昭和34(オ)857 横領費消金等請求

裁判年月日・裁判所
昭和36年12月21日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決中被上告人に関する部分を破棄する。      右の部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。          理    由  上告代理人藤井滝夫の上告理由第三点について

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判決文本文1,725 文字)

主文 原判決中被上告人に関する部分を破棄する。 右の部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人藤井滝夫の上告理由第三点について。 原判決によれば、本件身元保証契約は、訴外Dが被上告人を代理して締結したものであり、そのいきさつは、訴外Dは、昭和二二年一〇月頃から上告会社に雇われていたものであるところ、昭和三〇年九月頃、上告会社から、適当に身元保証人を立ててその保証書及び印鑑証明書を上告会社に差入れるよう指示されたので、妻Eの父である被上告人にそれを依頼することとし、Eを被上告人方につかわして実印の借用及び印鑑証明書の交付を依頼させた上、その借りてきた被上告人の実印を使用して本件保証書を作成し、その貰い受けてきた本件印鑑証明書を添えて上告会社に差し出したものであるが、Eは、被上告人方に赴いた際、右実印は身元保証のために使用するものであることを明らかに告げず、単に会社の用事のために必要であるといつて借り受けてきたものであり、印鑑証明書も同様の趣旨で貰い受けてきたものであるから、被上告人としては、Dのために身元保証書を作成するなどいうことは全く予測しなかつたものである。してみれば、本件身元保証書は、Dが被上告人の意思に基づかず、無断で作成したものであり、Dには本件身元保証契約を締結すべき代理権は全然なかつたものというべきである。もつとも同人がEの父である被上告人の実印を押した被上告人名義の保証書及び印鑑証明書を上告会社に差入れたという事実は、一応上告会社において民法一一○条にいわゆる代理権ありと信ずべき正当の理由を有した場合に該当するようではあるが、上告会社は当時被上告人本人が真実身元保証を承諾したか否かについて確かめた形跡はないし、また被上告人に対しなんらの連絡もしなか る代理権ありと信ずべき正当の理由を有した場合に該当するようではあるが、上告会社は当時被上告人本人が真実身元保証を承諾したか否かについて確かめた形跡はないし、また被上告人に対しなんらの連絡もしなかつたばかりでなく、保証書の被上告人の氏名は被上- 1 -告人の自署ではなくてDが記載したものであることが認められるから、保証書や印鑑証明書が、Dの手を通じて差し入れられたという一事だけで、上告会社において、Dが本件保証契約の締結について被上告人を代理する権限を有するものと信ずべき正当の理由があつたものということはできないというのである。 しかし、本人が他人に対し自己の実印を交付し、それを使用して、ある行為をなすべき権限を与えた場合において、その他人が「代理人としての」権限外の行為をしたときは、特別の事情がないかぎり、取引の相手方である第三者は、実印を託されたものに、その取引をなす権限があるものと信ずるのは当然のことであり、そう信ずるにつき正当の理由があるものと解するのが相当である。 しかるに原判決は、被上告人がDに対し、自己の実印を交付し、あまつさえ印鑑証明書まで与えて、ある行為をなすべき権限を与えた事実を認定しながら、単に、上告会社においてその際被上告人本人の真意を確かめた形跡がなかつたこと、被上告人に対しその連絡をしなかつたこと、及び、保証書の被上告人の氏名が同人の自署でなかつたこと等の事実を確定したのみで、他に上告会社においてDに代理権があると信ずべき正当の理由がなかつたと認めるに足りる特別の事情の有無を確定することなく、たやすく「民法一一〇条による」表見代理の成立を否定したのは、右法条の解釈を誤まり、その結果、審理不尽、理由不備の違法をおかしたものであつて、原判決はこの点で破棄を免れず、論旨は理由がある。 よつて爾余の論旨に対する 条による」表見代理の成立を否定したのは、右法条の解釈を誤まり、その結果、審理不尽、理由不備の違法をおかしたものであつて、原判決はこの点で破棄を免れず、論旨は理由がある。 よつて爾余の論旨に対する判断を省略し民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官高木常七裁判官斎藤悠輔裁判官入江俊郎- 2 -裁判官下飯坂潤夫- 3 -

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