令和2(ワ)2924 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年7月9日 京都地方裁判所
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判決文本文23,309 文字)

主文 1 被告Aは、原告に対し、892万2000円及びこれに対する令和2年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告A及び被告Bは、原告に対し、連帯して149万6810円及びこれに対する被告Aについては令和2年10月9日から、被告Bについては令和2年10 月15日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告A及び被告Cは、原告に対し、連帯して171万6170円及びこれに対する被告Aについては令和2年10月9日から、被告Cについては同月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告A及び被告Dは、原告に対し、連帯して155万8580円及びこれに対 する被告Aについては令和2年10月9日から、被告Dについては令和2年10月15日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告は、被告Cに対し、37万9290円及びこれに対する令和2年5月1日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 6 原告は、被告Dに対し、31万9820円及びこれに対する令和2年5月1日 から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 7 被告C及び被告Dのその余の反訴請求をいずれも棄却する。 8 訴訟費用は、原告と被告A及び被告Bとの間においては、全部被告A及び被告Bの負担とし、原告と被告Cとの間においては、本訴反訴を通じ、原告と被告Cとの間に生じたものを6分し、その5を被告Cの負担とし、その余を原告の負担 とし、原告と被告Dとの間においては、本訴反訴を通じ、原告と被告Dとの間に生じたものを6分し、その5を被告Dの負担とし、その余を原告の負担とする。 9 本判決は、第1項から第6項までに限り、仮に執行することができる。 間においては、本訴反訴を通じ、原告と被告Dとの間に生じたものを6分し、その5を被告Dの負担とし、その余を原告の負担とする。 9 本判決は、第1項から第6項までに限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴事件 (1)主文第1項に同じ。 (2)主文第2項に同じ。 (3)主文第3項に同じ。 (4)主文第4項に同じ。 2 反訴事件 (1)原告は、被告Cに対し、41万4290円及びこれに対する令和2年4月26日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 (2)原告は、被告Dに対し、34万8320円及びこれに対する令和2年4月26日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は、頭書肩書住所地に所在する会社であり、a地域にあるb川において、屋形船及び遊覧船の運航、鵜飼い等の事業を行っている。 被告Aは、かつて原告の代表取締役、その余の被告らは、かつて原告の取締役の地位にそれぞれあった者である。 (1)本訴本訴は、被告Aが、原告を代表して、自ら及びその余の被告らに対し、株主総会の決議等により承認された額以上の報酬等の支払を原告にさせ、被告らがこれを受領したとして、原告が、被告らに対し、それぞれ次の請求をする事案である。 ア被告Aに対する前記第1の1(1)の請求(被告A自身が受領した報酬に関するもの)(ア)不当利得返還請求(イ)会社法423条1項に基づく損害賠償請求(ウ)不法行為に基づく損害賠償請求((ア)ないし(ウ)は選択的併合) (エ)(ア)、(イ)又は(ウ)に対する訴状送達の日の翌日(令和2年10 月9日)から支払済みまで平成29年法律第44号によ 為に基づく損害賠償請求((ア)ないし(ウ)は選択的併合) (エ)(ア)、(イ)又は(ウ)に対する訴状送達の日の翌日(令和2年10 月9日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金請求イ被告Aに対する前記第1の1(2)から(4)までの請求(被告A以外の被告らに支払われた報酬等に関するもの)(ア)会社法423条1項に基づく損害賠償請求 (イ)不法行為に基づく損害賠償請求((ア)及び(イ)は選択的併合)(ウ)(ア)又は(イ)に対する訴状送達の日の翌日(令和2年10月9日)から支払済みまで前同様の遅延損害金請求ウ被告Bに対する前記第1の1(2)の請求(被告Bに支払われた報酬等に関するもの) (ア)不当利得返還請求(イ)会社法423条1項に基づく損害賠償請求(ウ)不法行為に基づく損害賠償請求((ア)から(ウ)までは選択的併合)(エ)(ア)、(イ)又は(ウ)に対する訴状送達の日の翌日(令和2年10月15日)から支払済みまで前同様の遅延損害金請求 エ被告Cに対する前記第1の1(3)の請求(被告Cに支払われた報酬等に関するもの)(ア)不当利得返還請求(イ)会社法423条1項に基づく損害賠償請求(ウ)不法行為に基づく損害賠償請求((ア)から(ウ)までは選択的併合) (エ)(ア)、(イ)又は(ウ)に対する訴状送達の日の翌日(令和2年10月20日)から支払済みまで前同様の遅延損害金請求オ被告Dに対する前記第1の1(4)の請求(被告Dに支払われた報酬等に関するもの)(ア)不当利得返還請求 (イ)会社法423条1項に基づく損害賠償請求 (ウ)不法行為に基づく損害賠償 に対する前記第1の1(4)の請求(被告Dに支払われた報酬等に関するもの)(ア)不当利得返還請求 (イ)会社法423条1項に基づく損害賠償請求 (ウ)不法行為に基づく損害賠償請求((ア)から(ウ)までは選択的併合)(エ)(ア)、(イ)又は(ウ)に対する訴状送達の日の翌日(令和2年10月15日)から支払済みまで前同様の遅延損害金請求(2)反訴ア被告Cの原告に対する以下の金員の支払請求 (ア)退職慰労金 23万円(船頭7年分7万円、取締役7年分16万円)(イ)令和2年4月分未払賃金(基本給12万4290円、皆勤手当1万円、役員手当5万円)(ウ)(ア)及び(イ)に対する履行期(賃金支払期)後の日である令和2年4月26日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅 延損害金イ被告Dの原告に対する以下の金員の支払請求(ア)退職慰労金 17万円(船頭6年分6万円、取締役5年分11万円)(イ)令和2年4月分未払賃金(基本給10万4820円、残業・使役手当1万8500円、精勤手当5000円、役員手当5万円) (ウ)(ア)及び(イ)に対する履行期(賃金支払期)後の日である令和2年4月26日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金 2 争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実を含む。) (1)当事者等ア原告原告は、和船及びボートの賃貸業、c川、d川、両川上にわたる貨物運輸業及び漁業、茶店、土木請負業及び写真業並びに造船業等を目的とする会社であり、a地域にあるb川において、屋形船及び遊覧船の運航、鵜飼い等の 事業を行っている。 イ被告ら被告Aは、原告の代表取締役、その余 び写真業並びに造船業等を目的とする会社であり、a地域にあるb川において、屋形船及び遊覧船の運航、鵜飼い等の 事業を行っている。 イ被告ら被告Aは、原告の代表取締役、その余の被告らは、原告の取締役であった者である。被告らが取締役に就任し、辞任した時期は、次のとおりである。 被告A 平成23年1月取締役就任、平成29年1月代表取締役就任、令和2年4月13日代表取締役解任、同月14日取締役辞任 被告B 平成27年1月取締役就任、令和2年1月20日辞任被告C 平成25年取締役就任、令和2年4月16日辞任被告D 平成27年1月取締役就任、令和2年4月16日辞任ウその他の役員Eは、平成12年から平成29年まで、原告の代表取締役の地位にあった。 原告の代表取締役としては、被告Aの前任者に当たる。 Fは税理士であるところ、平成25年1月から、原告の監査役の地位にあった。 (2)報酬決定に関する定款の定め等平成18年12月20日に改正された原告の定款36条は、「取締役の報酬、 賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益(以下「報酬等」という。)は、株主総会の決議によって定める。」と規定する(甲5)。 原告は、昭和56年12月開催の第69回定時株主総会で、社長(代表取締役)の給料及び賞与並びに監査役の賞与の合計額を600万円とする旨、決議した(甲8。以下「昭和56年決議」という。)。 (3)被告らに対する報酬等の支払被告Aは、原告を代表して、被告らに対し、次のとおり、報酬等の支払をした(被告Aを除く被告らについては、支払われた金員が取締役報酬であったのか、従業員としての給与等であったのかについて、争いがある。)。 ア被告A 被 し、次のとおり、報酬等の支払をした(被告Aを除く被告らについては、支払われた金員が取締役報酬であったのか、従業員としての給与等であったのかについて、争いがある。)。 ア被告A 被告Aに対しては、別表1のとおり、以下の代表取締役報酬が支払われた。 平成29年2月から平成30年1月まで報酬月額66万6000円平成30年2月から平成31年1月まで報酬月額70万円平成31年2月から令和2年3月まで報酬月額75万円令和2年4月に報酬10万円平成29年に賞与43万円 平成30年に賞与60万円イ被告B被告Bに対しては、別表3の「報酬支払額」欄記載のとおり、平成31年2月から令和2年1月まで、月額50万円が支払われた。 ウ被告C 被告Cに対しては、別表2の「報酬支払額」欄記載のとおり、平成31年2月から令和2年3月まで、月額50万円が支払われた。 エ被告D被告Dに対しては、別表5の「報酬支払額」欄記載のとおり、平成31年2月から令和2年3月まで、月額50万円が支払われた。 (4)役員手当原告においては、慣習として、取締役に対し、月額5万円の役員手当を支給することが認められていた。 (5)内規(甲21)平成27年12月5日に一部改訂・追記された原告の内規には、以下の内容 に関する定めがある。 ア従業員の日当は、本業売上げの5割を出勤人員で分配することを原則とし、必要があれば、取締役会の決議により変更できる(第5章第1)。 イ船頭は、退職時、勤続1年当たり1万円の退職慰労金を受領する(第6章第1)。 ウ取締役は、退職時、勤続1期(2年)当たり5万円の退職慰労金を受領す る(第6章第3)。 (6)業務委託契約被告 り1万円の退職慰労金を受領する(第6章第1)。 ウ取締役は、退職時、勤続1期(2年)当たり5万円の退職慰労金を受領す る(第6章第3)。 (6)業務委託契約被告Aを除く被告らは、原告との間で、平成30年及び令和元年の各12月、船頭業務に関する業務委託契約を締結していた。この契約によれば、船頭(同被告ら)は、業務に従事する日を、自らの意思で自由に決めることができ、そ の日の売上げから所定の方法により算定された歩合により算定された額を配当金(賃金)として受け取ることとされていた。(甲16の1~8)(7)賃金計算期間(締め日)と支払日原告における賃金計算に係る締め日は毎月20日である(乙1~4参照)。 賃金の支払日は、月によって変動があるが、締め日の属する月内に支払われて きた(甲25の1~5)。 3 争点及びこれに対する当事者の主張(1)被告Aに対する報酬支払の当否(争点1(被告Aが、原告を代表して、自らに対し、年額600万円を超えて取締役報酬を支払い、被告Aがこれを受け取ったことが、不当利得、取締役としての任務懈怠又は不法行為となるか)) ア原告の主張(ア)総論原告において、代表取締役の報酬を定める直近の総会決議は、昭和56年決議であり、それ以後、代表取締役の報酬額を増額する株主総会決議は存在しない。昭和56年決議によれば、代表取締役の報酬は、最大で年額 600万円であるから、これを超える報酬支払には法的根拠がなく、別表1の「超過支払額」欄の合計892万2000円については、法律上の原因を欠くし、これを支払った被告Aの行為は、原告に対する関係で、任務懈怠又は不法行為となる。 (イ)故意過失について 被告Aに 欄の合計892万2000円については、法律上の原因を欠くし、これを支払った被告Aの行為は、原告に対する関係で、任務懈怠又は不法行為となる。 (イ)故意過失について 被告Aには、上記の不適法な報酬支払について、故意又は過失があった。 (ウ)決算承認について原告の決算には、被告Aに対する報酬支払の事実が記載されており、それが、毎年、株主総会で承認されてきたことは認めるが、その効果は争う。 株主総会による決算承認によっても、不適法な報酬支払が正当化されるものではない。 (エ)信義則違反の主張について争う。 イ被告Aの主張(ア)原告の主張(総論)について原告の上記主張は否認し、争う。 (イ)増額総会決議の存在a 原告においては、平成29年、被告Aが代表取締役に就任するまでに、取締役等の報酬額の総額を3000万円以下とすること、各取締役の報酬額は取締役会の決議において定めることが、株主総会において決議されていた。 b 原告においては、平成26年又は平成27年の株主総会において、代表取締役の報酬額を少なくとも1000万円に増額するとの決議がされた。 (ウ)取締役会決議の存在原告の取締役会は、被告Aの報酬につき、次のとおり決議した。 a 平成29年1月20日の取締役会被告Aの役員報酬を平成29年2月から月額66万6000円(年額799万2000円)とする。 b. 平成30年2月10日開催の取締役会被告Aの役員報酬を同月から月額70万円(年額840万円)とする。 c 平成31年2月開催の取締役会 被告Aの役員報酬を同月から月額75万円(年額900万円)とする。 d 賞与の支給について平 同月から月額70万円(年額840万円)とする。 c 平成31年2月開催の取締役会 被告Aの役員報酬を同月から月額75万円(年額900万円)とする。 d 賞与の支給について平成29年の賞与43万円、平成30年の賞与60万円についても、それぞれ取締役会決議がされた。 (エ)決算承認による追認(承諾) 仮に、被告Aの役員報酬増額の議案が明示的に株主総会に提出されていなかったとしても、決算の項目中には、「事務所給料」に被告Aに支払われた報酬額が含まれており、この決算承認により、株主総会の承認を得ている。 (オ)故意・過失を欠くこと 仮に、被告Aの役員報酬増額につき、これを承認する株主総会決議が存在しなかったとしても、被告Aには、増額した報酬の支払につき、故意も過失も存しない。 (カ)信義則違反被告Aの前任の代表取締役であったEは、自らの後任となる代表取締役 に就任するよう、被告Aに依頼するに当たり、報酬額を年額800万円にすると約束した。その際、Eは、報酬額引上げのためには新たに株主総会決議が必要であると言わなかった。それにもかかわらず、その後、原告が、株主総会決議がないことを理由として、被告Aに対し、年額600万円を超える部分の報酬支払義務がなかったとして、超過部分の返還を求めるこ とは、当時の代表者であったEの言動に反するもので信義に反し、許されない。 (2)被告Bに対する報酬等支払の当否(争点2(被告Aが、原告を代表して、被告Bに対する報酬又は給与等を年額600万円の定額により支払ったことにより、被告Aが不法行為又は会社法423条1項に基づく損害賠償責任を負い、 被告Bが不当利得返還又は共同不法行為に基づく損害賠償の責任を負うか)) 00万円の定額により支払ったことにより、被告Aが不法行為又は会社法423条1項に基づく損害賠償責任を負い、 被告Bが不当利得返還又は共同不法行為に基づく損害賠償の責任を負うか)) ア原告の主張被告Bは、原告の従業員として、原告から給与(船頭配当額及び精勤・皆勤手当)を受領することができるが、原告の内規及び同被告との間で締結された業務委託契約(甲16の2・6)並びに原告における従前の取扱いによれば、その額は、別表3の「船頭配当額」及び「精勤・皆勤手当」の各欄記 載のとおりである。 このように、被告Bの給与は、歩合給に基づく日給月給制であって、原告が、被告Bに対して、定額で月額45万円の給与を支払う根拠はないから、同別表記載の「報酬支払額」から「役員手当」、「船頭配当額」及び「精勤・皆勤手当」の合計額を差し引いた金額に相当する部分は、被告Aが原告を代 表してこれを支給し、被告Bがこれを受領する根拠を欠くこととなる。その額は「超過支払額」欄記載のとおりであり、被告Bに対する支給根拠を欠く報酬支払額(原告の損失・損害額、被告Bの利得額)は、別表3記載のとおり、149万6810円となる。 被告Aは、平成31年1月20日開催の株主総会に、各取締役に年額60 0万円の定額の報酬を支払う提案をしたが、この議案は否決された。仮に、支払の名目を従業員給与に改めるものだとしても、それは従前の歩合給による日給月給とは異なる給与の決定方法によって、前記提案と同様の結果をもたらすものとして株主総会決議の潜脱であり、許されない。 イ被告A及び被告Bの主張 (ア)被告Bは、令和2年1月分の報酬又は給与(月額50万円)を受領していないから、同月分の支払に関し、超過支払額として29万5500円を ない。 イ被告A及び被告Bの主張 (ア)被告Bは、令和2年1月分の報酬又は給与(月額50万円)を受領していないから、同月分の支払に関し、超過支払額として29万5500円を返還又は損害賠償すべきとの原告の主張は争う。 (イ)被告Bが原告から得ていた収入は、原告と締結した契約に基づき、船頭として稼働したことの対価であった。 被告Bは、本来、船頭としての出勤日を自由に選択しつつ、稼働に応じ た配当金を受け取るべき立場にあったが、取締役就任後は、その業務のため、船頭として自由に稼働することができないばかりでなく、原告の営業日には、その営業時間中、常時勤務しなければならなくなった。取締役としての業務は、船頭としての業務と異なり、季節的な変動が少なく定量的であることから、給与額の大幅な変動を避けるため、役員手当月額5万円 のほか、月額45万円を上限とする定額で「調整金」の支払を受けていた。 月額45万円という金額は、被告Bに対する従来の支払実績を参照し、年間平均支払額を超えないように決定された。 役員手当月額5万円を超える月額45万円については、このように原告と被告Bとの間の契約に基づく調整金の支払であり、法的根拠がある。 平成31年1月20日開催の株主総会で否決されたのは、各被告の取締役報酬の支給についてであり、従業員給与の支給を禁ずるものではない。 また、その支払には、上記のとおり、客観的な合理性があり、お手盛りというのは当たらない。 (3)被告C及び被告Dに対する報酬等支払の当否(争点3(被告Aが、原告を代 表して、被告C及び被告Dに対する報酬又は給与等を年額600万円の定額により支払ったことにより、被告Aが不法行為又は会社法423条1項に基づく損害賠償責任を負い、被告 3(被告Aが、原告を代 表して、被告C及び被告Dに対する報酬又は給与等を年額600万円の定額により支払ったことにより、被告Aが不法行為又は会社法423条1項に基づく損害賠償責任を負い、被告C及び被告Dが不当利得返還又は共同不法行為に基づく損害賠償の責任を負うか))ア原告の主張 (ア)被告Cへの給与支払被告Cは、原告の従業員として、原告から給与(船頭配当額及び精勤・皆勤手当)を受領することができるが、原告の内規及び同被告との間で締結された業務委託契約(甲16の1・5)並びに原告における従前の取扱いによれば、その額は、別表2の「船頭配当額」及び「精勤・皆勤手当」 の各欄記載のとおりである。 このように、被告Cの給与は、歩合給に基づく日給月給制であって、原告が、被告Cに対し、定額で45万円の給与を支払う根拠はないから、同別表記載の「報酬支払額」から、「役員手当」、「船頭配当額」及び「精勤・皆勤手当」の合計額を差し引いた金額に相当する部分は、被告Aが原告を代表してこれを支給し、被告Cがこれを受領する根拠を欠くこととな る。その額は「超過支払額」欄記載のとおりである。 もっとも、被告Cに対しては、平成30年12月から令和元年11月までの期間に相当する賞与額25万5600円(出勤日数284日、日額900円)の支給について、原告も正当と認めるから、同額を上記「超過支払額」から控除すべきである。 したがって、被告Cに対する支給根拠を欠く報酬等の支払額(原告の損失・損害額、被告Cの利得額)は、次の計算式のとおり、171万6170円となる。 (計算式)197万1770円(別表2)-25万5600円(賞与相当額)=171万6170円 (イ)被告Dへの給与支払被告Dは、原告の従 式のとおり、171万6170円となる。 (計算式)197万1770円(別表2)-25万5600円(賞与相当額)=171万6170円 (イ)被告Dへの給与支払被告Dは、原告の従業員として、原告から給与(船頭配当額及び精勤・皆勤手当)を受領することができるが、原告の内規及び同被告との間で締結された業務委託契約(甲16の4・8)並びに原告における従前の取扱いによれば、その額は、別表5の「船頭配当額」及び「精勤・皆勤手当」 の各欄記載のとおりである。 このように、被告Dの給与は、歩合給に基づく日給月給制であって、原告が、被告Dに対して、定額で月額45万円の給与を支払う根拠はないから、同別表記載の「報酬支払額」から「役員手当」、「船頭配当額」、「精勤・皆勤手当」及び「出張手当」の合計額を差し引いた金額に相当する部 分は、被告Aが原告を代表してこれを支給し、被告Dがこれを受領する根 拠を欠くこととなる。その額は「超過支払額」欄記載のとおりである。 もっとも、被告Dに対しては、平成30年12月から令和元年11月までの期間に相当する賞与額27万0900円(出勤日数301日、日額900円)の支給について、原告も正当と認めるから、同額を上記「超過支払額」から控除すべきである。 したがって、被告Dに対する支給根拠を欠く報酬等の支払額(原告の損失・損害額、被告Dの利得額)は、次の計算式のとおり、155万8580円となる。 (計算式)182万9480円(別表5)-27万0900円(賞与相当額)=155万8580円 (ウ)被告C及び被告Dの主張に対する反論a 報酬等を定額(月額50万円)で支払うことが許されないこと原告と被告C、被告Dとの契約(Cにつき甲16の1・5、被告Dにつき甲16 (ウ)被告C及び被告Dの主張に対する反論a 報酬等を定額(月額50万円)で支払うことが許されないこと原告と被告C、被告Dとの契約(Cにつき甲16の1・5、被告Dにつき甲16の4・8)によれば、被告C及び被告Dに対して原告から支払われる業務の対価は、業務担当日の配当金として歩合制の計算になり、 その額は、売上げ及び稼働日数に応じて当然に変動するから、年額600万円といった定額とはならない。 取締役報酬を年額600万円とすること(定期同額給与とすること)については、被告Aから平成31年1月20日の株主総会で提案されたが、否決されたから、取締役の報酬名目であれ、従業員としての給与名 目であれ、歩合制ではなく、年額600万円の定額とすることは許されない。 そして、歩合給である以上、被告C及び被告Dに対する配当額は、過去の平均実績によるのではなく、給与の計算期間における売上げ等、原告の実績を前提として決するのは当然のことである。 b 分残及び使役名目の手当について 分残、使役などの手当は、定期的、定常的に行われる業務に関するものではなく、平成31年2月以降、被告C及び被告Dが、これらの業務に従事したことはないから、同被告らがその支払を受ける根拠を欠く。 イ被告C及び被告Dの主張(ア)従業員給与が定額で支払われたこと 被告C及び被告Dに対する月額50万円の支払は、取締役報酬としてではなく、全額従業員としての給与(固定給)として支払われたものである。 このうち、5万円は役職手当とでもいうべきものであり、45万円は従業員の基本給(給与)としての支払である(甲15、乙1、乙2)。原告の従業員(船頭)は、歩合制で日給月給の支給を受けるが、取締役を兼務す 、5万円は役職手当とでもいうべきものであり、45万円は従業員の基本給(給与)としての支払である(甲15、乙1、乙2)。原告の従業員(船頭)は、歩合制で日給月給の支給を受けるが、取締役を兼務す る船頭は船頭業務に従事することができなかったため、被告Aは、原告を代表して、内規の規定に基づき、取締役会決議によって支給方法を変更し、取締役を兼務する従業員に対し、従前の歩合制日給月給に代えて、新たに固定給を支払うこととした。したがって、被告C及び被告Dに対する月額50万円の定額で給与が支払われたことには、法的根拠が存する。 固定給の額は、従前の給与と大差ない水準であり、固定給とするに当たって増額したものではない。 仮に、固定給として支払われた期間について、被告C及び被告Dの給与を歩合給によって計算し直すにしても、過去の実績に照らして平均給与額を算定すべきである。 (イ)分残及び使役名目の手当について被告C及び被告Dは、原告が主張する控除額のほか、残業手当(分残と呼ばれる)、臨時の業務手当(使役と呼ばれる)等の諸手当の支給を受けることもできたから、これらの金額も請求額から控除されるべきである。 ウ被告Aの主張 被告C及び被告Dに対する給与の定額支払に関する被告Aの主張は、被告 Bに係る主張と同様である。 (4)反訴請求における未払給与、退職慰労金請求等の当否(争点4)ア被告C及び被告Dの主張(ア)被告Cの請求に関しa 未払給与 被告Cは、平成18年4月3日から船頭として稼働し始め、平成25年1月21日からは取締役を兼務するようになり、令和2年4月17日まで、原告で勤務した。 ところが、原告は、被告Cに対し、令和2年3月21日から同年4月17日までの 頭として稼働し始め、平成25年1月21日からは取締役を兼務するようになり、令和2年4月17日まで、原告で勤務した。 ところが、原告は、被告Cに対し、令和2年3月21日から同年4月17日までの間に生じた給与の支払をしない。 未払の給与等の額は、次のとおりである。 (a)基本給4月分 12万4290円(乙7。残業代1万5000円を含む。)(b)皆勤手当 1万円(営業日数の80パーセント以上出勤に対する月額手当) (c)役員手当 5万円(乙1の15)(d)小計 18万4290円b 退職慰労金被告Cは、船頭として7年、取締役として7年、それぞれ原告に勤務したから、原告から退職慰労金23万円(内訳は、船頭分7万円、取締 役分16万円)の支払を受けることができるのに、原告は、これを支払わない。 原告における賃金支払日は同月25日であり、未払給与等と合計すると、41万4290円となる。 (イ)被告Dの請求に関し a 未払給与 被告Dは、平成21年3月から船頭として稼働し始め、平成27年1月20日からは取締役を兼務するようになり、令和2年4月17日まで、原告で勤務した。 ところが、原告は、被告Dに対し、令和2年3月21日から同年4月17日までの間に生じた給与の支払をしない。 未払の給与等の額は、次のとおりである。 (a)基本給4月分 10万4820円(乙8)(b)残業・使役手当 1万8500円(乙9)(c)精勤手当 5000円(営業日数の65パーセント以上の出勤に対する月額手当) (d)役員手当 5万円(乙2の40)(e)小計 17万8320円b 退職慰労金被告Dは、船頭として6年、取締役として 0円(営業日数の65パーセント以上の出勤に対する月額手当) (d)役員手当 5万円(乙2の40)(e)小計 17万8320円b 退職慰労金被告Dは、船頭として6年、取締役として5年、それぞれ原告に勤務したから、原告から退職慰労金17万円(内訳は、船頭分6万円、取締 役分11万円)の支払を受けることができるのに、原告は、これを支払わない。 原告における賃金支払日は同月25日であり、未払給与等と合計すると、34万8320円となる。 イ原告の主張 (ア)被告Cの請求に関しa 被告Cの船頭退職慰労金の算定に関し、平成18年及び平成19年は技術習得期間として、算定期間に含まれない(甲21の内規末尾一②)から、算定期間は平成20年から平成25年までの6年間となる。被告Cの船頭としての退職慰労金の額は6万円の限度で認め、その余は否認 する。 b 取締役としての退職慰労金は、任期ごとに算定するから(内規第6章第3)、被告Cについては、3期6年分に相当する15万円の限度で認め、その余は否認する。 c 残業手当及び使役手当は否認する。 d その余は争わない。 (イ)被告Dの請求に関しa 取締役退職慰労金は、任期ごとに算定するから(内規第6章第3)、被告Dについては、2期4年分に相当する10万円の限度で認め、その余は否認する。 b 残業手当及び使役手当は否認する。 c その余は争わない。 第3 争点に対する判断 1 争点1(被告Aに対する報酬支払の当否)について(1)昭和56年決議以降における、代表取締役の報酬額を引き上げる株主総会決議の存否 ア原告が前記第2の3(1)ア(ア)のとおり主張するのに対し、被告Aは、同イ(ア)のとおり (1)昭和56年決議以降における、代表取締役の報酬額を引き上げる株主総会決議の存否 ア原告が前記第2の3(1)ア(ア)のとおり主張するのに対し、被告Aは、同イ(ア)のとおり争うとともに、同(イ)のとおり、報酬額を増額する旨の株主総会決議が存在する旨主張するので、以下検討する。 イ株主総会決議が存在すれば、決議事項の重要性に鑑みて、その旨の記載のある総会議事録が存すべきであり、決議との関係ではこの議事録が重要な証 拠となるところ、被告Aの上記主張に係る株主総会決議がされた旨の記載のある総会議事録は存在しない。 被告Aの主張に沿う証拠(証人F、被告A本人、被告B本人、被告C本人)も存するが、いずれも決議の時期、内容等に関する説明が曖昧であり、供述に変遷もある上、客観的な裏付けを欠くほか、前任の代表取締役であるEが 反対趣旨の証言をしていることに照らすと、これを信用するには至らない。 ウなるほど、代表取締役の報酬額が増額された時期は昭和56年が最後で、それ以後増額されないままであったとすると、その期間は約40年の長期にわたることとなる。また、Eは、被告Aを後任の代表取締役とするに当たり、その報酬額につき被告Aが年額800万円を要望していたことを認識していた(証人E)。さらに、E自身、代表取締役在任中に、年額600万円を 超えて報酬を受け取っていた時期があった(甲26の1)。 しかしながら、これらの事実から、被告Aが代表取締役に就任した時期までに、その報酬額の上限を、昭和56年決議で定められた600万円を超える1000万円又は役員の報酬総額を3000万円とする株主総会決議がされたとの事実を認定するには足りないというべきである。 エ以上の検討に加え、本件全証拠によ られた600万円を超える1000万円又は役員の報酬総額を3000万円とする株主総会決議がされたとの事実を認定するには足りないというべきである。 エ以上の検討に加え、本件全証拠によっても、被告Aの上記アの主張を認めるに足りない。 (2)決算承認についてア被告Aは、前記第2の3(1)イ(エ)のとおり主張するので、以下検討する。 イ証拠(甲20の2~4、甲26の2~5)によれば、被告Aが原告の代表取締役に就任した後、同人の報酬額を含む決算が、原告の株主総会において承認されていた事実を認めることができる。 しかしながら、被告Aが代表取締役に就任する前後の株主総会において、代表取締役の報酬額について議論された形跡はなく(甲9~12)、上記決 算承認の事実をもって、報酬額を決定する株主総会決議と同視することはできないものというべきである。 ウしたがって、被告Aの上記アの主張は採用することができない。 (3)被告Aの故意・過失についてア原告は、前記第2の3(1)ア(イ)のとおり主張し、被告Aは、同イ(オ) のとおり主張するので、以下検討する。 イ既に検討したところによれば、代表取締役報酬を年額600万円を超えて支払うことにつき、原告においてこれを認める株主総会決議は存在せず、決算の承認によっても、その支払を正当化することはできないところである。 被告Aは、代表取締役に就任した後、自ら株主総会議事録を調査する等して、株主総会決議の有無を確認することも可能であったのであり、それにもかか わらず漫然と年額600万円を超える報酬の支払をしたことには、少なくとも過失があったことは明らかである。 この認定は、被告Aが前代表取締役であるEに対して報酬額 のであり、それにもかか わらず漫然と年額600万円を超える報酬の支払をしたことには、少なくとも過失があったことは明らかである。 この認定は、被告Aが前代表取締役であるEに対して報酬額を800万円とすることを要望していたこと、その要望をEが否定することはなかったこと、監査役のFが年額600万円を超えて代表取締役報酬を支払うことに異 を唱えなかったことを考慮しても、左右されない。 ウしたがって、被告Aには少なくとも過失があったことが認められ、被告Aが、原告を代表して、自らの報酬を年額600万円を超えて支出した行為は、原告に対する不法行為に当たる。 (4)信義則違反について ア被告Aは、前記第2の3(1)イ(カ)のとおり主張するので、以下検討する。 イ被告Aは、Eが、被告Aに代表取締役の報酬を年額800万円とすることを約束していたと主張し、これに沿う証拠(丙1、4、被告A本人、被告B本人)も存するが、Eは反対趣旨の供述をしている上、被告Aの主張に沿う 前記証拠は的確な裏付けを欠き、信用するに至らない。本件全証拠によっても、被告Aの主張に係るEとの約束の存在は認められない。 仮に、この約束が存在するという被告Aの主張を前提としても、被告Aは、代表取締役に就任したのであるから、報酬の額に関する総会決議を自ら調査し、決議が存在しないことを確認したならば、報酬増額に係る議案を株主総 会に提案することも可能であった。そうすると、Eの約束があったからとい って、原告が後に年額600万円を超える部分の報酬の返還を被告Aに求めたとしても、信義に反するとはいえない。 ウしたがって、被告Aの上記アの主張は、採用することができない。 (5)原告の損害額既に 00万円を超える部分の報酬の返還を被告Aに求めたとしても、信義に反するとはいえない。 ウしたがって、被告Aの上記アの主張は、採用することができない。 (5)原告の損害額既に認定したところによれば、昭和56年決議により代表取締役の報酬の上 限額として認められたのは年額600万円であり、平成29年2月に被告Aが原告の代表取締役に就任してから令和2年4月に解任されるまでの間に月額50万円を超過して受領した報酬(賞与を含む。)の額は892万2000円であるから、原告に生じた損害額は、同額となる。 (6)争点1の結論 ここまでの検討によれば、原告が、被告Aに対し、不法行為に基づく損害賠償として892万2000円及びこれに対する不法行為後の日である令和2年10月9日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は、全部理由がある。 2 争点2(被告Bに対する報酬等支払の当否)について (1)被告Bに支払われた固定給(月額50万円)の法的性格ア役員手当(月額5万円)原告の取締役が、取締役在任中、役員手当として月額5万円を受給することができることについては、原告も認めるところであり、この点について当事者間に争いはない。 イその余の月額45万円部分について(ア)被告Aは、原告を代表し、被告Bに対し、平成31年2月分の給与から、上記役員手当のほかに定額で月額45万円を支給した(甲15の3)。この点に関し、原告は、前記第2の3(2)アのとおり主張し、被告A及び被告Bは、同イのとおり主張するので、以下検討する。なお、上記の月額 45万円が被告Bの取締役報酬として支給されたものではなく、従業員と しての給与として のとおり主張し、被告A及び被告Bは、同イのとおり主張するので、以下検討する。なお、上記の月額 45万円が被告Bの取締役報酬として支給されたものではなく、従業員と しての給与として支給されたものであることについて当事者間に争いはないから、以下、これを前提に検討する。 (イ)a 既に認定した事実によれば、以下の事実を認めることができる。 すなわち、被告Aを除く被告らに対し、平成31年2月分以降に固定給の支給がされたことを除き、原告において、従業員に対する給与は、 歩合給による日給月給とされていた。これは、内規及び従業員の船頭業務に係る業務委託契約に基づき、本業売上げの5割を出勤人員で分配することを原則とし、船頭(同被告ら)は、業務に従事する日を、自らの意思で自由に決めることができ、その日の売上げから所定の方法により算定された歩合により算定された額を配当金(賃金)として受け取るこ ととするものであった。 被告Aを除く被告らも、平成31年1月分までは、役員手当(5万円)以外は、上記の歩合による配当金の方式により給与を受け取っていた。 b 内規(甲21)によれば、従業員の給与は、取締役会決議により変更することができることとされているところ、平成31年2月分から、被 告Aを除く被告ら(いずれも取締役である。)が一斉に固定給に切り替えられたこと(甲15の1~16)に照らすと、その頃、その旨の取締役会決議がされ、被告Aがこれに従って固定給の支給を開始したものと推認することができる。 (2)固定給支給の適法性 ア原告は、前記第2の3(2)アのとおり主張し、被告A及び被告Bは、同イのとおり主張するので、以下検討する。ここで検討すべきは、被告Aを除く被告らについて、このような固定給への給与 ア原告は、前記第2の3(2)アのとおり主張し、被告A及び被告Bは、同イのとおり主張するので、以下検討する。ここで検討すべきは、被告Aを除く被告らについて、このような固定給への給与の変更が有効であったのかどうか、という点である。 イこの点に関しては、証拠(甲11)によれば、平成31年1月20日に開 催された原告の株主総会には、被告Aを除く被告らほか1名の取締役報酬に つき、同年2月1日から年額600万円にする議案が提案されたが、承認を得られず否決されたことが認められる。 前記の取締役会決議に基づく、被告Aを除く被告らの従業員としての給与(固定給600万円)の支給は、上記株主総会の議案否決を受け、名目を代えて同人らに同額の給与を得させようとするものであったということがで きるところ、定額の取締役報酬を否決した株主総会決議は、取締役の収入は、他の従業員と同様に、売上げに応じて変動するものであるべきであるとする考えに基づくものといえるから、定額の従業員給与支給を定めた上記取締役会決議は、先行する株主総会決議の趣旨に反するものであったというべきである。 ウしたがって、上記取締役会決議は無効というべきで、これに基づき、被告Aがその余の被告らに定額の固定給により給与を支払ったことは、根拠を欠くものであったと認められる。 (3)被告A及び被告Bの故意過失、不法行為の成否既に認定したところによれば、原告においては、被告Aを除く被告らに対し、 定額(年額600万円)の取締役報酬を支給する議案が否決され、その直後の取締役会で従業員給与を役員手当を含め月額50万円の定額(年額600万円)で支給することとし、被告Aが、原告を代表してこれを支給し、被告Bがこれを受領したのであって 給する議案が否決され、その直後の取締役会で従業員給与を役員手当を含め月額50万円の定額(年額600万円)で支給することとし、被告Aが、原告を代表してこれを支給し、被告Bがこれを受領したのであって、この経緯に照らせば、被告A及び被告Bには、少なくとも過失があったと認められる。そして、被告Aには不法行為、被告Bには被 告Aとの共同不法行為の成立が認められる。 (4)被告Bへの給与支払により生ずる損害額被告Bは、本来日給月給制の下で従業員としての給与を受け取るべきところ、これを超えて固定給(役員手当を除き月額45万円)を受領した部分が原告の損害となる。 被告Bに対する給与の支払額は、別表3の「報酬支払額」欄記載のとおりで ある(弁論の全趣旨)。被告Bが本来受け取るべき船頭配当額は、同表の「船頭配当額」欄記載のとおり(甲17の2)、役員手当の額は、同表の「役員手当」欄記載のとおり(弁論の全趣旨)、精勤・皆勤手当の額は、同表の「精勤・皆勤手当」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨)。これを前提として、被告Bに対する超過支払額を計算すると、同表記載のとおり、149万6810円 となり、同額が不法行為により原告が被った損害となる。 なお、被告A及び被告Bは、被告Bが令和2年1月分の給与(月額50万円)を受領していないと主張するが、証拠(甲15の14)によれば、同月分の給与支払の事実が認められ、これに疑いを入れるような証拠も存しないことに照らすと、上記被告らの主張は採用できない。 (5)争点2の結論ここまでの検討によれば、原告が、被告A及び被告Bに対し、被告Bの給与名目で授受された金員のうち149万6810円を不法行為に基づく損害賠償金として連帯支払を求め、これに対する不法行為後の日 ここまでの検討によれば、原告が、被告A及び被告Bに対し、被告Bの給与名目で授受された金員のうち149万6810円を不法行為に基づく損害賠償金として連帯支払を求め、これに対する不法行為後の日である訴状送達の日の翌日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の 支払を求める原告の請求は、全部理由がある。 3 争点3(被告C及び被告Dに対する報酬等支払の当否)について(1)被告C及び被告Dに支払われた固定給(各月額50万円)の法的性格ア役員手当(月額5万円)を、取締役が、在任中に受給できることについて、当事者間に争いがないことは、前記2(1)アと同様である。 イその余の月額45万円部分が、従業員としての給与を定額で支払う趣旨のものであることは、前記2(1)イと同様である。 (2)固定給支給の適法性ア原告は、前記第2の3(3)ア(ア)及び(イ)のとおり主張し、被告C及び被告Dは、同イのとおり、被告Aは同ウのとおり、各主張するので、以 下検討する。 イこの点については、前記2(2)イで検討したとおり、定額の従業員給与支給を定めた取締役会決議は、先行する株主総会決議の趣旨に反するものであったというべきである。 被告C及び被告Dは、前記第2の3(3)イ(ア)aのとおり主張するところ、いかに固定給として設定された額の水準が、従前の給与と大差ないも のであったとしても、固定給であれば売上げの減少によっても給与額が減少しないという利点を否定することはできないから、年額600万円の取締役報酬を支払うことを否決した株主総会の趣旨に反するものといわざるを得ない。被告C及び被告Dの上記主張は採用することができない。 ウしたがって、上記取締 ることはできないから、年額600万円の取締役報酬を支払うことを否決した株主総会の趣旨に反するものといわざるを得ない。被告C及び被告Dの上記主張は採用することができない。 ウしたがって、上記取締役会決議は無効というべきで、これに基づき、被告 Aがその余の被告らに定額の固定給により給与を支払ったことは、根拠を欠くものであったと認められる。 (3)被告A、被告C及び被告Dの故意過失、不法行為の成否既に認定したところによれば、原告においては、被告Aを除く被告らに対し、定額(年額600万円)の取締役報酬を支給する議案が否決され、その直後の 取締役会で従業員給与を役員手当を含め月額50万円の定額(年額600万円)で支給することとし、被告Aが、原告を代表してこれを支給し、被告C及び被告Dがこれを受領したのであって、この経緯に照らせば、被告A並びに被告C及び被告Dには、少なくとも過失があったと認められる。そして、被告Aには不法行為、被告C及び被告Dには、それぞれ被告Aとの共同不法行為の成立が 認められる。 (4)被告C及び被告Dへの給与支払により生ずる損害額ア被告C及び被告Dは、本来日給月給制の下で従業員としての給与を受け取るべきところ、これを超えて固定給(役員手当を除き月額45万円)を受領した部分が原告の損害となる。 イ被告Cに対する給与の支払額は、別表2の「報酬支払額」欄記載のとおり である(争いがない)。被告Cが本来受け取るべき船頭配当額は、同表の「船頭配当額」欄記載のとおり(甲17の1)、役員手当の額は、同表の「役員手当」欄記載のとおり(争いがない)、精勤・皆勤手当の額は、同表の「精勤・皆勤手当」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨)。これを前提として、被告Cに対する超過支 の1)、役員手当の額は、同表の「役員手当」欄記載のとおり(争いがない)、精勤・皆勤手当の額は、同表の「精勤・皆勤手当」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨)。これを前提として、被告Cに対する超過支払額を計算すると、同表記載のとおり、197万17 70円となる。 さらに、被告Cに対しては、平成30年12月から令和元年11月までの期間に相当する賞与額が25万5600円となること(出勤日数284日、日額900円)について、当事者間に争いがないから、同額を上記「超過支払額」から控除すべきであり、これを控除した後の171万6170円が、 不法行為により原告が被った損害となる。 ウ被告Dに対する給与の支払額は、別表5の「報酬支払額」欄記載のとおりである(争いがない)。被告Dが本来受け取るべき船頭配当額は、同表の「船頭配当額」欄記載のとおり(甲17の4)、役員手当の額は、同表の「役員手当」欄記載のとおり(争いがない)、精勤・皆勤手当の額は、同表の「精 勤・皆勤手当」欄記載のとおり(弁論の全趣旨)、出張手当の額は、同表の「出張手当」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨)。これを前提として、被告Dに対する超過支払額を計算すると、同表記載のとおり、182万9480円となる。 さらに、被告Dに対しては、平成30年12月から令和元年11月までの 期間に相当する賞与額が27万0900円となること(出勤日数301日、日額900円)について、当事者間に争いがないから、同額を上記「超過支払額」から控除すべきであり、これを控除した後の155万8580円が、不法行為により原告が被った損害となる。 エ被告C及び被告Dは、歩合給により両被告の給与を計算し直すにしても、 過去の平均給与額を算定すべきと主張する 除した後の155万8580円が、不法行為により原告が被った損害となる。 エ被告C及び被告Dは、歩合給により両被告の給与を計算し直すにしても、 過去の平均給与額を算定すべきと主張するが、上記の損害の考え方に照らし、 採用できない。 また、残業手当(分残)及び臨時の業務手当(使役)については、その支給に相当する労務の存在を、本件全証拠によっても認めることができないから、それらの額を控除することはできない。 (5)争点3の結論 ここまでの検討によれば、原告が、被告A及び被告Cに対し、被告Cの給与名目で授受された金員のうち171万6170円を不法行為に基づく損害賠償金として連帯支払を求め、これに対する不法行為後の日である訴状送達の日の翌日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は、全部理由がある。 また、原告が、被告A及び被告Dに対し、被告Dの給与名目で授受された金員のうち155万8580円を不法行為に基づく損害賠償金として連帯支払を求め、これに対する不法行為後の日である訴状送達の日の翌日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の請求は、全部理由がある。 4 争点4(反訴請求における未払給与、退職慰労金請求等の当否)について(1)被告Cの請求ア被告Cの請求について、費目ごとの認定は、以下のとおりである。 (ア)基本給 10万9290円(争いがない)(イ)残業代 0円(証拠がない) (ウ)皆勤手当 1万円(争いがない)(エ)役員手当 5万円(争いがない)(オ)被告Cの退職慰労金a 船頭分勤続1年につき1万円のところ、勤続6年間に相当する6万円の限度 ) (ウ)皆勤手当 1万円(争いがない)(エ)役員手当 5万円(争いがない)(オ)被告Cの退職慰労金a 船頭分勤続1年につき1万円のところ、勤続6年間に相当する6万円の限度 では争いがない。 なお、技術習得期間については、内規によれば、出勤と認められず(甲21)、稼働期間に算入してよいかどうか証拠上明らかでなく、その余の1年分(1万円)については、証拠がないものとして、認定しない。 b 取締役分1期2年につき5万円のところ、3期6年分につき、15万円の限度 で認める。 内規(甲21)の規定によれば、取締役の退職慰労金の算定は、任期を基準としているから、3期6年分に限って認めることとし、その余は認定しない。 イ認容額 上記アによれば、被告Cの請求について、その認容額は、37万9290円となる。 ウ支払期日(遅滞に陥る日)被告Cが、取締役を辞任したのは令和2年4月16日であり、従業員としても4月17日の勤務を最後に出勤していないから(乙7)、遅くとも令和 2年4月20日までには退職したものと認められる。 本件全証拠によっても、原告における給与支給日の明確な定めは見当たらないが、遅くとも締め日(20日)の属する当該月内に支払われているから(甲25の1~5)、当月末日を支給日と認定することとし、退職慰労金の支給日についても、賃金に準じて、20日締め当月末日支払を要するものと 認定する。 エ被告Cの反訴請求についての結論被告Cの反訴請求は、37万9290円及びこれに対する令和2年5月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。 (2)被告Dの請求 90円及びこれに対する令和2年5月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。 (2)被告Dの請求 ア被告Dの請求について、費目ごとの認定は、以下のとおりである。 (ア)基本給 10万4820円(争いがない)(イ)残業・使役手当 0円(証拠がない)(ウ)精勤手当 5000円(争いがない)(エ)役員手当 5万円(争いがない) (オ)被告Dの退職慰労金a 船頭分 6年分6万円(争いがない)b 取締役分 2期4年分 10万円内規(甲21)の規定によれば、取締役の退職慰労金の算定は、任期を基準としていることは、上記(1)ア(オ)bのとおりであり、被告 Dについては、取締役の退職慰労金の額は、上記の限度で算定されることとなる。 イ認容額上記アによれば、被告Dの請求について、その認容額は、31万9820円となる。 ウ支払期日(遅滞に陥る日)この点については、上記(1)ウと同様である。 エ被告Dの反訴請求についての結論被告Dの反訴請求は、31万9820円及びこれに対する令和2年5月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の 支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。 第4 結論 1 各請求について認容、棄却の判断以上によれば、本件各請求の認容・棄却の結論は、以下のとおりである。 (1)本訴 ア被告Aに対する前記第1の1(1)の請求(被告A自身が受領した報酬に 関するもの)については、不法行為に基づく損害賠償請求と、これに対する不法行為後の日(被告Aに対する訴状送達の日の翌日)である令和2年1 記第1の1(1)の請求(被告A自身が受領した報酬に 関するもの)については、不法行為に基づく損害賠償請求と、これに対する不法行為後の日(被告Aに対する訴状送達の日の翌日)である令和2年10月9日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求を全部認容する。 イ被告Aに対する前記第1の1(2)から(4)までの請求(被告A以外の 被告らに支払われた報酬等に関するもの)については、いずれも不法行為に基づく損害賠償請求と、これに対する不法行為後の日(被告Aに対する訴状送達の日の翌日)である令和2年10月9日から支払済みまで前同様の遅延損害金請求を全部認容する。 ウ被告Bに対する前記第1の1(2)の請求(被告Bに支払われた報酬等に 関するもの)については、不法行為に基づく損害賠償請求と、これに対する不法行為後の日(被告Bに対する訴状送達の日の翌日)である令和2年10月15日から支払済みまで前同様の遅延損害金請求を全部認容する。 エ被告Cに対する前記第1の1(3)の請求(被告Cに支払われた報酬等に関するもの)については、不法行為に基づく損害賠償請求と、これに対する 不法行為後の日(被告Cに対する訴状送達の日の翌日)である令和2年10月20日から支払済みまで前同様の遅延損害金請求を全部認容する。 オ被告Dに対する前記第1の1(4)の請求(被告Dに支払われた報酬等に関するもの)については、不法行為に基づく損害賠償請求と、これに対する不法行為後の日(被告Dに対する訴状送達の日の翌日)である令和2年10 月15日から支払済みまで前同様の遅延損害金請求を全部認容する。 (2)反訴ア被告Cの請求被告Cの反訴請求は、37万9290円及びこれに対する履行期(賃金支払期)の翌日 月15日から支払済みまで前同様の遅延損害金請求を全部認容する。 (2)反訴ア被告Cの請求被告Cの反訴請求は、37万9290円及びこれに対する履行期(賃金支払期)の翌日である令和2年5月1日から支払済みまで民法所定の年3パー セントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求 を棄却する。 イ被告Dの請求被告Dの反訴請求は、31万9820円及びこれに対する履行期(賃金支払期)の翌日である令和2年5月1日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求 を棄却する。 2 結語よって、主文のとおり判決する(別表に関し、別表4は本判決では欠番としており、この後に添付していない。)。被告C及び被告Dの求める仮執行免脱宣言は、相当でないから付さないこととする。 京都地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官 齋藤聡 裁判官 磯邉裕子 裁判官 堀田康介 申し訳ありませんが、提供されたテキストが不完全であるため、整形を行うことができません。完全なテキストを提供していただければ、整形を行います。

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