平成13(ワ)386 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年7月7日 名古屋地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-7625.txt

判決文本文4,492 文字)

主文 1原告の請求をいずれも棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求1主位的請求被告らは原告に対し,連帯して2300万円及びこれに対する平成6年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2予備的請求被告らは原告に対し,連帯して180万円及びこれに対する平成13年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要1本件は,Aが経営するBのゴルフ会員権の譲渡を受けた原告がAの取締役である被告らに対し,主位的に,預託金の返還が受けられないという損害を被ったとして,商法266条ノ3ないし不法行為による損害賠償請求権に基づき,預託金相当額の損害賠償とこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,Aの副支配人の虚偽の説明によりゴルフ会員権を譲り受けたとして,民法715条1項の使用者責任に基づき,譲渡代金相当の損害賠償とこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2前提事実(1)AはBを経営する資本金7500万円の株式会社であり,被告らは平成6年12月13日当時,Aの取締役であった者である。 (2)Cは,平成6年12月13日,Aに対し,10年間据置,退会のときに返還するとの約定の下に,入会預託金2300万円を支払い,Bに入会して会員となった。 (3)原告は平成10年4月頃に破産したCの破産管財人との間で,平成10年9月27日,預託金返還請求権を含む会員の資格を180万円で譲り受け,Aもこれを異議なく承諾した。 (4)Aは,平成10年度(平成10年4月1日から平成11年3月31日)において,約4億円余の債務超過の状態であり(乙3),平成14年2月8日,岐阜地方裁判所に,民事再生手続の申立て(同裁判所平成14年(再)第1号) 0年度(平成10年4月1日から平成11年3月31日)において,約4億円余の債務超過の状態であり(乙3),平成14年2月8日,岐阜地方裁判所に,民事再生手続の申立て(同裁判所平成14年(再)第1号)をし,同月21日再生手続開始決定を受け,同年9月6日再生計画認可の決定を受けた。 3原告の主張(1)被告らは,Aにはゴルフ場を開設するにつき資本金7500万円のほかに自己資本もなく,入会預託金をゴルフ場の建設費に費消したときは据置期間経過後に預託金を返還することが不可能であることを知り又は容易に知りうべきであった。このことは,平成6年度(平成6年4月1日から平成7年3月31日)において,既に約2億円余の債務超過で,営業損失は3億5455万円余である(乙2)ことからも明らかである。 (2)被告らは,会員募集に際して,据置期間経過後に預託金を返還できないと表明したときは入会を勧誘して預託金名下に金員を交付させることが不可能であるので,募集に関するパンフレットを作成して,10年間据置退会のとき預託金を返還する旨の虚偽の事実,理事,役員として銀行や大会社の社長,会長などの名前を記載し,社員らを道具として会員らに交付し,預託金が確実に返還される旨Cの代表者を含む会員らを誤信させた。 (3)(予備的請求に関する主張)原告が本件ゴルフ会員の地位を承継するにつき,Aの副支配人に対してAの経営状況を打診するに,副支配人は破産原因を秘匿して経営が安定していると虚偽の事実を述べて,原告が会員の地位を承継することに歓迎の意を述べたものであり,これにより,原告はCの破産管財人に支払った譲渡代金180万円相当の損害を被った。 (4)(被告らの時効消滅の主張に対し)原告は,平成12年12月14日Aの貸借対照表,損益計算書等の閲覧をしてAの財務内容からして預託金の返還が不可能 支払った譲渡代金180万円相当の損害を被った。 (4)(被告らの時効消滅の主張に対し)原告は,平成12年12月14日Aの貸借対照表,損益計算書等の閲覧をしてAの財務内容からして預託金の返還が不可能である事実を初めて知り,損害を知ったため,平成13年3月31日本訴の提起に及んだものであり,被告らの時効消滅の主張は争う。 4被告らの主張(1)原告の主張はすべて否認ないし争う。被告らは,CがBに入会した平成6年当時,将来預託金の返還資金の不足の問題が生じることは予想し得なかったものであり,何ら過失はない。 (2)また,Cは本件ゴルフ場の造成工事をしたDの下請会社であるEの下請として造成工事に関係しており,Dと親密な関係にあった結果,本件会員権を取得したものであり,Aにおいてゴルフ会員権の市場価格が額面額よりも上回るであろうという予測の下に預託金会員制の本件ゴルフ場を開設したことを知っていた。よって,Cが欺罔されるようなことはなかった。 (3)仮に,被告らに不法行為責任があるとした場合,CがBに入会してから既に3年以上経過しているから,不法行為に基づく損害賠償請求権は時効消滅している。よって,被告らは同時効消滅を援用する。 第3当裁判所の判断1前提事実に加えて証拠(乙6,18,38,後掲証拠)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (1)本件ゴルフ場の事業計画は,昭和60年頃,全国的にゴルフ場の建設等の事業を展開しているDの立案により始まり,ゴルフ場開設のための受け皿となる会社としてAが同年7月25日設立され,被告らはいずれも,A設立以来,取締役の地位にある者である(但し,被告Fは,平成12年8月1日に取締役辞任,乙11,13,19)。 (2)預託金方式による本件ゴルフ場の開発事業は,昭和61年1月土地売買等届出前事前協議申請に始 取締役の地位にある者である(但し,被告Fは,平成12年8月1日に取締役辞任,乙11,13,19)。 (2)預託金方式による本件ゴルフ場の開発事業は,昭和61年1月土地売買等届出前事前協議申請に始まり,平成元年12月頃にはゴルフ場開発に必要な主な許認可申請を終えて,平成3年7月に,Dとの間で工事請負契約を締結し,平成6年8月頃,同工事の完成引渡しを受けて,同年10月1日に仮オープンし,平成7年5月本オープンとなった(乙12,23)。 (3)平成3年9月から同年11月までの会員募集において,当初縁故募集人員として予定した450名を超える約800名から,それぞれ預託金2300万円の会員申込みがあり,これを受け入れた結果,預託金合計として本件ゴルフ場開発の総事業費172億円を上回る約185億円の資金を集めた。 (4)Aでは,Gの事業並びに決算報告書(乙20ないし22),Dの事業計画書等の資料を前提に,年間5万人の入場者があればBの経営は十分成り立ち,かつ,前記入場者数を確保することは可能であると予測し,平成6年10月1日,本件ゴルフ場を仮オープンするに至った。 (5)Cは,平成6年12月13日,Aに対し,10年間据置,退会のときに返還するとの約定の下に,入会預託金2300万円を支払い,Bに入会して会員となった(乙24)。 (6)ところで,Aが本件ゴルフ場開発を計画した当時はいわゆるバブル経済の崩壊前であって,ゴルフ会員権市場では,預託金額を上回る市場価格が形成され,その市場価格もさらに上昇傾向を示していたものであり,ゴルフ場の経営会社のみならずゴルフ会員権を購入する者は,据置期間経過後に預託金の返還を受けることよりもこれを会員権市場において換価処分してその資金を回収することを当然のように認識していた(乙25)。 (7)そして,AがBの会員募集を 員権を購入する者は,据置期間経過後に預託金の返還を受けることよりもこれを会員権市場において換価処分してその資金を回収することを当然のように認識していた(乙25)。 (7)そして,AがBの会員募集を開始した当時,いわゆるバブル経済崩壊の影響によりゴルフ会員権の市場価格が値下がり傾向を示しつつあったが,いまだ預託金額よりも高い状況にあった。 2以上のとおり認められるところ,これによると,Aが預託金方式による本件ゴルフ場を開設するに際し,取締役である被告らにおいて据置期間経過後に預託金を返還することが不可能であることを知っていたとか,あるいはこれを容易に知りうべきであったとは到底認めがたい。なるほど,Aの資本金は7500万円であり,本件ゴルフ場開設当初の平成6年4月1日から平成7年3月31日の事業年度において,約2億円余の債務超過であり,その営業損失は3億5455万円余であること(乙2)は原告指摘のとおりである。しかしながら,前記認定のとおりの本件ゴルフ場の開発計画から会員募集当時におけるゴルフ会員権市場の価格動向及びこの点に関するゴルフ場経営会社,会員権購入者等関係者の認識に照らすと,原告指摘の事情をもってしても,据置期間経過後の預託金返還が不可能であることについて被告らに商法266条ノ3所定の「悪意・重過失」や,民法709条所定の「故意・過失」を認めるに足りるものとは言い難いというべきである。 よって,その余について判断するまでもなく原告の主位的請求は理由がない。 3次に予備的請求についてみるに,原告はCの破産管財人との間で,平成10年9月27日,預託金額面1150万円の預託金返還請求権を含む会員の資格2口(計2300万円)を180万円で譲り受けたものである(甲4)ところ,その譲渡に先立ち,Bへの入会の許否を決めるいわゆる支配人面接が実施 ,預託金額面1150万円の預託金返還請求権を含む会員の資格2口(計2300万円)を180万円で譲り受けたものである(甲4)ところ,その譲渡に先立ち,Bへの入会の許否を決めるいわゆる支配人面接が実施され,その際に副支配人であるHも原告と面接し,その結果,Bへの入会が許されたことが認められる(乙38)。原告は,その支配人面接の際に副支配人が原告に対し,Aの破産原因を秘匿して経営が安定していると虚偽の事実を述べた旨主張し,これに沿う陳述書(甲10)を提出する。しかしながら,前記支配人面接は,Bが,その入会希望者に対して会員として相応しいかどうかを見極めるために実施されるものであり,ゴルフ会員権の譲渡自体に関与するものではないことからすると,副支配人がBの入場者数や収支状況を超えてAの経営状態について虚偽の事実を述べたとは認めがたいし(乙38),原告自身,Cの破産管財人から預託金額面計2300万円もの高額な本件ゴルフ会員権を180万円で譲り受けたという事実からしても,副支配人の説明があったがために,これを譲り受けたとは到底認められない。 よって,副支配人の不法行為を前提とする予備的請求も理由がない。 4以上の次第で,原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第8部裁判官黒岩巳敏

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る