する公知例はひとつもないのであるから、審決の認定に誤りがないことは明らかである。 原告は、構成比率及び配置の変更はありふれた手法と軽微な改変であること から、本件意匠における把手部の配置は創作性がないと主張するが、仮に構成比率及び配置の変更自体がありふれた手法であるとしても、ありふれた手法に基づく複数の構成要素を組み合わせることによっても新たな美感は生じ得るのであり、そして、その組合せにこそ創意が発揮 が、仮に構成比率及び配置の変更自体がありふれた手法であるとしても、ありふれた手法に基づく複数の構成要素を組み合わせることによっても新たな美感は生じ得るのであり、そして、その組合せにこそ創意が発揮されるといい得るから、本件意匠における把手部の配置は、多様なデザイン面での選択肢から、創意工夫を 施して創作したものであって、高度の創作性が認められる。 原告は、意匠審査基準等を挙げて、「配置の変更」がありふれた手法、軽微な改変であって、本件意匠がこれに当たるとするようであるが、審査基準は「構成要素の配置を、単に変更すること」を以って「配置の変更」としているところ、本件意匠が、既存の何らかの意匠の「構成要素の配置を変えただけ」でな いことは明白である。 甲78に示された意匠は、そもそも把手部の配置も全く異なるし、本件意匠の「径を下方にいくにつれてしだいに小さくし、長手方向の両側面上部に一対の把手部を設け、・・・紐状の把手部を軸方向に注連縄状に表す」形状ではなく、甲78が審決の判断が前提とする構成を備えないことも明らかである。 (4) 創作非容易性の判断結果について審決では、本件意匠について「本体部の上端は、倒弓状に形成され、中央部が略平坦状に表されて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になって」いると認定したうえで、「甲15意匠の正面上端形状は緩やかな凹弧状であり、甲17意匠では略凹弧 状、甲18意匠では左右非対称の凹弧状、甲20意匠では緩やかな凹弧状(凹レンズ上の凹弧状)、甲21意匠では略凹弧状に上端形状が表されている」ことが十分に説明されているから、原告の主張は失当である。 原告は、本件意匠が創作容易であるとして、甲1意匠、甲6意匠ないし甲11意匠、甲1 弧状)、甲21意匠では略凹弧状に上端形状が表されている」ことが十分に説明されているから、原告の主張は失当である。 原告は、本件意匠が創作容易であるとして、甲1意匠、甲6意匠ないし甲11意匠、甲15意匠、甲17意匠、甲18意匠、甲20意匠及び甲21意匠と 極めて多数の公知意匠を根拠に主張しているが、本件意匠の部分形状と同一又 は類似する公知意匠があるとしても、単にそれぞれそのようなものが存在するというだけで、甲1意匠の包装桶本体のどの位置にどのようにロープを取り付けるかなどの示唆はなく、個々の形状の組み合わせのパターンは無数に考えられる。この点は、仮に甲76ないし78に示された意匠を踏まえても同じである。 すなわち、意匠の創作は、個々の要素を全体として一つのまとまりに作り上げるものであるから、個々の要素だけでなく、全体のまとまりをも観察した上でその創作性が判断されなければならない。本件意匠における収納容器本体と把手用ロープの組み合わせ態様は、造形上、多様な創作の余地があるところであって、構成各部の態様を具体的に決定し、構成各部をどのように関連付け、 構成し、それらの結合により全体の形態についてどのように具体化するかの選択肢は多様にある。また、当業者が把手用ロープを甲1意匠に示されている包装桶本体のどの位置にどのように取り付けるかということは、意匠全体の美感に重大な影響を及ぼす高度に創作性が要求される事柄である。 本件意匠は、甲各意匠の単なる置き換え又は寄せ集めによって構成されたも のとはいえない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件意匠の認定の誤り)及び無効審判請求における無効理由1(本件意匠及び甲1意匠の類否)について(1) 証拠(甲1の1・2、68)及び弁論の全趣旨によれば、本件 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件意匠の認定の誤り)及び無効審判請求における無効理由1(本件意匠及び甲1意匠の類否)について(1) 証拠(甲1の1・2、68)及び弁論の全趣旨によれば、本件意匠及び甲 1意匠等について、次の各事実を認めることができる。 ア本件意匠に係る物品の用途及び機能並びに「トラック」の語について本件意匠に係る物品は「収納容器」であり、意匠公報の「意匠に係る物品の説明」には、「本物品は、収納容器本体と、その本体の側面上部に取り付けられた把手用のロープとからなる。収納容器本体は、軟質の合成樹脂で 一体に形成されており、多目的の収納に用いられる。例えば、衣料、雑誌、 新聞、おもちゃ、野菜、乾物などを収納するのに適している。」と記載されているところから、本件意匠に係る収納容器は、その例示に係る収納物等に照らせば、家庭において、生活雑貨や食品などの家庭用品を収納する容器であると認められる。 「トラック」について、辞書には、「陸上競技場や競馬場などの競走路」(甲 72)と記載されているほか、日本陸上競技連盟のハンドブック(令和5年1月31日印刷)には、「トラックの型」として、直線と半円が組み合わされた単心円のほか、二心円及び三心円などの直線と円弧の組み合わせが示されている(甲73)。 イ本件意匠の形状等 (ア) 全体の形状等(基本的構成態様)a 全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成る。 b 本体部開口端部の外周形状は、平面視、全体として横長で、一部が直線状に延びた略楕円の形状(以下、単に「略横長トラック形状」と いう。)であって、本体部底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略横長トラック形状 状は、平面視、全体として横長で、一部が直線状に延びた略楕円の形状(以下、単に「略横長トラック形状」と いう。)であって、本体部底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略横長トラック形状であるところ、本体部の径は下方にいくにつれてしだいに小さくなっている。 c 本体部の長手方向の両側面上部に把手部が設けられている。 (イ) 各部の形状等(具体的構成態様) d 正面から見た本体部の態様正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約100°である。 本体部の上端は倒弓状に形成されて、中央部は略平坦状に表されており、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって、本体部の 左右両端の上端付近との間が先尖り状に現わされている。 正面から見た本体部の最小横幅(底面の長さ)と最大縦幅(本体部左右両端の上端の高さ)は、ほぼ同じ長さである。 e 右側面から見た本体部の態様右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°である。本体部の上端はなだ らかな略山状に形成されている。 右側面から見た本体部の最大横幅(本体部左右両端の上端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右方向中央の本体部の高さ)の比は、約0.9:0.7:1である。 f 把手部の態様 把手部は、右側面視略U字状に現わされており、上端部が本体部に設けられた円形孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で結び目が形成されて留められている。把手部の紐は太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされている。 g 把手部の配置 把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2:2に内分した中央の位置にある。また、把手 留められている。把手部の紐は太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされている。 g 把手部の配置 把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2:2に内分した中央の位置にある。また、把手部は、本体部の最大横幅を左から約4:5:4に内分した中央の位置にある。 正面から見ると、把手部は鉛直に垂下しており、本体部の左右両端と成す角度は約10°である。把手部の位置は、本体部上端の左右両端の 位置とほぼ同じである。 ウ甲1意匠に係る物品の用途及び機能甲1意匠の公報(甲1の1・2)には、甲1意匠の意匠を使う製品の名称につき「包装桶(楕円)」と記載されており、その形状等からして生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であると認められる。 エ甲1意匠の形状等 甲1意匠の公報の「簡単な説明」の記載によれば、当該意匠の、正面図と背面図、右側面図と左側面図とはそれぞれ対称であるとされているから、左側面図に表された形態を左右対称にした形態を右側面から見た形態とし、本件における対比の対象としては、「桶をオープンした状態の斜視図」にある、蓋を取った状態の形態とする。同公報及び甲68によれば、甲1 意匠の形状は以下のとおりである。 (ア) 全体の形状等(基本的構成態様)a 全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成る。 b 本体部開口端部の外周形状は、蓋部の外周形状と一致する略楕円形 状である(平面図、斜視図)。 本体部の径は下方にいくにつれてしだいに小さくなっており、本体部底面の外周形状も、開口端部よりも小さい略楕円形状である(平面図、斜視図、正面図、左側面図)。 c 本体部の短手方向の正面及び背面上部に把手部が設けられている。 (イ) なっており、本体部底面の外周形状も、開口端部よりも小さい略楕円形状である(平面図、斜視図、正面図、左側面図)。 c 本体部の短手方向の正面及び背面上部に把手部が設けられている。 (イ) 各部の形状等(具体的構成態様)d 正面から見た本体部の態様正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約97°である。本体部の上端は水平状に現されている。 正面から見た本体部の最小横幅(底面の長さ)と縦幅は、ほぼ同じ長さである。 e 右側面から見た本体部の態様右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°である。本体部の上端は 水平状に現されている。 右側面から見た本体部の最大横幅(本体部上端の長さ):最小横幅(底面の長さ):縦幅の比は、約0.7:0.5:1である。 f 本体部の内側上部の態様本体部の内側上端部には、周方向に等間隔に、多数の凸状部材が配されている。 g 把手部の態様把手部は、正面視略放物線状に現されており、上端部が本体部に設けられた孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で端部に別部材が結合されて留められている。把手部は細い紐状で、軸方向に注連縄状に現されている。 h 把手部の配置把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:6:1に内分した中央の位置にある。また、把手部は、本体部の最大横幅を左から約1:4:1に内分した中央の位置にある。 右側面から見ると、把手部は、本体部に密着して巻き付くように現 されている。把手部の上端の位置は、本体部上端の左右両端の位置よりもやや内側である。 (2) 本件意匠と甲1意匠の物品等の用途及び機能の類否 把手部は、本体部に密着して巻き付くように現 されている。把手部の上端の位置は、本体部上端の左右両端の位置よりもやや内側である。 (2) 本件意匠と甲1意匠の物品等の用途及び機能の類否前記(1)によれば、本件意匠の意匠に係る物品と甲1意匠の意匠に係る物品は、共に生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であるから、共通す る。 (3) 本件意匠と甲1意匠の形状等の共通点及び相違点ア形態の共通点(共通点1)全体の共通点全体が、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体 部と、一対の紐状の把手部から成るものであって、本体部の径が下方に いくにつれてしだいに小さくなっており、本体部の上部に把手部が設けられている。 (共通点2)正面から見た共通点正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、最小横幅と縦幅は、ほぼ同じ長さである。 (共通点3)右側面から見た共通点右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°である。最大横幅及び最小横幅の長さは、縦幅よりも小さい。 (共通点4)把手部の態様の共通点 把手部の上端部が本体部に設けられた孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で留められている。把手部の紐は、軸方向に注連縄状に現わされている。 イ形態の主な相違点(相違点1)全体の相違点 本件意匠の本体部開口端部と本体部底面の外周形状が、略横長トラック形状であるのに対して、甲1意匠の本体部開口端部と本体部底面の外周形状は、略楕円形状である。 また、本件意匠では、把手部が本体部の長手方向の両側面に設けられているが、甲1意匠では、把手部が本体部の短手方向の正面及び 、甲1意匠の本体部開口端部と本体部底面の外周形状は、略楕円形状である。 また、本件意匠では、把手部が本体部の長手方向の両側面に設けられているが、甲1意匠では、把手部が本体部の短手方向の正面及び背面に 設けられている。 (相違点2)本体部の構成比率の相違点正面から見て、本件意匠では、本体部の左右両端が底面となす角度が約100°であるが、甲1意匠では約97°である。 (相違点3)本体部の上端形状の相違点 正面から見て、本件意匠では、本体部の上端は倒弓状に形成されて、中 央部は略平坦状に現わされており、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって、本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状に現わされている。これに対して、甲1意匠では、本体部の上端は水平状に現されている。 右側面から見て、本件意匠の本体部の上端はなだらかな略山状に形成 されているが、甲1意匠の本体部の上端は水平状に現されている。 (相違点4)把手部の形状等の相違点把手部について、本件意匠では、荒縄状であって右側面視略U字状で軸方向に注連縄状であるが、甲1意匠では、細い紐状であって正面視略放物線状で軸方向に注連縄状である。 (相違点5)把手部の配置の相違点把手部が配されている面から見て、把手部が、本件意匠では本体部を上下方向で約1:2:2に内分しており、かつ、本体部を左右方向で約4:5:4に内分しているのに対し、甲1意匠では本体部を上下方向で約1:6:1に内分しており、かつ本体部を左右方向で約1:4:1に内 分している。 また、把手部が配されていない面から見て、本件意匠の把手部は鉛直に垂下し、本体部の左右両端と成す角度は約10°であって、把手部の位置は、本体部上端の左右両端の位置とほぼ同じ 分している。 また、把手部が配されていない面から見て、本件意匠の把手部は鉛直に垂下し、本体部の左右両端と成す角度は約10°であって、把手部の位置は、本体部上端の左右両端の位置とほぼ同じである。これに対して、甲1意匠では、把手部が本体部に密着して巻き付くように現されており、 把手部の上端の位置は、本体部上端の左右両端の位置よりもやや内側である。 (4) 本件意匠と甲1意匠との類否判断ア本件意匠と甲1意匠とで、意匠に係る物品は、共に生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であって共通するところ、いずれも使用者が 家庭において日常的に使用することを主目的とするものであるから、 その需要者は、個人消費者であると認められる。 そして需要者である個人消費者は、意匠に係る物品の性質、用途及び使用態様の観点からは、収納容器として物を収納した際の使用のしやすさや持ち運ぶ際の便利さから、物を収納して置いた際と物を収納せず、単体であるいは複数個を重ねて置いた際には、その美観等の観 点から、両意匠に係る物品を観察し、選択するものということができる。 そうすると、収納容器として物を収納した際の使用のしやすさや持ち運ぶ際の便利さの観点からは、収納容器全体の形状等(基本的構成態様)が需要者の注意を惹く部分であるとともに、物を収納して置い た際や物を収納せず重ね置いた際の美観等の観点からは、収納容器としての外形を特徴付ける部分の形態が、最も強く需要者の注意を惹く部分であるということができる。 そこで、これらを前提に、両意匠が需要者である個人消費者の視覚を通じて起こさせる美観が類似するか否かについて検討する。 イ収納容器全体の形状等について、需要者である個人消費者の観点からみると、両意匠は、 前提に、両意匠が需要者である個人消費者の視覚を通じて起こさせる美観が類似するか否かについて検討する。 イ収納容器全体の形状等について、需要者である個人消費者の観点からみると、両意匠は、いずれも上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものであって、本体部の径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっており、本体部の上部に把手部が設けられているとの点(全体の形状、共通点1)、正 面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、最小横幅と縦幅は、ほぼ同じ長さであるとの点(全体の形状、共通点2)、及び、右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°であり、最大横幅及び最小横幅の長さは、縦幅よりも小さいとの点(全体 の形状、共通点3)につきいずれも共通するところ、その態様自体は ありふれたものであり、需要者の注意を強く惹くものとはいえない。 しかし、全体の形状のうち、把手部が本体部の長手方向の両側面に設けられているか(本件意匠の態様c(前記(1)イ(ア)))、把手部が本体部の短手方向の正面及び背面に設けられているか(甲1意匠の態様c(前記(1)エ(ア)))の相違(相違点1)については、需要者である個人消費 者が収納容器を持ち運ぶ際の使いやすさや、置いた際の美観の観点から、強く注意を惹く部分であって、視覚を通じて起こさせる美観に大きな影響を与えるものである。 また、各部の形状のうち、正面から見て、本件意匠では、本体部の上端は倒弓状に形成されて、中央部は略平坦状に現わされており、左端 寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって、本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状に現わ ら見て、本件意匠では、本体部の上端は倒弓状に形成されて、中央部は略平坦状に現わされており、左端 寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって、本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状に現わされている(本件意匠の態様d及びe(前記(1)イ(イ)))のと、本体部の上端は水平状に現されている(甲1意匠の態様d(前記(1)エ(イ)))との相違、及び、右側面から見て、本体部の上端はなだらかな略山状に形成されている(本件意匠の態様 e(前記(1)イ(イ)))のと、本体部の上端は水平状に現されている(甲1意匠の態様e(前記(1)エ(イ)))との相違(相違点3)は、物を収納して置いた際や、物を収納せず単体で、あるいは複数個重ね置いた際の美観等の観点からは、収納容器としての外形を特徴付ける部分の形態であり、強く需要者の注意を惹く部分であるということができると ころ、この相違点が両意匠の美観に与える影響にも大きいものがあるということができる。 さらに、把手部の態様について、本件意匠では、右側面視略U字状に現わされており、かつ、太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされている(本件意匠の態様f(前記(1)イ(イ)))のに対し、甲1意匠では、 正面視略放物線状に現されており、かつ細い紐状で、軸方向に注連縄 状に現されている(甲1意匠の態様g(前記(1)エ(イ)))との相違(相違点4)は、収納容器を持ち運ぶ際の使いやすさや、置いた際の美観の観点から、本体部と把手部との視覚的なバランスにおいて、強く注意を惹く部分であって、この相違点が両意匠の美観に与える影響にも大きいものがあるということができる。 ウ本件意匠と甲1意匠では、需要者の注意を惹く基本的構成態様のその余の相違点や、具体的構成たる各部の形状においてその他 点が両意匠の美観に与える影響にも大きいものがあるということができる。 ウ本件意匠と甲1意匠では、需要者の注意を惹く基本的構成態様のその余の相違点や、具体的構成たる各部の形状においてその他にも異なる点があり、これらが美観に与える影響があるところではあるが、少なくとも前記イの相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響には大きなものがあるということができる。 そうすると、本件意匠と甲1意匠は、意匠に係る物品が共通するものの、その形態においては、需要者に与える美感の観点から、本件意匠と甲1意匠とは別異のものと印象付けるものであるから、本件意匠は、甲1意匠に類似するものではない。 (5) 原告の主張に対する判断 原告は、審決が本件意匠について、本体部開口端部の外周形状及び本体部底面の外周形状を平面視略横長トラック形状であるとしたこと、中央部を略平坦状であるとしたこと、本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状であるとしたこと、把手部の配置をことさら数値化して認定したことはいずれも誤りであり、審決は取り消されるべきである旨を主張する。 原告の上記主張が審決を取り消すべき理由となるか否かについては措くとしても、「トラック」について、辞書に「陸上競技場や競馬場などの競走路」(甲72)と記載され、日本陸上競技連盟のハンドブック(令和5年1月31日印刷)に「トラックの型」として、直線と半円ないし円弧の組み合わせが示されている(甲73)ことから、直線と円弧からなる形状を トラック形状と表現し得るものと認められる一方、原告の主張するように、 直線部分が明確で比較的長いものをいうとまでは認め難いところ、本件意匠の本体部開口端部及び本体部底面の外周形状は、いずれも直線で表現される部分を含んでいることか 、原告の主張するように、 直線部分が明確で比較的長いものをいうとまでは認め難いところ、本件意匠の本体部開口端部及び本体部底面の外周形状は、いずれも直線で表現される部分を含んでいることから、これらは、全体として横長で、一部が直線状に延びた略楕円の形状(略横長トラック形状)であるものと認められるところである。その他、本件意匠の中央部には略平坦状の部分があり、 本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状であること、把手部の位置についても意匠公報から前記のとおり認められるところであり、審決の認定に誤りはなく、本件意匠と甲1意匠の類否判断及び無効理由1についての審決の判断に、誤りは認められない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 2 取消事由2(甲20意匠の認定の誤り)及び取消事由3(本件意匠の創作非容易性についての判断の誤り)について(1) 意匠の創作非容易性は、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)を基準に、公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたか否かを判断して決 すると解されるところ(意匠法3条2項)、意匠法3条2項は、物品との関係を離れた抽象的なモチーフとして日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(周知のモチーフ)を基準として、それから当業者が容易に創作することができた意匠でないことを登録要件としたものであるから、上記の周知のモチーフを基準として、当業者の立場からみた意 匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものである(最高裁昭和45年(行ツ)第45号同49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁、最高裁昭和48年(行ツ)第82号同50年2月28日第二小法廷判 の新しさないし独創性を問題とするものである(最高裁昭和45年(行ツ)第45号同49年3月19日第三小法廷判決・民集28巻2号308頁、最高裁昭和48年(行ツ)第82号同50年2月28日第二小法廷判決・裁判集民事114号287頁参照)。 したがって、登録意匠が、周知のモチーフを基準として、ありふれた手法 により変更可能なものあるいは軽微な改変又はそれらの単なる寄せ集めとは いえず、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性が認められる場合は、これを引用意匠等の形状、模様、色彩又はこれらの結合に基づいて当業者が容易に創作することができた意匠であるということはできないというべきである。 (2) 本件意匠の当業者については、収納容器に係る分野における通常の知識を 有する者であると認められるところ、本件意匠と甲1意匠及び甲各意匠とを比較すると、以下のとおりである。 なお、被告は、本件訴訟において提出された甲76号証ないし78号証は、審決で認定された相違点に関する新たな公知意匠を追加するものであって、それに基づく主張は直ちに排斥されるべきである旨主張する。 しかし、原告は、これらの書証に係る主張を、いずれも本件意匠の出願当時の当業者の常識等を認定するための周知例を示す証拠に係る主張として行っているものと解され、これらの記載内容との対比において新たな無効理由が存することを主張するものではない。よって、これら証拠に基づく主張は、審決取消訴訟において認められないものには当たらず、被告の主張は採用で きない(最高裁昭和54年(行ツ)第2号同55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号80頁参照)。 ア甲各意匠の物品等の用途及び機能並びに形態について、以下のとおり認められる。 (ア) 甲1 い(最高裁昭和54年(行ツ)第2号同55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号80頁参照)。 ア甲各意匠の物品等の用途及び機能並びに形態について、以下のとおり認められる。 (ア) 甲15(特許庁意匠課平成22年受入れの公知資料番号第HJ22 079731号)の意匠に係る物品は「収納かご」であり、写真中にタオルを入れている事例が示されていることから、家庭用品を収納する容器であると認められる。甲15意匠は、全体につき、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状であって、長手方向の両側面上部に一対の把手部が設けられており、正面及び左側面から見て左右両端は上部に いくにつれて逆ハ字状に広がっている。 (イ) 甲20(平成20年9月10日公告(公開)の中国発行の公報(CN300826894D))の意匠に係る物品は「氷はち」であるから、氷のほか家庭用品を入れる容器であるものと認められる。甲20意匠は、全体につき、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の線材の把手部から成るものであり、正面及び左側面から 見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約104°である。 イ前記1(1)エ(ア)及び(イ)及び前記ア(ア)及び(イ)によれば、家庭用品等を入れる収納容器の物品分野において、本件意匠の全体の形状のうち、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状として、径を下方にいくにつ れて次第に小さくし、長手方向の両側面上部に一対の把手部を設けること(本件意匠の態様a及びc(前記1(1)イ(ア)))については、本件意匠の出願前に公然知られていたものと認められる。 ウ一方、正面から見た本体部の上端の形状につきみると、甲各意匠につき、以下 と(本件意匠の態様a及びc(前記1(1)イ(ア)))については、本件意匠の出願前に公然知られていたものと認められる。 ウ一方、正面から見た本体部の上端の形状につきみると、甲各意匠につき、以下のとおり認められる(正面については、本件意匠と同じく本体部の長 手方向を正面とする。)。 (ア) 甲15意匠に係る物品は前記ア(ア)のとおり家庭用品を収納する容器であり、正面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、上端は緩やかな凹弧状に形成されている。 (イ) 甲17(平成12年8月7日発行の意匠公報(登録第108178 3号))の意匠に係る物品は「整理かご」であり、意匠に係る物品の説明に「本物品は主に洗濯物を入れたり、日用品を整理したりする」と記載されていることから、甲17意匠は、家庭用品を収納する容器であると認められる。その本体部の上端の形状は、正面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、上端は略凹弧状に形成され ている。 (ウ) 甲18(昭和57年7月12日発行の意匠公報(登録第580057号))の意匠に係る物品は「小物入れ」であり、家庭用品を収納する容器であると認められる。その上端の形状は、図面代用写真によれば、正面から見て、上端は略凸弧状に形成されており、左右側面から見て若干非対称の凹弧状に形成されている。 (エ) 甲20意匠に係る物品は前記ア(イ)のとおり「氷はち」であるところ、その上端の形状につき、正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約104°である。 本体部の上端は緩やかな凹弧状に形成されている。 (オ) 甲21(平成23年12月28日公告(公開)の中国発行の公報(C N301774 字状に広がっており、底面となす角度は約104°である。 本体部の上端は緩やかな凹弧状に形成されている。 (オ) 甲21(平成23年12月28日公告(公開)の中国発行の公報(C N301774006S))の意匠に係る物品は「氷桶」であり、家庭用品を入れる容器である。正面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、左端及び右端は外側に凸の僅かな弧状に現されている。その左端及び右端が底面となす角度は約107°である。上端は略凹弧状に形成されている。 エ前記ウ(ア)ないし(オ)によれば、これらはいずれも本体部(甲18意匠については左右側面から見た状態も含む)の上端の形状が、略ないし緩やかな凹弧状(甲18については若干非対称)に形成されている。これらは、本件意匠の正面から見た本体部の上端の形状のうち、上端が倒弓状に形成され、中央部は略平坦状に現わされて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次 第に大きくなり本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になっている形状(本件意匠の態様d(前記1(1)イ(イ)))とは異なるものであり、こうした形状については原告の提出する甲1意匠、甲各意匠及び甲76号証ないし78号証に示された意匠には認められないところである。 そして、前記1(4)イのとおり、この上端の形状は、収納容器としての外 観を特徴付ける部分の形態であり、最も需要者の注意を強く惹く部分であ る。 オ本体部開口端部及び本体部底面の外周形状につきみると、甲各意匠につき、以下のとおり認められる(正面については、本件意匠と同じく本体部の長手方向を正面とする。)。 (ア) 甲15意匠の上部は開口し下端が水平面状の略逆円錐台形状である が、開口端部の外周形状と底面の外周形状は不明である。甲7 ついては、本件意匠と同じく本体部の長手方向を正面とする。)。 (ア) 甲15意匠の上部は開口し下端が水平面状の略逆円錐台形状である が、開口端部の外周形状と底面の外周形状は不明である。甲76号証(アマゾンのホームページ、印刷日令和5年1月18日)には、斜視及び正面視しか現わされていないものの、甲15意匠と同様の形状の収納かごが記載されており、甲15意匠と同様に解される。 (イ) 甲17意匠に係る物品は前記ウ(イ)のとおり「整理かご」であり、そ の下端は水平面状の略逆円錐台形状で、開口端部の外周形状は、平面視略円形状であって、底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略円形状である。 (ウ) 甲20意匠の下端は水平面状の略逆円錐台形状であり、本体部開口端部の外周形状は、平面視略横長トラック形状であって、本体部底面の外 周形状は、開口端部よりも小さい平面視略楕円形状である。 (エ) 甲21意匠に係る物品は前記ウ(オ)のとおり「氷桶」であり、その下端は水平面状の略逆円錐台形状で、開口端部の外周形状は、平面視略楕円形状であって、底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略楕円形状である。 カ前記オ(ア)ないし(エ)によれば、これらの本体部開口端部及び本体部底面の外周形状は、不明である(甲15)か、いずれも略円形状(甲17)ないし略楕円形状(甲21)であるか、一方が略楕円形状(甲20)であり、本件意匠の、本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形状である(本件意匠の態様a(前記1(1)イ(ア)))のとは異なるものであり、 これについては、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号証ないし78号証に示さ れた意匠には見られないものである。 キ把手部の形状につきみると、甲各意匠につき、 のとは異なるものであり、 これについては、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号証ないし78号証に示さ れた意匠には見られないものである。 キ把手部の形状につきみると、甲各意匠につき、以下のとおり認められる(いずれも把手部が現れている面を正面とする。)。 (ア) 甲8(「A」と題するブログに平成24年4月16日掲載)の意匠に係る物品は、これを説明する発売元のホームページ(甲8の3・4)によ れば、「ロープハンドル付き収納容器」である。同ホームページには、「多機能なラグビーストライプ柄の収納容器は、本や雑誌をまとめたり、リビングで毛布を投げ入れたり、寝室で枕を投げ入れたり、浴室で丸めたタオルを収納したりするのに最適です。両端のロープハンドルは持ち運びに便利で快適です。」との記載があるところから、甲8意匠は、家庭用 品を収納する紐(ロープハンドル)付きの容器であると認められる。甲8意匠の形態は、全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である本体部と、一対の紐状のロープハンドルから成るものであり、本体部開口端部の外周形状は略長方形状で、本体部底面の外周形状も略長方形状である。本体部の短手方向の正面及び背面上端寄りにロープハンドルが 設けられている。ロープハンドルは、軸方向に注連縄状に現されている。 ロープハンドルは、本体部の縦幅を上から約1:2:3に内分し、本体部の横幅を左から約1:2:1に内分した中央の位置にある。 (イ) 甲9(株式会社主婦の友が平成16年5月1日に発行した書籍「100円グッズ、かご、カラボ、スノコ、使える!アイデア収納」の110 頁掲載)の意匠に係る物品は「木箱」であり、家庭用品を収納する容器である。甲9意匠の形態は、全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である本体部と スノコ、使える!アイデア収納」の110 頁掲載)の意匠に係る物品は「木箱」であり、家庭用品を収納する容器である。甲9意匠の形態は、全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である本体部と、一対の紐状の把手部から成る。本体部開口端部の外周形状は略長方形状であり、本体部底面の外周形状も略長方形状である。 本体部の長手方向の正面及び背面上端寄りに把手部が設けられている。 把手部の紐は、軸方向に注連縄状に現されている。把手部は、本体部の横 幅を左から約1:2:1に内分した中央の位置にある。把手部の縦幅や、それが本体部の縦幅に占める比率は不明である。 (ウ) 甲10(平成17年11月23日付けで「B」のウェブページ掲載)の意匠に係る物品は「木箱」であるが、ウェブページに掲載された木箱の中には何も収納されておらず、何を収納する容器であるのかは不明であ る。甲10意匠の形態は、全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は略長方形状であり、本体部底面の外周形状も略長方形状である。本体部の長手方向の正面(及び背面)上端寄りに把手部が設けられている。把手部は、正面視略扁平U字状に現されており、把手部の 紐は、軸方向に注連縄状に現されており、把手部は、本体部の横幅を左から約2:3:2に内分した中央の位置にあるが、把手部の縦幅や、それが本体部の縦幅に占める比率は不明である。 (エ) 甲11(平成17年5月25日にAmazon.co.jpでの取り扱いが開始され、アマゾンのウェブページ掲載)の意匠に係る物品は「バ ケット」であり、ウェブページには「バケット」に収納されるものについての記載はないが、生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であると 開始され、アマゾンのウェブページ掲載)の意匠に係る物品は「バ ケット」であり、ウェブページには「バケット」に収納されるものについての記載はないが、生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であると認められる。甲11意匠の形態は、全体は、上部が開口して下端が水平面状の略有底円筒形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は略円形状であり、本体部底面の外周 形状も略円形状である。本体部の対向する上端寄りに把手部が設けられている。把手部は、略弧状に現されており、把手部は、本体部の縦幅を上から約1:2:5に内分した中央の位置にある。把手部の横幅や、それが本体部の径に占める比率は不明である。 ク前記キ(ア)ないし(エ)によれば、これらの把手部の紐は軸方向に注連縄状 に現されているが、これらはいずれも本体部開口端部及び本体部底面の外 周形状は略長方形状で、全体に箱状である(甲8ないし10)か、略円形状で、全体に円筒形状(甲11)であり、本件意匠の、全体に水平面状の略逆円錐台形状であり、一対の紐状の把手部(本件意匠の態様a(前記1(1)イ(ア)))が本体部の長手方向の両側面上部に設けられ(同c)、右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がり、底 面となす角度は約95°で(同e(前記1(1)イ(イ)))、把手部は右側面視略U字状に現わされており、かつ、太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされ(同f)、把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2:2に、最大横幅を左から約4:5:4に内分した中央の位置にある(同g)のとは異なるものであり、これについては、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号 証ないし78号証に示された意匠には見られないものである。 ケそして ら約4:5:4に内分した中央の位置にある(同g)のとは異なるものであり、これについては、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号 証ないし78号証に示された意匠には見られないものである。 ケそして、前記エ、カ及びクの、上端が倒弓状に形成され、中央部は略平坦状に現わされて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなり本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になっているとの点、本件意匠の、本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形状で あるとの点、及び、把手部が、右側面視略U字状に現わされており、かつ、太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされているとの点は、公知の意匠にはみられない独自のものであり、本件意匠に独特の美観をもたらすものということができる。 コ以上の検討によれば、本件意匠の本体部の上端の形状、本体部開口端部 及び本体部底面の形状並びに把手部の形状は、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号証ないし78号証に示された意匠とは異なるものであり、これらがありふれた手法により変更可能なものあるいは軽微な改変又は単なる寄せ集めではなく、略逆円錐台形状で、正面及び側面から見た本体部の左右両端が上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっている全体の形状とまとま り感のある一体の美観を形成している点に、着想の新しさないし独創性が 認められないものではないから、本件意匠は前記意匠から創作容易であるとはいえず、審決の判断に誤りはない。 (3) 原告の主張に対する判断ア原告は、甲20意匠の本体部開口端部の外周形状は、平面視略横長トラック形状ではなく、略楕円形状であり、本件意匠の本体部開口端部の外周 形状も同様であるから、審決の認定は誤りである旨を主張する。 しかし、甲20意匠の本体部開口端部の外周形状に 平面視略横長トラック形状ではなく、略楕円形状であり、本件意匠の本体部開口端部の外周 形状も同様であるから、審決の認定は誤りである旨を主張する。 しかし、甲20意匠の本体部開口端部の外周形状については、前記認定のとおり、一部に直線部分を含むものであるから、平面視略横長トラック形状であるということができ、本体部底面の外周形状は直線部分を含まない楕円形であるから、平面視略楕円形状であるということができる。 したがって、原告の主張は採用することができない。 イ原告は、本件意匠の正面から見た本体部の上端形状は、甲15意匠、甲17意匠、甲18意匠、甲20意匠及び甲21意匠にも見られる本件の出願前に公然知られた形状であるところ、審決は、甲15意匠の正面上端形状は緩やかな凹弧状、甲17意匠では略凹弧状、甲18意匠では左右非対 称の凹弧状、甲20意匠では緩やかな凹弧状(凹レンズ状の凹弧状)、甲21意匠では略凹弧状に上端形状が現わされているとするところ、これら意匠の上端形状を、原告が主張するように「凹曲線形状」として括ることがなぜ適切でないのか、又、これら湾曲した凹弧状と本件意匠の上端形状も「凹曲線形状」と認められるべきところ、これとは何が異なるのか、具体 的な理由も示されていないから、審決の創作非容易性の判断は誤りである旨を主張する。 しかし、甲15意匠、甲17意匠、甲18意匠、甲20意匠及び甲21意匠の本体部の上端形状については前記認定のとおりであり、これら本体部の上端の形状は略ないし緩やかな凹弧状に形成されているところ、これ らは、本件意匠の本体部の上端の形状のうち、中央部は略平坦状に現わさ れて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなり先尖り状となる形状とは異なるものと認められるところであ これ らは、本件意匠の本体部の上端の形状のうち、中央部は略平坦状に現わさ れて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなり先尖り状となる形状とは異なるものと認められるところである。 したがって、原告の主張は採用することができない。 ウ原告は、本件意匠の把手部は容器本体の両側面の上部に紐状の把手部が略U字状に設置されているが、これは甲1意匠、甲6意匠、甲7意匠、甲 8意匠、甲9意匠、甲10意匠、甲11意匠及び甲78に示された意匠にあるように本件意匠の出願前から公知であり、把手部が配されている位置についても、把手部の機能である持ち運び時に容器を安定して持ち運ぶことを考慮するならば、必然的に容器本体の正・背面あるいは両側面の中央部に配置することは当然で、甲1意匠、甲6意匠ないし甲11意匠に示さ れた容器においても略中央部に把手部を設けて持ち運びやすくしており、この点に創作性はない旨を主張する。 しかし、意匠の創作は、個々の構成態様だけではなく、それらの結合に基づく全体としての美観を基準として判断すべきものであるところ、既に述べたとおり、本件意匠の本体部の形状と結合した把手部として、本件意 匠の把手部のように右側面視略U字状に現わされており、かつ、太めの荒縄状で、軸方向に注連縄状に現わされているものは、甲1意匠、甲各意匠及び甲76号証ないし78号証に示された意匠には見られないものである。 したがって、原告の主張は採用することができない。 3 結論以上のとおり、審決の認定及び判断に誤りは認められず、原告主張の取消事由1ないし取消事由3には、いずれも理由がない。 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 主文 原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 理由 は認められず、原告主張の取消事由1ないし取消事由3には、いずれも理由がない。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 水野正則 (別紙審決書写し省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る