主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実 控訴代理人は「原判決を取り消す。控訴人が被控訴人の従業員の地位にあることを仮りに定める。被控訴人は控訴人に対し、昭和四五年五月一五日以降、毎月二八日限り月額金六万三、一二〇円宛を仮りに支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。一、 控訴人の主張(申請の理由)1. 控訴人は、昭和四五年二月一六日生コンクリートの製造販売を業とする被控訴会社に、コンクリートミキサー車の運転手として雇傭されたものである。ところが、被控訴会社は、同年五月一四日控訴人に対し、「貴方は入社して五月一五日付で三か月となりますが、この期間は就業規則第一一条に定める試用期間であり、試用期間の満了にあたつて会社が就業規則第一一条により本採用にするのに不適当と決定いたしましたので御通知いたします。つきましては五月一五日以降は出社する必要はありません。」と通告して来た。2. しかし、控訴人は前記通告当時試用期間中の者ではなかつたから、右通告による本採用拒否の意思表示は無効である。すなわち、控訴人は被控訴会社に雇傭されるに先立ち同会社社長Aと面接した際、同社長から基本給その他の賃金及び労働時間について告げられただけで、就業規則も示されず、まして三か月の試用期間をおくというような特段の説明はなかつた。従つて、控訴人は前記二月一六日に被控訴会社に期間の定めなく雇傭されたものであつて、試用期間をおいて採用されたものではないから、本採用拒否の意思表示はその前提を欠き無効である。3. 仮りに、控訴人が試用期間中の者であつたとしても、試用期間中の労働関係と本採用後のそれとは、被控訴人が主張 おいて採用されたものではないから、本採用拒否の意思表示はその前提を欠き無効である。3. 仮りに、控訴人が試用期間中の者であつたとしても、試用期間中の労働関係と本採用後のそれとは、被控訴人が主張するように、全く別個のものではなく、試用期間がおかれていても、労働契約関係はその当初から期間の定めないものとして成立していると解すべきであるから、被控訴人のした本件本採用拒否の意思表示はそれによつて右労働契約関係を終了させるもの、即ち解雇の意思表示というべきものであるが、本件本採用拒否の意思表示は、権利の濫用であつて無効である。 つたとしても、試用期間中の労働関係と本採用後のそれとは、被控訴人が主張するように、全く別個のものではなく、試用期間がおかれていても、労働契約関係はその当初から期間の定めないものとして成立していると解すべきであるから、被控訴人のした本件本採用拒否の意思表示はそれによつて右労働契約関係を終了させるもの、即ち解雇の意思表示というべきものであるが、本件本採用拒否の意思表示は、権利の濫用であつて無効である。すなわち、控訴人はコンクリートミキサー車の運転手として雇われたものであるが、この業務はいわば単純な労務を提供するに止まり、その能力や業務への適性を評価することが困難なものではないから、管理者や特殊技能者などの場合と異なり、試用期間が設けられても実質的にはあまり意味を持たないうえに、本件においては、どういう目的で試用期間をおくのか、その間誰が指導にあたるのか、能力や適性をどういう基準によつて誰が判断するのか等の試用期間に関する具体的内容は何一つ定められず、また控訴人に明示されることはなかつたのであるから、試用期間中とはいうものの、その実態においては、控訴人は確定的に被控訴会社に雇われたのと何ら異ならないものであつた。従つて、被控訴会社は、控訴人が試用期間中であるという一事によつて当然に本採用を拒否することはできず、通常の解雇の場合と同様の事由(即ち、当該労働者を企業外に排除することを必要とする事由)があるのでなければ本採用を拒否することができないものというべきである。ところが、被控訴人が控訴人の本採用を拒否する理由として主張するところは、後記三において詳細に反駁するとおり、事実に相違しているうえにこれを本採用拒否の理由 否することができないものというべきである。ところが、被控訴人が控訴人の本採用を拒否する理由として主張するところは、後記三において詳細に反駁するとおり、事実に相違しているうえにこれを本採用拒否の理由とすることは全く当を得ないものであるから、結局本件本採用の拒否は正当な理由に基づかないものというほかない。このような本採用の拒否は、まさに権利の濫用であつて、無効である。4. また、本件本採用の拒否は、労組法第七条第一号に該当する不当労働行為であるから無効であり、さらに控訴人の思想、信条を理由とするものであるから労基法第三条、憲法第一四条、第一九条に違反し無効である。 るうえにこれを本採用拒否の理由とすることは全く当を得ないものであるから、結局本件本採用の拒否は正当な理由に基づかないものというほかない。このような本採用の拒否は、まさに権利の濫用であつて、無効である。4. また、本件本採用の拒否は、労組法第七条第一号に該当する不当労働行為であるから無効であり、さらに控訴人の思想、信条を理由とするものであるから労基法第三条、憲法第一四条、第一九条に違反し無効である。すなわち、被控訴会社は、控訴人が被控訴会社に雇われる前に勤めていた訴外三協運輸株式会社において、全国自動車運輸労働組合(以下全自運と略称する。)の静岡地方本部三協運輸分会執行委員長として活発な組合活動を行なつた経歴があることから、控訴人が被控訴会社において組合結成の中心的な働き手となることをおそれ、事前にこれを封殺しようとして、控訴人を会社から放逐するために本採用を拒否したものであり、また、被控訴会社は控訴人に組合活動の前歴があることから、その思想信条を推認し、これに基づいて本採用を拒否したものである。そうして、以上の点についての具体的事実の詳細は次のとおりである。(一) 全自運は昭和三七年以来静岡県下の生コンクリート製造、販売等を業とする企業に働らく労働者を組織し活動を行なつて来たが、昭和四一年一一月には県内生コンクリート労組の単一組織として全自運静岡県生コン支部が結成され、業者の組織である県生コン協会に対しても統一要求を出し、交渉を求めるようになつた。これに対して業者は前記協会内に労務委員会を設けたが、被控訴会社の取締役Bもこれに参加し、全自運の動向については常に聞 者の組織である県生コン協会に対しても統一要求を出し、交渉を求めるようになつた。これに対して業者は前記協会内に労務委員会を設けたが、被控訴会社の取締役Bもこれに参加し、全自運の動向については常に聞知していた。そのうえに、被控訴会社と同一系列の大阪、堺等にある各会社には全自運の組織があつて活発に活動を行なつており、また、被控訴会社が昭和四四年にその掛川工場として経営を引継いだ松林生コンにおいては昭和四二年の春闘に際して県下生コン業界でも特筆される程の激しい争議が行なわれたことがあり、これらの事情から被控訴会社は全自運について熟知していたものである。一方、被控訴会社は県下の同業他社に比べて、賃金等労働条件が劣つているので、企業をこえた横断的な組織である全自運に従業員が加入することを極度におそれていた。 ており、また、被控訴会社が昭和四四年にその掛川工場として経営を引継いだ松林生コンにおいては昭和四二年の春闘に際して県下生コン業界でも特筆される程の激しい争議が行なわれたことがあり、これらの事情から被控訴会社は全自運について熟知していたものである。一方、被控訴会社は県下の同業他社に比べて、賃金等労働条件が劣つているので、企業をこえた横断的な組織である全自運に従業員が加入することを極度におそれていた。現に、昭和四五年五月一六日被控訴会社の運転手を中心に結成されたが、諸般の事情から非公然の活動を止むなくされていた全自運清水宇部分会が本件第一審判決後である昭和四六年三月一六日公然化し、被控訴会社に対し要求を提出し、団体交渉の申入れをするや、被控訴会社の職制を中心に第二組合(清水宇部コンクリート工業株式会社従業員組合)を結成させ、「これに入らない者は全自運であるから解雇されるだろう。」とおどして従業員を加入させる一方、前記分会員に対しては陰に陽にいやがらせや差別等の手段を弄したことは、被控訴会社がいかに全自運をおそれ、かつ嫌悪していたかを示すものである。(二) (1) 昭和四五年の春闘にあたり被控訴会社の従業員は、まだ労働組合は結成されていない状態ながら全員の集会において日額三〇〇円の賃上げを要求することを決定し、Cらの班長を代表として交渉を行なつていたが、同年五月四日の昼休みに行なわれた全従業員(運転手、プラント、試験室の従業員及び事務 態ながら全員の集会において日額三〇〇円の賃上げを要求することを決定し、Cらの班長を代表として交渉を行なつていたが、同年五月四日の昼休みに行なわれた全従業員(運転手、プラント、試験室の従業員及び事務員)の集会においては、班長による交渉だけでは従業員の要求が通らないから、全員の意見をまとめて会社に持つて行くことが決議されたが、従業員の中からは、組合を作ろう、ストライキを決行しようという緊迫した意見も出ていた。そうして、この会議の内容の詳細は被控訴会社の十分知るところであつた。(2) 前記五月四日夜被控訴会社の従業員食堂で社長、取締役、工場長、課長らと従業員全員による交渉が行なわれたが(ちなみに、このような交渉はこれまでに例がなかつた。)、その席上控訴人ほ、会社側の平均七千円引上げという回答に対して、誰がいくらもらえるのかを具体的に明らかにするよう求める質問をし、社長から、 「入社一年以上は七千円、半年以上一年未満は五千円、三か月以下は三千円である。 知るところであつた。(2) 前記五月四日夜被控訴会社の従業員食堂で社長、取締役、工場長、課長らと従業員全員による交渉が行なわれたが(ちなみに、このような交渉はこれまでに例がなかつた。)、その席上控訴人ほ、会社側の平均七千円引上げという回答に対して、誰がいくらもらえるのかを具体的に明らかにするよう求める質問をし、社長から、 「入社一年以上は七千円、半年以上一年未満は五千円、三か月以下は三千円である。」旨の返事を引き出し、前記平均七千円という回答の偽瞞性を暴露したが、その際「資本家」とか「経営者」とか「労働者」というような従業員にとつては従来耳なれない言葉を使用したため、その発言は出席者全員に強く印象づけられた。(3) 翌五月五日の就業時間中B取締役とD工場長は会社の応接室に従業員を一人宛呼びつけ、「賃上げの主謀者は誰か。」「控訴人はどういう人物か。」等問いただすと共に「会社の中にアカ、共産党がいる。」等申し向けたが、これは前日夜の集会における控訴人の発言内容に鑑み控訴人について調査するためにしたものであつた。(4) 被控訴会社は、同年四月末頃偶然の機会に控訴人が静岡市内の三協運輸株式会社に勤務していたことを知つたのであるが、前記五月五日の後、被控訴会社の社長とB取締役は静岡市に したものであつた。(4) 被控訴会社は、同年四月末頃偶然の機会に控訴人が静岡市内の三協運輸株式会社に勤務していたことを知つたのであるが、前記五月五日の後、被控訴会社の社長とB取締役は静岡市に赴き、三協運輸株式会社と資本系列を同じくする三共水産株式会社を訪ずれ、同会社で三協運輸株式会社当時の関係者Eについて約二時間にわたり控訴人の組合活動を中心に調査をし、またB取締役は同月一〇日再び三共水産株式会社に赴いて、控訴人の履歴書を借り受け、これを写し取つた。ところで、三協運輸株式会社においては、昭和四四年八月頃同会社が企業を閉鎖して全従業員を解雇しようとしたところから長期にわたり争議が発生し、控訴人は前記分会執行委員長としてこれを闘つたものであるが、この争議と前記分会の闘争とは当時静岡県下においてはあまねく知られていたところであつた。(5) 五月一一日午后四時四〇分頃控訴人は被控訴会社の応接室において、社長、B取締役、D工場長らから五月四日の事故について聞かれ、状況を説明したところ、「試用期間中にこのような事故を起したのでは従業員として不適格であるから任意に退職せよ。 たり争議が発生し、控訴人は前記分会執行委員長としてこれを闘つたものであるが、この争議と前記分会の闘争とは当時静岡県下においてはあまねく知られていたところであつた。(5) 五月一一日午后四時四〇分頃控訴人は被控訴会社の応接室において、社長、B取締役、D工場長らから五月四日の事故について聞かれ、状況を説明したところ、「試用期間中にこのような事故を起したのでは従業員として不適格であるから任意に退職せよ。」と勧告され、控訴人がそれは納得できないと拒絶すると、社長は「もつと重大なことがある。君は経歴を詐称している。」とのべ、工場長はわざわざ経歴詐称を解雇事由と定める就業規則の当該個所を指示した。(6) その翌日頃から従業員の間に控訴人が止めさせられそうだという噂が広がり、五月一二日に運転手全員が連名で「お願い書」という書面を作り会社に出したところ、社長はこれに対し「生コンクリートを固めたことは大したことではない。会社に入る前二年間どこに働いていたかという重要なことをかくしていた経歴詐称が問題である。」旨返答し、また当日F工務課長及びG車輌主任は数名の従業員に対し、控訴 トを固めたことは大したことではない。会社に入る前二年間どこに働いていたかという重要なことをかくしていた経歴詐称が問題である。」旨返答し、また当日F工務課長及びG車輌主任は数名の従業員に対し、控訴人が前の会社で組合活動をしていたことが問題であること、会社は控訴人がここ二、三年のうちに他の運転手を組合に引張り込むことをおそれていること、こういうわけで控訴人をやめさせるのであること等の趣旨のことを話しており、控訴人も五月一三日午后四時三〇分頃応接室において前記G主任から、今後一切組合活動をしないという一札を書けば、自分が頼んで止めさせられないですむようになるかも知れない旨を告げられた。(7) 控訴人は、五月一三日退職願を出して任意退職をすることを拒否したので、被控訴会社はその翌日である一四日前記1のとおり、本採用拒否の意思表示をした。(8) 前記(一)、のとおり全自運清水宇部分会は非公然のうちに活動を続けていたのであるが、被控訴会社はその存在を知り、昭和四五年六月末頃従業員Hに対し全自運から脱退するよう働きかけまた同分会員が本件の第一審において証人として出頭することを種々の理由を構えて妨害し、圧迫を加えた。(三) 以上の各事実に、後記三において述べるとおり被控訴会社の主張する本採用拒否の理由が事実に反し、しかも当を得ないものであることを考え合わせると、被控訴会社はかねてから全自運による組合活動を嫌悪していたところ、昭和四五年五月四日夜の集会における発言から控訴人の前歴を調査し、前に勤めていた三協運輸株式会社における組合活動の状況からして控訴人が全自運の活動家であることを知り、そのことから推して、近い将来控訴人が被控訴会社の組合の中心的活動家となることを恐れて、控訴人を企業外に放逐するため本件本採用拒否に及んだことが明らかである。 考え合わせると、被控訴会社はかねてから全自運による組合活動を嫌悪していたところ、昭和四五年五月四日夜の集会における発言から控訴人の前歴を調査し、前に勤めていた三協運輸株式会社における組合活動の状況からして控訴人が全自運の活動家であることを知り、そのことから推して、近い将来控訴人が被控訴会社の組合の中心的活動家となることを恐れて、控訴人を企業外に放逐するため本件本採用拒否に及んだことが明らかである。訴人が全自運の活動家であることを知り、そのことから推して、近い将来控訴人が被控訴会社の組合の中心的活動家となることを恐れて、控訴人を企業外に放逐するため本件本採用拒否に及んだことが明らかである。従つて、右本採用の拒否は労組法第七条第一号に該当する不当労働行為というべきである。また、前記(二)、(5)、(6)によると、被控訴会社は控訴人の経歴詐称を非難しつつ、その実、三協運輸株式会社における控訴人の組合活動から、控訴人が一定の思想信条を持つているものであると推認していることが明らかであつて、本件本採用の拒否は、控訴人の思想、信条を理由とするものでもある。従つて、本採用の拒否は、労基法第三条とそこに表現されている憲法第一四条、第一九条の趣旨に違反するものである。5、 控訴人は労働者であつて、月額六万三、一二〇円の賃金を毎月二八日限り支払われていたものであつて、この賃金を唯一の生活の資とするものであつて、他に特に資産はない。6、 控訴人は被控訴会社に対し、従業員たる地位の確認等の本案訴訟を提起しようとしているがその確定を待つていては回復できない損害を被るおそれがあるので、仮りに従業員たる地位を定めると共に、昭和四五年五月一五日から前記賃金の仮払をもとめて、本件仮処分を申請する。二、 被控訴人の答弁及び主張 1 (一) 申請の理由1及び2記載の事実のうち、被控訴会社が昭和四五年二月一六日控訴人をコンクリートミキサー車の運転手として採用したこと及び被控訴会社が同年五月一四日控訴人に対しその主張のとおりの本採用拒否の通告をしたことは認めるが、その余はすべて争う。被控訴会社は、同年二月一六日控訴人と期間三か月、日給一、四七〇円、業務コンクリートミキサー車の運転という内容の試用契約を締結したものである。すなわち、被控訴会社の就業規 が、その余はすべて争う。被控訴会社は、同年二月一六日控訴人と期間三か月、日給一、四七〇円、業務コンクリートミキサー車の運転という内容の試用契約を締結したものである。 とおりの本採用拒否の通告をしたことは認めるが、その余はすべて争う。被控訴会社は、同年二月一六日控訴人と期間三か月、日給一、四七〇円、業務コンクリートミキサー車の運転という内容の試用契約を締結したものである。すなわち、被控訴会社の就業規 が、その余はすべて争う。被控訴会社は、同年二月一六日控訴人と期間三か月、日給一、四七〇円、業務コンクリートミキサー車の運転という内容の試用契約を締結したものである。すなわち、被控訴会社の就業規則第一一条には試用期間の定めがあるので、被控訴会社が運転手を採用するときはすべて試用期間をおくのが常であつて、特に控訴人だけを別異に取り扱うべき事情はなかつたうえに、同年二月一三日頃新聞広告に応募して来た控訴人に、A社長が面接した際、試用である旨と前記契約内容を明示したし、採用の際控訴人に交付した辞令にも試用であることが記載されているものである。そうして控訴人は、本訴の当初において、この試用の事実を認めていたが後にこれを翻すに至つたのであつて、被控訴人はこの自白の撤回に異議がある。(二) 前記就業規則第一一条は「従業員は原則として採用の日から三か月以内を試用期間とする。試用期間満了の際会社が適当と認めた者は本採用とする。試用期間は勤務年数に通算する。」と規定しているが、被控訴会社がこのように試用期間を設けた趣旨は、その間被用者を実際に働らかせてみて、能力、人格その他従業員としての適格性を調査する為であるが、被控訴会社においては、試用期間中の勤務成績、勤務状態、生活態度、就業規則違反の有無等を勘案して人格と能力を評定したうえで本採用するかどうかを決定している。そうして、被控訴会社においては、試用期間中の者が、前記のようにして適格性を認められても、期間満了の際当然自動的に本採用になるものではなく、改めて本採用の決定をしその辞令を出して本採用とするものであり、また、適格性がないと評定された場合には、本採用しない旨の通知をすることになつている。従つて、被控訴会社においては、試用期間中の労働契約と本採用後のそれとは実体上別個のものであつて、試用期間中 あり、また、適格性がないと評定された場合には、本採用しない旨の通知をすることになつている。従つて、被控訴会社においては、試用期間中の労働契約と本採用後のそれとは実体上別個のものであつて、試用期間中の労働契約は本採用の決定がなく、また、特に試用期間を延長する旨の意思表示のない限り所定の期間の満了によつて当然に終了するものであつて、前記本採用をしない旨の通知は、試用期間中の労働契約が期間の満了によつて終了し、被控訴会社はその更新をしないことを確認する趣旨のものである。 することになつている。従つて、被控訴会社においては、試用期間中の労働契約と本採用後のそれとは実体上別個のものであつて、試用期間中の労働契約は本採用の決定がなく、また、特に試用期間を延長する旨の意思表示のない限り所定の期間の満了によつて当然に終了するものであつて、前記本採用をしない旨の通知は、試用期間中の労働契約が期間の満了によつて終了し、被控訴会社はその更新をしないことを確認する趣旨のものである。従つて、控訴人と被控訴会社との間の労働契約関係は、前記試用期間の満了により終了したものである。仮りに、試用期間の満了により控訴人と被控訴会社の労働契約関係が終了したものでないとしても、前記の試用制度の趣旨からすると、被控訴会社は、試用期間中は、就業規則に定める解雇事由に該当しなくても、試用中の労働者との労働契約を終了させることができる大巾な解約告知権を有するものというべきであるが、被控訴会社のした前記本採用の拒否はこの解約告知権の行使であるから、これにより控訴人との間の労働契約関係は終了した。3、 被控訴会社が控訴人を本採用しなかつたのは、(ア)コンクリートミキサー車運転手としての注意能力の著しい欠缺、(イ)会社に対する損害惹起、(ウ)経歴詐称及び(エ)日常の勤務状態、生活態度の不良という諸事由を総合して控訴人には被控訴会社の従業員としての適格性が欠けていると判断したからであるが、これらの事由の中には就業規則により解雇事由及び懲戒事由に当たるものもあるのであるから、本件本採用の拒否はもとより正当な理由に基づくものであつて、これを権利の濫用であるという控訴人の主張は失当である。そうして前記各事由の詳細は次のとおりである。(一) まず、コンクリートミキサー車運転手としての 否はもとより正当な理由に基づくものであつて、これを権利の濫用であるという控訴人の主張は失当である。そうして前記各事由の詳細は次のとおりである。(一) まず、コンクリートミキサー車運転手としての注意能力の著しい欠缺について。(1) 控訴人は昭和四五年五月四日午前一一時頃その乗務車輌(ハイロ型コンクリートミキサー車、一三号車。)に生コンクリートを積んだまま出先きから被控訴会社清水工場に帰り下車したが、このような場合コンクリートミキサー車運転手は、常時エンジンを動かし、ドラム(生コンクリートの容器)の内の羽根を回転させ生コンクリートがドラムの内部で固まらないようにすべき注意義務があるのに、控訴人は生コンクリートが入つたままの状態で不注意にもドラム内の羽根の回転を止め、そのまま一時間半位放置し、ドラム内の生コンクリートを固めてしまつた。 ートを積んだまま出先きから被控訴会社清水工場に帰り下車したが、このような場合コンクリートミキサー車運転手は、常時エンジンを動かし、ドラム(生コンクリートの容器)の内の羽根を回転させ生コンクリートがドラムの内部で固まらないようにすべき注意義務があるのに、控訴人は生コンクリートが入つたままの状態で不注意にもドラム内の羽根の回転を止め、そのまま一時間半位放置し、ドラム内の生コンクリートを固めてしまつた。なお控訴人は当初上記の事実を認めていたが、その後これを争うに至つた。被控訴人はこの自白の撤回に異議がある。(2) 同日午后〇時半頃控訴人は同僚から注意されてはじめてドラムの羽根の回転が止つていることを知つたのであるが、このような場合運転手としては上司や経験者と相談したうえ、生コンクリートの固まり具合によつて水を注入するとか、これをかき出すとかの適切な措置をとるべきものであるのに、これをせず漫然とミキサーのスイツチを入れてドラム内の羽根を回転させようとしたのであるが、その結果ドラム内の生コンクリートが既に固まつていたため、羽根回転用のチエーンが切れてしまつた。ドラム内の生コンクリートが固まりかけているのに、あえて羽根を回転させようとすれば無理が生じ、車輌の破損をもたらすであろうことは、コンタリートミキサー車の運転手であれば、誰でも容易に予見し得ることであるから、控訴人の前記行動は不注意極まるものという て羽根を回転させようとすれば無理が生じ、車輌の破損をもたらすであろうことは、コンタリートミキサー車の運転手であれば、誰でも容易に予見し得ることであるから、控訴人の前記行動は不注意極まるものというべきである。なお、控訴人は、最初ミキサーのスイツチを入れたこと及びこのことは同人の落度であることを認めていたのに当審においてこれを争うに至つたが、被控訴人はこの自白の撤回に異議がある。控訴人はまた、チエーンが切れたのは被控訴会社が本来本件車輌に具えるべきシヤーピンを装着していなかつたからであると主張するが(後記三ー(三))、この主張は時機に遅れたものであるから却下さるべきである。なお、当日本件車輌には規格通りシヤーピンが二本装着されていたが、それにもかかわらずチェーンが切断したのは、偶々シヤーピンが正しく機能しなかつたからである。(3) 以上のように控訴人がドラム内の羽根の回転を止めて生コンクリートを固めたこと及び生コンクリートが固まつたことを知つた後の処置に適切さを欠いて車輌を破損したことは、いずれも控訴人がコンクリートミキサー車の運転手としての初歩的な注意を甚しく欠いた結果というべく、このように注意能力を欠く控訴人は将来もつと重大な事故を起す危険性がある。 が切断したのは、偶々シヤーピンが正しく機能しなかつたからである。(3) 以上のように控訴人がドラム内の羽根の回転を止めて生コンクリートを固めたこと及び生コンクリートが固まつたことを知つた後の処置に適切さを欠いて車輌を破損したことは、いずれも控訴人がコンクリートミキサー車の運転手としての初歩的な注意を甚しく欠いた結果というべく、このように注意能力を欠く控訴人は将来もつと重大な事故を起す危険性がある。被控訴人はこの点を最も重視しており、これだけで優に本採用拒否の理由たり得るものと考える。なお、控訴人は、本件事故後被控訴会社は直ちに事故の原因について所要の調査もせず、また控訴人からこの件について始末書を徴することもしないでおいて、本件事故を理由に本採用を拒否することは失当である旨主張するが(後記三、1(四)、)、まず、この主張は時機に遅れたものであるから却下さるべきであるうえに、被控訴会社が控訴人のいうような調査をしなかつたのは、事故直後控訴人がD工場長に事故の事実とその 張するが(後記三、1(四)、)、まず、この主張は時機に遅れたものであるから却下さるべきであるうえに、被控訴会社が控訴人のいうような調査をしなかつたのは、事故直後控訴人がD工場長に事故の事実とその原因がうつかりしてミキサーのスイツチを切つたことにあることを認めていて、その必要がなかつたからである。また始末書を徴するのは、就業規則上懲戒処分の場合に限られるのであり、本件事故についての処分は未定であつたのであるから、始末書を徴することはまだその段階ではなかつた。従つて、以上の控訴人主張の事実は何ら非難に値しない。また控訴人は、被控訴会社は十分な教育や指示をしていないと主張するが(後記三1. (二)、(三))、控訴人に対しては入社直後の昭和四五年二月一六日頃、整備担当のIが控訴人と同乗し、実際に操作方法を教えると共に、生コンクリート積載中は必ずドラム内の羽根を回転しておかないとコンクリートが固まり、コンクリートも車輌も使用不能になる旨の注意を与えている。控訴人は、羽根が止つているのに、ミキサーのスイツチを入れるとチエーンが切れることは知らなかつたともいうが、これは前記のとおりコンクリートミキサー車運転手の常識であり、まして控訴人は三級整備士の免許を持つているのであるから、その程度のことが判らないわけはない。さらに、控訴人は本件事故後も控訴人をそのまま運転手として働かせたのは、事故を重視していない証左であるというが(後記三、1.(四))、被控訴会社としては、すでに控訴人の試用期間が終りに近づいていたので、一切をその際決することにして、暫くそのままにしておいたにすぎないのであるし、また、控訴人は五月分の無事故手当の支払を受けたともいうが(同前)、そのような事実はない。 その程度のことが判らないわけはない。さらに、控訴人は本件事故後も控訴人をそのまま運転手として働かせたのは、事故を重視していない証左であるというが(後記三、1.(四))、被控訴会社としては、すでに控訴人の試用期間が終りに近づいていたので、一切をその際決することにして、暫くそのままにしておいたにすぎないのであるし、また、控訴人は五月分の無事故手当の支払を受けたともいうが(同前)、そのような事実はない。(二) 被控訴会社に対する損害の惹起について。前記事故のため、被控訴会 ておいたにすぎないのであるし、また、控訴人は五月分の無事故手当の支払を受けたともいうが(同前)、そのような事実はない。(二) 被控訴会社に対する損害の惹起について。前記事故のため、被控訴会社は(ア)固つた生コンクリート約一万五、〇〇〇円相当を無駄にし、(イ)本件車輛の修理(ドラム内羽根三枚、メーンチエーン、アツセンブリー装着、コンクリート削り等)に合計六万五、六〇一円を要し、かつ(ウ)昭和四五年五月四日から同月一二日までの間修理のため本件車輌を稼動することができなかつたが、これらはすべて本件事故のため被控訴会社が現実に被つた損害である。(三) 経歴詐称(1) 控訴人は、昭和四一年八月三協運輸株式会社に雇われ、昭和四四年八月回会社を退社し、同年一一月初め豊永興業株式会社に臨時に雇傭され同月二八日退職したものであるが、控訴人は被控訴会社に採用される際提出した履歴書にはこの事実をいつわり、昭和四二年八月から昭和四四年一二月までは自家用トラツク運転手をした旨虚偽の記載をしている。(2) 被控訴会社が従業員を採用する際履歴書を提出させるのは、これによつて従業員の能力、人格を調査するためであり、会社の人事管理ないし企業秩序は、これを前提としてなり立つものであるから、控訴人がいつわりの履歴書を提出して採用されようとしたことは、被控訴会社の企業秩序を破壊するものというべきである。そうして、控訴人のした経歴の詐称は、被控訴会社に採用される直前の三年近くの長きに及ぶものであること、実際とは全く別の経歴を積極的に記載したこと及び控訴人のいうところによれば(後記三、3)あえてこれをしたことの諸点においてすこぶる重大であるというべきであるから、被控訴人は、控訴人の本採用を決定するに当つて、このような経歴詐称を到底不問に付することはできなか の企業秩序を破壊するものというべきである。そうして、控訴人のした経歴の詐称は、被控訴会社に採用される直前の三年近くの長きに及ぶものであること、実際とは全く別の経歴を積極的に記載したこと及び控訴人のいうところによれば(後記三、3)あえてこれをしたことの諸点においてすこぶる重大であるというべきであるから、被控訴人は、控訴人の本採用を決定するに当つて、このような経歴詐称を到底不問に付することはできなか ころによれば(後記三、3)あえてこれをしたことの諸点においてすこぶる重大であるというべきであるから、被控訴人は、控訴人の本採用を決定するに当つて、このような経歴詐称を到底不問に付することはできなかつた。しかも、被控訴会社は中小企業であつて従業員全員が相互に信頼し合うことが必要であるが、前記のような重大な経歴詐称を敢えてする控訴人の人格には疑問をいだかざるを得ないし、また、被控訴会社は中小企業の性格から、運転手でも将来管理職に登用して行く方針であるので運転手は単に運転技術が優れていればそれでよいというようには考えていないのである。(四) 日常の勤務状態及び生活態度の不良について。(1) 控訴人は乗車する車輌や仕事について選り好みが多く、係の指示に従わず、車輌の点検整備について他の運転手に比して熱意が欠け、かつ実際の点検整備が不備でもあつて、そのため得意先に迷惑をかけたことがあり、また勤務中の言動が横柄で顧客に対し不快感を与えることがある等、その勤務態度は良くなかつた。(2) また、被控訴会社の従業員が寮に宿泊等する場合には事前に会社の許可を得なければならないのに、控訴人は無許可でしばしば寮に宿泊したことがあり、その日常の生活態度にも問題があつた。(五) 以上のような諸々の事由を総合して、被控訴人は控訴人が被控訴会社の従業員としての適格性を欠くものと認めて、本採用を拒否したのであるが、これに先立ち、昭和四五年五月一二日頃控訴人に対し特に前記(一)及び(二)の事実を指摘して、本採用する意思のないことを告げ、任意に退職するよう勧告したが、控訴人は応じなかつた。そこで、本件本採用拒否の通告に及んだものである。なお、その際被控訴人は控訴人に解雇予告にかわる三〇日分の賃金を提供したが、控訴人が受領を拒んだのでこれを供託した。(六) 訴人は応じなかつた。そこで、本件本採用拒否の通告に及んだものである。 、昭和四五年五月一二日頃控訴人に対し特に前記(一)及び(二)の事実を指摘して、本採用する意思のないことを告げ、任意に退職するよう勧告したが、控訴人は応じなかつた。そこで、本件本採用拒否の通告に及んだものである。なお、その際被控訴人は控訴人に解雇予告にかわる三〇日分の賃金を提供したが、控訴人が受領を拒んだのでこれを供託した。(六) 訴人は応じなかつた。そこで、本件本採用拒否の通告に及んだものである。なお、その際被控訴人は控訴人に解雇予告にかわる三〇日分の賃金を提供したが、控訴人が受領を拒んだのでこれを供託した。(六) 叙上のとおりであるから被控訴人が控訴人の本採用を拒否したのは正当の事由に基づき、かつ正当な手続によるものであるから、到底権利の濫用とはいえない。なお、控訴人は、本採用を拒否されたのは控訴人だけであるとか、事故を起したり経歴を詐称したりしても本採用を拒否されなかつた者があるといつて、控訴人の本採用拒否が均衡を失すると主張する(後記三5)。しかし、試用期間中に事故を生した者(J、K、L)に対しては、任意退職を勧告したところ、これらの者はこれに応じて自発的に退職したので、特に本採用拒否にまで至らなかつたにすぎないから、控訴人の場合を異例というのは当らないし、また本採用になつた者の事故は、その者の一方的過失によるものではなく、また経歴詐称については、それが試用中に判明しなかつたため結果的に本採用になつた者があるだけで、いずれも控訴人の場合とは事案を異にするから、この主張は失当である。4 本件本採用拒否が不当労働行為であるとの主張はこれを争う。また、控訴人は右本採用の拒否は、控訴人の思想、信条を理由とするものであるから労基法第三条、憲法第一四条、第一九条に違反し無効であるとも主張するが、これは時機に遅れたものであるから、まず、その却下を求め、かつその主張を争う。(一) 被控訴人は控訴人が前記4・(一)で主張するように、全自運の活動を知り、これを嫌悪したようなことはない。すなわち、控訴人主張の県生コン協会労務委員会は、特に労働運動の情報収集や労務対策を目的とするものではないから、B取締役がそのメンバーであるからといつて、被控訴会社が全自運について知悉 なことはない。すなわち、控訴人主張の県生コン協会労務委員会は、特に労働運動の情報収集や労務対策を目的とするものではないから、B取締役がそのメンバーであるからといつて、被控訴会社が全自運について知悉していることにはならないし、被控訴会社の労働条件は同業他社に比して劣悪ではないから会社として従業員が全自運に加入することを恐れるわけはない。 そのメンバーであるからといつて、被控訴会社が全自運について知悉 なことはない。すなわち、控訴人主張の県生コン協会労務委員会は、特に労働運動の情報収集や労務対策を目的とするものではないから、B取締役がそのメンバーであるからといつて、被控訴会社が全自運について知悉していることにはならないし、被控訴会社の労働条件は同業他社に比して劣悪ではないから会社として従業員が全自運に加入することを恐れるわけはない。また昭和四六年三月一六日以降において会社が第二組合を作つたことも、控訴人主張のようなことをいつて従業員をおどしたことも、また全自運清水宇部分会に属する者に対していやがらせや差別をしたこともない。(二) (1) 控訴人主張の前記4(二)(1)の事実は知らない。すなわち、控訴人の主張するような集会があつたかどうか知らないし、まして、被控訴会社がその内容を知つているようなことはない。(2) 前記(2)のうち、五月四日夕方集会が開かれたことはある。ところで、被控訴会社においては、賃金のベースアツプについては職制(主任・班長)との話合でこれを決めるのが例であつたので、昭和四五年四月頃から会社は職制と何度か会合を開いたが、その完全な了解を得られず、職制から全従業員に会社の方針を話して欲しいという申出でがあつたので、説明のため、集会を開くことにしたものである。右集会において社長から会社の方針について説明をしたが、これに対し従業員から特に積極的な意見も出ず、控訴人が、席上その主張するように、特別際立つた発言をしたような事実はない。従つて、この集会の実情は決して控訴人のいうようなものではなかつた。(3) 翌五月五日B取締役及びD工場長が従業員を個々的に呼んだことはあるが、それは前夜の集会で会社の方針に対して積極的な意見が出なかつたのでこれに対してあらためて素直な意見を聞くためであつた。そうして、その際同人らは、控 役及びD工場長が従業員を個々的に呼んだことはあるが、それは前夜の集会で会社の方針に対して積極的な意見が出なかつたのでこれに対してあらためて素直な意見を聞くためであつた。そうして、その際同人らは、控訴人主張のような質問をしたことはない。(4) 被控訴会社のA社長とB取締役が五月五日過ぎの頃、静岡市の三共水産株式会社に赴き、Eに会つたことはある。ところで、被控訴会社が四月末頃、会社に出入りの資材商Mから控訴人がもと三共水産にいたことを聞知し、控訴人が提出した履歴書の記載に疑問を持つていたので、右両名は所用で静岡市に出たついでに三共水産株式会社に立ち寄つて、被控訴会社に入社する前の控訴人の経歴を確認調査したものである。 たことはない。(4) 被控訴会社のA社長とB取締役が五月五日過ぎの頃、静岡市の三共水産株式会社に赴き、Eに会つたことはある。ところで、被控訴会社が四月末頃、会社に出入りの資材商Mから控訴人がもと三共水産にいたことを聞知し、控訴人が提出した履歴書の記載に疑問を持つていたので、右両名は所用で静岡市に出たついでに三共水産株式会社に立ち寄つて、被控訴会社に入社する前の控訴人の経歴を確認調査したものである。当時被控訴会社は控訴人に組合活動の経験があるなどということを予想したこともなかつたから、控訴人のいうように、右両名が控訴人の三協運輸株式会社における組合活動等について調査するわけがない。また、被控訴会社の本社は清水市にあるから、たまたま静岡市で起つた、しかも小規模な三協運輸株式会社における争議等の状況を知るわけがない。(5) 前記(5)のうちのA社長の発言なるものは事実に反する。同社長は五月四日分本件生コンクリートを固めた事故を指摘して任意に退職することを勧告したところ、控訴人が「それだけですか」と質問したので「経歴詐称もある」といつたに止まる。(6) 前記(6)のうち、A社長、F課長及びG主任が、それぞれ控訴人主張のような発言をした事実はいずれも否認する。(7) 右(8)記載の事実は争う。被控訴人は控訴人主張の全自運清水宇部分会の非公然活動なるものがあつたことを全く知らない。(三) 以上のとおりであつて、被控訴人が控訴人が三協運輸株式会社在職当時どのような組合活動をしたのか知らないし、また、控訴人は被控訴 清水宇部分会の非公然活動なるものがあつたことを全く知らない。(三) 以上のとおりであつて、被控訴人が控訴人が三協運輸株式会社在職当時どのような組合活動をしたのか知らないし、また、控訴人は被控訴会社において、組合を結成しようとしたり、従業員を全自運に加盟させるべく勧める等の組合の活動をしてはいなかつたのであるから、会社として控訴人が近く組合の中心的人物になることを恐れるような理由は何もなかつたし、更に控訴人が果してどのような思想・信条の持主であるを知る由もなかつたのである。控訴人の不当労働行為及び労基法第三条等違反の主張は理由がない。5. 控訴人は、その主張するように被控訴会社から月額六万三、一二〇円の賃金を毎月二八日に支給されていた者ではない。控訴人は、前記1のとおり日給一、四七〇円で雇われたものであつて、これをいわゆる日給月給として毎日まとめて二八日に支給されていたにすぎない。 つたし、更に控訴人が果してどのような思想・信条の持主であるを知る由もなかつたのである。控訴人の不当労働行為及び労基法第三条等違反の主張は理由がない。5. 控訴人は、その主張するように被控訴会社から月額六万三、一二〇円の賃金を毎月二八日に支給されていた者ではない。控訴人は、前記1のとおり日給一、四七〇円で雇われたものであつて、これをいわゆる日給月給として毎日まとめて二八日に支給されていたにすぎない。また、現在は自動車運転手が不足しているから、控訴人も働こうとすればいつでも働くことができ、働きさえずれば生活に困ることはないから、本件仮処分申請は必要性を欠くものである。三、 本採用拒否の事由についての控訴人の反駁1、 五月四日の事故について。(一) 控訴人が本件車輌から下車する際、その不注意でドラム内の羽根の回転を止めたことはない。即ち、控訴人は当日午前一〇時半頃生コンクリートを積んで現場に赴いたところD工場長から不要になつたので会社に帰るよう指示され、午前一一時頃帰社し、N配車係にその旨を報告し、同人の指示により、車のエンジンとドラム内の羽根を回転させるミキサーのスイツチを入れたまま車を車庫に入れたが、間もなくNから車が邪魔になるので道路に出しておくようにとの指示があつたので、車を工場の外の道路上に止め、同様エンジンとミキサーのスイツチ 回転させるミキサーのスイツチを入れたまま車を車庫に入れたが、間もなくNから車が邪魔になるので道路に出しておくようにとの指示があつたので、車を工場の外の道路上に止め、同様エンジンとミキサーのスイツチは入れたままにしておいたものであつて、控訴人はわざと或いはうつかりしてミキサーのスイツチを切つたことはない。(二) その後、控訴人は食事をし賃上げ問題を討議する集会に参加していたところ、午后〇時半頃同僚から本件車輌のミキサーが回つていないようだといわれ、急いで車のところに行つてみると、エンジンはかかつたままであつたが、ミキサーの回転は止つていた。控訴人はそれまで、ドラムの中の生コンクリートが時間がたつにつれてどのような状態になるものか、ミキサーの羽根が止つたときは先づもつて何をすべきかについて予め指示や教育を受けていなかつたし、コンクリートミキサー車について十分な知識もなかつたので、突発した前記の状況に驚き、突嗟にミキサーのスイツチを操作してみたところ、少し回転しただけですぐチエーンが切れてしまつたが、このようなことは全く予期もしないことであつた。 れまで、ドラムの中の生コンクリートが時間がたつにつれてどのような状態になるものか、ミキサーの羽根が止つたときは先づもつて何をすべきかについて予め指示や教育を受けていなかつたし、コンクリートミキサー車について十分な知識もなかつたので、突発した前記の状況に驚き、突嗟にミキサーのスイツチを操作してみたところ、少し回転しただけですぐチエーンが切れてしまつたが、このようなことは全く予期もしないことであつた。(三) この事故の責任が専ら控訴人にあるという被控訴人の主張は当を得ないものである。まず第一に、前記(一)のとおり、ドラム内の羽根の回転が止つたのは、控訴人の責に帰すべき事由によるものではない。第二に、被控訴会社は控訴人をコンクリートミキサー車の運転手として採用して以来、整備係が同乗して車の操作を一回実地に教えただけで、ミキサー車の構造や生コンクリートの性質について何の教育もしていないのであるから、前記(二)のようにミキサーの回転が止つた際控訴人において、被控訴人が主張するような挙に出ることはたやすく期待し得るものではない。従つて、控訴人が前記のような状況の下でまずミキサーのスイツチを入れた 記(二)のようにミキサーの回転が止つた際控訴人において、被控訴人が主張するような挙に出ることはたやすく期待し得るものではない。従つて、控訴人が前記のような状況の下でまずミキサーのスイツチを入れたことを、あながちとがめることはできないものである。しかも、第三に、本件ハイロ型ミキサー車には、本来ミキサースイツチとチエーンとの伝導系統の中間にシヤーピンという特殊のボルトを取り付ける構造になつており、必要以上の力がドラム内の羽根にかかつた場合に、それが原因でチエーン等が破損するのを防止しているから、もし本件車輌に規格どおりシヤーピンが取り付けてあつたならば、控訴人がミキサーのスイツチを入れたことによつてドラムの羽根に過大な力がかかつたとしても、シヤーピンが折損することによつて、チエーンが切れるのは防げたはずであるのに、被控訴人がいうようにチエーンが切断したのは、本件車輌にはシヤーピンが取り付けてなかつたからである。従つて、本件におけるチエーンの切断という結果の発生は被控訴会社において本件車輌を整備していなかつたことによるのであつて、控訴人がスイツチを入れたことによるものではない。そうして、最後に、前記のとおり、日のあたる路上にコンクリートミキサー車を放置しておくときは、或いは本件のようにドラム内の生コンクリートが固まり羽根の回転が止るかも知れないことは、控訴人に当日業務上の指示を与えた上司等において十分予期し得たところであるから、その結果に対するそなえをしておくべきであるのに、それがなされていた形跡はない。 によるのであつて、控訴人がスイツチを入れたことによるものではない。そうして、最後に、前記のとおり、日のあたる路上にコンクリートミキサー車を放置しておくときは、或いは本件のようにドラム内の生コンクリートが固まり羽根の回転が止るかも知れないことは、控訴人に当日業務上の指示を与えた上司等において十分予期し得たところであるから、その結果に対するそなえをしておくべきであるのに、それがなされていた形跡はない。このように、本件事故の原因は、専ら、控訴人に対し予じめ十分な教育と指示をせず、本件車輌の整備を怠り、かつ、当日の業務に関し具体的な配慮を欠いた被控訴会社にあるのであつて、これをおいて、専ら控訴人の非をならすのは、誠に当を得ないものである。対し予じめ十分な教育と指示をせず、本件車輌の整備を怠り、かつ、当日の業務に関し具体的な配慮を欠いた被控訴会社にあるのであつて、これをおいて、専ら控訴人の非をならすのは、誠に当を得ないものである。(四) そうして、被控訴会社は本件事故後、特にその原因の調査もせず、控訴人にこれについて注意を与えて始末書を徴する等もせず、本件本採用拒否の通告をするまで一〇日余り控訴人をそのまま働らかせ、無事故手当までも払つているのであるが、これらは当時被控訴会社が本件事故を重視していなかつたことを示すものであり、本件において被控訴人がことさらに本件事故が重大であるかのように言うのは、その真の意図が奈辺にあるかを疑わせるものである。2、 会社に対する損害の惹起について。本件車輌の生コンクリートは廃棄されたが、前記のとおり本件生コンクリートは、一旦現場に出荷されたが注文者の要請により引き取られなかつたものであるから、被控訴会社はその代金の支払いを受け得るものであつて、会社はこれを廃棄したことによつて何の損失も被つていないはずである。しかも、本件生コンクリートは製造後かなり時間がたつており、規格にあわなくなつている可能性が多いから、むしろ会社としては自らこれを廃棄すべきであつたともいえるのである。また、前記1・(三)のように本件車輌の整備が不十分であつたとすると、本件においてチエーンが切断した結果、その修理に要した費用及び本件車輌の休業による損失のすべてを控訴人の責任に帰することはできない。なお、被控訴会社の車輌は常に故障等が多く、常時一〇台前後が遊休していた。このように考えると、本件事故により生じた損害は、仮りにあつたとしてもごく軽微なものであり、しかもそのすべてを控訴人の責に帰することはできないのである。 のように本件車輌の整備が不十分であつたとすると、本件においてチエーンが切断した結果、その修理に要した費用及び本件車輌の休業による損失のすべてを控訴人の責任に帰することはできない。なお、被控訴会社の車輌は常に故障等が多く、常時一〇台前後が遊休していた。このように考えると、本件事故により生じた損害は、仮りにあつたとしてもごく軽微なものであり、しかもそのすべてを控訴人の責に帰することはできないのである。3、 経歴詐称について控訴人が被 。このように考えると、本件事故により生じた損害は、仮りにあつたとしてもごく軽微なものであり、しかもそのすべてを控訴人の責に帰することはできないのである。3、 経歴詐称について控訴人が被控訴人主張のとおり三協運輸株式会社に雇われていたこと、被控訴会社に採用される際提出した履歴書にこの事実を記載せず、そのかわりに被控訴人主張のように記載したことは認めるが、それは、控訴人が三協運輸株式会社に在職していたことを記載すると、当時全自運に加盟していたことが知られ、それだけで警戒されて採用を拒まれるおそれがあると考えたからである。しかし、控訴人はコンクリートミキサー車の運転手として雇われたものであるから、たとえ控訴人が前記のように経歴を詐称したとしても、それによつて被控訴会社が控訴人の労働能力を評価するについて支障を与えたことにはならないのであつて、控訴人がその経歴をいつわつたことは、被控訴会社の能率や採算に影響を及ぼさず、また企業秩序を紊すものでもない。従つて、本件における経歴詐称は、控訴人を企業から排除すべき根拠となる程、重大なものではない。然るに、被控訴人において控訴人の人格まで云為して、この経歴詐称を強調することは、前記二4(二)に述べたところとあいまつて考えれば、本件本採用拒否が不当労働行為であることをおおいかくそうという、被控訴人の意図の現れにほかならない。4. 勤務態度及び生活態度の不良について。被控訴人主張の事実はすべて否認する。控訴人の勤務態度が不良であるとして主張するところは、すべていわれのない中傷である。また、控訴人は会社の寮に二度にわたつて宿泊したことがあるが一度は会社の指示によるものであり、他についてはB取締役の許可を得ている。5. 以上のとおり、被控訴人の主張するところは、そのどれを取つても、また は会社の寮に二度にわたつて宿泊したことがあるが一度は会社の指示によるものであり、他についてはB取締役の許可を得ている。 人の勤務態度が不良であるとして主張するところは、すべていわれのない中傷である。また、控訴人は会社の寮に二度にわたつて宿泊したことがあるが一度は会社の指示によるものであり、他についてはB取締役の許可を得ている。5. 以上のとおり、被控訴人の主張するところは、そのどれを取つても、また は会社の寮に二度にわたつて宿泊したことがあるが一度は会社の指示によるものであり、他についてはB取締役の許可を得ている。5. 以上のとおり、被控訴人の主張するところは、そのどれを取つても、また全部を総合しても本採用拒否の理由とはならないものである。しかも、これまで被控訴会社の従業員で試用期間を終えて本採用にならなかつた者はなく、また試用期間中に事故を起した者や経歴を詐称していた者でも本採用されている例があるのであるから、被控訴人の主張するような理由で控訴人の本採用を拒否することは著しく均衡を失するものであつて不当である。四、 疏明(省略) 理由 一、 控訴人が、昭和四五年二月一六日生コンクリートの製造販売を業とする被控訴会社にコンクリートミキサー車運転手として雇傭されたことは当事者間に争いがない。ところで、控訴人がその際三か月の試用期間をおいて採用されたかどうかについて争いがあるので、まず、この点を判断する(なお、被控訴人は、控訴人は当初試用期間がおかれていた事実を認めていたのに、その後これを争うに至つたもので、この自白の撤回に異議がある旨主張するが、本件記録を調べてみても、控訴人が右のような自白をしたことは認められないから、被控訴人のこの主張は理由がない。)。成立に争いのない疏乙第五号証、原審証人Bの証言により真正に成立したと認める乙第七号証に、原審証人O、原審及び当審証人P、同Bの各証言、原審及び当審における被控訴人代表者本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すると、被控訴会社の就業規則第一一条には「従業員は原則として採用の日から三か月以内を試用期間とする。試用期間満了の際会社が適当と認めた者は本採用とする。試採用期間は勤続年数に算入する。」という規定があり、かつ、この就業規則は被控訴会社の 従業員は原則として採用の日から三か月以内を試用期間とする。試用期間満了の際会社が適当と認めた者は本採用とする。試採用期間は勤続年数に算入する。」という規定があり、かつ、この就業規則は被控訴会社の全従業員に周知されていたこと、被控訴会社において従業員、特に運転手を新しく雇い入れるに際しては、三か月の試用期間をおくことを常としていること、控訴人は被控訴会社のした新聞広告に応募した者であるが、採用についての面接の際、被控訴会社代表者は控訴人に対し、給与その他の労働条件を告げたうえ、三か月の試用期間をおくこと、その間の勤務成績によつて従業員としての適格性があると認めれば本採用することを説明したこと及び控訴人は採用後直ちに掛川工場に配属されたのであるが、数日後同工場に送付されそこで控訴人に交付された辞令(疏乙第五号証)には「試用トシテ採用ス」との記載があることが認められ、原審及び当審(第一回)における控訴人本人尋問の結果及び成立に争いのない疏乙第二〇号証の記載中右認定に反する部分は措信せず、他にこれに反する的確な疏明はない。 つて従業員としての適格性があると認めれば本採用することを説明したこと及び控訴人は採用後直ちに掛川工場に配属されたのであるが、数日後同工場に送付されそこで控訴人に交付された辞令(疏乙第五号証)には「試用トシテ採用ス」との記載があることが認められ、原審及び当審(第一回)における控訴人本人尋問の結果及び成立に争いのない疏乙第二〇号証の記載中右認定に反する部分は措信せず、他にこれに反する的確な疏明はない。右認定の事実によれば、控訴人は前記昭和四五年二月一六日、三か月間の試用期間をおいて、被控訴会社に雇傭されたことが明らかである。<要旨第一>二、 そこで、このような試用期間の定めのある労働契約の性質について考えてみるのに、一般に使用者が労働</要旨第一>者を雇傭するに際して、一定期間(二・三か月ないし六か月を通例とする。)の試用期間を置く趣旨は、その間に被用者を実際に働かせてみて、その業務適性、労働能力等をいつそう正確に判断して被用者を引き続き雇傭するかどうかを決定することとする反面において、適格性を欠くと認める者をできる限り容易にかつ速やかに企業から排除することができるようにすることにあるものと認められる。従つて、試用期 用者を引き続き雇傭するかどうかを決定することとする反面において、適格性を欠くと認める者をできる限り容易にかつ速やかに企業から排除することができるようにすることにあるものと認められる。従つて、試用期間の定めのある労働契約は、特段の事情のない限り、その締結の日に期限の定めのない労働契約として成立するが、ただ試用期間中は前記のようなこれを置く趣旨に鑑み、右適格性等の判定に当たつて使用者に就業規則等に定められた解雇事由や解雇手続等に必ずしも拘束されない、いつそう広い裁量・判断権(かような広い裁量・判断権を含む解雇権)が留保されているものと解するのが相当である。そうして、本件において、控訴人は前記のとおりコンクリートミキサー車の運転手として試用期間の存在を承知の上で雇われたものであり、また、本件に現われた全疏明によるも、控訴人との労働契約が右に判断したところと趣旨を異にするものであるとする特段の事情はこれを認めるに足りないから、控訴人と被控訴会社との間の本件試用期間つき労働契約は、前記の趣旨のものというべきである。被控訴会社の就業規則第一一条第二項に前記認定のとおり、会社が適当と認めた者を本採用とする旨の定めがあること及び成立に争いのない疏乙第一一号証及び弁論の全趣旨によると、被控訴会社においては、試用期間満了の後本採用になつた者に対して、あらためてその旨の辞令を与える取扱いであることが認められることは、未だ前記の判断を左右するものとは認め難い。 本件試用期間つき労働契約は、前記の趣旨のものというべきである。被控訴会社の就業規則第一一条第二項に前記認定のとおり、会社が適当と認めた者を本採用とする旨の定めがあること及び成立に争いのない疏乙第一一号証及び弁論の全趣旨によると、被控訴会社においては、試用期間満了の後本採用になつた者に対して、あらためてその旨の辞令を与える取扱いであることが認められることは、未だ前記の判断を左右するものとは認め難い。従つて、被控訴人の主張のうち、試用期間中の労働契約と、その後の労働契約とが別個のものであることを前提とする部分は理由がない。そうして、被控訴会社が昭和四五年五月一四日控訴人に対し、控訴人の主張1. 記載のような本採用を拒否する旨の通告をしたことは当事者間に争いがなく、前記判断に照らして考えれば、これは 分は理由がない。そうして、被控訴会社が昭和四五年五月一四日控訴人に対し、控訴人の主張1. 記載のような本採用を拒否する旨の通告をしたことは当事者間に争いがなく、前記判断に照らして考えれば、これは控訴人との間の労働契約関係を終了させる旨の解雇の意思表示にほかならないと認めるのが相当である。<要旨第二>三、 控訴人は、本件本採用の拒否(すなわち試用期間中にある控訴人に対する解雇)は権利の濫用である、と</要旨第二>主張するので、本採用拒否の理由の有無について判断をする。1.被控訴人は五月四日の事故が最も重要であると主張しているが、まず、その事実関係について調べてみる。(一) 原審証人Dと前示証人Bの各証言、前記控訴人本人(当審第二回を含む。但し、後記措信しない部分を除く。)と被控訴人代表者の各尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。(1) 控訴人は、初めの勤務場所である掛川工場から清水工場に配転された後、昭和四五年五月四日早朝から清水市内の「日本水産」の現場へ、乗務車輌(ハイロ型コンクリートミキサー車、一三号車。)を運転して生コンクリートを運んでいたが、午前一〇時過ぎ頃、右現場で、被控訴会社の清水工場Dから、控訴人の乗務する車の生コンクリートは不用となつたので工場に帰るよう指示され、生コンクリートを積んだまま午前一一時頃工場に戻り(生コンクリートを積載したまま工場に帰つたことは当事者間に争いがない。)、車庫に車を入れ下車したところ、ほどなくしてN配車係から、じやまになるので道路に出すよう命ぜられたので、車を工場の外の道路上に止め下車した。 いたが、午前一〇時過ぎ頃、右現場で、被控訴会社の清水工場Dから、控訴人の乗務する車の生コンクリートは不用となつたので工場に帰るよう指示され、生コンクリートを積んだまま午前一一時頃工場に戻り(生コンクリートを積載したまま工場に帰つたことは当事者間に争いがない。)、車庫に車を入れ下車したところ、ほどなくしてN配車係から、じやまになるので道路に出すよう命ぜられたので、車を工場の外の道路上に止め下車した。(2) 控訴人は下車後昼食をし、工場の食堂で開かれた賃上げに関する従業員の集会に出席していたところ、午后〇時半頃、控訴人と同様路上に生コンクリートを積んだまま駐車して 外の道路上に止め下車した。(2) 控訴人は下車後昼食をし、工場の食堂で開かれた賃上げに関する従業員の集会に出席していたところ、午后〇時半頃、控訴人と同様路上に生コンクリートを積んだまま駐車しておいた自車の様子を点検に行つた同僚のQから、本件車輌のドラム(生コンクリートの容器)内の羽根が止まつていると注意された(同僚から注意された事実は当事者間に争いがない。)。(3) そこで、控訴人が本件車輌にかけつけてみると、エンジンは回転していたが、羽根の回転が止まつていたので(羽根の回転が止つていたことは当事者間に争いがない。)、そのままではドラム内の生コンクリートが固まることをおそれ、直ちに運転席に上がり、羽根を回転させるスイツチを入れたところ、うなる音がしてまもなく羽根を回転させるためのローラーチエーンが切れた(チエーンが切れた事実は当事者間に争いがない。)。(4) 控訴人は、前記Qらと共にドラム内に水を入れて生コンクリートを洗い消す等の応急措置をし、事故を聞いて来合わせたD工場長に対し謝罪した。かように認められ、前記控訴人本人尋問の結果及び疏甲第二号証の記載のうち、右認定に反する部分は措信せず、他にこれに反する証拠はない。(二) つぎに、前記のようにドラム内の羽根の回転が止つた原因について考察する。成立に争いのない疏甲第二六号証の一ないし三、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める乙第一六号証、前示証人Dの証言、控訴人本人尋問の結果(但し、当審は第一、二回)に弁論の全趣旨を総合すると、本件ハイロ型コンクリートミキサー車においては、エンジンの動力が、電磁クラツチ(これがミキサーのスイツチで運転席のハンドルの左側にある。 二) つぎに、前記のようにドラム内の羽根の回転が止つた原因について考察する。成立に争いのない疏甲第二六号証の一ないし三、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める乙第一六号証、前示証人Dの証言、控訴人本人尋問の結果(但し、当審は第一、二回)に弁論の全趣旨を総合すると、本件ハイロ型コンクリートミキサー車においては、エンジンの動力が、電磁クラツチ(これがミキサーのスイツチで運転席のハンドルの左側にある。)を入れる(具体的には、上記スイツチを手前に引く。)と、第一プロペラシヤフト、第二プロペラシヤフト、センター エンジンの動力が、電磁クラツチ(これがミキサーのスイツチで運転席のハンドルの左側にある。)を入れる(具体的には、上記スイツチを手前に引く。)と、第一プロペラシヤフト、第二プロペラシヤフト、センターベアリング、第三プロペラシヤフト、ミツシヨン、デフアレンシアル、ダブルローラーチエーン、ローラーチエーンの順序で伝導され、ローラーチエーンが回転して羽根が回転するが、前記ミツシヨンの部分には棒状のクラツチがあり、車外から動力の伝導を操作できること、従つて、羽根を回転させるには、エンジンを動かし、ミキサースイツチを入れ、前記ミツシヨン部分のクラツチを操作することが必要であり、逆に羽根の回転は上記の三つのうちのいずれか一つの操作(例えばミキサースイツチを向うに押して切る等。)によつて止まること、一旦羽根を回転させれば、停車中でもエンジンを切らず、スイツチを入れたままにし、ミツシヨンを作動させておけば、特に上記の伝導装置に故障がない限り、羽根はそのまま回転を続けること、生コンクリートは時間がたつにつれて水分が失なわれ固くなるため、羽根が廻りにくくなることはあるが、その結果前記スイツチが切れることはないこと及び本件事故当時本件車輌のエンジンから羽根までの前記伝導系統及びスイツチ等の電気系統には何も異状ないし故障はなかつたことが認められ、これに反する証拠はない。そうして、本件事故当時エンジンが動いていたことは前記(一)、(3)認定のとおりであり、また前記のとおり伝導系統特に、ミツヨンその他に異常ないし故障がなかつたことからすると、羽根の回転が止まつたのはミキサースイツチが切れたことによるものと一応推認されるところ、前記(一)認定の(3)の事実、即ち控訴人がミキサースイツチを入れたところ、うなる音がして間もなくチエーンが切れたことは、当時スイツチが切 い。そうして、本件事故当時エンジンが動いていたことは前記(一)、(3)認定のとおりであり、また前記のとおり伝導系統特に、ミツヨンその他に異常ないし故障がなかつたことからすると、羽根の回転が止まつたのはミキサースイツチが切れたことによるものと一応推認されるところ、前記(一)認定の(3)の事実、即ち控訴人がミキサースイツチを入れたところ、うなる音がして間もなくチエーンが切れたことは、当時スイツチが切 サースイツチが切れたことによるものと一応推認されるところ、前記(一)認定の(3)の事実、即ち控訴人がミキサースイツチを入れたところ、うなる音がして間もなくチエーンが切れたことは、当時スイツチが切れていたことを示すもので、右推認を裏書するものといえる。従つて、羽根の回転が止まつたのは、ミキサースイツチが切れたことによるものというべきである。なお、当審証人Rの証言及び前記控訴人本人尋問の結果中には、羽根の回転が止まつた原因は他にあるかのようにいう部分もあるが、いずれも根拠のない推論の域を出ないから、採用しない。(三) それでは、どうしてミキサースイツチが切れたのであろうか。前記(一)、(2)、(3)認定のように、控訴人が、同僚のQから羽根の回転が止まつていることを告げられ、本件車輌のもとにかけつけ、羽根の回転が止まつていることを認めるや直ちに運転席の前記ミキサースイツチを入れるという行動に出た事実は、控訴人にとつて羽根の回転が止まつた原因について思い当たるふしが、まずもつて上記スイツチであつたことを示すものであるが(因みに、前記控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は相当期間本件車輌に乗務していたことが明らかであるから、本件車輌の運転その他の操作に十分習熟していたものと認められる。)、この事実に、前記証人D、同Bの各証言及び被控訴会社代表者尋問の結果によつて明らかな、本件事故直後控訴人はD工場長に対し「うつかりしてスイツチを切つて生コンを固めてしまつた。そしてスイツチを入れたらチエーンが切れた。済みません。」と述べて謝罪したこと及び成立に争いのない乙第二〇号証によつて明らかな、控訴人は本件において原審で審尋された際、スイツチを切つた旨述べている事実(なお、控訴人は、前記乙第二〇号証の審尋調書の記載は事実に反する旨主張するが、叙上の 争いのない乙第二〇号証によつて明らかな、控訴人は本件において原審で審尋された際、スイツチを切つた旨述べている事実(なお、控訴人は、前記乙第二〇号証の審尋調書の記載は事実に反する旨主張するが、叙上の経緯に照らすと、この調書の記載が事実に反するとは認められないうえに、本件記録によると控訴人においてはこの調書の記載の正確性に異議があると主張してはいるものの、右調書に対し民訴法の規定により異議を述べ或いは更正を申し立てた形跡は認められないから、前記控訴人の本人尋問の結果のうち上記の記載が趣旨を異にするものであるとする部分は措信できない。 乙第二〇号証の審尋調書の記載は事実に反する旨主張するが、叙上の経緯に照らすと、この調書の記載が事実に反するとは認められないうえに、本件記録によると控訴人においてはこの調書の記載の正確性に異議があると主張してはいるものの、右調書に対し民訴法の規定により異議を述べ或いは更正を申し立てた形跡は認められないから、前記控訴人の本人尋問の結果のうち上記の記載が趣旨を異にするものであるとする部分は措信できない。)、を合せ考えると、前記スイツチが切れたのは、控訴人が前記(一)、(1)のとおりに下車する際、あやまつてこれを切つたためであると認めるべきである。(四) なお控訴人は、ローラーチエーンが切れた原因について、被控訴会社において本来本件車輌に付けておくべきシヤーピンを装置しなかつたことによるものである旨主張するが、後に述べるとおり、当裁判所はチエーンの切断という結果の責任を控訴人が負うべきかどうかということは、本件事故を本採用拒否の事由とすることが相当かどうかということを判断する上で、そこまでは判断する必要のないことがらであると考える。従つて、控訴人の前記主張が時機に遅れた攻撃防禦方法と認められるべきかどうかにかかわらず、この点に関する被控訴人の主張はどのみち採用することのできないものである。(五) 以上のとおりであるから、、控訴人は前記のとおり本件車輌から下車する際あやまつてミキサースイツチを切り、ドラム内の羽根の回転を止め、一時間余も放置したため生コンクリートを固めてしまつたうえに、同僚の注意でこの事実を知つた後においても、適切な処置に出ることなく、いきなりミキサーのスイツチを入れるという挙に出たものと 回転を止め、一時間余も放置したため生コンクリートを固めてしまつたうえに、同僚の注意でこの事実を知つた後においても、適切な処置に出ることなく、いきなりミキサーのスイツチを入れるという挙に出たものと認めることができる(被控訴人は、控訴人は当初、下車に際しミキサースイツチを切つたこと及び、その後これを入れたことがその落度に当たることを認めていたのに、後にこれらの事実を争うに至つたもので、これらの自白の撤回には異議があると主張しているが、本件記録を精査しても、 控訴人において上記各事実を自白したものとは認められないから、この主張は採用しない。)。2. そこで上記認定の事実(以下この事実を簡単に本件事故ということがある。 訴人は、控訴人は当初、下車に際しミキサースイツチを切つたこと及び、その後これを入れたことがその落度に当たることを認めていたのに、後にこれらの事実を争うに至つたもので、これらの自白の撤回には異議があると主張しているが、本件記録を精査しても、 控訴人において上記各事実を自白したものとは認められないから、この主張は採用しない。)。2. そこで上記認定の事実(以下この事実を簡単に本件事故ということがある。)をどう評価すべきかについて判断する。(一) 生コンクリートは放置しておくと固まることは公知のところてあつて、生コンクリートを積載している限りコンクリートミキサー車のドラム内の羽根を常時回転させておくべきことは、いわば職業上の常識であつて、ミキサー車の運転手としては、走行中も、停車して一時車からはなれる場合にも、羽根の回転を止めないように常に注意を払うべきものであるから、控訴人が本件車輌から下車するに際して、ミキサースイツチを切つたことは、運転手として基本的な注意を欠いたものというほかない。控訴人は被控訴会社の運転手に対する教育訓練が足りなかつた旨主張するが、およそ生コンクリートを積載中にミキサースイツチを切つてドラム内の羽根の回転を止めてはならないことは、特段の教育訓練をしなければならないようなことがらには属しないうえに、前記認定の事実によれば、控訴人は当時被控訴会社においてコンクリートミキサー車の運転を始めて既に三か月近くもたつているのであるから、今更教育訓練を云為してミキサースイツチを切つたことの責任を免れうるも 認定の事実によれば、控訴人は当時被控訴会社においてコンクリートミキサー車の運転を始めて既に三か月近くもたつているのであるから、今更教育訓練を云為してミキサースイツチを切つたことの責任を免れうるものでないことは、いうまでもない。(二) 次に羽根の回転が止まつているのを発見した場合の措置であるが、前記のように羽根の停止は生コンクリートの凝固に連らなることを考えると、ドラム内の生コンクリートの状態がどうであるか、羽根の回転停止の原因がどこにあるかを確かめず、また上司や同僚に指示等をもとめることもせず、いきなり控訴人のしたようにミキサースイツチを入れることは、これまた不注意のそしりを免れない。控訴人は、ここでも、このような場合どのように処置すべきかについて、被控訴会社から予じめ教育等を受けていなかつた旨主張し、前示控訴人本人尋問の結果中にはこれにそう部分があるが、運転手としては、まず、前記のような行動に出ることが職業上の常識であることは、原審証人P、同Hの各証言中に、それぞれこのような場合にはまず前記のような行動に出るであろうする部分があることによつても明らかであるから、右本人尋問の結果は、上記の判断を左右しない。 場合どのように処置すべきかについて、被控訴会社から予じめ教育等を受けていなかつた旨主張し、前示控訴人本人尋問の結果中にはこれにそう部分があるが、運転手としては、まず、前記のような行動に出ることが職業上の常識であることは、原審証人P、同Hの各証言中に、それぞれこのような場合にはまず前記のような行動に出るであろうする部分があることによつても明らかであるから、右本人尋問の結果は、上記の判断を左右しない。その上に、前段でも述べたとおり、当時控訴人はコンクリートミキサー車の運転手として既に三か月近い経験があり、しかも成立に争いのない甲第一三、第一四号証によれば、控訴人は昭和四二年八月三級自動車ジーゼルニンジン整備士及び三級自動車シヤシ整備士の資格を取得しているのであるから、まず前記のような行動に出るべきことについては、いまさら被控訴会社の教育訓練をまつまでもないというべきである。してみると、控訴人が羽根の回転が止まつていることを認めてからとつた行動も、また、コンクリートミキサー車の運転手としての基本的な注意を欠いたものというべきで 教育訓練をまつまでもないというべきである。してみると、控訴人が羽根の回転が止まつていることを認めてからとつた行動も、また、コンクリートミキサー車の運転手としての基本的な注意を欠いたものというべきである。(三) このように、控訴人が下車に際してスイツチを切つたことも、また羽根の回転が停止しているのを認めてからの処置を誤つたことも、ともにその甚しい不注意であると認められる以上、控訴人はこの点においてすでにコンクリートミキサー車の運転手としての能力及び適格性に欠けるところがあると一応いわざるを得ず、前述のように試用期間中にある被用者の業務適格性の判定について使用者に広い裁量・判断権が留保されていることに鑑みれば、なおさら、被控訴会社が右二つの点で控訴人に業務適格性がないと判断したことが不相当であるとは到底いいえないもの認めざるをえない。そうだとすると、上記の不注意のため更にどのような結果が生じたのか、或いは被控訴会社に対してどのような実害が生じたのかは、本件においてはもはやせんさくする必要がないことになるから、ローラーチエーンの切断が、スイツチを入れた直接の結果であるか及び本件事故による会社の被害がいくばくであるかについては、特に立ち入つて判断をしない。 性がないと判断したことが不相当であるとは到底いいえないもの認めざるをえない。そうだとすると、上記の不注意のため更にどのような結果が生じたのか、或いは被控訴会社に対してどのような実害が生じたのかは、本件においてはもはやせんさくする必要がないことになるから、ローラーチエーンの切断が、スイツチを入れた直接の結果であるか及び本件事故による会社の被害がいくばくであるかについては、特に立ち入つて判断をしない。(四) 控訴人は、被控訴人も当初は上記の事故を重大視していなかつたとして種々主張する。まず、被控訴会社が、本件事故後その原因等について特段の調査をしていない点であるが、この事実は当事者間に争いがないけれども、前記認定のとおり、事故直後控訴人が、その原因をも含めて自己の責任を認めていたことからすると、特に調査を必要とする場合であるとも認められないのである。つぎに、始末書を徴しなかつた点についてであるが、この事実も当事者間に争いがないところ、前顕疎乙第七号証(就業規則)によると、始末書は ると、特に調査を必要とする場合であるとも認められないのである。つぎに、始末書を徴しなかつた点についてであるが、この事実も当事者間に争いがないところ、前顕疎乙第七号証(就業規則)によると、始末書は、解雇に至らない懲戒の場合に、その方法として徴されるものであることが明らかであるのに、本件においてかような懲戒がなされたことを認めるに足る証拠はないから、この事実を以て、被控訴会社が本件事故を重視していなかつたことの現われとみることができないことはいうまでもないところである。最後に、被控訴会社は本件事故後も一〇日余り控訴人をそのまま働かせたとの点であるが、この事実も当事者間に争いがないところ、前記証人Bの証言及び被控訴会社代表者尋問の結果によると、これは当時被控訴会社としては、すでに控訴人の試用期間の終了もせまつていたので、控訴人の進退はその際決定すれば足りると考えていたことによるものと認められるので、これまた被控訴会社が本件事故を重視していなかつたことの証左とみることのできないものである。控訴人は、また被控訴会社は五月分の無事故手当を支払つたと主張し、成立に争いのない疎甲第五号証の三にはこれにそうかのような記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める疎乙第二一号証によると、右は五月分の無事故手当ではないことが明らかであり、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。 るものと認められるので、これまた被控訴会社が本件事故を重視していなかつたことの証左とみることのできないものである。控訴人は、また被控訴会社は五月分の無事故手当を支払つたと主張し、成立に争いのない疎甲第五号証の三にはこれにそうかのような記載があるが、弁論の全趣旨により真正に成立したと認める疎乙第二一号証によると、右は五月分の無事故手当ではないことが明らかであり、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。してみると、控訴人主張の各事実を以て被控訴会社が控訴人の本件事故を重大視していなかつたものとはいえないし、他に控訴人のこの主張を肯認できるような的確な疎明はない。(五) 控訴人は、更に、本件本採用の拒否は従前の被控訴会社の従業員に対する処置に比して均衡を失すると主張する。なるほど前記証人Oの証言によると試用期間中に脇見運転をして追突事故を起した運転手が本採用を拒まれなかつ 、更に、本件本採用の拒否は従前の被控訴会社の従業員に対する処置に比して均衡を失すると主張する。なるほど前記証人Oの証言によると試用期間中に脇見運転をして追突事故を起した運転手が本採用を拒まれなかつたことが認められるけれども、この事実と控訴人の本件事故とは事案の性格を異にするから、この例を以て本件本採用拒否が不当であるということにはならない。しかも、前記証人O、同Bの各証言及び対控訴人代表者尋問の結果によれば、被控訴会社においては試用期間中はもとより本採用になつてからでも事故(主として交通事故)を起した運転手に対しては、事案が重大であるときは勧告のうえ任意退職させるのを常としていることが認められるから、既に認定したような本件事故の性質に、被控訴人が控訴人に対し本採用を拒否したのは、後述のように、控訴人が任意退職の勧告を拒否したことによるものであることを合せ考えると、本件本採用の拒否が均衡を失しているという主張はあたらない。3. 更にその後の経緯について判断する。いずれも成立に争いのない疎乙第一号証(疎甲第一号証も同じ)、同第二、同第三号証の一ないし三、同第四号証に、前記証人B、同Dの各証言、控訴人及び被控訴会社代表者の尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すると、被控訴会社は昭和四五年四月末から五月初めの頃、資材商として出入りしているMから、控訴人が前に静岡市内の三協運輸株式会社に勤めていた者であると知らされ、そのことが採用にあたり控訴人の提出した履歴書に記載されていないところから、控訴人の経歴について疑いを持つに至つていたところ、同月五日過ぎ頃被控訴会社代表者とB取締役は静岡市に赴き、前記三協運輸株式会社と資本系列を同じくする三共水産株式会社を訪れ、同社の役員から三協運輸株式会社の従業員であつたEを紹介され、同人について控訴人の 、控訴人が前に静岡市内の三協運輸株式会社に勤めていた者であると知らされ、そのことが採用にあたり控訴人の提出した履歴書に記載されていないところから、控訴人の経歴について疑いを持つに至つていたところ、同月五日過ぎ頃被控訴会社代表者とB取締役は静岡市に赴き、前記三協運輸株式会社と資本系列を同じくする三共水産株式会社を訪れ、同社の役員から三協運輸株式会社の従業員であつたEを紹介され、同人について控訴人の 過ぎ頃被控訴会社代表者とB取締役は静岡市に赴き、前記三協運輸株式会社と資本系列を同じくする三共水産株式会社を訪れ、同社の役員から三協運輸株式会社の従業員であつたEを紹介され、同人について控訴人の経歴を調査した結果、前記履歴書に昭和四二年八月から昭和四四年一二月までは自家用トラツクの運転手であると記載しているのはいつわりで、実は昭和四一年八月から昭和四四年一一月頃まで前記三協運輸株式会社及びその後身である豊永興業株式会社に雇傭されていたこと(なお上記経歴詐称の事実は当事者間に争いがない。)が判明したこと、前記認定のように被控訴会社は控訴人の前記事故による進退の決定を三か月の試用期間が満了する際決定する心算であつたところ、右のような経歴詐称も判明したことから、控訴人を本採用とすることをせず試用期間の満了する日に解雇することとしたこと、そこで従前の慣例に従い、まず控訴人に対し任意退職を勧告することとし、同月一二日頃控訴人を呼び寄せ、被控訴会社代表者において本件事故の事実を挙げて、このような事情がある以上採用にはできないので退職してはどうかと勧めたところ、控訴人はかえつて退職を勧める理由はそれだけかと反問し、前記代表者において経歴詐称の事実もあると告げたが、結局控訴人は上記勧告に応じなかつたこと、そこで被控訴会社は控訴人に対し、同月一四日前記二認定のような本採用拒否の通告をし、その際あわせて三〇日分の賃金を解雇予告手当として支払うので取りに来るよう通知したが、控訴人が取りに来なかつたので後にこれを供託したことが認められ、これに反する疎明はない。4. 以上を総合して考えてみるのに、被控訴人は昭和四五年五月一四日、当時試用期間中にあつた控訴人に対し本件事故及び経歴詐称を理由として、本採用拒否すなわち解雇の意思表示をしたものであるが、前記2.に . 以上を総合して考えてみるのに、被控訴人は昭和四五年五月一四日、当時試用期間中にあつた控訴人に対し本件事故及び経歴詐称を理由として、本採用拒否すなわち解雇の意思表示をしたものであるが、前記2.において判断したとおり、控訴人は、試用期間中にある者として、本件事故を惹起したことだけで、すでに、コンクリートミキサー車の運転手として能力及び適格性を欠くとの評価を受けることはやむをえないところであり、控訴人に対する本採用の拒否すなわち解雇の意思表示は、正当の事由に基づくものといわざるをえず、また、解雇の手続の上でも、不当の点はないものというべきである。 ち解雇の意思表示をしたものであるが、前記2.において判断したとおり、控訴人は、試用期間中にある者として、本件事故を惹起したことだけで、すでに、コンクリートミキサー車の運転手として能力及び適格性を欠くとの評価を受けることはやむをえないところであり、控訴人に対する本採用の拒否すなわち解雇の意思表示は、正当の事由に基づくものといわざるをえず、また、解雇の手続の上でも、不当の点はないものというべきである。従つて、控訴人に対する本採用の拒否、すなわち解雇の意思表示が権利の濫用であるとの控訴人の主張は、採用できない。四、 控訴人は、更に、控訴人に対する本採用拒否は、労組法第七条第一号の不当労働行為に当たるから無効であり、また、控訴人の思想・信条を理由とするものであるから憲法第一四条、第一九条、労働基準法第三条に違反すると主張する(被控訴人は、控訴人の右主張のうち後段は、時機に遅れたものであるから却下を求めると主張するが、本訴の審理の経緯に鑑みると、未だ時機に遅れたものとは認められないから、右の主張は採用しない。)。1、 弁論の全趣旨により真正に成立したと認める疎甲第二、第三号証に、前示証人O、同H、同R、同Bの各証言、控訴人本人及び被控訴会社代表者尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の各事実が認められ、右各証言及び本人尋問の結果のうちこの認定に反する部分はいずれも措信せず、他にこれに反する疎明はない。(一) 控訴人は、従前から全自運に加盟し(因みに全自運は個人加盟を原則とする。)、前記のとおり静岡市の三協運輸株式会社に勤務していたが、昭和四四年八月頃、右会社が企業を閉鎖し全従業員 はない。(一) 控訴人は、従前から全自運に加盟し(因みに全自運は個人加盟を原則とする。)、前記のとおり静岡市の三協運輸株式会社に勤務していたが、昭和四四年八月頃、右会社が企業を閉鎖し全従業員を解雇しようとしたことから争議が起こり、控訴人は全自運静岡地方本部三協運輸分会の執行委員長としてこれにあたつた。右争議は相当長期に及ぶものであつたが、静岡市内のことであり、また同会社が小企業であつたこともあつて、清水市に本社をおく被控訴会社の役員等の関心をひくものではなかつた。(二) 昭和四五年五月四日タ刻、同日昼休みの集会に続いて従業員の集会が開かれ、社長をはじめ使用者側関係者が出席して、同年春のべースアツプについて話合いがなされたが(以上のうち、夕刻集会が開かれたことと前記会社関係者が出席したことは当事者間に争いがない。 及ぶものであつたが、静岡市内のことであり、また同会社が小企業であつたこともあつて、清水市に本社をおく被控訴会社の役員等の関心をひくものではなかつた。(二) 昭和四五年五月四日タ刻、同日昼休みの集会に続いて従業員の集会が開かれ、社長をはじめ使用者側関係者が出席して、同年春のべースアツプについて話合いがなされたが(以上のうち、夕刻集会が開かれたことと前記会社関係者が出席したことは当事者間に争いがない。)、その席上控訴人が社長に対して会社側の提案した平均七、〇〇〇円ということの意味を問いただす質問をした。(三) 翌五月五日B取締役とD工場長は、会社の応接室に運転手等従業員を個々に呼び、前夜のベースアツプに関する各自の意見を徴したが、その際二、三の者に控訴人の人物・性向等に関する質問をした。(四) 被控訴人会社の社長とB取締役は前記三、3.のとおりの経過で、同月五日過ぎ頃、そろつて静岡市に出、三共水産株式会社においてEにあい、三協運輸株式会社在職当時における控訴人の勤務ぶりその他諸般の事情を調査した。(五) 控訴人は、前記のとおり全自運に加盟していたが、被控訴会社在職当時は、試用期間中でもあつたので、被控訴会社の従業員を組織して組合を結成しようとするとか、全自運のため活動するとか等の組合活動として被控訴会社の注目を惹くような言動をしたことはなく、その他社内に組合結成の動きとして被控訴会社から警戒を以て見られるよ 組織して組合を結成しようとするとか、全自運のため活動するとか等の組合活動として被控訴会社の注目を惹くような言動をしたことはなく、その他社内に組合結成の動きとして被控訴会社から警戒を以て見られるような現象も見受けられなかつた。なお、被控訴会社に全自運清水市部分会として、組合が発足するに至つたのは、控訴人が本採用を拒否された後である同年五月一五、六日のことであつて、しかも、その当座は、組合結成の事実も組合員各自の活動も非公然と称して他に秘匿されていたものである。(六) 被控訴会社の社長、B取締役等は、全自運という組織があること、全自運が静岡県下においても諸種の活動を行なつていることは知つていたが、被控訴会社の清水工場には労働組合がなかつたし、当時その結成の動きもなかつたので、上記の者らは全自運の活動等については、直接、自社に関する問題として差し迫つて関心を持つていたわけではなかつた。 成の事実も組合員各自の活動も非公然と称して他に秘匿されていたものである。(六) 被控訴会社の社長、B取締役等は、全自運という組織があること、全自運が静岡県下においても諸種の活動を行なつていることは知つていたが、被控訴会社の清水工場には労働組合がなかつたし、当時その結成の動きもなかつたので、上記の者らは全自運の活動等については、直接、自社に関する問題として差し迫つて関心を持つていたわけではなかつた。控訴人は、被控訴会社のF工務課長、G車輌主任等が従業員に対し、控訴人の本採用の拒否の理由は三協運輸株式会社等における組合活動が理由であり、会社は近いうちに控訴人が中心になることを恐れている旨述べ、またG主任は控訴人に対し、今後組合活動を一切しないという一札を書けば止めさせられないよう頼んでやると言つたと主張し、また、会社側関係者は本採用拒否の理由として控訴人の経歴詐称を強調した旨主張し、前記疎甲第二号証、証人O、同Pの各証言及び控訴人本人尋問の結果中には、ヒれにそう部分もあるけれども、これらは弁論の全趣旨により真正に成立したと認める疎乙第一五号証、前示証人Bの証言、被控訴会社代表者尋問の結果と対比して考えると、末だ前記主張事実を肯認するには十分ではなく、他にこれらの主張事実を認めるに足りる的確な疎明はない。また、控訴人は被控訴会社は全自運の活動を知悉し 言、被控訴会社代表者尋問の結果と対比して考えると、末だ前記主張事実を肯認するには十分ではなく、他にこれらの主張事実を認めるに足りる的確な疎明はない。また、控訴人は被控訴会社は全自運の活動を知悉しこれを嫌悪していたとも主張するが、本件に現われたすべての資料によるも、この点につき前記(六)以上の事実を認めることは困難である。2. 以上1、に認定した事実から推して、被控訴会社の社長及びB取締役が前記五月五日過ぎの頃、三共水産株式会社においてEに会つた際、三協運輸株式会社在職当時の控訴人の組合活動について或る程度聞き知つたものと推認せざるをえない。しかし、前記1.の(五)において認定したように、当時、控訴人は、組合活動として持に被控訴会社から注目されるような言動をしておらず、社内に組合結成の動きとして被控訴会社から警戒の目を以て見られるような動きも見受けられず、また1.の(六)で認定したように当時被控訴会社の役員らも全自運の活動を直接自社に関する問題として差し迫つた関心を持つていなかつたのに引きかえ、前記三において縷説したとおり、控訴人には試用期間中のものとして本採用を拒否されても、(即ち試用期間中に解雇されても)止むを得ないとされるような事由があることを考えると、本件本採用拒否が控訴人の組合活動を原因としてなされたものであると認めることは困難であり、少くとも、控訴人の組合活動の前歴その他組合活動を嫌忌したことが本採用拒否の決定的理由となつたものとは到底認めることはできない。 つたのに引きかえ、前記三において縷説したとおり、控訴人には試用期間中のものとして本採用を拒否されても、(即ち試用期間中に解雇されても)止むを得ないとされるような事由があることを考えると、本件本採用拒否が控訴人の組合活動を原因としてなされたものであると認めることは困難であり、少くとも、控訴人の組合活動の前歴その他組合活動を嫌忌したことが本採用拒否の決定的理由となつたものとは到底認めることはできない。従つて、控訴人に対する本採用の拒否が不当労働行為に当たるとの控訴人の主張は採用できない。また控訴人に対する本採用の拒否は、試用期間中の者として本採用を拒否されてもやむをえないと認められる事由(すなわち本件事故)により、控訴人が能力、適格性を欠くと判断されたことによる 張は採用できない。また控訴人に対する本採用の拒否は、試用期間中の者として本採用を拒否されてもやむをえないと認められる事由(すなわち本件事故)により、控訴人が能力、適格性を欠くと判断されたことによるもの認められることは、すでに認定したとおりであるから、本採用の拒否が憲法第一四条、第一九条、労基法第三条に違反するとの控訴人の主張も理由のないものである。五、 叙上のとおり被控訴人のした本件本採用の拒否が無効であるという控訴人の主張は遂にこれを認めることができないから、控訴人の本件仮処分の申請は結局被保全権利について疎明を欠くものである。そうして、事案の性質上保証を以てこの疎明の欠缺にかえることは相当ではないから、本件仮処分申請は理由がなく却下を免れない。従つて、これと結論を同じくする原判決は相当であつて本件控訴は理由がないから、民訴法第三八四条によりこれを棄却し、なお控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官白石健三裁判官川上泉裁判官間中彦次)
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