平成26(ワ)31948 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年2月25日 東京地方裁判所
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平成28年2月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第31948号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成27年12月15日判決 原告ハンディテクノ株式会社同訴訟代理人弁護士河本憲寿同河本智子同堀裕岳同藤原寿人同補佐人弁理士武田明広 被告ウッディワールド株式会社 主文 1 被告は,別紙被告製品目録記載のデッキ材固定装置を製造し,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出し,若しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は,別紙被告製品目録記載のデッキ材固定装置を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,77万6528円及びうち75万7791円に対する平成26年12月12日から,うち1万8737円に対する同月19日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は,これを2分し,その1を被告の,その余を原告の,各負担とする。 6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主文第1,2項と同旨 2 被告は,原告に対し,2310万円及びこれに対する平成26年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概 び理由第1 請求 1 主文第1,2項と同旨 2 被告は,原告に対し,2310万円及びこれに対する平成26年12月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,発明の名称を「デッキ材の固定装置」とする特許権を有する原告が,デッキ材固定装置を業として販売等する被告に対し,これらの行為が上記特許権を侵害する旨主張して,①同製品の製造,販売等の差止め及びその廃棄,②不法行為に基づく損害賠償金2310万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成26年12月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(1) 当事者ア原告は,建築材料の開発,製造,販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,建築材料の輸出入及び販売,床板及び壁板等の建築材料の製造及び加工等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」という。)を有する。 ア発明の名称デッキ材の固定装置イ出願日平成18年7月31日ウ登録日平成24年1月20日エ特許番号特許第4908098号(3) 特許請求の範囲の記載本件特許出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,同請求項に係る発明を「本件特許発明」という。)。 「平行に配列される両デッキ材の側面間に挟着されるネジホルダーと,このネジホルダーを根太上に固定するための止めネジとからなり,ネジホルダーは,内部中央に,止めネジを遊挿し得る縦孔を有するとともに,両側に,両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有し,各連結板は,前縁 定するための止めネジとからなり,ネジホルダーは,内部中央に,止めネジを遊挿し得る縦孔を有するとともに,両側に,両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有し,各連結板は,前縁に,デッキ材側面の係止凹溝と係合するフックをそれぞれ備えるとともに,連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備え,前記連結板のうち,先に配置されたデッキ材に挿着される第1連結板においては,前縁の上方と下方に前記フックが設けられ,次に配置されるデッキ材に挿着される第2連結板においては,前縁の下方に前記フックが設けられていることを特徴とするデッキ材の固定装置。」(4) 本件特許発明の構成要件本件特許発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」などという。)。 A 平行に配列される両デッキ材の側面間に挟着されるネジホルダーと,このネジホルダーを根太上に固定するための止めネジとからなり,B ネジホルダーは,内部中央に,止めネジを遊挿し得る縦孔を有するとともに,両側に,両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有し,C 各連結板は,前縁に,デッキ材側面の係止凹溝と係合するフックをそれぞれ備えるとともに,連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備え,D 前記連結板のうち,先に配置されたデッキ材に挿着される第1連結板においては,前縁の上方と下方に前記フックが設けられ,次に配置されるデッキ材に挿着される第2連結板においては,前縁の下方に前記フックが設けられていることを特徴とするデッキ材の固定装置。 (5) 被告の行為被告は,業として,別紙被告製品目録記載の製品1及び2(以下「被告製品」と総称する。)を販売した。 2 争点 けられていることを特徴とするデッキ材の固定装置。 (5) 被告の行為被告は,業として,別紙被告製品目録記載の製品1及び2(以下「被告製品」と総称する。)を販売した。 2 争点(1) 被告製品は本件特許発明の構成要件B及びCを充足するか(被告製品が本件特許発明の構成要件A及びDを充足することについては,争いがない。)。 (2) 本件特許には無効理由が存在するか。 (3) 原告の損害額(4) 差止め及び廃棄の必要性 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(被告製品の構成要件B及びC充足性)についてア原告の主張(ア) 構成要件Bについてa 被告製品の構成は「デッキジョイント金物は,内部中央に,デッキジョイントビスを遊挿し得る縦孔を有するとともに,両側に,両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる第1連結板及び第2連結板をそれぞれ有し,」であるところ,被告製品における「デッキジョイント金物」は本件特許発明の「ネジホルダー」に相当し,被告製品の「デッキジョイントビス」は本件特許発明の「止めネジ」に相当するから,被告製品の上記構成は本件特許発明の構成要件Bを充足する。 b 「遊挿し得る」とは,「遊挿状態を実現できる」という意味であり,「遊挿状態」とは「挿入物と被挿入物との間に遊び(隙間)がある挿入状態」を意味する。 被告製品は,ネジホルダーの縦孔内の最も深い位置まで止めネジを挿入した状態(甲11の1)から,止めネジの下端側をつまんで上方へ持ち上げるように力を加えると,止めネジの頭部がネジホルダーの上方へ突出した状態(甲11の2)となるまで,ほとんど何の抵抗も受けることなく簡単に止めネジを動かすことができる。また,この状態から,止めネジを更に上方へ持ち えると,止めネジの頭部がネジホルダーの上方へ突出した状態(甲11の2)となるまで,ほとんど何の抵抗も受けることなく簡単に止めネジを動かすことができる。また,この状態から,止めネジを更に上方へ持ち上げるように力を加えると,止めネジの頭部がネジホルダーの上方へ大きく突出した状態となるまで,同様にほとんど何の抵抗も受けることなく,簡単に止めネジを動かすことができる(甲11の3)。そして,この状態から,止めネジをフリーの状態とする(止めネジを支えていた手を放す)と,重力に従って止めネジが瞬時に落下し,止めネジの頭部がネジホルダーの縦孔の開口部に接触した状態となる(甲11の4)。 上記のような被告製品におけるネジホルダーに対する止めネジの動作態様に鑑みると,止めネジがネジホルダーの縦孔内に挿入された状態にあるとき,両者間には遊び(隙間)が存在することが明らかである。 c 被告製品は,根太材上に配置したデッキ材の係止凹溝内へ連結板を挿入するようにしてデッキ材の側面にネジホルダーを圧着し,ネジホルダーの上方へ突出する止めネジの上部を指で保持しながら頭部をカナヅチで軽くたたいた場合,止めネジの先端を根太内に簡単に打ち込むことができ,その結果,ネジホルダーを所定の取付け位置に簡単な手法で,かなり安定した強度で仮固定することができるとの効果(本件特許発明の構成要件Bによって期待できる効果と同一の効果)を期待できる。 (イ) 構成要件Cについてa 被告製品の構成は「第1連結板及び第2連結板は,前縁に,デッキ材側面の係止凹溝と係合するフックをそれぞれ備えるとともに,第1連結板及び第2連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備え,」であるところ,被告製品の「第1連結板及び第2連結板」は本件特許発明の「連結板」に 係合するフックをそれぞれ備えるとともに,第1連結板及び第2連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備え,」であるところ,被告製品の「第1連結板及び第2連結板」は本件特許発明の「連結板」に相当するから,被告製品の上記構成は本件特許発明の構成要件Cを充足する。 b 甲13に示すように,デッキ材の係止凹溝内に被告製品の連結板を挿入した場合,連結板の下端よりも下方に存在する弾性片がデッキ材の係止凹溝と接触した状態となる。そして,係止凹溝における弾性片との接点には,連結板の荷重を含む力が作用しているはずである。したがって,被告製品の連結板は,デッキ材の係止凹溝内において,弾性片によって支持されていることになり,被告製品は本件特許発明の構成要件Cを充たす。 イ被告の主張(ア) 構成要件Bについてa 被告製品の連結板は,本件特許発明と同様の構成であるが,被告製品のネジホルダーは,縦孔を有するものの,止めネジの下部は螺合している。縦孔の上方直径はビスの外径より0.1mm狭く,そのまま押圧しただけでは挿入不可能であるが,ビスを螺合していくと,縦孔の内周面がビスのらせん形状に沿って弾性変形し,雌ネジ様に凹溝が形成される。 このように,被告製品においては,ビスが縦孔の一部区間で螺合することにより挿入するようになっており,ビスは縦孔内の一定地点で必ず係止するため,「止めネジを遊挿し得る縦孔」とはなっていない。 また,被告製品には,縦孔の上端側に突起11など存在しない。 b 本件特許発明の効果として「・・頭部をカナヅチで軽く叩くことで,止めネジの先端を根太内へ打ち込むと,ネジホルダーを所定の取付け位置へ,簡単な手法でかなりの安定した強度で仮固定することができる。」とされるように,カナヅチで軽くたたくことで根太に打ち込むこ で,止めネジの先端を根太内へ打ち込むと,ネジホルダーを所定の取付け位置へ,簡単な手法でかなりの安定した強度で仮固定することができる。」とされるように,カナヅチで軽くたたくことで根太に打ち込むことが可能な止めネジを遊挿し得る縦孔が必須であり,これにより根太上に確実に仮固定できるという効果が生じる。 以上からすれば,本件特許では,カナヅチで軽くたたく程度では根太に打ち込むことができない螺合構成(被告製品)は除外される。 (イ) 構成要件Cについてa 被告製品のフックは本件特許発明と同様の構成であるが,被告製品は弾性片を有するものの,連結板を係止凹溝内において支持させておらず,弾性片は0.1~0.2mmほど連結板の下面より突出していて係止凹溝の下面にわずかに接するのみであり,何の機能も有していない。 なお,被告製品において「弾性片が連結板に接しておりデッキジョイント金物の重力を受ける」としても,このような状態をもって「連結板を係止凹溝内において支持させる」とはいわない。 被告製品の弾性片は,単にデッキ材の溝の下側面に載置されるだけであり,上方で弾性力を受ける部材がないと支持できない。 b 本件特許の明細書(甲2)には,「・・これらの連結板を前記係止凹溝6内へ浮くように支持するための複数個の板バネからなる弾性片17が設けられている。」「・・図14に示すように,第1連結板14の上面に向けて設けられた弾性片17が,デッキ材3aの係止凹溝6の上面を反力面として,連結板14を下方へ押し下げるように突出するとともに,第1連結板14の下面に向けて設けられた弾性片17が,係止凹溝6の下面に接触して連結板14の押し下げ力を吸収するように屈曲し,上下の弾性片17,17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置され の下面に向けて設けられた弾性片17が,係止凹溝6の下面に接触して連結板14の押し下げ力を吸収するように屈曲し,上下の弾性片17,17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置される。」と記載されており,すなわち弾性片17,17が協働して連結板を係止凹溝内において支持させているのである。 しかし,被告製品は,このような構成にはなっていない。 (2) 争点(2)(本件特許の無効理由の存否)についてア被告の主張(ア) 本件特許発明は,特開2004-218311号公報(乙1)を主引用例として,特開2006-193974号公報(乙3),登録実用新案公報第3120851号(乙4),特開平07-091428号公報(乙5),特開2003-213902号公報(乙6),特開2006-132264号公報(乙7)等を組み合わせることにより,進歩性を欠く。 すなわち,本件特許発明の構成要件Aは乙1及び乙3に,構成要件Bは乙1及び乙4に(乙1には,縦孔ではないが止めネジを遊挿し得る部位がある。),構成要件Cは乙7及び乙1に(乙7には連結板の前縁にフックを設ける構成が,乙1には弾性片が挟持部と協働して連結板を支持する構成が,それぞれ開示されている。),構成要件Dは乙7に(乙7には連結板の前縁にフックを設ける構成が開示されており,必要に応じて複数の箇所にフックを設けることは当業者にとって容易である。),それぞれ開示されており,本件特許は単なる公知技術の寄せ集めである。 なお,乙31(特開2002-206276号公報)には,下方フックに対応する係止部25が開示されている(段落【0024】ないし【0029】,図1~5,7,9参照)。 唯一,特許庁が本件特許発明特有の効果であると認めた「拝み入 6号公報)には,下方フックに対応する係止部25が開示されている(段落【0024】ないし【0029】,図1~5,7,9参照)。 唯一,特許庁が本件特許発明特有の効果であると認めた「拝み入れ」についても,公知の工法であり,床材分野において普通に用いられている技術である。 すなわち,「拝み入れ」と呼ばれる取付方法は,デッキ材などの施工において,側縁が互いに差込み構造となっている部材を相互に差し込んで面一にするに当たり,屈曲しやすい部分を利用して一時的にその部分を屈曲させ,その後,それぞれの部材及び付属する固定部品に設けられた両側縁の凹凸を付き合わせた形にして,屈曲部の頂点を上から加圧することにより,両側縁の凹凸の嵌合を完成させて全体を面一状態にさせるものである。 上記「拝み入れ」は,乙1のデッキ固定装置においても実施可能な取付方法であり,また乙6には,多少構造は異なるが,同様の方法が開示されている。 したがって,本件特許発明は,当業者であれば上記複数の公知文献から容易に想到し得るものであり,本件特許は無効である。 (イ) 本件特許は,特許法36条4項に違反し,無効である。 本件特許の構成要件Bは「遊挿」が要件とされており,これは造語であって,しかも明細書に定義はないものの,「遊びがある状態で挿入する」ことと解される。本件特許の実施例としては「突起11とネジ溝9の上端部とが係合し」と記載されるのみ(明細書の段落【0035】ないし【0040】)であるが,係合と遊挿とは相反する概念であって,両者の関係は,当業者には明確に理解できない。したがって,上記実施例の記載は特許法36条4項に違反する。 このほか,本件特許の請求項3は,独立項である請求項1の従属項となっているが,請求項3で 関係は,当業者には明確に理解できない。したがって,上記実施例の記載は特許法36条4項に違反する。 このほか,本件特許の請求項3は,独立項である請求項1の従属項となっているが,請求項3では「遊挿」部分と「突起」部分とがあり,突起部分ではネジが係合するようになっている。「縦孔」に「突起」があってネジが係合するにもかかわらず,ネジは遊びを持って挿入するということが意味するところは,技術者には理解できない。 イ原告の主張(ア) 仮に各構成要件が公知技術であるとしても,本件特許発明が公知技術であることにはならない。 また,構成要件Dの「下方にフックが設けられている」点については,乙7で開示されておらず,公知技術ではない。このほか,「必要に応じて複数の箇所にフックを設けること」が当業者にとって容易であるとする根拠が不明である。 (イ) 甲4の14及び15のとおり「遊挿状態」が実現できれば,「遊挿し得る」に該当する。 そして,「遊挿」という言葉は,一義的に広く用いられている用語であり,明細書において定義がなくても,特許法36条4項に違反するものではない。 (3) 争点(3)(原告の損害額)についてア原告の主張原告は,次の(ア)(イ)を選択的に主張する。 (ア) 特許法102条2項に基づく主張被告は,被告製品を製造・販売するところ,被告製品1個当たりの販売価格は35円である。また,被告製品の製造・販売個数は,本訴提起までの間で少なくとも合計150万個である。さらに,被告製品の販売による利益率は,販売価格の40%である。 以上を前提とすると,被告は,被告製品の販売により,35円(単価)×150万個(販売数)×40%=2100万円の利益を得ていることになり, 益率は,販売価格の40%である。 以上を前提とすると,被告は,被告製品の販売により,35円(単価)×150万個(販売数)×40%=2100万円の利益を得ていることになり,特許法102条2項により,上記利益は原告の損害と推定される。 また,本訴追行に当たり相当な弁護士費用は,上記損害額の10%である210万円が相当である。 なお,通常,被告製品と同様の製品を作成する場合には,少なくとも20円程度が原価としてかかるはずであり,単価が1円であるとは考え難い。また,被告は,被告製品の単価が13万2308円とする部分もあり,不自然である。このように,被告が主張する被告製品の単価及び販売数量は信用できない。 (イ) 特許法102条1項に基づく主張原告製品,被告製品ともにデッキ材とセットで販売することを予定しており,原告も原告製品を単体で販売していない。単体で売られることのない被告製品については,合理的な単価が設定されておらず,これを基礎に原告の損害額を算定することは妥当ではない。 被告によるデッキセット販売により,原告のデッキセットの販売機会喪失が招来されているのであるから,原告のデッキセット1㎡当たりの利益に,被告が被告デッキセットを使用して施工した面積(被告施工面積)を掛けた金額が,被告による侵害行為と相当因果関係のある損害となる。 そして,原告が,被告作成の「会社案内」(甲14)に記載された施工現場合計195件のうち10件の現場においてデッキ材の平米数等について調査を実施し,被告製品の存在が確認できた7件についてデッキ材の平米数を測定したところ,合計1805㎡であった。 以上からすれば,被告がデッキ材の平米数について申告した1732㎡という数字は過少であり,被告施工面積は,1805㎡÷7 きた7件についてデッキ材の平米数を測定したところ,合計1805㎡であった。 以上からすれば,被告がデッキ材の平米数について申告した1732㎡という数字は過少であり,被告施工面積は,1805㎡÷7件×195件=約5万0282㎡であり,原告デッキセットの1㎡当たりの利益は平均1700円である(甲16)から,特許法102条1項に基づく原告の損害は,1700円に5万0282㎡を乗じた金額である8547万9400円となる。 イ被告の主張(ア) 原告の特許法102条2項に基づく主張についてa 仮に被告製品が本件特許権を侵害するとしても,被告は被告製品を改善しており,侵害の期間は平成25年3月18日から平成26年12月19日までである。 また,被告は被告製品を製造しておらず,輸入しているにすぎない。上記期間における被告製品の輸入個数は3万8000個,輸入原価は18.20円/セットであり,販売個数は3万2722個であって,これに対応する仕入総額は3万2722個×18円/個=59万8055円である(判決注:主張をそのまま記載したものであり,計算は誤りである。)。 他方で,被告製品の販売価格合計は66万3499円であるから,被告の粗利益は66万3499円-59万8055円=7万4503円となる(判決注:上記同様,計算は誤りである。)。 b なお,被告は被告製品を単独で販売することはないため,デッキ材の付属部品とみなして,帳簿上,数字合わせとして1円~13万2308円とした。これは便宜上の価格にすぎず,無料サービス品として提供することもしばしばあるが,商品として扱っている以上,会計処理として計上する必要及び数量管理の必要があるため,1円という数字も計上している。このように,被告製品は,正確な売価は出せない部品である 供することもしばしばあるが,商品として扱っている以上,会計処理として計上する必要及び数量管理の必要があるため,1円という数字も計上している。このように,被告製品は,正確な売価は出せない部品である。 また,被告製品はデッキ材とともに販売されているが,同製品の輸入時期と使用時期は必ずしも一致しておらず,その上,製品切替えに当たっては,在庫の旧製品の使用時期が重なっているとともに,各施工現場でも旧製品・被告製品は入り乱れて使用されており,被告もその実態を正確に把握するのは到底困難であるから,被告製品に関しては,輸入価格を販価とせざるを得ない。 (イ) 原告の特許法102条1項に基づく主張についてa 被告製品の使用期間におけるデッキ材の施工面積を報告しても,被告製品の販売個数を正確に算出することは困難である。被告製品輸入後の期間に該当する施工現場(乙34)で,必ず被告製品を使用していたとは限らない。 また,被告製品の輸入時期と使用時期とは一致しておらず,被告製品と従来製品との使用時期を明確に区切ることはできない。さらに,2mのデッキ材に対して(被告製品)5個という標準的使用数を設定しているが,職人がそのとおり実施しているかどうかは不明である。 また,デッキ形状によって,切断箇所も生ずるので,供給したデッキジョイント金物とデッキ材面積とが常に対応しているとは限らない。 以上からすれば,デッキ材の帳簿上の出庫数がデッキ面積とは一致しないことが明らかであり,乙36から出庫数を抽出してデッキ材の総面積を算出し,それを基に被告製品(の売上)を計算しても,全く意味をなさない。 b 原告が調査して被告製品が使用されていたとする施工現場7件のうち3件では被告製品が使用されていない可能性がある。 また,被告は,デッキ材として天然 の売上)を計算しても,全く意味をなさない。 b 原告が調査して被告製品が使用されていたとする施工現場7件のうち3件では被告製品が使用されていない可能性がある。 また,被告は,デッキ材として天然木と人工木を使用しているところ,会社案内(甲14)では,これらが一緒に扱われている。そして,被告は,天然木ではデッキジョイント金物を使用せず,ビスにより取り付けているところ,被告の人工木デッキの販売数は,天然木デッキに比べて圧倒的に少ない。 c セットのような複合製品においては,部品製品に特許権を有する場合に,複合製品全体を損害額の対象とするならば,使用されている部品製品の全体に対する貢献率を掛けて損害額を算出するのが常識である。 (4) 争点(4)(差止め及び廃棄の必要性)についてア原告の主張本件において,被告製品の販売等の差止めや,被告製品の廃棄の必要性がある。 イ被告の主張被告は,平成26年12月19日以降,被告製品を改善した。具体的には,被告製品において全く機能しておらず,逆効果さえ生じていた弾性片を廃止し,弾性片が存在していた窓状の空間を閉止したものである。 以上からすれば,被告製品の使用差止め等の必要性はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告製品の構成要件B及びC充足性)について(1) 本件特許に係る明細書(甲2)には,以下の記載がある。 ア 【技術分野】「本発明は,建築物のテラスやバルコニーなどの床面を,細幅長尺なデッキ材を互いに平行に配列して,ネジを上面から直接ネジ止めすることなく接合できるようにした床面施工工事に際し,デッキ材の取付け作業を能率よくかつ正確に仕上げられるようにしたデッキ材の固定装置の改良に関するものである。」(段落【0001】)イ 【発明 ことなく接合できるようにした床面施工工事に際し,デッキ材の取付け作業を能率よくかつ正確に仕上げられるようにしたデッキ材の固定装置の改良に関するものである。」(段落【0001】)イ 【発明が解決しようとする課題】「しかし,特許文献1に示されるデッキ材の固定装置は,押さえ板の一端にデッキ材の側面の凹溝内に係止される係止部を備えたクランプを取付けて,このクランプの係止部によって押さえ板をデッキ材の凹溝内に水平に支持することを特徴としており,押さえ板にネジが螺着されているとはいえ,このネジは,押さえ板をデッキ材の凹溝内に取付ける際に,単にネジが脱落することなく保持できるようにしたものである。」(段落【0010】)「そのため,ネジの取付け高さを,常に下端が根太上に支持されて,押さえ板へ垂直な状態で支持されるようにセットしておかなければならず,ネジの下端が根太上に届かないように短く取付けられている場合とか,ネジの下端が長く突出し過ぎている場合には,押さえ板が傾斜して不安定な状態となるので,常にネジの高さ調整に注意して,不適切な位置へ取付けられないように気をくばらなければならないという問題を有している。」(段落【0011】)ウ 【課題を解決するための手段】「本発明は,従来におけるこの種のデッキ材固定装置の問題点を解消するため,デッキ材の固定装置を構成するネジホルダーを,隣接する,先に取付けられたデッキ材と次の取付けられるデッキ材との間の正確な位置へ取付けるに際し,止めネジによって簡単な手法で迅速に仮固定することができ,工事に際して,作業者が常に所定の間隔を置いて配置された止めネジによる仮固定状況を看取して,隣接するデッキ材との配列が適正に維持された,仕上がり状態の美麗な施工を期待できるデッキ材固定装置の提供 ,工事に際して,作業者が常に所定の間隔を置いて配置された止めネジによる仮固定状況を看取して,隣接するデッキ材との配列が適正に維持された,仕上がり状態の美麗な施工を期待できるデッキ材固定装置の提供を目的としたものである。」(段落【0012】)エ 【発明の効果】「本発明のデッキ材固定装置は,内部に止めネジを遊挿し得る縦孔を開設したネジホルダーを,一方のデッキ材の側面に取付ける際に,ネジホルダーの中間部から突出した一方の連結板を,デッキ材の係止凹溝内へ挿入するようにしてデッキ材の側面に圧着し,ネジホルダーの上方へ突出する止めネジの上部を指で保持しながら頭部をカナヅチで軽く叩くことで,止めネジの先端を根太内へ打ち込むと,ネジホルダーを所定の取付け位置へ,簡単な手法でかなりの安定した強度で仮固定することができる。」(段落【0018】)オ 【実施例】「一方,第1連結板14及び第2連結板15の板面の両側部分には,これらの連結板を前記係止凹溝6内へ浮くように支持するための複数個の板バネからなる弾性片17が設けられている。・・・」(段落【0030】)「・・・ネジホルダー1における縦孔10の上端内周面に設けた突起11が,縦孔10内に挿通された止めネジ7のネジ溝9上端部と係合して,ネジホルダー1と止めネジ7とが一体化された状態となっている・・・」(【段落0035】)「そのため,本発明の固定装置では,図13のように,ネジホルダー1の第1連結板14の挿着を終えた後に,その場で,図14に示すように,直ちに止めネジ7の頭をカナヅチで軽く叩いて,下端の尖状部13を根太2内へ打ち込んで,止めネジ7を根太2に仮固定する。」(段落【0038】)「このように,止めネジ7の頭を叩いて尖状部13を根太2内へ打ち込むと,図4に示 叩いて,下端の尖状部13を根太2内へ打ち込んで,止めネジ7を根太2に仮固定する。」(段落【0038】)「このように,止めネジ7の頭を叩いて尖状部13を根太2内へ打ち込むと,図4に示した,止めネジ7のネジ溝9上端部と縦孔10の上端の突起11との係合が外されることで,ネジホルダー1と止めネジ7との連結状態が解かれ,ネジホルダー1は止めネジ7に対してフリーの状態となる。」(段落【0039】)「ネジホルダー1が止めネジ7に対してフリーの状態になると,ネジホルダー1は,自重により,図13に示した高さ位置より下方へ落下することになる。その時,図14に示すように,第1連結板14の上面に向けて設けられた弾性片17が,デッキ材3aの係止凹溝6の上面を反力面として,連結板14を下方へ押し下げるように突出するとともに,第1連結板14の下面に向けて設けられた弾性片17が,係止凹溝6の下面に接触して連結板14の押し下げ力を吸収するように屈曲し,上下の弾性片17,17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置される。」(段落【0040】)(2) 被告製品の構成について被告製品の構成要件充足性の前提問題として,被告製品の構成について当事者間には争いがある。 まず,被告製品のうち,ビスの寸法に関して当事者間に争いがあり,原告は,「デッキジョイントビスの軸部分の先端側の約20mmの部分の直径は,ビス頭側の部分よりも若干小さい(約2.5mm)」と主張し,被告は,「デッキジョイントビスの軸部分の先端側の部分の寸法(直径)は3.7mmであり,ビス頭側の部分よりも若干大きい」と主張する。 しかし,ビスの軸部分の先端側の部分の直径に関しては,原告は,ネジ山を除いたビスの軸部分の直径を,被告は,ネジ山を含めたビス 直径)は3.7mmであり,ビス頭側の部分よりも若干大きい」と主張する。 しかし,ビスの軸部分の先端側の部分の直径に関しては,原告は,ネジ山を除いたビスの軸部分の直径を,被告は,ネジ山を含めたビスの軸部分の直径を,それぞれ計測したために,それぞれの数字が異なるにすぎないことが判明しており(原告準備書面(1),被告準備書面(2)),この点に関する両者の主張は実質的に食い違うものとは認められない。このほか,被告製品のビスの長さ等についても争いがあるが,この点は,被告製品の構成要件充足性には影響を及ぼさない。 また,被告製品における縦孔の上方の突起の有無,内周面におけるネジ溝の有無に関しても当事者間には争いがあり,原告は,「縦孔10の内周面には,ネジ溝は形成されておらず,縦孔10の上端側の縁部には,縦孔10の内径を狭めるように内側へ突出した突起11が形成されている」と主張し,被告は,「ビスを縦孔に螺合していくと,縦孔の内周面がビスのらせん形状に沿って弾性変形し,雌ネジ様に凹溝が形成される」「被告製品には突起11は存在しない」と主張する。 これらの点は,被告製品の構成要件B充足性に全く関係がないとまではいえないが,実際には,後記(3)のとおり,上記の点をどう認定するかにかかわらず,被告製品が構成要件Bを充足することが認められるため,結論に影響を及ぼすものではない。 (3) 被告製品の構成要件B充足性についてア被告は,被告製品のネジホルダーは縦孔を有するものの,止めネジの下部は螺合しており,このように螺合する被告製品は,「遊挿」の要件を充たさない旨主張する。 イそこで検討するに,まず,特許技術用語集(乙17)において,「遊挿」につき「遊びがある状態に挿入すること」と記載されている。 また,本件特許に係る明細書 の要件を充たさない旨主張する。 イそこで検討するに,まず,特許技術用語集(乙17)において,「遊挿」につき「遊びがある状態に挿入すること」と記載されている。 また,本件特許に係る明細書(甲2)には,突起11が,縦孔10内に挿通された止めネジ7のネジ溝9上端部と係合して,ネジホルダー1と止めネジ7とが一体化されることが記載されている(段落【0035】)が,止めネジ7の頭をたたくことにより止めネジ7のネジ溝9上端部と縦孔10の上端の突起11との係合が外され,ネジホルダー1と止めネジ7との連結状態が解かれ,ネジホルダー1が止めネジ7に対してフリーの状態となることも記載されており(段落【0039】),このフリーの状態となっている止めネジと縦孔との関係を「遊挿」ということができる。 他方で,被告製品においては,縦孔の上部の若干狭い部分において,止めネジの挿入が阻止されてはいるが,証拠(甲11の3及び4,被告製品についての当裁判所の検証の結果(検甲1))によれば,被告製品においてビスを縦孔内に挿入した後,4~5回程度ビスを回転させることにより,ネジホルダーの縦孔にビスを装着させることができ,同装着後は,壁板8内でビス(止めネジ)が遊びをもって移動していることが認められ,この状況は上記「遊挿」に相当するものといえる。 ウ被告は,被告製品では縦孔の一部区間でビスが必ずいったん係止する旨主張する。しかし,そもそも本件特許発明において,ネジホルダーと止めネジとが常に「遊挿」状態にあることが求められるわけではなく,明細書には,初めはネジホルダーと止めネジとが係合するが,後に「遊挿」状態になる事例が実施例として記載されており(段落【0035】【0039】参照),このような形態のものも本件特許発明を充足するものである。 そし はネジホルダーと止めネジとが係合するが,後に「遊挿」状態になる事例が実施例として記載されており(段落【0035】【0039】参照),このような形態のものも本件特許発明を充足するものである。 そして,当裁判所の検証の結果(検甲1)からすれば,被告製品においては,ビスを縦孔内に挿入しようとする際に,4~5回程度ビスを回転しなければ縦孔にビスを挿入できないが,その後,ビスが縦孔にきちんと装着された後は,ビスが遊びをもって動く状態になっているものであって,被告製品においても「遊挿」状態となっている。 このほか,被告は,被告製品においてはビスをカナヅチで軽くたたく程度では根太に打ち込むことができず,このような構成は本件特許の対象から除外されるとも主張する。 しかし,上記のとおり,被告製品においても,少なくともビスが縦孔にきちんと装着されて「遊挿」状態となった後は,ビスをカナヅチで軽くたたく程度でも根太に打ち込むことができるものと認められるから,本件特許発明が奏する上記効果を奏するものであり,被告の上記主張は理由がない。 エ以上のとおり,被告製品は「止めネジを遊挿し得る縦孔」を有するものといえ,構成要件Bを充足する。 (4) 被告製品の構成要件C充足性についてア被告は,本件特許においては複数個の弾性片が協働して連結板を支えるところ,被告製品は弾性片を有するものの,連結板を係止凹溝内において協働して支持させておらず,弾性片は何の機能も有していない旨主張する。 イ確かに,本件特許に係る明細書(甲2)においては,実施例の記載として,「上下の弾性片17,17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置される」との記載がある(段落【0040】)が,これは一実施例にすぎず,構成要件Cにおいては ,実施例の記載として,「上下の弾性片17,17の弾力により連結板14を係止凹溝6内の中間位置に水平に配置される」との記載がある(段落【0040】)が,これは一実施例にすぎず,構成要件Cにおいては,連結板に複数個の弾性片を設けることや,協働して連結板を支持し得るように「弾性片」を連結板の上下の位置に設けることについては何ら規定されていないから,本件特許においては複数個の弾性片が協働して連結板を支える点が必須であることを前提とする被告の主張は,その前提を欠くものである。 また,「支持」との文言の意味については,明細書上特段定義されていないところ,物体1が物体2の重力を受けながらこれに耐えている状態であれば,物体1は物体2を支持しているといってよく,被告製品の係止凹溝内において,連結板の下部に設けられた「弾性片」が連結板の重みを支えており,弾性片自体は係止凹溝の下面に接していること(甲13)からすれば,被告製品においては,弾性片が連結板を支持しているものといえる。この点に関し,被告は,「弾性片が連結板に接しており,デッキジョイント金物の重力を受ける」のみでは,弾性片が連結板を支持していることにはならないとも主張するが,上記のとおり,被告の同主張は採用できない。 ウ以上からすれば,被告製品は,「連結板を係止凹溝内において支持させる弾性片」を備えるものといえ,構成要件Cを充足するといえる。 2 争点(2)(本件特許の無効理由の存否)について(1) 本件特許発明の進歩性の有無について被告は,本件特許発明が乙1を主引用例として乙3ないし7等を組み合わせることにより進歩性を欠く旨主張する(もっとも,被告は,本件特許発明と主引用例の一致点・相違点を認定した上で,同相違点が周知技術等から容易想到であるとの通常の手法による進歩性欠如の主 等を組み合わせることにより進歩性を欠く旨主張する(もっとも,被告は,本件特許発明と主引用例の一致点・相違点を認定した上で,同相違点が周知技術等から容易想到であるとの通常の手法による進歩性欠如の主張はしていない。)ので,以下検討する。 ア乙1(特開2004-218311号公報,公開日平成16年8月5日)には,以下の(ア)ないし(ク)の記載が存在する。 (ア) 【請求項1】「根太の上にデッキ材を載置し,隣接するデッキ材の対向面に形成してある溝に押え材を掛け渡し,前記隣接するデッキ材の間からねじを前記押え材に貫通して前記根太にねじ込むことによりデッキ材を根太に固定する装置において,前記押え材は,その少なくとも一方のデッキ材側の端部に弾性を有するクランプが装着されているクランプ付き押え材であり,前記根太に先に載置されるデッキ材の溝に前記クランプの弾性を用いて前記押え材の一端部を嵌合して前記デッキ材に予め取付けられ,又は根太に固定したデッキ材の溝に前記クランプ付き押え材を取付けた後,前記根太に後に載置されるデッキ材の溝に前記押え材の他端部が嵌合された状態で前記ねじが前記根太にねじ込まれることを特徴とするデッキ材固定装置。」(イ) 【発明の属する技術分野】「本発明は,・・・根太の上にデッキ材を載置し,隣接するデッキ材の対向面に形成してある溝に押え材を掛け渡し,前記隣接するデッキ材の間からねじを前記押え材に貫通して前記根太にねじ込むことによりデッキ材を根太に固定する装置に関する。」(段落【0001】)。 (ウ) 【発明の実施の形態】「・・・押え材10の幅方向中央に平行に起立する一対のねじ倒れ防止用突縁(以下,単に突縁という。)11が設けられ・・・突縁11は好ましくは,倒立L字形に形成されて水平部を対向させてあ 施の形態】「・・・押え材10の幅方向中央に平行に起立する一対のねじ倒れ防止用突縁(以下,単に突縁という。)11が設けられ・・・突縁11は好ましくは,倒立L字形に形成されて水平部を対向させてあり,孔12の上方部分において,孔12に貫通されるねじの軸の外周の一部と螺合するように形成された円弧13が設けられている。従って,押え材10の上方からねじ5を孔12に向けて回転しながら押し下げると,そのねじは円弧13部分に軽くねじ込まれながら,孔に挿通された状態で円弧13部分に保持される(この状態を仮螺着という。)すなわち,ねじ5を脱落させずに保持することができるようになっている。なお,ねじ5を仮螺着するためには,突縁11の断面形状は任意である。」(段落【0012】)(エ) 「クランプ20は,押え材10の幅方向の少なくとも一端側に装着される。このクランプ20は,根太1に隣接して固定されるデッキ材の端部に互いに対向して開口するように形成されている溝31,32に,クランプ自身の弾性を利用して嵌着することができるものである。」(段落【0013】)(オ) 「・・・クランプ20は,一例として,図2に良く示されているように,断面形状がほぼコ字形の薄鋼板で作られ,両端部の斜め上方と斜め下方に延びる被係止部21,22と,それらの被係止部の間の部分のコ字形の上下辺を水平に形成してなる挟持部23とを一体に有している。」(段落【0014】)(カ) 「本発明によるデッキ材固定装置においては,押え材10を用いてデッキ材を根太に固定するには,図1に示すように,予めクランプ20の挟持部23に押え材10の幅方向一端部を押入することにより,押え材10にクランプ20を嵌着して,クランプ付き押え材Aを構成して置く。また,好ましくは,押え材10にねじ5を仮螺着しておく ランプ20の挟持部23に押え材10の幅方向一端部を押入することにより,押え材10にクランプ20を嵌着して,クランプ付き押え材Aを構成して置く。また,好ましくは,押え材10にねじ5を仮螺着しておく。」((段落【0015】)(キ) 「上記のクランプ付き押え材Aを用いて,デッキ材を根太に固定するには,図3(a)に示すように,先に固定されるデッキ材21の溝31にクランプ20の被係止部21,22をその弾性を利用して嵌着して,押え材10をデッキ材21に取付け,そのデッキ材21を根太1の上面の所定位置に静置する。デッキ材21を根太1の所定位置に静置した後,そのデッキ材の溝31にクランプ20の被係止部21,22を嵌着して,クランプ付き押え材Aをデッキ材21に取付けるようにしてもよい。・・・」(段落【0016】)(ク) 「各デッキ材の溝3の上壁と下壁に,クランプの背面が溝3の内端に当接するまで押入された時に被係止部21,22の先端を係止させる係止部61,62が形成してある場合は,・・・望ましい。」(段落【0017】)(ケ) このほか,【図1】,【図2】及び【図3】(a)(b)からすれば,乙1には,「デッキ材21,22の両側面に挟持されるクランプ付きの押え材10」,「押え材10の内部中央に設けられた,ねじを貫通するための孔12」,「当該孔12に貫通させたねじ5」がそれぞれ記載されているといえる。 イ乙1に記載された発明前記アの各記載を総合すると,乙1には,以下の発明(「乙1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「平行に配列されるデッキ材21,22の両側面に挟持される押え材10と,この押え材10を根太1上に固定するためのねじ5とからなるデッキ材固定装置であり,押え材10は,内部中央に,上下方向に貫通している,ね 配列されるデッキ材21,22の両側面に挟持される押え材10と,この押え材10を根太1上に固定するためのねじ5とからなるデッキ材固定装置であり,押え材10は,内部中央に,上下方向に貫通している,ねじを貫通するための孔12を有し,当該孔12の上方に突縁11が設けられ,押え材10の幅方向の少なくとも一端側にクランプ20が装着され,同クランプ20の被係止部21,22は弾性を有し,クランプ20は,デッキ材21の溝31に上記弾性を利用して嵌着されるもの。」なお,押え材10には,その幅方向中央に平行に起立する突縁11が設けられており,ねじ5がこの突縁11に設けられた円弧13部分に保持されれば,ねじ5は脱落しない(段落【0012】)ものであり,被告は,この突縁11を乙1発明の構成要素とする。 ウ本件特許発明と乙1発明との対比(ア) 本件特許発明と乙1発明とを対比すると,乙1発明の「デッキ材21,22」は本件特許発明の「両デッキ材」に相当し,以下同様に「根太1」は「根太」に,「押え材10」は「ネジホルダー」に,「ねじを貫通するための孔12」は「縦孔」に,「押え材10」の一方側部(図2左側)と他方側部(図2右側)は「先に配置されたデッキ材に挿着される第1連結板」と「次に配置されるデッキ材に挿着される第2連結板」に,「ねじ5」は「止めネジ」に,「被係止部21,22」は「弾性片」に,「デッキ材21の溝31」は「デッキ材の係止凹溝」に,それぞれ相当する。 (イ) 以上を前提とすると,本件特許発明と乙1発明との一致点は,「平行に配列される両デッキ材の側面間に挟着されるネジホルダーと,このネジホルダーを根太上に固定するための止めネジとからなり,ネジホルダーは,内部中央に,止めネジを貫通する縦孔を有するとともに,両側に,両デッキ材の係止凹溝内 の側面間に挟着されるネジホルダーと,このネジホルダーを根太上に固定するための止めネジとからなり,ネジホルダーは,内部中央に,止めネジを貫通する縦孔を有するとともに,両側に,両デッキ材の係止凹溝内へ挿入されるように延びる連結板をそれぞれ有し,各連結板は,連結板を前記係止凹溝内において支持させる弾性片を備えているデッキ材の固定装置。」となる。 (ウ) 本件特許発明と乙1発明との相違点は,まず「本件特許発明では,各連結板の前縁に,デッキ材側面の係止凹溝と係合するフックをそれぞれ設けており,フックが設けられる箇所が,先に配置されたデッキ材に挿着される第1連結板においては,前縁の上方と下方であり,次に配置されるデッキ材に挿着される第2連結板においては,前縁の下方であるのに対して,乙1発明では,フックがそもそも設けられていない点」(相違点1)が挙げられる。 次に,「縦孔が,本件特許発明では,止めネジを遊挿し得るものであるのに対して,乙1発明では,上方に突縁11が設けられていて,これにより止めネジを遊挿し得ないものである点」(相違点2)が挙げられる。 エ被告が挙げる刊行物のうち,上記相違点の構成に関連するものとしては,次のものがある。 (ア) 乙4(実用新案登録第3120851号,発行日平成18年4月20日)には,以下の記載がある。 a 【技術分野】「この考案は,隙間を有する床(デッキ)の床板の固定に関し,任意の場所の床板を取外すことができるようにすることを目的とした床板設置装置及び床板の固定金物に関する。」(段落【0001】)b 【実施例1】「この考案の実施例を・・・説明すると,両側壁の中央部に夫々溝2,2を設けた床板1,1を根太5上に置き,前記溝2,2へT型の固定金 段落【0001】)b 【実施例1】「この考案の実施例を・・・説明すると,両側壁の中央部に夫々溝2,2を設けた床板1,1を根太5上に置き,前記溝2,2へT型の固定金物3の横板3a,3aを挿入すると共に,前記固定金物3のビス孔3bへビス4を挿入し,ビス4を前記根太5に螺入して床板1,1を適所に固定する(図1,2,3)。・・・」(段落【0017】)c 【実施例2】「この考案の他の実施例を・・・説明すると,床板1のT型の固定金物3の中央部へ,ビス4の頭部4aを挿入し得る直径で,縦片3cの長さより浅いビス孔3bを設ける。」(段落【0021】)(イ) 乙7(特開2006-132264号公報,公開日平成18年5月25日)には,以下の記載がある。 a 【技術分野】「この発明は,床下地上に敷設されるフローリング材等の床材を連結するための床材の連結構造に関する。」(段落【0001】)b 【課題を解決するための手段】「また,前記連結具の係合凸部に突起が形成され,前記床材の凹状の係合部に,前記連結具によって前記両床材が連結された状態において前記突起に当接してその床材の側方への移動を規制する障壁が形成されている。」(段落【0018】)c 【発明を実施するための最良の形態】「・・・連結具(2)は,・・・固定部(3)と,・・・一対の係合凸部(4)(4)とを備えている。」(段落【0027】)「・・・係合凸部(4)(4)の上面には,突起(10)(10)が長手方向に沿って形成され,・・・」(段落【0030】)(ウ) 乙31(特開2002-206276号公報,公開日平成14年7月26 ・係合凸部(4)(4)の上面には,突起(10)(10)が長手方向に沿って形成され,・・・」(段落【0030】)(ウ) 乙31(特開2002-206276号公報,公開日平成14年7月26日)には,以下の記載がある。 a 【発明の属する技術分野】「この発明は,建築物,特に住宅のテラスやバルコニーに好適なデッキに関する。」(段落【0001】)b 【発明の実施の形態】「スラブ上に並設された根太上に敷設されて床面を形成するデッキ材と,各デッキ材を連結させる固定部材とを有し,デッキ材はその長手側面である板傍にそれぞれ連結溝が設けられ,この連結溝内に固定部材の係止部が挿入され,連結溝の上縁部又は下縁部のいずれか一方と固定部材の係止部とが係合されてなるデッキである。・・・デッキ材に備えられた連結溝は,上縁部と下縁部とを有し,上縁部と下縁部とでは,上縁部の方が下縁部よりも突出した構造となっている。固定部材は,取付板部にビス孔を有し,ビスを用いて固定部材と根太とを固定する。」(段落【0019】)「・・・デッキ材11の板傍17には,その長手方向に沿って溝状の連結溝18が形成されている。」(段落【0023】)「連結溝18は,上縁部19と下縁部20とを有し・・・」(段落【0024】)「下縁部20には,その内面に,デッキ材11の長手方向に沿う複数条の凹凸20aが設けられている。・・・」(段落【0025】)「・・・固定部材21は,・・・係止部25とを有している。」(段落【0026】)「係止部25は,その先端縁においてデッキ材11の上記凹凸20aと係合されるものである。・・・」(段落【0029】)オ本件特許発明と乙1発明との相違点の容易想到性(ア) 026】)「係止部25は,その先端縁においてデッキ材11の上記凹凸20aと係合されるものである。・・・」(段落【0029】)オ本件特許発明と乙1発明との相違点の容易想到性(ア) 前記ウ(ウ)のとおり,本件特許発明と乙1発明との相違点は,①乙1発明には「フック」の記載がない点,②乙1発明には,止めネジを遊挿し得る縦孔の記載がない点であるところ,前記エ(ア)(イ)からすれば,乙7には「フック」に相当する「突起」が,乙4には遊挿し得る孔として「ビス孔3b」が,それぞれ開示されているといえる。 (イ) しかし,相違点1に関しては,そもそも,乙1発明における「被係止部21,22」は,本件特許発明の「弾性片」に相当するものの,「フック」としての機能をも有すると解される(乙1の段落【0017】において,「被係止部21,22の先端を係止させる係止部61,62」と記載されている。)ところ,既に「フック」類似の構成を備えた乙1発明に,あえて乙7の「フック」に相当する「突起」を重ねて備えようとする動機付けがあるとは認められない。 また,乙7では,連結具の係合凸部(第1連結板の前縁の上方に相当する。)に,フックに相当する「突起」が設けられているほか,前記エ(ウ)のとおり,乙31には,デッキ材の固定部材において,デッキ材の側面の連結溝18に係止する係止部25(本件特許発明の「フック」に相当する。)を下方に向く態様で設けたことが開示されている(【図1】及び【図2】参照)。 しかし,本件特許発明においては,フックが第1連結板の前縁の上方と下方に設けられ,また第2連結板の前縁の下方にも設けられていることからすれば,同発明では,第1連結板には,その前縁をデッキ材の係止凹溝に対して上方及び下方のいずれにおいても係合させることができるフックを備 けられ,また第2連結板の前縁の下方にも設けられていることからすれば,同発明では,第1連結板には,その前縁をデッキ材の係止凹溝に対して上方及び下方のいずれにおいても係合させることができるフックを備えることが想定されているものと解される。これに対し,乙7及び乙31は,いずれもフックが第1連結板ないし第2連結板の前縁において,上方のみ,又は下方のみに設けられたものしか開示しておらず,乙7ないし乙31を乙1発明に適用して,フックを設ける箇所を本件特許発明と同じ箇所とすることが容易想到であるとはいえない。 (ウ) 以上のとおり,本件特許発明と乙1発明との相違点1は,乙7及び乙31の記載によって容易想到ではないため,相違点2の容易想到性について検討するまでもなく,これらの文献に基づく本件特許発明の進歩性欠如に関する被告の主張は採用できない。 (2) 本件特許の実施可能要件違反の有無についてア被告は,本件特許発明における「遊挿」との文言,及び「遊挿」と「係合」との関係が,いずれも不明確であって,特許法36条4項1号所定の要件(実施可能要件)を充たさないとも主張する。 しかし,前記1(3)のとおり,本件特許に係る明細書(甲2)には,ネジホルダー1と止めネジ7との連結状態が解かれたフリーの状態となることが記載されており,このようなフリーの状態となっている止めネジと縦孔との関係を「遊挿」ということができる。 同様に,前記1(3)のとおり,同明細書には,いったんはネジホルダーと止めネジとが「係合」するが,その後,同連結状態が解かれて「フリー」になることも記載されており,このように,「係合」から「遊挿」に至る経過も明らかである。 以上からすれば,当業者が本件特許発明を実施することは可能であるものと解されるから,本件特許は特許法36条4項1 ることも記載されており,このように,「係合」から「遊挿」に至る経過も明らかである。 以上からすれば,当業者が本件特許発明を実施することは可能であるものと解されるから,本件特許は特許法36条4項1号所定の要件(実施可能要件)を充たすものといえる。 イこのほか,被告は,本件特許の請求項3における「遊挿」と「係合」との関係が理解できないとも主張する。確かに,請求項3においては,請求項1とは異なり,止めネジと「係合」する「突起」が構成要素とされてはいるが,上記ア同様,実施例の記載からすれば当業者にとってこの点は理解可能であるから,被告の上記主張は採用できない。 3 争点(3)(原告の損害額)について(1) 特許法102条2項に基づく主張についてア証拠(乙33の4及び5)によれば,被告は,平成25年3月18日から平成26年12月19日までの間に,合計3万8000個の被告製品(デッキジョイント金物及びデッキジョイントビスの双方を含む)を,合計金額10万1000円で仕入れ,そのうち合計3万2722個の被告製品を合計66万3499円で販売した事実が認められる。 そして,証拠(乙33の4)によれば,被告製品1個当たりの仕入価格は1円又は10円と一定ではないが,これを平均すると,被告が販売した3万2722個の被告製品の仕入金額は,3万2722個×(10万1000円/3万8000個)=8万6971円(小数点以下は切捨て)となるから,被告が,被告製品の上記取引全体によって得た利益は,66万3499円-8万6971円=57万6528円であるものと認められる。 したがって,特許法102条2項の適用により,原告の損害額は上記57万6528円であるものと認められる。 なお,本件において,原告は,遅延損害金の起算日につき,訴状 円であるものと認められる。 したがって,特許法102条2項の適用により,原告の損害額は上記57万6528円であるものと認められる。 なお,本件において,原告は,遅延損害金の起算日につき,訴状送達日の翌日である平成26年12月12日としているが,証拠(乙33の5)によれば,被告が最後に被告製品を販売したのは,それ以降の日である同月19日であると認められるから,同最終取引に限り,遅延損害金の起算日は同日となる。そして,同最終取引においては,被告は8000個の被告製品を4万円で販売しており,同被告製品の仕入金額は,8000個×(10万1000円/3万8000個)=2万1263円(小数点以下は切捨て)と算定できるから,同最終取引に基づく被告の利益は,4万円-2万1263円=1万8737円となる。 他方で,同最終取引を除く被告製品の売上高は66万3499円-4万円=62万3499円であり,これに対応する被告製品の仕入金額は8万6971円-2万1263円=6万5708円となる。 したがって,最終取引を除く被告製品に関する取引によって,被告が得た利益は,62万3499円-6万5708円=55万7791円となる。 イ被告は,被告製品の輸入原価は18.20円/セットであり,販売個数は3万2722個であって,これに対応する仕入総額は59万8055円である旨主張するが,これは,乙33の3に基づき,被告製品1個当たりの仕入価格は13.77円であり,これに輸入諸経費及び平均運賃を加えると仕入原価は1個当たり18.20円であるとするものと解される(乙33の1参照)。 しかし,そもそも輸入諸経費や運賃に関しては何ら立証がない上,被告は,被告製品の販売価格については「商品別売上明細表」(乙33の5)上の数字(後記ウのとおり便宜上の数字である。)に 3の1参照)。 しかし,そもそも輸入諸経費や運賃に関しては何ら立証がない上,被告は,被告製品の販売価格については「商品別売上明細表」(乙33の5)上の数字(後記ウのとおり便宜上の数字である。)に基づきながら,仕入価格については,インボイス(乙33の3)等の証拠に基づいて,「商品別仕入明細表」(乙33の4)上の金額よりもはるかに高い金額を主張するものであって,主張として一貫しない。販売価格について「商品別売上明細表」上の数字(便宜上の数字)を採用するならば,仕入価格についても「商品別仕入明細表」上の数字(便宜上の数字)を採用するのが終始一貫するというべきである。現に,「商品別売上明細表」(乙33の5)上では,被告製品の上記販売取引によって合計59万8055円の粗利益が発生したとされており(ただし,その根拠は不明),当裁判所の前記アの結論ともほぼ整合する。 ウ他方,原告は,まず被告が開示した被告製品に関する上記各明細表(乙33の4及び5)上の数字について,単価1円は安価にすぎ,また単価13万2308円とする部分もあり,信用できないと主張する。 確かに,被告が開示した被告製品の販売価格(単価)は1円~13万2308円とされており(乙33の5),通常の取引であれば合理性を欠くほど価格の幅が大きい。しかし,被告製品は単独で販売されることなく,常にデッキ材とセットで販売されており,セット販売の際に被告が被告製品の単価を具体的に定めていないことは当事者間に争いがなく,被告が開示した被告製品の単価は便宜上の数字にすぎないから,単価に幅があっても直ちに不合理であるとはいえない。そして,被告製品は,その大きさや果たす役割の程度からして,極めて低い価値しかないものと解するのが相当であって,デッキ材とのセット販売において,被告製品の単価 っても直ちに不合理であるとはいえない。そして,被告製品は,その大きさや果たす役割の程度からして,極めて低い価値しかないものと解するのが相当であって,デッキ材とのセット販売において,被告製品の単価が1円とされていても,これが直ちに不合理とまではいえない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 (2) 特許法102条1項に基づく主張について原告は,被告に対し,被告製品自体ではなく,被告製品を部品として用いたデッキセットの売上高の開示を求め,同売上高に基づき,特許法102条1項により原告の損害額を計算する方法も選択的に主張している。 このような方法を採用するのであれば,デッキセットの売上個数・売上高から一義的に被告製品の売上個数及び売上高が判明する必要がある。しかし,被告は,2mのデッキ材に対して被告製品5個という標準的使用数は設定しているが,職人がそのとおり実施しているかは不明である上,デッキ材として天然木と人工木を使用しているところ,天然木のデッキ材には被告製品を用いておらず,被告の人工木デッキの販売数は天然木デッキの販売数よりもはるかに少ない旨主張する。確かに,被告にとっても,実際にデッキ材の工事をする職人が被告製品をどの程度使用するかは把握できないであろうことに加え,被告における天然木デッキと人工木デッキの使用割合に関する証拠(乙35)の記載等に照らせば,被告の上記主張内容があながち不合理とはいえない。 以上からすれば,被告製品を部品として用いたデッキセットの売上個数・売上高を被告に開示させても,ここから直ちに被告製品の売上個数・売上高が判明するという関係にあるとは認められない上,原告は,デッキセット販売における被告製品の寄与度についても何ら具体的に主張しておらず,原告の上記計算方法は合理性を欠き,採用できな の売上個数・売上高が判明するという関係にあるとは認められない上,原告は,デッキセット販売における被告製品の寄与度についても何ら具体的に主張しておらず,原告の上記計算方法は合理性を欠き,採用できない(当裁判所は,同じ理由により,被告のデッキセットの売上数量・売上高に関する資料の開示を求める旨の原告の文書提出命令の申立てにつき,必要性がないとして却下した。)。 このほか,原告は,被告作成の「会社案内」(甲14)に記載された施工現場のうち被告製品の存在が確認できた7件について測定したデッキ材の平米数に基づいて,被告のデッキセットの売上高合計を推定計算するが,そもそも上記のとおり,デッキセットの売上高から直ちに被告製品の売上高が判明するという関係にはないことに加え,この点を措くとしても,わずか7件のデータに基づき,同データに単純に比例するものとして195件全体の数字を推定する方法は到底合理的とはいえず,採用できない。 したがって,特許法102条1項に基づく原告の主張は採用できず,前記(1)アで算定した被告の利益額以上の原告の損害を認めるに足りる証拠はない。 (3) 原告の弁護士費用については,本件で顕れた諸般の事情に鑑み,20万円をもって相当と認める。なお,弁護士費用に対する遅延損害金の起算日は,原告の損害額の大半に対する起算日である平成26年12月12日(訴状送達日の翌日)とする。 (4) 以上のとおり,原告の損害額は合計77万6528円と認められる。 4 争点(4)(差止め及び廃棄の必要性)について(1) 被告は,平成26年12月19日以降,被告製品における弾性片を廃止する旨の設計変更をした旨主張しており,この点は当事者間において特段争いがなく,同設計変更後の製品は,本件特許発明の構成要件を充足しないことにな 26年12月19日以降,被告製品における弾性片を廃止する旨の設計変更をした旨主張しており,この点は当事者間において特段争いがなく,同設計変更後の製品は,本件特許発明の構成要件を充足しないことになる。 (2) しかし,被告は,被告製品の本件特許発明に係る構成要件充足性を現に争うとともに,本件特許が無効であるとして,特許庁において本件特許に係る無効審判を請求している(乙32)。また,被告製品において,いったん廃止した弾性片を復活させることがさほど困難であるとも解されない。 以上の被告の態度や被告製品を再度製造・販売することの容易性に鑑みれば,被告が本件特許発明を再度実施するおそれがあるものと認められるから,被告製品の製造・販売等を差し止めるべき必要性が認められる。 また,被告が仕入れた被告製品を全て販売ないし廃棄したものとも認められず,むしろ,証拠(乙33の6)によれば,平成26年12月時点では,被告製品の在庫が5000個以上残っていたことが認められるため,被告製品の廃棄を命じる必要性も認められる。 5 結論以上によれば,原告の請求は,①被告製品の製造・販売等の差止め,及び被告製品の廃棄,②損害賠償金合計77万6528円及びうち75万7791円に対する平成26年12月12日から,うち1万8737円に対する同月19日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める範囲で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官廣瀬達人 裁判長 裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官廣瀬達人 (別紙)被告製品目録デッキ材固定装置 1 製品名「デッキジョイント金物」製品番号E002 2 製品名「デッキジョイントビス(木用)」製品番号E203以上

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