- 1 -平成30年4月5日判決言渡平成28年(行ウ)第147号外務員職務停止処分取消請求事件 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告がA証券株式会社に対し平成27年10月6日付けでした,同日から平成29年4月5日まで,原告につき外務員の職務の停止を命ずる旨の処分を取り消す。 第2 事案の概要金融商品取引法(特段の断りのない限り,平成27年法律第32号による改正前のもの。以下「金商法」という。)に基づき所属の金融商品取引業者の外務員(以下,単に「外務員」という。)に係る登録事務の委任を受けている認可金融商品取引業協会である被告は,同法64条の5第1項に基づき,平成2 7年10月6日付けで,自己に所属する金融商品取引業者であるA証券株式会社(以下「A証券」という。)に対し,同社の従業員であり同社のために同法64条1項各号の行為を行う外務員として登録を受けている原告につき,1年6か月間外務員の職務の停止を命ずる旨の処分(以下「本件職務停止処分」という。)をした。本件は,このように本件職務停止処分の対象とされた原告が, 被告を相手に,同処分の取消しを求める事案である。 被告は,本件職務停止処分の適法性を主張するとともに,本案前の主張として,同処分に係る職務の停止期間は既に経過しており,原告は同処分を取り消すことにより回復すべき法律上の利益を有しないため,本件訴えは訴訟要件(訴えの利益)を欠く不適法なものであるなどと主張して,本件訴えの却下 を求めている。 - 2 - 1 関係法令の定め別紙1記載のとおり 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実及び掲記の証拠により容易に認めら あるなどと主張して,本件訴えの却下 を求めている。 - 2 - 1 関係法令の定め別紙1記載のとおり 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実及び掲記の証拠により容易に認められる事実)⑴ 当事者等 ア被告は,金商法67条の2第2項に基づく内閣総理大臣の認可を受けて設立された認可金融商品取引業協会であり,同法64条の7第1項に基づき,内閣総理大臣から所属の外務員に係る登録事務(外務員の登録に関する事務のほか,外務員に対する監督上の処分等に関する事務を含む。)の委任を受けている。 イ A証券は,被告の協会員として被告に所属する金融商品取引業者である。 ウ原告(昭和52年▲月▲日生)は,平成22年7月,A証券の従業員として採用され,金商法64条に基づき,同社の申請により,同社のために同条1項各号所定の行為(有価証券に係る売買及びその媒介等)を行う外務員として,被告において登録された者である(外務員は,その所属する 金融商品取引業者に代わって,上記所定の行為に関し,一切の裁判外の行為を行う権限を有する〔同法64条の3〕。)。 原告は,A証券におけるB営業部(以下「本件営業部」という。)において,C基金等に対する金融商品販売を担当していた。 ⑵ 本件職務停止処分に至る経緯等 ア証券取引等監視委員会は,A証券の本件営業部が顧客であるC基金の役職員への接待を行った際,その接待につき他の顧客を接待したものと偽って接待交際費の申請をしたこと(いわゆる顧客名の付替え)につき,本件営業部から自主的な申告を受けたことを踏まえ,平成25年4月18日を基準日として,本件営業部による特別の利益の提供の有無等について検査 を行った(以下「本件検査」という。)(甲4)。 - 3 -イ証 な申告を受けたことを踏まえ,平成25年4月18日を基準日として,本件営業部による特別の利益の提供の有無等について検査 を行った(以下「本件検査」という。)(甲4)。 - 3 -イ証券取引等監視委員会は,平成25年12月5日,A証券に対する本件検査の結果,法令違反の事実が認められたとして,内閣総理大臣及び金融庁長官に対し金融庁設置法20条1項に基づく行政処分を行うよう勧告するとともに,その旨を同委員会のホームページに掲載して公表した(乙3)。同委員会により認定されたA証券に係る法令違反行為の内容は,下 記のとおりである。 記C基金の役職員はみなし公務員であるところ,A証券の本件営業部は,以下のとおり3つのC基金の理事長らに対して接待等を行い,金融商品取引契約につき多額の利益提供をしていた。これらの行為は,金商法3 8条7号(平成26年法律第44号による改正前のもの。同改正後は8号)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項3号に掲げる「金融商品取引契約につき,(略)顧客若しくは第三者に対し特別の利益を提供する行為」に該当するものと認められる。 (ア) 平成22年10月から平成24年12月までの間,D基金の理事 長らに対して,同基金の運用にA証券グループが組成した指数連動債等(以下「指数連動債等」という。)を組み入れさせる目的で,海外視察旅行の費用負担及び約40回の接待を行い,約394万円に相当する利益を提供した。 (イ) 平成23年12月から平成24年12月までの間,E基金の理事 らに対して,同基金の運用に指数連動債等を組み入れさせる目的で,約30回の接待を行い,約143万円に相当する利益を提供した。 (ウ) 平成22年6月から平成24年12月までの間,F基金の理事ら らに対して,同基金の運用に指数連動債等を組み入れさせる目的で,約30回の接待を行い,約143万円に相当する利益を提供した。 (ウ) 平成22年6月から平成24年12月までの間,F基金の理事らに対して,同基金の運用に指数連動債等を組み入れさせる目的で,海外視察旅行の費用負担及び約30回の接待を行い,約90万円に相当する 利益を提供した。 - 4 -ウ金融庁は,上記イの勧告を受けて,平成25年12月12日,A証券に対し,金商法51条に基づき,A証券が策定した再発防止策を確実に実施・定着させること等を内容とする業務改善命令をした(乙4)。 エ原告は,平成25年12月25日,贈賄の公訴事実により東京地方裁判所に起訴された。 オ A証券は,平成26年1月23日付けで原告に対する懲戒解雇処分をし(甲4),同年3月14日,被告に対し事故連絡書を提出した(乙5)。 この事故連絡書には,前記イのとおり証券取引等監視委員会により認定された行為に関して,原告が上記3基金のうち2基金の主担当者として接待等の行為を行っていたことなどが記載されていた。 カ原告は,平成26年7月16日,東京地方裁判所において,贈賄罪により懲役10月・執行猶予3年の有罪判決を受けた(以下「本件有罪判決」という。)。本件有罪判決においては,原告がE基金の理事らに対し17回の接待により合計87万4036円の賄賂を供与した事実(前記イ(イ)の一部に相当する。)が認定されている。原告は,本件有罪判決を不服と して控訴したが,同判決は,同年11月21日,控訴取下げにより確定した。(甲4)キ A証券は,平成27年6月26日,上記カを踏まえ,被告に対し,金商法64条の4第2号に基づき,原告について同法29条の4第1項2号ハの規定に該当する 1日,控訴取下げにより確定した。(甲4)キ A証券は,平成27年6月26日,上記カを踏まえ,被告に対し,金商法64条の4第2号に基づき,原告について同法29条の4第1項2号ハの規定に該当することになったとの欠格事項該当の届出をした。 ク A証券は,平成27年7月3日,被告に対し,事故顛末報告書(乙6の1)を提出した。 この事故顛末報告書には,①A証券の本件営業部では,C基金の役職員への接待を行った際の経費の申請において顧客名を付け替えていたこと,②この付替えの一部については本件営業部が自主的に申告をしていたと ころ,証券取引等監視委員会(関東財務局)の本件検査により全容解明 - 5 -が進み,最終的に平成25年12月12日に3基金(D基金,E基金,F基金)に対する行為が特別の利益の提供であるとの認定を受けたこと,③その後のA証券における社内調査等も経て,原告が,担当していたD基金の理事長らに対して海外視察旅行のA証券による費用負担及び数多くの接待により多額の利益の提供行為を行った事実や,担当していたE 基金の理事らに対しても,数多くの接待を行い,多額の利益の提供行為をした事実が確認されたこと,④A証券では,従来からみなし公務員への接待は原則禁止と定めているが,原告は担当しているC基金の役職員がみなし公務員であることを認識していながら,顧客名を偽り,みなし公務員ではない顧客名を使って接待交際費の申請をしていたため,A証 券の内部管理部門においてC基金への接待の状況について把握することができなかったこと等が記載されていた。 ケ被告は,平成27年7月17日,A証券から,事故顛末報告書(上記ク)に係る事故について,その行為の概要等につき改めて詳細な報告を記載した事実関係確認書(乙9)の提出を受け,同年 載されていた。 ケ被告は,平成27年7月17日,A証券から,事故顛末報告書(上記ク)に係る事故について,その行為の概要等につき改めて詳細な報告を記載した事実関係確認書(乙9)の提出を受け,同年9月10日,A証券を 当事者,原告を参加人として,聴聞を実施した(乙10)。 コ被告は,平成27年10月6日付けで,A証券に対し,金商法64条の5第1項に基づき,原告について,同日から平成29年4月5日までの1年6か月間,外務員の職務の停止を命ずる旨の本件職務停止処分をした。 本件職務停止処分の理由は,原告が,平成22年10月から平成24年 12月までの間,金融商品取引契約につき,D基金及びE基金の役員等に対し,特別の利益供与を68回(合計537万4000円)行い,うち17回(合計87万4000円)について贈賄罪として有罪判決を受けたことをいうものであった。(甲1)サ原告は,平成28年3月31日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 ⑶ 被告における協会員の役職員に対する処分の方針等 - 6 -被告においては,平成22年9月14日付けで「協会員の役職員に対する処分の考え方」(甲5。以下「考え方」という。)が定められているが,これが定められるに至った経緯及びその内容は,次のとおりである。 ア被告においては,平成20年5月20日付けの報告書(内部者取引防止に関する内部管理態勢等検討ワーキング報告書)により,協会員の役職 員が関与するインサイダー取引に対する一層の抑止力向上を目的として,インサイダー取引に関与した協会員の役職員に対して現状以上の厳しい措置を用意すべきであるとの考え方が示されたことや,インサイダー取引のみならず金融商品取引業の信用を著しく失墜させる法令等違反行為が後を絶たない 取引に関与した協会員の役職員に対して現状以上の厳しい措置を用意すべきであるとの考え方が示されたことや,インサイダー取引のみならず金融商品取引業の信用を著しく失墜させる法令等違反行為が後を絶たないことから,こうした法令等違反行為の抑止を目的として, 協会員の役職員に対する処分の在り方全般について検討することとし,同年9月にワーキンググループを設置して検討を行った。 上記ワーキンググループにおける検討の結果は,平成21年2月17日付け「協会員の役職員に対する処分について」にまとめられたが,そのうち「4.処分の検討要素等の明示」との項目において,「協会員の役 職員処分全体に通ずる考え方を示すこととすれば,処分の透明性及び予見可能性が高まり,法令等違反行為の抑止の一助となるため,本協会が,協会員の役職員に対する処分において考慮してきている処分の検討要素や審査に際しての指針について,協会員の役職員に対して明示することが望ましいと考える。」という提言が記載された(乙13)。 被告は,上記提言を踏まえ,平成22年9月14日付けで「考え方」を定め,これを,被告の協会員に対して通知し,各協会員を通じてその所属の役職員に対しても周知するものとしているほか,被告のホームページにも掲載している(甲15)。 「考え方」の概要は,以下のとおりである。 イ 「考え方」は,まず「Ⅰ.処分の検討要素」と題して,協会員の役職員 - 7 -に対する処分を行うに際しては,法令等違反行為の内容,罰則の有無及び重さ,常習性(違反回数,行為の期間),取引金額,事故金額,顧客被害の程度(顧客数,顧客被害額),過去の行政処分及び自主規制処分の有無,役職,情状(故意,隠ぺいの有無,動機,原因,方法,手口,利得の有無,被害 (違反回数,行為の期間),取引金額,事故金額,顧客被害の程度(顧客数,顧客被害額),過去の行政処分及び自主規制処分の有無,役職,情状(故意,隠ぺいの有無,動機,原因,方法,手口,利得の有無,被害者との関係,被害の弁償状況,利得の還元等の状況, 発覚の経緯等),刑事訴追の有無並びに反社会的勢力の関与の有無等の諸点を考慮し,行為の重大性,悪質性,反復可能性,社会的影響度等を総合的に審査するものとした。 ウ次に,「考え方」は,「Ⅱ.審査の指針」と題して,処分に際しての審査の指針を示しているところ,その要旨は次のとおりである。 (ア) 登録を受けている外務員が金商法64条の5第1項2号又は3号に該当する場合で,その行為が金融商品取引業の信用を著しく失墜させるものであるときは,登録取消しとし,登録取消しに至らないものであるときは,職務停止の検討を行う。そして,この検討に当たっては,法令等違反行為の内容,罰則の有無及び重さ,常習性(違反回数や期間), 取引金額,事故金額並びに顧客被害の程度に応じた処分とすることを基本に,行為の重大性,悪質性,反復可能性,社会的影響度等を総合的に審査する。また,こうした総合的な審査の際には,①過去の行政処分及び自主規制処分の有無,②役職の高さ,③情状(故意,隠ぺいの有無,動機,原因,方法,手口,利得の有無等)などの事情を考慮するものと し,上記①及び②の事情に応じて加重し,上記③の事情に応じて加重又は軽減する。 (イ) 特に,顧客資産の横領及び顧客への詐欺的行為,金商法上重い罰則のある行為(相場操縦やインサイダー取引等)並びに役員等による協会員の法令等違反を主導する行為(以下,併せて「不都合行為」とい う。)については,登録の取消しを原則とし,登録取消しとならな 則のある行為(相場操縦やインサイダー取引等)並びに役員等による協会員の法令等違反を主導する行為(以下,併せて「不都合行為」とい う。)については,登録の取消しを原則とし,登録取消しとならない場 - 8 -合であっても重い職務停止処分とする。また,過去に法令等違反行為を行った者が再度法令等違反行為を行った場合(①1月を超える期間の処分を受け,その決定を受けた日から5年以内に,再度1月を超える期間の処分に相当する事由が生じた場合,②処分を受け,その決定を受けた日から5年以内に,再度処分を受け,かつ,当該5年以内の期間中にさ らに処分に相当する事由が生じた場合〔以下,これらを「再違反行為の場合」という。〕)においても,不都合行為の場合と同様に,登録の取消し又は重い職務停止の処分とする(なお,登録取消処分ではなく職務停止処分を選択する場合,どの程度の停止期間とすべきかについての記載はない。)。 (ウ) 金商法29条の4第1項2号イからトまでに定める欠格事項(同号ハ〔禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者〕もこれに含まれる。)のいずれかに該当することとなり,かつ,①欠格事項の起因となった行為が金融商品取引業又はこれに関連するものである場合,②欠格事項の起因となった行為 が刑法上の重大な犯罪である場合,③金融商品取引業及び金融商品取引市場に対する信頼を失墜させる場合のいずれかに該当する場合には,登録取消しとする。 3 争点及びこれについての当事者の主張の要旨本件の争点は,⑴原告は本件職務停止処分の取消しを求める原告適格を有す るか,⑵原告は本件職務停止処分の取消しを求める訴えの利益を有するか,⑶本件職務停止処分が適法であるかであり,これらについての当事者の ,⑴原告は本件職務停止処分の取消しを求める原告適格を有す るか,⑵原告は本件職務停止処分の取消しを求める訴えの利益を有するか,⑶本件職務停止処分が適法であるかであり,これらについての当事者の主張の要旨は,別紙2記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,原告は本件職務停止処分に定められた停止期間の末日である平 成29年4月5日の経過により同処分の効果がなくなった後においてもなお同 - 9 -処分の取消しによって回復すべき法律上の利益(行政事件訴訟法9条1項括弧書き)を有する者とはいえない(争点⑵)から,本件訴えは訴訟要件(訴えの利益)を欠く不適法なものであって,その余の争点について判断するまでもなく,本件訴えは却下すべきものであると判断する。その理由の詳細は,次のとおりである。 1 争点⑵(原告は本件職務停止処分の取消しを求める訴えの利益を有するか)について⑴ 平成27年10月6日付けでされた本件職務停止処分は,A証券に対し,その所属の外務員であった原告について,同日から平成29年4月5日までの1年6か月間,外務員の職務の停止を命ずるものであるところ,上記停止 期間の末日である平成29年4月5日が経過したことは明らかであるから,これにより,本件職務停止処分の効力はなくなった。そして,金商法64条の5第1項は,登録を受けている外務員が同項各号のいずれかに該当する場合には登録取消処分又は2年以内の期間を定めた職務停止処分をすることができる旨を定めているが,これらの処分をするに当たり,当該外務員が過去 において職務停止処分を受けたことを理由として登録取消処分の選択が義務付けられ,あるいは,停止期間をより長期のものとするなどの不利益な取扱いをすべき旨を定めた規定はない。したが 外務員が過去 において職務停止処分を受けたことを理由として登録取消処分の選択が義務付けられ,あるいは,停止期間をより長期のものとするなどの不利益な取扱いをすべき旨を定めた規定はない。したがって,本件職務停止処分の効果がなくなった後に同処分を受けたことを理由として法律上不利益な取扱いを受ける余地はないから,原告は,本件職務停止処分の効果が停止期間の経過に よりなくなった後においてもなお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益(行政事件訴訟法9条1項括弧書き)を有する者には当たらないというべきである。 ⑵ 以上に対し,原告は,被告の定める「考え方」(前提事実⑶)は行政手続法12条1項に基づく処分基準に当たり,先行の処分を受けたことを理由と して後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いを定めたものであ - 10 -るから,原告は,本件職務停止処分の効果が停止期間の経過によりなくなった後においても,上記処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内であれば,なお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する(最高裁平成27年判決参照)旨を主張する。 アそこで検討するに,「考え方」の内容は前記前提事実⑶のとおりである ところ,「考え方」は,まず「処分の検討要素」として,登録取消処分又は職務停止処分をするに際しては,①法令等違反行為の内容,罰則の有無及び重さ,常習性(違反回数,行為の期間),取引金額,事故金額,顧客被害の程度,②過去の行政処分及び自主規制処分の有無,役職,③情状(故意,隠ぺいの有無,動機,原因,方法,手口,利得の有無等), ④刑事訴追の有無,反社会的勢力の関与の有無等の諸事情を考慮した上で,行為の重大性,悪質性,反復可能性,社会的影響度等につき総合的 意,隠ぺいの有無,動機,原因,方法,手口,利得の有無等), ④刑事訴追の有無,反社会的勢力の関与の有無等の諸事情を考慮した上で,行為の重大性,悪質性,反復可能性,社会的影響度等につき総合的に審査する旨を明らかにしているのであり,過去の行政処分及び自主規制処分の有無については,上記①~④のような審査の際に考慮される事情の一つとして掲げるにとどめている。 また,「考え方」は,上記「処分の検討要素」に続いて,「審査の指針」との表題の下に具体的な審査の在り方を定めているが,ここにおいても,まず,登録を受けている外務員が金商法64条の5第1項2号又は3号に該当する場合につき,その行為が金融商品取引業の信用を著しく失墜させるものであるときは登録取消処分とし,これに至らないもの であるときは職務停止処分の検討を行うとした上で,その検討に当たっては,上記①の各事情に応じた処分とすることを基本に,上記②の事情(過去の行政処分等の存在,役職の高さ)に応じて加重し,上記③の事情(情状)に応じて加重又は軽減するなどとしている。次に,特に再違反行為の場合(1月を超える期間の処分を受け,その決定を受けた日 から5年以内に,再度1月を超える期間の処分に相当する事由が生じた - 11 -場合等)については,登録取消処分を原則とし,登録取消しとならない場合であっても重い職務停止処分とする旨を定めているが,いかなる場合に職務停止処分の選択が許されるかを定めるものではなく,また,職務停止処分を選択する場合にどの程度の停止期間とすべきかについても定めるものではない。一方,金商法29条の4第1項2号イからトまで に定める欠格事項のいずれかに該当することとなり,その起因となった行為が金融商品取引業に関連するものである場合や刑法上の重大な犯 定めるものではない。一方,金商法29条の4第1項2号イからトまで に定める欠格事項のいずれかに該当することとなり,その起因となった行為が金融商品取引業に関連するものである場合や刑法上の重大な犯罪である場合等には,登録取消処分とする旨を定めている。 以上のように,被告の定める「考え方」は,欠格事項に該当し一定の条件を満たす場合には登録取消処分とする旨を定めているものの,基本的 には,上記①~④のような諸事情を考慮した上で総合的に審査すべきものとしているのであり,過去の行政処分等の有無も,審査の際に考慮される諸事情の一つとして基本的に位置付けられ,そのうち,1月を超える期間の処分を受けた者について5年以内に再度1月を超える期間の処分に相当する事由が生じたなどの再違反行為の場合についても,登録取 消処分を原則とし,そうでない場合には重い職務停止処分とする旨が定められているにとどまるのであって,どのような条件を満たせばどのような処分がされるかという対応関係が明確に定められているとはいえない。 そうすると,「考え方」は,被告が内閣総理大臣から委任を受けた権限 により金商法64条の5第1項に基づく裁量権を行使するに当たって,審査の過程で表れた諸事情を考慮した上で総合的に審査すべきこと及び各事情の具体的な考慮の在り方に関する基本的な考え方ないし指針を定めたものというべきであり,その裁量権の行使を拘束するものとして定めたものということはできないから,行政手続法12条1項に基づいて 定められ公にされている処分基準に当たるということはできない。 - 12 -イなお,「考え方」が定められるに至った経緯(前提事実⑶)をみると,法令等違反行為の抑止を目的として処分の在り方全般について検討するために被告内に設置さ ことはできない。 - 12 -イなお,「考え方」が定められるに至った経緯(前提事実⑶)をみると,法令等違反行為の抑止を目的として処分の在り方全般について検討するために被告内に設置されたワーキンググループの検討結果において,処分全体に通ずる考え方を示すこととすれば処分の透明性及び予見可能性が高まり法令等違反行為の抑止の一助となるため,被告が処分において 考慮してきている処分の検討要素や審査に際しての指針について明示することが望ましい旨の提言がされたことを受けて「考え方」が定められたと認められるのであって,このような経緯に照らしても,「考え方」は,具体的な処分の量定等を定めることにより被告による裁量権の行使を拘束する趣旨で定められたものではないといえる。 また,被告における実際の運用としても,例えば本件において,原告は,①みなし公務員であるC基金担当者に対する贈賄により懲役10月執行猶予3年の有罪判決を受け,本件職務停止処分の時点では執行猶予期間が満了していなかったのであるから,金商法29条の4第1項2号ハに該当していたものであり,かつ,②その起因となった行為は,A証券に おける本件営業部でC基金に対する金融商品販売を担当していた原告により,顧客であるC基金に対する接待として行われたもので,金融商品取引業に関連するものといえるから,「考え方」の定め(欠格事項該当の場合)に従えば登録取消処分が選択されるはずである。それにもかかわらず,被告はこの定めとは異なって職務停止処分を選択したのであり, このことによっても,被告自身が,「考え方」につき被告の裁量権の行使を拘束するものとは認識しておらず,あくまでも処分に関する基本的な考え方ないし指針を定めたものとの理解に立った上で,本件においては原告に酌むべ っても,被告自身が,「考え方」につき被告の裁量権の行使を拘束するものとは認識しておらず,あくまでも処分に関する基本的な考え方ないし指針を定めたものとの理解に立った上で,本件においては原告に酌むべき事情があること等も考慮して職務停止処分を選択したことがうかがわれる。 ウ以上のとおり,被告の定める「考え方」は,被告が金商法64条の5第 - 13 -1項に基づく裁量権を行使するに当たっての基本的な考え方ないし指針を定めたものにとどまるというべきであり,行政手続法12条1項に基づく処分基準に当たるということはできない。そうすると,原告が,「考え方」の定めにより,先行する本件職務停止処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いを受けるということ もできないから,この点からも,本件職務停止処分の効果が停止期間の経過によりなくなった後においてもなお同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者に当たらないというべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 以上のほか,原告は,本件職務停止処分を受けたことにより被告が指定す る研修を受講しなければならないこと,過去に一定の処分を受けたことが外務員登録原簿に記載されることなどを挙げて,原告が本件職務停止処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する旨を主張する。 しかしながら,処分の取消しの訴えは,その処分によって違法に自己の権利又は法律上保護されている利益の侵害を受けた者がその処分の取消しによ って上記の法益を回復することを目的とする訴えであるから,処分の取消しの訴えについて訴えの利益を肯定するためには,当該処分によって権利又は法律上保護されている利益が侵害され,処分の取消しにより当該法 って上記の法益を回復することを目的とする訴えであるから,処分の取消しの訴えについて訴えの利益を肯定するためには,当該処分によって権利又は法律上保護されている利益が侵害され,処分の取消しにより当該法益を回復する可能性があることを要し,当該処分によって事実上の不利益が残存したとしても,それをもって行政事件訴訟法9条1項括弧書きにいう「処分の取 消しによって回復すべき法律上の利益」に当たるということはできない(最高裁昭和53年(行ツ)第170号同55年1月25日第二小法廷判決・裁判集民事129号121頁,最高裁昭和53年(行ツ)第32号同55年11月25日第三小法廷判決・民集34巻6号781頁,最高裁昭和56年(行ツ)第119号同年12月18日第二小法廷判決・裁判集民事134 号599頁,最高裁昭和56年(行ツ)第171号同58年4月5日第三小 - 14 -法廷判決・裁判集民事138号493頁等参照)。 これを本件についてみるに,被告が定めた「協会員の外務員の資格,登録等に関する規則」(乙12)には,被告の協会員は,職務停止処分を受けた者について速やかに被告が指定する研修を受講させなければならない旨の定め(13条)があるところ,上記規則は,認可金融商品取引業協会である被 告の自主的規制として定められたものであって,金商法その他の法令の委任に基づくものではないと解されるから,仮に,原告が本件職務停止処分を受けた結果として上記の研修を受講することとなったとしても,それは事実上の不利益にすぎないものといわざるを得ない。また,上記規則3条に基づき作成される外務員登録原簿に原告が本件職務停止処分を受けた旨が記載され ることに関しても,これにより原告が法令上不利益な取扱いを受けると認めることはできず,仮に名誉や信用 上記規則3条に基づき作成される外務員登録原簿に原告が本件職務停止処分を受けた旨が記載され ることに関しても,これにより原告が法令上不利益な取扱いを受けると認めることはできず,仮に名誉や信用等の社会的評価が低下するなどの不利益が生じるとしても,事実上の不利益にすぎないものといわざるを得ないから,これらの主張に係る不利益をもって,訴えの利益を基礎付ける権利又は法律上保護されている利益が侵害されているということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 2 よって,その余の争点について判断するまでもなく,本件訴えは訴訟要件(訴えの利益)を欠き不適法であるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官清 水 知恵子 - 15 - 裁判官進 藤 壮一郎 裁判官池 田 美樹子 - 16 -(別紙2)争点についての当事者の主張の要旨 1 争点⑴(原告は本件職務停止処分の取消しを求める原告適格を有するか)について(被告の主張の要旨) ⑴ 外務員は金融商品取引業者等(金商法34条参照)の役員又は使用人でなければならず,その登録の申請は金融商品取引業者等がしなければならない(同法64条1項)。そして,外務員に係る監督上の処分をするに当たっては,当該外務員の所属する金融商品取引業者等に対して聴聞を行った(同法64条の5第2項)上,当該金融商品 者等がしなければならない(同法64条1項)。そして,外務員に係る監督上の処分をするに当たっては,当該外務員の所属する金融商品取引業者等に対して聴聞を行った(同法64条の5第2項)上,当該金融商品取引業者等に通知しなければならない(同条3 項)。また,外務員の監督上の処分その他登録事務についての不服については,金融商品取引業者等が審査請求をするものとしている(同法64条の9)。 このように,外務員の登録に関する手続や監督上の処分に関しては,外務員個人ではなく,金融商品取引業者等が主体又は客体となることが予定されているのであるから,金商法64条の5第1項に基づく外務員の職務の停止を 命ずる旨の処分(以下「職務停止処分」という。)の相手方(名宛人)は,当該外務員個人ではなく,当該外務員の所属する金融商品取引業者等である。 ⑵ また,上記⑴のとおり,外務員の登録制度(金商法64条以下)は,当該金融商品取引業者等が投資者保護のため外務員の職務の適切さを確保しつつ諸活動を行うため,金融商品取引業者等の申請に基づきその役員又は使用人につい て外務員としての登録を受けさせる制度であって,外務員個人の利益を保護するものではない。 そして,職務停止処分がされたことは,金商法64条の5第1項に基づき外務員の登録を取り消す処分(以下「登録取消処分」という。)とは異なり,外務員の登録を拒否すべき事由とはなっていない(同法64条の2第1項2 号参照)し,金融商品取引業者等は,職務停止処分を受けた場合には,その - 17 -期間中,当該外務員に外務員の職務を行わせることはできないが,当該金融商品取引業者等において継続して勤務させることまで妨げられるわけではない。 したがって,当該外務員は,職務停止処分により何らか 中,当該外務員に外務員の職務を行わせることはできないが,当該金融商品取引業者等において継続して勤務させることまで妨げられるわけではない。 したがって,当該外務員は,職務停止処分により何らかの事実上の不利益を受けるおそれがあるとしても,金融商品取引業者等から独立して法律上保護 すべき利益を有するということはできない。 ⑶ よって,外務員である原告は,本件職務停止処分の取消しを求める原告適格を有しないというべきである。 (原告の主張の要旨)金商法64条の5第1項は,登録を受けている外務員に対する監督上の処分 について,その名宛人を明確には規定していない。また,同法29条,2条9項によれば,登録を受けた金融商品取引業者でなければ金融商品取引を行うことができず,また,同法64条1項は,金融商品取引業者等は,当該業者等のために一定の金融商品取引業務を行う者については,外務員の登録を受けなければならない旨規定し,加えて,同条2項は,金融商品取引業者等は,登録を 受けた外務員以外の者に外務員の職務を行わせてはならない旨を規定している。 そして,同法64条の2第1項2号は,同法64条の5第1項の規定により外務員登録を取り消され,その取消しの日から5年を経過していない者の登録を拒否しなければならないなどと規定しているところ,金融商品取引業者等が特定の外務員に関する職務停止処分を受けることによって負う義務の内容は,当 該外務員の職務を一定期間行わせないようにするというものであって,かかる義務を履行することは,当該外務員との雇用契約等の内容を変更し又はこれを解消することを意味しており,外務員登録に関する処分の対象とされた外務員は,処分の日から一定期間にわたって,金融商品取引業に従事することができないという不利益を受 雇用契約等の内容を変更し又はこれを解消することを意味しており,外務員登録に関する処分の対象とされた外務員は,処分の日から一定期間にわたって,金融商品取引業に従事することができないという不利益を受けることになる。 そして,かかる処分がされた場合には,当該外務員は,一定期間にわたって - 18 -金融商品取引に従事することができず,収入源が絶たれるなどして,生活全般にわたり重大な不利益を受けるおそれがある。そうすると,金商法64条の5第1項に基づく処分の実質的な名宛人は,当該外務員(本件においては原告)であるということができる。 また,かかる処分によって生じる不利益の性質及び内容並びにその態様に照 らせば,金商法64条の5第1項は,外務員登録に関する処分によって外務員に生ずる不利益について,当該処分により一般的又は反射的に生ずる事実上の不利益にすぎないものとして扱っているとはいえず,当該処分を行うに当たっては,当該外務員個人の不利益についても考慮すべきものといえるから,金商法は,外務員に対する違法な処分が行われないという外務員の利益 についても,法律上保護しているものといえる。 よって,本件において,本件職務停止処分の対象とされる外務員である原告は,本件職務停止処分により,自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるから,本件職務停止処分の取消しを求めるについて法律上の利益を有する者として,本件職 務停止処分の取消訴訟の原告適格を有する者というべきである。 2 争点⑵(原告は本件職務停止処分の取消しを求める訴えの利益を有するか)について(被告の主張の要旨)⑴ 本件職務停止処分は,平成27年10月6日から平成29年4月5日までの である。 2 争点⑵(原告は本件職務停止処分の取消しを求める訴えの利益を有するか)について(被告の主張の要旨)⑴ 本件職務停止処分は,平成27年10月6日から平成29年4月5日までの 1年6か月間,原告につき外務員の職務の停止を命ずることを内容とする処分であるから,平成29年4月5日の経過により本件職務停止処分の法的効果は消滅した。 そして,金商法や関係法令において,外務員に係る監督上の処分について,過去に職務停止処分を受けたことが新たな監督上の処分についての加重事由と なる旨を定めた規定は存在しない。また,行政庁たる被告は,本件職務停止処 - 19 -分に関し,行政手続法12条1項に基づく処分の量定等に関する処分基準を定めていないし,その他にも,外務員に係る監督上の処分である登録取消処分や職務停止処分に際して,過去の処分歴を考慮することに被告がき束される旨を定めた定めも存しない。 この点,被告において定めている「考え方」(本文前提事実⑶参照)は,自 主規制機関である被告において,法令等を遵守する意識の向上につなげるため,法令等に違反する行為を抑止するといった一般予防の観点から定められたものであって,行政手続法12条1項とは全く関係なく定められたものである。そして,被告は,このような経緯及び趣旨に照らし,「考え方」を被告の協会員へ通知し,被告のホームページに掲載するに当たっては,「考え方」が行政手 続法12条1項に基づく処分基準に当たるとか,被告の処分を定めるに当たっての基準である旨の記載・表示は一切していない。また,その内容をみても,行政手続法12条1項の処分基準は,具体的かつ明確な内容のものでなければならないところ(同法39条2項),「考え方」は,処分の際の考慮要素を例示的に列挙するととも ていない。また,その内容をみても,行政手続法12条1項の処分基準は,具体的かつ明確な内容のものでなければならないところ(同法39条2項),「考え方」は,処分の際の考慮要素を例示的に列挙するとともに,抽象的な考え方を示すだけであって,何ら被告の裁 量をき束する内容となっていない。この点で,「考え方」は,最高裁平成26年(行ヒ)第225号同27年3月3日第三小法廷判決・民集69巻2号143頁(以下「最高裁平成27年判決」という。)における北海道函館方面公安委員会規程が,風俗営業者に対し営業停止命令を行う場合の停止期間について,各処分事由ごとにその量定における上限及び下限並びに基準期間を定めた上で, 過去3年以内に営業停止命令を受けた風俗営業者に対し更に営業停止命令を行う場合の量定の加重について,通常の場合の上限及び下限にそれぞれ過去3年以内に営業停止命令を受けた回数の2倍の数を乗じたものをその上限及び下限とし,通常の場合の基準期間の2倍の期間をその基準期間とする旨を定め,処分期間を具体的な数値で示していることとは明らかに異なるのであり,不利益 処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定 - 20 -めに従って判断するために必要とされる基準(同法2条8号ハ)としての内実を有しているとは到底いえない。のみならず,仮に「考え方」が行政手続法12条1項に基づく処分基準に当たるのであれば,「考え方」は,金融商品取引業に関して贈賄罪に問われて禁固以上の刑に処せられ,欠格事由に該当することとなった者については,登録取消しとする旨を定めている(本文前提事実⑶ ウ(ウ)参照)のであるから,原告についても外務員の登録を取り消すべきこととなるところ,被告は,「考え方」に縛られることなく,諸般の事情を考慮し ,登録取消しとする旨を定めている(本文前提事実⑶ ウ(ウ)参照)のであるから,原告についても外務員の登録を取り消すべきこととなるところ,被告は,「考え方」に縛られることなく,諸般の事情を考慮して原告に対しては職務停止にとどめることとし,本件職務停止処分をしたものである。 このように,「考え方」が行政手続法12条1項に基づく処分基準に当たら ないことは明らかであるから,この点からも,原告が本件職務停止処分を取り消すことによって回復すべき権利又は法律上の利益はない。 ⑵ また,原告は,平成26年1月23日,A証券を懲戒解雇となり(本文前提事実⑵オ参照),既にA証券を退職しているため,本件職務停止処分の効力いかんにかかわらず,A証券において外務員の職務を行うことはできない。そし て,仮に原告が新たに他の金融商品取引業者に就職し,当該金融商品取引業者が原告について外務員登録を申請したとしても,当該金融商品取引業者の原告に係る外務員登録申請は,登録拒否事由があるため拒否される関係にある(金商法64条の2第1項1号,29条の4第1項2号ハ)。 ⑶ 以上のとおりであって,原告については,本件職務停止処分を取り消すこと によって回復すべき権利又は法律上の利益はないから,本件訴えは訴えの利益を欠く不適法な訴えとして却下されるべきである。 (原告の主張の要旨)⑴ 「考え方」は,過去の行政処分及び自主規制処分の有無が処分の検討要素に当たる旨を明記した上,過去に法令等に違反する行為を行った者に係る再違反 行為の場合については,登録取消しを原則とし,登録取消しとならない場合で - 21 -あっても重い職務停止処分とする旨を定めている(本文前提事実⑶ウ(イ)参照)。このように,「考え方」は,過去において職務停止処分を受け 録取消しを原則とし,登録取消しとならない場合で - 21 -あっても重い職務停止処分とする旨を定めている(本文前提事実⑶ウ(イ)参照)。このように,「考え方」は,過去において職務停止処分を受けたことを理由として将来における処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いを定めているから,行政手続法12条1項に基づく処分基準に該当するというべきであり,被告は,特段の事情がない限り,上記の定めと異なる処分をすることは 許されない。そうすると,原告は,本件職務停止処分に定められた職務停止の期間が経過した後においても,本件職務停止処分を取り消すことにより回復すべき法律上の利益を有するから,訴えの利益に欠けるところはない。 この点,被告は,「考え方」について,法令等に違反する行為を抑止するといった一般予防の観点から定められたものであり,行政手続法12条1項とは 関係なく定められた旨を主張するが,「考え方」は飽くまで協会員の役職員に対する処分を念頭に置いて検討されたものであるし,過去に受けた行政処分歴が検討要素となる旨が明示されているのであるから,「考え方」が一般予防の観点から定められたとはいえない。被告による行政処分について,「考え方」以上の具体性を有する処分に際しての基準の設定等がされていない現状に照ら すと,「考え方」は行政手続法12条1項に基づき定められた処分基準に当たると解さなければ恣意的な行政処分を許すことにつながりかねず,相当ではない。そして,「考え方」は外部的に公表されているから,被告に所属する協会員は「考え方」を処分基準として認識しているのが通常であるといえるし,その内容に照らしても,「考え方」は,過去の処分歴等を処分の検討要素として 定めているのであって,金商法に基づく不利益処分に関する処分基準を策定す として認識しているのが通常であるといえるし,その内容に照らしても,「考え方」は,過去の処分歴等を処分の検討要素として 定めているのであって,金商法に基づく不利益処分に関する処分基準を策定する上で具体的な数値を示した基準を定めることは現実的とはいえないことに照らしても,「考え方」に示された基準に具体性や明確性に欠けるところはないというべきである。 以上のほか,被告が定める外務員資格登録規則13条(乙12)によれば, 職務停止処分を受けた外務員について,すみやかに被告が指定する研修を受講 - 22 -させなければならない旨規定されていること,外務員登録に際しては,過去に一定の処分を受けたことがそのまま外務員登録原簿に記載され,外務員である限り記録され続けるという不利益を受ける結果となること等を考慮すれば,原告は,平成29年4月5日の経過にかかわらず,本件職務停止処分の取消しによって回復すべき権利又は法律上の利益を有するというべきである。 ⑵ 被告は,原告がA証券を懲戒解雇となり,本件職務停止処分の効力いかんにかかわらず,A証券において外務員の職務を行うことができないから,本件職務停止処分の取消しを求める訴えの利益が認められない旨主張する。しかし,原告は,A証券による懲戒解雇処分に対して労働審判を申し立てるなどして,同処分の効力を争っているのであって,被告の上記主張は理由がない。 3 争点⑶(本件職務停止処分が適法であるか)について(原告の主張の要旨)⑴ 本件有罪判決において認定された接待回数は15回,接待合計金額は87万4036円であったのに対し,事故顛末報告書に記載され,本件職務停止処分の根拠事実の一つとされたE基金に関する接待回数は約30回,接待金額は約 143万円であって,かなりの齟齬が 金額は87万4036円であったのに対し,事故顛末報告書に記載され,本件職務停止処分の根拠事実の一つとされたE基金に関する接待回数は約30回,接待金額は約 143万円であって,かなりの齟齬がある。これは,本件検査の当時,接待の相手方がC基金かどうか不明の場合であっても,C基金の役職員に対する接待として申告することを求めた当時の上司の意向に従ったものである。A証券は,C基金に対する接待行為が発覚した後,末端職員であった原告を営業部長に指名し,その後すぐに上記の申告に係る指示を行っているところ,かかる指示は, 対外的には,調査に協力的であることを示し,内部的には,新任された原告の責任感につけ込み,C基金に対する特別の利益提供額を実際よりも過大に申告させるとともに,A証券の関与を受けることなしに原告が勝手に接待活動を行っていたと印象づけようとするものであり,A証券の責任を原告等の接待の実行行為者に押し付けるものである。 また,被告は,本件職務停止処分を行うに際し,D基金における海外視察旅 - 23 -行の接待を重要視しているところ,この接待は,原告のみが企画実行したものではなく,A証券が会社ぐるみの関与によって実施したものである。したがって,被告が本件職務停止処分において認定した接待金額及び接待回数は,原告による実際の接待回数及び接待金額と比較してはるかに過剰なものとなっており,本件職務停止処分には,事実誤認が存在する。本件職務停止処分の対象事 実の認定のうち,C基金の役職員に対する接待回数及び接待金額については,原告本人の供述に依拠するものであり,当該供述以外には客観的な裏付けが存在しない。 ⑵ 金商法64条の5第1項は,外務員が同項各号のいずれかに該当する場合においては,登録取消処分又は2年以内の職務停止 本人の供述に依拠するものであり,当該供述以外には客観的な裏付けが存在しない。 ⑵ 金商法64条の5第1項は,外務員が同項各号のいずれかに該当する場合においては,登録取消処分又は2年以内の職務停止処分を規定していることに加 え,外務員登録取消等の制度が外務員として不適格な者を排除することにより,金融商品取引業者に対する信頼と取引の公正を図り,もって投資者の保護に資することを目的とするものである。したがって,同項各号に該当する場合に,外務員を登録取消処分とするか職務停止処分とするかは,当該外務員が行った行為の種類,当該行為に至る経緯,内容,動機,目的等の諸般の事情を考慮し て,判断されるべきものである。 そして,本件職務停止処分の対象となる行為に至る経緯,動機,目的等にかんがみれば,本件職務停止処分は重きに失するものとして,社会通念上相当性を欠き,違法である。 すなわち,原告は,本件行為を上司の指示,了解の下行っていた。例えば, 金額の大きな海外視察旅行の接待に関していえば,原告は,接待の企画立案について上司の判断を仰いでおり,また,かかる海外視察旅行の接待は,最終的には,A証券の決裁を得た上で実行されている。また,A証券の役員をはじめ,コンプライアンス統括部や営業本部は,本件行為の違法性を認識しながら,本件行為を含むA証券により行われた合計44基金の役職員に対する特別の利益 提供行為を容認していた。以上のとおり,本件行為は,A証券における組織的 - 24 -な特別の利益提供行為の一環であるといえ,原告は,A証券の末端の営業部員として,A証券の意向に従い,本件行為を容認するとの組織的な風土の下,相当程度の地位にあった役職員からの指示・了解・容認の下で,本件行為に及んでいたのである。被告は,このような原告の 末端の営業部員として,A証券の意向に従い,本件行為を容認するとの組織的な風土の下,相当程度の地位にあった役職員からの指示・了解・容認の下で,本件行為に及んでいたのである。被告は,このような原告の上司による接待や違法な経理処理の奨励等の指示ないし関与,A証券の組織ぐるみの関与等を検討し,これらの 関与や上司の責任等も比較衡量した上で,原告についての処分の量定を決定すべきであった。A証券には,原告以外にも,A証券によるC基金に対する一連の特別の利益提供行為に関する共犯者が存在する。なお,本件有罪判決において,上司の指示やA証券の組織ぐるみの関与が否定されているが,本件有罪判決は,E基金に対する接待行為を対象とするものであり,D基金における海外 視察旅行の接待に関する上司の指示やA証券の組織ぐるみの関与が否定されたものではない。本件職務停止処分に際しては,A証券の組織ぐるみの関与及び共犯関係等の事情が無視され,実行行為者である末端の営業部員である原告のみが突出して重い処分を受けている。かかる事情を加味すれば,本件職務停止処分は,重きに失し,社会通念上相当性を欠く,違法なものである。 ⑶ 行政機関である被告は,本件職務停止処分に際し,原告のみを理由なく不平等に扱ってはならない(憲法14条)。また,「考え方」によれば,職位の高さに比例した処分が予定されている。したがって,本件職務停止処分を行うに際しては,原告のみを不利益に扱ったり,また,本件行為やこれに関連する事実に関与した者がいる場合,当該関与者に対する処分の内容と比例するもので なかったり,本件行為に関与した上司に対する処分が重いものとなっていないのであれば,本件職務停止処分は,平等原則に反するものであり,違法である。 しかしながら,被告は,原告以外に誰についてど なかったり,本件行為に関与した上司に対する処分が重いものとなっていないのであれば,本件職務停止処分は,平等原則に反するものであり,違法である。 しかしながら,被告は,原告以外に誰についてどのような処分をしたかを全く明らかにしておらず,本件職務停止処分は,平等原則に反し,違法である。 ⑷ 聴聞結果報告書(甲3)によれば,被告は,原告が本件行為を積極的に行っ ていたことを認定しているが,そのような事実を認定した根拠は全く明らかに - 25 -されていない。また,A証券の役員らは,みなし公務員であるC基金の役職員に対して,高額な特別の利益の提供行為を行うことを容認し,原告の上司や原告と同様の立場にあった同僚らは,原告と同様に,C基金の役職員に対して,高額な特別の利益の提供行為を行っていた。したがって,何故に,原告のみが積極的に接待を行っていたと認定されるのか不明である。 仮に,上記認定が事実に即して適切なものであったとしても,その原因は,上記⑵のとおり,本件行為を容認するA証券の組織的な風土によるものであり,やむにやまれない事情があるといえるから,原告による接待行為の事実を原告に不利益に考慮して本件職務停止処分を行うのは,考慮すべきでない点を考慮に入れて処分をしたものにほかならない。他方,本件職務停止処分に際し,A 証券の役員らや原告の上司等の関与や,これらの者についての処分の必要性等に関する考慮がされていないから,本件職務停止処分は,考慮すべき事情を考慮せずに行われたものである。 (被告の主張の要旨)⑴ 行政庁の処分は,その裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合にのみ 違法として取り消されるものであるところ(行政事件訴訟法30条),本件職務停止処分に関しては,以下のとおり,事実関係及び適用法 庁の処分は,その裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合にのみ 違法として取り消されるものであるところ(行政事件訴訟法30条),本件職務停止処分に関しては,以下のとおり,事実関係及び適用法令の趣旨・目的に照らして,社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認められない。 ⑵ 金商法は,外務員登録制度により,金融商品取引業者等に対し,自社の役員 や使用人に外務員の職務を行わせる場合には当該役員・使用人を外務員として登録することを義務付けて外務員の行為の責任を明らかにするとともに,登録の欠格要件を定めること及び法令違反等の場合において登録取消処分又は職務停止処分等の外務員登録事務を認可金融商品取引業協会たる被告に行わせることによって不適格者を排除し,顧客との紛争又は事故の原因となりやすい外務 員に対する監督体制の整備を図っている。 - 26 -また,自主規制機関としての被告は,自治的に,協会員の従業員に遵守させるべき服務基準等を定めるとともに,協会員の従業員に対する監督責任を定め,「協会員の従業員に関する規則」(乙2)の遵守を協会員に求めるとともに,不都合行為者の取扱いの決定手続を定め,外務員登録手続等の監督体制と併せて,協会員の行う有価証券の売買その他の取引等を公正ならしめて いる(定款第6条〔乙1〕)。 ⑶ 上記規則において被告への提出が義務付けられている事故連絡書や事故顛末報告書等は,金商法上の規定に基づき,内閣総理大臣(又はその権限の委任を受けた金融庁長官)から委任を受けた被告が行う協会員の外務員に係る監督上の処分の基礎資料にもなることは,協会員においても周知のことであって,協 会員において誤謬があることは許されず,また,虚偽の報告や資料提出について を受けた被告が行う協会員の外務員に係る監督上の処分の基礎資料にもなることは,協会員においても周知のことであって,協 会員において誤謬があることは許されず,また,虚偽の報告や資料提出については除名や5億円以下の過怠金賦課など重い処分が課せられることから,協会員において慎重に事実関係等を調査・確認した上で提出されている。したがって,協会員から提出された事故連絡書や事故顛末報告書等は,極めて信用性の高いものということができる。 ⑷ 証券取引等監視委員会の勧告及び金融庁の業務改善命令等の公知の事実,並びにA証券から提出された事故連絡書,事故顛末報告書その他の資料から,被告が認定した本件職務停止処分の原因となる事実は,事故顛末報告書に記載されたとおりの事実であり(乙6の1),この行為は,金融商品取引契約に関する業務に関し,金商法38条8号及び金融商品取引業等に関する内閣府令11 7条1項3号にて禁止行為として定められている第三者に対する特別の利益提供に該当する。また,原告は,E基金に対する接待について,刑法198条に定められる贈賄罪に該当するものとして起訴され,有罪判決が確定している。 したがって,原告の行為は,有価証券に係る売買又はその媒介,取次ぎ若しくは代理の勧誘(金融商品取引業のうち金商法64条1項1号ロに掲げる行為) を行う業務に関し,法令に違反するものであり,金商法64条の5第1項2号 - 27 -に該当する。よって,被告は,A証券に対して,原告について外務員登録の取消し又は2年以内の期間を定めた職務の停止を命ずることができる。そして,被告は,所定の手続を経た上で,法令等違反行為の内容,罰則の有無及び重さ,常習性(違反回数,行為の期間),取引金額,事故金額,過去の行政処分及び自主規制処分の有無,役職,各 ることができる。そして,被告は,所定の手続を経た上で,法令等違反行為の内容,罰則の有無及び重さ,常習性(違反回数,行為の期間),取引金額,事故金額,過去の行政処分及び自主規制処分の有無,役職,各種情状,刑事訴追の有無並びに反社会的勢力の 関与の有無等の諸点を考慮し,行為の重大性,悪質性,反復可能性,社会的影響度等を総合的に審査して,A証券に対し,原告について1年6か月の職務停止処分(本件職務停止処分)をしたものである。 以上のとおり,本件職務停止処分に係る被告の判断は相当であり,また,裁量の範囲の逸脱又はその濫用は認められず,何ら違法と評価されるものではな い。 以上
▼ クリックして全文を表示