-1-平成26年3月18日判決言渡平成23年(行ウ)第228号法人税更正処分取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求麻布税務署長が原告に対して平成22年6月29日付けでした原告の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得の金額556億9158万5439円及び納付すべき法人税額165億6606万8200円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要 1 原告は,P1株式会社(以下「P1」という。)から,P1の完全子会社であったP2株式会社(平成21年2月2日までの商号は「P3株式会社」。以下,商号変更の前後を通じて「P2」という。)の発行済株式全部を譲り受けた(以下「本件買収」という。)後,同年3月30日,原告を合併法人,P2を被合併法人とする合併(以下「本件合併」という。)を行った。そして,原告は,原告の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度に係る法人税の確定申告に当たり,法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下「法」という。)57条2項の規定に基づき,P2の未処理欠損金額約542億円を原告の欠損金額とみなして,同条1項の規定に基づき損金の額に算入した。 これに対し,処分行政庁は,本件買収,本件合併及びこれらの実現に向けられた原告の一連の行為(原告がその代表取締役社長をP2の取締役副社長に就任させた行為を含む。)は,法人税法施行令(平成22年政令第51号による-2-改正前のもの。以下「施行令」という。)112条7項5号に規定する要件を形式的に満たし,租税回避をすることを目的 に就任させた行為を含む。)は,法人税法施行令(平成22年政令第51号による-2-改正前のもの。以下「施行令」という。)112条7項5号に規定する要件を形式的に満たし,租税回避をすることを目的とした異常ないし変則的なものであり,その行為又は計算を容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとして,法132条の2の規定に基づき,P2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなすことを認めない旨の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。 本件は,原告が,本件更正処分等は同条の要件が満たされていなかったにもかかわらずされた違法なものであると主張して,本件更正処分の一部及び本件賦課決定処分の取消しを求める事案である。 2 関係法令の定め別紙2のとおり。なお,その要旨は,以下のとおりである。 (1) 適格合併法2条12号の8は,適格合併について,同号イからハまでのいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないものをいう旨規定し,同号イは,その合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係がある場合の当該合併を掲げている。 法2条12号の8イの規定を受けて,施行令4条の2第2項は,法2条12号の8イに規定する政令で定める関係は,同項1号又は2号に掲げるいずれかの関係とする旨規定し,同項1号は,合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接 定する政令で定める関係は,同項1号又は2号に掲げるいずれかの関係とする旨規定し,同項1号は,合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある場合における当該関係を掲げている。 (2) 欠損金の繰越しと適格合併等における未処理欠損金額の引継ぎ-3-ア欠損金の繰越し法57条1項は,確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には,当該欠損金額に相当する金額は,当該各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する旨規定する。 イ被合併法人等の未処理欠損金額の引継ぎ法57条2項は,適格合併等が行われた場合において,当該適格合併等に係る被合併法人等の当該適格合併等の日前7年内事業年度において生じた欠損金額(未処理欠損金額)があるときは,合併法人等の合併等事業年度以後の各事業年度における同条1項の規定の適用については,当該前7年内事業年度において生じた前7年内事業年度開始の日の属する当該合併法人等の各事業年度において生じた欠損金額とみなす旨規定する。 ウ未処理欠損金額の引継ぎ等に係る制限法57条3項は,適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等との間に特定資本関係があり,かつ,当該特定資本関係が当該合併法人等の当該適格合併等に係る合併等事業年度開始の日の5年前の日以後に生じている場合において,当該適格合併等が共同で事業を営むための適格合併等として政令で定めるものに該当しないときは,同条2項に規定する未処理欠損金額には,当該被合併法人等の①特定資本関係事業年度前の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額(同条3項 政令で定めるものに該当しないときは,同条2項に規定する未処理欠損金額には,当該被合併法人等の①特定資本関係事業年度前の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額(同条3項1号)及び②特定資本関係事業年度以後の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち法62条の7第2項に規定する特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額として政令で定める金額(法57条3項2号)を含まないものとする旨規定する。 エ共同で事業を営むための適格合併等-4-施行令112条7項は,法57条3項の規定による委任を受け,共同で事業を営むための適格合併等は,適格合併等のうち,①施行令112条7項1号から4号までに掲げる要件(事業の相互関連性要件,事業規模要件,被合併等事業の同等規模継続要件,合併等事業の同等規模継続要件)又は②同項1号及び5号に掲げる要件(事業の相互関連性要件,特定役員引継要件)に該当するものとする旨規定する。 オ特定役員引継要件施行令112条7項5号は,共同で事業を営むための適格合併等の要件の1つとして,適格合併等に係る被合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員(社長,副社長,代表取締役,代表執行役,専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この号において同じ。)である者のいずれかの者(当該被合併法人等が当該適格合併等に係る合併法人等と特定資本関係が生じた日前において当該被合併法人等の役員又は当該これらに準ずる者であった者に限る。)と当該合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員である者のいずれかの者(当該特定資本関係が生じた日前において当該合併法人等の役員又は当該これらに準 又は当該これらに準ずる者であった者に限る。)と当該合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員である者のいずれかの者(当該特定資本関係が生じた日前において当該合併法人等の役員又は当該これらに準ずる者であった者に限る。)とが当該適格合併等の後に当該合併法人等の特定役員となることが見込まれていることを規定する。 (3) 組織再編成に係る行為又は計算の否認法132条の2は,税務署長は,合併等に係る①合併等をした一方の法人又は他方の法人(同条1号),②合併等により交付された株式を発行した法人(同条2号),③上記①及び②に掲げる法人の株主等である法人(同条3号)の法人税につき更正又は決定をする場合において,その法人の行為又は計算で,これを容認した場合には,合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加,法人税の額から控除する金額-5-の増加,上記①又は②に掲げる法人の株式(出資を含む。)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加,みなし配当金額の減少その他の事由により法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる旨規定する。 3 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)(1) 当事者等ア原告原告は,平成8年に設立され,情報処理サービス業及び情報提供サービス業等を目的とする株式会社であり,「P4」ブランドで行う個人向け及び小規模事業者向けのインターネットサービス事業を主力としている。原告は,平成15年に東京証券取引所市場第一部に株 び情報提供サービス業等を目的とする株式会社であり,「P4」ブランドで行う個人向け及び小規模事業者向けのインターネットサービス事業を主力としている。原告は,平成15年に東京証券取引所市場第一部に株式を上場している。原告の資本金の額は,本件合併当時,約74億円であり,平成20年3月期において,売上高は約2207億円,営業利益は約1219億円であった。 (甲4,107,112,乙29)原告の議決権の所有割合は,P1が約42.1パーセント,米国のP5Inc.(以下「P5」という。)が約34.9パーセント,多数の少数株主を含むその他の株主が約23.0パーセントであった(甲5)。 本件合併当時,原告の取締役会長はP6(以下「P6氏」という。)であり,原告の代表取締役はP7(以下「P7氏」という。)であった(甲4,107,112)。 イ P1P1は,昭和56年に設立され,コンピュータ,その周辺機器・関連機器及びそのソフトウェアの開発,設計,製造,販売並びに輸出入業務等を-6-営む会社及びこれに相当する業務を行う外国会社の株式又は持分を取得・所有することにより,当該会社の事業活動を支配・管理することを目的とする株式会社である。P1は,ブロードバンド・インフラ事業を営む会社,移動体通信事業を営む会社,固定通信事業を営む会社など,多くのグループ子会社を傘下に抱えている。本件合併当時,P1の資本金の額は約1876億円であった。(甲7,112)本件合併当時,P1の代表取締役社長はP6氏であり,P7氏はP1の取締役であった(甲7,107,112)。 ウ P2P2は,昭和61年に設立され,情報通信事業用施設の保守,管理及び運営等を目的とする株式会社である。P2の本件合併直前の資本金の額 の取締役であった(甲7,107,112)。 ウ P2P2は,昭和61年に設立され,情報通信事業用施設の保守,管理及び運営等を目的とする株式会社である。P2の本件合併直前の資本金の額は1億円であり,平成20年3月期において,売上高は約98億円,営業利益は約22億円,貸借対照表上の資産合計は約181億円であった。(甲8,15の3)P2は,P1の完全子会社であったが,P1が,原告に対し,平成21年2月24日,保有していたP2の発行済株式全部を譲渡したことにより,原告の完全子会社となり,その後,同年3月30日,本件合併により解散した(甲8,13,14)。 エ P8株式会社P8(平成21年4月1日までの商号は「P3株式会社」。以下,商号変更の前後を通じて「P8」という。)は,平成21年2月2日,P2から新設分割(以下「本件分割」という。)により設立された。P8は,P2の完全子会社であったが,P2が,原告に対し,同月20日,保有していたP8の発行済株式全部を譲渡したことにより,原告の完全子会社となった。P8は,本件合併当時,情報通信事業用施設の保守,管理及び運営に関するサービス提供等を目的としていた。(甲9,乙5)-7-(2) 本件合併に至る経緯ア本件提案P1の代表取締役社長であり,かつ,原告の取締役会長でもあるP6氏は,P7氏ら原告の常勤取締役に対し,平成20年10月27日,P2の株式の譲渡等を提案した。その後,P1は,原告に対し,同年11月21日,上記の提案を改めて書面により行い,①P2から新会社(P8)を新設分割すること(本件分割に相当するもの),②P2が原告に対して新会社(P8)の株式を譲渡すること,③P1が原告に対してP2の株式を700億円で譲渡すること(本 り行い,①P2から新会社(P8)を新設分割すること(本件分割に相当するもの),②P2が原告に対して新会社(P8)の株式を譲渡すること,③P1が原告に対してP2の株式を700億円で譲渡すること(本件買収に相当するもの),④原告がP2を合併すること(本件合併に相当するもの)などの組織再編成に係る手順を示した(以下,上記の提案を「本件提案」という。)。(甲11,12,107,112,証人P7,証人P6)本件提案における組織再編成の手順は4段階で構成されており,その概要は以下のとおりである(甲12)。 (ア) ステップ①(本件分割に相当するもの)P2は,新設分割により,簿価34億円の新会社(P8)を設立する。 (イ) ステップ②(P8株式の譲渡)aP2は,原告に対し,新会社(P8)の発行済株式全部を174億円で譲渡する。 bP2は,新会社(P8)の株式譲渡益140億円(譲渡価額174億円と簿価34億円との差額)を,P2の未処理欠損金額165億円(平成14年3月期の124億円及び平成15年3月期の41億円の合計額)の一部と相殺する。 (ウ) ステップ③(P2株式の譲渡。本件買収に相当するもの)P1は,原告に対し,P2の発行済株式全部を700億円(税務上資産200億円,事業資産326億円及び現金174億円の合計額)で譲-8-渡する。上記「税務上資産200億円」は,P2(本件分割後のもの)から原告に引き継がれる未処理欠損金額約500億円に税率40パーセントを乗じて算出した額である。 (エ) ステップ④(本件合併に相当するもの)a 原告は,平成21年3月末までに,原告を存続会社,P2を消滅会社とする吸収合併を行う。 トを乗じて算出した額である。 (エ) ステップ④(本件合併に相当するもの)a 原告は,平成21年3月末までに,原告を存続会社,P2を消滅会社とする吸収合併を行う。 b 原告は,P2の未処理欠損金額を承継し,原告の事業収益と相殺する。 イ P7氏のP2取締役副社長就任P6氏は,P7氏に対し,平成20年11月27日,P2の取締役副社長に就任するように依頼し,P7氏はこれを了解した。そして,P7氏は,同年12月26日,株主総会の決議及び取締役会の決議を経て,P2の取締役副社長に選任された(以下「本件副社長就任」という。)。(甲107,112,乙2,3,証人P7,証人P6)これにより,特定役員引継要件(施行令112条7項5号)が充足され得る状態となった。 ウ本件分割P2は,平成21年1月7日,データセンターの営業・販売及び商品開発に係る事業に関する権利義務を新設分割により新たに設立する会社に承継させる旨の新設分割計画を作成した(乙4)。そして,同年2月2日,P8が本件分割により設立され,P2の取締役がP8の取締役にも就任した(甲8,9)。 エ P8株式の譲渡P2は,原告との間で,平成21年2月19日,原告に対して保有するP8の発行済株式全部を115億円で譲渡する旨の株式譲渡契約を締結し,原告に対し,同月20日,譲渡代金の支払を受けるのと引換えに,保-9-有するP8の発行済株式全部を譲渡した(乙5)。 オ P2株式の譲渡(本件買収)P1は,原告との間で,平成21年2月23日,原告に対して保有するP2の発行済株式全部を450億円で譲渡する旨の株式譲渡契約を締結し,原告に対し,同月24日,譲渡代金の支払を受けるのと P1は,原告との間で,平成21年2月23日,原告に対して保有するP2の発行済株式全部を450億円で譲渡する旨の株式譲渡契約を締結し,原告に対し,同月24日,譲渡代金の支払を受けるのと引換えに,保有するP2の発行済株式全部を譲渡した(甲13)。これにより,原告とP2との間には特定資本関係(法57条3項)が生じることとなった。 カ本件合併原告は,平成21年2月25日,原告を存続会社,P2を消滅会社とする吸収合併を行い,原告がP2の権利義務全部を承継し,P2が本件合併後に解散する旨の合併契約を締結し,本件合併は,同年3月30日に効力を生じた。P7氏以外のP2の取締役は,本件合併に伴って全員退任し,原告の取締役には就任しなかった。(甲4,14)(3) 本件更正処分等ア法人税の確定申告書の提出原告は,平成21年6月30日,合併法人である原告の代表取締役であるP7氏が被合併法人であるP2の取締役副社長に就任していたため,特定役員引継要件(施行令112条7項5号)を満たし,かつ,事業の相互関連性要件(同項1号)も満たすとして,法57条2項の規定に基づき,P2の未処理欠損金額542億6826万2894円を原告の欠損金額とみなして,同条1項の規定に基づき損金の額に算入した上,原告の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度の法人税の確定申告書を処分行政庁に提出した(甲72。別表1)。 イ本件更正処分等処分行政庁は,平成22年6月29日付けで,原告の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度の法人税について,本件買-10-収,本件合併及びこれらの実現に向けられた原告の一連の行為(原告がその代表取締役社長であるP7氏をP2の取締役副社長 4月1日から平成21年3月31日までの事業年度の法人税について,本件買-10-収,本件合併及びこれらの実現に向けられた原告の一連の行為(原告がその代表取締役社長であるP7氏をP2の取締役副社長に就任させた行為を含む。)は,施行令112条7項5号に規定する要件(特定役員引継要件)を形式的に満たし,P2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなして損金の額に算入することを目的とした異常ないし変則的なものであり,その行為又は計算を容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものであることから,P2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなさず,原告が損金の額に算入した542億6826万2894円は,損金の額に算入されず,当事業年度の所得金額に加算する旨の本件更正処分等をした(甲1。別表1)。 ウ審査請求原告は,平成22年8月27日付けで,本件更正処分等に対する審査請求を国税不服審判所長に行った(甲2。別表1)。 エ本件訴えの提起原告は,審査請求をした日の翌日から起算して三月を経過しても裁決がされなかったため,平成23年4月13日,本件更正処分等の取消しを求め,本件訴えを提起した。 4 被告が主張する本件更正処分等の根拠及び適法性被告が主張する本件更正処分等の根拠及び適法性は,別紙3のとおりである(別紙中の略語は本文においても同様に用いる。)。 被告は,本件更正処分について,本件副社長就任が原告の行為であるとしてこれを法132条の2の規定に基づき否認するものである旨主張している。 5 争点本件の主たる争点は,以下のとおりである。 (1) 法132条の2の意義(争点1)すなわち,①同条に規定する「その法人の行為」で,「これを容認した場-11 主張している。 5 争点本件の主たる争点は,以下のとおりである。 (1) 法132条の2の意義(争点1)すなわち,①同条に規定する「その法人の行為」で,「これを容認した場-11-合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とはどのような行為をいうか。また,②同条の規定に基づき否認することができる行為又は計算は,法人税につき更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られるか否か。 (2) P7氏のP2取締役副社長就任(本件副社長就任)は,法132条の2の規定に基づき否認することができるか否か(争点2)。 すなわち,①本件副社長就任は,「その法人の行為」で,「これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当するか否か。また,②本件副社長就任は,原告の行為か否か。 (3) 本件更正処分に理由付記の不備があるか否か(争点3)。 6 争点についての当事者の主張別紙4のとおり第3 当裁判所の判断 1 認定事実上記前提事実,争いのない事実,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) P2の事業内容,未処理欠損金額の処理に関する検討等ア P2の事業内容等P1は,平成17年2月,英国のP9グループから,P2の発行済株式の全部を取得し,P2を完全子会社とした。P2は,同年5月,通信事業を分割して,これをP10株式会社に対して売却し,他方,P11株式会社から,データセンター事業を行っていたP12株式会社の株式を譲り受け,以後,データセンター事業に特化して事業を行っていた。当時,P2の代表取締役はP13(以下「P13氏」という。)であり,平成18年3月期における従業員数は約115名であった 式会社の株式を譲り受け,以後,データセンター事業に特化して事業を行っていた。当時,P2の代表取締役はP13(以下「P13氏」という。)であり,平成18年3月期における従業員数は約115名であった(甲12,15の1,甲1-12-6)。なお,「データセンター」とは,一般に,サーバー類を収容する建物や部屋などの施設及びそこに収容されるサーバー類を一体として指し示す言葉であるが,施設とサーバー類を別の者が整備する場合は,施設のみを指してデータセンター(狭義のデータセンター)と呼ぶことがある。 そして,「データセンター事業」とは,サーバー類の収容のために施設を貸し出す役務(「ハウジング」又は「コロケーション」)や,データセンターに収容したサーバー類を貸し出す役務(「ホスティング」)などを提供する事業をいう(甲10の1)。 P2は,東京都や大阪府などにデータセンターを保有して,データセンター事業を展開し,業界3位(専業では1位)の地位を占めていた(甲15の1から3まで,甲17)。P2の主要な売上は,コロケーションによるものであって,ホスティングは少なく,P2の事業の本質は不動産賃貸業であり,インターネットビジネスに精通した者は少なかった。また,平成20年度において,P2の取引先のうちの25パーセントがP14グループ各社であった。(甲46の3,乙10,証人P6)。 イ P2の未処理欠損金額P2には,平成14年3月期から平成18年3月期までに欠損金が発生し,その額は,①2001年度(平成14年3月期)が124億円,②2002年度(平成15年3月期)が41億円,③2003年度(平成16年3月期)が106億円,④2004年度(平成17年3月期)が29億円,⑤2005年度(平成18年3月期)が366億円であったところ,P2の利益は,平成1 月期)が41億円,③2003年度(平成16年3月期)が106億円,④2004年度(平成17年3月期)が29億円,⑤2005年度(平成18年3月期)が366億円であったところ,P2の利益は,平成19年3月期以降,毎年約20億円であり,上記未処理欠損金額を控除するには相当な期間が掛かることが見込まれていた。そして,上記未処理欠損金額のうち平成14年3月期に発生した124億円については,平成21年3月末で繰り越しができなくなる状況にあった(甲12)。 -13-ウ P2の株式上場計画と分社化案P2は,平成20年3月頃,データセンターに係る設備投資資金の調達と,P1への財務面の寄与を目的として,株式公開を行うことを検討し,これをP1財務部の一部門である関連事業室に対して説明した(甲17)。 これによれば,株式公開のメリットは,①調達した資金を活用して建設されるデータセンターの利用促進により,P14グループのネット事業の拡大,競争力確保,②P2の収益性等の拡大,③繰越欠損金の最大活用の3点であるとされていた。そして,株式の公開に当たっては,P2を分社することが予定されており,具体的には,①P2の主要な資産及び負債を承継する新設分割設立会社を新設分割により設立する,②P2がP1に対して新設分割設立会社の株式の一定割合を現物配当する,③その後,新設分割設立会社の株式上場を行うというスキームが計画されていた。この計画において,上記未処理欠損金額は,P1への新設分割設立会社の株式の現物配当による譲渡益などとの相殺により処理することとされていた。 上記の株式公開については,平成20年3月27日のP1取締役会において,その準備に着手することが承認されたが,株式上場の是非及び具体的時期については再度審議することとなったことから,P2は,同年7 上記の株式公開については,平成20年3月27日のP1取締役会において,その準備に着手することが承認されたが,株式上場の是非及び具体的時期については再度審議することとなったことから,P2は,同年7月16日の取締役会において,上記の分社化案に修正を加えた新たな案(7月16日分社化スキーム案)を決定し,これをP1の取締役会に諮ることとした。(甲17,18,19の1,2,108,130,145)もっとも,その頃,P2は,評価算定会社に依頼して,新設分割設立会社の事業価値を算定したところ,292億7300万円ないし357億7900万円との報告(甲20)を受けた。そして,P1の関連事業室からは,①P6氏は子会社の株式を上場するならば少なくとも1000億円以上の事業価値になってから行うべきであると考えていること,②上記7月16日分社化スキーム案では上記未処理欠損金額の全てを処理すること-14-はできないと見込まれることなどの指摘を受けたことから,同案は,同年7月29日に開催されたP1の取締役会には上程されず,再度検討することになった。(甲21,112,130,証人P6)エ P1財務部における分社化案等の検討P1の関連事業室は,平成20年10月頃までに,上記の7月16日分社化スキーム案に代わるものとして,事業譲渡案と単純分社化案を作成した。前者は,P2が新設分割により新会社を設立するが,P2には資産としてのデータセンター設備(土地・建物等)を残し,新会社に対して営業・販売などの事業を譲渡するというものであり,後者は,前者同様にP2には資産としてのデータセンター設備(土地・建物等)を残すような新設分割を行って新会社を設立するというものであった。そして,P2の未処理欠損金額のうち,平成21年3月末にまでに消滅する分は,事業譲 には資産としてのデータセンター設備(土地・建物等)を残すような新設分割を行って新会社を設立するというものであった。そして,P2の未処理欠損金額のうち,平成21年3月末にまでに消滅する分は,事業譲渡か非適格合併により処理し,それ以外の分は,P2とP1の他の子会社(P11株式会社及びP15株式会社)との適格合併により処理するという内容であり,P14グループ内でP2の未処理欠損金額を全て処理することができるものであった。P1からこれらの案を示されたP2は,上記の7月16日分社化スキーム案で進めるべき旨の意見を出したが,P1の財務部としては,事業譲渡案又は単純分社化案のいずれかの案を採用するという基本方針を決定した。(甲22,130)(2) P1による本件提案と原告における検討ア P1における資金需要P1においては,平成20年9月頃,同社の資金ミーティングにおいて,同月15日のいわゆるリーマン・ショック後の厳しい金融情勢の下で,手元流動性を高めておく必要があるという合意がされた(乙1)。また,P1は,平成15年12月30日に「2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」(以下「本件CB」という。)を発行していたところ,-15-本件CBは,その所持人がP1に対し平成21年3月31日にその額面金額に償還日までの経過利息を付して繰上償還することを請求する権利を有するものであり,同年に入ってから本件CBの市場価格が100円を下回っているか,同年年初のP1の株価が約1100円以下の水準である場合には,投資家から最大500億円の償還請求を受ける可能性があった。 そして,平成20年10月27日の本件CB価格の終値は90.50円,同日のP1の株価の終値は736円となっており,同月28日に開催されたP1の取締役会においては,同社財務 求を受ける可能性があった。 そして,平成20年10月27日の本件CB価格の終値は90.50円,同日のP1の株価の終値は736円となっており,同月28日に開催されたP1の取締役会においては,同社財務部が作成した資料により,上記の請求を受ける可能性についての報告がされた(甲23,24,乙22)。 イ P6氏の発案に基づく本件提案P6氏は,財務部担当取締役であるP16(以下「P16氏」という。)から,平成20年10月中旬,P2に関する上記(1)エの事業譲渡案又は単純分社化案について報告を受けた。しかし,P6氏は,P2とP11株式会社等とを合併させるのではなく,P2をインターネットサービス企業である原告に売却し,原告と合併させることが適切であると考えた。その理由は,P2としては,原告から顧客の紹介とノウハウの提供を受けることで,原告との関係でより高いシナジー効果を生むことができる点,クラウドコンピューティング事業(データセンターに顧客のサーバーを預かるのではなく,データを預かり,それに付加価値を付けて顧客に役務を提供する事業)を開始することで企業価値を増加させることができる点,原告としても,自社で大型のデータセンターを保有することで,P17に対抗するために安価な検索サーバーを安定的に確保することができる点などにあった。 そこで,P6氏は,平成20年10月27日,P7氏ら原告の常勤取締役に対し,P2の買収を提案し,さらに,同年11月21日,P1は,原告に対し,書面(「○」と題するもの)により,原告がP2を700億円-16-で買収する旨の提案(本件提案)をした。同書面において,本件提案に係る買収の目的は,①原告とP2とのシナジー効果を得ること(具体的には,オープンプラットフォームの実現,データセンター自社保有によるコスト する旨の提案(本件提案)をした。同書面において,本件提案に係る買収の目的は,①原告とP2とのシナジー効果を得ること(具体的には,オープンプラットフォームの実現,データセンター自社保有によるコスト削減など),②P14グループ全体での税務メリットを享受することとされた。また,本件提案において示された組織再編成に係る手順は前提事実(2)アのとおりであり,P2の資産価値は,株式価値500億円に繰越欠損金の価値200億円を加えた700億円であるとされ,P2の未処理欠損金額のうち,平成14年3月期及び平成15年3月期の分はP2において処理し,その余のものは原告において処理することとされていた。 (甲112,130,乙1,8,証人P7,証人P6)ウ P1の資金繰り計画等P1の財務部は,平成20年11月11日付け「P1資金繰り計画」(乙23)を作成し,資金調達をしない場合には,同年12月の段階で659億円の不足,翌年3月の段階で1398億円の不足となり,原告に対して平成21年3月にP2の株式を売却することが確度の高い資金調達手段であるとの指摘をしていた。また,同部は,同年12月11日付け「単体資金計画サマリー」(乙24)を作成し,同年11月末時点では実質使用可能残高が-115億円であり,以降の不足により,本年度中には1000億円の資金調達が必要であるところ,原告に対して平成21年3月にP2の株式を500億円で売却することが確度の高い資金調達手段であるとの指摘をしていた。もっとも,これらは,P1の財務部が,保守的な判断を示したものであった(甲146)。 エ原告における本件提案の検討(ア) 原告は,インターネットサービス事業を行うため,多数のデータセンターを必要としており,複数のデータセンター事業者との間で利用契約を締結し,データセン )。 エ原告における本件提案の検討(ア) 原告は,インターネットサービス事業を行うため,多数のデータセンターを必要としており,複数のデータセンター事業者との間で利用契約を締結し,データセンターを確保していた。原告は,従前,データセン-17-ターを自社保有するよりも,複数のデータセンター事業者と利用契約を締結するほうが,事業規模やサービスの拡大に応じて適宜サーバーの借り増し等を行うことにより,必要な容量を確保しつつ,コストも削減できることから,これを事業戦略上の基本的な方針としていた。そして,原告は,平成17年7月には株式会社P18などと契約し,同社が原告専用に設立したデータセンターに一定の規模の容量を確保するなどしていた。その後,更にデータセンターを確保する必要が生じたので,原告は,P2との間で,平成19年9月に契約を締結し(甲30,31),P2が北九州市に大規模なデータセンターを建築すること,その完成後,P2が原告に対してデータセンターに係る役務を提供することなどを合意した。そして,同契約に基づいて,平成20年10月頃,P19データセンターに100ないし200サーバーが導入されたが,本格稼働の状態ではなかった。なお,それ以前は,P2のデータセンターは価格競争力が劣ることから,原告が利用することはなかった。(甲107,147,乙10,証人P7)(イ) 以上のとおり,原告は,平成20年頃までの時期において,データセンターを自社保有しないという方針をとっていたが,上記イのとおり,同年10月27日,P7氏は,P6氏から,P2を原告が買収すべきである旨の提案を受けた。そして,その際,P6氏は,原告は自前のデータセンターを保有すべきであり,P5がP17に検索サービスの競争で後れを取ったのは,データセンターへの投資が規模におい が買収すべきである旨の提案を受けた。そして,その際,P6氏は,原告は自前のデータセンターを保有すべきであり,P5がP17に検索サービスの競争で後れを取ったのは,データセンターへの投資が規模においても時期においても遅れたからであるとの考え方を説明した。そこで,P7氏は,これを検討し,当時,増加の一途を辿っていたデータセンター需要に対応する必要が生じていた上,今後,クラウドコンピューティング事業へ参入するに際して,データセンターを自社保有すれば,先進的なデータセンターを保有するP5の運営技術を利用でき,余剰があり第三者に賃貸-18-すれば全体としてコスト削減できるという考え方にも合理性があると考えたが,他方,原告においては,ROA(総資産利益率)との関係から不動産などの資産保有を避けていたことなどから,事業戦略や経営面での影響や,P2の企業価値などを検討した上で,P6氏からの提案を受けるかどうか判断することとし,関係部署に対して種々の検討をさせた。 そして,P7氏は,P1から同年11月21日時点で受けた本件提案における譲渡価額700億円について,高額であると考えていた。(甲107,112,乙8,証人P7,証人P6)(3) 本件提案に沿った組織再編成の実行ア本件副社長就任P6氏は,P7氏に対し,平成20年11月27日,P2の取締役副社長に就任するように依頼し,P7氏はこれを了解した。また,P6氏は,P2の代表取締役であるP13氏に対し,同年12月10日頃,本件提案を実行する旨告げたところ,P13氏は,①株式上場の可能性を担保すること,②P2の顧客に迷惑を掛けないこと,③P2の社員が不利益を蒙らないこととするという要望を述べた上,これを了解した。また,P13氏は,P7氏がP2の取締役副社長に就任することを了解した。そ すること,②P2の顧客に迷惑を掛けないこと,③P2の社員が不利益を蒙らないこととするという要望を述べた上,これを了解した。また,P13氏は,P7氏がP2の取締役副社長に就任することを了解した。そして,P7氏は,同年12月26日,株主総会の決議及び取締役会の決議を経て,P2の取締役副社長に選任された。(甲8,64,95,107,108,110,112,145,147,乙8,証人P7,証人P6)この頃,P1及び原告においては,本件合併においてP2の未処理欠損金額を処理するためには,特定役員引継要件を満たす必要があることが認識されており,P1の財務部長は,P6氏に対しても,その旨伝えていた(甲108,112,130,乙1,9の1から3まで,乙18から20まで,証人P6)。しかるに,P2の代表取締役であるP13氏や取締役であるP20(以下「P20氏」という。)については,当時,本件合併-19-後に原告の特定役員となることは事業上の必要性が高くないと判断されていた(証人P6,弁論の全趣旨)。 イ P7氏のP2における職務遂行P7氏は,P2の取締役副社長に選任された後,主として,コスト構造の改善と営業協力に関してP2の経営に参加したが,特定の部門を分掌したわけではなく,役員報酬は受領していなかった(乙10)。P7氏が,本件副社長就任から本件買収の頃までの間に行った具体的な職務の概要は,以下のとおりである(甲107,108,証人P7)。 (ア) P7氏は,P13氏との間で,平成21年1月7日,P2今後の事業方針について会議を行い,原告との協業可能性を原告と一体となって検討するようにP13氏らに指示するなどした(甲76,77,86)。 (イ) P7氏は,同月21日に開催された取締役会に出席し,議決権を行使したほか ,原告との協業可能性を原告と一体となって検討するようにP13氏らに指示するなどした(甲76,77,86)。 (イ) P7氏は,同月21日に開催された取締役会に出席し,議決権を行使したほか,P2の中期計画(同日付けのもの)について意見を述べた。 この中期計画の内容には,P2と原告とが協業することや,データセンターを一元化することなどが含まれていた(甲65の1,2,甲76,78・ページ13,ページ20)。なお,原告は,上記の中期計画が本件買収を前提としないものであると主張し,これに沿う証人P7の供述部分があるが,上記のとおり中期計画にはデータセンターを一元化することが盛り込まれていたこと,また,既にP2につき新設分割を行うことが決定されていたこと(後記ウ(ア))からすると,上記供述部分は採用することができない。 (ウ) P7氏は,本件買収後である同年2月26日,P13氏らと会議を行い,P2の設備投資計画の方針を指示したり,原告の子会社であったP21株式会社(以下「P21」という。)にP2の取締役を就任させて業務提携することなどを決定した(甲69,70,80,110)。 ウ本件分割とP8の設立-20-(ア) P2は,平成21年1月7日,データセンターの営業・販売及び商品開発に係る事業に関する権利義務を新設分割により新たに設立する会社(P8)に承継させる旨の新設分割計画を作成した(乙4)。そして,同月21日に開催された取締役会において,新設会社の成立の日を同年2月2日とすることが決定された(甲65の1及び2)。 (イ) 平成21年2月2日,P8が本件分割により設立され,P2の取締役がP8の取締役にも就任した(甲8,9)。 (ウ) P8は,本件分割により,①P2の流動資産,②データセンターの営業・役務提供及び ) 平成21年2月2日,P8が本件分割により設立され,P2の取締役がP8の取締役にも就任した(甲8,9)。 (ウ) P8は,本件分割により,①P2の流動資産,②データセンターの営業・役務提供及びサービスの開発に係る事業に係る契約(顧客との間の契約を含む。),③事業に属する知的財産権等,④従業員との間の労働契約を承継し,それ以外の資産(データセンターを構成する不動産)や契約上の地位(データセンターの賃貸借,建設,運用,保守及び施設管理に関する事業に関する契約)は,P2に残された(乙4)。また,P8は,P2との間で,業務委託契約を締結し,従業員をP2に出向させて,データセンターの設備構築,保守運用に係る事業を行わせることとし,P2がP8に対して業務委託料を支払うこととした(甲147,乙25,26)。 エ本件買収に係る契約の成立(ア) 本件買収に係る交渉等の状況原告とP1との間では,P2の買収価額をめぐって交渉が続けられ,平成21年1月6日頃に行われた担当者間の協議においては,P1側から,譲渡価額を「500億円から下の線」とするとの提案がされ,また,基本合意書の原稿が準備されることになった(甲49)。そして,P6氏は,同月15日,原告に対し,P1としては450億円を最低譲渡価額とすることを伝えた。P1は,同月30日及び同年2月5日に開催された取締役会において,P2の売却について協議し,最終的な金額につ-21-いてはP6氏に一任することとした(甲55,56,107,112)。 他方,原告は,同年1月27日に開催された取締役会において,P2の買収の当否について協議を行い,同年2月19日に開催される取締役会で承認を求める予定とされた(甲44の1,2)。その後,原告とP1との間で,P2の買収の当否及び内容について更に詳細な おいて,P2の買収の当否について協議を行い,同年2月19日に開催される取締役会で承認を求める予定とされた(甲44の1,2)。その後,原告とP1との間で,P2の買収の当否及び内容について更に詳細な検討が行われ(甲51から54まで),P7氏は,同年1月末頃までには,本件買収及び本件合併を行う意思を固めつつあった(証人P7)。そして,同年2月17日,原告の大株主であるP5の取締役であり,かつ,原告の取締役でもあったP22から,本件買収に賛同する旨の連絡があった(甲47,107)。 そこで,原告は,同月19日に開催された取締役会において,P2からP8の発行済株式全部を115億円で買収すること,P1からP2の発行済株式全部を450億円で買収することをそれぞれ正式に決定した。なお,同取締役会においては,実際の買収価格は450億円であり,上記115億円は短期間で原告に戻ることが確認され,また,繰越欠損金の活用が税務当局から否認された場合にはP1がそれを補償する旨の条項を契約書に盛り込む予定であることが確認された。そして,同取締役会に提出された資料においては,上記取引については4通の契約書,すなわち,①税務リスク(繰越欠損金承継)の手当てのための差入書,②取引のフレームワークに関する合意書,③P2株式の譲渡契約書,④P8株式の譲渡契約書が作成される旨の記載がされていた(甲46の1から3まで)。 なお,上記①の差入書として,P1は,原告に対し,平成21年2月18日付け書面を交付し,同書面により,原告によるP2の未処理欠損金額の承継が税務当局により否定され,更正の処分がされた場合には,原告が支払を要する額の全額をP1が原告に支払う旨を約し,同書面に-22-基づく原告の請求は,株式譲渡契約に基づく権利とは別個の請求権として独立してなし より否定され,更正の処分がされた場合には,原告が支払を要する額の全額をP1が原告に支払う旨を約し,同書面に-22-基づく原告の請求は,株式譲渡契約に基づく権利とは別個の請求権として独立してなしうることが確認された(甲57)。 (イ) P8株式の譲渡P2は,原告との間で,平成21年2月19日,保有するP8の発行済株式全部を原告に対して115億円で譲渡する旨の株式譲渡契約を締結し,同月20日,譲渡代金の支払を受けるのと引換えに,保有するP8の発行済株式全部を譲渡した。なお,上記契約では,P8の株式の譲渡が実行された後,同月24日までに,P1から原告に対するP2の発行済株式全部の譲渡が実行されなかった場合には,上記株式譲渡契約が同日付けで自動的に解除される旨の合意がされていた(乙5)。 (ウ) P2株式の譲渡(本件買収)P1は,原告との間で,平成21年2月23日,保有するP2の発行済株式全部を原告に対して450億円で譲渡する旨の株式譲渡契約を締結し,同月24日,譲渡代金の支払を受けるのと引換えに,保有するP2の発行済株式全部を譲渡した。なお,上記契約では,上記(イ)の株式売買契約に基づきP8の発行済株式全部の譲渡が実行されていることを条件としてP2の株式の譲渡及び譲渡代金の支払の義務を履行する旨の合意がされていた(甲13)。 オ本件合併(ア) 原告は,平成21年2月25日に開催された取締役会において,P2との合併を正式に決定した(甲59の1から3)。 (イ) 原告は,同日,原告を存続会社,P2を消滅会社とする吸収合併を行い,原告がP2の権利義務全部を承継し,P2が本件合併後に解散する旨の合併契約を締結し,本件合併は,同年3月30日に効力を生じた(甲14)。 (ウ) P7氏を除くP2の取締役は,本件合併に 併を行い,原告がP2の権利義務全部を承継し,P2が本件合併後に解散する旨の合併契約を締結し,本件合併は,同年3月30日に効力を生じた(甲14)。 (ウ) P7氏を除くP2の取締役は,本件合併に伴って全員退任し,いず-23-れの者も,本件合併の直後の時点では,原告の取締役には就任しなかった(甲4)。なお,本件合併後,P8は,データセンターに関する設備投資案件のうち,1億円を超えるものについては,原告の承認を要することとされた(甲111)。 カ本件合併等に係る税務上の問題についての検討状況(ア) 原告の担当者がP7氏に対し平成20年12月8日に送信した電子メール(乙27)には,「ご存知のとおり,P1としては適格会社分割を利用して税務メリットを取りたいというストラクチャーを提示してきていますが,当社側で検討を開始したところ,税務当局より租税回避行為とみられる可能性がかなり高く,慎重な検討が必要と考えております。P1とも細かな意見交換を今後して,租税リスクはなるべく軽減した形で取り組みたいと思っています。」と記載されていた。 また,P1の担当者が原告の担当者に対し平成20年12月10日に送信した電子メール(乙9の1)には,「税務ストラクチャー上の理由でP7CEOあるいはP23CFOにP3取締役に入っていただく必要があるとのことで,その件について等,何点かご相談させていただきたく考えております。」と記載されており,原告の担当者がP1の担当者に対し同月17日に送信した電子メール(乙9の3)には,「○取締役就任の件ですが,弊社CEOP7が就任する方向で進めさせていただきたく存じます。」と記載されていた。 さらに,平成20年12月16日付け「ディスカッション・ペーパー~DDの進め方について~」( ですが,弊社CEOP7が就任する方向で進めさせていただきたく存じます。」と記載されていた。 さらに,平成20年12月16日付け「ディスカッション・ペーパー~DDの進め方について~」(乙19)のスケジュール案には,「○役員を送り込む日」という書き込みがされていた。 (イ) 原告とP1の担当者が平成21年1月20日頃に行った協議(甲51)においては,原告側から,「現在の事業計画で価格の合理性を説明するには,250億(DCF法によるもの)+200億(NOL,すな-24-わち未処理欠損金額)=450億とし,NOL分を明確にして算定するしかない。DCFで保守的に計算すると100億程度の価値にしかならない。」旨の意見が出され,P1側からは,「企業価値が100億ということはあり得ない。」「表明保証でNOLの200億分を明確には記載したくない。契約で担保する方針であるが,契約書への表現方法については現在考えている。」などの意見が出された。 (ウ) 原告が監査法人から提出を受けた平成21年2月18日付け株式価値算定に関する報告書には,税務上の繰越欠損金については,原告において全額引継ぎ可能であるとの前提の下,価値算定を行っているが,税務当局の判断により,繰越欠損金の引継ぎに制限が加えられた場合,本評価結果と異なる結果となる可能性がある点,御留意いただきたいなどという記載があった(甲58)。 2 法132条の2の意義(争点1)について(1) 組織再編税制の基本的な考え方(乙6,14)経済の国際化が進展するなど,我が国企業の経営環境が急速に変化する中,企業の競争力を確保し,企業活力が十分発揮できるよう,旧商法の見直しが行われ,平成9年には合併法制の合理化,平成11年には持株会社創設のための株式交換・株式移転の 企業の経営環境が急速に変化する中,企業の競争力を確保し,企業活力が十分発揮できるよう,旧商法の見直しが行われ,平成9年には合併法制の合理化,平成11年には持株会社創設のための株式交換・株式移転の制度の導入,平成12年には企業の組織再編成を容易にするための会社分割法制の創設を内容とする改正が行われた。 税制においても,これらの法整備に則した対応が求められることとなったところ,政府税制調査会は,企業の組織再編成に係る税制について法人課税の在り方を検討し,平成12年10月,その基本的な考え方を明らかにした(「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」)。その概要は以下のとおりである。 ア現行の現物出資,合併等に係る税制を改めて見直し,全体として整合的な考え方に基づいて整備する必要がある。第一に,例えば分割型の吸収分-25-割と合併では法的な仕組みが異なるものの実質的には同一の効果を発生させることができるところ,同じ効果を発生させる取引に対して異なる課税を行うこととすれば,租税回避の温床を作りかねないなどの問題がある。第二に,現行の税制においては,営業譲渡により企業買収を行う場合には,資産の時価取引として譲渡益課税が行われるが,他方,合併により企業買収を行う場合には,課税が繰り延べられるなどの問題がある。 イ会社分割・合併等の組織再編成に係る法人税制の検討の中心となるのは,組織再編成により移転する資産の譲渡損益の取扱いと考えられるが,法人がその有する資産を他に移転する場合には,移転資産の時価取引として譲渡損益を計上するのが原則であり,この点については,組織再編成により資産を移転する場合も例外ではない。ただし,組織再編成により資産を移転する前後では経済実態に実質的な変更が無いと考えられる場合には,課税関係を継続 のが原則であり,この点については,組織再編成により資産を移転する場合も例外ではない。ただし,組織再編成により資産を移転する前後では経済実態に実質的な変更が無いと考えられる場合には,課税関係を継続させるのが適当と考えられる。したがって,組織再編成において,「移転資産に対する支配が再編成後も継続していると認められるもの」については,移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることが考えられる。すなわち,①企業グループ内の組織再編成により資産を企業グループ内で移転した場合には,一定の要件の下,移転資産をその帳簿価額のまま引き継ぎ,譲渡損益の計上を繰り延べることが考えられる。また,②共同で事業を行うために組織再編成により資産を移転した場合にも,移転の対価として取得した株式の継続保有等の要件を満たす限り,移転資産に対する支配が継続していると考え,譲渡損益の計上を繰り延べることが考えられる。 ウ会社分割・合併等により移転する資産の譲渡損益の計上が繰り延べられる場合には,その資産に関して適用される諸制度や引当金等の引継ぎについても,基本的に従前の課税関係を継続させるとの観点から,組織再編成の形態に応じて必要な措置を考えるべきである。このうち,繰越欠損金に-26-ついては,合併の場合には,租税回避行為を防止するための措置を講じた上,被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐことが適当である。 エ組織再編成の形態や方法は,複雑かつ多様であり,資産の売買取引を組織再編成による資産の移転とするなど,租税回避の手段として濫用されるおそれがあるため,繰越欠損金等を利用した租税回避行為の防止規定に加え,企業組織再編成に係る包括的な租税回避防止規定を設ける必要がある。 (2) 組織再編税制の概要(乙6)平成13年度税制改正(以下「本件改正」という。)における企業 税回避行為の防止規定に加え,企業組織再編成に係る包括的な租税回避防止規定を設ける必要がある。 (2) 組織再編税制の概要(乙6)平成13年度税制改正(以下「本件改正」という。)における企業組織再編成に係る税制の構築は,上記(1)の考え方に基づいて行われ,その内容は,これに沿ったものとなっているところ,本件に関連する部分の概要は以下のとおりである。 ア本件改正においては,①組織再編成により移転する資産等について,原則として,その譲渡損益を計上しなければならないこととし(法62条),②合併・分割・現物出資及び事後設立という4種類の組織再編成のうち,「企業グループ内の組織再編成」及び「共同事業を行うための組織再編成」であって一定の要件を満たすもの(適格組織再編成)について,帳簿価額の引継ぎによる課税の繰り延べが認められた(法62条の2以下)。 イまた,本件改正においては,欠損金の繰越控除について,従来の規定(法57条1項,58条1項)をほぼそのまま存続させることとした上で,組織再編税制の一環として,新しい規定を設け,適格合併又は合併類似適格分割型分割が行われた場合において,一定の範囲で繰越欠損金額(未処理欠損金額)等を引き継ぐこととができることとした(法57条2項)。もっとも,共同で事業を行うことを目的としないグループ内適格合併等について,グループ関係が生じる前に生じた被合併法人等の欠損金額等を繰越控除の対象から除外することによって,租税回避に対処することとした-27-(法57条3項)。 ウ法人の組織再編成においては種々の租税回避行為が行われることに鑑み,組織再編成に関する行為・計算の包括的否認規定が設けられた(法132条の2)。 すなわち,組織再編成を利用した租税回避行為の例として,①繰越欠損金や含み損のある会社 回避行為が行われることに鑑み,組織再編成に関する行為・計算の包括的否認規定が設けられた(法132条の2)。 すなわち,組織再編成を利用した租税回避行為の例として,①繰越欠損金や含み損のある会社を買収し,その繰越欠損金や含み損を利用するために組織再編成を行う,②複数の組織再編成を段階的に組み合わせることなどにより,課税を受けることなく,実質的な法人の資産譲渡や株主の株式譲渡を行う,③相手先法人の税額控除枠や各種実績率を利用する目的で,組織再編成を行う,④株式の譲渡損を計上したり,株式の評価を下げるために,分割等を行うなどの方法が考えられるところ,このうち,繰越欠損金や含み損を利用した租税回避行為に対しては,個別に防止規定(法57条3項,62条の7)を設けるが,これらの組織再編成行為は上記のようなものにとどまらず,その行為の形態や方法が相当に多様なものと考えられることから,これに適正な課税を行うことができるように包括的な組織再編成に係る租税回避防止規定が設けられた。 (3) 法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(以下「不当性要件」という。)の解釈についてア上記(1)及び(2)のとおり,①法132条の2は,組織再編税制の導入と共に設けられた個別否認規定と併せて新たに設けられた包括的否認規定であること,②組織再編税制において包括的否認規定が設けられた趣旨は,組織再編成の形態や方法は複雑かつ多様であり,ある経済的効果を発生させる組織再編成の方法は単一ではなく,同じ経済的効果を発生させ得る複数の方法があり,これに対して異なる課税を行うこととすれば,租税回避の温床を作りかねないという点などにあることが認められる。そして,組織再編税制に係る個別規定は,特定の行為や事実の存否を要件とし-28- があり,これに対して異なる課税を行うこととすれば,租税回避の温床を作りかねないという点などにあることが認められる。そして,組織再編税制に係る個別規定は,特定の行為や事実の存否を要件とし-28-て課税上の効果を定めているものであるところ,立法時において,複雑かつ多様な組織再編成に係るあらゆる行為や事実の組み合わせを全て想定した上でこれに対処することは,事柄の性質上,困難があり,個別規定の中には,その想定外の行為や事実がある場合において,当該個別規定のとおりに課税上の効果を生じさせることが明らかに不当であるという状況が生じる可能性があるものも含まれているということができる。 以上のような法132条の2が設けられた趣旨,組織再編成の特性,個別規定の性格などに照らせば,同条が定める「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,(ⅰ)法132条と同様に,取引が経済的取引として不合理・不自然である場合(最高裁昭和50年(行ツ)第15号同52年7月12日第三小法廷判決・裁判集民事121号97頁,最高裁昭和55年(行ツ)第150号同59年10月25日第一小法廷判決・裁判集民事143号75頁参照)のほか,(ⅱ)組織再編成に係る行為の一部が,組織再編成に係る個別規定の要件を形式的には充足し,当該行為を含む一連の組織再編成に係る税負担を減少させる効果を有するものの,当該効果を容認することが組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるものも含むと解することが相当である。このように解するときは,組織再編成を構成する個々の行為について個別にみると事業目的がないとはいえないような場合であっても,当該行為又は事実に個別規定を形式的に適用したときにもたらされる税負担減少効果が,組織再編成全体としてみた場 を構成する個々の行為について個別にみると事業目的がないとはいえないような場合であっても,当該行為又は事実に個別規定を形式的に適用したときにもたらされる税負担減少効果が,組織再編成全体としてみた場合に組織再編税制の趣旨・目的に明らかに反し,又は個々の行為を規律する個別規定の趣旨・目的に明らかに反するときは,上記(ⅱ)に該当するものというべきこととなる。 イこれに対し,原告は,法132条の2の不当性要件は,法132条と同様に,上記(ⅰ)の場合,すなわち,私的経済取引として異常又は変則的-29-で,かつ,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合に限られる旨主張し,その理由として,①法132条の枝番として132条の2が規定され,両者の規定ぶりが酷似し,否認の要件の文言も同様であることなどから,両者を別異に解すべき理由はないこと,②租税回避の概念は,私法上の選択可能性を利用し,私的経済取引として合理性がないのに,通常用いられない法形式を選択するものとして定義されており,法の定める課税要件自体を修正するものは含まれず,法制度の濫用はこれとは別の概念であるというべきこと,③上記(ⅱ)を含めるという解釈は,個別規定の要件を実質的に拡張して適用するものであり,納税者の予測可能性を著しく害し,租税法律主義に反することを指摘し,これに沿う意見書を提出する(甲113(P24意見書),甲114(P25意見書),甲115(P26意見書),甲122(P27意見書),甲12,142(P28意見書),甲148(P37意見書),甲149(P29意見書))。 しかしながら,上記(2)ウのとおり,法132条の2により対処することが予定されている第1の類型は,繰越欠損金等を利用する組織再編成における租税回避行為であるところ,そもそも,繰 29意見書))。 しかしながら,上記(2)ウのとおり,法132条の2により対処することが予定されている第1の類型は,繰越欠損金等を利用する組織再編成における租税回避行為であるところ,そもそも,繰越欠損金自体には資産性はなく,それが企業間の合併で取引の対象となり得るのは,租税法がその引継ぎを認めることの反射的な効果にすぎないのであり,企業グループ内における繰越欠損金の取引を含む組織再編成それ自体についていかに正当な理由や事業目的があったとしても,法57条3項が定める要件を満たさないのであれば,未処理欠損金額の引継ぎは認められない。したがって,上記の類型に属する租税回避行為の不当性の有無については,経済合理性の有無や事業目的の有無といった基準によって判断することはできず,「租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる」か否かという基準は,それのみを唯一の判断基準とすることは適切で-30-はないといわざるを得ない。 また,上記基準を採るべき理由として挙げられている①の点について検討するに,法132条は,同族会社においては,所有と経営が分離している会社の場合とは異なり,少数の株主のお手盛りによる税負担を減少させるような行為や計算を行うことが可能であり,また実際にもその例が多いことから,税負担の公平を維持するため,同族会社の経済的合理性を欠いた行為又は計算について,「不当に減少させる結果となると認められるもの」があるときは,これを否認することができるものであるとしたものであり,法132条の2とはその基本的な趣旨・目的を異にする。したがって,両者の要件を同義に解しなければならない理由はなく,原告の上記①の主張は採用することができない。 次に,②の点について検討するに,法132条の2により対処することが予定されている第 。したがって,両者の要件を同義に解しなければならない理由はなく,原告の上記①の主張は採用することができない。 次に,②の点について検討するに,法132条の2により対処することが予定されている第2の類型は,複数の組織再編成を段階的に組み合わせることなどによる租税回避行為であるところ,組織再編成の形態や方法は,複雑かつ多様であり,同一の経済的効果をもたらす法形式が複数存在し得ることからすると,そもそも,ある経済的効果を発生させる組織再編成の方法として何が「通常用いられるべき」法形式であるのかを,経済合理性の有無や事業目的の有無という基準により決定することは困難であり,これらの基準は,上記の類型に属する租税回避行為の判定基準として十分に機能しないものといわざるを得ない。他方,組織再編税制に係る個別規定は,特定の行為や事実の存否を要件として課税上の効果を定めているものであるところ,立法時において,複雑かつ多様な組織再編成に係るあらゆる行為や事実の組み合わせを全て想定した上でこれに対処することは,事柄の性質上,困難があり,想定外の行為や事実がある場合には,当該個別規定を形式的に適用して課税上の効果を生じさせることが明らかに不当であるという状況が生じる可能性があることは上記アで判示し-31-たとおりである。組織再編成とそれに伴い生じ得る租税回避行為に係るこれらの特性に照らすと,同条の適用対象を,通常用いられない異常な法形式を選択した租税回避行為のみに限定することは当を得ないというべきである。したがって,原告の上記②の主張は採用することができない。 さらに,③の点について検討するに,一般に,法令において課税要件を定める場合には,その定めはなるべく一義的で明確でなければならず,このことが租税法律主義の一内容であるとされているところ,これは, さらに,③の点について検討するに,一般に,法令において課税要件を定める場合には,その定めはなるべく一義的で明確でなければならず,このことが租税法律主義の一内容であるとされているところ,これは,私人の行う経済取引等に対して法的安定性と予測可能性を与えることを目的とするものと解される。もっとも,税法の分野においても,法の執行に際して具体的事情を考慮し,税負担の公平を図るため,何らかの不確定概念の下に課税要件該当性を判断する必要がある場合は否定できず(法132条がその典型例であるということができる。),このような場合であっても,具体的な事実関係における課税要件該当性の判断につき納税者の予測可能性を害するものでなければ,租税法律主義に反するとまではいえないと解されるところである。しかるところ,法132条の2は,上記(ⅱ)のとおり,税負担減少効果を容認することが組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるものに限り租税回避行為に当たるとして否認できる旨の規定であると解釈すべきものであり,このような解釈は,納税者の予測可能性を害するものではないから,これをもって租税法律主義に反するとまではいえないというべきである。 この点に関する原告の上記③の主張は採用することができない。 なお,法132条の2を上記のように解釈するとしても,その具体的な適用の在り方(すなわち,包括的否認規定の適用を行えるかどうか)は,当該事案において否認された行為を規律する個別規定の趣旨・目的に応じて定まるものであるというべきであり,当該個別規定の趣旨・目的の内容によっては,形式的な適用を貫くべき場合もあるということができる。本-32-件で問題となる個別規定については,後記3(1)から(3)までにおいて検討する。 (4) 「その法人 の趣旨・目的の内容によっては,形式的な適用を貫くべき場合もあるということができる。本-32-件で問題となる個別規定については,後記3(1)から(3)までにおいて検討する。 (4) 「その法人の行為又は計算」の意義についてア法132条の2は,税務署長は,合併等(合併,分割,現物出資若しくは事後設立又は株式交換若しくは株式移転)に係る「次に掲げる法人」の法人税につき更正又は決定をする場合において,「その法人の行為又は計算」で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,「その法人に係る法人税」の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる旨規定する。 同条の適用対象は,合併,分割,現物出資若しくは事後設立又は株式交換若しくは株式移転という各種の組織再編成が行われ,これらの合併等をした一方の法人又は他方の法人(同条1号),これらの合併等により交付された株式を発行した法人(同条2号),前二号に掲げる法人の株主等である法人(同条3号)に対して更正又は決定がされる場合とされているところ,同条3号との関係においては,合併等をした一方又は他方の法人の行為を否認して,その株主等(法2条14号)の法人税につき更正又は決定をする場合を予定していると解される。したがって,同条の規定は,否認することができる行為又は計算の主体である法人と法人税につき更正又は決定を受ける法人とが異なる場合も予定しているということができる。 また,同条の文言上,否認の対象とすることができる「その法人の行為又は計算」の「その法人」とは,その前の「次に掲げる法人」を受けていると解釈することができるから,「その法人の行為又は計算」とは,「次 た,同条の文言上,否認の対象とすることができる「その法人の行為又は計算」の「その法人」とは,その前の「次に掲げる法人」を受けていると解釈することができるから,「その法人の行為又は計算」とは,「次に掲げる法人」の行為又は計算,すなわち,同条各号に掲げられている法人の行為又は計算を意味するものと解される。そして,その後の「その法-33-人に係る法人税」の「その法人」は,同条各号に掲げられている法人であって,法人税につき更正又は決定を受けるものを意味するものと解釈することができるから,「その法人に係る法人税」は,更正又は決定を受ける法人に係る法人税を意味するものと解される。 さらに,平成19年法律第6号による改正前の法人税法132条の2は,税務署長は,合併等をした一方の法人若しくは他方の法人又はこれらの法人の株主等である法人の法人税につき更正又は決定をする場合において,「これらの法人」の行為又は計算で,これを容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる旨規定していた。上記の改正により,同条の規定の対象となる法人に,いわゆる三角合併の場合における合併法人の親法人等が追加され,同条の規定の対象となる法人が同条各号において掲げられることとなったものであるが,上記の改正が,同条の規定により否認することができる行為又は計算の主体である法人と法人税につき更正又は決定を受ける法人との関係を変更することを意図してされたことはうかがわれない。 以上の点に加え,組織再編成の形態や方法の多様化に対応するために設けられたという同条の趣旨に鑑みれば,法132条の2の 受ける法人との関係を変更することを意図してされたことはうかがわれない。 以上の点に加え,組織再編成の形態や方法の多様化に対応するために設けられたという同条の趣旨に鑑みれば,法132条の2の「その法人の行為又は計算」の「その法人」は,その前の「次に掲げる法人」を受けており,「その法人の行為又は計算」は,「次に掲げる法人」の行為又は計算と読むべきであって,同条の規定により否認することができる行為又は計算の主体である法人と法人税につき更正又は決定を受ける法人とは異なり得るものと解すべきである。 イこれに対し,原告は,同条の規定により否認することができる行為又は-34-計算は,「法人税につき更正又は決定」を受ける法人の行為又は計算のみであると主張する。 しかしながら,同条の文言について,原告の主張のとおり解釈しなければならないものではないことは上記アで判示したとおりである。また,同条は,同族会社に関する法132条とはその基本的な趣旨・目的を異にすることは上記イで判示したとおりであるから,法132条の適用上,否認対象が同族会社の行為に限定されると解釈すべきであるとしても,法132条の2についてこれと同一の解釈をしなけばならないとまではいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 3 施行令112条7項5号の要件を充足する本件副社長就任について,法132条の2の規定に基づき否認することができるか否か(争点2)について(1) 法57条2項及び3項の趣旨ア法57条1項は,確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には,当該欠損金額に相当する金額は,当該各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する旨規定する(青色申告 法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には,当該欠損金額に相当する金額は,当該各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する旨規定する(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)。 この欠損金額の繰越しは,本件改正以前から,1つの法人において各事業年度の所得に対する課税の原則を貫いたときには税負担が加重になることを緩和するために設けられていた制度であるが,本件改正前においては,被合併法人が有する欠損金額を合併法人が引き継いで,これを合併法人の所得から控除することは認められていなかった。すなわち,最高裁昭和39年(行ツ)第32号同43年5月2日第一小法廷判決・民集22巻5号1067頁は,「欠損金額の繰越控除は,それら事業年度の間に経理方法に一貫した同一性が継続維持されることを前提としてはじめて認め-35-るのを妥当とされる性質のものなのであつて,合併会社に被合併会社の経理関係全体がそのまま継続するものとは考えられない合併について,所論の特典の承継は否定せざるをえない。合併会社とは無関係な経営のもとに生じた被合併会社の既往の欠損金額を合併によりこれと経営を異にする合併会社に承継利用させる合理的な理由は,通常の場合見いだしがたく,また被合併会社の欠損金額は,合併会社において受入資産の価額の定め方によつて当然調整できるものであるから,普通には欠損金額の引継などを考慮する要もないのである。結局,合併による欠損金額の引継,その繰越控除の特典の承継のごときは,立法政策上の問題というべく,それを合理化するような条件を定めて制定された特別な立法があつてはじめて認めうるものと解するのが相当である」と判示していた。 イこれに対し,本件改正においては,①企業グループ内の適格合併(法2条12号 理化するような条件を定めて制定された特別な立法があつてはじめて認めうるものと解するのが相当である」と判示していた。 イこれに対し,本件改正においては,①企業グループ内の適格合併(法2条12号の8イ,ロ)及び②共同事業を営むための適格合併(法2条12号の8ハ)について,被合併法人の有する未処理欠損金額の引継ぎを認めることとした。すなわち,法57条2項は,適格合併等が行われた場合において,当該適格合併等に係る被合併法人等の当該適格合併等の日前7年内事業年度において生じた欠損金額(未処理欠損金額)があるときは,合併法人等の合併等事業年度以後の各事業年度における同条1項の規定の適用については,当該前7年内事業年度において生じた前7年内事業年度開始の日の属する当該合併法人等の各事業年度において生じた欠損金額とみなす旨規定した。 もっとも,上記②の共同事業を営むための適格合併に比べて,上記①の企業グループ内の適格合併については,適格合併に該当するための要件が緩和されており,例えば,未処理欠損金額を有するグループ外の法人を買収して当該法人を完全子会社として取り込んだ上で,当該法人を吸収する適格合併を行うことにより,容易に,当該法人の未処理欠損金額を引き継-36-ぐことができることとなる。しかるに,企業グループ内の合併では,親会社の意向次第では異常な取引が行われる可能性があること,また,合併後,当該法人が行っていた移転対象事業について継続の見込みがなく,移転資産に対する支配が継続することもなく,単に資産の売買にとどまるような場合など,未処理欠損金額の引継ぎを認める実質的な根拠を欠く場合が生じる可能性があるということができる。このように,企業グループ内の適格合併については,未処理欠損金額の引継ぎを無制限に認めることには課税上の弊害があ 損金額の引継ぎを認める実質的な根拠を欠く場合が生じる可能性があるということができる。このように,企業グループ内の適格合併については,未処理欠損金額の引継ぎを無制限に認めることには課税上の弊害があるという見地から,その範囲につき制限が加えられることとされた(乙6(平成13年改正税法のすべて),11,15)。 すなわち,法57条3項において,適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等との間に特定資本関係が発生してから5年以内に行われる適格合併については,「共同で事業を営むための適格合併等」として政令で定めるものに該当するときに限り,被合併法人等の未処理欠損金額を合併法人等が引き継ぐことを認めることが定められた。このように,同項は,繰越欠損金額が租税回避に利用されることを防止するために設けられた個別否認規定であると解される(乙6)。 (2) 施行令112条7項5号の趣旨ア法57条3項を受けて定められた施行令112条7項は,未処理欠損金額の引継ぎが認められるような「共同で事業を営むための適格合併等」に当たるか否かを判定するため,2つの類型を設け,(A)同項1号から4号までに掲げる要件,すなわち,事業の相互関連性要件(同項1号),事業規模要件(同項2号),被合併等事業の同等規模継続要件(同項3号)及び合併等事業の同等規模継続要件(同項4号)のいずれをも満たす場合か,(B)同項1号及び5号に掲げる要件,すなわち,事業の相互関連性要件(同項1号)及び特定役員引継要件(同項5号)のいずれをも満たす場合については,「共同で事業を営むための適格合併等」に当たる旨を規-37-定している。 同項の規定は,企業グループ内の適格合併については一切未処理欠損金額の引継ぎを認めないとした場合には,本件改正当時に実際に想定されていた金融機関等の組織再 」に当たる旨を規-37-定している。 同項の規定は,企業グループ内の適格合併については一切未処理欠損金額の引継ぎを認めないとした場合には,本件改正当時に実際に想定されていた金融機関等の組織再編成に不都合を来すおそれがあるとの指摘があったことから,そのような現実の要請に合わせて設けられたものであり,「みなし共同事業要件」と称されている(乙15)。 イ同項の定める要件のうち,上記(A)の類型においては,事業の相互関連性要件(同項1号)のほか,①被合併法人等の被合併事業と合併法人等の合併事業の事業規模(売上金額,従業員数,資本金など)の差がおおむね5倍を超えないこと(同項2号),②双方の法人において被合併事業又は合併事業が特定資本関係発生時から合併等の直前まで継続して営まれ,かつ,その間の事業規模の差がおおむね2倍を超えないことが要件とされている。上記①の要件は,一般に,大規模な会社が小規模な会社を合併する場合,共同で事業を営むことを目的とするものとは考えられず,むしろ,当該合併は小規模な会社が有する未処理欠損金額を取り込むことによって租税負担を軽減することを目的とするものと考えられることから,そのような合併を租税回避に利用することを防止する趣旨で設けられた「事業規模要件」であると解され,また,上記②の要件は,一般に,特定資本関係発生後,合併に至るまでの間,双方の法人の事業の経済実態に実質的な変更がある場合は,未処理欠損金額を含め従前の課税関係を継続させるべき基礎を欠くものとなると考えられることから,そのような合併を租税回避に利用することを防止する趣旨で設けられた「事業継続要件」であると解されるところであり(乙15),これらの要件を満たせば,双方の法人の従来の事業が合併の前後において継続しており合併後には共同で事業が営まれてい とを防止する趣旨で設けられた「事業継続要件」であると解されるところであり(乙15),これらの要件を満たせば,双方の法人の従来の事業が合併の前後において継続しており合併後には共同で事業が営まれているとみることができ,特定資本関係発生時から5年以内に行われる適格合併であっても,課税上の弊害が少ないということができるこ-38-とから,未処理欠損金額の引継ぎを認めることとしたものと解される。 また,上記(B)の類型においては,事業の相互関連性要件(同項1号)のほか,被合併法人等の特定役員のいずれかの者と合併法人等の合併等の前における特定役員のいずれかの者が合併後においても特定役員となることが見込まれていることが要件とされている(「特定役員引継要件」)。 これは,事業規模要件及び事業継続要件の点において施行令112条7項2号から4号までの要件が充足されない場合であっても,一般に,合併法人のみならず被合併法人の特定役員が合併後において特定役員に就任するのであれば,合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続していると評価することが可能であって,合併後も共同で事業が営まれているとみることができ,特定資本関係発生時から5年以内に行われる適格合併であっても,課税上の弊害が少ないということができることから,未処理欠損金額の引継ぎを認めることとしたものと解される。 (3) 施行令112条7項5号に係る法132条の2の適用の在り方ア以上で判示した法57条2項及び3項並びに施行令112条7項5号の趣旨に鑑みると,本件改正により導入された組織再編税制においては,従来は認められていなかった合併における未処理欠損金の引継ぎを一定の範囲で認めることとしたが,企業グループ内の適格合併における未処理欠損金額の引継ぎについては,租税回避に利用され得ることを念頭にお 従来は認められていなかった合併における未処理欠損金の引継ぎを一定の範囲で認めることとしたが,企業グループ内の適格合併における未処理欠損金額の引継ぎについては,租税回避に利用され得ることを念頭において,なお制限的に認めるにとどめ,適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等との間に特定資本関係が発生してから5年以内に行われる適格合併については,「共同で事業を営むための適格合併等」として政令で定める例外要件(みなし共同事業要件)に該当しない限り,被合併法人等の未処理欠損金額を合併法人等が引き継ぐことはできないこととした上,企業グループ内の適格合併が,双方の法人の従来の事業が合併の前後において継続しており合併後には共同で事業が営まれているとみることができる-39-ものであるか否かを判定するため,みなし共同事業要件として,事業関連性要件のほか,規模要件及び事業継続要件を要求する上記(A)の類型と,特定役員引継要件を要求する上記(B)の類型を設けて,被合併法人等の未処理欠損金額を合併法人等が引き継ぐことを認めたものということができる。 そして,上記判示のとおり,特定役員引継要件は,一般に,合併法人のみならず被合併法人の特定役員が合併後において特定役員に就任するのであれば,合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続していると評価することが可能であるという考え方を基礎として設けられたものと解される。 しかしながら,特定役員引継要件は,単に,役員又は特定役員への就任の有無及びその特定資本関係発生等との先後関係のみを問題とするにすぎないものであり,合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続しているか否かの指標として,常に十分にその機能を果たすものとまではいい難い。また,①法57条3項は,特定資本関係の発生後5年を経過することなく合 あり,合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続しているか否かの指標として,常に十分にその機能を果たすものとまではいい難い。また,①法57条3項は,特定資本関係の発生後5年を経過することなく合併等を行った場合には被合併法人の未処理欠損金額を引き継ぐことを原則として制限しているのに,単に特定役員引継要件さえ充足すればその制限を解除することができるとすれば,具体的事情如何によっては均衡を欠く場合も生じ得ること,②共同で事業を営むための適格合併等については,法57条2項により,未処理欠損金額を引き継ぐことが認められているが,その場合は,役員引継要件のほか,従業者に関する要件,事業の継続に関する要件などの充足が求められているのに(法2条12号の8ハ,施行令4条の2第4項),みなし共同事業要件においては,特定役員引継要件のみで足りることとされ,この点でも具体的事情如何によっては均衡を欠く場合も生じ得ることからすると,特定役員引継要件を形式的に適用するだけでは,課税の公平を実現することができないおそれがある-40-ということができる。加えて,①みなし共同事業要件に係る特定役員引継要件と同様の文言が用いられている共同事業を営むための適格合併の要件に関連して,立法担当者らは,本件改正に合わせて出版された「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」(同書90頁)において,「共同事業を行うための分割の要件の一つに,役員の引継ぎの要件がありますが,具体的な任期の目安はあるのでしょうか」との質問に対し,「法令上,具体的な任期や期間が示される予定はありません。課税の特例の適用を受けるために,短期間だけ役員にするといったような不自然,不合理なものは別にして,通常の法人と役員との関係を念頭に置き,判断されるべきものと考えられます。」との回答をしていたこ 。課税の特例の適用を受けるために,短期間だけ役員にするといったような不自然,不合理なものは別にして,通常の法人と役員との関係を念頭に置き,判断されるべきものと考えられます。」との回答をしていたこと(乙11・14頁,弁論の全趣旨),また,②税制調査会の構成員が帰属する財界団体の実務担当者は,本件改正当時に行った「改正の経緯と残された課題」と称する講演において,共同で事業を営むための適格合併等の要件として設けられた役員引継要件に触れ,「小さい方からも常務になる人が出て,通常の役員任期である一期二年を勤めればよいのです」と発言していたこと(乙15),③税務関係雑誌においても,特定役員引継要件については「形式的に基準をクリアすればいいというものではないと考えられている」旨の記事が掲載されていること(甲118)からすると,役員引継要件の意味するところについては,本件改正当時から,議論の余地が少なからず残されており,単にそれを形式的に満たすだけでは否認される可能性があることが明らかにされていたということができる。 これらのことを勘案すれば,みなし共同事業要件に係る特定役員引継要件が,特定役員引継要件に形式的に該当する事実さえあれば,組織再編成に係る他の具体的な事情を一切問わずに(すなわち,例えば,①特定資本関係発生以前の時期における当該役員の任期,②当該役員の職務の内容,③合併後における当該役員以外の役員の去就,④合併後における事業の継-41-続性や従業員の継続性の有無,⑤合併により引き継がれる事業自体の価値と未処理欠損金額との多寡,⑥被合併法人と合併法人の事業規模の違いなどの事情を一切問わずに),未処理欠損金額の引継ぎを認めるべきものとして定められたとはいえず,特定役員引継要件に形式的に該当する事実があるとしても包括否認規定を適用 法人と合併法人の事業規模の違いなどの事情を一切問わずに),未処理欠損金額の引継ぎを認めるべきものとして定められたとはいえず,特定役員引継要件に形式的に該当する事実があるとしても包括否認規定を適用することは排除されないと解することが相当である。 以上の点と,上記2(3)で判示したところを総合すれば,施行令112条7項5号が定める特定役員引継要件については,それに形式的に該当する行為又は事実がある場合であっても,それにより課税上の効果を生じさせることが明らかに不当であるという状況が生じる可能性があることを前提に規定されたものであるというべきであるから,組織再編成に係る他の具体的な事情(上記で例示したもののほか,事案によってはそれ以外の事情も含まれ得る。)を総合考慮すると,合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続しているとはいえず,同号の趣旨・目的に明らかに反すると認められるときは,法132条の2の規定に基づき,特定役員への就任を否認することができると解すべきである。 イこれに対し,原告は,施行令112条7項5号は,特定役員と被合併事業との結び付きを一切要求しておらず,特定役員と被合併事業との結び付きを認める解釈は認める余地がないと主張し,これに沿うものとして,P25意見書(甲114)がある。 しかしながら,同号の趣旨は,合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続していると評価できる場合には,未処理欠損金額の引継ぎを認めても課税上の弊害が少ないことから,引継ぎを認めることとしたものであり,同号の定める特定役員引継要件は,合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続していると評価するための指標として定められたものであると解すべきことは上記アで判示したとおりである。これと異なる原告-42-の上記主張は採用することができない。 通じて移転資産に対する支配が継続していると評価するための指標として定められたものであると解すべきことは上記アで判示したとおりである。これと異なる原告-42-の上記主張は採用することができない。 また,原告は,法57条3項及び施行令112条7項5号のような個別否認規定(租税回避行為の防止規定)は,租税回避行為を防止するために,立法者が様々な政策判断の結果として設定した要件を規定するものであるから,課税要件を充足しないため否認できない取引に対して,重ねて包括的否認規定を適用し,当該取引を税務上否認することは許されないというべきであると主張する。 この点,確かに,個別否認規定が定める要件の中には,法57条3項が定める5年の要件など,未処理欠損金額の引継ぎを認めるか否かについての基本的な条件となるものであって,当該要件に形式的に該当する行為又は事実がある場合にはそのとおりに適用することが当該規定の趣旨・目的に適うことから,包括的否認規定の適用が想定し難いものも存在することは否定できない。しかしながら,施行令112条7項5号はそれと異なる性格を有するものと解すべきであることは上記アで判示したとおりである。これと異なる原告の上記主張は採用することができない。 さらに,原告は,本件副社長就任のような行為が行われることは予め想定できるにもかかわらず,施行令112条7項5号においてそれが規制されていないとすれば,立法者が規制対象とすべきではないという政策判断の下に立法したか,又は立法に至らない点があったかのいずれかであることを意味し,後者の場合,個別否認規定の文言を拡張し又は縮小し書き換える形で法132条の2を適用することは違法であり,納税者にその不利益を帰することは許されない旨主張する。 しかしながら,本件副社長就任のような行為を 合,個別否認規定の文言を拡張し又は縮小し書き換える形で法132条の2を適用することは違法であり,納税者にその不利益を帰することは許されない旨主張する。 しかしながら,本件副社長就任のような行為を含む本件における一連の組織再編成が行われる可能性を念頭において特定役員引継要件が設けられたことを認めるに足りる的確な証拠はない。他方,施行令112条7項5号が定める特定役員引継要件を形式的に適用するだけでは課税の公平-43-を実現することができないおそれがあるという懸念は本件改正当時から明らかにされていたことは上記アで判示したとおりであること,そして,本件改正では組織再編成を利用した租税回避行為の代表例として未処理欠損金額の引継ぎによるものが念頭に置かれて法132条の2の包括的否認規定が設けられたことは上記2(2)ウのとおりであることからすると,同条の適用による結果として,施行令112条7項5号が定める要件を形式的に充足する場合にその充足による効果が否定されることになるとしても,これをもって違法であるということはできない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 本件の組織再編成における不当性要件の充足の有無についてア本件の組織再編成に係る具体的な事情をみると,上記1の認定事実によれば,①P2は,データセンター事業を行っていたところ,平成20年3月頃,その設備資金の調達と,未処理欠損金額の有効利用を行うことを目的として,分社を含む株式上場計画を策定したこと(上記1(1)イ,ウ),②これに対し,親会社であるP1は,P2には上場するのに適切な企業価値が不足している上,上記計画では未処理欠損金額の一部しか利用できていないとの指摘を行い,財務部において,未処理欠損金額の全額を有効に利用できるよう,P1の子会社間における 上場するのに適切な企業価値が不足している上,上記計画では未処理欠損金額の一部しか利用できていないとの指摘を行い,財務部において,未処理欠損金額の全額を有効に利用できるよう,P1の子会社間における非適格合併等と適格合併を併用した組織再編成(事業譲渡案,単純分社化案等)の手順を案出したこと(同エ),③P6氏は,同年10月中旬頃,上記手順の説明を受けたが,P1の子会社間でデータセンターを集約するのではなく,P2のデータセンターを原告の自社保有とすることにより原告のインターネットサービスの競争力を向上させることが適切であることなどから,原告にP2を売却すべきであるとの考えを表明し,このことを前提として,P1において,原告による本件買収,本件合併などから構成される本件提案を作成したところ,本件提案は,P1の資金需要の一助となるものであり,また,P2の-44-未処理欠損金額を有効に利用し尽くすことができるものであったこと(上記1(2)アからウまで),④P1は,原告に対し,同月27日,本件提案を行い,原告は,これを受けて,従前の方針を転換してデータセンターを自社保有するかどうかの検討を開始したこと(同エ),⑤P7氏は,P6氏から,同年11月27日,P2の取締役副社長に就任するように依頼を受け,これを了解し,P13氏も,同年12月10日頃,P7氏がP2の取締役副社長に就任することを了解したこと,そして,P7氏は,同月26日,P2の副社長に就任したところ,これにより,本件合併において原告がP2の未処理欠損金額を引き継ぐために充足することが必要な特定役員引継要件を満たし得る状態となったこと,他方,P13氏やP20氏については,当時,原告の役員に就任する事業上の必要性がないとされ,本件合併直後に原告の取締役となることは予定されていなかったこと(上 引継要件を満たし得る状態となったこと,他方,P13氏やP20氏については,当時,原告の役員に就任する事業上の必要性がないとされ,本件合併直後に原告の取締役となることは予定されていなかったこと(上記(3)ア),⑥P7氏は,副社長就任後,本件提案の内容に沿って,P2に関する職務を一定程度遂行したこと(同イ),⑦P6氏は,平成21年1月15日,本件買収におけるP1としての最低譲渡価額が450億円であることを伝え,同月中には,P1及び原告の双方の取締役会で本件提案についての詳細な検討が行われ,P7氏は,同月30日頃までには,本件買収及び本件合併を行う意思を固めつつあったこと(同エ),⑧同年2月2日に効力を生じた本件分割により,P2は,データセンターを構成する不動産やそれに関連する契約上の地位の主体となり,データセンターの営業や開発はP8が担うこととなり,P2の従業員は全てP8に雇用されることとなったこと(同ウ),⑨原告は,同月24日,P2株式の譲渡を受け,本件買収を行ったところ,原告とP1との間において,本件買収金額450億円のうち200億円は繰越決算金の価値と認識されていたこと(同エ,カ),⑩さらに,原告は,同年3月30日,本件合併を行い,P2の権利義務を全部承継したが,P13氏やP20氏は原告の取締役に-45-就任することはなく,データセンターに関する設備投資案件についてのP8の権限も限定されることとなったこと(同オ)が認められる。 イ以上で認定した本件の組織再編成に係る具体的な事情を検討すると,以下の点を指摘することができる。 まず,特定役員引継要件(施行令112条7項5号)の観点からみると,①P7氏が副社長に就任してから本件買収により特定資本関係が発生するに至るまでの期間はわずか約2か月であり,極めて短い。また,②P7 ず,特定役員引継要件(施行令112条7項5号)の観点からみると,①P7氏が副社長に就任してから本件買収により特定資本関係が発生するに至るまでの期間はわずか約2か月であり,極めて短い。また,②P7氏がP2の副社長に就任したのは本件買収及び本件合併に係る本件提案を受けた後であること,P7氏がP2の副社長として実際に行った職務の内容は本件提案に沿ったものであり,本件提案と離れて,P2における従来のデータセンター事業に固有の業務に関与していたとは認められないこと,P7氏は,副社長就任の約1か月後には本件買収及び本件合併を行う意思を固めつつあったことに照らすと,P7氏は,上記の2か月の間,本件買収後に予定されていた事業の経営とは無関係に,P2の従来のデータセンター事業に固有の経営に関与していたと評価することはできない。 ③他方,P2がデータセンター事業を開始して以来,P2の経営を担ってきたP13氏などの役員は,いずれも,本件合併後,原告の役員には就任することが予定されておらず,原告の役員に就任する事業上の必要性がないとされ,実際にも就任せず,データセンターの設備投資に関する権限も縮小されたことが認められる。以上の諸点からすると,本件においては,特定役員引継要件が形式的には充足されてはいるものの,役員の去就という観点からみて,「合併の前後を通じて移転資産に対する支配が継続している」という状況があるとはいえず,施行令112条7項5号が設けられた趣旨に全く反する状態となっていることは明らかである。 また,法57条3項にいう「共同で事業を営むための適格合併等」に当たるとされる施行令112条7項の2号から4号までとの関係でみると,-46-④本件合併により原告が承継したのは,本件分割後のP2であるところ,承継された資産等の内容は,データセンターを 併等」に当たるとされる施行令112条7項の2号から4号までとの関係でみると,-46-④本件合併により原告が承継したのは,本件分割後のP2であるところ,承継された資産等の内容は,データセンターを構成する不動産やそれに関連する契約上の地位に限られ,従業員との契約は承継されず,営業・開発部門もないものであることからすると,本件合併により,本件分割前のP2が従来行っていたデータセンター事業が事業として承継された(すなわち,その経済実態に変更がない)とみることは困難である。また,⑤本件買収の対価は450億円であるところ,そのうちの200億円が未処理欠損金額の価値とされるものであって,事業自体の価値とはいえない部分が約半分を占めるものである。さらに,⑥原告とP2とでは,企業規模に大きな差があり,資本金で70倍以上,営業利益で50倍以上,売上高で20倍以上の格差があって,共同の事業を営むための適格合併等において求められる規模要件(施行令112条7項2号)を満たしようもない状況にある。以上の諸点からすると,本件合併は,その実質において,共同で事業を営むためのものとはいえず,単なる資産の売買にとどまるものと評価することが妥当なものであって,法57条3項にいう「共同で事業を営むための適格合併等」としての性格が極めて希薄であることが明らかであるといわざるを得ない。 加えて,⑦本件合併を含む本件提案は,その出発点において,P2の未処理欠損金額を余すことなく処理することを1つの目的にしたものであること,⑧本件合併に当たり,原告とP1との間では,税務上,本件合併により未処理欠損金額の引継ぎが認められるかどうかについて明示的な検討が行われ,取引に係る契約書のほかに,差入書が作成されて,未処理欠損金額の引継ぎが認められない場合の対処方法が合意されていたこと により未処理欠損金額の引継ぎが認められるかどうかについて明示的な検討が行われ,取引に係る契約書のほかに,差入書が作成されて,未処理欠損金額の引継ぎが認められない場合の対処方法が合意されていたことに照らすと,原告とP1においては,未処理欠損金額の引継ぎが認められない可能性が相当程度あることを認識していたということができる。 以上のような本件における諸事情を総合勘案すると,本件副社長就任-47-は,特定役員引継要件を形式的に充足するものではあるものの,それによる税負担減少効果を容認することは,特定役員引継要件を定めた施行令112条7項5号が設けられた趣旨・目的に反することが明らかであり,また,本件副社長就任を含む組織再編成行為全体をみても,法57条3項が設けられた趣旨・目的に反することが明らかであるということができる。 したがって,本件副社長就任は,法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当すると解することが相当である。 ウこれに対し,原告は,上記イ②の点に関し,P7氏はP2の副社長に就任した後,P2の事業に係る職務を行っていたものであると主張し,これに沿う証人P7の供述部分がある。 確かに,P7氏の副社長としての職務は,本件合併後に予定されている原告とP2(P8)との事業に向けられたものであり,P2の従来のデータセンター事業もそのうちの1つに含まれるから,その意味において,P2の事業に係る職務を行っていたということは可能である。しかしながら,上記のとおり,P7氏は,本件提案を受けた後に副社長に就任しており,副社長に就任してから約1か月後には本件合併を行う意思を固めつつあったこと,原告が本件買収を行う主要な事業目的のうちの1つはデータセンターを原告の自社保有してコスト削減を行うことで に就任しており,副社長に就任してから約1か月後には本件合併を行う意思を固めつつあったこと,原告が本件買収を行う主要な事業目的のうちの1つはデータセンターを原告の自社保有してコスト削減を行うことであったこと,当時のP2の資産のうちデータセンターについては本件合併により原告の資産となることが予定されていたことを総合勘案すると,P7氏の副社長としての職務の実質は,P2における従来のデータセンター事業の経営を行うものとはいえず,P7氏が本件買収の前にP2の副社長に就任したとしても,合併の前後を通じて従来のデータセンター事業に対する支配の継続があると評価することはできないといわざるを得ない。したがって,P7氏がP2の事業に係る職務を行っていたといえるとしても,そのことは,-48-施行令112条7項5号が設けられた趣旨に全く反するという上記の判断を左右するものではない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,原告は,上記イ⑥の点に関連して,本件においては施行令112条7項2号の規模要件は一切関係がないと主張する。しかしながら,上記(3)アで判示したとおり,同項5号の特定役員引継要件に関して法132条の2を適用する場合,組織再編成に係る他の具体的な事情を考慮すべきであるところ,法57条3項にいう「共同で事業を営むための適格合併等」が問題となっている本件では,施行令112条7項の他の号の定める要件の充足状況についても上記の具体的な事情として考慮することが適切であるということができる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) 本件副社長就任が否認の対象となる行為か否かについてア上記前提事実(2)イのとおり,P7氏は,P2の臨時株主総会における株主総会の決議及びP2の取締役会における取締役会の決議に ない。 (5) 本件副社長就任が否認の対象となる行為か否かについてア上記前提事実(2)イのとおり,P7氏は,P2の臨時株主総会における株主総会の決議及びP2の取締役会における取締役会の決議により,P2の取締役副社長に就任したものであるところ,これらに関する法律行為の主体は,いずれも,P2又はP7氏であり,原告ではない。 これに対し,被告は,原告の内部においては,特定役員引継要件を満たすべく,原告の特定役員のうちの誰かを本件買収前にP2の特定役員に就任させる必要があることについて認識した上で,P7氏をP2の特定役員に就任させる旨決定したことが明らかであり,また,P7氏のP2の取締役副社長就任は,原告の代表取締役であるP7氏が,原告としての意思決定を行い,原告の意思決定に基づき,原告の業務執行として,自らを,将来的に合併することが想定されていたP2の取締役副社長に就任させたものと認められ,原告の行為又は原告の行為と同視し得る行為であると主張する。 -49-しかしながら,原告の機関においてP7氏をP2の取締役副社長に就任させるという意思決定がされたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 また,P7氏の本件副社長就任が,P7氏の個人的な利益とは無関係に,もっぱら原告の利益のために行われたものであったとしても,原告の企業規模や資本構成に照らせば,そのことのみをもってして,P7氏の行為を原告の行為と同視することには困難があるといわざるを得ない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イもっとも,上記2(4)のとおり,法132条の2の規定に基づき否認することができる行為又は計算は,法人税につき更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られず,同条の規定により否認することができる行為又は計算には,法人税につき更正又は 2条の2の規定に基づき否認することができる行為又は計算は,法人税につき更正又は決定を受ける法人の行為又は計算に限られず,同条の規定により否認することができる行為又は計算には,法人税につき更正又は決定を受ける法人以外の法人であって,同条各号に掲げられているものの行為又は計算が含まれるものと解される。 そうすると,P7氏は,P2の臨時株主総会における株主総会の決議及びP2の取締役会における取締役会の決議により,P2の取締役副社長に就任したものであって,これらがいずれもP2の行為であることを前提としても,同条に規定する「これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当する場合には,同条の規定により,P2の行為を否認し,原告の法人税につき更正をすることができるものと解される。 (6) 小括以上のとおりであるから,本件副社長就任は,「その法人の行為(中略)で,これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(法132条の2)に該当し,同条の規定に基づき否認することができるというべきである。 4 本件更正処分に理由付記の不備があるか否か(争点3)について-50-法130条2項は,青色申告に係る法人税について更正をする場合には,更正通知書に更正の理由を付記しなければならないと規定する。 これは,法人税法が青色申告制度を採用し,青色申告に係る所得の計算については,それが法定の帳簿書類による正当な記載に基づくものである以上,その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを保障した趣旨に鑑み,処分庁の判断の慎重,合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨であるとい 帳簿の記載を無視して更正されることがないことを保障した趣旨に鑑み,処分庁の判断の慎重,合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨であるというべきである。したがって,帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合には,その更正は納税者による帳簿の記載を覆すものではないから,更正通知書記載の更正の理由が,そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても,更正の根拠を上記の理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り,法人税法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないと解するのが相当である。 (最高裁昭和56年(行ツ)第36号同60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁参照)これを本件についてみると,本件更正処分の更正通知書(甲1)には,上記前提事実(3)イのとおり,そのような判断をした理由を含めて記載されており,本件更正処分は,原告の行為又は計算を容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると評価して否認し,P2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなさないとしてしたものであって,帳簿書類の記載自体を信用することができないとして否認するものではない。 そして,上記記載によれば,本件更正処分は,原告の行為又は計算を否認した根拠となる法人税法上の規定を明記してはいないものの,本件買収,本件合併及びこれらの実現に向けられた原告の一連の行為(原告がその代表取締役社長であるP7氏をP2の取締役副社長に就任させた行為を含む。)又は計算を容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる-51-として,法132条の2の規定に基づき,P2の未処理欠損金額を原告 2の取締役副社長に就任させた行為を含む。)又は計算を容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる-51-として,法132条の2の規定に基づき,P2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなすことを認めず,原告が損金の額に算入した542億6826万2894円を損金の額に算入しない旨記載したものであると解することができる。 そうすると,本件更正処分の更正通知書に記載された更正の理由は,更正の根拠を上記の理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものであるということができるから,法130条2項の要求する更正理由の付記として欠けるところはないものというべきである。 5 本件更正処分等の適法性について以上によれば,P7氏がP2の取締役副社長に就任した行為及びP2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなして損金の額に算入する計算は,法132条の2の規定に基づき否認することができ,これまでに述べたところ及び弁論の全趣旨によれば,本件更正処分等は,別紙3のとおりいずれも適法なものと認められる。 6 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官竹林俊憲-52- 裁判官貝阿彌亮-53-別紙2関係法令の定め第1 平成22年法律第6号による改正前の法人税法 1 2条(定義)この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 一から九まで (略) の定め第1 平成22年法律第6号による改正前の法人税法 1 2条(定義)この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 一から九まで (略)十同族会社会社の株主等(その会社が自己の株式又は出資を有する場合のその会社を除く。)の3人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。 十一被合併法人合併によりその有する資産及び負債の移転を行つた法人をいう。 十二合併法人合併により被合併法人から資産及び負債の移転を受けた法人をいう。 十二の二から十二の七の五まで (略)十二の八適格合併次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人株式(合併法人の株式又は出資をいう。)又は合併親法人株式(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。以下この条において「発行済株式等」という。)の全部を保有する関係として政令で定める関係がある法人の株式又は出資をいう。)のいずれか一方の株式又は出資以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当等(株式又は出資に係る剰余金の配当,利益の配当又は剰余金の分配をいう。第12号の11において同じ。)として交付される金銭その他の資産及-54-び合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。 イその合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が法人を設立する合併(以下この号において「新設合併 買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。 イその合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が法人を設立する合併(以下この号において「新設合併」という。)である場合にあつては,当該被合併法人と他の被合併法人)との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係がある場合の当該合併ロその合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては,当該被合併法人と他の被合併法人)との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の総数(出資にあつては,総額。以下第12号の16までにおいて同じ。)の100分の50を超え,かつ,100分の100に満たない数(出資にあつては,金額。以下第12号の16までにおいて同じ。)の株式(出資を含む。以下第12号の16までにおいて同じ。)を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係がある場合の当該合併のうち,次に掲げる要件のすべてに該当するもの(1) 当該合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち,その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること(当該合併後に当該合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には,当該相当する数の者が,当該合併後に当該合併法人の業務に従事し,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること。)。 (2) 当該合併に係る被合併法人の当該合併前に営む主要な事業が当該合併後に当該合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること(当該合併後に当該合併法人を被合併 。)。 (2) 当該合併に係る被合併法人の当該合併前に営む主要な事業が当該合併後に当該合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること(当該合併後に当該合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には,当該主要な事業が,当該合併-55-後に当該合併法人において営まれ,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること。)。 ハその合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては,当該被合併法人と他の被合併法人)とが共同で事業を営むための合併として政令で定めるもの十二の九から四十八まで (略) 2 57条(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)(1) 1項確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(この項の規定により当該各事業年度前の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び第80条(欠損金の繰戻しによる還付)の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)がある場合には,当該欠損金額に相当する金額は,当該各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する。ただし,当該欠損金額に相当する金額が当該欠損金額につき本文の規定を適用しないものとして計算した場合における当該各事業年度の所得の金額(当該欠損金額の生じた事業年度前の事業年度において生じた欠損金額に相当する金額で本文又は第58条第1項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し)の規定により当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものがある場合には,当該損金の額に算入される金額を控除した金額)を超える場合は, 出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し)の規定により当該各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものがある場合には,当該損金の額に算入される金額を控除した金額)を超える場合は,その超える部分の金額については,この限りでない。 (2) 2項適格合併等(適格合併又は合併に類する分割型分割として政令で定めるもののうち適格分割型分割に該当するもの(以下この条において「合併類似適格分割型分割」という。)をいう。以下この項及び次項において同じ。)が-56-行われた場合において,当該適格合併等に係る被合併法人又は分割法人(以下この項及び次項において「被合併法人等」という。)の当該適格合併等の日前7年以内に開始した各事業年度(以下この項及び次項において「前7年内事業年度」という。)において生じた欠損金額(当該被合併法人等が当該欠損金額(この項又は第6項の規定により当該被合併法人等の欠損金額とみなされたものを含み,第5項又は第9項の規定によりないものとされたものを除く。次項,第4項及び第8項において同じ。)の生じた前7年内事業年度について青色申告書である確定申告書を提出していることその他の政令で定める要件を満たしている場合における当該欠損金額に限るものとし,前項の規定により当該被合併法人等の前7年内事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び第80条の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。以下この項において「未処理欠損金額」という。)があるときは,当該適格合併等に係る合併法人又は分割承継法人(以下この項及び次項において「合併法人等」という。)の当該適格合併等の日の属する事業年度(以下この項及び次項において「合併等事業年度」という。)以後の各事業年度における前項の規定の適用につ 継法人(以下この項及び次項において「合併法人等」という。)の当該適格合併等の日の属する事業年度(以下この項及び次項において「合併等事業年度」という。)以後の各事業年度における前項の規定の適用については,当該前7年内事業年度において生じた未処理欠損金額は,それぞれ当該未処理欠損金額の生じた前7年内事業年度開始の日の属する当該合併法人等の各事業年度(当該合併法人等の合併等事業年度開始の日以後に開始した当該被合併法人等の当該前7年内事業年度において生じた未処理欠損金額にあつては,当該合併等事業年度の前事業年度)において生じた欠損金額とみなす。 (3) 3項適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等(当該合併法人等が当該適格合併等により設立された法人である場合にあつては,当該適格合併等に係る他の被合併法人等。第1号において同じ。)との間に特定資本関係(いずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(当該他方の法人が有する-57-自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係をいう。以下この項及び第5項において同じ。)があり,かつ,当該特定資本関係が当該合併法人等の当該適格合併等に係る合併等事業年度開始の日の5年前の日以後に生じている場合において,当該適格合併等が共同で事業を営むための適格合併等として政令で定めるものに該当しないときは,前項に規定する未処理欠損金額には,当該被合併法人等の次に掲げる欠損金額を含まないものとする。 一当該被合併法人等の特定資本関係事業年度(当該被合併法人等と当該合併法人等との間に当該特定資本関係が生じた日の属する事業年度をいう。 次号において同じ。)前の各事業年度で前7年内事業年度に該当す 一当該被合併法人等の特定資本関係事業年度(当該被合併法人等と当該合併法人等との間に当該特定資本関係が生じた日の属する事業年度をいう。 次号において同じ。)前の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額(当該被合併法人等において第1項の規定により前7年内事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び第80条の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。次号において同じ。)二当該被合併法人等の特定資本関係事業年度以後の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち第62条の7第2項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に規定する特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額として政令で定める金額(4) 4項から12項まで (略) 3 132条(同族会社等の行為又は計算の否認)(1) 1項税務署長は,次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において,その法人の行為又は計算で,これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為-58-又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。 一内国法人である同族会社二イからハまでのいずれにも該当する内国法人イ 3以上の支店,工場その他の事業所を有すること。 ロその事業所の2分の1以上に当たる事業所につき,その事業所の所長,主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前 当たる事業所につき,その事業所の所長,主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人(以下この号において「所長等」という。)が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。 ハロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその内国法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその内国法人の発行済株式又は出資(その内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の3分の2以上に相当すること。 (2) 2項及び3項 (略) 4 132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)税務署長は,合併,分割,現物出資若しくは事後設立(第2条第12号の6(定義)に規定する事後設立をいう。)又は株式交換若しくは株式移転(以下この条において「合併等」という。)に係る次に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において,その法人の行為又は計算で,これを容認した場合には,合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加,法人税の額から控除する金額の増加,第1号又は第2号に掲げる法人の株式(出資を含む。第2号において同じ。)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加,みなし配当金額(第24条第1項(配当等の額とみなす金額)の規定により第23条第1項第1号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなされる金額をいう。)の減少その他の事由により法人税の-59-負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。 一合併等をした一方の法人又は他方の法人 ,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。 一合併等をした一方の法人又は他方の法人二合併等により交付された株式を発行した法人(前号に掲げる法人を除く。)三前二号に掲げる法人の株主等である法人(前二号に掲げる法人を除く。)第2 平成22年政令第51号による改正前の法人税法施行令 1 4条の2(適格組織再編成における株式の保有関係等)(1) 1項法第2条第12号の8(定義)に規定する全部を保有する関係として政令で定める関係は,合併の直前に当該合併に係る合併法人と当該合併法人以外の法人との間に当該法人による直接完全支配関係(二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等(同号に規定する発行済株式等をいう。 以下この条において同じ。)の全部を保有する関係をいう。以下この項において同じ。)があり,かつ,当該合併後に当該合併法人と当該法人(以下この項において「親法人」という。)との間に当該親法人による直接完全支配関係が継続すること(当該合併後に親法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併後に当該合併法人と当該親法人との間に当該親法人による直接完全支配関係があり,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人と当該合併に係る合併法人との間に当該適格合併に係る合併法人による直接完全支配関係が継続することとし,当該合併後に当該合併に係る合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該合併法人と親法人との間に当該親法人による直接完全支配関係が継続することとする。)が見込まれている場合における当該合併に係る合 が見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該合併法人と親法人との間に当該親法人による直接完全支配関係が継続することとする。)が見込まれている場合における当該合併に係る合併法人と親法人との間の関係とする。 -60-(2) 2項法第2条第12号の8イに規定する政令で定める関係は,次に掲げるいずれかの関係とする。 一合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が法人を設立する合併(次項及び第4項において「新設合併」という。)である場合にあつては,当該被合併法人と他の被合併法人。以下この項において同じ。)との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある場合における当該関係(次号に掲げる関係に該当するものを除く。)二合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者(当該者が個人であるときは,当該個人及びこれと前条第1項に規定する特殊の関係のある個人)によつてそれぞれの法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有される関係があり,かつ,当該合併後に当該者によつて当該合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に継続して保有されること(当該合併後に当該者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併後に当該者によつて当該発行済株式等の全部を直接又は間接に保有され,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人によつて当該発行済株式等の全部を直接又は間接に継続して保有されることとし,当該合併後に当該合併に係る合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該者によつて当該発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されることとする。)が見込まれている場合にお 法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該者によつて当該発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されることとする。)が見込まれている場合における当該合併に係る被合併法人と合併法人との間の関係(3) 3項法第2条第12号の8ロに規定する政令で定める関係は,次に掲げるいずれかの関係(前項各号に掲げる関係に該当するものを除く。)とする。 -61-一合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては,当該被合併法人と他の被合併法人。以下この項において同じ。)との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の総数(出資にあつては,総額。以下この条において同じ。)の100分の50を超える数(出資にあつては,金額。以下この条において同じ。)の株式(出資を含む。以下この条において同じ。)を直接又は間接に保有する関係がある場合における当該関係(次号に掲げる関係に該当するものを除く。)二合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者(当該者が個人であるときは,当該個人及びこれと前条第1項に規定する特殊の関係のある個人)によつてそれぞれの法人の発行済株式等の総数の100分の50を超える数の株式(以下この号において「支配株式」という。)を直接又は間接に保有される関係があり,かつ,当該合併後に当該者によつて当該合併法人の支配株式を直接又は間接に継続して保有されること(当該合併後に当該者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併後に当該者によつて当該支配株式を直接又は間接に保有され,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人によつて当該支配株式を直接又は間接に継続して保有されることとし,当該合併後に当該 場合には当該合併後に当該者によつて当該支配株式を直接又は間接に保有され,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人によつて当該支配株式を直接又は間接に継続して保有されることとし,当該合併後に当該合併に係る合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該者によつて当該支配株式を直接又は間接に保有されることとする。)が見込まれている場合における当該合併に係る被合併法人と合併法人との間の関係(4) 4項法第2条第12号の8ハに規定する政令で定めるものは,同号イ又はロに該当する合併以外の合併のうち,次に掲げる要件(当該合併に係る被合併法人の株主等の数が50人以上である場合又は当該合併に係る被合併法人の-62-すべて若しくは合併法人が資本若しくは出資を有しない法人である場合には,第1号から第4号までに掲げる要件)のすべてに該当するものとする。 一合併に係る被合併法人の被合併事業(当該被合併法人の当該合併前に営む主要な事業のうちのいずれかの事業をいう。以下この項において同じ。)と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該合併法人の当該合併前に営む事業のうちのいずれかの事業をいい,当該合併が新設合併である場合にあつては,他の被合併法人の被合併事業をいう。次号及び第4号において同じ。)とが相互に関連するものであること。 二合併に係る被合併法人の被合併事業と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該被合併事業と関連する事業に限る。)のそれぞれの売上金額,当該被合併事業と合併事業のそれぞれの従業者の数,当該被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては,当該被合併法人と他の被合併法人)のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額若しくはこれらに 併事業と合併事業のそれぞれの従業者の数,当該被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては,当該被合併法人と他の被合併法人)のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと又は当該合併前の当該被合併法人の特定役員(社長,副社長,代表取締役,代表執行役,専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この条において同じ。)のいずれかと当該合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては,他の被合併法人)の特定役員のいずれかとが当該合併後に当該合併に係る合併法人の特定役員となることが見込まれていること。 三合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち,その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること(当該合併後に当該合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には,当該相当する数の者が,当該合併後に当該合併法人の業務に従事し,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人の業務に従事するこ-63-とが見込まれていること。)。 四合併に係る被合併法人の被合併事業(当該合併に係る合併法人の合併事業と関連する事業に限る。)が当該合併後に当該合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること(当該合併後に当該合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には,当該被合併事業が,当該合併後に当該合併法人において営まれ,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること。)。 五合併の直前の当該合併に係る被合併法人の株主等で当該合併により交付 法人において営まれ,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること。)。 五合併の直前の当該合併に係る被合併法人の株主等で当該合併により交付を受ける合併法人の株式又は法第2条第12号の8に規定する合併親法人株式のいずれか一方の株式(議決権のないものを除く。)の全部を継続して保有することが見込まれる者(当該合併後に当該者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併後に当該者が当該株式の全部を保有し,当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人が当該株式の全部を継続して保有することが見込まれるときの当該者とし,当該合併後に当該合併に係る合併法人(当該合併に係る被合併法人の株主等が当該合併により同号に規定する合併親法人株式の交付を受ける場合にあつては,同号に規定する全部を保有する関係として政令で定める関係がある法人)を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該株式の全部を継続して保有することが見込まれるときの当該者とする。)及び当該合併に係る合併法人(当該合併に係る被合併法人の株主等が当該合併により同号に規定する合併親法人株式の交付を受ける場合にあつては,同号に規定する全部を保有する関係として政令で定める関係がある法人を含む。)が有する当該合併に係る被合併法人の株式(議決権のないものを除く。)の数を合計した数が当該被合併法人の発行済株式等(議決権のない-64-ものを除く。)の総数の100分の80以上であること。 (5) 5項から24項まで (略) 2 112条(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)(1) 1項から3項まで (略)(2) 4項法第57条第3項に規定する政 と。 (5) 5項から24項まで (略) 2 112条(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)(1) 1項から3項まで (略)(2) 4項法第57条第3項に規定する政令で定める関係は,次の各号に掲げるいずれかの関係とする。 一二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。次号及び次項において「発行済株式等」という。)の総数(出資にあつては,総額。次号及び次項において同じ。)の100分の50を超える数(出資にあつては,金額。次号及び次項において同じ。)の株式(出資を含む。次号及び次項において同じ。)を直接又は間接に保有する関係二二の法人が同一の者(当該者が個人である場合には,当該個人及びこれと第4条第1項(同族関係者の範囲)に規定する特殊の関係のある個人)によつてそれぞれの法人の発行済株式等の総数の100分の50を超える数の株式を直接又は間接に保有される関係(3) 5項及び6項 (略)(4) 7項法第57条第3項に規定する政令で定めるものは,適格合併等のうち,第1号から第4号までに掲げる要件又は第1号及び第5号に掲げる要件に該当するものとする。 一適格合併等に係る被合併法人等の被合併等事業(当該被合併法人等の当該適格合併等の前に営む主要な事業のうちのいずれかの事業をいう。第3号までにおいて同じ。)と当該適格合併等に係る合併法人等(当該合併法人等が当該適格合併等により設立された法人である場合にあつては,当該-65-適格合併等に係る他の被合併法人等。以下この項において同じ。)の合併等事業(当該合併法人等の当該適格合併等の前に営む事業(当該合併法人等が当該適格合併等により設立された法人である場合にあつ -65-適格合併等に係る他の被合併法人等。以下この項において同じ。)の合併等事業(当該合併法人等の当該適格合併等の前に営む事業(当該合併法人等が当該適格合併等により設立された法人である場合にあつては,当該適格合併等に係る他の被合併法人等の被合併等事業)のうちのいずれかの事業をいう。次号において同じ。)とが相互に関連するものであること。 二被合併等事業と合併等事業(当該被合併等事業と関連する事業に限る。 以下この号及び第4号において同じ。)のそれぞれの売上金額,当該被合併等事業と当該合併等事業のそれぞれの従業者の数,適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額又はこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと。 三被合併等事業が当該適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等との間に特定資本関係(法第57条第3項に規定する特定資本関係(当該合併法人等の同項の合併等事業年度開始の日の5年前の日以後に生じたものに限る。)をいう。次号及び第5号において同じ。)の生じた時(当該被合併法人等が,その時から当該適格合併等の直前の時までの間に合併法人,分割承継法人又は被現物出資法人となる適格合併,適格分割又は適格現物出資(以下この号及び次号において「直前適格合併等」という。)を行い,かつ,当該直前適格合併等により被合併等事業の全部又は一部の移転を受けている場合には,当該直前適格合併等の時。以下この号において「被合併法人等特定資本関係発生時」という。)から当該適格合併等の直前の時まで継続して営まれており,かつ,当該被合併法人等特定資本関係発生時と当該適格合併等の直前の時における当該被合併等事業の規模(前号に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね2倍を ており,かつ,当該被合併法人等特定資本関係発生時と当該適格合併等の直前の時における当該被合併等事業の規模(前号に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね2倍を超えないこと。 四合併等事業が当該適格合併等に係る合併法人等と被合併法人等との間に特定資本関係が生じた時(当該合併法人等が,その時から当該適格合併等-66-の直前の時までの間に直前適格合併等を行い,かつ,当該直前適格合併等により合併等事業の全部又は一部の移転を受けている場合には,当該直前適格合併等の時。以下この号において「合併法人等特定資本関係発生時」という。)から当該適格合併等の直前の時まで継続して営まれており,かつ,当該合併法人等特定資本関係発生時と当該適格合併等の直前の時における当該合併等事業の規模(前号に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね2倍を超えないこと。 五適格合併等に係る被合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員(社長,副社長,代表取締役,代表執行役,専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この号において同じ。)である者のいずれかの者(当該被合併法人等が当該適格合併等に係る合併法人等と特定資本関係が生じた日前(当該特定資本関係が当該被合併法人等となる法人又は当該合併法人等となる法人の設立により生じたものである場合には,同日。以下この号において同じ。)において当該被合併法人等の役員又は当該これらに準ずる者(同日において当該被合併法人等の経営に従事していた者に限る。)であつた者に限る。)と当該合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員である者のいずれかの者(当該特定資本関係が生じた日前において当該合併法人等の役 被合併法人等の経営に従事していた者に限る。)であつた者に限る。)と当該合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員である者のいずれかの者(当該特定資本関係が生じた日前において当該合併法人等の役員又は当該これらに準ずる者(同日において当該合併法人等の経営に従事していた者に限る。)であつた者に限る。)とが当該適格合併等の後に当該合併法人等(当該適格合併等が法人を設立するものである場合には,当該適格合併等により設立された法人)の特定役員となることが見込まれていること。 (5) 8項から20項まで (略)-67-別紙3本件各更正処分等の根拠及び適法性 1 本件更正処分の根拠被告が本訴において主張する,原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額は,次のとおりである。 (1) 所得金額(別表2④欄) 1098億8807万0129円上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算し,ウの金額を控除したものである。 ア確定申告における所得金額(別表2①欄)556億9158万5439円上記金額は,原告が,処分行政庁に対し平成21年6月30日に提出した本件事業年度の法人税の確定申告書(以下「本件確定申告書」という。)の「所得金額」欄に記載された金額である。 イ損金の額に算入しない欠損金の額(別表2②欄)542億6826万2894円上記金額は,原告が,平成21年3月30日に,原告を合併法人,P2株式会社(以下「P2」という。)を被合併法人とする合併(以下「本件合併」という。)を行い,P2の未処理欠損金額(別表3参照)を法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)57条2項の規定に基づき原告の欠損金額とみなして,同条1項の規定により損金の額に算入したものであるが,その欠損金額を原告の損金の額に算入 参照)を法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)57条2項の規定に基づき原告の欠損金額とみなして,同条1項の規定により損金の額に算入したものであるが,その欠損金額を原告の損金の額に算入することを容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められることから,法人税法132条の2第1項の規定により損金の額に算入されない金額である。 ウ一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度超過額の過大額(別表2③欄及び別表4⑲欄) 7177万8204円-68-上記金額は,原告が一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度超過額として所得金額に加算した次の(ア)の金額と,次の(イ)により計算される所得金額に加算すべき正当な繰入限度超過額との差額であり,所得金額に過大に加算されていることから,所得金額から減算されるものである。 (ア) 確定申告における一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度超過額(別表4⑱欄) 1億2122万6730円上記金額は,原告が本件確定申告書において,一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度超過額として所得金額に加算した金額である。 (イ) 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度超過額(別表4⑰欄)4944万8526円上記金額は,次のaの金額からbの金額を控除した金額である。 a 確定申告における一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入額(別表4①欄) 15億2090万1705円上記金額は,本件確定申告書に記載された一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の当期繰入額である。 b 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度額(別表4⑯欄)14億7145万3179円上記金額は,原告の期末一括評価金銭債権の帳簿価額の合 評価金銭債権に係る貸倒引当金の当期繰入額である。 b 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度額(別表4⑯欄)14億7145万3179円上記金額は,原告の期末一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額398億7677万9938円(別表4②欄参照)に貸倒実績率0.0369(別表4⑮欄参照)を乗じた金額であり,本件事業年度の一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額に相当する金額である。 (2) 所得金額に対する法人税額(別表2⑤欄)329億6642万1000円上記金額は,上記(1)の所得金額(国税通則法(以下「通則法」という。)118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた後の金額-69-である。)に法人税法66条に定める税率を乗じて計算した金額である。 (3) 法人税額の特別控除額(別表2⑥欄) 8632万4543円上記金額は,租税特別措置法(平成21年法律第61号による改正前のもの)42条の4第1項及び2項の規定により法人税の額から控除される金額1757万2284円と,同法42条の11第2項の規定により法人税の額から控除される金額6875万2259円とを合計した金額であり,本件確定申告書に記載された金額と同額である。 (4) 法人税額から控除される所得税額等(別表2⑦欄)5508万2659円上記金額は,法人税法68条の規定により法人税の額から控除される金額であり,本件確定申告書に記載された金額と同額である。 (5) 納付すべき法人税額(別表2⑧欄) 328億2501万3700円上記金額は,上記(2)の金額から上記(3)及び上記(4)の金額を差し引いた金額である(なお,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)。 (6) 既に納付の確定した法 記(2)の金額から上記(3)及び上記(4)の金額を差し引いた金額である(なお,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)。 (6) 既に納付の確定した法人税額(別表2⑨欄)165億6606万8200円上記金額は,本件確定申告書の提出により納付の確定した法人税額である。 (7) 差引納付すべき法人税額(別表2⑩欄)162億5894万5500円上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額である。 2 本件更正処分の適法性本訴において,被告が主張する原告の本件事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき法人税額は,それぞれ1098億8807万0129円(上記1-70-(1))及び328億2501万3700円(上記1(5))であるところ,これらの金額は,本件更正処分における所得金額及び納付すべき法人税額と同額であるから,本件更正処分は適法である。 3 本件賦課決定処分の根拠上記2のとおり,本件更正処分は適法であるところ,同処分により原告が新たに納付すべき法人税額については,その計算の基礎となった事実について,原告がこれを計算の基礎としなかったことに,通則法65条4項所定の「正当な理由」があるとは認められない。 したがって,原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税の額は,原告が新たに納付すべきこととなった法人税額162億5894万5500円(上記1(7))を基礎として,通則法65条1項の規定を適用し,162億5894万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)に対して100分の10の割合を乗じて算出した金額16億2589万4000円となる。 4 本件賦課決定処分の適法性 通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)に対して100分の10の割合を乗じて算出した金額16億2589万4000円となる。 4 本件賦課決定処分の適法性本訴において,被告が主張する法人税の過少申告加算税の金額は,上記3で述べたとおりであり,本件賦課決定処分の金額は,これと同額であるから,同賦課決定処分は適法である。 -71-別紙4当事者の主張第1 法132条の2の意義(争点1)について 1 被告の主張(1) 法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(不当性要件)の解釈について法132条の2においては,法132条1項と同様に,「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは」との文言が用いられていることに鑑みれば,同項をめぐる議論を参考とすべきであって,法132条の2の「不当」の意義についても,法132条1項の「不当」の意義について,純経済人の行為として不合理・不自然な行為又は計算によって税負担の減少が生じている場合がそれに当たると解されていることを参考とすべきである。 もっとも,法132条の2の「不当」の解釈は当該規定の趣旨・目的を踏まえてされるべきであるところ,同条は,平成13年度税制改正において,企業組織再編成を租税回避の手段として濫用されるおそれがあることから,これを防止して適正な課税をすることができるために,繰越欠損金等を利用した租税回避行為の防止規定など各個別規定にそれぞれ防止規定を設け,併せて,それらの防止規定をかいくぐる租税回避行為に対処するために,包括的な租税回避防止規定として,従前から設けられていた同族会社の行為又は計算の否認規定とは別個に,新たに創設されたも 規定を設け,併せて,それらの防止規定をかいくぐる租税回避行為に対処するために,包括的な租税回避防止規定として,従前から設けられていた同族会社の行為又は計算の否認規定とは別個に,新たに創設されたものである。このような経緯と趣旨に鑑み,法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の解釈・適用は,組織再編成に係る法人の行為又は計算の特徴,組織再編税制における各個別規定の趣旨・目的について十分に考慮をし,その実態に即して行われるべきである。 具体的には,組織再編税制における各個別規定の趣旨・目的に鑑みて,あ-72-る行為又は計算が不合理又は不自然なものと認められる場合をいい,租税回避の手段として組織再編成における各規定を濫用し,税負担の公平を著しく害するような行為又は計算と評価できる場合はこれに当たると解すべきである。すなわち,法132条の2は,個別の否認規定により対処することを想定していなかった租税回避の事態に対処するのみならず,適格作り(適格外し)や個別規定の要件作り(要件外し)等,課税減免等に係る規定ないし制度の逸脱・濫用があった場合に,そのような行為を許さないこととして適正な課税を行う否認規定なのである。 上記のような法132条の2の趣旨・目的に鑑みれば,一連の組織再編成の過程において行われた個々の取引について,これを全体の計画から切り離して,個別に,「私的経済取引として不合理・不自然か否か」により判断することは相当ではない。組織再編成は,多種多様な行為を組み合わせることができるものであり,最終形に至るまでの過程において,行為の順序や時期を変えることによって,課税上の効果を納税者が意図的に変更し得ることとなるものである。かかる組織再編税制における特質を踏まえると,組織再編成に係る個々の行為に るまでの過程において,行為の順序や時期を変えることによって,課税上の効果を納税者が意図的に変更し得ることとなるものである。かかる組織再編税制における特質を踏まえると,組織再編成に係る個々の行為について,その1つ1つを個別に取り出すと,一見すればそれ自体に何らかの事業目的があるように思われるものであっても,法人税の負担を減少させることを主たる目的として,組織再編成全体を構成する一部の取引について,組織再編成上の正当な理由ないし目的がないのに,あえて通常行われるであろう順序又は時期とは異なる順序又は時期で行い,組織再編税制の個別規定の要件を充足させ,又は充足させないようにしたものであれば,当該行為は組織再編成上の必要性が認められない不自然・不合理なものであり,組織再編成の個別規定の趣旨・目的を潜脱するものというべきである。 すなわち,法132条の2の「不当」は,法人税の負担を減少させることを目的として,組織再編成全体を構成する一部の取引について,通常行-73-われるであろう順序又は時期とは異なる順序又は時期であえて行い,組織再編税制の個別規定の要件を充足させ,又は充足させないようにし,法人税の負担を減少させる結果となる行為を含むものである。 組織再編成によって行われる資産の移転には,事業上の必要性や,事業上の目的が全くないような場面を想定することができないことから,租税回避防止規定の適用場面として,事業上の必要性や事業上の目的が全くないことを要求することは,相当でなく,当該行為又は計算について,事業目的が完全に否定できないとしても,そのことから直ちに「不当」性が否定されるものではなく,主たる目的が租税回避目的であると認められる場合には,課税減免等に係る規定ないし制度の濫用があったとみて,否認されるべきである。 ( も,そのことから直ちに「不当」性が否定されるものではなく,主たる目的が租税回避目的であると認められる場合には,課税減免等に係る規定ないし制度の濫用があったとみて,否認されるべきである。 (2) 「その法人の行為又は計算」の意義について平成13年度税制改正では,企業組織再編成により移転する資産の譲渡損益を,一定の要件の下に繰り延べる措置を講じた一方で,企業組織再編成を租税回避の手段として濫用されるおそれがあることから,繰越欠損金等を利用した租税回避行為の防止規定など,各個別規定にそれぞれ防止規定を設けるとともに,それらの防止規定をかいくぐる租税回避行為に対処するために,包括的な租税回避防止規定として,法132条の2の規定を創設したものである。 この場合,異常ないし変則的な行為又は計算が行われている場合でも,必ずしもそれを行う法人と,法人税の負担が不当に減少する法人(更正対象法人)とが同一でない場合もあり得る。 そして,法132条の2の規定は,それを包含する組織再編税制が,法人の税務処理に関し,他の法人の行為の如何によって取扱いが変わることがある仕組みとして構築されているものであることから,組織再編成に関係する法人の全てを掲げた上で,これらの法人のいずれかの行為によって-74-当該法人だけでなく他の法人の法人税の負担が不当に減少するという事態が生じた場合には,その法人税の負担が不当に減少した法人について更正又は決定を行い得るように制定されたものである。 上記のような法132条の2の趣旨に鑑みれば,同条において否認の対象となる「その法人」の行為とは,その直前にある「次に掲げる法人」の行為,すなわち,「同条1号から3号までに掲げるいずれかの法人」の行為と解釈することになる。 れば,同条において否認の対象となる「その法人」の行為とは,その直前にある「次に掲げる法人」の行為,すなわち,「同条1号から3号までに掲げるいずれかの法人」の行為と解釈することになる。 さらに,法132条の2の規定の変遷からしても,上記解釈が妥当であるのは明らかである。すなわち,法132条の2の「その法人」とされている部分は,平成13年度税制改正による創設時には,対象法人を同条の柱書きの文章中に規定した上で「これらの法人」としていたものであり,平成18年度税制改正においても,このような用い方が踏襲されていたが,平成19年度税制改正においては,三角合併に対応する改正が行われ,それに伴って対象法人を各号列記とする規定の整備が行われただけであり,従来,「これらの法人」とされていたものについて,その内容を変更し,「更正又は決定をする法人」のみに限定するというような重要な改正は行われておらず,平成19年度税制改正に至る過程における検討記録等にも,そのような改正が行われることをうかがわせるものは,全く見受けられない。 以上によれば,法132条の2において否認の対象となる「その法人」の行為とは,その直前にある「次に掲げる法人」の行為,すなわち「同条1号から3号までに掲げるいずれかの法人」の行為と解釈することができる。 したがって,下記第2の1(7)のとおり,本件副社長就任は,原告の行為又は原告の行為と同視し得る行為であり,法132条の2の規定により否認することができるが,仮に百歩譲って,本件副社長就任が原告の行為と-75-扱うべきでないと解するとしても,それがP2の行為であることは原告も争わないものであるところ,P2は,同条1号に掲げる「合併等をした一方の法人又は他方の法人」に当たることは明らかであることから 5-扱うべきでないと解するとしても,それがP2の行為であることは原告も争わないものであるところ,P2は,同条1号に掲げる「合併等をした一方の法人又は他方の法人」に当たることは明らかであることから,P2の行為を「その法人」の行為として同条の規定により否認したものとしても,同条の適用を誤ったものとはいえない。 以上の点に鑑みても,本件副社長就任が原告の行為でないとして,本件更正処分等の違法を主張する原告の主張は失当であるというべきである。 2 原告の主張(1) 法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(不当性要件)の解釈についてア 「法人税の負担を不当に減少させる」の要件は私的経済取引としての合理性の観点から解釈すべきであること。 法132条の2は,法人の行為が「法人税の負担を不当に減少させる結果となる」ことが適用要件とされている。 法132条の2の「不当」性の要件は,抽象的・多義的な概念であり,いわゆる不確定概念である。法律又はその委任のもとに政令や省令において課税要件及び租税の賦課・徴収の手続に関する定めをなす場合に,その定めはなるべく一義的で明確でなければならないとの課税要件明確主義(憲法84条)から,不確定概念である「不当」性の要件は,法の趣旨・目的に照らしてその意義が明確にされなければならない。 そして,法132条の2が法人の組織再編成において種々の租税回避行為が行われる可能性のあることに鑑み設けられた,組織再編成に関する行為・計算の一般的否認規定であることからすれば,同条の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件の解釈は,租税回避行為とはいかなる行為を指すのかについての通説的な理解を踏まえて行う必要がある。 こ の一般的否認規定であることからすれば,同条の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件の解釈は,租税回避行為とはいかなる行為を指すのかについての通説的な理解を踏まえて行う必要がある。 この点,租税回避行為の意義について,租税法上明文の規定はないが,-76-我が国を代表する租税法研究者である金子宏東京大学名誉教授によれば,租税回避行為とは,「私法上の選択可能性を利用し,私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに,通常用いられない法形式を選択することによって,結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら,通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ,もって税負担を減少させ,あるいは排除すること」をいうとされている。この金子名誉教授による租税回避行為の意義は学説上広く受け入れられている。 この租税回避行為の意義から明らかなように,ある行為が租税回避行為の否認規定により否認されるべき租税回避行為であるか否か,本件に即していえば,法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる」行為であるか否かは,私的経済取引プロパーの見地から合理的理由があるか否かという要素を抜きにしては判断できない。 したがって,租税回避行為の意義を踏まえると,法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件は,私的経済取引プロパーの見地から合理的理由があるか否か,すなわち経済人の行為として不合理・不自然な行為又は計算か否かという観点から判断されるべきである。 そして,純経済人の行為として不合理・不自然とは,行為が異常ないし変則的で,かつ,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しない場合をいうと解すべきである。 イ原告の主張は不確定概念の解釈の在り方として妥当であること。 ・不自然とは,行為が異常ないし変則的で,かつ,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しない場合をいうと解すべきである。 イ原告の主張は不確定概念の解釈の在り方として妥当であること。 不確定概念の解釈の在り方を前提とすれば,法132条の2は,課税の公平負担の観点から,組織再編成行為に係る租税回避を否認する趣旨で定められたものであるとしても,そのことを理由として租税法律主義の適用を免れるということはあり得ず,課税要件明確主義の観点から,また,法的安定性ないし予測可能性の観点から,法132条の2の「不当」性の要-77-件の解釈により,同条に基づく否認が許される要件については,客観的,合理的基準が導き出されなければならない。 「不当」性の要件を,私的経済取引として不合理,不自然なものと認められるかどうかで判断するという原告の解釈は,客観的,合理的な基準を提供するものである。原告の主張は,私的経済取引としての合理性,すなわち,「純経済人としての合理性」という客観的な基準で判断するものであり,かつ,「経済取引に参加する法人は,全て『純経済人としての合理性』という基準を内在していることが期待され得る」のであるから,全ての納税者にとって「不当」性の該当性を明確に判断することを可能とする,明確かつ客観的な基準であるといえる。すなわち,自己が行おうとする取引が,自己の租税負担の減少という効果をもたらすとしても,およそその行為に租税負担減少以外の正当な事業上の目的があるかを,自己が有する純経済人としての合理性という基準に照らして判断すれば,自ずと法132条の2の適用の有無が判断できる。 この基準を,特定役員引継要件の充足が「不当」と認められるか否かという本件で問題となっている争点に即して敷衍すると,当該 らして判断すれば,自ずと法132条の2の適用の有無が判断できる。 この基準を,特定役員引継要件の充足が「不当」と認められるか否かという本件で問題となっている争点に即して敷衍すると,当該の特定役員の就任は私法上有効であるものの,その者において特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ一切存在しない場合かどうかという基準となると解される。この基準であれば,およそ職務執行の意思と事実があるかどうかを判断すれば足りることであるから,全ての納税者にとって明確かつ客観的な基準といえるものである。 また,原告の主張する基準においても,税負担の公平を達成できる。すなわち,「純経済人の行為・計算としては不合理・不自然な行為・計算によって,個別の課税要件規定が充足され,又は潜脱され,その結果,関係する法人の法人税負担が減少した場合」には,法132条の2によって否認することが可能なのであり,組織再編成を利用した租税回避に十分対応-78-できる。 このことを,特定役員引継要件の充足が「不当」と認められるか否かという本件で問題となっている争点に即して敷衍すると,当該の特定役員の就任は私法上有効であるものの,その者において特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ一切存在しない場合について,(私法上は仮装行為とまではいえず,施行令112条7項5号の「特定役員」該当性を事実認定として「否認」できないため,)法132条の2を適用して特定役員引継要件の充足を否認できれば,その立案意図は十二分に達成できているというべきである。念のため付言すると,被告の主張する「適格作り(適格外し)や個別規定の要件作り(要件外し)等」についても,原告の解釈で十分に対応可能である。すなわち,被告は, 十二分に達成できているというべきである。念のため付言すると,被告の主張する「適格作り(適格外し)や個別規定の要件作り(要件外し)等」についても,原告の解釈で十分に対応可能である。すなわち,被告は,結局,何ら経済的合理性がないのに通常は用いられない異常ないし変則的な行為を行った上で適格組織再編成(若しくは非適格組織再編成)に該当させる又は要件を充足させる(若しくは充足させない)行為を問題視しているものと解されるのであり,そうであれば,端的に,当該の行為に私法上の選択可能性ないし法形式の濫用があるか否か,つまり行為に私的経済取引としての合理性があるか否かで判断すれば足りるものというべきである。 以上のとおり,原告が主張する法132条の2の「不当」性の要件の解釈は,同条を客観的,合理的基準に従って厳格に解釈適用するものであり,包括的否認規定に求められる租税法律主義に合致する解釈である。 ウ原告の解釈は多数の先例,文献等により支持されていること。 この原告の解釈は,法132条1項における「法人税の負担を不当に減少させる結果」の裁判例及び学説からも裏付けられる。すなわち,法132条の2の法人税の負担を不当に減少させる」の要件は,第1に,法132条1項は,租税回避行為の否認規定という点において,法132条の2-79-と趣旨及び性質を同じくすること,第2に,法132条の2は,法132条の直後に同条の枝番として新設されたものであること,第3に,法132条の2は,法132条1項では同族会社でない法人の組織再編成取引に対応できないため,新設されたものであること,第4に,法132条の2と法132条1項は,「法人税の負担を不当に減少させる」という同一の文言を用いていること,第5に,組織再編税制の創設が議論された税制調査会 ないため,新設されたものであること,第4に,法132条の2と法132条1項は,「法人税の負担を不当に減少させる」という同一の文言を用いていること,第5に,組織再編税制の創設が議論された税制調査会の場において,法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件が,法132条1項の不当性の要件とは異なるとの解釈は,一度たりとも議論されたことはないことなどの点からすると,法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件は,法132条1項の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件と同様に解釈されるべきである。 そして,まず,裁判例では,法132条1項の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件は,「専ら経済的実質的見地において,法人の行為,計算が経済人の行為として不合理,不自然なものと認められるかどうかを基準として判断されるべきものである」と解されている(福岡高裁昭和55年9月29日判決・行政事件裁判例集31巻9号1982頁。最高裁昭和59年10月25日判決で維持されている。)。 また,学説上,金子名誉教授は,法132条1項の「法人税の負担を不当に減少させる」とは,「純経済人の行為として不合理・不自然な行為」が行われること,あるいは,「ある行為または計算が経済的合理性を欠いている」ことをいうと解しており,行為が経済的合理性を欠いている場合とは,「異常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合」をいうと解している。これは,①行為が異常ないし変則的であるか否かを客観面で観察した上で,仮に異常ないし変則的といえる場合は,次に,②正当な理由ないし事業目的が存在するか否かという行為の周辺事情を観察し,それが存在しない場合に限り否認を認-80-めるという趣旨と解され,極めて合理 ,仮に異常ないし変則的といえる場合は,次に,②正当な理由ないし事業目的が存在するか否かという行為の周辺事情を観察し,それが存在しない場合に限り否認を認-80-めるという趣旨と解され,極めて合理的な解釈である(金子宏『租税法(第16版)』421頁)。 このように,裁判例・学説上,法132条1項について,同項の「法人税の負担を不当に減少させる」の要件を,私的経済取引としての合理性の観点から判断する解釈論が確立されている。 したがって,法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」も,法132条1項におけるこれらの裁判例・学説に従い,私的経済取引としての合理性の観点から,純経済人の行為として不合理,不自然なもの,すなわち,①行為が異常ないし変則的で,②租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しない場合に限って該当すると解すべきである。 そして,法132条1項の適用が認められた近時の判例・裁判例(東京地裁平成12年11月30日判決・税務訴訟資料249号884頁,東京高裁平成13年7月5日判決・税務訴訟資料251号順号8942,東京地裁平成17年7月28日判決・税務訴訟資料255号順号10091,東京高裁平成18年6月29日判決・税務訴訟資料256号順号10440,最高裁平成20年6月27日決定・税務訴訟資料258号順号10980)において,否認の対象とされた行為は,いずれも,およそ租税回避以外に私的経済取引としての合理性が存在しない行為であった。 したがって,法132条の2についても,これらの判例・裁判例のように,およそ租税回避以外の私的経済取引としての合理性が存在しない行為のみが否認の対象となるにすぎないと解すべきである。 原告の主張は,我が国の有力な租税法研究者(P24東 例・裁判例のように,およそ租税回避以外の私的経済取引としての合理性が存在しない行為のみが否認の対象となるにすぎないと解すべきである。 原告の主張は,我が国の有力な租税法研究者(P24東京大学法学部教授,P25P30大学法学部教授,P26P31大学商学部教授,P27一橋大学大学院法学研究科教授,P28P32大学大学院法務研究科教授,P29P30大学法科大学院教授)によって全面的に支持されている。 エ個別否認規定が置かれている場合においては「法人税の負担を不当に減-81-少させる」の要件は更に厳格に解釈すべきであること。 個別否認規定は,租税回避行為を防止するために,立法者が様々な政策判断の結果として設定した要件を規定するものである。かかる立法者の判断は尊重されるべきであるから,個別否認規定が対象としている取引については,専ら当該個別否認規定の適用が検討されるべきであり,かかる検討の結果,課税要件を充足しないため否認できない取引に対して,重ねて包括否認規定を適用し,当該取引を税務上否認することは許されないというべきである。 仮に個別否認規定が想定している取引に対して法132条の2が重畳的に適用され得るとしても,同条のような包括否認規定は,納税者が現実に行った私法上の行為を,租税法上別の通常行われる仮定の行為に引き直して課税するものであって,事後的に課税要件事実を生じさせるに等しいため,租税法律主義(課税要件法定主義)に抵触するおそれが大きい。また,租税法律主義(課税要件明確主義)の観点からも,納税者の予測可能性や法的安定性を害しないよう,限定的に解釈されなければならない。 判例も,法132条1項の規定について,同項は「原審が判示するような客観的,合理的基準に従つて同族会社の行為計算 予測可能性や法的安定性を害しないよう,限定的に解釈されなければならない。 判例も,法132条1項の規定について,同項は「原審が判示するような客観的,合理的基準に従つて同族会社の行為計算を否認すべき権限を税務署長に与えているものと解することができる」という理由付けにより,同項が包括的,一般的,白地的な課税処分権限を与えるものであることを前提とする同事件上告人の主張を排斥しており,租税回避行為の否認規定について,客観的,合理的基準に従った厳格な解釈適用を求めている(最高裁昭和53年4月21日判決・訟務月報24巻8号1694頁)。 したがって,個別否認規定が想定している取引の否認は,原則として,現実に発生した具体的な事実を対象に,法57条3項のような個別否認規定の適用による否認に委ねられるべきであって,法132条の2は,租税負担の公平の観点からみて看過し難い具体的な不当性がある場合に限り,-82-発動される規定と解すべきである。そして,そのような具体的な不当性がある場合とは,前記のとおり,納税者の行為が純経済人の行為としての不合理・不自然であること,より具体的には,行為が異常ないし変則的で,かつ,租税回避以外に正当な事業目的ないし理由がないことを意味すると解すべきである。 P28教授も,原告と同様の見解に立っている。 オまとめ上記で述べた解釈を,特定役員引継要件を充足する事実が存在するにもかかわらず,法132条の2の解釈適用上「不当」と評価して特定役員引継要件の充足を否認することが許される場合について具体的に敷衍すると,特定役員への選任が私法上適法有効にされているという事実こそ存在するものの,特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ一切存在しないような 場合について具体的に敷衍すると,特定役員への選任が私法上適法有効にされているという事実こそ存在するものの,特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ一切存在しないような,いわば「形だけ」「名前だけ」にすぎない場合のみが,法132条の2の解釈適用上「不当」と評価されると解すべきである。 およそ自然人が特定役員に就任するときは,特定役員として職務執行する意思をもって,かつ,就任後は実際に特定役員として職務執行することが当然の前提とされている。このような特定役員への就任は,いうまでもなく経済社会において通常行われている正常な行為であるとともに,特定役員として職務執行する意思を伴った行為であるから,正当な理由ないし事業目的も当然ながら伴っているものである。 そうすると,特定役員への就任が「異常ないし変則的で,かつ,租税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在しないと認められる場合」と評価される場合とは,正常な場合であれば当然に備えているべき上記のような要素を全く欠いており,特定役員への就任の目的が未処理欠損金額の引継ぎのみでしかないような場合であると解される。そして,そのような場-83-合とは,正に,特定役員において,特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ存在しないような,いわば「形だけ」「名前」だけにすぎない場合であるものと解される。 換言すれば,特定役員が,特定役員として職務執行するというその就任の目的に従って(主観面),実際にも会社の経営の中枢に関与し特定役員として職務執行しており,合併後も被合併法人から承継した事業の中枢に関与している客観的事実が存在する(客観面)ならば,その就任は,経済社会において通常行われている正常な行為であるとともに, 特定役員として職務執行しており,合併後も被合併法人から承継した事業の中枢に関与している客観的事実が存在する(客観面)ならば,その就任は,経済社会において通常行われている正常な行為であるとともに,特定役員として職務執行する意思を伴った行為であり,正当な理由ないし事業目的も伴っているものであるから,異常ないし変則的で,かつ,租税回避以外に正当な事業目的ないし理由がない行為,すなわち純経済人の行為として不合理・不自然な行為であるとは到底評価できず,法132条の2の解釈適用上「不当」と評価する余地はないものと解される。 (2) 「その法人の行為又は計算」の意義について法132条の2は,「次に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において」,「その法人の行為又は計算」にかかわらず,税務署長の認めるところにより法人税の額を計算すると定めており,文理上,「その法人の行為又は計算」という文言は,「次に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において」という文言を受けている。そして,「次に掲げる法人」と「法人税につき更正又は決定」を受ける法人とが同一の法人であることは文言上一義的に明らかである。そうすると,「その法人」が,「次に掲げる法人」,すなわち「法人税につき更正又は決定」を受ける法人のみを指すことは文言上一義的に明らかである。したがって,法132条の2によって税務署長による否認の対象となるのは,「法人税につき更正又は決定」を受ける法人の「行為又は計算」のみであることは明らかである。かかる文理上の解釈を拡張する根拠はないし,この文理解釈を拡張・逸脱した解釈を-84-することは,租税法律主義(憲法84条)に反して許されない。 また,法132条の2は,法132条1項及び相続税法64条1項と条文構造及び立法趣 ,この文理解釈を拡張・逸脱した解釈を-84-することは,租税法律主義(憲法84条)に反して許されない。 また,法132条の2は,法132条1項及び相続税法64条1項と条文構造及び立法趣旨が共通している。したがって,法132条1項及び相続税法64条1項と別異に解釈する合理的理由はなく,否認の対象は同様に解釈すべきである。この点,法132条1項に関し,裁判例は,株式の資産価値の移転が同族会社の行為によるものとは認められないことを理由に法132条1項の適用を否定しており(東京地裁平成13年11月9日判決・判例タイムズ1092号86頁),法132条1項に列挙されている法人の行為又は計算のみが否認の対象となることを明らかにしている。さらに,相続税法64条1項に関しても,裁判例は「一定の要件のもとにおいて税務署長に同族会社の行為又は計算を否認できる旨を定めた規定であるが,同条1項にいう『同族会社の行為』とは,その文理上,自己あるいは第三者に対する関係において法律的効果を伴うところのその同族会社が行う行為を指すものと解するのが当然である。」として,否認できるのは同族会社の行為又は計算のみであると判断しており(浦和地裁昭和56年2月25日判決・判例時報1016号52頁),学説もかかる解釈は妥当であるとして判決を肯定している(碓井光明「本件判例評釈」判例評論280号158頁以下(甲73),畠山武道「租税判例研究」ジュリスト778号112頁以下(甲74))。 そして,原告の解釈は,P25教授及びP26教授が同様の見解を表明されていることからも,その正当性は明らかである。 以上のとおり,裁判例及び学説は,共に法132条の2と条文構造及び立法趣旨が共通である法132条1項及び相続税法64条1項について,否認の対象となる「行為又は計算」を 当性は明らかである。 以上のとおり,裁判例及び学説は,共に法132条の2と条文構造及び立法趣旨が共通である法132条1項及び相続税法64条1項について,否認の対象となる「行為又は計算」を文理に従って解釈しているのである。 さらに,法132条の2は,「法人税につき更正又は決定」を受ける法人と合併等の他方の当事者である法人との間に支配関係があること等を要件としていないから,別法人の行為を否認することにより法132条の2が適-85-用されるとすれば,法人は,当該法人と完全に独立した第三者の行為により法132条の2の適用を受けることになる。かかる帰結は,納税者の予測可能性及び法的安定性を著しく害するというほかない。 よって,法132条の2は,法132条1項及び相続税法64条1項と同様に,法132条の2各号に掲げる法人のその「行為又は計算」のみを否認できる規定であると解釈すべきである。すなわち,本件においては,「合併等をした一方の法人又は他方の法人」(同条1号)である原告の「行為又は計算」のみが否認の対象となり得ると解すべきである。 第2 施行令112条7項5号の要件を充足する本件副社長就任について,法132条の2の規定に基づき否認することができるか否か(争点2)について 1 被告の主張(1) 未処理欠損金額の引継規定(法57条2項)の趣旨等法57条1項は,確定申告書を提出する内国法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には,当該欠損金額に相当する金額は,当該各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する旨規定している。 そして,法57条2項は,適格合併等が行われた場合において,被合併法人等の未処理欠損金額があるときは,合併法人等の合併等 各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する旨規定している。 そして,法57条2項は,適格合併等が行われた場合において,被合併法人等の未処理欠損金額があるときは,合併法人等の合併等事業年度以後の各事業年度における同条1項の規定の適用については,当該前7年内事業年度において生じた前7年内事業年度開始の日の属する当該合併法人等の各事業年度において生じた欠損金額とみなす旨規定している。 平成13年度税制改正後の新しい組織再編成に係る税制は,実態にあった課税を行うという税制の基本を踏まえ,原則として,組織再編成により移転する資産等については,移転資産等の時価取引として,その譲渡損益の計上を求めつつ,特例として,組織再編成により資産等を移転する前後で経済実態に実質的な変更がないと考えられる場合,すなわち移転資産等に対する支-86-配が継続している場合には,その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を継続させる,という基本的な考え方に基づき創設されたものである。組織再編成に伴う各種引当金等の取扱いについては,基本的には,移転資産等の譲渡損益に係る取扱いに合わせて,従前の課税関係を継続させることとするか否かを決めることとした。そして,法57条の青色欠損金の繰越控除の規定も,上記の「各種引当金等の取扱い」に含まれ,基本的には,その組織再編成が適格組織再編成に該当する場合には,その引継ぎ等により従前の課税関係を継続させることとして,適格合併又は合併類似適格分割型分割(適格合併等)においては,被合併法人等の青色欠損金額は,合併法人等に引き継ぐことができるものとされている。ただし,一定の場合にはこの引継ぎに制限が設けられており,また,適格合併,適格分割,適格現物出資を行った合併法人等は,一定の場合には自己の青色欠損金の繰越控 に引き継ぐことができるものとされている。ただし,一定の場合にはこの引継ぎに制限が設けられており,また,適格合併,適格分割,適格現物出資を行った合併法人等は,一定の場合には自己の青色欠損金の繰越控除が制限されることとなるという同趣旨の改正が行われたものであって,適格合併等の一定の場合に限り欠損金の引継ぎを認めることとしたものである。 (2) 未処理欠損金額の引継ぎ等に係る制限規定(法57条3項)法57条3項は,適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等との間に特定資本関係があり,かつ,当該特定資本関係が当該合併法人等の当該適格合併等に係る合併等事業年度開始の日の5年前の日以後に生じている場合において,当該適格合併等が共同で事業を営むための適格合併等として施行令112条7項で定めるものに該当しないときは,同条2項に規定する未処理欠損金額には,当該被合併法人等の,①特定資本関係事業年度前の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額(1号),及び②特定資本関係事業年度以後の各事業年度で前7年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち法62条の7第2項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に規定する特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額として施行令112条8項で定める金額(2-87-号)を含まないものとする旨規定している。 同一企業グループ内の適格合併(上記①)について,未処理欠損金額の引継ぎを無制限に認めた場合には,未処理欠損金額を有するグループ外の法人を買収することで,一旦,当該法人を完全子会社としてグループ内に取り込んだ上で,当該法人を吸収する適格合併を行うことによって,当該法人の未処理欠損金額を引き継ぐことが容易に可能となる。このような未処理欠損金額 とで,一旦,当該法人を完全子会社としてグループ内に取り込んだ上で,当該法人を吸収する適格合併を行うことによって,当該法人の未処理欠損金額を引き継ぐことが容易に可能となる。このような未処理欠損金額の引継ぎは,実態として,元々同一の法人が有する限りは処理されることがなかったであろう未処理欠損金額を,いわば,「税金を減少させる権利」として,企業間で自由に売買する行為と変わるところがなく,このような行為が横行することは,資産・負債の支配に係る継続性に着目して未処理欠損金額の引継ぎを認めた法57条2項の趣旨を著しく逸脱することになるものと考えられた。 そこで,法57条3項により,このような実質的な未処理欠損金額の売買を防止する趣旨から,同一企業グループ内の適格合併のうち過去5年以内に特定資本関係(いずれか一方の法人が他方の法人の発行済み株式の総数又は出資の総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他施行令112条4項で定める関係)が発生しているものの未処理欠損金額の引継ぎについて,一定の制限を加えた。 すなわち,特定資本関係が発生してから5年以内に行われる適格合併については,「共同で事業を営むための適格合併等」として政令で定めるものに該当する場合を除き,未処理欠損金額の引継ぎを制限することとしたのである。 (3) みなし共同事業要件の規定内容法57条3項は,租税回避に対処するために設けられた規定であり,特定資本関係を有する法人間の適格合併等で,その特定資本関係が合併法人等の合併等事業年度開始の日の5年前の日以後に生じている場合であっても,そ-88-の適格合併等が共同で事業を営むための適格合併等に該当するときは,適用されない。 この共同で事業を営むための適 合併等事業年度開始の日の5年前の日以後に生じている場合であっても,そ-88-の適格合併等が共同で事業を営むための適格合併等に該当するときは,適用されない。 この共同で事業を営むための適格合併等かどうかの要件については,施行令112条7項に委任されており,①同項1号から4号までに掲げる要件(事業の相互関連性に関する要件,事業の相対的な規模に関する要件,被合併等事業の同等規模継続に関する要件,合併等事業の同等規模継続に関する要件)の全てに該当するもの,又は②同項1号及び5号に掲げる要件(事業の相互関連性に関する要件,特定役員引継要件)のいずれにも該当するものをいう。 みなし共同事業要件は,合併法人が被合併法人の未処理欠損金額を引き継いで繰越控除を認めるのが妥当な場合を規定するものであるところ,合併後の法人等において被合併法人等の事業の継続性が認められる場合に限って,合併法人に被合併法人の未処理欠損金額の引継ぎを認めるものであり,適格合併等が行われた場合に被合併法人等の事業が継続していることに着目して設けられたものと解される。 そして,特定資本関係が生じた後の期間においては,特定資本関係にある合併法人が被合併法人の事業の状態に変更を加えるといったことが容易に行い得るから,みなし共同事業要件においては,特定資本関係の発生以後も被合併法人の事業を組織再編成の時まで従前どおりに続けて引き継ぐことを求めることとしており,その間に被合併法人等の事業の状態を大きく変更するという場合には,特定資本関係発生前の被合併法人等の欠損金を組織再編成後の合併法人等に引き継いで控除することを認めないという考え方が採られている。 (4) 施行令112条7項2号から4号まで施行令112条7項は,法57条3項のグループ内適 組織再編成後の合併法人等に引き継いで控除することを認めないという考え方が採られている。 (4) 施行令112条7項2号から4号まで施行令112条7項は,法57条3項のグループ内適格合併における欠損金額の引継制限の例外である「当該適格合併等が共同で事業を営むための適-89-格合併等として政令で定めるもの」につき,(A)施行令112条7項1号から4号までに掲げる要件(事業の相互関連性に関する要件(1号),事業の相対的な規模に関する要件(2号),被合併等事業の同等規模継続に関する要件(3号),合併等事業の同等規模継続に関する要件(4号))のすべてに該当するもの,又は(B)同項1号及び5号に掲げる要件(事業の相互関連性に関する要件(1号),特定役員引継要件(5号))のいずれにも該当するものとし,これらの要件((A)又は(B))に該当するものについては,法57条3項所定の企業グループ内適格合併における未処理欠損金額の引継ぎを認めている。 このうち,施行令112条7項2号から4号までは,合併法人等と被合併法人等の事業規模の差が一定の範囲内にあること(2号)や合併前の事業が合併後も継続して営まれること(3号,4号)を要件として規定している。 施行令112条7項2号から4号までは,いわゆる大会社が自己に比して相当に小規模であるいわゆる小会社を飲み込むような合併は,一般的に共同で事業を営むことを目的として合併するとは考えられず,むしろ,大会社が,多額の未処理欠損金額を有している小会社を取り込むことによって大会社の税負担を減少すべく合併することがほとんどと考えられることから,このような被合併会社の未処理欠損金額を合併会社の租税回避に利用することを防止する趣旨で設けられたものである。 (5) 施行令112条7項5号(特 く合併することがほとんどと考えられることから,このような被合併会社の未処理欠損金額を合併会社の租税回避に利用することを防止する趣旨で設けられたものである。 (5) 施行令112条7項5号(特定役員引継要件)施行令112条7項5号は,適格合併等に係る被合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員である者のいずれかの者(当該被合併法人等が当該適格合併等に係る合併法人等と特定資本関係が生じた日前において当該被合併法人等の役員又は当該これらに準ずる者であった者に限る。)と当該合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員である者のいずれかの者(当該特定資本関係が生じた日前において当該合併法人等の役員又は当該-90-これらに準ずる者であった者に限る。)とが当該適格合併等の後に当該合併法人等の特定役員となることが見込まれていることを要件として規定している。 これは,規模的に見れば,大会社が小会社を買収,合併するような場合であっても,その小会社が,例えば特許等の知的財産権や技術者等の人的財産,優良な得意先との関係等,何らかの独自の強みを持っているような場合には,必ずしも未処理欠損金額を取り込むことのみが目的とはならず,その強みを生かして共同で事業を営むことを目的として合併が行われる場合もある。そして,合併法人のみならず被合併法人の特定役員も合併後の特定役員に就任するというのであれば,双方の法人の売上金額等の規模が大きく異なっているとしても,当該被合併法人の特定役員は合併後も被合併法人の持つ独自の強みを生かしてその事業を推進するために,合併前後を通じて被合併法人から経営に参画したものと見て,共同で事業を営むことを目的としていると認められるから,いわば,救済措置としての意味で,施行令112条7項2号から4号までの要件を満たさな ,合併前後を通じて被合併法人から経営に参画したものと見て,共同で事業を営むことを目的としていると認められるから,いわば,救済措置としての意味で,施行令112条7項2号から4号までの要件を満たさないとしても,被合併法人等の特定役員のいずれかの者と合併法人等の合併等の前における特定役員のいずれかの者が合併後においても特定役員となることが見込まれている場合には,同様に合併前後を通じて共同で事業を営まれているとする趣旨で,同項5号の要件が規定されているものである。 施行令112条7項5号は,たとえ同項2号から4号までの要件を満たさない場合であっても,被合併法人等の特定役員のいずれかの者と合併法人等の合併等の前における特定役員のいずれかの者が合併後においても特定役員となることが見込まれている場合(特定役員引継要件)には,合併の前後を通じて共同で事業が営まれている,すなわち,同項2号から4号までの各要件を満たす「共同で事業を営むための適格合併等」と同視できるという趣旨で,事業の相互関連性に関する要件(同項1号)とともに,企業グループ内-91-適格合併における未処理欠損金額の引継ぎを認める要件としたものである。 したがって,当該特定役員引継要件が,合併の前後の合併法人と被合併法人の事業の状況を対比していることからして,相当程度の期間,被合併法人の経営に携わる重要な地位に就いて,同法人が持つ独自の強みを築き上げることに貢献した者(すなわち合併後も被合併法人の持つ独自の強みを体現していると見ることのできる者)が,合併後も特定役員に就任して経営に参画することで,被合併法人の独自の強みを生かしてその事業を推進していくものとして,合併前後の双方の特定役員が共同で事業を継続して営むことを想定したものであると捉えなければならない。 更にいえば, ことで,被合併法人の独自の強みを生かしてその事業を推進していくものとして,合併前後の双方の特定役員が共同で事業を継続して営むことを想定したものであると捉えなければならない。 更にいえば,特定資本関係の発生前において,被合併法人等が独自の事業を営む中で,被合併法人等の特定役員として常務に従事し,その事業を体現する者でなければ,特定役員引継要件が想定する特定役員とはいえないと解すべきである。 主として未処理欠損金額の引継ぎという税制上の優遇措置を受けることを目的とし,その手段として事業上の理由が希薄な特定役員の引継ぎをしていることが明らかな場合にまで未処理欠損金額の引継ぎを認めることは,法57条3項の趣旨に反するというべきである。 施行令112条7項5号の特定役員引継要件が設けられた趣旨・目的を踏まえれば,もともと特定役員引継要件を満たし得ない合併について,合併の直前の時期に,合併法人の特定役員を被合併法人の特定役員に形式上兼任させて,特定役員引継要件を充足したことにするのは,不合理・不自然というべきである。そして,このような形での「要件作り」が,みなし共同事業要件の立法趣旨を著しく逸脱するものであり,これに法132条の2が適用され,未処理欠損金額の引継ぎが否認される可能性があることは,一般の納税者にとっては十分に予測可能というべきであり,納税者の予測可能性及び法的安定性を害するものではないことは明らかである。 -92-(6) 本件の組織再編成における不当性要件の充足の有無についてア本件合併に至る経緯の概要P1は,英国のP9グループから,平成17年2月,P2を買収し,完全子会社とした。 P2は,平成17年5月,通信事業を分割して,P10株式会社に売却した時点で約695 の概要P1は,英国のP9グループから,平成17年2月,P2を買収し,完全子会社とした。 P2は,平成17年5月,通信事業を分割して,P10株式会社に売却した時点で約695億円の未処理欠損金額(うち平成14年3月期以降発生分は約666億円)を有していたが,毎年約20億円程度の利益しか出していなかったため,多額の上記未処理欠損金額を控除するには相当な期間が掛かると見込まれていた。このうちの約124億円については,平成21年3月末で繰越期間が経過し,繰り越しができなくなる状況であったため,P1の税務室長であるP33(以下「P33氏」という。)は,平成17年5月頃から,P2の多額の未処理欠損金額をP14グループ内で有効利用できないかを検討していた。 他方,P2の代表取締役であったP13氏は,P2の株式上場を目指し,その内容を検討していたが,P1の代表取締役であるP6氏は,1000億円程度の企業価値にならなければIPO(株式公開ないし株式上場)をする意味がないと考えており,P1取締役会においては,P2の株式公開の是非等について再度審議することが確認されているものの,P2は,株式公開せずに本件合併により解散し,新設分割により設立したP8も,株式公開していない。 ところで,P1は,平成20年9月頃,資金ミーティングにおいて,リーマン・ショック後のタイトな金融情勢の下で手元流動性を高めておく必要があると合意しており,しかも,平成15年12月30日,「2015年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(CB)」を発行していたところ,本件CBは,その所持人が,平成21年3月31日に,額面金額の100パーセントに償還日までの経過利息を付して,P1に対し繰上償還-93-することを請求する権利を有するもので を発行していたところ,本件CBは,その所持人が,平成21年3月31日に,額面金額の100パーセントに償還日までの経過利息を付して,P1に対し繰上償還-93-することを請求する権利を有するものであったため,同年に入ってから本件CBの市場価格が100円を下回っていた場合,投資家から最大500億円の償還請求を受ける可能性があることを危惧していた。 このような状況の下で,P1の財務部は,平成20年10月頃,P2を分社させるとともに,分社後に残った未処理欠損金額を保有する会社をP1の子会社であるP11株式会社とP15株式会社(以下「P11ら」という。)に合併させるスキームを提案したが,P6氏は,P11らではなく,原告に合併させることがP14グループ全体にとっては望ましいと考えた。そこで,P6氏は,P33氏に,P1が原告にP2を売却し吸収合併させることについて相談し,P33氏は,その中で未処理欠損金額を有効利用する方法の具体的検討を始め,P2の未処理欠損金額約666億円を余すところなく利用することとした。 P6氏は,平成20年10月27日,P1の取締役であり,かつ,原告の代表取締役社長であったP7氏に対し,口頭でP2の株式を原告に譲渡する旨提案し,P33氏は,同年11月21日,原告側に対し,P33氏作成の提案書(甲12)をもって,そのスキームを説明した。 P33氏作成の提案書(甲12)にある「ストラクチャー案」には,「ステップ①」から「ステップ④」までとして,P8の新設分割並びに原告によるP2の買収及び吸収合併について記載されているところ,これは,P2を設備を保有する会社(P2)と営業及び従業員を承継する会社(P8)の2つに分割し,原告が,まず,P8の株式を譲り受け,その次に,P2の株式を譲り受けた(本件買 て記載されているところ,これは,P2を設備を保有する会社(P2)と営業及び従業員を承継する会社(P8)の2つに分割し,原告が,まず,P8の株式を譲り受け,その次に,P2の株式を譲り受けた(本件買収)上で,P2を吸収合併(本件合併)するというスキームであって,本件合併の期限を平成21年3月末とするものであった。 かかるスキームを実行することにより,原告は,平成21年3月期の末日時点でP2の未処理欠損金額約666億円のうち,約501億円を引き-94-継ぎ,その余の約165億円については,P2において,同社に生じる分割益約140億円と相殺することとされた。なお,P8には,上記分割益と同額の資産調整勘定(法62条の8第1項)が生じることとなり,同資産調整勘定は,5年間にわたって減額した上で,損金の額に算入されることとなるものであった(同条4項及び5項)。 本件提案によるP2の売却想定価格は700億円とされたが,そのうち約200億円は「繰越欠損金の価値」として算出されたものである。本件提案の後,原告とP1の間で続けられた価格交渉は,原告がP2の未処理欠損金額を引き継ぐことができることを前提にしたものであったし,平成21年1月15日,P2の買収価額について,P6氏から,「P1としては450億円を最低譲渡価額とする」旨の発言があり,これを踏まえて,原告側で更に検討した結果,同年2月19日の取締役会において,P2の買収価格を450億円とすることに決定したが,この買収価格には,「繰越欠損金の節税効果」として約217億円が含まれていた。 ところで,原告は,P2の未処理欠損金額を引き継ぐため,特定役員引継要件(施行令112条7項5号)を充足し,みなし共同事業要件(施行令112条7項)を満たす必要があったが,原告には, 。 ところで,原告は,P2の未処理欠損金額を引き継ぐため,特定役員引継要件(施行令112条7項5号)を充足し,みなし共同事業要件(施行令112条7項)を満たす必要があったが,原告には,P1とP5との役員比率を維持しなければならないという事情があり,P2の特定役員を原告の特定役員に就任させると,P5側からも原告の特定役員に就任させることになるため,本件合併によって,P2の特定役員を原告の特定役員に就任させることはできなかった。そこで,原告は,P2の未処理欠損金額を引き継ぐために,合併法人である原告の特定役員を増員させない方法で,形式的であるにせよ,特定役員引継要件を満たす状態を作出する必要があった。 P33氏は,本件提案を実行するに当たり,原告に対し,「税務上問題となる点については,手続面で注意深くやるように」,「この買収のキモ-95-は特定役員の就任だから,そこだけは十分注意を払っておくように」との指示をし,かかる指示を受けて,原告とP1との間で協議が行われ,その結果,原告は,P7氏をP2の取締役副社長に就任させることを決定した。 P1の財務・税務部門は,本件副社長就任に向けた具体的な作業が行われる以前に,P6氏に対して,P2の未処理欠損金額を原告が利用するには,P7氏をP2の取締役(特定役員)に就任させることが必要であることを伝えており,P6氏は,平成20年11月27日,P7氏に対して,口頭でP2の取締役副社長に就任することを依頼し,その承諾を得ていた。 以上の経緯を経て,P7氏は,平成20年12月26日,P2の取締役副社長に就任した。 その後,平成21年2月2日,新設分割によりP8が設立され,P8の発行済株式の全てが,P2に交付された。 原告は,同月20日,P 12月26日,P2の取締役副社長に就任した。 その後,平成21年2月2日,新設分割によりP8が設立され,P8の発行済株式の全てが,P2に交付された。 原告は,同月20日,P2からP8の発行済株式の全部を115億円で譲り受けて,P8を原告の完全子会社とするとともに,同月24日,P1からP2の発行済株式の全部を450億円で譲り受けて(本件買収),P2も原告の完全子会社とした。これにより,原告とP2との間には,特定資本関係(法57条3項)が生じることとなった。その後,原告は,同年3月30日,原告を存続会社,P2を消滅会社とする吸収合併(本件合併)を行い,P2の権利義務の全部を承継した。 これらは,P33氏作成の提案書(甲12)で示された「ストラクチャー案」に沿って行われたものであり,それに示された平成21年3月末までに本件合併をするというスケジュールどおりに実行された。 そして,本件合併に伴い,P2の取締役は全員退任し,P7氏以外の者は,いずれも本件合併後の原告の役員には就任していない。 イ本件副社長就任は,未処理欠損金額の引継ぎに必要な特定役員引継要件を形式的に充足させることを目的とするものであること。 -96-以上のとおり,P33氏は,P1において,P2の未処理欠損金額を漏れなくP14グループ内で活用可能とするため,上記約666億円のうち繰越期限の迫った約124億円についても活用が可能となるスキームとして,4段階の組織再編成を内容とする平成20年11月21日付け「ストラクチャー案」(甲12)を作成し,その後,当該ストラクチャー案が実行に移され,それに従って一連の組織再編成が行われた。 この一連の組織再編成においては,本件新設分割を適格分割ではなく非適格分割と 案」(甲12)を作成し,その後,当該ストラクチャー案が実行に移され,それに従って一連の組織再編成が行われた。 この一連の組織再編成においては,本件新設分割を適格分割ではなく非適格分割とし,これによりP2の平成21年3月期に期限切れとなる未処理欠損金額にほぼ相当する金額を新設会社の資産調整勘定として計上し,その後5年間にわたり順次損金算入することを可能とし,もってP2の未処理欠損金額をP14グループ内で漏れなく利用するため,新設会社であるP8を原告の完全子会社とするに当たり,本件新設分割後に「本件買収及び本件合併」という2つのステップを踏めば足りるところ,あえてその前に原告がP8を買収する(本件P8買収)という事業上必要がないステップを介在させた。 本件合併に至るまでの一連の行為は,P6氏において,原告にデータセンターを自社保有させるべきであるとの意向があったとしても,それ以上に,P2が活用しきれないような巨額の未処理欠損金額を原告が引き継いで利用することで,P14グループ内でその税負担軽減効果を享受するとともに,当該税負担軽減効果を分割後P2の売却代金としてP1が享受し,同社の資金需要を満たすことも不可欠の前提とされていたことを示している。 そして,P33氏ら事務方においては,これを実現するために,個々の組織再編成行為の順序や時期を変えることによって組織再編税制の個別規定を意図的に充足又は回避し,税負担の軽減を目的とするスキームを構築したのである。そうすると,このようなスキームにより組織再編成を行-97-うこと自体には,P33氏の企図した租税回避目的以外の目的は見いだし難いというべきである。 ウ P7氏がP2の取締役副社長に就任する事業上の理由は希薄であったこと。 本件では,あえて,本 体には,P33氏の企図した租税回避目的以外の目的は見いだし難いというべきである。 ウ P7氏がP2の取締役副社長に就任する事業上の理由は希薄であったこと。 本件では,あえて,本件買収(特定資本関係の発生)に先立って,原告(合併法人等)の社長であるP7氏がP2(被合併法人等)の取締役副社長に,緊急に就任しなければならない必要性は何ら存在しない。すなわち,P6氏は,平成19年以降,P2がクラウド事業に進出することの検討を始めているとの報告を受けており,また,原告がデータセンターを持つべき,クラウド事業に進出すべきだということを本件提案(平成20年11月)の1,2年ぐらい前から常々言っていたと証言しているにもかかわらず,本件提案に至るまでの間,P2において原告との協力及びクラウド事業展開をするための検討を具体的に行ったという事実は認められない。 実際に,P7氏のP2の取締役副社長としての在任期間における職務執行を見ても,いずれもP2の特定役員としてのものとは,およそ認められないものであり,本件買収までの短期間において,P7氏がP2の特定役員に就任しなければならない特別の事情があったとは認められない。すなわち,P7氏は,原告とP2との間に特定資本関係が生ずる直前の平成20年12月26日に,慌しくP2の取締役副社長に就任しなければならなかったことについて,具体的な理由を述べておらず,また,原告がP2を買収し,両社の間に特定資本関係が発生した平成21年2月24日以前においては,同年1月21日の取締役会に出席したほかは,同月7日のP13氏との間の事業方針の会議を行ったぐらいであり,特段,緊急性のある職務を遂行したものとは認められない。 P7氏は,P6氏から,平成20年11月27日,初めてP2の取締役副社 7日のP13氏との間の事業方針の会議を行ったぐらいであり,特段,緊急性のある職務を遂行したものとは認められない。 P7氏は,P6氏から,平成20年11月27日,初めてP2の取締役副社長就任を要請され,そのわずか約1か月後の同年12月26日には,-98-P2の取締役副社長に就任している。P2のP13氏が,P6氏による本件副社長就任の要請を知ったのは,平成20年11月27日の就任要請の2週間後の平成20年12月10日より後であって,P2側にP7氏の取締役副社長就任の要請について意見を聞くことなく一方的に就任が要請されている。このような経緯から見て,本件副社長就任は,いかにも慌しく行われたものというべきであるが,その理由は,P33氏が立案した計画に従い,P33氏作成の提案書(甲12)の「スケジュール案」によれば,1月中旬以降行われる予定となっていた「○(引用者注:P2を指す。)株式譲渡」(特定資本関係発生)より前に本件副社長就任を行う税務上の必要があったことによるものである。 上記のような本件提案以前のP6氏の対応,P7氏の証言内容及び職務の状況に照らせば,仮にP7氏をP2の取締役副社長に就任させることに事業上の目的が存在したとしても,特定資本関係が発生する直前の時期にあえて就任させる事業上の必要性は乏しかったものといわざるを得ない。 エ P7氏のP2の副社長という肩書にも特段の事業上の意味は認められず,税務上の目的で付された役職と認められること。 P7氏は,P8の設立に伴い,P2の当初取締役8名とともに,P8の取締役に就任している。この点,P8が,全従業員に加え,P2の事業のうちデータセンターの営業・販売及び商品開発に係る事業など重要な部分を引き継いでいることなどからすれば,仮にP7氏を事業上 ,P8の取締役に就任している。この点,P8が,全従業員に加え,P2の事業のうちデータセンターの営業・販売及び商品開発に係る事業など重要な部分を引き継いでいることなどからすれば,仮にP7氏を事業上の理由のためP2の副社長という職につける必要性があったのであれば,新設されたP8においても副社長になることが自然であるが,P8におけるP7氏の立場は,副社長の肩書のない一般の取締役であり,P6氏は,P7氏が新設されたP8の役員に就任していることすらも明確に認識していない。以上からすると,P2の副社長という肩書には,事業上の意味は極めて希薄であったといえる。 -99-他方,前記のとおり,税務上の観点からは,P7氏がP2の副社長という肩書を有することは,「特定役員」の要件を満たすために極めて重要であった。 このようにP7氏のP2における副社長という肩書に事業上の必要性は乏しく,専ら税務上の理由から付されたものであるというべきである。 以上に述べたとおり,本件買収が,仮に原告によるデータセンターの自社保有というP6氏の意向から原告に提案されたものであったとしても,本件副社長就任そのものは,本件買収の不可欠の前提であったP2の未処理欠損金額の引継ぎを実現するため,P33氏による意図的な組織再編成スキームの一環として,P33氏から発案されたものであり,本件副社長就任が,事業上の理由が希薄であるにもかかわらず特定役員引継要件を形式的に充足させるという税務上の目的を達成するためにあえて行われた行為であると認められる。 オ本件合併が共同で事業を営む目的で行われたものであるとは認められないこと。 本件合併においては,原告も自認するとおり,被合併法人であるP2の当初特定役員であるP13氏及びP20氏のい オ本件合併が共同で事業を営む目的で行われたものであるとは認められないこと。 本件合併においては,原告も自認するとおり,被合併法人であるP2の当初特定役員であるP13氏及びP20氏のいずれについても,本件合併後に原告の特定役員に就任することには「事業上の必要性が高くないと判断され」たため,本件合併後に新たに原告の特定役員として引き継がれることは検討されなかった。 このことは,本件合併が,P2の事業を体現する特定役員であるP13氏やP20氏を大会社である原告の特定役員として引き継ぐことで,共同で事業を行う目的でされたものでないことを明らかに示すものである。 P7氏がP2の取締役副社長に就任したのは,本件買収により原告と分割後P2との間に特定資本関係が生じた平成21年2月24日の約2か月前である平成20年12月26日であり,本件合併が行われた平成21年-100-3月30日現在でのP7氏の特定役員在任期間は,わずか3か月間にすぎなかった。被合併法人の特定役員として,適格合併に至るまでの就任期間が短期であったとしても,その者が,合併法人を通じて被合併法人の事業を共同事業として継続させる役割を担っていく場合もあり得るが,本件副社長就任については,事業上,特段の必要性,緊急性がないにもかかわらず,税務上の観点からのP33氏の助言を受け,慌しく行われたものであり,副社長としての肩書自体も,その事業上の意味が極めて希薄であったと認められる。 また,特定資本関係発生の直前の段階になって,合併法人等の特定役員が被合併法人等の特定役員と「一人二役」を兼ねるということは,共同事業を行う場合に通常行われるものではない。むしろ,一般的には,特定資本関係発生後に,合併に向けて地ならし目的で完全子会社の特定役員に就任してから の特定役員と「一人二役」を兼ねるということは,共同事業を行う場合に通常行われるものではない。むしろ,一般的には,特定資本関係発生後に,合併に向けて地ならし目的で完全子会社の特定役員に就任してから,若しくは完全親会社の特定役員としての立場から,業務上の指示をすれば,合併に向けた準備は容易であり,かつ,それで十分足りると考えられる。買収価格をめぐり,せめぎ合いの交渉が行われていた段階で,買主として交渉している原告が,買収対象企業の取締役副社長に就任すること自体,組織再編成上の経済取引としても不自然である。一人二役であれば,常に特定役員引継要件を満たし得ないというものではなく,たまたま,一人の者が複数の法人の特定役員を兼任しており,それぞれの法人の事業を体現するような立場にあると認められるような場合には,両社が合併するに当たって特定役員引継要件を充足すると考えても,みなし共同事業要件を設けた立法趣旨に合致すると考えられる場合はあり得る。しかしながら,本件副社長就任のように,特定資本関係が生じる直前の時期に,合併法人の特定役員を被合併法人の特定役員に兼任させておきさえすれば,特定役員引継要件を充足できるとするのは,正しく,「ためにする要件作り」であり,特定役員引継要件が想定するものではなく,むしろ,-101-原告が施行令112条7項5号の規定振りの盲点を突くような形で,立法趣旨を逸脱して要件を満たす外形を作出したというべきである。 これらの点に鑑みると,P2の取締役副社長としてのP7氏が,本件合併の時点において,同社の事業を体現するような者になっていたとは,到底いえない。 しかも,P2の当初取締役は,本件合併に伴い全員退任し,本件合併後の原告の役員に就任した者は1人もおらず,本件合併後に共同で事業が行われることを うな者になっていたとは,到底いえない。 しかも,P2の当初取締役は,本件合併に伴い全員退任し,本件合併後の原告の役員に就任した者は1人もおらず,本件合併後に共同で事業が行われることを担保するような分割後P2の特定役員は,一切残っていないのであるから,施行令112条7項5号の趣旨に照らして考えれば,被合併法人であるP2の特定役員が全員退任するような適格合併と実質的に何ら変わりがないと評価される。 カ P2の主要事業及び従業員・当初取締役の全員はP8に引き継がれており,本件合併時のP2にP7氏が体現すべき共同で事業を営むべき実態があったとは認められないこと。 平成21年2月2日の本件新設分割により,P2のデータセンターの営業・販売及び商品開発に係る事業に関する権利義務は,データセンターの設備構築,保守運用に係る事業を除き,P8に承継された。 具体的には,P2は,ソリューション事業本部及びビジネス開発本部において行っていたデータセンターの営業,役務提供及びサービスの開発に係る事業に関する契約の一切について,契約上の地位をP8に承継したほか,P2のデータセンターの営業・販売及び商品開発に係る事業に関する一切の知的財産権及びノウハウ並びにこれらの使用権及び実施権をP8に承継した。また,P2は,P8の設立により,それまでP2に在籍していた従業員全てについて,その労働契約をP2と同一の条件でP8に引き継ぎ,以後はP8が同社に在籍する従業員として雇用している。 そして,P2の当初取締役のうち本件合併後,原告の取締役に就任した-102-者はおらず,P2の当初取締役は全員P8の役員に就任し,同社に引き継がれている。 このように,分割後P2は,データセンターの設備そのものと多額の未処理欠 告の取締役に就任した-102-者はおらず,P2の当初取締役は全員P8の役員に就任し,同社に引き継がれている。 このように,分割後P2は,データセンターの設備そのものと多額の未処理欠損金額を残すのみで,従来の事業のうちデータセンターの設備構築,保守運用に必要な事業のみを行うところとなっていた。 この点,P6氏は,原告とP2の協業によるクラウド事業の推進のため,原告によるP2買収を提案した旨述べるが,実際には,上記のとおり,P2の主要事業,従業員及び役員はP8に引き継がれ,本件合併時のP2(分割後P2)に原告と共同で事業を営むべき実態があったとは認められず,この点でも,本件合併が施行令112条7項が想定するような共同事業を行う目的で行われたものとは認められない。 すなわち,P2の取締役副社長としてのP7氏が体現すべき同社の事業そのものが,実態を伴っていないものとなっていたというべきである。 キ本件副社長就任を容認すれば,組織再編税制の趣旨・目的に著しく反する結果となり,「不当」であること。 以上のとおり,本件合併に至るまでの一連の行為は,P2の未処理欠損金額を,言わば,「税金を減少させる権利」として,原告とP1との間で自由に売買したものと評価できるものであって,本件合併は,法57条3項の立法趣旨に照らして,正に未処理欠損金額の引継ぎを制限すべきものに該当する。原告らは,同項が設けている制限を潜脱するため,事業上,特段の必要性も緊急性もないのに本件副社長就任を行い,共同事業が行われることを担保するような実質を有する特定役員が存在しないのに,本件合併の実態とかい離した「共同で事業を営む適格合併等」の形式を意図的に作出したものである。 このように,本件副社長就任は,組織再編税制の個別規定を形式的 する特定役員が存在しないのに,本件合併の実態とかい離した「共同で事業を営む適格合併等」の形式を意図的に作出したものである。 このように,本件副社長就任は,組織再編税制の個別規定を形式的に充足させることを主たる目的とした行為であり,本件副社長就任を容認すれ-103-ば,当該規定の趣旨・目的に著しく反する結果となる。したがって,本件合併に至るまでの一連の行為における本件副社長就任は,組織再編税制における法制度を濫用して税負担の軽減を図る行為であって,法132条の2の適用上,法人税の負担を不当に減少させる結果をもたらすと評価されるべきである。 (7) 本件副社長就任が否認の対象となる行為か否かについて本件副社長就任は,P14グループ全体の税務メリットの享受という目的の下,P1の要請,ひいてはP14グループ全体の要請に応じた原告の行為といえる。すなわち,P2の未処理欠損金額を引き継いでこれを直接有効利用する立場にある原告が,これを実現させるべく立案されたP1の計画に関与しないはずがない。原告の内部においては,特定役員引継要件を満たすべく,原告の特定役員のうちの誰かを本件買収前にP2の特定役員に就任させる必要があることについて認識した上で,P7氏をP2の特定役員に就任させる旨決定したことが明らかである。 本件副社長就任は,原告の代表取締役であるP7氏が,原告としての意思決定を行い,原告の意思決定に基づき,原告の業務執行として,自らを,将来的に合併することが想定されていたP2の取締役副社長に就任させたものと認められる。 このように,本件副社長就任は,決してP7氏個人の行為ではなく,原告の行為又は原告の行為と同視し得る行為であり,法132条の2の規定により否認することができる。 2 原告の主張 このように,本件副社長就任は,決してP7氏個人の行為ではなく,原告の行為又は原告の行為と同視し得る行為であり,法132条の2の規定により否認することができる。 2 原告の主張(1) 本件副社長就任に至る経緯の概要P2は,平成18年頃から株式上場を目標に掲げ,平成18年から平成20年までにかけて,データセンター事業を中心に順調に業績を伸ばしていた。 -104-しかしながら,それまでのP2のデータセンター事業は,サーバの設置場所を賃貸するビジネスモデルであり,大きな付加価値の創出が可能ではないため,遅くとも平成19年頃には,P2は,次の事業戦略・次世代のデータセンター事業の在り方として,クラウドコンピューティング事業へ進出することの検討を始めていた。 また,P2は,目標であった株式上場について,平成20年3月19日,P1財務部の一部門である関連事業室に助言を求めながら進めてきた分社化スキームによる株式上場案(甲17)をまとめた。分社化スキームとは,P2が新設分割により,P2の事業を承継する会社と未処理欠損金額を継続して保有する会社を分離し(すなわち,P2の事業の主要な資産・負債を新設分割設立会社に承継させて当該新設分割設立会社を設立し),その上で,新設分割設立会社の上場を目指すというものであり,未処理欠損金額のある会社(すなわちP2)のままでは上場審査の過程で支障が生じる可能性があるために考案されたものである。そして,平成20年3月27日開催のP1取締役会において,P1のグループ企業で,P2と類似する事業を行うインフラ事業会社であったP11らなどの会社との位置付けを整理することなどを条件として,株式上場の準備開始の承認を得た。 株式上場準備を始めることについてP1の了解を 2と類似する事業を行うインフラ事業会社であったP11らなどの会社との位置付けを整理することなどを条件として,株式上場の準備開始の承認を得た。 株式上場準備を始めることについてP1の了解を得たP2は,分社化スキームによる株式上場案をより具体化し,平成20年7月16日の同社取締役会において,7月16日分社化スキーム案(甲22の「当初案」)を報告した。他方で,P2は,P34株式会社に上場のための事業の評価を依頼したところ,同社は,平成20年7月17日,未処理欠損金額による影響を含まないP2の事業価値について,約293億円ないし約358億円と算定してきた。当該事業価値は,当時P1及びP6氏が子会社の上場を認めるにあたり最低限必要と考えていた時価総額1,000億円を大きく下回るものであった。 -105-P2としては,7月16日分社化スキーム案をもって株式上場に向けた具体的な準備に入りたかったものの,それらの報告を受けたP2取締役兼P1取締役であるP16氏及び関連事業室としては,約350億円という事業価値では株式上場を行うには低過ぎるため,子会社上場に必要と考えていた時価総額1,000億円に達するためには,より成長戦略を明確にしなければならないと考え,また,7月16日分社化スキーム案では未処理欠損金額の全てを処理することは困難であったことから,7月16日分社化スキーム案をもってP1取締役会に諮ることは見送り,引き続き検討を行うことにした。そこで,P2において時価総額1,000億円達成に向けた具体的な成長戦略として描かれたのが,クラウドコンピューティング事業の具体化であった。 他方,P1の関連事業室においては,P2の株式上場に向けた分社化スキームの検討を更に進め,税務上の観点については,P1の税務顧問でもあるP3 ウドコンピューティング事業の具体化であった。 他方,P1の関連事業室においては,P2の株式上場に向けた分社化スキームの検討を更に進め,税務上の観点については,P1の税務顧問でもあるP33氏にも相談の上,事業譲渡案及び単純分社化案を作成し,平成20年9月中旬頃,両案をP2に示しスキームの検討を再開させるとともに,引き続き,P2とP11らとの合併時期等について検討を行った。事業譲渡案とは,基本的な分社化スキームは変更せずに,P2が新設分割によってP2が締結している契約を承継させる新設分割設立会社を設立した後に,P2に資産としてのデータセンター(土地・建物等)を残した上で,当該新設分割設立会社にP2のデータセンターの営業・販売及び商品開発に係る資産・負債などを事業譲渡し,設備保有会社となったP2を,P11らと合併させる案(甲22の「P33先生提示案」)である。この事業譲渡案は,新設分割設立会社が株式上場することが見込まれていたこと等から,新設分割が非適格分割となることが想定され,非適格分割によりP2に生じるのれん等の譲渡益と,その後の事業譲渡による譲渡益を,平成21年3月末に消滅する未処理欠損金額に充当するとともに,P11らとの合併により,平成21年4月-106-以降に消滅期限が到来する未処理欠損金額を処理するという案であった。他方で,単純分社化案とは,事業譲渡案における会社分割及び事業譲渡という2つのステップの代わりに,P2にP11らとシナジーのある資産としてのデータセンター(土地・建物等)を残した上で,P2がデータセンター事業の営業・販売及び商品開発に係る資産・負債などを新設分割設立会社に承継させる新設分割を行うという1つのステップしか行わない案(甲22の「その他」案)である。この単純分社化案は,事業譲渡案と同様に新設分 営業・販売及び商品開発に係る資産・負債などを新設分割設立会社に承継させる新設分割を行うという1つのステップしか行わない案(甲22の「その他」案)である。この単純分社化案は,事業譲渡案と同様に新設分割設立会社が株式上場することが見込まれていたこと等から,新設分割が非適格分割になると考えられ,非適格分割によりP2に生じる税務上の評価益によってP2が保有する平成21年3月末に消滅する未処理欠損金額を処理し,その後のP11らとの合併で平成21年4月以降に消滅期限が到来する未処理欠損金額を処理するという案であった。その結果,関連事業室は,これらの両案のいずれかを採用する方向で具体的な検討を進めていくことを基本的な方針とした。 P16氏は,平成20年10月中旬頃に,P6氏に対して,上記の基本的な方針,すなわち,P2が,クラウドコンピューティング事業を具体的な成長戦略と位置付けるとともに,株式上場のために新設分割をし,残った親会社(P2)については同じデータセンター保有会社であるP11らと合併させる,との方針を口頭で説明した。 P6氏は,かねてから,検索サービスにおいてシェアを拡大していたP17への対抗並びに近い将来において成長の見込めたクラウドコンピューティングサービスの品質確保及びデータセンターに係るコストの更なる削減のため,原告はデータセンターを自社保有すべきであると考えていた。他方,当時のP2の事業の本質は不動産賃貸業であり,P2はクラウドコンピューティング事業を行うために必要不可欠なインターネットの経験も知見も全く持っていない,データセンター事業会社であった。P6氏は,P16氏か-107-ら,上記のとおり説明を受けたが,かねてからの考えに基づき,それであれば,P2のデータセンターはP11らではなく原告がP2を買収・ い,データセンター事業会社であった。P6氏は,P16氏か-107-ら,上記のとおり説明を受けたが,かねてからの考えに基づき,それであれば,P2のデータセンターはP11らではなく原告がP2を買収・合併して引き継ぐ(原告が自社保有する)のが原告のビジネス及びP14グループ全体での企業価値の向上という観点から最もプラスとなると判断し,平成20年10月27日,P7氏に対して,本件提案を行った。 また,P6氏は,クラウドコンピューティング事業には,インターネットビジネスのノウハウが不可欠であるところ,P2にはインターネットビジネスのノウハウは蓄積されておらず,P2の当時の経営陣の中にもクラウドコンピューティング事業に必要不可欠なインターネットビジネスに精通した者がいないことを憂慮し,P1取締役の中で最もインターネットビジネスに精通しており,またそのような知見を持った経営の第一人者として広く認識されているP7氏がP2の経営陣として適任と考え,P1の取締役会があった平成20年11月27日,P7氏に対して,上記の理由を説明した上で,P2の取締役副社長就任を要請した。 P1取締役会の機会にP6氏から本件副社長就任の要請を受けたP7氏は,同日,P6氏に対し,本件副社長就任を承諾する意思を伝えた。その理由は,第一に,P1の取締役としての立場から,本件副社長就任を受ければ,P6氏の期待に応え,クラウドコンピューティングを含むP2へのインターネットビジネスのノウハウの提供,同事業分野における原告との協業をP2の内部から実行することのみならず,P2の既存のデータセンター事業においてもやはりP2内部からコスト構造を改善することを通じて,株式上場に向けたP2の企業価値の向上に貢献し,P14グループの価値最大化に資することが可能であると考えたた の既存のデータセンター事業においてもやはりP2内部からコスト構造を改善することを通じて,株式上場に向けたP2の企業価値の向上に貢献し,P14グループの価値最大化に資することが可能であると考えたためである。また,P1取締役の中でインターネットビジネスの専門家として最も知見を有しており,当時,P1取締役の中で唯一データセンター事業会社(株式会社P18)の経営にも関与したことがあり,データセンターを利用してサービスを提供するP21の取締役を-108-務めていたこともある自分しか,就任の適任者はいないという考えもあった。なお,P7氏は,原告とのP19データセンターに係る協業関係も踏まえ,P2の既存のデータセンター事業においてP2の内部からコスト構造を改善することができることは原告の代表取締役の立場からもメリットであると感じていたが,P7氏の認識は,本件副社長就任は主にP1取締役としての立場で行ったというものであった。 そこで,P7氏は,本件副社長就任の要請を受諾することとした。 平成20年12月10日,P2代表取締役社長であったP13氏は,P6氏から,P2の株式を原告に譲渡する提案をしている旨の話を聞かされると共に,クラウドコンピューティング事業を成長の柱として株式上場を目指すのであれば,インターネットビジネスのノウハウが必要不可欠であり,そうであれば,まずは原告との提携を進めるとともに,インターネットビジネスの専門家であるP7氏にP2の経営に関与してもらった方が良いとの提案を受けた。 これを受けたP13氏は,原告との提携を進めることで,P2は既存のデータセンター事業において原告という重要な顧客を確保できるとともに,P7氏にP2の経営に関与してもらうことにより,P7氏のインターネットビジネスの経験・ノウハウを 提携を進めることで,P2は既存のデータセンター事業において原告という重要な顧客を確保できるとともに,P7氏にP2の経営に関与してもらうことにより,P7氏のインターネットビジネスの経験・ノウハウを享受することができ,原告との協業を含めクラウドコンピューティング事業を促進することができるという事業上のメリットを感じたため,同日中に,P7氏に対し,P2の今後の事業戦略を説明するとともに今後の一層の協業関係の深化を示唆する挨拶をメールで行った。 なお,P1の交渉担当者は,P6氏からP7氏に対する就任要請の後の平成20年12月上旬に,原告の交渉担当者に対して,P7氏又はP23をP2の取締役としたい旨をメールで伝え,原告の交渉担当者は,P7氏がP2の取締役に就任すると回答した。P1の交渉担当者が,原告の交渉担当者に対して,上記のようなメールを送信したのは,本件副社長就任がP6氏及び-109-P7氏というP1の経営陣の間において平成20年11月27日には事業上の目的で既に決まっていたことを未だ知らなかったからにすぎない。 (2) P7氏のP2取締役副社長としての職務遂行の状況ア取締役会等への出席・発言P7氏は,合併に伴う解散までの間P2の取締役副社長を務め,その間に開催された同社取締役会のうち,特別利害関係のある取締役に該当する議案が上程されており法的に出席できない取締役会を除き,文字どおり全ての取締役会に出席又は書面による議決権を行使した。 いうまでもなく,P2の取締役会はP2の業務執行の意思決定に係る会社法上の機関であり,任意の会議体である経営会議とは異なる。また,実際のP2社内の位置付けとしても,経営会議は「事務的な話」(本件更正処分に先立つ調査段階でのP13氏の処分行政庁への申述参照。)つ 社法上の機関であり,任意の会議体である経営会議とは異なる。また,実際のP2社内の位置付けとしても,経営会議は「事務的な話」(本件更正処分に先立つ調査段階でのP13氏の処分行政庁への申述参照。)つまり主として業務執行の実務面を議論する場であり,いわゆる経営判断を要する業務執行の意思決定に係る事項は全て取締役会に上程され,その審議を要していたものである。 P7氏は,具体的には,例えば,平成21年1月21日の取締役会では,P2の2009年度予算及び中期計画についての議案において議決権を行使しているが,当該計画は原告からの買収及び合併を前提としないものであるから,少なくとも同日におけるP7氏の議決権はP2の取締役副社長として行使されたものである。 また,平成21年2月25日に書面開催された取締役会では,P7氏は自身の特別利害関係性について,P2の取締役会事務局に問い合わせると共に,役員報酬額に関する議案についても質問を行い,平成21年3月18日にP2とP8の取締役会が連続して開催された際には,決算報告及び今期損益見通しに関し,取締役会の席上で発言を行うなど,P2及びP8の経営に積極的に参画した。 -110-イ P2とP8間の事業提携契約締結への関与さらに,P2とP8が分社した平成21年2月2日以降は,P2とP8の業務提携契約の内容についても,P2の取締役副社長として確認をし,承認を行うなど,その職責を全うした。 ウ P21とP2との業務提携への関与当時原告が議決権の65パーセントを保有し,レンタルサーバーサービス事業を展開していたP21とP2(会社分割後はP8。以下本項にて同じ。)とのシナジーを期待して,P2とP21との間の業務提携契約の締結をP2社内に提案したところ,P1 有し,レンタルサーバーサービス事業を展開していたP21とP2(会社分割後はP8。以下本項にて同じ。)とのシナジーを期待して,P2とP21との間の業務提携契約の締結をP2社内に提案したところ,P13氏はこれを承諾の上,平成21年2月26日,P7氏との間の会談で,提携に関する人員配置等の具体的な方針を報告し,P7氏が当該提携案を確認・了承した。そして,平成21年3月12日付でP2・P8の取締役P35とP13氏がそれぞれP21の代表取締役社長と取締役に就任している。 エ原告代表取締役兼P2取締役副社長としてのP2への関与加えて,原告の代表取締役社長兼P2取締役副社長との立場からは,原告とP2との合併準備に際しても,P8の社名決定や決裁フローの確立において,平成21年2月26日及び同年3月27日にP13氏と協議をしつつ意思決定を行うなど,両社取締役を兼務していたことで,本件の手続の円滑化にも寄与をしている。 オ P8の取締役としての関与なお,P7氏は,本件合併以後もP2のデータセンターの営業,販売及び商品開発に係る事業に関する権利義務を承継したP8の取締役として,P2の取締役副社長として経営判断に関与していたコスト構造の改善,原告との協業等について,P8取締役会でほぼ毎回のように積極的に発言をし,P8の事業にも貢献している。 P7氏は,P2の設備投資計画については,徹底したコスト削減を実現-111-した形でなければ,新規のデータセンターに対する投資は謙抑的であるべきの方針を示し,P7氏の方針に従い,P2における新データセンターの投資計画はいったん凍結された。データセンターの運営を事業内容とするP2にとって,データセンターの設備投資計画は,経営上極めて重要な判断事項であったが,P7氏が 従い,P2における新データセンターの投資計画はいったん凍結された。データセンターの運営を事業内容とするP2にとって,データセンターの設備投資計画は,経営上極めて重要な判断事項であったが,P7氏が示した設備投資計画の方針,殊にコスト面を慎重に検討すべきという経営姿勢は,P2における設備投資計画全体についても強い影響力を有するものであった。 カ P2の営業方針等についての提案,営業活動への貢献P7氏は,P2による他社との協業についても副社長として貢献したいとの考えや,P2の取締役P36らからの求めて応じて,P7氏でなければ面会の機会すらないようなIT業界の大物経営者に対して直接,P2(P8)のサービスを利用するよう伝えるなどしており,P7氏が有する人脈を活用して,P2(P8)の営業活動すなわち取引先・契約先の開拓に貢献している。 さらに,P7氏は,本件副社長就任当時から,P2も早期にコロケーション型からクラウドコンピューティング型へビジネスモデルをシフトすべきだと考えていたこともあり,機会があるごとに,P2の役員らに対してその旨の意見を述べていた。 (3) 本件副社長就任の事業上のメリットア P6氏は,まずはP1取締役の中で最もインターネットビジネス及び個人・小規模事業者を顧客とする事業に精通しており,またそのような知見を持った経営者の第一人者として広く認識されているP7氏を,P2の取締役副社長に選任し,主としてコスト構造の改善や営業協力といった面においてP2の経営に関与させ,その上で,積極的に本件提案の合意に向けた交渉を進めることがP1にとって望ましいと考えるとともに,原告はP2にとって最大顧客であったところ,その優良顧客を逃がさないために-112-は,やはり原告の代表取締役社長である 提案の合意に向けた交渉を進めることがP1にとって望ましいと考えるとともに,原告はP2にとって最大顧客であったところ,その優良顧客を逃がさないために-112-は,やはり原告の代表取締役社長であるP7氏にP2の取締役副社長に就任してもらうのが適切であると考えた。P6氏としては,平成20年10月27日に行った本件提案が合意に至らず,P1実務部門の原案どおりP11らと合併することになった場合でも,P2がクラウドコンピューティング事業に参入し,企業価値を高め,その結果としてP8の株式上場が実現されれば,P14グループ全体にとって利益となるところ,クラウドコンピューティング事業に参入するには,インターネットビジネスのノウハウが不可欠であり,インターネットビジネスのノウハウをP2に持たせなければ,企業価値を高めることはおぼつかず,インターネットサービス事業の経験・ノウハウがあり,マーケットが広大である個人・小規模事業者を顧客基盤とするビジネスに関する知見がある者がP2の経営陣に必要と考えていた。 イ P7氏は,P1の取締役としての立場から,本件副社長就任を受ければ,P6氏の期待に応え,クラウドコンピューティングを含むP2へのインターネットビジネスのノウハウの提供,同事業分野における原告との協業をP2の内部から実行することのみならず,P2の既存のデータセンター事業においてもやはりP2内部からコスト構造を改善することを通じて,株式上場に向けたP2の企業価値の向上に貢献し,P14グループの価値最大化に資することが可能であると考えた。また,P1取締役の中でインターネットビジネスの専門家として最も知見を有しており,当時,P1取締役の中で唯一データセンター事業会社(株式会社P18)の経営にも関与したことがあり,データセンターを利用してサービスを の中でインターネットビジネスの専門家として最も知見を有しており,当時,P1取締役の中で唯一データセンター事業会社(株式会社P18)の経営にも関与したことがあり,データセンターを利用してサービスを提供するP21の取締役を務めていたこともある自分しか,就任の適任者はいないという考えもあった。 なお,P7氏は,原告とのP19データセンターに係る協業関係も踏まえ,P2の既存のデータセンター事業においてP2の内部からコスト構造-113-を改善することができることは原告の代表取締役の立場からもメリットであると感じていたが,P7氏の認識は,本件副社長就任は主にP1取締役としての立場で行ったというものであった。 ウ P2においては,平成19年7月の覚書を受けて主に原告のために建設した北九州の第1データセンターが平成20年10月2日に竣工するなど,データセンター事業者として原告との協業関係が密なものとなっていた(原告はP2にとって最大顧客であった)一方,P1により,株式上場という目標及びクラウドコンピューティング事業への参入計画が再検討を促されていた。そのような中,平成20年12月10日,P13氏はP6氏から,P2株式を原告に譲渡する提案をしている旨の話を聞かされると共に,P2として株式上場を目指すのであれば,インターネットビジネスの専門家であるP7氏に何らかの形でクラウドコンピューティング事業を含めた今後のP2の成長戦略,事業戦略について同社の経営に関与してもらったほうが良いとの提案を受けた。P13氏も,P7氏のインターネットビジネスにおける経験及び能力を信頼し,P2にとって最大顧客である原告(及びP7氏)との関係の深化は,P2の事業の安定をもたらし,有益な影響を及ぼすと判断していた。 エ P7氏は,P2の時価総額を スにおける経験及び能力を信頼し,P2にとって最大顧客である原告(及びP7氏)との関係の深化は,P2の事業の安定をもたらし,有益な影響を及ぼすと判断していた。 エ P7氏は,P2の時価総額を1000億円に近付け,P2のたっての要望であった株式上場を目標に,P2及び原告におけるクラウドコンピューティング等の事業分野への進出のニーズが高まっていた当時の事業環境の中で,経営者としての経験及びインターネットビジネスの専門知識を活かし,本件副社長就任の直後から本件合併に至るまでの間,原告との協業によるシナジー創出の可能性に意を払いながら,P2の経営企画,事業戦略に直結する経営上の重要事項であった,中小企業向けインターネットビジネスへの参入,中期経営計画の策定,設備投資計画への指示及び取引先・契約先の開拓等の職務を遂行していたものである。 -114-かかる事実関係に照らせば,本件副社長就任は,P7氏において特定役員として職務執行する意思もなければ職務執行の客観的事実もおよそ一切存在しない場合などとは到底いえず,「仮装的」,「名目的」,「形だけ」,「名前だけ」といった場合とは完全にかけ離れているものであることが明白である。本件副社長就任は,経済社会において通常行われる,租税上の考慮以外にも正当な事業目的ないし理由があることが明らかな行為である。 オ一般に我が国の経済社会において非常勤役付役員が行っている職務は,当該会社の常勤役付役員が行っている職務とは全く異なっており,非常勤役付役員は,取締役会に出席して重要な業務執行に関する報告を受けて質問を行ったり,議決権を行使したりすることによって適正な事業運営を確保することや,常勤役付役員からの相談を受けて重要な経営課題に対して大局的な見地から指導を行うことなどを,基本的な職 報告を受けて質問を行ったり,議決権を行使したりすることによって適正な事業運営を確保することや,常勤役付役員からの相談を受けて重要な経営課題に対して大局的な見地から指導を行うことなどを,基本的な職務としている。そのため,非常勤役付役員は,常勤役付役員と異なり,直属の部下や指揮命令系統を有しないのが通常である。 P7氏は,本件副社長就任後,就任の目的であったP2のコスト削減や原告との事業シナジーの追求を達成するため,取締役会への出席だけにとどまらず,P2の代表取締役であったP13氏と複数回にわたりP2の経営方針に関して会議を行うなど,経営及びインターネットビジネスの専門知識に基づき,事業計画の策定,重要な意思決定及び営業方針の決定といったP2の経営の中枢に実際に参画していたのであって,上記で述べた一般の経済社会における非常勤役付役員の職務を十二分に務めていたものといえる。 P2の非常勤取締役副社長であったP20氏が,本件合併後に原告の特定役員となることにより特定役員引継要件を問題なく満たすことができる人物であったことについては,被告もこれを明示的に認めているとこ-115-ろ,P20氏がP2において行っていた職務は,P2の取締役会に出席し,報告事項・決議事項から重要な業務が適正に行われているかどうかをチェックすることや,P2の常勤役員からでは見えにくい経営上・事業上の問題について指摘することなどであった。このようなP20氏のP2における職務の内容と比較すると,P7氏は,P20氏と匹敵するか,それ以上の職務を行っていたというべきである。 両者に相違点があるとすれば,P2の取締役副社長としての就任期間・就任時期以外にない。このことからすると,被告は,P7氏やP20氏の職務執行の具体的態様等には一切触れず いうべきである。 両者に相違点があるとすれば,P2の取締役副社長としての就任期間・就任時期以外にない。このことからすると,被告は,P7氏やP20氏の職務執行の具体的態様等には一切触れず,P7氏の就任期間が(被告の考えるところの相当な期間より)短期であること(ないしは本件買収の(被告のいう)直前に就任したこと)のみを根拠として,P7氏の特定役員該当性を否認しようとしているとみるべきである。 そして,本件において,P7氏がP2取締役副社長に就任した平成20年12月26日の時点では,本件買収及び本件合併が実行されるかどうかは未定であったのである。そうである以上,本件副社長就任から特定資本関係の発生までの期間を問題にすることは,後付けの結果論にすぎない。 本件副社長就任の後,原告において事業上のメリットについて真摯な検討がなされ,さらに,原告及びP1において最も重要な株式譲渡契約の条件であった譲渡価額について当事者間の対等な交渉の結果合意に達したことにより本件買収及び本件合併が最終的に実行された結果,文字どおり結果的に,P7氏の本件副社長就任から本件買収までの期間が2か月程度となったにすぎない。 (4) P1が原告に対して本件買収に際して差入書を作成したことは何ら不自然ではなく,未処理欠損金額の承継の否認の可能性とは関係がないこと。 未処理欠損金額を本件買収の対価に織り込むことはM&Aの実務上当然であり,そのこと自体何ら不自然・不合理と評価されるべきことではない。他-116-方,買主である原告(の経営陣)にとっては,対価のうちの未処理欠損金額による税効果相当分は,実現が確定した資産とまではいえないにもかかわらず,その対価を確定的に支払うということはリスクにほかならない。そこで,買主としては,当該リスクを は,対価のうちの未処理欠損金額による税効果相当分は,実現が確定した資産とまではいえないにもかかわらず,その対価を確定的に支払うということはリスクにほかならない。そこで,買主としては,当該リスクを回避するため,売主に対し表明保証及びそれに違反した場合の補償を積極的に求めることとなるのもまたM&Aにおいては当然である。そして,このような表明保証及び補償の合意がされることは,M&A実務のいわば常識であり,何ら特異なことではない。 なお,原告が未処理欠損金額相当分を,経済的価値の実現が確定した資産とまではいえないと認識していたことをもって,原告が税務上の否認リスクが高いことを認識していたことには決してならない。すなわち,M&Aにおける表明保証及び補償は,たとえ買主としては買収に際し問題ない(リスク実現の可能性は低い)と判断している事項であっても,およそ買主にとって不確定な事項である限りは,その不確実性に対する責任に起因して生ずることが完全には否定できない損失に関するリスクを売主に転嫁するために合意されるものであり,これがM&Aの通常の実務である。 本件についても,原告がP1から差入書を得たのは,法132条の2については公表先例が一切存在しなかったことも含め,未処理欠損金額の承継がまさに不確定であるからというそれだけの理由であり,本件買収に係る株式譲渡契約書において合意されているその他のP1による表明保証の事項及び同社がこれに違反した場合の補償責任と同様,原告において特にそれが誤りであるリスクが高いなどと認識していたからではない。むしろ差入書を得ずに,仮に万一未処理欠損金額の承継が否定された場合,P7氏を含む原告の経営陣は,M&Aにおいて当然のことを怠り,原告に課税相当額の損害を与え,それこそP1を特別扱いして取引を実行し しろ差入書を得ずに,仮に万一未処理欠損金額の承継が否定された場合,P7氏を含む原告の経営陣は,M&Aにおいて当然のことを怠り,原告に課税相当額の損害を与え,それこそP1を特別扱いして取引を実行したものとして,経営上の責任を問われかねなかったのである。 本件副社長就任は,法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる」-117-に該当すると評価される余地はないというべきである。 (5) 本件副社長就任が否認の対象となる行為か否かについて本件副社長就任は,①P7氏をP2の取締役に選任する旨のP2の臨時株主総会決議及びP1による議決権の行使,②個人としてのP7氏の承諾の意思表示並びに③P7氏を副社長に選定する旨のP2の取締役会決議のみにより行われたものであり,本件副社長就任に関し,原告の行為はどこにも存在しない。 すなわち,原告においては,役員が他社の役員に就任する際の決裁手続を定めた社内規程はなく,各役員は自己の判断で他社役員に就任することになっている(他方,従業員が他社の役員に就任する場合には,原告内における所定の承認手続を要することとなる。)。P7氏は,P6氏から打診を受けた際,自己の判断で本件副社長就任を承諾し,P2の取締役副社長に選任されたのであって,この間,原告(社内組織,会議体などを含む。)において本件副社長就任の是非について議論されたことはなく,原告がそれを行う理由もなかった。P7氏の選任手続は,P2の株主総会においてP1の議決権行使によりされているのであり,議決権行使に関し原告が何らかの積極的な依頼や働き掛けを行った事実もない。つまり,本件副社長就任は,P6氏がP1代表取締役社長としてP1取締役としてのP7氏にグループ全体のメリットになるがゆえに依頼し,P7氏においても事業上の目的 的な依頼や働き掛けを行った事実もない。つまり,本件副社長就任は,P6氏がP1代表取締役社長としてP1取締役としてのP7氏にグループ全体のメリットになるがゆえに依頼し,P7氏においても事業上の目的から就任を承諾し,P1の議決権行使により実現したものである。 以上のとおり,法人としての原告がP7氏をしてP2の取締役副社長へ就任させた行為なるものは一切存在しないのであり,本件副社長就任に対してそもそも原告に法第132条の2を適用して否認することはできない。 第3 本件更正処分に理由付記の不備があるか否か(争点3)について 1 被告の主張本件のように青色申告に係る法人税について更正処分をする場合には,更正-118-処分の理由を付記しなければならないものとされているところ(法130条2項),帳簿書類の記載自体を否認して更正処分をする場合においては,単に更正処分に係る勘定科目とその金額を示すだけでなく,そのような更正をした根拠を帳簿の記載以上に信憑力ある資料を摘示することによって具体的に明示することを要するが,帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正処分をする場合においては,付記された理由が,そのような更正処分をした根拠について帳簿の記載以上に信憑力のある資料を摘示するというものでないとしても,処分庁の恣意の抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り,理由の付記として欠けるものではないと解される(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁)。 本件更正処分等は,帳簿書類の記載自体の信憑性を否認しているわけではなく,組織再編成に係る原告の行為又は計算が法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるか否かという法的評価を原告と異にし 本件更正処分等は,帳簿書類の記載自体の信憑性を否認しているわけではなく,組織再編成に係る原告の行為又は計算が法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるか否かという法的評価を原告と異にして更正したものであるから,上記のうち,後者の場合に当たるものであるところ,本件更正処分等に係る通知書(甲1)には,更正の理由として,原告がP7氏をP2の取締役副社長に就任させた行為を含む,本件買収及び本件合併並びにこれらの実現に向けられた原告の一連の行為が,施行令112条7項5号に規定する要件(特定役員引継要件)を形式的に満たし,P2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなして損金の額に算入することを目的とした異常ないし変則的なものであり,その行為又は計算を容認した場合には,法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものであることから,P2の未処理欠損金額を原告の欠損金額とみなさない旨を示し,「P7氏の副社長就任は,特定役員引継要件を満たすための形式的なものであったに過ぎないと認められます。」と明記している。その記載内容を見れば,本件副社長就任を含む原告の一連の行為又は本件副社長就任をもって特定役員引継要件を満たしているとする原告の-119-計算に対し,処分行政庁が法132条の2を適用し,P2の未処理欠損金を原告の欠損金額とみなさないで原告の法人税の課税標準等を計算したこと及びその法的判断に至った理由は明らかであり,もって,原告のいずれの行為が法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められ,未処理欠損金を原告の欠損金額とみなさないかという法的判断に至った理由を示しており,原告には不服申立てをするに当たって十分な理由を知らせたといえ,上記のような理由付記制度の趣旨目的を充足する程度の理由の付記がされているものというべきである。 いう法的判断に至った理由を示しており,原告には不服申立てをするに当たって十分な理由を知らせたといえ,上記のような理由付記制度の趣旨目的を充足する程度の理由の付記がされているものというべきである。 したがって,本件更正処分等には,その理由付記に不備はなく,原告の主張は失当である。 2 原告の主張平成22年6月29日,麻布税務署長は,平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度について原告が行った法人税の確定申告に関し,適用法条を始め法的根拠を一切記載せず,さらには,原告のいかなる行為を租税法上否認したのかすら示さずに,P2の未処理欠損金額を原告の繰越欠損金とみなすことを認めない旨の更正処分(本件更正処分)を行った。 具体的には,原告は,本件更正処分が法57条2項,3項や施行令112条7項といった個別の課税根拠規定の解釈適用を根拠としてされたものか,又は個別の課税根拠規定を超えた包括否認規定を根拠としてされたものか,また,包括否認規定であるとしても法132条1項によるものか,法132条の2によるものかといったことを,本件更正処分の更正の理由からは,文字どおり一切了知することができなかった。 さらに,本件更正処分の更正の理由は,「本件一連の行為」というその外延が極めて曖昧な概念を持ち出しているが,これが本件更正処分の根拠規定(これ自体更正の理由からは全く不明であることは上記のとおりであるが)との関係でいかなる意味を持つのかも全く不明であった。仮に,根拠規定が包括否認-120-規定であると解した場合でも,更正の理由からは,「本件一連の行為」が否認の対象たる行為とされているのか,また,その概念に含まれる特定の個別の行為が否認の対象とされているのか,さらには,「本件一連の行為」とは関係ない「計算 も,更正の理由からは,「本件一連の行為」が否認の対象たる行為とされているのか,また,その概念に含まれる特定の個別の行為が否認の対象とされているのか,さらには,「本件一連の行為」とは関係ない「計算」が否認の対象とされているのか,原告は全く了知することができなかった。かように,本件更正処分は極めて杜撰かつ異常な内容であった。
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