平成5(ネ)2309 黒川乳業賃金カット

裁判年月日・裁判所
平成6年9月9日 大阪高等裁判所
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判決文本文6,817 文字)

主文 一本件各控訴をいずれも棄却する。 二控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第一当事者の申立一控訴人ら 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人Aに対し金一〇一万〇一〇一円、控訴人Bに対し金一〇〇万九三五八円及び右各金員に対する平成元年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 3 控訴費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二被控訴人主文同旨第二事案の概要本件事案の概要は、次のとおり訂正する外は、原判決の「事実及び理由」中の「第二事案の概要」欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 一原判決二枚目裏二行目の「組合という」を「組合ないし本件組合という」と、同三枚目表初行冒頭から同三行目末尾までを次のとおりそれぞれ改める。 「そして、二日の休日のうち一日を日曜日とすることは労使間で当然のこととされたが、他の一日(以下「指定休日」といい、指定された曜日を「指定曜日」ということがある)を何曜日にするかは、各部署毎に部署内部での話し合いによって定められることとなり、控訴人両名が所属していた本社及び大阪営業所の各事務部門においては、これを土曜日と定められた。」を加える。 二原判決七枚目表三行目冒頭から同九行目末尾までを次のとおり改める。 「1 本件賃金カットは違法か。即ち、控訴人らは、平成元年二月二五日に就労義務があったか。 (一)控訴人らの平成元年二月の第四週における日曜日以外の休日は、本来の指定休日であった二五日か、それとも二四日か。 (二)控訴人らに、右二五日を休日とするか二四日を休日とするかについて選択権があったか。」第三証拠(省略)第四争点に対する判断一証拠によって認定できる事実は次のとおり加除、訂正する外は、原判決の「事実及び理由」中の「第三判 か二四日を休日とするかについて選択権があったか。」第三証拠(省略)第四争点に対する判断一証拠によって認定できる事実は次のとおり加除、訂正する外は、原判決の「事実及び理由」中の「第三判断」欄の「一」(原判決八枚目表三行目冒頭から同一五枚目表一〇行目末尾まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決八枚目表四行目の「一七、一八、」を削除し、同行の「三四、」の次に「六〇、六七の1、2、六八、七〇」を加え、同裏四行目から五行目にかけての「名称変更により大阪営業所付」を「組織変更により大阪営業所販売経理係」と改める。 2 同九枚目表三行目冒頭から同一二枚目表八行目末尾までを次のとおり改める。 「2 週休二日制の実施に至る経緯と内容(一) 被控訴人会社においては、日曜日、祝祭日、創立記念日、メーデーが休日とされていたが、昭和四九年三月ころから、労使の交渉事項として週休二日制の導入問題が取り上げられるようになり、同年四月一八日に被控訴人会社及び組合間で締結された協定(甲一五)には、『一日七時間労働を基礎とした週休二日制については可及的速やかに労使が協議し実施するように努力する。』との一項が設けられた。 (二) 被控訴人会社は、同年九月三〇日、組合に対し、『週休二日制導入における会社の基本的考え方』と題する書面(以下『基本的考え方』という、乙四)を交付し、週休二日制導入問題についての基本的考えを示した。右書面の第2項には、『一週間の労働時間が三五時間であることから、祝祭日、特定休日のある週の場合は、それ等が代替わりする。』との記載があった(なお、右の『特定休日』の概念は、被控訴人会社において必ずしも一義的に用いられていないが、本書面においては、被控訴人会社の創立記念日及びメーデーを指すものと解せられる。なお、以下、祝祭日と創 った(なお、右の『特定休日』の概念は、被控訴人会社において必ずしも一義的に用いられていないが、本書面においては、被控訴人会社の創立記念日及びメーデーを指すものと解せられる。なお、以下、祝祭日と創立記念日及びメーデーを併せて『祝祭日等』という)。 (三) 組合は、『基本的考え方』が示された直後の機関紙(甲一四)で、会社の提案内容を『祝祭日の休日廃止』と表現してこれに反対し、完全週休二日制(即ち、祝祭日等は従前どおり休日とし、それ以外に一週間のうち二日を休日とする制度)の獲得を目指す姿勢を示した。以後労使間で幾度となく団体交渉が持たれ、組合は完全週休二日制を要求したが、被控訴人会社は、これを固く拒否した。やむなく組合は、次善の策として被控訴人会社の右方針を受け入れることとし、昭和五〇年九月二五日、被控訴人会社と組合間で本件協定が締結された。本件協定には次のように記載された。 『一昭和五〇年一〇月一日より一日七時間を基礎とした一週間三五時間の労働時間で週休二日制を実施する。したがって祝祭日及び創立記念日を含む週三五時間労働とする。 二週休二日制導入に際し、現行の夏期休暇六日を五日に短縮する。 三メーデーについての取扱いは週休二日制実施後の経過をみて昭和五一年一月ころ再検討する。』なお、本件協定と同時に被控訴人会社と組合間で覚書(乙六)が交わされ、本件協定の祝祭日及び夏期休暇については、今後その休日の実現を目指し努力することが約束された。 また、被控訴人会社は、そのころ黒川労組との間でも、本件協定と同旨の協定を締結した。 (四) ところで、週休二日のうち一日を日曜日とすることは労使間で当然の前提であったが、その余の一日(指定休日)を何曜日にするかについては、各部署毎の実情に合わせるため、本件協定では定められず、各部署における話し合いに 休二日のうち一日を日曜日とすることは労使間で当然の前提であったが、その余の一日(指定休日)を何曜日にするかについては、各部署毎の実情に合わせるため、本件協定では定められず、各部署における話し合いに委ねられることとなった。そして、本件協定を受けて各部署で話し合いがもたれた結果、連休をとることが差し支える部署では木曜日ないし金曜日、特段の差し支えがない部署では土曜日と定めることが多く、控訴人Bが所属する本社総務部販売経理係では土曜日(但し、土曜日に全員が休むことは差し支えがあるため係長のみ月曜日)と、控訴人Aが所属する本社総務部会計係では土曜日とそれぞれ定められた。 (五) 同年九月一五日発行の組合の機関紙(乙一四)では、被控訴人会社の提案が、祝祭日は廃止する、祝祭日は休んで指定曜日は出勤するとの案であると紹介しつつ、これを批判している。 (六) 同月三〇日発行の黒川労組の機関紙(乙一七)には、明日から実施される週休二日制の部署毎の内容説明の記載があるが、これには、本社総務部販売経理係及び会計係について、『土曜日を休日とし、祝祭日のある週はその日を充当する』旨の記載がある。 (七) 同年一〇月九日に本社総務部が全社員に配付した『週休二日制の実施について』と題するビラ(乙一六)によると、実施要領として、『日曜日と毎週木曜日を他の休日とする週休二日を基本とし、一部金曜、土曜を休日とする。同じ週に祝日のある週はこれを振り替える』と記載されている。また、各部署の実施内容の一覧表には、豊中工場の営業課では祝日振替がないが、その余の部署ではすべて祝日振替がある旨の記載がある。 (八) 同月一〇日発行の被控訴人会社の社内報(乙一五)には、週休二日制実施要領として『一日七時間を基礎とした一週三五時間の労働時間の週休二日制(週五日制)で祝日は含まれる(祝日の 旨の記載がある。 (八) 同月一〇日発行の被控訴人会社の社内報(乙一五)には、週休二日制実施要領として『一日七時間を基礎とした一週三五時間の労働時間の週休二日制(週五日制)で祝日は含まれる(祝日のある週は振替)』との記載があり、また各部署毎の実施内容を記載した部分には『祝祭日のある週は日曜日と祝祭日となる(本社営業部はケースバイケース)』との記載がある。なお、右部分の原稿を作成したのは本件組合員である。 (九) 週休二日制実施後、控訴人らを含む被控訴人会社の社員は、指定曜日に休むとともに、祝祭日等のある週は原則的には祝祭日に休み、指定曜日に出勤した。 もっとも例外的に、業務の都合(例えば、業務の性質上連休がとれない部署においては、土曜日又は月曜日が祝祭日等に当たる場合は、出勤する例が多かった)等から祝祭日等に出勤することもあったが、日曜日に出勤した場合とは異なり、割増賃金は支払われなかった。 (一〇) 被控訴人会社と黒川労組は、昭和五二年九月一日から週休二日制を廃止し、六日制勤務の週四〇時間労働制をとる旨の協定を締結した。以来、被控訴人会社内では本件組合員だけが週休二日制をとることとなった。」 3 同一四枚目裏六行目の「法律」の次に「(以下「祝日法」という)」を、同一五枚目表二行目の「、三」を削除し、同六行目末尾に続いて改行の上、次のとおりそれぞれ加える。 「なお就業規則第二四条に基づいて制定された賃金規則第七条には、休日労働には割増賃金を支払う旨定められている。」二主たる争点1(賃金カットの違法性)について 1 一で付加、訂正の上引用した事実に基づき、本件協定の実施により、祝祭日等のある週における本件組合員の休日が何時と定められたと解すべきであるかについて検討する。 (一) 本件協定の文面上は、祝祭日等のある週においても休日は二日である 基づき、本件協定の実施により、祝祭日等のある週における本件組合員の休日が何時と定められたと解すべきであるかについて検討する。 (一) 本件協定の文面上は、祝祭日等のある週においても休日は二日であることは明示されているが、日曜日以外の休日が指定曜日になるのか祝祭日になるのかについては明示されていない。 (二) しかしながら、被控訴人会社は、既に「基本的考え方」において、「代替わり」との表現を用いて、祝祭日が休日となる(以下「当然振替」ということがある)旨の考え方を提示していたこと、その後の団体交渉において、完全週休二日制の採用の可否を巡って議論がなされたものの、被控訴人会社の提案どおり祝祭日を含めた週休二日制を採用した場合に祝祭日等のある週の休日をいつにするかについては議論された形跡が証拠上認められないこと、組合は最終的には完全週休二日制の要求を断念して被控訴人会社の提案を受け入れたが、右受入れに際し、当然振替の問題について留保した形跡は証拠上認められないこと、本件協定成立後に被控訴人会社によって全社員に配付されたビラ及び社内報のいずれにも、原則として当然振替になる旨の記載があり、そのころ発行された組合及び黒川労組の機関紙にも同様の認識が示されていること等に鑑みると、本件協定成立によって、全社的に、祝祭日のある週の休日は原則的に祝祭日に当然振り替えられるとの理解がなされたものと推認できる。 なお、組合は、前記『基本的考え方』が示された直後に発行された機関紙(甲一四)で、会社の提案内容を『祝祭日の休日廃止』と表現し、本件協定締結直後に発行された機関紙(甲一三)でも、右協定内容を『祝祭日なし』と表現しているが、右各表現は、本件協定実施後、祝祭日が出勤日になるとの認識を示したものではなく、祝祭日があっても休日が増える訳ではないし、また祝祭日 機関紙(甲一三)でも、右協定内容を『祝祭日なし』と表現しているが、右各表現は、本件協定実施後、祝祭日が出勤日になるとの認識を示したものではなく、祝祭日があっても休日が増える訳ではないし、また祝祭日に出勤しても割増賃金が支払われないことから、実質的には祝祭日が廃止されたに等しいとの認識を示したものと解するべきであって、右推認を妨げない。 (三) 以上の事実によれば、本件協定によって、就業規則のうち、祝祭日を休日とする部分は廃止され、新たに労働基準法上の「休日」とは異なって割増賃金の対象とならない指定休日が毎週一回、各部署毎に曜日を指定して設けられるとともに、祝祭日等のある週には原則としてその祝祭日等が指定休日となり、指定曜日は出勤日となる旨定められたものというべきである。そして、前認定の事実によれば、控訴人らが所属する部署(但し、販売経理係長を除く)では、指定曜日を土曜日とするとともに、祝祭日等がある週の扱いについては右原則どおりとされたことが推認できる。 2 ところで控訴人らは、控訴人らが所属する部署においては、祝祭日等がある週に、その祝祭日等を休日とするか、指定曜日を休日とするかについて、各労働者に選択権が与えられた旨主張し、証人C、同D、控訴人両名の供述中には右主張に沿う部分があるが、右証人二名の各供述部分はいずれも伝聞であり、又控訴人らの供述部分も内容が曖昧であって、にわかに信用できない。また、控訴人らは、本件協定実施後の運用実態において、(1)祝祭日に出勤している例があること、(2)祝祭日と指定曜日の両方を休む場合に、前者を有給休暇ないし生理休暇、後者を公休として処理されている例があること等も右主張の根拠にするところ、なるほど、乙二二、二三、二七ないし六二(各枝番を含む)によると右各事実が認められるが、Eの証言及び弁論の全趣旨 し生理休暇、後者を公休として処理されている例があること等も右主張の根拠にするところ、なるほど、乙二二、二三、二七ないし六二(各枝番を含む)によると右各事実が認められるが、Eの証言及び弁論の全趣旨によると、(1)は例外的に業務上の必要がある場合に止まり、(2)は、いずれにしても割増賃金の問題が生じないため取扱いに厳密さを欠いたことから生じたものと認められ、一で引用した事実にも照らすと、右(1)(2)の各事実から、労働者に選択権が与えられていたとの控訴人らの主張事実を認めることは到底できない。 3 次に、本件協定によって当然休日が振り替えられるものとされた「祝祭日」に本件休日が該当するか否かについて検討する。 (一) 本件協定において、指定休日が「祝祭日」に当然振り替えられるものとされた理由は、祝祭日には被控訴人会社の取引先等も休むことが多く、指定曜日を休むより祝祭日を休む方が被控訴人会社の業務上好都合であること及び被控訴人会社の社員としても、指定曜日に休むよりも官公庁、学校及び勤労者の大部分と同様に祝祭日に休むことを希望するのが一般であること等にあるものと解せられる。 (二) 本件協定実施後、被控訴人会社では、国民の祝日のみならず、祝日法三条二項で定められた休日(国民の祝日が日曜日に当たる場合の翌日)も指定休日が当然振り替えられる日として扱われていた〔乙八、一三、乙二二、二三、二七ないし六一(各枝番を含む)〕が、同法三条三項で定められた休日(その前日及び翌日が国民の祝日である日)も指定休日が振り替えられた。 (三) (一)で判示した趣旨及び(二)で認定した事実に鑑みると、指定休日が当然振り替えられる「祝祭日」とは、祝日法で定められた「国民の祝日」のみならず、同法三条二項、三項で定められた休日及びその他の法律で定められた休日も含まれるものと 認定した事実に鑑みると、指定休日が当然振り替えられる「祝祭日」とは、祝日法で定められた「国民の祝日」のみならず、同法三条二項、三項で定められた休日及びその他の法律で定められた休日も含まれるものと解するのが相当である。 そして、平成元年二月二四日は、大喪の礼休日法により休日とされ、その附則二条により、「休日を定める他の法令の規程の適用については、当該法令に定める休日とみなす」とされたのであるから、右「祝祭日」に該当するというべきである。 4 以上の事実によれば、控訴人らの平成元年二月第四週における日曜日以外の休日は二四日であり、二五日は出勤日であったというべきであるから、同日に出勤しなかった控訴人らに対して賃金カットをした被控訴人会社の措置に何らの違法はなく、控訴人らの本訴請求のうち未払賃金の支払いを求める部分は失当である。 三主たる争点2に対する当裁判所の判断は、原判決二〇枚目表二行目冒頭から同二一枚目表三行目末尾までに記載のとおりであるから、これを引用する。 四 (まとめ)以上の次第で、控訴人らの本訴請求はいずれも失当であり、これを棄却した原判決は正当である。よって、控訴人らの本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官山中紀行武田多喜子井戸謙一)

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