令和1(ワ)28852 受信料請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年2月17日 東京地方裁判所
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判決文本文11,020 文字)

令和3年2月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官受信料請求事件口頭弁論終結日令和2年12月7日判決 主文 1 被告は,原告に対し,4560円を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 主文と同旨第2 事案の概要本件は,放送法に基づいて設立された法人である原告が,被告に対し,放送受信契約に基づき,令和元年8月分及び同年9月分の放送受信料合計4560円の支払を求める事案である。 被告は,同支払義務の発生自体は争っておらず,原告との間の別件訴訟において取得した訴訟費用償還請求権との訴訟上の相殺の抗弁を主張し,請求の棄却を求めている。 1 前提事実(争いのない事実及び後掲証拠等により容易に認められる事実。なお,証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。枝番号を記載しない書 証は全ての枝番号を含む。)⑴ 当事者ア原告は,放送法16条に基づいて設立された法人である。 イ被告は,参議院議員であった者である。 ⑵ 放送受信契約の締結等 ア被告は,参議院議員として東京都千代田区永田町2丁目1-1参議院議 員会館403号室を使用していたところ,令和元年8月1日,衛星系によるテレビジョン放送を受信できるテレビジョン受信機を上記室内に設置した上,同月8日付け「衛星の放送受信契約書」と題する書面(甲4)を原告に提出して,原告との間で,受信機の設置場所を上記室内,受信機設置日を同月1日,契約種別を衛星契約とし,日本放送協会放送受信規約(甲 3。なお,平成31年4月1日から令和元年9月30日まで施行されてい して,原告との間で,受信機の設置場所を上記室内,受信機設置日を同月1日,契約種別を衛星契約とし,日本放送協会放送受信規約(甲 3。なお,平成31年4月1日から令和元年9月30日まで施行されていたもの。衛星放送の都度払いの場合の受信料は月額2280円であり,期ごとに一括して支払うものとされている。)を契約の内容とする放送受信契約を締結する旨の意思表示をし,これを受けて,原告は,同年8月28日付け「ご連絡」と題する書面(甲5)を被告に送付し,以上により,原 告と被告との間で,令和元年8月1日付けで放送受信契約が成立した。 イ被告は,上記アの放送受信契約に基づき,原告に対して令和元年第3期(令和元年8月分及び同年9月分)の放送受信料合計4560円を同年9月末日までに支払う義務を負った(以下,上記金員に係る原告の被告に対する支払請求権を「本訴請求債権」という。)。 ⑶ 原告及び被告による相殺の意思表示等ア原告は,平成29年,被告に対して有する訴訟費用償還請求権(本案:原審東京簡易裁判所(本訴事件(移送前)),東京地方裁判所平成27年第20896号(本訴事件(移送後)),同庁(反訴事件) 控訴審東京高 )について,訴訟費用額確定処分の申立てをし,東京地方裁判所裁判所書記官は,平成29年11月13日,原告が被告に対して有する訴訟費用償還請求権の額を4万8606円と定める旨の訴訟費用額確定処分をした(以下,上記の請求権を「原告訴訟費用償還請求権」という。)。 (甲12) イ被告は,平成28年3月31日,東京地方裁判所に対し,本件訴訟の原告を被告として同事件の訴え提起手数料として1万4000円を納付した。(乙3の1)東京地方裁判所は,平成30年3月5日,上記訴訟につき, 28年3月31日,東京地方裁判所に対し,本件訴訟の原告を被告として同事件の訴え提起手数料として1万4000円を納付した。(乙3の1)東京地方裁判所は,平成30年3月5日,上記訴訟につき,本件訴訟の原告に対して訴訟費用の負担を命じる旨の裁判を含む判決を言い渡し,同 判決は同月20日に確定した(以下,上記の訴訟費用負担の裁判によって生じた訴訟費用償還請求権を「被告訴訟費用償還請求権」という。)。 (乙1,2)ウ被告は,令和2年8月28日,当裁判所に対して同日付け(本訴)第1準備書面(以下「8月28日付け被告準備書面」という。)を提出し,原 告訴訟代理人も,同日に同書面をファクシミリにより受領した。 同書面には,被告訴訟費用償還請求権の金額は貼用印紙代である1万4000円を下らないとして,同請求権と本訴請求債権とを対当額で相殺する旨が記載されている。(当裁判所に顕著な事実)エ原告は,同年9月5日,同月4日付け通知書(甲13)により,被告に 対し,原告訴訟費用償還請求権と被告訴訟費用償還請求権とを対当額で相殺する旨の意思表示等をした。 なお,原告は,後記本件訴訟費用額確定処分に係る申立事件の申立人代理人(本件の被告訴訟代理人でもある髙橋裕樹弁護士及び坪野谷修平弁護士)に対しても,同月5日到達の通知書(甲15)により,上記通知書と 同内容の通知をした。 オ被告は,令和2年,被告訴訟費用償還請求権に係る訴訟費用額確定処分,東京地方裁判所裁判所書記官は,同年9月16日,その額を3万9688円と定める旨の訴訟費用額確定処分(以下「本件訴訟費用額確定処分」という。)をし, 同月18日,原告に対してその告知をした。(甲19,乙4) カ被告は,同月23日,当裁判所に対して同月19日付 訴訟費用額確定処分(以下「本件訴訟費用額確定処分」という。)をし, 同月18日,原告に対してその告知をした。(甲19,乙4) カ被告は,同月23日,当裁判所に対して同月19日付け(本訴)第2準備書面(以下「9月19日付け被告準備書面」という。)を提出し,原告訴訟代理人は同月19日に同書面をファクシミリにより受領した。 同書面には,本件訴訟費用額確定処分を受けて,改めて,予備的に,被告訴訟費用償還請求権と本訴請求債権とを対当額で相殺する旨が記載され ている。(当裁判所に顕著な事実)キ原告は,同月24日,東京地方裁判所に対し,本件訴訟費用額確定処分に対する異議を申し立てた。 ク原告は,同月26日,同月25日付け通知書(甲19)により,被告に対し,原告訴訟費用償還請求権と被告訴訟費用償還請求権とを対当額で相 殺する旨の意思表示をした。 なお,原告は,上記エと同様に,髙橋裕樹弁護士及び坪野谷修平弁護士に対しても,同月28日到達の通知書(甲23)により,上記通知書と同内容の通知をした。 ケ原告は,同年10月1日,上記キの本件訴訟費用額確定処分に対する異 議申立てを取り下げた。(甲25,弁論の全趣旨)コ原告は,同月3日,同月1日付け通知書(甲25)により,被告に対し,原告訴訟費用償還請求権と被告訴訟費用請求権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。 なお,原告は,上記エと同様に,髙橋裕樹弁護士及び坪野谷修平弁護士 に対しても,同月2日到達の通知書(甲29)により,上記通知書と同内容の通知をした。 サ被告は,同月12日,本件訴訟の第2回口頭弁論期日において,8月28日付け被告準備書面及び9月19日付け被告準備書面を陳述した。(当裁判所に顕著な事実) 通知をした。 サ被告は,同月12日,本件訴訟の第2回口頭弁論期日において,8月28日付け被告準備書面及び9月19日付け被告準備書面を陳述した。(当裁判所に顕著な事実) 2 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は,本訴請求債権と被告訴訟費用償還請求権とを相殺する旨の被告の訴訟上の相殺の抗弁が認められるか否かである。 ⑴ 被告の主張ア主位的主張(8月28日付け被告準備書面における相殺の意思表示) 被告は,8月28日付け被告準備書面において,被告訴訟費用償還請求権を自働債権,本訴請求債権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をした。 したがって,本訴請求債権は上記相殺により消滅したのであるから,原告の請求は認められない。 後記⑵の原告の主張について原告は,後記昭和2年大審院判決を引用して,訴訟費用額確定処分がされる前の時点で行われた,訴訟費用償還請求権を自働債権とする相殺の意思表示は無効である旨主張する。 しかし,同判決は,本件のように,訴訟費用償還請求権を自働債権と する訴訟上の相殺の意思表示をする場合において,相殺の意思表示を行った時点では訴訟費用額確定処分がされていなかったが,口頭弁論終結時までに同処分が行われ,相殺適状となったときに,上記相殺の意思表示が訴訟上有効か否かについて判断するものではなく,本件はその射程外である。 訴訟上の相殺の意思表示がされた場合の相殺の効果は,その時点で直ちに生じるものではなく,裁判所が訴求債権の存在を認める判断をした時点で,相殺適状時に遡って発生する停止条件付きの意思表示と解すべきであるところ,本件では既に本件訴訟費用額確定処分がされ,当事者に対するその告知もされているのであるから,8月28日付 る判断をした時点で,相殺適状時に遡って発生する停止条件付きの意思表示と解すべきであるところ,本件では既に本件訴訟費用額確定処分がされ,当事者に対するその告知もされているのであるから,8月28日付け被告準備 書面における相殺の意思表示は有効なものと解すべきである。 イ予備的主張(9月19日付け被告準備書面における相殺の意思表示)上記アの主張が認められないとしても,被告は,9月19日付け被告準備書面において,同日の時点で既に本件訴訟費用額確定処分により債権額が定まっていた被告訴訟費用償還請求権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をした。 なお,原告は,令和2年9月26日又は同年10月2日に原告訴訟費用償還請求権と相殺したことにより被告訴訟費用償還請求権は消滅しているなどと主張するが,9月19日付け被告準備書面が原告訴訟代理人に到達した時点(同月19日)で相殺の意思表示が到達し,これにより被告訴訟費用償還請求権は既に消滅しているのであるから,原告の主張 は失当である。 したがって,本訴請求債権は上記相殺により消滅したのであるから,原告の請求は認められない。 後記⑵の原告の主張アについてa 原告は,訴訟費用償還請求権の弁済期は,訴訟費用額確定処分が発 出された後に異議申立のための1週間の不変期間を経過するまで,又は,異議申立てによる訴訟費用額の訂正等が行われるまでは到来しないから,9月19日付け被告準備書面による相殺の意思表示がされた時点では被告訴訟費用償還請求権の弁済期は未だ到来していない旨主張するが,訴訟費用額確定処分の弁済期は,同処分の発出時,あるい は,遅くとも同処分の告知時と解すべきである。 このように解釈しなけ では被告訴訟費用償還請求権の弁済期は未だ到来していない旨主張するが,訴訟費用額確定処分の弁済期は,同処分の発出時,あるい は,遅くとも同処分の告知時と解すべきである。 このように解釈しなければ,訴訟費用額確定処分がなされ,具体的な訴訟費用償還請求権の債権額が定まったにもかかわらず,弁済期は未だに到来せず,消滅時効の起算点となる権利行使可能な状態にならないこととなってしまい,訴訟費用額確定処分の告知がされた時点を 弁済期とし,消滅時効の起算点である権利行使時であると判断した, 後記昭和2年大審院判決と矛盾することとなる。 b 本件訴訟費用額確定処分は,令和2年9月16日に発出され,同月18日には,相手方である原告に告知されているから,遅くとも同日時点で被告訴訟費用償還請求権の弁済期は到来している。 したがって,被告が9月19日付け被告準備書面による相殺の意思 表示をした時点で,被告訴訟費用償還請求権(自働債権)と本訴請求債権(受働債権)は相殺適状にあったといえるため,被告による上記の相殺の意思表示は有効である。 ウ原告の相殺の再抗弁に対する反論相殺の再抗弁ⅠないしⅢ(後記⑵の原告の主張イ)につ いて訴訟上の相殺の抗弁に対して訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは許されないものであるところ(最高裁判所平成号同10年4月30日第一小法廷判決・民集52巻3号930頁。以下「平成10年最高裁判決」という。),本件訴訟においては,原告 による訴訟外での相殺の主張が,相殺の要件を充たしているかどうか,特に,いつの時点において相殺適状に至ったのかが争われており,訴訟上の相殺と同様,当事者の法律関係を不安定にし,いたずらに審理の錯雑を招く状態に陥っているといえ,実質的に訴訟上におい いるかどうか,特に,いつの時点において相殺適状に至ったのかが争われており,訴訟上の相殺と同様,当事者の法律関係を不安定にし,いたずらに審理の錯雑を招く状態に陥っているといえ,実質的に訴訟上においてなされた相殺の主張と何ら変わりがない。 したがって,平成10年最高裁判決の趣旨に照らし,原告が主張する訴訟外の相殺の再抗弁はいずれも不適法なものというべきである。 相殺の再抗弁Ⅰ(後記⑵の原告の主張イ)について原告は,訴訟費用額確定処分がされる前の訴訟費用償還請求権であっても,債務者が期限の利益を放棄した上で弁済をすることは,債権者 にとって不利益となるものではなく,当然に可能というべきであるか ら,同請求権を受働債権と相殺をすることも許容されると主張する。 しかしながら,訴訟費用償還請求権は,訴訟費用の負担に関する裁判がなされてから訴訟費用額確定処分がなされるまでの間は,その請求権の数額が明らかではなく,裁判所書記官による訴訟費用額確定処分の発出を条件として,一定の数額が明らかとなる条件付き債権である。 それゆえ,訴訟費用額確定処分を経るまでは条件成就をせず,権利として行使可能な状態に至ったとはいえないため,弁済期という時期も観念することができない。後記昭和2年大審院判決において判示されているとおり,訴訟費用償還請求権は,訴訟費用額確定処分が発出されるまでの間は,債務者が弁済できず相殺できないのと同様に,債権 者としても,債務者から提供された弁済額の多寡や適否も判断できないため弁済として受領することができないのであり,債権額が確定している期限未到来の債権に係る期限の利益を放棄することとは性質が明らかに異なる。 したがって,被告訴訟費用償還請求権を受働債権とする令和2年9月 ることができないのであり,債権額が確定している期限未到来の債権に係る期限の利益を放棄することとは性質が明らかに異なる。 したがって,被告訴訟費用償還請求権を受働債権とする令和2年9月 5日の原告による相殺の意思表示は,相殺適状の要件を満たさない無効なものというべきである。 ⑵ 原告の主張ア被告の相殺の抗弁は相殺適状の要件が欠けるため無効であること け被告準備書面における相殺の意思表 示)について訴訟費用償還請求権は,訴訟費用額確定処分を経ない間は,その金額が不明であって権利者もその弁済を求めることができないのと同時に,相手方も弁済をなすことができない状態にあり,同処分を経て初めて弁済期が到来するのであるから(大審院判決昭和2年 年12月3日・評論17巻民訴313頁(以下「昭和2年大審院判決」 という。)参照),訴訟費用額確定処分がされていない訴訟費用償還請求権を自働債権としてなされた相殺の意思表示は,相殺適状の要件を欠く無効なものというべきである。 8月28日付け被告準備書面は令和2年8月28日に原告訴訟代理人に到達したが,同時点において,被告訴訟費用償還請求権については, 未だ訴訟費用額確定処分がされておらず,弁済期が到来していなかった。 したがって,8月28日付け被告準備書面における被告の相殺の意思表示は,相殺適状にない状態でされたものであるから,無効であり,実体法上何らの効果を有するものではなく,訴訟上の主張としても失当である。 被告の主張イ(9月19日付け被告準備書面における相殺の意思表示)について被告訴訟費用償還請求権については,令和2年9月16日に本件訴訟費用額確定処分がされ,同月18日に原告にその告知がされ,原告は,同月24日 告準備書面における相殺の意思表示)について被告訴訟費用償還請求権については,令和2年9月16日に本件訴訟費用額確定処分がされ,同月18日に原告にその告知がされ,原告は,同月24日,同処分に対する異議を申し立てた。 訴訟費用額確定処分に対する異議申立ては,告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければならないと定められており(民事訴訟法71条4項),異議申立ては,執行停止の効力を有する(同条5項)。そのため,原告が,本件訴訟費用額確定処分の告知を受けた日から1週間の不変期間が経過するまで同処分は確定しておらず,また,原告の異議 申立てによりその後も効力が停止されていることは条文上明らかである。 そうすると,被告が9月19日付け被告準備書面において行った相殺の意思表示は,本件訴訟費用額確定処分が確定しない間になされたものであって,自働債権である被告訴訟費用償還請求権が弁済期にない状態の下でされたもの(昭和2年大審院判決参照)というべきであるから, 相殺適状の要件を欠き,無効である。 イ被告訴訟費用償還請求権(被告が相殺の抗弁に供した自働債権)が原告による相殺により消滅したこと(訴訟外の相殺の再抗弁) 令和2年9月5日の相殺の意思表示による消滅(相殺の再抗弁Ⅰ)a 原告は,令和2年9月5日,被告及び被告訴訟代理人(本件訴訟費用額確定処分に係る申立事件の申立人代理人)に対し,被告訴訟費用 償還請求権の期限の利益を放棄した上,原告訴訟費用償還請求権を自働債権,被告訴訟費用償還請求権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をした。 b なお,原告による上記aの相殺の意思表示が被告及び被告訴訟代理人(本件訴訟費用額確定処分に係る申立事件の申立人代理人)に到達 償還請求権を受働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をした。 b なお,原告による上記aの相殺の意思表示が被告及び被告訴訟代理人(本件訴訟費用額確定処分に係る申立事件の申立人代理人)に到達 した時点では,被告訴訟費用償還請求権は,未だ訴訟費用額確定処分を経ておらず,昭和2年大審院判決の判示からすれば,弁済期が到来していない。 しかし,同判決は,訴訟費用額確定処分を経るまでは金額が不明であって権利者もその弁済を求めることができないのと同時に,債務者 も弁済ができない状態にあることに鑑み,債務者を不当に害することのないようにするため訴訟費用額確定処分を経て初めて弁済期が到来すると判示したものと解すべきであるから,債務者が期限の利益を放棄し,自らすすんで債権者に弁済することは当然可能と解すべきであって,このように解しても,債権者には何らの不利益も生じない。 したがって,被告訴訟費用償還請求権の期限の利益を放棄した上で行った上記の原告の相殺の意思表示は,相殺適状の下でされた,有効なものと解すべきである。 c よって,被告が相殺の抗弁に供した自働債権(被告訴訟費用償還請求権)は上記の訴訟外の相殺によって既に消滅しているから,被告に よる相殺の抗弁はいずれも理由がない。 令和2年9月26日の相殺の意思表示による消滅(相殺の再抗弁Ⅱ)意思表示をした。 原告は,本件訴訟費用額確定処分に対する異議申立てを同年10月1日付け取下書により取り下げており,同処分は,同処分の告知を原告 が受けた日から1週間の不変期間の満了日である同年9月25日の経過時に遡って確定し,被告訴訟費用償還請求権に対する弁済が可能な状態となった。 したがって,同月26日の相殺により被告訴訟費用償還請 が受けた日から1週間の不変期間の満了日である同年9月25日の経過時に遡って確定し,被告訴訟費用償還請求権に対する弁済が可能な状態となった。 したがって,同月26日の相殺により被告訴訟費用償還請求権は消滅しているため,被告の相殺の抗弁はいずれも理由がない。 令和2年10月2日の相殺の意思表示による消滅(相殺の再抗弁Ⅲ)原告は,令和2年10月2日に,被告訴訟代理人(本件訴訟費用額確定処分に係る申立事件の申立人代理人)意思表示をした。 ことができず,同処分に対する異議申立ての取下げが行われた同月1日に確定すると解したとしても,同月2日に原告がした相殺の意思表示は,相殺適状の下でされたものである。 したがって,被告訴訟費用償還請求権は,同月2日に原告がした訴訟外の相殺の意思表示により消滅しているため,被告の相殺の抗弁はい ずれも理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 被告は,本訴請求債権の発生を認めた上で同請求権と被告訴訟費用償還請求権との訴訟上の相殺により本訴請求債権が消滅したと主張するのに対し,原告は,被告の相殺の抗弁は相殺適状の要件が欠けるため無効であり,また被告訴 訟費用償還請求権は原告訴訟費用償還請求権との訴訟外の相殺により既に消滅 しているとの再抗弁を主張して被告の抗弁を争うことから,以下検討する。 2 被告は,8月28日付け被告準備書面及び9月19日付け被告準備書面において,それぞれ,被告訴訟費用償還請求権と本訴請求債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をするものであるところ,これらの訴訟上の相殺の意思表示は裁判所に対してされるべきものであるから(大審院判決昭和9年 同年5月22日・民集13巻11号799頁参照),被告は,令和2年10月12日の本件 のであるところ,これらの訴訟上の相殺の意思表示は裁判所に対してされるべきものであるから(大審院判決昭和9年 同年5月22日・民集13巻11号799頁参照),被告は,令和2年10月12日の本件訴訟の第2回口頭弁論期日において上記各準備書面を陳述したことにより,上記の各相殺の意思表示をしたものと認められる。 もっとも,訴訟上の相殺の意思表示は,相殺の意思表示がされたことにより確定的にその効果を生ずるものではなく,当該訴訟において裁判所により相殺 の判断がされることを停止条件として実体法上の相殺の効果が生ずるものであるから,口頭弁論の終結時までに訴訟上の相殺に供した債権が消滅した場合には,当該相殺の意思表示に基づく相殺の抗弁は理由のないものとなる。 他方,訴訟上の相殺の意思表示が相手方に対してされても実体的な効果が生じるものではなく,口頭弁論終結時を基準とする裁判所の判断を停止条件とし て相殺の抗弁としての効力が生じるという性質に照らすと,その相殺に供される債権は,口頭弁論終結時までに債権額が確定し,かつ弁済期が到来して相殺適状の要件を備えれば足りると解されるから,被告が本件訴訟費用額確定処分の告知前やその確定前の被告訴訟費用償還請求権を自働債権として訴訟上の相殺の抗弁を主張したとしてもそれだけを理由に無効になることはない(この点 で,被告の相殺の抗弁は相殺適状の要件が欠けるため無効である旨の原告の主張は理由がない)。また,被告の予備的主張に係る相殺の抗弁は,主位的主張に係る相殺の抗弁における自働債権と同一の債権を相殺に供するものであって,その債権額と弁済期到来を口頭弁論終結時までに具体的に主張したものと認められるから,上記の各抗弁は訴訟上の相殺の抗弁としては同一のものと解され る。 3 そこ るものであって,その債権額と弁済期到来を口頭弁論終結時までに具体的に主張したものと認められるから,上記の各抗弁は訴訟上の相殺の抗弁としては同一のものと解され る。 3 そこで次に,原告による訴訟外の相殺の意思表示によって被告訴訟費用償還請求権が消滅したか否かについてみると,訴訟費用償還請求権は裁判所書記官による訴訟費用額確定処分が当事者に告知されることによってその効力を生じるのであって,同処分に対する異議の申立ては執行停止の効力を有するにすぎないから(民事訴訟法71条1項,3項,5項),当該訴訟費用償還請求権は, 同処分が当事者に告知された時点で,債権額が確定し,かつ弁済期も到来した債権としての性格を備えるに至り,権利行使ないし債務消滅行為をすることが可能となるものと解される(昭和2年大審院判決参照)。 本件においては,本件訴訟費用額確定処分は,令和2年9月18日に相手方たる原告に対する告知がされ,申立人たる被告に対しては,遅くとも,同月1 9日(同処分の内容が記載された9月19日付け被告準備書面を原告訴訟代理人が受領した日)には告知がされたものと認められるから,少なくとも同日以降は,被告訴訟費用償還請求権は債権消滅行為である相殺における受働債権としての適格を有することとなる。 そうすると,原告が同月26日にした,原告訴訟費用償還請求権(その額は 4万8606円)を自働債権とし,被告訴訟費用償還請求権(その額は3万9688円)を受働債権としてその対当額で相殺する旨の被告に対する意思表示(相殺の再抗弁Ⅱ)は有効なものということができ,同意思表示により,被告訴訟費用償還請求権は全て消滅したものと認められる。 したがって,被告が訴訟上の相殺に供した自働債権は本件訴訟の口頭弁論終 再抗弁Ⅱ)は有効なものということができ,同意思表示により,被告訴訟費用償還請求権は全て消滅したものと認められる。 したがって,被告が訴訟上の相殺に供した自働債権は本件訴訟の口頭弁論終 結時には既に消滅しているのであって,裁判所が被告の訴訟上の相殺の抗弁を判断する際には存在しないのであるから,同抗弁は理由がないというべきである。 4 これに対し,被告は,原告による訴訟外の相殺の再抗弁の主張は,平成10年最高裁判決の趣旨に照らして不適法である旨主張するが,訴訟外において相 殺の意思表示がされた場合には,相殺の要件を満たしている限り,これにより 確定的に相殺の効果が発生するのであるから,訴訟上の相殺の抗弁に対して訴訟外の相殺を再抗弁として主張したとしても,仮定の上に仮定が積み重ねられて審理の錯雑を招くという事態に陥るおそれはなく,平成10年最高裁判決も同旨であることが明らかである。 したがって,原告による訴訟外の相殺の再抗弁の主張は不適法なものではな く,被告の主張は採用の限りではない。 5 以上の次第であり,原告の相殺の再抗弁Ⅱは理由があり,被告の相殺の抗弁は理由がない。 第4 結論よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとお り判決する。 東京地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官大嶋洋志 裁判官齊藤学 裁判官島 﨑 乃奈 乃奈

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