平成17(ネ)3134 福祉年金請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成18年11月28日 大阪高等裁判所 棄却 大阪地方裁判所 平成15(ワ)4986
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判決文本文34,720 文字)

平成18年11月28日判決言渡平成17年(ネ)第3134号福祉年金請求控訴事件原審大阪地方裁判所平成15年(ワ)第4986号,同第10361号,平成16年(ワ)第3315号,同第7398号,同第9207号,同第10912号,平成17年(ワ)第2873号判決主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴人らが当審で追加した請求をいずれも棄却する。 当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1本件控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は,別紙請求債権目録記載の各控訴人に,同目録の「請求金額」欄記載の金員及びうち同目録①欄記載の金員に対する平成14年9月25日から,同目録②欄記載の金員に対する平成15年3月25日から,同目録③欄記載の金員に対する同年9月23日から,同目録④欄記載の金員に対する平成16年3月23日から,同目録⑤欄記載の金員に対する同年9月22日から,同目録⑥欄記載の金員に対する平成17年3月23日から,同目録⑦記載の金員に対する同年9月22日から,同目録⑧記載の金員に対する平成18年3月23日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 (上記請求金額のうち,別紙請求債権目録⑦,同⑧欄記載の金員とこれに対する遅延損害金の支払いを求める部分は,当審で追加された請求である。) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 仮執行宣言第2事案の概要 Ⅰ事案の概要本件は,被控訴人が私的に運営する福祉年金制度に加入して被控訴人との間でそれぞれ年金契約を締結していた控訴人らが,被控訴人の行った年金支給額の減額は,上記各年金契約に違反し違法無効であり,被控訴人は減額前の年金額を支払う義務がある旨主張して,被控訴人に対し,上記各年金契約に基 年金契約を締結していた控訴人らが,被控訴人の行った年金支給額の減額は,上記各年金契約に違反し違法無効であり,被控訴人は減額前の年金額を支払う義務がある旨主張して,被控訴人に対し,上記各年金契約に基づき,減額前の年金額と既払額の差額の支払いを求めた事案である。 原審は,控訴人らの請求を棄却した。 控訴人らは,本件控訴をし,当審で支払期が到来した上記の差額分について,請求を追加した。 Ⅱ前提となる事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認める事実である。) 当事者(1)控訴人らは,いずれも被控訴人又はそのグループ会社(以下「被控訴人ら」或いは「被控訴人ら会社」という。)に永年勤務し,既に退職した者であり,被控訴人との間で,被控訴人の福祉年金制度(以下「本件制度」という。)に基づく福祉年金契約(以下「本件契約」という。)を締結した者である。 (2)被控訴人は,電気,通信,電子及び照明機械器具の製造,販売等を業とする株式会社である。 本件制度の沿革,目的,被控訴人の福祉年金の内容(1)被控訴人は,昭和41年1月21日,被控訴人ら会社の退職者を対象とした本件制度を創設した。これは,社員として永年勤務し退職した者の退職後の生活の安定を図る目的で,被控訴人の創業者であるAの発案のもとに創設された制度であり,平成14年4月に現役従業員との関係では廃止された。 (2)被控訴人は,被控訴人の制定した福祉年金規程(以下単に「本件規程」 という。)に基づいて本件制度を運営しているところ,本件規程によると,被控訴人の福祉年金(以下「本件福祉年金」という。)の内容は,以下のとおり,基本年金(以下「本件基本年金」という。)と終身年金(以下「本件終身年金」という。)である。(本件規程第4条)ア本件基本年金(本件規程第 金(以下「本件福祉年金」という。)の内容は,以下のとおり,基本年金(以下「本件基本年金」という。)と終身年金(以下「本件終身年金」という。)である。(本件規程第4条)ア本件基本年金(本件規程第2章(第5条ないし第13条))被控訴人ら会社の退職者は,その希望により,被控訴人の社員退職金規程に基づいて受け取った退職金(退職慰労金,退職加給金,特別慰労金)の一部を年金原資として被控訴人に預け入れ,被控訴人は,その預入金に一定の利率(以下「本件給付利率」という。)による利息を付け,年2回ずつ,一定の支給期間,これを退職者に支給する。これが本件基本年金である。年金原資として予定されているものは,退職金以外はなかった。 本件基本年金は,預入金とこれに対する支給期間中の利息とを合算した額をもとにして,支給期間中の各支給日における支給額が均等になるように計算されており,被控訴人は,これを,毎年3月21日と9月21日(ただし,その日が公休日である場合には翌日が支給日となる。)の年2回支給する。なお,3月21日支給分は前年9月21日から当年3月20日までの半期分として,9月21日支給分は当年3月21日から9月20日までの半期分としてそれぞれ支給される取扱いとなっている。(甲1,甲6)イ本件終身年金(本件規程第3章(第14条,第15条))本件基本年金の受給が完了した後,受給者が死亡するまでの間は,たとえ預入金がなくなっても,本件基本年金の最終支給日における支給額と同額を1回の支給額として本件終身年金が支給される。 (3)本件規程の23条1項は「将来,経済情勢もしくは社会保障制度に大巾(以下「大幅」と表記する。)な変動があった場合,あるいは法制面での 規制措置により必要が生じた場合は,この規程の全般的な改定または廃止を行う。」と,同条2項は「 済情勢もしくは社会保障制度に大巾(以下「大幅」と表記する。)な変動があった場合,あるいは法制面での 規制措置により必要が生じた場合は,この規程の全般的な改定または廃止を行う。」と,同条2項は「この規程の改廃は社長が行う。」とそれぞれ規定している(以下「本件改廃規定」という。)。本件改廃規定は,昭和41年の本件規程制定時から存在し,2項が「この規程は社長が改廃する」から「この規程の改廃は社長が行う」に変更された外は,その内容に変更はない。(乙19の5)(4)被控訴人は,本件制度に基づき,退職者から預かった年金原資を,社内の他の資金と区別して管理・運用することなく,事業資金に組み込み,本件制度に基づく年金は,事業資金から支出された。したがって,本件制度の運営によって生じる赤字分(利息相当分及び本件終身年金)は,被控訴人の事業収益から賄われていた。 (5)本件制度の変遷等ア本件制度発足当時(昭和41年),預入限度額は,原則として退職金の70%であったが,受給資格者の希望があれば100%を預入れることができた。 また,本件基本年金の給付利率は年10%とされた。 イ昭和59年10月1日の本件規程の改定により,本件制度の預入限度額が,退職金の50%以内かつ2000万円以内とされた。ただし,経過措置が設けられた。 ウ平成8年4月1日に本件規程は,次のとおり改定された。 (ア) 預入限度額は,退職金の50%以内かつ1800万円以内の金額とし(ただし,経過措置が設けられた。),本件契約を締結するためには,K電器厚生年金基金(昭和53年6月設立,以下「被控訴人厚生年金基金」という。)の加算年金を100%年金選択した後預け入れることができるとされた。 (イ) 本件基本年金の給付利率を,平成9年3月21日以降の退職者につ いては年9.5%, 下「被控訴人厚生年金基金」という。)の加算年金を100%年金選択した後預け入れることができるとされた。 (イ) 本件基本年金の給付利率を,平成9年3月21日以降の退職者につ いては年9.5%,平成10年3月21日以降の退職者については年8.5%,平成11年3月21日以降の退職者については年7.5%とし,その改定の効果は,本件契約の既受給者には及ばないこととされた。 エなお,他に,控訴人らに支給される年金としては,①厚生年金保険法に基づく老齢厚生年金(国が支給。被控訴人厚生年金基金が設立後は,同基金が国を代行して支給),②退職金からの預入に基づく,被控訴人厚生年金基金から支給される加算年金(以下「本件加算年金」という場合もある。)が存在した。 本件給付利率の引下げ及びこれによる本件基本年金の減額支給(1)被控訴人は,控訴人らを含む既受給者について,平成14年9月21日の支給分(同年3月21日から9月20日までの半期分)から,従来の本件給付利率を一律2%引き下げる旨決定し(以下「本件利率改定」という。),同月12日,その旨記載された社長書簡を発送し,同月17日,新年金証書,計算書等を発送して,控訴人らを含む既受給者に通知した。 (乙21(枝番も含む。),乙43,乙55)(2)本件利率改定には,経過措置(以下「本件経過措置」という。)が設けられていた。その内容は,満60歳未満で退職した既受給者については満60歳到達後の最初の支給分から本件利率改定後の本件給付利率を適用し,平成13年9月21日以降に退職した本件利率改定の直近の既受給者については,少なくとも一度は本件利率改定前の本件給付利率による本件基本年金を支給することにし,いずれにも該当する場合にはどちらか遅い新年金額の支給日から,本件利率改定後の本件給付利率を適用するとい ついては,少なくとも一度は本件利率改定前の本件給付利率による本件基本年金を支給することにし,いずれにも該当する場合にはどちらか遅い新年金額の支給日から,本件利率改定後の本件給付利率を適用するというものであった。(乙59) 控訴人らの本件基本年金の減額(1)控訴人らと被控訴人との間においては,それぞれ,原判決別紙一覧表の 「①年金証書」欄,「②契約年金額」欄,「③支給期間」欄に記載された内容の本件契約が成立しており,各控訴人には,各支給日に本件契約に基づき同一覧表の「②契約年金額半期支給額」欄記載の金額の本件基本年金が支給されていた。 なお,控訴人らは,その退職時期に応じて,本件給付利率は,7.5%ないし10%であった。 本件利率改定の結果,控訴人らに適用される本件給付利率は,5.5%ないし8%となり,原判決別紙一覧表「⑤既発生の未支給額」欄記載の金員が減額して支給された。 (2)本件利率改定による支給額の差額各控訴人についての,本件利率改定がなければ各支給日に支給されたであろう金額と,各支給日に実際に支給された金額との差額は,本判決別紙請求債権目録の①ないし⑧欄にそれぞれ記載のとおりであり,平成18年3月23日支給分までのその合計額は,それぞれ別紙請求債権目録の「請求金額」欄記載のとおりであるところ,被控訴人は控訴人らに対しこれらをいずれも支給していない。 訴訟承継(1)控訴人B(控訴人番号21)は,平成18年4月9日死亡し,その権利義務は相続により,妻のC(高槻市)と子のD(京都市),同E(高槻市),同F(高槻市)が承継し,本件訴訟の控訴人の地位も同人らが承継した。 (2)控訴人G(控訴人番号94)は,平成18年8月13日死亡し,その権利義務は相続により,妻のH(愛知県)と子のI(愛知県),同J(愛知県 が承継し,本件訴訟の控訴人の地位も同人らが承継した。 (2)控訴人G(控訴人番号94)は,平成18年8月13日死亡し,その権利義務は相続により,妻のH(愛知県)と子のI(愛知県),同J(愛知県)が承継し,本件訴訟の控訴人の地位も同人らが承継した。 Ⅲ本件利率改定が許されるか否かに関する当事者の主張本件の争点は,控訴人らの同意なしに一方的に本件利率改定が許されるか否 かであり,この点に関する当事者双方の主張は,原判決9頁6行目から同39頁20行目までに記載のとおりであるからこれを引用する(ただし,原判決39頁14行目の「1兆9513億0800億円」を「1兆9513億0800万円」と改める。)。 第3当裁判所の判断当裁判所も,本件利率改定の効果は,控訴人らに生じており,控訴人らの請求は理由がないと判断する。その理由は次のとおりである。 Ⅰ本件規程が本件契約内容になっているか否か。 前提となる事実や後記2の本件規程の内容等によれば,本件制度は,退職者に対する福祉の実現という目的の下に,被控訴人ら会社の退職者の多数の加入者との間の反復,継続する契約関係が予定され,また,各加入者の年金額を平等かつ公平に決定するため,支給率,支給期間等が技術的な計算により算出されており,被控訴人において,多数の契約者一人一人から,各自の年金額の基礎となる支給率,支給期間の計算過程等を含む契約内容全てについて等しく理解を得ることは困難である。被控訴人がこのような性質を有する制度の運営者として,多数の反復,継続する契約関係と技術的な契約内容とを合理的,画一的に処理し,また,各加入者を平等かつ公平に取り扱うという目的のために,あらかじめ,私企業における福祉年金制度の規律として合理性を有する本件規程を定めて,各加入者との間の年金契約の内容を,本件規程によら 理し,また,各加入者を平等かつ公平に取り扱うという目的のために,あらかじめ,私企業における福祉年金制度の規律として合理性を有する本件規程を定めて,各加入者との間の年金契約の内容を,本件規程によらしめることとしており,制度上,これが容認されていると解される。そして,上記目的に照らせば,本件年金の受給を希望する者は,本件規程に定められた制度内容を一括して承諾して契約を締結するか,又は一括して拒否して契約を締結しないか二者択一をする以外になく,被控訴人との間で,預入限度内で退職金からの預入額を決める以外は,個別的に本件規程の定め以外の内容の特約を締結することはできないというべきである。他方,被控訴人の方も,有資格者から本件規程に基づく申込みがあれば,これを拒絶することもできないといわなければならない。 したがって,本件契約については,本件規程が本件制度の規律としての合理性を有しており,しかも,本件制度を規律する規範として本件規程が存在し,申込者がこれの内容を知ろうとすれば知り得た状況にあれば(いわゆる周知性),控訴人らにおいて,本件規程の具体的内容を知っていたか否かにかかわらず,本件規程によらない旨の特段の合意をしない限り,本件規程に従うとの意思で年金契約を締結したものとするのが相当であり,本件規程は,本件契約の内容となっていると解される。 そして,本件規程には,後記2の本件規程の内容等に照らせば,本件規程中のうち本件改廃規定を除く部分の合理性は明らかに認められ,本件改廃規定の合理性についても,後記Ⅱの認定判断のとおり十分認められ,また,後記3のとおりその周知性も肯認されるのであるから,本件規程は,本件契約の内容となっているということができる。 本件規程の内容等(1)乙19の1ないし5によると,本件規程は,第1章ないし第4章と附 のとおりその周知性も肯認されるのであるから,本件規程は,本件契約の内容となっているということができる。 本件規程の内容等(1)乙19の1ないし5によると,本件規程は,第1章ないし第4章と附則とからなり,「第1章総則」では,目的(第1条),受給資格を有する者は,原則として,勤続満15年以上の職員で,満55歳以上で退職する者であること(第2条),勤続年数の計算方法(第3条),本件福祉年金の内容は,本件基本年金と本件終身年金であること(第4条)が,「第2章基本年金」では,退職金の一部を年金原資とすること(第5条),年金受給者は退職金から年金原資額を拠出すること(第6条),年金の支給期間(第7条),年金額(第8条),支給期間の起算日は,本人の退職日により,毎年3月21日又は9月21日であり,年金原資とこれに対する一定の利率による利息相当額の合計額を本件基本年金の総額として本件基本年金が支給されること(第9条),年金支給日は毎年3月21日,9月21日であること(第10条),受給者の希望があれば,中途全額一時払い,中途一部一時払いをすること(第11条,第12条),受給者死亡の場合 には,遺族に対し,中途全額一時払いの場合の金額が支払われること(第13条)が,「第3章終身年金」では,本件終身年金の支給額,支給日(第14条),受給者が死亡した場合には本件終身年金の支給が打ち切られること(第15条)が,「第4章受給手続」では,業務取扱い部署を被控訴人本社人事部門内におくこと(第16条),年金受給開始手続(第17条),中途一時払い手続(第18条),受領方法(第19条),受給者の書類届出義務(第20条),年金受給権の譲渡及び担保の禁止(第21条),年金支給の取止め事由及びその場合は,第11条に定める金額を一時払いすること(第22条),本件改 受領方法(第19条),受給者の書類届出義務(第20条),年金受給権の譲渡及び担保の禁止(第21条),年金支給の取止め事由及びその場合は,第11条に定める金額を一時払いすること(第22条),本件改廃規定(第23条)が,それぞれ定められていることが認められる。 (2)本件規程の改定経緯についてみるに,甲4,乙3の1ないし4,乙19の1ないし5,乙20,乙21(枝番も含む。),乙25,乙26,弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ア本件規程は,昭和41年1月21日に制定され,昭和42年10月1日,昭和47年10月1日,昭和53年7月20日,昭和59年10月1日,昭和61年4月1日,平成2年4月1日,平成8年4月1日,平成10年10月1日,平成12年4月1日に,それぞれ改定がされた。 その改定内容につき,主なものをあげると,昭和42年10月1日にされた改定は,受給資格者につき,それまで定年退職者とされていたのを満55歳以上の退職者とし,死亡等による場合は50歳以上としていたのを51歳以上とするものであった。昭和47年10月1日にされた改定は,年金原資と退職金との関係(第6条)について,それまで退職金規程による退職金の額から年金原資相当額を差し引いた額を退職金額とするとしていたのを,退職金規程による金額の退職金を支給したうえで,退職者が年金原資相当額を拠出すると変更するものであった。昭和59年10月1日にされた改定は,年金原資の預入限度額を変更するもので あった(前提となる事実2(5)イ)。平成8年4月1日にされた改定は,年金原資の預入限度額,年金の給付利率を変更するものであった(前提となる事実2(5)ウ)。平成10年10月1日にされた改定は,本件年金受給手続時等における提出書類の変更と一部の表現を訂正し,本件改廃規定を第 預入限度額,年金の給付利率を変更するものであった(前提となる事実2(5)ウ)。平成10年10月1日にされた改定は,本件年金受給手続時等における提出書類の変更と一部の表現を訂正し,本件改廃規定を第4章から附則に移すものであった。これらの改定のうち,昭和42年10月1日,平成10年10月1日,平成12年4月1日の各改定においては,従来の本件規程の原本に手書きで訂正をするという方法により,その改定結果が記録された。 イ被控訴人は,本件規程の管理方法として,古い本件規程を保存するという管理方法を採っておらず,改定があるたびに古い本件規程を新しい本件規程に差し替えてきたため,原本が現存しないものがあり,原本が現存するのは,昭和41年1月21日制定のもの,昭和42年10月1日,昭和47年10月1日,平成10年10月1日,平成12年4月1日各改定のもののみである。 ウ本件規程が制定された際には,K労組との協議に基づいてその内容が決定された。本件規程の昭和59年10月1日改定で,上記のとおり,年金原資の預入限度額の変更を行ったが,このときは,被控訴人とK労組との間で労働協約が締結された。また,本件規程の平成8年4月1日改定で,預入限度額の変更と将来の退職者との関係での利率改定が行われたが,その際も,被控訴人とK労組との間で協議がされて労働協約が締結され,これに基づき本件規程が改定された。(甲4,乙20,乙26,乙83)(3)控訴人らは,本件規程が被控訴人社内における事務処理準則にとどまると主張する。しかし,本件規程の内容は上記のとおりであり,受給資格,勤続年数の計算方法,本件規程により支給される年金が本件基本年金と本件終身年金とからなること,本件基本年金の原資は退職金の一部であり, 年金受給者は退職金から年金原資を拠出すること,年金の 格,勤続年数の計算方法,本件規程により支給される年金が本件基本年金と本件終身年金とからなること,本件基本年金の原資は退職金の一部であり, 年金受給者は退職金から年金原資を拠出すること,年金の支給期間,年金額,年金支給日は毎年3月21日,9月21日であること,中途全額一時払い,中途一部一時払いができること,受給者死亡の場合の年金の支払方法等,本件契約に基づいて控訴人らが取得する権利の内容が具体的に定められているのであり,他に,本件契約に基づく控訴人らの権利の具体的な内容を定めたものがあるという事実は認められないのであるから,そうであるとすると,本件規程は,その内容自体からみて,単なる被控訴人社内の事務処理準則ではなく,本件契約を締結する退職者と被控訴人との間の契約内容を規律するものであるというべきである。また,本件規程の改定経緯をみても,契約内容の実質に一定程度以上の影響を及ぼす場合には,労使間協議が経られているのであって,そのことからみても,本件規程は,本件契約を締結する退職者と被控訴人との間の契約内容となることが予定されていたものであると認めるのが相当である。控訴人らは,数次にわたって改定された本件規程につき,その改定前の一部の原本が存在していないことを問題とする主張をするが,後記のとおり,本件規程が改定された場合,改定前の本件規程は,既に本件契約を締結した者についても,それが適用されることはなくなるのであるから,そのような改定前の本件規程の原本の一部が存在しないことは,本件規程が本件契約の内容になるべきものであると認めることの障害となるものではない。また,本件規程の改定のうち,昭和42年10月1日,平成10年10月1日,平成12年4月1日の各改定においては,従来の本件規程の原本に手書きで訂正をするという方法によりその改 害となるものではない。また,本件規程の改定のうち,昭和42年10月1日,平成10年10月1日,平成12年4月1日の各改定においては,従来の本件規程の原本に手書きで訂正をするという方法によりその改定結果が記録されているのであり,その記録方法に問題があることは控訴人らの主張するとおりであるが,そのことを勘案しても,上記のところからすると,本件規程が被控訴人社内における単なる事務処理準則とみることができないことは明らかである。 本件規程の周知性等 (1)括弧内に記載の書証及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 ア被控訴人は,被控訴人ら会社の従業員に対し,「私たちの会社」,「明るい職場に正しいルール」,「ライフプラン入門」と題する冊子を配布していたが,これらの冊子には,本件規程の内容にそった本件制度の概要が記載されていた。(甲5,乙23,乙24)イ被控訴人ら会社の退職予定者は,55歳になった後,被控訴人厚生年金基金及び被控訴人ら会社の各事業場が主宰する「熟年設計セミナー」(以下「本件セミナー」という。)を受講することが可能となる。本件セミナーは,各種保険の手続の説明とともに,退職予定者が将来支給を受けることができる老齢厚生年金及び被控訴人厚生年金基金の加算年金の概要と受給手続など,主として退職後の生活設計について総合的に説明するものであり,本件制度の主要な内容と手続についても,受講者に配布する「熟年設計セミナーテキスト」(以下「本件テキスト」という。)の中で本件規程の内容を引用するなどして,本件セミナーにおいて説明されていた(ただし,平成13年4月以降,本件セミナーにおいては,本件テキストでなく,パワーポイントによる資料が使用されるようになった。)。本件セミナーは,任意参加であるが,退職予定者のほとんどの者が ていた(ただし,平成13年4月以降,本件セミナーにおいては,本件テキストでなく,パワーポイントによる資料が使用されるようになった。)。本件セミナーは,任意参加であるが,退職予定者のほとんどの者がこれを受講していた。(甲14,乙9)ウ従業員が退職する日の2か月前ころ,被控訴人ら会社は,各事業場において,退職予定者に対する説明会を実施し,その際,「定年ご退職にあたって」と題する冊子を配布し,退職後に加入できる各種保険の加入手続,上記各種年金の受給手続など,必要となる諸手続について説明し,その中で,本件契約の締結手続についても説明を行っている。また,退職予定者に対して本件申込書を含む関連書類の交付も行い,本件契約の申込みの誘引をしていた。(甲6,乙4,乙8) エ本件申込書には,申込日,申込者(氏名,生年月日等),本件福祉年金の振込先金融機関(銀行名又は郵便局,口座番号等),家族状況をそれぞれ記載する欄があり,下部には,事業場処理欄,本社処理欄があって,それ以外には,申込者欄と金融機関欄との間に,「私は貴社の福祉年金規程を了承の上,下記により福祉年金の受給を申し込みます。 記年金原資として,退職金の内円を充当します。」という記載がされているのみであった。本件契約の締結を希望する退職予定者は,上記説明会で本件申込書を受け取って,これをいったん持ち帰り,本件申込書に申込者の氏名,生年月日等,退職金のうち年金原資に充当する金額,本件福祉年金の振込先金融機関等の必要事項を記載し,退職日の1か月前までにこれを被控訴人に提出して本件契約の申込みをした。もっとも,担当者の説明を聞いたうえ,その場で申込書に記載して提出した者も存在した。これに対し,被控訴人は,本件申込書の記載事項等を確認したうえで,上記申込者に対し,氏名,証書番号,1年 みをした。もっとも,担当者の説明を聞いたうえ,その場で申込書に記載して提出した者も存在した。これに対し,被控訴人は,本件申込書の記載事項等を確認したうえで,上記申込者に対し,氏名,証書番号,1年分の本件基本年金の金額,支給期間,退職日の翌日の日付,及び「貴殿に対しK電器福祉年金規程に基づいて本証書記載の基本年金を支給します」との文言が記載された福祉年金証書を交付することによって(平成11年4月以降の加入者に対しては,更に,本件規程(乙22,本件規程原本と細部の表現的な相違点はあるが,本件改廃規定はそのままである。)も福祉年金証書とともに交付していた。),上記申込みに対する承諾をし,本件契約が成立することとされていた。(乙4,乙5,乙22,乙27(枝番を含む。))(2)上記の事実によると,控訴人らは,本件契約の申込みをするにあたり,いったん本件申込書を持ち帰ってこれを読む機会が与えられていたのであ り,本件申込書の申込者欄,金融機関欄を記載する際に,控訴人らが被控訴人の本件規程を了承の上で本件福祉年金の受給を申し込むこと,退職金のうち控訴人らが希望する一定の金額を年金原資とすることについては,当然にこれを読んで理解していたと認めるのが相当である。 控訴人らは,「私は貴社の福祉年金規程を了承の上」という記載が例文に過ぎないと主張する。しかし,本件規程の内容は,上記2のとおりであり,本件制度を規律する規範として重要なものであることや,本件申込書には,申込日,申込者,金融機関,家族状況欄以外には,控訴人らが被控訴人の本件規程を了承の上で福祉年金の受給を申し込むこと,退職金のうち申込者が希望する一定の金額を年金原資とすることしか記載されていなかったのであり,その内容が複雑なものでも理解困難なものでもないのであって,上記控訴人らの主 祉年金の受給を申し込むこと,退職金のうち申込者が希望する一定の金額を年金原資とすることしか記載されていなかったのであり,その内容が複雑なものでも理解困難なものでもないのであって,上記控訴人らの主張は採用できない。 また,本件制度は,異なる条件を有する多数の退職者を対象とするものであり,そのような多数の退職者との間で締結される本件契約の内容を確定するためには,その契約内容を確定するための一定の準則が存在し,その準則に各退職者の有する具体的な条件を当てはめることによって,各退職者の受ける本件福祉年金の内容が決定されることは,制度自体から当然に予定されることであって,永年にわたって企業に所属していた控訴人らにおいても,そのような当然のことを認識できなかったはずはないと考えられる。そうであるとすると,本件契約の内容となる準則である本件規程の存在については,上記の点からも,控訴人らにおいてこれを認識していたと認めるのが相当である。 (3)次に,控訴人らは,本件規程の内容を知ろうとすれば知ることができる立場にあったことは次のとおりである。 ア乙22,乙28,弁論の全趣旨によると,①被控訴人は,本件規程を,昭和41年から昭和58年までは被控訴人本社総務部,本社人事本部人 事二部(昭和48年に「労政部」と名称変更),各事業場の人事担当部署に,昭和59年以降は本社労政部(平成13年に「労政グループ」と名称変更)にそれぞれ備え置いていたこと,②被控訴人は,昭和46年以降,各事業場の人事担当社員に「人事業務必携」を配布しており,その中には本件規程の主要な内容が記載されていたこと,③被控訴人は,控訴人らに対し,本件規程の原本の写しを交付せず,また,本件規程がどこに備え置かれているかということを開示していなかったこと,もっとも,平成11年4月以降の 内容が記載されていたこと,③被控訴人は,控訴人らに対し,本件規程の原本の写しを交付せず,また,本件規程がどこに備え置かれているかということを開示していなかったこと,もっとも,平成11年4月以降の加入者に対しては,本件規程(乙22,本件規程原本と細部の表現的な相違点はあるが,本件改廃規定はそのままである。)も福祉年金証書とともに交付していたこと,④被控訴人においては,本件契約を締結した者が本件規程の内容を知ろうと考えて被控訴人にこれを問い合わせれば,誰でもが本件規程の内容を知ることができることとなっていたことが認められる。 イ上記のとおり,被控訴人は,被控訴人ら会社従業員に対し,「私たちの会社」,「明るい職場に正しいルール」,「ライフプラン入門」と題する冊子を配布していたところ,これらの冊子には本件規程の内容にそった本件制度の概要が記載されており,被控訴人ら会社の退職予定者の多くが本件セミナーを受講して,本件制度の主要な内容と手続について説明を受け,本件テキストにも本件規程の内容にそった本件制度の概要が記載されていたのであり,被控訴人ら会社を退職する直前には,各事業場において実施される説明会において,本件制度についての説明を受けるとともに,本件規程の内容を了承する旨が記載された本件申込書の交付を受けていたのである。 ウ以上によると,控訴人らは,被控訴人ら会社を退職するより前の時点において,本件規程の主要な内容についての説明を受けていたのであり,上記のとおり,本件契約を締結するにあたり本件規程の詳細な内容を知 ろうとすれば,各控訴人の勤務事業場等に問い合わせ,また,退職前説明会で本件規程の内容を知りたい旨の希望をすることにより,本件規程の存在場所とその内容を知ることは容易であったと認められるのであり,退職後においても,在職時 勤務事業場等に問い合わせ,また,退職前説明会で本件規程の内容を知りたい旨の希望をすることにより,本件規程の存在場所とその内容を知ることは容易であったと認められるのであり,退職後においても,在職時に勤務していた事業場や被控訴人本社に問い合わせることにより,本件規程の存在場所と内容を知ることは容易であったと認められる。 Ⅱ本件改廃規定の解釈等 本件規程は,上記のとおり,本件契約の内容になっているのであるから,本件改廃規定についても,合理性が認められる限り,それが本件契約の内容にならない理由はないというべきである。 控訴人らは,本件改廃規定が控訴人らにとって一方的に不利益な規定であるから,これが本件契約の内容になるためには,本件契約の締結にあたり,被控訴人が控訴人らに対し,本件改廃規定を実質的・直接的に告知することが必要である,いいかえれば,その条項を個別に取り上げてその趣旨を十分に説明することが不可欠であると主張する。 しかし,上記のとおり,控訴人らは本件規程の存在を認識したのであり,また,本件規程の内容を容易に知ることができる立場にあったのである。本件契約を締結する直前まで控訴人らは被控訴人ら会社の従業員であって,そのような特別な社会的関係の中にあって上記の立場にあったことからすると,本件改廃規定が控訴人らにとって不利益な規定であるからといって,この規定を実質的・直接的に控訴人らに告知しない限り,本件改廃規定が本件契約の内容にならないと解する根拠はない。 なお,本件改廃規定は,控訴人ら本件福祉年金の既受給者にとって,不利益な内容を含むものの,本件制度の目的趣旨に照らせば,本件改廃規定によって変更できる事項にはおのずと限界があり,例えば,預け入れ原資の元本をカットするような条項を追加することは勿論,本件給付利率を一般的な利 率 の,本件制度の目的趣旨に照らせば,本件改廃規定によって変更できる事項にはおのずと限界があり,例えば,預け入れ原資の元本をカットするような条項を追加することは勿論,本件給付利率を一般的な利 率水準以下に下げること,中途一時払いの条項を削除するような改定は,到底できるものではなく,被控訴人も,本件改定規程によるそのような変更ができる旨考えていなかったと認められるのである。そうすると,本件のように本件給付利率が変更される等された場合,契約者が,中途一時払いを請求して,他に有利な運用先を探す方法は残されているのであって,本件改廃規定は,退職者が本件制度に加入するかどうか意思決定をする際,その意思決定を左右するような,加入者に重大な損害や不利益を及ぼす可能性のある規定であるとも断定することができない。この点から考えても,本件改廃規定が,個別,具体的に控訴人らに開示説明されなかったとしても,本件改廃規定が本件契約の内容となることの妨げとならないと解することができる。 そして,上記のとおり,本件改廃規定は,「将来,経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合,あるいは法制面での規制処置により必要が生じた場合」と厳格な要件を規定していること,本件契約に基づく年金支給は,受給者の死亡までの長期間継続するものであること,また,本件改廃規定によって変更できる事項は,本件制度の目的趣旨に照らせば,自ずと限界があることに照らせば,その内容には合理性が認められるというべきである。 本件改廃規定は,「将来,経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合,あるいは法制面での規制措置により必要が生じた場合は,この規程の全般的な改訂または廃止を行う。」と規定する。 控訴人らは,本件改廃規定が未受給者に対する関係で本件制度の改定又は廃止を対象にする 場合,あるいは法制面での規制措置により必要が生じた場合は,この規程の全般的な改訂または廃止を行う。」と規定する。 控訴人らは,本件改廃規定が未受給者に対する関係で本件制度の改定又は廃止を対象にするものであり,既受給者との間の契約内容の変更を予定したものではないと主張する。しかし,経済情勢等の大幅な変動があった場合に,本件制度の改定又は廃止という全面的な改定は行うが,既受給者を含む本件制度の対象者との間での部分的な契約内容の改定も一切行わないということは,本件制度のように長期間にわたって存続することが予定されている制度 においてはおよそ考えられないところであって,本件制度の制定にあたっても,特別の事情のない限り,本件改廃規定がそのような趣旨のものとして制定されたとは認め難いものであるが,本件全証拠によっても,上記の特別の事情は認められない。かえって,甲4によると,本件制度の導入にあたり,被控訴人とK労組は,将来経済情勢等の大幅な変動があったときは被控訴人とK労組との協議により本件制度を改廃するという本件改廃規定とほぼ同内容の規定を本件規程に盛り込むこととしたうえ,本件制度の細部運用として,そのような場合であっても,既受給者には不利にならないよう運営するという合意をしたことが認められる。上記合意は,本件改廃規定による本件規程の改定の効力が既受給者にも及ぶことを前提としたうえで,本件規程外の運用方針として,それにより既受給者に不当に不利益な影響が及ばないようにするという合意がされたものであると認めるのが相当である。そうすると,本件改廃規定による本件規程の改定の効力は既受給者に及ぶことが本件制度導入当初からの被控訴人及びK労組の認識であったとみられる。また,本件規程は,上記のとおり,本件契約の内容となることが予定されたものであるから, る本件規程の改定の効力は既受給者に及ぶことが本件制度導入当初からの被控訴人及びK労組の認識であったとみられる。また,本件規程は,上記のとおり,本件契約の内容となることが予定されたものであるから,本件契約を締結するより前の未受給者との間では,将来の期待し得る内容という以上の意味を有しないものであり,そのような者との関係において,K労組等との協議が必要になるとしても,経済情勢等の大幅な変動等という上記の厳密な要件に限定することなく,被控訴人が本件制度を全面的に改定又は廃止することができることは当然であり,まして,部分的な改定であれば,K労組等との協議なくして被控訴人がこれをすることができる場合もあることは当然であって,特に後者については,本件改廃規定のような規定をおく必要があるとは考えられないものである。以上によると,本件改廃規定は,未受給者を対象とする本件制度の全面的な改定又は廃止だけでなく,既受給者を含む本件制度の対象者との間での部分的な契約内容の改定をも含む趣旨のものであると認めるのが相当である。 よって,本件契約締結後に本件改廃規定による本件規程の改定がされた場合には,改定後の本件規程がその契約内容になるというべきである。 控訴人らは,本件改廃規定の要件が不明確であり,そのような不明確な要件を定めた本件改廃規定によって本件利率改定をすることは許されないと主張する。 たしかに同文言が一義的に明確であるとまではいえないが,「将来,経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合は,」と厳格な要件を規定していること,本件給付利率につきどのような場合にどの程度の改定をするかということを事前に一律に決定しておくことは不可能を強いるものであるというほかなく,その要件が一義的に明確でないからといって,そのことを理由に,およそ本件 つきどのような場合にどの程度の改定をするかということを事前に一律に決定しておくことは不可能を強いるものであるというほかなく,その要件が一義的に明確でないからといって,そのことを理由に,およそ本件改廃規定による本件給付利率の改定が許されないと解することは相当でないというべきである。上記のとおり,どのような場合にどの程度の利率改定をするかということを事前に一律に決定できないことからすると,本件改廃規定による本件給付利率の改定をするにあたっては,本件給付利率の改定をする必要性と改定後の本件給付利率の相当性という要件が要求され,双方の要件が満たされるのであれば,本件利率改定は有効と評価されると解するのが相当である。 控訴人らは,控訴人らの本件福祉年金請求権は,退職時に締結された本件契約によってその総額につき発生し,その支払いにつき履行期が定められているにすぎないのであるから,本件改廃規定によって給付利率の減額改定をすることは契約法理に反するものであって許されないと主張する。 しかしながら,本件契約の年金支払期間は,長期にわたり,その間に,経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動が起こることに備えて,本件改廃規定が設けられたものであって,退職時に締結された本件契約によって,その総額につき少なくとも抽象的には年金請求権が発生すると解するとしても,本件改廃規定は,既に退職者に発生した権利についても,厳格な要件でのも とでの事情変更が生じた場合にその権利内容を変更することができることを定めたものと解せられ,上記控訴人らの主張は採用できない。 控訴人らは,本件改廃規定が本件規程の附則に規定されていることを理由として,そのような本件改廃規定により控訴人らと被控訴人との契約内容を変更することはできないと主張する。 しかし,上記のとおり,本件規程 人らは,本件改廃規定が本件規程の附則に規定されていることを理由として,そのような本件改廃規定により控訴人らと被控訴人との契約内容を変更することはできないと主張する。 しかし,上記のとおり,本件規程は,「第1章総則」,「第2章基本年金」,「第3章終身年金」,「第4章受給手続」からなっているところ,本件改廃規定はその性質からみて上記のどの章にも属さないものであり,本件改廃規定のみを独立の章として規定することも本件規程全体のバランスから適当でないとの考え方のもとに,本件改廃規定を附則で定めたとみることもできるのであり,法律における附則の位置づけと本件規程のような民間会社で定められた規程における附則の位置づけとを同様にみることは適切でないと考えられる。したがって,本件改廃規定が本件規程の附則に定められていることは,本件改廃規定により本件給付利率の変更ができるかという問題に影響を及ぼすものではないというべきである。 控訴人らは,本件改廃規定を既受給者に対する給付利率引下げの根拠規定と解する場合には,本件改廃規定は信義則(民法1条2項),公序良俗(民法90条),消費者契約法10条に反して無効であると主張するので,この点について検討する。 控訴人らは,上記のように主張する根拠として,①既発生の権利である本件福祉年金請求権を侵害すること,②既受給者にとって本件給付利率改定の予測可能性がないこと,③本件改廃規定の文言の不明確性,④被控訴人の優越的地位を挙げる。しかし,①については,上記のとおり,本件改廃規定が本件契約の内容となっていることからすると,本件改廃規定によって既受給者に対する本件福祉年金の給付利率を引き下げることがただちに信義則等に反するということはできない。②については,上記のとおり,控訴人らは本 件契約の申込みをする時点において 廃規定によって既受給者に対する本件福祉年金の給付利率を引き下げることがただちに信義則等に反するということはできない。②については,上記のとおり,控訴人らは本 件契約の申込みをする時点において本件規程の存在を認識していたのであり,被控訴人ら会社を退職する前であっても,その後であっても,本件規程の内容を容易に知ることができたところ,控訴人らは,それまでの好景気,不況等という社会経済面での経験を有していたことからすると,既受給者である控訴人らにとって本件給付利率改定の予測可能性がなかったということはできない。③についても,上記のとおり,同文言が一義的に明確であるとまではいえないが,「将来,経済情勢もしくは社会保障制度に大幅な変動があった場合は,」と厳格な要件を規定していること,本件改廃規定による本件給付利率改定の要件を事前に一律に決定することは不可能であり,本件改廃規定による本件給付利率の改定をするにあたっては,本件給付利率の改定をする必要性と改定後の本件給付利率の相当性という要件が要求され,双方の要件が満たされるのであれば,本件利率改定は有効と評価されると解するのが相当であるから,この点をもって,本件改廃規定による本件給付利率の改定が信義則等に反するということはできない。④については,控訴人らとしては,本件契約を締結するに当たり,退職金を自分で運用するか本件制度を利用するかについて,その自由な選択によってこれを決定できたのであるから,その時点において被控訴人が優越的地位を有していたということはできない。 また,本件改廃規定が存在するからといって,上記のとおり,被控訴人が何らの制限を受けることもなく自由に本件規程の内容を変更することが許されないことは当然のことであるから,本件改廃規定の存在が被控訴人の優越的地位を根拠づけるものではな って,上記のとおり,被控訴人が何らの制限を受けることもなく自由に本件規程の内容を変更することが許されないことは当然のことであるから,本件改廃規定の存在が被控訴人の優越的地位を根拠づけるものではないというべきである。 よって,この点に関する控訴人らの主張には理由がない。 以上のとおりであるから,本件改廃規定によって既受給者との間においても,本件給付利率の改定をすることは許されるというべきである。 なお,控訴人らは,本件利率改定に先立ち,被控訴人が既受給者の個別同意を求め,当初の回答期間を延長してまで,既受給者の個別同意を得ようと していたことからしても,本件改廃規定による本件利率改定が許されないものであることは,被控訴人自身認識していたと主張する。そして,乙38ないし乙41によると,控訴人らの主張する上記事実が認められるのであるが,法律的には既受給者の個別同意なくして契約内容を変更できる場合であっても,紛争となることを回避するために契約相手方の個別同意を求めるということは,何ら不自然なことではないのであるから,被控訴人が上記のとおり既受給者の個別同意を求めたからといって,被控訴人自身,既受給者の個別同意がなければ本件利率改定ができないと認識していたと認めることはできない(甲15によると,被控訴人の労政グループが平成13年8月に作成した「雇用構造改革の推進にあたって」と題する文書には,本件福祉年金が被控訴人と個人との個別契約であり,既受給者の年金額を減額できるかどうかには法的疑義があって慎重な検討が必要である旨の記載があるが,この記載も,既受給者の個別同意がない限り本件利率改定ができないと被控訴人が認識していたことを示すものでないことは,その表現自体から明らかである。)。また,平成8年4月1日の労使合意により,平成9年3月21日以 既受給者の個別同意がない限り本件利率改定ができないと被控訴人が認識していたことを示すものでないことは,その表現自体から明らかである。)。また,平成8年4月1日の労使合意により,平成9年3月21日以降の退職者につき本件給付利率を低くした際に,既受給者の本件給付利率を低くしなかったことは上記のとおりであるが,これも,上記と同様,既受給者との紛争を回避して,できるだけ穏便に本件制度の維持を図ろうとしたことによるものであると考えられるのであるから,この事実をもってしても,既受給者の個別同意がない限り本件利率改定ができないと被控訴人が認識していたと認めることはできない。 Ⅲ本件利率改定が本件改廃規定の定める要件を満たすか否かについて 経済情勢,社会保障制度の大幅な変動について(1)括弧内に記載の書証及び弁論の全趣旨によると以下の事実が認められる。 ア本件給付利率本件制度が開始された昭和41年から本件利率改定が行われた平成1 4年までの約36年間についてみると,本件給付利率は,昭和41年から平成9年3月20日までに本件契約を締結した者については年10%のままであり,平成9年3月21日以降の退職者は年9.5%,平成10年3月21日以降の退職者は年8.5%,平成11年3月21日以降の退職者は年7.5%とされたことは上記のとおりである。 イ市場金利(運用利回り)の推移上記の間についてみると,貸付信託(5年)の年率は,昭和41年が7.32%であり,昭和48年までは7%台であったが,昭和49年から昭和51年までは8%台となり,いったん利率が低くなった後,昭和55年に8.4%となり,その後は,ほぼ一貫して利率が低下し続け,平成7年に1%台となり,平成8年には1%を割って,平成14年には0.05%となった。定期預金(1年)の年率は,昭和41年 た後,昭和55年に8.4%となり,その後は,ほぼ一貫して利率が低下し続け,平成7年に1%台となり,平成8年には1%を割って,平成14年には0.05%となった。定期預金(1年)の年率は,昭和41年が5.5%であり,昭和49年,昭和50年は7%台となったが,昭和51年には6.75%となり,その後は,ほぼ一貫して利率が低下し続け,平成6年に1%台となり,平成8年に1%を割って,平成14年には0.04%となった。新発10年国債の年率は,昭和47年が6.91%であり,昭和49年から昭和59年まではほぼ7%台又は8%台であったが,昭和60年以降は,ほぼ一貫して利率が低下し続け,平成14年には1. 27%となった。(乙31,乙49)ウ貸出金利の推移上記の間についてみると,長期プライムレート(銀行が最優良の企業に貸し付ける長期資金の金利)の利率は,昭和41年が8.4%であり,昭和48年までは概ね8%台であったが,昭和49年から昭和51年までは9%台となり,いったん利率が低くなった後,昭和55年に9.16%となり,その後は,ほぼ一貫して利率が低下し続け,平成13年に1%台となり,平成14年には1.94%となった。公定歩合は,昭和 41年が5.48%であり,昭和48年までは4%台後半から6%台前半の間で推移していたが,昭和49年に9%となり,その後は,昭和55年,平成2年ころに一時的に高くなったものの,低下し続け,平成6年に1%台となり,平成8年に1%を割って,平成14年には0.1%となった。(乙31,乙49)エ年金資産の運用利回りの推移上記の間についてみると,被控訴人厚生年金基金の運用利回りは,昭和53年が10.12%であり,昭和62年までは概ね9%から10%の間で推移していたが,昭和63年に8.65%となり,その後は,ほぼ一貫して 間についてみると,被控訴人厚生年金基金の運用利回りは,昭和53年が10.12%であり,昭和62年までは概ね9%から10%の間で推移していたが,昭和63年に8.65%となり,その後は,ほぼ一貫して利率が低下し続け,平成11年に一時的に14.82%まで上昇したが,平成12年にはマイナス10.6%まで低下し,その後はマイナスのまま推移し,平成14年にはマイナス12.3%となった。 年金資金運用基金(公的年金)の運用利回りは,昭和61年が17.07%であり,その後は概ね0%から10%の間で推移していたが,平成11年に10.94%となった後,平成12年にはマイナス5.72%まで低下し,その後はマイナスのまま推移し,平成14年にはマイナス8.46%となった。厚生年金基金連合会の運用利回りは,昭和61年が11.11%であり,その後は一時的な上昇はあったものの概ね0%から10%の間で推移していたが,平成11年に11.29%となった後,平成12年にはマイナス9.83%まで低下し,その後はマイナスのまま推移し,平成14年にはマイナス12.5%となった。(乙34)オ利率引下げ,解散をする厚生年金基金の急増平成9年ころから給付利率の引下げや解散をする厚生年金基金が増え始め,平成12年ころからは急増している。解散数についてみると,平成7年ころまでは毎年1件あるかないかくらいであったのが,平成13 年には59基金,平成14年には73基金,平成15年には92基金が解散している。(乙36の1ないし4,乙37,乙49,乙50)カ現役従業員と既受給者との間の格差年金原資1330万円(受給者平均額),20年保証,85歳(60歳平均余命男女平均)まで受給するとの前提条件で,キャッシュバランスプランの下での現役従業員について,60歳から80歳(確定年金のため 年金原資1330万円(受給者平均額),20年保証,85歳(60歳平均余命男女平均)まで受給するとの前提条件で,キャッシュバランスプランの下での現役従業員について,60歳から80歳(確定年金のため)までの間に受給する年金総額を試算すると1860万円となり,年金原資を超えて受給する金額(すなわち,本件基本年金の利息相当分と本件終身年金の合計額)は530万円にすぎない。これに対し,同一の前提条件で,本件制度下(本件利率改定前)の既受給者について,60歳から85歳までの間に受給する年金総額を試算すると,①本件給付利率が10%の者の場合には3800万円となり,年金原資を超えて2470万円を受給することができることになり,本件利率改定後(8%)でも,年金総額は3325万円となり,年金原資を超えて1995万円を受給することができることになり,②本件給付利率が7.5%の者の場合は3200万円となり,年金原資を超えて1870万円を受給することができることになり,また,本件利率改定後(5.5%)でも,年金総額は2750万円となり,年金原資を超えて1420万円を受給することができることになる。(乙48)キ本件基本年金の利息,本件終身年金にあたるものとして被控訴人が受給者に支給した額本件福祉年金として被控訴人が受給者に支給した年金額のうち,当該受給者の拠出した原資額を超える部分は,昭和55年に6億4000万円を計上し,その後は一貫して増額を続け,平成8年には76億5000万円,平成10年には101億2000万円,平成12年には117億6000万円,平成13年には128億8000万円となった。(乙 13,乙44)ク被控訴人の業績の推移(ア) 平成8年当時,我が国は,所謂バブル経済崩壊後の日本経済の長期低迷状態による影響下にあった。そして,被 年には128億8000万円となった。(乙 13,乙44)ク被控訴人の業績の推移(ア) 平成8年当時,我が国は,所謂バブル経済崩壊後の日本経済の長期低迷状態による影響下にあった。そして,被控訴人の属する電器製品業界において,中国を中心としたアジア諸国の台頭が著しく,例えば,ノートPCの世界生産に占める中国の比率は,平成12年は,殆どなかったのが,平成16年は,80%に,DVDのそれは,平成11年が15%であったのが,平成16年に66%に増大している。これら中国を中心としたアジア諸国の台頭の結果,製造原価の安い電器製品が日本市場に流通し,日本国内における主要商品の単価を年ごとに下落させる要因の一つとなっていった。また,このことは,被控訴人を含む国内の電子工業生産額の減少をもたらした。その生産額は,平成8年には約25兆円であり,その後一進一退を繰返し,平成12年には約26兆円であったが,平成13年には19兆円に,平成14年には約18兆円に減少している。(乙70ないし乙72)(イ) 上記の電器製品業界の状況に呼応するように,被控訴人の業績が悪化し,スタンダード&プアーズは,平成14年3月,被控訴人の格付を,前回「A+」であったのを「A」に格下げした。この格下げは,国内の家電製品需要が低迷する中,同社の高コスト構造,成長戦略の不透明さにより,同社が期待する収益力とキャッシュフロー創出力の回復が,同社の予想を上回る時間を要するであろうとの見解や,キャッシュフローで裏付けられる債務返済能力や事業への継続的な投資力が,以前の格付け水準に見合わなくなろうだろうとの見通しも反映された結果であった。(乙79)(ウ) 被控訴人の営業利益等は次のとおり推移していった。 a売上高は,平成元年3月期の決算で4兆0746億円と4兆円台を超え,その後 なくなろうだろうとの見通しも反映された結果であった。(乙79)(ウ) 被控訴人の営業利益等は次のとおり推移していった。 a売上高は,平成元年3月期の決算で4兆0746億円と4兆円台を超え,その後,年間4兆円台を上下し,平成13年3月期に4兆 8318億円であったのが,平成14年3月期には3兆9007億円と激減し,平成15年3月期には4兆2378億円となった。 b営業利益率(売上高に占める営業利益の占める割合)は,昭和41年11月期に10.1%だったのが,平成元年3月期には3.5%,平成13年3月期には1.6%,平成14年3月期にはマイナス2.4%,平成15年3月期には1.2%となり,次第に低下してきている。(乙10の1,2)c平成14年3月期の決算において,約1324億円の赤字を計上した。なお,その前後の被控訴人の純利益は,平成12年3月期が約423億円,平成13年3月期が約637億円,平成15年3月期が約288億円であった。(乙10の1)d株主資本利益率は,昭和41年11月期に10.8%だったのが,平成元年3月期には8.0%,平成13年3月期には2.4%,平成14年3月期にはマイナス5.1%,平成15年3月期には1. 1%となり,次第に低下してきている。(乙10の1)ケ括弧内に記載の書証及び弁論の全趣旨によると,上記のような経済状態の中で,被控訴人が,雇用,賃金,退職金,年金等の各種制度について以下のとおりの見直しを行ったことが認められる。 (ア) 地域限定社員制度の導入被控訴人は,高コスト体質の改善を掲げ,平成11年,春季労使交渉において,K労組に対し,貸金,賞与,福祉退職金,年金制度などの全面的な見直しを提案し,交渉を重ね,平成12年8月,地域限定社員制度(転居を伴う異動がない代わりに本給水準を1割ないし2割引 労使交渉において,K労組に対し,貸金,賞与,福祉退職金,年金制度などの全面的な見直しを提案し,交渉を重ね,平成12年8月,地域限定社員制度(転居を伴う異動がない代わりに本給水準を1割ないし2割引き下げる制度)が導入され,被控訴人,主要分社,関係会社の従業員約7万8000人を対象に募集が行われ,約2万5000人がこれを選択し,該当者については約3万円から5万円,本給が引き下げられた。 (イ) 特別ライフプラン等の実施平成13年度に入って,新商品の開発増販を目指しながら,在庫削減,材料のコストダウン等のコスト削減の取組みを進め,更に,雇用構造改革の一環として早期退職者優遇施策(特別ライフプラン支援)が実施され,被控訴人,主要分社,関係会社の従業員約9万2500人を対象に募集が行われ,最終的に翌年3月末までに約1万1000人が退職した。同施策の実施に際し,被控訴人は退職者に対し,退職金に上乗せして,最大で年収の2.5年分相当(基準内賃金の40か月分)を支給した。また,同年末には,課長職以上の管理職の賞与について,同年の夏季賞与に比して15%の減額支給も行われた。(乙63ないし乙65)(ウ) 全社特別緊急経営施策の実施上記のとおり,平成14年3月期決算において,被控訴人が上場以来初の最終赤字を計上したことを受けて,同年には,全社特別緊急経営施策として,出張手当削減,超過勤務手当の割増率引下げ等が行われた。また,役員賞与ゼロ,役員年俸の30%以上のカット(役員の月次報酬は既に平成13年7月から20%カットされていた。),課長以上の管理職の年俸の10%ないし25%のカット,さらに労働組合員の賃金増額を凍結し半年の延期が実施されるなどした。 (エ) 退職金制度,本件制度の抜本的見直し上記のとおり,被控訴人は,平成12年4月,被控訴人 の年俸の10%ないし25%のカット,さらに労働組合員の賃金増額を凍結し半年の延期が実施されるなどした。 (エ) 退職金制度,本件制度の抜本的見直し上記のとおり,被控訴人は,平成12年4月,被控訴人厚生年金基金の加算年金の給付利率を年7.5%から年5.5%に引き下げた。 また,被控訴人は,平成14年4月,現役従業員に対する関係で本件制度を廃止し,同月1日付の退職者から,被控訴人厚生年金基金の加算年金の代わりに厚生年金基金第一加算年金(給付利率年5.5%,20年保証の終身年金)を,本件制度の代わりに厚生年金基金第二加 算年金として市場金利連動型のキャッシュバランスプラン(終身年金制度は採用されておらず,変動利率型で最長20年の確定年金であり,平成14年4月から当面年3.5%の給付利率で支給を開始している。)をそれぞれ導入した。その後,平成15年10月には,老齢厚生年金の代行返上に伴って,被控訴人厚生年金基金はK電器企業年金基金に組織変更され,厚生年金基金第一加算年金は企業年金基金第1年金(国債の利回りに連動する変動利率型の終身年金で,当面年2%の給付利率で支給を開始している。)に,厚生年金基金第二加算年金は企業年金基金第2年金に,それぞれ変更された。(乙68)(2)上記のとおり,被控訴人が,既受給者に対し,本件基本年金の利息相当分及び本件終身年金として支給する金額は年々増加している。そして,市場の貸出金利についてみると,長期プライムレートが,昭和41年に8. 4%であったのに対し,昭和56年からほぼ一貫して低下を続けて,平成14年には1.94%となり,公定歩合も,昭和41年に5.48%であったのに対し,同じく昭和61年から低下を続けて,平成14年には0. 1%と低下しており,本件基本年金の利息相当分に対する本件給付利率との間に大き 94%となり,公定歩合も,昭和41年に5.48%であったのに対し,同じく昭和61年から低下を続けて,平成14年には0. 1%と低下しており,本件基本年金の利息相当分に対する本件給付利率との間に大きい乖離が生じており,本件制度に関する被控訴人の負担は年々増大してきていると認めるのが相当である。 また,市場での運用利回りについてみると,上記のとおり,貸付信託(5年)が,昭和41年に7.32%であったのに対し,昭和56年から低下を続けて平成14年には0.05%となり,定期預金(1年)が,昭和41年に5.5%であったのに対し,昭和52年から低下を続けて,平成14年には0.04%となり,新発10年国債についても,昭和47年に6.91%であったのに対し,昭和60年以降はほぼ一貫して低下を続けて,平成14年には1.27%となったというのであるから,控訴人らにとって,本件給付利率は,昭和41年当時であれば,市場での運用利回 りより2.68%ないし4.5%高い運用利回りであったのが,平成14年には市場での運用利回りより8.73%ないし9.96%高い利回りで運用していることになり,自分で退職金を運用した場合には到底得ることのできないような高利率での利息を取得しているということになる。 他方,被控訴人の営業利益率についてみると,上記のとおり,本件制度の開始時には10.1%であったのに対し,平成13年3月期には1.6%に低下し,平成14年3月期にはマイナスとなったのであり,株主利益率についても,同様に大幅な減少がみられ,このような経済情勢の中で,被控訴人は,現役従業員の労働条件の低下を余儀なくされ,さらには,現役従業員との関係で本件制度を廃止し,本件給付利率よりはるかに低い利率での年金給付制度を導入したのであるから,本件福祉年金の既受給者と被控訴人ら会 従業員の労働条件の低下を余儀なくされ,さらには,現役従業員との関係で本件制度を廃止し,本件給付利率よりはるかに低い利率での年金給付制度を導入したのであるから,本件福祉年金の既受給者と被控訴人ら会社の現役従業員との間には,年金の受給額等につき極めて大きな格差が生じていると判断される。従来と比較して市場での運用利回りが大幅に低下しているにもかかわらず,控訴人ら既受給者が何ら変わることなく上記のとおり極めて高利率での利息を取得することができるのは,被控訴人の存続と被控訴人ら会社の現役従業員の労務提供があってのことであり,そうであるとすると,上記のとおり,被控訴人の営業利益率が低下し,被控訴人ら会社の現役従業員の年金受給額との大幅な格差が生じている状況のもとで,控訴人ら既受給者の利益のみを維持し続けるということは,公平の観点からみても妥当な結論であるとはいい難い。 また,これらの被控訴人をとりまく経済情勢,社会保障制度は,被控訴人に特有なものではなく,貸付信託等の運用利回りの低下を受けて,上記のとおり,年金資金運用基金や厚生年金基金連合会の運用利回りも大幅に低下しており,給付利率の引下げや解散をする厚生年金基金が急増しているというのである。 そして,以上のことに,本件制度は,未だ公的な社会保障制度の整備が 不十分であった時代に,従業員の退職後の生活の安定を図り,退職金の運用先を提供する趣旨も含め,市場金利よりも若干有利な給付利率による年金を長期間に渡って継続的に支給し続けるということを目的とするものであり,現に,昭和41年に本件制度が発足した際の給付利率10%は,当時の長期プライムレート年8.4%よりも若干高めの利率であったことを総合すると,被控訴人において,控訴人らを含む既受給者に対し,従来と同率の本件給付利率を維持しながら本件福祉 の給付利率10%は,当時の長期プライムレート年8.4%よりも若干高めの利率であったことを総合すると,被控訴人において,控訴人らを含む既受給者に対し,従来と同率の本件給付利率を維持しながら本件福祉年金の給付を行うことが困難となるような経済情勢の変動があったと認めるのが相当である。また,被控訴人ら会社の現役従業員に対して予定されている年金の受給額は,本件福祉年金の既受給者との間で大きな格差が生じているというのであるから,そのことからすると,社会保障制度についても,被控訴人ら会社の現役従業員との関係で大幅な変動が生じていると認めるのが相当である。なお,平成16年度以降は,受給者の減少により,被控訴人が填補すべき額も年々減少することが予測されるのであるが(乙45),受給者の減少が生じるのは,被控訴人が現役従業員に対する関係で本件制度を廃止したことが原因であり,しかも本件制度を廃止した結果,現役従業員と既受給者との間に,年金原資を超えて受給できる金額について著しい格差が生じることが上記のとおりであるとすると,このことは,経済情勢,社会保障制度に大幅な変動があったという結論に影響を及ぼすものではないというべきである。 (3)この点に関する控訴人らの主張について検討する。 ア控訴人らは,本件規程が平成8年に改定され,その後に退職する従業員については本件給付利率が変更されたことから,それ以前に退職した従業員については本件給付利率を変更しないという決定がされたとして,そのような退職者については平成8年を比較の基準時とすべきであり,平成8年より後に退職した従業員についてはその退職時である本件契約 締結時を比較の基準時とすべきであると主張する。 しかし,平成8年にされた本件規程の改定は,その時点における経済情勢の変動に鑑み,その後に退職する従業 た従業員についてはその退職時である本件契約 締結時を比較の基準時とすべきであると主張する。 しかし,平成8年にされた本件規程の改定は,その時点における経済情勢の変動に鑑み,その後に退職する従業員については,本件給付利率を引き下げるということを内容とするものであったにとどまると考えられるのであり,それ以前に退職した従業員の本件給付利率が相当であるからこれを変更する必要性はないとの積極的判断がされたことを認めるに足りる証拠はない。また,上記改定により,平成9年3月21日以降の退職者については年9.5%,平成10年3月21日以降の退職者については年8.5%,平成11年3月21日以降の退職者については年7.5%と給付利率が改定されたのも,その当時の客観的情勢から適切と判断される給付利率を決定した訳ではなく,本件制度をできる限り従来と同一内容で維持するという方針,退職時期のわずかな違いで年金額が大幅に変更されるのも相当でないとの判断のもとに,段階的に給付利率を減らしていったににすぎないと認めることができる。 したがって,上記控訴人らの主張は採用することができない。さらに,上記(1)(2)認定事実によれば,平成8年以降の出来事だけをとってみても,本件改廃規定が定める経済情勢,社会保障制度に大幅な変動があったということができる。 イ控訴人らは,経済情勢,社会保障制度の大幅な変動には,被控訴人に関する経済情勢等の変動は含まれない旨主張するが,上記認定の被控訴人の営業状態の悪化等は,被控訴人固有の原因で発生したわけではなく,国内及び国際情勢の影響もその大きい原因を与えていたのであるから,この点に関する控訴人らの主張は採用できない。 また,控訴人らは,被控訴人の平成14年3月期の赤字決算は,事業構造改革費用や保有株式の評価損の計上という特別な要因 大きい原因を与えていたのであるから,この点に関する控訴人らの主張は採用できない。 また,控訴人らは,被控訴人の平成14年3月期の赤字決算は,事業構造改革費用や保有株式の評価損の計上という特別な要因によるものであり,被控訴人は,その後V次的な大幅回復をし,豊富な余剰金を有し ている旨主張する。そして,甲7の1・2,甲22によれば,被控訴人の平成14年3月期の決算は,売上高の大幅減少や価格低下の影響を受け,営業損失929億円,経常損失424億円を計上し,特別損失として雇傭構造改革や国内事業・流通部門の再編に伴う事業構造改革の費用1305億円,保有株式の評価損815億円を計上し,その結果当期純損失は,税引前2541億円,税引後(法人税調整額の差引)で1324億円であったこと,平成15年3月期の決算では,営業利益528億円,経常利益801億円,税引前当期純利益885億円,税引後当期純利益288億円を計上し,平成16年3月期の決算では,営業利益469億円,経常利益1052億円(受取配当金が増加した。),税引後当期純利益594億円を計上したことが認められる。ところで,平成14年3月期の決算では,事業構造改革の費用1305億円,保有株式の評価損815億円を計上しているが,平成14年3月期の決算では,既に,営業損失929億円が発生しているのであり,このことに上記(1)ク,ケの認定事実を総合すれば,当時の被控訴人は,高コスト等が原因で,慢性的な赤字体質に陥っていたのであり,本件制度の見直しを含め,被控訴人の構造改革は避けて通れない事柄であったこと,そして,それを実行したこともあって,その後の年度で大幅な回復を示したと認めることができる(乙76)。また,乙77によれば,被控訴人の平成14年3月期の決算では,赤字決算ながら,資本金2587億円に対 て,それを実行したこともあって,その後の年度で大幅な回復を示したと認めることができる(乙76)。また,乙77によれば,被控訴人の平成14年3月期の決算では,赤字決算ながら,資本金2587億円に対し,資本合計が2兆5533億円あることが認められるが,乙77,乙78の1・2に弁論の全趣旨を総合すれば,被控訴人の純資産あるいは利益剰余金の大半は事業資産や投資資産に姿を変えており,必ずしもキャッシュが存在するわけではないことが認めらる。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。控訴人らは,その他,本件利率改定後の事情を種々主張するが,本件利率改定後の事情は,上記経済状況の変動 に関する認定に影響を及ぼさない。 ウ控訴人らは,本件制度のための被控訴人負担額が今後減少していくのであり,また,本件利率改定をした場合としなかった場合との差額は被控訴人の事業規模からみると大きなものではないのだから,本件利率改定を行う必要性はないと主張する。 しかし,上記のとおり,被控訴人の負担額が減少していくのは,本件制度を廃止したためであると考えられるのであるから,今後の被控訴人負担額の減少を本件利率改定の必要性を否定する理由にすることは相当でない。また,被控訴人は,経費の節減のためにさまざまの施策を講じているのであり,その一つ一つによる効果は大きなものではないとしても,それを総合することによって経費節減の効果を生じさせようとしていると考えられるのであるから,本件利率改定による経費節減の効果が被控訴人の事業規模と比較して大きなものでないとしても,そのことは本件利率改定の必要性の程度を減少させるものではないというべきである。 エ控訴人らは,現役従業員との間に年金受給額の格差が生じるのは,被控訴人の労務政策の変遷がもたらした結果にすぎず,その ことは本件利率改定の必要性の程度を減少させるものではないというべきである。 エ控訴人らは,現役従業員との間に年金受給額の格差が生じるのは,被控訴人の労務政策の変遷がもたらした結果にすぎず,その格差が何らかの法的効果をもたらすわけではないと主張する。 しかし,被控訴人の労務政策に変更があったのは,上記認定事実によると,被控訴人の経済状態を含む経済情勢の大幅な変動があり,また,被控訴人をとりまく社会保障制度に大幅な変動があったことによるものであると認められるのであるから,そのような労務政策の変更があったことこそ,それは本件利率改定の必要性を基礎づけるものというべきである。 オ控訴人らは,既受給者もかつては老後の生活保障も励みにして労務を提供し,被控訴人ら会社の利潤蓄積に貢献したところ,本件基本年金の 利息相当分の受給は,その労務の提供の成果に対する還元という側面も有していること等を理由として,現役従業員との格差を問題とするのは不合理であると主張する。 しかし,現役従業員も被控訴人の業績に貢献しているうえ,控訴人らは,本件利率改定により利率が低下してもなお,市中金利,特に,長期プライムレートを大きく上回っており,その分,本件制度による恩恵を受けていると考えられるのであり,控訴人らの上記主張は採用できない。 カ控訴人らは,経済情勢の変動を示す指標として,消費者物価指数等も重要な指標となるところ,消費者物価指数は平成8年以降極めて安定していると主張する。しかし,このことを考慮にいれても,上記(1)(2)に認定指摘した諸事情が存するのであり,本件改廃規定が規定する経済情勢,社会保障制度に大幅な変動が存するとの認定判断を覆すことができない。 (4)以上のとおり,本件改廃規定が規定する経済情勢,社会保障制度に大幅な変動が存することが認 本件改廃規定が規定する経済情勢,社会保障制度に大幅な変動が存するとの認定判断を覆すことができない。 (4)以上のとおり,本件改廃規定が規定する経済情勢,社会保障制度に大幅な変動が存することが認められる。もっとも,上記のとおり,被控訴人は,本件改廃規定が規定する要件が認められれば,自由に本件規程を改定できる訳ではなく,本件利率改定内容の必要性,相当性を必要とすることは,事柄の性質上明らかである。また,本件利率改定に当たり,本件制度は退職労働者の福祉政策の一環として労働組合との協議のうえ発足したものであるから労働組合に対し理解を求めることが必要であるし,また,本件年金受給者は退職して労働組合員ではないから,不利益を受ける本件年金受給者に対しても,本件利率改定に対し理解を求める努力をする等手続の相当性が必要である。 以下,この利率改定内容の必要性,相当性,本件利率改定手続の相当性につき順次検討することとする。 本件利率改定の内容の必要性,相当性について 上記1で認定したところによれば,被控訴人は,業績低迷の対応策として,被控訴人従業員に「キャッシュバランスプラン」を導入し,当面年3.5%の給付利率での支給が開始されており,本件基本年金の既受給者の受給額と現役従業員が退職後に受給しうる年金額との間に大きい格差が生じていること,従業員や取引先にコストダウン施策の協力を要請し,株主に対する配当減少も余儀なくされている一方,本件制度にかかる負担額が増大し,いわば,これら現在の従業員,被控訴人の取引先や株主の犠牲のもと,本件給付利率が高率を維持しているといっても過言でないこと,また,利率引下げ,解散をする厚生年金基金が急増していること,さらに,金融市場における利率,特に,平成14年当時の長期プライムレートと比較すると本件制度の給付利率 しているといっても過言でないこと,また,利率引下げ,解散をする厚生年金基金が急増していること,さらに,金融市場における利率,特に,平成14年当時の長期プライムレートと比較すると本件制度の給付利率と大きくかけ離れていること,そもそも,本件制度は,未だ公的な社会保障制度の整備が不十分であった時代に,従業員の退職後の生活の安定を図り,退職金の運用先を提供する趣旨も含め,市場金利よりも若干有利な給付利率による年金を長期間に渡って継続的に支給し続けるということを目的とするものであり,現に,昭和41年に本件制度が発足した際の給付利率10%は,当時の長期プライムレート年8.4%よりも若干高めの利率であったこと等を総合すれば,本件制度による給付利率を一律2%程度引下げる必要性があったこと,そして,引き下げ後の利率は,本件制度への加入時期に応じて,年5.5%ないし8%であり,一般金融市場における利率に比べ,なお相当程度高い利率であること等も考えれば,控訴人らの利益を著しく損なうものではなく,本件利率改定は相当な範囲のものであったと認めることができる。 (したがって,将来,市中金利が本件給付利率と同程度かこれより高くなった場合は,本件給付利率も高く改訂されることが予想される。)。 本件利率改定の手続の相当性について(1)本件利率改定に際して労使協議がされたことは当事者間に争いがなく,乙55及び括弧内に記載の書証によると,本件利率改定に対する同意を得 るために,被控訴人が既受給者に対して行った説明会等の手続は以下のとおりであり,これにより,被控訴人は,本件利率改定につき既受給者の94.6%の同意を得たことが認められる。 ア書簡の送付被控訴人は,平成14年4月末ころ,既受給者に対し,①被控訴人において本件利率改定をするに至った背景,趣旨を伝える 件利率改定につき既受給者の94.6%の同意を得たことが認められる。 ア書簡の送付被控訴人は,平成14年4月末ころ,既受給者に対し,①被控訴人において本件利率改定をするに至った背景,趣旨を伝えるとともに,既受給者の理解を求める内容の書簡を,被控訴人のL社長(以下「L社長」という。)名で送付した。書簡については,その後も,②本件給付利率を一律2%引き下げることについての既受給者の理解を求める内容の被控訴人のM副社長(以下「M副社長」という。)名の書簡,③本件利率改定後の年金額の試算,及び本件利率改定に対する同意を求める内容が記載され,同意用の葉書が同封された被控訴人の労政グループ名の通知,④本件経過措置についての説明,分社・事業場・地区別説明会(以下「事業場別説明会」という。)の案内等が記載されたM副社長名の書簡,⑤同意した既受給者に対するM副社長名の礼状,⑥不同意者に対して再度同意を求める内容が記載されたM副社長名の書簡が送付された。(乙38ないし乙42,乙55)イN会定期支部総会後の会社説明会被控訴人の人事責任者は,同年5月ころから,全国35地区で行われたN会(被控訴人ら会社の定年退職者(定年扱い退職者を含む。)の親睦団体である。)の定期支部総会後に,本件利率改定について既受給者に対し直接説明し,理解を求めた。(乙8,乙56,乙57)ウフリーダイヤルの設置被控訴人は,同年5月半ばころから,既受給者からの様々な質問や意見に対し個別に直接回答するために,フリーダイヤルを設置した。 エ事業場別説明会 被控訴人は,同年6月末ころから,全国延べ81地区において事業場別説明会を実施し,本件利率改定について既受給者に対し直接説明し,理解を求めた。(乙58ないし乙62,乙66)(2)括弧内に記載の書証及び弁論の全趣旨によると から,全国延べ81地区において事業場別説明会を実施し,本件利率改定について既受給者に対し直接説明し,理解を求めた。(乙58ないし乙62,乙66)(2)括弧内に記載の書証及び弁論の全趣旨によると,本件利率改定に際して,被控訴人が控訴人らに本件規程等を以下のとおり送付したことが認められる。 ア本件利率改定に際し,控訴人らをはじめとする本件福祉年金の既受給者から,被控訴人に対し,各人が退職した当時の本件規程を見せて欲しいとの要望が寄せられた。そこで,被控訴人は,原本が現存するものについてはワープロで作成し直し,原本が現存しないものについては現存する本件規程,労使の協定書や答申書,各種の社内通達など現存する他の資料を参考にして原本の内容を再現し,また,復刻版を作成するなどした。この復刻版の作成に際しては,若干の文字や送りがなの変更等を行った。(乙3の1ないし5)イまた,昭和59年10月1日改定の際には,預入限度額が退職金の70%以内から50%以内に変更されたことなどとの関係から,労使協定により経過措置が設けられたところ,本件規程の記載のみからでは経過措置の内容を知ることができないので,経過措置の対象となっていた既受給者に送付されることになる昭和61年10月1日改定及び平成2年4月1日改定に係る本件規程の復刻版には,分かりやすさの観点から第5条に括弧書きで経過措置の内容を付け加えた。同様の取扱いは,平成8年4月1日改定の際の経過措置についても行っている。なお,分かりやすさのため,復刻版の作成に際しては,「昭和65年」などと表記せず,平成の元号を用いた。(乙3の2,4,5,乙19の2,乙20)ウそして,被控訴人は,平成14年9月17日,本件利率改定の対象となった全ての既受給者に対し,前提となる事実3(1)の新年金証書の発送 元号を用いた。(乙3の2,4,5,乙19の2,乙20)ウそして,被控訴人は,平成14年9月17日,本件利率改定の対象となった全ての既受給者に対し,前提となる事実3(1)の新年金証書の発送 の際,各人の退職時に存在していた本件規程の復刻版(本文と別表)と本件利率改定に伴い改定した新しい本件規程の別表も同封して発送した。 (乙3の1ないし5,乙21(枝番も含む。),乙55)(3)上記認定のとおり,被控訴人は,本件利率改定をするにあたり,本件規程の復刻版を作成するなどしてこれを既受給者に送付したうえ,N会定期支部総会後の会社説明会や事業場別説明会で既受給者に対し本件利率改定をするに至った経緯を説明して理解を求め,これにより,被控訴人は,既受給者の94.6%の同意を得たものであり,本件利率改定の手続の相当性も認めることができる。 以上のとおり,本件改廃規定に基づく,本件利率改定は,有効であり,その効力が生じたことが明らかである。 第4 結論 以上の次第で,控訴人らの請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却し,控訴人らが当審で追加した請求も,理由がないのでこれを棄却し,当審における訴訟費用は,控訴人らの負担とすることとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部裁判長裁判官横田勝年裁判官東畑良雄裁判官植屋伸一 (別紙省略)

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