平成12(わ)196 詐欺

裁判年月日・裁判所
平成13年10月12日 神戸地方裁判所
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判決文本文5,815 文字)

判決平成13年10月12日神戸地方裁判所平成12年(わ)第196号,同第308号詐欺被告事件 主文 被告人を懲役2年6か月に処する。 未決勾留日数のうち500日を刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 Xと共謀の上,知人のスナック経営者V(当時52歳)から投資金の名目で現金をだまし取ろうと企て,平成8年10月29日ころ,神戸市a区bc丁目d番e号Aホテル11階のB株式会社喫茶部A店で,Vに対し,真実は投資先等なく,受領した現金は直ちに自分の借入金の返済等に充てる意図であり,約定どおり利息はもとより投資金を支払う意思も能力もないのに,その事情を隠し,被告人が,「実はいい投資話があるんやけど,考えてくれない。1000万円を投資してもらえれば,3か月で2分の利息を付けてお返しすることができます。」等とうそを言い,更に,翌同月30日ころ,同区fd丁目e番g号Cビル1階の喫茶店D株式会社三宮東口店で,Xが,被告人との共同事業者を装い,Vに対し,「私は,E株式会社の会長をしているものです。F(被告人)さんとは共同で事業をやってます。1000万円を預けてもらえれば,間違いなく2分の利息を付けて3か月後に必ずお返しします。」等とうそを言い,Vにその旨信用させ,同月31日,同市h区i町j丁目e番c号のh郵便局前路上ほか2か所で,Vから現金合計1000万円の交付を受けてこれをだまし取った。 第2 知人のW(当時74歳)から投資金の名目で現金をだまし取ろうと企て,平成10年11月4日ころ,同市k区l町mn番地のW方で,Wに対し,真実は投資先等なく,受領した現金は直ちに自分の借入金の返済等に充てる意図であり,約定どおり利息はもとより投資金を し取ろうと企て,平成10年11月4日ころ,同市k区l町mn番地のW方で,Wに対し,真実は投資先等なく,受領した現金は直ちに自分の借入金の返済等に充てる意図であり,約定どおり利息はもとより投資金を支払う意思も能力もないのに,その事情を隠し,「淡路の育波の土地開発事業に投資してもらえば,いずれ数億円になって必ずもうかりますよ。1000万円投資すれば,月3分の利息を付けて必ずお返ししますので,投資してくれませんか。」等とうそを言い,更に,翌同月5日,前記W方で,Wに対し,「後日,淡路の土地にも案内させてもらいますが,1000万円投資してもらえば,月3分の利息を付けてお返ししますので,確実にもうかりますよ。」等とうそを言い,Wにその旨信用させ,同日,同区oj丁目j番d号のG農業協同組合p支所o店前路上で,Wから現金1000万円の交付を受けてこれをだまし取った。 (証拠)なお,かっこ内の番号は,証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。 (省略)(争点に対する判断) 1 第1及び第2の事実について,被告人は,公判で,いずれも,金銭は借りたものであり,その当時返済できる見込みがあった旨供述し,弁護人も,これに沿い,被告人の行為は,いずれも単なる債務不履行にすぎないのであって,被告人には,欺罔行為も,詐欺の故意もなく,無罪である旨主張する。 2 第1のVに対する詐欺について(1) 被告人は,公判で,Vから融資を受けた平成8年10月末当時,被告人には,Xが,H所有の淡路島の育波の土地について所有権の移転を受け,これを担保にして平成9年1月末にはIから1億円の融資を得られることになっていたので,これによりVに対し返済できる見込みがあった旨供述する。 しかし,Iの警察官調書(15号証)によれば,Iは,前記土地には評価額以上の抵当権が設定されてい 円の融資を得られることになっていたので,これによりVに対し返済できる見込みがあった旨供述する。 しかし,Iの警察官調書(15号証)によれば,Iは,前記土地には評価額以上の抵当権が設定されていたことから,遅くとも平成8年10月2日ころまでには,Xに対し,前記土地の購入方を断っていたこと,Iが,Xに対し,前記土地の登記名義をHからXに変更すれば,Xに融資をすると言ったようなことはないことが認められ,また,Xの検察官調書(14号証),Hの警察官調書謄本(16号証)によれば,平成8年10月末当時,Xは,前記土地について,Hから,所有名義のみをXに移転することの承諾を得たものの,所有権は取得していなかったことが認められる。これらの事実に照らすと,被告人が公判で述べるような,平成8年10月末当時,Xが,前記土地を担保にして,Iから1億円の融資を得られるような状況であったとは認められず,被告人に,Vに対する返済の見込みがあったとは認めることができない。 もっとも,証人Jは,平成8年10月末ころまでに,Iが,Xの事務所に来て,Xに対し,前記土地の名義をHからXに書き換えるのを条件にして,前記土地を担保にして1億円を融資するという話をしており,自分は,その場にいて,その話を直接聞いていたこと,平成9年2月ころになって,Iから融資が受けられなくなったことを証言している。 しかし,以上のJ証言は,前記のXの検察官調書,I,Hの警察官調書によって認められる事実に全く反している。しかも,J証人は,その警察官調書(45号証)では,Iにおいて,結局,前記1億円の融資ができなくなったことから,被告人及びXは,どうにかして金を作らなければならないせっぱ詰まった状態になり,それで,Vに対する本件詐欺を行ったことを供述しているのである。加えて,被告人は, 億円の融資ができなくなったことから,被告人及びXは,どうにかして金を作らなければならないせっぱ詰まった状態になり,それで,Vに対する本件詐欺を行ったことを供述しているのである。加えて,被告人は,公判で,いったんXに移った前記土地の名義がHに戻った(登記簿上は,平成9年3月17日受付となっている。)のを知ったのは,平成11年ころであると供述しているが,それは,前記土地の開発事業に対する投資金の名目で現金をだまし取った第2のWに対する詐欺事件よりも更に後のことであって,真実前記土地によりIから融資を受けようとしていたというにしては,遅きに過ぎるとの感を免れず,甚だ不自然であるばかりか,被告人の検察官調書(74号証)によれば,被告人は,直接Iから前記融資の話を確かめていないことが認められる。以上の事実に照らすと,前記J証言は,到底信用することができない。 (2) 次に,被告人は,公判で,Vに対し,投資を口実に金を出させたのではなく,金利稼ぎの話をして金銭貸借をしたものである旨供述する。 しかし,被告人は,罪状認否で,公訴事実にある投資話をしたことを認め,被告人質問でも,他方では,広い意味で投資話をしたとか,Xの会社自身が投資ビジネスなので,投資と言われても仕方ない旨供述し,投資話をしたことは認めているのである。しかも,証人Vは,被告人が,1000万円を投資してくれたら,3か月で2分の利息を付けて返すと言った話を信用したのであり,被告人からは,1000万円を貸してほしいというような話は一切なかったこと,E株式会社代表取締役会長という肩書を書いた名刺を差し出したXが,過去に48社もの会社を動かしていたという話をし,被告人が話した投資話は大丈夫だと口添えをしたので,余計被告人の投資話を信用したことを証言している。加えて,Xの検察官調書(14 名刺を差し出したXが,過去に48社もの会社を動かしていたという話をし,被告人が話した投資話は大丈夫だと口添えをしたので,余計被告人の投資話を信用したことを証言している。加えて,Xの検察官調書(14号証)によれば,被告人が,平成8年10月下旬ころ,投資会社の会長をしているXに対し,Vから投資金として1000万円を出させるために,Vに投資の話をしてほしいと依頼してきたこと,Xとしては,被告人の言う投資というのは名目であり,当時被告人が抱えていた多額の借金返済に充てる金をVからだまし取るために,金を出してもらう口実としてつくうそであることは,十分理解できたが,Xも分け前が欲しかったことから,これを承諾したこと,同月30日,Xは,被告人と共に,三宮のKという喫茶店でVに会い,Vに対し,事前に被告人から聞いていた話に合わせて,1000万円を投資してもらえると,間違いなく2分の利息を付けて3か月後に必ず返すと説明し,かつて46社の投資顧問会社をとりまとめていた話等もして,Vを安心させたことが認められる。以上の事実に照らすと,Vに対し,投資を口実に1000万円を出させたのではなく,金銭貸借であるという被告人の前記公判供述は,到底信用できない。なお,Vが,Xを借主,被告人を連帯保証人とする1000万円の金銭借用証書を受け取っていることは,前記認定を左右するものではない。 3 第2のWに対する詐欺について(1) 被告人は,Wから融資を受けた平成10年11月当時,被告人が業としていた不動産仲介によって得る手数料や,Lから,平成10年の年内に,2000万円を貸してもらえることになっていたので,Wに対し返済できる見込みがあった旨供述する。 しかし,被告人は,公判で,他方では,被告人は,Wに対する借用証(500万円のもの2枚)に,返済期限を平成 してもらえることになっていたので,Wに対し返済できる見込みがあった旨供述する。 しかし,被告人は,公判で,他方では,被告人は,Wに対する借用証(500万円のもの2枚)に,返済期限を平成10年11月25日と記載しているところ,前記11月25日にWに1000万円を返済することは不可能であったと述べたり,Lが2000万円を実際に持って来るのが,いつの日か分からないものの,年内ということであり,年内にはWに返済することができたが,返済期限をなぜ11月25日としたかは知らないなどと,およそ理解しがたい供述をしていることに照らすと,平成10年の年内にLから2000万円の融資を受けられることになっていたという前記被告人の公判供述は,すぐには信用できない。 また,被告人は,公判で,本件の平成10年11月当時,被告人が,不動産仲介業はしており,進行している物件もあったとだけ供述し,その具体的な内容については供述していないこと,被告人の検察官調書(85号証)によれば,当時,被告人は,q市で夫と一緒に暮らしていた家の家賃の支払いができない状況になっていた上に,被告人の不動産仲介業の仕事も,不況で,土地を手放したり,売買したりするうまい話がなかったと述べていることが認められることに照らすと,被告人に不動産仲介業により得る手数料があったという前記被告人の公判供述は,信用できない。 (2) 次に,被告人は,公判で,Wに対しては,金を貸してくださいと言ったのであり,育波の土地開発事業への投資話は,世間話の中の1つの話としてしたにすぎないと供述する。 しかし,被告人は,罪状認否では,公訴事実にある投資話をしたことは認めていたのである。しかも,Wの検察官調書(25号証)によれば,Wは,被告人から,「淡路島の育波の土地開発事業に投資してもら しかし,被告人は,罪状認否では,公訴事実にある投資話をしたことは認めていたのである。しかも,Wの検察官調書(25号証)によれば,Wは,被告人から,「淡路島の育波の土地開発事業に投資してもらえば,いずれ数億円になって必ずもうかりますよ。1000万円投資すれば,月3分の利息を付けて必ずお返ししますので,投資してくれませんか。」等とうそをつかれ,被告人の言うことを信用して,1000万円を投資する気になり,被告人に現金1000万円を手渡したこと,被告人が,平成10年6月ころから,再三にわたってW方を訪れ,Wに対し,このような投資話を何度も何度もしたので,Wは,土地開発事業に対する投資であり,必ずもうかると言ったことや,投資すれば月3分の利息を付けて必ず返すと言った被告人の言葉を信用したことが認められる。これらの事実に照らすと,Wに対し,金を貸してくださいと言ったのであり,育波の土地開発事業への投資話は,世間話の1つであるという前記被告人の公判供述は,到底信用することができない。 なお,Wが,被告人から,金額500万円の借用証2通を受け取っていることは,前記認定を左右するものではない。 4 以上のとおりであって,挙示の証拠によれば,第1及び第2の事実は,優に認めることができる。 なお,被告人は,公判で,被告人の警察官調書について,被告人が,いくらだましていないと言っても,取調べ警察官が,結果は返済していないのだから,だましたのと同じだと言って,だました,だましたと作文して調書を作成した旨供述する。しかし,被告人の警察官調書をみると,被告人は,具体的かつ詳細な供述をしている上,被告人だからこそ供述できる事柄が随所に認められるだけでなく,例えば平成12年2月13日付け警察官調書(67号証)では,「(被告人が,)期限内に返す意思も能力もなか 体的かつ詳細な供述をしている上,被告人だからこそ供述できる事柄が随所に認められるだけでなく,例えば平成12年2月13日付け警察官調書(67号証)では,「(被告人が,)期限内に返す意思も能力もなかった」という部分について,被告人から,「私は,この当時,期限内に返す意思も能力もありましたので,その部分を削除してください。」旨の削除の申立てがされて,前記部分が削除されていることが認められることに照らすと,被告人が供述するような,取調べ警察官の作文により被告人の警察官調書が作成されたとは到底認めることができない。被告人の警察官調書の信用性は十分である。 5 よって,弁護人の前記1の主張は,理由がない。 (法令の適用)罰条第1の行為刑法60条,246条1項第2の行為刑法246条1項併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の刑に加重)未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書平成13年10月12日神戸地方裁判所裁判官白神文弘

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