主文 原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 平成29年7月9日執行の奈良市長選挙の当選の効力に関し,被告が平成30年2月26日付けでした裁決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,平成29年7月9日に執行された奈良市長選挙(以下「本件選挙」という。)に立候補し奈良市選挙管理委員会(以下「市選管」という。)により次点者と告示された原告山下真(以下「原告山下」という。)及び選挙人らが,当選の効力に関する異議の申出をしたところ,市選管が異議申出棄却決定をしたので,さらに同決定について被告に対し審査の申立てをしたところ,被告が同審査の申立てを棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をしたので,その裁決の取消しを求める事案である。 1 争いのない事実等(末尾掲記の証拠によって容易に認定することができる事実を含む。)本件選挙平成29年7月9日執行の奈良市長選挙(本件選挙)には,原告山下,仲川げん(以下「仲川」又は「仲川候補」という。),A及び井上良子の計4名が立候補した。 本件選挙の投票が行われた平成29年7月9日の午後9時30分から,奈良市法蓮佐保山四丁目1番3号所在のならでんアリーナに設営された開票所において,奈良市長選挙選挙会が開会されて開票作業が開始され,翌10日午前2時22分,同選挙会は閉会した。 開票の結果は,投票総数15万5885票,有効投票15万2934票,無効投票2951票と判定された。無効投票の分類及び各票数は下記のとおりであった。 記 開票の結果は,投票総数15万5885票,有効投票15万2934票,無効投票2951票と判定された。無効投票の分類及び各票数は下記のとおりであった。 記無効事由票数所定の用紙を用いていないもの2票候補者でない者又は候補者となることができない者の氏名を記載したもの627票2人以上の候補者の氏名を記載したもの51票候補者の氏名のほか,他事を記載したもの26票白紙投票1507票単に雑事を記載したもの362票単に記号・符号を記載したもの376票合計2951票 市選管は,仲川の得票数を6万1934票,原告山下の得票数を5万9912票と判定し,仲川について当選人の決定をした。原告山下は,次点であった。 (以上,甲3,争いのない事実,弁論の全趣旨)⑵ 異議の申出原告山下外37名は,平成29年7月24日,市選管に対し,本件選挙の当選の効力に不服があるので,改めて投票用紙を点検し,有効,無効の判別及び各候補の得票数を再確定するよう異議を申し出た。市選管は,同年9月15日付けで異議の申出を棄却する決定(以下「本件異議決定」という。)を行った。(甲2,13)⑶ 審査の申立て原告山下外38名は,被告に対し,本件異議決定についての審査の申立てをした。被告は,平成30年2月26日付けで,同審査の申立てを棄却する旨の裁決(本件裁決)をし,原告山下は,同年3月1日,本件裁決の裁決書の交付を受けた。(甲1,乙7)⑷ 本件訴訟の提起原告山下外46名は,平成30年3月30日,本件訴訟を提起した。 ⑸ 検証当裁判所は,平成30年12月17日,奈良市役所において,市選管の所持に係る本件選挙の無 訟の提起原告山下外46名は,平成30年3月30日,本件訴訟を提起した。 ⑸ 検証当裁判所は,平成30年12月17日,奈良市役所において,市選管の所持に係る本件選挙の無効投票のうち,無効事由が「候補者でない者又は候補者となることができない者の氏名を記載したもの」に分類されたもの627票(以下「本件検証目的物」という。)の検証を行った(以下「本件検証」という。)。本件検証の目的物のうち,検証の際に,当事者から,原告山下又は仲川に対する有効票となり得るものと指示説明のあったものは46票(以下「本件疑問票」という。)であり,本件疑問票の記載は,別紙「検証の結果及び当事者の主張」の「記載」欄のとおりである(同欄には,記載されている氏名の判読につき当事者間に争いがない場合には,当該氏名を記載した。また,明らかな書き損じの抹消等,公職選挙法(以下「公選法」という。)68条1項6号本文所定の他事記載に当たらないもの及び同号ただし書き所定の明らかな敬称は記載していない。以下,同表記載の投票は,同表番号欄の記載に従い,番号①の投票は「本件投票①」というように呼称する。)。原告山下又は仲川に対する有効票となり得るか否かを検討すべき票は,本件疑問票以外に認められなかった。(顕著な事実)⑹ 同日執行の他の選挙本件選挙と同日執行の奈良市議会議員選挙(以下「訴外市議選」という。)の候補者は,別紙「奈良市議会議員選挙候補者」のとおりである(乙11)。 2 争点-本件選挙の投票の効力(原告らの主張)⑴ 本件選挙においては,仲川候補の有効投票数の算定に当たって,一旦疑問票に分類された後有効票とされたものが少なくとも4434票あった。 これらの票は,「中川」,「中野げん」,「中田げん」,「中山」等と記載されたものであり 仲川候補の有効投票数の算定に当たって,一旦疑問票に分類された後有効票とされたものが少なくとも4434票あった。 これらの票は,「中川」,「中野げん」,「中田げん」,「中山」等と記載されたものであり,公選法68条1項8号の「公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの」に当たり,無効票とされるべきであるにもかかわらず,全て仲川候補に対する有効票とされた(以下,これらの票を 「潜在的無効票」という。)。他方,原告山下の有効投票数の算定に当たって,一旦疑問票に分類された後で無効票とされたものは912票あった。 これらの中には,原告山下を誤記載した「木下まこと」,「山田真」,「山中まこと」,「山本まこと」等,原告山下の有効票となるべき票が含まれていたにもかかわらず,これらの票は全て無効票のままとされた(以下,これらの票を「潜在的有効票」という。)。このように,仲川候補及び原告山下の有効投票数の算定に違法が存した。 潜在的無効票及び潜在的有効票の合計数が仲川候補と原告山下との得票差2022票に及ぶとすれば,当選無効の原因となり得る。 ⑵ 本件疑問票のうち原告山下の有効票であるものが存することは,別紙「検証の結果及び当事者の主張」原告らの主張欄記載のとおりである。 (被告の主張)⑴ 原告らの上記⑴の主張は,不知ないし争う。 ⑵ 本件疑問票の効力は,別紙「検証の結果及び当事者の主張」被告の主張欄記載のとおりである。本件疑問票の中には,原告山下の有効票と理解し得る票のみならず,仲川候補の有効票と理解し得る票も複数存した。これらの結果に鑑みれば,本件選挙の投票用紙の分類作業において間違いがあったとしても,原告らが主張するような,特定の候補者の票のみを無効とするような恣意的な運用はなかった。 また,本件選挙の開票時無効票は に鑑みれば,本件選挙の投票用紙の分類作業において間違いがあったとしても,原告らが主張するような,特定の候補者の票のみを無効とするような恣意的な運用はなかった。 また,本件選挙の開票時無効票は,その分類ごとに無効投票決定箋が付され,原告山下の立会人を含む立会人4名の印と選挙長の印が押印され,判断に迷う票には,個別に疑問投票決定箋が付され,立会人らと選挙長全員で判断していたものであり,無効票,疑問票の判定は適正な手順で行われていた。 本件検証目的物の中に,原告らが主張する「木下まこと」,「山田真」,「山中まこと」,「山本まこと」はそれぞれ1票しかなく,潜在的有効票が多数存したという事実もない。 本件選挙において無効票と分類された2951票のうち1507票は白紙投票であり,その他の分類は本件検証目的物を除けば817票であるが, これらは白紙投票と同じく恣意的な運用の余地がない無効票である。本件検証目的物627票のうち本件疑問票は46票であり,うち本件検証時,原告らから原告山下の有効票であると主張があったものは37票である。 これらに対する被告の主張は前記のとおりであるが,たとえこれらが有効であったとしても,本件選挙で当選した仲川と原告山下の得票差は2022票であり,当選結果の逆転はあり得ない。 第3 争点に対する判断 1 証拠(甲7)によれば,開票作業に従事した奈良市職員であるという匿名者が平成29年7月10日に山下まこと後援会のフェイスブックにした投稿には,本件選挙の投票用紙の分類作業において,原告山下を「木下まこと」,「山田真」,「山中まこと」,「山本まこと」等と誤記した票が多数あったが,これらの票は全て無効票のままとされ,「中川」,「中野げん」,「中田げん」,「中山」等と記載された無効票は全て仲川の有効 」,「山田真」,「山中まこと」,「山本まこと」等と誤記した票が多数あったが,これらの票は全て無効票のままとされ,「中川」,「中野げん」,「中田げん」,「中山」等と記載された無効票は全て仲川の有効投票とされたと記載されている事実が認められる。甲第12号証1・2において,開票作業に従事した奈良市職員であるという匿名者が述べる内容も同旨である。 しかし,これらの供述を裏付ける客観的な証拠はない。また,検証の結果によれば,本件検証目的物の中に,「山中まこと」及び「山本まこと」と記載された票は各1票存した(本件投票⑦,㉝)が,「山田真」と記載された票はなく,「木下まこと」については,表記が全く同じものはなく,字音が同じものが1票(本件投票⑪「木下真」)存したのみである。 以上の点に照らすと,前記匿名者の供述は,採用することができない。 2⑴ 次に,本件疑問票の記載から,原告らが主張する潜在的無効票及び潜在的有効票の存在が推認されるかを検討する。 ⑵ 当事者双方が無効であると主張する票下記の票は,原告山下又は仲川候補のいずれの氏名とも類似性に乏しく,公選法68条1項2号の「公職の候補者でない者の氏名を記載したもの」に当たり,無効と認めるのが相当である。 記番号記載備考 本件投票③,⑬,㉚山本かずひろ-本件投票⑫山下つとむ-本件投票㉒井上まこと-本件投票㉔林まこと-本件投票㉕井上まこと-本件投票㉗山下よしひこ-本件投票㉞山下守-本件投票㊱,㊴山口ひろし-本件投票㊸中山まさと-本件投票㊺木下一-本件投票㊻木下真治縦書きで,漢字の「真治」の右横に平仮名で「 投票㉞山下守-本件投票㊱,㊴山口ひろし-本件投票㊸中山まさと-本件投票㊺木下一-本件投票㊻木下真治縦書きで,漢字の「真治」の右横に平仮名で「しんじ」と記載されている。 また公選法68条1項4号は「一投票中に二人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの」は無効とすると定めるところ,本件投票⑩(「山出山下」)はこれに当たり,無効と認めるのが相当である。 ⑶ 訴外市議選の候補者と同一の氏名が記載された票本件選挙と同日執行の訴外市議選の候補者には,「山口まこと」という者がいた(別紙「奈良市議会議員選挙候補者」受理番号48)ところ,本件投票⑲,㉖,㉛及び㉜(「山口まこと」)は,同候補者と氏名が完全に一致しており,同候補者の氏名を記載したものと認められるから,公選法68条1項2号の「公職の候補者でない者の氏名を記載したもの」に当たり,無効と認めるのが相当である。 ⑷ 氏のみが記載された票ア投票を有効と認定できるのは,投票の記載自体から選挙人が候補者の何人に投票したのかその意思を明認できる場合でなければならない。公選法67条が,同法68条(無効投票)の規定に反しないかぎりにおい て,その投票した選挙人の意思が明白であれば,その投票を有効とするようにしなければならない旨を規定するのも,同趣旨を明示したものにほかならない。もっとも,選挙人の投票意思の認定にあたっては,その選挙における諸般の事情を考慮して判断することが許されないものではなく,また,投票の記載についても,ある程度の記載文字の拙劣,誤字,脱字等が存在しても,その故をもって,ただちに投票意思の明認を妨げるものとはいえない。しかし,投票の記載によっては投票意思を明確にしがたいものを,その記載と特定の候 ある程度の記載文字の拙劣,誤字,脱字等が存在しても,その故をもって,ただちに投票意思の明認を妨げるものとはいえない。しかし,投票の記載によっては投票意思を明確にしがたいものを,その記載と特定の候補者の氏名との若干の類似性を手がかりとして,選挙人は常に候補者中の何人かに投票するものという推測のもとに,これを前記特定の候補者の得票と解するような判定の仕方はにわかに容認しがたい(最高裁昭和42年9月12日第三小法廷判決・民集21巻7号1770頁参照)。 イ下記の票はいずれも氏のみが2文字で記載されているが,原告山下の氏仲川候補の氏原告山下及び仲川候補の氏と,それぞれ1文字は一致するがもう1文字は一致せず,文字の上からも音感上も,原告山下又は仲川候補の氏と類似性を欠くものであり,「山下」又は「仲川」の誤記とは認められない。よって,下記の票は無効と認めるのが相当である。 記 番号記載本件投票①,⑥,⑨,⑭,㊶山本 本件投票⑰木下 本件投票⑱山村 本件投票⑳宮下 本件投票㊲山口 本件投票㊳山田 本件投票㊵山中本件投票㉟仲井 本件投票㊷山川 本件投票②(「下山」)は,氏のみが2文字で記載され,原告山下の氏の2文字を逆転させた記載になっているが,文字の字形からも音感上も原告山下の氏と類似性を欠くものであり,「山下」の誤記とは認められない。よって,同票は無効と認めるのが相当である。 ⑸ 原告山下又は仲川候補と完全に一致しない氏名が記載されている票ア選挙人は,常に必ずしも平常から候補者たるべき者の氏名を記憶しているわけではなく,選挙に際して候補者氏名の掲示,ポスター,新聞紙,演説会等を通じてそ 補と完全に一致しない氏名が記載されている票ア選挙人は,常に必ずしも平常から候補者たるべき者の氏名を記憶しているわけではなく,選挙に際して候補者氏名の掲示,ポスター,新聞紙,演説会等を通じてその氏名をはじめて記憶する者も多いところ,その場合に氏名を誤って記憶し,あるいは二人の候補者の氏名を混同して一人の候補者の氏名として記憶することのある場合も十分に想像し得るところである。そして,特段の事由によるものを除き,選挙人は,一人の候補者に対して投票する意思をもってその氏名を記載するものと解すべきであるから,投票を二人の候補者氏名を混記したものとして無効とすべき場合は,いずれの候補者氏名を記載したか全く判断し難い場合に限るべきであって,そうでない場合には,公選法68条1項5号,7号に該当する無効のものでない限り,いずれか一方の氏名に最も近い記載のものについては,これをその候補者に対する投票と認め,合致しない記載については,これを誤った記憶によるものか又は単なる誤記になるものと解するを相当とすべきである(最高裁昭和32年9月20日第二小法廷判決・民集11巻9号1621頁,最高裁平成4年7月10日第二小法廷判決・裁判集民事165号149頁参照)。 イ本件投票⑪(「木下真」)及び本件投票㉓(「山島真」)は,原告山下の氏名(山下真)と漢字3文字中2文字が一致し(名については完全に一致する。),音感上も類似性が認められることから,原告山下の有効投票と解し得る。 また,本件投票④(「山田まこと」),本件投票⑦(「山中まこと」)及び本件投票㉝(「山本まこと」)は,氏の2文字中1文字が原告山下の氏と一致し,名は原告山下の名である「真」を平仮名で記載し たものであって,音感上も類似することから,原告山下の有効投票と解し得る。 本まこと」)は,氏の2文字中1文字が原告山下の氏と一致し,名は原告山下の名である「真」を平仮名で記載し たものであって,音感上も類似することから,原告山下の有効投票と解し得る。 本件投票⑯(「みやしたまこと」)は,原告山下の氏名を全て平仮名で記載した場合の「やましたまこと」と7文字中5文字が一致し,音感上も類似性が認められることから,原告山下の有効投票と解し得る。 ウ本件投票⑧(「中川ゲンキ」)は,1文字目の「中」は仲川候補の氏名の1文字目の「仲」のつくりと一致し,「中川」の字形は「仲川」に類似していること,名の「ゲンキ」が仲川候補の名「げん」を片仮名で記載したものを全て含んでいること,全体の音感上も仲川候補の氏名と類似性が認められることから,仲川候補に投票する意思をもって氏及び名の各1字を誤記したものと認めるのが相当であり,仲川候補の有効投票と解し得る。 本件投票⑮(「西川げん」)は,仲川候補の氏名である「仲川げん」と4文字中3文字が一致し(名については完全に一致する。),音感上も類似性が認められることから,仲川候補の有効投票と解し得る。 一方,本件投票㉘(「坂下げん」)は,名が仲川候補の名である「げん」と一致するが,氏の字形及び音感が仲川候補のそれとはまったく異なるから,無効と認めるのが相当である。 ⑹ 判読困難な文字が記載されている票ア本件投票⑤は,1文字目と2文字目が「井川」,4文字目が「ん」と判読し得るが,3文字目は,漢字の「牛」に濁点が付されたような形状になっており,判読が困難である。3文字目は,2本の横線のうち下の線を抹消すれば,平仮名の「げ」に近い形状になるが,本件投票⑤は,前記4文字の左横に明らかな書き損じ2文字分を多重線で抹消した跡があるのに対し,3文字目の2本の横線のうち 目は,2本の横線のうち下の線を抹消すれば,平仮名の「げ」に近い形状になるが,本件投票⑤は,前記4文字の左横に明らかな書き損じ2文字分を多重線で抹消した跡があるのに対し,3文字目の2本の横線のうち下の線を抹消した跡はない。本件投票⑤は,「井川●ん」(判読不能の3文字目を「●」で表記した。)としか読みようがなく,仲川候補の氏名である「仲川げん」と4文字中2文字が一致するが,仲川候補の氏名の特徴的な文字も入っておらず,音感上も類似性が認められないことから,これを仲川候補の有効投票と解するこ とは困難であり,無効と認めるのが相当である。 イ本件投票㉑は,最初の2文字は明らかに縦書きで記載されており,縦書きで読む限り「中川で子」と判読し得る。同票の氏部分の「中川」の字形は「仲川」に類似し,かつ音感が同一であるが,名部分の「で子」は,仲川候補の名の「げん」と字形及び音感と類似性がなく,「げん」を誤記したものと認めることは困難である。よって,同票は,仲川候補に投票する意思をもって名を誤記したものと認めることはできず,無効と認めるのが相当である。 ウ本件投票㉙は,1文字目が漢字の「仲」のへんである「イ」の下部分に2本の縦線が記載された形状になっているが,これを全体として見れば,漢字の「仲」を拙く記載したものと判読し得る。同票のそれ以外の文字は,特に判読困難なものではなく,全体の記載は「仲川さんじ」と判読し得る。同票記載の氏は,仲川候補のそれと同一であるが,名部分の「さんじ」は,仲川候補の名の「げん」と字形及び音感と類似性がなく,「げん」を誤記したものと認めることは困難である。よって,同票は,仲川候補に投票する意思をもって名を誤記したものと認めることはできず,無効と認めるのが相当である。 エ被告は,本件投票㊹の「仲川よし げん」を誤記したものと認めることは困難である。よって,同票は,仲川候補に投票する意思をもって名を誤記したものと認めることはできず,無効と認めるのが相当である。 エ被告は,本件投票㊹の「仲川よし」の後の2文字が判読困難であると主張する。しかし,同票は明らかに縦書きで記載されており,縦書きで読む限り「仲川よしひ子」と判読し得る。同票記載の氏は,仲川候補のそれと同一であるが,名部分の「よしひ子」は,仲川候補の名の「げん」と字形及び音感と類似性がなく,「げん」を誤記したものと認めることは困難である。よって,同票は,仲川候補に投票する意思をもって名を誤記したものと認めることはできず,無効と認めるのが相当である。 ⑺ 以上によれば,本件疑問票のうち,原告山下の有効投票と解し得る票は6票,仲川候補の有効投票と解し得る票は2票であると認められる。 ⑻ 本件選挙において無効票と分類された2951票のうち本件検証目的物以外の票は,所定の用紙を用いていないもの,2人以上の候補者の氏名を記載したもの,候補者の氏名のほか他事を記載したもの,白紙投票,単に 雑事を記載したもの及び単に記号・符号を記載したものであって,恣意的な運用の余地がない明らかな無効票である。原告らのいう潜在的有効票が存在するとすれば,本件検証目的物(候補者でない者又は候補者となることができない者の氏名を記載したもの)627票中にあるはずであるが,前記認定によれば,原告山下の有効投票と解し得る票は6票(627票中の0.96パーセント)にすぎず,原告山下及び仲川候補の有効投票と解し得る票を合わせても8票(627票中の1.28パーセント)にすぎない。 以上によれば,無効票と分類された票の中に,潜在的有効票が多数(原告らの主張では最大912票)存した事実を認めることはで し得る票を合わせても8票(627票中の1.28パーセント)にすぎない。 以上によれば,無効票と分類された票の中に,潜在的有効票が多数(原告らの主張では最大912票)存した事実を認めることはできない。 ⑼ 前記認定によれば,本件検証目的物627票中,原告山下の有効投票と解し得る票は6票,仲川候補の有効投票と解し得る票は2票と極めて少数であり,潜在的有効票は,原告山下と仲川候補の双方について存在する。 また,前記で認定した潜在的有効票の記載は,「木下真」,「山島真」,「山田まこと」,「山中まこと」,「山本まこと」,「みやしたまこと」,「中川ゲンキ」,「西川げん」(順に本件投票⑪,㉓,④,⑦,㉝,⑯,⑧,⑮)であって,いずれも原告山下又は仲川候補の氏名との類似性が一義的に明白であるとはいえないところ,これらを開票の現場において無効票に分類したからといって,それが故に票の分類が恣意的になされたことが推認されるものでもない。 なお,本件投票㊺及び㊻には,疑問投票処理箋が貼付され,原告山下の立会人を含む各候補者の立会人4名が有効欄の中に設けられた候補者名別の欄又は無効欄のいずれかに押印した上で,選挙長の決定印が押印されており(検証の結果),開票の現場において,疑問票の判断を適宜適切に行っていたことが推認される。 これらの事実に鑑みれば,本件選挙の投票の開票時,投票の有効無効の判定につき,仲川候補に有利,原告山下に不利な恣意的な取扱いがされたとは認められないから,仲川候補の有効投票と分類された票の中に,潜在的無効票が多数(原告らの主張では4434票)存した事実を推認するこ とはできない。 他に本件選挙の開票作業において,不公平,不公正な取扱いが行われたことを認めるに足りる証拠はない。 ⑽ よって,仲川 張では4434票)存した事実を推認するこ とはできない。 他に本件選挙の開票作業において,不公平,不公正な取扱いが行われたことを認めるに足りる証拠はない。 ⑽ よって,仲川候補及び原告山下の有効投票数の算定に違法が存し,潜在的無効票及び潜在的有効票の合計数が仲川候補と原告山下との得票差2022票に及ぶとの原告らの主張は理由がない。 3 以上によれば,本件選挙において当選の効力が無効となる違法があるとはいえないとして,本件異議決定についての審査の申立てを棄却した本件裁決は適法であるというべきである。 よって,原告らの請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官山下郁夫 裁判官杉江佳治 裁判官細野なおみ
▼ クリックして全文を表示