平成29(ワ)22010 実用新案権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年2月5日 東京地方裁判所
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令和2年2月5日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第22010号実用新案権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和元年11月21日判決当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は,別紙2物件目録記載の各製品の譲渡又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1537万5027円及びうち36万円に対する平成 29年7月25日から,うち1306万6381円に対する平成31年3月1日から,うち194万8646円に対する令和元年5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを5分し,その4を原告の負担とし,その余を被告の負担 とする。 6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙2物件目録記載の各製品の製造,譲渡,輸出,輸入又は譲渡の 申出をしてはならない。 2 主文第2項と同旨 3 被告は,原告に対し,9185万4000円及びうち36万円に対する平成29年7月25日から,うち9149万4000円に対する平成31年3月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,考案の名称を「ハーネス型安全帯の着用可能な空調服」とする実用新案登録第3198778号の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい,それに係る実用新案登録を「本件実用新案登録」と,その登録実用新案を「本件登録実用新案」という。)を有する原告が,①別紙2物件目録記載1, 3198778号の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい,それに係る実用新案登録を「本件実用新案登録」と,その登録実用新案を「本件登録実用新案」という。)を有する原告が,①別紙2物件目録記載1,2,4及び5の各製品 (以下,番号に対応させて「被告製品1」などといい,これらを一括して「被告製品」という。)は本件実用新案登録に係る実用新案登録請求の範囲請求項2(平成29年1月10日付け訂正書による訂正後のもの。以下同じ。)記載の考案(以下「本件考案」という。)の技術的範囲に属するものであり,被告及び株式会社セフト研究所(以下「セフト社」といい,被告と併せて「被告ら」という。)において その製造,譲渡,輸出,輸入,譲渡の申出(以下,これらの行為を一括して「製造等」という。)を共同で行った行為は本件実用新案権を侵害し,また,②別紙2物件目録記載3及び6の各製品(以下,番号に対応させて「被告製品3」などといい,被告製品と併せて「被告各製品」という。)は,本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物であり,その製造等を共同で行った行為は本件実用新案権を侵害 するものとみなされる(実用新案法28条1号)旨主張して,被告に対し,実用新案法27条1項,2項に基づき,被告各製品の製造等の差止め及び廃棄を求めるとともに,③対象期間を平成29年6月13日から令和元年5月31日まで(以下「本件対象期間」という。)とする被告らの①及び②の行為は共同不法行為に当たる旨主張して,被告に対し,共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金 1億0478万1600円の一部である9185万4000円(実用新案法29条2項による算定)及びうち36万円に対する平成29年7月25日(訴状送達日の翌日)から,うち9149万4000円に対する平成31年3 78万1600円の一部である9185万4000円(実用新案法29条2項による算定)及びうち36万円に対する平成29年7月25日(訴状送達日の翌日)から,うち9149万4000円に対する平成31年3月1日(平成31年3月26日の本件弁論準備手続期日において陳述された同月22日付け原告準備書面(6)により拡張された対象期間の末日の翌日)から,各支払済みまで民法所定 年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番の記載を省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告は,ユニフォーム・カジュアルウェアの企画・製造・販売,事務機器・ 設備・制御機器の設計・開発等を業とする株式会社である。 イ被告は,ファンを用いた衣料品,寝具,座布団等の開発,製造,販売等を業とする株式会社である。 ウセフト社は,空調服の開発,製造,販売等を業とする株式会社であり,被告の親会社である。セフト社の本店所在地は被告と同一であり,セフト社の代表取締 役であるA及び同社の専務取締役であるBは,いずれも被告の代表取締役である(甲27,乙3,4。以下,Aを「被告ら代表者」という。)。 ⑵ 本件実用新案権ア原告は,次の内容の本件実用新案権を有している(甲2)。 出願日平成27年5月11日(以下「本件出願日」という。) 登録日平成27年7月1日登録番号実用新案登録第3198778号考案の名称ハーネス型安全帯の着用可能な空調服イ本件実用新案登録に係る登録実用新案公報には,考案者として,いずれも原告の従業員であるC(以下「C」という。)及びD 録第3198778号考案の名称ハーネス型安全帯の着用可能な空調服イ本件実用新案登録に係る登録実用新案公報には,考案者として,いずれも原告の従業員であるC(以下「C」という。)及びD(以下「D」という。)が記載 されている。 ウ原告は,平成29年1月10日付け訂正書により,本件実用新案登録に係る実用新案登録請求の範囲請求項2を,次のとおり訂正した(甲4)。 「空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え, 前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周 りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉することを特徴とするハーネス型安全帯の着用可能な空調服。」 ⑶ 本件考案の構成要件の分説本件考案は,次のとおり,構成要件に分説することができる(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応させて「構成要件A」などという。)。 A 空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え, B 前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,C 前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,D 前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部 記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,D 前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉することを 特徴とするE ハーネス型安全帯の着用可能な空調服。 ⑷ 空調服,ハーネス型安全帯空調服は,衣服に取り付けられたファンで,衣服内に外気を取り入れ,風を通すことにより,涼しく過ごすことを可能にする構成を有する作業着等の衣類製品であ る。また,ハーネス型安全帯は,フルハーネス型安全帯ともいい,単にフルハーネスと呼ばれることもある,高所作業等の場面で墜落防止のために使用される保護具であって,肩ベルト,腿ベルト,胸ベルト等の複数のベルトで構成され,それらに命綱に当たる部分を意味するランヤードを取り付けて使用するものである。空調服の一類型として,ハーネス型安全帯を着用できるものがある(以下,この類型の空 調服を「フルハーネス対応空調服」という。)(甲5,6,乙5,弁論の全趣旨)。 ⑸ 被告らの行為アセフト社は,平成28年5月から,被告各製品の製造及び被告に対する譲渡をしている(乙49,59)。 イ被告は,平成28年5月から,被告各製品の譲渡及び譲渡の申出をしている(甲5ないし7)。 ⑹ 被告各製品の構成ア被告各製品は,ハーネス型安全帯を着用可能とする空調服の服本体,又は服本体とファン,ケーブル及びバッテリーセット若しくは電池ボックス(以下,これらの付属品を一括して「ファン等」という。)とのセットであり,その概要は,別紙3被告各製品説明書記載1のとおりである(甲5,7,乙2)。 イ被告製品の構成を本件考案と対比させて分説すると,別紙3被告各製品説明書記載2のとおりで )とのセットであり,その概要は,別紙3被告各製品説明書記載1のとおりである(甲5,7,乙2)。 イ被告製品の構成を本件考案と対比させて分説すると,別紙3被告各製品説明書記載2のとおりであり(以下,分説に係る各構成を符号に対応させて「構成a」などという。),構成要件AないしC及びEを充足する。 被告製品3及び6は,ファン等を取り付け又は収納することによって,被告製品と同様の構成を備えるものとなり,構成要件AないしC及びEを充足する。 ⑺ 本件登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示した警告原告は,平成29年6月13日,被告に対して,本件登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して,被告製品の製造販売等は本件実用新案権の侵害に当たり,被告製品3及び6の製造販売等は本件実用新案権の侵害に当たるとみなされる旨を警告した(甲8)。 ⑻ 原告及び被告らの取引関係等原告は,平成17年1月20日,被告との間で,原告及び被告間の売買並びに委託業務等の取引に関する取引基本契約を締結し,平成24年11月20日,セフト社との間で,セフト社が開発した「DIRECTCOOLINGSYSTEM」,すなわち,以下の契約条項において「DC」などと記載されている技術の応 用製品である空調服の製造及び販売に関する取引基本契約(以下「本件取引基本契 約」という。)を締結した。本件取引基本契約には次の条項がある(乙20,21)。 ●(省略)●⑼ 空調服の会被告は,平成25年頃,空調服の普及を通じて熱中症対策等に寄与することによ り社会に貢献することを目的とし,そのために必要な事項等について協議検討を行う「空調服の会」という名称の会を立ち上げ,以降,被告らの取引先と共に,定期的に同会を開催している(以下,会の とによ り社会に貢献することを目的とし,そのために必要な事項等について協議検討を行う「空調服の会」という名称の会を立ち上げ,以降,被告らの取引先と共に,定期的に同会を開催している(以下,会の組織又は開催された会合を「空調服の会」ということがある。)。 原告も,平成28年3月頃まで,空調服の会のメンバーであった(乙3)。 3 争点⑴ 被告製品は,構成要件Dを充足し,文言上,本件考案の技術的範囲に属するか(争点1)⑵ 被告製品は,本件考案と均等なものとして,その技術的範囲に属するか(争点2) ⑶ 被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物か(争点3)⑷ 本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効とされるべきものか(争点4)ア本件実用新案登録は冒認出願に対してされたものか(争点4-1) イ本件実用新案登録は共同出願違反によりされたものか(争点4-2)⑸ 被告は先使用による通常実施権を有するか,又はセフト社の先使用による通常実施権を援用することができるか(争点5)⑹ 被告は黙示の実施許諾による実施権を有するか(争点6)⑺ 原告の権利行使が権利の濫用に当たるか(争点7) ⑻ 損害の発生の有無及びその額(争点8) 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(被告製品は,構成要件Dを充足し,文言上,本件考案の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】①「緊縛」に「きつくしばること」という字義があること,②コードストッパー により筒部先端部分を収縮させる態様であっても,取出し筒の開口部から内側の冷却風が外側に漏れ出すことを防止するという構成要件Dの作用効果を奏することに照らし,構成要件Dの「緊縛」は,口紐により命 により筒部先端部分を収縮させる態様であっても,取出し筒の開口部から内側の冷却風が外側に漏れ出すことを防止するという構成要件Dの作用効果を奏することに照らし,構成要件Dの「緊縛」は,口紐により命綱の周囲がきつく縛られている限り,コードストッパーにより筒部先端部分を収縮させる態様も含むと解すべきである。 被告製品は,コードストッパーにより筒部先端部分を収縮させる態様のものではあるものの,口紐により命綱の周囲がきつく縛られるものであるから,構成要件Dを充足し,文言上,本件考案の技術的範囲に属する。 【被告の主張】①「緊縛」に「きつくしばること」という字義があるところ,「縛る」に「ひも や縄などを巻き付けて結び,離れたり,動いたりしないようにする」という字義があり,「結ぶ」に「ひも・帯などの両端をからませてつなぎ合わせる」という字義があること,②本件登録実用新案に係る図面(以下,明細書と併せて「本件明細書」という。)のうち,図4には,口紐を筒部先端部に巻き付け,かつ,その両端を絡ませてきつく縛り,筒部の開口部を密閉する態様の実施例が示されていることなど に照らせば,構成要件Dの「緊縛」は,口紐を取出し筒の先端部に巻き付け,かつ,その両端を絡ませてつなぎ合わせることを意味すると解すべきである。 被告製品は,コードストッパーにより筒部先端部分を収縮させるものであり,口紐を取出し筒の先端部に巻き付けて,その両端を絡ませてつなぎ合わせるものではないから,構成要件Dを充足するとはいえず,文言上,本件考案の技術的範囲に属 するとはいえない。 2 争点2(被告製品は,本件考案と均等なものとして,その技術的範囲に属するか)について【原告の主張】仮に,構成要件Dの「緊縛」が,口紐を命綱の周囲に巡らせ,その るとはいえない。 2 争点2(被告製品は,本件考案と均等なものとして,その技術的範囲に属するか)について【原告の主張】仮に,構成要件Dの「緊縛」が,口紐を命綱の周囲に巡らせ,その両端を直接絡めて固定する形態を意味すると解したとしても,以下のとおり,被告製品は,本件 考案と均等なものとして,その技術的範囲に属する。 ⑴ 第1要件(非本質的部分)本件考案の本質的部分は,ハーネス型安全帯を装着できるようにするために,空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設け,当該取出し筒の筒部先端近傍に口紐を設け,口紐を命綱の周囲に巡らせて固定する構成にあり,当 該口紐の両端を直接絡める構成は本質的部分ではない。 したがって,被告製品が口紐の両端を直接絡める構成を有しないとしても,本件考案の非本質的部分で相違するにすぎない。 ⑵ 第2要件(置換可能性)本件考案及び被告製品は,いずれも,命綱の周囲を密閉することによって取出し 筒を密封可能にするという同様の作用効果を奏する。 ⑶ 第3要件(置換容易性)コードストッパーは,紐の両端を固定する手段として一般的に利用されていたから,当業者において,口紐を命綱の周囲に巡らせて,その両端を直接絡めて固定する構成に代えて,口紐を命綱の周囲に巡らせて,その両端をコードストッパーで固 定する構成を採用することは容易であった。 【被告の主張】以下のとおり,被告製品は,本件考案と均等なものではなく,その技術的範囲に属するとはいえない。 ⑴ 第1要件(非本質的部分) 従来,空調服の開口部の空気漏れを防止するための空気防止手段として,ゴム等 の伸縮を利用するもの,紐を縛るもの,ベルトによるものが存在していたから(乙42),空調服の開口部から ) 従来,空調服の開口部の空気漏れを防止するための空気防止手段として,ゴム等 の伸縮を利用するもの,紐を縛るもの,ベルトによるものが存在していたから(乙42),空調服の開口部からの空気の漏れを防止するという課題や口紐を利用して空気漏れを防止するという構成は,新しいものではなく,従来技術と比較して考案の貢献の程度が大きいとはいえない。 本件考案の本質的部分は,「口紐により…命綱の周囲を緊縛」して空調服の「開 口部を密閉」する具体的構成,すなわち,命綱の周囲に口紐を巻き付けて,その両端を絡ませてつなぎ合わせる構成であるというべきである。 被告製品は,そのような構成を有しないものであり,本件考案の本質的部分で相違するから,第1要件を満たすとはいえない⑵ 第2要件(置換可能性)及び第3要件(置換容易性) 争う。 3 争点3(被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物か)について【原告の主張】被告製品3及び6は,ファン等を取り付け又は収納して被告製品と同様の構成を 備えるフルハーネス対応空調服として使用するものであり,カタログ(甲5)に「ファン・バッテリーなどをお持ちの方向け」と記載されていることからも,本件登録実用新案に係る物品の製造にのみに用いる物(実用新案法28条1号)に当たる。 【被告の主張】 否認ないし争う。被告製品3及び6は,ハーネス型安全帯を着用しない通常の空調服として使用することができ,その使用形態には実用性等が認められるから,本件登録実用新案に係る物品の製造のみに用いる物であるとはいえない。 4 争点4(本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効とされるべきものか)について ⑴ 争点4-1(本件実用新案登録は冒認出願に対してさ 品の製造のみに用いる物であるとはいえない。 4 争点4(本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効とされるべきものか)について ⑴ 争点4-1(本件実用新案登録は冒認出願に対してされたものか)について 【被告の主張】以下のとおり,本件考案は,被告ら代表者が考案したものであり,原告が考案したものではないから,本件実用新案登録は冒認出願に対してされたものであって,本件実用新案登録は,実用新案登録無効審判により無効とされるべきものである(実用新案法37条1項5号)。 ア被告らは,空調服の開発に係る知見やノウハウを有しており,平成25年には,顧客がハーネス型安全帯に対応する空調服の開発を要望していることを認識していたところ,被告ら代表者は,平成27年3月3日,●(省略)●(以下「●(省略)●」という。)との会議において,フルハーネス対応空調服に関するヒントを得るとともに,その開発の必要性を強く認識したことにより,本件考案を着想 して完成させ,同月4日以降には,本件考案の構成を記載した図面(乙11の2及び4。以下「乙11図面」という。)のデータを株式会社ゼハロス(以下「ゼハロス」という。)に送信し,試作品の作成を依頼するなどし,本件考案の事業化を進めていたものであるから,本件考案の考案者は被告ら代表者である。 イそして,原告は,平成27年3月中旬頃のBからの電話や,同年4月10日 に原告のE常務(以下「E常務」という。)の被告ら訪問時に見せられたフルハーネス対応空調服の試作品(以下「本件試作品」という。)及び交付された被告ら代表者作成の乙11図面などによって,被告らのフルハーネス対応空調服に関する情報を取得し,これらを利用して本件実用新案登録に係る実用新案登録出願(以下「本件出願」 品」という。)及び交付された被告ら代表者作成の乙11図面などによって,被告らのフルハーネス対応空調服に関する情報を取得し,これらを利用して本件実用新案登録に係る実用新案登録出願(以下「本件出願」という。)をしたものであるから,本件出願は冒認出願である。この ことは,①本件明細書の図1と乙11図面や本件試作品の構成が同一であること,②Cが,平成27年11月頃の電話で,冒認出願を認めて被告らに謝罪したこと,③被告ら代表者が,平成28年3月3日の空調服の会で,原告のように冒認出願をしないようにと発言したのに対し,原告から何らの反論等もなかったことなどによっても裏付けられている。 ウ原告は,本件考案の考案者はC及びDであると主張するが,否認ないし争う。 この点に関するD作成の「サンプル(定番)作製・変更依頼書」(甲16の1~3。 以下,書証の枝番号に対応させて「本件依頼書1」などといい,これらを一括して「本件依頼書」という。),原告の従業員であるF(以下「F」という。)作成の「加工ノート」(甲17,46。以下,単に「加工ノート」という。)の書証,C,D,Fの各供述はいずれも信用することができない。 【原告の主張】ア本件考案に係る開発経過は次のとおりである。すなわち,①原告は,平成26年9月8日の企画会議において,ハーネス型安全帯を装着して空調服を着用できないかという顧客からの要望等を踏まえ,従業員であるC及びDにおいて,フルハーネス対応空調服の開発を検討することとなった。②その後,C及びDによる検討 過程で,空調服の内側にハーネス型安全帯を着用する空調服,すなわち,空調服の背中部分にランヤードの出口を設け,その出口を縛ることにより,出口からの空気の漏れを防ぐというコンセプトの空調服(以下,このような ,空調服の内側にハーネス型安全帯を着用する空調服,すなわち,空調服の背中部分にランヤードの出口を設け,その出口を縛ることにより,出口からの空気の漏れを防ぐというコンセプトの空調服(以下,このような空調服を「内側タイプの空調服」ということもある。),空調服の外側にハーネス型安全帯を着用する空調服,すなわち,空調服の両肩内側にパット付きの布又はクッション材を縫い付け ることにより,空気の流れを確保するというコンセプトの空調服(以下,このような空調服を「外側タイプの空調服」ということもある。)が候補に挙がった。③Dは,平成27年1月28日,縫製担当のFに対し,上記②の各空調服について,本件依頼書によってサンプルの作製を依頼した。④本件依頼書1は,内側タイプの空調服に係るものであり,本件考案に係る構成が全て記載されていた。⑤その後,原 告では,内側タイプの空調服を製品化することになり,同空調服の構成を基に,本件出願をした。 このような本件考案に係る開発経過に照らせば,本件考案の考案者は原告の従業員であるC及びDであり,遅くとも平成27年1月28日までに完成していたものであるから,本件実用新案登録が冒認出願に対してされたものであるとはいえない。 イ被告が主張する平成27年3月中旬頃のBからの電話や,同年4月10日の E常務の被告ら訪問時に,被告らから具体的な製品の開発等に係る話が出たことはなく,同訪問時に被告らから乙11図面を交付されたこともない。Cが冒認出願を認めて謝罪したことや,被告ら代表者が空調服の会で原告のように冒認出願をしないようになどと述べたことも否認する。 ⑵ 争点4-2(本件実用新案登録は共同出願違反によりされたものか)につい て【被告の主張】C及びDが本件考案の考案者であった 冒認出願をしないようになどと述べたことも否認する。 ⑵ 争点4-2(本件実用新案登録は共同出願違反によりされたものか)につい て【被告の主張】C及びDが本件考案の考案者であったとしても,本件考案は被告らとの共同考案である。すなわち,原告及び被告らは,遅くとも平成26年9月8日までに,①インナースペーサーを着用するフルハーネス対応空調服の問題点に関する情報(乙7 の2)や,②空調服の背中に開いているランヤードを通すための穴の位置がハーネス型安全帯の形状ごとに異なり,一つの位置に固定することができないことに関する情報を共有していた。これらの情報は本件考案の本質的部分である考案の課題に関わるものであり,被告らは本件考案の完成に実質的に貢献したものであるから,本件考案は被告らとの共同考案である。 したがって,本件実用新案登録は,被告らと共同で出願する必要があったにもかかわらず,原告が単独で出願して登録されたものであるから,実用新案法11条1項で準用する特許法38条に違反し,実用新案登録無効審判により無効とされるべきものである(実用新案法37条1項2号)。 【原告の主張】 前記⑴【原告の主張】のとおり,本件考案は,原告が単独で考案したものであり,原告と被告らの共同考案ではないから,本件実用新案登録が共同出願違反によりされたものであるとはいえない。 被告は,被告らと原告の間で情報が共有されていたと主張するが,本件考案の特徴に関する情報ではなく,課題を解決するための方向性を示す情報ですらないから, 被告らの本件考案への関与を示すものではない。 5 争点5(被告は先使用による通常実施権を有するか,又はセフト社の先使用による通常実施権を援用することができるか)について【被告の主張】 らの本件考案への関与を示すものではない。 5 争点5(被告は先使用による通常実施権を有するか,又はセフト社の先使用による通常実施権を援用することができるか)について【被告の主張】⑴ 被告らによる事業の準備以下のとおり,被告らは,本件出願日までに,被告各製品の製造等に係る事業の 準備をしていた。 ア被告ら代表者は,平成27年3月4日,本件考案の構成が記載された乙11図面のデータをゼハロスに送信し,試作品の作成を依頼しているところ,フルハーネス対応空調服が顧客のニーズ等を背景として作れば売れる製品であったこと,その開発又は販売の障害となるような事情は存在しなかったこと,被告らの社内体制 として,被告ら代表者の意思決定が重要な意味を持っていたことなどに照らせば,被告ら代表者の上記の行為は,フルハーネス対応空調服の事業化を決定する旨の被告らの意思表示であるということができる。 イゼハロスは,被告ら代表者の上記の依頼を受け,他社に委託するなどして,平成27年3月31日までに,本件試作品を作成しているところ,被告らが,莫大 な時間,労力,資金を投下して,既存の空調服を研究,開発し,商品化してきたこと,本件考案は,既存の空調服に筒を取り付けるだけで完成するシンプルな構成であることなどに照らすと,被告らは,本件試作品の作成によって,フルハーネス対応空調服に係る事業活動のほとんどを完了しており,被告らによる即時実施の意図が客観的に表明されている。 ウ被告ら代表者は,平成27年3月26日の空調服の会において,必要があればフルハーネス対応空調服のアイディアを提供する旨発言しており,被告らが同空調服を販売する意思を有していたことが示されている。 エ被告らは,平成27年4月7日,本件試作品の試着を行い, 必要があればフルハーネス対応空調服のアイディアを提供する旨発言しており,被告らが同空調服を販売する意思を有していたことが示されている。 エ被告らは,平成27年4月7日,本件試作品の試着を行い,被告ら代表者においてフルハーネス対応空調服は完成したと強い手応えを感じ,同空調服の販売の 意思はより強固なものになったから,遅くともその時点で,被告らによる販売の意 思は確定的なものとなった。 ⑵ セフト社の先使用による通常実施権の援用前記⑴に照らせば,セフト社は,被告各製品の製造等について,先使用による通常実施権(実用新案法26条,特許法79条)を有する。 そして,セフト社は,被告各製品を全て被告に販売しており,被告は,被告各製 品を全てセフト社から購入して販売しているから,セフト社の先使用による通常実施権を援用する。 ⑶ 被告の先使用による通常実施権前記⑴に加えて,被告らは,本店所在地及び代表者が同一であり,セフト社が空調服の研究開発を行い,被告がその企画及び販売を行うという役割分担の下で連携 する実質的に同一の会社であるから,被告も,被告各製品の製造等について,先使用による通常実施権(実用新案法26条,特許法79条)を有する。 【原告の主張】⑴ 被告らによる事業の準備否認ないし争う。本件試作品は初回サンプルにすぎず,初回サンプルは製品化の 決定前の段階で作成されるのが通常であるから,その作成をもって即時実施の意図が表明されたということはできない。セフト社が被告ら代表者の発明につき特許出願をしたのは本件出願日後の平成27年6月30日であること,セフト社が本件試作品の作成等のために支出した費用は約4万円にすぎなかったこと,被告が被告各製品の販売を開始したのは平成28年5月であることなどにも照ら 本件出願日後の平成27年6月30日であること,セフト社が本件試作品の作成等のために支出した費用は約4万円にすぎなかったこと,被告が被告各製品の販売を開始したのは平成28年5月であることなどにも照らせば,本件出願 日に被告らによる事業の準備があったということはできない。 ⑵ セフト社の先使用による通常実施権の援用否認ないし争う。被告が被告各製品を全てセフト社から購入しているということはできないから,被告がセフト社の有する先使用権による通常実施権を援用することはできない。 ⑶ 被告の先使用による通常実施権 否認ないし争う。ゼハロスに対する乙11図面の送信や本件試作品の作成等は,いずれもセフト社の名称でされており,被告の先使用による通常実施権を基礎付けるものではない。また,被告らは,事業目的が異なる別個の法主体であり,被告ら代表者は,あえて両社を別法人として使い分けているものであるから,被告らが同一の主体であるということはできない。 6 争点6(被告は黙示の実施許諾による実施権を有するか)について【被告の主張】原告は,本件実用新案権の登録日である平成27年7月1日の時点で,被告らが本件考案の実施に係る事業の準備をしていたことを明確に認識していながら,これを放置していたばかりか,被告らのフルハーネス対応空調服に係る情報を取得し, その情報を自己の製品の開発や販売に利用するなどしていたものであるから,原告は,被告らに対して,本件考案の実施について黙示の許諾を与えていたというべきである。 したがって,被告は,本件実用新案権について原告の黙示の実施許諾による実施権を有する。 【原告の主張】否認ないし争う。原告は,平成27年7月1日の時点で,被告らによる本件考案の実施に係る事業の ,被告は,本件実用新案権について原告の黙示の実施許諾による実施権を有する。 【原告の主張】否認ないし争う。原告は,平成27年7月1日の時点で,被告らによる本件考案の実施に係る事業の準備があったことを明確に認識しておらず,被告らの空調服の情報を自己の製品の開発や販売に利用していない。 7 争点7(原告の権利行使が権利の濫用に当たるか)について 【被告の主張】原告は,本件取引基本契約14条,5条6項所定の通知義務及び提案義務等に違反して,被告らに対して本件考案に係る通知及び提案をせずに本件実用新案権を取得し,紛争の原因を自ら作出したばかりか,被告らが本件考案の実施に係る事業の準備をしていたことを明確に認識していながら,原告を信頼していた被告らから, 被告らのフルハーネス対応空調服に関する重要な情報等を取得して,それを自己の 製品の開発に利用していた。これらに照らせば,本件実用新案権に基づく原告の権利行使は,社会の倫理概念又は公序良俗に反するというべきであり,権利の濫用に当たる。 【原告の主張】否認ないし争う。原告が被告らに対して本件考案に係る通知及び提案をしなかっ たことが本件取引基本契約に違反することはなく,原告が本件出願をすることが同契約によって禁止されることもない。また,原告は,被告らによる本件考案の実施に係る事業の準備があったことを明確に認識しておらず,被告らのフルハーネス対応空調服の情報を自己の製品の開発に利用していない。 8 争点8(損害の発生の有無及びその額)について 【原告の主張】⑴ 被告らの共同不法行為被告が主張するような被告らの緊密な関係からすれば,被告各製品の製造及び販売について,被告らに共同不法行為が成立すると解すべきであり,本件対象期間に 【原告の主張】⑴ 被告らの共同不法行為被告が主張するような被告らの緊密な関係からすれば,被告各製品の製造及び販売について,被告らに共同不法行為が成立すると解すべきであり,本件対象期間における被告各製品の販売により被告らが受けた利益の合計額を原告が受けた損害の 額と推定する(実用新案法29条2項)のが相当である。 ⑵ 被告らが受けた利益の合計額ア本件対象期間における被告各製品の販売により被告らが受けた利益の合計額は,被告の売上高である3億4927万2000円の30%に相当する1億0478万1600円を下らない。 イ原告が被告らから任意開示を受けた資料等によれば,被告における被告各製品の売上高(税抜き)は●(省略)●,仕入額は●(省略)●,利益額は●(省略)●であり,セフト社における被告各製品の売上高(税抜き)は●(省略)●,仕入額は●(省略)●,利益額は●(省略)●であるから,被告らが受けた利益の合計額は,●(省略)●を下らない。 ウ被告は,売上高から控除すべき経費として,試着品に係る費用,倉庫費用, 宣伝広告費用を主張するが,いずれも争う。 ⑶ 推定覆滅事由ア本件考案の寄与本件考案は,空調服全体を対象とするものであり,ハーネス型安全帯の着用が必要な高所作業者等の需要者に対して大きな購入動機となる。すなわち,フルハーネ ス対応空調服は,ハーネス型安全帯を着用できるように加工された特殊な空調服であり,通常の空調服より販売価格が高いものであるから,高所作業者等の需要者が被告各製品を購入する主たる動機がフルハーネス対応型であることにあることは明らかであり,本件考案が被告各製品の売上の一部にしか貢献していないということはできない。 イ代替品の存在競合品の存在 品を購入する主たる動機がフルハーネス対応型であることにあることは明らかであり,本件考案が被告各製品の売上の一部にしか貢献していないということはできない。 イ代替品の存在競合品の存在を理由とする推定覆滅も認められない。 すなわち,被告が代替品であると主張する原告及び被告ら以外の第三者が販売するフルハーネス対応空調服(以下「第三者製品」ということがある。)は,構成要件C及びDを充足するものであるか不明であり,空気の漏れを防止するものではな いことなどから,原告が販売しているフルハーネス対応空調服(以下「原告製品」ということがある。)及び被告各製品の代替品であるとはいえない。 また,被告が主張する市場におけるシェアは,フルハーネス対応空調服に係るものではなく,電動ファン付ウェアに係るものであり,フルハーネス対応空調服が特殊な空調服であり,製品数が少ないこと,新規参入企業が多いことなどに照らせば, これらの市場におけるシェアが同一であるとはいえない。 ウ被告各製品と原告製品の販売先の違いフルハーネス対応空調服の需要者は,各販売店が取り扱う商品の中から製品を選択して購入しており,被告の販売先が被告各製品を販売していなければ,原告の販売先から原告製品を購入したはずであって,被告各製品と原告製品の販売先が異な っていることを理由とする推定覆滅は認められない。 エ被告各製品及び原告製品の性能被告各製品の性能が原告製品を上回ることを理由とする推定覆滅も認められない。 すなわち,被告が指摘する製品の性能のうち,取出し筒の開口方向がフルハーネス対応空調服の機能及び使いやすさに影響することはなく,取出し筒の開口部の大きさをもって原告製品の方が使いにくいということもできない。また,フックの保 持方 うち,取出し筒の開口方向がフルハーネス対応空調服の機能及び使いやすさに影響することはなく,取出し筒の開口部の大きさをもって原告製品の方が使いにくいということもできない。また,フックの保 持方法についても,被告各製品は,休止フックを胸ポケット付近から外に取り出す動作が煩雑であるのに対し,原告製品は,ヨークを二重にして強化しているため,フックを引っかけても支障がないものであり,被告各製品の性能が原告製品を上回るとはいえない。さらに,インターネットのカスタマーレビューに原告製品に対する否定的なコメントが見られたというだけで,原告製品の評価が低いということは できない。 オ被告の営業努力等被告各製品は,ハーネス型安全帯を着用した状態で冷却効果を得ることができることに着目して購入されるものであり,そのような効果を得ることができない通常の空調服について被告の営業努力等があっても,被告各製品の販売にはつながらな いから,通常の空調服についての被告の営業努力等を理由とする推定覆滅も認められない。 【被告の主張】⑴ 被告らの共同不法行為被告らの関係は製造業者と卸売業者との間で通常認められる程度のものにすぎず, 被告らに共同不法行為は認められないから,実用新案法29条2項の損害を算定するに当たり,セフト社の利益を考慮することはできない。 ⑵ 被告らが受けた利益の合計額ア原告が【原告の主張】⑵アで主張する売上高,利益額は否認ないし争う。原告が同イで主張する売上額,仕入額は認める。 イ以下のとおり,試着品に係る費用,倉庫費用,宣伝広告費用の合計●(省略) ●は売上高から控除すべき経費に当たる。 (ア) 試着品に係る費用被告は,販売促進を目的として,被告各製品の試着品を取引先に貸与している る費用,倉庫費用,宣伝広告費用の合計●(省略) ●は売上高から控除すべき経費に当たる。 (ア) 試着品に係る費用被告は,販売促進を目的として,被告各製品の試着品を取引先に貸与しているところ,本件対象期間における被告各製品の製造,販売に直接関連する試着品の貸与件数は,平成28年1月から令和元年5月までの●(省略)●であり,次の各費用 の合計●(省略)●は売上高から控除すべき経費に当たる。 a 試着品の仕入額:●(省略)●b 試着品の送付費用:●(省略)●c 試着品のクリーニング費用:●(省略)●(イ) 倉庫費用 被告は,本件対象期間における被告各製品の倉庫管理に係る次の各委託費用に消費税を加算した合計●(省略)●は売上高から控除すべき経費に当たる。 a 入庫料:●(省略)●b 保管料:●(省略)●c 出庫料:●(省略)● (ウ) 宣伝広告費用被告は,雑誌,新聞等に,被告各製品に係る宣伝,広告を掲載しており,この宣伝広告費用●(省略)●は売上高から控除すべき経費に当たる。 ⑶ 推定覆滅事由以下のとおり,被告各製品の売上に対する本件考案の寄与率は18%であり,ま た,代替品の存在,被告各製品と原告製品の販売先の違い,被告各製品の性能が原告の製品を上回ること,被告の営業努力等に基づく推定覆滅の割合は,80%を下らない。 ア本件考案の寄与本件考案は,空調服の背中部分に設けられた取出し筒に技術的特徴があり,実質 的には空調服の一部の構造に係るものである。また,空調服の中心的な機能は,フ ァンにより外気を服内に取り込んで排出することで体温を冷却することにあるのに対し,本件考案に係る取出し筒は,ランヤードを取り出すための補助的な機能を提供するものにすぎず,使 な機能は,フ ァンにより外気を服内に取り込んで排出することで体温を冷却することにあるのに対し,本件考案に係る取出し筒は,ランヤードを取り出すための補助的な機能を提供するものにすぎず,使用場面も限定されている。さらに,被告各製品には,特許第4329118号,特許第4399765号,特許第6158675号の各特許発明が実施され,これらによって高い機能性及び実用性を備えるものとなることが 需要者の購入動機に結び付いている。 これらに照らせば,本件考案は,被告各製品の売上に部分的にしか貢献しておらず,被告各製品の販売単価及び被告各製品に対応する既存の空調服の販売単価との差額等にも照らせば,その寄与率は18%である。 イ代替品の存在 被告各製品の代替品となるフルハーネス対応空調服は,株式会社バートル(以下「バートル」という。),村上被服株式会社(以下「村上被服」という。),株式会社ブレイン(以下「ブレイン」という。),クロダルマ株式会社(以下「クロダルマ」という。),株式会社マキタ(以下「マキタ」という。),シンメン株式会社(以下「シンメン」という。),山真製鋸株式会社(以下「山真製鋸」という。) 等によって多数販売されていた。平成29年ないし平成31年(令和元年)の電動ファン付きウェア(フルハーネス対応空調服を含む。以下同じ。)の市場における被告の製品を除いた第三者製品と原告の製品のシェアの割合を対比すると,第三者製品は約51%,原告の製品は約49%であるところ,このシェアの割合はフルハーネス対応空調服の市場でも同一であるから,被告各製品が販売されてなかった場 合,被告各製品に向けられた需要のうち51%は第三者製品に向かったはずである。 ウ被告各製品と原告製品の販売先の違い被告の販売先の多くは, 一であるから,被告各製品が販売されてなかった場 合,被告各製品に向けられた需要のうち51%は第三者製品に向かったはずである。 ウ被告各製品と原告製品の販売先の違い被告の販売先の多くは,ハーネス型安全帯を含む工具や建築資材を取り扱う業者であり,フルハーネス対応空調服を販売しやすい販売先であるのに対し,原告は,そのような販売網を有していないから,被告各製品が販売されていなかったとして も,被告各製品に向けられた需要が原告製品に向かったということはできない。 エ被告各製品及び原告製品の性能以下のとおり,被告各製品の性能は原告製品を上回るものであるから,被告各製品が販売されていなかったとしても,原告製品が購入されるということはできない。 (ア) ランヤードを取り付ける背中の位置は,ハーネス型安全帯の種類及び体格によって差異があるところ,被告各製品は,取出し筒が体軸に沿って縦方向に開口し ているため,この差異に対応することができるのに対し,原告製品は,取出し筒が体軸に対して横方向に開口しているため,この差異に対応することができず,使いにくさがある。 (イ) 被告各製品は,取出し筒の開口部が約19センチメートルと十分なゆとりがあるため,多様な形状のランヤードに対応することができ,フックを容易に取出し 筒に通すことができるのに対し,原告製品は,取出し筒の開口部が約15センチメートルと小さく,フックの大きさによって取出し筒に通すのに不便を感じる可能性がある。 (ウ) 被告各製品は,休止フックをハーネス型安全帯自体に取り付け,それを服の胸ポケット付近から外に取り出して,そこに休止フックを引っかける構造となって いるのに対し,原告製品は,フックを服に直接引っかける構造となっているため,服への負荷が大き に取り付け,それを服の胸ポケット付近から外に取り出して,そこに休止フックを引っかける構造となって いるのに対し,原告製品は,フックを服に直接引っかける構造となっているため,服への負荷が大きく,服へのダメージが懸念されるほか,洗濯のたびにフックを引っかけるD環を取り外す必要があり,手間がかかる。 (エ) 被告各製品は,需要者から高い評価を受けているのに対し,原告製品に対する評価は低い。 オ被告の営業努力等被告らは,世界で初めて空調服を開発,製品化して,平成27年までに約34万着を販売した実績があるところ,被告らの空調服は需要者から高い評価を受けていること(乙81),被告らの空調服が公益社団法人全関東電気工事協会(以下「全関東電気工事協会」という。)推奨品に認定されていることなどに照らすと,需要 者は,被告らの空調服の周知性及び強いブランド力に魅力を感じ,被告各製品を購 入したということができるから,被告各製品が販売されていなかったとしても,原告製品が購入されるということはできない。 第4 当裁判所の判断 1 事実認定⑴ 前記前提事実,後掲各証拠(以下の認定に反する部分を除く。)及び弁論の 全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件考案の内容等(ア) 本件明細書の考案の詳細な説明本件明細書の考案の詳細な説明は,概要,次のとおりであり,図1ないし7は,別紙4本件明細書の図面のとおりである(甲2)。 a 技術分野「【0001】本考案は,高温,高湿度の環境下にあっても熱中症等を心配することなく作業のできる空調服,特に高所作業の際に落下防止用ハーネスを着用したまま使用することのできるハーネス型安全帯の着用可能な空調服の構造に関するものである。」 b 背景 中症等を心配することなく作業のできる空調服,特に高所作業の際に落下防止用ハーネスを着用したまま使用することのできるハーネス型安全帯の着用可能な空調服の構造に関するものである。」 b 背景技術「【0002】従来,高温条件下の空調服は,種々提案されている。例えば,空調服の両側面に開口部を設け,この開口部にファンを臨ませて配設し,携帯可能な電源により駆動されるモータにより前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入 れ,袖口或いは首周りから排出して冷却する形式のものが存在する。 更に,空調服の一部に外気取り入れ口を設け,空調服の開口部に配設したファンで,外気取り入れ口,袖口,首周りから取り入れた外気を服内を循環させた後に排出する形式のものも存在する。」c 考案が解決しようとする課題 「【0004】 安全帯には,腰ベルト型安全帯と図7に示すようなハーネス型安全帯の2種類が有り,高所作業等に使用されるハーネス型安全帯を装着しようとした場合に背中部分に命綱(ランヤード)16が配置されている為に従来の空調服では使用することができないと云う欠点が存在した。 【0005】 この考案は,上記したような不都合を解消するためになされたもので,空調服の背中部分に命綱取出し用の取出し筒を設けると共に,この取出し筒を密封可能に構成し,取出し筒から空気が漏れるのを防止して,冷却効率を損なうことのないハーネス型安全帯の着用可能な空調服を提供するものである。」d 考案の効果 「【0007】本願考案によれば,空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気を空調服 によれば,空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する携帯可能な電源と備え,前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し 用の先端の開口した取出し筒を設けたので,ハーネス型安全帯を着用しても命綱を支障なく取り出すことができる。 したがって,従来では空調服の着用が困難であった場合でも支障なく空調服を着用でき,建設現場等で熱中症の予防が可能である。 また,前記取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐により 取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉するので,取出し筒から空気が漏れるのを防止することができる。したがって,空調服内の本来の空気の流れを阻害することなく,冷却効率を損なう虞がない。…」e 図面の簡単な説明「【0008】 【図1】本考案の一実施例であるハーネス型安全帯の着用可能な空調服の使用状 態を示す斜視図である。 【図2】同ハーネス型安全帯の着用可能な空調服の取出し筒を示す説明図である。 【図3】同ハーネス型安全帯の着用可能な空調服の取出し筒を示す斜面図である。 【図4】同取出し筒の使用状態を示す説明図である。 【図5】同ハーネス型安全帯の着用可能な空調服の背中部分の要部説明図である。 【図6】同背中部分の収納片を閉じ、取出し筒を収納した状態を示す説明図である。 【図7】ハーネス型安全帯の着用例を示す説明図である。」f 実施例1「【0010】以下,一実施の形態を示す図面に基づいて本考案を詳細に説明する。…ここで,本考案のハーネス型安全帯の着用可能な空調服1 ーネス型安全帯の着用例を示す説明図である。」f 実施例1「【0010】以下,一実施の形態を示す図面に基づいて本考案を詳細に説明する。…ここで,本考案のハーネス型安全帯の着用可能な空調服10は,空調服の両サイド下端に設 けられた開口部11と,この開口部11に臨んで配設したファン12と,ファン12を駆動する図示しないモータと,このモータを駆動する図示しない携帯可能な電源と備え,前記ファン12を駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服であって,前記空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒13を設けたものである。 【0011】取出し筒13は,図2,3に示すように基端が空調服に固定されると共に先端の開口した筒状をしており,筒部先端近傍に口紐14が収納可能な環状袋15が形成されており,環状袋15に設けられた切欠き部15aから口紐14の両端部が延出されている。 この口紐14により取出し筒13から引き出した命綱16の周囲を図4に示すよ うに緊縛して,取出し筒13の開口部を密閉することができる。」(イ) 本件考案の概要前記認定の実用新案登録請求の範囲請求項2及び本件明細書の記載によれば,本件考案は,概要,次のとおりのものと認められる。 a 本件考案は,高温,高湿度の環境下にあっても熱中症等を心配することなく 作業をすることができる空調服,特に,高所作業の際に落下防止用ハーネスを着用したまま使用することができるハーネス型安全帯を着用することができる空調服の構造に関するものである(【0001】)。 b 従来,高温条件下の空調服としては,空調服の両側面に開口部を設け,この開口部にファンを臨ませて配設し,携帯可能な電源により駆動されるモータに 空調服の構造に関するものである(【0001】)。 b 従来,高温条件下の空調服としては,空調服の両側面に開口部を設け,この開口部にファンを臨ませて配設し,携帯可能な電源により駆動されるモータにより ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出して冷却する形態のものなどが存在していたが,高所作業等に使用されるハーネス型安全帯は背中部分に命綱(ランヤード)が配置されるため,従来の空調服では使用できないという不都合があった(【0002】,【0004】)。 c 本件考案は,このような不都合を解消するため,空調服の背中部分に命綱取 出し用の取出し筒を設けるとともに,この取出し筒を密封可能に構成することにより,取出し筒から空気が漏れるのを防止し,冷却効率を損なうことのないハーネス型安全帯の着用が可能な空調服(構成要件E)を提供するものである。 具体的には,空調服の一部に設けられた開口部と,この開口部に臨んで配設したファンと,ファンを駆動するモータと,モータを駆動する携帯可能な電源とを備え, ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服(構成要件A,B)について,空調服の背中部分に命綱取出し用の先端の開口した取出し筒を設けることにより(構成要件C),ハーネス型安全帯を着用しても命綱を支障なく取り出すことができるようにし,従来では空調服の着用が困難であった場合でも支障なく空調服を着用することができ,建設現場等による 熱中症の予防が可能になるという作用効果を奏するとともに,取出し筒の筒部先端 近傍に口紐を設け,口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉することにより(構成要件D),取出し筒から空気が漏れ 果を奏するとともに,取出し筒の筒部先端 近傍に口紐を設け,口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉することにより(構成要件D),取出し筒から空気が漏れるのを防止することができ,空調服内の本来の空気の流れを阻害することがなく,冷却効率を損なうおそれがないという作用効果を奏するものである(【0005】,【0007】)。 イ原告及び被告らの取引関係等(ア) 原告は,昭和24年に設立され,ユニフォームメーカーとして作業着等の衣類製品を製造し,販売しており,平成15年,平成16年及び平成28年に発表されたユニフォーム売上げは,全国のユニフォームメーカーの中で10位前後であった(甲21,24)。 (イ) 原告は,平成17年1月20日,被告との間で,原告及び被告間の売買並びに委託業務等の取引に関する取引基本契約を締結し,平成24年11月20日,セフト社との間で,セフト社が開発した空調服の製造及び販売に関する本件取引基本契約を締結し,同契約に基づき,空調服を製造し,これをセフト社に譲渡していた。 本件取引基本契約は,セフト社から平成27年10月14日に契約終結の申出がさ れ,その後,終了している(甲29,乙20,21)。 ウ原告におけるフルハーネス対応空調服の開発状況等(ア) 原告では,平成26年9月8日,企画会議において,ハーネス型安全帯を装着して空調服を着ることができないかという顧客からの要望があったこと,東京都では高所作業時にハーネス型安全帯の着用が義務付けられていることを踏まえ,ハ ーネス型安全帯を着用した状態で使用することができる空調服の開発が機能上可能か検討することとなり,いずれも原告の従業員であり,空調服の生産管理等の業務に従事していたD及び同業務を所管 え,ハ ーネス型安全帯を着用した状態で使用することができる空調服の開発が機能上可能か検討することとなり,いずれも原告の従業員であり,空調服の生産管理等の業務に従事していたD及び同業務を所管するユニフォーム事業部の事業部長であったCにおいて,この開発,検討を担当することになった(甲14,25,証人C,証人D)。 (イ) C及びDは,共同で上記の開発,検討を進めていたところ,その過程で,空 調服の内側にハーネス型安全帯を着用する内側タイプの空調服,すなわち,空調服の背中部分に筒状のランヤードの出口を設け,その出口を縛ることにより,その出口からの空気の漏れを防ぐというコンセプトの空調服と,空調服の外側にハーネス型安全帯を着用する外側タイプの空調服,すなわち,ハーネス型安全帯装着時にベルトで圧迫される空調服の両肩内側にパッド付きの布又はクッション材を縫い付け ることにより,空気の流れを確保するというコンセプトの空調服が候補に挙がり,Dは,平成27年1月28日,原告の縫製担当であるFに対し,本件依頼書により,上記の各空調服につき,サンプルの作成を依頼した。 本件依頼書1は,内側タイプの空調服に係るものであり,「絵型・留意点」として,「KU90810 c/#6 LLの背面にランヤードの出口をつける」と 記載され,添付されている空調服の背面側の図面に,背中部分に設けられた「窓」につき「四角に切り抜き,下記の様なランヤードの出口を」と記載されているほか,この出口部分に取り付けられる筒状の部材のイメージ図が添付されており,その先端部付近に紐様のものが設けられ,「口をしばる感じ」と記載されているなど,本件考案の構成が全て記載されたものであった(甲16,25,33,35,43, 45,証人C,証人D)。 (ウ その先端部付近に紐様のものが設けられ,「口をしばる感じ」と記載されているなど,本件考案の構成が全て記載されたものであった(甲16,25,33,35,43, 45,証人C,証人D)。 (ウ) Fは,平成27年2月2日に,本件依頼書1に基づき,既製品である型番「KU90810」の空調服を加工し,筒状のランヤード出口及び背中の窓部分については型紙を利用して内側タイプの空調服のサンプルを作成し,本件依頼書2に基づいて上記と同型番の既製品である空調服を加工して外側タイプの空調服のサン プルを作成した。また,Fは,同月16日に,本件依頼書3に基づき,全体的に型紙を利用して外側タイプの空調服のサンプルを作成した。 Fは,サンプル作成等の依頼を受けて加工を行うと,その都度,加工を行った日時,加工の概要等を加工ノートに記載しているところ,同ノートの平成27年2月2日の欄には,本件依頼書1の管理番号とともに,「フード付き空調服ハーネス 対策内側タイプ」,「背中に窓を開けてランヤード口を付ける。収納天ブタを付け る」と記載されている(甲16,17,33,35,40,45,46,証人F)。 本件依頼書1に基づく内側タイプの空調服については,平成27年2月6日に,CADを用いて,後身及びランヤード出口に係る部分の型紙のデータが作成され,本件依頼書3に基づく外側タイプの空調服については,同月3日又は5日に,CADを用いて空調服全体の型紙のデータが作成された(甲16の1,16の3,4 0)。 (エ) その後,原告において,上記の各サンプルを比較して検討するなどした結果,外側タイプの空調服は,肩内側にクッション材を入れても,うまく空気が流れないという問題があったことなどから,内側タイプの空調服を製品化することとなった(甲25, プルを比較して検討するなどした結果,外側タイプの空調服は,肩内側にクッション材を入れても,うまく空気が流れないという問題があったことなどから,内側タイプの空調服を製品化することとなった(甲25,証人C,証人D)。 (オ) 本件依頼書1に基づくサンプルは,本件依頼書1のとおり,空調服の背中部分にランヤードを取り出すための筒状の出口を設け,その先端部を紐で縛ることができる構成を有するものであり,Dによって写真撮影された(甲18)。 エ被告らにおけるフルハーネス対応空調服の開発状況等(ア) 被告ら代表者は,平成27年3月3日頃,空調服の背中部分にランヤードを 取り出すための筒状の出口を設け,その先端部分を紐などによって縛ることができる構成を有する空調服に係る着想を得て,その構成を手書きで図示した乙11図面を作成した。被告ら代表者は,同月4日,ゼハロスに対し,そのデータを送信して試作品の作成を依頼した(乙3,11)。 (イ) ゼハロスは,平成27年3月4日,乙11図面に基づく空調服のデザイン図 面を作成するとともに,同月9日以降,パターン及び試作品の作成を他社に委託し,同月31日までに空調服の背中部分にランヤードを取り出すための筒状の出口を設け,その先端部分を紐及びコードストッパーによって縛ることができる構成を有する本件試作品を作成した。セフト社は,同日頃,ゼハロスに対し,本件試作品及びそのパターン一式に係る代金として,4万円(税抜き)を支払った(乙3,11な いし14,16,18)。 (ウ) Bは,平成27年3月中旬頃,Dと電話で話をした(乙22)。 (エ) 被告ら代表者は,平成27年3月26日,C及びDも出席していた空調服の会において,●(省略)●からフルハーネス対応空調服のアイディアが出され 27年3月中旬頃,Dと電話で話をした(乙22)。 (エ) 被告ら代表者は,平成27年3月26日,C及びDも出席していた空調服の会において,●(省略)●からフルハーネス対応空調服のアイディアが出されているので,必要であれば情報提供する旨の発言をした(乙10)。 (オ) 被告は,平成27年4月2日,ハーネス型安全帯を合計4万0296円(税 込み)で購入し,被告らは,同月7日,このハーネス型安全帯を用いて本件試作品の試着をした(乙9,17,18)。 (カ) 原告のE常務は,平成27年4月10日,被告らの社屋移転を受けてセフト社を訪問した際に,被告らから,本件試作品又は被告らの製品の見本を示されるなどした(乙3,9)。 オ本件出願及びその後の経過(ア) 原告は,平成27年4月17日,G特許事務所に対し,本件依頼書1に基づくサンプルの写真(前記ウ(オ))を添付した依頼書を交付し,その権利化を依頼した。同事務所所属の弁理士は,本件明細書の図面を作成するなどして,本件出願日である同年5月11日,原告の代理人として,本件出願をした(甲18,25,3 7ないし39)。 (イ) セフト社は,平成27年6月30日,発明の名称を「空調服」とし,ハーネス型安全帯を着用した状態であっても冷却効果を発揮することができる高所作業用の空調服を提供するものであるとして,特許出願(特願2015-130592)をした(乙19)。 (ウ) セフト社は,平成27年7月29日から平成28年1月29日までの間に,原告に対し,被告らが開発していたフルハーネス対応空調服のハーネス型安全帯のフックかけの仕様,空調服及びフックかけの価格,空調服の品番,パターン情報,フルハーネスの写真等の情報に係るデータをメールで送信した(乙35ないし40)。 ス対応空調服のハーネス型安全帯のフックかけの仕様,空調服及びフックかけの価格,空調服の品番,パターン情報,フルハーネスの写真等の情報に係るデータをメールで送信した(乙35ないし40)。 (エ) 被告ら代表者は,平成27年11月頃,Cと電話で話をした。 (オ) 原告は,平成28年2月頃から,フルハーネス対応空調服である原告製品を販売している。 (カ) 被告ら代表者は,平成28年3月3日,Cも出席していた空調服の会において,特許出願の際には,過去に出願された特許と比較して進歩性の有無を確認しているため,空調服の会に所属する会員が出願した特許によって新たな出願に支障が 生じる場合があること,今回は問題にならなかったが,原告がハーネスの背中部分について実用新案登録出願をしたこと,空調服の会に所属する会員の利益及びブランドを守ることにつながるから,会員の中からこのようなことにならないよう必ず事前に連絡してほしいことなどを発言した(乙23)。 カ被告各製品の販売等 (ア) 被告は,平成27年10月30日,セフト社との間で,セフト社の製造する製品の継続的売買に係る商品取引基本契約及びセフト社の商品の物流業務等に係る業務委託基本契約を締結した。 セフト社は,平成28年5月から,上記商品取引基本契約に基づき,製造した被告各製品の全てを被告に譲渡し,上記業務委託基本契約に基づき,その物流業務等 を被告に委託している。 被告は,同月から,セフト社から譲渡を受けた被告各製品を第三者に譲渡し,譲渡の申出をしている(乙47ないし49,59)。 (イ) 被告各製品の販売単価及びこれらに対応する通常の空調服の型番及び販売単価は次のとおりである(乙91)。 被告各製品対応する通常の空調服 販売単価 ないし49,59)。 (イ) 被告各製品の販売単価及びこれらに対応する通常の空調服の型番及び販売単価は次のとおりである(乙91)。 被告各製品対応する通常の空調服 販売単価型番販売単価被告製品11万7800円BP500N1万5400円被告製品21万2600円P500N1万0200円被告製品37300円KU905404900円 被告製品41万7800円BM500U1万5400円被告製品51万2600円M500U1万0200円被告製品67300円KU905504900円(ウ) 被告各製品のカタログには,「セット内容が選べる3タイプ」の「ウェアのみ」の製品について,「洗い替え用やファン・バッテリーなどをお持ちの方向けのウェアのみです。」と記載され,被告製品3及び6について,「フルハーネス安全帯着用者専用空調服です。背中部分からランヤードを取り出すことができます。もちろん空気は逃がしません。…」と記載されている(甲5)。 ⑵ 事実認定の補足ア本件依頼書,加工ノート並びにC,D及びFの各供述の信用性について被告は,前記⑴ウの認定事実に係る本件依頼書,加工ノート並びにC,D及びFの各供述(以下,アにおける検討において「開発状況等に係る証拠」という。)はいずれも信用できないとし,その理由として,次の点を主張する。すなわち,①C 及びDは本件考案を考案する能力を有していない,②原告の平成26年9月の企画会議に係る議事録(甲14)では,フルハーネス対応空調服の担当は「企画」と記載され,同年10月の企画会議の議事録(甲15)によれば,C及びDは同企画会議に出席すらしていないことからすると,同人らが担当者であった 事録(甲14)では,フルハーネス対応空調服の担当は「企画」と記載され,同年10月の企画会議の議事録(甲15)によれば,C及びDは同企画会議に出席すらしていないことからすると,同人らが担当者であったというのは不自然である,③衣料業界の常識に照らし,型紙を作成することなく新規サンプルを作 成することはできないところ,本件依頼書には「型紙担当」欄に押印がないから,型紙を作成することなくサンプルを作成することを依頼するものであり,不自然である,④本件依頼書のデータ上の作成日時を操作することは容易である,⑤本件依頼書2及び3に基づき作成されたサンプルの写真が存在していないのは不自然である,⑥ピース一覧表(甲40)では,本件依頼書1に基づくサンプルに係るピース 作成日時は平成27年2月6日とされており,同サンプルが作成されたとする同月2日の後の日付となっている,⑦Fは,土曜日及び日曜日は出勤しないことを供述しているが,加工ノートに土曜日及び日曜日の記載があることと矛盾し,不自然で あるなどと主張する。 しかしながら,以下のとおり,本件依頼書及び加工ノートについては,作成経緯,作成状況や記載内容に不自然な点は認められず,これらとC,D,Fの各供述は整合するものであるから,開発状況等に係る証拠は,いずれも信用することができると認められ,被告の主張はいずれも採用することができない。 (ア) 上記①(C及びDの考案能力)について本件考案は,従来の空調服の構成を前提として,その背中部分の構成を変更するにとどまるものであると認められるところ,前記⑴イ認定の原告のユニフォームメーカーとしての実績,空調服の製造及び販売の実績に加えて,当時,Dが空調服の生産管理等の業務に従事しており,Cが同業務を所管するユニフォーム事業部の事 ところ,前記⑴イ認定の原告のユニフォームメーカーとしての実績,空調服の製造及び販売の実績に加えて,当時,Dが空調服の生産管理等の業務に従事しており,Cが同業務を所管するユニフォーム事業部の事 業部長の地位にあり,共同して開発,検討を進めていたことなどに照らせば,C及びDが本件考案を考案することに不自然な点はなく,考案する能力を疑わせるに足りる証拠はない。 (イ) 上記②(原告の企画会議の議事録の記載)について原告の企画会議の議事録(甲14)に,フルハーネス対応空調服の担当者の所属 が「企画」と記載され,C及びDの所属と異なることについて,新商品を開発する場合の担当者の所属は全て「企画」と記載されていた旨のCの供述が,そのような取扱いが不自然であるとはいえないことから信用することができ,また,開発担当者が社内会議を欠席することもあり得ないわけではなく,C及びDがフルハーネス対応空調服の開発担当者であったことを前提とする開発状況等に係る証拠の信用性 を否定するものとはいえない。 (ウ) 上記④(作成日時の操作可能性)について被告の主張は,本件依頼書のデータ上の作成日時を事後的に変更することが技術的に可能であることを抽象的に指摘するにとどまるものであり,採用することができない。 (エ) 上記⑤(写真撮影)について 前記⑴ウ(エ)認定のとおり,本件依頼書2及び3に係る外側タイプの空調服は,製品化されなかったものであるから,サンプルの写真が撮影されていなかったからといって,直ちに不自然であるとはいえない。 (オ) 上記③(型紙の作成)及び上記⑥(ピース一覧表の記載)についてFは,本件依頼書1に基づく内側タイプの空調服についてはランヤード出口に係 る部分など空調服の構成の一部につき,本件 (オ) 上記③(型紙の作成)及び上記⑥(ピース一覧表の記載)についてFは,本件依頼書1に基づく内側タイプの空調服についてはランヤード出口に係 る部分など空調服の構成の一部につき,本件依頼書3に基づく外側タイプの空調服については空調服全体につき,型紙を作成した旨供述しており,この供述は,本件依頼書記載の各作業内容と整合するものである。本件依頼書の各「型紙担当」欄に押印がないことの理由は明らかでないものの,他の開発状況等に係る証拠の具体的な内容に照らせば,本件依頼書の前記状況によって型紙作成の事実と矛盾するとま でいうことはできない。 また,前記⑴ウ(ウ)認定のとおり,本件依頼書1に基づく内側タイプの空調服に係る型紙のCADデータは本件依頼書1に基づくサンプル作成よりも後の平成27年2月6日に作成されているが,同日作成された型紙のデータは,同月2日のサンプル作成用の型紙に修正を施すなどして作成,保存された可能性もあり,そうであ るとしても直ちに不自然であるとはいえないから,ピース一覧表に示された型紙のCADデータの作成日によっても,開発状況等に係る証拠の信用性が否定ないし減殺されるとはいえない。 (カ) 上記⑦(Fの供述)について被告は,土曜日及び日曜日のFの出勤状況に関するFの供述と,加工ノートに示 された日付に土曜日及び日曜日のものが含まれていることとが整合しない旨を指摘するが,Fの上記供述は出勤状況についての一般論をいうにとどまるものと解し得るから,被告の上記指摘によっても,Fの供述の全体的な信用性は揺るがないというべきである。 イ原告が被告らのフルハーネス対応空調服に関する情報を利用した旨の被告の 主張について 被告は,原告が,平成27年3月中旬頃のBからの電話や,同 揺るがないというべきである。 イ原告が被告らのフルハーネス対応空調服に関する情報を利用した旨の被告の 主張について 被告は,原告が,平成27年3月中旬頃のBからの電話や,同年4月10日のE常務の被告ら訪問時に被告らから見せられた本件試作品及び交付された乙11図面などによって,被告らのフルハーネス対応空調服に関する情報を取得し,これを利用して本件出願をしたとし,このことを裏付ける事情として,①本件明細書の図1と乙11図面や本件試作品の構成が同一であること,②Cが,平成27年11月頃 の電話で,冒認出願を認めて被告らに謝罪したこと,③被告ら代表者が,平成28年3月3日の空調服の会で,原告のように冒認出願をしないようにと発言したのに対し,原告から何らの反論等もなかったことなどを主張する。 しかしながら,前記⑴ウ,オ認定のとおり,原告におけるフルハーネス対応空調服の開発過程で,内側タイプの空調服が候補に挙がり,そのサンプル作成を依頼す るために平成27年1月28日に作成された本件依頼書1には,本件考案の構成が全て記載されていたこと,同年2月2日にそのサンプルが作成され,その写真を添付した依頼書に基づき代理人弁理士によって本件出願がされたことが認められるから,原告において,同年3月中旬頃のBからの電話や同年4月10日のE常務の訪問時に何らかの情報を得ていたと仮定しても,そのような情報を利用して本件出願 がされたと認めることはできず,原告のフルハーネス対応空調服の開発状況等に関する前記認定を覆すに足りない。 また,上記①については,本件明細書の図面1と乙11図面の構成が類似しているとしても,前記のとおり,本件考案が従来の空調服の構成を前提として,その背中部分の構成を変更するにとどまるものであると認められる ,上記①については,本件明細書の図面1と乙11図面の構成が類似しているとしても,前記のとおり,本件考案が従来の空調服の構成を前提として,その背中部分の構成を変更するにとどまるものであると認められることからすると,原告 及び被告らにおいて,それぞれ独自に開発,検討を進めた結果として,同時期に類似の構成に到達することが不自然であるとはいい難く,原告のフルハーネス対応空調服の開発状況等に関する前記認定を覆すに足りない。 さらに,上記②,③については,これを裏付ける的確な証拠はなく,いずれも採用することができない。 2 争点1(被告製品は,構成要件Dを充足し,文言上,本件考案の技術的範囲 に属するか)について⑴ 「緊縛」の意義ア構成要件Dは,取出し筒の筒部先端近傍に口紐を設け,「口紐により取出し筒から引き出した命綱の周囲を緊縛して,取出し筒の開口部を密閉する」というものであり,それによって,取出し筒から空気が漏れるのを防止し,冷却効率を損な わないという作用効果を奏するものであるところ(前記1⑴ア(イ)),上記の「緊縛」については,「きつくしばること」という一般的な字義(乙1)のとおり,口紐により命綱の周囲をきつく縛ることを意味すると解するのが相当である。 イ被告は,「緊縛」は,口紐を取出し筒の先端部に巻き付け,その両端を絡ませてつなぎ合わせることを意味すると解すべきであるとし,その理由として,① 「縛る」に「ひもや縄などを巻き付けて結び,離れたり,動いたりしないようにする」という字義があり,「結ぶ」に「ひも・帯などの両端をからませてつなぎ合わせる」という字義があること,②本件明細書の図4に,口紐を筒部先端部に巻き付け,その両端を絡ませてきつく縛り,筒部の開口部を密閉する態様の実施例が示されてい ひも・帯などの両端をからませてつなぎ合わせる」という字義があること,②本件明細書の図4に,口紐を筒部先端部に巻き付け,その両端を絡ませてきつく縛り,筒部の開口部を密閉する態様の実施例が示されていることなどを主張する。 しかしながら,被告が主張するような態様によらなくとも,筒部の開口部を密閉することによって,取出し筒から空気が漏れるのを防止し,冷却効率を損なわないという作用効果を奏することは可能であると考えられるところ,上記①については,「緊縛」の一般的な字義を離れて,その意味を過度に限定するものであり,上記②についても,実施例にすぎず,本件明細書の考案の詳細な説明において,口紐を筒 部先端部に巻き付け,その両端を絡ませてきつく縛る態様のものでなければならないとする説明もみられないことなどに照らせば,いずれの主張も採用することはできず,「緊縛」がそのような態様のものに限定されると認めることはできない。 ⑵ 被告製品これを被告製品についてみると,前記第2の2⑹のとおり,被告製品は,ランヤ ード取出し筒の筒部先端近傍に口紐を設け,「口紐をランヤード取出し筒から引き 出したランヤードの周囲に巡らせ,コードストッパーを用いて筒部先端部分を収縮させることにより,ランヤードを固定して,ランヤード取出し筒の開口部を密閉する」という構成(構成d)を有するところ,コードストッパーを用いるものであったとしても,口紐により命綱の周囲をきつく縛ることにより,筒部の開口部を密閉するものである認められるから,構成要件Dを充足する。 したがって,被告製品は,文言上,本件考案の技術的範囲に属する。 3 争点3(被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物か)について前記第2の2⑹イ認定のとおり,被告製品 したがって,被告製品は,文言上,本件考案の技術的範囲に属する。 3 争点3(被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物か)について前記第2の2⑹イ認定のとおり,被告製品3及び6は,服本体のみで販売されている製品であり,ファン等を取り付け又は収納することによって,本件考案の技術 的範囲に属する被告製品と同様の構成を備えるものとなると認められるから,被告製品と同様に,構成要件Dを充足する。 そして,被告製品3及び6は,ハーネス型安全帯を着用できるようにするために空調服の背中部分にランヤード取出し筒を設けたものであり,そのような構成を有しない通常の空調服と比べて販売単価が高いものであること,具体的には,前記1 ⑴カ(イ)認定のとおり,被告各製品の販売単価とこれらに対応するものとして被告が販売している通常の空調服の販売単価を対比すると,被告製品1及び4は約15%,被告製品2及び5は約23%,被告製品3及び6は約48%割高であること,同(ウ)認定のとおり,被告の空調服のカタログに,「ウェアのみ」の製品は「洗い替え用やファン・バッテリーなどをお持ちの方向けのウェアのみです。」と記載さ れ,被告製品3及び6は「フルハーネス安全帯着用者専用空調服です。背中部分からランヤードを取り出すことができます。もちろん空気は逃がしません。…」などと記載されていることなどからすると,被告製品3及び6は,ハーネス型安全帯を着用するために販売されている製品であると認めるのが相当であり,ハーネス型安全帯を全く利用しない使用形態は,経済的,商業的,実用的な用途として想定され ていないというべきであるから,本件登録実用新案に係る物品である被告製品の製 造のみに用いるものと認めるのが相当である。 したがって,被告 済的,商業的,実用的な用途として想定され ていないというべきであるから,本件登録実用新案に係る物品である被告製品の製 造のみに用いるものと認めるのが相当である。 したがって,被告製品3及び6は本件登録実用新案に係る物品の製造にのみ用いる物(実用新案法28条1号)に当たる。 4 争点4(本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効とされるべきものか)-争点4-1(本件実用新案登録は冒認出願に対してされたものか),争 点4-2(本件実用新案登録は共同出願違反によりされたものか)について⑴ 考案者とは,当該考案に係る技術的思想の創作行為,すなわち,当該考案の技術的思想の特徴的部分の完成に現実に関与した者をいうと解される。 そこで検討すると,前記1⑴ア(イ)のとおり,本件考案は,空調服の両側面に開口部を設け,この開口部にファンを臨ませて配設し,携帯可能な電源により駆動さ れるモータによりファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出して冷却するといった構成を有する従来の空調服では,背中部分に命綱(ランヤード)が配置されるハーネス型安全帯を使用することができないという不都合があったため,構成要件C及びDのとおり,空調服の背中部分に命綱取出し用の取出し筒を設け,この取出し筒を密閉可能に構成することにより,取 出し筒から空気が漏れるのを防止し,冷却効率を損なうことのないハーネス型安全帯の着用が可能な空調服を提供するものであると認められるから,本件考案の技術的思想の特徴的部分は構成要件C及びDの構成であるというべきである。 そして,前記1⑴ウのとおり,原告の従業員であるC及びDによる共同での開発,検討の過程で,空調服の背中部分に筒状のランヤードの出口を設け,その出口を縛 及びDの構成であるというべきである。 そして,前記1⑴ウのとおり,原告の従業員であるC及びDによる共同での開発,検討の過程で,空調服の背中部分に筒状のランヤードの出口を設け,その出口を縛 ることができるように構成することにより,その出口からの空気の漏れを防ぐというコンセプトの内側タイプの空調服が候補に挙がり,この空調服に係るサンプルの作成を依頼するためにDが平成27年1月28日に作成した本件依頼書1には,構成要件C及びDを含む本件考案の構成が全て記載されていたことが認められる。 このような事実経過に照らせば,C及びDは,本件考案の技術的思想の特徴的部 分である構成要件C及びDの完成に現実に関与したものであると認められ,本件考 案の考案者であると認めるのが相当である。 ⑵ 被告は,本件考案は,被告ら代表者において,平成27年3月3日に着想を得て完成させたものであり,原告は,平成27年3月中旬頃のBからの電話や,同年4月10日のE常務の被告ら訪問時に被告らから交付された乙11図面などによって,本件考案に関する情報を取得し,これらを利用して本件出願をしたものであ って,本件出願は冒認出願である旨主張するが,原告において,平成27年3月中旬頃のBからの電話や,同年4月10日のE常務の訪問時に得た情報を利用して,本件出願をしたと認められないことは前記1⑵イのとおりであり,被告らにおいて,構成要件C及びDの構成の完成に現実に関与したと認めるに足る証拠はない。 ⑶ また,被告は,本件考案は原告と被告らの共同考案であり,本件出願は共同 出願違反であるとし,その理由として,原告及び被告らにおいて,遅くとも平成26年9月8日までに,①インナースペーサーを着用するフルハーネス対応空調服の問題点に関する情報(乙7の2)や,② 同 出願違反であるとし,その理由として,原告及び被告らにおいて,遅くとも平成26年9月8日までに,①インナースペーサーを着用するフルハーネス対応空調服の問題点に関する情報(乙7の2)や,②空調服の背中に開いているランヤードを通すための穴の位置がハーネス型安全帯の形状ごとに異なり,一つの位置に固定することができないことに関する情報を共有していたことを主張する。 しかしながら,上記①の情報の具体的な内容は判然とせず,被告が指摘する「フルハーネス安全帯仕様の改造品についてのご回答」と題する書面(乙7の2)にも,インナースペーサーは「服と体の間に空間を設け,空調服の空気の流通路を確保するためのオプション」であり,インナースペーサーを空調服内部で着用した状態でハーネス型安全帯を着用する場合の問題点等が記載されているにとどまり,これら が本件考案の課題や構成要件C及びDの構成に関係する情報であるとは認められない。 また,上記②の情報についても,ランヤードを通すために空調服の背中部分に開けられた穴の位置を固定することができないというにとどまり,その穴から空気が漏れるのを防止し,冷却効率を損なわないような構成が必要となることは示されて いないから,これらが本件考案の課題や構成要件C及びDの構成に関連するもので あるとも認められない。 さらに,その他本件全証拠によっても,本件考案が被告らとの共同考案であると認めるに足りない。 ⑷ 以上のとおり,本件考案の考案者は,いずれも原告の従業員であるC及びDであり,弁論の全趣旨によれば,原告は,本件考案に係る実用新案登録を受ける権 利を承継したと認められるから,本件実用新案登録は冒認出願又は共同出願違反によりされたものであるということはできない。 5 争点5(被 によれば,原告は,本件考案に係る実用新案登録を受ける権 利を承継したと認められるから,本件実用新案登録は冒認出願又は共同出願違反によりされたものであるということはできない。 5 争点5(被告は先使用による通常実施権を有するか,又はセフト社の先使用による通常実施権を援用することができるか)について⑴ 被告各製品の製造等に関し,被告らが先使用による通常実施権を有するとい うためには,被告らにおいて考案の実施である「事業の準備」(実用新案法26条,特許法79条)をしていたこと,すなわち,その考案につき,いまだ事業の実施の段階には至らないものの,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度において表明されていることを要するものと解される(特許法79条に関する最高裁昭和61年(オ)第454号同年10月3日 第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照)。 ⑵ これを本件についてみると,本件出願日までの被告らにおけるフルハーネス対応空調服の開発状況等は前記1⑴エ認定のとおりである。すなわち,①被告ら代表者は,平成27年3月3日頃,背中部分に先端が開口した筒状の出口を設け,その先端部分を紐様のものなどを用いて縛る構成を有する空調服に係る着想を得て, その構成を手書きで図示した乙11図面を作成し,同月4日,そのデータをゼハロスに送信して,試作品の作成を依頼したこと,②ゼハロスは,同月31日までに,背中部分に先端が開口した筒状の出口を設け,その先端部分を紐及びコードストッパーを用いて縛る構成を有しており,被告各製品と同様の構成を有する本件試作品を作成したこと,③被告らは,同年4月7日,被告において購入したハーネス型安 全帯を用いて本件試着品の試着をしたことが認められる。 しており,被告各製品と同様の構成を有する本件試作品を作成したこと,③被告らは,同年4月7日,被告において購入したハーネス型安 全帯を用いて本件試着品の試着をしたことが認められる。 しかしながら,フルハーネス対応空調服の構成に係る手書き図面が作成され,その試作品を作成して,社内でその試着をしたからといって,被告らにおいて,即時実施が可能な状況にあったかは必ずしも明らかとはいえないところ,前記第2の2⑸認定のとおり,被告らが被告各製品の製造,販売等を開始したのは平成28年5月であり,本件試作品が作成され,試着された平成27年3月及び同年4月から1 年以上を要したことにも照らせば,本件出願日の時点では,少なくとも,本件考案の実施に当たる被告各製品の事業に係る被告らの即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されていたということはできないというべきである。 ⑶ 被告は,①被告ら代表者は,平成27年3月4日,本件考案の構成が記載された乙11図面のデータをゼハロスに送信し,試作品の作成を依頼しているところ, フルハーネス対応空調服が顧客のニーズ等を背景として作れば売れる製品であったこと,その開発又は販売の障害となるような事情は存在しなかったこと,被告らの社内体制として,被告ら代表者の意思決定が重要な意味を持っていたことなどに照らせば,被告ら代表者の上記の行為は,フルハーネス対応空調服の事業化を決定する旨の被告らの意思表示であるということができること,②ゼハロスは,被告ら代 表者の上記の依頼を受け,他社に委託するなどして,平成27年3月31日までに,本件試作品を作成しているところ,被告らが,莫大な時間,労力,資金を投下して,既存の空調服を研究,開発し,商品化してきたこと,本件考案は,既存の空調服に筒を取り どして,平成27年3月31日までに,本件試作品を作成しているところ,被告らが,莫大な時間,労力,資金を投下して,既存の空調服を研究,開発し,商品化してきたこと,本件考案は,既存の空調服に筒を取り付けるだけで完成するシンプルな構成であることなどに照らすと,被告らは,本件試作品の作成によって,フルハーネス対応空調服に係る事業活動のほとん どを完了しており,被告らによる即時実施の意図が客観的に表明されていること,③被告ら代表者は,平成27年3月26日の空調服の会において,必要があればフルハーネス対応空調服のアイディアを提供する旨発言しており,被告らが同空調服を販売する意思を有していたことが示されていること,④被告らは,平成27年4月7日,本件試作品の試着を行い,被告ら代表者においてフルハーネス対応空調服 は完成したと強い手応えを感じ,同空調服の販売の意思はより強固なものになった から,遅くともその時点で,被告らによる販売の意思は確定的なものとなったことなどを主張する。 しかしながら,上記①について,乙11図面は,手書きの比較的簡略な図面であり,そのデータを他社に送信して試作品の作成を依頼したというだけで,即時実施が可能な状況にあったといえないことは明らかである。被告ら代表者の意思決定が 重要であったというのは被告らの内部的な事情にすぎないことにも照らせば,ゼハロスへの乙11図面の送信等をもって,被告各製品の実施に係る被告らの即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されたということはできない。 また,上記②,④について,本件考案は既存の空調服の背中部分の構成を変更するにとどまるものであり,被告らは既存の空調服の研究,開発実績を有していると 認められたとしても,試作品が一度作成され,社内でその試着がさ ついて,本件考案は既存の空調服の背中部分の構成を変更するにとどまるものであり,被告らは既存の空調服の研究,開発実績を有していると 認められたとしても,試作品が一度作成され,社内でその試着がされただけでは,製品化に耐えるものであるか未だ明らでなく,試着の結果を踏まえて設計の見直し等の作業が必要になるであろうことは十分に考えられるところである。被告らが被告各製品の製造,販売等を開始したのはその後1年以上が経過した平成28年5月であったことなどにも照らせば,本件試作品が作成されたことや試着されたことを もって,被告各製品の実施に係る被告らの即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されたということはできない。 さらに,上記③について,被告が指摘する空調服の会における被告ら代表者の発言は,必要があればフルハーネス対応空調服のアイディアを提供するというものであり,これをもって,被告各製品の実施に係る被告らの即時実施の意図が客観的に 認識される態様,程度に表明されたということはできない。 ⑷ 以上によれば,本件出願日である平成27年5月11日当時,本件考案の実施に当たる事業に係る被告らの即時実施の意図が客観的に認識される態様,程度に表明されていたと認めることはできないから,被告らにおいて,その「事業の準備」をしていたということはできない。 したがって,本件実用新案について被告らは先使用による通常実施権を有すると 認めることはできず,また,セフト社の先使用による通常実施権を援用する旨の被告の主張も理由がない。 6 争点6(被告は黙示の実施許諾による実施権を有するか)について⑴ 被告は,本件実用新案権について原告の黙示の実施許諾による実施権を有するとし,これを基礎付ける事情として,①原告は,本件実 6 争点6(被告は黙示の実施許諾による実施権を有するか)について⑴ 被告は,本件実用新案権について原告の黙示の実施許諾による実施権を有するとし,これを基礎付ける事情として,①原告は,本件実用新案権の登録日である 平成27年7月1日の時点で,被告らが本件考案の実施に係る事業の準備をしていたことを明確に認識していながら,これを放置していたこと,②原告は,被告らのフルハーネス対応空調服に係る情報を取得し,その情報を自己の製品の開発や販売に利用するなどしていたことを主張する。 ⑵ そこで検討すると,前記認定のとおり,原告及び被告らは本件取引基本契約 を背景とする取引関係があり,被告らは,平成27年4月10日には原告のE常務に本件試作品又は被告らの製品の見本を示すなどしていたこと(前記1⑴イ(イ),エ(カ)),セフト社は,同年7月29日から平成28年1月29日までの間に,原告に対し,被告らが開発していたフルハーネス対応空調服のハーネス型安全帯のフックかけの仕様,空調服及びフックかけの価格,空調服の品番,パターン情報,フ ルハーネスの写真等の情報を提供したこと(同オ(ウ))が認められる。 しかしながら,原告が被告らから提供を受けたと認められる上記の情報の内容,前記1⑴ウ認定の原告におけるフルハーネス対応空調服の開発状況等に照らし,原告が被告らから提供を受けたと認められる上記の情報を利用して原告製品を開発したと認めることはできない。また,原告に対する上記の情報提供は,いずれも,被 告各製品の開発段階でされたものであり,その内容に照らしても,原告において被告各製品の事業化に直ちに異議を述べなかったというだけで,原告の黙示の実施許諾があったと認めることはできない。 ⑶ したがって,被告は本件実用新案権について原告の黙示 に照らしても,原告において被告各製品の事業化に直ちに異議を述べなかったというだけで,原告の黙示の実施許諾があったと認めることはできない。 ⑶ したがって,被告は本件実用新案権について原告の黙示の実施許諾による実施権を有すると認めるに足りない。 7 争点7(原告の権利行使が権利の濫用に当たるか)について ⑴ 被告は,原告の権利行使は権利の濫用に当たるとし,これを基礎付ける事情として,①原告は,本件取引基本契約14条,5条6項所定の通知義務及び提案義務等に違反して,被告らに対して本件考案に係る通知及び提案をせずに本件実用新案権を取得し,紛争の原因を自ら作出したこと,②被告らが本件考案の実施に係る事業の準備をしていたことを明確に認識していながら,原告を信頼していた被告ら から,被告らのフルハーネス対応空調服に関する重要な情報等を取得して,それを自己の製品の開発に利用していたことを主張する。 ⑵ しかしながら,上記①については,前記第2の2⑻認定のとおり,セフト社及び原告において,●(省略)●が規定されているものの,原告が独自に開発した空調服の構成につき,知的財産権を取得することが制限される旨の規定はないから, もとより,原告が本件実用新案権を取得することを禁ずることができるものではなく,これらの契約上の義務に違反したからといって,直ちに本件実用新案権に基づく原告の権利行使が権利の濫用に当たると認めるに足りないというべきである。 また,上記②については,前記のとおり,原告が被告らから提供を受けた情報を利用して原告製品を開発したと認められないから,これを権利の濫用を基礎付ける 事情として採用することはできない。 ⑶ したがって,原告の権利行使が権利の濫用に当たるということはできない。 8 争点8( 製品を開発したと認められないから,これを権利の濫用を基礎付ける 事情として採用することはできない。 ⑶ したがって,原告の権利行使が権利の濫用に当たるということはできない。 8 争点8(損害の発生の有無及びその額)について⑴ 被告らの共同不法行為前記認定のとおり,セフト社は被告の親会社であり,セフト社の代表取締役及び 専務取締役はいずれも被告の代表取締役であること(前記第2の2⑴ウ),セフト社は,被告との商品取引基本契約に基づき,製造した被告各製品の全てを被告に譲渡し,被告は,セフト社から譲渡を受けた被告各製品を第三者に譲渡し,譲渡の申出をしていること(前記1⑴カ(ア))などが認められるところ,このような被告各製品の製造,販売に係る被告らの一体的な関係性に照らせば,被告らは,被告各製 品の製造,販売という一連の侵害行為を共同して行っていると認めるのが相当であ る。 そうすると,被告らには,上記の一連の侵害行為につき共同不法行為が成立すると解するのが相当であって,実用新案法29条2項に基づく損害額の推定の場面でも,上記の一連の侵害行為により被告らが受けた利益の合計額をもって,原告が受けた損害の額と推定するのが相当である。 ⑵ 被告らが受けた利益の合計額ア利益の意義実用新案法29条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であると解 される。 イ売上高弁論の全趣旨によれば,本件対象期間における被告各製品の売上高は次のとおりであると認められ,これを超える売上があったとは認められない。 (ア) 被告 被告製品1 される。 イ売上高弁論の全趣旨によれば,本件対象期間における被告各製品の売上高は次のとおりであると認められ,これを超える売上があったとは認められない。 (ア) 被告 被告製品1 ●(省略)●被告製品2 ●(省略)●被告製品3 ●(省略)●被告製品4 ●(省略)●被告製品5 ●(省略)● 被告製品6 ●(省略)●合計 ●(省略)●(イ) セフト社合計 ●(省略)●ウ控除すべき経費 (ア) 被告各製品の仕入額 弁論の全趣旨によれば,上記売上高に係る被告らの仕入額は次のとおりであると認められる。 a 被告被告製品1 ●(省略)●被告製品2 ●(省略)● 被告製品3 ●(省略)●被告製品4 ●(省略)●被告製品5 ●(省略)●被告製品6 ●(省略)●合計 ●(省略)● b セフト社合計 ●(省略)●(イ) 試着品に係る費用a 証拠(乙83ないし88)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (a) 被告は,販売促進を目的として,取引先に対し,被告各製品を試着品として貸与しており,一度貸与した試着品を製品として販売することはなかった。 (b) 被告における平成28年1月1日から令和元年5月31日までの試着品の貸与件数は服本体が被告製品3であるものにつき●(省略)●,服本体が被告製品6であるものにつき●(省略)●の合計●(省略)●であった。 (c) 被告において,平成28年1月1日から令和元年5月31日までに試着品として貸与するために購入された空調服の服本体は,被告製品3(単価●(省略)●)●(省略)●,被告製品6(単価●(省略)●)●(省略)●件の合計●(省略)●であ 日から令和元年5月31日までに試着品として貸与するために購入された空調服の服本体は,被告製品3(単価●(省略)●)●(省略)●,被告製品6(単価●(省略)●)●(省略)●件の合計●(省略)●であり,これらに対応するファン(単価●(省略)●),ケーブル(単価●(省略)●円),バッテリー(単価●(省略)●)がいずれも●(省略)●購入された。 被告製品3とこれに対応するファン,ケーブル及びバッテリーに係る仕入額は● (省略)●,被告製品6とこれに対応するファン,ケーブル及びバッテリーに係る仕入額は●(省略)●であり,合計●(省略)●であった。 (d) 被告は,取引先に対する試着品の送付費用を負担しているところ,この送付費用は1着当たり●(省略)●であった。 (e) 被告は,取引先から返却された試着品をクリーニングし,試着品として再利 用しているところ,このクリーニング費用は1着当たり●(省略)●であった。 b 以上に照らせば,上記の試着品に係る費用のうち,本件対象期間における被告各製品の製造販売に直接関連して追加的に必要になったものは,本件対象期間における試着品の貸与に係るものであるということができる。 そして,本件対象期間における試着品の貸与件数を算定するに当たっては,年に よって貸与件数の変動があることから,日割計算をする場合には当該年の貸与件数を基に行うことが相当であり,これに従って算定すると,平成29年6月13日から令和元年5月31日までの貸与件数は,次のとおり,服本体が被告製品3であるものにつき●(省略)●,服本体が被告製品6であるものにつき●(省略)●の合計●(省略)●であった。すなわち,平成29年6月13日から同年12月31日 までの202日間の貸与件数は,同年1年間の貸与件数が,服本体が被 服本体が被告製品6であるものにつき●(省略)●の合計●(省略)●であった。すなわち,平成29年6月13日から同年12月31日 までの202日間の貸与件数は,同年1年間の貸与件数が,服本体が被告製品3であるものにつき●(省略)●,服本体が被告製品6であるものにつき●(省略)●の合計●(省略)●であることを踏まえて日割計算すると,服本体が被告製品3であるものにつき●(省略)●,服本体が被告製品6であるものにつき●(省略)●の合計●(省略)●であり,これに,平成30年1月1日から令和元年5月31日 までの貸与件数である,服本体が被告製品3であるものにつき●(省略)●,服本体が被告製品6であるものにつき●(省略)●の合計●(省略)●を合計すると,服本体が被告製品3であるものにつき●(省略)●,服本体が被告製品6であるものにつき●(省略)●の合計●(省略)●となる。 以上を踏まえて,本件対象期間における被告各製品の製造販売に直接関連して追 加的に必要になった試着品に係る費用は,次のとおり,仕入額●(省略)●,送付 費用●(省略)●,クリーニング費用●(省略)●の合計●(省略)●であり,この金額について,経費として前記認定の売上高から控除することが相当である。 (a) 仕入額は,被告製品3と,被告製品6とに分けて,本件対象期間に相当する金額を計算すると,次の計算式のとおり●(省略)●である。 ●(省略)●(被告製品3に係る仕入額●(省略)●×本件対象期間の件数● (省略)●)+●(省略)●(被告製品6に係る仕入額●(省略)●円×本件対象期間の件数●(省略)●)=●(省略)●(b) 送付費用は,本件対象期間の貸与件数●(省略)●すなわち貸与枚数●(省略)●に前記a(d)で認定した1着当たり●(省略)●円を乗じた )●円×本件対象期間の件数●(省略)●)=●(省略)●(b) 送付費用は,本件対象期間の貸与件数●(省略)●すなわち貸与枚数●(省略)●に前記a(d)で認定した1着当たり●(省略)●円を乗じた●(省略)●である。 (c) クリーニング費用は,再利用する際の費用であり,仕入れた服本体について考慮すべきではないところ,年ごとのクリーニング費用の内訳は明らかではないことから,前記a(b)で認定した貸与件数全体●(省略)●件から前記a(c)で認定した仕入数全体●(省略)●を控除した上で,前記a(e)で認定した1着当たり●(省略)●円を乗じ,そのうち,本件対象期間の貸与件数に相当する金額を計算す ることが相当である。これに従って計算すると,次の計算式のとおり●(省略)●である。 ●(省略)●c 被告は,本件対象期間における売上に貢献しているのは平成28年1月1日から令和元年5月31日までの試着品貸与であるとして,この期間における●(省 略)●件の試着品の貸与に係る費用を売上高から控除すべきである旨主張するが,本件対象期間は平成29年6月13日から令和元年5月31日までの約2年であり,被告らの利益の額の算定の基礎となる売上高も同期間のものであるのに対し,被告が主張するような約3年5か月もの期間にわたる試着品の貸与に係る費用の全てが本件対象期間における被告各製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった 経費であると認めることはできない。 (ウ) 倉庫費用証拠(乙89)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告各製品の倉庫管理を小山企業株式会社に委託していたこと,本件対象期間中に同社からの請求日が到来する入庫料は合計●(省略)●であり,保管料は合計●(省略)●であったこと,出庫料は合計●(省略)● 被告各製品の倉庫管理を小山企業株式会社に委託していたこと,本件対象期間中に同社からの請求日が到来する入庫料は合計●(省略)●であり,保管料は合計●(省略)●であったこと,出庫料は合計●(省略)●であったことが認められるところ,これらは本件対象期間 における被告各製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費であると認めるのが相当である。 したがって,上記の合計●(省略)●に消費税8%を加算した合計●(省略)●は,経費として前記認定の売上高から控除するのが相当である。 (エ) 広告宣伝費用 a 証拠(乙90)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件対象期間において,フルハーネス対応空調服の写真をカタログに掲載するなどして広告宣伝を行ったことが認められる。 これらの広告宣伝費用のうち,令和元年5月1日発行の「安全と健康第70巻第5号」(乙90の6の1)に係る広告宣伝費用については,これに対応すると認め られる請求書(乙90の6の2)の「誌名」欄に,「安全と健康(熱中症特別企画記事広告)5~7月号(90×70)広告料」と記載され,本件対象期間外の令和元年6月及び同年7月を含む3か月分の宣伝広告費用であることが示されているから,上記請求書の金額●(省略)●の3分の1に相当する●(省略)●の限度でこれを認めるのが相当である。 そうすると,広告宣伝費用は合計●(省略)●であったと認められる(乙90)。 b しかしながら,上記の広告宣伝に用いられた写真は,背中部分に設けられた筒状部にランヤードを通して使用されている空調服を認識できるものではあるものの,被告各製品の型番等は記載されておらず,かえって,被告各製品とは異なる型番が記載されたもの(乙90の8の1)も含まれることなどからすると,被告各製 品に特化し を認識できるものではあるものの,被告各製品の型番等は記載されておらず,かえって,被告各製品とは異なる型番が記載されたもの(乙90の8の1)も含まれることなどからすると,被告各製 品に特化した宣伝広告ではなく,被告のフルハーネス対応空調服製品全般の宣伝広 告であると認めるのが相当であるから,その全額を被告各製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費であると認めることはできない。 被告各製品の売上げが被告のフルハーネス対応空調服製品全体の売上げの中で占める割合も明らかでないことをも踏まえると,上記の広告宣伝に要した費用の1割に相当する●(省略)●を,経費として前記認定の売上高から控除するのが相当で ある。 (オ) 合計以上によれば,本件対象期間における被告各製品の製造販売により,被告が受けた利益の額は,売上高●(省略)●から,被告各製品の仕入額●(省略)●,試着品に係る費用●(省略)●,倉庫費用●(省略)●,広告宣伝費用●(省略)●を 控除した●(省略)●であると認められ,セフト社が受けた利益の額は,売上高●(省略)●から仕入額●(省略)●を控除した●(省略)●であると認められる。 したがって,被告各製品の製造販売に係る一連の侵害行為により被告らが受けた利益の合計額は,3075万0055円であると認められる。 ⑶ 推定覆滅事由 ア本件考案の寄与被告は,本件考案は,被告各製品の売上に部分的にしか貢献しておらず,その寄与率は18%であるとし,その理由として,①本件考案は,空調服の背中部分に設けられた取出し筒に技術的特徴があり,実質的には空調服の一部の構造に係るものであること,②空調服の中心的な機能は,ファンにより外気を服内に取り込んで排 出することで体温を冷却することにあるの けられた取出し筒に技術的特徴があり,実質的には空調服の一部の構造に係るものであること,②空調服の中心的な機能は,ファンにより外気を服内に取り込んで排 出することで体温を冷却することにあるのに対し,本件考案に係る取出し筒は,ランヤードを取り出すための補助的な機能を提供するものにすぎず,使用場面も限定されていること,③被告各製品には,特許第4329118号,特許第4399765号,特許第6158675号の各特許発明が実施され,これらによって高い機能性及び実用性を備えるものとなることが需要者の購入動機に結び付いていること などを主張する。 しかしながら,本件考案は,空調服全体の考案であって,背中部分に設けられた取出し筒に限定した考案ではない。 また,被告各製品の需要者は,高所作業等のために必要となるハーネス型安全帯を着用することができる空調服として,背中部分に取出し筒を設けていない通常の空調服と比べて販売単価の高い被告各製品をあえて購入したものであること,具体 的には,前記のとおり,被告各製品の販売単価とこれらに対応するものとして被告が販売している通常の空調服の販売単価を対比すると,被告製品1及び4は約15%,被告製品2及び5は約23%,被告製品3及び6は約48%割高であること,被告のフルハーネス対応空調服に係る宣伝広告(乙90)にも,背中部分に設けられた取出し筒にランヤードを通して使用されている空調服の写真が大きく掲載され ていることなどからすると,本件考案は,相応の顧客誘引力を有していたと認めるのが相当である。 さらに,被告各製品が他の特許発明の実施品であると認められたとしても,被告が指摘する他の特許発明の実施品であることが被告各製品の売上げに貢献していると認めるに足る証拠はない。 以 ある。 さらに,被告各製品が他の特許発明の実施品であると認められたとしても,被告が指摘する他の特許発明の実施品であることが被告各製品の売上げに貢献していると認めるに足る証拠はない。 以上のとおり,被告が主張する上記①ないし③を理由とする推定覆滅は認められない。 イ代替品の存在(ア) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 a バートル,村上被服,ブレイン,クロダルマ,マキタ,シンメン,山真製鋸 等は,いずれも,本件対象期間中に,空調服の背中部分に穴が開いた構造を備えるなどして,ハーネス型安全帯を着用することができる構成を有する空調服を販売しており,同販売に当たっては,フルハーネス対応空調服であることを宣伝広告していた(乙67,71ないし75)。 b 平成29年ないし平成31年(令和元年)における電動ファン付きウェアの 市場における①被告の製品及び同製品を取り扱う企業の製品(以下,これらを一括 して「被告の製品」ということがある。),②原告の製品及び同製品を取り扱う企業の製品(以下,これらを一括して「原告の製品」ということがある。),③第三者製品のシェアは次のとおりである。 (a) 平成29年(乙105)①被告の製品:約30% ②原告の製品:約40%③第三者製品(マキタ,タジマ,バートル,村上被服,シンメン,クロダルマ,ブレイン等の製品):約30%(b) 平成30年(甲65)①被告の製品:約33% ②原告の製品:約33%③第三者製品(バートル,マキタ,タジマ,山真製鋸,シンメン,村上被服,ブレイン等の製品):約33%(c) 平成31年(令和元年)(乙93)①被告の製品:約40% ②原告の製品:約20%③第三者製品(バートル ,タジマ,山真製鋸,シンメン,村上被服,ブレイン等の製品):約33%(c) 平成31年(令和元年)(乙93)①被告の製品:約40% ②原告の製品:約20%③第三者製品(バートル,マキタ,タジマ,山真製鋸,シンメン,クロダルマ,村上被服,ブレイン,桑和,三愛等の製品):約40%(イ) そこで検討すると,第三者製品のうち,少なくとも,前記(ア)a認定の会社が販売していた空調服は,空調服の背中部分に穴が開いた構造を備えるなどして, ハーネス型安全帯を着用することができる構成を有する空調服であり,フルハーネス対応であることを宣伝広告された空調服であるという点で,市場において被告各製品と競合関係に立つ製品であると認められるから,いずれも,被告各製品の競合品に当たると認められる。 そして,電動ファン付きウェアはフルハーネス対応空調服を含むものであり,フ ルハーネス対応空調服は背中部分に穴を開けるなどの加工はされているものの,通 常の空調服と基本的な構成は同一であることからすると,フルハーネス対応空調服の市場のシェアが電動ファン付きウェアのシェアと大きく異なるものであることは通常は考え難いところ,前記(ア)b認定の電動ファン付きウェアの市場における第三者製品の多くが,フルハーネス対応空調服を販売している同a認定の会社の製品であること,原告において電動ファン付きウェアと比べてフルハーネス対応空調服 (原告製品)を特に多く販売していたとは認められないことなどにも照らすと,フルハーネス対応空調服の市場のシェアは電動ファン付きウェアと同一であったと推認するのが相当であり,これを覆すに足る証拠はない。 したがって,平成29年から平成31年(令和元年)までのフルハーネス対応空調服の市場のシェアは,前記(ア)bで ファン付きウェアと同一であったと推認するのが相当であり,これを覆すに足る証拠はない。 したがって,平成29年から平成31年(令和元年)までのフルハーネス対応空調服の市場のシェアは,前記(ア)bで電動ファン付きウェアについて認定したもの と同様のものであったと推認され,そうであれば,本件対象期間における第三者製品と原告製品の市場におけるシェアは,概ね同等のものであったと認められるから,被告各製品が販売されていなかったとしても,被告各製品に向けられた需要の約50%は,第三者製品に向かった可能性があると認められる。 (ウ) 原告は,①前記(ア)a認定の第三者製品は,構成要件C及びDを充足するも のであるか不明であり,空気の漏れを防止するものではないことなどから,原告製品及び被告各製品の代替品であるとはいえないこと,②フルハーネス対応空調服が特殊な空調服であり,製品数が少ないこと,新規参入企業が多いことなどに照らせば,電動ファン付ウェアの市場とフルハーネス対応空調服の市場のシェアが同一であるとはいえないことなどを主張する。 しかしながら,上記①については,第三者製品が構成要件C及びDを充足するものではなかったとしても,いずれも,空調服の背中部分に穴が開いた構造を備えるなどして,ハーネス型安全帯を着用することができる構成を有する空調服であり,市場において被告各製品と競合関係に立つ製品であると認められることは前記で認定,説示したとおりである。 また,上記②についても,原告が指摘する事情は,電動ファン付ウェアの市場と フルハーネス対応空調服の市場のシェアが異なることを示すものであるとは認め難く,上記の推認を覆すに足るものではない。 (エ) 以上のとおり,第三者製品の存在及びそのシェアに照らし,50%の推定覆 フルハーネス対応空調服の市場のシェアが異なることを示すものであるとは認め難く,上記の推認を覆すに足るものではない。 (エ) 以上のとおり,第三者製品の存在及びそのシェアに照らし,50%の推定覆滅を認めるのが相当である。 ウ被告各製品と原告製品の販売先の違い 被告は,被告の販売先の多くは,ハーネス型安全帯を含む工具や建築資材を取り扱う業者であり,フルハーネス対応空調服を販売しやすい販売先であるのに対し,原告は,そのような販売網を有していないことを理由とする推定覆滅を主張する。 しかしながら,フルハーネス対応空調服は,特定の販売先にしか販売されないような性質のものであるとは認められないから,被告各製品が販売されていなければ, その需要が原告製品に向かった可能性があることを否定することはできず,被告各製品と原告製品の販売先の違いを理由とする推定覆滅は認められない。 エ被告各製品と原告製品の性能被告は,前記第3の8【被告の主張】⑶エのとおり,取出し筒の開口方向,その大きさ,フックの保持構造の点で,被告各製品の性能は原告製品を上回ることを理 由とする推定覆滅を主張する。 しかしながら,本件全証拠によっても,被告が指摘するような空調服の部分的な構造をもって,被告各製品が原告製品と比べて優れた性能を有するとは認め難く,それらが原告製品と異なることが被告各製品の売上げに貢献しているといった事情も認められないから,いずれにしても推定覆滅は認められない。 オ被告の営業努力等被告は,被告らには,世界で初めて空調服を開発,製品化して,平成27年までに約34万着を販売してきた実績があるところ,被告らの空調服は需要者から高い評価を受けていること(乙81),被告らの空調服の一部が全関東電気工事協会推奨品に認定さ を開発,製品化して,平成27年までに約34万着を販売してきた実績があるところ,被告らの空調服は需要者から高い評価を受けていること(乙81),被告らの空調服の一部が全関東電気工事協会推奨品に認定されていることなどに照らすと,需要者は,被告らの空調服の周知性及 び強いブランド力に魅力を感じ,被告各製品を購入したということができる旨主張 する。 しかしながら,被告が指摘する一部の者によるウェブサイトへの書き込み(乙81)をもって被告らの空調服製品の周知性や強いブランド力を認めることはできず,全関東電気工事協会推奨品に認定されたことの売上げへの貢献の程度も明らかとはいえない。 また,原告も,ユニフォームメーカーとしての実績,空調服の製造,販売実績を有しており(前記1⑴イ),平成29年ないし平成31年(令和元年)の電動ファン付きウェアの市場における原告の製品のシェアは被告の製品と大きく異なるものでなかったものであるから(前記イ(ア)b),被告が主張する被告らにおける空調服の販売実績を踏まえたとしても,被告らの空調服製品の周知性やブランド力を理 由とする推定覆滅を認めるに足りないというべきである。 ⑷ 小括(争点8)ア以上のとおり,被告各製品の製造販売に係る一連の侵害行為により被告らが受けた利益の合計額は,3075万0055円であると認められ,その50%については,推定覆滅が認められる。 したがって,実用新案法28条2項に基づく損害額は,1537万5027円であると認められる。 イ不法行為の対象期間である本件対象期間は,平成29年6月13日から令和元年5月31日までの718日間であるところ,原告は,36万円に対する遅延損害金の起算日を平成29年7月25日とし,9149万4000円に対する遅延損 ある本件対象期間は,平成29年6月13日から令和元年5月31日までの718日間であるところ,原告は,36万円に対する遅延損害金の起算日を平成29年7月25日とし,9149万4000円に対する遅延損 害金の起算日を平成31年3月1日としているため,各起算日までに生じた損害額を日数で案分して算出し,その金額が各起算日までの上記各元本額を超えない限度で上記各起算日からの遅延損害金の発生を認めることができる。 そこで,上記各起算日までに生じた損害額を算出し,上記各起算日からの遅延損害金の発生が認められる対象額を検討すると,次のとおりである。 ① 平成29年7月25日からの遅延損害金の発生が認められる対象額 平成29年6月13日から同日7月25日までの43日間の損害額は92万0788円(1537万5027円×43日/718日)であり,対応する元本額36万円を超えるので,対象額は36万円である。 ② 平成31年3月1日からの遅延損害金の発生が認められる対象額平成29年6月13日から平成31年3月1日までの627日間の損害額は13 42万6381円(1537万5027円×627日/718日)であり,この金額から,上記①の対象額36万円を控除した1306万6381円は,対応する元本額9149万4000円を超えないので,対象額は1306万6381円である。 そうすると,上記①及び②の各対象額を損害額合計額から控除した194万8646円(1537万5027円-36万円-1306万6381円)について,本 件対象期間の最終日である令和元年5月31日からの遅延損害金の発生を認めることができる。 9 まとめ⑴ 以上のとおり,被告製品は,文言上,本件考案の技術的範囲に属し,被告製品3及び6の譲渡及び譲渡の申出は本件 である令和元年5月31日からの遅延損害金の発生を認めることができる。 9 まとめ⑴ 以上のとおり,被告製品は,文言上,本件考案の技術的範囲に属し,被告製品3及び6の譲渡及び譲渡の申出は本件実用新案権の間接侵害(実用新案法28条 1号)を構成する。また,本件実用新案登録は実用新案登録無効審判により無効にされるべきものと認められず,被告が先使用による通常実施権,黙示の実施許諾による実施権を有するとは認められず,原告の権利行使が権利濫用に当たるとも認められない。 したがって,原告の請求は,被告に対し,実用新案法27条1項,2項に基づき, 被告各製品の譲渡及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄を求め,民法709条,719条1項前段に基づき,1537万5027円及びうち36万円に対する平成29年7月25日から,うち1306万6381円に対する平成31年3月1日から,うち194万8646円に対する令和元年5月31日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 ⑵ 原告は,被告に対し,被告各製品の製造,輸出,輸入の差止めをも求めるが, 被告自身が被告各製品の製造,輸出,輸入をしているとは認められず,そのおそれがあると認めるに足る証拠もないから,同請求は理由がない。 第5 結論以上によれば,原告の請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決 する。なお,主文第2項については,仮執行宣言を付すのは相当でないから,これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 ないから,これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 山田真紀 裁判官 矢野紀夫 裁判官 西山芳樹 (別紙一覧) 別紙1 当事者目録 別紙2 物件目録 別紙3 被告各製品説明書 別紙4 本件明細書の図面 (別紙1)当事者目録 原告株式会社サンエス 同訴訟代理人弁護士林いづみ 堀籠佳典 加治梓子 同訴訟代理人弁理士福田伸一 水﨑慎 同補佐人弁理士高橋克宗 被告株式会社空調服 同訴訟代理人弁護士鮫島正洋 高橋正憲 永島太郎 (別紙2)物件目録 空調服の服本体又は服本体とファン,ケーブル及びバッテリーセット若しくは電池ボックスのセットのうち,下記のもの。 記 1 型番 BP500FH (別紙2)物件目録 空調服の服本体又は服本体とファン,ケーブル及びバッテリーセット若しくは電池ボックスのセットのうち,下記のもの。 記 1 型番 BP500FH 2 型番 P500FH 3 型番 KU9054F 4 型番 BM500FH 5 型番 M500FH 6 型番 KU9055F以上 (別紙3)被告各製品説明書 1 被告各製品の概要被告製品1プラスチックドットボタンを含む胸ポケットを有するポリエステル製の服本体(被告製品1ないし3の服本体は同一のものである。)服本体,ファン2個,ケーブル,バッテリーセットから成る。 被告製品2服本体,ファン2個,ケーブル,電池ボックスから成る。 被告製品3服本体のみ。 被告製品4マジックテープを含む胸ポケットを有する薄手の綿製の服本体(被告製品4ないし6の服本体は同一のものである。)服本体,ファン2個,ケーブル,バッテリーセットから成る。 被告製品5服本体,ファン2個,ケーブル,電池ボックスから成る。 被告製品6服本体のみ。 2 被告製品の構成 a 空調服の服本体の後身頃の下寄り左右に形成されたファン取り付け用の開口部と,この開口部に取り付けられるファンと,前記ファンを駆動するモータと,前記モータを駆動する,服本体の内部ポケットに収納されるバッテリー(被告製品1及び4)又は電池ボックス(被告製品2及び5)を備えている。 b 前記ファンを駆動することにより,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは 首周りから排出する空調服である。 c 前記空調服の背中部分にランヤード取出し用の先端の開口したランヤード取 出し筒が設けられている により,外気を空調服内に取り入れ,袖口或いは首周りから排出する空調服である。 主文 前記空調服の背中部分にランヤード取出し用の先端の開口したランヤード取出し筒が設けられている。 理由 前記ランヤード取出し筒は,筒部先端近傍に口紐が設けられており,前記口紐をランヤード取出し筒から引き出したランヤードの周囲に巡らせ,コードストッパーを用いて筒部先端部分を収縮させることにより,ランヤードを固定して,ランヤード取出し筒の開口部を密閉する。 事実 ハーネス型安全帯の着用可能な空調服である。 (別紙4)本件明細書の図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】

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