【DRY-RUN】主 文 原判決を破毀する。 本件を京都地方裁制所に差戻す。 理 由 京都地方裁判所検事正中村昇の上告趣意は別紙上告趣意書と題する書画記載の通 りであ
主 文 原判決を破毀する。 本件を京都地方裁制所に差戻す。 理 由 京都地方裁判所検事正中村昇の上告趣意は別紙上告趣意書と題する書画記載の通 りであつて被告人A、Bの辯護人武松久吉、大竹武七郎、被告人Cの辯護人田邊哲 崖の答辯の要旨は右辯護人三名名義の答辯書と題する別紙書面記載の通りである。 よつて審案するに昭和二十一年十一月三日勅令第五百十一號大赦令第一條第四十 八號によれば昭和二十一年十一月三日以前に國家總動員法第三十一條の二の罪を犯 した者は赦免せられるのであるがその罪に該る行爲が聯合國占領軍の占領目的に反 する行爲(昭和二十一年勅令第三百十一號第一條第二號乃至第八號又は第二條第三 項に掲げる行爲)であるときは赦免せられないことが明白である。記録を調査する と本件公訴事實は所論の通りであつて右は國家總動員法第三十一條の二第八條物資 統制令繊維製品消費配給統制規則第九條刑法第五十五條にあたるものであるからそ の公訴權が右大赦令によつて消滅するか否かは被告人等の右行爲が占領目的に反す るか否かにかあつているわけである。而して右大赦令第一條但書の趣旨は右行爲を 占領目的違反罪として赦免しないのでないから占領目的に反するかどうかは客觀的 に定むべきであつて被告人等において行爲が占領目的に反するととを知らなくても 苟も行爲がこれに反する以上赦免せられないものと解すべきである。ところ<要旨> で昭和二十一年勅令第三百十一號第二條第三項にことの勅令において占領目的に有 害な行爲というのは聯合國</要旨>最高司令官の日本帝國政府に對する指令の趣旨に 反する行爲、その指令を施行する爲に聯合國占領軍の軍、軍團又は師團の各司令官 の發する命令の趣旨に反する行爲及びその指令を履行する爲めに日本帝國政府の發 する法令に違反する行爲をいうので る指令の趣旨に 反する行爲、その指令を施行する爲に聯合國占領軍の軍、軍團又は師團の各司令官 の發する命令の趣旨に反する行爲及びその指令を履行する爲めに日本帝國政府の發 する法令に違反する行爲をいうのであると定められてあるから右大赦令第一條但書 にいう占領目的に反する行爲には前記指令を履行する爲めにわが政府の發する法令 に違反する行爲の外聯合國最高司令官の日本國政府に對する指令の趣旨に反する行 爲をも包含すること明白であつて右指令の趣旨に反する行爲とは指令が直接わが國 民に對し拘束力を有すると否とを問はず苟も行爲が客観的に指令の趣旨に反すると きは占領目的に有害な行爲いう趣旨に解するのがわが政府の發する法令違反の行爲 の外に指令の趣旨に反する行爲を掲げた點から且つわが國の現状に鑑み相當であ る。しかるに本件配給違反行爲の前に發せられた聯合國最高司令官の昭和二十年九 月二十五日附製造工業の運營に關する覺書によれば生糸、絹糸、絹若は絹混織の織 物又は絹若は絹混織の仕上り衣服類は最高司令官の特別の承認なき限り解放せられ ずと指示せられているから絹織物である羽二重の如きも同司令官の特別の許可がな い限り一般的に凍結せられることになつたわけである。而して同司令官の發する覺 書なるものは通常日本國政府又はその機關に向けられた命令で右勅令第三百十一號 にいう指令と同視すべきものであつて苟も指令の趣旨に反すれば右大赦令によつて 赦免せられるものでないと解するのが同令の精神であることは既に説明したところ により明白である。本件公訴事實に示されてゐる被告人等の爲した羽二重の配給違 反の販賣行爲は行爲以前に發せられた右覺書の趣旨に反すること勿論であるから覺 書のわが國民に對する直接拘束力の有無を論ずるまでもなく占領目的に反するもの として赦免せられないものという外はない。尤も右勅令第三百十一號は被 以前に發せられた右覺書の趣旨に反すること勿論であるから覺 書のわが國民に對する直接拘束力の有無を論ずるまでもなく占領目的に反するもの として赦免せられないものという外はない。尤も右勅令第三百十一號は被告人等の 本件販賣行爲のあつた以後なる昭和二十一年七月十五日より施行せられたものであ るととは辯護人所論の通りであるが被告人等の行爲が直接に同勅令違反としての犯 罪であるから赦免されないというのではなくて行爲が苟も同勅令第二條第三項に掲 げる行爲に該當すれば赦免されないとするのが大赦令の趣旨と解すべきであるから 被告人等の本件配給違反行爲より以前に右勅令が施行されたことがこれを赦免しな いために必要ではない。 以上説明のように被告人等の行爲は右大赦令第一條但書によつて赦免せられない ものと解すべきであるに拘らず原判決が同令第一條本文により公訴權が消滅したも のとして刑事訴訟法第三百六十三條第三號に従ひ被告人等に免訴の言渡をしたのは 法令の解釋適用を誤つたものというの外なく論旨は理由があり本判決は破毀を免れ ない。 而して右法令の違背は事實の確定に影響を及ぼすから刑事訴訟法第四百四十七 條、第四百四十八條の二判に従ひ主文の通り制決する。 (裁判長判事 吉田常次郎 判事 小泉英一 判事 今谷健一 判事 深井正男 判事 大野美稻)
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