- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴人らの当審における請求に係る訴えをいずれも却下する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 内閣総理大臣は,社会保険庁が原判決別紙「社会保険庁不正支出一覧表」記載の支出によって国庫に同額の損害を与えたことについて,社会保険庁に対し,また厚生労働省が原判決別紙「グリーンピア無駄一覧表」記載の支出によって国庫に同額の損害を与えたことについて,厚生労働省に対し,それぞれ憲法72条あるいは内閣法6条に基づく指揮監督権を行使せよ。 内閣総理大臣が2の指揮監督権を行使する義務があることを確認する。 内閣総理大臣が2の指揮監督権を行使しないことが違法であることを確認する。 被控訴人は,控訴人らに対し,各金300万円を支払え。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 5について仮執行宣言第2原判決(主文)の表示 本件訴えのうち,内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して内閣法6条に基づく指揮監督権を行使すべき旨を命ずることを求める部分,内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して同条に基づく指揮監督権を行使する義務があることの確認を求める部分,並びに内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して同条に基づく指揮監督権を行使しないことの違法確認を求める部分をいずれも却下する。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 - 2 - 訴訟費用は原告らの負担とする。 第3事案の概要 控訴人らは,原審において,社会保険庁及び厚生労働省が違法な支出や採算性のない施設の建設等不適切な支出を行い,年金資金及び国庫に多額の損害を与え,年金給付の基礎を脅かした旨主張して,被控訴人に対し,内閣総理大臣が社会保険庁及び 保険庁及び厚生労働省が違法な支出や採算性のない施設の建設等不適切な支出を行い,年金資金及び国庫に多額の損害を与え,年金給付の基礎を脅かした旨主張して,被控訴人に対し,内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して内閣法6条に基づく指揮監督権を行使すべき旨を命ずること(以下「本件義務付けの訴え①」という。),内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して同条に基づく指揮監督権を行使する義務のあることの確認(以下「本件義務確認の訴え①」という。),並びに内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して同条に基づく指揮監督権を行使しないことの違法確認(以下「本件不作為の違法確認の訴え①」という。)を求めるとともに,社会保険庁及び厚生労働省の公務員の行為が国家賠償法上違法なものであり,これにより将来受けるべき年金額が減額されるという財産的損害及び安心して年金を受給できるという期待等を侵害されるという精神的損害を被った旨主張して,国家賠償としてそれぞれ金300万円の支払を求めた。これに対し,原審は,上記原判決(主文)の表示記載のとおり本件義務付けの訴え①,本件義務確認の訴え①及び本件不作為の違法確認の訴え①をいずれも却下し,国家賠償請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人らは,控訴するともに,当審において,新たに指揮監督権の根拠として憲法72条を主張し,その旨の請求を選択的に追加した(以下,これらを順次「本件義務付けの訴え②」,「本件義務確認の訴え②」及び「本件不作為の違法確認の訴え②」という。)。 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実並びに当裁判所に顕著な事実は末尾に付記したとおりであり,それ以外の事実は当事者間に争いがない。)(1)ア内閣総理大臣は,憲法72条あるいは内閣法6条に基づき,行政各部- 3 - とができる事実並びに当裁判所に顕著な事実は末尾に付記したとおりであり,それ以外の事実は当事者間に争いがない。)(1)ア内閣総理大臣は,憲法72条あるいは内閣法6条に基づき,行政各部- 3 -を指揮監督する権限を有する。 イ厚生労働省は,政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業を所管し,社会保険庁は政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業を適正に運営すること等を任務とする。 (2)ア社会保険庁は,原判決別紙「社会保険庁不正支出一覧表」記載の金銭登録機の調達,届出用紙等印刷システムの調達及び監修料の実態に関して調査を行い,平成17年1月14日付けで「社会保険庁をめぐる不祥事案等に関する調査報告書」を作成した。(甲1)イ会計検査院は,平成15年度決算検査報告において,金銭登録機の調達につき,「金銭登録機の調達を随意契約により実施していたのは,契約の公正性,透明性,競争性,経済性等が確保されておらず適切でなく,これに係る14,15両年度の購入額446,486,040円は不当と認められる。」と報告し,また,届出用紙等印刷システムの調達につき,「使用実績などを考慮すると,印刷システム導入に当たって検討を十分行ったとは認められず,届出書等のコピー等で十分に対応が可能であったのに,印刷システムを導入したことは適切でなく,この印刷システムに係る支払額2,271,364,533円が不当と認められる。」と報告した。 (3)ア大規模年金保養基地建設事業(以下「グリーンピア事業」という。)は,平成12年法律第20号による廃止前の年金福祉事業団法(以下「旧年金福祉事業団法」という。)1条1号,平成13年政令第21号による廃止前の年金福祉事業団法施行令1条等の法令の規定及び「大規模年金保養基地の設置及び運営に関する全体基本計画」に基づ 団法(以下「旧年金福祉事業団法」という。)1条1号,平成13年政令第21号による廃止前の年金福祉事業団法施行令1条等の法令の規定及び「大規模年金保養基地の設置及び運営に関する全体基本計画」に基づき行われてきた。(弁論の全趣旨)イ大規模年金保養基地(以下「グリーンピア」という。)は,原判決別紙「グリーンピア無駄一覧表」の「場所」欄記載の場所に所在し,「総- 4 -工費」欄記載の費用をかけて完成した施設であり,「開業」欄記載の年月に開業した。 ウ第2次臨時行政調査会は昭和58年3月「大規模年金保養基地について,建設中の基地以外の新設は今後行わず,かつその運営をすべて民間又は地方公共団体に委託する」旨の最終答申をし,内閣は昭和59年1月上記最終答申と同旨の閣議決定をした。(弁論の全趣旨)エグリーンピアは,原判決別紙「グリーンピア無駄一覧表」の「処分」欄記載の年月に同欄記載のとおり譲渡された。 (4)控訴人らは,平成18年6月5日,訴えを提起した。 (当裁判所に顕著な事実) 争点 (1)法律上の争訟性(本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,法律上の争訟に該当しない不適法な訴えか。)(2)行政処分該当性(本件義務付けの訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,行政処分に当たらない行為を対象とする不適法な訴えか。)(3)確認の利益(本件義務確認の訴え①②は,確認の利益を欠く不適法な訴えか。)(4)国家賠償法上の違法性(被控訴人の公務員の行為は,国家賠償法上違法なものか。)(5)内閣総理大臣の指揮監督権を行使すべき義務の有無(内閣総理大臣は,厚生労働省及び社会保険庁に対し,憲法72条あるいは内閣法6条に基づき指揮監督権を行使すべき義務を負うか。) 当事者の主張(1)争点( 理大臣の指揮監督権を行使すべき義務の有無(内閣総理大臣は,厚生労働省及び社会保険庁に対し,憲法72条あるいは内閣法6条に基づき指揮監督権を行使すべき義務を負うか。) 当事者の主張(1)争点(1)(法律上の争訟性)について(控訴人らの主張)- 5 -ア判例上,法律上の争訟に当たらないとされているのは,当該行為だけではいまだ控訴人らの権利に全く関係がない場合,宗教論争や科学論争など法律的判断になじまない判断が必要不可欠な場合,全く具体的紛争性を欠いている場合などである。 しかしながら,控訴人らは,保険料を納付し,現在又は将来において年金を受給する資格を有するが,社会保険庁及び厚生労働省がした不正支出によって年金積立金が減少し,必然的に将来受けるべき年金額が減少するという不利益を被るところ,本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,将来の年金受給権を確保するための具体的紛争に関する訴訟である。 イ憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権が行使された場合,厚生労働大臣及び社会保険庁長官がそれに従わないことはあり得ないから,年金財源が回復し,年金受給資格者である控訴人らの権利が回復されることが高度の蓋然性をもって予測される関係にある。 ウよって,本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,法律上の争訟に該当するものである。 (被控訴人の主張)ア裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」,すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつそれが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる。 これを本件についてみると,憲法72条あるい 訟」,すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつそれが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる。 これを本件についてみると,憲法72条あるいは内閣法6条の内閣総理大臣の指揮監督権は,内閣の首長たる内閣総理大臣があらかじめ閣議にかけて決定した方針に基づき,内閣を統轄するため,かつそれに必要な限度において,各省大臣に対し行使されるものであり,行政組織における内部行為にすぎない。特定あるいは個別的な行政事務に対する指揮監督権は,- 6 -当該各大臣の権限を媒介として行使されるものであり,内閣総理大臣の指揮監督権が当該各大臣の権限の媒介なしに直接に特定あるいは個別的な行政事務に及ぶものではない。そうすると,内閣総理大臣の指揮監督権の行使は,控訴人らの具体的な権利義務関係ないし法律関係と直接接点を生ずる余地がない。また,控訴人らの主張は,将来年金の受給資格を有する者という国民が広く有する一般的な立場において,年金財源の減少による影響という国民のすべてに等しく係わるものをいうにすぎない。したがって,本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,法律上の争訟に当たらず,不適法である。 イ本件訴えは,国民ないしは納税者としての地位に基づいて,国に対し,国の行う具体的な国政行為の是正等を求める民衆訴訟としての性格を有するものというほかない。そうである以上,本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,行政事件訴訟法5条の民衆訴訟であり,このような訴訟形態を許容する法律がない以上,法律に定めのない訴えとして不適法である。 (2)争点(2)(行政処分該当性)について(控訴人らの主張)ア控訴人らは,本件義務付けの訴え① 訴訟であり,このような訴訟形態を許容する法律がない以上,法律に定めのない訴えとして不適法である。 (2)争点(2)(行政処分該当性)について(控訴人らの主張)ア控訴人らは,本件義務付けの訴え①②は行政事件訴訟法3条6項1号に基づく義務付けの訴えであり,本件不作為の違法確認の訴え①②は同条5項に基づく不作為の違法確認の訴え又は無名抗告訴訟であるとして提起する。 イ憲法72条あるいは内閣法6条に基づき内閣総理大臣に指揮監督権を付与したのは,内閣の首長として,内閣がその職務を誠実に遂行するための強力な手段を付与したものである。それゆえ,内閣のある部局が憲法や法律に違反した場合,ましてやその違反によって国民に不利益を与えた場合には,内閣の最高責任者として内閣総理大臣が当該部局に対して指揮監督- 7 -権を行使して,内閣全体として憲法及び法律の遵守義務を遂行させるべき責任がある。 このように,内閣総理大臣の指揮監督は,行政機関に対する行為であるが,その目的及び効果が直接に国民の権利の範囲を確定するものであるから,行政処分性を有する。 ウ被控訴人は,行政庁の行為の名あて人のみが直接に権利義務を変動させられる者に該当し,行政行為の相手方として国民が予定されていない場合には,その行為には行政処分性がないという理解に立っているようである。 しかし,いわゆる規制行政や監督行政の場面において,被規制者や被監督者ではないが被害を受けた第三者に対する行政主体の規制監督権限の不行使の違法性を問う裁判において,行政処分性が認められている。 (被控訴人の主張)ア本件義務付けの訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,それぞれ抗告訴訟の対象とならない行為について義務付け又は不作為の違法確認を求めるものであるから,その訴えは不適法である。 すなわち,行 本件義務付けの訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,それぞれ抗告訴訟の対象とならない行為について義務付け又は不作為の違法確認を求めるものであるから,その訴えは不適法である。 すなわち,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分」とは,行政庁の法令に基づく行為すべてを意味するものではなく,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうとされている。そして,同条6項1号の義務付けの訴え及び同条5項の不作為の違法確認の訴えはもとより,控訴人らが無名抗告訴訟して位置付ける不作為の違法確認の訴えも,抗告訴訟である以上,その対象は,いずれも行政庁の処分でなければならない。ところが,憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権は,前記のとおり,内閣総理大臣が閣議にかけて決定された方針に基づき各省大臣に対して行使される- 8 -もので,直接国民に対して向けられたものではなく,国民の権利義務に変動を生じさせるものではないから,抗告訴訟の対象となる行政庁の処分には当たらない。 イ内閣総理大臣の指揮監督権の行使を求める申請権が国民に付与されていないことはいうまでもないから,行政事件訴訟法3条5項に基づく不作為の違法確認の訴えは,この点でも不適法である。 (3)争点(3)(確認の利益)について(控訴人らの主張)ア控訴人らは,本件義務確認の訴え①②を行政事件訴訟法4条の実質的当事者訴訟として提起する。 イ現行法上,社会保険庁や厚生労働省の無駄遣いを是正する最も効果的で強力な行政組織上の制度は,憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権の行使であるから,この指揮監督権を行使することが必要かつ適切である。す 労働省の無駄遣いを是正する最も効果的で強力な行政組織上の制度は,憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権の行使であるから,この指揮監督権を行使することが必要かつ適切である。すなわち内閣総理大臣の指揮監督権が適切に行使された場合には,年金財源が回復され,受給資格者である控訴人らの権利が回復されることが高度の蓋然性をもって予測されるから,その不行使によって控訴人らの受ける権利に危険又は不安が生じている。 (被控訴人の主張)ア確認の利益が認められるためには,現に,控訴人の有する権利に危険又は不安が存在し,これを除去するため確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り,許されるとされている。 しかるに,控訴人らの主張する権利に現実かつ具体的な危険又は不安が存在するとはいえないし,本件義務確認の訴え①②の確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に当たらないことは明らかである。 イしたがって,本件義務確認の訴え①②は,確認の利益を欠くものとして不適法である。 - 9 -(4)争点(4)(国家賠償法上の違法性)について(控訴人らの主張)ア控訴人らは,厚生労働省及び社会保険庁の公務員の違法な行為により,将来受けるべき年金額が減額されるという財産的損害のほか,憲法13条の幸福追求権に基づく安心して年金を受給できるという期待及び信頼並びに適正な公務の遂行の期待権を侵害されるという精神的損害を被った。 イ厚生年金保険法79条,国民年金法75条,77条の規定や,国会において年金積立金の管理運用を適切に行うことを求める附帯決議がされたことからすると,適正な額の年金を受け取ることができるという利益は,法律によって保護された利益であることは明白である。 また,控訴人らが将来受けるべき年金額は,乱費がある場合とない場合とを比較すれば,乱 からすると,適正な額の年金を受け取ることができるという利益は,法律によって保護された利益であることは明白である。 また,控訴人らが将来受けるべき年金額は,乱費がある場合とない場合とを比較すれば,乱費がある場合に減少するという関係にあることは明らかである。 ウ被控訴人の主張する国民一般とは,個々の年金受給者や将来年金を受給する個別の加入者から成る総体であるから,被控訴人の主張は失当である。 (被控訴人の主張)ア国家賠償法1条1項の「違法」が認められるためには,公務員が法律上保護された権利利益を侵害したことが必要である。そして,それは,同法上の損害賠償請求権の成立の問題であるから,同法上保護される権利利益であることを要する。 控訴人らは,憲法13条の幸福追求権の一内容として安心して年金を受給することができるという期待及び信頼並びに適正な公務の遂行の期待権を有していると主張する。しかしながら,その主張内容自体漠然としており甚だ不明確である。また,その主張は,国民一般が有する法的利益を主張するものにすぎず,個別の国民が有する具体的な法的利益を主張するも- 10 -のではないから,法的利益の侵害の主張としては失当である。 また,控訴人らは,厚生労働省及び社会保険庁の行った乱費により,年金財源が不足し,将来受けるべき年金額が減額されるという財産的損害を被ったと主張する。しかしながら,そもそも,控訴人らの主張する将来受けるべき年金額が減額されるという財産的損害の内容自体が不明確である。また,控訴人らの主張する乱費によって控訴人らが将来受けるべき年金額が減額されるという関係も漠然としており,利益侵害がなぜ発生するのか主張されていないから,法的利益の侵害の主張はこの点でも失当である。 イ国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当た 額が減額されるという関係も漠然としており,利益侵害がなぜ発生するのか主張されていないから,法的利益の侵害の主張はこの点でも失当である。 イ国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。したがって,同法上,違法が認められるためには,権利ないし法的利益を侵害された当該個別の国民に対する関係において,その損害につき国に賠償責任を負わせるのが妥当かどうかという観点から,職務上の法的義務に違背する行為があるか否かが判断されるべきであり,職務上の法的義務であっても,専ら公益目的のものや行政の内部的な義務等個別の国民に対して負担する義務でないものについては,同法上の違法の判断の対象とはならない。これを本件についてみると,控訴人らは,国が国民から徴収した税金,年金等に係る徴収金を適切に管理,運用又は費消しなければならないにもかかわらず,厚生労働省や社会保険庁が様々な無駄遣いをしたために,財源不足が生じたことを個別の控訴人らとの関係で違法と主張するようである。しかし,厚生労働省及び社会保険庁の公務員による年金等に係る徴収金の管理,運営等は,広く年金制度の維持運営に係わる事柄であって,その適正な管理及び運営が求められるとしても,それは国民一般との関係で求められるにとどまり,個別の年金受給者や将- 11 -来年金を受給する個別の加入者に向けられた法的義務を観念することはできない。したがって,控訴人らの主張は,公務員が個別の国民に対して負うべき職務上の法的義務に違反があったことをいうものではなく,同法上の違法の主張としては失当である。 ウそもそも,国家賠償法は,個別の国民の具体的な権 控訴人らの主張は,公務員が個別の国民に対して負うべき職務上の法的義務に違反があったことをいうものではなく,同法上の違法の主張としては失当である。 ウそもそも,国家賠償法は,個別の国民の具体的な権利ないし法的利益の侵害を救済するものであるから,控訴人らが主張する個々の年金受給者や将来年金を受給する個別の加入者から成る総体というものに対して,同法上の法的義務を観念することはできないのである。 本件で問題とされている厚生労働省及び社会保険庁の公務員による税金や年金等に係る徴収金の管理及び運用それ自体は,広く年金制度の維持運営にかかわる事柄であって,その適正な管理及び運用が求められるとしても,それは国民一般との関係で求められるにとどまり,個別の年金受給者や将来年金を受給する個別の加入者に向けられた法的義務を観念することはできない。厚生年金保険法や国民年金法における「被保険者の利益」も一般的又は抽象的なものであって,厚生年金保険法79条の2などの規定が厚生労働省及び社会保険庁の公務員に対し,被保険者である個別の国民との関係で何らかの法的義務を課すものでないことは明らかである。 (5)争点(5)(内閣総理大臣の指揮監督権を行使すべき義務の有無)について(控訴人らの主張)ア社会保険庁は,原判決別紙「社会保険庁不正支出一覧表」記載のとおり,組織ぐるみで38億9009万1573万円もの不正支出を行ってきた。これらの不正支出のごく一部については,一部職員が弁償したとのことであるが,大部分については何らの賠償措置も講じられておらず,このまま放置された場合には,再び同様の不正支出が行われるおそれがあることから,社会保険庁全体に適切な指揮監督がされる必要がある。 - 12 -イ厚生労働省年金局は,年金積立金を財源としてグリーンピアを建設し,これを年 は,再び同様の不正支出が行われるおそれがあることから,社会保険庁全体に適切な指揮監督がされる必要がある。 - 12 -イ厚生労働省年金局は,年金積立金を財源としてグリーンピアを建設し,これを年金積立金を財源として運営していたのであるから,グリーンピアの建設及び運営によって欠損を生じないよう採算性について十分な注意を払って予測検討しなければならなかったにもかかわらず,このような慎重な検討を行うことなく巨額の資金を投入して安易に施設を建設し続け,全国に13もの採算の取れない無駄なグリーンピアを1951億8000万円をかけて建設し,その運営に費用を投入してきた。 ウ内閣総理大臣は,行政機関である厚生労働省や社会保険庁が不正支出を行った場合には,速やかに事実調査を命じ,その責任を明確にし,責任者に賠償をさせるなど憲法72条あるいは内閣法6条に基づく適切な指揮監督を行うべき義務を負っている。 (被控訴人の主張)グリーンピアを建設したのは,厚生労働省ではなく,年金福祉事業団である。また,グリーンピア事業は,年金を受給するまでの長期にわたり保険料を払い続ける被保険者等の福祉の向上を図ることを目的として,厚生年金保険法79条及び国民年金法74条に基づいて行われてきたものであり,被保険者の福祉の増進のため,一定の役割を果たしてきた。そもそも,グリーンピア事業は,年金積立金を被保険者に還元すべきであるとの国会の附帯決議や地元の要請を踏まえて,被保険者等の福祉の増進を目的として,旧年金福祉事業団法17条1項1号等に基づいて行われてきたものであり,事業に伴い支出された総工費約1952億円は,事業に伴い当然に発生する費用であって,この支出に法的な問題はない。さらに,全13施設すべてが売却された平成17年度までの累計で見ても,赤字となったのは7施設であり 支出された総工費約1952億円は,事業に伴い当然に発生する費用であって,この支出に法的な問題はない。さらに,全13施設すべてが売却された平成17年度までの累計で見ても,赤字となったのは7施設であり,各施設は運営委託先である財団法人あるいは地方公共団体による独立採算で運営されているので,運営の収支に関する赤字について年金積立金を財源とした支出はされていない。 - 13 -第4当裁判所の判断 争点(1)(法律上の争訟性)について(1)裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対象となるのは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁大法廷昭和27年10月8日判決民集6巻9号783頁,最高裁第二小法廷平成3年4月19日判決民集45巻4号518頁参照)。 (2)証拠(甲20~26)によれば,控訴人Aは国民年金に加入し,現に年金受給権を有する立場にあること,控訴人B及び控訴人Cは国民年金と厚生年金保険に加入し,控訴人Dは国民年金に加入し,控訴人Eは厚生年金保険に加入し,いずれも将来年金受給権を取得する立場にあることが認められる。 (3)控訴人らは,保険料を納付し,現在又は将来において年金を受給する資格を有する者であるが,社会保険庁及び厚生労働省がした不正支出によって年金積立金が減少し,必然的に将来受けるべき年金額が減少するという不利益を被るところ,本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は将来の年金受給権を確保するための具体的紛争に関する訴訟であると主張する。しかしながら,老齢基礎年金の支給及び老齢厚生年金の支給は,国民年金法及び厚生年金保険法が支給要件及び支給額を定めるから,年金財源に 金受給権を確保するための具体的紛争に関する訴訟であると主張する。しかしながら,老齢基礎年金の支給及び老齢厚生年金の支給は,国民年金法及び厚生年金保険法が支給要件及び支給額を定めるから,年金財源に損失が生じても直ちに控訴人らが将来受けるべき年金額が減額されるという関係にはないというべきである(国民年金法26条~27条の5,厚生年金保険法42条~44条の2等参照)。上記の理は,平成16年法律第104号による改正後の国民年金法16条の2及び厚生年金保険法34条1項の規定の創設によっても左右されるものではない。 なぜならば,同改正後の国民年金法16条の2の第1項は,「政府は,・・・国民年金事業の財政が,・・・財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には,・・・年金たる給付・・・の額・・・- 14 -を調整するものとし,」と,また厚生年金保険法34条1項は,「政府は,・・・厚生年金保険事業の財政が,・・・財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には,保険給付の額を調整するものとし,」と規定している。しかし,他方,上記改正法附則2条2項は,「政府は,・・・国民年金法第4条の3第1項の規定による国民年金事業に関する財政の現況及び見通し又は・・・厚生年金保険法第2条の4第1項の規定による厚生年金保険事業に関する財政の現況及び見通しの作成に当たり,次の財政の現況及び見通しが作成されるまでの間に前項に規定する比率が100分の50を下回ることが見込まれる場合には,同項の規定の趣旨にのっとり,・・・国民年金法第16条の2第1項又は・・・厚生年金保険法第34条第1項に規定する調整期間の終了について検討を行い,その結果に基づいて調整期間の終了その他の措置を講ずるものとする。」と,また,同条3項は,「政府は 16条の2第1項又は・・・厚生年金保険法第34条第1項に規定する調整期間の終了について検討を行い,その結果に基づいて調整期間の終了その他の措置を講ずるものとする。」と,また,同条3項は,「政府は,前項の措置を講ずる場合には,給付及び費用負担の在り方について検討を行い,所要の措置を講ずるものとする。」と規定していて,財政検証の結果,年金財政の逼迫が明らかとなった場合でも給付額の調整と直結する規定になっていない。したがって,年金財源の損失が生じても直ちに控訴人らが将来受けるべき年金額が減額されるという関係にはないからである。 そして,控訴人らが保険料を納付し,現在又は将来において年金を受給する資格を有するという地位は国民一般が広く有する地位であり,控訴人ら主張の損失は国民一般に等しく及ぶものであるから,結局,本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,いずれも国民又は納税者の地位にあることに基づいて提起された民衆訴訟ということに帰着する。しかるに,民衆訴訟は,法律に定める場合において,法律に定める者に限り提起することができる(行政事件訴訟法42条)が,上記のような本件各訴えは,それを提起する途が現行法上認められていない- 15 -から,同条の要件を具備しない不適法な訴えとして却下を免れない。 (4)また,控訴人らは,憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権が行使された場合,厚生労働大臣及び社会保険庁長官がそれに従わないことはあり得ないから,年金財源が回復し,受給資格者である控訴人らの権利が回復されることが高度の蓋然性をもって予測される関係にあり,上記のような本件各訴えは,法律上の争訟性を有すると主張するので検討する。 内閣総理大臣は,憲法上,行政権を行使する内閣の首長として( 権利が回復されることが高度の蓋然性をもって予測される関係にあり,上記のような本件各訴えは,法律上の争訟性を有すると主張するので検討する。 内閣総理大臣は,憲法上,行政権を行使する内閣の首長として(66条),国務大臣の任免権(68条),内閣を代表して行政各部を指揮監督する職務権限(72条)を有するなど,内閣を統率し,行政各部を統轄調整する地位にあるものである。そして,内閣法は,閣議は内閣総理大臣が主宰するものと定め(4条),内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督し(6条),行政各部の処分又は命令を中止させることができるものとしている(8条)。そこで,内閣総理大臣が行政各部に指揮監督権を行使するためには,閣議にかけて決定した方針が存在することを要し,内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針が存在しない限り,内閣法6条に基づく指揮監督権を行使することはできない。そして,内閣総理大臣が同条に基づく指揮監督権を行使するというのは,各省庁の長に対し,その法律上の所掌事務及び権限を閣議にかけて決定した方針に従って行使するよう指揮監督することにほかならないが,ある省庁の長が内閣総理大臣の指揮監督に服さない場合,内閣総理大臣は,当該省庁の長を媒介することなく,直接に当該省庁に対し特定ないし個別的な行政事務の実施を命ずることはできないのであり,上記場合に各省庁の長の法律上の所掌事務及び権限を閣議にかけて決定した方針に従って行使させるには,最終的には罷免権(憲法68条)を行使して当該省庁の長を交替させるほかない。そうすると,内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権は,閣議にかけて決定した方針- 16 -が存在する場合においても,当該方針を実現するための強制力を伴うものではないというべきである。このような同条の内閣総理大 6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権は,閣議にかけて決定した方針- 16 -が存在する場合においても,当該方針を実現するための強制力を伴うものではないというべきである。このような同条の内閣総理大臣の指揮監督権は,憲法72条の内閣を代表しての行政各部を指揮監督する職務権限が具体化されたものであるが,同条の内閣を代表しての行政各部を指揮監督する職務権限には,閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても,前示の内閣総理大臣の地位及び権限に照らすと,流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため,内閣総理大臣が少なくとも内閣の明示の意思に反しない限り,行政各部に対し随時その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限が含まれると解するのが相当である。もっとも,この場合の内閣総理大臣の指揮監督権も強制力を伴うものではないというべきである(最高裁大法廷平成7年2月22日判決刑集49巻2号457頁参照)。 本件において,控訴人ら主張のような不正な支出について閣議にかけて決定した方針が存在しなければ,内閣総理大臣は,上記不正支出について社会保険庁及び厚生労働省の各長に対して被害弁償等の適切な措置を執るよう内閣法6条に基づく指揮監督権を行使することはできない。仮に,上記方針が存在するのであれば,内閣総理大臣は,上記不正支出について社会保険庁及び厚生労働省の各長に対して被害弁償等の適切な措置を執るよう同条に基づく指揮監督権を行使することができるが,その場合において,内閣総理大臣は,社会保険庁及び厚生労働省の各長に対してその法律上の所掌事務及び権限を当該方針に従って行使するよう強制することはできない。また,上記方針が存在していないとしても,内閣総理大臣は,社会保険庁及び厚生労働省の各長に対して上記不正支出について被害弁償 の所掌事務及び権限を当該方針に従って行使するよう強制することはできない。また,上記方針が存在していないとしても,内閣総理大臣は,社会保険庁及び厚生労働省の各長に対して上記不正支出について被害弁償等の適切な措置を執るよう指導,助言等の指示をすることはできるが,その場合においても,上記措置を執るよう強制することはできない。 そうすると,仮に,上記不正支出について,内閣法6条あるいは憲法72- 17 -条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権が行使されたとしても,それによって控訴人らの具体的な権利義務に直接影響が及ぶということはできない。 (5)以上によれば,本件義務付けの訴え①②,本件義務確認の訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,いずれも当事者間の具体的な権利義務にかかわらない訴えにほかならないから,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらないというべきである。 争点(2)(行政処分該当性)について(1)控訴人らは,本件義務付けの訴え①②は行政事件訴訟法3条6項1号に基づく義務付けの訴えであり,本件不作為の違法確認の訴えは同条5項に基づく不作為の違法確認の訴え又は無名抗告訴訟であると主張しているところ,これらが控訴人らの主張するような抗告訴訟として適法であるというためには,その対象とする憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権の行使が行政事件訴訟法3条2項所定の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」,すなわち行政処分に該当することを要する。ところで,この行政処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち,その行為によって直接に国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される(最高裁第一小法廷昭和39年10月29日判決民集18巻8号1809 為のうち,その行為によって直接に国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される(最高裁第一小法廷昭和39年10月29日判決民集18巻8号1809頁,最高裁第二小法廷昭和53年12月8日判決民集32巻9号1617頁参照)ことから,内閣総理大臣の上記指揮監督権の行使が行政処分に該当するか否かについて検討する。 既に説示したとおり,憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権は,内閣の首長たる内閣総理大臣の地位及び権限に照らし,内閣を統率し,行政各部を統轄調整するために行使されるものであって,いわば行政機関内部の行為ということができ,直接に国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものではないか- 18 -ら,これを行政処分ということはできないといわざるを得ない。 (2)また,控訴人らは,本件不作為の違法確認の訴え①②は行政事件訴訟法3条5項に基づく不作為の違法確認の訴えであるとも主張するが,同項所定の不作為の違法確認の訴えは,行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず,これをしないことについて違法の確認を求める訴訟をいうところ,控訴人らが憲法72条あるいは内閣法6条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権の行使につき法令に基づく申請権を有していないことは明らかである。 (3)以上によれば,本件義務付けの訴え①②及び本件不作為の違法確認の訴え①②は,いずれも行政処分に該当しないこと,また,行政事件訴訟法3条5項に基づく本件不作為の違法確認の訴え①②は,控訴人らに法令に基づく申請権がないことから,不適法な訴えというべきである。 争点(3)(確認の利益)について(1)確認の訴えは,確認対象適格性がな 項に基づく本件不作為の違法確認の訴え①②は,控訴人らに法令に基づく申請権がないことから,不適法な訴えというべきである。 争点(3)(確認の利益)について(1)確認の訴えは,確認対象適格性がなければ,確認の利益がないといわなければならない。 本件義務確認の訴え①②は,内閣総理大臣が憲法72条あるいは内閣法6条に基づく指揮監督権を行使すべき義務があることの確認を求めるものであるが,控訴人らは,これを実質的当事者訴訟のうちの確認の訴えと主張するから,要するに控訴人らが内閣総理大臣に対し憲法72条あるいは内閣法6条に基づく指揮監督権の行使を求めることの地位にあることの確認を求めるものである。そこで,「公法上の当事者関係に関する」確認の訴え(行政事件訴訟法4条)に当たるか否かを検討する。 既に説示したとおり,本件において,内閣法6条あるいは憲法72条に基づく内閣総理大臣の指揮監督権が行使されたとしても,それによって控訴人らの具体的な権利義務に直接影響が及ぶということはできないから,そこにおよそ何らかの法律関係が生ずる余地がないので,本件義務確認の訴え①②- 19 -は,「公法上の当事者関係に関する」確認の訴えに当たらず,確認の利益がないというべきである。 (2)また,確認の訴えは,即時確定の利益がある場合,すなわち現に控訴人らの有する権利又は法律的利益に危険又は不安が存在し,これを除去するために被控訴人に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り,許されるものである(最高裁第三小法廷昭和30年12月26日判決民集9巻14号2082頁参照)。 そこで検討するに,控訴人らの主張する権利又は法律的利益は,原判決別紙「社会保険庁不正支出一覧表」及び同「グリーンピア無駄一覧表」記載のような不正支出をはじめ様々な無駄遣いにより我が国の年金制度 。 そこで検討するに,控訴人らの主張する権利又は法律的利益は,原判決別紙「社会保険庁不正支出一覧表」及び同「グリーンピア無駄一覧表」記載のような不正支出をはじめ様々な無駄遣いにより我が国の年金制度の財源に損失が生じ,そのため将来受けるべき年金額が減額するというものであるが,既に説示したとおり,年金財源の損失が控訴人らが将来受けるべき年金額の減額に直結するということはいえないから,単に控訴人らにおいて将来受けるべき年金額が減額されるおそれがあるという漠然とした不安が生じているにすぎない。そうすると,そのような漠然とした不安を除去するために被控訴人に対し本件義務確認の訴え①②についての確認判決を得ることが必要かつ適切な場合ということができない。 (3)以上によれば,本件義務確認の訴え①②は,確認の利益を欠くものとして不適法である。 争点(4)(国家賠償法上の違法性)について(1)控訴人らは,厚生労働省及び社会保険庁の公務員の違法な行為により,将来受けるべき年金額が減額されるという財産的損害のほか,憲法13条の幸福追求権に基づく安心して年金を受給できるという期待及び信頼並びに適正な公務の遂行の期待権を侵害されるという精神的損害を被った旨主張している。 (2)国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員- 20 -が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体がこれを賠償する責任がある旨規定しているところ,同項にいう「違法」とは,公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務違背をいうものである(最高裁第一小法廷昭和60年11月21日判決民集39巻7号1512頁参照)。 (3)前提事実のとおり,厚生労働省は政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業を所管するも 義務違背をいうものである(最高裁第一小法廷昭和60年11月21日判決民集39巻7号1512頁参照)。 (3)前提事実のとおり,厚生労働省は政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業を所管するものであり,社会保険庁は政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業を適正に運営すること等を任務とするものであり,また,厚生年金保険法79条の2及び国民年金法75条は積立金の運用を専ら被保険者の利益のために,長期的な観点から,安全かつ効率的に行うことにより,将来にわたって,厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする旨規定し,厚生年金保険法79条の6及び国民年金法79条(いずれも平成16年法律第105号による改正前のもの)は積立金の運用に係る行政事務に従事する厚生労働省の職員が積立金の運用の目的に沿って,慎重かつ細心の注意を払い,全力を挙げてその職務を遂行しなければならない旨規定している。 このような法令の規定等からすると,厚生労働省及び社会保険庁の公務員には,厚生年金保険事業及び国民年金事業を適正に運営する一定の責務を負っているものということができるが,このことから直ちに厚生労働省及び社会保険庁の公務員が個別の国民に対し職務上の法的義務を負担しているということは困難である。 (4)これに対し,控訴人らは,個々の年金受給者や将来年金を受給する個別の加入者から成る総体としての国民一般に対する職務上の法的義務を負担しているのであるから,国家賠償法上の違法がある旨主張するが,既に説示したとおり,国家賠償法上の違法があるというためには,個別の国民に対する職務上の法的義務を負担していることを要すると解すべきであるから,控訴人- 21 -らの主張をにわかに採用することはできない。 (5)したがって,被控訴人の公務員 というためには,個別の国民に対する職務上の法的義務を負担していることを要すると解すべきであるから,控訴人- 21 -らの主張をにわかに採用することはできない。 (5)したがって,被控訴人の公務員の違法行為を理由とする国家賠償請求は理由がない。 第5 結論 よって,原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし,また,控訴人らの当審における請求に係る訴え(本件義務付けの訴え②,本件義務確認の訴え②及び本件不作為の違法確認の訴え②)は不適法であるからいずれも却下することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事部裁判長裁判官都築弘裁判官園部秀穗裁判官小海隆則
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