昭和26(う)1235 法人税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和27年1月31日 東京高等裁判所 棄却
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。          理    由  本件各控訴の趣意は、被告人等の弁護人清瀬一郎作成の控訴趣意書(同弁護人作 成の昭和二十六年七月二十八日附「控訴趣意書中

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主文 本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人等の弁護人清瀬一郎作成の控訴趣意書(同弁護人作成の昭和二十六年七月二十八日附「控訴趣意書中訂正書」によつて訂正されたもの)並びに被告人等の弁護人竹上半三郎、同林逸郎、同渡辺靖一及び同伊藤英夫共同作成の控訴趣意書(第十点については、同弁護人等作成の昭和二十六年七月二十八日附「弁駁書」第二によつて補充されたもの)に記載してあるとおりであり、その答弁は、検事宮本多賀雄作成の答弁書に記載してあるとおりであるから、ここにこれを引用し、それぞれ、次のように判断する。 弁護人清瀬一郎の論旨第一点について法人税法第九条所定の総益金及び総損金の意義については、国税庁長官の通達のように、前者は、法令により別段の定のあるものの外資本の払込以外において純資産増加の原因となるべき一切の事実をいい、後者は、法令により別段の定のあるものの外資本の払戻又は利益の処分以外において純資産減少の原因となるべき一切の事実をいうものと解すべきことについては異議はない。又かゝる税法の規定の解釈については、民法上の法<要旨第一>理に偏することなく、経済上の見地から妥当な解釈を施すべきことも当然である。しかしながら、被告会社が</要旨第一>本件事業年度において繭及び生糸を甲会以外にいわゆる横流販売を行つたため、同会に売り渡すべき同年度分の責任生糸量に不足を生じ、次年度においていわゆるルート外の闇繭を購入してこれを補填する必要が生したからとて、かかる事実をもつて所論のように被告会社の本件年度の総損金中に算入すべきものと解することはできない。 けだし、闇繭の買入、その加工及びその製造生糸の売渡は、あくまで次年度以降のことであつて、本件年度においては、未だ闇繭の購入契約はされていな 本件年度の総損金中に算入すべきものと解することはできない。 けだし、闇繭の買入、その加工及びその製造生糸の売渡は、あくまで次年度以降のことであつて、本件年度においては、未だ闇繭の購入契約はされていないのであつて、その代価を決定し得ないものであり、該闇繭の購入及び加工並びに生糸の納入販売により幾許の損益を来たすかも知ることができないものであるから、いかに経済上の見地から解釈しても、税法上かゝる損益の確定し得ないものを本件年度の損金に計上すべきものとは解し得ないからである。所論のように、次年度以降に購入すべき闇繭の価格を少くも被告会社が本件年度においで横流した繭の売値と同額と見ることは、合理的根拠を欠く単なる一応の推測に過ぎないものであつて、これにより、本件年度において、現実に被告会社の純資産減少の原因たるべき事実が生じているものと解することはできない。また、被告会社は、本件の繭又は生糸の横流に当つては、該物件の代金を取得すると共に該物件の所有権を喪失しているのであるから、本件のいわゆるB資産に顕れた被告会社の本件年度における右物件の横流による利益金を被告会社の該年度の所得に算入することは、対応する収益と支出とを同一年度に計上処理することとなるのであつて、これ以上同年度において次年度以降に生ずべき所論保有繭の補填に要する費用を勘案する要を見ない。従つて、原判決には、所論のような法人税法第九条所定の総益金及び総損金の観念を誤解し、且つ、法人税法適用の前提たる企業会計原則に違反した違法があるものとすることはできない。論旨は、すべて、独自の見解による論難であつて、理由がない。 弁護人清瀬一郎の論旨第四点及び弁護人竹上半三郎外三名の論旨第四点について<要旨第二>不法行為による所得も、税法上の所得に含まれ、課税の対象となる旨の原判決の判断は正当で であつて、理由がない。 弁護人清瀬一郎の論旨第四点及び弁護人竹上半三郎外三名の論旨第四点について<要旨第二>不法行為による所得も、税法上の所得に含まれ、課税の対象となる旨の原判決の判断は正当である。国民は、</要旨第二>国家の構成員として、資力に応してその経費を分担し、その財政を維持すべきことは当然であり、憲法第三十条は、国民は法律の定めるところにより納税の義務を負う旨を規定している。そして、わが税法は、国民の所得に対し課税する旨を定めているが、その所得の原因の合法・不法を区別してはいない。本件当時の法人税法にいう法人の普通所得は、当時の同法第九条に規定するように、その総益金から総損金を控除した金額によるものであり、同上超過所得は、右普通所得を基礎として当時の同法第十三条の規定により算出されるものである。そして、右総益金及び総損金の意義については、弁護人清瀬一郎の論旨第一点に対する判断の冒頭に叙べたとおりである。従つて、特に法令により不法行為による所得を除外する旨規定していない以上、かかる所得も、課税の対象となることは当然である。本来、所得の原因が合法であるか不法であるかの問題は、税法の領域外のものである。従つて、被告会社の本件物価統制令違反による所得も、課税の対象たるべきことは明らかである。論旨摘録の昭和十七年七月七日大蔵省主税局長から各財務局長に宛てた主秘第三四二号通牒及び昭和二十一年八月七日の議会委員会における政府委員の答弁は、当時の社会情勢のもとにおいては、いわゆる闇取引は、司法権により取り締まり得るものと考え、裁判所の刑事判決により闇取引による利得を没収又は追徴すれば足るとの意図のもとに、当時の政府の方針としては、闇取引による利得については、課税しない旨を表示したに過ぎないものであつて、もとより税法に関する有権解釈の趣旨 より闇取引による利得を没収又は追徴すれば足るとの意図のもとに、当時の政府の方針としては、闇取引による利得については、課税しない旨を表示したに過ぎないものであつて、もとより税法に関する有権解釈の趣旨でないことは、該通牒及び答弁の内容自体並びに原審における証人乙に対する尋問調書中の同人の供述記載に徴して明らかなところである。従つて、統制法令違反による所得に対する課税後、刑事判決によつて該統制令法違反の事実が確定したからとて、当然に税額返還の問題を生ずるものではないから、これがため、所論のような憲法第八十四条の主旨違背の問題を生ずるものでもない。原判決が被告会社の物価統制令違反による所得を課税の対象としたことについては、何ら所論のように法人税法第九条その他の同法の規定の解釈を誤つたものではない。論旨は、いずれも、独自の見解によるものであつて、理由がない。 弁護人清瀬一郎の論旨第三点について犯罪行為による所得といえども、前叙のように課税の対象たる税法上の所得と解すべき以上、申告納税制度を採用するわが税法のもとにおいては、納税義務者は、国税官署に対してその申告をするを要することは当然である。税法は、もとより犯罪行為の告知を要求するものではないから、納税義務者は、かゝる所得の原因たる犯罪行為を告知する必要はないが、さればとて、犯罪行為による所得を隠蔽して該所得を申告しないことは許されないところである。法人の機関が、右法人のため、公表しない裏帳簿を作成し、該法人の物価統制令違反による所得をこれに登載して右所得を隠蔽し、該所得を国税官署に申告しないで、これに対する法人税を免れたような場合には、該行為は、法人税法第四十八条に抵触することは言うまでもないところであり、本件がかゝる場合に該当することは、原判決の援用証拠上明らかなところである。憲法第三 れに対する法人税を免れたような場合には、該行為は、法人税法第四十八条に抵触することは言うまでもないところであり、本件がかゝる場合に該当することは、原判決の援用証拠上明らかなところである。憲法第三十八条第一項は、その規定の位置から見て、刑事手続を主たる目標とするものであることは疑ないが、その文言中に対象を刑事手続に限定する趣旨は顕れていないのであるから、刑事手続以外にわたつても、刑事責任に関する不利益な供述の強<要旨第三>要禁止をしたものと解しなければならないけれども、申告納税制度は、前叙のように、納税義務者に所得の申</要旨第三>告を求めるものではあるが、その原因たる犯罪行為の告知を求めるものではないから、該制度が右憲法の規定に違反するものとは解し得ないところであり、この点に関する原判決の判断は正当である。国家は、所論のように、納税義務者の申告によらなくても、これに課税し得ないものではない。しかし、かかる課税方法は、国民が民主的に正しい申告納税を行う場合と比べて、徴税を複雑且つ不正確ならしめ、且つ、新憲法に示された民主主義の精神にも背馳するものであるから、納税義務者が犯罪行為による所得について、所得そのものの申告をも拒否することは、原判決にいう公共の福祉に反するものと云わねばならない。所論刑事訴訟法第二百三十九条第二項は、もとより訓示規定であつて、公務員が国民を告発するには慎重たるを要することは当然であるから、前叙のように納税義務者に所得の原因たる犯罪行為の告知義務がない以上、右規定に籍口して所論のように申告納税制度を論難することは当らない。又国税犯則取締法第十二条の二に至つては、これが国税に関する税法上の犯則事件に関するものであつて、所得の原因たる犯罪行為に関する告発の手続を規定したものでないことは明らかであるから、該規定に基いて 。又国税犯則取締法第十二条の二に至つては、これが国税に関する税法上の犯則事件に関するものであつて、所得の原因たる犯罪行為に関する告発の手続を規定したものでないことは明らかであるから、該規定に基いて申告納税制度を論難することも当を得ない。税法に規定する手続は、もつぱら徴税の目的のためのものであつて、刑事事件の捜査のための手続ではないのであるから、納税義務者が犯罪行為による所得について所得そのものの申告をも自己の刑事責任上不利益な供述として拒否することは、公共の福祉に反する自由権の濫用と言わなければならない。法人税法第四十八条にいう詐偽その他不正の行為とは、所得の原因たる犯罪行為の不告知を指すものではないことは明らかであり、原判決がかゝる点を犯罪として処断したものでないことについては、曩に叙べたとおりである。従つて、原判決が本件につき法人税法第四十八条を適用したことについては、何ら所論のように法令の解釈を誤つたものでもなく、憲法の規定に違反したものでもない。論旨は、すべて、独自の見解による推論であつて、理由がない。 弁護人清瀬一郎の論旨第五点及び弁護人竹上半三郎外三名の論旨第七点について<要旨第四>本件行為当時の法人税法第四十八条規定の逋脱罪が、当時の同法第二十一条のいわゆる中間申告による納税</要旨第四>の場合にも成立するものと解した原判決の判断は、正当である。当時の法人税法第四十八条は、詐偽その他不正の行為により法人税を免れた場合においては云々と規定し、第二十一条によるいわゆる中間申告の場合と第十八条によるいわゆる確定申告の場合とを区別してはいない。 当時の激しいインフレーシヨンの昂進に対処し、国家予算執行のため、財政収支の時期的均衡を図り、他面インフレーシヨンの抑制にも資するため、徴税方法を合理化し、早期に税収を確保するため、法人 はいない。 当時の激しいインフレーシヨンの昂進に対処し、国家予算執行のため、財政収支の時期的均衡を図り、他面インフレーシヨンの抑制にも資するため、徴税方法を合理化し、早期に税収を確保するため、法人税法は、右第二十一条により法人の本来の事業年度の外に、その中途においてあらたに徴税目的の止めの別個の事業年度を設けたものと解しなければならないのであつて、中間申告の場合であるからとて、確定申告の場合と異つて第四十八条の対象とならないものと解すべき理由はない。若し、中間申告の場合において、故意に詐偽その他不正の行為によつてその納税をしなかつた者でも、確定申告の際に至つてこれを是正すれば、右法人税法第四十八条の対象から除かれて、同法の罰則の適用がないものとするならば、当時のインフレーシヨンの昂進期において右同法第二十一条第二十六条により忠実に所得の申告、納税を果した者と比較し、徴税の公平を期し得ないものと言わなければならないのであつて、かくては、確定申告による納税義務のみ遵守されて、中間申告による納税義務は無視され、法が特に早期税収確保のため、本来の事業年度の外に中間の事業年度を設けた趣旨は、没却されるに至るものと言わなければならない。右のような解釈は、到底当時の法人税法の法意に副うものとは解されない。従つて、中間申告の場合においても、詐偽その他不正の行為により期限内に正規の納税をしなかつたときは、当然逋脱犯の既遂が成立するものと解しなければならない。営業には、その主体の定める一事業年度が終らなければ正しい成果の判明しないものがあることは否めないけれども、さればとて、法定の右中間の事業年度に明らかに顕れた利得を秘し、不正の行為によつてその申告、納税を行わなかつた場合には、所論のようにこれを逋脱犯から除外すべき理由はない。原判決は、第一の犯罪事実と 、さればとて、法定の右中間の事業年度に明らかに顕れた利得を秘し、不正の行為によつてその申告、納税を行わなかつた場合には、所論のようにこれを逋脱犯から除外すべき理由はない。原判決は、第一の犯罪事実として、「昭和二十二年四月一日より同年九月三十日迄の第二期事業年度の中間所得申告を為すに際し、……昭和二十二年十一月二十四日上田税務署長に対し、普通所得なしと虚偽の所得申告を為し、以て正規の法人税三百六十八万五千四百三十九円を逋脱し」と判示しているが、原判決の犯罪事実及び証拠の各摘示に徴するときは、右は、虚偽申告の際逋脱犯の既遂が成立したとの趣旨ではなく、虚偽の申告をしてそのまゝ法定の納税期限を徒過し、右正規の法人税を逋脱した趣旨を判示認定したものであることが明らかである。(しかも、本件は、右中間申告の場合においてその納税を逋脱したばかりではなく、確定申告の際に至つてもこれを是正することなく、依然正規の納税を逋脱したものであることは、原判決がその第二の犯罪事実として認定するとおりである。)原判決は、所論のように、当時の法人税法第四十八条の解釈、適用を誤つたものではない。論旨は、すべて独自の見解によるものであつて、理由がない。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事三宅富士郎判事荒川省三判事堀義次)

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