令和7年12月11日宣告令和7年(わ)第249号殺人被告事件 主文 被告人を懲役2年6月に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和7年1月11日頃から同月12日頃までの間、滋賀県草津市(住所省略)当時の被告人方において、夫であるA(当時76歳)に対し、殺意をもって、その首に紐を巻き付けて絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害したものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)被告人は、認知症の被害者からしつこく呼ばれたことがきっかけとなり、その場にあった紐で被害者の首を絞め、被害者がやめてほしいと苦しさを訴えるなどして抵抗しても、その抵抗を排し、被害者の右甲状軟骨が折れるほどの力で首を絞めて被害者を殺害した。犯行態様は被害者に多大な肉体的、精神的苦痛を与える残忍なものといえる。被告人が二度にわたって被害者の首を絞めた上、更にその首にこたつの天板を乗せるまでし、被害者を確実に殺害しようと執拗に行動している様子からは、被告人が強固な殺意を有していたことも見て取れる。被害者が多大な苦痛を感じながら死亡した結果が重大であることはいうまでもない。 犯行に至る経緯等をみると、被告人は、本件当時、脳出血により左半身に麻痺の症状が残る状態で、被害者の食事の用意や排泄物の処理等の介護を担っていたが、同居する長男や次女の協力はあまり得られず、経済的な面でも、年金を受給していながら金銭管理を委ねていた次女からの金銭的支援も十分には受けられていなかったのであるから、被告人にとって介護の負担が重いものであったことは想像に難く ない。特に、令和6年12月頃からは被害者の認知症の症状が いた次女からの金銭的支援も十分には受けられていなかったのであるから、被告人にとって介護の負担が重いものであったことは想像に難く ない。特に、令和6年12月頃からは被害者の認知症の症状が急激に悪化し、被害者が二度にわたって深夜に徘徊して警察沙汰になるなど介護の負担が増しており、被告人が今後も続くであろう被害者の介護のことを考えて追い詰められて苦しい精神状態に陥っていたというのも無理からぬことである。もともと、被告人は長年にわたる被害者との結婚生活において、被害者の高圧的な態度や被告人ら家族の心情を顧みない言動等に耐え、その胸の内に被害者に対する嫌悪感をため込んでいたところ、本件頃には前記のような精神状態も相まって嫌悪感を更に募らせ、被害者にいなくなってほしいとさえ思うようになり、最終的には被告人が抱える軽度認知障害の影響もあってその思いを抑えきれずに被害者の殺害に及んでしまっている。こうした一連の経緯等には被告人に同情できるところも多くある。他方で、本件当時、被告人の周りにも助けを求めれば手を差し伸べてくれる人がいなかったわけではなく、客観的にみて、被告人がおよそ誰の手も借りられないといえるほど孤立無援の状況にあったとまでは認められない。被告人が周りに助けを求めることなく思い詰めたのは、被告人の元来の性格傾向によるところも大きく、軽度認知障害の影響も限定的であった。そうすると、被告人は他に取り得る手段がありながらこれを十分に模索することなく、被害者に対する長年の嫌悪感もあってその殺害という最悪の手段を選んでしまったともいえるのであって、経緯等の点を被告人に有利に考慮するにも自ずと限度がある。 以上の事情を前提に同種事案の量刑傾向も踏まえて考えると、本件は、特にその経緯等からすれば酌量減軽をした上でその下限付近の刑期をもって て、経緯等の点を被告人に有利に考慮するにも自ずと限度がある。 以上の事情を前提に同種事案の量刑傾向も踏まえて考えると、本件は、特にその経緯等からすれば酌量減軽をした上でその下限付近の刑期をもって臨むべき事案であることは間違いない。しかし、本件の犯行態様等にはやや悪いものがあるし、前記のとおり、被害者の死という重い結果を避け得る手段を十分に模索していなかったという点で経緯等の点を考慮するにも限度があるといえる以上、本件が被告人に対してその懲役刑の執行を猶予できるほど軽い事案であると考えることはできず、被告人に対しては実刑をもって臨むべきである。 その上で、被告人は、被害者に対する言葉が十分とはいえないものの、自らの犯 した本件犯行を振り返り、公判廷で長男らに迷惑をかけたことを詫びて反省の態度を示している。長男らの立場に照らして過度に考慮することはできないが、長男らは被告人が刑務所に入ることを積極的には望んでいないという事情もある。高齢の被告人はこれまで前科もなく犯罪とは無縁の生活を送ってきており、公判廷で被告人を支えていくと約束した被告人の姉の支援も受けて今後更生していくことも期待できる。こうした被告人に有利な刑の調整要素となる事情も考慮し、主文の刑期を定めた。 (検察官の求刑-懲役6年、弁護人の科刑意見-懲役3年、5年間執行猶予)令和7年12月11日大津地方裁判所刑事部 裁判長裁判官谷口真紀 裁判官德井隆一 裁判官山下大智 井隆一 裁判官山下大智
▼ クリックして全文を表示