主文 1 処分行政庁が平成20年6月13日付けで原告に対してした同月2日付け生活保護の開始申請を却下する旨の決定を取り消す。 2 処分行政庁は,原告に対し,平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とするもの)をせよ。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 主文第1項,第2項同旨 2 被告は,原告に対し,37万2656円及び内金13万3590円に対する平成20年6月3日から,内金13万4310円に対する同年7月2日から,内金10万4756円に対する同年8月2日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,東京都新宿区において路上生活をしていた原告が,生活保護法による保護の実施機関である新宿区長から同法19条4項,新宿区生活保護法施行細則(昭和40年新宿区規則第10号)1条の規定により保護の決定及び実施に関する権限の委任を受けた処分行政庁に対し,平成20年6月2日付けで生活保護の開始申請(以下「本件申請」という。)をしたところ,生活保護法4条1項所定の「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という要件を充足していると判断することができないという理由により同月13日付けで本件申請を却下する旨の決定(以下「本件却下決定」 という。)を受けたことから,処分行政庁の所属する公共団体である被告に対し,① 行政事件訴訟法3条2項所定の処分の取消しの訴えとして,本件却下決定の取消しを求めるとともに,② 同条6項2号所定の申請型義 う。)を受けたことから,処分行政庁の所属する公共団体である被告に対し,① 行政事件訴訟法3条2項所定の処分の取消しの訴えとして,本件却下決定の取消しを求めるとともに,② 同条6項2号所定の申請型義務付けの訴えとして,処分行政庁が本件申請に対し平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とするもの)をすべき旨を命ずることを求め,さらに,③ 同法4条後段所定の公法上の法律関係に関する訴訟として,平成20年6月2日から同年8月24日までの間の扶助費(生活扶助費及び住宅扶助費)合計37万2656円及び内金13万3590円に対する同年6月3日から,内金13万4310円に対する同年7月2日から,内金10万4756円に対する同年8月2日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原告は,その理由として,「処分行政庁は,路上生活者に対しては生活保護(居宅保護)を行わず,東京都知事と特別区の区長が共同で実施している路上生活者対策事業(いわゆる自立支援システム)に誘導して劣等処遇を行うという運用をしていた。本件却下決定は,このような運用に基づいて路上生活者を差別的に取り扱うものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反する。」,「原告は,本件申請時において,稼働能力を有していたが,路上生活者であり,その稼働能力を活用する就労の場を有していなかったため,自らの稼働能力を活用することによりその最低限度の生活を維持することができなかったのであって,同法4条1項所定の稼働能力の活用要件を充足していた。 本件却下決定は同項の解釈適用を誤ったものである。」,「原告は,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動 て,同法4条1項所定の稼働能力の活用要件を充足していた。 本件却下決定は同項の解釈適用を誤ったものである。」,「原告は,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望していたのであり,路上生活者に対しては生活保護(居宅保護)を行わないという上記運用に基づいてされた本件却下決定は,居宅保護の原則を定める同法30条1項に違反する。」などと主張している。 1 法令の定め本件に関係する法令の定めは,別紙関係法令の定めのとおりである。 2 前提事実(顕著な事実,争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,号証番号の枝番は,特に必要がない限り省略する。以下同じ。)(1)当事者等ア原告は,昭和▲年▲月▲日生まれの男性であり,平成20年6月頃,東京都新宿区において路上生活をしていたものである。 イ処分行政庁は,新宿区の福祉に関する事務所設置条例(昭和40年新宿区条例第7号)に定める福祉に関する事務所の長であり,保護の実施機関である新宿区長から生活保護法19条4項,新宿区生活保護法施行細則1条の規定により生活保護法24条から28条まで,30条から37条まで,48条4項,62条3項及び4項,63条,76条1項,77条2項,80条並びに81条に規定する保護の決定及び実施に関する権限の委任を受けたものである。 (2)本件申請に至る経過ア原告の職歴(1)及び生活歴原告は,6人兄弟の5人目(四男)として埼玉県川口市で出生し,中学校を卒業した後,実家のある茨城県ほかで家業の造園業の営業担当者,フロッピーディスクの製造工場の期間工,飲食店の店員等として稼働していた。原告は,昭和48年頃に婚姻したが,昭和58年 で出生し,中学校を卒業した後,実家のある茨城県ほかで家業の造園業の営業担当者,フロッピーディスクの製造工場の期間工,飲食店の店員等として稼働していた。原告は,昭和48年頃に婚姻したが,昭和58年頃に離婚し,昭和61年頃に再婚して,二人の子をもうけたものの,平成5年頃に離婚し,単身で生活していた。(甲37,116,117)イ原告の職歴(2)原告は,飯場生活を送りながら土木建設作業員として稼働していたが,その後,派遣会社に登録し,静岡県富士市にある電機メーカーの工場の期 間工として稼働するようになった。原告は,平成13年10月頃,派遣先の工場で雇止めを受け,α1駅付近で路上生活をしながら求職活動を行っていた際に,特定非営利活動法人Aの関係者から同法人の施設に居住して生活保護を受けることを勧められ,約2年半にわたり,東京都大田区α2ほかにある同法人の施設に居住して生活保護を受けていた。また,原告は,平成16年9月頃から同年11月頃までの間,千葉県成田市にある簡易宿所に居住して生活保護を受けていた。(甲37,116,117)ウ α3寮への入寮原告は,派遣会社に登録し,平成17年頃から,静岡市にある家電メーカーの工場で期間工として稼働するようになったが,平成19年10月頃,年齢を理由に雇止めを受けた。原告は,その後,α1駅付近にいた際に,前記特定非営利活動法人Aの関係者から声を掛けられ,東京都板橋区α4にある同法人の施設に居住して生活保護を受けた。原告は,同施設の他の入居者と馴染むことができず,同施設を出て自立支援システム(後記(11)ア)を利用することを希望したところ,福祉事務所の担当者に取り合ってもらえなかったことから,上記施設を出て路上生活をするようになった。 原告は,墨田区福祉事務 施設を出て自立支援システム(後記(11)ア)を利用することを希望したところ,福祉事務所の担当者に取り合ってもらえなかったことから,上記施設を出て路上生活をするようになった。 原告は,墨田区福祉事務所で自立支援システムの利用について相談し,同年11月27日,路上生活者の一時的な保護,心身の健康回復とその状況に応じた適切な支援のための調査及び評価を目的とする緊急一時保護センター(後記(11)ア)であるα3寮に入寮した。(甲37,116,117,乙20)エ α5寮への入寮及び就労原告は,α3寮による調査及び評価の結果,就労意欲があり心身の状態が就労に支障がないと認められたことから,平成20年1月28日,路上生活者の就労自立の支援を目的とする自立支援センター(後記(11)ア)であるα5寮に入寮した。原告は,同年2月6日,警備会社であるB株式会 社(以下「B」という。)で契約社員として就労することとなり,東京都葛飾区α6にあるC東京工場で警備員として稼働し始めたが,同年3月16日,Bを退職した。原告は,同月18日,警備会社である株式会社D(以下「D」という。)で非正社員として就労することとなり,江東区α7にあるEα7店で警備員として稼働し始めた。(甲37,116,117,乙2)オ α5寮からの退寮原告は,平成20年4月末頃,Dを退職し,同年5月3日,α5寮を退寮した。原告は,その後,東京都台東区α1で路上生活をしていたが,同月10日頃,路上生活者の就労支援を目的とする雑誌「F」のスタッフと出会い,同雑誌の販売の仕事を知り,新宿区α8のα9駅西口付近に移動した。原告は,同所で路上生活をし,上記雑誌の販売の仕事をしていたが,1日の収入は千数百円にすぎなかった。(甲37,116,117,乙2) 雑誌の販売の仕事を知り,新宿区α8のα9駅西口付近に移動した。原告は,同所で路上生活をし,上記雑誌の販売の仕事をしていたが,1日の収入は千数百円にすぎなかった。(甲37,116,117,乙2)(3)本件申請原告(当時57歳)は,平成20年6月2日付けで,新宿区福祉事務所の所管区域内に現在地を有する者として,処分行政庁に対し,本件申請(新福生自第○号)及びアパート転宅のための一時金支給申請(新福生自第○-○号。以下「第1次支給申請」という。)をした。(乙1)本件申請の申請書には,「健康状態良好」,「保護を申請する理由収入が少ない(Fの販売1日1600円)。」,「居宅での保護を希望する。」,「敷金礼金等の一時扶助を求める。」,「所持金 0円」,「持病無」,「アパートを希望する。」,「保護開始までの期間はドヤ(簡易宿所)を希望する。」という記載がある。 (4)本件却下決定処分行政庁は,平成20年6月13日付けで,原告に対し,本件却下決定 及び第1次支給申請を却下する旨の決定(以下「第1次不支給決定」という。)をした。(甲2)本件却下決定の通知書には,「申請人(原告)には重大な就労阻害要因があるとは見受けられない。更に,業種を問わなければ就労努力により適切な仕事は十分確保できるものと考えられる。申請人にはこれまで稼働能力を活用する機会が複数あったにもかかわらず,活用に至っていない。したがって,生活保護法4条1項にある『稼働能力』を十分に活用しているとは判断できない。また,居住地を持たない申請人の自立のためには,更生施設を事実上代替する自立支援システムがあり,その利用が先ず求められるものである。」という理由が付記されている。 また,第1次不支給決定の通知書には,「生活 ない申請人の自立のためには,更生施設を事実上代替する自立支援システムがあり,その利用が先ず求められるものである。」という理由が付記されている。 また,第1次不支給決定の通知書には,「生活保護の申請を却下することから,一時扶助の適用はあり得ないものであり,却下する。」という理由が付記されている。 (5)本件申請後の経過(1)ア原告は,平成20年6月2日,新宿区長に対し,本件申請に対する不作為についての審査請求をした。(甲1)イ原告は,平成20年6月13日,東京都知事に対し,本件却下決定及び第1次不支給決定についての審査請求をするとともに,処分行政庁に対し,生活保護の開始申請(以下「第2次保護開始申請」という。)及びアパート転宅のための一時金支給申請(以下「第2次支給申請」という。)をし,さらに,新宿区長に対し,第2次保護開始申請に対する不作為についての審査請求をした。(甲3,4,6)ウ新宿区長は,平成20年6月23日,本件申請に対し本件却下決定がされていることを理由に,前記アの不作為についての審査請求を却下する旨の裁決をした。(甲8)エ処分行政庁は,平成20年6月26日,第2次保護開始申請を却下する 旨の決定(以下「第2次却下決定」という。)及び第2次支給申請を却下する旨の決定(以下「第2次不支給決定」という。)をした。原告は,同日,処分行政庁に対し,生活保護の開始申請(以下「第3次保護開始申請」という。)をした。(甲5,9)オ原告は,平成20年7月4日,東京都知事に対し,第2次却下決定及び第2次不支給決定についての審査請求をした。 (6)原告は,平成20年7月7日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)(7)本件申請後の経過(2)ア新宿区長は, し,第2次却下決定及び第2次不支給決定についての審査請求をした。 (6)原告は,平成20年7月7日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)(7)本件申請後の経過(2)ア新宿区長は,平成20年7月9日,第2次保護開始申請に対し第2次却下決定がされていることを理由に,前記(5)イの不作為についての審査請求を却下する旨の裁決をした。 イ処分行政庁は,平成20年7月25日,第3次保護開始申請を却下する旨の決定をした。 (8)原告は,本件を本案として,生活保護を開始する旨の決定の仮の義務付け等を求める仮の義務付けの申立て(当庁平成○年(行ク)第○号)をしたが,当裁判所は,平成20年8月13日,上記申立てを却下する旨の決定をした。 (顕著な事実,甲111)(9)板橋区での生活保護の開始原告は,平成20年8月25日,板橋区板橋福祉事務所長(以下「板橋福祉事務所長」という。)に対し,生活保護の開始申請をし,急迫した状況にあるものとして,即日,生活保護を開始する旨の決定を受けた。原告は,簡易宿所で待機した後,同年9月5日,肩書住所地に所在する家賃月額4万6000円のアパートに入居し,同年12月3日から老人介護施設で宿直職員として稼働している。原告は,月額約9万円の給与の支払を受け,不足分について生活保護を受けている。(甲116)(10)本件申請後の経過(3) 東京都知事は,平成20年9月29日,前記(5)イの本件却下決定及び第1次不支給決定についての審査請求並びに前記(5)オの第2次却下決定及び第2次不支給決定についての審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。 (甲41)その理由は,「請求人(原告)の年齢は当時57歳であり,処分行政庁から提出された求人情報詳細及び当庁の調査( 第2次不支給決定についての審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。 (甲41)その理由は,「請求人(原告)の年齢は当時57歳であり,処分行政庁から提出された求人情報詳細及び当庁の調査(ハローワーク・インターネットサービスによる検索)によれば,57歳を対象とする求人は東京都内において相当数存在することが認められ,本件申請及び第2次保護開始申請に係る申請書において請求人の健康状態が『良好』及び『普通』とそれぞれ記載されていることに鑑みれば,請求人は稼働能力を有し,稼働意思があり,かつ,稼働場所を得ることができるというべきである。したがって,本件において,請求人が補足性の要件を満たしていないことは明らかであり,本件申請及び第2次保護開始申請についてはこれを却下することが相当である。」というものである。 (11)路上生活者等の保護及び支援に係る被告等の施策ア自立支援システム東京都知事と特別区の区長は,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成14年法律第105号)に定める地方公共団体の責務を踏まえて,路上生活者対策事業に係る都区協定を締結し,路上生活者に対し一時的な保護及び就労による自立など路上生活からの早期の社会復帰に向けた支援を行うため,巡回相談事業,緊急一時保護事業,自立支援事業及び地域生活継続支援事業を共同で実施している(路上生活者対策事業実施大綱第1,第2)。(乙3)このうち,緊急一時保護事業は,特別区内の路上生活者の一時的な保護及びその実状に応じた社会復帰への支援を目的として,宿所,食事等の提供,生活相談及び指導,健康診断並びに利用者の意欲,能力,希望等の把 握及び評価を行うものであり,この事業を実施するためにα10寮,α3寮等の緊急一時保護センターが設けられてい 所,食事等の提供,生活相談及び指導,健康診断並びに利用者の意欲,能力,希望等の把 握及び評価を行うものであり,この事業を実施するためにα10寮,α3寮等の緊急一時保護センターが設けられている(ただし,α3寮は5年間の設置期間の満了により平成21年3月をもって運営を終了し,その業務はα11寮に引き継がれた。)。緊急一時保護センターは,特別区内の路上生活者を一時的に保護し,心身の健康回復と利用者の状況に応じた適切な支援のための調査及び評価を行うものであるところ,その利用期間は1か月とされ,処遇方針の検討のため必要がある場合に1か月に限り延長することができる。緊急一時保護センターにおいては,入所者が求職活動を行うことは予定されておらず,食事及び衣類等の日用品類が現物で提供されるだけで,金銭の給付は行われない。(乙3,4)自立支援事業は,緊急一時保護事業による調査及び評価の結果,就労意欲があり心身の状態が就労に支障がないと認められた者の就労自立を目的として,宿所,食事等の提供,生活,健康,職業,住宅等の相談及び指導という利用者の就労自立に向けた支援を行うものであり,この事業を実施するためにα12寮,α5寮等の自立支援センターが設けられている。自立支援センターは,利用者を対象に生活支援,就労支援,社会生活支援を中心とした自立支援プログラムを策定し,常用雇用を基本とする自立支援を行うものであるところ,その利用期間は2か月とされ,自立のための収入が満たない者,試験雇用期間中の者など就労状況が不安定な者は1か月,就労はしているものの住宅確保に時間を要する者は更に1か月延長することができる。自立支援センターにおいては,食事及び衣類等の日用品類が現物で支給され,日用品費として1日400円が支給されるほか,求職のための交通費や就労 宅確保に時間を要する者は更に1か月延長することができる。自立支援センターにおいては,食事及び衣類等の日用品類が現物で支給され,日用品費として1日400円が支給されるほか,求職のための交通費や就労開始時の支度金,住宅確保のための必要経費の一部も支給される。(乙3,4)イ TOKYOチャレンジネット東京都と厚生労働省は,住居を失いインターネットカフェや漫画喫茶, サウナ,ファーストフード店等で寝泊まりしながら就労をしている者に対し,生活,住居,仕事に関する相談を行う機関として,TOKYOチャレンジネットを設置している。同機関は,東京都社会福祉協議会からの住宅資金や生活資金の借入手続をもサポートしており,同機関が行う生活相談及び住居相談については東京都が委託した社会福祉法人が,仕事に関する相談については厚生労働省の出先機関であるハローワーク(公共職業安定所)が,それぞれ実施している。(乙5)ウ α13寮(ホームレスに対する宿泊事業)被告は,疾病等により緊急に一時保護を必要とする路上生活者の宿泊場所を確保するため,社会福祉法2条3項8号所定の第2種社会福祉事業として設置された無料低額宿泊所であるα13寮について,その運営法人との間で契約を締結し,路上生活者に対する食事及び宿泊場所の提供を委託している。これにより,被告の依頼に基づいて同施設を利用する路上生活者は,その運営法人から,被告の費用負担において,宿泊場所,寝具,タオルその他の日用品及び1日3回の食事の提供を受けることができる。α13寮においては,入寮者が就労することは予定されておらず,就職が決まった入寮者は一定の猶予期間の後に退寮しなければならない。(甲136,乙15) 3 争点本件の争点は,① 本件却下決定の適否( いては,入寮者が就労することは予定されておらず,就職が決まった入寮者は一定の猶予期間の後に退寮しなければならない。(甲136,乙15) 3 争点本件の争点は,① 本件却下決定の適否(争点1),具体的には,本件却下決定は無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するか否か(争点1の1),本件却下決定は保護の補足性の要件(稼働能力の活用要件)を定める同法4条1項の解釈適用を誤ったものであるか否か(争点1の2),本件却下決定は居宅保護の原則を定める同法30条1項に違反するか否か(争点1の3),② 生活保護を開始する旨の決定の義務付けの可否(争点2),具体的には,処分行政庁が本件申請に対し平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の 決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とするもの)をすべきであることが生活保護法の規定から明らかであると認められ又は同決定をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるか否か,③ 扶助費(生活扶助費及び住宅扶助費)の支払請求の可否(争点3)である。 4 当事者の主張の要旨(1)本件却下決定の適否(争点1)について(原告)本件却下決定には,次のとおり,無差別平等の原則違反,保護の補足性の要件(稼働能力の活用要件)の解釈適用の誤り,指導助言義務違反及び調査義務違反,居宅保護の原則違反の違法があるのであって,本件却下決定は,違法なものであるから,取り消されるべきである。 ア原告が本件申請をするに至った経過及び本件却下決定の経過は次のとおりである。 (ア)α5寮での求人原告は,α5寮に入寮した直後から求職活動を始めた。寮内では,求人情報が張り出されたり,ハローワークの職員による案内が 却下決定の経過は次のとおりである。 (ア)α5寮での求人原告は,α5寮に入寮した直後から求職活動を始めた。寮内では,求人情報が張り出されたり,ハローワークの職員による案内があるなど,職業紹介がされていたが,その職種は,鈑金工や旋盤工のように特殊な技能を必要とするものや,募集案内には記載されていないものの実際には年齢制限が付されているものが多く,原告に残されていたのは警備員しかなかった。 (イ)Bでの就労及びBからの退職原告は,Bで契約社員として就労することとなり,平成20年2月中旬頃から,C東京工場で警備員として稼働し始めた。しかし,その仕事は,鍵の種類や運搬用車両の運転手の顔など短期間で覚えなければならないことが多く,就労開始からまもなく工場の管理を一人で任されるな ど,きつい仕事であったことから,原告は,同年3月中旬頃には,Bを退職した。 (ウ)Dでの就労原告は,Dで非正社員として就労することとなり,平成20年4月2日から,Eα7店で警備員として稼働し始めた。しかし,その仕事は,週平均6日勤務,1日の勤務時間は10時間から12時間,休憩時間は30分から40分というもので,勤務時間中はほぼ立ちっぱなしであり,夜勤が多く,通勤に時間が掛かるなど,体力的にきつい仕事であった。 (エ)α5寮での生活原告は,α5寮において,14人が同じ部屋で寝起きする集団生活を余儀なくされ,プライバシーがない状態で他人に気兼ねしながら生活していたため,常に緊張しており,心の休まる暇がなかった。また,原告と同室の者の中には,原告とは勤務時間が異なるものが何人もおり,生活音等がやまないため,原告は,ゆっくりと眠ることができず,休養も十分に取ることができなかっ おり,心の休まる暇がなかった。また,原告と同室の者の中には,原告とは勤務時間が異なるものが何人もおり,生活音等がやまないため,原告は,ゆっくりと眠ることができず,休養も十分に取ることができなかった。 (オ)Dからの退職及びα5寮からの退寮原告は,過酷な勤務を続け,心身の休養も十分に取ることができなかったため,平成20年4月29日,体調を崩した。原告は,Dと連絡を取り,勤務を休ませてもらおうとしたが,Dから休暇の許可を受けることはできなかった。しかし,原告は,体調がどうしても回復しなかったため,やむを得ず出勤しないこととし,一人でゆっくりと休みたかったことから,α14に研修旅行に行くと称して,α5寮から外泊の許可を受けた上,外出した。原告は,α15駅付近にあるDの事務所を訪ね,もう一度勤務を休ませてもらおうとしたが,Dから休暇の許可を受けることはできず,そのままα15駅付近のサウナに宿泊し,同年5月2日にα5寮に戻った。原告は,外泊中に,Dを退職することを決めていた ところ,Dの関係者がα5寮を訪れ,自立支援センターを利用していることが知られたことから,α5寮での生活に限界を感じ,同月3日,α5寮を退寮した。 (カ)α9駅西口付近での路上生活原告は,東京都台東区α1で路上生活をしていたが,平成20年5月10日頃,雑誌「F」の販売の仕事に就くために新宿区α8のα9西口付近に移動した。原告は,同所で路上生活をし,上記雑誌の販売の仕事をしていたが,その売上げは1日2000円から3000円程度であり,そこから翌日の仕入れに必要な金額を差し引くと,最低限食事をすることができる程度の金員しか残らなかった。原告は,同月31日,新宿区α16地域センターで行われたホームレス総合相談ネットワークが主 り,そこから翌日の仕入れに必要な金額を差し引くと,最低限食事をすることができる程度の金員しか残らなかった。原告は,同月31日,新宿区α16地域センターで行われたホームレス総合相談ネットワークが主催する路上生活者向けの法律相談会に参加して助言を受け,本件申請に及んだ。 (キ)本件申請-6月2日の面談の状況原告は,α5寮での経験から,自立支援センターではプライバシーがない状態での集団生活を余儀なくされ,休養も十分に取ることができないことと,利用期間が限定されているため,就労することができたとしてもアパートに入る資金が貯まらないうちに退寮することになり,結局,路上生活に戻ってしまうこととを理解していたことから,平成20年6月2日に本件申請をするに当たっては,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望しており,その旨申請書にも明記していた。 これに対して,新宿区福祉事務所生活福祉課自立支援係の係員として原告との面談を担当したG(以下「G係員」という。)は,原告に対し,生活保護(居宅保護)を開始し簡易宿所を経てアパートに入居させる手続をとろうとはせず,「ホームレスの人には自立支援センターに行って もらっている。」,「(自立支援システム等の)他法他施策の優先だけはしてもらわなければならない。」などと述べて「他法他施策」である自立支援システム,TOKYOチャレンジネット等を利用するよう執拗に誘導した。 しかし,原告は,あくまでも生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望し,G係員の誘導には従わなかったため,結局,その日は申請書の受理が行われたにとどまった。 (ク)本件申請-6 護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望し,G係員の誘導には従わなかったため,結局,その日は申請書の受理が行われたにとどまった。 (ク)本件申請-6月3日及び同月9日の面談の状況原告とG係員や自立支援主査であるH(以下「H主査」という。)ほかの処分行政庁の補助職員は,平成20年6月3日及び同月9日にも,面談を行ったところ,G係員らは,原告に対し,自立支援システム,TOKYOチャレンジネット,α13寮等を利用するよう執拗に誘導した。 しかし,原告は,あくまでも生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望し,G係員らの誘導に従う意思がない旨を明らかにした。 そこで,処分行政庁は,平成20年6月13日,原告に対し,本件却下決定をした。 イ無差別平等の原則違反(争点1の1)平成20年6月の本件申請時,処分行政庁を除く東京都の特別区の福祉事務所長の多くは,路上生活者に対し,自立支援システム等の利用を強要することなく,生活保護の開始の段階では稼働能力の活用要件を充足することを厳格に求めないまま,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを許していた。ところが,処分行政庁だけは,他の特別区の福祉事務所長と異なり,路上生活者に対しては生活保護(居宅保護)を行わず,自立支援システムに誘導し て同システムによる劣等処遇を行うという運用をしていたのであって,本件却下決定は,このような運用に基づいて路上生活者を差別的に取り扱うものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条ひいては憲法14条1項に違反するというべきである。 被告は, て,本件却下決定は,このような運用に基づいて路上生活者を差別的に取り扱うものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条ひいては憲法14条1項に違反するというべきである。 被告は,本件却下決定は生活保護法4条1項所定の稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件を充足していないことを理由とするものであると主張するが,この理由は後付けのものにすぎず,本件却下決定の真の理由は,原告が居宅を有しない路上生活者であるからというのにほかならないものである。 ウ保護の補足性の要件充足性(争点1の2)(ア)「生活に困窮する者」該当性生活保護法による保護は,「生活に困窮する者」がその利用し得る資産,能力その他あらゆるものをその最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる(4条1項)ところ,原告は,平成20年6月の本件申請時において,所持金数百円,預貯金1000円余りを有するのみで,そのほかに資産を有していなかった。原告は,その当時,α9駅西口付近の路上や公園で寝泊まりをしながらボランティア団体などが行う炊き出しを渡り歩くことにより,かろうじて生活していたのであるから,生活保護法4条1項所定の「生活に困窮する者」に該当するというべきである。 (イ)稼働能力の活用要件の意義生活保護法4条1項は,生活に困窮する者が「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」を保護の要件としているところ,保護の補足性の要件につき稼働能力の活用要件の充足性が求められるのは,自らの稼働能力を活用することによりその最低限度の生活を維持することができる者には保護の必要が認められないからであ るから,この要件を充足しているか否かは,生活に困窮する者が現に置かれている らの稼働能力を活用することによりその最低限度の生活を維持することができる者には保護の必要が認められないからであ るから,この要件を充足しているか否かは,生活に困窮する者が現に置かれている状況を踏まえて,当該生活困窮者が稼働能力を有しているか否か,当該生活困窮者がその稼働能力を活用する就労の場を有しているか否かにより判断されるべきである。 この点について,被告は,稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件の判断においては,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有しているか否かも問題にし,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしているか否かを考慮すべきであると主張する。しかし,生活保護法は,全て国民は同法の定める要件を満たす限り保護を無差別平等に受けることができる(2条)として,無差別平等の原則を定めているところ,この原則は,旧生活保護法(昭和21年法律第17号。昭和25年法律第144号により廃止)が「能力があるにもかかわらず,勤労の意思のない者,勤労を怠る者,その他生計の維持に努めない者」を「素行不良な者」と併せて保護の対象から除外する絶対的欠格条項を置いていたのを改めて,生活に困窮する者は生活保護法の定める要件を満たす限り生活に困窮する状態に陥った理由にかかわりなく保護を無差別平等に受けることができるとしたものであることに照らすと,稼働能力の活用要件の充足性の判断において,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有しているか否かを問題にすべきではないというべきである。また,生活保護法は,生活に困窮する全ての国民に対しその最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長することを目的とするものである(1条)ところ,生活に困窮する者の自立を助長するという目的を達成 また,生活保護法は,生活に困窮する全ての国民に対しその最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長することを目的とするものである(1条)ところ,生活に困窮する者の自立を助長するという目的を達成するためには,就労意欲を喪失している者に対しても生活保護を開始した上で適切な就労指導(27条)を行うことが要請されるのであって,この見地からしても,稼働能力の活用要件の充足性の判断において,生活に困窮する者がその稼働 能力を活用する意思を有しているか否かを問題にすべきではないというべきである。稼働能力の活用要件の充足性を判断するに当たっては,同要件の充足は不誠実な者に対する制裁ないし道義的責任の追及のために求められているものではなく,あくまでも保護の補足性の観点から求められているものであることに留意しなければならない。 生活に困窮する者が,稼働能力を有しているが,その稼働能力を活用する就労の場を有していない場合には,当該生活困窮者は,自らの稼働能力を活用することによりその最低限度の生活を維持することができないから,稼働能力の活用要件を充足しているということができるのであって,このことは,当該生活困窮者がその稼働能力を活用する意思を有している場合だけではなく,そのような意思を有していない場合も異ならないというべきである。 なお,仮に稼働能力の活用要件を充足しているというためには生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有していることを必要とするとしても,その意思の内容としては一般的な意思をもって足り,被告が主張するように「真摯な努力」を要求するのは生活に困窮する者の自立を助長するという目的及び無差別平等の原則に照らして相当ではないというべきである。 (ウ)稼働能力の活用要件充足性 するように「真摯な努力」を要求するのは生活に困窮する者の自立を助長するという目的及び無差別平等の原則に照らして相当ではないというべきである。 (ウ)稼働能力の活用要件充足性そこで,前記(イ)に本件を当てはめると,次のとおり,原告は,平成20年6月の本件申請時において,稼働能力の活用要件を充足していたということができる。 すなわち,まず,稼働能力の有無について,原告は,本件申請時において,満57歳の男性であり,特段の疾病もなく,過酷な労働に耐え得るほどの稼働能力は有していなかったが,軽度の仕事には従事することができる程度の稼働能力は有していたというべきである。 次に,稼働能力の活用の場の有無について,原告は,本件申請時において,路上生活者であり,その稼働能力を活用する就労の場を有していなかったというべきである。原告は,本件申請時において,路上生活者であって,居宅や現在地の住民票を有しておらず,履歴書に記載する住所を有していなかった。また,原告は,所持金をほとんど有していなかったため,入浴や散髪をして清潔な身なりを整えることができず,履歴書用紙と筆記具を購入し証明写真を撮影する費用や面接に赴く交通費を支弁することもできなかった。このように,路上生活者であることは稼働能力を活用する上で著しい阻害要因となるのであって,路上生活者には事実上就労の機会が閉ざされているのである。 なお,ここで稼働能力の活用の意思の有無についても検討しておくと,仮に,稼働能力の活用要件を充足しているというためには,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有していることを必要とし,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしていなければならないとしても いうためには,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有していることを必要とし,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしていなければならないとしても,原告は,中学校を卒業してから本件申請をするまでの間,可能な限り就労を続けており,本件申請時においても,路上生活者がすることができる数少ない仕事である雑誌「F」の販売の仕事に従事し,自らの具体的な生活環境の中でその稼働能力を最大限に活用していたのであるから,原告は,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしていたということができる。 このように,原告は,本件申請時において,稼働能力を有していたが,その稼働能力を活用する就労の場を有していなかったため,自らの稼働能力を活用することによりその最低限度の生活を維持することができなかったのであるから,「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という稼働能力の活用要件を充足していた ということができるのであって,本件却下決定は生活保護法4条1項の解釈適用を誤ったものというべきである。 (エ)稼働能力の活用要件とDでの稼働等との関係この点について,被告は,原告が自立支援システムを利用してα5寮に入寮していた間に,Dで警備員として稼働していたが,その後,Dを退職するとともにα5寮を退寮したことについて,原告は,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をすれば,稼働能力を活用する機会を得ることができたにもかかわらず,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしなかったものであると主張する。しかし,無差別平等の原則が,生活に困窮する者は生活保護法の定める要件を満たす限り生活に困窮す かわらず,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしなかったものであると主張する。しかし,無差別平等の原則が,生活に困窮する者は生活保護法の定める要件を満たす限り生活に困窮する状態に陥った理由にかかわりなく保護を無差別平等に受けることができるものとしたものであることは,前記(イ)のとおりなのであって,このことによれば,稼働能力の活用要件の充足性の判断においては,原告が自立支援システムを利用してα5寮に入寮していた間に,Dで警備員として稼働していたが,その後,Dを退職するとともにα5寮を退寮したことを考慮すべきではないというべきである。 (オ)稼働能力の活用要件と自立支援システム等との関係被告は,原告がG係員らによる誘導に従わず,自立支援システム等の利用を拒んだことについて,自立支援システム等を利用すれば稼働能力を活用する機会を得ることができたという前提の下に,原告は,その稼働能力を活用する意思をもって自立支援システム等を利用してその機会を得る真摯な努力をすれば,稼働能力を活用する機会を得ることができたにもかかわらず,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしなかったものであると主張する。しかし,次のとおり,自立支援システム等を利用しても稼働能力を活用する就労の場を得るこ とはできないというべきであって,現に,原告は,自立支援システムを利用してα3寮及びα5寮に入寮したものの,原告に適合する求人は警備員しかなく,また,プライバシーがない大部屋での集団生活を余儀なくされて心身共に疲労し,B及びDをいずれも退職せざるを得なかったのである。そして,このように,自立支援システム等を利用しても,稼働能力を活用する就労の場を得ることはできず,就労自立には結び付かないことか 心身共に疲労し,B及びDをいずれも退職せざるを得なかったのである。そして,このように,自立支援システム等を利用しても,稼働能力を活用する就労の場を得ることはできず,就労自立には結び付かないことからすると,原告がG係員らによる誘導に従わず,自立支援システム等の利用を拒んだことについて,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしなかったということはできないというべきである。 まず,自立支援システムについてみると,緊急一時保護センターは,路上生活者の心身の健康の回復並びにその意欲,能力,希望等の調査及び評価を目的とする施設であって,入所者が求職活動を行うことは予定されていないし,また,入所者に対する金銭給付は行われず,求職活動に必要な交通費,被服費等を得ることができないため,入所者が求職活動を行うことは事実上困難である。自立支援センターは,それ自体が入所者に職を付与する施設であるわけではなく,入所者はハローワーク等を利用して仕事を見付けるしかないし,また,利用期間が限定されているため,就労することができたとしても退所後の居宅を準備するだけの資金を準備することは困難である。さらに,路上生活者に対する偏見のため,自立支援センターに入所していること自体が求職活動の妨げになるし,プライバシーがない大部屋での集団生活を余儀なくされるため,休養を十分に取ることができない。加えて,自立支援センターに入所中に見付けることができる求人は労働条件が厳しいものがほとんどであり,継続的に安定して働けるようなものではない。このような事情があることから,自立支援システムはこれを利用しても就労自立には必ずしも結 び付かないのが実情であるところ,これを統計的にみても,平成19年1月の時点で,緊急一時保護センターに入所した者の があることから,自立支援システムはこれを利用しても就労自立には必ずしも結 び付かないのが実情であるところ,これを統計的にみても,平成19年1月の時点で,緊急一時保護センターに入所した者のうち自立支援センターに入所するものは46.6パーセントであり,そのうち就労自立するのは51.3パーセントにすぎず(それ以外の者の多くは路上生活に戻っていると推測される。),自立支援システムを利用しても稼働能力を活用する就労の場を得ることはできないことは明らかである。そもそも,自立支援システムは,生活保護法4条2項の「他法他施策」に該当するものではなく,要保護者の意思を尊重しながら生活保護と並列的にその利用を検討すべきものなのであって,同法30条1項の居宅保護の原則に照らしても,要保護者が生活保護の利用を希望しているのに,緊急一時保護センター及び自立支援センターへの入所を伴う自立支援システムを生活保護に優先し,自立支援システムの利用を強制することは許されないというべきである。 次に,TOKYOチャレンジネットについてみると,TOKYOチャレンジネットは,いわゆるネットカフェ難民のように住居を有しないものの一定の収入がある者を対象とし,これらの者が住宅資金や転宅に伴って必要になる生活資金(家財道具類等の購入資金)を借り入れるのを支援することを主な事業内容とするものであって,原告のような路上生活者を対象とするものではない(路上生活者がTOKYOチャレンジネットに相談に訪れても,最初の段階で福祉事務所に相談するよう指示され,同制度を適用することは拒まれる。)のであるから,平成20年6月の本件申請時において,路上生活者であった原告がTOKYOチャレンジネットを利用して稼働能力を活用する就労の場を得ることはできなかったことは明らかであ ことは拒まれる。)のであるから,平成20年6月の本件申請時において,路上生活者であった原告がTOKYOチャレンジネットを利用して稼働能力を活用する就労の場を得ることはできなかったことは明らかである。 さらに,α13寮についてみると,α13寮は,生計困難者のために設置された無料低額宿泊所であり,門限が設定され,就労開始後は退寮 しなければならないなど就労に適した施設でないのであって,α13寮を利用しても稼働能力を活用する就労の場を得ることはできないことは明らかである。 (カ)指導助言義務違反及び調査義務違反昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」第11の1(2)は,「保護申請時において,要保護者が,自らの資産能力その他扶養,他法等利用し得る資源の活用を怠り又は忌避していると認められる場合は,適切な指導助言を行うものとし,要保護者がこれに従わないときは,保護の要件を欠くものとして,申請を却下すること。」としているのであって,処分行政庁は,原告に対し適切な指導助言を行い,原告がこれに従わないときに初めて保護の要件を欠くものとして本件却下決定をすべきであった。ところが,処分行政庁は,原告に対し,稼働能力の活用に関する指導助言を一切行わず,それどころか稼働能力の活用を問題にしていることを理解させることさえしないまま本件却下決定をしているのであり,本件却下決定には指導助言義務違反の違法があるというべきである。 また,調査の先行しない行政処分はなく,処分行政庁は,憲法25条及びそれに基づく生活保護法の規定により,又は行政手続の一般原則に基づき,生活保護の開始申請に対し決定をするに当たり十分な調査をする義務を課せられている。ところが,処分 く,処分行政庁は,憲法25条及びそれに基づく生活保護法の規定により,又は行政手続の一般原則に基づき,生活保護の開始申請に対し決定をするに当たり十分な調査をする義務を課せられている。ところが,処分行政庁は,本件却下決定をするに当たりこれを怠り,稼働能力の活用に関して十分な調査をしないまま本件却下決定をしているのであって,本件却下決定には調査義務違反の違法があるというべきである。 エ居宅保護の原則違反(争点1の3)生活保護法30条1項は,生活扶助は被保護者の居宅において行うものとすると定めて居宅保護の原則を採用し,例外的な場合にのみ施設保護 (収容保護)を行うこととしているところ,この原則を路上生活者についてみれば,生活保護(居宅保護)により要保護者にアパート等の居宅を確保させるものとするということになる。 そして,生活保護法において施設保護ではなく居宅保護が原則とされているのは,居宅保護こそが生活に困窮する者の自立を助長するという生活保護法の目的を達成するために最もふさわしい保護の形態であるからであって,居宅保護を希望する要保護者の意思は極力尊重されるべきものであるところ,要保護者が居宅を有しない場合における居宅保護と施設保護という生活扶助の方法の決定は,要保護者の精神,身体の状況,住宅扶助の方法に関する要保護者の希望,施設保護を選択した場合の収容先として考えられる施設の内容,居宅保護を選択した場合の居宅の確保の可能性等の諸要素を総合的に考慮して行われるべきであり,保護の実施機関は,その判断について一定の裁量権を有するというべきである。 これを本件についてみると,原告は,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望しており,原告の 一定の裁量権を有するというべきである。 これを本件についてみると,原告は,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望しており,原告の生活歴及び職歴,居宅生活を営む上で必要となる基本事項(生活費の金銭管理,服薬等の健康管理,炊事洗濯,人とのコミュニケーション等)のいずれをみても居宅生活を営む上で何ら問題となる点がないことを考慮すると,処分行政庁が居宅保護の方法による生活扶助を与えるため生活保護を開始しないことはその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるから,本件却下決定は居宅保護の原則を定める生活保護法30条1項に違反するというべきである。 (被告)本件却下決定に,無差別平等の原則違反,保護の補足性の要件(稼働能力の活用要件)の解釈適用の誤り,指導助言義務違反又は調査義務違反,居宅保護の原則違反の違法がないことは,次のとおりであり,本件却下決定は適 法なものである。 ア本件却下決定の経過について原告は,G係員らは原告に対し自立支援システム,TOKYOチャレンジネット,α13寮等を利用するよう執拗に誘導したと主張するが,G係員らは,原告に対し,自立支援システム等を利用して就労自立を目指すことを勧めただけであって,執拗に誘導していない。これに対して,原告は,「安定した住所がないと仕事に就けない。」,「生活保護を受けてアパートに入居した上で仕事を探したい。」などとして,G係員らの勧めに従わなかったものである。 イ無差別平等の原則違反について原告は,本件却下決定は路上生活者に対しては生活保護(居宅保護)を行わず自立支援システムに誘導して同システムによる劣等処遇を行うという運用に基づいて路上生活者を差別 等の原則違反について原告は,本件却下決定は路上生活者に対しては生活保護(居宅保護)を行わず自立支援システムに誘導して同システムによる劣等処遇を行うという運用に基づいて路上生活者を差別的に取り扱うものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反すると主張する。しかし,本件却下決定は,同法4条1項所定の稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件を充足していないことを理由とするものであって,路上生活者に対しては生活保護(居宅保護)を行わないという運用に基づいてされたものではなく,原告の上記主張はその前提を欠くというべきである。 ウ保護の補足性の要件充足性について(ア)稼働能力の活用要件の意義について生活保護法4条1項は,国民の側において保護を受けるために守るべき最小限の要件である保護の補足性の要件を定め,保護を受けるためには各自がその持てる能力に応じて最善の努力をすることが先決であり,そのような努力をしてもなおかつその最低限度の生活を維持することができない場合に初めて保護が行われるのであって,決して安易に保護が行われるものではないということを明らかにするものである。そして, 同項所定の稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件は,生活に困窮する者が稼働能力を有する場合には,その具体的な稼働能力を前提とした上で,当該生活困窮者がその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしているか否か,当該生活困窮者がその稼働能力を活用する機会を得ることができるか否かを総合的に考慮して判断すべきものなのであり,当該生活困窮者がその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をすれば,稼働能力を活用する機会を得ることができるにもかかわらず,その稼働能力を活用する意思をもってそ ものなのであり,当該生活困窮者がその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をすれば,稼働能力を活用する機会を得ることができるにもかかわらず,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしていないため,稼働能力を活用する機会を得ることができないときは,稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件を充足しないというべきである。 (イ)稼働能力の有無について原告は,平成20年6月の本件却下決定時において,健康状態良好で持病もない年齢57歳の男性であり,重大な就労阻害要因もなかったのであって,その収入により生計を維持するに足りる稼働能力を有していたというべきである。 現に,原告は,本件却下決定の直前である平成20年4月,Dで警備員として稼働し,時給950円ないし1188円,日給8790円の収入を得ている。 (ウ)稼働能力の活用の機会の有無についてそして,原告は,平成20年6月の本件却下決定時において,業種を問わずに,自立支援システム等の利用可能な制度を利用して,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をすれば,稼働能力を活用する機会を得ることができたというべきである。 本件却下決定時において,ハローワーク等の職業紹介には原告に適合する複数の求人があったのであり,原告は,自立支援システムを利用し て求職活動を行い,就労自立を目指すこともできたし,TOKYOチャレンジネットの就労相談を利用したり,α13寮に入寮してハローワーク等を利用したりして,求職活動を行っても,就労自立を目指すことができた。現に,原告は,本件却下決定の直前である平成20年4月,自立支援システムを利用してα5寮に入寮していた間に,Dで警備員として稼働 を利用したりして,求職活動を行っても,就労自立を目指すことができた。現に,原告は,本件却下決定の直前である平成20年4月,自立支援システムを利用してα5寮に入寮していた間に,Dで警備員として稼働し,時給950円ないし1188円,日給8790円という収入を得ている。 原告は,アパートなどの安定した居宅を有しない路上生活者であることは稼働能力を活用する上で著しい阻害要因となるのであって,路上生活者には事実上就労の機会が閉ざされていると主張するが,そのようにいう合理的な根拠はない。 (エ)稼働能力の活用の意思の有無についてところが,原告は,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしなかった。 原告は,本件却下決定の直前である平成20年4月,自立支援システムを利用してα5寮に入寮していた間に,Dで警備員として稼働し,生計を維持するに足りる収入を得ていたのに,無断欠勤した上,連絡不通となって,Dから退職したものとして取り扱われ,さらに,静岡県富士市の工場の期間工として住み込みで稼働することになったという虚偽の事実を告げて,α5寮まで退寮している。また,原告は,G係員らから,自立支援システム,TOKYOチャレンジネット,α13寮等を利用して就労自立を目指すことを勧められながら,「安定した住所がないと仕事に就けない。」,「生活保護を受けてアパートに入居した上で仕事を探したい。」などとして,これに従わず,合理的な理由なく自立支援システム等の利用を拒んでいる。 原告は,雑誌「F」の販売の仕事に従事し,自らの具体的な生活環境 の中でその稼働能力を最大限に活用していたと主張するが,原告は,G係員に対し,雑誌「F」の販売の仕事は既に辞めていると述べていた。 F」の販売の仕事に従事し,自らの具体的な生活環境 の中でその稼働能力を最大限に活用していたと主張するが,原告は,G係員に対し,雑誌「F」の販売の仕事は既に辞めていると述べていた。 また,原告は,自立支援システム等を利用しても,稼働能力を活用する就労の場を得ることはできず,就労自立には結び付かないと主張するが,各制度ないしそれに基づいて設置された施設の実態や,就労自立を目指す利用者と関係職員の真摯な努力の結果,現に就労自立を果たす者がいることを無視するものである。 (オ)処分行政庁は,原告がその収入により生計を維持するに足りる稼働能力を有しており,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をすれば,稼働能力を活用する機会を得ることができるにもかかわらず,その稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしていないため,稼働能力を活用する機会を得ることができないことから,生活保護法4条1項所定の稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件を充足しないとして,本件却下決定をしたものであり,本件却下決定は適法なものである。 (カ)指導助言義務違反及び調査義務違反について原告は,厚生省社会局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」を根拠として,処分行政庁は原告に対し適切な指導助言を行う義務を負っていたと主張するが,同通知は,要保護者が指導助言に従わなかったことを理由として生活保護の開始申請を却下する旨の決定をすることができるとしたものであり,稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件を充足していない場合であっても要保護者が指導助言に従わなかった場合に限り生活保護の開始申請を却下する旨の決定をすることができるとしたものではないのであって,原告の上記主張に係る指導助言義務 の要件を充足していない場合であっても要保護者が指導助言に従わなかった場合に限り生活保護の開始申請を却下する旨の決定をすることができるとしたものではないのであって,原告の上記主張に係る指導助言義務を処分行政庁が負っているということはできない。 また,一般に,行政処分の調査手続の瑕疵が実体的な瑕疵から独立し て処分の違法事由となるのは,当該処分につき調査手続が全くされていない場合や,当該処分につき法令の規定により具体的な調査手続が定められているのにこれが履践されていない場合などに限られるところ,G係員らは,稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件を充足しているか否かについて,原告と面談し,墨田区福祉事務所から記録の写しの送付を受け,ハローワーク等から提供を受けていた求人情報の中に原告に適合するものがないかを検索するなどの調査手続を行っているし,保護の実施機関が生活保護の開始申請に対する決定をするに当たって履践すべき具体的な調査手続を定める法令の規定は存在しないのであるから,本件却下決定に実体的な瑕疵から独立して処分の違法事由となる調査手続の瑕疵は存在しないというべきである。 エ居宅保護の原則違反について原告は,本件却下決定は居宅保護の原則を定める生活保護法30条1項に違反すると主張するが,同条の規定は保護の方法について定めるものであるから,生活保護の開始申請が保護の要件を全て充足し保護の必要が認められることがその適用の前提となる。しかし,本件申請は同法4条1項所定の稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件を充足しておらず,本件却下決定は保護の必要が認められないことを理由として同法30条の規定を適用せずにされたものであるから,居宅保護の原則違反は本件却下決定の違法事由とはならないというべきである 件を充足しておらず,本件却下決定は保護の必要が認められないことを理由として同法30条の規定を適用せずにされたものであるから,居宅保護の原則違反は本件却下決定の違法事由とはならないというべきである。 (2)生活保護を開始する旨の決定の義務付けの可否(争点2)について(原告)ア保護の要否前記(1)ウによれば,処分行政庁が本件申請に対し平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定をすべきであることが生活保護法の規定から明らかであると認められる。 イ保護の種類及び方法前記(1)ウによれば,処分行政庁が本件申請に対し生活保護を開始する旨の決定をするに当たっては保護の種類を生活扶助とすべきであることが生活保護法の規定から明らかであると認められ,また,前記(1)エによれば,生活扶助の方法として居宅保護によらないことが処分行政庁の裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められる。そして,このことによれば,処分行政庁が本件申請に対し生活保護を開始する旨の決定をするに当たっては保護の種類を住宅扶助とすべきであることが生活保護法の規定から明らかであると認められる。 ウしたがって,処分行政庁に対し,本件申請に対して平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とするもの)をすべき旨を命ずる判決をすべきである。 (被告)争う。 (3)扶助費の支払請求の可否(争点3)について(原告)ア保護の要否,種類及び方法前記(2)のとおり,本件申請に対しては平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とす 保護の要否,種類及び方法前記(2)のとおり,本件申請に対しては平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とするもの)をすべきである。 イ保護の程度(ア)生活扶助費の額東京都の特別区は地域の級地区分が1級地-1であるところ,原告は,平成20年6月の本件申請当時,満57歳であったので,居宅(第1類)の基準額は3万8180円,世帯人員1人であったので,居宅(第 2類)の基準額は4万3430円となり,1か月分の生活扶助費の額は8万1610円となる。 (イ)住宅扶助費の額東京都の1級地の1人世帯の住宅扶助基準額は5万3700円であるが,特別区においては単身者についても1.3倍額の特別基準を適用することが許されているから,住宅扶助費の上限額は6万9810円とすべきである。 ウ平成20年6月2日から同月30日までの期間の扶助費の額前記イ(ア)の生活扶助費の額を平成20年6月2日から同月30日までの期間について日割計算すると,7万8890円となる。 また,原告が平成20年6月2日から同月30日までの期間に実際に支出した住居費は5万4700円であるところ,前記イ(イ)のとおり,住宅扶助費の上限額は6万9810円であるから,住宅扶助費の額は実際に支出した5万4700円となる。 エ平成20年7月1日から同月31日までの期間の扶助費の額生活扶助費の額は,前記イ(ア)のとおり8万1610円である。 また,原告が平成20年7月1日から同月31日までの期間に実際に支出した住居費は5万2700円であるところ,前記イ(イ)のとおり,住宅扶助費の上限額は6 )のとおり8万1610円である。 また,原告が平成20年7月1日から同月31日までの期間に実際に支出した住居費は5万2700円であるところ,前記イ(イ)のとおり,住宅扶助費の上限額は6万9810円であるから,住宅扶助費の額は実際に支出した5万2700円となる。 オ平成20年8月1日から同月24日までの期間の扶助費の額生活扶助費の額は,前記イ(ア)のとおり8万1610円である。 また,原告が平成20年8月1日から同月31日までの期間に実際に支出した住居費は5万3700円であるところ,前記イ(イ)のとおり,住宅扶助費の上限額は6万9810円であるから,住宅扶助費の額は実際に支出した5万3700円となる。 そして,これらを平成20年8月1日から同月24日までの期間について日割計算すると,10万4756円となる。 (被告)争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件却下決定の適否(争点1)について(1)前記前提事実に加えて,証拠(甲第21号証の1ないし11,第30ないし第33号証,第37号証,第42ないし第44号証,第73,第79,第116,第117,第140号証,第142号証の1ないし3,第143号証,乙第2号証の1ないし4,第6号証,第12号証の1,2,第13,第14,第20号証,証人I,同Gの各証言,原告本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ア α3寮による調査及び評価の結果原告は,自立支援システムを利用することを自ら希望して,緊急一時保護センターであるα3寮に入寮した。α3寮は,路上生活者を一時的に保護するほか入寮者の心身の健康回復とその状況に応じた適切な支援のための調査及び評価を行うものであるとこ とを自ら希望して,緊急一時保護センターであるα3寮に入寮した。α3寮は,路上生活者を一時的に保護するほか入寮者の心身の健康回復とその状況に応じた適切な支援のための調査及び評価を行うものであるところ,α3寮による原告の調査及び評価の結果(3点満点)は,次のとおりである。(乙20)就労能力 2点(「体の悪いところもなく,気持ちを入れ替えてやります。」と述べており,一定の評価ができる。)就労意欲 2点(「できる仕事であれば何でもやります。」と述べており,一定の評価ができる。)職場環境への適応性2点(「やってみなければ分からないが,今までは大丈夫だった。」と述べており,一定の評価は可能と思われる。) 計画性 1点(短期的な計画性については概ね評価できるが,長期的な計画性については十分にあるとはいい難い。)生活管理能力 2点(単身生活の経験も長く,居宅生活を送る上での一定の生活管理能力は有するものと思われる。)金銭管理能力 1点(金銭の計画的な使用能力は有していないと思われる。「細かい計画は立てない。」と述べており,評価は難しい。)対人関係能力 2点(「少し短気なところがあり,相手に気配りするよう努めている。」と述べており,一定の評価ができる。)礼容,常識性 2点(服装に乱れた様子はなく,あいさつはできている。自己本位な言動が多く,やや短気と思われる。規律は厳守し,生活態度は良好である。犯罪歴もなく,基本的な常識性は有していると思われる。)総合評価自立支援センターの利用が望ましい(医師の診断では「異常を認めない。就労に支障がなく,昼夜問わない仕事を含む8時間以上の常勤労働が可能」 的な常識性は有していると思われる。)総合評価自立支援センターの利用が望ましい(医師の診断では「異常を認めない。就労に支障がなく,昼夜問わない仕事を含む8時間以上の常勤労働が可能」とされており,持病もなく,就労意欲も高い。)。 イ α5寮での就労(ア)α5寮での求人原告は,α3寮による調査及び評価の結果,就労意欲があり心身の状態が就労に支障がないと認められたことから,平成20年1月28日,路上生活者の就労自立の支援を目的とする自立支援センターであるα5寮に入寮した。 原告は,α5寮に入寮すると直ちに求職活動を始めたが,新聞広告による求人は,日雇労働者や派遣労働者といった不安定な就労形態のもの が大部分を占めており,寮の掲示板に張り出されるハローワークによる求人は,警備員や清掃作業員のほかは,鈑金工,旋盤工のように特殊な技能を必要とするものや,事務職,工場労働者のように実際には年齢制限が付されているものが多く,原告が就労することができる見込みはなかった。(甲37,116,117,乙2)(イ)Bでの就労及びBからの退職原告は,警備員を中心として求職活動を行い,平成20年2月6日,警備会社であるBで契約社員として就労することとなった。原告は,Bから身元保証人を用意することを求められたが,親族と離別して単身で生活していた期間が長く,身元保証人の成り手が見当たらなかったため,長兄の承諾を受けることなく同人名義の身元保証書を作成し,Bに差し入れた。(甲37,116,117,乙2)このようにして,原告は,東京都葛飾区α6にあるC東京工場で警備員として稼働し始めたが,鍵の種類や工場に出入りする運搬用車両の運転手の顔など短期間で覚えなければな 16,117,乙2)このようにして,原告は,東京都葛飾区α6にあるC東京工場で警備員として稼働し始めたが,鍵の種類や工場に出入りする運搬用車両の運転手の顔など短期間で覚えなければならないことが多く,就労開始からまもなく工場の管理を一人で任されるなど,要求される能力の水準が高かったことから,上記工場で稼働を続けることは困難であると自ら判断し,平成20年3月16日,Bを退職した。(甲37,116,117,乙2)(ウ)Dでの就労原告は,平成20年3月18日,警備会社であるDで就労することとなった。原告は,Bにおいて一度失敗した警備員として再度稼働することには気が進まなかったが,自立支援センターであるα5寮においては利用期間が経過する時点で就労していないと利用期間の延長が認められないところ,同年1月28日の入寮から2か月の経過が迫っていたことから,やむを得ず警備員として再度稼働することとしたものである。 (甲37,116,117,乙2)原告は,平成20年4月2日から,東京都江東区α7にあるEα7店で警備員として稼働し始め,同月28日までの27日間のうち20日間勤務したところ,当初の3日間は日勤の日であり,午前8時から午後9時まで勤務し,その余は夜勤の日であり,午後7時ないし午後11時から午前6時又は午前10時まで勤務した。葛飾区α17にあるα5寮からEα7店までは乗換えが多く,通勤に時間が掛かり,また,勤務時間中はほぼ立ちっぱなしであるなど,Eα7店での勤務は50歳代後半の原告にとって強度の肉体的負荷を伴うきつい仕事であり,原告の体重は,α5寮に入寮した時は57キログラムあったが,Eα7店で就労していた間に50キログラムにまで減少した。(甲32,37,116,117,乙2) て強度の肉体的負荷を伴うきつい仕事であり,原告の体重は,α5寮に入寮した時は57キログラムあったが,Eα7店で就労していた間に50キログラムにまで減少した。(甲32,37,116,117,乙2)原告は,Dから,平成20年4月分の給与として24万7370円(基本給16万4350円,時間外勤務手当3万2076円,深夜手当2万0944円,教育手当3万円)の支給を受けた。もっとも,原告は,Dから十数万円を前借りしており,また,残金約10万円は同年5月頃に原告の預金口座に振り込まれた。(甲32,37,116,117,乙2)ウ α5寮での生活原告は,α5寮において,多人数が同じ部屋で寝起きする集団生活をしていたところ,プライバシーがない状態で他人に気兼ねしながら生活していたため,常に緊張しており,心の休まる暇がなかった。また,原告と同室の者の中には,原告とは勤務時間が異なるものが何人もおり,生活音等がやまないため,原告は,ゆっくりと眠ることができず,休養も十分に取ることができなかった。(甲37,116,117,乙2)もっとも,原告は,持病等を有しておらず,健康状態は良好であり,単 身生活に入る前に罹患した○も平成20年5月頃までに完治していた。原告は,α5寮に入寮している間に,長兄に手紙を出したが,返信は来なかった。(甲37,116,117,乙2)エ Dからの退職及びα5寮からの退寮原告は,平成20年4月29日,体調を崩したことから,Dに電話を架け,勤務を休ませてもらおうとしたが,Dから休暇の許可を受けることはできなかった。原告は,Dの許可がなくても当日の勤務を休むこととし,一人でゆっくりと休みたかったことから,「α14で研修がある。」と虚偽の事実を告げて,α5 としたが,Dから休暇の許可を受けることはできなかった。原告は,Dの許可がなくても当日の勤務を休むこととし,一人でゆっくりと休みたかったことから,「α14で研修がある。」と虚偽の事実を告げて,α5寮の担当者であるJ(以下「J職員」という。)から外泊の許可を受け,α15駅付近のサウナに宿泊した。原告は,上記サウナに投宿するに先だって,α15駅付近にあるDの事務所を訪ね,もう一度勤務を休ませてもらおうとしたが,Dから休暇の許可を受けることはできなかった。(甲37,116,117,乙2)原告は,サウナに宿泊していた間に,Dを退職すること及びα5寮を退寮することを決意した。原告は,平成20年5月2日,α5寮に戻った上,J職員と面談を行い,「勤務先の寮が新設され,そこに移ることになった。」と虚偽の事実を告げて,α5寮を退寮する旨の申出をし,同月4日にα5寮を退寮することが決まった。しかし,その後,他の職員が,Dの関係者が同年4月30日にα5寮まで原告の所在を確認に来ていたことを明らかにしたことから,再度の面談が行われ,原告は,J職員に対し,「静岡県富士市にある電機メーカーの工場で期間工として働くことが決まった。」と虚偽の事実を告げて,同年5月3日,α5寮を退寮した。(甲37,116,117,乙2)Dは,原告が許可なく欠勤し,その後連絡が取れなくなったことから,平成20年4月30日付けで退職したものとして取り扱った。(甲32,37,116,117,乙2) オ α9駅西口付近での路上生活原告は,東京都台東区α1で路上生活をしていたが,平成20年5月10日頃,路上生活者の就労支援を目的とする雑誌「F」のスタッフと出会い,同雑誌の販売の仕事を知り,その販売の仕事に就くため,新宿区α8のα9駅西 都台東区α1で路上生活をしていたが,平成20年5月10日頃,路上生活者の就労支援を目的とする雑誌「F」のスタッフと出会い,同雑誌の販売の仕事を知り,その販売の仕事に就くため,新宿区α8のα9駅西口付近に移動した。原告は,その後,同所で路上生活をし,上記雑誌の販売の仕事をしていたが,その売上げは1日2000円から3000円程度にとどまり,そこから翌日の仕入れに必要な金額を差し引くと,最低限食事をすることができる程度の金員しか残らなかった。原告は,同月頃,Dからその預金口座に,同年4月分の給与から前借り分を控除した残金約10万円の振込みを受けたが,その半分近くを滞納していた携帯電話の料金の支払,服及び靴の購入に充ててしまっていた。原告は,同年5月31日,新宿区α16地域センターで行われたホームレス総合相談ネットワークが主催する路上生活者向けの法律相談会に参加して助言を受けた。 原告は,その頃,不動産等の資産を有していなかった上,現金を数百円しか所持しておらず,預貯金も1000円程度しか有していなかった。(甲37,42,116,117)カ本件申請-6月2日の面談原告は,平成20年6月2日,前記無料法律相談会に参加して生活保護の開始申請をすることにした路上生活者数名と共に,ホームレス総合相談ネットワークの関係者であるIや司法書士らに付き添われて,新宿区福祉事務所に赴き,本件申請及び第1次支給申請をした。原告は,α5寮における就労自立の試みが失敗に終わった経験から,自立支援システムを利用するのではなく,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望しており,その旨申請書にも明記していた。(甲37,42,116,117,140,142,乙6,14) けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望しており,その旨申請書にも明記していた。(甲37,42,116,117,140,142,乙6,14) これに対して,新宿区福祉事務所生活福祉課自立支援係の係員として原告との面談を担当したG係員は,原告に対し,保護の必要性が認められる者であっても初めからアパートに入居させることはできず,更生施設や簡易宿所を利用してもらい,金銭の管理能力等生活の様子をみる必要があると説明した上,自立支援システムを利用して求職活動を行うことにより就労自立を図ることを勧めた。しかし,原告は,自立支援システムを利用する意思はないとして,あくまでも生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望したため,G係員は,H主査ほかの職員とケース処遇検討会を行い,原告に対しては,自立支援システムのほかにTOKYOチャレンジネットを利用して求職活動を行うことにより就労自立を図ることをも併せて勧めることなどが決定された。このことを受け,G係員は,原告に対し,「他法他施策」と称して自立支援システムやTOKYOチャレンジネットを利用することを繰り返し勧めたが,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望する原告の意思は固く,付添いの司法書士らが集まり,原告に対する保護を直ちに実施することを求めて盛んに口を出すようになった。そこで,G係員は,本件申請に係る申請書の受理を行ったところ,原告及び付添いの司法書士らは,最低限度の目的は達成したものとして,新宿区福祉事務所から引き上げ始め,その日の面談は終了した。(甲37,42ないし44,116,117,140,142,乙6,14。なお,生活保護法 司法書士らは,最低限度の目的は達成したものとして,新宿区福祉事務所から引き上げ始め,その日の面談は終了した。(甲37,42ないし44,116,117,140,142,乙6,14。なお,生活保護法4条2項にいう「他の法律に定める扶助」とは,他の法律に定められている扶助で生活保護法による保護として行われる扶助とその内容の全部又は一部を等しくするものをいうところ,前記前提事実(11)によれば,自立支援システムやTOKYOチャレンジネットにより提供される便益は,他の法律に定められている扶助ということができないし,生活保護法による保護として行われる扶助とその内容 の全部又は一部を等しくするということもできないから,自立支援システムやTOKYOチャレンジネットは同項の「他法他施策」には当たらないというべきである。被告は,原告はG係員らから自立支援システム等を利用して就労自立を目指すことを勧められながら合理的な理由なくこれを拒んだ旨主張するが,自立支援システム等の利用を勧めること自体は,選択肢の提示として許容されるものの,それが生活保護法による保護に優先して行われるべきものである「他法他施策」に当たらない以上,原告が仮に合理的な理由なくその利用を拒んだとしても,同法4条2項を理由として原告に対して保護を行わないものとすることはできないというべきである。)原告は,アパートに入居するまでの間は簡易宿所で待機することを希望しており,生活保護の開始申請をすれば急迫した状況にあるものとしてそのために必要な保護などが直ちに行われると考えていたが,G係員はその必要を認めなかったため,Iほかの支援者が援助した金員をもってサウナに宿泊した。原告は,その後,支援者が援助した金員をもって簡易宿所や特定非営利活動法人が運営するシェルターに宿泊し が,G係員はその必要を認めなかったため,Iほかの支援者が援助した金員をもってサウナに宿泊した。原告は,その後,支援者が援助した金員をもって簡易宿所や特定非営利活動法人が運営するシェルターに宿泊していた。(甲21,142)キ本件申請-6月3日及び同月9日の面談原告とG係員らは,平成20年6月3日及び同月9日にも,面談を行ったところ,G係員らは,原告に対し,α5寮を退寮した経過やDを退職した理由について質問をした上,墨田区福祉事務所から送付を受けた原告のα5寮におけるケース記録等(乙20)の内容をも踏まえ,自立支援システム,TOKYOチャレンジネット等を利用して求職活動を行うことにより就労自立を図ることを勧めた。しかし,原告は,自立支援システム等を利用する意思はないとして,あくまでも生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望し, G係員らの勧めに従う意思がない旨を明らかにした。また,H主査は,Iほかの支援者から「この人(原告)を野宿させるのか」などと詰め寄られたことから,本件申請に対する保護の要否の判断が出るまでの宿泊先としてα13寮を利用することを提案したが,原告は,支援者から,α13寮に入寮したことがある者の間ではベッド等の中に蚤,虱等の害虫が存在し床には除虫剤が撒かれているなど衛生上問題があるので二度と行きたくないという評価が下されていることを聞き,α13寮を利用することを拒んだ。(甲37,42,116,117,140,142,乙6,12ないし14)ク本件却下決定G係員らは,原告が自立支援システム等を利用することを拒んでいる以上,稼働能力の活用要件を充足しているということはできないと考え,本件申請を却下する旨の決定をす ク本件却下決定G係員らは,原告が自立支援システム等を利用することを拒んでいる以上,稼働能力の活用要件を充足しているということはできないと考え,本件申請を却下する旨の決定をすることとし,平成20年6月13日,原告に対し,本件却下決定及び第1次不支給決定がされた。(甲140,乙6,14)ケ処分行政庁による検診命令処分行政庁は,平成20年7月16日,原告に対し,医師の検診を受けることを命令し,原告は,この命令に従い,同月18日,医師の検診を受けたところ,○(意欲が低く,人間関係能力に問題があるというもの)の疑いがあるものの,日常生活における注意点や通院の必要性はなく,簡易な作業が8時間程度の軽い仕事であれば稼働することができるという診断がされた。(甲30,31)コ本件却下決定後の求職活動(1)原告は,本件却下決定の後,平成20年6月27日,同月30日,同年8月19日の3回にわたり,ハローワークα18で求職活動を行い,また,同月13日,同月15日の2回にわたり,ハローワークα1で求職活動を 行ったが,面接に赴くために必要な交通費や面接を受ける準備をするのに必要な資金がないためにその稼働能力を活用する就労の場を得ることは実際には困難であった。(甲116)サ板橋福祉事務所長による生活保護を開始する旨の決定原告は,肩書住所地に適当なアパートを見付けたことから,平成20年8月25日,板橋福祉事務所長に対し,生活保護の開始申請をした。板橋福祉事務所長は,原告が急迫した状況にあるものと認め,原告が生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望したことから,アパートに入居するまでの間は簡易宿所で待機する 告が急迫した状況にあるものと認め,原告が生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望したことから,アパートに入居するまでの間は簡易宿所で待機するものとして,即日,生活保護を開始する旨の決定(保護の種類,程度及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助8万1610円及び住宅扶助1万4000円(簡易宿所の利用料金相当額)とするもの)をした。(甲116)板橋福祉事務所長の調査の結果は,「原告は,ほとんど預貯金を有しておらず,不動産その他の資産を有していない。」,「原告の両親は既に死亡している。原告と二人の子,3人の兄,姉,妹とはいずれも長期間にわたり音信不通であり,これらの者による扶養は期待することができない(原告の元妻は二人の子を連れて再婚しており,二人の子は元妻とその再婚相手に養育されている。)。」,「原告は,他法の定める扶助を受けることができない。」というものである。 原告は,簡易旅館で待機した後,平成20年9月5日,肩書住所地に所在する家賃月額4万6000円のアパートに入居した。板橋福祉事務所長は,原告がしたアパート転宅費用の一時扶助申請に対し,同年9月2日,アパートの敷金,同月分の家賃等の一時扶助支給決定をし,24万4166円を支給した。また,板橋福祉事務所長は,原告がした生活保護の変更申請に対し,同年10月1日,原告に対する住宅扶助の額を月額4万60 00円に変更する旨の決定をした。(甲116,117)シ本件却下決定後の求職活動(2)板橋福祉事務所長は,原告に就労支援プログラムを適用することとし,平成20年9月12日,原告に対し,就労相談員を紹介したところ,原告は,就労相談員が紹介するα19のハローワークのほかα18にある 板橋福祉事務所長は,原告に就労支援プログラムを適用することとし,平成20年9月12日,原告に対し,就労相談員を紹介したところ,原告は,就労相談員が紹介するα19のハローワークのほかα18にある東京しごとセンター等の他の職業紹介をも利用して求職活動を行い,同月24日には駐輪場の自転車整理作業員として就労することが決まったが,身元保証人を立てることができなかったために辞退せざるを得なかった。原告は,板橋福祉事務所長から求職活動に使用するための就労支援として,同月30日には都営交通の無料パスの発行を,同年10月8日には証明写真代金500円の支給を,同年11月17日には被服費8362円の支給をそれぞれ受け,求職活動を行った結果,同年12月3日から老人介護施設で宿直職員として稼働している。原告は,月額約9万円の給与の支払を受け,不足分について生活保護を受けているところ,原告は,より条件のよい職を求めているが,高齢であり自動車の運転免許及び防火管理者の資格のほかには何ら特殊な技能ないし資格を有していないために未だ見付かるには至っていない。(甲116,117)ス稼働能力の活用要件に関する行政解釈昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知「生活保護法による保護の実施要領について」第4は,「要保護者に稼働能力がある場合には、その稼働能力を最低限度の生活の維持のために活用させること。」と定めている。(甲33)また,昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」第4は,「1 稼働能力を活用しているか否かについては,① 稼働能力があるか否か,② その具体的な稼働能力を前提として,その能力を活用する意思があるか否か,③ 実際に 稼働能力を活用する就労 4は,「1 稼働能力を活用しているか否かについては,① 稼働能力があるか否か,② その具体的な稼働能力を前提として,その能力を活用する意思があるか否か,③ 実際に 稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か,により判断すること。」,「2 稼働能力があるか否かの評価については,年齢や医学的な面からの評価だけではなく,その者の有している資格,生活歴,職歴等を把握分析し,それらを客観的かつ総合的に勘案して行うこと。」,「3稼働能力を活用する意思があるか否かの評価については,求職状況報告書等により本人に申告させるなど,その者の求職活動の実施状況を具体的に把握し,その者がその稼働能力を前提として真摯に求職活動を行ったかどうかを踏まえ行うこと。」,「4 就労の場を得ることができるか否かの評価については,2で評価した本人の稼働能力を前提として,地域における有効求人倍率や求人内容等の客観的な情報や,育児や介護の必要性などその者の就労を阻害する要因を踏まえて行うこと。」と定めている。(甲33)セ路上生活者に対する生活保護の実施に関する行政解釈ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法8条1項の規定に基づいて定められたホームレスの自立の支援等に関する基本方針(平成20年7月31日厚生労働省・国土交通省告示第1号)第3の2(7)イは,別紙路上生活者に対する生活保護の実施に関する行政解釈Ⅰのとおり定めている。 (甲73)また,ホームレスの自立の支援等に関する基本方針が定められたのに伴い,同日付けで発出された平成15年7月31日社援保発第0731001号各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長宛厚生労働省社会・援護局課長通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」は,ホームレスに対する生 成15年7月31日社援保発第0731001号各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長宛厚生労働省社会・援護局課長通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」は,ホームレスに対する生活保護の適用についての具体的な取扱いにつき,別紙路上生活者に対する生活保護の実施に関する行政解釈Ⅱのとおり定めている。(甲79)(2)無差別平等の原則違反(争点1の1)について 原告は,本件却下決定は路上生活者を差別的に取り扱うものであり,無差別平等の原則を定める生活保護法2条ひいては憲法14条1項に違反すると主張する。しかし,生活保護法2条は,「すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護を,無差別平等に受けることができる。」と定めているのであって,仮に本件申請が生活保護法の定める保護の要件(4条1項所定の保護の補足性の要件はこの要件に含まれる。)を満たさないのであれば,本件申請は無差別平等の原則を定める同法2条による保障の範囲外にあり,本件申請を却下した本件却下決定は同条に違反するものではないということになる。そうすると,本件却下決定は無差別平等の原則を定める同条に違反するものであるという判断の前提には,本件申請は同法4条1項所定の保護の補足性の要件を充足するものであるという判断がなければならないということになるから,本件においては,本件申請が同項所定の保護の補足性の要件を充足するものであるか否か(争点1の2)についてまず検討することとする。 (3)保護の補足性の要件充足性(争点1の2)についてア全て国民は,生活保護法の定める要件を満たす限り,生活保護法による保護を無差別平等に受けることができる(2条)ところ,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるも ア全て国民は,生活保護法の定める要件を満たす限り,生活保護法による保護を無差別平等に受けることができる(2条)ところ,保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる(4条1項)から,本件申請に対して生活保護を開始する旨の決定がされるためには,原告が「生活に困窮する者」に該当し,かつ,「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という要件(稼働能力の活用要件)を充足することが必要となる。 イ 「生活に困窮する者」該当性前記(1)オのとおり,原告は,平成20年6月当時,α9駅西口付近で路上生活をしており,不動産等の資産を有していなかった上,現金を数百 円しか所持しておらず,預貯金も1000円程度しか有していなかったこと,原告は,そのころ,雑誌「F」の販売の仕事をすることにより収入を得ていたものの,その金額は最低限食事をすることができる程度のものにすぎなかったことによれば,原告は,平成20年6月当時,健康で文化的な最低限度の生活を自ら維持することができない状況にあったということができるのであって,生活保護法4条1項所定の「生活に困窮する者」に該当するというべきである。 ウ稼働能力の活用要件の充足性の判断の枠組み生活保護法による保護は,人が生活に困窮する原因は単純にその人個人の責任に帰することができるものではなく,基本的には資本主義社会のもたらす必然の所産であるから,生活に困窮する全ての国民に対し必要な保護を行うことは国の責務であるという理念に基づくものである(1条)が,生活保護も資本主義社会における制度である以上は,その基本原則の一つである自己責任の原則に適合し 困窮する全ての国民に対し必要な保護を行うことは国の責務であるという理念に基づくものである(1条)が,生活保護も資本主義社会における制度である以上は,その基本原則の一つである自己責任の原則に適合しなければならないのであって,保護は,生活に困窮する者がその最低限度の生活を自ら維持するための最善の努力を尽くしたにもかかわらずなおその最低限度の生活を維持することができない場合に,初めてこれを補足するために行われるべきものである。生活保護法4条1項は,保護が行われる要件として,生活に困窮する者が「資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という要件(保護の補足性の要件)を定めているが,この定めは上記の理を明らかにするものにほかならない。 しかし,法は不可能を強いることができないのであって,生活保護法4条1項は,そのような趣旨から,生活に困窮する者がその最低限度の生活を自ら維持するために活用すべき資産,能力等を「その利用し得る」もの,すなわち,本人の意思のみに基づいて直ちに利用することができるものに限定している。そして,ここで資産,能力等の利用可能性と保護の補足性 の要件の充足との関係を特に能力(稼働能力)についてみると,① 生活に困窮する者がその意思のみに基づいて直ちに利用することができる稼働能力を有しているのに,現にこれが活用されていない場合には,生活保護法4条1項所定の「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という稼働能力の活用要件を充足していないことになり,また,② 生活に困窮する者が稼働能力を有しているものの,それは当該生活困窮者の意思のみに基づいて直ちに利用することができるものではなく,現にこれが活用されていない場合で,当該生活困窮者においてそ また,② 生活に困窮する者が稼働能力を有しているものの,それは当該生活困窮者の意思のみに基づいて直ちに利用することができるものではなく,現にこれが活用されていない場合で,当該生活困窮者においてその稼働能力を活用する意思を有していないときも,稼働能力の活用要件を充足していないことになるが,③ 上記の場合であっても,当該生活困窮者においてその稼働能力を活用する意思を有していることを求職活動の状況等から客観的に認めることができるときは,なお稼働能力の活用要件を充足しているということができるものと解するのが相当である。なぜならば,生活に困窮する者が稼働能力を有しているものの,それは当該生活困窮者の意思のみに基づいて直ちに利用することができるものではなく,現にこれが活用されていないとしても,当該生活困窮者においてその稼働能力を活用する意思を有していることを求職活動の状況等から客観的に認めることができるのであれば,当該生活困窮者は,その最低限度の生活を自ら維持するための最善の努力を尽くしているということができるのであって,当該生活困窮者がそのようにして努力を尽くしているにもかかわらずなおその最低限度の生活を維持することができないことから,これを補足するために保護が行われることは,資本主義社会の基本原則の一つである自己責任の原則に適合しないものではなく,かえって,そのような生活困窮者に対し必要な保護を行うことは,生活に困窮する全ての国民に対し必要な保護を行うことを国の責務とする生活保護の前記理念に適うこととなるからである。 ところで,上記③のときというのは,換言すれば,生活に困窮する者が稼働能力を有しているのに,現にこれが活用されていない場合で,当該生活困窮者においてその稼働能力を活用する意思を有していることを客観的に認 で,上記③のときというのは,換言すれば,生活に困窮する者が稼働能力を有しているのに,現にこれが活用されていない場合で,当該生活困窮者においてその稼働能力を活用する意思を有していることを客観的に認めることができるが,当該生活困窮者の意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができないときにほかならない。 以上によれば,生活保護法4条1項所定の「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という稼働能力の活用要件は,生活に困窮する者が稼働能力を有しているのに,現にこれが活用されていない場合であっても,直ちにそれを充足することが否定されるものではないのであり,当該生活困窮者が,その具体的な稼働能力を前提として,それを活用する意思を有しているときには,当該生活困窮者の具体的な環境の下において,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認めることができない限り,なお当該生活困窮者はその利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用しているものであって,稼働能力の活用要件を充足するということができると解するのが相当である。 この点について,原告は,生活保護法が「能力があるにもかかわらず,勤労の意思のない者」等を保護の対象から除外していないことからすると,稼働能力の活用要件の充足性の判断においては,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有しているか否かを問題にすべきではないと主張する。確かに,旧生活保護法が,その2条において「能力があるにもかかわらず,勤労の意思のない者,勤労を怠る者,その他生計の維持に努めない者」を「素行不良な者」と併せて保護の対象から除外していたのと異なり,生活保護法は,生活に困窮する全ての国民に対しその最 にもかかわらず,勤労の意思のない者,勤労を怠る者,その他生計の維持に努めない者」を「素行不良な者」と併せて保護の対象から除外していたのと異なり,生活保護法は,生活に困窮する全ての国民に対しその最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長するという目的の達成の観点から,上記のような社会的規範を逸脱した者についても保護の対象から一律に除 外することはせず,同法の定める要件を満たす限り保護を無差別平等に受けることができるものとしている(2条)。しかし,生活に困窮する者において稼働能力を有していながらその稼働能力を活用する意思を有していることを客観的に認めることができない場合には,当該生活困窮者は,その最低限度の生活を自ら維持するための最善の努力を尽くしているということができないのであって,当該生活困窮者がその最低限度の生活を維持することができないとしても,これを補足するために保護が行われることは資本主義社会の基本原則の一つである自己責任の原則に適合しないというべきであるから,当該生活困窮者は稼働能力の活用要件を充足するということができないというべきである。したがって,稼働能力の活用要件の充足性の判断において,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有しているか否かを問題にすべきではないということはできない。生活保護法は,社会的規範を逸脱した者を保護の対象から一律に除外することはしなかったが,そのうちの「能力があるにもかかわらず,勤労の意思のない者,勤労を怠る者,その他生計の維持に努めない者」,すなわち,稼働能力を有していながらその稼働能力を活用する意思を有していない者については「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という要件を充足しないものとして保護の対象から除外しているということがで その稼働能力を活用する意思を有していない者については「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という要件を充足しないものとして保護の対象から除外しているということができる(もっとも,次のとおり,生活保護法は,稼働能力を活用する意思を有していない者についても,同人が急迫した状況にあるときは,保護の対象とすることにより,同法の目的を達成することとしているものと解される。)。 また,原告は,生活に困窮する者の自立を助長するという生活保護法の目的を達成するためには,就労意欲を喪失している者に対しても生活保護を開始した上で適切な就労指導を行うことが要請されるのであって,この見地からしても,稼働能力の活用要件の充足性の判断においては,生活に 困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有しているか否かを問題にすべきではないとも主張する。しかし,上記のとおり,稼働能力の活用要件の充足性の判断において,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思を有しているか否かを問題にすべきではないということはできないというべきであり,生活保護法は稼働能力を有していながらその稼働能力を活用する意思を有していない者については保護の対象から除外しているということができるところ,生活に困窮する者が就労意欲を喪失している場合には,当該生活困窮者はその利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用しているものではなく,稼働能力の活用要件を充足するということができないから,保護を受けることができないというべきである。 もっとも,このような場合であっても,保護の実施機関は,生活に困窮する者に急迫した事由があると認めるときには,当該生活困窮者が稼働能力の活用要件を充足していないとしても,必要な保護を行うことを妨げられず(同法 のような場合であっても,保護の実施機関は,生活に困窮する者に急迫した事由があると認めるときには,当該生活困窮者が稼働能力の活用要件を充足していないとしても,必要な保護を行うことを妨げられず(同法4条3項),また,保護を必要とする状態にある者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても(同法7条ただし書),職権をもって保護の決定をし,保護を開始しなければならない(同法25条1項)のであって,生活に困窮する者の自立を助長するという生活保護法の目的は,このような急迫した事由又は状況がある場合の保護の開始を適切に行うことにより達成されるというべきである。 これに対して,被告は,稼働能力の活用に係る保護の補足性の要件の充足性の判断においては,生活に困窮する者がその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしているか否かを考慮すべきであると主張するところ,稼働能力の活用要件の充足性の判断において問題にされる生活に困窮する者の稼働能力を活用する意思は,真正なものであることを必要とするというべきであるが,前記のとおり,生活保護法が社会的規範を逸脱した者についても保護の対象から一律に除外することはしてい ないことからすると,生活に困窮する者が生活保護の開始申請前にした求職活動等がその態様においてまじめさ又は真剣さに欠け,ひたむきな努力を伴わないなど,一般的な社会的規範に照らして不十分な又は難のあるものであるとしても,当該生活困窮者が申請時において真にその稼働能力を活用する意思を有している限り,生活保護の開始に必要な稼働能力の活用要件を充足しているということを妨げないというべきである。 そこで,以下においては,上記の判断の枠組みに従って,本件申請が稼働能力の活用要件を充足するものであるか否かについて検討 力の活用要件を充足しているということを妨げないというべきである。 そこで,以下においては,上記の判断の枠組みに従って,本件申請が稼働能力の活用要件を充足するものであるか否かについて検討することとする。 エ稼働能力の有無前記前提事実(1)アのとおり,原告は,昭和▲年▲月▲日生まれの男性であり,平成20年6月当時,満57歳であったところ,前記前提事実(2)アないしウのとおり,原告は,中学校を卒業した後,長年にわたり造園業の営業担当者,期間工,飲食店の店員,土木建設作業員等として稼働してきたものであること,前記(1)ア及びウのとおり,原告は,α3寮において,「(健康状態に)異常を認めない。就労に支障がなく,昼夜問わない仕事を含む8時間以上の常勤労働が可能」という医師の診断を受けていること,原告は,持病等を有しておらず,健康状態は良好であり,単身生活に入る前に罹患した○も平成20年5月頃までに完治していたことに加えて,原告には育児や介護の必要性といった就労を阻害する要因もなかったことによれば,原告は,平成20年6月当時,稼働能力を有していたと認めることができる。 もっとも,前記(1)イ(イ)のとおり,原告は,α5寮に入寮した後,警備会社であるBで警備員として稼働し始めたが,鍵の種類や工場に出入りする運搬用車両の運転手の顔など短期間で覚えなければならないことが多く,就労開始からまもなく工場の管理を一人で任されるなど,要求される 能力の水準が高かったことから,稼働を続けることは困難であると自ら判断し,短期間のうちに退職していること,前記(1)イ(ウ)及びエのとおり,原告は,Bを退職した後,警備会社であるDで警備員として稼働し始めたが,夜勤が多く,労働時間が長い上,通勤に時間が掛かり,勤務時 し,短期間のうちに退職していること,前記(1)イ(ウ)及びエのとおり,原告は,Bを退職した後,警備会社であるDで警備員として稼働し始めたが,夜勤が多く,労働時間が長い上,通勤に時間が掛かり,勤務時間中はほぼ立ちっぱなしであるなど,原告にとって強度の肉体的負荷を伴うきつい仕事であったことから,短期間のうちに退職していること,前記(1)ケ及びシのとおり,処分行政庁は,平成20年7月16日,原告に対し,医師の検診を受けることを命令し,原告は,この命令に従い,同月18日,医師の検診を受けたところ,○の疑いがあるものの,日常生活における注意点や通院の必要性はなく,簡易な作業が8時間程度の軽い仕事であれば稼働することができるという診断がされていること,原告は,自動車の運転免許及び防火管理者の資格のほかには何ら特殊な技能ないし資格を有していないことによれば,原告が平成20年6月当時有していた稼働能力はそれほど高度なものではなく,軽度な単純作業に従事することができるにとどまるものであったというべきである。 オ稼働能力の活用の意思の有無そうすると,原告は,平成20年6月当時,軽度な単純作業に従事することができる程度の稼働能力を有していたのに,収入がなく(前記(1)オのとおり,原告は,雑誌「F」の販売の仕事をし,最低限食事をすることができる程度の収入を得ていたのであるが,甲第109号証(Kのホームページ)及び弁論の全趣旨によれば,この仕事は路上生活者を対象とする就労支援活動の一環として提供されているものであって,原告は本件申請に及んだ際にはこの仕事を辞めていたと認めることができる。),現にその稼働能力が活用されていなかったということになる。 しかし,前記前提事実(2)アないしウのとおり,原告は,中学校を卒業した後,長 にはこの仕事を辞めていたと認めることができる。),現にその稼働能力が活用されていなかったということになる。 しかし,前記前提事実(2)アないしウのとおり,原告は,中学校を卒業した後,長年にわたり造園業の営業担当者,期間工,飲食店の店員,土木 建設作業員等として稼働してきたものであること,前記(1)ア及びイ(ア)ないし(ウ)のとおり,原告は,自立支援システムを利用することを自ら希望して,緊急一時保護センターであるα3寮に入寮したこと,α3寮による調査及び評価では,原告は就労意欲が高く,自立支援センターの利用が望ましいとされていること,原告は,自立支援センターであるα5寮に入寮すると直ちに求職活動を始め,短期間ながらもB及びDで警備員として稼働していること,前記(1)オのとおり,原告は,α5寮を退寮した後も,雑誌「F」の販売の仕事をしていたことに加えて,前記(1)カのとおり,原告は,本件申請に当たり,自立支援システムを利用するのではなく,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うことを希望していたところ,前記(1)コのとおり,原告は,本件却下決定の後,平成20年6月27日,同月30日,同年8月13日,同月15日,同月19日の5回にわたり,ハローワークα18又はハローワークα1で求職活動を行い,さらに,前記(1)サ及びシのとおり,原告は,平成20年8月25日,板橋福祉事務所長から生活保護を開始する旨の決定を受け,同年9月5日,肩書住所地に所在するアパートに入居した後,板橋区の就労支援プログラムによる支援を受けつつ東京しごとセンター等をも利用して積極的に求職活動を行い,同年12月3日から老人介護施設で宿直職員として稼働していることによれば,原告は,平成20年6月当時,その具体的 ログラムによる支援を受けつつ東京しごとセンター等をも利用して積極的に求職活動を行い,同年12月3日から老人介護施設で宿直職員として稼働していることによれば,原告は,平成20年6月当時,その具体的な稼働能力を前提として,それを活用する意思を有していたことを客観的に認めることができるというべきである。 この点について,被告は,原告がDを退職しα5寮を退寮した経過をもって,原告はその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしなかったと主張するところ,前記(1)エのとおり,原告は,平成20年4月29日に無許可のまま欠勤し,その後,連絡が取れなくなったことから,Dにより退職したものと取り扱われ(原告は,Dに電話を架け, 勤務を休ませてもらおうとしているから,必ずしも無断で欠勤したということはできないが,Dから許可を受けることなく当日の勤務を休んだものである以上,無許可のまま欠勤したといわざるを得ない。),「α14で研修がある。」と虚偽の事実を告げてJ職員から外泊の許可を受け,「勤務先の寮が新設され,そこに移ることになった。」,「静岡県富士市にある電機メーカーの工場で期間工として働くことが決まった。」と虚偽の事実を告げてα5寮を退寮しているのであって,これらの行為は社会的規範の観点からすれば難のあるものであるということができる。しかし,生活保護法が社会的規範を逸脱した者についても保護の対象から一律に除外することはしていないことからすると,生活に困窮する者がした求職活動等が社会的規範に照らして問題があり,これを逸脱するものであるとしても,当該生活困窮者が真にその稼働能力を活用する意思を有している限り,稼働能力の活用要件を充足しているということを妨げないというべきであることは,前記ウのとおりであるところ,本件却 ものであるとしても,当該生活困窮者が真にその稼働能力を活用する意思を有している限り,稼働能力の活用要件を充足しているということを妨げないというべきであることは,前記ウのとおりであるところ,本件却下決定の前後における原告の求職活動及び就労の状況からすると,原告が平成20年6月当時真にその稼働能力を活用する意思を有していたことを客観的に認めることができることは,前記のとおりであるから,原告がDを退職しα5寮を退寮した経過をもって,原告がその稼働能力を活用する意思を有していなかったということはできないというべきである。 また,被告は,原告が自立支援システム,TOKYOチャレンジネット,α13寮等を利用することを拒んだことをもって,原告はその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をしなかったと主張する。 しかし,本件却下決定の前後における原告の求職活動及び就労の状況からすると,原告が平成20年6月当時真にその稼働能力を活用する意思を有していたことを客観的に認めることができることは,前記のとおりであり,原告が生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確 保した上で求職活動を行うことを希望し自立支援システム等を利用することを拒んだことをもって,原告がその稼働能力を活用する意思を有していなかったということはできない。もっとも,原告が希望していた,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を確保した上で求職活動を行うという方法が求職活動の時期を長期間にわたり先送りにするものであるとすれば,原告がその稼働能力を活用する意思を有していたことを否定する事情になり得るものと考えられるが,前記のとおり,原告は,板橋福祉事務所長から生活保護を開始する旨の決定を受け,肩書住所地に所在するアパート 告がその稼働能力を活用する意思を有していたことを否定する事情になり得るものと考えられるが,前記のとおり,原告は,板橋福祉事務所長から生活保護を開始する旨の決定を受け,肩書住所地に所在するアパートに入居する前から,積極的に求職活動を行っているのであって,このことによれば,原告が希望していた求職活動の方法が求職活動の時期を長期間にわたり先送りにするものであったということはできないというべきである。 カ稼働能力の活用の場の有無そこで,原告が,平成20年6月当時,その具体的な環境の下において,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができたと認めることができるか否かについて判断するに,被告は,ハローワーク等の職業紹介には原告に適合する複数の求人があったのであり,原告は自立支援システム,TOKYOチャレンジネットの就労相談,α13寮等を利用して求職活動を行い,就労自立を目指すことができたことからすると,原告は業種を問わずに自立支援システム等の利用可能な制度を利用してその稼働能力を活用する意思をもってその機会を得る真摯な努力をすれば稼働能力を活用する機会を得ることができたと主張するところ,確かに,乙第18号証の1ないし8(新宿区社会福祉協議会作成の求人情報詳細)によれば,平成20年6月当時,上記協議会が運営する高年齢者就業支援事業である「新宿わく☆ワーク」には,57歳の男性を募集対象者に含む求人が複数存在していたと認めることができ,また,甲第66号 証(東京都福祉保健局作成の東京ホームレス白書Ⅱ)及び弁論の全趣旨によれば,平成19年1月末までに緊急一時保護センターに入所した者のうち46.6パーセントのものが自立支援センターに入所し,そのうち51. 3パーセントのものが就労自立を果たして Ⅱ)及び弁論の全趣旨によれば,平成19年1月末までに緊急一時保護センターに入所した者のうち46.6パーセントのものが自立支援センターに入所し,そのうち51. 3パーセントのものが就労自立を果たしていると認めることができるのであって,これらの事実によれば,原告と年齢等の条件を同じくする男性は,平成20年6月当時,ハローワーク等の公共職業紹介制度や自立支援システムを利用することによりその稼働能力を活用する就労の場を得ることが不可能ではなかったと認めることができる(原告は,自立支援システム等を利用しても,稼働能力を活用する就労の場を得ることはできず,就労自立には結び付かないと主張するが,上記のとおり,自立支援システムの利用者のうちの一定割合が就労自立を果たしていると認めることができることによれば,原告の上記主張は失当なものというべきである。)。 しかし,一般に,ある者が求職活動を行う場合,当該求職者の意思のみに基づいて直ちに雇用契約が締結されるものではなく,求人側に対する求職者からの連絡や求人側と求職者との面接等を経て,求人側と求職者との間で雇用契約を締結する旨の意思の合致があることによって初めて雇用契約が締結されるのが通常であることは,公知の事実であるし,また,前記前提事実(11)アのとおり,自立支援センターは,利用期間が1か月の緊急一時保護センターを経由しなければ入所することができず,自立支援センターを利用することを目指して緊急一時保護センターに入所しても,同センターによる調査及び評価の結果いかんによっては自立支援センターに入所することができないこともあり得る上,緊急一時保護センターにおいては,入所者が求職活動を行うことは予定されておらず,食事及び衣類等の日用品類が現物で提供されるだけで,金銭の給付は行われないため,実際 ることができないこともあり得る上,緊急一時保護センターにおいては,入所者が求職活動を行うことは予定されておらず,食事及び衣類等の日用品類が現物で提供されるだけで,金銭の給付は行われないため,実際上も求職活動は行うことができないというのであって,これらの事実によれば,ハローワーク等の公共職業紹介制度や自立支援システムを利用する ことにより稼働能力を活用する就労の場を得ることが不可能ではなかったとしても,現に特定の雇用主がその事業場において当該生活困窮者を就労させる意思を有していることを明らかにしており,当該生活困窮者に当該雇用主の下で就労する意思さえあれば直ちに稼働することができるというような特別な事情が存在すると認めることができない限り,生活に困窮する者がその意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認めることはできないというべきである。 これを本件についてみると,上記のような特別な事情が存在することは,本件全証拠によるもこれを認めるに足りないのであり,前記のとおり,原告と年齢等の条件を同じくする男性が平成20年6月当時ハローワーク等の公共職業紹介制度や自立支援システムを利用することによりその稼働能力を活用する就労の場を得ることが不可能ではなかったからといって,原告がその意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができたと認めることはできないというべきである。 原告が,平成20年6月当時,その具体的な環境の下において,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができたことは,本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。かえって,前記甲第66号証のほか甲第35号証(厚生労働省作成のホームレスの実態に関する全国調査報告書の概要 を活用する就労の場を得ることができたことは,本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。かえって,前記甲第66号証のほか甲第35号証(厚生労働省作成のホームレスの実態に関する全国調査報告書の概要)及び弁論の全趣旨によれば,一般に,路上生活者が就くことができる職は,土木建設作業員や,空き缶拾い,段ボール集めのような都市雑業が大部分を占めていると認めることができるところ,前記エのとおり,原告が平成20年6月当時有していた稼働能力は軽度な単純作業に従事することができるにとどまるものであったから,強度の肉体的負荷を伴う作業に従事する土木建設作業員の職は原告の稼働能力を活用する就労の場にはなり得なかったし,また,上記のような都市雑業は,これに従事することにより軽度な単純作業に従事することによっ て得られる収入に比べてもわずかな収入しか得られないのが通常であるから,やはり原告の稼働能力を活用する就労の場にはなり得なかったというべきである。そして,一般に,工場労働者,配送作業員,事務職員等の職に就くためには,求人側との間で連絡を取った上で面接を受けるなどする必要があるから,居宅を有しないために確実な連絡先を持たず身だしなみを整えて面接等に赴く所持金も有していなかった原告にとって,そのような職に就くことは実際には困難であったと認めることができることからすると,原告は,平成20年6月当時,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができなかったと認めることができるというべきである。 キ稼働能力の活用要件の充足性以上によれば,原告は,平成20年6月13日の本件却下決定当時,軽度な単純作業に従事することができる程度の稼働能力を有していたのに,現にこれが活用されていなかったが,その具体的な稼働能力 以上によれば,原告は,平成20年6月13日の本件却下決定当時,軽度な単純作業に従事することができる程度の稼働能力を有していたのに,現にこれが活用されていなかったが,その具体的な稼働能力を前提として,それを活用する意思を有していたのであり,その具体的な環境の下において,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができたと認めることはできないから,なお原告はその利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用していたものであって,生活保護法4条1項所定の「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という稼働能力の活用要件を充足するというべきである。 (4)そうすると,その余の点,すなわち,本件却下決定は無差別平等の原則を定める生活保護法2条に違反するものであるか否か(争点1の1),本件却下決定は指導助言義務又は調査義務に違反するものであるか否か(争点1の2),本件却下決定は居宅保護の原則を定める同法30条1項に違反するものであるか否か(争点1の3)について判断するまでもなく,処分行政庁が 本件申請は稼働能力の活用要件を充足しないものであるとしてした本件却下決定は違法なものであるということになるのであって,本件却下決定は取り消されるべきものである。 2 生活保護を開始する旨の決定の義務付けの可否(争点2)について(1)保護の要否について前記1(3)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件申請時において,生活に困窮する者であり,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用していると認めることができるのであって,処分行政庁が本件申請に対し平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定をすべきであることがそ その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用していると認めることができるのであって,処分行政庁が本件申請に対し平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定をすべきであることがその根拠となる生活保護法4条1項の規定から明らかであると認められる。 (2)保護の種類及び方法についてア保護の種類(1)前記1(3)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者であったと認めることができるのであって,処分行政庁が生活扶助を行うべきであることがその根拠となる生活保護法12条の規定から明らかであると認められる。 イ保護の方法生活保護法30条1項は,本文において,生活扶助は被保護者の居宅において行うものとすると定めて居宅保護の原則を採用し,ただし書において,居宅保護によっては「保護の目的を達しがたいとき」等の例外的な場合にのみ施設保護(収容保護)を行うことができるものとしている。そして,生活に困窮する全ての国民に対しその最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長するという生活保護法の目的(1条)に照らすと,上記「保護の目的」とは,単に被保護者の最低限度の生活を保障することだけにあるのではなく,被保護者の自立を助長することにもあるというべき であり,居宅保護によっては「保護の目的を達しがたいとき」とは,居宅保護によっては上記二つの保護の目的を達成することが困難なときをいうと解されるところ,この要件に該当するか否かの判断は,最低限度の生活の保障と自立の助長という二つの保護の目的の見地から,被保護者の希望のほかに被保護者の年齢,心身の状況,生活歴,家族の状況,自立のために必要な指導援助の内容,被保護者の居宅や施設の状況等の諸般の事情を総 と自立の助長という二つの保護の目的の見地から,被保護者の希望のほかに被保護者の年齢,心身の状況,生活歴,家族の状況,自立のために必要な指導援助の内容,被保護者の居宅や施設の状況等の諸般の事情を総合的に考慮してしなければならないのであって,このような判断は,事柄の性質上,保護の決定及び実施に関する事務を行う行政庁である保護の実施機関の裁量に委ねるのでなければ適切な結果を期待することができないから,保護の実施機関は,居宅保護によっては「保護の目的を達しがたいとき」という要件に該当するか否かの判断について裁量権を付与されているというべきである。そうすると,保護の実施機関が居宅保護によっては「保護の目的を達しがたいとき」という要件に該当する旨判断し生活扶助の方法として居宅保護によらないことが,その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに初めて,裁判所は,生活扶助の方法として居宅保護によるべき旨を命ずる判決をすることになる(行政事件訴訟法37条の3第5項)。もっとも,居宅保護の原則は,施設保護により被保護者を救護施設,更生施設又はその他の施設に入所させるなどして保護を行うよりも被保護者の生活の本拠である居宅において保護を行う方が生活保護法の上記目的により適うという考慮に基づくものであると解されることによれば,要保護者が現に居宅を有しない場合であっても,そのことによって直ちに居宅保護による余地はないと解することは相当ではなく,保護の実施機関は,居宅保護による場合の居宅の確保の可能性をも考慮して,居宅保護によるかそれとも施設保護によるかを決定すべきである。 これを本件についてみると,前記(1)カのとおり,原告は,本件申請に当たり,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を 確保した上で求職活動を 決定すべきである。 これを本件についてみると,前記(1)カのとおり,原告は,本件申請に当たり,生活保護(居宅保護)を受けてアパートに入居し安定した居宅を 確保した上で求職活動を行うことを希望していたこと,前記前提事実(1)アのとおり,原告は,昭和▲年▲月▲日生まれの男性であり,平成20年6月当時,満57歳であったこと,前記1(1)ア及びウのとおり,原告は,α3寮において,「(健康状態に)異常を認めない。就労に支障なく,昼夜問わない仕事を含む8時間以上の常勤労働が可能」という医師の診断を受けていること,原告は,持病等を有しておらず,健康状態は良好であり,単身生活に入る前に罹患した○も平成20年5月頃までに完治していたこと,前記(1)ケ及びシのとおり,処分行政庁は,平成20年7月16日,原告に対し,医師の検診を受けることを命令し,原告は,この命令に従い,同月18日,医師の検診を受けたところ,○の疑いがあるものの,日常生活における注意点や通院の必要性はなく,簡易な作業が8時間程度の軽い仕事であれば稼働することができるという診断がされていること,前記前提事実(2)アのとおり,原告は,平成5年頃に離婚し,単身で生活していたこと,前記1(1)アのとおり,α3寮による調査及び評価では,短期的な計画性,生活管理能力,対人関係能力及び礼容,常識性については一定の評価をすることができるというものであったこと,弁論の全趣旨によれば,生活保護の実務では,保護の開始時において安定した居宅を有しない要保護者(居宅保護によることを相当とするもの)が居宅の確保のために敷金等を必要とする場合には,アパート転宅費用として一定の範囲で敷金等必要な費用を支給するものとされていると認めることができるのであって,居宅保護による場合には居宅の確保が可能とな 宅の確保のために敷金等を必要とする場合には,アパート転宅費用として一定の範囲で敷金等必要な費用を支給するものとされていると認めることができるのであって,居宅保護による場合には居宅の確保が可能となるような取扱いがされていることを総合的に考慮すると,前記1(1)アのとおり,α3寮による調査及び評価では,長期的な計画性及び金銭管理能力については評価することができないとされていること(現に,前記1(1)オのとおり,原告は,α5寮から退寮し,路上生活をしていた間に,Dから,平成20年4月分の給与の残金約10万円の振込みを受けたところ,その半分近くを滞納し ていた携帯電話の料金の支払,服及び靴の購入に充ててしまっている。)を斟酌しても,処分行政庁が居宅保護によっては「保護の目的を達しがたいとき」という要件に該当する旨判断し生活扶助の方法として居宅保護によらないことが,その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるというべきである。 ウ保護の種類(2)前記アのとおり,原告は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者であると認めることができるところ,前記イのとおり,処分行政庁が生活扶助の方法として居宅保護によらないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるというべきであり,原告は居宅となるべき家屋を所有しているわけでもないから,処分行政庁が住宅扶助を行うべきであることがその根拠となる生活保護法14条の規定から明らかであると認められる。 エそうすると,処分行政庁に対し,本件申請に対して平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とし,保護の程度につき平成20年6月2日当時の保護の基準により決定されたもの)を 平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(保護の種類及び方法につき居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助とし,保護の程度につき平成20年6月2日当時の保護の基準により決定されたもの)をすべき旨を命ずる判決をすることになる。 なお,前記1(1)サのとおり,原告は,平成20年8月25日,板橋福祉事務所長から生活保護を開始する旨の決定を受け,同年9月5日,肩書住所地に所在するアパートに入居し,現在も板橋区内に居住しているため,新宿福祉事務所の所管区域内に居住地を有する者ではなく,居住地がないか又は明らかでない者でもないから,処分行政庁は,原告について保護の実施責任を有しておらず,本件却下決定が取り消されたことにより本件申請に対する応答がされていない状態に復しても,本件申請に対する保護の決定をすることができないのではないかという疑問が生じ得るところであ り,また,そもそも,要保護者の現在の最低限度の生活を維持するのに必要な程度を超えて,過去の生活保護にさかのぼって保護を実施する必要があるのかという疑問も生じ得る。しかし,生活保護法による保護は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して,衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの等を給付するものである(12条から18条まで)ところ,それは,要保護者が生存することができる程度のものでは足りず,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(3条)のであるから,要保護者が生活保護の実施機関に対して有する生活保護の開始申請権は,要保護者が保護を受けないで生存することができたということだけを原因として,時の経過により時々刻々とその目的を失い,過去の生活保護の分から消滅していくものではないというべきである。これを実質的にみても 護者が保護を受けないで生存することができたということだけを原因として,時の経過により時々刻々とその目的を失い,過去の生活保護の分から消滅していくものではないというべきである。これを実質的にみても,要保護者がした生活保護の開始申請に対し,保護の実施機関が,当該申請が保護の要件を具備しているにもかかわらず,これを却下する旨の決定をした場合に,その却下決定が取り消されても,過去の生活保護の申請権又はその申請に対応すべき実施機関としての地位が消滅しているために,もはや過去の生活保護についてはこれを受けることができないものとするならば,適正な保護の実施をしなかった保護の実施機関が要保護者の犠牲の下に利益を受けることとなるのであって(要保護者において国家賠償の訴えを提起することにより救済を求めることも考えられるが,国家賠償の訴えでは公務員の職務行為上の違法性や故意過失が問題とされるため,必ずしも十分な救済を受けることができない。),このようなことは,全ての国民に対し必要な保護を行いその最低限度の生活を保障するという生活保護法の目的に照らして容認することができず,保護の実施機関は,過去の生活保護に遡及して開始決定をし,扶助費を支給することが可能であるというべきである(東京地裁昭和47年12月25日判決・行裁集23巻12号946頁参照)。 そうすると,保護の実施機関が,保護の要件を具備する生活保護の開始申請に対し,これを却下する旨の決定をした場合,当該申請をした者が,その後,別途生活保護の開始申請をし,生活保護を開始する旨の決定を受けたとしても,当該却下決定の取消しの訴えの利益は失われず,当該却下決定に係る申請に対し生活保護を開始する旨の決定をすべき旨を命ずることを義務付けの訴えにより求めることもできると解すべきである(これらの点につ ,当該却下決定の取消しの訴えの利益は失われず,当該却下決定に係る申請に対し生活保護を開始する旨の決定をすべき旨を命ずることを義務付けの訴えにより求めることもできると解すべきである(これらの点について被告からの異論もない。)ところ,そのように解することを前提とするならば,処分行政庁が,平成20年6月2日の本件申請当時,原告について保護の実施責任を有していた以上,その後,原告について保護の実施責任を有しないこととなったとしても,それまでの間の保護の実施責任を免れるものではなく,処分行政庁に対しては,平成20年6月2日から生活保護を開始する旨の決定(その後,実施機関としての地位を失うまでの間のもの)をすべき旨を義務付けることができるというべきである。 3 扶助費の支払請求の可否(争点3)について(1)原告は,平成20年6月2日から同年8月24日までの間の扶助費(生活扶助費及び住宅扶助費)の支払を求める。しかし,保護の実施機関の所属する公共団体に対する要保護者の扶助費支給請求権は,保護の実施機関が生活保護を開始する旨の決定をしたときに初めて具体化するものであって,要保護者は,生活保護を開始する旨の決定がされるまでの間は保護の実施機関に対する生活保護の開始申請権を有しているにとどまるところ,本判決による生活保護を開始する旨の決定の義務付けは,処分行政庁に対し,生活保護を開始する旨の決定をすべき旨を命ずるものにすぎず,原告は,処分行政庁が上記義務付けに従って生活保護を開始する旨の決定をするまでは,被告に対する扶助費支給請求権を有しないというべきであるから,原告は,現時点においては,被告に対し,扶助費の支払を求めることができないものというべきである。 (2)なお,仮に,この扶助費に関する請求が,原告が行政事件訴訟法3条6項 であるから,原告は,現時点においては,被告に対し,扶助費の支払を求めることができないものというべきである。 (2)なお,仮に,この扶助費に関する請求が,原告が行政事件訴訟法3条6項1号所定の非申請型義務付けの訴えとして,平成20年6月2日から同年8月24日までの間の扶助費として37万2656円及び内金13万3590円に対する同年6月3日から,内金13万4310円に対する同年7月2日から,内金10万4756円に対する同年8月2日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支給をすべき旨を命ずることを求めるものであるとしても,非申請型の義務付けの訴えは,行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされない場合において,行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟(行政事件訴訟法3条6項1号)であって,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(同条2項)のうち同条3項に規定する行政庁の裁決,決定その他の行為を除いたもの(以下単に「処分」という。)を義務付けの対象とするものであるところ,処分に当たるというためには,公権力の主体たる国又は公共団体が行う法令に基づく行為のうち,公権力の行使としてされる行為であって,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものである必要があると解される(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。そして,扶助費の支給ほかの保護の実施は,生活保護を開始する旨の決定ほかの保護の決定を具体的に実現する事実行為であり,それによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものであるということができないから,扶助費の支給の義務付けの訴えは,処分 定を具体的に実現する事実行為であり,それによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものであるということができないから,扶助費の支給の義務付けの訴えは,処分を義務付けの対象とするものではなく,不適法なものというべきである。 したがって,仮に原告が扶助費の支給の義務付けを求めるものであるとしても,その訴えは却下すべきであるということになる。 第4 結論よって,本訴請求のうち,本件却下決定の取消請求及び生活保護を開始する 旨の決定の義務付けの訴えに係る請求はいずれも理由があるからこれを認容し,その余の請求(扶助費の支払請求)は失当であるからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官川神 裕裁判官内野俊夫裁判官須賀康太郎は異動のため署名押印をすることができない。 裁判長裁判官川神 裕 (別紙)関係法令の定め 1 生活保護法(この法律の目的)1条この法律は,日本国憲法25条に規定する理念に基き,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする。 (無差別平等)2条すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護(以下「保護」という。)を,無差別平等に受けることができる。 (最低生活)3条この法律により保障される最低限度の 条すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護(以下「保護」という。)を,無差別平等に受けることができる。 (最低生活)3条この法律により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。 (保護の補足性)4条保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。 2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。 3 前2項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない。 (この法律の解釈及び運用)5条前4条に規定するところは,この法律の基本原理であって,この法律の解 釈及び運用は,すべてこの原理に基いてされなければならない。 (申請保護の原則)7条保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる。 (基準及び程度の原則)8条保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。 2 前項の基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえないものでなければならない。 (必要即応の原則)9条保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個 な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえないものでなければならない。 (必要即応の原則)9条保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする。 (種類) 11 条保護の種類は,次のとおりとする。 一生活扶助二 (省略)三住宅扶助四ないし八 (省略) 2 前項各号の扶助は,要保護者の必要に応じ,単給又は併給として行われる。 (生活扶助) 12 条生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に 対して,左に掲げる事項の範囲内において行われる。 一衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの二 (省略) (住宅扶助) 14 条住宅扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して,左に掲げる事項の範囲内において行われる。 一住居二 (省略) (実施機関) 19 条都道府県知事,市長及び社会福祉法に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は,次に掲げる者に対して,この法律の定めるところにより,保護を決定し,かつ,実施しなければならない。 一その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者二居住地がないか,又は明らかでない要保護者であって,その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの2,3 (省略) 4 前3項の規定により保護を行うべき者(以下「保護の実施機関」という。)は,保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部を,その管理に属する行政庁に限り,委任する の2,3 (省略) 4 前3項の規定により保護を行うべき者(以下「保護の実施機関」という。)は,保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部を,その管理に属する行政庁に限り,委任することができる。 5ないし7 (省略) (申請による保護の開始及び変更) 24 条保護の実施機関は,保護の開始の申請があったときは,保護の要否,種類,程度及び方法を決定し,申請者に対して書面をもって,これを通知しな ければならない。 2ないし6 (省略) (職権による保護の開始及び変更) 25 条保護の実施機関は,要保護者が急迫した状況にあるときは,すみやかに,職権をもって保護の種類,程度及び方法を決定し,保護を開始しなければならない。 2 保護の実施機関は,常に,被保護者の生活状態を調査し,保護の変更を必要とすると認めるときは,すみやかに,職権をもってその決定を行い,書面をもって,これを被保護者に通知しなければならない。前条2項の規定は,この場合に準用する。 3 (省略) (指導及び指示) 27 条保護の実施機関は,被保護者に対して,生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。 2,3 (省略) (生活扶助の方法) 30 条生活扶助は,被保護者の居宅において行うものとする。ただし,これによることができないとき,これによっては保護の目的を達しがたいとき,又は被保護者が希望したときは,被保護者を救護施設,更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ,若しくはこれらの施設に入所を委託し,又は私人の家庭に養護を委託して行うことができる。 2 前項ただし書の規定は,被保護者の意に反して,入所又は養護を強制することができるものと解釈し 入所させ,若しくはこれらの施設に入所を委託し,又は私人の家庭に養護を委託して行うことができる。 2 前項ただし書の規定は,被保護者の意に反して,入所又は養護を強制することができるものと解釈してはならない。 3,4 (省略) 2 ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成14年法律第105号)(目的)1条この法律は,自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在し,健康で文化的な生活を送ることができないでいるとともに,地域社会とのあつれきが生じつつある現状にかんがみ,ホームレスの自立の支援,ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関し,国等の果たすべき責務を明らかにするとともに,ホームレスの人権に配慮し,かつ,地域社会の理解と協力を得つつ,必要な施策を講ずることにより,ホームレスに関する問題の解決に資することを目的とする。 (ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標等)3条ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標は,次に掲げる事項とする。 一自立の意思があるホームレスに対し,安定した雇用の場の確保,職業能力の開発等による就業の機会の確保,住宅への入居の支援等による安定した居住の場所の確保並びに健康診断,医療の提供等による保健及び医療の確保に関する施策並びに生活に関する相談及び指導を実施することにより,これらの者を自立させること。 二 (省略)三前2号に掲げるもののほか,宿泊場所の一時的な提供,日常生活の需要を満たすために必要な物品の支給その他の緊急に行うべき援助,生活保護法による保護の実施,国民への啓発活動等によるホームレスの人権の擁護,地域における生活環境の改善及び安全の確保等により,ホームレスに関する問題の解 要な物品の支給その他の緊急に行うべき援助,生活保護法による保護の実施,国民への啓発活動等によるホームレスの人権の擁護,地域における生活環境の改善及び安全の確保等により,ホームレスに関する問題の解決を図ること。 2 ホームレスの自立の支援等に関する施策については,ホームレスの自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要であることに留意しつつ, 前項の目標に従って総合的に推進されなければならない。 (ホームレスの自立への努力)4条ホームレスは,その自立を支援するための国及び地方公共団体の施策を活用すること等により,自らの自立に努めるものとする。 (国の責務)5条国は,3条1項各号に掲げる事項につき,総合的な施策を策定し,及びこれを実施するものとする。 (地方公共団体の責務)6条地方公共団体は,3条1項各号に掲げる事項につき,当該地方公共団体におけるホームレスに関する問題の実情に応じた施策を策定し,及びこれを実施するものとする。 (基本方針)8条厚生労働大臣及び国土交通大臣は,14条の規定による全国調査を踏まえ,ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を策定しなければならない。 2 基本方針は,次に掲げる事項について策定するものとする。 一ホームレスの就業の機会の確保,安定した居住の場所の確保,保健及び医療の確保並びに生活に関する相談及び指導に関する事項二ホームレス自立支援事業(ホームレスに対し,一定期間宿泊場所を提供した上,健康診断,身元の確認並びに生活に関する相談及び指導を行うとともに,就業の相談及びあっせん等を行うことにより,その自立を支援する事業をいう。)その他のホームレスの個々の事情に対応したその自立を た上,健康診断,身元の確認並びに生活に関する相談及び指導を行うとともに,就業の相談及びあっせん等を行うことにより,その自立を支援する事業をいう。)その他のホームレスの個々の事情に対応したその自立を総合的に支援する事業の実施に関する事項三 (省略) 四ホームレスに対し緊急に行うべき援助に関する事項,生活保護法による保護の実施に関する事項,ホームレスの人権の擁護に関する事項並びに地域における生活環境の改善及び安全の確保に関する事項五,六 (省略) 3 (省略) (別紙)路上生活者に対する生活保護の実施に関する行政解釈 Ⅰ ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(平成20年7月31日厚生労働省・国土交通省告示第1号)第3の2(7)イホームレスに対する生活保護の適用については,一般の者と同様であり,単にホームレスであることをもって当然に保護の対象となるものではなく,また,居住の場所がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるということはない。こうした点を踏まえ,資産,稼働能力や他の諸施策等あらゆるものを活用してもなお最低限度の生活が維持できない者について,最低限度の生活を保障するとともに,自立に向けて必要な保護を実施する。 この際,福祉事務所等保護の実施機関においては,以下の点に留意し,ホームレスの状況に応じた保護を実施する。 (ア)ホームレスの抱える問題・状況(精神的・身体的状況,日常生活管理能力,金銭管理能力,稼働能力等)を十分に把握した上で,自立に向けての指導援助の必要性を考慮し,適切な保護を実施する。 (イ)就労の意欲と能力はあるが失業状態にあり,各種就労対策を実施しても就労が困難であると判断される者については,当該地域に自立支援センターがあ の指導援助の必要性を考慮し,適切な保護を実施する。 (イ)就労の意欲と能力はあるが失業状態にあり,各種就労対策を実施しても就労が困難であると判断される者については,当該地域に自立支援センターがある場合には,自立支援センターへの入所を検討する。 自立支援センターにおいて,結果的に就労による自立に結び付かず退所した者については,改めて保護の要否を判断し,必要な保護を行う。 (ウ)ホームレスの状況(日常生活管理能力,金銭管理能力等)からみて,直ちに居宅生活を送ることが困難な者については,保護施設や無料低額宿泊事業を行う施設等において保護を行う。この場合,関係機関と連携を図り,居宅生活へ円滑に移行するための支援体制を十分に確保し,就業の機会の確保,療養指導,金銭管理等の必要な支援を行う。 (エ)居宅生活を送ることが可能であると認められる者については,当該者の状況に応じ必要な保護を行う。この場合,関係機関と連携して,再びホームレスとなることを防止し居宅生活を継続するための支援や,居宅における自立した日常生活の実現に向けて就業の機会の確保等の必要な支援を行う。 Ⅱ 平成15年7月31日社援保発第0731001号各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長宛厚生労働省社会・援護局課長通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」 1 ホームレスに対する生活保護の適用に関する基本的な考え方生活保護は,資産,能力等を活用しても,最低限度の生活を維持できない者,すなわち,真に生活に困窮する者に対して最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的とした制度であり,ホームレスに対する生活保護の適用に当たっては,居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものでないことに留意し,生 するとともに,自立を助長することを目的とした制度であり,ホームレスに対する生活保護の適用に当たっては,居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものでないことに留意し,生活保護を適正に実施する。 2 基本方針の留意点(1)ホームレスの抱える問題・状況の把握に当たっては,面接相談時の細かなヒアリングによって得られる要保護者の生活歴,職歴,病歴,居住歴及び現在の生活状況等の総合的な情報の収集や居宅生活を営むうえで必要となる基本的な項目(生活費の金銭管理,服薬等の健康管理,炊事・洗濯,人とのコミュニケーション等)の確認により,居宅生活を営むことができるか否かの点について,特に留意すること。 また,自立に向けての指導援助の必要性の程度を分析するに当たっては,利用できる社会資源の状況を総合的に勘案して,ケース診断会議等において処遇の方針を樹立し,保護の適用の方法を決定すること。 (2)直ちに居宅生活を送ることが困難な者については,保護施設や社会福祉法2条3項8号に規定する無料低額宿泊事業を行う施設(以下「無料低額宿泊 所」という。)等において保護を行うが,ホームレスの状況によっては,養護老人ホームや各種障害者福祉施設等への入所を検討すること。 (3)施設入所中においては,ホームレスの状況に応じて訪問調査活動を行い,必要な指導援助が行われるよう,生活実態を的確に把握する。 また,居宅生活への円滑な移行に向けて,施設職員や民生委員等関係機関と連携を図り,日常生活訓練,就業の機会の確保等の必要な支援に努めること。 無料低額宿泊所に起居する被保護者については,適切な訪問格付を設定し定期的な訪問を行い,生活実態や処遇状況を把握するとともに,自立に向けた必要な指導援助を行うこと。 支援に努めること。 無料低額宿泊所に起居する被保護者については,適切な訪問格付を設定し定期的な訪問を行い,生活実態や処遇状況を把握するとともに,自立に向けた必要な指導援助を行うこと。 (4)(1)により,保護開始時において居宅生活が可能と認められた者並びに居宅生活を送ることが可能であるとして,保護施設等を退所した者及び必要な治療を終え医療機関から退院した者については,公営住宅等を活用することにより居宅において保護を行うこと。 なお,保護開始時において居宅生活が可能と認められた者であって,公営住宅への入居ができず,住宅を確保するため敷金等を必要とする場合は,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)第6の4の(1)のキにより取り扱うこと。 (5)居宅生活に移行した者については,関係機関と連携して再びホームレスとなることを防止し,居宅生活を継続するため,及び居宅において日常生活を営むことの実現のため,基本方針に掲げられている就業の機会の確保等の施策を有効に活用する等,必要な支援を行うこと。 (6)病気等により,急迫した状況にある者については,申請が無くとも保護すべきものであり,その後,要保護者の意思確認が可能となった場合には,保護受給の意思確認を行い,保護の申請(保護の変更申請)が行われたときには,保護の要件を確認した上で,必要な保護を行うこと。 なお,要保護者が医療機関に緊急搬送された場合については,連絡体制を整えるなど医療機関との連携を図り,早急に実態を把握した上で,急迫保護の適用の要否を確認すること。 3 留意事項(1)実施機関における取組アホームレスの自立の支援等に関する特別措置法9条において,都道府県及び市 早急に実態を把握した上で,急迫保護の適用の要否を確認すること。 3 留意事項(1)実施機関における取組アホームレスの自立の支援等に関する特別措置法9条において,都道府県及び市町村は必要に応じ,基本方針に則し,ホームレスに関する問題の実情に応じた施策を実施するための計画(以下「実施計画」という。)を策定しなければならないこととされているが,実施計画を策定しない場合であっても,福祉事務所等保護の実施機関(以下「実施機関」という。)におけるホームレスに対する生活保護の適用の考え方は,基本方針及び本通知によるものであるので留意すること。 イそのため,実施機関においてホームレスが保護の相談等に来訪した際や急迫保護を適用する場合には,当該実施機関において必要な保護を行うものであって,施策が十分でないこと等により基本方針に沿わない取扱いを行うことがないようにすること。 (2)自立支援センターにおける生活保護の適用についてア自立支援センターの入所者については,入所中の生活は自立支援センターで保障されており,医療扶助を除き基本的には生活保護の適用は必要のないものであること。 イ自立支援センターに入所し就労努力は行ったが,結果的に就労による自立に結びつかず退所した者から保護の申請が行われたときには,保護の要件を確認した上で,必要な保護を行うこと。
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