平成13(わ)776 覚せい剤取締法違反(一部変更後の訴因・国際的な協力の下に規制薬物にかかる不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反),大麻取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年7月30日 広島地方裁判所
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判決文本文24,191 文字)

主文 被告人を懲役8年及び罰金250万円に処する。 未決勾留日数中430日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。 押収してあるプラスチック袋入り覚せい剤結晶粉末35袋(平成13年押第114号の1ないし35)及びプラスチック袋入り大麻葉片2袋(同押号の36及び37)を没収する。 被告人から金5760万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 営利の目的でみだりに 1 平成12年2月1日から同年9月26日までの間はAと共謀の上,同年9月26日ころから平成13年6月上旬ころまでの間は単独で,同月上旬ころから同年8月30日までの間はBと共謀の上,別表記載のとおり,前後6回にわたり,広島県安芸郡○町○○○△丁目△番△△△号株式会社C○○店付近路上ほか2か所において,Dほか4名に対し,フエニルメチルアミノプロパンの塩類(別表1ないし3につき)又はフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩(別表4ないし6につき)を含有する覚せい剤結晶粉末合計約2.7グラムを代金合計10万円で譲り渡したほか,多数回にわたり,広島市内及びその周辺において,氏名不詳の多数の者に対し,覚せい剤様の結晶粉末を覚せい剤として有償で譲り渡し,もって,規制薬物を譲り渡す行為と,薬物犯罪を犯す意思をもって,規制薬物様の物品を規制薬物として譲り渡す行為を併せてすることを業とし 2 平成13年1月4日午前11時ころ,同市○区○○○△丁目△番△△号株式会社E東側路上において,フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶粉末約8.785グラム(平成13年押第11 2 平成13年1月4日午前11時ころ,同市○区○○○△丁目△番△△号株式会社E東側路上において,フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶粉末約8.785グラム(平成13年押第114号の1ないし27はその鑑定残量)を所持し 3 同年8月30日午後1時47分ころ,広島県竹原市○○町△△△△番地F酒店前駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において,フエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶粉末約34.305グラム(同押号28ないし35はその鑑定残量)及び大麻約33.78グラム(同押号36及び37はその鑑定残量)を所持し第2 法定の除外事由がないのに,平成13年8月29日ころ,同県呉市○○○△丁目△△番△号G駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において,フエニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤若干量を水に溶かして自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用したものである。 (証拠の標目)(省略)(事実認定の補足説明)第1 弁護人は,判示第1の1の別表記載番号1ないし5の事実については被告人は無実であり,同表記載番号6のHへの覚せい剤譲渡は,営利目的によるものでも,また,Bと共謀したものでもなく,判示第1の1について,被告人は覚せい剤を譲渡することを業とするものにあたらないとし,また,判示第1の2の覚せい剤の所持及び判示第1の3の覚せい剤と大麻の所持は,いずれも営利目的によるものではない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をするので,以下これらの点についての当裁判所の判断を補足して説明する。 第2 覚せい剤の密売状況について 1 証拠上容易に認定することのできる事実被告人は,覚せい剤の密売をしたことがあること,判示第1の1の別表記載番号5につき被告人がIに対して覚せい剤0.3グラムを自分で直接譲り渡 況について 1 証拠上容易に認定することのできる事実被告人は,覚せい剤の密売をしたことがあること,判示第1の1の別表記載番号5につき被告人がIに対して覚せい剤0.3グラムを自分で直接譲り渡したこと,同表記載番号6につき被告人が番号の末尾がabcdの携帯電話でHから覚せい剤の注文を受け,Bに覚せい剤0.3グラムと注射器を持たせて,Hに届けさせ,その代価として1万円を受け取ったことは,最終的に自認しているところ,前掲関係各証拠によると,以下の事実が認められる。 (1) 被告人は,暴力団J会○○組に出入りをし,もとはK姓であったが,養子縁組によりL姓となったことがあった。 (2) 被告人は,平成13年1月4日午前11時ころ,巾着袋に,プラスチック袋27袋に小分けした覚せい剤結晶粉末(内訳は,ほぼ均一に約0.25グラムずつに小分けしたもの24袋,約0.5グラム,約2.2グラム及び約0.045グラム各1袋)をスコップやストロー片と一緒に所持し,また,同年8月30日午後1時47分ころには,自己の自動車内に置いた黒色ポーチに注射器3本,計量器1台,スコップ,プラスチック袋,はさみ等を,黒色バッグにプラスチック袋5袋に小分けした覚せい剤結晶粉末(内訳は約9.408グラム,約9.531グラム,約9.541グラム,約4.362グラム,約0.945グラム各1袋),プラスチック袋2袋に小分けした大麻葉片(内訳は約15.35グラムと約18.43グラム各1袋),注射器,J会のバッジを,水色バッグにプラスチック袋3袋に小分けした覚せい剤結晶粉末(内訳は約0.345グラム,0.094グラム,0.079グラム各1袋),プラスチック袋,ストロー片等を,同車運転席ドアボックスにカッターナイフ,はさみ及びガラス製注射器,同車トランク内に箱入りの多量の注射器を 345グラム,0.094グラム,0.079グラム各1袋),プラスチック袋,ストロー片等を,同車運転席ドアボックスにカッターナイフ,はさみ及びガラス製注射器,同車トランク内に箱入りの多量の注射器をそれぞれ所持しており,遅くともそのころには,客から電話を受け,受渡場所を指定するいわゆる出前方式で覚せい剤の密売をするようになった。 (3) 被告人は,覚せい剤を密売するにあたって,覚せい剤約0.25グラムを代金1万円で売っており,その注文と受渡しに際して○○○-○○○○-abcd(以下「末尾abcd」という。)の携帯電話を使用していたことがあった。この末尾abcdの電話は,○○○-○○○○-efgh(以下「末尾efgh」という。)にかけた電話が着転送されるもので,その着転送状況は,平成13年2月18日から同年3月7日までの間に末尾efghから末尾abcdに着転送されたもので,305件(1日あたり17件弱)あり,そのうちの多くは午後7時ないし午前零時の間にされているが,それ以外の時間帯のものもあり,午前9時台や午前10時台に着転送したものもある。 (4) 被告人は,平成13年7月30日,Hからの覚せい剤の注文を末尾abcdの電話で受け,S大橋を渡った工業団地内にある広島市○○区○○町△番△△号M株式会社付近路上において,B(Bが情を知っていたかどうかは争いがある。)を介してHに覚せい剤約0.3グラムを代金1万円で売った。その際,Bが乗ってきた車はシルバーのアリストであった。Hは,その携帯電話の発信履歴によると,同日22時39分に末尾efghに発信している。 (5) N,D及びO兄弟,I,Pは,覚せい剤を一緒に買ったり,使用したりする仲であり,密売先に電話をかけて指示されたS大橋を渡った付近にある場所で覚せい剤をプラスチック袋1袋(以下 している。 (5) N,D及びO兄弟,I,Pは,覚せい剤を一緒に買ったり,使用したりする仲であり,密売先に電話をかけて指示されたS大橋を渡った付近にある場所で覚せい剤をプラスチック袋1袋(以下「1パケ」という。)に入れたものを代金1万円で購入していた。Dの携帯電話には,末尾efghと末尾abcdが登録してあり,その発信履歴によると,平成12年2月29日18時59分3秒及び同日20時49分52秒,同年4月9日22時30分にいずれも末尾efghに発信されている。また,Iの携帯電話の発信履歴によると,平成13年3月5日23時30分20秒に末尾efghに発信され,その着信履歴によると,同日23時50分に末尾abcdから着信している。 (6) 関係者の裁判状況ア D及びOは,平成12年3月1日ころ共謀してNから覚せい剤を譲受した事実及び同年4月9日ころそれぞれ覚せい剤を使用した事実により,平成12年6月6日Q地方裁判所でいずれも懲役1年6月,3年間執行猶予に処せられ,同判決は同年6月21日確定した。 イ Iは,平成13年2月2日ころ及び同年3月6日ころの覚せい剤使用2件並びに同月7日ころの覚せい剤所持の各事実により,同年5月25日同裁判所で懲役2年,4年間執行猶予に処せられ,同判決は同年6月9日確定した。 ウ Rは,平成12年4月13日に覚せい剤を使用した事実及び同月14日に覚せい剤を所持した事実により,同年6月15日同裁判所で懲役1年6月,3年間執行猶予に処せられ,同判決は同月30日確定した。 エ Aは,平成12年9月26日に自宅で覚せい剤約10グラムを所持していた容疑で逮捕され,平成13年3月2日同裁判所で覚せい剤の営利目的所持及び使用の事実で懲役3年及び罰金30万円に処せられ,同判決は,同月17日確定した。 日に自宅で覚せい剤約10グラムを所持していた容疑で逮捕され,平成13年3月2日同裁判所で覚せい剤の営利目的所持及び使用の事実で懲役3年及び罰金30万円に処せられ,同判決は,同月17日確定した。 オ Hは,平成13年7月31日に覚せい剤結晶粉末約0.121グラムを所持した事実及びそのころ覚せい剤を自己使用した事実により,同年10月9日同裁判所で懲役1年2月に処せられ,同判決は同月24日確定した。 2 関係者の供述について(1) D及びNの供述ア Dの供述Dは,公判廷で判示認定事実に沿う供述をするほか,大要次のとおり供述している。 すなわち,同人は,覚せい剤を購入するときは,自分の携帯電話に登録してある末尾efghに電話して注文し,指定された場所に行って購入していた。 この覚せい剤を注文していた相手から電話がかかってきたときの電話番号は,自分の携帯電話に登録してある末尾abcdである。平成12年2月29日18時59分3秒と同日20時49分52秒に末尾efghに電話して覚せい剤を2度注文したが,この1回目がNに頼まれて覚せい剤を買いに行ったときのもので,1パケに大体0.2グラム入っていたもの3パケを,Nがお金を出して3万円で買った。そのうち1つは自分がもらい,残りの2つはNに渡した。そして,すぐに購入した覚せい剤を使用し,その後,同年3月1日に,Nから同人に渡した上記覚せい剤の残りをもらった。同年4月9日にも,知人が覚せい剤を欲しいと言うので,午後10時30分ころ,末尾efghに電話して覚せい剤を注文して一緒に買いに行き,1パケを1万円で買った。買った後自分もその中からいくらかもらって使用した。上記覚せい剤の受渡場所は,いずれも株式会社C○○店付近路上であり,受渡しに来た男の顔は見ていない。 買いに行き,1パケを1万円で買った。買った後自分もその中からいくらかもらって使用した。上記覚せい剤の受渡場所は,いずれも株式会社C○○店付近路上であり,受渡しに来た男の顔は見ていない。 覚せい剤の受渡場所としては,そのほかにS大橋を下りてすぐ左に行ったところやSのZ図書などが受渡場所とされ,受渡しに来る男は白のマークⅡや黒のアコードに乗ってきた。覚せい剤を注文するときは,常に末尾efghに電話をかけているわけではなく,末尾efghがつながらないときなどに,直接末尾abcdの番号にかけることもあった。この2つの携帯電話に出てくる人は同じ男であり,通常は電話に出る男とは別の男から実際に覚せい剤を受け取っていたが,電話に出る男から直接覚せい剤を受け取ったこともあり,その男の顔は何度も見て覚えており,それは被告人に間違いない。 イ Nの供述Nは,公判廷で,前記1,(5)の事実に沿う供述をするほか,平成12年2月28日に東京からDに電話し,翌29日に広島に帰るから一緒に覚せい剤を買いに行こうと言い,同人の車で覚せい剤を買いに行った,Dが購入先に電話をして覚せい剤を注文し,受渡場所はS大橋を渡ってスーパーT近くの工業団地内であり,自分が金を出して3万円で3パケを買い,そのうち1パケをDにあげた,そのとき購入した分の封を開けていない1パケを同年3月1日にDにあげた旨供述している。 ウ上記Dの供述は,被告人の覚せい剤密売状況について,末尾efghに電話で注文をし,S大橋を降りた付近で覚せい剤の受渡しをした点などにおいて,後記O,R,H及びIの各供述と整合している上,覚せい剤を購入することをNから頼まれた点や覚せい剤を注文した日時,購入した分量・場所,その後Nとの間でした覚せい剤の授受などについても具体的かつ詳細に述 記O,R,H及びIの各供述と整合している上,覚せい剤を購入することをNから頼まれた点や覚せい剤を注文した日時,購入した分量・場所,その後Nとの間でした覚せい剤の授受などについても具体的かつ詳細に述べており,平成12年2月29日の覚せい剤の購入についてもNの上記供述や,上記1,(5)のDの携帯電話の発信履歴とも一致している。また,覚せい剤を注文した携帯電話に出た相手が被告人であり,被告人から直接覚せい剤を渡されたこともあるとの点についても,Dは,何度もその人物と電話で話をし,実際に会ってもいることから,その人物に対する認識は十分にあったと思われるところ,公判廷において,末尾efghに電話で覚せい剤を注文するとき応対に出る人物の名前について尋ねられて,当初は言いたくないと供述し,その理由として,目の前にいる被告人やその関係する暴力団関係者から危害を加えられることが怖いからと述べ,あるいは,被告人が退廷すればその名前を述べることができるなどと述べた上,最終的には,その人物が被告人であることは間違いない旨断定するに至っているのである。これらに加えて,Dの上記供述の内容は,起訴され有罪判決を受けた覚せい剤の使用及び譲受事件の密売人の一人が被告人であるというにすぎず,特段D自身の刑責を軽減するものではない上,上記1,(6),アのとおり,有罪判決確定後に供述されており,偽証罪の処罰の危険を冒してまで殊更暴力団員である被告人を陥れる理由はうかがわれないことからすれば,その信用性は極めて高いと評価することができる。 (2) Oの供述ア Oは,平成14年1月23日の検察官による取調べに対して,平成11年ころは,覚せい剤の購入方法は,被告人の携帯電話である末尾efghに電話して注文し,被告人に指示された場所に行って覚せい剤を買っていた,末尾efg 年1月23日の検察官による取調べに対して,平成11年ころは,覚せい剤の購入方法は,被告人の携帯電話である末尾efghに電話して注文し,被告人に指示された場所に行って覚せい剤を買っていた,末尾efghにつながらないときは,被告人から覚せい剤の代金のツケの催促の電話がかかってきたときの着信表示で知った,もう一つの被告人の携帯電話である末尾abcdに電話しており,自分が知る限り被告人以外の者がその電話に出たことはなかった,被告人とは直接会って何度も話をしているので,いつも電話に出ているのが被告人であることは分かっていた,逮捕される前に最後に被告人から覚せい剤を買ったのは,平成12年4月7日午後9時30分ころであり,いつものように被告人に電話をかけて,1万円で0.2グラムくらいの覚せい剤を注文し,白のマークⅡに乗った男から覚せい剤を受け取った,この男は顔全体の印象や口元からするとAではないかと思う,平成12年6月に執行猶予の判決を受けて釈放された後,2,3週間してから,また覚せい剤を使い始めたが,そのときは,いつも被告人本人と会って直接買っており,被告人の家に覚せい剤を買いに行ったこともあった旨供述する。 イ Oの上記供述は,覚せい剤の密売状況について,末尾efghや末尾abcdに電話をして覚せい剤を注文するなどの点において,前記Dの公判供述や,後記R,H及びIの各捜査段階の供述と整合している上,覚せい剤を購入した日時・場所等について具体的かつ詳細に述べている。しかも,上記供述は,上記1,(6),アのとおり,Oが執行猶予判決を受け釈放された後に録取されたものであって,殊更に虚偽を述べるべき理由はないことなどからすれば,その信用性は高いと評価できる。 なお,Oは,公判廷では,覚せい剤の入手方法,覚せい剤を譲り渡していた人物,被告 取されたものであって,殊更に虚偽を述べるべき理由はないことなどからすれば,その信用性は高いと評価できる。 なお,Oは,公判廷では,覚せい剤の入手方法,覚せい剤を譲り渡していた人物,被告人を知っているか否かなどの質問に対してすべて言いたくないと供述を拒否し,その理由について,同人は,上記判決後に,別の事件で実刑判決を受け,服役することになるが,本件で証言をすると刑務所内で嫌がらせを受けるおそれがあり,刑務所内で何かトラブルがあると,懲罰を受けたり服役期間が長くなることをあげているが,その理由に格別不自然な点はない。弁護人は,このようなOの態度について,検察官が予め同人の検察官調書を証拠として採用させるために,同人に対してある種の司法取引を行った可能性を指摘する。しかしながら,Oは,検察官の取調べに対し上記のような供述をした時点で,既に執行猶予判決を受けて釈放されていたのであるから,格別検察官との司法取引に応じるべき理由はないし,検察官がOにその意に反した内容の供述調書に署名指印することを強要したことをうかがわせる事情も認められない。 (3) Rの供述ア Rは,平成13年11月28日の検察官の取調べに対し,平成12年3月15日に,女友達との喧嘩がきっかけとなり,末尾efghに電話をかけて覚せい剤を買うようになり,同月25日以降ほとんど毎日覚せい剤を買っていた,末尾efghの電話に出る者はいつも同じ男であった,覚せい剤の受渡場所はS大橋を渡った広島市○○区○○○町△番△△号M株式会社南側路上付近である,覚せい剤を受け取った密売人の中で一人だけ顔を覚えている男がおり,この男は,その声から末尾efghに電話をしたとき応対に出る男であり,自らKと名乗っていた,この男とは何回も覚せい剤の受渡しの際,顔を合わせて,会話を交わして 人の中で一人だけ顔を覚えている男がおり,この男は,その声から末尾efghに電話をしたとき応対に出る男であり,自らKと名乗っていた,この男とは何回も覚せい剤の受渡しの際,顔を合わせて,会話を交わしており,以前の売人について尋ねると,それは自分の兄だと言い,自分が娑婆に出てくると兄が逮捕され,自分と兄は,いつも娑婆と中だなどと言っていた,この男は,写真をみて被告人であると断言できる,自らが逮捕された日の前日である平成12年4月13日午後7時半ころ末尾efghに電話したところ,被告人が電話に出たので,覚せい剤を2個注文し,S大橋付近の取引場所に行くと,白のマークⅡに乗った男が来たので,同車の運転席から2万円を差し入れたが,相手は覚せい剤を1つしか出さなかったので,2万円分だと言うと,すぐにもう1袋を差し出した,この日買った覚せい剤は合計約0.7グラム位であったと思う旨供述している。 イ Rの上記供述は,覚せい剤の密売状況につき,末尾efghに電話をして覚せい剤を注文するなどの点において,前記D,O,後記H及びIの各供述と整合している上,自己が覚せい剤を使用するに至った動機や被告人と直接会った際のやりとりの内容,購入当日の取引状況など,極めて具体的に述べていること,被告人と直接会って話したこともあり,その声を元に,平成12年4月13日当日の電話の相手をKと判別したもので,その認識の確度は高いと思われること,Rの上記供述によっても,格別R自身の刑責の軽減が図られるような内容ともいえない上,上記供述時には,上記1,(6),ウのとおり,既に,被告人から購入した覚せい剤を使用した事実で執行猶予の判決を受けており,殊更虚偽の供述をすべき理由はないことからすれば,その信用性は高いと評価できる。 なお,Rは,第25回公判において,宣誓後「中立 購入した覚せい剤を使用した事実で執行猶予の判決を受けており,殊更虚偽の供述をすべき理由はないことからすれば,その信用性は高いと評価できる。 なお,Rは,第25回公判において,宣誓後「中立でありたいので,私自身答えたくないことは全て答えたくないことで通します。」と述べた上で,どのような者から,どのような方法で覚せい剤を買っていたか,被告人を知っているかなどの質問に対して,すべて答えたくないと述べて供述を拒み,その理由については,昔の事件のことを思い出したくないためであると述べている。かかる供述態度について,弁護人は,I及びO同様検察官の示唆による可能性があるとの指摘をするが,I及びOと同様,Rの検察官に対する上記供述が,上記執行猶予判決後になされていることからすれば,Rにおいて格別検察官との取引に応じなければならない理由はないし,検察官において,Rに内容虚偽の調書に署名指印することを強いたことをうかがわせる事情も見出せない。 (4) Hの供述ア Hは,平成13年10月17日検察官に対し,大要以下のとおり供述している。 すなわち,Hは,平成11年8月ころ,知人から,覚せい剤の密売人の電話番号として末尾efghを教わり,以後,平成12年12月に覚せい剤取締法違反で逮捕されるまで,毎日のようにそこに電話をかけて覚せい剤1パケ0.25グラムを代金1万円で購入し使用していた。また,Hは,電話に出た男から覚せい剤の注文を受ける時間,すなわち営業時間は午後7時から午前零時までだから,その間に電話をくれと言われ,営業時間内の受渡場所として,最初の1回を除いて,S大橋を渡った付近を指示されていた。Hが,受渡場所として指示された場所に行くと,窓にスモークの入った車に乗った男が来て,その窓を少しだけ開けてその隙間から覚せい剤の 所として,最初の1回を除いて,S大橋を渡った付近を指示されていた。Hが,受渡場所として指示された場所に行くと,窓にスモークの入った車に乗った男が来て,その窓を少しだけ開けてその隙間から覚せい剤の入った封筒を差し出してきた。男は,サングラスにマスクをつけていたため人相は分からず,話もしないため声もわからなかった。一方,Hが末尾efghに電話をかけたとき,応対に出る男はいつも同じ男であり,Hが,平成12年2月ころ,末尾efghに電話をかけたところ,いつもの男が電話に出て,同人から受渡場所としてUのE付近のマンションの302号室を指示されたので,そこに行くと,「L」という表札がかかっており,同室から出てきた男と玄関先で覚せい剤の取引をしたが,その声から,その男がいつも末尾efghに電話をかけた際応対に出ていた男と同一人物であることが分かった。その後,10回くらい,上記の営業時間外に覚せい剤の注文をして,上記マンションでその男から覚せい剤を受け取っているため,その男の顔ははっきり覚えており,その男が被告人であることは間違いない。Hは,平成12年12月に覚せい剤取締法違反で逮捕されたが,平成13年4月に執行猶予判決を受けて釈放されたため,すぐに覚せい剤の使用を再開し,毎日のように末尾efghに電話をかけて覚せい剤を購入するようになり,電話に出た男から電話がかかってくることもあったが,その着信表示をみると末尾abcdであり,以後末尾abcdにかけることもあったが,いずれの番号にかけても出る男は同一であった。Hが,平成13年4月に釈放後同年7月31日に再び逮捕されるまで,S大橋をわたった付近で覚せい剤を受け取った際,その受渡場所に現れた男は,逮捕前に受渡場所に現れた男とは違い,車の窓を全開にして受渡しをし,サングラスなどもしておらず,Hと会話を交 び逮捕されるまで,S大橋をわたった付近で覚せい剤を受け取った際,その受渡場所に現れた男は,逮捕前に受渡場所に現れた男とは違い,車の窓を全開にして受渡しをし,サングラスなどもしておらず,Hと会話を交わすこともあったので,その顔はよく覚えてるが,その男がBであることは間違いない。 イ Hの上記供述の信用性についてみるに,末尾efghのほか被告人が所持していたことを自認する末尾abcdの携帯電話を使っての覚せい剤の取引状況やそのときの会話内容を具体的に述べている上,これらの取引状況は,前記D,O,R及び後記Iの各供述と合致していること,平成13年7月30日に被告人が末尾abcdでHから注文を受けてBを介して覚せい剤の受渡しをしたことは被告人も自認していること,Hが玄関先で被告人から覚せい剤を譲り受けたと供述するUのマンションの302号室には,被告人の旧姓と符合する「L」という表札がかかっていたこと,Hが,上記マンションでその後10回くらい取引したことから,その顔をはっきり覚えているとの理由を示した上で,捜査官から呈示された被告人の顔写真について,上記マンションで覚せい剤の取引をしたのは被告人に間違いない旨断言していること,Hの上記供述は,同人に対する覚せい剤の密売に被告人が加担していたというもので,その供述によりH自身の刑責が軽減されるというものではない上,その供述当時,Hは,上記1,(6),オのとおり,Bを介して被告人から譲り受けたとされる覚せい剤の一部を使用したこと等により実刑判決を受け,それが既に確定しており,自己の刑責を軽減するために殊更虚偽を述べる理由もうかがわれないことからすれば,Hの上記供述の信用性は高いと評価することができる。 (5) Iの供述ア Iは,平成13年11月12日及び同月14日に,検察官に対し大要 殊更虚偽を述べる理由もうかがわれないことからすれば,Hの上記供述の信用性は高いと評価することができる。 (5) Iの供述ア Iは,平成13年11月12日及び同月14日に,検察官に対し大要以下のような供述をしている。すなわち,Iは,平成10年ころから,知人から聞いた末尾efghか,その後知った末尾abcdに電話をかけて覚せい剤を買うようになり,以後継続して覚せい剤を購入していたところ,平成11年終わりごろから,末尾efghに電話をかけた際,いつも同じ男が応対するようになり,注文を受ける時間,すなわち営業時間は午後7時から午前零時までの間となり,覚せい剤の受渡場所も,S大橋を広島市○区○○からS町方向に渡った場所付近となり,そこで,窓にスモークを貼った車に乗った密売人から,少し開けた窓の隙間を通して覚せい剤を受け取るようになった。Iは,平成12年夏ころ,知人から,覚せい剤の購入先を聞かれて,S大橋のところで買っている旨答えたところ,知人は,「それVさんじゃろう。」,「俺は,1グラム,2万で買っている。」などと告げられた。そこで,Iは,知人に,1グラム2万円で買えるよう取りはからってもらいたい旨依頼し,そのころ,末尾efghに電話をかけて,いつも電話に出る男に覚せい剤を1グラム2万円で売ってほしいと告げたところ,その男が,受渡場所としてUのWを指定し,そこへ行くと,いつも電話に出る声の男が現れ,同人から覚せい剤を買った,その後,Iは,1グラムの覚せい剤を買うときや,上記営業時間外に覚せい剤を購入するときは,末尾efghに電話をし,上記Wで10回以上,Uのマンションで4ないし5回くらい,上記電話に出る男から覚せい剤を購入したが,その男は,写真を見て被告人であることが分かった,Iは,自分が逮捕された日の前々日である平成13年3月5日 10回以上,Uのマンションで4ないし5回くらい,上記電話に出る男から覚せい剤を購入したが,その男は,写真を見て被告人であることが分かった,Iは,自分が逮捕された日の前々日である平成13年3月5日の夕方,廿日市市内のちゃんこ鍋屋に行った後で末尾efghに電話し,電話に出た被告人に1グラム欲しいと言ったところ,被告人から,広島市○区○町にあるXに来てくれと言われ,同所付近の交差点に行き,被告人の乗るセルシオの斜め前に自分の乗る車を停車させ,被告人から2万円で0.7グラムくらいの覚せい剤を買った旨供述している。 イ Iの上記供述は,同人が被告人を知るに至る経緯や,平成13年3月5日当日の取引状況について具体的かつ詳細に述べているほか,その内容も,前記D,O,R及びHの各供述と合致していること,Iの携帯電話から同年3月5日に末尾efghに電話をかけて末尾abcdに着転送され,また,末尾abcdから同人の携帯電話に電話がかかったとする点について,Iの携帯電話の発受信履歴とも一致していること,Iの上記供述は,同人が購入した覚せい剤の密売に被告人が加担していたというもので,その供述によりI自身の刑責が軽減されるというものではない上,その供述当時,Iは,被告人から購入した覚せい剤を使用したことで,上記1,(6),イのとおり,有罪判決を受け,その確定後に上記供述をしていることに照らすと,殊更虚偽を述べて被告人を陥れる理由はない。 ウなお,Iは,第12回公判において,平成13年に自分が犯した覚せい剤取締法違反罪の覚せい剤は,電話をかけて知り合いから購入したものであるが,その電話番号は覚えていない,覚せい剤を届けに来た相手が誰であったか警察では確認したが,名前は覚えていないなどと述べ,第21回公判においても,覚せい剤の購入先が代わった時期,購 入したものであるが,その電話番号は覚えていない,覚せい剤を届けに来た相手が誰であったか警察では確認したが,名前は覚えていないなどと述べ,第21回公判においても,覚せい剤の購入先が代わった時期,購入先の電話番号,購入していた期間,被告人を知っているかなどの質問に対して,いずれも答えたくないと言い,その理由についても供述を拒否した。かかるIの供述態度について,弁護人は,検察官が予めIの検察官調書を証拠として採用させるため,同人に対してある種の司法取引を行った可能性を指摘するが,上記捜査段階の供述時には,上記1,(6),イのとおり,既に被告人から購入した覚せい剤の使用等についての事件の判決が確定しており,Iにおいて,殊更検察官との取引に応じる必要も理由もないし,検察官において,Iに対し,虚偽の供述調書に署名指印することを強いたことをうかがわせる事情は認められない。 エしたがって,Iの上記捜査段階の供述は,その信用性を高く評価することができる。 (6) Aの供述ア Aは,上記1,(6),エのとおり,覚せい剤の営利目的所持で懲役3年に処せられた後,○○刑務所で受刑中の平成13年11月30日に,検察官に対し,大要以下のように供述している。 すなわち,同人は,上記営利目的所持にかかる覚せい剤は密売するために被告人から預かっていたものであったが,その裁判では,営利目的を認めてしまうと長い刑になると思い,自己使用目的で所持していた旨主張した。被告人には拘置所に入ったときには布団や枕の差入れをしてもらうなどよくしてもらい,恩を感じているが,今は,自分の刑は決まったし,刑務所に入ってから馬鹿なことをしたと考えるようになり,2度と覚せい剤に手を出さない考えから,正直に話す気になった。被告人と初めて会ったのは平成11年11月1日で いるが,今は,自分の刑は決まったし,刑務所に入ってから馬鹿なことをしたと考えるようになり,2度と覚せい剤に手を出さない考えから,正直に話す気になった。被告人と初めて会ったのは平成11年11月1日であり,その日からほとんど毎日被告人の覚せい剤密売を手伝うことになった。毎日,被告人の所に顔を出しては,20袋に小分けされた合計5グラムの覚せい剤を受け取り,車でS大橋を広島市内からS方向に渡り最初の信号を左に曲がった場所に行き,そこで待機していると,携帯電話に被告人から客が来ることを知らせる電話があり,乗っている車の種類など客の特徴と売る個数を教わり,自車の運転席の側に来た客に対し,運転席の窓を少しだけ開けた隙間からお金と交換に覚せい剤を渡していた。覚せい剤は1パケ1万円で,代金をツケにすることはなかった。覚せい剤を密売するよう被告人から依頼されていた時間は午後7時から午前零時までであり,午前零時になると,その日の売上げや売れ残りの覚せい剤を被告人に渡し,報酬として1日2万円をもらっていた。密売の際にAが乗っていた車は,被告人が用意した白のマークⅡ,ガンメタのアコード,黒のソアラなどであった。覚せい剤の1日の売上げは,多いときでも20万円位,平均だと10万円位だった。 イこれに対し,Aは,公判廷では,平成12年9月26日に逮捕された際に所持していた覚せい剤は,氏名不詳の者から買って自己使用目的で所持していたものであり,その代金額は覚えていない,被告人とは平成11年11月1日に知り合い,取立てのような仕事を一緒にして,毎日1万円か2万円をもらっていたが,覚せい剤の関係でのつながりはない,取立ての仕事の際に乗っていた車は覚えていない,覚せい剤所持と使用で服役中,刑務所に取調べに来た検察官に,自分が所持していた覚せい剤のことを話し,その際, いたが,覚せい剤の関係でのつながりはない,取立ての仕事の際に乗っていた車は覚えていない,覚せい剤所持と使用で服役中,刑務所に取調べに来た検察官に,自分が所持していた覚せい剤のことを話し,その際,上記Aの検察官調書に署名指印したが,所持していた覚せい剤が密売目的で被告人から預かっていたことや被告人のもとで覚せい剤密売をしていたこと,拘置所に入ったときに,被告人から差入れをしてもらったという話を検察官にしたことはない旨供述している。 ウ Aの上記検察官調書における供述は,被告人の行う覚せい剤密売に加担するに至った経緯,密売において自己が果たしていた役割などについて具体的に述べており,その内容は,後記のBの供述による覚せい剤の密売状況と合致するほか,供述する覚せい剤の受渡場所,値段,密売人が受渡時に用いていた車の車種などの点において,Dが公判廷で,O,R,I及びHが検察官に対し,それぞれ供述する内容と整合しており,Oにあっては,覚せい剤を届けに来た男がAであると述べている。しかも,Aの上記供述は,同人の覚せい剤営利目的所持の事実についての有罪判決確定後その受刑中にされたものであって,今更被告人への責任転嫁や引っ張り込みの危険があるとは考えられず,殊更嘘をついて暴力団員である被告人を陥れる理由があるとはうかがわれないし,被告人から差入れを受けたことなどAが自ら自発的に述べなければ通常知り得ない事柄まで述べられており,そのような関係にある被告人のいないところでされた供述であることも考慮すると,Aの上記検察官調書における供述の信用性は高い。 これに対し,Aの公判供述は,被告人とは覚せい剤密売ではなく取立てのような仕事を一緒にしており,それによって毎日1万円から2万円もの報酬をもらっていたと言うが,どれくらいの金額を,どのような人物 これに対し,Aの公判供述は,被告人とは覚せい剤密売ではなく取立てのような仕事を一緒にしており,それによって毎日1万円から2万円もの報酬をもらっていたと言うが,どれくらいの金額を,どのような人物から取り立てていたのか,1日の集金額がいくらぐらいであったのか,被告人以外に取立てに加担する者がいたのか,取立ての指示を誰がどのようにしていたのかなどについては,全く具体的説明ができず,その供述内容は甚だ曖昧であって,それ自体不自然である上,上記検察官調書での供述から大きく変遷しているが,その理由についても納得のいく説明をしていないばかりか,Aが,公判廷で,被告人やその背後にある暴力団組織の威力を畏怖し,あるいは,気兼ねをしていたとしても,不自然とはいえず,これらの点を併せ考慮すると,Aの公判供述は信用することができない。 (7) の供述ア Bは,被告人と併合して審理を受けていた第2回公判では,公訴事実は全く身に覚えがなく,平成13年7月30日に前記M株式会社付近路上でHと会ったことはなく,Hという人物自体知らないし,被告人とHに対する覚せい剤譲渡を共謀したこともないと述べ,やはり被告人と併合審理中であった第3回公判では,上記日時ころ,上記場所付近路上で名前を知らない者に1万円と引換に封筒を渡したことはあるが,それに入っていたものが覚せい剤であったかは分からない旨述べていたが,被告人と弁論が分離された後の第5回公判では,従前否認していた事実も含めて公訴事実をすべて認めるに至り,被告人の第16回公判における証人尋問では,大要以下のとおり供述している。 すなわち,Bは,かねてから被告人に覚せい剤の密売を手伝わせてくれるよう言っていたところ,被告人から,平成13年5月の終わりころ,車が手に入ったので手伝ってくれと言われて,覚せい ている。 すなわち,Bは,かねてから被告人に覚せい剤の密売を手伝わせてくれるよう言っていたところ,被告人から,平成13年5月の終わりころ,車が手に入ったので手伝ってくれと言われて,覚せい剤の密売方法についての説明を受けた。 その内容は,毎日夕方被告人に電話をかけて,0.25グラムのパケ15個分の覚せい剤と20本から30本の注射器を受け取りに行き,午後7時から午前零時までの間S近辺で待機し,被告人から連絡を受けて,車で客との待ち合わせ場所に行って金と引換に覚せい剤と注射器を渡し,被告人から帰ってよいと連絡があれば,被告人の所へ行き,売上げと残りの覚せい剤を渡して,10個以上売れたら2万円,10個未満だったら1万円を報酬としてもらえるというものであり,被告人から密売に使用する車として黒色のソアラを渡された。Bは,同年5月の終わりか6月の初めから被告人が逮捕される同年8月30日までの間毎日覚せい剤の密売をしており,被告人から指示された場所まで車で行き,車に来た客に対して,降車せずに窓だけ開けて封筒に入った覚せい剤と注射器を渡し,客から代金を受け取り,一つの取引が終わるごとに被告人に報告していた。同年7月の終わりか8月の初めころからは,売れ残りの覚せい剤を返さずに,15パケに足りない分をその都度被告人から補充してもらうようになり,注射器も毎日受け取るのではなく,280本入りの箱ごと預かるようになった。また,同年7月中ごろには,被告人が用意したシルバーのアリストを密売に使用するようになった。客が覚せい剤を注文するための電話は,末尾efghの携帯電話で,そこにかけると,被告人の持っていた末尾abcdの携帯電話に転送され,被告人が応対していた。被告人は平成13年8月30日の昼間に逮捕されたが,その日は,Bにおいて覚せい剤の密売をすることはな 電話で,そこにかけると,被告人の持っていた末尾abcdの携帯電話に転送され,被告人が応対していた。被告人は平成13年8月30日の昼間に逮捕されたが,その日は,Bにおいて覚せい剤の密売をすることはなかった。被告人の密売を手伝っていたときの売上げは,平均して1日あたり10万円くらいの売上げであった。 イ Bの上記供述は,被告人の覚せい剤密売を手伝うに至った経緯,密売方法,パケの量,報酬額,携帯電話のやりとりなど極めて具体的に述べており,その内容において,Aの上記検察官調書における供述内容や,Dが公判廷で,O,R,I及びHが検察官に対し,それぞれ供述する内容とも整合しており,Hにあっては,平成13年7月30日に被告人に覚せい剤を注文して購入した際覚せい剤を届けに来た男はBであると供述しているところである。これからすれば,Bの上記供述は十分信用することができる。なお,Bは,上記のとおり,被告人と弁論が分離される以前は,Hに対する覚せい剤の譲渡も被告人との共謀も否認していたものの,弁論分離前に事実を認めて供述を変遷させているが,これについては,暴力団員であり,密売においてBに指示をする立場にあった被告人の手前,被告人と共同審理中に,被告人の認否と異なる認否をすることが心理的に困難であったとしても不思議ではない上,Bが,敢えて偽証罪による処罰の危険を冒してまで,暴力団員であり,密売において自らの上位者であった被告人を陥れるべき理由があるとはうかがえないことからすれば,上記供述の変遷をもって,Bの弁論分離後の上記供述の信用性が左右されるものではない。 3 被告人の供述について被告人は,公判において,最終的に,覚せい剤の密売をしていたこと,末尾abcdの携帯電話を所持し,覚せい剤の密売に使用したことがあること,Bを介してHに覚せい剤を 3 被告人の供述について被告人は,公判において,最終的に,覚せい剤の密売をしていたこと,末尾abcdの携帯電話を所持し,覚せい剤の密売に使用したことがあること,Bを介してHに覚せい剤を1回密売したこと,Iに覚せい剤を1回無償で譲渡したことは認めるに至ったものの,それ以外の者への覚せい剤の譲渡は否認し,AやBと共謀したこともない旨供述している。しかしながら,被告人の上記供述は,それぞれが内容において互いに整合し,いずれも高い信用性が認められるD及びBの上記各公判供述部分並びにO,R,I,H及びAの上記検察官に対する各供述の内容とも相反する上,末尾abcdの携帯電話について,捜査段階では,末尾efghへの電話が転送されるものであり,逮捕される1か月くらい前まで,被告人が所持し,客からの覚せい剤の注文を受けていた旨供述しながら,公判廷では,末尾abcdの携帯電話に末尾efghから転送されることについては警察で初めて知ったと答え,検察官から,末尾abcdの携帯電話を持っていたのであれば電話が頻繁にかかってきたのではないかと質問されるや,Hから電話がかかってきたときに,たまたま末尾abcdの携帯電話を所持していたが,それ以外は常に末尾abcdを所持していたわけではない旨答え,さらには,「もう何聞かれても分からんですわ」,「もう弁護士の先生に答えた以外はもう分からんですね」などと述べているのであって,自己の捜査段階での供述を変遷させているばかりか,その供述態度を見ても,自己の記憶に基づいて真しに答えようとする態度とは思えず,これらからすれば,被告人の上記公判供述は信用できず,D及びBの上記公判廷における各供述並びにO,R,I,H及びAの上記検察官に対する各供述の信用性を左右するに足りない。 4 結論(1) 以上検討してきたとお 被告人の上記公判供述は信用できず,D及びBの上記公判廷における各供述並びにO,R,I,H及びAの上記検察官に対する各供述の信用性を左右するに足りない。 4 結論(1) 以上検討してきたとおり,D及びBの上記公判廷における各供述並びにO,R,I,H及びAの上記検察官に対する各供述はいずれも信用できるところ,これらに加えて,前掲関係各証拠によれば,被告人は,遅くとも平成11年11月1日以降,末尾efghの携帯電話及びそれから着転送される末尾abcdの携帯電話を利用して覚せい剤の密売を行っており,少なくとも平成11年11月1日から平成12年9月26日までの間はAと共謀して同人を売り子として,また,遅くとも平成13年6月初めころから被告人が逮捕された平成13年8月30日までの間はBと共謀して同人を売り子として,それぞれ毎日のように覚せい剤を密売しており,その間,自ら直接覚せい剤を密売することもあったと認められ,これからすれば,Aが逮捕された後Bを売り子とするまでの間も,IやHが末尾efghに電話して覚せい剤を被告人に注文し,被告人において直接覚せい剤を受け渡していたことに照らすと,被告人が覚せい剤の密売を継続的に行っていたものと推認することができ,そのようななかで,被告人は,判示第1の1別表1ないし4記載のとおり,Aと共謀の上,D,O及びRに覚せい剤を譲渡し,判示第1の1別表5のとおり,単独でIに覚せい剤を譲渡し,判示第1の1別表6のとおり,Bと共謀の上,Hに覚せい剤を譲渡したことが認められる。 (2) 前項で認定した事実からすれば,被告人は,遅くとも平成12年2月1日から逮捕される平成13年8月30日までの間,末尾efgh及びそれから着転送される末尾abcdの各携帯電話を利用して,時にはAやBという売り子を用いて0.25グラムに は,遅くとも平成12年2月1日から逮捕される平成13年8月30日までの間,末尾efgh及びそれから着転送される末尾abcdの各携帯電話を利用して,時にはAやBという売り子を用いて0.25グラムに小分けされたパケ1つ又はこれと注射器1本を1万円で密売していたことが認められるのであって,営業的活動と認められる形態で,覚せい剤の譲渡ないし覚せい剤様の物品を覚せい剤として譲渡することを反復継続していたといえ,被告人の覚せい剤ないし覚せい剤様の物品の譲渡は「業として」なされたものというべきである。 第3 判示第1の2及び3の覚せい剤ないし大麻の営利目的所持の点について前記認定のとおり,被告人は,遅くとも平成12年2月1日から平成13年8月30日まで覚せい剤を譲渡することを業としていたものであり,判示第1の2及び3の各覚せい剤の所持は,その期間中に敢行されたものである上,上記第2,1,(2)のとおり,その所持量がそれぞれ順に約8グラム,約34グラムと,いずれも多量であること,判示第1の2の所持にかかる約8グラムの覚せい剤についてはほぼ均一に約0.25グラムに小分けされたパケ24個と,約0.5グラム,約2.2グラム,約0.045グラムに小分けされたパケ3個からなっており,スコップやストロー片と一緒に巾着袋に入った状態で発見されていること,判示第1の3の所持にかかる約34グラムの覚せい剤についても被告人の車の中にあった水色バッグ及び黒色バッグから発見された物であるが,同じ車内の黒色ポーチ内からは計量器やスコップが発見されているほか,トランクからは注射器が1箱も発見されていることからすれば,上記いずれの覚せい剤も被告人が営利目的で所持していたことは明らかである。 また,判示第1の3の大麻所持についても,その当時,被告人が上記のとおり覚せい が1箱も発見されていることからすれば,上記いずれの覚せい剤も被告人が営利目的で所持していたことは明らかである。 また,判示第1の3の大麻所持についても,その当時,被告人が上記のとおり覚せい剤の譲渡を業としていたこと,所持していた大麻の量が約33グラムとこれも多量である上,上記密売用の覚せい剤約34グラムの一部とともに同じ黒色バッグの中に入った状態で発見されたこと,被告人は,大麻をグラム2000円で仕入れ,3グラムを1万5000円で密売していたことなどからすると,やはり営利目的で所持していたことは明らかである。 なお,被告人は,公判廷では,その一部は自己使用ないし無償譲渡目的で所持していた旨供述するが,捜査段階では,その所持にかかる覚せい剤や大麻は密売目的であった旨供述していたものであり,その供述の変遷について合理的な説明をしていない上,判示第1の2及び3の各犯行当時,上記第2のとおり,被告人が,覚せい剤を密売していたこと,公判廷において,大麻については使用したことはない旨述べていること,上記所持していた覚せい剤及び大麻の量,所持の態様に照らすと,被告人の,上記公判供述は信用することができない。 (累犯前科)(省略)(法令の適用)(省略)(追徴に関する補足説明)前記認定のとおり,被告人は,遅くとも平成12年2月1日から被告人が逮捕された平成13年8月30日まで覚せい剤等を譲渡することを業としたものであるところ,その間の売上げについて以下検討する。 1 平成12年2月1日から同年9月26日までの間の売上げについてAの検察官調書によると,被告人の覚せい剤等の密売による売上げは,Aが密売に関与した平成11年から,同人が逮捕される平成12月9月26日までは,1日平均少なくとも10万円であったことが認められる。 2 平 察官調書によると,被告人の覚せい剤等の密売による売上げは,Aが密売に関与した平成11年から,同人が逮捕される平成12月9月26日までは,1日平均少なくとも10万円であったことが認められる。 2 平成13年6月初めから同年8月30日までの間の売上げについてBが密売に関与した,遅くとも平成13年6月初めから,被告人が逮捕される同年8月30日までの覚せい剤等の密売による売上げについて,Bは,被告人との弁論分離後の第13回公判における自身の被告人質問における供述及び検察官に対する供述において,上記期間1日平均少なくとも10万円の売上げがあった旨述べているのに対し,第16回公判における証人尋問では,当初1日平均の売上げは10万円であったと供述していたが,その売上額がB自身に対する追徴額にも関わることの指摘を受けると,確実に売れていた覚せい剤の数となると1日5パケである旨供述をするに至っている。そこで検討するに,Bが関与していた時期の売上額は,同人自身に対する追徴額にも影響するところであり,Bにおいて,これを過大に述べることにより自己の刑責を軽減することができるわけではない。しかも,Bは,第16回公判で密売による売上額が追徴額に影響することを指摘されるまでそのことを認識しておらず,したがって,その売上額如何が被告人にとっても重大な利害関係を有するとの認識や,売上額を殊更に過大に述べることにより自己の刑責を軽減する理由は特になかったものといえるから,かかる状況下でなされた供述は,B自身の認識を素直に述べたものとしてその信用性を高く評価できる。 また,第16回公判におけるBの供述をみても,当初は,何のためらいもなく1日平均して10万円の売上げがあったと答えて,上記Bの裁判官調書及び検察官調書と合致する供述をしていたところ,その後,裁判官の補充尋 第16回公判におけるBの供述をみても,当初は,何のためらいもなく1日平均して10万円の売上げがあったと答えて,上記Bの裁判官調書及び検察官調書と合致する供述をしていたところ,その後,裁判官の補充尋問において,裁判官から,その答え次第によって追徴額が変わってくる旨告げられた上,「毎日5個は少なくとも売れてるというふうに言われてもしょうがないと思うか,7個売れているとしょうがないと思うか,あるいは10個と言われてもしょうがないと思うか,そこら辺の感覚で言うと,あなた自身の感じとしてはどうですかというんです。」と尋問され,これに「それは,ちょっとよく分からないんですけど,5個は売っていたと思います。」と答えるや,さらに「5個ぐらいが一番,まあ,堅く言えば5個と,5個ぐらいにはなるかという感じですかね。」と言われた結果,「はい。」と答えるに至ったもので,このような供述態度に加えて,当時,同人の被告事件の弁論は一旦は終結していたが,なお判決宣告前であり,同じ裁判体で審理していたことからすると,Bとしては,自分に対する判決での追徴額に対する影響を考慮して,上記のような裁判官自身の質問に対し,やや迎合して,控えめな額を述べたと考えても不自然ではなく,第16回公判におけるBの上記供述部分のみを取り上げて,売上げが1日10パケであったする,上記Bの裁判官調書や検察官調書での供述はもとより,同公判期日におけるBの他の供述部分の信用性を減殺するものではないというべきである。 そうすると,上記期間における覚せい剤密売の売上げは,1日平均少なくとも10万円であったものと認めるのが相当である。もっとも,被告人は,平成13年8月30日は,遅くとも午後1時52分に判示第1の3のとおり,小分けした覚せい剤及び大麻を,スコップ,ストロー片等と共に所持しているところを ものと認めるのが相当である。もっとも,被告人は,平成13年8月30日は,遅くとも午後1時52分に判示第1の3のとおり,小分けした覚せい剤及び大麻を,スコップ,ストロー片等と共に所持しているところを発見されて現行犯逮捕されており,この日においても,上記のとおり,覚せい剤等の譲渡を業としていたことは認められるものの,この日にも1日10万円の売上げがあったとまでは推認できず,他に,いくらの売上げがあったかを認めるに足りる証拠はない。 3 さらに,B及びAらの関与していない,平成12年9月27日から平成13年6月初めまでの間も,被告人が末尾efgh及びabcdの携帯電話を利用して覚せい剤を密売をしていたことは先にみたとおりであり,この間,被告人が別に売り子を使っていたかは証拠上明らかでないが,それ以外は特段密売形態が変わったことをうかがわせる事情はなく,Aが逮捕された後Bが関与する前である平成13年2月18日ないし同年3月7日の間における,末尾efghの携帯電話の末尾abcdの電話への着転送の状況によると,1日あたり平均17件弱も末尾efghへ架電されていることからすれば,上記A及びBが関与していない期間においても,A及びBが関与していた時期と同様1日平均10万円を下らない覚せい剤の売上げがあったものと推認することができる。 4 結局,被告人は,遅くとも平成12年2月1日から平成13年8月30日まで覚せい剤ないし規制薬物の譲渡を業としたことにより,自身が逮捕された平成13年8月30日を除き,1日平均10万円,合計5760万円(=10万円/日×576日)を下らない現金を得たものと認められるが,これはその所在を確認することができず,没収することはできないから,その価額を被告人から追徴することとした。 (量刑の理由)本件は,被告人が,営利目的で )を下らない現金を得たものと認められるが,これはその所在を確認することができず,没収することはできないから,その価額を被告人から追徴することとした。 (量刑の理由)本件は,被告人が,営利目的で,①共犯者と共謀するなどして前後6回にわたり5名に対し覚せい剤を譲り渡したほか,多数回にわたり多数人に対し覚せい剤様の物を覚せい剤として譲り渡して覚せい剤等を譲り渡すことを業とした(判示第1の1)ほか,②覚せい剤合計約42グラムと大麻約30グラムを所持し(判示第1の2及び3),さらに,③覚せい剤を自己使用した(判示第2)という事案である。 被告人の覚せい剤等の密売態様は,自己の所在を知られずに簡便に覚せい剤の密売ができるよう,電話で注文を受けて受渡場所を指定し,その指定場所で客と覚せい剤の受渡しをするといういわゆる出前方式をとった上,被告人自身の持っている携帯電話の番号を知られないように,別の携帯電話で客からの注文を受け,それをすべて被告人の所持する携帯電話に着転送させ,さらに,覚せい剤を届ける際客と接することとなる売り子役として共犯者を雇い,その売り子役の使用する自動車も何度か別の物に変えるなどしており,犯行が発覚しないように周到かつ巧妙に仕組まれた極めて組織的かつ計画的な犯行というべきである。 そして,被告人は,約1年半もの長期にわたって,1日平均売上げにして10万円分の覚せい剤等を密売し続け,その結果,多量の覚せい剤を社会に拡散させ,その害毒を流し続け,それにより5760万円もの多額の売上げを得た上,そこから自らも少なからざる利益を得たものと思われるのである。 また,被告人の所持に係る覚せい剤は合計約43.09グラム,大麻は約33. 78グラムと多量である上,上記のような密売方法を持つ被告人の手によって,これらが密売に供され,社会に害毒 われるのである。 また,被告人の所持に係る覚せい剤は合計約43.09グラム,大麻は約33. 78グラムと多量である上,上記のような密売方法を持つ被告人の手によって,これらが密売に供され,社会に害毒を拡散させた危険も大きかったというべきである。 このような被告人が行っていた覚せい剤等の密売の態様,量等に鑑みると,被告人及びその共犯者1,2名でなし得るものとは解されず,より大きな密売組織が存在し,被告人らはその一部を構成しているものとうかがわれるところであるが,その組織の全貌は明らかではないにしろ,被告人は,注文を受け付ける携帯電話を所持し,小分けした覚せい剤を管理するなどしているほか,覚せい剤を届けるための売り子として共犯者を雇い入れたり,売り子用の車を用意するなど,まさに本件犯行の中心的役割を担っていたと評価できる。さらに,被告人は,覚せい剤の自己使用や無償譲渡による同種前科4犯を含む前科6犯を有し,何度も服役して改善更生の機会を与えられていながら,覚せい剤自己使用による前刑の出所後1年もたたないうちに本件密売を敢行し,前刑出所後約2年で再び覚せい剤の自己使用にも及んでいることからすれば,その規範意識の鈍磨は著しく,覚せい剤に対する親和性,常習性も明らかで,再犯のおそれも強いというべきである。しかるに,被告人は,公判廷において,たびたび供述を変遷させ,最後まで不合理な弁解を維持しており,そこには真しな反省の情をうかがうことができないのであって,以上からすると,被告人の刑事責任は重いと言うほかない。 したがって,被告人が捜査段階の当初から少なくとも覚せい剤を自己使用した事実については認めており,覚せい剤を密売していたこと自体も最終的には認めるに至っていること,被告人は,その覚せい剤密売において中心的な役割を果たしているものの,その首 くとも覚せい剤を自己使用した事実については認めており,覚せい剤を密売していたこと自体も最終的には認めるに至っていること,被告人は,その覚せい剤密売において中心的な役割を果たしているものの,その首謀者ないし元締め的な立場とまではうかがわれないことなど,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文掲記の刑を科することはやむを得ないと考えた。 (求刑懲役12年,罰金300万円及び追徴5760万円)平成15年7月30日広島地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官岩倉広修裁判官甲斐野正行裁判官中野智昭

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