判決平成14年6月14日神戸地方裁判所平成13年(わ)第1050号監禁致傷,恐喝未遂被告事件 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中140日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,指定暴力団五代目A組三代目B組C組組員であるが,C組本部長であるD,Dと付き合いのあるE,Dの若衆であるF,Fの友人であるG,H及び氏名不詳の者と共謀の上,EのIに対する貸付未収金を回収するため,Iを監禁した上,債権取立名下に金員を喝取しようと企て,平成13年9月21日午前4時ころ,神戸市a区b町c丁目d番e号所在の「J」1階駐車場において,帰宅してきて普通乗用自動車から降車したI(当時41歳)に対し,被告人,D,Fらにおいて,「車のキー出せ。」と申し向け,これを拒むIから同車のキーを取り上げて,Iを同車後部座席に強いて押し込み,被告人,D,Fらも同車に乗り込んで発進疾走させ,Iが同車から降りるのを不能にさせた上,同車内において,被告人において,Iの顔面にガムテープを巻き付け,手拳等でIの後頭部を数回殴打するなどの暴行を加えるなどしながら,同日午前5時ころ,兵庫県明石市f町gh番地のi所在のKビル2階にあるDの使用する「L」事務所内にIを連行し,そのころから同日午後零時過ぎころまでの間,同所において,被告人,Dらにおいて,Iを椅子に座らせ,その両手の親指をインシュロックテープで縛り,その両足をロープやガムテープで縛り上げ,その左下腿部を足蹴にするなどの暴行を加え,その間,前記自動車内及び前記事務所内において,Iに対し,Dにおいて,「お前を4000万で殺せと言われとるんや。」「金作れ。」「金作れんかったら,海に沈め ,その左下腿部を足蹴にするなどの暴行を加え,その間,前記自動車内及び前記事務所内において,Iに対し,Dにおいて,「お前を4000万で殺せと言われとるんや。」「金作れ。」「金作れんかったら,海に沈めるか,山で首つり自殺したように見せかけるぞ。」「500万円やったら今すぐできるやろう。用意せい。」などと語気鋭く申し向けて,金員の交付を要求し,もしその要求に応じなければIの生命,身体にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し,Iをしてその旨畏怖させ金員を喝取しようとしたが,同日午後零時20分ころ,Iが隙を見て前記事務所から逃走して警察官に通報したため,約8時間20分間にわたり,Iをして前記自動車内及び前記事務所内から脱出することを不能にして,Iを不法に監禁し,その際,前記暴行により,Iに全治約3か月間を要する頭部打撲,左下腿部打撲,圧迫性・虚血性多発神経障害(両手)等の傷害を負わせたものの,金員喝取の目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)(省略)(補足説明)弁護人は,被告人が,恐喝未遂の点については共謀も関与もしていないし,Iに暴行を加えたこともない旨主張する。 しかしながら,前掲各証拠によれば,本件は,被告人,D,FらC組構成員を中心とする者らが,Iを監禁した上,EのIに対する債権取立名下に金員を喝取しようとした事案であることが明らかであるところ,証人Iの当公判廷における供述は,監禁された普通乗用自動車内及び「L」事務所内のいずれにおいても,判示のような脅迫暴行を受けて監禁され金員を要求されたことについて,被告人の言動とDら共犯者らの言動をはっきり区別しながら,明確かつ具体的に述べるものであって,そのいうところに特に不自然不合理なところは見当たらないのであるから,これを十分信用に値するということができる上,被告 Dら共犯者らの言動をはっきり区別しながら,明確かつ具体的に述べるものであって,そのいうところに特に不自然不合理なところは見当たらないのであるから,これを十分信用に値するということができる上,被告人の検察官調書(乙8)もまた,Iを監禁して金を脅し取る計画を知った経緯については言えないが,そうした計画があったのは事実であることを自認しているのであるから,被告人が,恐喝未遂の点についても共謀の上で関与していたことはもとより間違いがないし,Iに対して暴行を加えたこともまた間違いがないと認めることができる。 被告人,D,Fらの捜査・公判段階における各供述中には弁護人の主張に沿うものも存在するが,被告人やこれら共犯者らは,いずれも,自己や共犯者らの責任を免れあるいは軽減させるため,ことさらに事実を隠蔽し,あるいは虚実を取り混ぜながら供述していることが明らかであり,その各供述内容には変遷もみられるのであるから,その各供述は自己や共犯者らに不利益な事実をいう部分を除いて信用性に乏しく,これをもって前記認定に合理的な疑いを容れるには至らない。 (法令の適用)罰条監禁致傷の点刑法60条,221条(同法10条により,同法220条所定の刑と同法204条所定の刑とを比較し,重い傷害罪の懲役刑‐ただし,短期は監禁罪の刑のそれによる‐で処断)恐喝未遂の点刑法60条,250条,249条1項併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い監禁致傷罪の刑に法定の加重)宣告刑懲役1年6月未決勾留日数の算入刑法21条(140日)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,暴力団構成員である被告人が,同じ暴力団構成員を含む他の共犯者らと共謀の上,被害者からの債権取立のため,被告 140日)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,暴力団構成員である被告人が,同じ暴力団構成員を含む他の共犯者らと共謀の上,被害者からの債権取立のため,被告人らにおいて被害者に暴行を加えるなどして監禁した上,脅迫を加えて金員を喝取しようとし,その際,被害者に傷害を負わせたものの,金員喝取には至らなかったという監禁致傷,恐喝未遂の事案である。 被告人は,共犯者のDが同Eから,被害者が多額の債務を負いながら返済をしようとしないとしてその取立の依頼を受けたことから,Dらと共謀の上,暴力を用いて被害者から債権回収をしようとして,本件各犯行に及んだものであって,いかに被害者の態度が不誠実であるとはいえ,暴力団がこのような形で債権を回収しようとするのは法治国家においては絶対に許されない行為であること,被告人らは,何人もで被害者を待ち伏せして帰宅してきた被害者を襲い,自動車内やDの使用する事務所内に監禁して金員を喝取しようとし,その間,判示のような暴行や脅迫を加えたものであって,犯行の態様は悪質であること,被害者は,そのため約8時間20分にわたり自由を奪われ恐怖の時を過ごしただけでなく,判示のような傷害をも負わされたものであって,その結果も相当に重いこと,被告人は,判示のとおり,被害者を監禁するための暴行においては積極的役割を果たしていること,被告人は,捜査・公判段階を通じ,自己や共犯者らの責任回避のための供述に終始していて,そこに真摯な反省の態度は認められないことなどを考え併せると,犯情は悪く,被告人の刑事責任は重いというべきである。 また,被告人には,平成4年12月に傷害罪で懲役8月,3年間刑執行猶予の判決を受けた前科があることや,被告人が今後も暴力団組織に身を置き続ける旨公言していることも,量刑上看 重いというべきである。 また,被告人には,平成4年12月に傷害罪で懲役8月,3年間刑執行猶予の判決を受けた前科があることや,被告人が今後も暴力団組織に身を置き続ける旨公言していることも,量刑上看過するわけにはいかない。 してみると,本件では,被害者がEに多額の負債を負いながら不誠実な態度を取っていたことが原因となっており,法的な手続を取ってもなかなか埒があかず,Eはそのために困り切っていたのであるから,被害者にも相当の落ち度があること,監禁時間は8時間余りとそう長くはないし,恐喝の点も未遂に終わっていること,被告人は,暴力団組織内の上位者の命令で本件に加担するに至ったものであって,共犯者の中で主導的な地位にあったわけではないこと,被告人自身は負担をしていないものの,被告人,D,Fから被害者に対して金100万円を支払い,また,Eから被害者に対して金100万円を支払って,それぞれ示談が成立しており,その示談書には被害者が被告人らを宥恕する旨の記載があること,被告人の前記の執行猶予は取り消されることなくその期間を満了しており,被告人にはその外に前科がないこと,被告人が本件で8か月半以上の期間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役2年)よって,主文とおり判決する。 平成14年6月14日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣
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