昭和31(ラ)837 和議開始前の保全処分命令の申立を却下した決定に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
昭和32年9月4日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原決定を取消す。      本件を東京地方裁判所に差戻す。          理    由  抗告の趣旨及び理由は別紙記載の通りである。  和議法第二〇条第一項による保全処分と

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判決文本文1,970 文字)

主    文      原決定を取消す。      本件を東京地方裁判所に差戻す。          理    由  抗告の趣旨及び理由は別紙記載の通りである。  和議法第二〇条第一項による保全処分として、和議債務者の財産についての和議 債権者よりの強制執行に対し、その停止を命じ得るか否か。これか本件の問題であ り、原裁判所はこれを消極に解し、その理由としては、右条項による保全処分は和 議債務者の行為によつて和議債務者の財産が隠匿又は離散されることを防止するこ とを目的とするものであつて、同条項による保全処分は和議債務者の作為不作為の みを対象とすべきであり第三者である執行債権者に執行の避止を命ずるような、第 三者の権利を侵害することの甚しい処分は許されないというのである。  <要旨>しかし和議法第二〇条第一項は「裁判所ハ和議開始ノ決定前ト雖利害関係 人ノ申立ニ因り又ハ職権ヲ以テ債</要旨>務者ノ財産ニ関シ仮差押、仮処分其ノ他ノ 必要ナル保全処分ヲ命スルコトヲ得」と概括的に規定していて、必ずしもこの保全 処分の対象を債務者の作為不作為のみに限定したものと解しなければならないもの とも考えられないのであり、和議債務者の財産に対する強制執行は、和議が開始さ れれば当然中止となること同法第四〇条の規定するところであるから、和議開始の 可能性が相当程度に達し、かつその開始の場合における和議目的達成のために必要 であるとすれば、右第二〇条第一項にいう、「債務者の財産に関し必要な保全処 分」として、その執行停止をすることができるものと解するのが相当である。  勿論右のような解釈をとるとすれば、執行の避止を命ぜられた債権者が不利益を 蒙るに至ることは明らかであるが、右執行は和議開始の場合には当然に中止せら れ、その中止による損害は執行債権者においてこれを甘受しなければならない関係 にある ば、執行の避止を命ぜられた債権者が不利益を 蒙るに至ることは明らかであるが、右執行は和議開始の場合には当然に中止せら れ、その中止による損害は執行債権者においてこれを甘受しなければならない関係 にあるのであるから、和議開始前でも、和議開始の可能性が相当程度に達し、かつ その開始の場合における和議目的達成のために必要な処分とあれば、その処分によ る損害もまたこれを甘受するを要するものと解すべきであつて、和議法第二〇条第 一項の規定は、強制執行の避止についても、その必要性の認定の制限の下に、和議 開始に至るまでの中間的処置を許したものと解するのが相当である。  原決定引用の当裁判所昭和二七年八月二九日決定は、破産法上の否認権行使の対 象となるべき第三者の財産に対する処分禁止の仮処分に関するものであつて、破産 法第一五五条にいう、「破産財団に関する」ものということのできないものについ ての裁判例であるから、本件の参考とすることはできない。  また原決定は、会社更生法第三七条第一項の規定を引用して、同条項のような強 制執行中止の特別規定のない和議法にあつては、その中止を命ずることはできみい ものと解すべきであると立論する。 しかし会社更生法は和議法よりはるか後に立 法せられえところであり、従つて前者に明文があり後者にこれを欠くからといつ て、これを反対解釈の資料とすることは必ずしも適切ということはできないのであ り、寧ろ後者の欠缺を明文を以て補つたものと解するのが相当であろう。なお原決 定は、和議開始前に強制執行の停止をすることが許されるとすれば、和議を破産回 避の好手段に供するの弊を助長するの虞れなしとしないともいうが、強制執行停止 の保全処分は、前記のように、和議開始の可能性が相当程度に達した場合でなけれ ばこれをすることができないものと解するとすれば、右のような弊害もまたこれ 助長するの虞れなしとしないともいうが、強制執行停止 の保全処分は、前記のように、和議開始の可能性が相当程度に達した場合でなけれ ばこれをすることができないものと解するとすれば、右のような弊害もまたこれを 憂えるの要はないものと考える。  以上の次第であるから、和議法第二〇条第一項の規定によつては強制執行の停止 を命ずることはできないとした原決定は失当であつて、本件抗告は理由があり、原 決定はこれを取消すべきであるが、本件において抗告人の執行停止の申立を許容す べきや否やについては、和議開始の可能性の有無その他なお審理を要するものがあ ると考えられるので、民事訴訟法第四一四条、第三八九条第一項の規定によつて、 本件を原裁判所に差戻すべきものとし、主文の通り決定する。  (裁判長判事 薄根正男 判事 奥野利一 判事 山下朝一)

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