令和6(行ケ)1 人口比例選挙請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月26日 名古屋高等裁判所 金沢支部 棄却
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判決文本文21,063 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨等 1 請求の趣旨令和6年10月27日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の富山県第1区ないし第3区、石川県第1区ないし第3区並びに福井県第1区及び第2区における選挙をいずれも無効とする。 2 事案の概要 本件は、令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、富山県、石川県及び福井県の各選挙区(以下、併せて「本件選挙区」という。)の選挙人である原告らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法によって保障される一人一票の投票価値の平等に違反して無効であるか ら、これに基づき施行された本件選挙の本件選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した公職選挙法204条に基づく選挙無効訴訟である。 第2 前提事実次の事実は、争いがないか、証拠(甲3、4、6、27、28のほか、後掲のもの)及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 1 衆議院議員選挙制度の改正経緯、最高裁判所判決の推移等(1) 公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、小選挙区比例代表並立制を採用しており、衆議院議員の定数は465人とされ、そのうち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員とされている(4条1項)。 小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区におい て1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、後 記の改正の前後を通じてこれらの規定を併せて「区割規定」という。)、比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。 人の議員を選出するものとされ(同法13条1項、別表第1。以下、後 記の改正の前後を通じてこれらの規定を併せて「区割規定」という。)、比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については、全国に11の選挙区を設け、各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている(同法13条2項、別表第2)。総選挙においては、小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い、投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごと に1人1票とされている(同法31条、36条)。 衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下、後記の改正の前後を通じて「区画審設置法」という。)2条は、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案(以下単に「改定案」という。) を作成して内閣総理大臣に勧告するものと規定している。 (2) 平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法(以下「旧区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、①1項において、統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査(以下「大規模国勢調査」という。)の 結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは、これを行うことができると規定していた。そして、旧区画審設置法3条は、改定案の作成の基準(以下、後記の改正の前後を通じて「区割基準」という。)について、①1項におい て、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得 以下、後記の改正の前後を通じて「区割基準」という。)について、①1項におい て、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県に あらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」とい う。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると規定していた(以下、この区割基準を「旧区割基準」という。)。 平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)は、平成24年改正法による改正前の区割規定(以下「旧区割規 定」という。)の定める選挙区割りの下で行われたものであるところ、同日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった(乙4の1)。 平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3 月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、旧区画審設置法3条1項は投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、同選挙時において、選挙区間の投票価値の較差が拡大していたのは、1人別枠方式がその主要な要因となっていたことは明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定 を定めたものであると評価する一方、同選挙時において、選挙区間の投票価値の較差が拡大していたのは、1人別枠方式がその主要な要因となっていたことは明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定 数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧区割規定の定める選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。そして、平成23年大法廷判決は、この状態につき憲法上要求される 合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準を定めた規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の 平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 (3) 平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、旧区画審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の選挙区数を1ずつ減ずる措置をいう。)を内容とする平成24年改正法が成立したが、同日に衆議院が解散されたため、同年12月16日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成 24年選挙」という。)は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成 く旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は、同選挙時において旧区割規定の 定める選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては今後も平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条(旧区画審設置法3条1項と同内 容の規定)の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 (4) 平成24年改正法の附則の規定に基づく区画審の勧告を受けて、平成25年6月24日、0増5減の措置を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改定することを内容と する同年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)が成立した。 平成25年改正法による改正後の平成24年改正法によって区割規定が改正され、平成22年に行われた大規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされたが、同26年12月14日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」という。)の当日において は、選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選挙人数が最も 少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった(乙4の3)。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁 ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった(乙4の3)。 平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は、0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外 の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあり、このような投票価値の較差が生じたことは、全体とし て平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、平成27年大法廷判決は、同条の趣旨に沿 った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までの国会における是正の実現に向けた取組は、 立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 (5) 平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人 して相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 (5) 平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないようにす るための制度の見直し等について検討が続けられ、平成26年9月以降、有 識者により構成される衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」において調査、検討等が行われた。 上記調査会は、平成28年1月14日、衆議院議長に対し、答申を提出した。同答申は、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減 して176人)とする案が考えられるとした上、投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選挙区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度 将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを挙げ、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分をいわゆるアダムズ方式(各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式)により行うものとした。そして、同答申は、各都道府県への議 席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査の結果、選挙区間の人口の較 都道府県への議 席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、区画審において、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。 (乙13)(6) 前記⑸の答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とするとともに、各都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする 同年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)が成立した。 平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、①1項において、平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、統計法5条2項ただし書の規定に より大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果による各選挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定する。そして、新区画審設置法3条は、 区割基準について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。 から1年以内に、これを行うものと規定する。そして、新区画審設置法3条は、 区割基準について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。以下同じ。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、 ②2項において、同法4条1項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た 数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、③3項において、同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区の改定の仕組みを「新区割制度」という。)。 さらに、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数 の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、新区画審設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上 記改 かかわらず、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上 記改定案の作成について、新区画審設置法3条の規定にかかわらず、各都道府県の選挙区数につき、選挙区数の変更の影響を受ける都道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置(平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口 を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置をいう。)を講じた上で(2項)、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし(3項1号イ)、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基 づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とする(同号ロ)とともに、各選挙区の平成27年国勢調査の結果による人口及び平成32年(令和2年)の見込人口の均衡を図り、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。 区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、0増6減の措置 を講ずることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った(乙16の2)。これを受けて、平成29年6月9日、同年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成立し、同法による改正後の平成28年改正法によって区割規定が改正された(以下、同改正後(令和4年法律第89号による改正前)の区割規定を 「 法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成立し、同法による改正後の平成28年改正法によって区割規定が改正された(以下、同改正後(令和4年法律第89号による改正前)の区割規定を 「平成29年区割規定」といい、平成29年区割規定の定める選挙区割りを 「平成29年選挙区割り」という。)。 (7) 平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、平成29年選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第1 3区)との間で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった(乙4の4)。 最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は、平成29年選挙当時の平成29年選挙区割りについて、各都道府県への定数配分 を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させその状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、平成28年改正法の附則の規定により、同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置として、0増6減の措置を前提に次回の大規模国勢調査が行われる平成32年(令和2年)までの5年間を 通じて選挙区間の人口の較差が2倍未満となるよう選挙区割りを定めることによって、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした。そして、平成30年大法廷判決は、平成29年改正法までの立 って、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした。そして、平成30年大法廷判決は、平成29年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況を考慮すると、平成29年選挙にお いて、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分された定数に変更がなくこれとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実 現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改 正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとし、平成29年選挙当時において平成29年選挙区割り は憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示した。 (8) 令和3年10月14日に衆議院が解散され、同月31日、平成29年選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙区割りの下では、令和2年に行われた大規模国勢調査の 結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となり、令和3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対2 よれば選挙区間の人口の最大較差は1対2.096となり、令和3年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対2.079であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は29選挙区であった(乙4の5)。 最高裁令和4年(行ツ)第130号同5年1月25日大法廷判決・民集77巻1号1頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)は、令和3年選挙における選挙区間の較差は平成29年選挙当時よりも拡大し、最大較差が1対2.079になるなどしていたが、新区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前 提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、新区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができ、上記のような平成29年選挙区割りの下で較差が拡 大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新た な要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないところ、令和3年選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度 も著しいものとはいえないから、上記の較差の拡大をもって、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の 人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度 も著しいものとはいえないから、上記の較差の拡大をもって、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできないと判示した。 (9) 令和3年選挙に先立つ令和3年6月25日に令和2年に行われた大規模国勢調査の結果(速報値)が官報で公示されたことを受け、区画審は、同年7 月2日以降、改定案の作成に向けて調査審議し、都道府県知事への意見照会の結果等も踏まえ、令和4年2月21日、市(指定都市では行政区)区町の区域は一定の基準に当てはまらない限り分割しないこととする旨を含む改定案の作成方針を取りまとめ、同年6月16日、内閣総理大臣に対し、改定案の勧告を行った。 同改定案は、初めてアダムズ方式により各都道府県への定数配分を行い、定数を、東京都で5、神奈川県で2、埼玉県、千葉県及び愛知県で各1の合計10増加させる一方、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県及び長崎県で各1の合計10減少させる(10増10減)とともに、上記の都県を含む25都道府県の140選挙区におい て選挙区割りを改めたものであった。 これを受けて、令和4年11月18日、上記改定案のとおり小選挙区の区割り改定を行うこと等を内容とする同年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)が成立した(以下、同法による改正を「令和4年改正」といい、同改正後の区割規定を「本件区割規定」といい、本件区割規定の定める 選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)。 本件選挙区割りによれば、令和2年に行われた大規模国勢調査の結果(確定値)を基準とすると、各都道府県間の議員1 件区割規定の定める 選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)。 本件選挙区割りによれば、令和2年に行われた大規模国勢調査の結果(確定値)を基準とすると、各都道府県間の議員1人当たりの人口の最大較差は1.697倍となり、選挙区間の選挙人数の最大較差は、平成29年選挙区割りによる2.096倍(鳥取県第2区と東京都第22区)から1.999倍(鳥取県第2区と福岡県第2区)に縮小され、選挙区割りによって区域内が分割 される市区町は、平成29年選挙区割りの105から32に減少した。 (乙2〔28ないし37頁〕、乙20の6、乙25、26の1、2、乙27の2ないし5、乙28の2、乙29の1、2)。 (10) 令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日、本件選挙区割りの下で本件選挙が施行された。 本件選挙区割りの下では、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海道第3区)との間で1対2.059であり、同区のほか、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は、北海道第1区(2.032)、同第2区(2.053)、宮城県第2区(2.028)、茨城県第 6区(2.029)、神奈川県第15区(2.024)、京都府第6区(2.033)、福岡県第2区(2.048)、同第3区(2.002)、同第5区(2.029)の9選挙区であった(乙3)。 2 当事者(原告適格)等(1) 原告らは、それぞれ本件選挙の富山県第1ないし3区、石川県第1ないし 3区、並びに福井県第1及び2区(本件選挙区)の選挙人である。 (2) 本件選挙当日における選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と本件選挙区の選挙人数の較差は、富山県第1区が 1ないし 3区、並びに福井県第1及び2区(本件選挙区)の選挙人である。 (2) 本件選挙当日における選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と本件選挙区の選挙人数の較差は、富山県第1区が1.180、同第2区が1.071、同第3区が1.577、石川県第1区が1.663、同第2区が1.439、同第3区が1.032、福井県第1区が1.634、同第2区が1.141 であった(乙3)。 第3 当事者の主張本件の主たる争点は、本件選挙時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったかであり、その余の争点は、仮に違憲状態にあったとの評価がされるとしても、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるかである。 主たる争点に関する当事者の主張は、以下のとおりである。 1 原告らの主張(1) 新区画審設置法3条1項は、区割基準について、改定案の作成は、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすること(以下、上記の数を「最大較差」といい、最大 較差が2倍以上とならないことを「較差2倍未満」ということがある。)としているから、区画審は、令和4年6月16日の勧告に当たり、令和2年に行われた大規模国勢調査(以下「令和2年国勢調査」という。)の結果を基準とするだけではなく、改定案の作成・勧告の日を含む、簡易国勢調査が行われる令和7年までの5年間を通じて、較差2倍未満となるような改定案を 勧告する義務を負っていた。 しかし、勧告された改定案は、令和2年国勢調査の結果を基準とした最大較差を1.999倍とするものにすぎず、その後、最大較差は、令和4年1月時点の人口を基準とすれば2.034倍、上記 を負っていた。 しかし、勧告された改定案は、令和2年国勢調査の結果を基準とした最大較差を1.999倍とするものにすぎず、その後、最大較差は、令和4年1月時点の人口を基準とすれば2.034倍、上記勧告後の令和5年1月の人口を基準とすれば2.054倍、令和6年1月の人口を基準とすれば2.08倍と なり、本件選挙の直近である同年10月14日時点の人口を基準とすれば2.06倍となっていた。 令和2年国勢調査の後、東京都を除く46道府県の全てで人口が一貫して減少することが見込まれ、最大較差は拡大していくことが合理的に予想されたから、区画審は、そのことを認識していたか、又は認識を怠ったものであ り、上記改定案は同法同条項に違反しており、これに基づいて立法された令 和4年改正法の本件区割規定も、これによる本件選挙区割りも同法同条項に違反した違法の瑕疵を帯びたものであり、その下で施行された本件選挙は、違法無効又は違憲無効である。 (2)ア平成30年大法廷判決は、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができる として、平成29年選挙は違憲状態ではないと判断した。しかし、本件選挙区割りは、前記(1)のとおり、新区画審設置法3条1項の趣旨に沿ったものとはいえないから、平成30年大法廷判決の上記判示に照らし、本件選挙は違憲状態である。 また、令和5年大法廷判決は、令和3年選挙当時の最大較差は平成29 年選挙当時よりも拡大していたにもかかわらず、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができるとして、令和3年選挙は違憲状態ではないと判断した。しかし、前記第2(10)のとおり、本件選挙当日における最大較差は、平成29年選挙当時(1.9 中で是正されることが予定されているということができるとして、令和3年選挙は違憲状態ではないと判断した。しかし、前記第2(10)のとおり、本件選挙当日における最大較差は、平成29年選挙当時(1.979倍)より拡大した2.059倍であり、新区割制度の枠組みによっても是正されるこ とはなかったから、令和5年大法廷判決の上記判示に照らし、本件選挙は違憲状態である。 イそして、令和5年大法廷判決は、較差是正の実現という将来的な立法対応がされることを前提として違憲ではないと判断したが、前記(1)のとおり令和4年改正法は較差是正を実現するものではなかったから、その前提は 崩れたといえ、合理的期間を徒過したか否かの検討を要することなく、本件選挙は直ちに違憲と判断されるべきであるし、そうでなくとも、令和4年改正後、本件選挙までの間、国会は、較差是正のための取組みを具体的に行っていないから、合理的期間は徒過済みであり、本件選挙は違憲と判断されるべきである。 (3) 本件選挙は、憲法56条2項(両議院の議事は、この憲法に特別の定めの ある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し)、憲法第1条(主権の存する日本国民)、憲法前文第1項第1文後段(主権が国民に存することを宣言し)及び前段(日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し)並びに憲法43条1項(両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する)が要求する「できる限りの一人一票等価値(= できる限りの人口比例選挙)の要求」に違反し、無効である。 (4) また、憲法前文第1項第2文は、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの」と定めており、「受託者は、…信託の利益を享受することはできない」(信託法8条)という信託の基本原理 効である。 (4) また、憲法前文第1項第2文は、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの」と定めており、「受託者は、…信託の利益を享受することはできない」(信託法8条)という信託の基本原理からすれば、受託者である国会議員は、自らの身分の得失に関わり、国民との間の利益相反に関わる選挙区 割規定の立法をしてはならないというべきであるから、「選挙制度の合憲性は、…国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断される」という令和5年大法廷判決等の判示は誤りである。 2 被告らの主張(1) 新区画審設置法3条1項は、均衡を図るべき各選挙区の人口について、直 前の大規模国勢調査の結果によることを明記する一方、その後の人口動態の変動そのものについては何ら規定していない。また、同法4条2項は、同条1項にいう大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に実施された簡易国勢調査の結果を踏まえて区画審が行うべき勧告について規定したものであり、その間の人口動態について何ら規定しない。 したがって、これらの規定は、大規模国勢調査から簡易国勢調査までの間の人口動態について考慮しなければならないことを規定したものではなく、前記1(1)の原告らの主張は理由がない。 (2)ア新区割制度が合理性を有することは平成30年大法廷判決も令和5年大法廷判決も肯定しており、これにより改定された選挙区割りについては、 原則として憲法の投票価値の平等の要求に反するものといえず、選挙区間 の較差が同要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに初めて上記の憲法の要求に反する状態に至ったというべきところ、本 れない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに初めて上記の憲法の要求に反する状態に至ったというべきところ、本件選挙区割りについて、そのような事情はない。 イ仮に、何らかの理由で本件選挙区割りが憲法の要求に反する状態に至っ ていると評価されるとしても、本件選挙は、平成29年区割りを違憲状態ではないとした令和5年大法廷判決後、初めて行われた衆議院議員総選挙であり、その間の令和3年選挙施行後には、較差是正のために令和4年改正が実施されていることも考慮すれば、国会において、違憲状態であることを認識すべき契機が存在したとはいえず、合理的期間にその是正をしな かったということはできない。 (3) 原告らの主張(前記1)(3)及び(4)は、争う。 第4 当裁判所の判断1(1) 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶 対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきである 仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考 慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を 定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、 これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に 違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決参照)。 原告らは、憲法前文第1項第2文及び受託者は信託の利益を享受すること はできない旨の信託の基本原理(信託法8条)を根拠として、国会議員は、自らの身分の得失に関わり、国民との間の利益相反に関わる選挙区割規定の立法をしてはならず、選挙制度の合憲性について、国会に与えられた裁量権 い旨の信託の基本原理(信託法8条)を根拠として、国会議員は、自らの身分の得失に関わり、国民との間の利益相反に関わる選挙区割規定の立法をしてはならず、選挙制度の合憲性について、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断することは誤りである旨主張するが、上記のとおり、憲法上、選挙制度の仕組みの決定につい て国会に広範な裁量が認められているから、上記主張は、独自の見解というほかなく、採用することができない。 (2) 前記第2の1(7)のとおり、平成30年大法廷判決は、上記の基本的な判断枠組みに立った上で、平成29年選挙区割りについて、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによっ て選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させその状態が安定的に持続す るよう新区割制度が設けられた上、平成28年改正法の附則の規定により、0増6減の措置を前提に次回の大規模国勢調査が行われる平成32年(令和2年)までの5年間を通じて選挙区間の人口の較差が2倍未満となるよう定められ、これにより同選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差が縮小したことをもって、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ選挙制度 の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価し、このように、新区割制度及び平成29年選挙区割りから成る合理的な選挙制度の整備が既に実現されていたことから、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は解消されたものと評価することができると判示した。 そして、前記第2の1(8)のとおり、令和5年大法廷判決も、令和3年選挙 について、平成29年選挙と同じく平成29年選挙区割りの下で行われたものであるところ、その後、更なる較差是正の措置は講じられず、 前記第2の1(8)のとおり、令和5年大法廷判決も、令和3年選挙 について、平成29年選挙と同じく平成29年選挙区割りの下で行われたものであるところ、その後、更なる較差是正の措置は講じられず、選挙区間の較差は平成29年選挙当時よりも拡大していたが、新区割制度は、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮し、10年ごとに各 都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしているのであり、新区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができ、上記のような平成29年選挙区割りの下で較差が拡大したとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と 相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないと判示した。 (3) 本件選挙は、令和4年改正を経て、新区割制度を実現した本件選挙区割り の下で行われたものであるところ、新区割制度が、選挙区の改定後の人口異 動により選挙区間の投票価値の較差が拡大することを踏まえてもなお、選挙制度の安定性の観点から合理性を有することは、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決において認められているところであって、前記第2の1(10)のとおり、本件選挙の当日における較差は2倍以上に及んでいるものの、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるもの というべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性 0)のとおり、本件選挙の当日における較差は2倍以上に及んでいるものの、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるもの というべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできないというべきである。 そして、本件選挙当時における選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、 その程度も著しいものとはいえないから、上記の較差をもって、本件選挙区割りが本件選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできない。 2(1) 原告らは、新区画審設置法3条1項によれば、区画審による改定案は、直近の大規模国勢調査の結果を基準とするだけではなく、改定案の作成・勧告 の日を含む、直後の簡易国勢調査が行われる年までの5年間を通じて較差2倍未満とするものでなければならないにもかかわらず、令和4年6月16日に勧告された改定案は、遅くとも令和4年1月以降の人口を基準とすると、較差2倍未満となるものではなかったから、同法同条項に違反しており、これに基づいて立法された令和4年改正法の本件区割規定も、これによる本件 選挙区割りも同法同条項に違反した違法の瑕疵を帯びたものであり、その下で施行された本件選挙は違法無効又は違憲無効である旨主張する。 しかし、新区画審設置法3条1項は、改定案が満たすべき較差2倍未満の基準となる「人口」について、「最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう」ものとしており、同法4条も、平成32年(令和2年)以降10 年ごとに行われる大規模国勢調査の結果によって勧告を行うことを る「人口」について、「最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう」ものとしており、同法4条も、平成32年(令和2年)以降10 年ごとに行われる大規模国勢調査の結果によって勧告を行うことを原則とし (同条1項)、例外として、大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる簡易国勢調査の結果、較差2倍未満の要請を満たしていないときにも改定案の勧告を行うものとしており、5年ごとに行われる大規模国勢調査又は簡易国勢調査の間、一貫して較差2倍未満の要請が満たされることまでは求めておらず、むしろ、大規模国勢調査の後、簡易国勢調査が行わ れるまでの5年間は、較差2倍未満の要請が満たされない事態が生じることを想定しているといえる。 確かに、平成28年改正法の附則2条3項1号ロは、平成27年国勢調査の結果に基づく改定案の作成について、同国勢調査の結果を基準として較差2倍未満となるだけでなく、平成32年(令和2年)の見込人口を基準とし ても較差2倍未満となることを基本とする旨の基準によって行わなければならないとしているが、同規定は、平成32年(令和2年)に行われる大規模国勢調査の結果によってアダムズ方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置を規定したものであるから、アダムズ方式による定数配分を前提とした区画基準を定めた新区画審設置法3条1項の解釈に影響を及ぼすもので はないというべきである。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 (2) 原告らは、本件選挙区割りは新区画審設置法3条1項の趣旨に沿ったものとはいえないから、「平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができる」として平 成29年選挙は違憲状態ではないとす 趣旨に沿ったものとはいえないから、「平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができる」として平 成29年選挙は違憲状態ではないとする平成30年大法廷判決の判示に照らし、本件選挙は違憲状態であると主張する。 しかし、新区画審設置法3条1項に関する原告らの解釈が採用することができないことは前記(1)のとおりであり、原告らの主張は前提を欠く。 なお、確かに、平成30年大法廷判決は、平成29年選挙区割りについて、 平成32年(令和2年)までの5年間を通じて較差2倍未満となるように定 められたものであることも評価し、平成29年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示しているが、同判示は、あくまでアダムズ方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置としての平成29年選挙区割りの合理性について、それまでの5年間を通じて較差2倍未満となるように定められたことを積極的に評価した ものにすぎず、前記第2の1(8)のとおり、平成29年選挙区割りによっても、令和2年国勢調査の結果によれば較差2倍未満とはなっていなかったところ(2.096倍)、令和5年大法廷判決は、そのような較差を踏まえても平成29年選挙区割りは、令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできないと判示しており、令 和2年国勢調査後、5年間を通じて較差2倍未満となっていないことをもって、本件選挙区割りが憲法の要求に反する状態に至っていたということはできない。 (3) また、原告らは、本件選挙当日における最大較差(2.059倍)は平成29年選挙当時(1.979倍)より拡大しており、新区割制度の枠組みに 要求に反する状態に至っていたということはできない。 (3) また、原告らは、本件選挙当日における最大較差(2.059倍)は平成29年選挙当時(1.979倍)より拡大しており、新区割制度の枠組みによっ ても較差が是正されることはなかったから、「新区割制度と一体的な関係にある平成29年選挙区割りの下で拡大した較差は、新区割制度の枠組みの中で較差が是正されることが予定されているということができる」として令和3年選挙は違憲状態ではないとした令和5年大法廷判決の判示に照らし、本件選挙は違憲状態であると主張する。 しかし、前記のとおり、新区割制度の合理性は平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決においても認められているところ、新区割制度は、旧区割基準において選挙区間の投票価値の較差拡大の要因となっていた1人別枠方式を改め、アダムズ方式による定数配分を行うほか、選挙制度の安定性も勘案し、5年ごとに行われる大規模国勢調査又は簡易国勢調査の結果による 人口を基準として較差2倍未満となるようにするというものであり(新区画 審設置法3条1項)、今後、5年ごとに区割りの見直しの契機があり、新区割制度の枠組みの中で較差が是正されることが予定されていることからすれば、単に本件選挙当日における最大較差が平成29年選挙当時の較差より拡大したことをもって、新区割制度の合理性を否定することは相当でないというべきであり、また、前記第2の1(8)(10)のとおり、本件選挙当時の最大較 差(2.059倍)は令和3年選挙当時(2.079)より縮小しているのであるから、本件選挙区割りが本件選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできない。 (4) 原告らは、本件選挙区割りは、憲法56条2項、1 縮小しているのであるから、本件選挙区割りが本件選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできない。 (4) 原告らは、本件選挙区割りは、憲法56条2項、1条、前文1項1文及び43条1項が定める「人口比例選挙の要求」に反するから無効である旨主張 するが、上記説示したところによれば、これらの規定は、原告らが主張する人口比例選挙を要求するものとは解されず、上記主張は採用することができない。 その他、原告らが主張する点を考慮しても、本件選挙当時において、本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということ はできない。 3 結語よって、原告らの請求は、その余の争点(合理的期間の徒過)について判断するまでもなく、いずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部 裁判長裁判官大野和明 裁判官升川智道 裁判官山 田 兼 司

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