平成25年10月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第37962号損害賠償請求事件口頭弁論の終結の日平成25年7月9日判決東京都世田谷区<以下略>原告ベスタクス株式会社同訴訟代理人弁護士市東譲吉アメリカ合衆国ニュージャージー州<以下略>被告ディアンジェリコ・ギターズ・オブ・アメリカ・エル・エル・シーアメリカ合衆国ニュージャージー州<以下略>被告乙被告ら訴訟代理人弁護士岡崎士朗尾関孝彰主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して2億円及びこれに対する平成21年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告乙(以下「被告乙」という。)が被告ディアンジェリコ・ギターズ・オブ・アメリカ・エル・エル・シー(以下「被告会社」という。)を教唆し,被告会社が原告の営業を妨害して,その名誉及び信用を毀損したな どと主張して,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害合計2億5464万2680円のうち2億円及びこれに対する不法行為の日の後である平成21年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) ディアンジェリコ・ギターは,A の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) ディアンジェリコ・ギターは,Aが製作したギターであり,1964年(昭和39年)に同人が死亡するまでに1164本が製造された。 (2) 原告は,楽器の製造販売等を業とする会社であり,平成元年ころから,株式会社寺田楽器(以下「寺田楽器」という。)に委託するなどして,ディアンジェリコ・ギターのレプリカモデル(以下「原告レプリカモデル」という。)を製造し,これを販売していた。 (甲14,23,25,90)(3) 原告は,平成4年8月3日,別紙標章目録1記載の標章について,指定商品を15類(楽器,演奏補助品)とする商標登録出願をし,平成7年8月31日,商標の設定登録(商標登録第3069590号)を受けた。 (甲77の1及び2)(4) 被告乙及び訴外B(以下「B」という。)は,原告レプリカモデルがディアンジェリコ・ギターと同じかそれ以上の品質をもつとして,これを米国で販売しようと考え,代理人を通じ,1999年(平成11年)6月,原告に対し,被告乙らの設立する会社が原告レプリカモデルを米国に輸入してこれを販売することを持ちかけた。Bは,同年8月4日,原告からのファクシミリを受けて,原告に対し,カタログの送付を求めるとともに,自分たちの会社の名称を「D’AngelicoGuitarsOfAmerica」(ディアンジェリコ・ギターズ・オブ・アメリカ)にしたい旨を通知した。 (甲2の1及び2,3)(5) 被告会社は,1999年(平成11年)9月15日頃に米国ニュージャージー州法に従い設立された。 (甲100)(6) 原告は,2000年(平成12年)4 (甲2の1及び2,3)(5) 被告会社は,1999年(平成11年)9月15日頃に米国ニュージャージー州法に従い設立された。 (甲100)(6) 原告は,2000年(平成12年)4月から,被告会社に対し,原告レプリカモデルを約900本販売し,被告会社は,これを米国やカナダで販売した。 (甲4ないし6,20,26ないし48,乙3)(7) 被告会社は,2003年(平成15年)5月10日,欧州共同体商標意匠庁に対し,別紙標章目録2記載の標章について,指定商品を09類(音楽用アンプリファイア等),15類(ギター,エレキ・ギター等),16類(紙類,ボール紙等)とする商標登録出願をし,2005年(平成17年)1月20日,商標の設定登録を受けた(登録番号第3165404号(英国内では第E3165404号)。以下,この登録を受けた商標を「本件欧州登録商標」,その登録を「本件欧州商標登録」といい,本件欧州登録商標に係る商標権を「本件欧州登録商標権」という。)。原告は,被告会社を相手方として,本件欧州商標登録の無効審判請求をしたが,欧州共同体商標意匠庁は,2011年(平成23年)6月11日にこれを棄却する旨の決定をした。原告は,これに対し上訴の手続をした。 (乙12の1及び2)(8) 被告会社は,代理人を通じ,2009年(平成21年)5月26日付で原告の原告レプリカモデルの販売先である英国のアイヴォー・マイランツ・ミュージックセンター(以下「英国代理店」という。)に対し,同年6月11日付で原告の原告レプリカモデルの販売先である仏国のコム・ディストリビューションディアンジェリコ・フランス(以下「仏国代理店」という。)に対し,被告会社が本件欧州登録商標の商標権者であることを理由に,D’ Angelicoの商標の無許可で コム・ディストリビューションディアンジェリコ・フランス(以下「仏国代理店」という。)に対し,被告会社が本件欧州登録商標の商標権者であることを理由に,D’ Angelicoの商標の無許可での使用の取止めや被告会社に生じた弁護士費用の弁償などを求める内容の警告書をそれぞれ送付した。また,被告会社は,代理人を通じ,同年8月14日付で,原告に対し,同様に,欧州共同体内におけるD’Angelico商標の使用の取止めなどを求める内容の警告書を送付するとともに,寺田楽器及び寺田楽器の製造する楽器の輸出業者である株式会社イイダコーポレーション(以下「イイダコーポレーション」という。)に対し,その写しを送付し,さらに,被告会社のCが,同年9月26日に,寺田楽器に対し,日本における原告の商標登録に異議を唱えるつもりであることや寺田楽器が輸出用のディアンジェリコ・ギターを販売すれば寺田楽器を訴えることなどを記載した電子メールを送信した。 (甲12,13,15,76) 2 争点(1) 国際裁判管轄の有無(争点1)(2) 原告におけるディアンジェリコ・ギターのレプリカモデルを製造販売する権利の取得の有無(争点2)(3) 被告らの原告に対する不法行為の成否(争点3) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(国際裁判管轄の有無)について(原告)後記(3)(原告)エの不法行為4は,被告らが日本国内においてした行為により原告の法益について損害が生じたものであるから,日本の裁判所に国際裁判管轄がある。そして,同アの不法行為1は,被告会社が原告からの使用許諾を得ずにディアンジェリコ等のブランドを付した韓国製のギターを米国内で販売していることについてのもので,同イの不法行為2は,被告会社が本件欧州商標登録を不法に取得し は,被告会社が原告からの使用許諾を得ずにディアンジェリコ等のブランドを付した韓国製のギターを米国内で販売していることについてのもので,同イの不法行為2は,被告会社が本件欧州商標登録を不法に取得したというもので,同ウの不法行為3及び同エの不法行為4は,被告会社が上記商標登録の不法取得を奇貨として原告に 対し営業妨害等に及んだというものであり,いずれも原告が原告レプリカモデルにつき専有する権利,利益に関わるもので,互いに密接な関係がある一連の不法行為である。 また,被告乙は,被告会社の唯一の絶対的な所有者であり,実質的な最高経営責任者として,被告会社による不法行為1ないし4を教唆した者である。 このように,不法行為1ないし4に係る請求は争点を同じくし,互いに密接な関係があるから,併合請求の裁判籍の規定(民事訴訟法7条本文)により,日本の裁判所は国際裁判管轄を有する。 (被告ら)不法行為4は,被告会社が本件欧州登録商標の商標権者でないことを前提としているが,この点についての判断は,欧州共同体商標意匠庁及び欧州共同体司法裁判所の専属的管轄に服するから,日本の裁判所に国際裁判管轄はない。そして,不法行為1ないし3の審理の対象は,本件欧州商標登録が有効であり,かつ,被告会社がその権利者であるか否かの点を除き,不法行為4のそれと共通しないし,本件欧州商標登録の有効性については,欧州共同体商標意匠庁及び欧州共同体司法裁判所の専属的管轄に服するもので,日本の裁判所はその判断を差し控えるべきであるから,不法行為1ないし3と不法行為4とは,被告らが日本の裁判所で応訴することを強いられるだけの合理性を支持する密接な関連性がなく,不法行為1ないし3に係る請求は日本の裁判所に国際裁判管轄がない。 (2) 争点2( と不法行為4とは,被告らが日本の裁判所で応訴することを強いられるだけの合理性を支持する密接な関連性がなく,不法行為1ないし3に係る請求は日本の裁判所に国際裁判管轄がない。 (2) 争点2(原告におけるディアンジェリコ・ギターのレプリカモデルを製造販売する権利の取得の有無)について(原告)ディマール・ギターズ・インコーポレイテッド(以下「ディマール・ギターズ社」という。)は,Aの死後,ディアンジェリコ・ギターのブランドを管理していたが,原告は,平成元年,ディマール・ギターズ社の代表者D(以 下「D」という。)から,全世界に及ぶディアンジェリコ・ギターのブランド,デザインの全ての権利,すなわち,下記①の標章及び②の意匠(①の標章及び②の意匠の形態は,別紙写真のとおり。)を使用したディアンジェリコ・ギターのレプリカモデルを製造して全世界で販売する権利を取得した。 記① ディアンジェリコ・ギターのオリジナル(ビンテージ)に付されている標章(以下,併せて「本件各標章」という。)ディアンジェリコ(D’Angelico),ニューヨーク(NEWYORK),ニューヨーカー(NEWYORKER),エクセル(EXCEL)② ディアンジェリコ・ギターのオリジナル(ビンテージ)の意匠(被告ら)ディマール・ギターズ社は,Dが1982年(昭和57年)4月26日に設立したディアンジェリコ-ディマール・リミテッド(以下「ディアンジェリコ-ディマール社」という。)に買収されて実体がなくなっており,1984年(昭和59年)2月7日に解散した。そして,ディアンジェリコ-ディマール社の「D’Angelico」の商標の権利を含む全資産は,同年6月29日ころ,G.H.S.コーポレーション っており,1984年(昭和59年)2月7日に解散した。そして,ディアンジェリコ-ディマール社の「D’Angelico」の商標の権利を含む全資産は,同年6月29日ころ,G.H.S.コーポレーション(以下「GHS社」という。)に承継され,Dには何らの権利も留保されなかったから,1989年(平成元年)の時点で,Dがディアンジェリコ・ギターのブランドを管理していたということはない。 (3) 争点3(被告らの原告に対する不法行為の成否)について(原告)被告乙は,被告会社を教唆し,被告会社は,次のとおり,原告の権利や利益等を侵害した。 ア不法行為1 被告会社は,2005年(平成17年)ころから現在に至るまで,標章や意匠に関する権利を有する原告からの使用許諾を受けずに,原告レプリカモデルと全く同一の形態(意匠)の韓国製の粗悪なギターに本件各標章を付して米国で販売し,これにより世界中の市場や顧客に原告が製造販売する原告レプリカモデルとの誤認混同を招き,原告の高い評価及び名声,すなわち原告の名誉及び信用を毀損し,ディアンジェリコ・ギターのブランドイメージを著しく低下させた。 イ不法行為2原告は,原告レプリカモデルを米国及びカナダ国で約900本販売したほか,欧州で約330本販売したもので,原告レプリカモデルは,高品質の高級ギターとして世界中の著名なプロのミュージシャンやギター愛好者らの間では極めて周知ないし著名であり,原告は,下記①’の標章を付した下記②’の形態による原告レプリカモデルを製造して全世界で販売する権利や下記③の利益を専有している。 記①’原告レプリカモデルに付されている標章ディアンジェリコ(別紙標章目録1記載のとおり。),ニューヨー を製造して全世界で販売する権利や下記③の利益を専有している。 記①’原告レプリカモデルに付されている標章ディアンジェリコ(別紙標章目録1記載のとおり。),ニューヨーク(NEWYORK),ニューヨーカー(NEWYORKER), エクセル(EXCEL)②’原告レプリカモデルに付されている形態別紙形態目録記載のとおり。 ③ 利益原告レプリカモデル(その標章及び形態は,別紙「レプリカモデル一覧」のとおり。)に化体された高い評価・名声・グッドウィル(のれん,営業権)被告会社は,原告の代理人(販売代理店)であり,「D’Angeli co」の標章が原告の商標の一つとして欧州で周知であることを知りながら,本件欧州商標登録を得て,原告の上記権利や利益を不法に奪取しようとした。 ウ不法行為3被告会社は,本件欧州登録商標の商標登録出願時である2003年(平成15年)5月10日に,原告が欧州において本件欧州登録商標と同一の商標を既に使用していることを知っていたから,本件欧州商標登録は,商標登録出願人に悪意(badfaith)があるものとして,欧州共同体商標理事会規則51条(1)(b)により,無効とされるべきものである。 被告会社は,それにもかかわらず,前記1(8)のとおり,英国代理店や仏国代理店(以下,併せて「英仏代理店」という。)に対し警告書(以下「英仏代理店への警告書」という。)を送付し,同月17日には,被告会社代表者のCが,仏国代理店の代表者に面会を強要して,同人とその同席者にCがマフィアの男であるとの印象を与え,被告会社の模造品のディアンジェリコ・ギターの売込みを断られるや,同年12月14日には, 社代表者のCが,仏国代理店の代表者に面会を強要して,同人とその同席者にCがマフィアの男であるとの印象を与え,被告会社の模造品のディアンジェリコ・ギターの売込みを断られるや,同年12月14日には,「お前の店の在庫に火をつけてお前の店をぶっ潰してやるぞ」と脅迫の電話をかけ,さらに,2013年(平成25年)3月に被告会社の所有者の1人であるEが,仏国代理店の代表者に対し,被告会社が本件訴訟に勝訴したのでディアンジェリコ・ギターの販売は禁止されたと嘘をつき,原告レプリカモデルの在庫を引き渡すよう求めてこれを騙し取ろうとし,これにより,もって原告の営業を妨害し,その名誉及び信用を著しく毀損した。 エ不法行為4被告会社は,本件欧州登録商標が無効となるものであって,かつ,寺田楽器やイイダコーポレーションが原告レプリカモデルを欧州に輸出していないことを知っていたにもかかわらず,同取引先らを徒に困惑させた上,その製造するギターを横流しさせようと企てて,前記1(8)のとおり,寺田 楽器らに対し,警告書(以下「日本への警告書」という。)の写しを送付したり,電子メールを送信したりし,これにより,原告の営業を妨害をし,その名誉及び信用を著しく毀損した。特に,寺田楽器は原告レプリカモデルの製造,出荷を中止してしまったため,原告の信用が失墜するとともに原告に金銭的損害が生じた。 (被告ら)被告乙は,被告会社の投資家に過ぎず,役員その他の経営責任者であったことはなく,原告の主張する不法行為1ないし4とは無関係であり,また,被告会社も,次のとおり,原告の権利や利益を侵害していない。 ア不法行為1について原告は,前記(2)(被告ら)のとおり,ディアンジェリコ・ギターに関する標章,意匠に関する権利を取 告会社も,次のとおり,原告の権利や利益を侵害していない。 ア不法行為1について原告は,前記(2)(被告ら)のとおり,ディアンジェリコ・ギターに関する標章,意匠に関する権利を取得していないし,GHS社から米国及びカナダにおける商標「D’Angelico」の標章の使用についてライセンスを受けたことがあるものの,2003年(平成15年)4月27日に終了し,それ以降は,商標に関する何らの権利も有していない。被告会社は,ディアンジェリコ・ギターのNEWYORKERモデルのレプリカ(以下「被告レプリカモデル」という。)を販売しているが,これは,ディアンジェリコ・ギターの実物の内部構造をX線観察により解析し,そのデザイン,構造及び品質に従って手作りで精巧に作製した正確なレプリカであり,工場で大量生産される廉価な原告レプリカモデルと混同される現実的可能性はない。 イ不法行為2について原告レプリカモデルが欧州において周知又は著名であったとはいえず,原告が欧州において商標「D’Angelico」の標章を使用する権利を取得したとか,ライセンスを受けたということもない。そして,被告会社は,原告との間で競業避止義務が発生する態様での販売代理店契約関係 に入ったこともない。 ウ不法行為3について本件欧州商標登録に無効原因はなく,被告会社が英仏代理店への警告書を送付して本件欧州登録商標の使用の差止めを求めることは,正当な権利行使であって,違法性はない。 エ不法行為4について日本への警告書の写しを寺田楽器らに送付したのは,原告の委託先によって製造された本件欧州登録商標の付されたギターが欧州に流通しないことを確実にするためであり,これにより,寺田楽器らが日本市場向けの 日本への警告書の写しを寺田楽器らに送付したのは,原告の委託先によって製造された本件欧州登録商標の付されたギターが欧州に流通しないことを確実にするためであり,これにより,寺田楽器らが日本市場向けの原告レプリカモデルの製造や供給を妨げられることはないから,被告会社が日本への警告書の写しを送付して本件欧州登録商標の使用の差止めを求めることは,正当な権利行使であって,違法性がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(国際裁判管轄の有無)について(1) 被告会社について前記前提事実によれば,被告会社が日本への警告書の写しを原告の取引先である寺田楽器やイイダコーポレーションに到達させたことにより原告の業務が妨害されたという客観的事実関係は明らかであり,そうであれば,被告会社を本案につき応訴させることに合理的な理由があり,国際社会における裁判機能の分配の観点からみても,我が国の裁判権の行使を正当とするに十分な法的関連があるから,不法行為4に係る請求について,我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定すべきである。 そして,不法行為1ないし3に係る請求も,原告が原告レプリカモデルを製造販売する権利に,ディアンジェリコ・ギターに関する標章や意匠に係る権利や利益の有無をめぐる紛争として,不法行為4に係る請求と実質的に争点を同じくし,密接な関係があるということができるから,不法行為1ない し3に係る請求についても我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するのが相当である。 被告らは,本件欧州商標登録の有効性については,欧州共同体商標意匠庁及び欧州共同体司法裁判所の専属的管轄に服することを理由として,不法行為1ないし3に係る請求と不法行為4に係る請求とは密接な関係がないと主張するが,商標登録自体の有効性と,商標登録出願をしたり 匠庁及び欧州共同体司法裁判所の専属的管轄に服することを理由として,不法行為1ないし3に係る請求と不法行為4に係る請求とは密接な関係がないと主張するが,商標登録自体の有効性と,商標登録出願をしたり,既にした登録商標に基づいてしたことに関する不法行為の成否とは別個の問題であるから,被告らの上記主張は,採用することができない。 (2) 被告乙について証拠(甲2の1及び2,3,9,24,25,78ないし80,85,90,94,100,乙22)及び弁論の全趣旨によれば,被告乙は,被告会社のオーナーとして実質的に被告会社を支配し,被告会社が本件欧州商標登録を得たのも被告乙の指示に基づくものであると認められ,このことに照らすと,被告会社は,被告乙の指示に基づき,本件欧州登録商標に関する日本への警告書の写しを寺田楽器らに到達させ,これにより原告の業務が妨害されたということができる。そうであるから,不法行為4に係る請求について,我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定すべきであり,また,不法行為1ないし3に係る請求は,不法行為4に係る請求と実質的に争点を同じくし,密接な関係があるから,これについても,我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するのが相当である。 2 争点2(原告におけるディアンジェリコ・ギターのレプリカモデルを製造販売する権利の取得の有無)についてディマール・ギターズ社がAの死後に商標,意匠に関する権利を含むディアンジェリコ・ギターについての諸権利を有していたことは当事者間に争いがないが,原告が平成元年にディマール・ギターズ社の代表者Dから全世界に及ぶディアンジェリコ・ギターのブランド,デザインの全ての権利を取得したこと については,これを認めるに足りる証拠がない。もっとも,証拠(甲57,58)によれば,原告は,平 者Dから全世界に及ぶディアンジェリコ・ギターのブランド,デザインの全ての権利を取得したこと については,これを認めるに足りる証拠がない。もっとも,証拠(甲57,58)によれば,原告は,平成元年頃に,Dとの間で,D’Angelicoの標章の使用について交渉をしたことが認められるところ,原告は,そのころから原告レプリカモデルを製造販売しているものである。しかしながら,標章の使用について,両者間で合意したことを証するような契約書等が作成された形跡はないし,証拠(甲1,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,原告の会長であったF(以下「F」という。)は,1993年(平成5年)2月11日,D夫人との間で,同人をディマール・ギターズ社の権利承継人であるとして,Fがロイヤリティを支払って,D’Angelicoの商標権,ロゴ及び意匠権等を譲り受けるとの内容の契約を締結したこと,原告は,1999年(平成11年)4月27日頃,GHS社との間で,同社が米国でのD’Angelicoの名称を保有していることを認めて,同社から北米でのD’Angelicoの名称をギター等の楽器に使用することのライセンスの供与を受けたことが認められ,これらの事実によると,Fや原告は,原告が平成元年にDから全世界に及ぶディアンジェリコ・ギターのブランド,デザインの全ての権利を取得したことと相容れない行動に出ているのであるから,上記事実をもって,原告がディアンジェリコ・ギターのブランド,デザインの全ての権利を取得したと認めることはできない。 なお,原告は,Dが死亡した後の平成5年にD夫人からディアンジェリコ・ギターのレプリカの商標権や意匠権を取得したとも主張するが,証拠(乙1,4ないし9,17)及び弁論の全趣旨によれば,Dが経営するG.J.D・インコーポレイテッドは,1982 人からディアンジェリコ・ギターのレプリカの商標権や意匠権を取得したとも主張するが,証拠(乙1,4ないし9,17)及び弁論の全趣旨によれば,Dが経営するG.J.D・インコーポレイテッドは,1982年(昭和57年)5月5日頃,GHS社から22万5000ドルを借り入れるなどしてディマール・ギターズ社他1社を買収して,その名称をディアンジェリコ-ディマール社に改めたこと,ディアンジェリコ-ディマール社は,GHS社に対し,上記借入れ等の担保として,ディアンジェリコ-ディマール社の有する現金,売掛金,D’Angelico の名称,商号,顧客リスト,のれんその他の有形無形の全資産を,その後に取得するものを含めて提供したこと,ディアンジェリコ-ディマール社は,上記借入れの弁済をすることができなかったので,1984年(昭和59年)6月29日頃,その全資産をGHS社に譲渡したこと,GHS社は,被告会社に対し,2003年(平成15年)7月1日頃に,D’Angelicoマーク等を使用するためのライセンスを付与し,2009年(平成21年)12月26日頃には,楽器等に使用される全ての形態のD’Angelicoマークに関する権利等を譲渡したことが認められ,これらの事実によると,原告がD夫人からこれらの権利を取得したと認めることもできない。 3 争点3(被告らの原告に対する不法行為の成否)について(1) 不法行為1証拠(甲21,22,75の1及び2,78,84,85)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社は,2005年(平成17年)頃から,韓国製の被告レプリカモデルを販売していると認められる。しかしながら,原告がディアンジェリコ・ギターのレプリカモデルを製造販売する権利を取得したことは認められないから,被告会社が被告レプリカモデルを製造販売する レプリカモデルを販売していると認められる。しかしながら,原告がディアンジェリコ・ギターのレプリカモデルを製造販売する権利を取得したことは認められないから,被告会社が被告レプリカモデルを製造販売するに際して,原告の許諾を受けなければならないとする根拠はない。また,被告レプリカモデルが原告レプリカモデルと全く同一の形態であると認めるに足りる証拠もない。もっとも,被告レプリカモデルは,原告レプリカモデル同様に,ディアンジェリコ・ギターのレプリカであるから,形態が似ているとしても,それはむしろ当然であるところ,被告レプリカモデルが原告レプリカモデルのみが有する形態と同一の形態を有することを認めるに足りる証拠はなく,被告会社が被告レプリカモデルを原告レプリカモデルであると称して販売したと認めるに足りる証拠もないから,被告会社が殊更に原告レプリカモデルと被告レプリカモデルとの誤認混同を生じさせたということもできない。 そうすると,不法行為1については,準拠法の如何にかかわらず,少なく とも日本法の下において,被告会社が韓国製の被告レプリカモデルを製造販売したことが違法であるとは認められない。 (2) 不法行為2前記2のとおり,原告がディアンジェリコ・ギターのレプリカモデルを製造販売する権利を取得したとは認められないし,被告会社は,2003年(平成15年)5月10日に本件欧州登録商標について商標登録出願をしたところ,その直後の同年7月1日頃にGHS社からD’Angelicoマーク等を使用するためのライセンスの付与を受けたものである。そうすると,不法行為2については,準拠法の如何にかかわらず,少なくとも日本法の下において,被告会社が本件欧州商標登録を受けたことが違法であるとは認められない。 (3) 不法行為3 る。そうすると,不法行為2については,準拠法の如何にかかわらず,少なくとも日本法の下において,被告会社が本件欧州商標登録を受けたことが違法であるとは認められない。 (3) 不法行為3欧州共同体商標意匠庁の無効審決が確定したことの証拠はないから,本件欧州登録商標権は適法かつ有効に存続している。そうであれば,被告会社が英仏代理店への警告書を送付した行為は,被告会社による正当な権利行使であると認められる。そして,Cが,原告の仏国代理店の代表者に面会を強要したとの点については,証拠(甲75の1)によれば,原告の仏国代理店の代表者が2009年(平成21年)6月17日にCと面会し,同人についてマフィアの人間のようだとの印象を持ったことが窺われるが,Cが面会を強要したと認めるに足りる証拠はないし,仏国代理店の代表者がCについてマフィアの人間のようだとの印象を持ったとしても,このことのみをもって不法行為が成立すると解することはできない。また,Cが仏国代理店の代表者に脅迫の電話をかけたとの点については,同代表者からFに宛てたEメール(甲75の3)にその旨の記載があるだけであって,このことのみをもって実際に違法な脅迫行為があったとは即断し難く,他にこれを裏付ける的確な証拠はない。さらに,Eが仏国代理店代表者に嘘をついて原告レプリカモデ ルを騙し取ろうとしたとの点については,同代表者からFに宛てたEメール(甲99)に,Eが訴訟事件に勝利したから仏国で原告レプリカモデルを販売することは許されず,韓国製のディアンジェリコ・ギターと取り替えるので仏国代理店の有する原告レプリカモデルを送るよう要求した旨の記載があるが,ここにいう訴訟事件は,本件ではなく本件欧州商標登録の無効審判請求事件を指すものと考えられるし,また,本件欧州登録商標権は適 で仏国代理店の有する原告レプリカモデルを送るよう要求した旨の記載があるが,ここにいう訴訟事件は,本件ではなく本件欧州商標登録の無効審判請求事件を指すものと考えられるし,また,本件欧州登録商標権は適法かつ有効に存続しているから,仏国でのD’Angelicoのロゴを付した原告レプリカモデルの販売が許されないというのも虚偽とは断じ難いところである。そうすると,不法行為3については,準拠法の如何にかかわらず,少なくとも日本法の下において,不法行為が成立するとは認められない。 (4) 不法行為4本件欧州登録商標権は適法かつ有効に存続しているから,被告会社が寺田楽器らに日本への警告書の写しを送付した行為は被告会社による正当な権利行使であると認められる。そして,Cが寺田楽器に原告レプリカモデルの販売を続けるなら訴訟提起をする旨の電子メールを送信した点についても,本件欧州登録商標権が適法かつ有効に存続し,原告がディアンジェリコ・ギターのブランド,デザインの全ての権利を取得したと認められないから,これが正当な権利行使の範囲を逸脱するものとは認め難い。そうすると,不法行為4については,不法行為が成立するとは認められない。 4 以上のとおりであって,原告の請求は,その余の点について検討するまでもなく,いずれも理由がない。 よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官高野輝久 裁判官三井大有 裁判官志賀勝 裁判官 志賀勝
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